JP5450873B1 - 施設調理用冷凍揚物の製造方法及び施設調理用冷凍揚物 - Google Patents

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Abstract

【課題】大量調理施設において多量の食数を一括して加熱調理することができ、加熱中に損傷を受け難く、好ましい食感を有する施設調理用冷凍揚物の製造方法及び施設調理用冷凍揚物を提供する。
【解決手段】中具として、pH調整されたアルカリ水溶液を用いてアルカリ化処理した固形食品を準備し、衣材原料として、増粘性、泡沫生成性、泡沫安定性、pH安定性、油切れ性、離水防止性、だれ防止性、耐酸性、耐塩性、耐酵素性および耐熱性からなる群より選択される1又は2以上の性質を有する異なる複数種の糖類を含む混合物を準備し、中具の表面に衣材原料を付着させ、これにより下拵え品を作製し、下拵え品を油ちょうし、これにより前記衣材原料を脆性、光沢性、付着性、油切れ性、非糸曳き性および冷凍耐性を有する衣材とし、該衣材により前記中具が覆われた揚物を作製し、揚物を冷凍し、冷凍した揚物を冷凍揚物用包装材により包装する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、病院、学校、介護福祉施設などの大量調理施設において一度に多くの食数を迅速かつ簡易に調理して提供することができる施設調理用冷凍揚物及びその製造方法に関する。
病院、学校、介護福祉施設および企業内社員食堂などの大量調理施設では限られた時間内で多数の喫食者を対象として数十食から数百食分をまとめて手早く調理しなければならないため、その作業はかなりの重労働となる。このため大量調理施設の厨房内ではマンパワー不足が常態化している。
このようなマンパワー不足を解消するために、大量調理施設においてはスチームコンベクションオーブン(以下、SCという)やオーブンレンジのような多機能調理機器を厨房に導入し、調理従事者にかかる負荷を少しでも軽減するようにしている。
SCは専門的な技能や知識を持たない未熟練者であっても簡単な操作手順を覚えるだけで焼き物、煮物、蒸し物などの多種多様な調理を1台でこなすことができるという点で大量調理施設の調理従事者に歓迎されている。例えば、調理従事者は、SCの入力画面上で調理種別を選択し、スタートボタンを押してから終了ブザーが鳴るまでの間に並行して他の作業をすることができるため、短時間のうちに多くの作業をこなすことができる。
ところで、油を使う揚物は数ある調理のなかでも下記1)〜4)の点で調理従事者に掛かる負担が大きく、特に大量調理施設において揚物の作業負荷を軽減化して欲しいという要望が強い。
1)油は発火するおそれがあるため火災の危険性があり、保健所や消防署の指導により調理者は作業中に現場を離れることができない。
2)大量調理施設では多数の食数を準備する必要があり、同じ作業を何度も何度も繰り返すため、結果として調理者は長時間にわたり1つの作業のみに拘束されてしまう。例えば、全部で100食分の揚物を10食ずつ10回に分けて調理する場合に、1回当りの油ちょう時間を5分とすると作業の開始から終了までに最低50分もの時間を要することになる。
3)揚げ油のろ過や酸価値の測定など油の品質管理に細心の注意を払う必要があるため、揚物調理の経験が豊富な熟練者でなければ、油の品質を適正に管理することができない。
4)油はねや火災の危険を伴う作業であるために、ハードの設備面では作業従事者の危険回避に十分に配慮した作業環境とする必要があるとともに、ソフトの意識面では作業従事者に対して安全衛生講習や研修など安全衛生に関する教育を繰り返し徹底する必要がある。
このように「揚げる」という作業は、重労働であるうえに相当の熟練度を要するため、煮る、焼く、蒸す、炒める、炊くなどの他の作業に比べて難しく、これを行なう作業従事者には一定レベル以上の知識と技能が要求される。しかし、そのような熟練者は年々減少する傾向にあり、常に現場ではマンパワー不足が生じている。
そこで、工場で油ちょうしたものを冷凍してパッケージ化した冷凍揚物が例えば特許文献1や特許文献2などにおいて提案されている。特許文献1には電子レンジやオーブンレンジなどの調理機器により簡単に加熱調理できる冷凍揚物が記載されている。また、特許文献2には冷凍揚物の衣材の食感を良くすることが記載されている。
特開2012-196196号公報、請求項1〜4、段落[0009]〜[0012]、[0019]〜[0026] 特開2011-152087号公報、段落[0027]〜[0034]
しかしながら、従来の冷凍揚物には以下の問題点a)〜c)がある。
a)食感に難点がある。
揚物の中具と衣材との間に一体感がなく、両者が別々のものに分離しているような違和感のある食感がある。また、SCやオーブンで熱風を当てると衣材が水分を過剰に失い、ガリガリ、ザクザクとした硬い食感になる。また、中具の魚肉が固くなり、肉質のジューシー感が失われ、噛み切り難くなる。また、冷凍揚物を自然解凍すると、衣材中の水分と油分が分離して、衣材が湿気を帯びてベチャ付き、分離した油分が表面に浸み出し、好ましくない食感になる。さらに、局部的に硬い部分が発生し、咀嚼しにくくなる。我が国では高齢化社会の到来を背景として、咀嚼力が衰えた高齢者であっても食べやすい食品としてユニバーサルデザインフードがますます重要性を増してきているが、このようなユニバーサルデザインフードに要求される特性の1つとして食材の咀嚼しやすさは重要である。
b)ハンドリング性に難点がある。
一般家庭やコンビニエンスストアにおいて少量(一食または数食分)を電子レンジ等で加熱されるようにつくられており、大量調理施設において数十食から数百食分を一括してSCのような調理機器を用いて加熱されるようにつくられていないため、現場で取扱い難い。
c)加熱中に外観を損なう損傷が発生する。
SC加熱中において冷凍揚物が破裂して衣材がダメージを受け、外観が損なわれることがある。
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、大量調理施設において多量の食数を一括して加熱調理することができ、加熱中に損傷を受け難く、好ましい食感を有する施設調理用冷凍揚物の製造方法及び施設調理用冷凍揚物を提供することを目的とする。
本発明に係る施設調理用冷凍揚物の製造方法は、オーブン加熱調理されるか、又は自然解凍調理されるか、又はパックごと湯せん調理される施設調理用冷凍揚物の製造方法において、
(a)中具として、pH8.0〜12.5の範囲に調整されたアルカリ水溶液に浸漬してアルカリ化処理された魚介類を準備し、
(b)衣材原料の主要成分として、増粘多糖類、アルギン酸プロピレングリコールエステルおよびメチルセルロースからなる群より選択される2種以上の多糖類を含むバッター液を準備し、
(c)前記中具の表面に前記衣材原料を付着させ、これにより下拵え品を作製し、
(d)前記下拵え品を油ちょうし、これにより前記衣材原料を変成させ、脆性、光沢性、付着性、油切れ性、非糸曳き性および冷凍耐性を有する2種以上の多糖類及びそれらの分解物を含む衣材とし、該衣材により前記中具が覆われた揚物を作製し、
(e)前記揚物を冷凍し、
(f)前記冷凍した揚物を平均厚さ50〜100μmのフィルム包装材により包装する、
ことを特徴とする。
本明細書中の重要な用語を以下のようにそれぞれ定義する。
「施設調理用」とは、病院、学校、介護福祉施設および企業内社員食堂のような大量調理施設において、多数の食数をまとめて調理する用途をいう。
「加熱調理」とは、芯部の温度が75℃以上に到達するように冷凍揚物を加熱して調理することをいう。
「オーブン加熱」とは、オーブン、オーブンレンジ、スチームコンベクションオーブンなどのような調理機器を用いて冷凍揚物を加熱することをいう。
「自然解凍」とは、冷凍食品を加熱調理機器等により加熱することなく、大気圧室温下に置いて自然に解凍させることをいう。一般的に冷凍食品の分野では「室温」とは、18℃程度の温度をいう。自然解凍調理とは、自然解凍した冷凍食品を調理することをいう。
「パックごと湯煎」とは、フィルム包装材でパッキングされた冷凍食品をフィルム包装材ごと熱湯中に投入して加熱することをいう。
「揚物」とは、油ちょうしてつくられるフライ、唐揚げ、天ぷらのような食品をいう。
「冷凍揚物」とは、芯部まで完全凍結された揚物をいう。
「中具」とは、揚物の内容物をいう。
「衣材」とは、揚物の外表面を覆う被覆物をいう。衣材は、中具の大部分を覆うものであればよく、必ずしも中具の表面を完全に被覆していなくともよい。
「増粘性」とは、食品の粘性や接着性を増加させる性質をいう。増粘性を有する食品添加物には、例えば増粘剤、増粘安定剤およびゲル化剤などがある。増粘剤は、食品に粘りやとろみを付けるために添加される。増粘安定剤は、食品を接着して形が崩れないようにするために添加される。ゲル化剤は、食品をゲル化するために添加される。
「増粘多糖類」とは、食品衛生法で定める「既存添加物名簿収載品目リスト」及び「一般飲食物添加物品目リスト」の用途欄に「増粘安定剤」と記載されている複数種の多糖類を併用した食品に表示される食品添加物の一括表示名称をいう。容器包装に入れられた加工食品では、原則として使用したすべての添加物名を容器包装の見やすい場所に記載する必要がある。添加物名を表示する際に、物質名のみでは一般消費者には分かり難いため、食品衛生法では物質名と用途名を併記して表示することを義務付けている。しかし、増粘多糖類の用途名が増粘剤である場合、これを表示すると「増粘剤(増粘多糖類)」となり同じ用語が繰り返されるのを避けるために、増粘多糖類を表示するときは用途名を省略して「増粘多糖類」のみの一括表示名称を食品衛生法では例外として認めている。
