WO2013187283A1 - 摂食嚥下機能の検査材 - Google Patents

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Abstract

 摂食嚥下の運動や機能、障害の程度を詳細かつ的確に検査できる形態を有する摂食嚥下機能の検査材を提供する。 液体、粘稠な液体、ゼリー状半固体ないしは粘性固体の各形態を示す摂食嚥下機能の検査材、または該検査材を二種類以上混合して形成される摂食嚥下機能の検査材を提供する。これらの検査材を一種以上、または複数組み合せて検査することにより、詳細かつ的確に、摂食嚥下機能が低下したヒト等における摂食嚥下の運動や機能、障害の程度を詳細的確に検査することが可能となる。

Description

摂食嚥下機能の検査材
 本発明は、食物を摂食し嚥下する際の口腔、咽頭等の消化管の運動や機能を検査できる摂食嚥下機能の検査材に関する。さらに詳しくは、臨床的摂食・嚥下障害を検査し、その摂食・嚥下障害度に合わせた治療・対処の方法を決定することで、摂食嚥下機能が低下した人に対し、適切で安全な食事形態を提示することを目的とする摂食嚥下機能の検査材に関する。
 わが国では、超高齢社会への対応のため、医療機関間や在宅を含む医療と介護の連携強化を通じて、より効果的・効率的な医療・介護サービスの提供体制の構築が進められている。
 一方、脳血管障害等の疾患や加齢の影響により、摂食嚥下機能が低下した摂食・嚥下障害患者が増加している。摂食・嚥下障害は誤嚥性肺炎や脱水・低栄養の主な原因であることに加え、食べる楽しみの喪失によるQOL(Quality of life)の低下を引き起こす。
 そのため、医療と介護の連携において、これらの患者のQOLの向上および医療出費の軽減を図るためには、摂食・嚥下機能の検査方法や評価方法を医療と介護の現場間で共通化する必要がある。
 従来から、嚥下障害の有無、その障害度または食事形態の決定を行うため、被験者の摂食・嚥下機能の診断が行われている。嚥下機能の診断方法としては、例えば、不溶性の硫酸バリウムを水に分散した液体や、増粘剤を添加した粘稠液、または増粘剤やゲル化剤によって調製したゼリー状(ゲル状)に加工した検査物(以下、単にゼリーと示す場合がある)を被験者に服用させて、その分散液やゼリーが咽頭、食道を通過していく様子を観察する方法がある(特許文献1)。これらは嚥下造影検査法(Videofluorography、VF)と呼ばれ、嚥下機能を検査する有力な方法として普及している。
 また、内視鏡を上部咽頭に設置し、咽頭における食事の通過状態を観察する嚥下内視鏡検査(Video Endoscopy、VE)や、コンピュータ断層撮影(Computed Tomography、CT)、核磁気共鳴画像法(Magnetic resonance imaging、MRI)、超音波検査法 (Ultrasonography、US Echo)等による摂食・嚥下の運動や機能の検査も行われている。
 これらの検査法では、患者に食事もしくは食品の形態を模倣した模擬食品を検査物として摂食・嚥下させ、その間の動態や通過障害、誤嚥有無等をビデオ画像から観察することで診断を行う。その際、検査食には、画像にコントラストを付けるため造影剤が添加される。例えば、X線による撮影においてはX線をよく遮蔽する物質が検査物に添加される。
 また、嚥下機能の検査では、検査に使用する分散液やゼリーの粘度、かたさや付着性等の物性によって嚥下の動態が変化する。そのため、これらの物性指標を段階的に調整した造影模擬食品が開発されている(特許文献2)。
 さらに、これらの造影剤を添加させて調製した粘稠液やゼリーは、粘度、かたさや付着性等の物性が経時的に変化することが知られている。例えば硫酸バリウムをVF検査の造影剤とした場合に、このような報告がされている。そのため、経時的な変化が少なく安定した物性を発現できる造影剤用増粘剤の開発が試みられている(特許文献3)。
特開平11-292796 特開2006-109723 特開2001-48810
