JP2009241332A - 熱転写受像シート - Google Patents

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卓雄 乙丸
Satoshi Shioda
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千絵 藤本
Makoto Aoyanagi
誠 青柳
Asuka Oshima
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Abstract

【課題】水系受容層を備える熱転写受像シートであって、熱転写により水系受容層側に画像を形成した場合に、その後、画像の形成されたシートを高温多湿の環境下において保存しても画像がボケることがなく、しかも熱転写時における熱転写性が損なわれることのない熱転写受像シートを提供する。
【解決手段】基材シート上に水系受容層を備える熱転写受像シートにおいて、上記受容層を、基材シート側から第二受容層と第一受容層との連続する2層で構成し、且つ、第一受容層にのみ熱転写性向上因子を含有させることによって、熱転写後の熱転写受像シート内部における染料の拡散を防止する。
【選択図】図1

Description

本発明は、熱転写方式による印画に用いられる熱転写受像シートに関する。
熱転写を利用した画像の形成方法として、記録材としての熱拡散型染料(昇華型染料)をプラスチックフィルム等の基材シート上に担持させた染料層を備える熱転写シート(以下、「インクリボン」ともいう)と、紙やプラスチックフィルム等の別の基材シート上に受容層を設けた熱転写受像シートとを互いに重ね合わせてフルカラー画像を形成する熱拡散型転写方式(昇華型熱転写方式)が知られている。この方法は、熱拡散型染料を色材としているためドット単位で濃度、階調を自由に調節でき、原稿通りのフルカラー画像を受像シート上に鮮明に表現することができるので、デジタルカメラ、ビデオ、コンピューター等のカラー画像形成に応用されている。その画像は、銀塩写真に匹敵する高品質なものである。
上記熱転写受像シートにおける受容層は、有機系溶媒を用いて受容層構成樹脂を塗布して形成される溶剤系受容層と、水系溶媒を用いて受容層構成樹脂を塗布して形成される水系受容層とに大別される。特に、環境上、あるいは安全上の観点から、水系受容層の有用性が着目されている。
一方、熱転写受像シートの形成方法としては、グラビアコート等により、基材シート上に多孔質層や受容層を順次塗布、乾燥する方法、乾燥工程を含まず塗布工程を複数回にわけて湿式塗布するウェットオンウェット法、あるいは基材シート上に複数の層を同時に塗布する同時多層塗布方法などが知られている。これらの形成方法のうち、特に同時多層塗布方法は、他の形成方法に比べて少ない工程数で熱転写受像シートを得ることができるため注目を浴びている。
同時多層塗布方法の例としては、例えば特許文献1の実施例(熱転写受像シート5の作製)において、基材上に、断熱層や受像層等の複数の層を同時多層塗布することにより形成した熱転写受像シートが開示されている。具体的には、同時多層塗布の塗布方式としてスライドコート法を用いて、熱転写受像シートを得たことが記載されている。また、特許文献2において、水性中間層と水性受容層を同時塗布することを特徴とする熱転写受像シートの製造方法が開示されており(例えば特許文献2請求項1)、さらにまた、特許文献3において、水溶性樹脂を最表層に有するインクジェット記録媒体が開示されており(例えば特許文献3請求項1)、インク受容層用塗布液と塩基性溶液とを同時塗布することについて記載されている。
特に上述する水系受容層を備える熱転写受像シートは、上述する同時多層塗布方法で形成されることが適しているため、この観点からも水系受容層を備える熱転写受像シートの実施が期待されている。
特開2006−88691公報 特開平6−171240号公報 特開2006−103040公報
しかしながら、上記水系受容層を備える熱転写受像シートには以下の問題点があった。即ち、水系受容層を備える熱転写受像シートに用いて、該水系受容層側に画像を熱転写した場合、画像形成後、保存中に該画像がボケてしまうという問題があった。この保存中の画像のボケは、高温・多湿度の環境下で保存した場合に顕著であった。
しかも画像のボケの程度が著しい場合には、基材シートの裏面にまで受容層に染着された染料が滲み出る場合があり、品質上、問題になる場合があった。
本発明者らの鋭意検討により、上記画像のボケの問題は、印画時に受容層に染着した染料が時間の経過とともに拡散し、受容層から基材シート側に移行してしまうことによるものであり、その結果、画像のボケが生じることがわかった。しかも、染料の拡散が著しく、基材シート側まで染料が拡散してしまうと画像のボケは顕著になることがわかった。また上記染料の拡散の原因が、受容層に含有される離型剤などの熱転写性向上因子に起因するという知見を得た。
本発明は上記課題に鑑みなされたものであって、熱転写受像シートの水系受容層側に画像を形成し、その後、画像の形成されたシートを高温多湿度の環境下において保存した場合であっても、画像がボケることなく、高品質な画像が印画されたシートを提供することが可能であって、しかも熱転写性も損なわれない熱転写受像シートを提供することを目的とする。
本発明者らは、これまで一つの層として形成されていた水系受容層を、基材シート側から第二受容層とこれに連続する第一受容層との2つの層から構成し、特に、熱転写時においてインクリボンと当接される第一受容層にのみ熱転写性向上因子を付与することにより本発明を完成させた。
即ち、本発明は、
(1)基材シートと、上記基材シート上に水系溶媒に分散又は溶解可能である染料染着性樹脂から構成される受容層を少なくとも備える熱転写受像シートにおいて、上記受容層が、基材シート側から、第二受容層、第一受容層の順に連続する二層により構成されており、且つ、上記第一受容層にのみ熱転写性向上因子が付与されていることを特徴とする熱転写性受像シート、
(2)上記熱転写性向上因子として、第一受容層に離型剤が含有されていることを特徴とする上記(1)に記載の熱転写受像シート、
(3)上記第二受容層を構成する染料染着性樹脂が、ウレタン系樹脂であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の熱転写受像シート、
(4)上記第二受容層を構成する染料染着性樹脂の染料染着性が、下記染料染着性試験において示される保存前後の色差ΔEabが40以上であることを特徴とする上記(1)乃至(3)のいずれか1つに記載の熱転写受像シート、
染料染着性試験:評価樹脂90重量部、ゼラチン10重量部、シリコーン系離型剤10重量部を上記評価樹脂の固形分濃度が溶液の30重量%となるよう純水にて希釈して塗工液を調製し、厚み75μmのポリエチレンテレフタレート製基材フィルム上に、乾燥後の塗膜が4μmとなるよう上記塗工液を塗布して試験片を作成し、次いで、50℃に加温したオーブンに上記試験片を入れて2分間加熱し、その後、オーブンから出して、上記試験片が室温に戻るのを待って、塗膜表面のa*値及びb*値(L*a*b*表色系における、色相と彩度の尺度)を測色計により、光源D65、照明視野角2度、濃度計算ISO Status A、フィルター無しの条件で測定して、次いで、塗膜側にシアン染料が含有されている染料層を備えるインクリボンを重ねあわせ、ブロッキングテスターによって10kg/cmの圧力を加えて、温度40℃、湿度90%RHのオーブン内に24時間保存し、その後、オーブンから出して、大気圧室温下で、5時間放置した後、上記インクリボンを手動で試験片から引き離し、次いで、塗膜表面のa*値及びb*値を上述と同様に測定し、下記(式1)により塗膜の保存前後の色差ΔEa*b*を算出し、評価樹脂の染料染着性を測定する。
(式1)ΔEa*b*={(保存後のa*値−保存前のa*値)+(保存後のb*値−保存前のb*値)1/2
(5)上記基材シートと上記受容層との間に、水系溶媒に分散または溶解可能な中空粒子樹脂から構成される多孔質層が設けられていることを特徴とする上記(1)乃至(4)のいずれか1つに記載の熱転写受像シート、
(6)上記第2受容層に接する位置であって基材シート側に、プライマー層が設けられていることを特徴とする上記(1)乃至(5)のいずれか1つに記載の熱転写受像シート、
(7)上記基材シート上に積層される全ての層にそれぞれ冷却ゲル化剤が含有されていることを特徴とする上記(1)乃至(6)のいずれか1つに記載の熱転写受像シート、
(8)上記第一受容層を構成する染料染着性樹脂が実質的に未硬化の状態で層を形成していることを特徴とする上記(1)乃至(7)のいずれか1つに記載の熱転写受像シート、
を要旨とするものである。
本発明の熱転写受像シートは、受容層が第一受容層と第二受容層との2層から構成され、各層は、それぞれ水系溶媒に分散又は溶解可能である染料染着性樹脂から構成される水系の受容層である。しかも、シートの最表面に位置する第一受容層には熱転写性因子が付与されており、一方、これに連続する第二受容層には染料の拡散に寄与すると思われる熱転写性向上因子が付与されていない。したがって、本発明の熱転写受像シートを用いて熱転写を行うときには、インクリボンにおける染料層と当接される第一受容層には、熱転写性向上因子が付与されているため、従来どおりの熱転写性が発揮される。また画像形成後、保存環境の影響などにより、第一受容層において受容された染料が、基材シート側に拡散した場合であっても、第二受容層において良好に当該染料が保持されるため、さらなる染料の拡散が防止される。したがって、従来の課題であった画像のボケの発生が良好に防止され、保存環境に左右されず高品質な画像を提供することが可能となった。
また本発明の熱転写受像シートは、水系の熱転写受像シートとして、同時多層塗布による形成を可能とし、また溶媒系のシートに比べて環境上、あるいは安全上における有用性が発揮される。
例えば、上記熱転写性向上因子の1つとして、第一受容層にのみ離型剤が添加された本発明の熱転写受像シートであれば、熱転写時において、染料移行後の第一受容層と染料層との剥離がスムーズに行われ、剥離音なども抑えられる上、第二受容層には離型剤が含有されていないため、離型剤の影響による染料の拡散の虞がなく、当該第二受容層を構成する染料染着性樹脂によって、良好に染料が保持されるため、第二受容層を超えて基材シート側に染料が移行することが良好に防止される。
上述するように本発明における第二受容層の優れた効果は、主として、第一受容層から移行してきた染料を保持し、染料が基材シート側にさらに拡散することを防止することにあるが、第二受容層構成樹脂として染料染着性のウレタン系樹脂を用いたときに、上記効果が好ましく発揮される。
