明 細 書
グループ Bサポニンの製造方法
技術分野
[0001] 本発明は、グループ Bサポニンの製造方法に関し、詳しくはグループ Aサポニン、 グループ Bサポニン、イソフラボン及びオリゴ糖類を含有する胚軸抽出液よりグルー プ Bサポニンを分離、回収する方法に関する。より詳しくは、本発明は、胚軸抽出液 を加熱、低級脂肪族アルコール含有液存在下の酸沈澱、含水低級脂肪族アルコー ルによる洗浄、低級脂肪族アルコールへの溶解処理、珪藻土等の吸着剤処理並び に低級脂肪族アルコールによる抽出処理により、胚軸抽出液からのグループ Aサボ ニン含量の極めて低 、グループ Bサポニンの効率的、かつ大量生産可能な製造方 法に関する。
背景技術
[0002] 大豆胚軸には、グループ Bサポニン以外に、グループ Aサポニンあるいはイソフラボ ン等が含まれており、イソフラボンとしてはダイゼイン、ゲニスティン、グリシティン等や 、これらの配糖体であるダイジン、ゲニスチン、グリシチン等及びこれら配糖体のマロ -ルエステル、ァセチルエステル等が含まれていることが一般的に知られている(非 特許文献 1参照)。
[0003] グループ Aサポニンとは、ソャサポゲノール Aをァグリコンとして有しているソャサポ ニン A1— A6とそのァセチル体の総称であり、グループ Bサポニンとは、ソャサポゲノ ール Bをァグリコンとして有しているソャサポニン I一 Vとその 22位の水酸基に
2,3- dihydro- 2,5- dihydroxy- 6- methy卜 4H- pyran- 4- one (DDMP)を有する化合物の 総称である (非特許文献 2、非特許文献 3参照)。
また、ソャサポニン Iは、ソャサポニン Bb、そしてソャサポニン Vはソャサポニン Baとも 称されて!/ヽる (非特許文献 3参照)。
[0004] ソャサポニンを得る方法に関しては、例えば特許文献 1には、原料の大豆粉末をメ タノールで処理して得た抽出液を n-ブタノールと水で分配した後、ブタノール層から の抽出液をカラムクロマトグラフィーにて精製する方法が開示されている。
大豆力もの抽出液を ODSカラムに吸着させて溶出後、クロマトグラフィーを組み込ん でサポニン画分を集め、 目的とするソャサポニンを単離する方法が特許文献 2に記載 されている。
しかし、これらの方法で得られるソャサポニンは、純度が低ぐ他の夾雑物(例えば 、大豆イソフラボン)が多く含まれている。下山田ら (非特許文献 4参照)は、大豆胚軸 を 70 %エタノールで抽出して減圧濃縮した残渣を n-ブタノール一水(1:1)に溶解して pHをコントロールすることによって、 n-ブタノール層へのソャサポニン Iの移行性を高 めることを報告している。し力しながら、この方法は、大豆イソフラボンが n-ブタノール 層へ移行することとグループ Aサポニンの n-ブタノール層と水層への移行性につい ては言及して ヽな 、ことより、グループ Bサポニンの高純度な精製法にっ 、て開示し たものではない。
[0005] 特許文献 1:特開昭 61-7285号公報
特許文献 2:特開平 6-100583号公報
非特許文献 1 : S. Kudou, Y. Fleury, D. Welti, D. Magnolato, T. Uchida, K.
Kitamura, and K. Okubo, Agric. Biol. Chem., 55, 2227-2233 (1991).
非特許文献 2 : M. Shiraiwa, K. Harada, and K. Okubo, Agric. Biol. Chem., 55, 911 - 917 (1991).
非特許文献 3 : Y. Yoshiki, S. Kudou, and K. Okubo, Biosci. Biotechnol. Biochem., 62, 2291 -2299 (1998).
非特許文献 4 : M. Shimoyamada, K. Okubo, M. Yoshikoshi, Y. Yoshiki, and K. Watanabe, Food Sci. TechnoL, Int., 1, 112-114 (1995).
