JP5534134B2 - 熱転写受像シートおよび熱転写受像シートの製造方法 - Google Patents
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(1)中紙と樹脂コート層とを少なくとも備える基材シート、中空粒子とバインダーとを含む断熱層、および受容層を、この順で少なくとも備える熱転写受像シートにおいて、
上記樹脂コート層は、厚みを20μm以下とする層であり、且つ、中紙の少なくとも断熱層積層面側に設けられるデュロD硬度50未満の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)又は熱可塑性エラストマー(TPE)の少なくとも一種の樹脂から形成される層であり、
上記樹脂コート層を形成する樹脂は、融点が70℃以上であり、且つ、JIS K 7210に準拠したMFRが3.3g/10min以上18.3g/10min以下である、ことを特徴とする熱転写受像シート。
(2)上記(1)に記載される基材シート上に、スライドコート法により、水系断熱層形成用塗工液、及び水系受容層形成用塗工液を少なくとも同時に塗布して複数の塗膜を同時に形成する塗膜形成工程と、上記塗膜形成工程において積層された塗布膜を乾燥させる乾燥工程と、を備える、熱転写受像シートの製造方法、
を要旨とするものである。
本発明の熱転写受像シートは、中紙と樹脂コート層とを少なくとも備える基材シート、中空粒子とバインダーとを含む断熱層、および受容層を、この順で少なくとも備える熱転写受像シートにおいて、上記樹脂コート層が、中紙の少なくとも断熱層積層面側に設けられる、デュロD硬度50未満の樹脂より構成されることに特徴を有するものである。本発明は、上述のとおり基材シート上に、少なくとも断熱層と受容層とをこの順で積層することにより構成されるが、基材シートと断熱層との間、あるいは断熱層と受容層との間には、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、適宜、任意の層をさらに設けることができる。以下に、本発明の熱転写受像シートについて、基材シート、および各層について順に説明する。
本発明に用いられる基材シートは、断熱層および受容層、あるいはさらに追加される任意の層を支持する機能を有するものであり、少なくとも断熱層積層面側にデュロD硬度50未満の樹脂がコートされてなる樹脂コート層を備える支持体である。上記基材シートの厚みは特に限定されるものではないが、一般的には、100μm以上250μm以下、好ましくは150μm以上200μm以下の中紙を用い、上記中紙の断熱層積層面側に10μm以上40μm以下の樹脂コート層、あるいはさらに任意で上記断熱層積層面側とは反対側(以下において単に「裏面側」ともいう)に10〜40μmの厚みの樹脂コート層を備えて、全体の厚みが決定される。尚、中紙の裏面側に形成される樹脂コート層は、断熱層積層面側に形成される樹脂コート層と同様の樹脂により形成してもよく、あるいはデュロD硬度50未満に限定されず、従来公知の所謂レジンコート紙における樹脂コート層と同様の内容で形成されていてもよい。
また本発明において使用可能なポリエチレン系樹脂の市販品の例としては、例えば、日本ポリエチレン株式会社製のカーネルKC573、KC570Sを単独で使用することができる。あるいは、たとえば、デュロD硬度の異なる樹脂を混合して所望のデュロD硬度の樹脂として使用することもできる。たとえば、市販品の樹脂の混合の例として、日本ポリエチレン株式会社製のカーネルKC573とKS340T、あるいは同様にKC573とKC650Tとを適切な割合で混合して用いることもできる。また特に、メタロセン触媒を用いて生成されるポリエチレンであって、樹脂コート層構成樹脂として使用可能な市販品としては、宇部興産(株)製のユメリット、住友化学(株)製のスミカセンE、日本ポリエチレン(株)製のハーモレックス、(株)プライムポリマー製のエボリューなどが例示される。
あるいは、本発明に使用可能な市販品であって、オレフィン系熱可塑性エラストマーの例としては、住友化学(株)製のエスプレンSPO、あるいはエクセレンVL、日本ポリエチレン(株)製のタフマー、三菱化学(株)のサーモラン、住友化学(株)製のエスボレックスTPE等が挙げられる。
