JP2018111234A - 熱転写受像シートおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
このような用途の多様化と普及拡大に伴い、よりプリンタの印画速度の高速化が進む一方、染料染着性(印画濃度)に優れる熱転写受像シートの製造が検討されている。
さらに、環境負荷を軽減するため、染料受容層や下引き層が水系樹脂(エマルジョン)である熱転写受像シートが求められている。前述の高い印画濃度を得るために、染料受容層のバインダ樹脂は、塩化ビニル樹脂を主成分とするエマルジョンを用いることが一般的である。
特許文献2には、染料受容層のひび割れが改善される熱転写受像シートの一例が記載されている。この熱転写受像シートは基材上に多孔質層と受容層をこの順に有し、受容層は、JIS K 7367−2により測定されるK値が60以上であり、かつ酢ビ率が0%超過10%以下である塩酢ビ系樹脂を含んだ層である。
本発明の課題は、高い印画濃度が付与できることと印画物に白ヌケを生じさせないことの両方の性能に優れた熱転写受像シートを提供することである。
本発明の第二態様は、シート状の基材と、前記基材の一面に順次形成された断熱層、下引き層、および染料受容層と、を有する熱転写受像シートの製造方法であって、塩化ビニル比率が50質量%以上である塩化ビニル系樹脂のエマルジョンと、エチレングリコール類およびジエチレングリコール類の少なくともいずれかと、を含む塗布液を、前記下引き層の上に塗布して乾燥させることで、前記染料受容層を形成する熱転写受像シートの製造方法を提供する。
本発明の第二態様の方法によれば、印画物の白ヌケ発生原因となるひび割れが染料受容層に生じることを抑制できる。
基材2としては、公知の合成樹脂フィルムおよび紙類等を、単独で、または複数種類組み合わせた複合体が使用できる。合成樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリアミド等が挙げられる。紙類としては、上質紙、中質紙、コート紙、アート紙、樹脂ラミネート紙等が挙げられる。
断熱層3としては、画質に影響を与える平滑性や光沢性等を考慮すると、発泡フィルムの片面または両面にスキン層を設けた複合フィルムを用いることが好ましい。
断熱層3を構成する発泡フィルムの材料としては、断熱性とクッション性の観点から、ポリエステル樹脂、またはポリスチレン樹脂が好ましい。
断熱層3の厚さは、10μm以上80μm以下であることが好ましく、20μm以上60μm以下であることがより好ましい。
下引き層4を形成する際に使用するエマルジョンを構成する疎水性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリル酸系樹脂、およびこれら樹脂の共重合体を挙げることができる。これらは単独で、あるいは2種以上を混合して使用することができる。
下引き層4を形成する際に使用するエマルジョンを構成する親水性ポリマーとしては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等を挙げることができる。
下引き層4の厚さは、0.1μm以上3μm以下であることが好ましく、0.2μm以上1.0μm以下であることがより好ましい。
染料受容層5は、塩化ビニル比率が50質量%以上である塩化ビニル系樹脂のエマルジョンと、エチレングリコール類およびジエチレングリコール類の少なくともいずれかと、を含む塗布液を、下引き層4の上に塗布して乾燥させることで形成される。乾燥条件は、例えば、100℃以下で2秒以上20秒以下とする。
染料受容層5が、塩化ビニル比率が50質量%以上である塩化ビニル系樹脂のエマルジョンを含むことで、実施形態の熱転写受像シート1は、印画物に高い印画濃度を付与できる。
染料受容層5に含まれる塩化ビニル系樹脂の塩化ビニル比率は、70質量%以上90質量%以下であることがより好ましい。これにより、実施形態の熱転写受像シート1は、優れた印画濃度を付与することができる。
染料受容層5は、上述の樹脂とともに、エチレングリコール類およびジエチレングリコール類の少なくともいずれかを含む層である。
本発明者等は、塩化ビニル系共重合体のエマルジョンの場合、高沸点溶剤として、エチレングリコール類またはジエチレングリコール類を使用することで、乳化を壊すことなく、染料受容層のひび割れを改善できることを見出した。