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0006] 肝臓障害抑制効果のあるトリテルペンィ匕合物、 ME3738 (ソャサポゲノール Bのメチ ル誘導体、特許第 3,279,574号及び Klein Cら, Eur. J. Immunol., 33, 2251-2261 (2003).を参照)の原料となるソャサポニン Bの安価で大量生産可能な製造方法を確 立することが重要な課題となっている。しかし、前述したクロマトグラフィーによるソャ サポニン Bの分離 ·精製方法は、使用する各種担体へのソャサポニン Bの吸着量が
少ないため、原料の大豆、大豆胚軸、脱脂大豆より年間数十トンという大量の精製ソ ャサポニン Bを製造するためには、多量のクロマトグラフィー用担体が必要となり、操 作が煩雑である上に、製造コストが高くなり実用的ではな力つた。
課題を解決するための手段
[0007] 本発明者らは、こうした課題背景のもと鋭意検討し、大豆の脱脂胚軸抽出液からの グループ Aサポニン含量の極めて低いグループ Bサポニンを、低コストで、しかも大量 生産可能な取得方法を確立し、本発明を完成するに至った。
[0008] すなわち、請求項 1に記載の本発明は、以下の工程を含むことを特徴とするグルー プ Bサポニンの製造方法である。
(1)ソャサポニン類の抽出画分に低級脂肪族アルコール又は含水低級脂肪族アル コ一ルを加えて酸性下で沈殿物を形成させる工程、
(2)前工程で得られた沈殿物を含水低級脂肪族アルコールで洗浄後、低級脂肪族 アルコールに溶解する工程、
(3)前工程で得られた溶液を濃縮し、加水した後、酸性下で沈殿物を形成させ、生ず る沈殿物を担体に吸着,回収する工程、
(4)前工程で得られた担体を脂溶性溶剤で洗浄後、低級脂肪族アルコールにより抽 出する工程
また、請求項 2に記載の本発明は、請求項 1記載の (4)工程で得られた抽出液を濃 縮し、必要に応じてグループ Bサポニンを固形物とすることを特徴とする精製されたグ ループ Bサポニンの製造方法である。
また、請求項 3に記載の本発明は、ソャサポニン類の抽出画分が、大豆の脱脂胚 軸抽出液力 抽出したソャサポニン類であることを特徴とする請求項 1又は 2に記載 の方法である。
請求項 4に記載の本発明は、請求項 2記載の精製グループ Bサポニンを含水低級 脂肪族アルコールでスラリ一洗浄ある!/ヽは低級脂肪族アルコールに溶解後に加水し 、次 、で固 液分離を行う工程を更に含んでなることを特徴とする請求項 2に記載の 方法である。
請求項 5に記載の本発明は、得られるグループ Bサポニン固形物の純度が 50%以
上であることを特徴とする請求項 2— 4の何れ力 1項に記載の方法である。
請求項 6に記載の本発明は、以下の工程を含むことを特徴とするグループ Bサボ- ンの製造方法である。
(1)ソャサポニン類の抽出画分に低級脂肪族アルコール又は含水低級脂肪族アル コ一ルを加えて酸性下で沈殿物を形成させる工程、
(2)前工程で得られた沈殿物を含水低級脂肪族アルコールで洗浄後、低級脂肪族 アルコールに溶解する工程、
(3)前工程で得られた溶液を濃縮して得た固形物を、必要に応じて酸性下で処理し て沈殿物を形成させる工程、
(4)前工程で得られた固形物もしくは沈殿物を脂溶性溶剤で洗浄し、次 ヽで乾燥す る工程
請求項 7に記載の本発明は、以下の工程を含むことを特徴とするグループ Bサボ- ンの製造方法である。
(1)ソャサポニン類の抽出画分に低級脂肪族アルコール又は含水低級脂肪族アル コールを加えて酸性下で固 液分離を行 ヽ、固体部分を回収する工程、
(2)前工程で得られた固体部分を含水低級脂肪族アルコールに溶解し、生じた不溶 物を除く工程
請求項 8に記載の本発明は、以下の工程を含むことを特徴とするグループ Bサボ- ンの製造方法である。
(1)ソャサポニン類の抽出画分に低級脂肪族アルコール又は含水低級脂肪族アル コールを加えて酸性下で固 液分離を行 ヽ、固体部分を回収する工程、
(2)前工程で得られた固体部分を含水低級脂肪族アルコールに溶解し、生じた不溶 物を除く工程、
(3)前工程で得られた溶液を濃縮して得た固形物を、必要に応じて酸性下で処理し て沈殿物を形成させる工程、
(4)前工程で得られた固形物もしくは沈殿物を脂溶性溶剤で洗浄し、次 ヽで乾燥す る工程
発明の効果