「泡沫生成性」とは、液中および液面に多数の気泡を生じさせる性質をいう。
「泡沫安定性」とは、液中および液面に生じた気泡が消えにくく安定に維持される性質をいう。例えばアルギン酸プロピレングリコールエステル(PGA)は泡沫生成性と泡沫安定性を兼ね備えているため、PGAをバッター液中に添加すると、微細な気泡が大量に生成され、生成された気泡が消え難くなり、単位体積当たりの液中の気泡密度(気泡の数)が増大する。
「pH安定性」とは、バッター液のpHが変化した場合であっても液の粘度が安定していてほとんど変わらない性質をいう。
「油切れ性」とは、油ちょう中において油分が衣材の内部に浸み込みにくく、油ちょう後において衣材が過剰な量の油分を含まない性質をいう。
「離水防止性」とは、衣材中に含まれる水分が衣材から脱離しにくい性質をいう。例えばタマリンドシードガムは離水防止性を有するため、これをバッター液中に添加すると、衣材から含有水分が抜けにくくなり、衣材の過剰な乾燥が防止され、適度に湿り気のあるしっとりとした食感になる。
「だれ防止性」とは、粘性のある液体(ゾル)を固体の表面に付着させた状態で放置した場合に、時間が経過した後であっても付着液体が固体表面から流下しない性質をいう。粘性のある液体を長時間放置すると、経時劣化して液体の粘性が低下し、付着した液体が固体表面に沿って流下し、固体の表面が露出するとともに固体の下部に液溜まりを生じるが、だれ防止性を有する添加剤を添加すると、粘性の経時劣化がほとんどなく、液体が固体上に付着した状態のままで保持される。例えばタマリンドシードガムを添加したバッター液を中具に付着させた状態で放置した場合であっても、バッター液は中具に付着したままの状態を保ち続ける。
「熱ゲル化性」とは、室温下では液体の状態にあるが、加熱するとゲル化する性質をいう。
「脆性」又は「脆さ」とは、衣材が外力を受けたときに瞬時に崩壊し、小断片になって粉々に砕け散りやすい性質をいう。喩えて言えば、自動車のフロントガラス(強化ガラス)が大きく割れずに小さい断片になって粉々に砕け散るように、衣材が一瞬のうちに粉々に砕け散り、微細な断片になる性質に似ている。衣材が弾性変形しにくく、衣材の表面にある程度の硬さがあり、脆性破壊しやすい形態になっていると(図3と図4の(a1),(a2))、口どけの良いサクサクとした食感が得られる。
「口どけが良い」とは、咀嚼時に口中に硬い塊りや大きな塊りが残ることなく固形食品を小さな断片に抵抗なく噛み切ることができ、その咀嚼物を唾液とともに容易に嚥下することができる食感をいう。
「ひきが強い」とは、噛み切りにくい食感をいう。
「ひきが弱い」とは、噛み切りやすい食感をいう。
「糊感」とは、食品に粘りがなく、歯に付着し難くあっさりした食感をいう。
「非糸曳き性」とは、食品に粘りがなく、咀嚼したときに食品が糸を曳くことなく噛み切りやすい性質をいう。非糸曳き性を有する食品は、ひきが弱い食感となる。
「光沢性」とは、油ちょう後における衣材表面に色つやを付加する性質をいう。光沢性をもつ添加剤をバッター液に配合すると、衣材表面の光の反射率が増加して衣材が明るい褐色(きつね色)に見える。
「付着性」とは、油ちょうしたときにバッター液の有効成分が飛散することなく歩留まりよく衣材中または衣材表面に残留する性質をいう。
「冷凍耐性」とは、凍結と解凍を繰り返した後であっても中具と衣材の劣化の程度が少ない性質をいう。例えば中具においては水溶性たんぱくの分離・滲出が抑えられ、衣材においては気泡を取り囲む周壁の変形が抑えられる。
「油切れ」とは、油ちょう後の揚物に過剰に油分が残留せず、衣材がカラッとした仕上がりになることをいう。
「衣率」とは、揚物全体の質量に対する衣材の質量の割合を百分率で表わした指数をいう。良好な食感を得るためには、フライの衣率を35〜45%の範囲とし、唐揚げの衣率を10〜20%の範囲とし、天ぷらの衣率を25〜35%の範囲とすることがそれぞれ好ましい。
「衣むら」とは、衣材の厚みが不均一なことをいう。下拵え品を油ちょうすると衣材が薄く付いている部位が焼け焦げた濃い茶褐色になり、見栄えが悪くなることがあるため、衣材の厚みはできるだけ均一にすることが望ましい。
「整形処理」とは、広義には魚体の外形を整える処理と魚体の内部を整える処理との両方を含む包括的な広い概念の処理のことをいい、狭義には魚体の頭部とエラとヒレと内臓とウロコを除去する処理のことをいう。ここで「魚を整形処理する」とは、原料となる冷凍魚または鮮魚をラウンド、ドレス、フィレ、切身などの各種の形状・形態に加工することをいい、具体的には魚体から少なくともアタマとエラとヒレと内臓を除去することを含み、さらに任意にウロコを除去することを含む。骨の除去は、広義の整形処理には含まれるが、狭義の整形処理には含まれない。ここで「骨の除去」とは、魚体から少なくとも背骨と肋骨を除去することを含み、任意にエネルギ線の透過撮影により検出可能な魚肉中に散在する細い骨や短い骨を除去することを含む。
「破断応力」とは、破断点における応力をいう。破断応力Pfは、下式(1)のように、破断点における荷重wfに重力加速度gを乗じて力に換算し、試料の初期断面積A0で除して求められる。
Pf=wf・g/A0 …(1)
「破断歪み」とは、破断点における歪みをいう。
「破断歪率」とは、破断応力に対する破断歪みの比率をいう。
本発明によれば、以下に列記する種々の効果を奏することができる。
1)中具と衣材とが一体化した口どけの良いサクサクした食感となり、咀嚼力が衰えた高齢者であっても噛み切りやすい。
2)加熱調理直後の喫食時には軟らかく、時間が経過しても硬くなりにくく食べやすい。
3)魚介類の生臭さがないので食べやすく、後味がよい。
4)現場で取扱いやすいので、大量調理施設の厨房内においてSCのような調理機器を用いて多数食を一括して容易に加熱調理することができる。
5)加熱調理中において揚物が破裂せず、外観が損なわれない。
本発明の実施の形態に係る施設調理用冷凍揚物の製造方法を示す工程図。 バッター液の粘度測定に用いたB形回転粘度計を示す概略模式図。 レオメーター(クリープメーター)により測定した衣材の実施例サンプルおよび比較例サンプルの応力−歪み線図。 (a1)と(a2)は実施例の衣材をそれぞれ示すコンピュータシミュレーション三次元画像図、(b1)と(b2)は比較例の衣材をそれぞれ示すコンピュータシミュレーション三次元画像図。
本発明に係る施設調理用冷凍揚物の製造方法は、オーブン加熱調理されるか、又は自然解凍調理されるか、又はパックごと湯せん調理される施設調理用冷凍揚物の製造方法において以下の工程(a)〜(f)を含む。
(a)中具として、pH8.0〜12.5の範囲に調整されたアルカリ水溶液に浸漬してアルカリ化処理された魚介類を準備する工程、
(b)衣材原料の主要成分として、増粘多糖類、アルギン酸プロピレングリコールエステルおよびメチルセルロースからなる群より選択される2種以上の糖類を含むバッター液を準備する工程
(c)前記中具の表面に前記衣材原料を付着させ、これにより下拵え品を作製する工程、
(d)前記下拵え品を油ちょうし、これにより前記衣材原料を変成させ、脆性、光沢性、付着性、油切れ性、非糸曳き性および冷凍耐性を有する2種以上の多糖類及びそれらの分解物を含む衣材とし、該衣材により前記中具が覆われた揚物を作製する工程、
(e)前記揚物を冷凍する工程、
(f)前記冷凍した揚物を平均厚さ50〜100μmのフィルム包装材により包装する工程。
上記工程(a)では、揚物の原料となる中具をアルカリ化処理し、所望のpH範囲に調整された中具を得る。アルカリ化処理した中具は、筋線維と筋線維との相互間隙に水分が入り込み、肉質が軟らかくなり、咀嚼しやすい口どけのよい食感になる。
中具として魚介類、肉類、または植物性たんぱく食品を用いることができるが、これらのうち特に魚介類を中具とすることが好ましい。魚介類は、赤身系の魚(いわし、さば、さんま、かつお等)、白身系の魚(カレイ、ヒラメ等)、中間系の魚(あじ、いさき等)の区別なく広く種々の魚類を対象とし、例えば、さば(ノルウェー産)、さば(日本産)、黄金がれい、からすガレイ、助宗だら、鮭、鱒、さわら、さんま、ぶり、ホキ、メルルーサ、しいら、舌平目、あじ、ホッケ、真だら、赤魚、白糸だら、メバル、太刀魚、キャットフィッシュ、ナイルパーチ、イトヨリ鯛、姫鯛などを含み、さらにエビ、カニ、イカ、タコなどを含む。
上記工程(b)では、衣材原料の主要成分として、増粘多糖類、アルギン酸プロピレングリコールエステルおよびメチルセルロースからなる群より選択される2種以上の多糖類を含むバッター液を準備する。
衣材原料の基本成分として、小麦粉、米粉、そば粉、大麦粉、ライ麦粉、コーンフラワー、コーングリッツ、粟の粉、パン粉、でん粉、大豆粉のうちから1種又は2種以上を混合した混合物を用いることができる。小麦粉は、強力粉、準強力粉、中力粉、薄力粉のいずれも用いることができるが、これらのうち特にグルテン量の少ない薄力粉を用いることが好ましい。でん粉は、コーンスターチ、馬鈴薯でん粉、小麦でん粉、米粉でん粉、タピオカでん粉、サゴヤシでん粉、加工でん粉のうちから1種又は2種以上を混合した混合物を用いることができる。これらのうち特に加工でん粉を添加することが好ましい。一般的に加工でん粉は老化耐性を得るのに適している加工でん粉のうちでも化学的処理により製造される加工でん粉、例えば酢酸でん粉、リン酸化でん粉、リン酸架橋でん粉などがさらに好ましい。これらの加工でん粉を衣材原料中に添加することにより、油ちょう後の衣材中に含まれる油分が少なくなるので、軽くあっさりしたサクッとした食感が得られる。
