JP6952588B2 - 食品からのゲルの流出を抑制するための剤 - Google Patents

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Description

本発明は食品からのゲルの流出を抑制するための剤に関する。さらに詳しくはメチルセルロース又はヒドロキシプロピルメチルセルロースから選ばれる一種以上の加熱凝固性ゲル化剤、冷却凝固性ゲル化剤及び澱粉からなる食品からのゲルの流出を抑制するための剤に関する。
高齢者等の増加に伴い、咀嚼・嚥下が困難な人でも食べやすいソフト食、ゼリー食、きざみ食、ミキサー食等の様々な食品が開発されている。近年は、冷凍流通可能なソフト食等も提供されており、一度に大量の食事を用意する必要がある介護施設等で広く利用されている。
しかし、これらの冷凍流通可能なソフト食等は、冷蔵、冷凍耐性を付与するためにすり身、大豆蛋白、卵白、澱粉、山芋等を多く含む必要があり、これら以外の食材を使用できる量が減り、食材本来の風味のバライティが損なわれる等の問題があった。
また、冷蔵、冷凍耐性の付与にあたり、冷却することでゲル化が起こるゲル化剤(以下、冷却凝固性ゲル化剤と示す場合がある)を添加したソフト食等も知られているが、冷蔵又は冷凍後、喫食するための加熱において60℃程度で温めただけでも融解してしまうものがほとんどであった。
このように従来の技術では、冷蔵、冷凍解凍耐性のみならず、100℃近い高温で温めた場合でも十分に離水等が抑制できる高温加熱耐性を有し、さらに栄養価、風味の優れたソフト食等が得られているとは言えなかった。
ソフト食等の提供にあたり、例えば、特許文献1では、メチルセルロース及び/又はヒドロキシプロピルメチルセルロースを加熱凝固するゲル化剤とし、寒天、カラギナン、ファーセレラン、ジェランガム、ゼラチン、ローカストビーンガム等を冷却凝固するゲル化剤として食品に含有させることが開示されている。そして、これらのゲル化剤を使用して製造した嚥下食を冷凍し、自然解凍後20℃、65℃におけるゲル強度と付着性を調べたところ、冷凍前と自然解凍後でほとんど差がなかったことが記載されている。
また、特許文献2、3においても加熱するとゲル化し、冷却すると液化するゲル化剤を含有する第1のゲル化剤含有組成物と、冷却するとゲル化するゲル化剤を含有する第2のゲル化剤含有組成物とを含む液体内包ゼリー食品が開示されており、製造された液体内包ゼリー飲食品が、ゼリー特有の柔らかな弾力性や咀嚼感を有し、かつ、液体特有のみずみずしさを併せ持っていたことが記載されている。
これらの文献では特徴が異なるゲル化剤を組み合わせて食品に配合することが開示されているが、冷凍後、喫食するための加熱において、高温加熱耐性を有するソフト食等を製造することについては示唆も検討もされていない。
また、特許文献4−6等において、グアーガム、ローカストビーンガム、タラガム、キサンタンガム、CMC、メチルセルロース等を糊料として含む増粘用添加液を咀嚼・嚥下困難者用の食品に対して誤嚥防止のために添加することや、豆乳、凝固剤、乳酸球菌乾燥死菌体と化工澱粉を含有する冷凍豆腐において、アラビアガム、グアーガム、キサンタンガム、メチルセルロース等を糊料としてさらに配合することで凍結保存可能な豆腐を提供すること、メチルセルロース、ローカストビーンガム及びアラビアガムを含有するデンプン品質改良剤を用い、咀嚼・嚥下困難者用食品となり得るデンプン含有食品を製造すること等が開示されている。しかし、これらの文献においても、冷蔵、冷凍解凍耐性と共に、高温加熱耐性も有するソフト食等を得ることについてはまったく触れられていない。
このような従来の技術に対して、本発明者らは冷蔵、冷凍解凍耐性を有するのみならず、100℃近い高温で加熱可能な高温加熱耐性を有するソフト食等であって、かつ、栄養価と風味の優れたソフト食等の製造を可能とすべく、鋭意検討を進めてきた。その過程において、100℃に近い高温加熱時に食品からゲル化剤が流出するという現象を見出し、この問題を解決するために様々な検討を行ってきた。
特開2014-236700号公報 特開2014-180275号公報 特開2014-180276号公報 特開2006-166928号公報 特許第3871852号 特開2004-49037号公報