[0010] 本発明によれば、胚軸抽出液力 グループ Aサポニン含量の極めて低!、グループ Bサポニンを効率的、かつ安定的に供給することが可能な製造方法が提供される。 本発明の方法は、グループ Bサポニンを製造するにあたり、各種担体によるカラムク 口マトグラフィーを全く使用しない方法であり、該物質を低コストで、大量生産すること が可能である。
グループ Bサポニンは、肝臓障害抑制効果のあるソャサポゲノール Bメチル誘導体 を商品化するための原料としての利用が期待されるものである。
発明を実施するための最良の形態
[0011] 本発明による、大豆の脱脂胚軸抽出液力もグループ Aサポニン含量の極めて低い グループ Bサポニンの製造方法について、以下に詳しく説明する。
はじめに、請求項 1に記載の方法について説明する。まず、大豆の脱脂胚軸抽出 液力 ソャサポニン類を低級脂肪族アルコール又は含水低級脂肪族アルコールで 抽出する。このとき用いる低級脂肪族アルコールの濃度は、特に限定されないが、 60 一 100%が好ましい。用いる低級脂肪族アルコールとしては、メタノール、エタノール、 プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなどがあり、特に限定されるものではない 力 抽出物力 ソャサポニン以外に食品等に使用する成分を分離する場合、ェタノ ールが好ましい。
抽出した溶液力 低級脂肪族アルコール (例えばエタノール)を留去し、その残渣 に加水した後、加熱処理して真正サポニンをソャサポニンに分解する。その際の加 熱温度は 80— 100°Cが好ましぐ特に好ましい温度は 90— 95°Cである。また、加熱時 間は、特に限定されないが、真正サポニンをソャサポニンに分解するのに必要な時 間であればよぐ通常は 6— 24時間が適当であり、好ましくは 20— 24時間である。
[0012] 次に、該加熱処理液に低級脂肪族アルコールもしくは水と低級脂肪族アルコール をカロえる。ここで使用する低級脂肪族アルコールについては、特に限定されないが、 好ましくはメタノール、エタノールであり、その添力卩量は水をカ卩えた後の溶液の 10— 30 %である。このように調製した希釈液に酸を加えて pH調整する。このとき用いる酸に ついても、限定されないが、好ましいものは、塩酸、硫酸、硝酸、燐酸、酢酸等である
酸による調整後の pHは、 0.5— 3.5で、好ましくは 1.0— 2.5である。 pH調整後、必要 に応じて撹拌する。この処理によって生ずる沈殿物をろ過、デカンテーシヨン或いは 遠心分離機等の固 -液分離方法により沈殿物(固形物)を取得する。
得られた沈殿物を含水低級脂肪族アルコールで洗浄し、洗浄した沈殿物を低級脂 肪族アルコールに溶解すると共に、生ずる不溶物をろ過等により除去する。ここで用 V、る低級脂肪族アルコールとしては、メタノールやエタノールなどが好まし!/、。
[0013] 次いで、ろ液を濃縮し、濃縮液に水を加えて、酸により pH調整をする。このとき用い る酸は特に限定されないが、塩酸、硫酸、硝酸、燐酸、酢酸等を用いることが好まし い。調整後の pHは、 0.5— 3.5で、好ましくは 1.0— 2.5である。
酸性下で生ずる沈殿物を担体 (吸着作用のある物質、例えばある種の珪藻土、好 ましくはラヂオライト 600、 800または 900等)へ吸着させる。その後、遠心分離或いは ろ過等により、好ましくはバスケット遠心機により分離して当該担体を取得する。 次に、この担体を有機溶剤で洗浄する。洗浄用の有機溶剤については限定されな いが、通常は脂溶性溶剤が用いられ、好ましくは酢酸ェチルを用いる。このとき、必 要に応じて水を加える。酢酸ェチル等で洗浄後、メタノールなどの低級脂肪族アルコ ールをカ卩えて抽出する。
得られた抽出液を、請求項 2に記載のように、濃縮してグループ Βサポニンの精製 物(純度 50%以上)である固形物 (好ましくは粉末、結晶など)を得る。
このようにして、グループ Αサポニン含量の極めて低!、グループ Bサポニンを得るこ とができる。更に、得られたグループ Bサポニンをより高純度にするために、請求項 4 に記載したように、含水低級脂肪族アルコール (好ましくはメタノールなど)でスラリー 洗浄ある!ヽは低級脂肪族アルコールに溶解後に加水して再沈殿化した後、遠心分 離機などによる固 液分離を行うことで、更に純度の高いグループ Bサポニンを得るこ とがでさる。