衣材原料には、上記基本成分の他に増粘剤、調味料、乳化剤、油脂等がさらに添加される。これらの添加物のうち本発明では増粘剤がとくに重要である。
(増粘剤の添加)
増粘剤として、サイリウムシードガム、タマリンドシードガム、キサンタンガム、グアガム、タラガム、カラヤガム、アラビアガム、ジェランガム、トラガントガム、ローカストビーンガム、カラギナン、プルラン、ゼラチン、寒天、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、グルコマンナン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、アルギン酸プロピレングリコールエステル(PGA)からなる群のうちから選択される1種又は2種以上を用いることができる。本発明では、これらの増粘剤のうち植物の種子から採れるサイリウムシードガムおよびタマリンドシードガムを組合せて添加するとともに、併せてメチルセルロースおよびPGAを組合せてさらに添加するのが好ましい。
増粘剤は、衣材原料の主要成分であるバッター液中に対して微量を添加する。バッター液は、バッターミックスを水に溶解した水溶液である。本発明において、バッター液中にアルギン酸プロピレングリコールエステル(PGA)、メチルセルロース、サイリウムシードガム及び/又はタマリンドシードガムの4種又は3種の増粘剤を添加することが好ましい。バッターミックスは、でん粉、加工でん粉、米粉、ブドウ糖、砂糖、小麦粉、植物性たんぱく、植物油脂を含有する混合物である。
上記増粘剤はバッター液中にそれぞれ微量が添加される。例えばサイリウムシードガムを0.01〜2.00%、タマリンドシードガムを0.0001〜1.0000%、メチルセルロースを0.001〜0.500%、PGAを0.001〜0.500%の含有量(質量%)の範囲とすることが好ましい。さらに、サイリウムシードガムを0.20〜0.30%、タマリンドシードガムを0.02〜0.03%、メチルセルロースを0.07〜0.09%、PGAを0.03〜0.05%の含有量(質量%)の範囲とすることが最も好ましい。
i)アルギン酸プロピレングリコールエステル(PGA)
PGAは海藻を原料としてつくられる。PGA には、泡が立ちやすくする泡沫生成機能の他に、生成した泡が消えにくい泡沫安定機能がある。本発明では、バッターミックスと水を撹拌する際に微量のPGA を添加すると、バッター液(揚げ物の衣材)中に消えにくい微細気泡が多量に生成される。このような作用は、例えば微量のPGA を添加した発酵後のビールをグラスに注いだときに、きめ細かく消えにくい気泡が発生することと実質的に同じである。
ii)サイリウムシードガム
サイリウムシードガムは植物の種子を原料としてつくられる。サイリウムシードガムは、他の植物性ガムや発酵ガムとはかなり異なる特異的性質をもつ増粘剤であり、耐酸性、耐塩基性、耐酵素性などの各種の耐久性に優れ、その性質が安定している。また、粘性のpH依存度が小さく、強酸性から強アルカリ性まで(pH 2〜10)の広範囲で安定した粘性を示す。さらに、粘性の温度依存度が小さく、20〜50℃の温度範囲では粘度の変化があまりみられない。このようにサイリウムシードガムが増粘剤として安定した性質を有していることから、バッターミックスと水を混合撹拌した際に発生する気泡がサイリウムシードガムにより安定化されて消えにくくなる。
また、サイリウムシードガムが食感に与える特性として、気泡が安定化し、かつ、気泡の周壁が厚くなり過ぎず、ゲル化した衣材に糊感がなく、あっさりしている。このため、官能評価試験結果と符合するように衣材の「ひき」が良好な食感につながっているものと推察される。
ちなみに、他のガムのように糊感を示すものであれば、バッター液そのものに糊感が出てしまい、それを衣材に用いて揚げ物をつくると、容易に噛み切ることができない「ひき」の強い食感となる。
ゲル化するガム剤や増粘剤は種々あるが、各々で糊感に差異があり、それらの糊感は最終製品の揚げ物にも影響を及ぼす。衣材の「ひき」を強くする性質や衣材を硬質にする性質を有するガム剤や増粘剤もある。
iii)タマリンドシードガム
タマリンドシードガムは植物の種子を原料としてつくられる。タマリンドシードガムには非加熱タイプと加熱タイプがある。非加熱タイプは、冷水に溶解して粘性を発現する。加熱タイプは、約75℃で10〜15分間の加熱を要する。本実施形態では前者の非加熱タイプを用いた。非加熱タイプのタマリンドシードガムは、耐酸性、耐塩基性、耐酵素性などの各種の耐久性に優れ、糊感が少なく曳糸性がない。また、強酸性から強アルカリ性までの広範囲のpHで安定した粘性を示す。また、保水性に優れ、離水防止にも適しているため、微量の添加により安定したバッター液を作製できるとともに、糊感が無いので油ちょう後の衣材の「ひき」が良くなる。さらに、冷凍耐性が向上する。
iv)メチルセルロース
メチルセルロースは、セルロースの水酸基とメトキシル基の親油基を有し、熱ゲル化性を示す。メチルセルロースを揚物の衣材に微量添加すると、熱ゲル化性の作用により水分の調整とともに油分の過剰な吸収を防ぐことができる。これにより、揚げ物のべちゃつきを防止した油切れの良い衣材が得られる。
(増粘多糖類の添加)
増粘多糖類を増粘剤の用途として衣材原料に添加することができる。増粘多糖類として、サイリウムシードガム、タマリンドシードガム、アラビアガム、キサンタンガム、グアガム、タラガム、ジェランガム、ペクチン、微小繊維状セルロース、アウレオバシジウム培養液、アエロモナスガム、アグロバクテリウムスクシノグリカン、アゾトバクタービネランジーガム、アマシードガム、アーモンドガム、アラビノガラクタン、アルギン酸、アロエベラ抽出物、ウェランガム、エルウィニアミツエンシスガム、エレミ樹脂、エンテロバクターガム、エンテロバクターシマナスガム、オリゴグルコサミン、カシアガム、ガディガム、カードラン、カラギナン、精製カラギナン、加工ユーケマ藻類、ユーケマ藻類、カラヤガム、カロブビーンガム、キダチアロエ抽出物、キチン、キトサン、グアガム酵素分解物、グルコサミン、酵母細胞壁、サバクヨモギシードガム、スクレロガム、セスバニアガム、ダンマル樹脂、デキストラン、トラガントガム、トリアカンソスガム、トロロアオイ、納豆菌ガム、ファーセレラン、フクロノリ抽出物、プルラン、マクロホモプシスガム、モモ樹脂、ラムザンガム、レバン、オクラ抽出物、海藻セルロース、褐藻抽出物、グルテン、グルテン分解物、コンニャクイモ抽出物、ダイズ多糖類、ナタデココ、マンナン、レンネットカゼインからなる群のうちから選択される2種以上を用いることができる。これらのうちから特にサイリウムシードガム、タマリンドシードガム、アラビアガム、キサンタンガム、グアガム、タラガム、ジェランガム、ペクチン、微小繊維状セルロースからなる群のうちから選択される2種以上を用いることが好ましい。
(調味料の添加)
衣材原料及び/又は中具に調味料を添加することができる。調味料として、食塩、醤油、魚醤、酢、味醂、清酒、砂糖、ブドウ糖、各種ソース、各種スパイス、旨味調味料のうちから1種又は2種以上を混合した混合物を用いることができる。ここで旨味調味料は、グルタミン酸ナトリウム、イノシン酸、核酸、アスパラギン酸、グアニル酸、コハク酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、L-アスパラギン酸ナトリウム、DL-アラニンのうちから1種又は2種以上を混合した混合物を用いることができる。なお、本発明は、衣材原料中に調味料を配合する方法のみに限定されるものではなく、唐揚げや竜田揚げのように中具を調味料中に漬け込み、調味料を中具に浸み込ませる方法にも適用されるものである。
(乳化剤の添加)
衣材原料に乳化剤を添加することができる。乳化剤として、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン、ステアロイル乳酸カルシウムのうちから1種又は2種以上を混合した混合物を用いることができる。
(油脂の添加)
衣材原料に油脂を添加することができる。油脂として、米ぬか油、米胚芽油、パーム油、大豆油、菜種油、コーン油、ひまわり油、綿実油、ヤシ油、シソ油、牛脂、豚脂、魚油のうちから1種又は2種以上を混合した混合物を用いることができる。
上記工程(c)では、中具の表面に衣材原料を付着させ、下拵え品を作製する。一般的にフライの場合は、衣材原料としてブレッダー(打粉)、バッター液、パン粉を中具に付ける。一般的に唐揚げの場合は、衣材原料としてブレッダー(打粉)とバッター液(溶き卵)を中具に付ける。また、一般的に天ぷらの場合は、衣材原料としてブレッダー(打粉)とバッター液を中具に付ける。
上記工程(d)では、下拵え品を油ちょうし、これにより衣材原料を脆性、光沢性、凝集性、油切れ性、非糸曳き性および冷凍耐性を有する衣材とし、衣材により中具が覆われた揚物を作製する。上記4種の増粘剤の作用により、油ちょう後の衣材に脆性、光沢性、凝集性、油切れ性、非糸曳き性および冷凍耐性などの特性が付与される。
上記工程(e)では、揚物を冷凍する。油ちょうした揚物を油切りし、放冷した後に、検査および包装をしやすくするために揚物を急速凍結する。急速凍結は、40〜80分間でマイナス40〜50℃まで冷却することが好ましい。