本発明は冷蔵、冷凍解凍耐性を有すると共に、100℃近い高温で加熱しても耐性を有し、かつ、栄養価と風味の優れたソフト食等の製造を可能とするために、食品からのゲルの流出を抑制するための剤の提供を課題とする。
この課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討した結果、メチルセルロース又はヒドロキシプロピルメチルセルロースから選ばれる一種以上の加熱凝固性ゲル化剤、冷却凝固性ゲル化剤及び澱粉を組み合わせることで、食品からのゲルの流出を抑制するための剤が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、上記の課題を解決するための本発明は、次の(1)〜(6)に示される剤等に関する。
(1)メチルセルロース又はヒドロキシプロピルメチルセルロースから選ばれる一種以上の加熱凝固性ゲル化剤、冷却凝固性ゲル化剤及び澱粉からなる剤であって、該剤が配合された食品からゲルの流出を抑制するための剤。
(2)食品に冷凍解凍耐性及び/又は高温加熱耐性を付与するための上記(1)に記載の剤。
(3)食品から流出するゲルが冷却凝固性ゲル化剤由来のゲルである上記(1)又は(2)に記載の剤。
(4)冷却凝固性ゲル化剤が、ネイティブジェランガム、グルコマンナン、カラギナン、ローカストビーンガム、キサンタンガム、脱アシルジェランガム、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム及びカードランから選ばれるいずれか一種以上である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の剤。
(5)上記(1)〜(4)のいずれかに記載の剤を配合してなる食品。
(6)次の(A)及び(B)の工程を含む食品の製造方法。
(A)上記(1)〜(4)のいずれかに記載の剤、水及び油を混合し、乳化する工程
(B)上記(A)の工程にて得られた乳化物と食品素材を混合する工程
本発明の食品からのゲルの流出を抑制するための剤の提供により、冷凍解凍耐性を有するとともに、100℃近い高温で加熱しても耐性を有し、かつ、栄養価と風味の優れたソフト食等を提供することが容易となる。
ゲルの流出の程度を示した図である(実施例1)。 (A)加熱凝固性ゲル化剤、冷却凝固性ゲル化剤及び澱粉のそれぞれの推定される作用を模式的に示した図である。(B)加熱凝固性ゲル化剤、冷却凝固性ゲル化剤及び澱粉のそれぞれの各温度帯における骨格形成作用等を示した図である(試験例)。 加熱凝固性ゲル化剤の配合量を検討した結果を示した図である(実施例2)。 本発明によって得られる食品(写真)を示した図である(実施例3)。 油の配合量を検討した結果を示した図である(実施例4)。
本発明の「食品からのゲルの流出を抑制するための剤」とは、メチルセルロース又はヒドロキシプロピルメチルセルロースから選ばれる一種以上の加熱凝固性ゲル化剤、冷却凝固性ゲル化剤及び澱粉を必須の構成要件とする剤であって、この剤を配合したソフト食等の食品において、100℃近い高温で加熱してもゲルの流出が生じない剤のことをいう。本発明の剤は、該加熱凝固性ゲル化剤、冷却凝固性ゲル化剤及び澱粉を必須の構成要件とする剤であればよく、さらに食品からのゲルの流出を抑制するために有用なその他の成分や、食品の製造に有用なその他の成分を含むものであってもよい。ここで、食品から流出するゲルとは主に冷却凝固性ゲル化剤由来のゲルのことをいう。
本発明の「剤」に含まれる加熱凝固性ゲル化剤は、常温の水(25℃程度)付近で溶解できることが好ましい。このような加熱凝固性ゲル化剤として、メチルセルロース又はヒドロキシプロピルメチルセルロースから選ばれる一種以上が挙げられる。
メトセル(商標)A4M(ユニテクフーズ株式会社)、メトセル(商標)A15(ユニテックフーズ株式会社)、メトセル(商標)F4M(ユニテックフーズ株式会社)等の市販のメチルセルロース又はヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いてもよく、これらを二種以上混合したものを用いてもよい。
