JPS6247502B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

本発明はフライ素材の製造方法に係り、詳しく
は、バツターおよびパン粉付けしたフライ素材
を、通常の蒸し機で得られる雰囲気より高温かつ
低湿度の雰囲気中で蒸煮殺菌することを特徴とす
るフライ素材の製造方法に係る。 近年、調理の簡便迅速化が進み、フライやフラ
イ素材等についても種物となる鳥獣肉類、魚介
類、野菜類等の不可食部を除去するなどの前処理
を行なつた原料に、バツターおよびパン粉付けし
た半製品が冷凍食品として大量に生産され普及し
ているが、冷凍食品は凍結処理をするため、種物
の多少の冷凍変性は避けられない。 そこで、生鮮原料を購入し、手間をかけて調理
したフライ（以下、生鮮フライ素材と称す）と同
一の食感、香味を有するフライ素材として惣菜や
チルド食品としてのフライ素材が普及してきた。
ところで、フライ素材を油することなく常温中
で惣菜として販売しようとすれば、日保ちが悪い
ので即日販売してしまわねばならず、また、製品
を包装、移動する際に、パン粉がとれたり、衣が
剥れたり、形くずれなどがおこるので、惣菜の場
合には半油（プリクツク）又は油したフライ
製品として販売し、生のフライ素材として販売す
ることは稀である。 又、油してある製品を摂食前再油したもの
の食感や風味は生鮮フライ素材を油したものに
は及ばない。 次に、フライ素材をチルド食品化する試みがな
されたが、生のままではパン粉がとれたり、衣が
剥がれたり、形くずれしやすいばかりでなく、日
保ちも１〜２日で食品衛生上好ましくない。そこ
で、種物にバツターおよびパン粉付けをした後、
通常の蒸し機（温度は100℃以下、湿度は100％付
近）で蒸煮殺菌後、冷却したチルド食品も販売さ
れているが、フライ素材を通常の蒸し機で蒸煮殺
菌すると日保ちは３〜５日と延長されるが、蒸煮
によりパン粉がふやけ、衣の上に角ばつて鱗片状
に付着しているパン粉が丸まつて寝てしまい、パ
ン粉とバツターが混然一体となつた一枚の衣にな
り、フライ素材自体も団子の様になり衣がべとつ
く。衣が湿つた蒸気で濡れた状態なので、店頭で
の細菌による二次汚染で品質が劣化し易い。ま
た、かかるフライ素材を油すると油はねするこ
ともあり、カラリとしたフライにはならないので
不味である。 かかる欠点を除くため、フライ素材を通常の蒸
煮殺菌を行なつた直後に乾熱を用いて加熱乾燥す
ることも考えられているが、一旦ふやけて形くず
れしたパン粉を再度乾燥しても、元通りのパン粉
には戻らず、衣も糊化した後、乾燥するので固く
なり、外観が極端な場合にはフライの衣ではなく
天ぷらの衣に様になる。 従つて、一旦蒸した後、乾熱で乾燥したフライ
素材は、食品衛生的にはすぐれたもので日保ちも
向上するが、外観が悪く、これを油しても生鮮
フライ素材を油した製品には外観、食感、風味
とも到底及ばないのである。 本発明者等は、かかる従来の問題点を解決し
て、外観、食感、風味が生鮮フライ素材と変ら
ず、取り扱い中に形くずれせず且つ食品衛生的に
もすぐれ、日保ちの向上したフライ素材を開発す
るために、種々研究した結果、湿熱と乾熱をそれ
ぞれ供給する装置を併設してあるので、100℃以
上の高温で蒸すことができる蒸し機を使用し、蒸
し機内の温度と湿度を調節することにより、前記
の問題点を解決できるフライ素材の蒸煮にも最も
好適な条件を見つけて本発明を完成した。 本発明は湿熱と乾熱をそれぞれ供給する装置を
併設した蒸し機を用い、バツターおよびパン粉付
けしたフライ素材を、生蒸気と乾熱の供給を調節
することによつて、温度105℃以上、湿度30％〜
90％の雰囲気中で蒸煮殺菌することを特徴とする
フライ素材の製造方法に関するものである。 本発明を更に詳しく説明すると、原料として
は、魚介類、鳥獣肉、野菜、果物、茸類などフラ
イにできるものは何れも用いられる。すなわち、
原料を前処理して不可食部を除去し、常法により
バツターおよびパン粉付けを行なつた後、フライ
素材を湿熱と乾熱を同時に併用した蒸し機で105
℃以上、好ましくは105℃〜125℃の高温、かつ湿
度30％〜90％、好ましくは40％〜80％の通常の蒸
煮よりは低湿の雰囲気で蒸煮殺菌する。この場
合、フライ素材の中心まで熱が通り、充分な殺菌
ができていることが必要である。 上記の条件で蒸煮後は冷却して要すれば包装し
て、惣菜、チルド食品に、また更に冷凍して冷凍
食品とすることもできる。 本発明では、上記の如く、湿熱と乾熱を同時に
併用して加熱蒸煮のできる特殊の蒸し機を用いる
ことにより、高温で短時間の高能率な蒸煮ができ
るばかりでなく、加熱殺菌が適度な湿度を保つ雰
囲気で行なわれるため、乾熱のみまたは湿熱のみ
使用した加熱殺菌と異なり、フライ素材の種物お
よび衣の品質を傷めることがなく、生鮮フライ素
材と較べて形くずれせず、日保ちがチルド食品と
して３〜５倍向上する製品を得ることができるよ
うになつた。 本発明で使用する蒸し機としては湿熱と乾熱を
それぞれ供給する供給を同一蒸し機中に併設して
あり、それぞれの熱源の処理を調節でき、温度
100℃以上、湿度30％〜100％に調節自在な蒸し機
であれば何れでも良いが、蒸気パイプ等に放熱板
をつけたエルフインヒーター付蒸し機、電熱また
は赤外線ヒーター付蒸し機等の使用が便利であ
る。 なお、雰囲気条件の測定には、温度測定の場合
にはサーミスタ式または熱電対式の温度計を用
い、高温下における湿度の測定には、ヒコーミキ
ヤツプ湿度センサー（フインランドのバイサラ社
製）を用いた。 本発明によるフライ素材の製法が従来法と較べ
てすぐれていることは、後記の比較実験例の結果
から明らかであるが、その特徴は、 生鮮フライ素材と較べて、外観や油後の食
感風味の同等なものが得られる上に、日保ちが
著しく向上しかつ取扱いの際、パン粉の脱落、
衣の剥げや形くずれが防げる。 従来の生蒸気だけのフライ素材と較べてパン
粉や衣の品質劣下が防げ、油後の外観食感風
味が格段にすぐれたものが得られ日保ちが向上
する。 乾熱のみで加熱殺菌したフライ素材と異な
り、パン粉や衣が固くならず、加熱蒸煮の前後
で目方がほとんど変らない条件が得られる。ま
た、乾熱のみだけであると加熱殺菌に30分〜90
分もかかり能率が悪いが、生蒸気の湿熱を用い
ることおよび通常の蒸煮より高温で殺菌処理が
可能故、加熱殺菌時間の短縮、従つて生産性が
向上する。またパン粉の形がくずれず、衣がソ
フトで油後の食感、外観も乾熱処理したフラ
イ素材よりはるかにすぐれたものが得られる。 生蒸気だけで蒸煮殺菌後、乾熱で衣を乾かし
たフライ素材は製造に手間がかかるだけでなく
一度ふやけたパン粉を乾かして固めるため、そ
の外観、油後の食感、風味は本発明品よりか
なり劣るものである。 次に比較実験例および実施例で本発明の実施態
様の一例を説明する。 比較実施例 冷凍むらさきいかを解凍後、その胴部の皮を剥
ぎ、肉厚10mmのものを揃え、40gの切身とした
後、バツターおよびパン粉をつけて60gのいかフ
ライ素材を得た。このいかフライ素材を次の条件
で種物の中心部が80℃以上になるような加熱殺菌
処理を行つた後、取出して観察し、次に常法で油
後、その外観と食感を調べた。 加熱条件は、湿熱加熱のみ（通常の蒸し機に
より生蒸気で蒸煮）。乾熱加熱のみ（エルフイ
ンヒーターは付き蒸し機で生蒸気を出さずエルフ
インヒーターだけ用いて加熱）。湿熱加熱終了
後乾熱で衣を乾燥（通常の蒸し機により生蒸気で
蒸煮後乾熱中で衣を乾かす）。湿熱と乾熱の同
時併用（エルフインヒータ付き蒸し機の中でエル
フインヒーターで100℃以上に加熱しておき、こ
の中に生蒸気をバルブを調節しながら吹き込み、
本発明の雰囲気条件で乾、湿併用加熱を行な
う）。