また、第二受容層構成樹脂として、基材シート側にさらに染料が拡散しないよう、染料染着性ΔEabが40以上である樹脂を選択することによれば、第二受容層において染料が充分に保持されるため好ましい。
以下に、本発明の熱転写受像シートを実施するための最良の形態について、図面を用いて詳細に説明する。図1は、本発明の熱転写受像シートの一実施態様を示す概略断面図である。図1に示される本発明の熱転写受像シート11は、基材シート1上に、第二受容層層3と、第一受容層2とがこの順で積層されて構成される受容層4が設けられている。
本発明の熱転写受像シートは、熱転写受像シート11の構成に限定されるものではなく、基材シート1と受容層4との間に、任意の層をさらに設けることができる。例えば、図2に示す熱転写受像シート12のように、基材シート1と受容層4との間に、多孔質層5が設けられていてもよいし、また図3に示す熱転写受像シート13のように、基材シート1上に多孔質層5、プライマー層6及び受容層4がこの順で設けられていてもよいし、あるいはまた図4に示す熱転写受像シート14のように基材シート1と下引き層7、多孔質層5、プライマー層6、受容層4とがこの順で設けられていてもよい。また図2〜図4の組合せ以外であって、多孔質層5、プライマー層6、下引き層7を任意選択で設けることもできるし、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、さらなる他の層を基材シート1と受容層4との間に設けることもできる。
本発明において受容層を第一受容層と第二受容層とに分ける趣旨は、以下のとおりである。即ち、本発明者らは、熱転写受像シートにおいて、上述する水系受容層における画像のボケの問題を鋭意に検討した結果、上記画像のボケの問題は、受容層において、染料染着性と、熱転写シートにおける染料層に対する離型性という2つの性質が求められることに起因するという点に着眼した。
より詳細に述べると、熱転写受像シートにおける受容層は、熱転写時に、熱転写シートにおける染料層から移行される染料を受容層中に保持するために、染料染着性樹脂から構成される。しかしながら、一方、熱転写時には、受容層と染料層とが一定の圧力で密着し短時間に熱によって染料を移行した後は、スムーズに染料層が受容層から剥離されなければならない。したがって、受容層は単に染料染着性樹脂から構成されて染料を保持する性質だけを有していればよいというものではなく、転写時における熱により、染料層から移行してくる染料を、熱転写受像シートにおける受容層において確実に受け止め、また転写後は、受容層から上記染料層がスムーズにはがされる必要がある。したがって、熱転写時の転写性を向上させるために、受容層には1または2以上の熱転写性向上因子が付与される必要があった。
しかしながら、熱転写性向上因子の存在は、インクリボンからの染料をスムーズに移行させ、あるいは、受容層にインクリボンが剥がれづらいほどに接着してしまうことを防止するものであって、受容層中に移行してきた染料を該受容層中に保持する作用とは相反する趣旨によるものである場合が多く、むしろ受容層中に移行してきた染料を拡散させてしまう虞があった。
例えば、上記熱転写性向上因子の1つとして、受容層には該受容層から熱転写シートにおける染料層のはがれをスムーズにするための離型剤が添加されることがある。しかしながら、熱転写後の受像シートを、高温且つ高湿な環境に保存した場合に、シリコーンなどから構成される離型剤の存在により受容層中の染料の拡散が促されることがわかった。
そこで本発明者らは以上の知見から、染料染着性樹脂で構成される層であって、従来の受容層と同様に熱転写性を考慮して熱転写性向上因子を備える第一受容層と、染料層から移行してきた染料の拡散の防止を考慮した第二受容層とに分けて受容層を構成することによれば、受容層に求められる熱転写性と、受容層中における染料の保持性のいずれもが発揮されることを見出し、本発明を完成した。即ち、第一受容層、即ち染料層と当接する層には、従来どおりの熱転写性向上因子を付与するとともに、これに連続して、熱転写性向上因子を有しない第二受容層を設けることによって、第一受容層において染料層から良好に染料を染着せしめるとともに、該熱転写性因子の存在によって第一受容層おいて染料が拡散し基材シート方向に移行した場合であっても、第二受容層において良好に当該染料を保持し、さらなる拡散を防止するものである。
尚、上記図1〜図4に示す本発明の熱転写受像シート11〜14は、いずれも、単層から形成される第一受容層2と、単層から形成される第二受容層3から構成される受容層4を備えている。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、以上に説明する本発明の趣旨に逸脱しない範囲において、第一受容層を複数層に分割して積層形成してもよく、あるいは第二受容層を複数層に分割して積層形成してもよい。
即ち、第一受容層2を形成するための受容層形成用塗工液を2種類以上準備し、任意の順でこれら複数の受容層形成用塗工液を用いて積層し、2以上の層からなる第一受容層2を形成してもよいし、あるいは上記複数の受容層形成用塗工液を用いて、同時多層塗布方法により、一度に複数の層から構成される第一受容層2を形成してもよい。このように複数の層から構成される第一受容層2を構成するために用いられる複数の塗工液は、同一の染料染着性樹脂を含有していてもよいし、また異なる染料染着性樹脂がそれぞれの塗工液に含有されていてもよい。ただし、いずれの層にも、熱転写性向上因子が含有されている必要がある。
また、第二受容層においても同様に、第二受容層3を形成するための受容層形成用塗工液を2種類以上準備し、任意の順でこれら複数の受容層形成用塗工液を用いて積層し、2以上の層からなる第二受容層3を形成してもよいし、あるいは上記複数の受容層形成用塗工液を用いて、同時多層塗布方法により、一度に複数の層から構成される第二受容層3を形成してもよい。このように複数の層から構成される第二受容層3を構成するために用いられる複数の塗工液は、同一の染料染着性樹脂を含有していてもよいし、また異なる染料染着性樹脂がそれぞれの塗工液に含有されていてもよい。ただし、第二受容層3を構成するために用いられる受容層形成用塗工液には、いずれにおいても、熱転写性向上因子は含有されない。
以上に述べるとおり、本発明における受容層は、第一受容層及び第二受容層のいずれも単層形成されてなる態様、あるいは第一受容層は単層形成されており、第二受容層は複数層で構成されてなる態様、あるいは第一受容層は複数層で構成されており、第二受容層は単層形成されている態様のいずれも含まれる。
次に、本発明の受容層4について詳しく説明し、続いて、他の任意の層についてその詳細を説明する。
[第一受容層]
まず、第一受容層2について説明する。第一受容層2は、熱転写受像シートの最表面側に形成される層であり、熱転写受像シート11乃至14を用いて熱転写方式よって印画物を形成する際に、染料を受容する機能を有する層である。第一受容層2は、水系溶媒に分散又は溶解可能である染料染着性樹脂により主として構成され、且つ熱転写性向上因子が付与されてなる。
ここで第一受容層2は、水系溶媒に分散または溶解可能である樹脂から構成される、所謂水系受容層であるため、後述する第二受容層3とともに、基材シート1上に同時多層塗布することが可能である。このように同時多層塗布方法により、本発明の熱転写受像シートを上記同時多層塗布する場合には、第一受容層2に、冷却ゲル化剤が含有されていることが望ましい。
以下に受容層に含有され得る各構成材料について詳細に説明する。
(染料染着性樹脂)
本発明における第一受容層2を構成するための第一受容層構成樹脂としては、水系溶媒に分散又は溶解可能であり、染料染着性のある樹脂であれば特に限定されるものではない。
ただし、第一受容層2の耐熱性をより向上させるためには、第一受容層構成樹脂としては、ガラス転移温度が20℃以上であるものから、選択させることが一般的である。特に、熱転写時における染料層の離型性を考慮した場合には、第一受容層構成樹脂のガラス転移温度は一定以上であって該受容層が良好な耐熱性が示すことが望ましく、その観点からは、第一受容層構成樹脂のガラス転移温度は、30℃以上であることが好ましく、40℃以上であることがより好ましく、50℃以上であることがさらに好ましい。ただし、ガラス転移温度があまり高くなりすぎると、第一受容層2に染料が浸透し難くなる傾向にあり染料層からの染料の移行が抑制される虞がある。したがって、上記観点からガラス転移温度の上限は、120℃以下であることが好ましく、100℃以下であることがより好ましく、80℃以下であることがさらに好ましい。上述するように、染料層の離型性と、染料の浸透の両方を考慮して、受容層構成樹脂を選択することにより、耐熱性に優れた受容層を備える熱転写受像シートを得ることができるからである。
上述する第一受容層構成樹脂の例としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸系樹脂、セルロース誘導体系樹脂、またはポリエーテル系樹脂が用いられる。本発明においては、これらの樹脂のいずれであっても好適に用いることができるが、なかでも、ポリビニル系樹脂が好ましく用いられる。
本発明における第一受容層構成樹脂として好適に用いられるポリビニル系樹脂としては、例えば、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル/アクリル化合物共重合体、エチレン/塩化ビニル/アクリル酸エステル共重合体、エチレン/酢酸ビニル/塩化ビニル共重合体等を挙げることができる。
上記塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体は、塩化ビニルと酢酸ビニルとからなる共重合体であれば特に限定されず、塩化ビニルおよび酢酸ビニルに加えてこれら必須単量体と共重合可能な単量体をも少量重合したものであってもよい。
上記塩化ビニル/アクリル化合物共重合体は、塩化ビニルとアクリル化合物とからなる共重合体であれば特に限定されず、塩化ビニルおよびアクリル化合物に加えてこれら必須単量体と共重合可能な単量体をも少量共重合したものであってもよい。
また上記アクリル化合物としては、例えば、アクリル酸;アクリル酸カルシウム、アクリル酸亜鉛、アクリル酸マグネシウム、アクリル酸アルミニウム等のアクリル酸塩;メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、n−ステアリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート等のアクリル酸エステル;メタクリル酸;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸シクロヘキシル、ジメタクリル酸トリエチレングリコール、ジメタクリル酸1,3−ブチレン、トリメタクリル酸トリメチロールプロパン等のメタクリル酸エステル等を挙げることができる。
