本発明に係る半素材冷凍魚の製造方法は、電子レンジ加熱または自然解凍することにより喫食可能または調理可能な状態となる惣菜用または業務用の半素材冷凍魚の製造方法において、
以下の工程(a)〜(d)を含むものである。
(a)原料魚体を準備する工程、
(b)前記原料魚体をpH8.0以上12.5以下に調整されたアルカリ水溶液中に大気圧室温下で30分間以上漬け込む工程、
(c)前記アルカリ処理された魚体をトンネル型の急速冷凍装置を用いて前記魚体の中心部の温度がマイナス18℃以下になるように一次凍結し、一次凍結した魚体を半解凍し、半解凍した魚体を切断加工し、切断加工した魚体を仕切板により周囲を取り囲まれた搬送ラインの一部を含む半開放スペースとしての加熱処理スペースに配置し、前記加熱処理スペースの雰囲気温度が90℃〜300℃の範囲に5〜60分間保持されるように、加熱装置の多数のノズル噴射口から前記加熱処理スペースに常圧過熱水蒸気または飽和水蒸気のいずれかを供給し、これにより前記切断加工した魚体を加熱殺菌する工程、
(d)前記加熱殺菌処理された魚体をトンネル型の急速冷凍装置を用いて前記魚体の中心部の温度がマイナス18℃以下になるように二次凍結し、二次凍結した魚体をフィルム包装袋のなかに袋詰めし、袋詰めした魚体をトンネル型の急速冷凍装置を用いて前記魚体の中心部の温度がマイナス18℃以下になるように三次凍結する工程。
以下に本発明方法の製造工程に沿って順次説明する。
[原料魚体]
本発明では原料魚体として冷凍魚または鮮魚を用いることができるが、一般的には冷凍魚を用いる。冷凍魚は、捕獲直後に活き締めされ、直ちに凍結され、冷凍庫に保管されたものであることが望ましく、凍結と解凍を何度も繰り返したものや冷凍保管温度が比較的高いものは望ましくない。鮮魚は、一般的ではないが、魚種によっては稀に原料魚体として用いることが可能である。
本発明が適用される魚種は、青魚系(さば、さわら、さんま、ぶり)、白身魚系(タラ、カレイ)、中間系(あじ、ひらす)、鮭鱒(秋さけ、トラウト)の区別なく広く種々の魚を対象とし、例えば、さば(ノルウェー産)、さば(日本産)、いわし、さんま、かつお、黄金がれい、からすガレイ、真だら、助宗だら、白糸だら、鮭鱒、さわら、赤魚、メバル、太刀魚、キャットフィッシュ、ナイルパーチ、イトヨリ、舌平目、ティラピアなど広範囲に及ぶ。また、本発明が適用される魚体の形態は、原料となる魚体を整形処理することによりラウンド、ドレス、フィーレ、切身など種々の形状やサイズにすることができるが、それらのどの形状・サイズに対しても本発明を適用することができる。
[アルカリ処理]
アルカリ処理は、本発明品の調理時間(下ごしらえ時間を含む)を短縮することを主な目的とし、併せて解凍時に露出するドリップ量の低減および魚肉の食感と風味を改善することを目的とするものであり、魚体の熱伝導性を向上させるとともに魚肉のぱさつき感と魚臭さを無くすための処理である。
本発明者らの研究によれば、アルカリ処理後において時間が経過するとともに、アルカリ水溶液のpH値よりも処理された魚体のpH値が低いことが認められている。例えばpH9.8のアルカリ水溶液中に秋鮭の切身を1時間浸漬した試料では、処理直後の試料のpH値は6.5〜7.5である。詳しくは、処理直後にpH6.5〜7.5になるが、最大pH8.0まで上昇する。この試料のpH値の低下現象は、細胞中に浸透したアルカリ成分と魚体の細胞中に含まれる水溶性タンパク質などの液体との間で中和反応が進行すること、及び/又は浸漬処理の直後においては魚体の表層部と芯部との間にpH値のばらつきがあること、及び/又は脂質やタンパク質の量あるいは水分の量に個体差があることなどに起因しているものと推測されている。
そこで、本発明方法のアルカリ処理工程(b)では、アルカリ処理後の魚体のpHが最終的に6.0〜8.0の範囲に落ち着くように、アルカリ水溶液のpHを8.0〜12.5の範囲に調整している。魚体をpH8.0未満の中性または酸性の液に浸漬すると、細胞の保水性が低下して水分とともに水溶性たんぱく質が細胞から滲み出し、身がパサつき、硬くなる。また、解凍時にも多くの水溶性たんぱく質が細胞から滲み出し、表面まで滲み出てきた液がドリップとして露出し流下して包装容器内に溜まる。さらに、表面に露出したドリップに含まれる水溶性たんぱく質は、加熱されると魚体表面で白濁したカードとなって外観を劣化させる。
一方、pH12.5を上回る強アルカリ性の液に浸漬すると、肉の味に苦味がでてくる。さらに、pH10.5あたりに調整したアルカリ水溶液に魚体を浸漬すると、ドリップの露出防止効果が良好になる。ドリップの露出防止効果が得られるアルカリ水溶液のpH値は、上述のpH8.0以上12.5以下の範囲であるが、より好ましくはpH8.5以上12.0以下の範囲であり、最も好ましくはpH9.0以上12.0以下の範囲である。pH10.5は細胞の保水性が最適になるところであり、筋線維と筋線維との相互間隙に水分が入り込み、肉質が柔らかくジューシーになるからである。
本発明では、アルカリ処理工程において魚体を大気圧室温下でアルカリ水溶液中に漬け込むようにしているが、室温下といっても気温の変化に応じて最低限の温度管理が必要である。例えば、魚体の中心部の温度(芯温)が好ましくはプラス1〜25℃、より好ましくはプラス3〜10℃、最も好ましくはプラス3〜5℃となるように温度管理する。したがって、アルカリ処理はエアコンディショナーにより温度調整された空調室内で行なう。また、アルカリ処理時の圧力は、1気圧のみに限定されるものではなく、気象の変化に応じて1気圧を少し下回る減圧下(0.08〜0.10MPa)であってもよいし、1気圧を少し上回る加圧下(0.10〜0.12MPa)であってもよい。
アルカリ水溶液中への魚体の漬込み時間は30分間以上48時間以下とすることができるが、さらに好ましくは1時間以上3時間以下とする。ほとんどの魚介類では3時間以下の漬け込みで十分な効果を得ることができるが、魚種や魚体の形態に応じて漬込み時間を3時間を超えて48時間まで延長することができる。しかし、48時間でアルカリ処理の効果が飽和してしまうため、最長の漬込み時間を48時間とする。
それを超える長時間の漬け込み処理は生産性の観点から許容できないことと品質管理上の観点から細胞が受けるダメージを最小限にすることから、最長の漬込み時間を48時間とする。一方、漬け込み時間が30分間未満になると、臭気がなくジューシーで軟らかい魚惣菜を提供するという本発明の効果が得られ難くなる。漬け込み時の温度や圧力を増大させ、さらに漬け込み時間を短縮化することも考えられるが、温度・圧力の増大化は細胞がダメージを受けて劣化するおそれがあるため採用することができない。本発明では、魚が本来備えている長所をできるだけ損なわないようにするために、原料魚体に対する処理は必要最小限のもののみとし、細胞にダメージを及ぼすような処理を可能な限り排除するようにしている。