あるいは、本発明に使用可能な市販品であって、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーの例としては、三井化学(株)製のノティオあるいはミラストマーあるいはタフマー、ダウケミカル社製のバーシファイ、三菱化学(株)のサーモラン、住友化学(株)製のエクセレンFX、あるいはエスボレックスTPE、日本ポリプロ(株)製のWINTEC、エクソンモービルケミカル社製のサントプレーンが挙げられる。
スチレンーブタジエン系熱可塑性エラストマーとしては、(株)クラレ製のセプトンあるいはハイプラー、アプコ(株)製のスミフレックスQE、三菱化学(株)製のアバロン、JSR(株)製のJER SIS、JSR TR、旭化成ケミカルズ(株)製のタフッテック、あるいはタフプレン、あるいはアサプレン)を挙げることができる。
また、ポリエステル系熱可塑性エラストマーとしては、 帝人化成(株)製のヌーベラン、東レデュポン(株)製のハイトレル、三菱化学(株)製のプリマロイ、東洋紡(株)製のペルプレン、あるいはパイロペットを挙げることができる。
あるいはまた、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーとしては、(株)クラレ製のクラミロン、東洋紡ウレタン(株)製のポリウレタンエラストマー、日本ポリウレタン工業(株)製のミラクトン、ディーアイシーバイエルポリマー(株)製のバンデックス、あるいはデスモバン、あるいはテキシン、大日精化工業(株)製のレミザンを挙げることができる。
尚、基材シート中に接着剤層を設ける場合には、まず、溶媒へ分散または溶解した接着剤を中紙へ塗布し乾燥させて接着剤層を形成した後、樹脂コート層を形成するための樹脂を該接着剤層面に押し出しコートする。そして、巻き上げ部にて巻取った後、必要に応じて30〜120℃で数時間〜数日間エージングすることで、接着剤層を硬化させるとよい。中紙への悪影響がないようできるだけ低温で硬化できる接着剤が特に好ましく使用される。
例えば、上記熱硬化系接着剤としては、フェノール樹脂、レゾルシン樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、(2液硬化型)ポリウレタン樹脂、ポリエステルウレタン系接着剤、ポリエ−テルウレタン系接着剤、などを使用することができる。なかでも2液硬化型ウレタン系接着剤が好適である。
また、上記熱可塑性接着剤としては、ポリ酢酸ビニル樹脂、塩酢ビ共重合樹脂、エチレン・酢ビ共重合樹脂、アクリル樹脂、アクリルエステル樹脂、メタクリル樹脂、メタクリルエステル樹脂、並びにそれらの共重合樹脂、エチレン・アクリル樹脂、シアノアクリレート樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ナイロン、天然ゴム、合成ゴム等の接着剤を使用することができる。これらの接着剤は単独で使用しても複数混合して使用しても良い。
本発明における断熱層は、上述する基材シートと受容層との間に形成されるものであり、少なくともバインダー樹脂及び中空粒子を含んで構成され、好ましくは冷却ゲル化剤を含んで構成されるものである。上記断熱層は、本発明の熱転写受像シートを用いて画像を印画する際に、サーマルヘッドから受容層に加えられた熱が、基材シート等へ伝熱することにより基材シートが損傷することを防止するための断熱性を有する層である。また、サーマルヘッドからの熱が、印画時の染料の昇華に効率よく使用されるための高効率な熱利用の観点からも、断熱層を設けることが望ましい。更に、断熱層に中空粒子を含有させることによりクッション性を発揮させることが可能となるので、中空粒子が含有された断熱層が設けられた熱転写受像シートは、画像形成時における濃度ムラやハイライト部の白抜けが抑制されて、印画特性が向上する。
断熱層に充分な断熱性の付与と「白抜け」の発生を低減するという観点から、断熱層の厚みは、10〜40μmの範囲内であることが好ましい。またこのとき、上記断熱層の密度は、0.1〜0.8g/cm3が好ましく、0.2〜0.7g/cm3がより好ましい。
また、断熱層に充分な断熱性を与えるという観点から、断熱層の空隙率は、15〜80%の範囲内であることが好ましい。尚、該空隙率は、「(中空粒子の空隙率)×(断熱層における中空粒子の含有率)重量比」で示される値である。