尚、本明細書において、「アクリル化合物」とは、(メタ)アクリル酸および/またはそのアルキルエステルを意味する。
上記エチレン/塩化ビニル/アクリル酸エステル共重合体およびエチレン/酢酸ビニル/塩化ビニル共重合体(以下、各共重合体を総称して、「エチレン/塩化ビニル系共重合体」といもいう。)は、少なくとも、エチレン、塩化ビニルおよびアクリル酸エステルの3種、または、エチレン、酢酸ビニルおよび塩化ビニルの3種の単量体を重合して得られる共重合体であれば特に限定されず、これらの3種の単量体以外に少量の微量単量体をも共重合したものであっても良い。
上記エチレン/酢酸ビニル/塩化ビニル共重合体は、エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)と塩化ビニルとの共重合体であっても良く、該EVA/塩化ビニル共重合体としては、EVAに塩化ビニルをグラフト共重合したものであっても良い。EVAは、該共重合体における酢酸ビニル単位の全部または一部が鹸化されたものをも含む。
本発明において、上記エチレン/塩化ビニル/アクリル酸エステル共重合体を構成する「アクリル酸エステル」は、アクリル酸エステルに加え、メタクリル酸エステルをも含む概念である。上記アクリル酸エステルとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、n−ステアリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート等を挙げることができ、上記メタクリル酸エステルとしては、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸シクロヘキシル、ジメタクリル酸トリエチレングリコール、ジメタクリル酸−1,3−ブチレン、トリメタクリル酸トリメチロールプロパン等を挙げることができる。尚、単層で第一容層2を形成する場合に、第一受容層構成樹脂は、1種の染料染着性樹脂を用いてもよく、単量体組成、数平均分子量等が異なる2種以上の染料染着性樹脂を組み合わせて用いてもよい。
(水系溶媒)
本発明において、上記第一受容層2を構成する染料染着性樹脂を分散又は溶解するために用いられる「水系溶媒」とは、水を主成分とする溶媒をいう。水系溶媒における水の割合は、通常60重量%以上であり、好ましくは70重量%以上であり、より好ましくは80重量%以上である。上記水以外の溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール等のアルコール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン等のグリコール類;酢酸エチル、酢酸プロピル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類等を例示することができる。
(熱転写性向上因子)
本発明における熱転写性向上因子とは、上述のとおり、熱転写時に、熱転写シートにおける染料層から第一受容層2に確実に染料が移行され、且つ、染料移行後はスムーズに第一受容層2と染料層とが剥離されるために、第一受容層2に付与される因子である。より具体的には、第一受容層2に添加される離型剤の存在が、第一受容層2の熱転写性を向上させるための因子の例として挙げられる。
本発明における熱転写性向上因子の1つとして挙げられる上記離型剤は、本発明における第一受容層2において必須の成分ではないが、下記の理由から受容層構成材料として用いられることが好ましい。即ち、樹脂は一般的に固有のガラス転移温度を示すが、本発明における第一受容層2を構成するための染料染着性樹脂のガラス転移温度が低いと、印画時の染料層との離型性が不良になる場合がある。これに対し、離型剤を受容層構成材料に含有させることにより、不足となる印画時の離型性を向上させることができるのである。
上記離型剤は、染料染着性樹脂100重量部に対して、0.5重量部〜30重量部の範囲内となるように添加されることが好ましい。
本発明に用いられる離型剤の例としては、シリコーンオイル、リン酸エステル系化合物、フッ素系化合物等の従来公知のものを挙げることができる。これらの中でも特に、シリコーンオイルが、本発明に用いられる染料染着性樹脂との相性がよく、好適に用いられる。より具体的なシリコーンオイルの例としては、エポキシ変性シリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、フェニル変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、ビニル変性シリコーンオイル、ハイドロジェン変性シリコーンオイル等の変性シリコーンオイルが好ましい。また、エマルジョン化したシリコーンを用いることもできる。
(冷却ゲル化剤)
また、本発明によれば上記第一受容層2には、任意で冷却ゲル化剤を添加することができる。特に、スライドコート法等の同時多層塗布方法によって熱転写受像シート11乃至14の如く、第一受容層2及び第二受容層3を含む複数の層が基材シート1上に積層形成される熱転写受像シートを製造する際には、各層に冷却ゲル化剤を添加することによって、高効率で製造することが可能になる。
尚、後述するバリヤ層、多孔質層、あるいは下引き層などの本発明の熱転写受像シートにおいて設けられる各層においても、冷却ゲル化剤の添加は任意であるが、同時多層塗布方法により熱転写受像シートを製造する際には、上述のとおり、いずれの層にも冷却ゲル化剤が添加されていることが望ましい。
上述する本発明に用いられる冷却ゲル化剤は、冷却されることによりゲル化する性質を有するものである。上記冷却ゲル化剤としては、冷却ゲル化特性を備えるものであれば特に限定されるものではないが、特に、水に溶解した状態の冷却ゲル化剤において、80℃における該冷却ゲル化剤の粘度に対し、15℃における該冷却ゲル化剤の粘度が3倍以上のものが好ましく、5倍以上のものがより好ましく、10倍以上のものが特に好ましい。
本発明に用いられる冷却ゲル化剤としては、例えば、ゼラチン、ポリビニルアルコール、寒天、κ−カラギーナン、λ−カラギーナン、ι−カラギーナン、ペクチン等を挙げることができる。
上記ゼラチンは、三重へリックス構造を有するコラーゲンを変性させることによって得られるペプチド鎖からなるものであり、冷却されることにより部分的に上記三重へリックス構造を回復し、回復された三重へリックス構造を起点として三次元ネットワークを形成することにより、冷却ゲル化特性を示すものである。
上記κ−カラギーナン、λ−カラギーナン、および、ι−カラギーナンは、紅藻類海藻から抽出される数平均分子量100000〜500000程度のガラクトース、3,6−アンヒドロガラクトースを主成分とする天然高分子化合物である。分子内に半エステル型の硫酸基を有することを特徴とするものであり、通常、ローカストビーンガムや、金属塩化合物等の増粘剤が併用されることにより、冷却ゲル化特性を示すものである。
上記ペクチンは、植物の細胞壁を構成する天然多糖類であり、イオン性の化合物と併用されることにより、冷却ゲル化特性を示すものである。
本発明においては、上記冷却ゲル化剤のいずれであっても好適に用いることができる。また、本発明においては、1種類の冷却ゲル化剤のみを用いてもよく、あるいは、2種類以上の冷却ゲル化剤を組み合わせて用いてもよい。
また本発明の第一受容層2を形成するための第一受容層形成用塗工液において、冷却ゲル化剤の含有量は、第一受容層2の染料染着性を妨害しない範囲で、充分に下記効果を与える範囲内であれば特に限定されない。即ち、第一受容層2の染料染着性を妨害しない範囲で、熱転写受像シート11を製造する際に、基材シート1上に第二受容層3と第一受容層2とを同時多層塗布した際に、第一受容層形成用塗工液の良好な塗布性を確保し、また乾燥工程において乾燥ムラを防止する程度に冷却ゲル化剤が添加される。一般的には、上記冷却ゲル化剤は、受容層形成用塗工液中の固形分100重量部に対して、乾燥時の重量換算で2〜50重量部の範囲内であることが好ましく、特に2〜30重量部の範囲内であることが好ましく、さらに2〜20重量部の範囲内であることが好ましい。冷却ゲル化剤の配合比が2重量部よりも少ないと、例えば、上記受容層形成用塗工液を上記基材シート1上に塗布・乾燥する際に、ムラなどが生じやすく、同時多層塗布により良好に熱転写受像シート11が形成されない虞がある。また、上記範囲よりも多いと、例えば、画像形成の際に染料の染着を妨害し、画像濃度が低下する虞がある。尚、上記冷却ゲル化剤は、一般的に水系溶媒に溶解させた後に、受容層形成用塗工液に混合される。ゲル化剤の水系溶媒に溶解させる際の濃度は、受容層塗工液の濃度や粘度、あるいは第一受容層2と隣接して形成させる他の層の粘度や表面張力などとの関係で適宜調製することができる。
(任意添加成分)
上述する第一受容層2の構成材料以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、適宜その他の添加剤を第一受容層2の構成材料として使用することができる。その他の任意添加成分としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、フィラー、顔料、帯電防止剤、可塑剤、熱溶融性物質、架橋剤等を挙げることができる。
尚、上記架橋剤は、第一受容層2の構成樹脂を硬化させる趣旨で、第一受容層形成用塗工液に添加されることが一般的である。ただし、用いられる架橋剤や第一受容層構成樹脂の種類によっては、塗工液を塗布する前にすでに硬化が始まってしまう場合があり、架橋液の使用によって塗工液のポットライフを短くしてしまう場合がある。また架橋剤を添加することにより樹脂が硬化された第一受容層2では、未印画状態での保存後発色特性に問題が生じる場合がある。したがって、上記問題点を勘案すれば、第一受容層形成用塗工液に、架橋剤を添加せず、したがって、第一受容層構成樹脂は実質的に未硬化な状態で第一受容層を構成することが望ましい。
上述のとおり構成される第一受容層2の厚みは、上記第一受容層構成樹脂の種類や、染着されるインクの種類などに応じて所望の印画濃度を発現できる範囲内で適宜決定することができるが、なかでも本発明においては、0.5μm〜20μmの範囲内であることが好ましく、特に1μm〜20μmの範囲内であることが好ましく、さらに1μm〜15μmの範囲内であることが好ましい。尚、第一受容層2が複数の層から積層構成される場合には、第一受容層2を構成する各層の厚みの総和が上記好ましい厚みの範囲内であればよい。