 上記のように、様々な検査物により、嚥下検査が行われている。しかしながら、これらの検査物は施設ごとに様々に調製されて使用されており、このように調製された検査物による嚥下機能の判断および食事形態の決定も、施設ごとの判断や診断をする各医師の経験則によって行なわれているため、統一化されていない。
 しかも、検査物の物性、すなわち粘度、かたさ、付着性、凝集性等は、調製者や調製手法によって異なる場合が多く、施設間だけでなく、施設内においてもこのような問題がある。さらに、これらの検査物は、調製に手間がかかる上に、呼称も様々である。
 これらのことから、摂食嚥下検査に基づく診断、食事形態の決定等に関して施設間の適切な情報共有ができず、治療施設を移動した患者は、入退院前後の移動先で再度検査を受ける必要が生じたり、移動先で不適切な形態の食事が提供されたりする等の問題があった。
 また、嚥下検査物の形態について、液体、とろみ液、とろみピューレ食・ペースト食、とろみキザミ食やゼリー等が報告されている。例えば、前出の特許文献1には、増粘剤もしくはゲル化剤によりゼリー状(ゲル状)に加工した嚥下検査物が例示され、同様に特許文献2においては流動性のあるゾル状液体の嚥下検査物が例示されている。
 しかしながら、これらはいずれもゼリー、もしくは液状の1形態のみにおいて、形態はそのままで、かたさ、付着性、粘度等の物性を変化させて複数の検査物として調製しているだけであり、物性の違いから患者の摂食障害度を評価するに留まっている。また、ゼリー状および液状の形態は必ずしも咀嚼を必要とするものではないため、このような形態の検査物では丸呑み嚥下と呼ばれる液体嚥下の動態・機能を検査できるに過ぎない。
 ヒトの正常な摂食嚥下における運動機能の基本的な過程は、大きく分けると、液体やゼリー等、咀嚼を伴わず丸呑みすることによって行われる「液体嚥下」と、固形物の咀嚼を伴う「咀嚼嚥下」の二種類となり、それぞれ異なる過程によって摂食、嚥下が行われている。
 このうち「液体嚥下」のプロセスは、「4期モデル」と呼ばれる、次の1)~4)の4つの時期から構成される。
1)口腔準備期
 口腔に食物(液体やゼリー)を取り込んでから、舌背の中央に配し、飲込みの準備ができるまでの時期
2)口腔送り込み期
 上記1)に続く、舌背中央の食物(液体やゼリー)を咽頭へ送り込む時期
3)咽頭期
 上記2)に続く、咽頭に運ばれてきた食物(液体やゼリー)を、嚥下反射によって食道まで移送する時期
4)食道期
 上記3)に続く、食物(液体やゼリー)が食道の蠕動運動や重力によって胃に運ばれる時期
 なお、これらの時期に加えて、口腔準備期の前段に“何を”“どのようなペースで”食べるかを判断する時期を先行期として加えて「5期モデル」と呼ばれることもある。
 また、「咀嚼嚥下」のプロセスは、次の1)~5)の5つの過程(時期)から構成される。
1)捕食と第1期輸送(Stage I transport)過程
 口唇や前歯で食物を口に取り込み(捕食)、直ちに舌全体が後方へ運動することによって、舌の上に乗せた食物を臼歯部へと移動させる過程
2)食物粉砕過程
 上記1)に続き、食物が臼歯部に達し、舌と頬、奥歯を使って食物を粉砕することにより食塊形成が行われる過程
 この際に唾液と食物が十分に混ざり合うことが必要であり、この過程における食物粉砕の最中に、次の第2期輸送(Stage II transport)過程が並行して始まる。
3)第2期輸送(Stage II transport)過程
 食物が咀嚼されることにより、小さく軟らかく嚥下に適した状態になりはじめる(食塊形成が開始される)過程
 咀嚼と嚥下は並行するものであり、咀嚼が行われている間にも粉砕された食物は第2期輸送により順次、咽頭へ送り込まれ、中咽頭(喉頭蓋も含む)で集積され食塊形成がなされる。
4)咽頭期
 上記3)に続き、咽頭に運ばれ集積された食塊を、嚥下反射によって食道まで移送する時期
 この咀嚼嚥下における咽頭期の嚥下運動、口腔との関連で観察すると、系列的な舌の食塊移送運動を伴った咽頭期嚥下運動(Consecutive pharyngeal swallow:CPS)と、移送を伴わない孤発的な咽頭期嚥下運動(Isolated pharyngeal swallow:IPS(以下、IPSと示す場合がある))に分類される。