上記工程(f)では、冷凍した揚物を冷凍揚物用包装材により包装する。冷凍揚物用包装材には所定のフィルム包装材を用いる。このようなフィルム包装材として、平均厚さ50〜100μmの樹脂フィルムを用いることが好ましい。
(フィルム包装材)
フィルム包装材には、ポリエチレン(PE)、ポリアミド(PA)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニリデン共重合体(PVDC)、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS)などの樹脂材料を用いることができる。本発明に適したフィルム包装材の厚みは、平均厚みで50〜100μmの範囲にあることが望ましい。フィルム包装材の厚みが50μm未満になると、包装物を取り扱う際に必要最低限要求される強度が不足して裂けたり破れたりするおそれがある。一方、フィルム包装材の厚みが100μmを超えると、真空包装時のヒートシール部に不良(波うち状の熱変形部にてシール不良)を生じやすくなり、包装を開封しにくくなり、また内容物への熱伝導性が低下し、さらにコスト高になる。
以下、添付の図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
先ず図1を参照しながら実施形態に係る施設調理用冷凍揚物の製造方法を説明する。本実施形態では秋鮭を中具とする冷凍フライを製造する例について説明する。
原料として凍結した秋鮭を大型冷凍庫に受け入れて保管する。冷凍魚を必要量だけ冷凍庫から取り出し、解凍する(工程S1)。解凍した魚体からウロコを除去し、さらに頭部、内臓、ひれ、骨をそれぞれ除去する(工程S2)。整形処理工程では、とくに骨を魚体から徹底的に取り除く。
次いで、整形処理した魚体(例えばフィレ)をpH調整されたアルカリ水溶液中に漬け込み、アルカリ化処理する(工程S3)。魚体をアルカリ水溶液中から引き上げ、魚体に洗浄水を吹き付け、魚体の表面に付着したアルカリ水溶液を水洗除去する(工程S4)。さらに魚体の表面に付着した洗浄水を水切りし、魚体を凍結させ、冷凍庫に保管する(工程S5)。冷凍庫から冷凍魚体を取り出し、必要量だけ解凍する(工程S6)。
解凍した魚体を所望重量の切身に切断する(工程S7)。切断した切身を一時的に冷凍保存する。冷凍した秋鮭の切身が揚物における中具の材料となる。
冷凍保存した秋鮭の切身(中具)を解凍し、解凍した中具の表面に所望量の打粉(ブレッダー)を付ける(工程S8)。ブレッダーは、次のバッター液を中具の表面に均一に付着させるための下地となるもので、小麦粉、でん粉、加工でん粉、植物油脂、乳化剤などを含んでいる。
次いで、ブレッダーを付けた中具をバッター液中に浸漬して、中具の表面に所望量のバッター液を付着させる(工程S9)。バッター液は、衣材を形成するために必要な原料であり、でん粉、加工でん粉、米粉、ブドウ糖、砂糖、小麦粉、植物性たんぱく(大豆粉)、植物油脂、増粘剤などを含む水溶液である。
次いで、バッター液を付けた中具に所望量のパン粉を付ける(工程S10)。パン粉は、揚物の外観を見栄えよくするとともに、好もしい食感を与えるものである。パン粉として、電極パン粉と焙焼パン粉を1:1の比率で混合したミックスパン粉、または30〜35%の含水率の生パン粉を用いることが好ましい。生パン粉には平均粒径4〜6mmの一般的な大きさの粒子を用いることが好ましい。
これらの衣材原料を付けた中具が下拵え品となる。下拵え品では、衣率が35〜45%となる量の衣材原料を中具に付ける。下拵え品の芯部の温度がマイナス18℃以下になるまで下拵え品を急速凍結する(工程S11)。
次いで、急速凍結した下拵え品を熱油中にくぐらせ、該下拵え品を油ちょうする(工程S12)。油ちょうは、例えば180℃の温度で約5分(60g)から6分(80g)までの時間で行う。揚げ油にはサラダ油、大豆油、なたね油、コーン油、ゴマ油、米油、ショートニング等を用いる。油ちょう後に、揚物を油切りしながら、芯部の温度が20〜40℃に降下するまで揚物を放冷する(工程S13)。
放冷後、芯部の温度がマイナス18℃以下になるまで一次目視検査の合格品を急速凍結する(工程S14)。フライの場合、衣率が35〜45%の範囲となるものを合格品とする。次いで、重量検査/二次目視検査の合格品をフィルム包装材で袋包装し(工程S15)、袋包装した合格品を袋ごと重量検査する。
次いで、金属検出器により袋包装した合格品に釣り針などの金属が含まれていないかどうかを金属検出検査により確かめる(工程S16)。この金属検出検査では、僅かでも金属感知反応のあるものは不合格品として除去する。
次いで、重量検査/金属検出検査の合格品を箱詰め包装し(工程S17)、箱詰め包装した最終合格品を冷凍し、出荷するまでの期間、冷凍庫内に保存する(工程S18)。
以下に実施例を説明する。
[中具のアルカリ化処理]
本発明者らの研究によれば、アルカリ化処理後において時間が経過するとともに、アルカリ水溶液のpH値よりも処理された中具のpH値が僅かずつではあるが徐々に低下することが認められている。例えばpH9.8のアルカリ水溶液中に中具として秋鮭の切身を1時間浸漬した試料では、処理直後の試料のpH値はほぼ9.8であるが、漬込み処理完了から例えば24時間経過後の試料のpH値は最大で7.14程度まで下がることが認められた。この試料のpH値の低下現象は、細胞中に浸透したアルカリ成分と魚体の細胞中に含まれる液体(水溶性タンパク質など)との間で中和反応が進行すること、及び/又は浸漬処理の直後においては試料の表層部と芯部との間にpH値のばらつきがあること、及び/又は脂質やタンパク質の量あるいは水分の量に個体差があることなどに起因して起こります。
そこで、本実施形態では、アルカリ化処理後の中具のpHが最終的に8.6〜11.5の範囲に落ち着くように、アルカリ水溶液のpHが8.0〜12.5の範囲に調整されている。魚体をpH8.0を下回る中性または酸性の液に浸漬すると、細胞の保水性が低下して水溶性たんぱく質が細胞から滲み出し、身がパサつき、硬くなる。また、表面に滲み出てきた水溶性たんぱく質は、加熱により白濁したカードとなって魚体の表面に付着し、外観を著しく劣化させる。一方、pH12.5を上回る強アルカリ性の液に浸漬すると、肉の味に苦味がでてくる。さらに、pH10.5あたりに調整したアルカリ水溶液に魚体を浸漬すると、カードの露出防止効果が良好になる。カードの露出防止効果が得られるアルカリ水溶液のpH値は、上述のpH8.0以上12.5以下の範囲であるが、より好ましくはpH8.5以上12.0以下の範囲であり、最も好ましくはpH9.0以上12.0以下の範囲である。pH10.5は細胞の保水性が最適になるところであり、筋線維と筋線維との相互間隙に水分が入り込み、肉質が柔らかくジューシーになるからである。
なお、試料のpH測定には、pH測定器(製造会社の名称;HANNA、製品名称又は型番;CODE HI99163)を用いた。このpH測定器は、所定の電極を被検体に接触させ、そのときの電極電位を検出し、検出した電極電位に基づいてpH値を算出する電極電位測定方式のものである。
本実施例では、アルカリ化処理工程において中具となる魚介類を大気圧室温下でアルカリ水溶液中に漬け込むようにしているが、室温下といっても気温の変化に応じて最低限の温度管理が必要である。例えば、魚介類の中心部の温度(芯温)が好ましくはプラス1〜25℃、より好ましくはプラス3〜10℃、最も好ましくはプラス3〜5℃となるように温度管理する。したがって、アルカリ化処理はエアコンディショナーにより温度調整された空調室内で行なう。また、アルカリ化処理時の圧力は、1気圧のみに限定されるものではなく、気象の変化に応じて1気圧を少し下回る減圧下であってもよいし、1気圧を少し上回る加圧下であってもよい。
アルカリ水溶液中への魚介類の漬込み時間は10分間以上48時間以下とすることができるが、さらに好ましくは30分間以上3時間以下とする。ほとんどの魚介類では3時間以下の漬け込みで十分な効果を得ることができるが、魚種や魚体の形態に応じて漬込み時間を3時間を超えて延長することができる。しかし、48時間で漬込み処理の効果が飽和してしまい、それ以上の漬け込みは生産性の観点から許容できないので最長の漬込み時間を48時間とする。一方、漬け込み時間が10分間未満になると、中具と衣材とが一体化した口どけの良い食感を得るという本発明の効果が得られ難くなる。漬け込み時の温度や圧力を増大させて魚介類に対するアルカリ水溶液の浸透圧を上げることにより、さらに漬け込み時間を短縮することも考えられるが、温度・圧力の増大化は細胞がダメージを受けて劣化するおそれがあるため採用することができない。
[アルカリ水溶液の成分]
アルカリ水溶液は、炭酸塩、リン酸塩、水酸化塩およびアルカリ性の有機酸塩からなる群より選択される1種または2種以上を含む。炭酸塩として、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウムを用いることができる。また、リン酸塩として、ピロリン酸ナトリウム及びポリリン酸ナトリウムなどのような重合リン酸塩類、またはリン酸三ナトリウム及びリン酸水素二ナトリウムなどのような非重合リン酸塩類を用いることができる。また、水酸化塩として、水酸化カルシウムなどを用いることができる。また、アルカリ性の有機酸塩として、クエン酸塩類、乳酸塩類、及びリンゴ酸塩類などを用いることができる。これらのうちクエン酸塩類であるクエン酸三ナトリウム(Na3(C3H5O(COO)3))が最も好ましい。