上述する第一受容層2の構成材料の各成分を、上記水系の溶媒に分散あるいは溶解されることによって第一受容層形成用塗工液が調整される。水系溶媒に各成分を分散あるいは溶解させる順番などは特に限定されないが、冷却ゲル化剤を使用する際には、適当量の冷却ゲル化剤を、まず水系溶媒に溶解させ、次いで、他の成分とあわせて、あるいは他の成分が分散あるいは溶解する水系溶媒に、この溶解した冷却ゲル化剤を混合させることが一般的である。
特に、同時多層塗布方法にて熱転写受像シート11が製造される場合には、上記第一受容層形成用塗工液の粘度は、基材シート上に同時に塗布される他の塗工液と混合しない程度であれば特に限定されるものではないが、40℃において、5mPa・s〜50mPa・sの範囲内であることが好ましく、特に10mPa・s〜50mPa・sの範囲内であることが好ましく、さらに15mPa・s〜45mPa・sの範囲内であることが好ましい。尚、上記粘度は、例えば、小型振動式粘度計(VIBRO VISCOMETER CJV5000、A&D社製)を用いて測定することができる。
また同時多層塗布方法による熱転写受像シート11の製造に用いられる第一受容層形成用塗工液の固形分濃度としては、粘度を上記所望の程度にできる範囲内であれば特に限定されるものではないが、なかでも10重量%〜50重量%の範囲内、なかでも10重量%〜40重量%の範囲内であることが好ましく、このような固形分となるように前述した水系溶媒によって各固形分が分散または溶解される事が好ましい。固形分濃度が低すぎると、溶液の粘度が低下し、また乾燥時間が長くなり、固形分濃度が高すぎると、塗工液の保存安定性が低下し、粘度が上昇して塗工に不都合を生ずるからである。
[第二受容層]
次に第二受容層3について説明する。第二受容層3は、上述する第一受容層2に接し、基材シート1側に形成される層であり、熱転写受像シート11乃至14を用いて熱転写方式よって印画物を形成された際に、染料を受容する機能を有する層である。第二受容層3は、水系溶媒に分散又は溶解可能である染料染着性樹脂により主として構成され、且つ熱転写性向上因子は付与されない。
ここで第二受容層3は、水系溶媒に分散または溶解可能である樹脂から構成される、所謂水系受容層であるため、上記第一受容層2とともに、基材シート1上に同時多層塗布することが可能である。このように同時多層塗布方法により、本発明の熱転写受像シートを上記同時多層塗布する場合には、第二受容層3に、冷却ゲル化剤が含有されていることが望ましい。また用いられる冷却ゲル化剤の例およびその使用量は、上述する第一受容層2と同様の範囲から決定される。
(染料染着性樹脂)
第二受容層3を構成するための樹脂としては、水系溶媒に分散又は溶解可能であり、染料染着性のある樹脂であれば特に限定されるものではない。
ただし、第二受容層3の耐熱性をより向上させるためには、受容層構成樹脂としては、ガラス転移温度が20℃以上であるものが好ましく、30℃以上であるものがより好ましく、40℃以上であるものがさらに好ましい。また、上記受容層構成樹脂はガラス転移温度が120℃以下であるものが好ましく、第二受容層3は、熱転写時における染料層の離型性を考慮する必要がないため、層中おける染料の保持性を阻害しない範囲において、求められる耐熱性などを勘案し、望ましいガラス転移温度を示す染料染着性樹脂を選択することができる。
第二受容層構成樹脂として使用可能な樹脂の例は、上述する第一受容層構成樹脂の例と同様である。第一受容層構成樹脂と、第二受容層構成樹脂とは同一の樹脂を用いることも可能であるし、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、異なる樹脂を用いてそれぞれの層を構成することもできる。尚、単層で第二受容層3を形成する場合に、第二受容層構成樹脂は、1種の染料染着性樹脂を用いてもよく、単量体組成、数平均分子量等が異なる2種以上の染料染着性樹脂を組み合わせて用いてもよい。また特に、第二受容層構成樹脂としては、酸価が比較的高いものを選択することにより、画像のにじみ防止の効果が非常に良好に得られる傾向にある。
第二受容層構成樹脂として、特に好ましい染料染着性樹脂の例としては、染料染着性の観点から、染料染着性ΔEabが40以上のものを選択することが好ましい。また樹脂の種類としては、ウレタン系の樹脂を選択することが好ましい。
上記染料染着性ΔEabは、具体的には以下のとおり測定される。まず、評価樹脂(第二受容層構成樹脂)90重量部、ゼラチン10重量部、シリコーン系離型剤10重量部を上記評価樹脂の固形分濃度が溶液の30重量%となるよう純水にて希釈して塗工液を調製し、厚み75μmのポリエチレンテレフタレート製基材フィルム上に、乾燥後の塗膜が4μmとなるよう上記塗工液を塗布して、基材フィルム上に塗膜を備える試験片を作成する。次いで、50℃に加温したオーブンに上記試験片を入れて2分間加熱し、その後、オーブンから該試験片を出して、上記試験片が室温に戻るのを待って、塗膜表面のa*値及びb*値(L*a*b*表色系における、色相と彩度の尺度)を測色計により、光源D65、照明視野角2度、濃度計算ISO Status A、フィルター無しの条件で測定する。次いで、塗膜側にシアン染料が含有されている染料層を備えるインクリボンを重ねあわせ、ブロッキングテスターによって10kg/cmの圧力を加えて、温度40℃、湿度90%RHのオーブン内に24時間保存し、その後、オーブンから外に出して、大気圧室温下で、5時間放置した後、上記インクリボンを手動で試験片から引き離した後、塗膜表面のa*値及びb*値を上記と同様の方法で測定し、下記(式1)により塗膜の保存前後の色差ΔEa*b*を算出し、評価樹脂の染料染着性を測定する。また上記測色計としては、Gretag Macbeth社製Spectrolinoを用いた。
(式1) ΔEa*b*={(保存後のa*値−保存前のa*値)+(保存後のb*値−保存前のb*値)1/2
尚、上記染料染着性の測定において、第二受容層構成樹脂にシリコーン系離型剤を添加して測定している趣旨は、本測定において、第二受容層構成樹脂よりなる層に直接、強制的にインクリボンを当接し、次いで引き離す必要があるため、インクリボンの引き離しをスムーズにするためのものに過ぎない。したがって、上記測定において、シリコーン系離型剤を添加していることは、本発明の熱転写受像シートにおける第二受容層3中に該離型剤を添加することを意図するものではない。
(水系溶媒)
本発明において、上記第二受容層3を構成する染料染着性樹脂を分散又は溶解するために用いられる「水系溶媒」とは、水を主成分とする溶媒をいい、上記第一受容層2において述べた水系溶媒から適宜選択して使用することができ、また水の割合についても第一受容層2と同様の範囲から適宜決定することができる。
(任意添加成分)
上述する第二受容層3の構成材料以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、適宜その他の添加剤を第一受容層2の構成材料として使用することができる。その他の任意添加成分としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、フィラー、顔料、帯電防止剤、可塑剤、熱溶融性物質等を挙げることができる。
上述のとおり構成される第二受容層3の厚みは、上記第一受容層構成樹脂の種類や、染着されるインクの種類などに応じて所望の印画濃度を発現できる範囲内で適宜決定することができるが、なかでも本発明においては、0.5μm〜20μmの範囲内であることが好ましく、特に1μm〜20μmの範囲内であることが好ましく、さらに1μm〜15μmの範囲内であることが好ましい。尚、第一受容層2が複数の層から積層構成される場合には、第二受容層3を構成する各層の厚みの総和が上記好ましい厚みの範囲内であればよい。また第一受容層2と第二受容層3とから構成される受容層4は、1μm〜40μmの厚みの範囲内で一般的に形成されるが、好ましくは、1μm〜30μmの範囲内に形成され、より好ましくは2μm〜25μmの範囲内で形成される。
上述する第二受容層3の構成材料の各成分を、上記水系の溶媒に分散あるいは溶解されることによって第二受容層形成用塗工液が調整される。水系溶媒に各成分を分散あるいは溶解させる順番などは特に限定されないが、冷却ゲル化剤を使用する際には、適当量の冷却ゲル化剤を、まず水系溶媒に溶解させ、次いで、他の成分とあわせて、あるいは他の成分が分散あるいは溶解する水系溶媒に、この溶解した冷却ゲル化剤を混合させることが一般的である。
特に、同時多層塗布方法にて熱転写受像シート11等が製造される場合には、上記第二受容層形成用塗工液の粘度は、基材シート上に同時に塗布される他の塗工液と混合しない程度であれば特に限定されるものではないが、40℃において、1mPa・s〜45mPa・sの範囲内であることが好ましく、特に5mPa・s〜45mPa・sの範囲内であることが好ましく、さらに10mPa・s〜40mPa・sの範囲内であることが好ましい。尚、上記粘度は、例えば、小型振動式粘度計(VIBRO VISCOMETER CJV5000、A&D社製)を用いて測定することができる。
また同時多層塗布方法による熱転写受像シート11の製造に用いられる第一受容層形成用塗工液の固形分濃度としては、粘度を上記所望の程度にできる範囲内であれば特に限定されるものではないが、なかでも10重量%〜50重量%の範囲内、なかでも10重量%〜40重量%の範囲内であることが好ましく、このような固形分となるように前述した水系溶媒によって各固形分が分散または溶解される事が好ましい。固形分濃度が低すぎると、溶液の粘度が低下し、また乾燥時間が長くなり、固形分濃度が高すぎると、塗工液の保存安定性が低下し、粘度が上昇して塗工に不都合を生ずるからである。
[基材シート]
次に、基材シート1について説明する。基材シート1は、上述した受容層4を支持する機能を有するものである。本発明に用いられる基材シート1としては、本発明の熱転写受像シート11を用いて第一受容層2側に画像を形成する際の印画温度等に応じて、所望の耐熱性を備えるものであれば特に限定されるものではない。具体的には、レジンコート紙、樹脂製フィルム基材、および紙製基材等を挙げることができ、なかでもレジンコート紙が好ましい。
上記レジンコート紙は、通常、基紙の両面に基材樹脂層を積層してなるものである。上記基紙を構成する原紙としては、例えば、天然パルプ、合成パルプ、それらの混合物から抄紙されるパルプ紙等を挙げることができ、なかでも木材パルプを主成分とする紙を用いることが好ましい。また、上記原紙は、必要に応じて後述するカレンダー処理等の従来公知の処理を施したものであってもよい。