5)食道期
 上記4)に続き、食塊が食道の蠕動運動や重力によって胃に運ばれる時期
 この咀嚼嚥下における4)咽頭期と5)食道期は、液体嚥下と共通した過程である。
 液体成分と固形成分を含んだ食物を咀嚼嚥下する際には、嚥下を開始する前に食物に含まれる液体成分が下咽頭にまで達する。
 これは、咀嚼中に口狭部が閉じていないため、固形成分を口腔中で咀嚼している間に、液体成分が重力の影響で下咽頭へと流れていくためであり、咀嚼中は咽頭が開いているが、液体成分は下咽頭から咽頭前庭へ近づく。
 このため、液体成分と固形成分を含んだ食物の咀嚼嚥下では、液体成分が開いた咽頭に接近することから、液体成分が気道に入り、誤嚥する危険性が高まる。
 高齢者や脳卒中患者における液体成分と固形成分を含んだ食物の咀嚼嚥下では、咽頭期においてIPSが高頻度に発生する。そのため、IPSは正常な咀嚼嚥下運動がなされなかった場合の、気道防御のための嚥下であると考えられる。また、脳卒中患者ではIPSに伴う誤嚥頻度が高いことから、IPSは誤嚥原因を判断する重要な咽頭期の嚥下運動と言える。
 また、液体を連続して飲む場合の連続嚥下と、液体を一口ずつ飲む一口飲みの場合の液体嚥下ではその動態が異なる。連続嚥下の動態には次の1)~3)に示されるようないくつかのタイプがある。
1)一回ごとの嚥下後に喉頭が下がり、閉じていた喉頭蓋が元の位置へと戻り、喉頭前庭が開くタイプ
2)嚥下が終わるごとに喉頭が多少降下するものの、そのまま喉頭蓋が元の位置に戻らずに喉頭前庭が開かないまま次の嚥下に移行するタイプ
3)上記1)および2)の両タイプの嚥下が混じりながら連続嚥下が行われるタイプ
 連続嚥下は高齢者において、喉頭侵入の割合が増えるとの報告があることから、高齢者等における誤嚥の危険性の判断にあたり重要な嚥下運動である。
 このように、食物の咀嚼嚥下は、口腔、咽頭、喉頭の各組織が連携する複雑な運動過程から成り立っており、摂取する食物の種類や量、さらには患者の状態により多様なプロセスが存在する。
 しかし、これまでの検査薬は、液体、とろみ液やゼリー等が主であり、「液体嚥下」の機能は評価できるものの、一連の咀嚼嚥下機能を評価できない等、十分かつ適切な嚥下検査ができなかった。
 また、液体と固体が混合した食事に対する嚥下機能を評価する方法においても、コーンビーフに液体バリウムを混合させたものが検査食とされているが、コーンビーフは付着性が強いため、口腔内における固体と液体との分離の動態が通常の食事における咀嚼嚥下の動態を示すものとはいえなかった。そこで、適切な嚥下動態を検査するために、より好ましい物性の検査物の提供が必要であった。
 このように、従来の検査物は、液体嚥下のうち、ひとつの嚥下動態や機能のみを検査するに過ぎないものであり、咀嚼嚥下を検査するにあたっても適切な検査物といえるものでなかった。また、摂食嚥下の運動・機能の障害の程度のすべてを網羅して検査できる検査物や検査方法も提供されておらず、具体的な摂食・嚥下障害の程度を診断する基準がなかった。
 本発明では、具体的な摂食・嚥下障害の程度を診断する基準となり得る、一連の摂食嚥下機能を検査し得る検査材を提供することにより、このような問題を解決することを課題とする。
 本発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、液体、粘稠な液体、ゼリー状半固体ないしは粘性固体のいずれかの形態を示す摂食嚥下機能の検査材、またはこれらの検査材を二種以上混合して形成される摂食嚥下機能の検査材(以下、検査材(混合物)と示す場合がある)により、具体的に摂食・嚥下障害の程度を診断する基準となり得る、一連の摂食嚥下機能を検査できることを見出した。
 そして、これらの摂食嚥下機能の検査材を摂食嚥下機能の検査用キットにより摂食嚥下の運動や機能、障害の程度を判断、検査することによって、摂食嚥下機能の低下したヒトにおいて、より精密な診断や適切な治療の提供が可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