加熱凝固性ゲル化剤の配合量は主材として使用する食品素材の種類、使用する加熱凝固性ゲル化剤の種類(粘度)や食品の製造工程に応じて調整が可能であるが、特に食品素材に加える「水分の量」に対して0.1〜5.0w/w%程度であることが好ましく、さらに0.2〜3.0w/w%程度であることが好ましい。ここで、食品素材に加える「水分の量」とは、水、だし汁、その他食品として摂取できるサラダ油等も含まれる。
食品素材に加える水分の量は、食品素材に対して30〜100w/w%程度であることが好ましく、さらには40〜60w/w%であることが好ましい。加水率が高いと栄養価が下がり、低いとフードプロセッサーなどによる処理性が低下するためである。
また、この水分に対する加熱凝固性ゲル化剤の配合量は少なすぎると高温加熱時に保形性が維持できず、ソフトな食感を損なう原因となる。また、配合量が多すぎると高温加熱時にソフト食全体の収縮をきたすことがある。配合量は加熱凝固性ゲル化剤等の分子量によって影響されるため、高分子量の加熱凝固性ゲル化剤を用いる場合は水分に対する配合量が少なくて良い。
本発明の「剤」に含まれる冷却凝固性ゲル化剤は、ネイティブジェランガム、グルコマンナン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、タラガム、グアーガム、カラギナン、脱アシルジェランガム、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、寒天、ゼラチン及びカードランからなる群より選ばれる一種以上であることが好ましく、これらを二種以上組み合わせて用いてもよい。更にこれらの冷却凝固性ゲル化剤に加えて、不可逆的なゲル化剤である卵白、大豆たんぱく等を補助的に用いても良い。これらのゲル化剤は食品用に使用できるゲル化剤であれば従来知られているいずれの剤も用いることができ、独自に調整したものや市販のものを用いることができる。
特に、ネイティブジェランガムのようなゲル化温度が高いゲル化剤を用いると、加熱凝固性ゲル化剤のセット温度との間で温度差が開きにくく、ソフト食の保形性維持のため好ましい。
冷却凝固性ゲル化剤の配合量は、食品素材の種類、使用する冷却凝固性ゲル化剤の種類(ゲル強度)や食品の製造工程に応じて調整が可能であるが、食品素材に加える「水分の量」に対して0.1〜3.0w/w%程度であることが好ましく、さらには0.5〜2.0w/w%であることが好ましい。
本発明の「剤」に含まれる澱粉は、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、小麦澱粉、甘藷澱粉、加工澱粉からなる群より選ばれる一種類以上であることが好ましく、これらを二種以上組み合わせて用いてもよい。さらに、澱粉に加えて、高温時に粘度を維持する目的で増粘多糖類を併用してもよい。
澱粉の配合量は、使用する食品素材の種類、使用する澱粉の種類や食品の製造工程に応じて調整が可能であるが、だし汁等を含む水分とサラダ油を乳化した乳化物の量に対して6.8〜30w/w%程度であることが好ましく、さらには7〜20w/w%であることが好ましい。澱粉量が少ないと高温で加熱した場合に、冷却凝固性ゲル化剤が食品から流出してしまい食感と見栄えが損なわれるためである。また、澱粉量が多すぎると食感が重たくなり風味が損なわれる原因となる。
本発明における「冷凍解凍耐性」とは、冷凍した後解凍した段階で、食品からの離水や形状の変形がまったく見られないか、少量見られる程度の状態を保持し得ることをいう。
ここで、「冷凍」には、一般的な冷蔵庫による冷凍も業務用の冷蔵庫による冷凍も含まれる。「解凍」には自然解凍の他に、電子レンジ、湯煎、スチームコンベクション等の加熱による解凍も含まれる。
本発明における「高温加熱耐性」とは、本発明の食品を喫食等するために高温で加熱した場合に、食品からゲルの流出がまったく見られないか、少量見られる程度の状態を保持し得ること、食品からの水の分離がないか、わずかに水の分離がある程度であること、そして、食品の収縮等による形状の変化、変色や見た目のざらつき、「す」等が生じていない状態を保持し得ることをいう。