上記基紙は、公知の方法によって作製することができるが、原紙に対してカレンダー処理したものが好ましい。原紙にカレンダー処理をした基紙を用いると、平滑度を向上することができ、得られる熱転写受像シートの光沢感を高めることができるからである。また上記基紙の厚みは、10μm〜1000μmの範囲内であることが好ましく、50μm〜300μmの範囲内であることがより好ましい。
上記基材樹脂層を形成するための樹脂としては、ネックインが小さく、ドローダウン性が良好な樹脂であることが好ましく、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、アイオノマー樹脂、ナイロン、ポリウレタン等を挙げることができ、耐水性、強度、光沢等に優れたフィルムが得られる点で、ポリオレフィン樹脂が好ましい。
上記ポリオレフィン樹脂としては、例えば高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテン等を挙げることができ、中でも高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレンが好ましく、特にポリプロピレンが好ましい。
上記基材樹脂層は、上記樹脂を1種もしくは2種以上混合して得られるフィルムまたはシートであっても良いし、上記基材樹脂層を形成するための樹脂に加え、顔料、充填剤等を加えて成膜したフィルムまたはシートであっても良い。また、上記基材樹脂層を形成するための樹脂は、改質剤等の添加剤を配合し、接着性を向上させたものであっても良い。上記改質剤としては、例えば、タフマー(三井化学社製)等のオレフィン系コポリマー等を挙げることができる。
上述のとおり基紙の両面に基材樹脂層を積層してなるレジンコート紙は、例えばドライラミネーション、ウェットラミネーション、エクストリュージョン等の公知の積層方法により作製することができる。上記各層は、層間密着力を向上させることを目的として、その表面にコロナ放電処理などの下地処理を施すことができる。また上記レジンコート紙である基材シート1の厚みは、全体で、例えば10μm〜1000μmの範囲内、中でも50μm〜300μmの範囲内であることが好ましい。
次に、上記樹脂製フィルム基材について説明する。本発明における基材シート1として用いられる樹脂製フィルム基材は、例えば、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、セルロース誘導体、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ナイロン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、テトラフルオロエチレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル、ポリビニルフルオライド、テトラフルオロエチレン−エチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド等の樹脂から成形することができる。なかでも本発明においては、ポリエチレンテレフタレートあるいはポリプロピレン樹脂は、上記樹脂製フィルム基材を形成するための樹脂として好適に用いることができる。
上記樹脂製フィルム基材である基材シート1の厚みとしては、例えば20μm〜100μmの範囲内、中でも、25μm〜60μmの範囲内、特に30μm〜50μmの範囲内であることが好ましい。
また基材シート1として用いられる紙製基材としては、例えば、コンデンサーペーパー、グラシン紙、硫酸紙、または、サイズ度の高い紙、合成紙(ポリオレフィン系、ポリスチレン系)、上質紙、アート紙、コート紙、キャストコート紙、壁紙、裏打用紙、合成樹脂又はエマルジョン含浸紙、合成ゴムラテックス含浸紙、合成樹脂内添紙、板紙、セルロース繊維紙等を挙げることができる。
上記紙製基材を用いて基材シート1とする場合には、その厚みは特に限定されるものではないが、例えば80μm〜400μmの範囲内、中でも100μm〜300μmの範囲内、特に100μm〜210μmの範囲内であることが好ましい。
[多孔質層]
図2において示される多孔質層5は、基材シート1と受容層4との間に形成されるものであり、少なくともバインダー樹脂及び中空粒子を含んで構成され、さらに好ましくは冷却ゲル化剤を含んで構成されるものである。多孔質層5は、本発明の熱転写受像シートを用いて画像を形成する際に、サーマルヘッドから第一受容層2に加えられた熱が、基材シート1等へ伝熱することによって基材シート1が損失することを防止するための断熱性をシートに付与するための層である。また、サーマルヘッドからの熱が、印画時の染料の昇華に効率よく使用されるための高効率な熱利用の観点からも、多孔質層5を形成することは望ましい。加えて、多孔質層5は中空粒子を含有することによりクッション性を有しており、多孔質層5を備える熱転写受像シートにおいて、画像形成時における濃度ムラやハイライト部の白抜けが防止され印画特性を向上させることができる。
多孔質層5が備える断熱性は、多孔質層5の厚み、あるいは多孔質層5内に含有される中空粒子の量に主として起因する多孔質層の空隙率などによって任意に調整することができる。この多孔質層5の断熱性は、本発明の熱転写受像シート12の用途等に応じて適宜調整することができる。
多孔質層5に充分な断熱性を与えるという観点から、多孔質層5の厚みは、10μm〜100μmの範囲内であることが好ましく、10μm〜50μmの範囲内であることがより好ましい。またこのとき、上記多孔質層5の密度は、0.1g/cm〜0.8g/cmの範囲内、なかでも0.2g/cm〜0.7g/cmの範囲内であることが好ましい。
また同様に、多孔質層5に充分な断熱性を与えるという観点から、多孔質層5の空隙率は、15%〜80%の範囲内であることが好ましい。尚、上記空隙率は、
(中空粒子の空隙率)×(多孔質層における中空粒子の含有率)
で表される値を指すものとする。
本発明に用いられる多孔質層5は、単一の層からなる構成を有するものであってもよく、あるいは、複数の層が積層された構成を有するものであってもよい。ここで、複数の層が積層された構成を有する多孔質層5としては、同一組成の層が積層された構成を有するものであってもよく、あるいは、異なる組成の層が積層された構成を有するものであってもよい。なかでも本発明に用いられる多孔質層5は、組成の異なる2層が積層された構成を有するものであることが好ましい。このような構成とすることにより、さらに機能的な多孔質層5を得ることができるからである。
本発明に用いられる多孔質層5が2層構造である場合の一例としては、上記多孔質層5が、基材シート1側から、中空粒子aを含有する多孔質層Aと、および上記中空粒子aよりも中空率の小さな中空粒子bを含有する多孔質層Bとが積層された構成を有するものを挙げることができる。多孔質層5としてこのような2層構造よりなるものを用いることにより、印画時における濃度ムラやハイライト部の白抜け防止といった印画特性の向上効果がさらに良好に発揮され得る。
(中空粒子)
多孔質層5に含有される中空粒子について説明する。本発明において用いられる中空粒子は多孔質層5に断熱性及びクッション性を付与する機能を有するものである。したがって、上記中空粒子としては、多孔質層5に所望の断熱性およびクッション性を付与できるものであれば特に限定されるものではなく、発泡粒子を用いてもよく、あるいは、非発泡粒子を用いることもできる。また、中空粒子として用いられる上記発泡粒子は、独立発泡粒子であってもよく、あるいは、連続発泡粒子であってもよい。さらに、本発明に用いられる中空粒子は、樹脂等から構成される有機系中空粒子であってもよく、ガラス等から構成される無機系中空粒子であってもよい。また、上記中空粒子は、架橋中空粒子であってもよい。
上記中空粒子を構成する樹脂としては、例えば、架橋スチレン−アクリル樹脂等のスチレン系樹脂、アクリロニトリル−アクリル樹脂等の(メタ)アクリル系樹脂、フェノール系樹脂、フッ素系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエーテル系樹脂等を挙げることができる。
上記中空粒子の平均粒径は、中空粒子を構成する樹脂の種類等に応じて、多孔質層に所望の断熱性およびクッション性を付与できる範囲であれば特に限定されるものではないが、通常、0.1μm〜15μmの範囲内であることが好ましく、特に0.1μm〜10μmの範囲内であることが好ましい。平均粒径が小さすぎると、中空粒子の使用量が増えコストが高くなり、平均粒径が大きすぎると、平滑な多孔質層を形成することが困難になるからである。
本発明において、多孔質層5に含まれる中空粒子の量としては、所望の断熱性およびクッション性を有する多孔質層5を得ることができれば特に限定されるものではないが、多孔質層5に含まれる全固形分を100重量%としたときに、中空粒子の割合が30重量%〜90重量%の範囲内であることが好ましく、なかでも50重量%〜80重量%の範囲内であることが好ましい。含有量が少なすぎると、多孔質層における空隙が少なくなり、充分な断熱性およびクッション性が得られない場合があり、含有量が多すぎて後述する多孔質層形成用バインダー樹脂の重量比が小さくなりすぎると、多孔質層が脆くなり層の成形性が悪くなる虞があるからである。
(多孔質層形成用バインダー樹脂)
多孔質層5を形成するために用いられるバインダー樹脂としては、通常、水系溶媒に分散あるいは溶解可能な所謂、水系樹脂が用いられる。このような水系樹脂としては、例えば、アクリル系ウレタン樹脂等のポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオイキサイド、ポリビニルピロリドン、プルラン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、デキストラン、デキストリン、ポリアクリル酸及びその塩、寒天、κ−カラギーナン、λ−カラギーナン、ι−カラギーナン、カゼイン、キサンテンガム、ローカストビーンガム、アルギン酸、アラビアゴム、特開平7−195826号公報及び同7−9757号公報に記載のポリアルキレノキサイド系共重合ポリマー、水溶性ポリビニルブチラール、あるいは、特開昭62−245260号公報に記載のカルボキシル基やスルホン酸基を有するビニルモノマーの単独重合体や共重合体等を挙げることができる。また、上記樹脂の2種類以上を組み合わせて用いても良い。尚、上記多孔質形成用バインダー樹脂として、例えばゼラチン、ポリビニルアルコール、寒天、κ−カラギーナン、λ−カラギーナン、ι−カラギーナン等の材料を用いる場合には、これらバインダー樹脂は、冷却ゲル化機能も発揮し得るため、別途、後述する冷却ゲル化剤を用いずとも、同時多層塗布方法において良好に製造可能である。
