JP5470978B2 - 熱転写受像シート及び熱転写受像シートの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、昇華型熱転写方式による印画に用いられる熱転写受像シート及び熱転写受像シートの製造方法に関する。
熱転写を利用した画像の形成方法として、記録材としての熱拡散型染料(昇華型染料)をプラスチックフィルム等の基材シート上に担持させた熱転写シートと、紙やプラスチックフィルム等の中紙に樹脂層が形成された所謂RCコート紙を基材シートし、その上に受容層等を設けた熱転写受像シートとを互いに重ね合わせてフルカラー画像を形成する熱拡散型転写方式(昇華型熱転写方式)が知られている。この方法は、熱拡散型染料を色材としているためドット単位で濃度、階調を自由に調節でき、原稿通りのフルカラー画像を受像シート上に鮮明に表現することができるので、デジタルカメラ、ビデオ、コンピューター等のカラー画像形成に応用され、銀塩写真に匹敵する高品質な画像が得られている。
上記熱転写受像シートは、基材シート上に複数の層が積層された構成を有するものであるが、このような熱転写受像シートを製造する方法として、例えば、グラビアコート等により、基材シート上に多孔質層や受容層を順次形成する方法が知られている。しかしながら、この方法は各層を順次形成する方法であるため、工程数が多くなるといった問題があった。そのため、より少ない工程数で熱転写受像シートを得るため、例えば、各層を構成する塗工液を上下方向に重ねた状態で基材シート上に塗布するスライドコート法等を用いて、基材シート上に同時に複数の層を形成する方法(同時多層塗工法)が注目を浴びている(例えば、特許文献1)。このような方法は、複数の層を同時に形成することにより、製造効率を著しく向上させることができ、製造コストの削減に資する点等において非常に有利である。また、同時多層塗工法であれば、各層の形成用塗工液を基材シート上に塗工した後の乾燥工程は、一回実施すればよい。したがって、断熱層や受容層を単層ずつ塗工形成する方法に比べて、乾燥時の熱により基材への負担を著しく減少させることができる点でも望ましい。
ところで、熱転写シートを用いた昇華型熱転写方式にて印画物を熱転写受像シートに形成することに関し、「白抜け」あるいは「ざらつき」現象が発生するという問題点がある。「白抜け」あるいは「ざらつき」とは、熱転写受像シートを用いて印画物を作成する際に、熱転写受像シートにおいて印画されるべき領域内に部分的に印画されてない領域が発生することをいう。「白抜け」発生の主要な要因として熱転写受像シート表面に凹凸形状が形成されることが挙げられる。すなわち、昇華型熱転写方式にて熱転写受像シートに印画する際、サーマルヘッド等の加熱手段による加熱にて熱転写シートの染料が熱転写受像シートの所定領域へ転写される際に、熱転写受像シートの表面に凹凸形状が存在すると、その凹凸形状により、熱転写シートとサーマルヘッドとの密着性(追従性)が阻害されて、サーマルヘッドから十分に熱が伝えられない領域が熱転写シートや熱転写受像シートに部分的に発生する。その結果、サーマルヘッドによる熱が十分に伝わらなかった領域に「白抜け」が生じて、印画された画像全体を、「ざらつき」(粒状感)のある画像にしてしまう。
上記「白抜け」あるいは「ざらつき」も問題に対し、種々の改良技術が提案されている。たとえば、下記特許文献2には、多孔質層の中空粒子の含有率を制御して高濃度の印画特性を有し、かつ印画均一性を保つ熱転写受像シートの発明が開示されている。また、特許文献3には、多孔質層の中空粒子の粒子系を制御してざらつきを防止する熱転写受像シートの発明が開示されている。
特開2008−162155号公報 特開2006−88691号公報 特開2007−98693号公報
しかしながら、白抜け、あるいはざらつきの問題は、未だ充分に解決されておらず、より高品質な熱転写による画像の提供が望まれていた。とりわけ、熱転写受像シート製造後、速やかに該熱転写受像シートに印画した際には、形成される画像の白抜けが生じない場合であっても、熱転写受像シート製造後、未印画状態で該熱転写受像シートを比較的長期間、保管した後に印画を行った場合には、顕著に白抜けが発生してしまうことがあり問題であった。例えば、未印画状態で熱転写受像シートを長期間保管後、該熱転写受像シートを用いて単色均一柄を印画した際、数本〜数十本/10mmの長ピッチでランダムに白抜けが発生し、より具合的には、黒ベタ柄を印画した際、5〜20本/10mm程度の周期でランダムに発生する、黒ベタ柄の中に見られるランダム形状の白い抜け柄模様(白抜け)が生じてしまい問題であった。また上記白抜けの問題は、スライドコート法により同時多層塗工法にて形成された熱転写受像シートにおいて特に生じ易い傾向にあった。
本発明者らは、上記問題について鋭意検討した結果、上記白抜け、あるいはざらつきの問題は、基材シートの繊維の目の粗さや表面の平滑性の欠如が、受容層表面に現れることによって発生するという知見を得た。
特に、スライドコート法などによる同時多層塗工法では、基材シート上に形成される各層は、同時に形成される複数の塗工膜にて構成され、その厚みがいずれも薄いため、基材シートの表面形状の凹凸状態がそのまま最表面(受容層表面)に露出し、シートの表面形状の凹凸状態を決定する傾向があることがわかった。
そして、製造された熱転写受像シートを速やかに熱転写に用いた場合には印画される画像の白抜けの問題が生じない場合であっても、当該熱転写受像シートを、比較的高い温度、あるいは低い湿度環境下で一定期間以上保存した場合には、画像に白抜けが発生するということがわかった。この原因としては該条件下での保存によって基材シートが収縮し基材面の平滑性が損なわれ、該凹凸が熱転写時に熱転写受像シートの最表面(受容層表面)に露出してしまうこと、もしくは、基材シートが硬くなることで印画時に印圧ムラを拾いやすくなることが考えられるが、どちらの場合であっても、これらの変化に起因する画質劣化を抑制する可能なことがわかった。
本発明は、上記問題を鑑みなされたものであり、白抜け、あるいはこれによるざらつきの少ない印画物を形成することが可能な熱転写受像シートの提供、特には、比較的高い温度環境の下で一定期間保存された後であっても白抜け、あるいはこれによるざらつきの少ない印画物を形成することが可能な熱転写受像シートを提供することを主な目的とするものである。
即ち、本発明は、
(1)基材シート、中空粒子とバインダーとを含む断熱層、および受容層を、この順で少なくとも備える熱転写受像シートにおいて、上記基材シートが、中紙と、少なくとも該中紙の断熱層積層側面において、曲げ弾性率の異なる樹脂によって形成される2層の樹脂コート層を備えており、上記2層の樹脂コート層を中紙側から第一樹脂コート層、第二樹脂コート層としたときに、上記第二樹脂コート層は、曲げ弾性率が50MPa以上130MPa以下の樹脂から構成されており、且つ、上記第一樹脂コート層を構成する樹脂の曲げ弾性率が、上記第二樹脂コート層の曲げ弾性率よりも大きいことを特徴とする熱転写受像シート、
(2)上記第一樹脂コート層を構成する樹脂の曲げ弾性率が100MPa以上20000MPa以下であることを特徴とする上記(1)に記載の熱転写受像シート、
(3)上記第二コート層が、低密度ポリエチレン系樹脂、または熱可塑性エラストマーから構成されていることを特徴とする上記(1)または(2)のいずれか1つに記載の熱転写受像シート、
(4)上記第二樹脂コート層を構成する低密度ポリエチレン系樹脂の融点が70℃以上であることを特徴とする上記(3)に記載の熱転写受像シート、
(5)上記第一樹脂コート層が、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルペンテン、高密度ポリエチレン、または低密度ポリエチレンのいずれか1つから構成されていることを特徴とする上記(1)乃至(4)のいずれか1つに記載の熱転写受像シート、
(6)上記中紙と上記第一コート層との間、および/または上記第一コート層と上記第二コート層との間に接着剤層が設けられていることを特徴とする上記(1)乃至(5)のいずれか1つに記載の熱転写受像シート、
(7)上記(1)乃至(6)のいずれか1つに記載される基材シート上に、同時多層塗工法により、水系断熱層形成用塗工液、及び水系受容層形成用塗工液を少なくとも同時に塗工して複数の塗膜を同時に形成する塗膜形成工程と、上記塗膜形成工程において積層された塗膜を冷却し、続いて乾燥させる冷却乾燥工程と、を備える、熱転写受像シートの製造方法、
を要旨とするものである。
本発明は、熱転写受像シートを構成する基材シートとして、中紙の少なくとも断熱層積層面側において2層の樹脂コート層が設けられたものが使用される。これら2層の樹脂コート層を、中紙側から第一樹脂コート層、第二樹脂コート層としたときに、少なくとも第二樹脂コート層の構成樹脂が特定の範囲の曲げ弾性率を示すとともに、第一樹脂コート層を構成する樹脂として、上記第二樹脂コート層構成樹脂よりも大きい曲げ弾性率を示す樹脂を選択するものである。樹脂の曲げ弾性率は、樹脂の硬度を認識する指標として理解できるところ、本発明における第一樹脂コート層及び第二樹脂コート層は、硬質層と軟質層とが中紙側から順に積層された関係にある。
かかる構成にすることによって、硬質層と理解される第一樹脂コート層は、中紙表面に存在する繊維目などの凹凸が、受容層表面に表出することを防止する効果を発揮する。一方、軟質層と理解される第二樹脂コート層は、印画時における圧力が熱転写受像シートにかかった際に、クッション性を発揮し、これによって、当該圧力により中紙表面に存在する凹凸が受容層表面表出することを防止し、また受容層表面に若干の凹凸があった場合であっても、インキの転写ムラを良好に防止することが可能である。このように望ましいクッション性を発揮させるために求められる第二樹脂コート層の曲げ弾性率は、50MPa以上130MPa以下である。
また本発明における基材シートは、上述のとおり、中紙、第一樹脂コート層、第二樹脂コート層の順で構成される。そして、これらの構成の中で最も受容層側に位置する第二樹脂コート層を、低密度ポリエチレン系樹脂、または熱可塑性エラストマーで形成することにより特に本発明の所期の問題が良好に解決されるため望ましい。また上記第二樹脂コート層を構成する樹脂として融点が70℃以上の低密度ポリエチレン系樹脂によって構成する場合には、印画時における転写熱がかかった際にも、十分な耐久性を確保されるとともに、製造工程上においても有利性が発揮される。即ち、上記第二樹脂コート層を形成する樹脂として融点が70℃以上の低密度ポリエチレン系樹脂を選択することによって、樹脂コート層を中紙表面に押出積層法により積層させる場合に、冷却ロール表面に該樹脂コート層が接着することがなく好ましい。