ここで「高温加熱」とは、100℃近い高温での加熱のことを意味し、湯煎、電子レンジ、スチームコンベクション等による加熱も含まれる。この「高温加熱」は喫食等するために本発明の冷蔵された食品をそのまま加熱する場合に加えて、冷凍された食品を解凍するために加熱する場合も含まれる。
本発明における「食品」には、メチルセルロース又はヒドロキシプロピルメチルセルロースから選ばれる一種以上の加熱凝固性ゲル化剤、冷却凝固性ゲル化剤及び澱粉からなる本発明の剤が配合された食品であれば、いずれの食品も含まれる。特に、冷却凝固性ゲルの流出が抑制された介護食用のソフト食、咀嚼嚥下困難用の食品、練り物、乳児食、ゼリー食品、各種ミキサー食、おかゆ、豆腐等が挙げられる。
本発明の食品の製造にあたり、使用し得る食品素材はヒト等が喫食できる食品素材であれば従来知られているいずれのものであってもよく、例えば、ニンジン等の植物性素材、魚介類、畜肉等の動物性素材に加えて、これらを缶詰、水煮、レトルトパウチ等に加工したものや、煮物、ハンバーグ、焼き鳥等に加工されたものも本発明の食品素材に含まれる。
本発明における「食品の製造方法」とは、次の(A)及び(B)の工程を含む食品の製造方法のことをいう。
(A)メチルセルロース又はヒドロキシプロピルメチルセルロースから選ばれる一種以上の加熱凝固性ゲル化剤、冷却凝固性ゲル化剤及び澱粉からなる剤、水及び油を混合し、乳化する工程
(B)上記(A)の工程にて得られた乳化物と食品素材を混合する工程
本発明の製造方法にはさらに、ゲルの流出が抑制された食品の製造に有用なその他の工程を含む食品の製造方法であってもよい。このような工程として、例えば次の工程が挙げられるが、必ずしも必須ではない。
(C)上記(B)の工程にて得られた食品を型(容器)に充填し、加熱を行う工程
(D)上記(C)の工程で加熱した後放冷し、冷蔵条件又は冷凍条件で保存する工程
本発明の製造方法において使用する油は、食品の製造にあたり使用し得る油であれば従来知られているいずれの油であってもよい。特に液油であることが好ましく、例えばサラダ油、ゴマ油、オリーブオイル等を使用することができる。加える水分の0w/w%を超える量であって、かつ、50w/w%以下となるように油で置換することが好ましい。油の量が50w/w%を超えると風味に影響するためである。
以下に本発明の実施例、比較例等を示すが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
1.試料
1)加熱凝固性ゲル化剤
メトセル(商標)A4M(ユニテクフーズ株式会社)
メトセル(商標)A15(ユニテックフーズ株式会社)
メトセル(商標)F4M(ユニテックフーズ株式会社)
2)冷却凝固性ゲル化剤
ケルコゲル(商標)HM(大日本住友製薬)
グルコマンナンRS(清水化学株式会社)
κ-カラギナンBWJ40(ユニテックフーズ株式会社)
3)澱粉
馬鈴薯澱粉(川光物産株式会社)
4)液油
食用調合油 日清サラダ油(日清オイリオグループ)
5)食品素材
(1)ニンジン
ニンジンを一口大の大きさにカットして耐熱ボールに入れ、ラップをして電子レンジ800Wで5分程度加熱処理し串が通る程度の硬さとした。その後、水気を十分に切って食品素材として使用した。
(2)ホウレンソウ
ホウレンソウを沸騰したお湯で2分程度茹で絞って水気を切った後、一口大の大きさにカットして食品素材として使用した。
(3)鯖の味噌煮
市販の調理済み品(レトルトパウチ品)をそのまま食品素材として使用した。
(4)ハンバーグ
市販の冷蔵チキンハンバーグを未加熱の状態で一口大の大きさにカットして食品素材として使用した。
2.食品からのゲルの流出を抑制するための剤
加熱凝固性ゲル化剤、冷却凝固性ゲル化剤及び澱粉の各粉体を各表に示す配合割合となるように組み合わせ、食品からのゲルの流出を抑制するための剤とした。
3.食品の製造方法
(A)上記2.にて調製した食品からのゲルの流出を抑制するための剤、水及び油を混合し、乳化した。
(B)上記(A)の工程にて得られた乳化物と食品素材を混合して食品を製造した。
なお、本発明の食品の製造方法において、必要に応じてさらに次の工程を行った。