さらに、アルカリ水溶液には、上述の成分の他にクロレラ抽出液(クロレラエキス)、糖類、食塩などを添加することができる。クロレラ抽出液は、消臭作用と整味作用を兼ね備えた有効成分である。クロレラ抽出液含有水溶液中のクロレラ濃度が0.1質量%未満であると、所望の消臭効果および整味効果が得られなくなる。一方、液中のクロレラ濃度が20質量%を超えると、効果が飽和してしまう。ここで、消臭作用とは魚介類の臭みを消す性質をいう。整味作用とは魚介類の本来もっている旨みをさらに引き出す性質をいう。クロレラ抽出液の整味作用は、食塩などの調味料と組み合わせて複合添加した場合に魚介類の味を引き立たせる役割を有する。クロレラエキス水溶液中への漬け込み時間は、アルカリ化処理の漬け込み時間と実質的に同じにすることができる。クロレラ抽出液をアルカリ水溶液中に添加混合して漬け込み処理することが可能だからである。もちろん、クロレラエキス水溶液をアルカリ水溶液とは別々にしてそれぞれ漬け込み処理することもできる。なお、クロレラエキス水溶液への漬け込みタイミングはアルカリ水溶液漬け込み処理の前後どちらでもよい。
糖類として、トレハロース、還元水飴、マルトース、ラクトース、スクロース等をアルカリ水溶液中に添加することができる。また、食塩をアルカリ水溶液中に0.1〜5.0質量%含有させることができる。食塩は保存作用と調味作用を有する。上記クロレラエキスのなかにも若干量の食塩が含まれている。食塩濃度が0.1%を下回ると、所望の保存効果と調味効果が得られなくなる。一方、食塩濃度が5.0%を超えると、塩辛くなり魚の旨み味が損なわれる。なお、食塩濃度は1.0%程度とすることが保存効果と調味効果を得るとともに、さらに上記クロレラエキスとの整味効果を得るうえで最も好ましい。
アルカリ水溶液中に含まれる成分(質量%)の一例を示す。
炭酸水素ナトリウム;1.72%
炭酸ナトリウム;0.52%
クエン酸三ナトリウム;0.20%、
その他の添加成分;1.56%
その他の添加成分には、水酸化カルシウム、クロレラエキス、糖類、食塩、調味料などが含まれる。
[中具の評価]
中具に用いる魚肉を顕微鏡組織観察試験により評価した。
魚肉試料として沸騰水中で20分間加熱した秋鮭、黄金がれい、赤魚をそれぞれ用いた。加熱後の魚肉試料を種々のpH値の水溶液に浸漬し、pH7.0、pH8.0、pH10.5、pH12.0、pH12.5にそれぞれpH調整処理した各種試料を作製した。秋鮭、黄金がれい、赤魚の各切身(加熱前の生の魚肉)をパラフィンで固定して固形試料とし、同試料の筋線維を横断する向きにスライサーで薄く切断してパラフィン切片を作製し、作製したパラフィン切片をヘマトキシリン・エオシン染色を施し、プレパラート上にホルマリン固定し、その組織を光学顕微鏡により観察した。同じ魚肉試料を加熱したものの切身(加熱後の魚肉)についても同様にパラフィン切片を作製して、その組織を光学顕微鏡により観察した。
魚肉のpHが高くなるにしたがって加熱前試料および加熱後試料ともに筋線維と筋線維との間隔が広くなり、それらの間隙に水分が入り込んでいることが認められた。魚肉のpHが高くなるにしたがって保水性が向上することを水分分析法により確認することができた。
また、実施例試料の組織切片からは、糖類が溶解した水溶液に漬け込んだ試料では、筋線維の相互間に水分が入り込んでいること、および筋線維自体の形状がきれいに保たれていることが認められた。したがって、糖類を溶解した水溶液中に魚肉を浸漬することで、保水性を強化することができる。
また、pH値が8.6〜11.5の範囲内にある実施例試料では、筋線維と筋線維との間に空隙が少なく、かつ筋線維に対する顆粒状組織の比率が小さくなるのに対して、pH値が8.6〜11.5の範囲から外れる比較例試料では、筋線維と筋線維との間に空隙が多く、かつ筋線維に対する顆粒状組織の比率が大きくなることが認められた。
さらに、アルカリ化処理した実施例試料は、水溶性たんぱく質が少ないことが認められた。このことから、実施例試料では加熱後のたんぱく質の凝固が少なくなるので、筋線維間隔の拡がりにより熱伝導性が良くなり加熱時間を短縮することができる。
[衣材原料]
衣材原料として打粉(ブレッダー)、バッター液、パン粉が中具に付着される。
打粉(ブレッダー)は、小麦粉、でん粉、加工でん粉、植物油脂、乳化剤などを含み、バッター液の付きを良くするために中具に薄く付けられる。
バッター液は、でん粉、加工でん粉、米粉、ブドウ糖、砂糖、小麦粉、大豆粉、植物油脂などを水に溶解したもので、中具の表面全体に十分な厚みに付けられる。この場合に、バッター液を単独で中具に付けてもよいし、バッター液とブレッダーミックス粉を混合したものを中具に付けるようにしてもよい。
パン粉は、生パン粉やミックスパン粉(電極パン粉+焙焼パン粉)を使用し、中具の最外面に適量が付けられる。生パン粉は平均粒径4〜6mm、含水率30〜35%のものを使用する。
[バッター液の作製]
先ずバッターミックスに蒸留水を加えて撹拌混合し、基本となるバッター液を作製する。作製した基本のバッター液にアルギン酸プロピレングリコールエステル(PGA)、サイリウムシードガム、タマリンドシードガム、及びメチルセルロースをそれぞれ微量添加し、撹拌する。バッター液に添加するための増粘剤は、それぞれ精密秤量機を用いて高精度に秤量されている。
表1に実施例1,2,4、参考例3,5,6および比較例1〜3の衣材原料サンプルに含まれる増粘剤をそれぞれ示す。各試料の衣材原料となるバッター液中に1種又は2種以上の増粘剤がそれぞれ微量添加されている。なお、以下の%表示は、バッター液の全量に対する質量%を示す。
実施例1の試料T1は、質量%で、サイリウムシードガム0.24%、メチルセルロース0.08%、PGA0.04%、タマリンドシードガム0.02%を含む。
実施例2の試料T2は、質量%で、サイリウムシードガム0.29%、PGA0.09%を含む。
参考例3の試料T3は、質量%で、サイリウムシードガム0.38%を含む。
実施例4の試料T4は、質量%で、メチルセルロース0.25%、PGA0.13%を含む。
参考例5の試料T5は、質量%で、メチルセルロース0.38%を含む。
参考例6の試料T6は、質量%で、PGA0.38%を含む。
比較例1の試料T7は、質量%で、アラビアガム0.38%を含む。
比較例2の試料T8は、質量%で、グアガム0.38%を含む。
比較例3の試料T9は、質量%で、ペクチン0.38%を含む。
Figure 0005450873
表2に中具のアルカリ化処理の有無とバッター液中の増粘剤とを種々組合せた試料をそれぞれ示す。
実施例1-1の試料t1は、アルカリ化処理有りの中具と、サイリウムシードガム0.24%、メチルセルロース0.08%、PGA0.04%、タマリンドシードガム0.02%を含む衣材とを組合せた揚物である。
実施例2-1の試料t2は、アルカリ化処理有りの中具と、サイリウムシードガム0.29%、PGA0.09%を含む衣材とを組合せた揚物である。
参考例3-1の試料t3は、アルカリ化処理有りの中具と、サイリウムシードガム0.38%を含む衣材とを組合せた揚物である。
比較例8の試料t4は、アルカリ化処理有りの中具と、主要4種の増粘剤を含まない衣材とを組合せた揚物である。
比較例7の試料t5は、アルカリ化処理無しの中具と、サイリウムシードガム0.24%、メチルセルロース0.08%、PGA0.04%、タマリンドシードガム0.02%を含む衣材とを組合せた揚物である。
参考例5-1の試料t6は、アルカリ化処理有りの中具と、メチルセルロース0.38%を含む衣材とを組合せた揚物である。
参考例6-1の試料t7は、アルカリ化処理有りの中具と、PGA0.38%を含む衣材とを組合せた揚物である。
実施例4-1の試料t8は、アルカリ化処理有りの中具と、メチルセルロース0.25%、PGA0.13%を含む衣材とを組合せた揚物である。
比較例1-1の試料t9は、アルカリ化処理有りの中具と、アラビアガム0.38%を含む衣材とを組合せた揚物である。
比較例2-1の試料t10は、アルカリ化処理有りの中具と、グアガム0.38%を含む衣材とを組合せた揚物である。
比較例3-1の試料t11は、アルカリ化処理有りの中具と、ペクチン0.38%を含む衣材とを組合せた揚物である。
比較例1-2の試料t12は、アルカリ化処理無しの中具と、アラビアガム0.38%を含む衣とを組合せた揚物である。
比較例2-2の試料t13は、アルカリ化処理無しの中具と、グアガム0.38%を含む衣材とを組合せた揚物である。
比較例3-2の試料t14は、アルカリ化処理無しの中具と、サイリウムシードガム0.38%を含む衣材とを組合せた揚物である。
比較例6の試料t15は、アルカリ化処理無しの中具と、PGA0.38%を含む衣材とを組合せた揚物である。
比較例5の試料t16は、アルカリ化処理無しの中具と、メチルセルロース0.38%を含む衣材とを組合せた揚物である。
Figure 0005450873
[バッター液の成分]
バッター液は、バッターミックスを水に溶解した水溶液であり、少なくともアルギン酸プロピレングリコールエステル(PGA)、サイリウムシードガム、タマリンドシードガム及びメチルセルロースの4種の増粘剤を含んでいる。バッターミックスは、でん粉、加工でん粉、米粉、ブドウ糖、砂糖、小麦粉、植物性たんぱく、植物油脂を含有する混合物である。
バッター液中に含まれる各種の増粘剤は、それぞれ微量が添加される。各増粘剤は下記の含有量(質量%)の範囲とすることが好ましい。
PGA;0.001〜0.500%
サイリウムシードガム;0.01〜2.00%
タマリンドシードガム;0.0001〜1.0000%
メチルセルロース;0.001〜0.500%