[アルカリ水溶液の成分]
本発明方法の工程(b)に用いるアルカリ水溶液は、主要成分として炭酸塩、リン酸塩、水酸化塩およびアルカリ性の有機酸塩からなる群より選択される1種または2種以上を含む。炭酸塩として、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウムを用いることができる。また、リン酸塩として、ピロリン酸ナトリウム及びポリリン酸ナトリウムなどのような重合リン酸塩類、またはリン酸三ナトリウム及びリン酸水素二ナトリウムなどのような非重合リン酸塩類を用いることができる。また、水酸化塩として、水酸化カルシウムなどを用いることができる。また、アルカリ性の有機酸塩として、クエン酸塩類、乳酸塩類、及びリンゴ酸塩類などを用いることができる。これらのうちクエン酸塩類であるクエン酸三ナトリウム(Na3(C3H5O(COO)3))が最も好ましい。
さらに、アルカリ水溶液には、上述の成分の他に糖類、食塩、調味料、クロレラ抽出液(クロレラエキス)などを添加することができる。
糖類として、トレーハロース、還元水飴、マルトース、ラクトース、スクロース等をアルカリ水溶液中に添加することができる。
また、旨味成分として、グルタミン酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、アラニン、リボヌクレオチド二ナトリウム、グアニル、イノシン酸などをアルカリ水溶液中に添加することができる。
また、食塩をアルカリ水溶液中に0.1〜5.0質量%含有させることができる。食塩は保存作用と調味作用を有する。なお、クロレラエキスのなかにも若干量の食塩が含まれている。食塩濃度が0.1%を下回ると、所望の保存効果と調味効果が得られなくなる。一方、食塩濃度が5.0%を超えると、塩辛くなり魚の旨み味が損なわれる。なお、食塩濃度は1.0%程度とすることが保存効果と調味効果を得るとともに、さらにクロレラエキスとの整味効果を得るうえで最も好ましい。
クロレラ抽出液は、消臭作用と整味作用を兼ね備えた有効成分である。クロレラ抽出液含有水溶液中のクロレラ濃度が0.1質量%未満であると、所望の消臭効果および整味効果が得られなくなる。一方、液中のクロレラ濃度が20質量%を超えると、効果が飽和してしまう。ここで、消臭作用とは魚の臭みを消す性質をいう。整味作用とは魚介類の本来もっている旨みをさらに引き出す性質をいう。クロレラ抽出液の整味作用は、食塩などの調味料と組み合わせて複合添加した場合に魚介類の味を引き立たせる役割を有する。クロレラエキス水溶液中への漬け込み時間は、アルカリ処理の漬け込み時間と実質的に同じにすることができる。クロレラ抽出液をアルカリ水溶液中に添加混合して漬け込み処理することが可能だからである。もちろん、クロレラエキス水溶液をアルカリ水溶液とは別々にしてそれぞれ漬け込み処理することもできる。なお、クロレラエキス水溶液への漬け込みタイミングはアルカリ水溶液漬け込み処理の前後どちらでもよい。
[加熱処理]
加熱処理は、本発明品が食品の安全衛生に関する諸法規および規格を満たすことを目的とするものであり、魚体表面に付着した雑菌および魚体に内在する雑菌を死滅させるための殺菌処理である。
加熱装置として、ガス燃焼加熱方式、熱風加熱方式、熱水加熱方式、蒸気加熱方式、マイクロ波加熱方式(電子レンジ)、電磁誘導加熱方式(IHヒータ)、抵抗発熱方式(電気ヒータ)、およびこれらの2つ以上を組み合わせた組合せ加熱方式((蒸気+熱風)加熱方式、(蒸気+マイクロ波)加熱方式)などの種々の方式の加熱機器を用いることができる。
本発明では、接触加熱方式よりも非接触加熱方式のほうが好ましい。接触加熱方式の加熱機器では、接触部材により魚体の表面を傷つけてしまい外観を損なうおそれがあるばかりでなく、雑菌などの異物の付着による魚体汚染(コンタミネーション)の問題を生じるおそれがあるからである。例えば、抵抗発熱方式を採用する場合に、魚体に遠赤外線などの熱線を照射して加熱する電気ヒータのような加熱機器は本発明に適用することができるが、電極や抵抗発熱体を魚体に接触させて対象物そのものを発熱させる通電発熱方式やジュール熱方式の加熱機器は本発明に適していない。これに対して非接触加熱方式の加熱機器によれば、魚体の表面を損傷することなく、また魚体汚染のリスクがない状態で魚体を安全に加熱することができる。
本発明では、乾熱加熱方式よりも湿熱加熱方式のほうが好ましい。湿熱加熱方式は、殺菌効果が高く、かつ魚の細胞が受けるダメージを最小に抑えることができるからである。湿熱加熱方式のなかでもとくに蒸気加熱方式は、他の加熱殺菌法に比べて細胞を傷つけにくいという利点があり、魚の細胞が受ける熱損傷ダメージが非常に少なく、かつ殺菌効果が高いことから、本発明に最も適している。
加熱処理は、例えばスチームヒータのような加熱装置の水蒸気吹出口の近傍スペースを仕切板で周囲から仕切ることにより所望の加熱処理スペースを形成し、該加熱処理スペースに加熱媒体となる高温の水蒸気を供給し、高温水蒸気の雰囲気下において魚体全体に対して施されるものである。
蒸気加熱方式では、常圧過熱水蒸気または飽和水蒸気を用いることが好ましく、とくに常圧過熱水蒸気を用いることが本発明に最も適している。常圧過熱水蒸気は、熱が奪われたときに温度が飽和温度まで下がるまで凝縮・結露しないという性質があるからである。
本発明の加熱処理工程(c)では、常圧過熱水蒸気および飽和水蒸気のいずれか一方または両者の組合せを用いて魚体を直接加熱することができる。本発明では、高温の水蒸気としていずれの水蒸気を用いることもできるが、これらのうち大気圧と実質的に同じ圧力の常圧過熱水蒸気を用いることがとくに好ましい。しかし、本発明では、大気圧より少し高い圧力の飽和水蒸気を用いることも魚種によっては好ましい結果を得ることができる。大気圧より少し高い圧力(例えば0.11〜0.15MPa)の飽和水蒸気を用いると、レトルト殺菌と同等か又はそれに近い非常に高い殺菌効果を得ることができるからである。なお、本発明の加熱処理には、発電タービン等の動力用の一般過熱水蒸気は適していない。一般過熱水蒸気は、温度250〜600℃程度、圧力2〜15MPa程度の高温高圧の蒸気であるため、魚の細胞を傷つけ、魚体が受けるダメージが過大になるからである。
本発明では、湿熱加熱方式と乾熱加熱方式とを組み合わせた(蒸気+熱風)加熱方式を用いることが好ましい。とくに本発明では、蒸気加熱方式のうちでも多数のノズル噴射口から対象物に高温の水蒸気を吹き付ける蒸気スプレー方式を用いることが最も好ましい。蒸気スプレー方式の加熱機器は、狭い空間にも蒸気を十分に供給することが可能であり、魚体全体を均一加熱するのに適しているからである。
