JP4978404B2 - 熱転写受像シート - Google Patents
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Description
このような問題点に対し、特許文献4には受容層中にワックス類を添加し、中間調の転写感度を向上させる例が開示されている。しかしながら、上記受容層にワックスを添加すると、熱転写受像シートを用いて印画物を作製する際に、上記受容層に加えられる熱により受容層が軟化して離型性が悪化し、結果として高濃度部の印画感度が低下してしまうという問題点があった。
さらに、本発明によれば、上記受容層形成用樹脂が水系溶媒に分散・溶解可能なものであり、かつ、上記受容層に冷却ゲル化剤が含まれているため、例えばスライドコート法等を用いることにより、水系で複数の層を同時に形成することにより本発明の熱転写受像シートを高効率で製造することが可能になる。
このようなことから本発明によれば、基材シート上に、水系の受容層を含む複数の層を同時に形成することにより高効率で製造可能であり、かつ、離型性と印画感度とに優れた受容層を備える熱転写受像シートを提供することができる。
このような例において、本発明の熱転写受像シート10は、上記受容層2に金属せっけんが含まれることを特徴とするものである。
さらに、本発明によれば、上記受容層形成用樹脂が水系溶媒に分散・溶解可能なものであり、かつ、上記受容層に冷却ゲル化剤が含まれているため、例えばスライドコート法等を用いることにより、水系で複数の層を同時に形成することにより本発明の熱転写受像シートを高効率で製造することが可能になる。
このようなことから本発明によれば、基材シート上に、水系の受容層を含む複数の層を同時に形成することにより高効率で製造可能であり、かつ、離型性と印画感度とに優れた受容層を備える熱転写受像シートを提供するができる。
以下、本発明の熱転写受像シートに用いられる各構成について説明する。
まず、本発明に用いられる受容層について説明する。本発明に用いられる受容層は、後述する基材シート上に形成されるものであり、本発明の熱転写受像シートを用いて熱転写方式よって印画物を形成する際に、染料を受容する機能を有するものである。また本発明に用いられる受容層は受容層形成用樹脂と、冷却ゲル化剤とを含有し、さらに金属せっけんを含有することを特徴とするものである。
以下、このような受容層について詳細に説明する。
まず、本発明に用いられる金属せっけんについて説明する。本発明に用いられる金属せっけんは、受容層に含有されることにより受容層表面にすべり性を付与し、これによって受容層の離型性を向上させる機能を有するものである。本発明に用いられる金属石鹸としては、このような機能を備えるものであれば特に限定されるものではない。なかでも本発明に用いられる金属せっけんは、脂肪酸のアルカリ金属以外の金属の塩であることが好ましい。このような金属せっけんを用いることにより、本発明に用いられる受容層の離型性をより向上させることができるからである。
次に、本発明に用いられる受容層形成用樹脂について説明する。本発明に用いられる受容層形成用樹脂としては、染料染着性を有し、かつ水系溶媒に分散・溶解可能なものであれば特に限定されるものではない。
ここで、上記「水系溶媒」とは、水を主成分とする溶媒をいう。水系溶媒における水の割合は、通常60質量%以上であり、好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上である。上記水以外の溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール等のアルコール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン等のグリコール類;酢酸エチル、酢酸プロピル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類等を例示することができる。
なお、本明細書において、「アクリル化合物」とは、(メタ)アクリル酸および/またはそのアルキルエステルを意味する。
次に、本発明に用いられる冷却ゲル化剤について説明する。本発明に用いられる冷却ゲル化剤は、冷却されることによりゲル化する性質を有するものであり、本発明の熱転写受像シートを、基材シート上に、水系の受容層を含む複数の層を同時に形成することにより高効率で製造することを可能にするものである。