さらに、増粘剤は下記の含有量(質量%)の範囲とすることが更に好ましい。
PGA;0.03〜0.05%、
サイリウムシードガム;0.20〜0.30%、
タマリンドシードガム;0.02〜0.03%、
メチルセルロース;0.07〜0.09%
バッター液の成分の一例を表3に示す。バッター液は、加工でん粉や小麦粉等を含むバッターミックス18%を蒸留水に溶解した水溶液である。このバッター液水溶液にはサイリウムシードガム0.24%、タマリンドシードガム0.02%、メチルセルロース0.08%およびPGA0.04%がさらに添加されている。
Figure 0005450873
[バッター液の粘度測定方法と測定結果]
バッター液の粘度測定には図2に示すB形回転粘度計を用いた。B形回転粘度計の概要を以下に説明する。
容器2のなかに測定対象となる液体試料3が収容され、B形回転粘度計1の内筒4と外筒5が液体試料3に浸漬されている。内筒4は外筒5のなかに同心円状に配置され、上部が変速機8を介してモータ7の回転駆動軸6に連結されている。この回転駆動軸6には目盛板9とスプリング10が取り付けられている。目盛板9の上面には目盛が刻印され、これらの目盛と向き合うように指針11が配置されている。この指針11は、スプリング10よりも下方で回転駆動軸6に支持されている。
モータ7を起動し、液体試料3中において内筒4を一定速度で回転させると、目盛板9はモータ7の回転駆動軸6と同期して回転するが、内筒4のほうにはスプリング10を介して回転力が伝達されるため、目盛板9の回転開始より内筒4の回転開始が若干遅れる。両者の回転開始のずれが遅れ角βとして目盛板9と指針11により検出されるようになっている。この遅れ角βと液体試料3の粘性率とは比例の関係にあるため、液体ごとに比例係数を求めておけば、検出した遅れ角βを用いて液体試料3の粘性率を求めることができる。ちなみに液体がニュートン流体(例えばグリセリン)の場合は、回転回数に拘わらず粘性率は一定になる。一方、液体が非ニュートン流体(例えばトマトケチャップ)の場合は、回転回数が増加すると粘性率が低下する。
実施例1〜3および比較例1〜13では、表4に示す条件でバッター液の粘度をそれぞれ測定した。B形回転粘度計には東洋産業株式会社の製品VISCOMETER TVB-10を用いた。
実施例1の試料に用いたバッター液(試料T1)の粘度測定結果を表5に示す。バッター液を撹拌混合した後の静置時間を0分、30分、60分、90分、120分とし、それぞれにつき5分間の平均粘度を測定した。静置時間が長くなるほどバッター液の粘度が増加した。
Figure 0005450873
Figure 0005450873
[調理方法]
冷凍揚物の調理方法として、スチームコンベクションオーブン(SC)加熱、オーブンレンジ加熱、自然解凍、パックごと湯せんなど種々の方法を用いることができるが、これらのうちSC加熱法が大量調理施設に最も適した調理方法と言える。SCは、熱風をファンで強制対流させるコンベクションオーブンに蒸気発生機構を取り付け、熱風または高温蒸気を単独で利用するか又は熱風と高温蒸気を組み合わせて利用する万能調理機器である。SCを用いることにより、焼く、煮る、蒸す、炊く、炒める、温め直しなどの多種多様な調理が簡単かつ迅速にできる。SC加熱調理法では10〜15分間加熱保持する。
オーブンレンジ加熱調理法は、高温蒸気の供給を除いてSC加熱調理法とほぼ同じである。
自然解凍調理法は、加熱機器を用いて外部から加熱することなく、冷凍食品を冷蔵庫内温度または室温下で徐々に解凍する方法である。具体的には冷蔵庫の庫内温度を5〜10℃に保持した状態で冷凍食品を8〜12時間の時間を掛けてゆっくりと解凍するか、又は冷凍食品を室温(18℃)下において2〜5時間の時間で徐々に解凍する。
パックごと湯せん調理法は、パッキング包装された冷凍食品を沸騰中の熱湯のなかに包装のまま投入して急速解凍する方法である。具体的にはパッキング包装ごと冷凍食品を熱湯中に投入し、再沸騰後から10〜15分間加熱保持する。
[衣材の食感(テクスチャー)評価]
(1)衣材の噛み切り易さとひきの評価試験方法と評価結果
試料として冷凍フライ、冷凍唐揚げ、冷凍天ぷらの3種類の試料を用いた。フライ試料の中具には秋鮭を用いた。唐揚げ試料の中具には黄金がれいを用いた。天ぷら試料の中具には赤魚を用いた。これら3種類の冷凍試料を原料としてオーブン加熱調理、自然解凍調理、パックごと湯せん調理の3種の方法を用いてそれぞれ調理し、実施例サンプル及び比較例サンプルをそれぞれ作製した。
衣材の噛み切り易さとひきを評価するための試験方法として評点法を採用した。味覚試験に優秀な成績を修めたパネル10名に各種のサンプルを実際に喫食していただき、衣材の噛み切り易さとひきを+2点から−2点までの5段階評価で採点した結果を集計し、その平均点をサンプルごとに算出して評価した。
採点は、増粘剤を添加しない無添加サンプルと同等のひきと噛み切りやすさのものを基準値の0点とし、無添加サンプルと比べてひきがなく噛み切りやすいものを+2点とし、無添加サンプルと比べてややひきがなく噛み切りやすいものを+1点とし、無添加サンプルと比べてややひきが強く噛み切りにくいものを−1点とし、無添加サンプルと比べてひきが強く最も噛み切りにくいものを−2点とした。
このような評点法は、「おいしさを測る−食品官能検査の実際−(古川秀子著;幸書房;1994年11月25日発行)」において採点方法および解析方法が詳しく解説されている。
各種サンプルの衣材の噛み切り易さとひきを評点法により評価した結果を以下に述べる。
フライ試料の評価結果を表6〜表8にそれぞれ示す。
表6にはオーブン加熱調理したフライ試料T1〜T9の衣材の噛み切り易さとひきの評価試験結果をそれぞれ示した。
表7には自然解凍調理したフライ試料T1〜T9の衣材の噛み切り易さとひきの評価試験結果をそれぞれ示した。
表8にはパック包装ごと湯せん調理したフライ試料T1〜T9の衣材の噛み切り易さとひきの評価試験結果をそれぞれ示した。
これらの結果から、フライ試料ではいずれの調理方法においても実施例サンプルT1,T2,T4のほうが比較例サンプルT7〜T9よりも衣材が噛み切り易く、かつひきが強過ぎないことが認められた。実施例サンプルのうち特にサンプルT1の衣材がひきが最適であり、最も噛み切り易いことが分かった。
Figure 0005450873
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唐揚げ試料の評価結果を表9〜表11にそれぞれ示す。
表9にはオーブン加熱調理した唐揚げ試料T1〜T6の衣材の噛み切り易さとひきの評価試験結果をそれぞれ示した。
表10には自然解凍調理した唐揚げ試料T1〜T6の衣材の噛み切り易さとひきの評価試験結果をそれぞれ示した。
表11にはパック包装ごと湯せん調理した唐揚げ試料T1〜T6の衣材の噛み切り易さとひきの評価試験結果をそれぞれ示した。
これらの結果から、唐揚げ試料ではいずれの調理方法においても、第2群の実施例サンプルT4と比べて第1群の実施例サンプルT1,T2のほうが噛み切りやすく、ひきが適度にあることが分かった。
Figure 0005450873
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Figure 0005450873
天ぷら試料の評価結果を表12〜表14にそれぞれ示す。
表12にはオーブン加熱調理した天ぷら試料T1〜T6の衣材の噛み切り易さとひきの評価試験結果をそれぞれ示した。
表13には自然解凍調理した天ぷら試料T1〜T6の衣材の噛み切り易さとひきの評価試験結果をそれぞれ示した。
表14にはパック包装ごと湯せん調理した天ぷら試料T1〜T6の衣材の噛み切り易さとひきの評価試験結果をそれぞれ示した。
これらの結果から、天ぷら試料ではいずれの調理方法においても、第2群の実施例サンプルT4と比べて第1群の実施例サンプルT1,T2のほうが噛み切りやすく、ひきが適度にあることが分かった。
Figure 0005450873
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次に試験方法1〜3を用いて衣材の脆さを様々な角度から見て多面的に評価した結果をそれぞれ説明する。脆さは、衣材の食感(テクスチャー)に関連する最も重要な性質の1つである。
(2−1)衣材の脆さの評価試験方法1と評価結果
衣材の脆さを評価する試験方法1として評点法を採用した。各種サンプルをパネル10名に実際に喫食していただき、衣材の脆さを+2点から−2点までの5段階評価で採点した結果を集計し、その平均点をサンプルごとに算出して評価した。
採点は、増粘剤を添加しない無添加サンプルと同等の脆さのものを基準値の0点とし、無添加サンプルよりも口どけの良いものを+2点とし、無添加サンプルよりも少し口どけの良いものを+1点とし、無添加サンプルよりも少し口どけが悪く咀嚼しにくいものを−1点とし、無添加サンプルよりも口どけが悪く咀嚼しにくいものを−2点とした。
フライ試料の評価結果を表15〜表17にそれぞれ示す。
表15にはオーブン加熱調理したフライ試料T1〜T9の評価試験結果をそれぞれ示した。
表16には自然解凍調理したフライ試料T1〜T9の評価試験結果をそれぞれ示した。
表17にはパック包装ごと湯せん調理したフライ試料T1〜T9の評価試験結果をそれぞれ示した。