本発明では、加熱処理スペースの雰囲気温度を90〜300℃の範囲とするが、好ましくは100〜300℃、より好ましくは110〜300℃、より好ましくは100〜270℃、より好ましくは110〜270℃、より好ましくは100〜240℃、最も好ましくは110〜240℃の範囲とすることが可能である。加熱温度が300℃を超えるとタンパク質の熱凝固が過剰に進行して身質が硬くなり、半素材品と言えるものではなくなるため、加熱処理の雰囲気温度の上限値を300℃とする。一方、加熱温度が90℃を下回ると所望の殺菌効果が得られなくなるばかりでなく、アクが大量に発生するため、加熱処理の雰囲気温度の下限値を90℃とする。さらに加熱処理温度の下限値を110℃に引き上げると、比較的短時間の加熱によりボツリヌス菌のような耐熱菌が完全に死滅し、レトルト殺菌と同等か又はそれに近い殺菌効果が得られる。
上記の加熱処理工程(c)では、加熱装置から加熱処理スペースに高温の水蒸気を供給し、該水蒸気により加熱処理スペースの雰囲気温度が110〜300℃の範囲となるように5〜45分間保持することができる。本発明では、上記雰囲気温度の保持時間を5〜60分間としているが、好ましくは5〜45分間、より好ましくは5〜30分間、より好ましくは10〜60分間、より好ましくは10〜45分間、より好ましくは10〜30分間、より好ましくは15〜60分間、より好ましくは15〜45分間、最も好ましくは15〜30分間とすることができる。加熱保持時間が5分間未満になると、魚のタンパク質が熱凝固するには不十分になるため、加熱保持時間の下限値を5分間とする。一方、加熱保持時間が60分間を超えると、過剰加熱により魚肉の身質が硬くなるため、加熱保持時間の上限値を60分間とし、より好ましくは45分間とする。
本発明では、加熱処理工程の最初から最後まで中断することなく、加熱処理スペースに所望の熱エネルギーが供給され続けるように、加熱装置の動作をコントロールする。加熱処理スペースへの単位時間当たりの入熱量は、下記1)〜3)のパラメータ条件を制御することによりコントロールされる。
1)水蒸気の温度
2)単位時間当たりの水蒸気の供給量
3)加熱装置のノズル噴射口から魚体までの距離
これらのパラメータ1)〜3)を制御することにより、加熱処理スペース内に存在する魚体に入っていく熱エネルギー量(入熱量)を最適範囲にコントロールすることができ、魚体細胞が受ける熱損傷を最小に抑えるとともに殺菌効果を最大にすることが可能になる。
[冷凍処理]
冷凍処理は、本発明品が保管中に変敗するのを防止することを目的とするものであり、単に油脂類の酸化防止および雑菌の繁殖防止のみにとどまらず、保管中の魚体において雑菌の生存を許さないようにする処理である。
一次凍結の条件は、トンネル型の急速冷凍装置として例えばトンネルフリーザー(登録商標)により1℃/分以上の冷却速度で急速凍結し、最終的に魚体の中心部の温度(芯温)がマイナス18℃以下、好ましくはマイナス25℃以下、より好ましくはマイナス35℃以下となるようにコントロールされる。
二次凍結の条件は、例えばトンネルフリーザーにより1℃/分以上の冷却速度で急速凍結し、最終的に魚体の中心部の温度(芯温)がマイナス18℃以下、好ましくはマイナス25℃以下、より好ましくはマイナス35℃以下となるようにコントロールされる。
二次凍結後の保管温度は、魚種により異なるが、一般的にはマイナス20〜30℃の範囲とし、より好ましくはマイナス30〜35℃の範囲とし、最も好ましくはマイナス35〜40℃の範囲とする。
三次凍結の条件は、魚種により異なるが、例えばトンネルフリーザーにより1℃/分以上の冷却速度で急速凍結し、最終的に魚体の中心部の温度(芯温)がマイナス18℃以下、好ましくはマイナス25℃以下、より好ましくはマイナス35℃以下となるようにコントロールされる。
三次凍結後の保管温度は、魚種により異なるが、一般的にはマイナス20〜30℃の範囲とし、より好ましくはマイナス30〜35℃の範囲とし、最も好ましくはマイナス35〜40℃の範囲とする。
[フィルム包装]
本発明の半素材冷凍魚は、多くの場合はフィルム包装材により完全封止包装した形態で箱詰めされ、市場に流通されるものである。しかし、切身やフィーレなどの比較的小さなものではフィルム包装することなく簡易な箱詰めだけで出荷する場合がある。例えば100切れの魚切身をビニールシートを敷いただけの平底の段ボール箱に敷き詰め、それにフタを被せるケースがある。そのため、本発明ではフィルム包装は任意になされるものである。
フィルム包装材には、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニリデン共重合体(PVDC)、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS)などの樹脂材料を用いることができる。本発明に適したフィルム包装材の厚みは、平均厚みで50〜100μmの範囲にあることが望ましい。フィルム包装材の厚みが50μm未満では、その包装物を取り扱う際に最低限要求される必要な強度が不足して裂けたり破れたりするおそれがある。一方、フィルム包装材の厚みが100μmを超えると、真空包装時のヒートシール部に不良(波うち状の熱変形部にてシール不良)を生じやすくなり、また包装を開封しにくくなり、また内容物への熱伝導性が低下し、さらにコスト高になる。
[冷凍惣菜用食材]
本発明の半素材冷凍魚は、ベンダーまたは惣菜専門店において冷凍惣菜品の製造に利用される食材として好適なものである。冷凍惣菜は、肉、魚、野菜、パスタ、フルーツなどの食材を単品でまたはこれらを組合せて製造することができる。
魚を主体とする冷凍惣菜品として、例えば、さばの味噌煮、さばの照り煮、さばの照り焼き、鮭の塩焼き、鮭と彩り野菜のトマトチーズ、鮭のちゃんちゃん焼き、鮭のマヨネーズ焼き、さんまの塩焼き、白身魚のアクアパッツァ、白身魚と魚介のブイヤーベースなどを挙げることができる。これらの冷凍惣菜品において本発明の半素材冷凍魚を好適に用いることができる。
[ランチメニュー用食材]
本発明の半素材冷凍魚は、ファミリーレストランやファーストフード店のような外食チェーン店において魚を主体とするランチメニュー等の食材として好適なものである。外食チェーン店では、ランチタイムの混雑時において人手不足の問題があり、少人数のスタッフであっても手間と時間をかけずに来店したお客様に迅速に食事を提供できる新規のメニュー開発の要望が高い。本発明の半素材冷凍魚は、そのような外食チェーン店の要望に応えることができる新規かつ有用な食材である。
魚を主体とするランチメニューとして、さばの照り焼き、さばの味噌煮、さばの照り煮、鮭の塩焼き、鮭と彩り野菜のトマトチーズ、鮭のちゃんちゃん焼き、鮭のマヨネーズ焼き、さんまの塩焼き、白身魚のアクアパッツァ、白身魚と魚介のブイヤーベースなどを挙げることができる。
以下、添付の図面を参照して本発明を実施するための最良の形態を説明する。
(第1の実施形態)
図1を参照して第1の実施形態として骨なし半素材冷凍魚を製造する場合について説明する。