(C)上記(B)の工程にて得られた食品を型(容器)に充填し、蒸し加熱を行った。
(D)上記(C)の工程で加熱した後放冷し、蓋をして冷蔵条件又は冷凍条件で保存した。
4.評価
1)型への充填性の評価
上記3.食品の製造方法の(B)の工程を経て製造された食品の型(容器)へ充填のしやすさを評価することにより処理性を調べた。
○:食品の性状がやわらかくなめらかで、容器へ均等に充填するのが容易である。
△:食品の性状がやや固く、容器へ均等に充填するのがやや容易ではない。
×:食品の性状が固く、容器へ均等に充填しにくい。
2)保形性の評価
冷蔵又は冷凍保存した後、食品を型から耐熱性容器に取り出し蓋をして喫食等の目的で加熱する場合と同様に加熱した。加熱後直ちに食品が乗った容器を斜めに傾け、ゲル(ゲル化剤)の流出の有無及び離水の有無を目視にて評価した。この際、液体の状態で流れ出すものを離水、とろみがあってゆっくり流れ出すものをゲルの流出と判断した。
また、加熱後の食品を観察し、食品自体が収縮しているか否かを目視にて評価した。なお、その後この食品を喫食し、食感を評価した。
(1)ゲルの流出
○:図1に示すように、ゲル化剤の流出がない。
△:図1に示すように、ゲル化剤の流出が周囲に僅かにある。
×:図1に示すように、ゲル化剤の流出が流れ出るほど多量にある。
(2)離水
○:食品から水の分離がない。
△:食品からわずかに水の分離がある。
×:食品から多量の水の分離がある。
(3)収縮
○:食品の収縮が見られない、又は、多少の収縮が見られるが食品として好ましい形状を維持している。
×:食品の収縮が激しく食品として好ましくない形状に変化している。
3)食感の評価
上記2)にて保形性を評価した後、食品を喫食し、食感を評価した。
(1)べたつき感
○:咀嚼した時に口腔粘膜に付着して残る感じがない。
△:咀嚼した時に口腔粘膜への付着残留がややある。
×:咀嚼した時に口腔粘膜に付着して残る感じが強い。
(2)まとまり感
○:食品を咀嚼した時にばらつかず飲み込むのが容易である。
△:食品を咀嚼した時にややばらついて飲み込みづらい。
×:食品を咀嚼した時にばらついて飲み込みづらい。
〔実施例1〕
澱粉の配合量の検討
表1に記載の配合量となるように食品からのゲルの流出を抑制するための剤(剤1−1〜1−3)を調製した。また、比較として澱粉の量を減らした剤(剤1−a)を調製した。
これらの剤及び食品素材としてニンジンを用い、次の工程により食品を製造した。
(A)フードプロセッサー(フードプロセッサー MK-K60P Panasonic製)に0.3w/w%食塩水24g、サラダ油6g、各剤全量を投入し、1分間撹拌処理を行い乳化した。
(B)上記(A)の工程にて得られた乳化物に食品素材100gを混合して、さらに高速で1.5分間撹拌処理を行った。
(C)上記(B)の工程にて得られた混合物をプラスチックのカップ(直径4.5cm、高さ4cmの円柱型容器)に充填し、家庭用のステンレス製蒸し鍋を用いて蒸し加熱(98℃、25分)を行った。
(D)上記(C)の工程で加熱した後放冷し、蓋をして冷蔵条件(3℃で3日間)又は冷凍条件(-10℃で3日間)で保存した。
冷凍条件(-10℃で3日間)で保存した各食品について、家庭用のステンレス製蒸し鍋を用いて蒸し加熱(98℃、40分)を行った。この加熱によって解凍された食品について、加熱終了後直ちに目視にてゲルの流出を調べた。
Figure 0006952588
その結果、図1の「ゲル化剤の流出がある」場合と同様に剤1−aにはゲルの流出が見られた。一方、剤1−1〜剤1−3においては、図1の「ゲル化剤の流出がない」場合と同様にゲルの流出が見られなかった。従って、澱粉の添加はゲルの流出抑制に有効であり、使用する食品素材の水分含量にもよるが、食品の製造工程において得る乳化物の量に対して7〜20w/v%程度となるように含むことが好ましいことが確認できた。
〔試験例〕
食品からのゲルの流出を抑制するための剤の粘度の検討
実施例1と同様に調製した剤1−2、剤1−3及び剤1−aを用いて、食品からのゲルの流出を抑制するための剤に澱粉を含むことの効果を検討した。