染料受容層5は、エチレングリコール類および/またはジエチレングリコール類を、樹脂固形分100質量部に対して1質量部以上20質量部以下の範囲で含有することが好ましい。つまり、染料受容層5を形成するための塗布液(上記グリコール類と上述の樹脂のエマルジョンとを含む塗布液)に含まれる上記グリコール類の含有量が1質量部未満であると、塗布乾燥後に得られる染料受容層5にひび割れを発生させない効果が得られない。
染料受容層5の厚さは、0.1μm以上10μm以下であることが好ましく、1.0μm以上4μm以下であることがより好ましい。1.0μm未満では、印画濃度の低下が懸念される。一方、膜厚が4μmを超えると、ひび割れが僅かに認められ、白ヌケの発生が懸念される。
また、染料受容層5は、必要に応じて離型剤、架橋剤、酸化防止剤、蛍光染料、および、その他公知の添加剤を含有しても良い。
また、熱転写受像シート1には、基材2の断熱層3が設けられている側とは反対側に、裏面層を設けても良い。裏面層は、プリンタ搬送性向上や、染料受容層5とのブロッキング防止、印画前後の熱転写受像シートのカール防止のために設けられる。
[熱転写受像シートの作製]
(実施例1)
図1の熱転写受像シート1の基材2と断熱層3との間に接着層を有する熱転写受像シートを、以下の方法で作製した。
先ず、基材2として、厚さ140μmの上質紙の一方の面に、溶融押し出し法により厚さ30μmのポリエチレン樹脂層が形成された複合体を用意した。
また、断熱層3として、厚さ40μmの発泡ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面にスキン層を設けた複合フィルムを用意した。
断熱層3のスキン層側に、下記の下引き層塗布液−1を、80℃2分乾燥後の厚さが0.5μmとなるように塗布、乾燥することで、下引き層4を形成した。更に、下引き層4の上に、下記の染料受容層塗布液−1を、80℃10秒乾燥後の厚さが3μmとなるように塗布、乾燥することで、染料受容層5を形成し、実施例1の熱転写受像シートを得た。
塩化ビニル共重合体エマルジョン 20.0質量部
(ビニブラン278、日信化学工業(株)製)
ポリビニルピロリドン 20.0質量部
(ピッツコール K−90、第一工業製薬(株)製)
トリプロピレングリコールモノメチルエーテル 4.0質量部
純水 56.0質量部
塩化ビニル−アクリル共重合体エマルジョン 97.1質量部(樹脂固形分29.13質量部)
(ビニブラン745、日信化学工業(株)製、塩化ビニル比率50質量%、固形分30質量%)
ポリエーテル変性シリコーン 0.9質量部
(X−22−4515、信越化学工業(株)製)
エチレングリコールジグリシジルエーテル 1.5質量部(樹脂固形分100質量部に対して5質量部となる量)
(エポライト40E、共栄社化学(株)製)
純水 0.6質量部
実施例1で作製した熱転写受像シートにおいて、染料受容層の材料および配合比を表1に示すように変えた以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜5、比較例1〜3の熱転写受像シートを得た。
表1の「塩化ビニル樹脂比率(部)」は、「塩化ビニル系樹脂中の塩化ビニル比率(質量%)」を、「高沸点溶剤」の「部」は、「樹脂固形分100質量部に対する含有量(質量部)」を意味する。
実施例1との違いを以下に記載する。
染料受容層塗布液−1に代えて下記の染料受容層塗布液−2を使用して、染料受容層5を形成し、実施例2の熱転写受像シートを得た。
<染料受容層塗布液−2>
塩化ビニル−アクリル共重合体エマルジョン 58.3質量部(樹脂固形分29.15質量部)
(ビニブラン902、日信化学工業(株)製、塩化ビニル比率80質量%、固形分50質量%)
ポリエーテル変性シリコーン 0.9質量部
(X−22−4515、信越化学工業(株)製)
エチレングリコールジグリシジルエーテル 1.5質量部(樹脂固形分100質量部に対して5質量部となる量)
(エポライト40E、共栄社化学(株)製)
純水 39.4質量部
染料受容層塗布液−1に代えて下記の染料受容層塗布液−3を使用して、染料受容層5を形成し、実施例3の熱転写受像シートを得た。
<染料受容層塗布液−3>
塩化ビニル重合体エマルジョン 78.7質量部(樹脂固形分39.35質量部)
(ビニブラン985、日信化学工業(株)製、塩化ビニル比率100%、固形分50質量%)
ポリエーテル変性シリコーン 0.9質量部
(X−22−4515、信越化学工業(株)製)
エチレングリコールジグリシジルエーテル 2.0質量部(樹脂固形分100質量部に対して5質量部となる量)