なお、水に溶解する際の濃度によって粘度特性が異なる場合は、特定の濃度において上記の粘度特性を示すものであればよい。
上記以外に、受容層に添加することができる任意の化合物としては、例えば、離型剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、フィラー、顔料、帯電防止剤、可塑剤、熱溶融性物質等を挙げることができる。
上記離型剤としては、シリコーンオイル、リン酸エステル系化合物、フッ素系化合物等、公知のものが挙げられるが、特に、シリコーンオイルが好ましい。
上記シリコーンオイルとしては、エポキシ変性シリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、フェニル変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、ビニル変性シリコーンオイル、ハイドロジェン変性シリコーンオイル等の変性シリコーンオイルが好ましい。また、エマルジョン化させたシリコーンも好適に用いることができる。上記離型剤は、上述の受容層形成用樹脂100質量部に対して、0.5質量部〜30質量部の範囲内となるように添加されることが好ましい。
本発明に用いられる受容層の厚みは、上記受容層形成用樹脂の種類に応じて所望の印画濃度を発現できる範囲内であれば特に限定されるものではないが、なかでも本発明においては、0.5μm〜20μmの範囲内であることが好ましく、特に1μm〜20μmの範囲内であることが好ましく、さらに1μm〜15μmの範囲内であることが好ましい。
次に、本発明に用いられる基材シートについて説明する。本発明に用いられる基材シートは、上述した受容層を支持する機能を有するものである。
以下、このような基材シートについて説明する。
本発明の熱転写受像シートは、少なくとも上記基材シートと、受容層とを有するものであるが、必要に応じて他の任意の構成を有するものであってもよい。このような他の構成としては、例えば、上記受容層と上記基材シートとの間に形成され、中空粒子および冷却ゲル化剤を含有する多孔質層、上記基材シートと上記多孔質層または受容層との間に形成され、上記基材シートと上記多孔質層または受容層との接着性を向上させる下引き層、および、上記多孔質層が用いられる場合に、上記多孔質層と上記受容層との間に形成され、上記多孔質層と上記受容層との接着性を向上させるプライマー層を挙げることができる。以下、本発明に用いられるこれらの各層について順に説明する。
まず、本発明に用いられる多孔質層について説明する。本発明に用いられる多孔質層は、基材シート上に形成されるものであり、中空粒子および冷却ゲル化剤を含むものであり、本発明の熱転写受像シートを用いて画像を形成する際に、サーマルヘッドから受容層に加えられた熱が、基材シート等へ伝熱することによって損失されることを防止する断熱性を有するものである。
以下、このような多孔質層について説明する。
まず、本発明に用いられる中空粒子について説明する。本発明に用いられる中空粒子は多孔質層に断熱性を付与する機能を有するものである。また、本発明に用いられる中空粒子は、多孔質層にクッション性を付与する機能を有するものである。
次に、上記多孔質層に用いられる冷却ゲル化剤について説明する。本発明に用いられる冷却ゲル化剤は、冷却されることによりゲル化する性質を有するものであり、本発明の熱転写受像シートを、基材シート上に、水系の受容層と受容層とを含む複数の層を同時に形成する方法により高効率で製造することを可能にするものである。
ここで、上記多孔質層に用いられる冷却ゲル化剤については、上記「1.受容層」の項において説明したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
本発明に用いられる多孔質層は、少なくとも上記冷却ゲル化剤および中空粒子を含有するものであるが、必要に応じて任意の化合物を含むものであってもよい。上記任意の化合物として多孔質層に含有させることができるものとしては、例えば、多孔質層形成用バインダー、ノニオン系シリコーン系等の界面活性剤、イソシアネート化合物等の硬化剤、濡れ剤、および、分散剤等を挙げることができる。