【表】

【表】 実施例 １ ３枚に卸し、背骨を除去したシロザケのフイレ
ーを解凍後、腹腔部の骨を除き、切断して30gの
切身とする。これを常法により、バツターをつけ
た後、パン粉をつけフライ素材とする。このフラ
イ素材を、耐熱性プラスチツク製セイロの上に並
べ、台車でエルフインヒーター付の蒸し機に入
れ、105℃、湿度約80％で20分間蒸煮し、滅菌を
行なう。蒸し終つたものを冷却し、３個づつトレ
イに詰めた後包装する。この製品は蒸したにもか
かわらず、その衣がトレイに接する面でも全くべ
とつかず、形くずれしないものであつた。本製品
はチルド商品としてスーパーの店頭に１週間おい
たが品質に変化なく、油によりカラリと揚が
り、甚だ美味であり、形くずれも見られなかつ
た。 実施例 ２ むらさきいかの胴部の皮を剥ぎ、30gの切身と
する。切身の表面に斜め、または、斜め格子状に
切れ目を入れる。 これを常法によりバツターおよびパン粉付けを
行なつた後、実施例１と同様のセイロにのせる。
蒸し機内をあらかじめ電熱ヒーターで加熱した
後、蒸気を通し、120℃で安定させる。（湿度約40
％） この雰囲気の中に前記のセイロを入れ、７分蒸
煮後取り出し、トレイに並べて冷却後、チルド食
品とした。 このいかフライを、１週間、10℃で保存後、取
り出し180℃で油したが衣が湿つていないた
め、油がはねることなくカラリと揚つて美味であ
つた。 実施例 ３ 常法により製造したほたて貝柱様原本を２cmの
厚さに切断し、バツターおよびパン粉付けを行な
い、ほたて貝柱様フライ素材を製造した。このフ
ライ素材をベルトコンベアーに載せ、エルフイン
ヒーター付連続蒸し機中で110℃、湿度約50％で
15分間蒸煮した後、冷却機で連続的に冷却した。 このフライ素材をトレイに10個づつ詰め、包装
してチルド食品のほたて貝柱様フライとした。本
製品は連続的に大量生産したが衣がべとつかず、
形くずれも全く見られなかつた。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 湿熱と乾熱をそれぞれ供給する装置を併設し
   た蒸し機を用い、バツターおよびパン粉付けした
   フライ素材を、生蒸気と乾熱の供給を調節するこ
   とによつて、温度105℃以上、湿度30％〜90％の
   雰囲気中で蒸煮殺菌することを特徴とするフライ
   素材の製造方法。