(エポライト40E、共栄社化学(株))
純水 19.0質量部
染料受容層塗布液−1に代えて下記の染料受容層塗布液−4を使用して、染料受容層5を形成し、実施例4の熱転写受像シートを得た。
<染料受容層塗布液−4>
塩化ビニル−アクリル共重合体エマルジョン 56.7質量部(樹脂固形分28.35質量部)
(ビニブラン902、日信化学工業(株)製、塩化ビニル比率80質量%、固形分50質量%)
多官能性アジリジン化合物 0.8質量部
(ケミタイトPZ−33、日本触媒(株)製)
ポリエーテル変性シリコーン 0.9質量部
(X−22−4515、信越化学工業(株)製)
エチレングリコールジグリシジルエーテル 0.3質量部(樹脂固形分100質量部に対して1質量部となる量)
(エポライト40E、共栄社化学(株)製)
純水 41.3質量部
染料受容層塗布液−1に代えて下記の染料受容層塗布液−5を使用して、染料受容層5を形成し、実施例5の熱転写受像シートを得た。
<染料受容層塗布液−5>
塩化ビニル−アクリル共重合体エマルジョン 58.3質量部(樹脂固形分29.15質量部)
(ビニブラン902 日信化学工業(株)製、塩化ビニル比率80質量%、固形分50質量%)
ポリエーテル変性シリコーン 0.9質量部
(X−22−4515、信越化学工業(株)製)
エチレングリコールジグリシジルエーテル 5.8質量部(樹脂固形分100質量部に対して20質量部となる量)
(エポライト40E、共栄社化学(株)製)
純水 40.6質量部
染料受容層塗布液−1に代えて染料受容層塗布液−2を80℃10秒乾燥後の厚さが0.5μmとなるように下引き層4の上に塗布、乾燥することで、染料受容層5を形成し、実施例6の熱転写受像シートを得た。
(実施例7)
染料受容層塗布液−1に代えて、染料受容層塗布液−2を80℃10秒乾燥後の厚さが5μmとなるように下引き層4の上に塗布、乾燥することで、染料受容層5を形成し、実施例7の熱転写受像シートを得た。
(実施例8)
染料受容層塗布液−1に代えて、染料受容層塗布液−2のエチレングリコールジグリシジルエーテルの代わりにジエチレングリコールモノエチルエーテルアセタート(東京化成工業(株)製)を同量含有する塗布液を使用して、染料受容層5を形成し、実施例8の熱転写受像シートを得た。
染料受容層塗布液−1に代えて下記の染料受容層塗布液−6(高沸点溶剤無添加)を使用して、染料受容層5を形成し、比較例1の熱転写受像シートを得た。
<染料受容層塗布液−6>
塩化ビニル−アクリル共重合体エマルジョン 58.3質量部
(ビニブラン902 日信化学工業(株)製、塩化ビニル比率80質量%、固形分50質量%)
ポリエーテル変性シリコーン 0.9質量部
(X−22−4515、信越化学工業(株)製)
純水 40.9質量部
染料受容層塗布液−1に代えて、染料受容層塗布液−2のエチレングリコールジグリシジルエーテルの代わりにジプロピレングリコールジメチルエーテル(関東化学(株)製)を同量含有する塗布液を使用して、染料受容層5を形成し、比較例2の熱転写受像シートを得た。
染料受容層塗布液−1に代えて下記の染料受容層塗布液−7を使用して、染料受容層5を形成し、比較例3の熱転写受像シートを得た。
<染料受容層塗布液−7>
塩化ビニル−アクリル共重合体エマルジョン 97.1質量部(樹脂固形分48.55質量部)
(ビニブラン743、日信化学工業(株)製、塩化ビニル比率30質量%、固形分50質量%)
ポリエーテル変性シリコーン 0.9質量部
(X−22−4515、信越化学工業(株)製)
エチレングリコールジグリシジルエーテル 2.4質量部(樹脂固形分100質量部に対して5質量部となる量)
(関東化学(株)製)
純水 0.6質量部
実施例1〜8、比較例1〜3で使用した染料受容層塗布液と、得られた各熱転写受像シートについて、(1)染料受容層塗布液の析出物、(2)受容層表面のひび割れ、(3)印画物の白ヌケ、および(4)最高印画濃度を評価した。
(熱転写記録媒体の作製)
(3)(4)の評価に必要な熱転写記録媒体を以下の方法で作製した。
基材として、4.5μmの片面易接着処理付きポリエチレンテレフタレ−トフィルムを使用し、その非易接着処理面に下記組成の耐熱滑性層塗布液を、乾燥後の塗布量が1.0g/m2となるように塗布、乾燥し、耐熱滑性層付き基材を得た。次に、耐熱滑性層付き基材の易接着処理面に、下記組成のプライマー層および熱転写層塗布液を、乾燥後の塗布量が1.0g/m2となるように塗布、乾燥して熱転写層を形成し、熱転写記録媒体を得た。