[0014] 請求項 6に記載の方法は、上記請求項 1記載の方法と同様に、ソャサポニン類の 抽出画分から酸性下で沈殿物を形成させた後、該沈殿物を含水低級脂肪族アルコ ールで洗浄し、洗浄した沈殿物を低級脂肪族アルコールに溶解する。これらの操作 に使用する低級脂肪族アルコールなどは、上記したものと同じである。
次いで、沈殿物の低級脂肪族アルコール溶液を、濃縮して固形物を得る。この固 形物を、必要に応じて酸性下で処理して沈殿物を形成させる。このとき用いる酸は特 に限定されないが、前記と同様に塩酸、硫酸、硝酸、燐酸、酢酸等を用いることが好 ましい。調整後の pHは、 0.5— 3.5で、好ましくは 1.0— 2.5である。
この固形物もしくは沈殿物を脂溶性溶剤、好ましくは酢酸ェチルで 1回な 、し数回 洗浄し、次いで乾燥する。乾燥は、減圧乾燥機等により行うことができる。これにより、 高純度のグループ Bサポニンを得ることができる。
[0015] 次に、請求項 7に記載の方法は、はじめにソャサポニン類の抽出画分に低級脂肪 族アルコール又は含水低級脂肪族アルコールをカ卩え、酸性下で固 液分離を行 、、 固体部分を回収する。得られた固体部分を含水低級脂肪族アルコールに溶解し、そ の際に生じた不溶物を除くことによって、目的とするグループ Bサポニンを得ることが できる。なお、これらの操作に使用する低級脂肪族アルコールなどは、上記したもの と同じである。
[0016] 請求項 8に記載の方法は、上記請求項 7に記載の方法と同様に、ソャサポニン類の 抽出画分から酸性下で固 -液分離を行い、固体部分を回収した後、該固体部分を含 水低級脂肪族アルコールに溶解し、その際に生じた不溶物を除去する。次に、得ら れた溶液を濃縮して固形物を得る。この固形物は、必要に応じて酸性下で処理して 沈殿を形成させる。この処理は、前記請求項 6に記載の方法と同様である。
このようにして得た固形物もしくは沈殿物を脂溶性溶剤、好ましくは酢酸ェチルで 1 回ないし数回洗浄した後、乾燥する。乾燥は、上記と同じく減圧乾燥機等により行うこ とができる。これにより、高純度のグループ Bサポニンを得ることができる。
[0017] ところで、大豆の脱脂胚軸抽出液に含まれて!/、るイソフラボンにっ 、て、上記の操 作における挙動について述べると、加熱処理液の希釈液に酸を加えて pH調整し、固 液分離したとき、大部分のイソフラボンは液側に移行する。また、沈殿物を洗浄した とき、残余のイソフラボンは洗液に移る。更に、洗浄した沈殿物を低級脂肪族アルコ ールに溶解したとき、サポニンと共に、少量のイソフラボンも可溶部に移る。該可溶部 を濃縮し、酸により pH調整したとき、イソフラボンはサポニンと分かれて可溶部に移行 する。次いで、サポニンを吸着した担体を有機溶剤で洗浄した際に、ごく僅かに存在
するイソフラボンは可溶部に移り、サポニン力も分離する。
実施例
[0018] 以下に、実施例を示して本発明の方法を具体的に説明する力 本発明はこれらの 実施例に限定されるものではな 、。
なお、ソャサポニン、ソャサポゲノール及びイソフラボンの分析方法は、以下の通り である。また、ソャサポゲノール A含量及びソャサポゲノール B含量は、抽出'精製中 の各種サンプルを酸性条件下にメタノリシスすることで得られるグループ Aサポニン 及びグループ Bサポニンのァグリコン部分であるソャサポゲノール A及びソャサポゲノ ール Bの重量として表示した。
[0019] ソャサポニンの分析方法
高速液体クロマトグラフィー (HPLC)条件
検出器: UV 210nm
カラム: L— Column ODSゝ 250 X 4.6 nm、 5 m
恒温槽: 40°C
移動相: CH CN: 0.05%TFA水溶液 =40:60
3
流 速:丄. OmL/min
標準品:ソャサポニン Ba及びソャサポニン Bbは、大豆の脱脂胚軸の 60%エタノー ル水溶液による抽出物を減圧乾燥し、その固形分を ODSカラムクマトグラフィーにより 精製し、 HPLC分析で面積%が98%以上のサンプルを標準品とした。
ソャサポゲノール分析方法 (一般的にソャサポニン力もその糖部分を除 、たァグリ コン部分をソャサポゲノールと称する。 )