本発明に用いられる多孔質層は、本発明の熱転写受像シートを用いて画像を形成する際に、サーマルヘッドから受容層に加えられた熱が、基材シート等へ伝熱することによって損失されることを防止する断熱性を有するものである。ここで本発明に用いられる多孔質層が備える断熱性は、本発明の熱転写受像シートの用途等に応じて適宜調整することができるものである。
ここで、多孔質層の断熱性は、例えば、多孔質層の厚みを変更することにより任意の範囲に調整することができる。
なお、上記空隙率は、(中空粒子の空隙率)×(多孔質層における中空粒子の含有率)で表される値を指すものとする。
次に、上記下引き層について説明する。本発明に用いられる下引き層は、上記基材シートと上記多孔質層または受容層との間に形成され、上記基材シートと上記多孔質層との接着性を向上させる機能を有するものである。
ここで、上記下引き層形成用樹脂としては、上記「(1)多孔質層」の項に記載した、多孔質層形成用バインダーとして用いられる水系樹脂と同様のものを用いることができる。
ここで、上記冷却ゲル化剤としては、上記「1.受容層」の項において説明したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
次に、本発明に用いられるプライマー層について説明する。本発明に用いられるプライマー層は、上記多孔質層と上記受容層と間に形成され、上記多孔質層と上記受容層との接着性を向上させる機能を有するものである。
ここで、上記プライマー層形成用樹脂としては、上記「(1)多孔質層」の項に記載した、多孔質層形成用バインダーとして用いられる水系樹脂と同様のものを用いることができる。
ここで、上記冷却ゲル化剤としては、上記「1.受容層」の項において説明したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
次に、本発明の熱転写受像シートの製造方法について説明する。本発明の熱転写受像シートは、一般的に熱転写受像シートを製造する方法として公知の方法を用いて製造することができる。なかでも本発明の熱転写受像シートの製造方法は、中空粒子および冷却ゲル化剤が水系溶媒に分散・溶解された多孔質層形成用塗工液と、受容層形成用樹脂および冷却ゲル化剤が水系溶媒に分散・溶解された受容層形成用塗工液を用い、スライドコート法によって、基材シート上に上記多孔質層形成用塗工液と、上記受容層形成用塗工液とを同時に塗布する同時多層塗布工程と、上記同時多層塗布工程によって基材シート上に形成された塗膜を冷却する冷却処理工程と、を用いる方法により高効率で製造することができる。
基材シートとしてRCペーパー(STF−150、三菱製紙社製)を用い、下記組成の多孔質層形成用塗工液1、受容層形成用塗工液1を40℃に加熱し、スライドコーティングを用いて、乾燥時の厚みがそれぞれ40μm、8μmとなるように塗布し、5℃にて1分間冷却・ゲル化させ、50℃にて5分間乾燥し、熱転写受像シート1を得た。
・中空粒子(HP−91、ロームアンドハース社製) 70重量部
・ゼラチン(RR、新田ゼラチン社製) 30重量部
・界面活性剤(サーフィノール440、日信化学工業社製) 0.15重量部
・水 500重量部
・塩化ビニル系樹脂(ビニブラン690、日信化学工業(株)製) 70重量部
・ゼラチン(RR、新田ゼラチン(株)製) 20重量部
・ステアリン酸亜鉛(ハイミクロンL−111、中京油脂(株)製) 10重量部
・シリコーンエマルジョン(FZ4658、東レ・ダウコーニング(株)製)10重量部
・界面活性剤(サーフィノール440、日信化学工業(株)製) 3重量部
・水 400重量部
受容層形成用塗工液1に代えて、以下の組成を有する受容層用塗工液2を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により熱転写受像シート2を作製した。
・塩化ビニル系樹脂(ビニブラン690、日信化学工業(株)製) 60重量部
・ゼラチン(RR、新田ゼラチン(株)製) 20重量部
・ステアリン酸亜鉛(ハイミクロンL−111、中京油脂(株)製) 20重量部
・シリコーンエマルジョン(FZ4658、東レ・ダウコーニング(株)製)10重量部
・界面活性剤(サーフィノール440、日信化学工業(株)製) 3重量部
・水 400重量部
受容層形成用塗工液1に代えて、以下の組成を有する受容層用塗工液3を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により熱転写受像シート3を作製した。