[熱転写受像シートについて]
本発明の熱転写受像シートは、基材シート、中空粒子とバインダーとを含む断熱層、および受容層を、この順で少なくとも備える熱転写受像シートにおいて、上記基材シートが、中紙と、少なくとも該中紙の断熱層積層側面において、順に、第一樹脂コート層、第二樹脂コート層を備えており、上記第二樹脂コート層は、曲げ弾性率が50MPa以上130MPa以下の樹脂から構成されており、且つ、上記第一樹脂コート層を構成する樹脂の曲げ弾性率が、上記第二樹脂コート層の曲げ弾性率よりも大きいものである。即ち、中紙側から、硬質樹脂層、軟質樹脂層を順に設けることにより、本発明の所期の問題を解決するものである。また本発明は、上述のとおり基材シート上に、少なくとも断熱層と受容層とをこの順で積層することにより構成されるが、基材シートと断熱層との間、あるいは断熱層と受容層との間には、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、適宜、任意の層をさらに設けることができる。以下に、本発明の熱転写受像シートについて、基材シート、および各層について順に説明する。
尚、本発明および本明細書において、第一樹脂コート層あるいは第二樹脂コート層を構成する樹脂の曲げ弾性率(MPa)、融点(DSC)、硬度(デュロ硬度またはロックウエル硬度)、密度はいずれも、樹脂コート層を構成する樹脂が一種類である場合には、当該樹脂自体の物性値を意味し、また2以上の樹脂を混合した混合樹脂により樹脂コート層を構成する場合には、それら各樹脂の当該物性値に各樹脂の配分比率を乗じた値の和を配分比率の総和で除した値を算出して得られた値を、樹脂コート層を構成する樹脂(混合樹脂)の物性値とする。したがって、例えば第二樹脂コート層を構成する樹脂の一部に融点が70℃未満のものが含まれていても、これと混合する他の樹脂の融点が充分に高く、上述のとおり算出した場合の混合樹脂としての融点が70℃以上であれば、本発明における第二樹脂コート層を構成する樹脂の融点は70℃以上と理解される。
また、本明細書において、熱転写受像シートの保存は、温度60℃、相対湿度(RH)5〜10%で4日間保存の条件を目安とする。また、上記保存条件における保存を、単に「特定条件下での保存」ということがある。当該保存条件は、実際の樹脂コート紙の保存時における条件を考慮して想定したものである。
(基材シート)
本発明に用いられる基材シートは、断熱層および受容層、あるいはさらに追加される任意の層を支持する機能を有するものであり、少なくとも中紙と、該中紙の断熱層積層面側に曲げ弾性率の異なる樹脂を用いて形成される第一樹脂コート層と第二樹脂コート層とを備えるものである。上記基材シートの厚みは特に限定されるものではないが、一般的には、100μm以上250μm以下、好ましくは150μm以上200μm以下の中紙を用い、少なくとも中紙の断熱層積層面側に形成される第一樹脂コート層および第二樹脂コート層、あるいはさらに任意で設けられる、中紙の上記断熱層積層面側とは反対側(以下において単に「裏面側」ともいう)に設けられる樹脂コート層(以下において「裏面側樹脂コート層」ともいう)などを備えて、全体の厚みが決定される。尚、中紙の裏面側に形成される樹脂コート層は、断熱層積層面側に形成される第一樹脂コート層、あるいは第二樹脂コート層と同様の樹脂により形成してもよく、あるいは樹脂硬度に限定されず、従来公知の所謂レジンコート紙における樹脂コート層と同様の内容で形成されていてもよい。
中紙:
本発明に用いられる中紙は、従来公知の、所謂レジンコート紙の中紙として用いられるものを適宜選択して使用することができる。一般に中紙は、中紙中に4〜10重量%程度の水分を含有している。このような中紙を例えば相対湿度が0〜10%程度の低湿度雰囲気中に放置すると、中紙の種類によっては中紙中の水分濃度が低下して、中紙表面に中紙の繊維目が浮かび上がるなどの原因により凹凸が生じる場合がある。また、低湿環境における水分濃度の低下は、硬度の増大として観察される場合もある。このように、中紙表面に凹凸が存在すると、従来は、熱転写の際の印画圧力により、当該凹凸が受像シート表面まで浮き彫りになり、特に凹部において、あるいは凸部の周辺域において印画圧力が設定どおりにはかかからず、その部分においてインキの転写状態が不良となり白抜け(ざらつき)が発生するという問題があった。したがって、作製された熱転写受像シートを速やかに熱転写に供与した場合には、印画される画像に白抜けが観察されなくても、同様に作成された熱転写受像シートを特定条件下で保存し、その後に熱転写に供与した場合に、印画される画像に白抜けが発生してしまうという問題が発生するのである。
一方、本発明においても、中紙は、従来公知のものを使用するために、特定条件下における保存後には、上述のとおりその表面に微細な凹凸が発生し、あるいは水分量の低下による硬度の増大が生じうる可能性がある。しかしながら、本発明における基材シートには、上記中紙の少なくとも断熱層積層面側に、第一樹脂コート層と第二樹脂コート層とを有し、第二樹脂コート層が曲げ弾性率50MPa以上130MPa以下という軟質な樹脂で構成されるとともに、第一樹脂コート層が第二樹脂コート層を構成する樹脂の曲げ弾性率よりも大きい曲げ弾性率を示す樹脂で構成されることから、たとえ中紙の表面に凹凸が存在していたとしても、印画時に第一樹脂コート層の硬質性から上記凹凸が受容層側に表出することを良好に防止するとともに、第二樹脂コート層のクッション性により印画時の圧力が適切に吸収されて、印画ムラ、即ち白抜けが良好に防止される。したがって、本発明は、特定条件下での保存の有無に関わらず、画像鮮度に優れた印画画像を形成することができる熱転写受像シートを提供することができる。尚、本発明において形成される断熱層には、中空粒子が含有されていることから、上記断熱層においてもクッション性が発揮され、上述する白抜けの防止に良好に作用する。
上記中紙の具体的な例としては、例えば、天然パルプ、合成パルプ、それらの混合物から抄紙されるパルプ紙等を挙げることができ、中でも樹皮を取り除いた木材の幹を小片(チップ)化したものを機械的、半化学的、化学的に処理して製造される化学パルプ(硫酸塩パルプ、又は亜硫酸塩パルプ)を主成分とする紙を用いることができる。中紙には、例えば、高級脂肪酸、アルキルケテンダイマー等のサイズ剤;スターチ等の紙力増強剤;炭酸カルシウム、酸化チタン等の白色顔料;蛍光増白剤、柔軟化剤、水分保持剤、分散剤等を適宜添加することができる。又、漂白処理を行なうことにより、白色度を向上させることもできる。更に中紙としては、上質紙、中質紙に限らず、写真印画紙用支持体(RCペーパーの中紙)を使用することができる。また、表面に機能層を塗布し印刷適正、見栄えを改善したコート紙、アート紙、キャストコート紙、のほか、アイボリー、コートアイボリーといわれる白板紙、高級白板紙を使用することもできる。
上記中紙は、公知の方法によって作製することができるが、中紙はカレンダー処理されたものが好ましい。中紙にカレンダー処理をした樹脂コート紙は表面平滑度が向上するので、このような処理をした樹脂コート紙から得られる熱転写受像シートは光沢感が向上する。中紙の紙密度は、通常0.7〜1.2g/cm(JIS P 8118)程度であり、剛度は200〜3000mg(JIS P 8143)程度である。又、中紙の秤量は、70〜300g/mが好ましく、120〜240g/mがより好ましい。
第一樹脂コート層:
本発明における第一樹脂コート層は、後述する第二樹脂コート層を構成する樹脂の曲げ弾性率よりも大きい曲げ弾性率を示す樹脂により構成される。第一樹脂コート層の存在は、中紙と第二樹脂コート層との間に、硬質の樹脂層が設けられることを意味する。中でも、第一樹脂コート層を構成する樹脂の曲げ弾性率が、100MPa以上20000MPa以下である場合には、第一樹脂コート層に求められる作用、即ち、中紙表面に凹凸が存在する場合であっても、当該凹凸が受容層表面側まで表出することを防止するという作用を充分に発揮することができるため、望ましい。尚、本発明、および本明細書において曲げ弾性率とは、JIS K 7171に基づき測定されるものである。
第一樹脂コート層を構成する樹脂は、上述のとおり求められる曲げ弾性率が示される樹脂であれば特に限定されるものではないが、具体的な例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、高密度ポリエチレン(HDPE)、メチルペンテンポリマー(PMP)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、などの樹脂を1種、あるいは2種以上の組み合わせで好ましく使用することができる。直鎖状低密度ポリエチレンに関しては、用いる触媒により大きく2つの重合方法があることが知られている。一つはチーグラー・ナッタ(Ziegler−Natta)触媒を用いた気層法直鎖上ポリエチレン(zn−LLDPE)であり、もう一つはメタロセン触媒を用いた直鎖状ポリエチレン(m−LLDPE)である。この2種類は、曲げ弾性率特性が大きく異なり、第一樹脂コート層に好ましく使用されるのは、チーグラー・ナッタ触媒を用いた気相法直鎖状ポリエチレンである。
また第一樹脂コート層を構成する樹脂の市販の例としては、三井化学(株)製PMP(TPX:DX820M、DX820、DX310、MX021、MX004、MX002)、東洋紡績(株)製 PET(バイロン:SI−173、RN9600、RN9300)、日本ポリエチレン(株)製 高密度ポリエチレン(ノバテックHD:HJ360、HJ362N、HJ580、HJ490)、日本ポリエチレン(株)製 低密度ポリエチレン(ノバテックLD:LC561、LC600A、LC522)、日本ポリエチレン(株)製 気相法直鎖上程密度ポリエチレン(ノバテックLL:UJ370、UJ580)などを上げることができる。
特に第一樹脂コート層を構成する樹脂として、PETあるいはPMPを使用した場合には、特に、曲げ弾性率の高い第一樹脂コート層を形成することができ、本発明の所期の目的に対し非常に優れた性質を示し、また後述する実施例において示す「印画抜け評価」においても非常に優れた性質を示すため望ましい。