本発明において、多孔質層5に含まれるバインダー樹脂の量は、用いられる中空粒子の種類や、熱転写受像シート12に求められる断熱性、画像形成条件などによって適宜決定されるが、一般的には、多孔質層5に含まれる全固形分を100重量%としたときに、バインダー樹脂の割合は、5重量%〜70重量%であることが好ましく、10重量%〜60重量%であることがより好ましく、15重量%〜40重量%であることが特に好ましい。バインダー樹脂の含有量が少なすぎると、多孔質層5が脆くなり、層形成が不良に成る虞がある。またバインダー樹脂が多くなりすぎると、中空粒子の含有率が充分に確保されず、所期の目的である多孔質層の断熱性およびクッション性が確保されない虞がある。
(冷却ゲル化剤)
次に、多孔質層5に用いられる冷却ゲル化剤について説明する。本発明に用いられる冷却ゲル化剤は、冷却されることによりゲル化する性質を有するものであり多孔質層5へ添加は任意であるが、熱転写受像シート12を同時多層塗布方法により成形する際には、第一受容層2及びバリヤ層3に冷却ゲル化剤を含有させると共に、多孔質層5にも冷却ゲル化剤を含有させる必要がある。尚、多孔質層5に用いられる冷却ゲル化剤の種類については、上述する第一受容層2に用いられる冷却ゲル化剤と同様である。
また本発明において、多孔質層5中に含有される中空粒子と、冷却ゲル化剤との割合は、所望の断熱性を有する多孔質層を形成することができれば特に限定されるものではない。なかでも、本発明においては、冷却ゲル化剤が、多孔質層塗工液中の固形分100重量部に対して、重量換算で5〜50重量部の範囲内であることが好ましく、特に10〜40重量部の範囲内であることが好ましく、さらに12〜40重量部の範囲内であることが好ましい。中空粒子と冷却ゲル化剤の含有比が上記範囲内であることにより、断熱性に優れた多孔質層5を形成することができるからである。
(任意の添加成分)
本発明に用いられる多孔質層5は、上述する中空粒子、バインダー樹脂及び冷却ゲル化剤以外にも、必要に応じて任意の添加成分を含むものであってよい。上記任意の添加成分として多孔質層5に含有させることができるものとしては、ノニオン系シリコーン系等の界面活性剤、イソシアネート化合物等の硬化剤、濡れ剤、および、分散剤等を挙げることができる。
[プライマー層]
次にプライマー層6について説明する。プライマー層6は、上記第一受容層2と多孔質層5との接着性を向上させる機能を有する中間層である。即ち、本発明においてプライマー層とは、受容層とプライマー層以外の中間層との接着性を向上させるために形成される層を意味する。
(プライマー層構成樹脂)
プライマー層6を構成樹脂は、多孔質層5などの中間層と第一受容層2との接着性を所望の程度に向上できるものであれば特に限定されるものではない。なかでも本発明においては、水系溶媒に分散あるいは溶解可能な樹脂で構成されていることが好ましい。このようにプライマー層構成樹脂が水系溶媒に分散あるいは溶解可能な材料で形成されることにより、本発明の製造方法における同時重層塗布工程において、該プライマー層をこれに隣接する他の中間層と共に同時に塗布することが可能だからである。
ここで、プライマー層構成樹脂としては、上述する多孔質層5に関して記載した、多孔質層構成樹脂として用いられる水系樹脂と同様のものを用いることができる。
また本発明に用いられる上記プライマー層構成樹脂は、ガラス転移温度が20℃以上であるものが好ましく、40℃以上であるものがより好ましく、50℃以上であるものがさらに好ましい。このような範囲のガラス転移温度を有するバリヤ層構成樹脂を用いることにより、特に耐熱性に優れた熱転写受像シートを得ることができるからである。
また、プライマー層6に用いられるプライマー層構成樹脂として、特に、上記多孔質層形成として例示される樹脂であって、且つ、染料染着性の低い樹脂を選択的に用いることにより、上記接着性効果に加えて、本発明の課題である画像のボケをさらに確実に防止することが可能である。即ち、受容層4に隣接する位置に設けられるプライマー層6を染料染着性の低い樹脂で構成することによれば、プライマー層6内への染料の移行が妨げられ染料のバリヤ効果が発揮される。
尚、得られた熱転写受像シートの受容層側に染料を染着させて画像を形成した後、高温高湿な環境下で画像形成後の熱転写受像シートを長期間保存した場合に、受容層に染着した樹脂が、受容層から基材シート側に拡散し、画像のボケが発生してしまうことがあることは上述のとおりである。これに対し、本発明では、受容層を2つの層で構成し、基材シート側に位置する第二受容層には、染料の拡散を促進させると思われる熱転写性向上因子を付与することなく形成することによって、第一受容層から移行してきた染料の拡散を該第二受容層において抑えることにより上記課題を解決するものである。しかしながら、第二受容層の厚みを薄く設計した場合や、保存環境が劣悪である場合、あるいは求められる画像の品質などによっては、さらにバリヤ効果のあるプライマー層6を受容層4と基材シート1との間に設けることが好ましい。
尚、本明細書において、染料染着性の低い樹脂というときは、下記染料染着性試験において示される保存前後の色差ΔEabが40未満の樹脂を意味し、ΔEabが30未満であることが好ましく、20未満であることがより好ましく、10未満であることが特に好ましい。上記染料染着性試験は、第二受容層3の説明において記載した染料染着性試験と同様の方法により行われる。
上記バリヤ効果を発揮するプライマー層構成樹脂としては、例えばポリオレフィン樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド系樹脂、セルロース誘導体系樹脂、またはポリエーテル系樹脂等であって、ΔEabが40未満のものが用いられる。
(冷却ゲル化剤)
また、プライマー層6には冷却ゲル化剤が含まれることが好ましい。プライマー層6にも冷却ゲル化剤が含まれることにより、本発明の熱転写受像シートを製造方法において、基材シート1上に、プライマー層6とこれに隣接する他の中間層とを同時重層塗布方法によって良好に製造することが可能だからである。ここで、上記冷却ゲル化剤としては、上述する第一受容層2に用いられる冷却ゲル化剤と同様のものを用いることができる。
(中空粒子)
また、プライマー層6に中空粒子を添加することによって、プライマー層6に断熱性能を付与してもよい。プライマー層6に中空粒子を添加することにより、プライマー層6が、第二受容層3と他の層との接着性を向上させるなどの本来の機能を発揮するだけでなく、断熱効果をも発揮させることができる点で好ましい。即ち、受容層4と隣接する位置、あるいは受容層4と基材シート1との間であって受容層4に近い位置に、中空粒子が添加されたプライマー層6が存在することによって、印画時においては、サーマルヘッドの熱効率を高められ、これによってインクリボンから染料が充分に昇華されて高品質な画像形成が可能である。
尚、上記プライマー層6に添加される中空粒子は、上述する多孔質層5において用いられる中空粒子と同様のものが用いられる。また、プライマー層6に中空粒子が添加される場合には、別途、当該プライマー層6と基材シート1との間に、多孔質層5を設けるか否かは熱転写受像シートに求められる耐熱性、印画温度、クッション性などによって任意に決定してよい。
(その他の添加剤)
上述する冷却ゲル化剤、あるいは中空粒子以外にも、本発明におけるプライマー層6に添加することができる任意の化合物としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、フィラー、顔料、帯電防止剤、可塑剤、熱溶融性物質等を挙げることができる。
尚、本発明におけるプライマー層6の厚みは特に限定されるものではないが、一般的には、1μm〜40μmの範囲内、中でも1μm〜20μmの範囲内、特に1μm〜10μmの範囲内であることが好ましい。
[下引き層]
本発明の熱転写受像シート11において、基材シート1と、基材シート1の上面に設けられる層との接着性を高めるために、基材シート1と当該層の間に下引き層をさらに設けることができる。例えば、図4に示すように、基材シート1と多孔質層5との間に下引き層7を設けることによって、基材シート1と多孔質層5との接着性を高めることができる。また明細書で説明する下引き層は、基材シートと層との間の接着性を向上させるだけでなく、層間の接着性向上のために、任意の層間に設けることも可能である。
(下引き層構成樹脂)
上記下引き層7は、上記基材シート1と上記多孔質層5との接着性、あるいは上記多孔質層5と第一受容層2との接着性を所望の程度に向上できるものであれば特に限定されるものではない。なかでも本発明においては、水系溶媒に分散あるいは溶解可能な樹脂で構成されていることが好ましい。このように熱転写受像シートを構成する各層が水系溶媒に分散あるいは溶解可能な材料で形成されることにより、熱転写受像シートの同時多層塗布方法による製造を可能にするからである。ここで、上記下引き層構成樹脂としては、上述する多孔質層5に関して記載した、多孔質層形成用バインダーとして用いられる水系樹脂と同様のものを用いることができる。
下引き層7における構成樹脂の割合は特に限定されないが、一般的には、下引き層7に含まれる全固形分を100重量%としたときに、下引き層構成樹脂の割合は、70重量%〜95重量%であることが好ましく、80重量%〜90重量%であることがより好ましい。下引き層構成樹脂の含有量が上記範囲を下回ると、下引き層に求められる層間の接着効果が充分発揮されなない虞がある。また下引き層構成樹脂の添加量の上限は、冷却ゲル化剤などの他の添加剤との関係で調製される。
(冷却ゲル化剤)
上記下引き層7における冷却ゲル化剤の添加は任意であるが、熱転写受像シートを同時多層塗布方法によって製造する場合には、他の層とともに、下引き層にも冷却ゲル化剤を含有させる必要がある。ここで、下引き層に含有される冷却ゲル化剤としては、上述する第一受容層2に用いられる冷却ゲル化剤と同様のものを用いることができる。
上記下引き層7として、上記下引き層構成樹脂と、冷却ゲル化剤とを含むものを用いる場合、下引き層7中の下引き層構成樹脂と、冷却ゲル化剤との比率としては、上記下引き層7を形成する際に、下引き層形成用塗工液に所望の粘度特性を付与できる範囲内であれば特に限定されるものではない。なかでも本発明においては、冷却ゲル化剤が、下引き層形成用塗工液中の固形分100重量部に対して、重量換算で1〜100重量部の範囲内であることが好ましく、特に20〜80重量部の範囲内であることが好ましく、さらに25〜75重量部の範囲内であることが好ましい。冷却ゲル化剤の含有比が上記範囲よりも少ないと、上記下引き層形成用塗工液を上記基材シート上に塗布する際に、例えば、他の層との密着性が低下する場合があるからである。