試料 300mgを精秤後、 10%塩ィ匕水素 メタノール 12mLカ卩え、 1時間 85°Cの油浴中で 加熱還流し、次にこの反応液に水を 10mlとエタノールを 45mLカ卩えて、 25%NaOHと 2.5%NaOHで pH4— 7に調整し、 80%エタノールで 100mlにメスアップして試料溶液と する。また、標準品のソャサポゲノール A及びソャサポゲノール Bは、それぞれ 10mg 前後を精秤後、エタノールで lOOmLにメスアップして用いた。試料溶液及び標準溶液 は、以下に示した HPLC条件で分析を行った。
HPLC条件
検出器: UV 210nm
カラム: L— Column ODS 250 X 4.6nm 5 ^ m
恒温槽: 40°C
移動相: CH CN:H O:MeOH=60:30:10
3 2
流 速: 1.0mL/min
標準品:ソャサポゲノール B及びソャサポゲノール Aは、大豆の油粕よりシリカゲル カラムクマトグラフィーにより精製し、 HPLC分析で面積%が98%以上のサンプルを標 準品とした。
[0021] イソフラボン分析方法 (イソフラボンの分析は、(財)日本健康'栄養食品協会法に従 つて行い、 3種類の大豆イソフラボンを HPLCにて測定した。ダイジンの標品を用いて 測定し、ダイジン以外のイソフラボンは、各イソフラボンの定量係数を乗じて、換算し た。以下に、 HPLC条件及びイソフラボンの定量係数を示す。
HPLC条件
検出器 254nm
カラム: ODSカラム 5 μ m 250 X 4.6mm Develosil ODS— 7
恒温槽: 35°C
移動相: 0.1%酢酸水溶液 Zァセトニトリル混液 (85:15→65:35, 50分直線グラジェ ント)
流 速:丄. OmL/min
注入量 :10 ;z L
[0022] [表 1]
[0023] 実施例 1
大豆の脱脂胚軸抽出液力もソャサポニン類を 60%エタノールで抽出して得た溶液 力もエタノールを留去し、その残渣に水をカ卩えた後、 90— 93°Cで 16.5時間加熱した。
次に、この加熱処理液 2000mL (固形分: 36.2%、ソャサポニン Ba:5.53g、ソャサボ- ン Bb:18.81g、ソャサポゲノール A含量: 17.40g、ソャサポゲノール B含量: 13.77g、ダイ ジン: 13.76g、グリシチン: 8.26g、ゲ-スチン: 4.50g)に水 2000mLとエタノール 800mLを カロえたのち、 6N—塩酸で pH2.5に調整し、 3時間撹拌後、遠心分離して沈殿物を取得 した。このとき、ろ液 4265mL (固形分: 12.8%)には、ソャサポニン Ba:0.28g、ソャサポ ニン B:2.41g、ソャサポゲノール A含量: 13.1 lg、ソャサポゲノール B含量: 1.64g、ダイ ジン: 11.67g、グリシチン: 6.77g、ゲニスチン: 3.45gが移行した。
この遠心分離により得られた沈殿物を 10%メタノール 7000mLで洗浄した。洗浄液 6910mL (固形分: 1.88%)中には、ソャサポニン Ba、ソャサポニン Bb、ソャサポゲノー ル Bは無ぐソャサポゲノール A含量: 3.81g、ダイジン: 1.68g、グリシチン: 0.89g、ゲ- スチン: 0.49gが移行した。
[0024] 次に、洗浄した沈殿物をメタノール 2000mLに溶解し、生じた不溶物をろ過して除去 した。ろ液 2930mL (固形分: 2.95%)には、ソャサポニン Ba:5.69g、ソャサポニン Bb:17.30g、ソャサポゲノール A含量: 3.71g、ソャサポゲノール B含量: 12.35g、ダイジ ン: 0.23g、グリシチン: 0.11g、ゲニスチン: 0.44gが移行した。
ろ液のメタノール層を濃縮して得た濃縮液 900mLに水 1500mLをカ卩えて、 1N—塩酸 により PH2.5に調整した。生じた沈殿物を珪藻土 (ラヂオライト 800)へ吸着させ、遠心 分離により珪藻土を取得した。ろ液 1820mL (固形分: 0.28%)中には、ソャサポニン Ba は無ぐソャサポニン Bb:0.04g、ソャサポゲノール A含量: 0.61g、ソャサポゲノール B 含量: 0.08g、ダイジン: 0.15g、グリシチン: 0.07g、ゲニスチン: 0.16gが移行した。
[0025] 次いで、吸着物を担持した珪藻土を 10%メタノール 3000mLで洗浄したところ、洗浄 液 3840mL (固形分: 0.06%)には、ソャサポニン Ba、ソャサポニン Bbは無ぐソャサポ ゲノール A含量: 0.1 lg、ソャサポゲノール B含量: 0.05g、ダイジン: 0.05g、グリシチン :0.02g、ゲニスチン: 0.08gが移行した。