これらの結果から、フライ試料では、いずれの加熱調理方法においても実施例サンプルT1,T2,T4のほうが比較例サンプルT7〜T9よりも衣材がサクサクとした食感で口どけが良いことが認められた。パネル全員から特に実施例サンプルT1,T2は口どけの良いサクサクした食感であり、非常に食べやすいという評価であった。これに対して比較例サンプルT7〜T9はガリガリ又はザクザクとした硬い食感であり、口どけが悪く食べにくいという評価であった。
唐揚げ試料の評価結果を表18〜表20にそれぞれ示す。
表18にはオーブン加熱調理した唐揚げ試料T1〜T6の評価試験結果をそれぞれ示した。
表19には自然解凍調理した唐揚げ試料T1〜T6の評価試験結果をそれぞれ示した。
表20にはパック包装ごと湯せん調理した唐揚げ試料T1〜T6の評価試験結果をそれぞれ示した。
天ぷら試料の評価結果を表21〜表23にそれぞれ示す。
表21にはオーブン加熱調理した天ぷら試料T1〜T6の評価試験結果をそれぞれ示した。
表22には自然解凍調理した天ぷら試料T1〜T6の評価試験結果をそれぞれ示した。
表23にはパック包装ごと湯せん調理した天ぷら試料T1〜T6の評価試験結果をそれぞれ示した。
これらの結果から、唐揚げ試料と天ぷら試料では、いずれの加熱調理方法においても、第2群の実施例サンプルT4と比べて第1群の実施例サンプルT1,T2のほうが衣材がサクサクとした食感でさらに口どけが良いことが認められた。
Figure 0005450873
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(2−2)衣材の脆さの評価試験方法2と評価結果
次に、図3を参照してレオメータを用いて各種サンプルの衣材のかたさを定量的に評価する試験方法2とその結果について説明する。
レオメータは、「進化する食品テクスチャー研究(株式会社エヌ・ティー・エス;理工系専門書出版;2011年12月発行)」の第2章のレオロジーとその測定;p49, p69-77に詳しく解説されている。
レオメータを利用するプランジャー押込み法により各種衣材サンプルの食感(テクスチャー)を応力−歪み線図に置きかえて測定し、測定した応力−歪み線図を用いて衣材の食感(テクスチャー)を定量的に評価した。
プランジャー押込み法は、プランジャーを被検体に押し込んだときの荷重と歪率の経時変化を荷重が所定の設定値に到達するところまで連続的に測定する試験方法である。プランジャー押込み法には、くさび型のプランジャーを用いる破断試験法と、円柱型のプランジャーを用いる圧縮試験法とがある。本実施例では前者の破断試験法を用いて衣材の食感をそれぞれ評価した。破断試験法は、衣材を前歯で噛み切るときを想定して、くさび型プランジャーの尖った先端を衣材に食い込ませたときにかかる力とそのとき生じる歪を測定する試験方法である。
本実施例では、レオメータとして株式会社山電のクリープメーター(破断測定機;型番RE-3305S)を用いた。測定条件として、プランジャーの押し込み速度を1mm/秒に設定して測定した。いずれの試料も95℃で10分間加熱した後に室温(30℃)まで冷却し、2cm×2cmの切片にカットして衣材サンプルを作製した。
図3は、横軸に歪率(%)をとり、縦軸に応力(N/m2)をとって、くさび型プランジャーを各種の衣材サンプルに押し込んだときの応力−歪み波形をそれぞれ示す特性線図である。図中の特性線E1は実施例1-1の試料t1の結果を、特性線E2は実施例1-1の予備試料t1-2の結果を、特性線C1は比較例8の試料t4の結果を、特性線C2は比較例8の予備試料t4-2の結果をそれぞれ示す。
特性線E1,E2から明らかなように、実施例試料では、破断点のピーク応力(破断応力)から最小応力までの落差(−ΔV1)が大きく、かつ破断後に応力が急勾配で減少しており、典型的な脆性破壊の様子が顕著に表れている。このことから実施例試料の衣材は、ひきが適度に弱く(噛み切り易く)、破断直後に小さな断片となって粉々に崩壊する(サクサクした食感となる)ことが分かる。
これに対して比較例試料では、特性線C1,C2から明らかなように、破断点のピーク応力(破断応力)から最小応力までの落差(−ΔV2)が小さく、典型的な脆性破壊とは言えずどちらかと言えば弾性的な破壊となっている。ちなみに、最大応力と最小応力との差分は比較例試料よりも実施例試料のほうが大きくなっている(ΔV1>ΔV2)。このことから比較例試料の衣材は、ひきが強く、弾性的に変形し、破断してから崩壊するまでの時間が長い(噛み切り難くグニュッとした食感となる)ことが分かる。
表24にレオメータによる各種衣材サンプルの食感(テクスチャー)測定結果をそれぞれ示す。図3と表24に示すように、実施例試料の衣材が破断する破断応力(ピーク応力、最大応力)から衣材の破断が終了する最小応力までの応力低下量は(2.0±0.5)×105N/m2の範囲にあることが認められた。
Figure 0005450873
(2−3)衣材の脆さの評価試験方法3(衣材の構造解析試験)
次に、図4を参照して実施例の衣材を比較例の衣材と比較して各々のミクロ構造を解析する構造解析方法とその結果をそれぞれ説明する。
構造解析方法には、市販のコンピュータシミュレーション用ソフトウェアを利用して、液量、液粘度、温度、湿度、圧力、気液の撹拌速度、気液の撹拌時間などの条件を設定入力し、気液の撹拌混合の状態変化を3Dモデル化して模擬的に解析する手法を用いた。
図4の(a1)は、実施例の衣材を正面から見たコンピュータシミュレーション3D画像図を示す。図4の(a2)は、実施例の衣材を45°回転した方位から見たコンピュータシミュレーション3D画像図を示す。
図から明らかなように、実施例の衣材のなかには多数の微細な気泡が高密度で存在することが分かる。また、実施例の衣材では、気泡の形状が揃っていて安定しており、かつ気泡を取り囲む周壁の厚さが薄いことが分かる。このことから実施例の衣材は、気泡まわりの薄い周壁が脆性破壊しやすいので噛み切り易いサクッとした食感となり、また破断後は粉々に崩壊しやすいので口どけが良くなる。
上記の結果について若干の考察を加える。実施例の衣材では、油ちょう後の急速凍結でバッター中の気泡が湾曲することがなく、気泡の形状が安定している。バッター液に添加した増粘剤の作用により衣材に冷凍耐性が与えられているからである。また、バッター液に添加したPGAの泡沫安定作用により、多数のきめ細かい気泡が生成され、衣材中の気泡の密度が高くなる。また、微細な気泡が生成されることにより、バッター液の単位体積当たりの気体占有率が高くなる。すなわち、高い気体占有率により、単位体積当たりのバッターミックス粉の密度は低くなる。
図4の(b1)は、比較例の衣材を正面から見たコンピュータシミュレーション3D画像図を示す。図4の(b2)は、比較例の衣材を45°回転した方位から見たコンピュータシミュレーション3D画像図を示す。
図から明らかなように、比較例の衣材のなかには比較的大きなサイズの気泡が低密度で存在することが分かる。また、比較例の衣材では、気泡の形状がいびつに変形して不安定であり、かつ気泡を取り囲む周壁の厚さが厚いことが分かる。このことから比較例の衣材は、気泡まわりの厚い周壁が脆性破壊しにくいので噛み切り難く(噛み切りエネルギが大きい)、ひきの強い食感となり、また破断後は粉々に崩壊しにくいので口どけが悪くなる。
上記の結果について若干の考察を加える。比較例の衣材では、冷凍耐性が弱く、凍結時の気化や凍結保管時の昇華により、バッター中の気泡の形状が湾曲し、冷凍変性する。また、気泡の大きさも通常撹拌時に生成される気泡であり、気泡の形状が大きい。
(3)衣材の油切れの評価試験方法と評価結果
衣材の油切れを評価する試験方法として評点法を採用した。各種サンプルをパネル10名に実際に喫食していただき、衣材の油切れを+2点から−2点までの5段階評価で採点した結果を集計し、その平均点をサンプルごとに算出して評価した。
採点は、増粘剤を添加しない無添加サンプルと同等の油切れのものを基準値の0点とし、無添加サンプルよりも油切れの良いものを+2点とし、無添加サンプルよりも少し油切れの良いものを+1点とし、無添加サンプルよりも少し油切れが悪いものを−1点とし、無添加サンプルよりも油切れの悪いものを−2点とした。
油切れを評価するために、フライの衣率を35〜45%の範囲とした。フライ試料の評価結果を表25〜表27にそれぞれ示す。
表25にはオーブン加熱調理したフライ試料T1〜T9の評価試験結果をそれぞれ示した。
表26には自然解凍調理したフライ試料T1〜T9の評価試験結果をそれぞれ示した。
表27にはパック包装ごと湯せん調理したフライ試料T1〜T9の評価試験結果をそれぞれ示した。
これらの結果から、いずれの加熱調理方法においても実施例サンプルT1,T2,T4のほうが比較例サンプルT6〜T9よりも衣材の油切れが良好であることが認められた。
油切れを評価するために、唐揚げの衣率を10〜20%の範囲とした。唐揚げ試料の評価結果を表28〜表30にそれぞれ示す。
表28にはオーブン加熱調理した唐揚げ試料T1〜T6の評価試験結果をそれぞれ示した。
表29には自然解凍調理した唐揚げ試料T1〜T6の評価試験結果をそれぞれ示した。
表30にはパック包装ごと湯せん調理した唐揚げ試料T1〜T6の評価試験結果をそれぞれ示した。
油切れを評するために、天ぷらの衣率を25〜35%の範囲とした。天ぷら試料の評価結果を表31〜表33にそれぞれ示す。
表31にはオーブン加熱調理した天ぷら試料T1〜T6の評価試験結果をそれぞれ示した。
表32には自然解凍調理した天ぷら試料T1〜T6の評価試験結果をそれぞれ示した。
表33にはパック包装ごと湯せん調理した天ぷら試料T1〜T6の評価試験結果をそれぞれ示した。
これらの結果から、いずれの加熱調理方法においても実施例サンプルT1,T2,T4の相互間に顕著な差異が認められなかった。