上記下引き層7の厚みは、形成される位置や、隣接する各層の種類などによって適宜決定されるが、一般的には、0.5μm〜10μm程度である。
(その他の添加成分)
尚、本発明に用いられる下引き層には、上記下引き層形成用バインダー樹脂および上記冷却ゲル化剤以外に、任意の添加成分をさらに含有してもよい。上記任意の添加成分の例としては、ノニオン系シリコーン系等の界面活性剤、イソシアネート化合物等の硬化剤、濡れ材、分散剤等を挙げることができる。
以上に説明した本発明の熱転写受像シートに設けられる各層は、本発明の熱転写受像シートを構成する層として例示であり、また図2乃至4に示す熱転写受像シートの構成は、例示的な態様であり、本発明は以上に説明する熱転写受像シート及びこれを構成する層に限定されるものではない。本発明の熱転写受像シートは、少なくとも基材シート上に水系の受容層が設けられており、この受容層が、基材シート側から第二受容層、第一受容層と連続する二層により構成されていることが重要である。
[熱転写受像シート製造方法]
次に、本発明の熱転写受像シートの製造方法について説明する。本発明の熱転写受像シートは、一般的に熱転写受像シートを製造する方法として公知の方法を用いて製造することができる。即ち、グラビアコート法などにより、基材シート1上に、各構成層を順次、積層成形して製造してもよい。あるいは、基材シート1上に設けられる複数の層を同時に塗布する同時多層塗布方法により製造することもできる。またあるいは、本発明の熱転写受像シートは、上述した製造方法以外に、例えば、同時多層塗布方法により、基材シート上に多孔質層や下引き層などの複数の機能層を同時に形成した後、受容層を別途塗布する工程を設けることも可能である。
以下に、本発明の熱転写受像シートの製造方法の一例をより具体的に説明するために、同時多層塗布方法による熱転写受像シート12の製造例を塗布工程、冷却工程、乾燥工程に分けて説明する。
(塗布工程)
最初に、所謂スライドコーターを用いたスライドコート法により多層シートが形成される塗布工程を、図5を用いて説明する。図5は、基材シート1上に、多孔質層5、第二受容層3及び第一受容層2を備える熱転写受像シート12を製造するために、スライドコーターを用いたスライドコート法により、各構成層を形成するための塗工液を基材シート1上に同時に塗布し、多層シート42を形成している様子を示す概念図である。
多層シート42は、アンワインダー(図示せず)から送り込まれた基材シート1をバックロール54に巻きつけ、露出する表面側に、多孔質層形成用層24、第二受容層形成用層23、及び第一受容層形成用層22をこの順で有して構成されている。基材シート1上に積層される上記3つの層は、コーティング装置55内に独立に充填された、多孔質層形成用塗工液24、第二受容層形成用塗工液23、及び第一受容層形成用塗工液22を同時に、基材シート1上に塗布して形成される。尚、スライドコーターで同時に複数の塗工液が塗布されるときには、一般的に各塗工液の温度は、25℃〜60℃の範囲内に調整される。
塗工品質の観点から見ると、スライドコート法は、膜厚均一性に優れ、回転部がないため塗工液の飛散による品質不良が発生しにくく、摩擦部がないため塗布部での原反切れに発生によるロスが発生しにくいという利点を有する。また、塗工液のハンドリング性の観点から見ると、スライドコート法は、塗工液の濃度、粘度、組成が変化しにくく、反応性が高く経時的に変化する塗工液を用いることができ、塗工液を使い切ることができ無駄が生じにくく、高固形分塗工液を用いることができ溶媒使用量を削減することができるという利点を有する。
尚、上記スライドコート法においては、多孔質層形成用塗工液、第二受容層形成用塗工液および第一受容層形成用塗工液が互いに混合しないように、通常、塗工液に界面活性剤などを添加するなどして、両塗工液間の表面張力の差が一定の範囲内となるように調整される。またここで例示するスライドコート法は、基材シート1上に3つの層が設けられた態様を用いているが、同様のスライドコード法において、基材シート1上に設けられる層は、2層であってもよいし、あるいは4層以上であって製造可能である。
(冷却処理工程)
上述のとおり形成された多層シート42は、次に、冷却処理に供せられる。冷却処理工程において、基材シート1上に形成された各層を冷却する方法としては、多層シート42に冷風を吹き付ける冷却方法1、多層シート42を所望の温度以下の室温に調整された冷却ゾーンを通過させる冷却方法2などがある。また別の方法として、上記塗布工程において既に冷却された基材シート1をバックロール54にまき付け、この上に各層の塗工液を塗布することによって該基材シート1の温度で各層を冷却する、塗布工程と冷却処理工程を同時に行う冷却方法3、あるいは、基材シート1を搬送するバックロール54の表面を冷却し、基材シート1を介して各層を冷却することによって、塗布工程と冷却処理工程を同時に行う冷却方法4などでもよい。また上述する冷却方法1乃至4を組み合わせて冷却処理工程を実施してもよい。
上記冷却処理工程において、上記塗膜を強制冷却する温度は、通常、0℃〜常温の範囲内とされる。かかる冷却処理工程の実施によって、多層シート42内に存在する冷却ゲル化剤は冷却されてゲル化する。
(乾燥工程)
上記冷却工程において冷却された多層シート42を、続いて乾燥工程に供することによって、熱転写受像シート12が完成される。多層シート42を乾燥させる方法としては、多層シート42を複数のロールに順次まき付けて送りながら、適温の温風を吹き付ける非接触乾燥により乾燥させることができる。このとき、乾燥路長を500m以上に設けることにより、急激にシートを乾燥させることを防止することにより、乾燥ムラのない良好な熱転写受像シートが形成されるので好ましい。
尚、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
本発明の熱転写受像シートの製造において実施される上記乾燥工程は、各層を構成する材料や、層構成、あるいは層の水分含有率などによっても異なるが、30℃〜90℃が好ましく、40℃〜60℃がより好ましい。なお、該工程において上記塗膜を乾燥する方法としては、上記塗膜中に残留する水系溶媒を所定の時間内に所定量以下にできる方法であれば特に限定されるものではない。このような乾燥方法については、一般的に塗膜を乾燥する方法として公知の方法を用いることができる。
以上、本発明の熱転写受像シートについて、いくつかの実施形態を例にして説明したが、これら本発明は上述する実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
1:第一受容層形成用塗工液1の調製方法(熱転写性向上因子としてシリコーン系離型剤の添加あり)
塩化ビニル系樹脂( ビニブラン900、日信化学工業社製)90重量部及び、水に溶解させたゼラチン(RR、新田ゼラチン社製)10重量部(ゼラチンの乾燥時における重量比)と、シリコーン系離型剤(KF615A、信越化学工業社製)10重量部を、純水で分散、溶解させて総固形分が25重量%となるよう純水にて希釈した。
2:第一受容層形成用塗工液2の調製方法(熱転写性向上因子としてシリコーン系離型剤を含まない)
塩化ビニル系樹脂( ビニブラン900、日信化学工業社製)90重量部及び、水に溶解させたゼラチン(RR、新田ゼラチン社製)10重量部(ゼラチンの乾燥時における重量比)を、純水で分散、溶解させて総固形分が25重量%となるよう純水にて希釈した。
3:第二受容層形成用塗工液1の調製(離型剤の添加なし)
ウレタン系樹脂( スーパーフレックス130、第一工業製薬社製)90重量部及び、水に溶解させたゼラチン(RR、新田ゼラチン社製)10重量部(ゼラチンの乾燥時における重量比)を、純水で分散、溶解させて総固形分が25重量%となるよう純水にて希釈した。
4:第二受容層形成用塗工液2の調製(離型剤の添加なし)
ウレタン系樹脂( ハイドランHW−350、大日本インキ化学工業社製)90重量部及び、水に溶解させたゼラチン(RR、新田ゼラチン社製)10重量部(ゼラチンの乾燥時における重量比)を、純水で分散、溶解させて総固形分が25重量%となるよう純水にて希釈した。
5:第二受容層形成用塗工液3の調製(離型剤の添加有り)
ウレタン系樹脂( スーパーフレックス130、第一工業製薬社製)90重量部及び、水に溶解させたゼラチン(RR、新田ゼラチン社製)10重量部(ゼラチンの乾燥時における重量比)と、シリコーン系離型剤(KF615A、信越化学工業社製)10重量部を、純水で分散、溶解させて総固形分が25重量%となるよう純水にて希釈した。
6:第二受容層形成用塗工液4の調製(離型剤の添加有り)
ウレタン系樹脂( ハイドランHW−350、大日本インキ化学工業社製)90重量部及び、水に溶解させたゼラチン(RR、新田ゼラチン社製)10重量部(ゼラチンの乾燥時における重量比)と、シリコーン系離型剤(KF615A、信越化学工業社製)10重量部を、純水で分散、溶解させて総固形分が25重量%となるよう純水にて希釈した。
7:第二受容層形成用塗工液5の調製(離型剤の添加なし)
スチレンブタジエンゴム(SBR)系樹脂(ラックスター7440N、大日本インキ化学工業社製)90重量部及び、水に溶解させたゼラチン(RR、新田ゼラチン社製)10重量部(ゼラチンの乾燥時における重量比)を、純水で分散、溶解させて総固形分が25重量%となるよう純水にて希釈した。
8:多孔質層形成用塗工液の調製
中空粒子(HP−91、ロームアンドハース社製)75重量部(塗工液中の固形分比率)と、水に溶解させたゼラチン(RR、新田ゼラチン社製)を25重量部(ゼラチンの乾燥時における重量比)と、界面活性剤(サーフィノール440、日信化学工業社製)0.15重量部とを、純水に分散、溶解させて、総固形分が17重量%となるように純水にて希釈した。
[第二受容層構成樹脂の染着性評価]
上記第二受容層構成樹脂を用い、後述する方法にて、基材シート上に、各第二受容層構成樹脂(評価樹脂)として、ウレタン系樹脂( スーパーフレックス130、第一工業製薬社製)が塗布されて塗膜が形成された試験片を作成し、下記に示す染料染着性試験により、その染料染着性の有無を評価した。