一方、第一樹脂コート層を構成する樹脂として使用可能なHDPEあるいはLDPEは、一般的に中紙との接着性が良好であり、また第二樹脂コート層との接着性においても良好であるという特質を有する。したがって、中紙と第一樹脂コート層との間、あるいは第一樹脂コート層と第二樹脂コート層との間に接着剤層を設けずとも、接着性の良好な基材シートを形成することができる。また接着剤層の形成が不要である場合には、第一樹脂コート層及び第二樹脂コート層を共押出しにより同時に中紙上に形成することもできる。したがって、これらの樹脂の使用は、製造上の有利性あるいはコストの観点から、非常に有利である。
上記第一樹脂コート層の厚みは、特に限定されず、他の構成層や使用される中紙の種類、あるいは、予定される印画条件などによって適宜決定することができる。好ましくは、1μm以上30μm以下、特に好ましくは10μm以上20μm以下とすることによって、より良好に中紙表面に存在する凹凸が受容層表面に表出することを防止する、とともに、コスト、カール等を調整することができ、望ましい。
上記第一樹脂コート層は、溶融押出成形方法により中紙表面に直接または間接に、積層形成される(以下、「押出積層法」ともいう)。上記押出積層法は、一般的に知られる方法を適宜選択で採用することができる。即ち、繰り出される中紙表面上に、Tダイ等より押出される溶融樹脂を押出しし、その後、冷却ロールにて基材と樹脂を密着させるとともに樹脂を冷却して樹脂コート層形成し、これを巻取りロールにて巻き取ることで中紙表面に第一樹脂コート層を形成することができる。また、中紙の裏面側にも樹脂コート層を形成する際には、さらに中紙の裏面側に上述と同様の方法で樹脂コート層を形成することができる。尚、中紙の両面に樹脂コート層を形成する際には、どちらの面側から樹脂コート層を形成してもよい。
第二樹脂コート層:
本発明における第二樹脂コート層は、前述する第一樹脂コート層を構成する樹脂の曲げ弾性率よりも小さい曲げ弾性率を示す樹脂により構成される。より具体的には、第二樹脂コート層は、曲げ弾性率が50MPa以上130MPa以下の樹脂を用いて構成される。第二樹脂コート層を構成する樹脂の曲げ弾性率を50MPa以上とすることにより、基材シートの保存による中紙の変動による印画部への影響を充分に抑制することができ、また、中紙の変動自体を抑制することができる。一方、130MPaを上回る曲げ弾性率の場合には、基材シートの受容層側の最表面層としては柔軟性が充分に発揮されず、所望のクッション性を得られないばかりか、例えば受容層表面に微小なゴミが存在した状態で印画した場合に、当該ゴミ及びこの周囲に適切にインキが転写されず、点状の印画抜けが発生する恐れがある。
第二樹脂コート層を構成する樹脂の融点は特に限定されないが、特に低密度ポリエチレン系樹脂を用いる場合には、融点が70℃以上の低密度ポリエチレン系樹脂を使用することにより、基材シートの耐熱性が高められ、印画時における転写熱による性能の損失などが良好に防止されることから望ましい。また、中紙に第二樹脂コート層を押出し成形する際に、基材面に押出された溶融樹脂(第二樹脂コート層形成用樹脂)が冷却ロールに当接した向きで、冷却され、巻き取られる際に、冷却ロールに溶融樹脂が接着することが良好に防止されるため、製造上も有利である。尚、本発明及び本明細書において樹脂の融点という場合には、当該融点は、JIS K 7121に基づいて計測される、示差走査熱量測定(DSC)における融点を意味する。
第二樹脂コート層の存在は、第一樹脂コート層のさらに上面側に設けられる層であって、望ましくは基材シートの最表面側に位置する層として、軟質の樹脂層が設けられることを意味する。このように、中紙の断熱層積層面側において、硬質の樹脂層と軟質の樹脂層とが順に設けられることによって、本発明の所期の問題が非常に良好に解決され、とりわけ、特定の保存条件下において保存された後に熱転写に供与された場合であっても、白抜けのない、高品質画像を提供することができる。
第二樹脂コート層を形成可能な樹脂は、曲げ弾性率が50MPa以上130MPaであれば特に限定されるものではないが、低密度ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂や、α−オレフィンと共重合可能なモノマーを共重合させた共重合体、また、熱可塑性エラストマー(TPE)などの樹脂を1種、あるいは2種以上の組み合わせで使用することできる。低密度ポリエチレン系樹脂としては、曲げ弾性率が50MPa以上130MPaであれば特に限定されないが、高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)、メタロセン直鎖状低密度ポリエチレン(m−LLDPE)などを好ましく使用することができる。
高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)は、塊状重合法、あるいはICI法と呼ばれる方法で生成される樹脂であり、エチレンを1000から4000気圧100〜350℃の条件下で多段ガス圧縮機を用いて重合することにより得られる。上述のとおり生成されLDPEは、多くの長鎖分岐や短鎖分岐を持つLDPEとなり、比較的柔軟な、ポリエチレンである。
一方、上記メタロセン直鎖状低密度ポリエチレンとは、従来用いられていたチーグラー系触媒に代わり、メタロセン触媒を用いて生成されるポリマーであり、三井石油法、デュポン法、ダウ法とも呼ばれる液相重合法で得られる直鎖状低密度ポリエチレンである。メタロセン触媒を用いて生成される直鎖状低密度ポリエチレンは、従来の気相法で生成される直鎖状低密度ポリエチレンに比べ、柔軟で、曲げ弾性率の低いポリエチレンが得られるため好ましく使用可能である。ただし、従来の気層法直鎖状低密度ポリエチレンであっても、適度な曲げ弾性率を有するものであれば、第二樹脂コート層構成樹脂として好ましく使用可能である。
また上記低密度ポリエチレン系樹脂は、エチレンの単独重合体だけではなく、エチレンと他のα―オレフィンとの共重合体であってもよい。α―オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、1−オクテン、1−ノネン、4−メチルペンテン等が上げられる。これらα−オレフィンを1種類、もしくは2種類以上共重合させた重合体、さらにはα−オレフィンと共重合可能な他のモノマーを1種類、もしくは2種類以上共重合させた共重合体を使用することができる。例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレンーメチルアクリレート共重合体等を使用することができる。
本発明において使用可能なポリエチレン系樹脂の市販品の例としては、例えば、日本ポリエチレン(株)製カーネルKC573、KC570Sを単独で使用することができる。あるいは、たとえば、曲げ弾性率の異なる樹脂を混合して所望の曲げ弾性率を示す樹脂として使用することもできる。たとえば、市販品の樹脂の混合の例として、日本ポリエチレン株式会社製カーネルKC573とカーネルKC650T、あるいは同様にKC573とKS340Tとを適切な割合で混合して用いることもできる。その他の例として、日本ポリエチレン(株)製 低密度ポリエチレン(ノバテックLD:LC600A、LC607K、LC604)を単独で使用することができる。これらLDPEを、もしくは必要に応じて、その他の曲げ弾性率120以上の樹脂を適当な割合で混合して使用することもできる。さらには、LDPEとメタロセンLLDPEとを適切な割合で混合して使用することもできる。
本発明において使用可能な熱可塑性エラストマー樹脂としては、従来公知のスチレン系、オレフィン系、ジエン系、塩化ビニル系、ウレタン系、エステル系、アミド系、フッ素系などの熱可塑性エラストマーが使用可能である。オレフィン系TPE(TPO)としては、PPとEPDM(エチレン−プロピレン−ジエンゴム)の単純ブレンドが知られているが、これらの混合に際して架橋剤を加えることでPPマトリックス中に完全架橋、あるいは部分架橋させたEPDM粒子をミクロ分離させることで生成される「動的架橋TPO」が好ましく用いられる。EPDMの代わりにEPM(エチレン−プロピレンゴム)、NBR(アクリロニトリル・ブタジエンゴム)、CR(クロロプレンゴム)、IIR(イソブテン・イソプレンゴム)を使用したTPOも適度な曲げ弾性率を有せば、使用可能である。市販品の例としては、ホモポリプロピレンにゴム成分を微細分散させて得られた熱可塑性エラストマーである、三井化学(株)製のゼラスMC707、を挙げることができる。
上記第二樹脂コート層の厚みは、特に限定されず、他の構成層や使用される中紙の種類、あるいは、予定される印画条件などによって適宜決定することができる。好ましくは、1μm以上50μm以下、特に好ましくは10μm以上20μm以下とすることによって、より良好に中紙表面に存在する凹凸が受容層表面に表出することを防止する、とともに、コスト、カール等を調整することができ、望ましい。
第二樹脂コート層の形成方法は、第一樹脂コート層と同様に、押出積層法により第一樹脂コート層の表面に直接または間接に設けることができる。第二樹脂コート層は、既に形成された第一樹脂コート層の上面側に、押出積層法により形成してもよいし、あるいは、中紙の断熱層積層面側において、共押出積層法により、第一樹脂コート層と第二樹脂コート層とを同時に設けることもできる。
上述において、本発明における基材シートの構成として、中紙、第一樹脂コート層、第二樹脂コート層について順に説明したが、本発明の基材シートは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、さらに任意で他の構成層を設けることもできる。たとえば、中紙の裏面側において、裏面側樹脂コート層を設けてもよい。裏面側樹脂コート層は、一般的に知られるレジンコート紙(RCペーパー)の、裏面側に設けられる樹脂コート層と同内容の樹脂で構成することができる。たとえばポリエチレン系樹脂などを中紙の裏面側に押出積層法により積層形成することによって裏面側樹脂コート層を設けることができる。
また中紙と第一樹脂コート層との接着性を上げるために中紙と第一樹脂コート層との間に接着剤層を設けてもよい。また第一樹脂コート層と第二樹脂コート層との密着性を上げるために接着剤層を設けでもよい。また同様の目的で、第一樹脂コート層を形成する前の中紙表面、および/または第二樹脂コート層を形成する前の第一樹脂コート層の表面に、易接着処理剤を塗布し、あるいは、プラズマ処理、コロナ処理、オゾン処理、フレーム処理等の従来公知の易接着処理を施すことも、必要に応じておこなってよい。