本発明に用いられる断熱層が2層構造である場合の一例としては、上記断熱層が、基材シート側から、中空粒子を含有する断熱層と、及び上記中空粒子よりも中空率の小さな中空粒子を含有する断熱層とが積層された構成を有するものを挙げることができる。断熱層としてこのような2層構造よりなるものを用いることにより、印画時における濃度ムラやハイライト部の白抜け防止といった印画特性の向上効果がさらに発揮される。
本発明において、断熱層に含まれる中空粒子の量としては、所望の断熱性を有する断熱層を得ることができれば特に限定されるものではないが、断熱層に含まれる全固形分を100重量%としたときに、断熱層を構成する中空粒子とバインダー樹脂の割合[(中空粒子/バインダー樹脂)の重量比]が60/40〜90/10であることが好ましく、なかでも65/35〜80/20であることが好ましい。中空粒子の含有量が少なすぎると、断熱層における空隙が少なくなり、充分な断熱性が得られない場合があり、中空粒子の含有量が多すぎて後述する断熱層形成用バインダー樹脂の重量比が小さくなりすぎると、断熱層が脆くなり層の成形性が悪くなる虞があるからである。
このような水系溶媒に分散可能な樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸系樹脂、セルロース誘導体系樹脂、または、ポリエーテル系樹脂等を挙げることができる。
また、通常、水系溶媒に溶解可能な樹脂としては、たとえば、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、プルラン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、デキストラン、デキストリン、ポリアクリル酸及びその塩、寒天、κ−カラギーナン、λ−カラギーナン、ι−カラギーナン、カゼイン、キサンテンガム、ローカストビーンガム、アルギン酸、アラビアゴム、特開平7−195826号公報及び特開平7−9757号公報に記載のポリアルキレノキサイド系共重合ポリマー、水溶性ポリビニルブチラール、あるいは、特開昭62−245260号公報に記載のカルボキシル基やスルホン酸基を有するビニルモノマーの単独重合体や共重合体等を挙げることができる。
また、上記樹脂の2種類以上を組み合わせて用いても良い。とりわけ、水系溶媒に分散可能な樹脂と、水系溶媒に溶解可能な樹脂を合わせて使用することで、例えば、分散性と造膜性を両立できる等のメリットがあり好ましい。また、クッション性、密着性をあげるために、これらの特性に優れたバインダー、すなわち、比較的低融点、低Tgの材料を混合することが好ましい。また、上記バインダー樹脂として、例えばゼラチン、ポリビニルアルコール、寒天、κ−カラギーナン、λ−カラギーナン、ι−カラギーナン等の材料を用いる場合には、これらバインダー樹脂は、冷却ゲル化機能も発揮し得るため、別途、後述する冷却ゲル化剤を用いずとも、同時多層塗布方法において良好に製造可能である。
本発明における受容層は、染料染着性を備える樹脂材料(受容層形成用樹脂)を含む層であり、熱転写にて転写受像シートが印画される際に、熱転写シートに担持される染料が熱転写受像シートの所定領域に転写され、その染料が熱転写受像シートに担持された状態となり(すなわち、熱転写受像シートが染着され)、熱転写受像シートに画像を形成する機能を有するものであれば特に限定されるものではない。
受容層形成用樹脂は、水系溶媒に分散・溶解可能な樹脂(水性樹脂)、有機溶媒に分散・溶解可能な樹脂(溶剤系樹脂)のいずれでも使用可能であるが、水性樹脂であることが好ましい。上記受容層形成用樹脂が上記水性樹脂であることにより、本発明の熱転写受像シートを製造する際に、断熱層と上記受容層とを水系溶媒のみを用いて、基材シート上に同時に塗布することが可能になるからである。
なお、上記塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体は、塩化ビニルと酢酸ビニルとからなる共重合体であれば特に限定されず、塩化ビニルおよび酢酸ビニルに加えてこれら必須単量体と共重合可能な単量体を少量重合したものであってもよい。