 本発明の検査材のうち、とくに、液体、粘稠な液体、ゼリー状半固体、粘性固体のいずれかの形態を示す摂食嚥下機能の検査材を、二種類以上混合して形成される摂食嚥下機能の検査材により、実際の食事を摂食嚥下する際の咽頭の運動や機能、障害の程度等をより具体的に判断、検査することが可能となる。
 このように本発明の検査材を提供することにより、摂食嚥下機能の低下したヒト等の被験者において、詳細な障害の程度の判断が可能となり、これに基づき適切な食事形態の提示が可能となる。これによって、摂食嚥下機能の低下したヒト等における食事中の誤嚥、窒息の防止、誤嚥性肺炎の予防等に貢献することもできる。
 すなわち、本発明は次の(1)~(11)に示される検査材等に関する。
(1)液体、粘稠な液体、ゼリー状半固体ないしは粘性固体のいずれかの形態を示す摂食嚥下機能の検査材、または該検査材を二種類以上混合して形成される摂食嚥下機能の検査材。
(2)粘性固体の形態を示す検査材が、次の1.~3.のいずれか一種以上の物性を示す上記(1)に記載の摂食嚥下機能の検査材。
1.かたさが10,000N/m2~100,000N/m2で示されるものである
2.付着性が1,000J/m2~5,000J/m3で示されるものである
3.凝集性が0.2~0.6で示されるものである
(3)上記(1)または(2)に記載の粘性固体の形態を示す摂食嚥下機能の検査材と次の1.~4.のいずれかの検査材を一種以上含む摂食嚥下機能の検査用キット。
1.液体の形態を示す摂食嚥下機能の検査材
2.粘稠な液体の形態を示す摂食嚥下機能の検査材
3.ゼリー状半固体の形態を示す摂食嚥下機能の検査材
4.次の1)~4)の検査材を二種類以上混合して形成される摂食嚥下機能の検査材。
1)液体の形態を示す摂食嚥下機能の検査材
2)粘稠な液体の形態を示す摂食嚥下機能の検査材
3)ゼリー状半固体の形態を示す摂食嚥下機能の検査材
4)上記(1)または(2)に記載の粘性固体の形態を示す摂食嚥下機能の検査材
(4)粘度が、20℃~37℃で測定した際にずり速度10sec-1~50sec-1において50mPa・s以下である、上記(1)または(3)に記載の液体の形態を示す摂食嚥下機能の検査材。
(5)粘度が、20℃~37℃で測定した際にずり速度10sec-1~50sec-1において75~4,000mPa・sである、上記(1)または(3)に記載の粘稠な液体の形態を示す摂食嚥下機能の検査材。
(6)次の1.~3.のいずれか一種以上の物性を示す、上記(1)または(3)に記載のゼリー状半固体の形態を示す摂食嚥下機能の検査材。
1.かたさが2,000N/m2~10,000N/m2で示されるものである
2.付着性が400J/m3以下で示されるものである
3.凝集性が0.3~0.8で示されるものである
(7)ゲルを含んで形成される、上記(1)~(3)のいずれかに記載の粘性固体の形態を示す摂食嚥下機能の検査材。
(8)次の1.および2.の2種類のゲルを含んで形成される、上記(1)~(3)のいずれかに記載の粘性固体の形態を示す摂食嚥下機能の検査材。
1.ゲルを一端粉砕処理した後、そのまま固めて再形成した粉砕ゲル
2.分散媒ゲル
(9)上記(1)~(8)のいずれかに記載の検査材であって、造影剤、放射性物質、着色剤または発光剤を一種以上含む摂食嚥下機能の検査材。
(10)造影剤が非イオン性ヨード系造影剤である上記(9)に記載の摂食嚥下機能の検査材。
(11)着色剤が緑色系の色素である上記(9)に記載の摂食嚥下機能の検査材。
 本発明によって、摂食嚥下機能が低下したヒト等に対して、本発明の一種以上の検査材、またはこれらを複数組み合わせて提供することにより、摂食嚥下運動や機能の障害の程度を詳細に検査でき、的確に判断、診断することが可能となる。これにより、摂食嚥下機能が低下したヒトに対して、障害の程度を考慮した食事形態の適切な提示が可能となり、食事中の誤嚥、窒息の防止、誤嚥性肺炎の予防にも貢献することができる。
 本発明の「検査材」とは、ヒト等の哺乳動物における摂食嚥下機能を検査するための材のことをいい、液体、粘稠な液体、ゼリー状半固体または粘性固体のいずれかの形態を示す材のことをいう。
 本発明の「検査材」は、液体の形態を示す検査材、粘稠な液体の形態を示す検査材、ゼリー状半固体の形態を示す検査材、または粘性固体の形態を示す検査材であってもよく、さらに、これらの検査材を二種類以上混合して形成される材であってもよい。