原料として冷凍さばを受け入れ(工程S1)、受け入れた冷凍さばを直ちに解凍するか、あるいは所定の期間だけ冷凍庫に保管した後に解凍する。解凍した魚体から頭、鰓、鰭、内臓、鱗などを除去する整形処理を行う(工程S2)。
整形処理した魚体を必要に応じて三枚におろし(工程S3)、骨を除去する(工程S4)。骨の除去は、全自動機械または半自動機械、及び/又は人間の手作業により行う。任意に、骨除去した魚体をX線検出機に通して魚体内に残留する小骨の有無を検査する残骨検査を行う。残骨検査で発見された小骨をさらに人間の手作業で抜き取る。さらに、寄生虫などの異物を除去するために魚体をキャンドリング検査する。
魚体を水洗した後に、pH8.0以上12.5以下の範囲の所望のpH値に調整されたアルカリ水溶液中に所定時間だけ全没状態に浸漬するアルカリ処理を行う(工程S5)。このアルカリ処理時において表皮は付けたままとしてもよいし、魚体本体から剥ぎ取るようにしてもよい。例えば、さばを処理する場合には、漬け込み前に魚体本体から薄皮を剥ぎ取ると、魚体本体へのアルカリ水溶液の浸透を速めることができる。さばの薄皮は表皮の最外面にあり、これを取り除いてもさば特有の縞模様は残るため、さば本来の外観をそのまま維持することができる。
アルカリ処理後、魚体を冷凍庫に入れて一次凍結する(工程S6)。一次凍結条件は、例えばトンネルフリーザーにより1.0℃/分以上の冷却速度で急速凍結し、最終的に魚体の中心部の温度(芯温)が例えばマイナス18℃以下、好ましくはマイナス25℃以下になるようにコントロールされる。
次いで、一次凍結した魚体を所定条件下で半解凍し(工程S7)、半解凍状態の魚体を所望のサイズに切身加工する(工程S8)。切身加工した魚肉切身をトレーの上に適当な間隔をおいて敷き並べ、そのトレーごとベルトコンベアに載せて加熱装置直下の加熱処理スペースに搬送する。
加熱装置は、ベルトコンベア搬送ラインの直上に配置され、開閉弁を介して熱スチーム供給ラインに連通する多数のノズル噴射口および他の開閉弁を介して熱エア供給ラインに連通する多数のノズル噴射口を有している。熱スチーム供給ラインは、過熱水蒸気を生成して供給する蒸気供給源に接続されている。熱エア供給ラインは、高温エアを生成して供給する熱風供給源に接続されている。多数のノズル噴射口は、全部が直下の加熱処理スペースのほうを向いている。加熱装置は、ノズル噴射口からコンベア搬送ライン上のトレーまでの平均距離が10〜150mmの範囲となるように、コンベア搬送ラインに対して位置合わせされている。なお、ノズル噴射口−搬送ライン間の平均距離を20〜100mmの範囲とするのがより好ましく、20〜50mmの範囲とするのがさらにより好ましい。
加熱処理スペースは、複数の仕切板により周囲を取り囲まれた搬送ラインの一部を含む半開放スペースである。トレーが加熱処理スペースに到着してコンベアが自動停止すると、加熱装置のリミットスイッチがONになり、熱スチーム供給ラインの開閉弁が開き、多数のノズル噴射口からトレーに向けて高温の過熱水蒸気が噴射される。このとき同時に、熱エア供給ラインの開閉弁が開き、多数のノズル噴射口からトレーに向けて高温のエアが噴射される。これにより、加熱処理スペースに置かれたトレー上の魚肉切身が大気圧下で加熱される(工程S9)。加熱処理条件は、コンベア上の魚肉切身を取り囲む加熱処理スペースの雰囲気温度が90〜300℃の範囲に保持されるように、加熱装置側の制御パラメータとして1)水蒸気の温度、2)単位時間当たりの水蒸気の供給量、3)ノズル噴射口からコンベア搬送ライン上のトレーまでの距離(以下、ノズル噴射口−搬送ライン間距離という)をそれぞれ制御する。加熱処理スペースの雰囲気温度は、搬送ラインの長手軸に沿って等間隔に配置された複数個の温度センサによって検出される温度測定値を単純加算平均した平均値で与えられる。加熱処理スペースの雰囲気温度が所定の設定温度範囲から外れていると、雰囲気温度が設定温度範囲に入るように上記の制御パラメータ1)〜3)がフィードバック制御される。このようにして加熱処理スペースの雰囲気温度を90〜300℃範囲の所定の設定温度範囲に維持した状態で、5〜60分間加熱保持する。
加熱処理が完了すると、ベルトコンベアを再起動し、魚肉切身を加熱処理スペースから退出させ、大気中にそのまま放置するか又は扇風機等により冷風を吹き付け、魚肉切身を室温または室温近傍の温度になるまで放冷する(工程S10)。
放冷後、魚体(魚肉切身)を計量し(工程S11)、計量結果を記録した後に、冷凍庫に入れて二次凍結する(工程S12)。二次凍結条件は、例えばトンネルフリーザーにより1℃/分以上の冷却速度で急速凍結し、最終的に魚体の中心部の温度(芯温)がマイナス18℃以下、好ましくはマイナス25℃以下、より好ましくはマイナス30℃以下、最も好ましくはマイナス35℃以下となるようにコントロールされる。
二次凍結した切身を冷凍庫から取り出し、計量結果を参照しながら切身の合計重量が所定の目標重量になるようにフィルム包装袋のなかに袋詰めする(工程S13)。袋のなかを真空引きし、開口部を封止して密封状態とする。なお、任意に窒素ガスや二酸化炭素ガスのような不活性ガスを真空袋のなかに注入することができる。さらに任意に、真空包装した冷凍魚を金属検出機に通し、魚体に金属小片などの異物が残留していないことを最終検査で確認することができる。
次いで、袋詰めした切身を冷凍庫に入れて三次凍結する(工程S14)。三次凍結条件は、例えばトンネルフリーザーにより1℃/分以上の冷却速度で急速凍結し、最終的に魚体の中心部の温度(芯温)がマイナス18℃以下、好ましくはマイナス25℃以下、より好ましくはマイナス30℃以下、最も好ましくはマイナス35℃以下となるようにコントロールされる。なお、三次凍結後の保管温度は、魚種により異なるが、一般的にはマイナス18〜30℃の範囲とし、より好ましくはマイナス30〜35℃の範囲とし、最も好ましくはマイナス35〜40℃の範囲とする。
保管中の袋詰め冷凍切身製品は注文に応じて冷凍庫から取り出され、出荷用の箱に箱詰めされ、配送用ラインにのせて出荷される(工程S15)。
[ランチメニュー用食材としての利用形態]
上記のようにして製造した半素材冷凍さばの切身(骨なし)を、ファミリーレストランやファーストフード店のような外食チェーン店においてランチメニューの食材として利用する形態について説明する。ここでは、魚を主体とするランチメニューとして、さばの照り焼きを調理する場合の作業手順の概要を以下に説明する。
冷凍庫から取り出した半素材冷凍さばの切身に適量の塩をふりかけ、しばらくの間放置しておく。その間に、砂糖、みりん、酒、醤油などを適量ずつ混ぜ合わせて調味料をつくっておく。冷凍さばの切身を熱めのお湯で洗い、塩を洗い落とす。水切り後、さばの切身を片栗粉のなかに入れてまぶし、さばの切身に片栗粉を付ける。フライパンに油を多めに敷き、中火でさばを少し焦げ目が付くくらいに両面とも焼く。火が通ったら弱火にし、準備しておいた調味料をフライパンのなかに入れる。調味料をさばと絡めながら照りが出るまで温める。器に盛り付け、白ゴマをふりかけると完成する。