上記接着剤層、あるいは易接着剤処理剤により形成される層の膜厚みは、特に限定されないが、乾燥状態において0.1〜30μm程度、好ましくは1.0〜5.0μmとすることで、充分に中紙と第一樹脂コート層との密着性、第一樹脂コート層と第二樹脂コート層との密着性をあげることができる。特に、第一樹脂コート層の構成樹脂が、比較的曲げ弾性率の高い樹脂である場合には、接着剤層の存在により、中紙と樹脂コート層との接着性が良好に維持されるため、基材シートにおいて接着剤層を設けることが好ましい。
基材シート中に接着剤層を設ける場合には、まず、溶媒へ分散または溶解した接着剤を中紙表面、あるいは第一樹脂コート層表面へ塗布し乾燥させて接着剤層を形成した後、第一樹脂コート層あるいは第二樹脂コート層を形成するための樹脂を該接着剤層面に押し出しコートする。そして、巻き上げ部にて巻取った後、必要に応じて30〜120℃で数時間〜数日間エージングすることで、接着剤層を硬化させるとよい。中紙、並びに、最終的に形成される熱転写受像シートへの悪影響がないようできるだけ低温で硬化できる接着剤が特に好ましく使用される。
上記接着剤層を構成する材料あるいは易接着処理剤としては、従来公知の熱硬化系接着剤、または紫外線・電子線などの電離放射線で硬化する接着剤、熱可塑性接着剤、およびそれらの複合型接着剤のいずれも使用することができる。
例えば、上記熱硬化系接着剤としては、フェノール樹脂、レゾルシン樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、(2液硬化型)ポリウレタン樹脂、ポリエステルウレタン系接着剤、ポリエ−テルウレタン系接着剤、などを使用することができる。なかでも2液硬化型ウレタン系接着剤が好適である。
また、上記熱可塑性接着剤としては、ポリ酢酸ビニル樹脂、塩酢ビ共重合樹脂、エチレン・酢ビ共重合樹脂、アクリル樹脂、アクリルエステル樹脂、メタクリル樹脂、メタクリルエステル樹脂、並びにそれらの共重合樹脂、エチレン・アクリル樹脂、シアノアクリレート樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ナイロン、天然ゴム、合成ゴム等の接着剤を使用することができる。これらの接着剤は単独で使用しても複数混合して使用しても良い。
(断熱層)
本発明における断熱層は、上述する基材シートと受容層との間に形成されるものであり、少なくともバインダー樹脂及び中空粒子を含んで構成され、好ましくは冷却ゲル化剤を含んで構成されるものである。上記断熱層は、本発明の熱転写受像シートを用いて画像を印画する際に、サーマルヘッドから受容層に加えられた熱が、基材シート等へ伝熱することにより基材シートが損傷することを防止するための断熱性を有する層である。また、サーマルヘッドからの熱が、印画時の染料の昇華に効率よく使用されるための高効率な熱利用の観点からも、断熱層を設けることが望ましい。更に、断熱層に中空粒子を含有させることによりクッション性を発揮させることが可能となるので、中空粒子が含有された断熱層が設けられた熱転写受像シートは、画像形成時における濃度ムラやハイライト部の白抜けが抑制されて、印画特性が向上する。
断熱層が備える断熱性は、断熱層の厚み、あるいは断熱層内に含有される中空粒子の量に主として起因する断熱層の空隙率などによって、任意に調整することができる。この断熱層の断熱性は、本発明の熱転写受像シートの用途等に応じて適宜調整することができる。
断熱層に充分な断熱性の付与と「白抜け」の発生を低減するという観点から、断熱層の厚みは、10〜40μmの範囲内であることが好ましい。またこのとき、上記断熱層の密度は、0.1〜0.8g/cmが好ましく、0.2〜0.7g/cmがより好ましい。
また、断熱層に充分な断熱性を与えるという観点から、断熱層の空隙率は、15〜80%の範囲内であることが好ましい。尚、該空隙率は、「(中空粒子の空隙率)×(断熱層における中空粒子の含有率)重量比」で示される値である。
本発明に用いられる断熱層は、単一の層からなる構成を有するものであってもよく、あるいは、複数の層が積層された構成を有するものであってもよい。ここで、複数の層が積層された構成を有する断熱層としては、同一組成の層が積層された構成を有するものであってもよく、あるいは、異なる組成の層が積層された構成を有するものであってもよい。本発明に用いられる断熱層は、組成の異なる2層が積層された構成を有するものを使用することができる。このような構成とすることにより、さらに機能的な断熱層を得ることができるからである。
本発明に用いられる断熱層が2層構造である場合の一例としては、上記断熱層が、基材シート側から、中空粒子を含有する断熱層と、及び上記中空粒子よりも中空率の小さな中空粒子を含有する断熱層とが積層された構成を有するものを挙げることができる。断熱層としてこのような2層構造よりなるものを用いることにより、印画時における濃度ムラやハイライト部の白抜け防止といった印画特性の向上効果がさらに発揮される。
上記断熱層中に含まれる中空粒子は、上述のとおり断熱層に断熱性及びクッション性を付与する機能を有するものである。したがって、上記中空粒子としては、断熱層に所望の断熱性を付与できるものであれば特に限定されるものではなく、発泡粒子を用いてもよく、あるいは、非発泡粒子を用いることもできる。また、中空粒子として用いられる上記発泡粒子は、独立発泡粒子であってもよく、あるいは、連続発泡粒子であってもよい。さらに、本発明に用いられる中空粒子は、樹脂等から構成される有機系中空粒子であってもよく、ガラス等から構成される無機系中空粒子であってもよい。また、上記中空粒子は、架橋中空粒子であってもよい。中空粒子自体の特性として、断熱性とともに、クッション性を有するものは好ましく、また、中空粒子単独としてはクッション性をそれほど有していなくても、この断熱層に使用するバインダーを含めた層としてクッション性を有しているものは、好ましく使用される。
上記中空粒子を構成する樹脂としては、例えば、架橋スチレン−アクリル樹脂等のスチレン系樹脂、アクリロニトリル−アクリル樹脂等の(メタ)アクリル系樹脂、フェノール系樹脂、フッ素系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエーテル系樹脂等を挙げることができる。
上記中空粒子の平均粒径は、中空粒子を構成する樹脂の種類等に応じて、断熱層に所望の断熱性を付与できる範囲であれば特に限定されるものではないが、通常、0.1〜15μmの範囲内であることが好ましく、特に0.2〜10μmの範囲内であることが好ましい。平均粒径が小さすぎると、中空粒子の使用量が増えコストが高くなり、平均粒径が大きすぎると、平滑な断熱層を形成することが困難になるからである。
本発明において、断熱層に含まれる中空粒子の量としては、所望の断熱性を有する断熱層を得ることができれば特に限定されるものではないが、断熱層に含まれる全固形分を100重量%としたときに、断熱層を構成する中空粒子とバインダー樹脂の割合[(中空粒子/バインダー樹脂)の重量比]が60/40〜90/10であることが好ましく、なかでも65/35〜80/20であることが好ましい。中空粒子の含有量が少なすぎると、断熱層における空隙が少なくなり、充分な断熱性が得られない場合があり、中空粒子の含有量が多すぎて後述する断熱層形成用バインダー樹脂の重量比が小さくなりすぎると、断熱層が脆くなり層の成形性が悪くなる虞があるからである。
次に、本発明における断熱層に含有されるバインダー樹脂について述べる。上記バインダー樹脂としては、通常、水系溶媒に分散あるいは溶解可能な所謂、水系樹脂が用いられる。
このような水系溶媒に分散可能な樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸系樹脂、セルロース誘導体系樹脂、または、ポリエーテル系樹脂等を挙げることができる。
また、通常、水系溶媒に溶解可能な樹脂としては、たとえば、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、プルラン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、デキストラン、デキストリン、ポリアクリル酸及びその塩、寒天、κ−カラギーナン、λ−カラギーナン、ι−カラギーナン、カゼイン、キサンテンガム、ローカストビーンガム、アルギン酸、アラビアゴム、特開平7−195826号公報及び特開平7−9757号公報に記載のポリアルキレノキサイド系共重合ポリマー、水溶性ポリビニルブチラール、あるいは、特開昭62−245260号公報に記載のカルボキシル基やスルホン酸基を有するビニルモノマーの単独重合体や共重合体等を挙げることができる。
また、上記樹脂の2種類以上を組み合わせて用いても良い。とりわけ、水系溶媒に分散可能な樹脂と、水系溶媒に溶解可能な樹脂を合わせて使用することで、例えば、分散性と造膜性を両立できる等のメリットがあり好ましい。また、クッション性、密着性をあげるために、これらの特性に優れたバインダー、すなわち、比較的低融点、低Tgの材料を混合することが好ましい。また、上記バインダー樹脂として、例えばゼラチン、ポリビニルアルコール、寒天、κ−カラギーナン、λ−カラギーナン、ι−カラギーナン等の材料を用いる場合には、これらバインダー樹脂は、冷却ゲル化機能も発揮し得るため、別途、後述する冷却ゲル化剤を用いずとも、同時多層塗布方法において良好に製造可能である。
次に、断熱層に用いられる冷却ゲル化剤について説明する。本発明に用いられる冷却ゲル化剤は、冷却されることによりゲル化する性質を有するものである。断熱層への添加は任意であるが、熱転写受像シートを同時多層塗布方法により成形する際には、後述する受容層に冷却ゲル化剤を含有させると共に、断熱層にも冷却ゲル化剤を含有させる必要がある。尚、断熱層に用いられる冷却ゲル化剤の種類については、後述する受容層に用いられる冷却ゲル化剤と同様であるため本段落では割愛する。
本発明において、断熱層中に含有される中空粒子と、冷却ゲル化剤との割合は、所望の断熱性を有する断熱層を形成することができれば特に限定されるものではない。なかでも、本発明においては、冷却ゲル化剤が、断熱層形成用塗工液中の固形分100重量部に対して、重量換算で5〜50重量部の範囲内であることが好ましく、特に10〜40重量部の範囲内であることが好ましく、さらに12〜40重量部の範囲内であることが好ましい。中空粒子と冷却ゲル化剤の含有比が上記範囲内であることにより、断熱性に優れた断熱層を形成することができるからである。
