JP6997853B1 - 自己保形性食品組成物およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
当該食品組成物が、前記第一ゲル化剤による微細なゲルであって、前記水の一部をその内部に保持する微細なゲルを含み、前記保形剤によって当該食品組成物全体の形状が保持されてなることを特徴とするものである。
(1)第一ゲル化剤と水とを混合し、分散液または溶液を得る工程、
(2)前記工程(1)で得られた分散液または溶液をゲル化して第一ゲルを得る工程、
(3)前記工程(2)で得られた第一ゲルに、保形剤および食品素材を混合し、同時に前記第一ゲルが粉砕された混合物を得る工程、または前記工程(2)で得られた第一ゲルを粉砕し、当該粉砕物に、保形剤および食品素材を混合し、混合物を得る工程、
(4)前記工程(3)で得られた混合物の保形剤により全体の形状が保持された食品組成物を得る工程
とを少なくとも含んでなるものである。
本発明により提供される食品組成物は、それ自体直ちに食品として供することができる物に加え、食品の素材としてさらに何らかの調理の上で食品に供されるもののいずれも意味する。本発明による食品組成物は、好ましくは咀嚼・嚥下機能の低下した高齢者等が誤嚥なく喫食できる介護用食品である。本発明により提供される食品組成物は「自己保形性」の性質を有する。本発明において「自己保形性」とは、一定の流動性、例えば型に充填し、またはドラム成形機のドラムに充填可能な程度の流動性を有しながら、型に充填され、またはドラム成形機のドラムで成形された後は、その形状を引き続き保持する、すなわち自重で大きく形を変えないとの性質を意味する。また、ゲル組成物を所定の厚さの生地として、型抜きにより成形することも可能である性質を意味する。
・食品組成物が、第一ゲル化剤による微細なゲルであって、水の一部をその内部に保持する微細なゲルと、
・保形剤によって全体がゲル状態またはその形状を保持する、すなわち自重で大きく形を変えない性質の状態にあり、
・食品素材が微細なゲルの内部または周囲に存在している
構成により得られるものと考えられる。より具体的には、食品組成物の主たる成分である水の一部、好ましくは多くが、第一ゲル化剤による微細なゲルの内部に安定的に保持されていることが「自己保形性」および上記した利点を主として生じさせているものと考えられる。水が安定的に存在することができる結果、成型時の流動性を保形性の高い状態で維持し、加熱時に膨張せず、冷却時にも硬くならない物性を可能としたと考えられる。また、水を含む微細なゲルが、その細かな構造から、日本介護食品協議会規格UDF区分の「舌でつぶせる」に分類される適度な柔らかさを可能にしているものと考えられる。なお、以上の説明はあくまで仮説であって、これにより本発明が限定的に解釈されることを意図するものではない。
本発明による食品組成物の製造方法は、以下に示す工程(1)から工程(4)を基本的に含んでなる。
第一ゲル化剤
第一ゲル化剤と水とを混合し、分散液または溶液を得る工程である。ここで、第一ゲル化剤は、上記した水をその内部に保持する微細なゲルを形成可能なものを意味し、本発明にあっては、好ましくは、熱、金属イオンまたは酸若しくはアルカリによりゲル化するものである。その具体例としては、アルギン酸ナトリウム、カードラン、ジェランガム、およびグルコマンナンからなる群から選択される一種以上が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
工程(1)で得られた分散液または溶液をゲル化して第一ゲルを得る工程である。ゲル化は、第一ゲル化剤をゲル化する条件に付して行う。例えば、熱によりゲル化するゲル化剤の場合は加熱により、金属イオンによりゲル化するゲル化剤の場合は、金属イオンの添加により行われる。
本発明にあって、このようにして得られた第一ゲルは、微細なゲルの集合体であって、液体のような流動性を示すゲル、すなわちフルイドゲルに分類される性質を備えるものである。
工程(2)で得られた第一ゲルに、保形剤および食品素材を混合し、同時に第一ゲルが粉砕された混合物を得るか、または、工程(2)で得られた第一ゲルを粉砕し、この粉砕物に、保形剤および食品素材を混合し、混合物を得る工程である。ここで、粉砕された第一ゲルを含む混合物は、微細なゲルの集合体であって、液体のような流動性を示すゲル、すなわちフルイドゲルに分類される性質を備えるものである。