本発明によれば、ぱさつきがないジューシーな食感で、魚臭さがなく、軟らかい魚惣菜を従来の方法と比べてより少ない手間と時間で提供することができる。すなわち、従来品では魚の下ごしらえに少なくとも7〜8分間を要していたため、下ごしらえと調理時間を合わせると合計14〜15分間も掛かっていたが、本発明品では開始から5分以内に調理を終えることができた。なお、下ごしらえ時間には解凍時間も含まれるが、本発明品は熱伝導性が良好であるため従来品に比べて解凍時間が短く、下ごしらえ時間を大幅に短縮することができた。とくに電子レンジ等を用いて加熱解凍する場合において、本発明品は従来品に比べて非常に短い時間で解凍することができた。
このように魚を主体とするランチメニューを短時間で準備できるのは、下ごしらえが不要になるばかりでなく、本発明品では魚体の熱伝導性が良好であるため、解凍および調理ともに短時間で済むからである。これにより、少人数のスタッフであってもランチタイムの混雑時において手間と時間をかけずに来店したお客様に魚ランチメニューを迅速に提供することができる。
また、本発明によれば、魚体の熱伝導性が非常に良いので全体を均一に加熱することができ、加熱ムラがなくなり、表面だけが熱く芯部が冷たいままということがない。さらに、加熱による魚体の縮み量が少なく、加熱前後の魚体サイズがほとんど変わらないため、調理品の見栄えが良い。
(第2の実施形態)
次に、図2を参照して第2の実施形態として骨付きの半素材冷凍魚を製造する場合について説明する。
原料として冷凍鮭を受け入れ(工程K1)、受け入れた冷凍鮭を直ちに解凍するか、あるいは所定の期間だけ冷凍庫に保管した後に解凍する。解凍した魚体から頭、鰓、鰭、内臓、鱗などを除去する整形処理を行う(工程K2)。
整形処理した魚体を必要に応じて二枚におろし(工程K3)、水洗した後に、pH8.0以上12.5以下の範囲の所望のpH値に調整されたアルカリ水溶液中に60分間だけ全没状態に浸漬するアルカリ処理を行う(工程K4)。
アルカリ処理後、魚体を冷凍庫に入れて一次凍結する(工程K5)。一次凍結条件は、例えばトンネルフリーザーにより1.0℃/分以上の冷却速度で急速凍結し、最終的に魚体の中心部の温度(芯温)が例えばマイナス18℃以下、好ましくはマイナス20℃以下になるようにコントロールされる。
次いで、一次凍結した魚体を所定条件下で半解凍し(工程K6)、半解凍状態の魚体を必要に応じてハンドリングしやすい大きさにカッティングする(工程K7)。カッティングした魚体をベルトコンベア上に載せ、加熱装置直下のスペースに搬送し、加熱装置からコンベア上の魚体に向けて過熱水蒸気を含む熱風を供給し、加熱処理スペースの魚体を大気圧下で加熱する(工程K8)。加熱処理条件は、コンベア上の魚体を取り囲むスペースの雰囲気温度が90〜300℃の範囲となるように加熱装置側のパラメータを制御し、この温度範囲に5〜60分間保持する。加熱処理が完了すると、ベルトコンベアを駆動させ、魚体を加熱処理スペースから退出させ、大気中にそのまま放置するか又は扇風機により冷風を吹き付け、魚体を室温または室温近傍の温度になるまで放冷する(工程K9)。
放冷後、魚体を計量し(工程K10)、計量結果を記録した後に、冷凍庫に入れて二次凍結する(工程K11)。二次凍結条件は、例えばトンネルフリーザーにより1℃/分以上の冷却速度で急速凍結し、最終的に魚体の中心部の温度(芯温)がマイナス18℃以下、好ましくはマイナス25℃以下、より好ましくはマイナス30℃以下、最も好ましくはマイナス35℃以下となるようにコントロールされる。
二次凍結した魚体を冷凍庫から取り出し、計量結果を参照しながら魚体の合計重量が所定の目標重量になるようにフィルム包装袋のなかに袋詰めする(工程K12)。袋のなかを真空引きし、開口部を封止して密封状態とする。
次いで、袋詰めした魚体を冷凍庫に入れて三次凍結し、出荷までの期間冷凍保管する(工程K13)。三次凍結条件は、例えばトンネルフリーザーにより1℃/分以上の冷却速度で急速凍結し、最終的に魚体の中心部の温度(芯温)がマイナス18℃以下、好ましくはマイナス25℃以下、より好ましくはマイナス30℃以下、最も好ましくはマイナス35℃以下となるようにコントロールされる。なお、三次凍結後の保管温度は、魚種により異なるが、一般的にはマイナス18〜30℃の範囲とし、より好ましくはマイナス30〜35℃の範囲とし、最も好ましくはマイナス35〜40℃の範囲とする。
保管中の袋詰め冷凍魚製品は、注文に応じて冷凍庫から取り出され、出荷用の箱に箱詰めされ、配送用ラインにのせて出荷される(工程K14)。
[冷凍惣菜用食材としての利用形態]
惣菜工場(ベンダー)では、コンビニエンスストア、量販店、惣菜専門店向けにプラスチック製のフードパックに包装された弁当やおかず(主菜、副菜、副々菜)を毎日のように製造している。スーパーの惣菜やコンビニの惣菜あるいは惣菜専門店の惣菜は、競争が激化してきていることを背景として、それぞれメニューのバリエーションが豊富になってきている。
その一方で、惣菜工場では、多種多様な品揃えメニューのバリエーションに対応しうる工程ラインの確立、製造工程の確立、原料の調達など多くの課題を抱えている。それらの課題のなかでも特に下ごしらえが必要な魚については、工場において如何にして工程を簡略化して美味しい惣菜を製造するかが最も重要な課題となっている。とくに魚を主体とする惣菜をつくる場合において、魚臭さを消すために臭い消しをしたり、骨をすべて取り除いたりするなどのために、魚を下ごしらえするのに非常に時間が掛かる。さらに、魚の身質は肉に比べて一般的に軟らかいので、作業時の取り扱いにもかなり熟練した技術が必要になる。
そこで、すでに下ごしらえ済みであり、プレヒートもしてある本発明品を惣菜工場に導入することにより、下記1)〜5)に示すオペレーションで簡単かつ容易に惣菜工場から各店舗へ、各店舗からユーザーへと惣菜を供給することができる。
1)凍ったままの状態の本発明品または芯部温度を0℃に解凍した本発明品を惣菜用フードパック本体のなかに入れる。
2)オリジナルのタレ、ソース、さらにはメニューに応じて野菜などをトッピングする。
3) フードパック本体に蓋を被せて惣菜製品とし、完成した惣菜製品を冷蔵車に積み込み、コンビニエンスストアや量販店の各店舗まで輸送する。
4)各店舗に到着すると、惣菜製品を積み下ろし、各店舗の棚に陳列する。
5)購入したユーザーが自宅等において電子レンジで加熱調理する。
従来の方法では魚を主体とする惣菜品の製造に2〜3時間も掛かっていたものが、本発明を利用するオペレーションであれば僅か20〜30分間で製造することができるようになる。その上、本発明方法によれば製造ラインがほとんど汚れなくなるため、製造ラインの清掃が短時間で容易にできるようになる。また、ソースやタレまたはトッピングの野菜を替えることでメニューのバリエーションも豊富に対応できる。