この珪藻土にメタノール 2000mLを加えて抽出した。得られた抽出液 2480mL (固形 分: 3.15%)には、ソャサポニン Ba:5.50g、ソャサポニン Bb:16.52g、ソャサポゲノール A 含量: 2.03g、ソャサポゲノール B含量: 13.45gが移行した。このメタノール抽出液 2060mLを濃縮し、酢酸ェチルおよび水を加えて粉末化することで、精製サポニン
15.17gを得た。
[0026] 得られた精製サポニンを高速液体クロマトグラフィーにて分析したところ、ソャサボ ニン Bbが 45.7%、ソャサポニン Baが 24.8%であり、グループ Bサポニンとして純度 70.5%であった。
グループ Bサポニンとグループ Aサポニンをそれぞれのァグリコン部分であるソャサ ポゲノール Bとソャサポゲノール Aに変換して、グループ Bサポニンとグループ Aサポ ニンの含有割合を測定するために、得られた精製サポニンを 10%塩酸 Zメタノール で 1時間、加熱還流してソャサポゲノールとした後、 HPLCにて分析したところ、ソャ サポゲノール Bの含有割合は 34.5%、ソャサポゲノール Aの含有割合は 3.9%であつ た。
これらの測定結果を、表 2に示す。表中の Baはソャサポニン Ba、 Bbはソャサポニン Bb、 Soya Aはソャサポゲノール A、 Soya Bはソャサポゲノール Bを、それぞれ表す。
[0027] [表 2]
[0028] 実施例 2
実施例 1に準じた方法で得られたグループ Bサポニン 45g (ソャサポニン Bの純度約 60%、ソャサポゲノール Bの含有割合 29.8%、ソャサポゲノール Aの含有割合 4.2%) をメタノール (675mL)と水(675mL)の混合溶液に懸濁して 40°Cで加熱撹拌した後、 遠心分離した。
得られた沈殿物を更にメタノール (225mL)と水(225mL)の混合溶液に懸濁して遠 心分離した。更に、同様の操作を繰り返し、より純度の高い精製サポニンを 27.5g (ソ ャサポニン Bの純度約 82%、ソャサポゲノール Bの含有割合 40.8%、ソャサポゲノー
ル Aの含有割合 0.54%)得た。
[0029] 実施例 3
実施例 1に準じた方法で得られたグループ Bサポニン 69.9g (ソャサポニン Bの純度 約 47%、ソャサポゲノール Bの含有割合 23.5%、ソャサポゲノール Aの含有割合 5.6 %)を 1050mLのメタノールに溶解し、撹拌下、 40°Cに保ちながら 1050mLの水をゆつく りと滴下した後、遠心分離を行って、より純度の高い精製サポニンを 27.5g (ソャサボ ニン Bの純度約 88%、ソャサポゲノール Bの含有割合 44.0%、ソャサポゲノール Aの 含有割合 0.53%)得た。
[0030] 実施例 4
大豆の脱脂胚軸抽出液力もソャサポニン類を 60%エタノールで抽出して得た溶液 力もエタノールを留去し、その残渣に水をカ卩えた後、 90— 93°Cで 16.5時間加熱した。 次に、この加熱処理液 700mL (固形分: 36.2%、ソャサポニン Ba:1.94g、ソャサボ- ン Bb:6.58g、ソャサポゲノール A含量: 6.09g、ソャサポゲノール B含量: 4.81g、ダイジ ン: 4.82g、グリシチン: 2.89g、ゲ-スチン: 1.58g)に水 700mL、エタノール 280mLをカロえ て、 6N—塩酸で pH2.5に調整し、 2時間撹拌後、遠心分離して沈殿物(ソャサポニン B :8.52g)を取得した。一方、ろ液 1525mLには、ソャサポニン Ba:85mg、ソャサポニン Bb:729 mgが移行したことを確認した。
[0031] 実施例 5
実施例 4で得られた沈殿物(ソャサポニン B:4.25g)を 10%エタノール 1400mLで洗 净した。得られた洗净液 1340mLには、ソャサポニン Ba、ソャサポニン Bb、ソャサポゲ ノール Bは移行しな力つた。一方、洗浄した沈殿物を 70%エタノール 695mLに溶解し 、生じた不溶物をろ過して除去した。なお、この不溶物にはソャサポニン Bが 136mg ( 収率 3.2%)が移行して 、た。
ろ液 652mL (固形分: 15.9%)には、ソャサポニン Ba:0.99g、ソャサポニン Bb:3.13gが 移行した(回収率 96.9%)。