この工程において用いられる保形剤は、工程(2)で得られた第一ゲルおよび食品素材と混合され、後記する工程(4)において、その全体の形状が保持されうるものとされ、すなわち「自己保形性」を備えるものとする作用のものを意味する。すなわち、本発明において「保形剤」とは、工程(4)を経た後、一定の流動性、例えば型に充填し、またはドラム成形機のドラムに充填可能な程度の流動性を有しながら、型に充填され、またはドラム成形機のドラムで成形された後は、その形状を引き続き保持する性質を実現できるものを意味する。
本発明による食品組成物は、食品、特に介護用食品である場合、それを食することで栄養源を摂取できるものとされ、そのための主たる成分として「食品素材」を含有する。ここで「食品素材」とは、野菜ペースト、野菜パウダー、たんぱく、油脂、デンプン、肉、魚、果物等に加え、米飯、惣菜等を挙げることができる。とりわけ、野菜ペースト、野菜パウダー、果物などには、熱などにより凝固するようなタンパク成分が少ないことから、それ自体で固化させることが難しく、食品組成物のような食品として提供することが容易とは言い難いが、本発明によれば、このような野菜を食品素材として含む食品、介護用食品を提供することが可能となる。
工程(3)において、食品素材以外の成分を添加してもよく、その具体例としては、調味料、着色料、香料、食品添加物などが挙げられる。
工程(3)で得られた混合物中の保形剤により、組成物全体に「自己保形性」を付与する工程である。具体的には、熱によりゲル化するものであれば加熱し、金属イオンまたは酸若しくはアルカリによりゲル化するものであれば、金属イオンまたは酸若しくはアルカリを添加して組成物全体をゲル化する。また、水分を吸収し存在する系の粘度を上げるものであれば、水分を吸収するよう撹拌または静置し、さらに水を吸収する時間を確保するために、この撹拌または静置を一定時間継続することで実施される。またこの場合、この工程(4)における反応は、実質的に工程(3)と区別されずに実施されてよい。
本発明により提供される食品組成物は、「自己保形性」を有するため、工程(4)を経た後に成形することができることは無論のこと、工程(4)の前に成形してもよい。工程(4)を経た後に成形する手段としては、型に充填する、またはドラム成形機のドラムで成形するなどが挙げられる。また、食品組成物を所定の厚さの生地として、型抜きにより成形することも可能である。
下記の表1に記載の組成の原料を用意した。
保形剤・食品素材の添加を行わなかった以外は、実施例1と同様にして食品組成物を得た。
第一ゲル化剤であるLAジェランガム(脱アシル型ジェランガム)を含まないエマルジョンを用いた以外は、すなわち第一ゲルを形成しなかった以外は、実施例1と同様にして食品組成物を得た。
成形後高さ
直径58mm、高さ14.5mmのカップに得られた食品組成物を約33g充填し、型を抜いた。型抜き後の成形組成物の高さを測定し、生地ダレの有無を確認した。測定値は表2、「成形後」として示される通りであった。
型抜きして得られた上記食品組成物を蒸煮装置にて100℃で5分間(中心温度75℃以上)加熱し、加熱後の成形組成物の高さを測定した。測定値は表2、「加熱後」として示される通りであった。
調理による加熱を想定して、型抜きして得られた上記食品組成物を、スチームコンベンションオーブンにて100℃5分間(中心温度75℃以上)加熱した。オーブンから取り出した直後に、その高さを測定した。測定値は表2、「調理加熱後」として示される通りであった。
調理による加熱を想定して、型抜きして得られた上記食品組成物を、スチームコンベンションオーブンにて100℃5分間(中心温度75℃以上)加熱した。調理後のサンプルを恒温器(20℃)に静置し、調温後これらを測定機器(クリープメータ RE-33005S、株式会社山電)に充填し、直径20mm(高さ8mm樹脂製)のプランジャーで圧縮速度10mm/秒、クリアランス5mmで圧縮測定した。測定は20±2℃で行った。測定値は表2、「破断値」として示される通りであった。