Figure 0005450873
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(4)衣むらの評価試験方法と評価結果
衣むらを評価する試験方法として評点法を採用した。パネル10名に各種サンプルの外観を肉眼で観察していただき、衣むらを+2点から−2点までの5段階評価で採点した結果を集計し、その平均点をサンプルごとに算出して評価した。
採点は、増粘剤を添加しない無添加サンプルと同等の衣むらのものを基準値の0点とし、無添加サンプルよりも衣むらの良いものを+2点とし、無添加サンプルよりも少し衣むらの良いものを+1点とし、無添加サンプルよりも少し衣むらが悪いものを−1点とし、無添加サンプルよりも衣むらの悪いものを−2点とした。
衣むらを評価するために、フライの衣率を35〜45%の範囲とした。
表34にオーブン加熱調理したフライ試料T1〜T9の衣むらの評価試験結果をそれぞれ示した。
これらの結果から、実施例サンプルT1,T2,T4のほうが比較例サンプルT7〜T9よりも衣むらの状態が良好であることが認められた。
Figure 0005450873
(5)中具の食感の評価試験方法と評価結果
中具の食感を評価する試験方法として評点法を採用した。各種サンプルをパネル10名に実際に喫食していただき、衣材の油切れを+2点から−2点までの5段階評価で採点した結果を集計し、その平均点をサンプルごとに算出して評価した。
採点は、pH処理しないで増粘剤を添加しない非pH処理・無添加サンプルと同等の食感のものを基準値の0点とし、非pH処理・無添加サンプルより軟らかく咀嚼しやすい食感のものを+2点とし、非pH処理・無添加サンプルよりも少し軟らかく咀嚼しやすい食感のものを+1点とし、非pH処理・無添加サンプルよりも少し硬く咀嚼しにくいものを−1点とし、非pH処理・無添加サンプルよりも硬く咀嚼しにくいものを−2点とした。
フライ試料の中具には秋鮭を用いた。
フライ試料の評価結果を表35〜表37にそれぞれ示す。
表35にはオーブン加熱調理したフライ試料t1〜t16の評価試験結果をそれぞれ示した。
表36には自然解凍調理したフライ試料t1〜t16の評価試験結果をそれぞれ示した。
表37にはパック包装ごと湯せん調理したフライ試料t1〜t16の評価試験結果をそれぞれ示した。
これらの結果から、フライ試料では、いずれの加熱調理方法においても実施例サンプルt1,t2,t8のほうが比較例サンプルt4,t5,t9〜t16よりも中具の食感が良好であることが認められた。
Figure 0005450873
Figure 0005450873
Figure 0005450873
唐揚げ試料の中具には黄金がれいを用いた。
唐揚げ試料の評価結果を表38〜表40にそれぞれ示す。
表35にはオーブン加熱調理した唐揚げ試料t1〜t8,t14〜t16の評価試験結果をそれぞれ示した。
表36には自然解凍調理した唐揚げ試料t1〜t8,t14〜t16の評価試験結果をそれぞれ示した。
表37にはパック包装ごと湯せん調理した唐揚げ試料t1〜t8,t14〜t16の評価試験結果をそれぞれ示した。
これらの結果から、唐揚げ試料では、いずれの加熱調理方法においても実施例サンプルt1,t2,t8のほうが比較例サンプルt4,t5,t14〜t16よりも中具の食感が良好であることが認められた。
Figure 0005450873
Figure 0005450873
Figure 0005450873
天ぷら試料の中具には赤魚を用いた。
天ぷら試料の評価結果を表41〜表43にそれぞれ示す。
表41にはオーブン加熱調理した天ぷら試料t1〜t8,t14〜t16の評価試験結果をそれぞれ示した。
表42には自然解凍調理した天ぷら試料t1〜t8,t14〜t16の評価試験結果をそれぞれ示した。
表43にはパック包装ごと湯せん調理した天ぷら試料t1〜t8,t14〜t16の評価試験結果をそれぞれ示した。
これらの結果から、天ぷら試料では、いずれの加熱調理方法においても実施例サンプルt1,t2,t8のほうが比較例サンプルt4,t5,t14〜t16よりも中具の食感が良好であることが認められた。
Figure 0005450873
Figure 0005450873
Figure 0005450873
1…粘度計、2…容器、3…液体試料、4…内筒、5…外筒、6…回転駆動軸、
7…モータ、8…変速機、9…目盛板、10…スプリング、11…指針。

Claims (12)

  1. オーブン加熱調理されるか、又は自然解凍調理されるか、又はパックごと湯せん調理される施設調理用冷凍揚物の製造方法において、
    (a)中具として、pH8.0〜12.5の範囲に調整されたアルカリ水溶液に浸漬してアルカリ化処理された魚介類を準備し、
    (b)衣材原料の主要成分として、増粘多糖類、アルギン酸プロピレングリコールエステルおよびメチルセルロースからなる群より選択される2種以上の多糖類を含むバッター液を準備し、
    (c)前記中具の表面に前記衣材原料を付着させ、これにより下拵え品を作製し、
    (d)前記下拵え品を油ちょうし、これにより前記衣材原料を変成させ、脆性、光沢性、付着性、油切れ性、非糸曳き性および冷凍耐性を有する2種以上の多糖類及びそれらの分解物を含む衣材とし、該衣材により前記中具が覆われた揚物を作製し、
    (e)前記揚物を冷凍し、
    (f)前記冷凍した揚物を平均厚さ50〜100μmのフィルム包装材により包装する、
    ことを特徴とする施設調理用冷凍揚物の製造方法。
  2. 前記増粘多糖類としてサイリウムシードガムおよびタマリンドシードガムのうちの少なくとも一方が前記バッター液に含まれることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
  3. 前記バッター液が、質量%で、アルギン酸プロピレングリコールエステル;0.001〜0.500%、サイリウムシードガム;0.01〜2.00%、タマリンドシードガム;0.0001〜1.0000%、メチルセルロース;0.001〜0.500%を含むことを特徴とする請求項2記載の製造方法。
  4. 前記バッター液が、質量%で、アルギン酸プロピレングリコールエステル;0.03〜0.05%、サイリウムシードガム;0.20〜0.30%、タマリンドシードガム;0.02〜0.03%、メチルセルロース;0.07〜0.09%を含むことを特徴とする請求項3記載の製造方法。
  5. 前記サイリウムシードガム、メチルセルロース、アルギン酸プロピレングリコールエステル、及びタマリンドシードガムの4つの成分の合計を100%としたときに、前記サイリウムシードガムが63±2%、前記メチルセルロースが20±2%、前記アルギン酸プロピレングリコールエステルが11±2%、前記タマリンドシードガムが6±2%、の比率で前記バッター液中に配合されていることを特徴とする請求項3記載の製造方法。
  6. 前記衣材原料が加工でん粉を含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の製造方法。
  7. オーブン加熱調理されるか、又は自然解凍調理されるか、又はパックごと湯せん調理される施設調理用冷凍揚物であって、
    pH8.0〜12.5の範囲に調整されたアルカリ水溶液に浸漬してアルカリ化処理された魚介類からなる中具と、
    衣材原料の主要成分として、増粘多糖類、アルギン酸プロピレングリコールエステルおよびメチルセルロースからなる群より選択される2種以上の多糖類を含むバッター液を前記中具に付着させ、前記バッター液が付着した中具を油ちょうすることにより前記バッター液を変成させて成り、脆性、光沢性、付着性、油切れ性、非糸曳き性および冷凍耐性を有する2種以上の多糖類及びそれらの分解物を含む衣材と、
    前記衣材により前記中具が覆われた揚物を冷凍した状態で包装する平均厚さ50〜100μmのフィルム包装材と、
    を有することを特徴とする施設調理用冷凍揚物。
  8. 前記増粘多糖類としてサイリウムシードガムおよびタマリンドシードガムのうちの少なくとも一方が前記衣材に含まれることを特徴とする請求項7記載の冷凍揚物。
  9. 前記バッター液が、質量%で、アルギン酸プロピレングリコールエステル;0.001〜0.500%、サイリウムシードガム;0.01〜2.00%、タマリンドシードガム;0.0001〜1.0000%、メチルセルロース;0.001〜0.500%を含むことを特徴とする請求項8記載の冷凍揚物。
  10. 前記バッター液が、質量%で、アルギン酸プロピレングリコールエステル;0.03〜0.05%、サイリウムシードガム;0.20〜0.30%、タマリンドシードガム;0.02〜0.03%、メチルセルロース;0.07〜0.09%を含むことを特徴とする請求項9記載の冷凍揚物。
  11. 前記サイリウムシードガム、メチルセルロース、アルギン酸プロピレングリコールエステル、及びタマリンドシードガムの4つの成分の合計を100%としたときに、前記サイリウムシードガムが63±2%、前記メチルセルロースが20±2%、前記アルギン酸プロピレングリコールエステルが11±2%、前記タマリンドシードガムが6±2%、の比率で前記バッター液中に配合されていることを特徴とする請求項9記載の冷凍揚物。
  12. 前記衣材が加工でん粉を含むことを特徴とする請求項7乃至11のいずれか1項記載の冷凍揚物。
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