また、惣菜工場において加熱工程がなく、製造時間が短くなるため、雑菌の付着や繁殖のリスクが減少して、従来よりも衛生管理が容易になるというメリットがある。また、オペレーションが簡単になるばかりでなく、衛生管理も容易になり、常に安定した品質の美味しい魚惣菜を提供することができる。
本実施形態では、魚を主体とする冷凍惣菜品として、例えば、鮭と彩り野菜のトマトチーズを作製する場合の作業手順の概要を以下に説明する。
フードパック本体に千切りキャベツやレタスなどの野菜を敷き、その上に冷蔵庫から取り出した半素材冷凍鮭を載せ、冷凍魚体の周囲に適当なサイズにカッティングされたキャベツ、ブロッコリー、赤パプリカ、黄パプリカなどの野菜類を配置する。次いで、その上に適量のピザ用チーズを載せる。最後に、トマトソース&バジルソース入りのビニール小袋を容器内に入れて蓋を被せれば出来上がりである。
このようにして製造された冷凍惣菜は、上記3)〜5)のオペレーションを経て消費者に提供され、消費者の自宅等において自然解凍または加熱解凍され、家庭用電子レンジにより500Wで2分30秒〜3分間の短時間加熱するだけで喫食することが可能な状態になる。これにより、従来品よりも加熱調理時間が2〜3分間短縮される。
また、本発明によれば、魚体の熱伝導性が非常に良いので全体を均一に加熱することができ、加熱ムラがなくなり、表面だけが熱く芯部が冷たいままということがない。さらに、加熱による魚体の縮み量が少なく、加熱前後の魚体サイズがほとんど変わらないため、調理品の見栄えが良い。
以下、添付の図面と表を参照して種々の実施例を比較例等と対比して説明する。
原料魚体として冷凍さばと冷凍鮭を用いて各種のサンプル試料を作製した。具体的には以下のようにして、冷凍さばの実施例として試料1-1,2-1および冷凍鮭の実施例として試料3-1,4-1をそれぞれ作製した。また、冷凍さばの比較例として試料1-2,2-2,3-2,4-2,5-2および冷凍鮭の比較例として試料6-2,7-2,8-2,9-2,10-2をそれぞれ作製した。
(実施例1)
実施例1として、冷凍さばを解凍し、三枚に卸し、アルカリ処理し、加熱処理し、骨除去処理し、冷凍処理することにより、骨なし冷凍さば試料1-1を作製した。アルカリ処理条件は、下記のアルカリ水溶液中に室温下で30分間浸漬した。
[アルカリ水溶液の成分]
アルカリ水溶液は、pHが8.0〜12.5の範囲に調整されている。
以下にアルカリ水溶液の成分(質量%)の一例を示す。
・リン酸三ナトリウム;1.0%
・炭酸水素ナトリウム;0.4%
・炭酸ナトリウム;0.4%
・クエン酸三ナトリウム;0.1%、
・その他の添加剤;2.0%
その他の添加剤には、糖類、食塩、調味料などが含まれる。
試料のpH測定には、pH測定器(製造会社の名称;HANNA、製品名称又は型番;CODE HI99163)を用いた。このpH測定器は、所定の電極を被検体に接触させ、そのときの電極電位を検出し、検出した電極電位に基づいてpH値を算出する電極電位測定方式のものである。pH9.0のアルカリ水溶液中に30分間浸漬するアルカリ処理後の試料1-1のpHを測定したところpH8.0であった。
加熱処理条件は、スプレー方式の(蒸気+熱風)加熱装置を用いて所定の加熱処理スペースに過熱水蒸気を供給し、同スペースの雰囲気温度を95±5℃の範囲にコントロールし、この温度領域でさば試料を5分間加熱保持した。
冷凍処理条件は、加熱処理後の試料を芯部がマイナス18℃になるまで急速凍結した。
(実施例2)
実施例2として、冷凍さばを解凍し、アルカリ処理し、加熱処理し、冷凍処理することにより、骨付き冷凍さば試料2-1を作製した。アルカリ処理条件および加熱処理条件は、上記実施例1と実質的に同じである。
(実施例3)
実施例3として、冷凍鮭を解凍し、三枚に卸し、アルカリ処理し、加熱処理し、骨除去処理し、冷凍処理することにより、骨なし冷凍鮭試料3-1を作製した。アルカリ処理条件および加熱処理条件は、上記実施例1と実質的に同じである。
(実施例4)
実施例4として、冷凍鮭を解凍し、アルカリ処理し、加熱処理し、冷凍処理することにより、骨付き冷凍鮭試料4-2を作製した。アルカリ処理条件および加熱処理条件は、上記実施例1と実質的に同じである。
(比較例1)
比較例1として、骨除去処理はするが、アルカリ処理と加熱処理は共にしない未処理の骨なし生さば試料1-2を作製した。
(比較例2)
比較例2として、アルカリ処理と加熱処理をしない未処理の骨付き生さば試料2-2を準備した。
(比較例3)
比較例3として、アルカリ処理はしないが、加熱処理および骨除去処理した加熱処理済みの骨なしさば試料3-2を作製した。加熱処理条件は、上記実施例1と同じである。
(比較例4)
比較例4として、アルカリ処理および骨除去処理はしないが、加熱処理した加熱処理済みの骨付きさば試料4-2を作製した。加熱処理条件は、上記実施例1と同じである。
(比較例5)
比較例5として、冷凍さばを解凍し、アルカリ処理し、加熱処理し、骨除去処理し、冷凍処理した骨なしさば試料5-2を作製した。アルカリ処理条件は、上記実施例1と同じである。加熱処理条件は、スプレー方式の(蒸気+熱風)加熱装置を用いて所定の加熱処理スペースに過熱水蒸気を供給し、同スペースの雰囲気温度を350±5℃の範囲にコントロールし、この温度域でさば試料を5分間加熱保持した。
(比較例6)
比較例6として、骨除去処理はするが、アルカリ処理と加熱処理は共にしない未処理の骨なし生鮭試料6-2を作製した。
(比較例7)
比較例7として、アルカリ処理と加熱処理をしない未処理の骨付き生鮭試料7-2を準備した。
(比較例8)
比較例8として、アルカリ処理はしないが、加熱処理および骨除去処理した加熱処理済みの骨なし鮭試料8-2を作製した。加熱処理条件は、上記実施例1と同じである。
(比較例9)
比較例9として、アルカリ処理および骨除去処理はしないが、加熱処理した加熱処理済みの骨付き鮭試料9-2を作製した。加熱処理条件は、上記実施例1と同じである。
(比較例10)
比較例10として、冷凍さばを解凍し、アルカリ処理し、加熱処理し、骨除去処理し、冷凍処理した骨なし鮭試料10-2を作製した。アルカリ処理条件は、上記実施例1と同じである。加熱処理条件は、上記比較例5と同じである。
これらのサンプル試料について以下の評価試験を行ない、それぞれ評価した。
[ドリップの評価]
各種試料を自然解凍するときに表面に露出するドリップの量をドリップ定量試験により測定し、それらの測定結果を用いて評価した。
マイナス18℃に冷凍保存した実施例および比較例の冷凍さば試料1-1,2-1,1-2,2-2,3-2,4-2,5-2をそれぞれ室温下で自然解凍し、各試料から滲み出したドリップ露出量を測定した。それらの測定結果を表1に示す。ドリップ露出量の定量試験結果から明らかなように、実施例1,2では比較例1〜4よりもドリップ露出量が大幅に減少することが認められた。