本発明に用いられる断熱層は、上述する中空粒子、およびバインダー樹脂、あるいはさらに冷却ゲル化剤を含み、これに加えて、必要に応じて任意の添加成分を含むものであってよい。上記任意の添加成分として断熱層に含有させることができるものとしては、ノニオン系シリコーン等の界面活性剤、イソシアネート化合物等の硬化剤、濡れ剤、および、分散剤等を挙げることができる。
(受容層)
本発明における受容層は、染料染着性を備える樹脂材料(受容層形成用樹脂)を含む層であり、熱転写にて転写受像シートが印画される際に、熱転写シートに担持される染料が熱転写受像シートの所定領域に転写され、その染料が熱転写受像シートに担持された状態となり(すなわち、熱転写受像シートが染着され)、熱転写受像シートに画像を形成する機能を有するものであれば特に限定されるものではない。
上記受容層形成用樹脂としては、染料染着性を有するものであれば特に限定されるものではない。なかでも本発明に用いられる上記受容層形成用樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が20℃以上であるものが好ましく、30℃以上であるものがより好ましく、40℃以上であるものがさらに好ましい。また、上記受容層形成用樹脂はガラス転移温度が120℃以下であるものが好ましい。このような範囲のガラス転移温度を有する受容層形成用樹脂を用いることにより、特に耐熱性や離型性に優れた熱転写受像シートを得ることができるからである。
なお、本明細書において、ガラス転移温度(Tg)については剛体振り子型表面物性試験機(A&D社製 RPT3000W、昇温速度3℃/分)を用いて、DMA法による弾性率測定を行い、ピークが確認できる地点をTgとした。
受容層形成用樹脂は、水系溶媒に分散・溶解可能な樹脂(水性樹脂)、有機溶媒に分散・溶解可能な樹脂(溶剤系樹脂)のいずれでも使用可能であるが、水性樹脂であることが好ましい。上記受容層形成用樹脂が上記水性樹脂であることにより、本発明の熱転写受像シートを製造する際に、断熱層と上記受容層とを水系溶媒のみを用いて、基材シート上に同時に塗布することが可能になるからである。
ここで、本明細書において、「水系溶媒」とは、水を主成分とする溶媒をいう。水系溶媒における水の割合は、通常60重量%以上であり、好ましくは70重量%以上であり、より好ましくは80重量%以上である。上記水以外の溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール等のアルコール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン等のグリコール類;酢酸エチル、酢酸プロピル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類等、水との共存下で容易に相分離しないものを例示することができる。また、「有機溶媒」は、水との共存下で相分離する有機化合物でなる液体を挙げることができる。
(受容層1:水溶媒系受容層材料)
受容層形成用樹脂を構成する水性樹脂として、所望の水系溶媒に所定量を分散・溶解可能な水性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸系樹脂、セルロース誘導体系樹脂、または、ポリエーテル系樹脂等を挙げることができるが、中でも、染料染着性、耐熱性、耐光(候)性、離型性等の点から塩化ポリビニル系樹脂又はスチレン−アクリル系共重合体を用いることが好ましい。尚、受容層形成用樹脂としては、上記にて挙げたような各種樹脂を1種のみ用いてもよく、単量体組成、平均分子量等を異にする樹脂を2種以上用いてもよい。
上記塩化ポリビニル系樹脂としては、例えば、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル/アクリル系化合物共重合体、エチレン/塩化ビニル/アクリル酸エステル共重合体、エチレン/酢酸ビニル/塩化ビニル共重合体等を、好ましいものとして挙げることができる。
なお、上記塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体は、塩化ビニルと酢酸ビニルとからなる共重合体であれば特に限定されず、塩化ビニルおよび酢酸ビニルに加えてこれら必須単量体と共重合可能な単量体を少量重合したものであってもよい。
上記塩化ビニル/アクリル系化合物共重合体は、塩化ビニルとアクリル系化合物とからなる共重合体であれば特に限定されず、塩化ビニルおよびアクリル系化合物に加えてこれら必須単量体と共重合可能な単量体をも少量共重合したものであってもよい。なお、本明細書において、「アクリル系化合物」とは、(メタ)アクリル酸および/またはそのアルキルエステルを意味する。
上記アクリル系化合物としては、例えば、アクリル酸;アクリル酸カルシウム、アクリル酸亜鉛、アクリル酸マグネシウム、アクリル酸アルミニウム等のアクリル酸塩;メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、n−ステアリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート等のアクリル酸エステル;メタクリル酸;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸シクロヘキシル、ジメタクリル酸トリエチレングリコール、ジメタクリル酸1,3−ブチレン、トリメタクリル酸トリメチロールプロパン等のメタクリル酸エステル等を挙げることができる。
また上記スチレン−アクリル系共重合体は、少なくともスチレン、及びアクリル系化合物を原料モノマーとして共重合反応により形成される共重合体であれば特に限定されず、スチレンとアクリル系化合物に加えてこれら必須単量体と共重合可能なモノマーをも少量共重合させたものであってもよい。尚、「アクリル系化合物」とは、上記した通りである。
スチレン−アクリル系共重合体中のスチレン単位とアクリル系化合物単位のモル比([スチレン単位]/[アクリル系化合物])は60〜80/40〜20が好ましい。スチレン−アクリル系共重合体中のスチレン単位が60モル%以上で比較的高いガラス転移温度(Tg)となるので、このような共重合体を含有する受容層は耐熱性に優れると共に、耐光性が向上する。
上述する受容層には、受容層形成用樹脂以外にも任意の添加剤を含有させることができる。任意の添加剤の例としては、冷却ゲル化剤、離型剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、フィラー、顔料、帯電防止剤、可塑剤、熱溶融性物質などを挙げることができる。
上記冷却ゲル化剤としては、冷却されることによりゲル化する性質を有するもので、上記染料受容層形成用塗工膜に粘度特性を付与できるものであればよい。このような冷却ゲル化剤としては、例えば、ゼラチン、ポリビニルアルコール、寒天、κ−カラギーナン、λ−カラギーナン、ι−カラギーナン、ペクチン等が挙げられるが、中でもゼラチンを使用することが好ましい。
上記ゼラチンは、上述したように三重へリックス構造を有するコラーゲンを変性させることによって得られるペプチド鎖からなるものであり、冷却されることにより部分的に上記三重へリックス構造を回復し、回復された三重へリックス構造を起点として三次元ネットワークを形成することにより、冷却ゲル化特性を示すものである。受容層に含まれる冷却ゲル化剤は、ゼラチンに上記に例示したものから1種類又は2種類以上を組み合わせて用いられてもよい。
受容層に冷却ゲル化剤が含まれる場合、受容層における冷却ゲル化剤の含有量は、熱転写受像シートを製造する際に、受容層を構成する樹脂を含む受容層形成用の塗工液に所望の粘度特性を付与できる範囲内であれば、特に限定されるものではない。具体的には、冷却ゲル化剤は、受容層形成用樹脂100重量部に対して、1〜70重量部の範囲内であることが好ましく、特に1〜40重量部の範囲内であることが好ましく、更に2〜15重量部の範囲内であることが好ましい。冷却ゲル化剤の含有量が1重量部未満であると、例えば、熱転写受像シートを同時多層塗工方法にて製造する場合において、断熱層を形成するための断熱層形成用塗工膜と受容層を形成するための受容層形成用塗工膜とが基材シート上に重なり合うように塗布形成された際に、断熱層形成用塗工膜でなる層と受容層形成用塗工膜でなる層の両層が混合してしまうおそれがあるからである。また、冷却ゲル化剤の含有量が70重量部を超えると、受容層形成用塗工膜を基材シート上に塗布形成する際に、受容層形成用塗工膜を形成するための塗工液の粘性により、受容層形成用塗工膜表面に塗りスジや塗りムラなどが生じやすくなる場合がある。
また上記離型剤としては、シリコーンオイル、リン酸エステル系化合物、フッ素系化合物等、公知のものが挙げられるが、特に、シリコーンオイルが好ましい。シリコーンオイルとしては、エポキシ変性シリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、フェニル変性シリコーンオイル、エポキシ・ポリエーテル変性シリコーンオイル、ビニル変性シリコーンオイル、ハイドロジェン変性シリコーンオイル等の変性シリコーンオイルが好ましい。上記離型剤は、上述の受容層形成用樹脂100質量部に対して、0.5〜30質量部の範囲内となるように添加されることが好ましく、1.0〜20重量部となるよう添加されることがさらに好ましい。
以上に説明する受容層としては、特にスチレン−アクリル系共重合体、ゼラチン、及び離型剤、又は塩化ビニル系樹脂、ゼラチン、及び離型剤を少なくとも含有することが好ましい。特に、スチレン−アクリル系樹脂では、塩ビ系樹脂に比べ熱特性を比較的容易に設計可能であるため、受容層を構成する樹脂の熱応答性を改良すること可能である。このように受容層構成樹脂の熱応答性を改良することによれば、熱転写によって形成される印画画像のざらつきの悪化を抑制することが可能であり、本発明の所期の問題を解決するために良好に作用するため好ましい。またその受容層の厚みは、特に限定されないが、所望の画像濃度を発現させるためには、一般的に2〜15μm程度であることが好ましく、2〜10μmであることがより好ましい。
(受容層2:溶剤系受容層材料)