上記アクリル系化合物としては、例えば、アクリル酸;アクリル酸カルシウム、アクリル酸亜鉛、アクリル酸マグネシウム、アクリル酸アルミニウム等のアクリル酸塩;メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、n−ステアリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート等のアクリル酸エステル;メタクリル酸;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸シクロヘキシル、ジメタクリル酸トリエチレングリコール、ジメタクリル酸1,3−ブチレン、トリメタクリル酸トリメチロールプロパン等のメタクリル酸エステル等を挙げることができる。
スチレン−アクリル系共重合体中のスチレン単位とアクリル系化合物単位のモル比([スチレン単位]/[アクリル系化合物])は60〜80/40〜20が好ましい。スチレン−アクリル系共重合体中のスチレン単位が60モル%以上で比較的高いガラス転移温度(Tg)となるので、このような共重合体を含有する受容層は耐熱性に優れると共に、耐光性が向上する。
本発明の熱転写受像シートは、基材シート、断熱層、及び受容層を、少なくともこの順で備えて構成されるが、必要に応じて他の任意の層をさらに有していてもよい。このような他の構成としては、従来、熱転写受像シートにおいて採用される任意の層であれば適宜選択して設けることができるが、例えば、断熱層と基材シートとの間に形成される下引き層、断熱層と受容層との間に形成されるプライマー層などを挙げることができる。
また上記プライマー層には、上記プライマー層形成樹脂および上記冷却ゲル化剤以外に、例えば、ノニオン系シリコーン系等の界面活性剤、イソシアネート化合物等の硬化剤、濡れ剤、および、分散剤等が含まれていてもよい。上記プライマー層の厚みは特に限定されるものではないが、例えば0.1〜40μmであることが好ましく、0.2〜20μmがより好ましく、0.3〜10μmが更に好ましい。
尚、下引き層形成用樹脂としては、上述する断熱層を構成するバインダー樹脂と同様のものを用いることができる。また、下引き層に含有させることが可能な冷却ゲル化剤は、上述する受容層に含有させることが可能な冷却ゲル化剤と同様であるためここでは記載を割愛する。
本発明において、熱転写受像シートを用いて印画される画像が白抜けし、その結果ざらつきが発生するか否かは、以下のとおり評価することができる。
即ち、保存前の熱転写受像シートについては、作成後、速やかに評価試験に供与された熱転写受像シートと、熱転写シートを用いて熱転写を行い、熱転写受像シートの受像層側に印画された画像を肉眼観察し、画像に白抜け(ざらつき)が発生しているか否かを確認することができる。
一方、保存後の熱転写受像シートについては、60℃、相対湿度(RH)5〜10%条件下で4日間保存するという保存条件下で熱転写受像シートを保存し、その後、上述の同様に熱転写を行い、形成された画像の白抜け(ざらつき)の状態を確認する。
尚、上記熱転写は、印画される所定画像として、ブラックの18ステップに分割された画像(以下、「18階調グラデーション画像」ともいう)を選択し、熱転写シートを用い、昇華型熱転写法により熱転写記録を行い、18階調グラデーション画像を熱転写受像シートの受容層側に印画する。そして、それぞれの階調の濃度を光学濃度計にて測定し、それぞれ1〜18階調の印画濃度のうち、低濃度側から3階調目及び4階調目の画質についてハイライト部分を目視にて観察し、白く抜けた部分がなく均一な灰色の画像が観察されていれば優良、わずかに繊維目に沿った白抜け部分がある程度で、顕著なざらつき感は認められない場合には良、明らかに繊維目に沿った白抜けがあり、これによってざらつき感が顕著に確認される場合には不良と評価する。
上記熱転写受像シートは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、従来公知の熱転写受像シートの製造方法を適宜選択して製造することができる。
例えば基材シート上に断熱層、及び受容層、あるいはさらに任意の層を形成するために、これらの層を基材シート側から1層ずつ順に、グラビアロール法、コンマコート法、あるいはバーコート法等などの公知の方法により形成することができる。尚、有機溶媒を使用した塗工液により塗膜を形成する場合には、基材シート上に塗工液を塗布して塗膜を形成した後、該有機溶媒を除去することにより各層が形成されて熱転写受容シートが形成される。
あるいはまた、熱転写受像シートを構成する層のうち、少なくとも連続する2層以上については上述のとおりスライドコート法などにより同時に多層塗工して塗膜を形成し、その他の層を、単層ずつ形成することもできる。