[0032] 当該ろ液 95mL (ソャサポニン Ba:145mg、ソャサポニン Bb:457mg)を 24mLまで濃縮 し、析出した沈殿物を酢酸ェチル 5mLと 10mLで 2回洗浄したのち、沈殿物を遠心分 離した。その後、乾燥して精製サポニン 487mg (純度 72.2%、ソャサポニン Ba:107mg、
ソャサポニン Bb:245mg)を得た。
グループ Bサポニンとグループ Aサポニンの含量を、それぞれのァグリコン部分であ るソャサポゲノール Bとソャサポゲノール Aに変換して測定した。すなわち、得られた 精製サポニンを 10%塩酸 Zメタノールで 1時間、加熱還流してソャサポゲノールとし た後、高速液体クロマトグラフィーにて分析したところ、ソャサポゲノール Bの含有割 合は 35.7%、ソャサポゲノール Aの含有割合は 1.7%であった。
[0033] 実施例 6
大豆の脱脂胚軸抽出液力もソャサポニン類を 60%エタノールで抽出した溶液から エタノールを留去し、その残渣に水を加えた後、 90— 93°Cで 16.5時間加熱した。 次に、この加熱処理液 2000mL (固形分: 36.2%、ソャサポニン Ba:5.53g、ソャサボ- ン Bb:18.81g、ソャサポゲノール A含量: 17.40g、ソャサポゲノール B含量: 13.77g、ダイ ジン: 13.76g、グリシチン: 8.26g、ゲ-スチン: 4.50g)に水 2000mLとエタノール 800mLを カロえて、 6N—塩酸で pH2.5に調整し、 3時間撹拌後、遠心分離して沈殿物(ソャサボ ニン B:23.43g)を取得した。一方、ろ液 4196mLには、ソャサポニン Ba:90mg、ソャサポ ニン Bb:821mg、ソャサポゲノール A含量: 12.39g、ソャサポゲノール B含量: 1.62gが移 行したことを確認した。
[0034] 実施例 7
実施例 6で得られた沈殿物(ソャサポニン B:11.73g)を 10%エタノール 3500mLで洗 浄した。この洗浄液 3500mLには、ソャサポニン Ba、ソャサポニン Bbは移行せず、ソャ サポゲノール B:55mg、ソャサポゲノール A:681mgが移行した。一方、洗浄した沈殿物 を 70%エタノール 2750mLに溶解し、生じた不溶物をろ過して除去した。なお、この不 溶物にはソャサポニン Bが 282mg (収率 2.3%)が移行していた。
ろ液 2940mLには、ソャサポニン Ba:2.80g、ソャサポニン Bb:8.78g、ソャサポゲノール B:6.45g、ソャサポゲノール A:1.97gが移行した(回収率 95.0%)。
該ろ液 610 mL (ソャサポニン Ba:581mg、ソャサポニン Bb:1.82g)を lOOmLまで濃縮 し、水 100mlをカ卩えて、 1N—塩酸で pH2.5に調整した。これを遠心分離し、得られた沈 殿物を酢酸ェチル 40mLで洗浄したのち、該沈殿物を遠心分離した。その後、乾燥し て精製サポニン 2.91g (純度 63.0%:ソャサポニン Ba:489mg、ソャサポニン Bb:1.34g)を
得た。
また、沈殿化の廃母液には、ソャサポニン Ba:9.6mg、ソャサポニン Bb:246mg、ソャ サポゲノール B:167mg、ソャサポゲノール A:284mgが移行した。
グループ Bサポニンとグループ Aサポニンの含量を、それぞれのァグリコン部分であ るソャサポゲノール Bとソャサポゲノール Aに変換して測定した。すなわち、得られた 精製サポニンを 10%塩酸 Zメタノールで 1時間、加熱還流してソャサポゲノールとし た後、高速液体クロマトグラフィーにて分析したところ、ソャサポゲノール Bの含有割 合は 36.1%、ソャサポゲノール Aの含有割合は 4.5%であった。結果を表 3に示す。
[0035] [表 3]
[0036] 実施例 8
実施例 4で得られた沈殿物(ソャサポニン B:4.27 g)を 30%エタノール 1400mLで洗 浄した。この洗浄液 1395mLには、ソャサポニン Ba:21mg、ソャサポニン Bb:150mgが移 行した。この洗浄した沈殿物を 70%エタノール 490mLに溶解し、生じた不溶物をろ過 して除去した。ろ液 440mL (固形分: 19.1%)には、ソャサポニン Ba:0.97g、ソャサボ- ン Bb:2.91gが移行した(回収率 91.0%)。一方、生じた不溶物には、ソャサポニン Bが 249mg (収率 5.8%)が移行した。