また受容層形成用樹脂を構成する樹脂材料として、上述する水性樹脂以外に従来公知の溶剤系樹脂材料、難溶解性樹脂材料を使用することもできる。これらの材料も上述した水系樹脂材料と同様一般的な熱可塑性樹脂を主体として構成される。このような樹脂材料としては例えば、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニリデン等のハロゲン化ポリマー、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリルエステル等のポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、エチレンやプロピレン等のオレフィンと他のビニルモノマーとの共重合体系樹脂、アイオノマー、セルロースジアセテート等のセルロース系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等が挙げられ、中でも特に好ましいものはポリエステル系樹脂及び塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、及びそれらの混合物である。なかでも、塩化ポリビニル系樹脂としては、例えば、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル/アクリル系化合物共重合体、エチレン/塩化ビニル/アクリル酸エステル共重合体、エチレン/酢酸ビニル/塩化ビニル共重合体等を、好ましいものとして、水性樹脂受容層材料と同様に挙げることができる。
画像形成時における熱転写シートと、熱転写受像シートとの融着若しくは印画感度の低下等を防ぐ目的で、受容層に離型剤を混合することができるのも水系受容層材料の場合と同様である。混合して使用する好ましい離型剤としては、シリコーンオイル、リン酸エステル系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等が挙げられるが、中でもシリコーンオイルが望ましい。そのシリコーンオイルとしては、エポキシ変性、ビニル変性、アルキル変性、アミノ変性、カルボキシル変性、アルコール変性、フッ素変性、アルキルアラルキルポリエーテル変性、エポキシ・ポリエーテル変性、ポリエーテル変性等の変性シリコーンオイルが望ましい。
離型剤は1種若しくは2種以上のものが使用される。また、離型剤の添加量は受容層形成用樹脂100重量部に対し、0.5〜30重量部が好ましい。この添加量の範囲を満たさない場合は、熱転写シートと熱転写受容シートとの融着若しくは印画感度の低下等の問題が生じる場合がある。このような離型剤を受容層に添加することによって、転写後の受容層の表面に離型剤がブリードアウトして離型層が形成される。また、これらの離型剤は受容層に添加せず、受容層上に別途塗工してもよい。受容層は、透明シートの上に上記の如き樹脂に離型剤等の必要な添加剤を加えたものを適当な有機溶剤に溶解させ、或いは有機溶剤や水に分散させた分散体をグラビアコート、グラビアリバースコート、ロールコート等の公知の形成手段により、塗布し、乾燥して、形成される。上記受容層の形成に際しては、受容層は任意の厚さでよいが、一般的には乾燥状態で1〜50g/mの塗工量である。
(任意の層構成)
本発明の熱転写受像シートは、基材シート、断熱層、及び受容層を、少なくともこの順で備えて構成されるが、必要に応じて他の任意の層をさらに有していてもよい。このような他の構成としては、従来、熱転写受像シートにおいて採用される任意の層であれば適宜選択して設けることができるが、例えば、断熱層と基材シートとの間に形成される下引き層、断熱層と受容層との間に形成されるプライマー層などを挙げることができる。
上記プライマー層は、断熱層と受容層との間に形成されるものであり、本発明の熱転写受像シートの高温高湿度環境下における、染料の断熱層側への移行を防止して画像保存性を向上させる機能を有するものである。上記プライマー層は、プライマー層を形成する熱可塑性樹脂(以下、「プライマー層形成樹脂」ということがある)を主体として形成され、任意で冷却ゲル化剤を含有させることもできる。特に、スライドコート法などの同時多層塗工法により熱転写受像シートを形成する場合には、ポリビニリアルコール(PVA)等の水系溶媒に分散あるいは溶解可能な樹脂をプライマー層形成樹脂として用い、且つ、冷却ゲル化剤を含有させることが一般的である。尚、プライマー層に含有させることが可能な冷却ゲル化剤は、上述する受容層に含有させることが可能な冷却ゲル化剤と同様であるためここでは記載を割愛する。
上記プライマー層形成樹脂の例としては、例えばポリオレフィン樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド系樹脂、セルロース誘導体系樹脂、またはポリエーテル系樹脂等を挙げることができる。
また上記プライマー層には、上記プライマー層形成樹脂および上記冷却ゲル化剤以外に、例えば、ノニオン系シリコーン系等の界面活性剤、イソシアネート化合物等の硬化剤、濡れ剤、および、分散剤等が含まれていてもよい。上記プライマー層の厚みは特に限定されるものではないが、例えば0.1〜40μmであることが好ましく、0.2〜20μmがより好ましく、0.3〜10μmが更に好ましい。
また上記下引き層は、基材シートと断熱層との間に形成され、基材シートと断熱層との接着性を向上させる機能を有するものである。下引き層の構成材料は、基材シートと断熱層との密着性を所望の程度に向上できるものであれば特に限定されるものではないが、下引き層を形成する熱可塑性樹脂(以下、「下引き層形成樹脂」ということがある)を主体として形成され、任意で冷却ゲル化剤を含有させることもできる。特に、スライドコート法などの同時多層塗工法により熱転写受像シートを形成する場合には、水系溶媒に分散あるいは溶解可能な樹脂を下引き層形成樹脂として用い、且つ、冷却ゲル化剤を含有させることが一般的である。上記下引き層の厚みは特に限定されるものではないが、例えば0.5μm〜10μm程度であることが好ましい。
尚、下引き層形成用樹脂としては、上述する断熱層を構成するバインダー樹脂と同様のものを用いることができる。また、下引き層に含有させることが可能な冷却ゲル化剤は、上述する受容層に含有させることが可能な冷却ゲル化剤と同様であるためここでは記載を割愛する。
上記下引き層には、上述する、下引き層形成樹脂および冷却ゲル化剤以外に、例えば、ノニオン系シリコーン系等の界面活性剤、イソシアネート化合物等の硬化剤、濡れ材、分散剤等を含有させることができる。上記硬化剤は、例えば、下引き層形成樹脂として、活性水素を有する熱可塑性樹脂を用いた場合等に特に有効である。また、上記下引き層を形成する塗工液(以下、「下引き層形成用塗工液」ということがある)には、中空粒子を含有させることもできる。
以上に説明する本発明の熱転写受像シートは、基材シート、断熱層、及び受容層がこの順に少なくとも積層されて構成されるものである。熱転写受像シートの厚みは、特に限定されず、各層の厚みを勘案し適宜設計することができるが、一般的には150〜350μm程度であって、190〜270μmがより好ましい厚みといえる。
上記熱転写受像シートは、昇華型転写方式による画像形成において、熱転写シートから昇華される染料を受容することにより受容層に画像を形成するために用いられる。即ち、昇華型転写方法において、あわせて使用される上記熱転写シートには、その染料層にイエロー、マゼンタ及びシアンなど、更に必要に応じてブラックの昇華性染料がバインダー樹脂によって担持されており、必要に応じて背面に耐熱滑性層が設けられている。そして、本発明の熱転写受像シートと、上記熱転写シートとを用い、たとえばプリンタのサーマルヘッドで印字することによって、濃淡自在で任意の階調性フルカラーの染料画像が熱転写受像シートにおける受容層に形成される。尚、上記熱転写シート及び昇華型転写方式自体は、従来公知のものを適宜選択して使用することが出来る。
[ざらつきの評価]
本発明において、熱転写受像シートを用いて印画される画像が白抜けし、その結果ざらつきが発生するか否かは、以下のとおり評価することができる。
即ち、保存前の熱転写受像シートについては、作成後、速やかに評価試験に供与された熱転写受像シートと、熱転写シートを用いて熱転写を行い、熱転写受像シートの受像層側に印画された画像を肉眼観察し、画像に白抜け(ざらつき)が発生しているか否かを確認することができる。
一方、保存後の熱転写受像シートについては、60℃、相対湿度(RH)5〜10%条件下で4日間保存するという保存条件下で熱転写受像シートを保存し、その後、上述の同様に熱転写を行い、形成された画像の白抜け(ざらつき)の状態を確認する。
尚、上記熱転写は、印画される所定画像として、ブラックの18ステップに分割された画像(以下、「18階調グラデーション画像」ともいう)を選択し、熱転写シートを用い、昇華型熱転写法により熱転写記録を行い、18階調グラデーション画像を熱転写受像シートの受容層側に印画する。そして、それぞれの階調の濃度を光学濃度計にて測定し、それぞれ1〜18階調の印画濃度のうち、低濃度側から3階調目及び4階調目の画質についてハイライト部分を目視にて観察し、白く抜けた部分がなく均一な灰色の画像が観察されていれば優良(○)、わずかではあるが繊維目に沿った白抜け部分があり、これによってざらつきが観察される場合には可(△)、明らかに繊維目に沿った白抜けがあり、これによってざらつき感が顕著に確認される場合には不良(×)と評価する。
[熱転写受像シートの製造について]
上記熱転写受像シートは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、従来公知の熱転写受像シートの製造方法を適宜選択して製造することができる。
例えば基材シート上に断熱層、及び受容層、あるいはさらに任意の層を形成するために、これらの層を基材シート側から1層ずつ順に、グラビアロール法、コンマコート法、あるいはバーコート法等などの公知の方法により形成することができる。尚、有機溶媒を使用した塗工液により塗膜を形成する場合には、基材シート状に塗工液を塗布して塗膜を形成した後、該有機溶媒を除去することにより各層が形成されて熱転写受容シートが形成される。
また、断熱層、受容層等などの熱転写受像シートを構成する層の形成用塗工液を、それぞれ水系の断熱層形成用塗工液、受容層形成用塗工液などとして調製し、スライドコート法などにより、基材シート上に同時に多層を塗工して塗膜を形成し(塗膜形成工程)、次いで、多層に塗工形成された塗膜を、0〜30℃程度の温度で冷却し、次に30〜90℃程度の温度で乾燥して(冷却乾燥工程)熱転写受像シートを形成することもできる。