まず、純水を用いてウレタン系樹脂( スーパーフレックス130、第一工業製薬社製)を90重量部(塗工液中の固形分比率)、ゼラチン(RR、新田ゼラチン社製)10重量部(ゼラチンの乾燥時における重量比)、シリコーン系離型剤(KF615A、信越化学工業社製)10重量部(乾燥時における重量比)をこれに溶解させ、上記バリヤ層構成樹脂が溶液の30%濃度となるよう塗工液を調製した。次いでバーコート法により、該塗工液を、厚み75μmのポリエチレンテレフタレート製基材フィルム上に、乾燥後の膜厚が4μmとなるように塗布して50℃に加温したオーブンに入れて2分間乾燥し、試験片を作成した。
次いで、上記試験片が室温に戻るのを待って、塗膜表面のa*値及びb*値(L*a*b*表色系における、色相と彩度の尺度)をGretag Macbeth社製Spectrolinoにより、光源D65、照明視野角2度、濃度計算ISO Status A、フィルター無しの条件で測定した。その後、塗膜側にシアン染料が含有されている染料層を備えるインクリボンを重ねあわせ、ブロッキングテスターによって10kg/cmの圧力を加えて、温度40℃、湿度90%RHのオーブン内に24時間保存し、次いでオーブンから出して、大気圧室温下で、5時間放置した。その後、上記インクリボンを手動で試験片から引き離した後、塗膜表面のa*値及びb*値を上記と同様の方法で測定し、下記(式1)により塗膜の保存前後の色差ΔEa*b*を算出し、評価樹脂の染料染着性を測定し、評価した。評価結果は、表1に示す。
(式1) ΔEa*b*={(保存後のa*値−保存前のa*値)+(保存後のb*値−保存前のb*値)1/2
ΔEabが40未満:染料染着性が低い
ΔEabが40以上:染料染着性が高い
また同様の方法で、各第二受容層構成樹脂(評価樹脂)として、ウレタン系樹脂( ハイドランHW−350、大日本インキ化学工業社製)、及びスチレンブタジエンゴム(SBR)系樹脂(ラックスター7440N)についても樹脂の染料染着性を評価した。
(実施例1)
同時多層塗布可能なスライドコート装置を用い、以下のとおり熱転写受像シートを作製した。基材シートとしてレジンコート紙(STF−150、三菱製紙社製)を用い、上記第一受容層形成用塗工液1、第二受容層形成用塗工液1、及び上記多孔質層形成用塗工液をそれぞれ40℃に加熱し、独立の塗工液タンクに充填した。そして、基材シート上に多孔質層と、第二受容層と、第一受容層とがこの順で積層されるように同時に3層を塗布した。次いで得られた積層体を10℃以下にて1分間冷却し、各層に含有されるゼラチンをゲル化させ、さらに50℃にて5分間乾燥することにより熱転写受像シートを作製し、実施例1とした。尚、それぞれの層は乾燥時の膜厚が多孔質層は乾燥後の膜厚が30μm、第二受容層は乾燥後の膜厚が2μm、第一受容層は乾燥後の膜厚が4μmとなるように塗工した。
上記実施例1の層構成については、表1にまとめて示した。以下の実施例及び比較例についても同様である。
尚、表1中、ビニブラン900は、塩化ビニル系樹脂( ビニブラン900、日信化学工業社製)を、SF130は、ウレタン系樹脂( スーパーフレックス130、第一工業製薬社製)を、HW350は、ウレタン系樹脂( ハイドランHW−350、大日本インキ化学工業社製)を、7440Nは、スチレンブタジエンゴム(SBR)系樹脂(ラックスター7440N、大日本インキ化学工業社製)を意味する。
(実施例2)
第二受容層塗工液1を第二受容層塗工液2に変更した以外は、実施例1と同様に作製した。
(比較例1)
第一受容層塗工液1を第一受容層塗工液2に変更した以外は、実施例1と同様に作製した。
(比較例2)
第二受容層塗工液1を第二受容層塗工液3に変更した以外は、実施例1と同様に作製した。
(比較例3)
第一受容層塗工液1を第一受容層塗工液2に変更した以外は、実施例2と同様に作製した。
(比較例4)
第二受容層塗工液2を第二受容層塗工液4に変更した以外は、実施例2と同様に作製した。
(比較例5)
受容層を第一受容層のみとした以外は実施例1、2と同様に作製した。
(比較例6)
第一受容層の乾燥後の膜厚を6μmとした以外は、比較例6と同様に作製した。
(比較例7)
受容層を第一受容層のみとした以外は、比較例1と同様に作製した。
(比較例8)
第一受容層の乾燥後の膜厚を6μmとした以外は、比較例7と同様に作製した。
(比較例9)
第二受容層塗工液1を第二受容層塗工液5とした以外は、実施例1と同様に作製した。
上述の通り製造された実施例及び比較例のそれぞれについて、下記のとおり、画像のボケに関し評価及び熱転写性評価を行った。
(評価1)画像ボケ評価
実施例1を用いて、昇華型熱転写プリンターCP−720(キヤノン社製)にて18step階調画像を印画した。その後、印画物を50℃、80%RH環境下にて1週間保存した後、画像のボケ具合を目視により評価した。また実施例2及び比較例1〜9についても上述と同様に、印画し、保存後の画像のボケを評価した。評価結果は、表1にまとめて示す。
評価1における官能評価の判断基準
○:画像のボケは全く観察されなかった。
×:画像のボケが観察された。
(評価2)熱転写性評価
○:印画時に、受像シートとインクリボンとの剥離音がしない。
×:印画時に、受像シートとインクリボンとの剥離音がする。
表1に示すとおり、実施例1及び2は、上記評価1及び評価2のいずれにおいても良好な結果を示した。
一方、比較例1及び3は、第一受容層に熱転写性向上因子である離型剤が含有されておらず、画像のボケは確認されなかったが、熱転写時に印画音が発生し、熱転写性上の問題があった。また比較例2及び4は、第一受容層だけでなく、第二受容層にも離型剤が含有されており、画像ボケが生じた。比較例5は、実施例1に対し、第二受容層が設けられなかった例であり、画像のボケが確認された。また実施例1の受容層の厚み(即ち、第一受容層の厚みと第二受容層の厚みとの和)と同様の厚みで形成される第一受容層を有し、且つ第二受容層を設けなかった比較例6でも同様に画像ボケが確認され、第一受容層の厚みにかかわらず画像のボケが発生することが示された。一方、第一受容層において離型剤を含有せず、且つ第二受容層を設けなかった比較例7及び8は、いずれも画像のボケは生じなかったが、熱転写時に印画音が発生し、熱転写性が悪いことが確認された。比較例9は、染料染着性ΔEabが40未満であって染料染着性が低い樹脂を用いて形成された第二受容層を備える例であり、該第二受容層では熱転写性向上因子である離型剤が含有されてはいないが、画像のボケが確認された。
Figure 2009241332
本発明の熱転写受像シートの一実施態様を示す断面外略図である。 本発明の熱転写受像シートの一実施態様を示す断面外略図である。 本発明の熱転写受像シートの一実施態様を示す断面外略図である。 本発明の熱転写受像シートの一実施態様を示す断面外略図である。 同時多層塗布方法により多層シートを形成していることを示す概念図である。
符号の説明
1 基材シート
2 第一受容層
3 第二受容層
4 受容層
5 多孔質層
6 プライマー層
7 下引き層
11 本発明の熱転写受像シート
12 本発明の熱転写受像シート
13 本発明の熱転写受像シート
14 本発明の熱転写受像シート
22 第一受容層2形成用塗工液
23 第二受容層形成用塗工液
24 多孔質層形成用塗工液
32 第一受容層2形成用層
33 第二受容層形成用層
34 多孔質層形成用層
42 多層シート
54 バックロール
55 コーティング装置

Claims (8)

  1. 基材シートと、上記基材シート上に水系溶媒に分散又は溶解可能である染料染着性樹脂から構成される受容層を少なくとも備える熱転写受像シートにおいて、
    上記受容層が、基材シート側から、第二受容層、第一受容層の順に連続する二層により構成されており、且つ、
    上記第一受容層にのみ熱転写性向上因子が付与されていることを特徴とする熱転写性受像シート。
  2. 上記熱転写性向上因子として、第一受容層に離型剤が含有されていることを特徴とする請求項1に記載の熱転写受像シート。
  3. 上記第二受容層を構成する染料染着性樹脂が、ウレタン系樹脂であることを特徴とする請求項1または2に記載の熱転写受像シート。
  4. 上記第二受容層を構成する染料染着性樹脂の染料染着性が、下記染料染着性試験において示される保存前後の色差ΔEabが40以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の熱転写受像シート。
    染料染着性試験:評価樹脂90重量部、ゼラチン10重量部、シリコーン系離型剤10重量部を上記評価樹脂の固形分濃度が溶液の30重量%となるよう純水にて希釈して塗工液を調製し、厚み75μmのポリエチレンテレフタレート製基材フィルム上に、乾燥後の塗膜が4μmとなるよう上記塗工液を塗布して試験片を作成し、次いで、50℃に加温したオーブンに上記試験片を入れて2分間加熱し、その後、オーブンから出して、上記試験片が室温に戻るのを待って、塗膜表面のa*値及びb*値(L*a*b*表色系における、色相と彩度の尺度)を測色計により、光源D65、照明視野角2度、濃度計算ISO Status A、フィルター無しの条件で測定して、次いで、塗膜側にシアン染料が含有されている染料層を備えるインクリボンを重ねあわせ、ブロッキングテスターによって10kg/cmの圧力を加えて、温度40℃、湿度90%RHのオーブン内に24時間保存し、その後、オーブンから出して、大気圧室温下で、5時間放置した後、上記インクリボンを手動で試験片から引き離し、次いで、塗膜表面のa*値及びb*値を上述と同様に測定し、下記(式1)により塗膜の保存前後の色差ΔEa*b*を算出し、評価樹脂の染料染着性を測定する。
    (式1)ΔEa*b*={(保存後のa*値−保存前のa*値)+(保存後のb*値−保存前のb*値)1/2
  5. 上記基材シートと上記受容層との間に、水系溶媒に分散または溶解可能な中空粒子樹脂から構成される多孔質層が設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の熱転写受像シート。
  6. 上記第2受容層に接する位置であって基材シート側に、プライマー層が設けられていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の熱転写受像シート。
  7. 上記基材シート上に積層される全ての層にそれぞれ冷却ゲル化剤が含有されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の熱転写受像シート。
  8. 上記第一受容層を構成する染料染着性樹脂が実質的に未硬化の状態で層を形成していることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の熱転写受像シート。
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