破断値については表1より、実験例1~12についてはUDF区分「舌でつぶせる程度の固さ」の基準値(2.0×104N/m2)内であり、舌でつぶせる硬さであることが確認された。「舌でつぶせる」区分の代表例としては、魚のほぐしみ(とろみあんかけ)、スクランブルエッグが挙げられ、一つ軽度の「歯茎でつぶせる」区分の代表例としては、煮魚、だし巻き卵が挙げられる。このように同食材であっても調理方法や喫食時の温度により硬さは容易に変化が起こりうる。そのため実験例13についてはスチームコンベクションオーブン調理後20℃の状態では基準値外であったが、例えば自然解凍での喫食時には基準値内に置くことが可能と考えられる。
Claims (13)
- 第一ゲル化剤と、水と、保形剤と、食品素材とを少なくとも含んでなる、自己保形性の食品組成物であって、
前記第一ゲル化剤が、アルギン酸ナトリウムおよびジェランガムからなる群から選択される一種以上であり、
前記保形剤が、でんぷん、増粘多糖類、食物繊維およびタンパクからなる群から選択される一種以上であり、
前記第一ゲル化剤を、当該食品組成物を基準として、0.2~5.0重量%含んでなり、
当該食品組成物が、前記第一ゲル化剤による微細なゲルであって、前記水の一部をその内部に保持する微細なゲルを含み、前記保形剤によって当該食品組成物全体の形状が保持されてなり、前記微細なゲルがフルイドゲルであることを特徴とする、食品組成物。 - 第一ゲル化剤が、熱または金属イオンによりゲル化するものである、請求項1に記載の食品組成物。
- 日本介護食品協議会規格UDF区分の「舌でつぶせる」に分類される硬さ、または舌でつぶせる程度の硬さを備える、請求項1または2に記載の食品組成物。
- 前記食品素材が、野菜ペースト 、野菜パウダー、たんぱく、油脂、デンプン、肉、魚、果物、米飯、または惣菜である、請求項1~3のいずれか一項に記載の食品組成物。
- 食品組成物が介護用食品である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
- 自己保形性の食品組成物の製造方法であって、
(1)アルギン酸ナトリウムおよびジェランガムからなる群から選択される一種以上の第一ゲル化剤と水とを混合し、分散液または溶液を得る工程(ここで、前記第一ゲル化剤は、当該食品組成物を基準として、0.2~5.0重量%となる量添加される)、
(2)前記工程(1)で得られた分散液または溶液をゲル化して第一ゲルを得る工程、
(3)前記工程(2)で得られた第一ゲルに、保形剤および食品素材を混合し、同時に前記第一ゲルが粉砕され、フルイドゲルとされた混合物を得る工程、または前記工程(2)で得られた第一ゲルを粉砕し、フルイドゲルとされた当該粉砕物に、保形剤および食品素材を混合し、混合物を得る工程(ここで、前記保形剤は、でんぷん、増粘多糖類、食物繊維およびタンパクからなる群から選択される一種以上である)、
(4)前記工程(3)で得られた混合物の保形剤により全体の形状が保持された食品組成物を得る工程
とを少なくとも含んでなる、方法。 - 第一ゲル化剤が、熱または金属イオンによりゲル化するものである、請求項6に記載の方法。
- 前記工程(2)のゲル化が、前記工程(1)で得られた分散液または溶液を加熱するか、または前記工程(1)で得られた分散液または溶液に金属イオンを添加することにより行われる、請求項6または7に記載の方法。
- 前記保形剤が、熱によりゲル化するもの、水分を吸収し存在する系の粘度を上げるもの、金属イオンまたは酸若しくはアルカリによりゲル化するものである、請求項6~8のいずれか一項に記載の方法。
- 前記保形剤が、単独で若しくは組み合わせて、またはエマルジョンの形態で混合される、請求項6~9のいずれか一項に記載の方法。
- 前記食品素材が、野菜ペースト、野菜パウダー、たんぱく、油脂、デンプン、肉、魚、果物、米飯、または惣菜である、請求項6~10のいずれか一項に記載の方法。
- 前記工程(4)の前に成形するか、またはその後に成形する、請求項6~11のいずれか一項に記載の方法。
- 食品組成物が介護用食品である、請求項6~12のいずれか一項に記載の方法。
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