あるいはまた、熱転写受像シートを構成する層のうち、少なくとも連続する2層以上については上述のとおりスライドコート法などにより同時に多層塗工して塗膜を形成し、その他の層を、単層ずつ形成することもできる。
特に、上述する基材シートを用い、塗膜形成工程及び冷却乾燥工程を含む同時多層塗工法により熱転写受像シートを製造する本発明の製造方法によれば、同時に形成される複数の層の厚みがいずれも薄い場合であっても、製造される熱転写受像シートにおいて、基材シートの表面形状の凹凸が最表面(受容層表面)に露出し、結果としてシートの表面に顕著な凹凸が発生する恐れがない。したがって本製造方法により提供される熱転写受像シートを用いて熱転写により画像を形成した場合には、白抜けのない高品質な画像が形成される。即ち、本発明の製造方法によれば、スライドコート法などの同時多層塗工法の、製造方法上に簡易性や基材シートに対する乾燥工程時の付加を極力少なくするなどの有利な点を享受することができ、且つ、形成画像の白抜けの問題が解消された優れた熱転写受像シートを提供することができる。
本発明の熱転写受像シートの製造方法において、基材シート上に形成される各層は、上述する熱転写受像シートにおける各層と同様の内容で構成することができるが、特に厚みに関しては、断熱層は1μm以上100μm以下、好ましくは、5μm以上50μm以下、さらに好ましくは10μm以上30μm以下、受容層は0.5μm以上20μm以下、好ましくは、1μm以上10μm以下、さらに好ましくは2μm以上8μm以下の範囲内に形成することができる。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。まず、本実施例、及び比較例で使用した原材料等について説明する。
[原材料]
(イ)受容層形成用塗工液1
下記に示すスチレン−アクリル共重合体エマルジョン、ゼラチン(RR、新田ゼラチン社製)(固形分として10重量部)、シリコーン系離型剤(KF615A、信越化学工業社製)(固形分として10重量部)を用い、受容層形成用塗工液中で上記成分が総固形分として25重量%となるように40℃の温水にて調整した。さらに、この液100重量部に対し、界面活性剤(日信化学工業(株)製、商品名:サーフィノール440)(固形分として2重量部)を添加し、受容層形成用塗工液1とした。
上記スチレン−アクリル系共重合体のエマルジョンは、下記のとおり合成した。
500mL(リットル)三角フラスコに、共重合体形成モノマーとして、スチレン126g、エチルアクリレート24g、ラウリルアクリレート44g、アクリル酸2g及びアクリルアミド2gと、乳化剤としてアクアロンHS−10(第一工業製薬(株)製、1.9gを入れ、攪拌・混合した(これを以下モノマーAと呼ぶ)。1L三口フラスコに、蒸留水200gを入れて80℃まで加熱し、先ほどのモノマーA全量の約20%程度を加え、10分間攪拌した。その後、純水20gに溶解させた過硫酸アンモニウム0.4gを加えて10分間攪拌した後、残り80%のモノマーAを滴下ロートにて3時間かけて滴下し、さらに3時間攪拌した。その後室温まで冷却し、#100メッシュ(日本織物)にてろ過し、受容層形成用塗工液1に使用するスチレン−アクリル系共重合体のエマルジョン(分子量:190000、Tg:60℃)を得た。また、スチレン、エチルアクリレート、ラウリルアクリレートの分子量と反応に使用した量から、それぞれのmol比は70%、14%、12%となる。反応時間については、薄層クロマトグラフィー(TLC)にてモノマーの存在が確認できなくなる、あるいは存在量が減少しなくなるまで行った。
尚、上記共重合体の分子量、およびガラス転移温度の測定(Tg)は、それぞれ以下の方法によって測定した。
分子量(Mn):GPC(HLC−8020;東ソー株式会社製 展開溶媒;THF 流量;1.0mL/分 カラム;G2000HXL+G3000HXL+G5000HXL)により測定したポリスチレン換算による数平均分子量を上記分子量とした。
ガラス転移温度(Tg):剛体振り子型表面物性試験機(A&D社製 RPT3000W、昇温速度3℃/分)により測定を行い、ピークが確認できる地点をTgとした。
(ロ)受容層形成用塗工液2
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体(電気化学工業(株)製、#1000A)(固形分として100重量部)、エポキシ変性シリコーン(信越化学工業(株)製、KF−393)(固形分として5重量部)、アミノ変性シリコーン(信越化学工業(株)製、KF−343)(固形分として5重量部)を用い、受容層形成用塗工液中で上記成分が総固形分として20重量%となるように、メチルエチルケトン/トルエン(重量比1/1)にて調整し、受容層形成用塗工液2とした。
(ハ)断熱層形成用塗工液
中空粒子(ロームアンドハース社製、商品名:HP−91)(固形分として70重量部)及びゼラチン(新田ゼラチン(株)製、商品名:RR)(固形分として30重量部)を用い、断熱層形成用塗工液中で上記成分が総固形分として17重量%となるように40℃の温水にて調整した。さらに、この液100重量部に対し、界面活性剤(日信化学工業(株)製、商品名:サーフィノール440)(固形分として0.5重量部)を添加し、断熱層形成用塗工液とした。
(ニ)上記ウレタン系接着剤
主剤としてタケラックA310(三井武田ケミカル(株)製)100質量部、硬化剤としてタケネートA3(三井武田ケミカル(株)製)8質量部、溶剤として 酢酸エチル50質量部を用いて、接着剤を調整した。このウレタン系接着剤を、基材シートと第1樹脂コート層の接着、もしくは、第1樹脂コート層と第2樹脂コート層の接着にともに用いた。
(ホ)各実施例、比較例において形成される基材シートの中紙として、厚さ180μmの上質コート紙(日本製紙(株)製 オーロラコート 2.08g/m 180μm)を準備した。
[実施例1]
上記中紙の一方の面側に、まず上記裏面側樹脂コート層形成用樹脂(HDPE:HJ362N 日本ポリエチレン(株)製)を用いて押出積層法により、厚み30μmの裏面側樹脂コート層を積層した。
グラビアコーティングユニットを有する押出し積層装置において、裏面にHDPEを押出しラミした上記中紙の反対面(断熱層、受容層を形成する面)に上述したウレタン接着剤を乾燥重量で5g/m塗布後、さらにコロナ処理した後、第一樹脂層形成用樹脂であるポリエチレンテレフタレート(RN9300 東洋紡績(株))を乾燥後厚みが15μmとなるようにTダイで押出して第一樹脂コート層を積層形成した。次いで、上記第一樹脂コート層表面に上述と同様にして接着剤層を塗布後、再びコロナ処理した後、第二樹脂コート層形成用樹脂であるメタロセン直線状低密度ポリエチレン(カーネルKC573 日本ポリエチレン(株)製)を、乾燥後の厚みが20μmとなるようにTダイで押出して第二樹脂コート層を積層した。さらに、第2樹脂コート層の表面にゼラチン液を塗布して、「基材シート」を作製した。
尚、上記中紙に上記裏面側樹脂コート層を形成した裏面側樹脂コート紙については、後述する実施例2乃至18、比較例1乃至7についても同様のものを形成した。また上記接着剤層については後述する実施例2乃至12、実施例16乃至18、比較例1乃至6についても同様のものを形成した。
次に、上記基材シートの表側面に上記断熱層形成用塗工液、受容層形成用塗工液1を40℃にてそれぞれ調整し、スライドコーティング装置を用いて、乾燥時の厚みがそれぞれ20μm、5μmとなるように同時多層塗布し、5℃にて1分間冷却してゲル化を行った後、続いて50℃にて10分間乾燥し、裏面側樹脂コート層(厚み30μm)、中紙(厚み180μm)、接着剤層(5g/m)、第一樹脂コート層(厚み15μm)、接着剤層(5g/m)、第二樹脂コート層(厚み20μm)、断熱層(厚み20μm)、受容層(厚み5μm)の順で構成される熱転写受像シートを得て、これを実施例1とした。
[実施例2乃至7、及び実施例9乃至11、及び実施例16乃至18]
第一樹脂コート層、および第二樹脂コート層を構成する樹脂の内容および層の厚みを表1または表2示す内容に変更した以外には、実施例1と同様に、熱転写受像シートを形成し、それぞれ、実施例2乃至7、実施例9乃至11とした。即ち、これらの実施例は、裏面側樹脂コート層(厚み30μm)、中紙(厚み180μm)、接着剤層(5g/m)、第一樹脂コート層、接着剤層(5g/m)、第二樹脂コート層、断熱層(厚み20μm)、受容層(厚み5μm)の順で構成した。
[実施例8及び12]
第一樹脂コート層、および第二樹脂コート層を構成する樹脂の内容及び層の厚みを表1または表2に示す内容に変更した以外には、実施例1における基材シートと同様に、各実施例に用いる基材シートを作成した。
次に、各実施例における基材シートの第二樹脂層形成面側に、上記断熱層形成用塗工液を用いて、乾燥状態で20μmの厚みとなるようにグラビアコータにて塗工して断熱層を形成した。次いで、上記断熱層面側に上記受容層形成用塗工液2を用いて、乾燥状態で5μmの厚みとなるようにグラビアコータにて塗工して受容層を形成し、実施例8、及び実施例12である熱転写受像シートを形成した。即ち、実施例8及び12は、実施例1と同様に、裏面側樹脂コート層(厚み30μm)、中紙(厚み180μm)、接着剤層(5g/m)、第一樹脂コート層、接着剤層(5g/m)、第二樹脂コート層、断熱層(厚み20μm)、受容層(厚み5μm)の順で構成した。
[実施例13]
第一樹脂コート層、および第二樹脂コート層を構成する樹脂の内容及び層の厚みを表2に示す内容に変更し、且つ、接着剤層を設けなかったこと以外は、実施例8と同様に熱転写受像シートを作成し、実施例13とした。即ち、実施例13は、裏面側樹脂コート層(厚み30μm)、中紙(厚み180μm)、第一樹脂コート層、第二樹脂コート層、断熱層(厚み20μm)、受容層(厚み5μm)の順で構成した。
[実施例14及び15]
第一樹脂コート層、および第二樹脂コート層を構成する樹脂の内容及び層の厚みを表2に示す内容に変更し、且つ、接着剤層を設けなかったこと以外は、実施例1と同様に熱転写受像シートを形成し、これを実施例14及び15とした。即ち、実施例14及び15は、裏面側樹脂コート層(厚み30μm)、中紙(厚み180μm)、第一樹脂コート層、第二樹脂コート層、断熱層(厚み20μm)、受容層(厚み5μm)の順で構成した。