中空粒子(ロームアンドハース社製、商品名:HP−91)(固形分として70重量部)及びゼラチン(新田ゼラチン(株)製、商品名:RR)(固形分として30重量部)を用い、断熱層形成用塗工液中で上記成分が総固形分として17重量%となるように40℃の温水にて調整した。さらに、この液100重量部に対し、界面活性剤(日信化学工業(株)製、商品名:サーフィノール440)(固形分として0.5重量部)を添加し、断熱層形成用塗工液とした。
(ii)受容層形成用塗工液1
塩化ビニル系樹脂(日信化学工業社製、ビニブラン690)(固形分として80重量部)、ゼラチン(RR、新田ゼラチン社製)(固形分として10重量部)、シリコーン系離型剤(KF615A、信越化学工業社製)(固形分として10重量部)を用い、受容層形成用塗工液中で上記成分が総固形分として25重量%となるように40℃の温水にて調整した。さらに、この液100重量部に対し、界面活性剤(日信化学工業(株)製、商品名:サーフィノール440)(固形分として2重量部)を添加し、受容層形成用塗工液とした。
(iii)受容層形成用塗工液2
上記受容層形成用塗工液1の塩化ビニル系樹脂(日信化学工業社製、ビニブラン690)(固形分として80重量部)に代えて、下に示したスチレン−アクリル共重合体エマルジョンを使用した以外は同様にして、受容層形成用塗工液2を作製した。
500mL(リットル)三角フラスコに、共重合体形成モノマーとして、スチレン126g、エチルアクリレート24g、ラウリルアクリレート44g、アクリル酸2g及びアクリルアミド2gと、乳化剤としてアクアロンHS−10(第一工業製薬(株)製、1.9gを入れ、攪拌・混合した(これを以下モノマーAと呼ぶ)。1L三口フラスコに、蒸留水200gを入れて80℃まで加熱し、先ほどのモノマーA全量の約20%程度を加え、10分間攪拌した。その後、純水20gに溶解させた過硫酸アンモニウム0.4gを加えて10分間攪拌した後、残り80%のモノマーAを滴下ロートにて3時間かけて滴下し、さらに3時間攪拌した。その後室温まで冷却し、#100メッシュ(日本織物)にてろ過し、受容層形成用塗工液2に使用するスチレン−アクリル系共重合体のエマルジョン(分子量:190000、Tg:60℃)を得た。また、スチレン、エチルアクリレート、ラウリルアクリレートの分子量と反応に使用した量から、それぞれのmol比は70%、14%、12%となる。反応時間については、薄層クロマトグラフィー(TLC)にてモノマーの存在が確認できなくなる、あるいは存在量が減少しなくなるまで行った。
尚、上記共重合体の分子量、およびガラス転移温度の測定(Tg)は、それぞれ以下の方法によって測定した。
分子量(Mn):GPC(HLC−8020;東ソー株式会社製 展開溶媒;THF 流量;1.0mL/分 カラム;G2000HXL+G3000HXL+G5000HXL)により測定したポリスチレン換算による数平均分子量を上記分子量とした。
ガラス転移温度(Tg):剛体振り子型表面物性試験機(A&D社製 RPT3000W、昇温速度3℃/分)により測定を行い、ピークが確認できる地点をTgとした。
中紙として表1に示す上質コート紙を使用した。この中紙の裏面側(断熱層の形成が予定されていない側)に、高密度ポリエチレン樹脂(製品名:HJ560、日本ポリエチレン社製)を乾燥後厚み20μmとなるように押出し成形した。尚、上記高密度ポリエチレン(HJ560)は、デュロ硬度がデュロD66、密度が0.964(g/cm2)、曲げ弾性率1050MPa、融点(DSC)が135℃、MFRが7.0g/10minの物性値を有するものを使用した。
その後、中紙の表面側(断熱層の形成が予定される側)に、m−LLDPE(製品名:KC573、日本ポリエチレン株式会社製)を乾燥後厚みが15μmとなるように押出し成形した。次いで、断熱層積層面側に形成した樹脂コート層の表面にゼラチン液を塗布して、基材シートを作製した。
中紙及び断熱層積層面側の樹脂コート層の内容を表1に示す内容に変更した以外は、実施例1と同様に熱転写受像シートを作成し、これを実施例2とした。
中紙及び断熱層積層面側の樹脂コート層の内容を表1〜3に示す内容に変更し、且つ、受容層を受容層形成用塗工液2を用いて形成したこと以外は、実施例1と同様に熱転写受像シートを作成し、これを実施例3乃至15、参考例1,2とした。ただし、実施例7及び実施例11については、上記断熱層形成用塗工液における中空粒子の配合量を60重量部に、ゼラチンの配合量を40重量部に変更した。また実施例12については、形成される断熱層積層面側の樹脂コート層の厚みを20μmに変更した。