[臭みの評価]
魚の臭みを、魚の臭気の主成分の1つであるエチルアミン(EA)を定量測定する臭気試験によりそれぞれ評価した。エチルアミン(EA)は魚介類が腐敗したときに生成される腐敗性アミン類の一種である。ここでは腐敗性アミン類を代表して各種試料から出てくるエチルアミン(EA)を測定し、それらの測定結果を用いて各試料の魚の臭みを評価した。
実施例試料1-1、比較例試料1-2、比較例試料3-2の3種の骨なし冷凍さば試料をそれぞれ芯部が0℃になるまで解凍し、解凍した各試料を電子レンジで1個(80g)当たり600Wで約1分間加熱し、加熱時に試料から発生する魚の臭気をそれぞれ測定した。
以下に臭気試験方法を詳しく説明する。
骨なし冷凍鮭試料3-1,6-2,8-2をそれぞれ解凍した後に、フィルム包装パックを開けて魚体をすべて取り出し、その内質をホモジナイズ処理して均質化した。次いで、魚肉と蒸留水とを1:1の割合で希釈し(2倍希釈)、希釈混合したサンプルをバイアルに5ml採取した。バイアルにセプタム付きアルミニウム銀クリンプキャップを取り付け、40℃で加熱撹拌した。
サンプルから放出されるガスの捕集は、ガスクロマトグラフ/水素炎イオン化検出器(GC-FID)を用いるヘッドスペース法により行った。すなわち、ヘッドスペース法により試料から揮発するガスをシリンジで捕集(吸着)した。スプリットレース法を用いてガスを注入した。
ガスクロマトグラフ/水素炎イオン化検出器(GC-FID)のカラムに試料ガスを通過させ、試料ガス中に含まれるエチルアミン(EA)を測定した。GC-FIDにはバリアン社製のCP-Volamineを用いた。
比較例試料6-2から放出されるガスのGC-FIDスペクトル線図を図3に示した。比較例試料8-2から放出されるガスのGC-FIDスペクトル線図を図4に示した。実施例試料3-1から放出されるガスのGC-FIDスペクトル線図を図5に示した。これらの図から明らかなように、実施例試料3-1の放出ガス中のEA濃度は比較例試料6-2,8-2のそれらに比べて低くなる。
上記検出結果をそれぞれ定量化するために、エチルアミン純品を希釈して0ppm、50ppm、100ppm、300ppm、600ppmの各種濃度の検量線を作成し、これらの検量線から数式を求め、求めた数式に基づいて図3、図4、図5の検出スペクトル線図ごとにエチルアミン濃度をそれぞれ算出した。その結果を表2に示した。
表2の結果から明らかなように、実施例試料3-1は比較例試料6-2,8-2に比べてエチルアミン濃度が低くなった。このことから実施例試料3-1では魚の臭みが実質的にないことが実証された。
[軟らかさの評価]
高齢化社会の到来を背景として、咀嚼力が衰えた要介護者であっても食べやすい食品としてユニバーサルデザインフードが市場に普及してきている。食材の軟らかさ(咀嚼しやすさ)は、ユニバーサルデザインフードに要求される特性の1つとして重要である。
実施例試料1-1、比較例試料1-2、比較例試料3-2、比較例試料5-2の4種の骨なし冷凍さば試料について、プランジャー押込み法により各試料の破断強度を測定し、試料魚体の軟らかさをそれぞれ評価した。
プランジャー押込み法は、プランジャーを被検体に押し込んだときの荷重と歪率の経時変化を荷重が所定の設定値に到達するところまで連続的に測定する試験方法である。プランジャー押込み法の1つとして、図6に示すくさび型のプランジャーP1を用いる破断試験法がある。破断試験法は、魚肉を前歯で噛み切るときを想定して、くさび型プランジャーP1の尖った先端を魚肉に食い込ませたときにかかる力とそのとき生じる歪みを測定する試験である。くさび型のプランジャーP1の(最大)接触面積は30mm2である。
測定機器にはクリープメーター(株式会社山電、破断測定機;型番RE-3305B)を用いた。プランジャーの押し込み速度を10mm/秒に設定し、プランジャーの食い込み深さを試料の厚さの95%になるまで荷重を掛けて測定した。
各試料を芯部が0℃になるまで解凍し、解凍した試料を2cm×2cm片の切身にカットして破断試験用の試料をそれぞれ作製した。作製した試料を電子レンジで1個当たり600Wで約1分間加熱し、加熱後5〜10分間以内に試験を実施した。
プランジャー押込み法による破断試験結果として、各サンプル試料の応力−歪線を図7、図8、図9、図10にそれぞれ示した。
図7は比較例試料1-2の応力−歪線図である。図8は比較例試料3-2の応力−歪線図である。図9は実施例試料1-1の応力−歪線図である。図10は比較例試料5-2の応力−歪線図である。
これらの図7〜図10には試料ごとに10回ずつ繰り返して試験した結果を示した。歪率が60%に達した時点での荷重を破断応力として、各試料の破断試験測定結果をとりまとめた。破断応力Pfは、下式(1)のように、破断点における荷重wfに重力加速度gを乗じて力に換算し、試料の初期断面積A0で除して求められる。
Pf=wf・g/A0 …(1)
図7から明らかなように、比較例試料1-2は、破断応力が低く、物性が軟らかいものであることが分かった。しかし、応力−歪線の波形に大きなピークや乱れが見られることから、歪率が増大するのに比例しないで荷重がぶれて大きく振幅することが判明した。結論として、比較例試料1-2は、物性が均質でなく、食感が部位によりばらついて安定せず、口中で滑らかにほぐすことが難しいと言える。
図8から明らかなように、比較例試料3-2は、破断応力が高く、物性が他の試料と比べて硬いことが分かった。応力−歪線の波形にはピークや乱れが見られ、必ずしも歪率の増加に伴い荷重が増加していない。結論として、比較例試料3-2は、単に硬いだけでなく、物性が不均質であり、食感が部位ごとに異なり、口中で滑らかにほぐすことが難しいと言える。
図9から明らかなように、実施例試料1-1は、破断応力が全体的に低く、物性が軟らかいことが分かった。応力−歪線では歪率に比例して荷重が増加している。結論として、実施例試料1-1は、物性が均質であり、どの部位も食感に偏りがなく、口中で滑らかにほぐすことが容易にできると言える。
図10から明らかなように、比較例試料5-2は、アルカリ処理しているにもかかわらず破断応力が高く、物性が硬いことが分かった。応力−歪線の波形にはピークがあり、表面が硬くなっている。結論として、比較例試料5-2は、300℃を超える高温の過剰加熱により表面が乾燥しはじめており、身質を破断することが困難になっていると言える。
以上の試験結果から、実施例試料1-1がいずれの比較例試料1-2,3-2,5-2よりも軟らかく咀嚼しやすいものであることが実証された。
[加熱処理による殺菌効果の評価]
冷凍さばを上記アルカリ水溶液に約30分間浸漬してアルカリ処理し、240℃×5分間の加熱処理し、さらに骨除去処理し、これにより骨なしさば試料1-1(80g)を2ロット作製した。また、これとは別に、冷凍鮭を同じ条件でアルカリ処理し、加熱処理し、骨除去処理することで、骨なし鮭試料3-1(80g)を1ロット作製した。