フードプロセッサーに水84g、液油(サラダ油)6g、各剤をそれぞれ全量投入し、1分間撹拌処理を行い乳化した。得られた乳化物について、次の条件によりMCRにて粘度を測定した。
<MCR条件>
装置:MCR300 SN718288
測定治具:CP 50-1
データポイントの数:120
時間の設定:120 測定点(0.5刻み)
測定条件:
せん断速度 d(gamma)/dt=0.1...200 1/s線形
温度 T=70℃
・数値は29.5〜30.5sec (平均より抽出した)
Figure 0006952588
その結果、表2に示されるように、食品からのゲルの流出を抑制するための剤に配合される澱粉の量が多いほど、得られるゲルの粘度が増強されることが確認できた。
各剤に含まれる澱粉の糊化温度は55℃〜66℃の範囲内であり、MCRでの測定時の温度(70℃)において、食品に含まれる澱粉は糊化している状態であると考えられた。この糊化している澱粉の量が多い程、ゲルの粘度が増強され、食品からのゲルの流出抑制に繋がると推察された。
本発明の剤に含まれるメチルセルロース又はヒドロキシプロピルメチルセルロースから選ばれる一種以上の加熱凝固性ゲル化剤、冷却凝固性ゲル化剤及び澱粉のそれぞれの推定される作用を模式図として図2(A)に示し、図2(B)に各温度帯における骨格形成作用等を示した。この図に示されるように、剤に含まれる該加熱凝固性ゲル化剤、冷却凝固性ゲル化剤及び澱粉がそれぞれの温度で働くことにより、本発明の剤を配合された食品はゲルの流出が抑制され、さらに冷凍解凍耐性及び/又は高温加熱耐性も付与され得ると推察された。
〔実施例2〕
加熱凝固性ゲル化剤の配合量の検討
表3に記載の配合量となるように食品からのゲルの流出を抑制するための剤(剤2−1〜2−2)を調製した。また、比較として加熱凝固性ゲル化剤の量を減らした剤(剤2−a)を調製した。
これらの剤、食品素材としてニンジンを用い、実施例1と同様の方法により食品を製造した。製造した各食品について実施例1と同様に冷凍保存し、蒸し加熱により解凍した。加熱後直ちにゲルの流出、離水、収縮等の保形性を調べ、上記の評価基準により評価を行った。
Figure 0006952588
その結果、図3に示されるように、加熱凝固性ゲル化剤の配合量が少ない剤(剤2−a)を用いた場合、保形性が確保できなかった。加熱凝固性ゲル化剤の配合量が多い剤(剤2−1)を用いた場合は配合量が少ない剤(剤2−2)を用いた場合と比べて形の収縮が大きかったが、食品として好ましい形状を維持していた。
〔実施例3〕
表4に記載の配合量となるように食品からのゲルの流出を抑制するための剤3を調製した。この剤及び食品素材として調製したニンジン、ホウレンソウ、鯖の味噌煮及びハンバーグを用い、次の工程により食品を製造した。製造した各食品について実施例1と同様に冷凍保存し、蒸し加熱により解凍した。加熱後直ちに目視にてゲルの流出、離水、収縮等の保形性を調べた。上記の各評価基準により評価を行った結果を表5に示した。
(A)フードプロセッサー(フードプロセッサーMK-K60P Panasonic製)に0.3w/w%食塩水70g、サラダ油30g、各剤全量を投入し、1分間撹拌処理を行い乳化した。
(B)上記(A)の工程にて得られた乳化物に食品素材200gを混合して、さらに高速で1.5分間撹拌処理を行った。
(C)上記(B)の工程にて得られた混合物をプラスチックのカップ(直径4.5cm、高さ4cmの円柱型容器)に充填し、家庭用のステンレス製蒸し鍋を用いて蒸し加熱(98℃、25分)を行った。
(D)上記(C)の工程で加熱した後放冷し、蓋をして冷蔵条件(3℃で3日間)又は冷凍条件(-10℃で3日間)で保存した。
Figure 0006952588
Figure 0006952588
その結果、表5及び図4に示されるように、根菜のニンジン、葉物野菜のホウレンソウ、動物性素材である鯖の味噌煮及びハンバーグのいずれの食品素材を用いた場合も、冷凍解凍耐性と共に、高温加熱耐性も有し、かつ、栄養価が高く風味も優れたソフト食が得られることが確認できた。本発明のソフト食は製造にあたり油を混合して使用していることから、栄養価が高く、また、しっかりと保形しながらソフトな食感を有するカロリーの高い介護食等として提供することができる。