中紙及び断熱層積層面側の樹脂コート層の内容を表4に示す内容に変更した以外は、実施例1と同様に熱転写受像シートを作成し、これを実施例1とした。
また、中紙及び断熱層積層面側の樹脂コート層の内容を表4に示す内容に変更し、且つ、受容層を受容層形成用塗工液2を用いて形成したこと以外は、実施例1と同様に熱転写受像シートを作成し、これを比較例2乃至4とした。
上述する実施例1乃至15、参考例1,2及び比較例1乃至4の熱転写受像シートについて、保存前後の「白抜け」の評価を下記のとおり行った。これらの評価結果は、それぞれ表1乃至4に示す。
上述する実施例、参考例および比較例について、特定条件下(60℃、相対湿度(RH)5〜10%で4日間保存)において保存する前の熱転写受像シート及び保存後の熱転写受像シートを準備し、これらを用いて、熱転写を以下のとおり行った。上記熱転写は、熱転写受像シートの受容層面側に印画される所定画像として、ブラックの18ステップに分割された画像(以下、「18階調グラデーション画像」ともいう)を選択した。そして、ALTECH ADS社製プリンタ用の専用の熱転写シート(型式:MEGAPIXELIII)を用い、昇華型熱転写法により熱転写記録を行い、18階調グラデーション画像を実施例1及び保存後実施例1の受容層側に印画した。
◎:優良(白く抜けた部分がなく均一な灰色の画像が観察された)
○:良 (わずかに繊維目に沿った白抜け部分がある程度で、顕著なざらつき感は認められなかった)
×:不良(明らかに繊維目に沿った白抜けがあり、これによってざらつき感が顕著に確認された)
以下に、参考までに上述する各実施例、各参考例及び各比較例に使用した基材シートの製造特性評価の結果を示す。上記製造特性評価は、基材シートを作製する過程において、中紙における接着剤層面に、溶融樹脂をTダイで押出し、溶融樹脂が冷却ロールに当接する向きにおいて、冷却ロール上で溶融樹脂と中紙を密着させるとともに、溶融樹脂を冷却して樹脂コート層形成し、これを巻取りロールにて巻き取際に、上記冷却ロール表面に、樹脂コート層形成用塗工液(樹脂コート層構成樹脂)が、接着したか否かを目視で確認し、以下のように評価した。
○:ロールに樹脂コート層が全く接着しなかった。
△:ロールに樹脂コート層の一部が接着したことが確認された。
×:ロールに樹脂コート層が接着し、樹脂コート層が正常に形成されなかった。
一方、表4に示すとおり、本発明において特定されるデュロ硬度を満たさない樹脂で断熱層積層面側の樹脂コート層が形成された基材シートを使用する比較例は、保存前のものは白抜け評価において良好な結果が示された。しかしながら、上記特定条件下における保存後の比較例では、白抜け評価においていずれも不良であった。
換言すると、従来例として示すいずれの比較例と比較しても、本発明の熱転写受像シートは、特定条件下での保存の有無を問わず、鮮明な印画画像を形成することができた。
Claims (2)
- 中紙と樹脂コート層とを少なくとも備える基材シート、中空粒子とバインダーとを含む断熱層、および受容層を、この順で少なくとも備える熱転写受像シートにおいて、
上記樹脂コート層は、厚みを20μm以下とする層であり、且つ、中紙の少なくとも断熱層積層面側に設けられるデュロD硬度50未満の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)又は熱可塑性エラストマー(TPE)の少なくとも一種の樹脂から形成される層であり、
上記樹脂コート層を形成する樹脂は、融点が70℃以上であり、且つ、JIS K 7210に準拠したMFRが3.3g/10min以上18.3g/10min以下である、ことを特徴とする熱転写受像シート。 - 請求項1に記載される基材シート上に、スライドコート法により、水系断熱層形成用塗工液、及び水系受容層形成用塗工液を少なくとも同時に塗布して複数の塗膜を同時に形成する塗膜形成工程と、
上記塗膜形成工程において積層された塗布膜を乾燥させる乾燥工程と、を備える、
熱転写受像シートの製造方法。
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