[比較例1及び2]
押出積層法により、表3に示す第一樹脂コート層を構成する樹脂の内容および層の厚みで、第一樹脂コート層を形成し、且つ、第一樹脂コート層と第二樹脂コート層の間に設けられた接着剤層、並びに、第二樹脂コート層を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様に熱転写受像シートを形成し、それぞれ比較例1及び2とした。即ち、比較例1及び2は、裏面側樹脂コート層(厚み30μm)、中紙(厚み180μm)、接着剤層(5g/m)、第一樹脂コート層、断熱層(厚み20μm)、受容層(厚み5μm)の順で構成した。
[比較例3及び4]
押出積層法により、表3に示す第一樹脂コート層を構成する樹脂の内容および層の厚みで、第一樹脂コート層を形成し、且つ、第一樹脂コート層と第二樹脂コート層の間に設けられた接着剤層、並びに、第二樹脂コート層を形成しなかったこと以外は、実施例8と同様に熱転写受像シートを形成し、それぞれ比較例3及び4とした。即ち、比較例3及び4は、裏面側樹脂コート層(厚み30μm)、中紙(厚み180μm)、接着剤層(5g/m)、第一樹脂コート層、断熱層(厚み20μm)、受容層(厚み5μm)の順で構成した。
[比較例5乃至6]
押出積層法により、表3に示す第一樹脂コート層及び第二樹脂コート層を構成する樹脂の内容および層の厚みで、第一樹脂コート層及び第二樹脂コート層を形成したこと以外は、実施例1と同様に熱転写受像シートを形成し、それぞれ比較例5乃至6とした。即ち、比較例5乃至6は、裏面側樹脂コート層(厚み30μm)、中紙(厚み180μm)、接着剤層(5g/m)、第一樹脂コート層、接着剤層(5g/m)、第二樹脂コート層、断熱層(厚み20μm)、受容層(厚み5μm)の順で構成した。
[比較例7]
押出積層法により、表3に示す第一樹脂コート層及び第二樹脂コート層を構成する樹脂の内容および層の厚みで、第一樹脂コート層及び第二樹脂コート層を形成し、且つ、中紙と第一樹脂コート層の間の接着剤層および第一樹脂コート層と第二樹脂コート層の間の接着剤層を設けなかったこと以外は、実施例1と同様に熱転写受像シートを形成し、比較例7とした。即ち、比較例7は、裏面側樹脂コート層(厚み30μm)、中紙(厚み180μm)、第一樹脂コート層、第二樹脂コート層、断熱層(厚み20μm)、受容層(厚み5μm)の順で構成した。
尚、表1乃至表3には、各樹脂コート層を構成する樹脂の曲げ弾性率、および融点に加え、参考のために樹脂硬度、および密度についても示した。尚、樹脂硬度として示す表中の値は、数値に「D」が付される値は、JIS K 7215(タイプDデュロメーター硬さ試験)に準じて測定されるデュロD硬度を意味する当該樹脂の硬さを示し、数値に「A」が付される値は、JIS K 6253(タイプAディロメーター硬さ試験)に準じて測定されるデュロA硬度を意味する当該樹脂の硬さを示し、また数値に「R」が付される値は、JIS K 7202に準じてロックウェル硬さ試験機を用いて測定される押し込み硬さ(ロックウェルRスケール)を意味する当該樹脂の硬さを示すものである。
[熱転写受像シートの評価]
上述のとおり作成した実施例および比較例について、保存前の熱転写受像シート、及び保存後の熱転写受像シートを用いて熱転写した際の印画画像の「ざらつき」、及び保存後の熱転写受像シートを用いて熱転写した際の印画画像の「印画抜け」の評価を下記のとおり行った。これらの評価結果は、表1乃至表3に示す。
(イ)ざらつきの評価
上述する実施例および比較例について、特定条件下(60℃、相対湿度(RH)5〜10%で4日間保存)において保存する前の熱転写受像シート及び保存後の熱転写受像シートを準備し、これらを用いて、熱転写を以下のとおり行った。上記熱転写は、熱転写受像シートの受容層面側に印画される所定画像として、ブラックの18ステップに分割された画像(以下、「18階調グラデーション画像」ともいう)を選択した。そして、ALTECH ADS社製プリンタ用の専用の熱転写シート(型式:MEGAPIXELIII)を用い、昇華型熱転写法により熱転写記録を行い、18階調グラデーション画像を実施例1及び保存後実施例1の受容層側に印画した。
そして、それぞれの階調の濃度を光学濃度計(グレタグマクベス社製、spectrolino )にて測定し、それぞれ1〜18階調の印画濃度のうち、低濃度側から3階調目及び4階調目(画像濃度において0.1〜0.3程度に相当する領域)における画質についてハイライト部分の白抜けを目視にて観察し、以下のとおり評価した。
○:優良(白く抜けた部分がなく均一な灰色の画像が観察された)
△:可 (わずかではあるが繊維目に沿った白抜け部分があり、これによってざらつきが観察された)
×:不良(明らかに繊維目に沿った白抜けがあり、これによってざらつき感が顕著に確認された)
(ロ)印画抜け評価
上記ざらつき評価において、保存前の実施例及び比較例を用いて形成した印画画像について、1〜18階調の印画濃度で示される画像全体を観察し、以下のとおり評価した。
○:優良(画像全面において点状の印画抜け部分がなく、1〜18階調の均一な画像が観察された)
×:不良(画像のところどころにおいて、点状の印画抜け部分が確認された)
(ハ)製造特性評価
以下に、参考までに上述する各実施例及び各比較例に使用した基材シートの製造特性評価の結果を示す。上記製造特性評価は、基材シートを作製する過程において、中紙における接着剤層面に、第二樹脂コート層(比較例1乃至4においては第一樹脂コート層)を形成するための溶融樹脂をTダイで押出し、該溶融樹脂が冷却ロールに当接する向きにおいて、冷却ロール上で溶融樹脂(樹脂コート層)と中紙を密着させるとともに、溶融樹脂を冷却して樹脂コート層形成し、これを巻取りロールにて巻き取る際に、上記冷却ロール表面に、樹脂コート層構成樹脂である上記溶融樹脂が、接着したか否かを目視で確認し、以下のように評価した。結果は表1乃至表3に示した。
○:ロールに樹脂コート層が全く接着しなかった。
△:ロールに樹脂コート層の一部が接着したことが確認された。
×:ロールに樹脂コート層が接着し、樹脂コート層が正常に形成されなかった。
表1乃至表3にしめすとおり、上記(イ)ざらつき評価において、実施例1乃至18は全て優良と評価された。一方、保存前の比較例1乃至7は、いずれも優良な画像が形成されていたが、特定条件下で保存した比較例を用いると、画像にざらつきが発生することが確認された。特に、第二樹脂コート層を有しない基材シートを用いた比較例1乃至4では、繊維目に沿ったざらつきが顕著であった。また比較例5乃至7にも商品化には不適な程度に、ざらつきが発生した。
また上記(ロ)印画抜け評価においても、実施例1乃至18は全て優良と評価された。一方、比較例1、2、5乃至7では、印画された画像の全面において、ランダムな点状の印画抜けが確認された。これは、比較例1、2、5〜7の基材シートの断熱層積層面側の最表面において、曲げ弾性率が130MPaを上回る硬質の樹脂コート層が存在していることから、受容層表面における微細なゴミや凹凸などが、印画時において物理的にインキの転写を遮ったためと理解される。一方、(ロ)印画抜け評価において、優良な評価が示された実施例、比較例はいずれも、基材シートの断熱層積層面側の最表面において、曲げ弾性率が130MPa以下の樹脂コート層が設けられており、当該樹脂コート層のクッション性により、受容層表面における微小なゴミや凹凸などの存在が問題にならない程度に、良好にインキが転写されたものと理解される。
また参考までに示す(ハ)製造特性評価では、実施例18だけが、第二樹脂コート層と冷却ロールとにおいて、一部で接着が見られた。これは、実施例18における第二樹脂コート層を構成する低密度ポリエチレン系樹脂の融点(Tm)が70℃以下であるためと思われた。
Figure 0005470978
Figure 0005470978
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Claims (7)

  1. 基材シート、中空粒子とバインダーとを含む断熱層、および受容層を、この順で少なくとも備える熱転写受像シートにおいて、
    上記基材シートが、中紙と、少なくとも該中紙の断熱層積層側面において、曲げ弾性率の異なる樹脂によって形成される2層の樹脂コート層を備えており、上記2層の樹脂コート層を中紙側から第一樹脂コート層、第二樹脂コート層としたときに、
    上記第二樹脂コート層は、曲げ弾性率が50MPa以上130MPa以下の樹脂から構成されており、且つ、
    上記第一樹脂コート層を構成する樹脂の曲げ弾性率が、上記第二樹脂コート層の曲げ弾性率よりも大きいことを特徴とする熱転写受像シート。
  2. 上記第一樹脂コート層を構成する樹脂の曲げ弾性率が100MPa以上20000MPa以下であることを特徴とする請求項1に記載の熱転写受像シート。
  3. 上記第二コート層が、低密度ポリエチレン系樹脂、または熱可塑性エラストマーから構成されていることを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の熱転写受像シート。
  4. 上記第二樹脂コート層を構成する低密度ポリエチレン系樹脂の融点が70℃以上であることを特徴とする請求項3に記載の熱転写受像シート。
  5. 上記第一樹脂コート層が、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルペンテン、高密度ポリエチレン、または低密度ポリエチレンのいずれか1つから構成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の熱転写受像シート。
  6. 上記中紙と上記第一コート層との間、および/または上記第一コート層と上記第二コート層との間に接着剤層が設けられていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の熱転写受像シート。
  7. 請求項1乃至6のいずれか1項に記載される基材シート上に、同時多層塗工法により、水系断熱層形成用塗工液、及び水系受容層形成用塗工液を少なくとも同時に塗工して複数の塗膜を同時に形成する塗膜形成工程と、
    上記塗膜形成工程において積層された塗膜を冷却し、続いて乾燥させる冷却乾燥工程と、を備える、
    熱転写受像シートの製造方法。
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