・塩化ビニル系樹脂(ビニブラン690、日信化学工業(株)製) 50重量部
・ゼラチン(RR、新田ゼラチン(株)製) 20重量部
・ステアリン酸亜鉛(ハイミクロンL−111、中京油脂(株)製) 30重量部
・シリコーンエマルジョン(FZ4658、東レ・ダウコーニング(株)製)10重量部
・界面活性剤(サーフィノール440、日信化学工業(株)製) 3重量部
・水 400重量部
受容層形成用塗工液1に代えて、以下の組成を有する受容層用塗工液4を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により熱転写受像シート4を作製した。
・塩化ビニル系樹脂(ビニブラン690、日信化学工業(株)製) 60重量部
・ゼラチン(RR、新田ゼラチン(株)製) 20重量部
・ステアリン酸マグネシウム(川村化成工業(株)製) 20重量部
・シリコーンエマルジョン(FZ4658、東レ・ダウコーニング(株)製)10重量部
・界面活性剤(サーフィノール440、日信化学工業(株)製) 3重量部
・水 400重量部
受容層形成用塗工液1に代えて、以下の組成を有する受容層用塗工液5を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により熱転写受像シート2を作製した。
・塩化ビニル系樹脂(ビニブラン690、日信化学工業(株)製) 80重量部
・ゼラチン(RR、新田ゼラチン(株)製) 20重量部
・シリコーンエマルジョン(FZ4658、東レ・ダウコーニング(株)製)10重量部
・界面活性剤(サーフィノール440、日信化学工業(株)製) 3重量部
・水 400重量部
受容層形成用塗工液1に代えて、以下の組成を有する受容層用塗工液6を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により熱転写受像シート6を作製した。
・塩化ビニル系樹脂(ビニブラン690、日信化学工業(株)製) 60重量部
・ゼラチン(RR、新田ゼラチン(株)製) 20重量部
・ケミパールW900(オレフィンワックス、三井化学(株)製) 20重量部
・シリコーンエマルジョン(FZ4658、東レ・ダウコーニング(株)製)10重量部
・界面活性剤(サーフィノール440、日信化学工業(株)製) 3重量部
・水 400重量部
上記実施例および比較例で作製した熱転写受像シートについて以下の評価を行った。
昇華型熱転写プリンターCP−720(キヤノン(株)製)にて、熱転写受像シートにブラックの18ステップに分割された画像の印画を行った。
光学濃度計(グレタグマクベス社製 spectrolino)による光学反射濃度が最大となる値を測定した。
昇華型熱転写プリンターCP−720(キヤノン(株)製)にて、熱転写受像シートに黒ベタ画像を印画し、その際の剥離音を官能評価した。剥離音が大きいと離型性が悪いと判断した。剥離音がしているのは、インクリボン層と受容層樹脂が印画時の熱で融着して、インクリボンの巻上げの力によって、かろうじて剥離している状態であるためである。
○:剥離音がない
×:剥離音がする
2 … 受容層
3 … 多孔質層
4 … 下引き層
5 … プライマー層
10 … 熱転写受像シート
11,12,13 … 塗工液
14 … バックロール
Claims (2)
- 基材シートと、
前記基材シート上に形成され、染料染着性を有し、かつ水系溶媒に分散・溶解可能な受容層形成用樹脂および冷却ゲル化剤を含有する受容層と、を備える熱転写受像シートであって、
前記受容層に金属せっけんが含まれ、
前記金属せっけんが、炭素数10以上の脂肪酸塩を含有するものであり、
前記受容層中における前記金属せっけんの含有量が、固形分比率で5質量%〜30質量%の範囲内であり、
前記基材シートと、前記受容層との間に、中空粒子および冷却ゲル化剤を含有する多孔質層を有し、
さらに、前記受容層が、シリコーンオイルを含むものであることを特徴とする、熱転写受像シート。 - 前記多孔質層が、基材シート側から、中空粒子aを含有する多孔質層Aと、および上記中空粒子aよりも中空率の小さな中空粒子bを含有する多孔質層Bとが積層されたものであることを特徴とする、請求項1に記載の熱転写受像シート。
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