シリコーン系アクリルグラフトポリマー 50.0質量部
(東亜合成(株)US−350)
メチルエチルケトン 50.0質量部
<プライマー層塗布液>
ポリビニルアルコール 2.5質量部
イソプロピルアルコール 30.0質量部
純水 67.5質量部
C.I.ソルベントブルー36 2.5質量部
C.I.ソルベントブルー63 2.5質量部
ポリビニルアセタール樹脂 5.0質量部
トルエン 45.0質量部
メチルエチルケトン 45.0質量部
実施例1〜8、比較例1〜3で使用した染料受容層塗布液について、析出物の有無を目視確認した。なお、△以上が実用上の問題ないレベルである。
○:析出物が認められなかった。
△:微量の析出物が認められた。
×:大量の析出物が認められた。
実施例1〜8、比較例1〜3で得られた熱転写受像シートについて、染料受容層表面のひび割れの有無を光学顕微鏡で観察し、以下基準で評価した。なお、△以上が実用上の問題ないレベルである。
○:ひび割れが認められなかった。
△:僅かながらひび割れの発生が認められた。
×:ほぼ全面にひび割れが認められた。
実施例1〜8、比較例1〜3で得られた熱転写受像紙シート、熱転写記録媒体、および評価用サーマルプリンタを、23℃50%RH環境下で2時間調湿した。これらの熱転写受像シートおよび熱転写記録媒体を使用し、印画速度が2.0msec/line、解像度が300×300DPIの評価用サーマルプリンタにて、255階調を16分割したグレーグラデーション画像を印画した。印画物の評価は、以下の基準にて行った。評価結果を表1に示す。
○:白ヌケの発生が認められない。
△:白ヌケの発生が僅かに認められるが実用上問題ないレベルである。
×:白ヌケの発生が認められる。
白ヌケ評価で得られた印画物の最高反射濃度をX−rite528にて測定した。また、測定結果を以下の基準にて評価した。測定結果と評価結果を表1に示す。なお、△以上が実用上の問題ないレベルである。
○:最高反射濃度が2.05以上である。
△:最高反射濃度が2.00以上2.05未満である。
×:最高反射濃度が2.00未満である。
塩化ビニル比率が80質量%である塩化ビニル−アクリル共重合体エマルジョンを用いた実施例2では、印画濃度が特に高かった。また、塩化ビニル重合体エマルジョン(塩化ビニル比率が100質量%の塩化ビニル系樹脂)を用いた実施例3では、実施例2と比較して印画濃度はやや劣っていた。
また、実施例2と実施例6と実施例7は染料受容層の膜厚のみが異なるが、膜厚が3μmである実施例2と5μmである実施例7では印画濃度が特に高かったのに対して、0.5μmである実施例6では印画濃度がやや劣っていた。そして、膜厚が5μmである実施例7では、染料受容層のひび割れは僅かに認められ、印画物に僅かながら白ヌケの発生が確認された。
また、比較例3の熱転写受像シートは、染料受容層5の塩化ビニル系樹脂として、塩化ビニル比率が30質量%である塩化ビニル−アクリル共重合体を用いたことで、最高反射濃度が2.0を下回った。
2:基材
3:断熱層
4:下引き層
5:染料受容層
Claims (5)
- シート状の基材と、前記基材の一面に順次形成された断熱層、下引き層、および染料受容層と、を有し、
前記染料受容層は、塩化ビニル比率が50質量%以上である塩化ビニル系樹脂のエマルジョンと、エチレングリコール類およびジエチレングリコール類の少なくともいずれかと、を含む層である熱転写受像シート。 - 前記染料受容層は、エチレングリコール類およびジエチレングリコール類の少なくともいずれかを、樹脂固形分100質量部に対して1質量部以上20質量部以下の範囲で含有する請求項1記載の熱転写受像シート。
- 前記塩化ビニル系樹脂は、塩化ビニルを70質量%以上90質量%以下の範囲で含有する請求項1または2記載の熱転写受像シート。
- 前記染料受容層の厚さが1.0μm以上4μm以下である請求項1〜3の何れか一項に記載の熱転写受像シート。
- シート状の基材と、前記基材の一面に順次形成された断熱層、下引き層、および染料受容層と、を有する熱転写受像シートの製造方法であって、
塩化ビニル比率が50質量%以上である塩化ビニル系樹脂のエマルジョンと、エチレングリコール類およびジエチレングリコール類の少なくともいずれかと、を含む塗布液を、前記下引き層の上に塗布して乾燥させることで、前記染料受容層を形成する熱転写受像シートの製造方法。
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