[0037] 実施例 9
実施例 8で得られたろ液 70mL (ソャサポニン Ba:154mg、ソャサポニン Bb:463g)を 24mLまで濃縮し、析出した沈殿物を酢酸ェチル 5mLと 10mLで 2回洗浄した。次に、 該沈殿物を遠心分離後、乾燥して精製サポニン 171mg (純度 81.9%:ソャサポニン Ba:51mg、ソャサポニン Bb:90mg、回収率 21%)を得た。
グループ Bサポニンとグループ Aサポニンの含量を、それぞれのァグリコン部分であ
るソャサポゲノール Bとソャサポゲノール Aに変換して測定した。すなわち、得られた 精製サポニンを 10%塩酸 Zメタノールで 1時間、加熱還流してソャサポゲノールとし た後、高速液体クロマトグラフィーにて分析したところ、ソャサポゲノール Bの含有割 合は 39.8%、ソャサポゲノール Aの含有割合は 0.6%であった。
[0038] 実施例 10
実施例 6で得られた沈殿物(ソャサポニン B:11.70g)を 30%エタノール 3500mLで洗 浄した。得られた洗浄液 3550mLには、ソャサポニン Ba:36mg、ソャサポニン Bb:313mg が移行した。この洗浄した沈殿物を 70%エタノール 2660mLに溶解し、生じた不溶物 をろ過して除去した。ろ液 2160mLには、ソャサポニン Ba:2.83g、ソャサポニン
Bb:8.65g、ソャサポゲノール B:5.90g、ソャサポゲノール A:0.91gが移行した(回収率 94.5%) o一方、生じた不溶物には、ソャサポニン Bが 359mg (収率 3.0%)が移行した ここで得られたろ液 470mL (ソャサポニン Ba:616mg、ソャサポニン Bb:1.88g)を lOOmLまで濃縮し、水 lOOmLを加えた後、 1N—塩酸で pH2.5に調整した。これを遠心 分離し、得られた沈殿物を酢酸ェチル 40mLで洗浄した。次いで、該沈殿物を遠心分 離後、乾燥して精製サポニン 2.50g (純度 73.5%:ソャサポニン Ba:518mg、ソャサボ- ン Bb:1.32g、回収率 69.5%)を得た。
[0039] グループ Bサポニンとグループ Aサポニンの含量を、それぞれのァグリコン部分であ るソャサポゲノール Bとソャサポゲノール Aに変換して測定した。すなわち、得られた 精製サポニンを 10%塩酸 Zメタノールで 1時間、加熱還流してソャサポゲノールとし た後、高速液体クロマトグラフィーにて分析したところ、ソャサポゲノール Bの含有割 合は 40.6%、ソャサポゲノール Aの含有割合は 2.2%であった。得られた結果を表 4に 示す。
[0040] [表 4]
Ba含量 Bb含量 soya B Soya A Soya B Soya A 総イソフラ
( g ) ( g ) 含量 (g) 含量 (g) 含量割合 含量割合 ホノ m
(%) (% ) (g) 加熱処理 2000ml 5. 53 18. 81 17. 40 1. 9 2. 4 30. 92 ろ液 4196ml 1. 62 12. 39 0. 3 2. 3 25. 81 洗浄液 3550ml 0. 04 0. 31 0. 56 3. 38 2. 1 11. 5 2. 69
70%エタノール 2. 83 8. 65 5. 90 0. 91 20. 1 3. 1 0. 28 抽出ろ液 2160ml
精製サポニン 0. 52 1. 32 1. 01 0. 06 40. 6 2. 2 0. 004
[0041] 実施例 11
実施例 1に示した加熱処理液 2000 mLの一部 200 mLに水 200 mL、エタノール 80 mLを加えて、 6 N塩酸で pH 2.5に調整トし、 2時間撹拌後、遠心分離し沈殿物を取得し た。得られた沈殿物を用いて表 5で示した洗浄溶媒 700mLを用いて洗浄工程を 2回 行った後、沈殿物を表 5で示した抽出溶媒 200mLに溶解し、生じた不溶物をろ過して 除去した。ろ液を濃縮、乾固してソャサポニン B含量を測定した。ソャサポニン B回収 率とソャサポニン B純度を表 5に示した。
[0042] [表 5]
産業上の利用可能性
[0043] 本発明によれば、低コストで、大量生産可能なソャサポニン Bの製造方法が提供さ れる。このソャサポニン Bは、ソャサポゲノール Bの原料として用いられる物質であり、 肝臓障害抑制効果のあるソャサポゲノール Bのメチル誘導体の製造に有用である。