これら3つのサンプル試料を標準寒天培地を入れたシャーレで固め、35℃×48時間培養した後に、雑菌の繁殖状態を顕微鏡視野下で観察した。その結果、いずれの試料も、一般生菌数(Aerobic plate count)は10以下であった。また、いずれの試料も、大腸菌群(Coliforms)および大腸菌(E.Coll)ともに陰性であった。
[熱伝導性の評価]
実施例試料3-1、比較例試料6-2、比較例試料8-2の3種の骨なし冷凍鮭試料について熱伝導率をそれぞれ測定し、それらの測定結果により各試料の熱伝導性を評価した。
以下の条件で各試料の熱伝導性を評価した。
各試料を芯部が0℃になるまで解凍し、解凍した試料を電子レンジで1個(80g)当たり600Wで加熱し、加熱開始から10秒ごとに試料の温度を測定した。熱伝導率の測定には、顕微鏡機能付き赤外線サーモグラフィ(日本電気株式会社のNEC Avio 赤外線テクノロジーTVS-500EX)を用いた。それらの結果を図12〜図14および表4にそれぞれ示した。
図12に、比較例試料6-2(生鮭)を加熱したときの経時的な温度変化を赤外線サーモグラフィにより測定した温度分布画像をそれぞれ示した。図から明らかなように、比較例試料6-2は、昇温の立ち上がりが不良であり、電子レンジ加熱に時間が掛かり、試料芯部の温度が85℃以上に達するまでに90秒も要した。
図13に、比較例試料8-2(加熱処理した鮭)を加熱したときの経時的な温度変化を赤外線サーモグラフィにより測定した温度分布画像をそれぞれ示した。図から明らかなように、比較例試料8-2は、製造工程中にすでに加熱処理してあるため、昇温の立ち上がりが良好であり、試料芯部の温度が85℃以上になるまでに50秒以上も掛かり、若干加熱ムラが発生した。
図14に、実施例試料3-1(アルカリ処理+加熱処理した鮭)を加熱したときの経時的な温度変化を赤外線サーモグラフィにより測定した温度分布画像をそれぞれ示した。図から明らかなように、実施例試料3-1は、比較例試料8-2と同様に電子レンジ加熱による昇温に時間が掛からず、50秒以内で芯部の温度が85℃以上に達することが分かった。
表4に、各種試料の熱伝導性の評価試験結果をそれぞれ示した。各試料を家庭用電子レンジにより600W×90秒の条件で加熱し、加熱開始から10秒ごとに中心温度計により魚体芯部の温度を測定し、各試料の熱伝導性を評価した。試料の芯部温度は、中心温度計(株式会社佐藤計量器製作所の防水型デジタル温度計(センサ付)SK-250WP2-N)の検出端部を試料のなかに刺し込むことにより測定した。
熱伝導性の評価結果を表中に記号で示した。表中にて、二重丸は熱伝導性が優秀であること、単丸は熱伝導性が良好であること、三角は熱伝導性が少し劣ること、バツは熱伝導性が明らかに劣ることをそれぞれ示している。
これらの結果から明らかなように、実施例試料3-1,4-1は比較例試料6-2,7-2,8-2,9-2,10-2よりも熱伝導性が優れていることを確認した。
図15は、横軸に加熱開始からの経過時間(秒)をとり、縦軸に試料の芯部の温度(℃)をとって、電子レンジ加熱時における各種試料の芯部温度の経時的変化を示す折れ線グラフ図である。試料の芯部温度は、上記の中心温度計を用いて測定した。
図中にて特性線Aは実施例試料3-1の測定結果を示し、特性線Bは比較例試料6-2の測定結果を示し、特性線Cは比較例試料8-2の測定結果を示した。
図から明らかなように、実施例試料3-1のほうが比較例試料8-2よりも熱伝導性が大きいことを確認した。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]電子レンジ加熱または自然解凍することにより喫食可能または調理可能な状態となる惣菜用または業務用の半素材冷凍魚の製造方法において、
(a)原料魚体を準備し、
(b)前記原料魚体をpH8.0以上12.5以下に調整されたアルカリ水溶液中に大気圧室温下で30分間以上漬け込み、
(c)前記アルカリ処理された魚体を所定の加熱処理スペースに配置し、前記加熱処理スペースの雰囲気温度が90℃〜300℃の範囲に5〜60分間保持されるように、所定の加熱装置から前記加熱処理スペースに所望量の熱エネルギーを供給し、これにより前記魚体を加熱殺菌し、
(d)前記加熱処理された魚体をマイナス18℃以下の温度に冷凍する、
ことを特徴とする半素材冷凍魚の製造方法。
[2]前記工程(c)では、前記加熱装置から前記加熱処理スペースに高温の水蒸気を供給し、前記加熱処理スペースの雰囲気温度を110〜300℃の範囲に5〜45分間保持することを特徴とする[1]に記載の方法。
[3]前記工程(c)では、前記水蒸気の温度、前記水蒸気の単位時間当たりの供給量、および前記加熱装置のノズル噴射口から前記魚体までの距離をそれぞれ制御することを特徴とする[2]に記載の方法。
[4]前記工程(c)では、前記水蒸気として常圧過熱水蒸気または飽和水蒸気のいずれかを用いて前記魚体を直接加熱することを特徴とする[1]乃至[3]のいずれかに記載の方法。
[5]前記工程(a)において、前記原料魚体は、整形処理により内臓、アタマ、エラ、ヒレ及びウロコのうちの少なくとも1つが除去された整形魚体であることを特徴とする[1]に記載の方法。
[6]前記工程(a)において、前記原料魚体は、骨を含む骨付き魚体であることを特徴とする[1]または[5]のいずれかに記載の方法。
[7]前記工程(a)において、前記原料魚体は、実質的に骨を含まないように骨除去処理された骨なし魚体であることを特徴とする[1]または[5]のいずれかに記載の方法。
[8]前記工程(a)において、前記原料魚体は、所望のサイズにカットされた切身またはフィーレであることを特徴とする[1]または[5]のいずれかに記載の方法。
[9]電子レンジ加熱または自然解凍することにより喫食可能または調理可能な状態となる惣菜用または業務用の半素材冷凍魚であって、
(i)pH8.0以上12.5以下に調整されたアルカリ水溶液中に大気圧室温下で30分間以上漬け込むアルカリ処理が施され、アルカリ処理されない未処理の魚体のpH値よりも高いpH値を有し、
(ii)雰囲気温度が90℃〜300℃の範囲に5〜60分間保持されるように制御された所定の加熱処理スペース内において殺菌加熱処理され、
(iii)芯部までマイナス18℃以下の温度に冷凍凍結された、
ことを特徴とする半素材冷凍魚。
[10]前記魚体が骨除去処理された骨なし魚であることを特徴とする[9]に記載の半素材冷凍魚。
[11]前記魚体の形状を維持するために必要な骨を含む骨付き魚であることを特徴とする[9]に記載の半素材冷凍魚。
[12]前記魚体が所望のサイズにカットされた切身またはフィーレであることを特徴とする[9]または[10]のいずれかに記載の半素材冷凍魚。