〔実施例4〕
油の配合量の検討
乳化物の調製において使用する好ましい油の量を検討した。
表6に記載の配合量となるように食品からのゲルの流出を抑制するための剤4を調製した。この剤4全量と表7に記載の配合割合となるように氷水及びサラダ油を用い、次の工程により乳化物を製造した。製造した各乳化物の写真を図5に示した。
乳化工程:
フードプロセッサーに氷水、液油(サラダ油)、剤4全量を投入し、1分間撹拌処理を行い乳化した。
Figure 0006952588
Figure 0006952588
その結果、図5に示すように配合1〜3の配合割合で氷水及び油を用いた場合には、綺麗に乳化するが、配合4のような水に対して油が50%を超える場合には乳化できず分離してしまうことが確認できた。
従って、この結果から、本発明の食品の製造において使用する好ましい油の量は、水に対して油が0w/w%を超える量であって、かつ50w/w%以下程度であることが確認できた。
〔実施例5〕
食材感のあるソフト食の製造
表8に記載の配合量となるように食品からのゲルの流出を抑制するための剤5を調製した。食品素材として一口大の大きさに切ったニンジンを電子レンジ800Wで5分程度加熱処理したものをフードプロセッサーにて粗引きにしたものを用いた。粗引きにした食材を用いることにより、咀嚼時に食材の塊感が感じられ、食感が楽しめる食材感のあるソフト食が提供できる。
この剤5と粗引きしたニンジンを用い、次の工程により食材感のあるソフト食を製造した。製造した食材感のあるソフト食について実施例1と同様に冷凍保存し、蒸し加熱(98℃、30分)により解凍した。加熱後直ちに目視にてゲルの流出を調べた。
(A)フードプロセッサーに0.3w/w%食塩水60g、液油(サラダ油)15g、剤5全量を投入し、1分間撹拌処理を行い乳化した。
(B)上記(A)の工程にて得られた乳化物に粗引きにしたニンジン250gを手混ぜで混合した。
(C)上記(B)の工程にて得られた混合物をプラスチックのカップ(直径4.5cm、高さ4cmの円柱型容器)に充填し、家庭用のステンレス製蒸し鍋を用いて蒸し加熱(98℃、25分)を行った。加熱後放冷した後、蓋をして冷凍条件(-10℃で3日間)で保存した。
Figure 0006952588
その結果、冷凍保存した後に加熱して解凍した食材感のあるソフト食は粗引きされたニンジンの固形部分が残った状態でゲル化されており、ゲルの流出がないことが確認できた。
従って、本発明の食品からのゲルの流出を抑制するための剤を配合することにより、ソフト食と同様に冷凍解凍耐性と共に、高温加熱耐性も有し、かつ、栄養価が高く風味も優れた食材感のあるソフト食が得られることが確認できた。
本発明の食品からのゲルの流出を抑制するための剤の提供により、冷凍解凍耐性と共に、高温加熱耐性も有し、かつ、栄養価が高く風味も優れたソフト食等の食品の提供が容易となる。

Claims (5)

  1. メチルセルロース又はヒドロキシプロピルメチルセルロースから選ばれる一種以上の加熱凝固性ゲル化剤、ネイティブジェランガムである冷却凝固性ゲル化剤及び澱粉を含む剤であって、該剤が配合された食品に高温加熱耐性を付与し、該剤が配合された食品からゲルの流出を抑制するための剤: ここで、前記高温加熱は80℃乃至100℃での加熱を意味する
  2. 該剤が配合された食品に冷凍解凍耐性を付与するための請求項1に記載の剤。
  3. 食品から流出するゲルが冷却凝固性ゲル化剤由来のゲルである請求項1又は2に記載の剤。
  4. 請求項1〜のいずれかに記載の剤を配合してなる高温加熱耐性が付与され、ゲルの流出が抑制された食品: ここで、前記高温加熱は80℃乃至100℃での加熱を意味する
  5. 次の(A)及び(B)の工程を含む高温加熱耐性が付与され、ゲルの流出が抑制された食品の製造方法: ここで、前記高温加熱は80℃乃至100℃での加熱を意味する
    (A)請求項1〜のいずれかに記載の剤、水及び油を混合し、乳化する工程
    (B)上記(A)の工程にて得られた乳化物と食品素材を混合する工程
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