 また、液体、粘稠な液体、ゼリー状半固体または粘性固体のいずれかの形態を示す検査材を混合せず、そのまま二種以上、単に組み合わせたものも本発明の「検査材」に含むことができる。
 なお、本発明の「検査材」の物性として、本願明細書において記載される「かたさ」、「付着性」および「凝集性」とはいずれも、厚生労働省「特別用途食品 えん下困難者用食品」の表示許可基準に記載の試験方法に準じて測定することによって示される「かたさ」、「付着性」および「凝集性」のことを指す。
 このうち「かたさ」とは、本発明の各検査材またはその一部を試料として、直径40mmの容器に高さ15mmとなるように充填した後(試料温度:20±2℃)、直線運動により物質の圧縮応力を測定することが可能な装置(例えば、クリープメーターRE2-33005B:山電)によって、この試料を直径20mm、高さ8mm樹脂性のプランジャーにより、圧縮速度10mm/sec、クリアランス5mmに圧縮した際の最大圧縮応力のことをいう。
 また、「付着性」とは、上記の「かたさ」と同様に操作して、圧縮後にプランジャーを試料から引き離す際にかかる圧縮応力と逆向きの応力と時間のグラフにおける占有面積(付着エネルギー)を示したものをいう。
 さらに、「凝集性」とは、上記の「かたさ」と同様に操作して試料を2回圧縮し、1回目に圧縮した結果示される圧縮応力と時間とのグラフにおける面積に対する、2回目に圧縮した結果示される圧縮応力と時間とのグラフにおける面積の比率のことをいう。
 また、本発明の「検査材」の物性の説明にあたり、本願明細書において記載される「ずり応力」とは、20℃~37℃の測定温度でずり速度10sec-1~50sec-1として粘度の測定が可能な粘度計によって試料の粘度を測定した結果、数値として示される「ずり応力」のことを指す。このような「ずり応力」の測定が可能な粘度計として、例えば、コーン-プレート型の回転粘度計等が例示できる。
 なお、「粘稠な液体」の形態を示す検査材における粘度測定値は、含有される増粘剤によって、一般的に粘度測定時のずり速度(回転数)により変化する。一般的に食品で使用される増粘剤を含有する「粘稠な液体」の形態を示す検査材は、ずり速度が上昇するに従い粘度が低下するShear thinningを起こす流動特性を示す。ずり速度の設定は、臨床に反映した粘度を与える条件によって行うことが好ましい。そのため本発明では、事前に、本発明の検査を必要とする高齢者や軽度嚥下障害患者を被験者として、流動特性が異なる増粘剤を添加した種々の粘稠な液体(通常臨床で使用される粘度範囲のとろみ液)をサンプルとして粘度(とろみ度合い)を比較する官能試験を行った。そして、被験者において、粘度(とろみ度合い)が同等と感じたサンプル間で粘度の測定値が一致するずり速度の範囲を調べた。その結果、嚥下の際に粘度がほぼ同等であると多くの被験者が感じたずり速度の範囲を設定して本発明の粘度測定条件とした。
 本発明のこれらの検査材のうち「液体」の形態を示す検査材は、水に類似した挙動を示し、口腔から咽頭への通過速度が速い必要がある。これにより嚥下時の口腔から咽頭への運動の反射、連携を評価することが可能となる。
 このような本発明の「液体」の形態を示す検査材は、20~37℃で測定した際にずり速度10sec-1~50sec-1において、1mPa・s以上50mPa・s以下の粘度を示すものであることが好ましい。通常飲用する水の粘度はほぼ1mPa・sであることから、その粘度より低い必要はなく、50mPa・sを超えると水分の誤嚥の検査が困難になるためである。また、6mPa・sを超える粘度では、水分の誤嚥の検出感度が鈍るため、本発明の「液体」の形態を示す検査材は1mPa・s以上6mPa・s以下の粘度を示すものであることが特に好ましい。
 本発明の「液体」の形態を示す検査材の調製においては、水が必須の成分であり、検査材の用途に応じてイオヘキソール等の造影剤、放射性物質や発色剤等や、その他の添加物を含むことができる。
 例えば水に、摂食嚥下機能の検査を効果的に成し得る造影剤、放射性物質、着色材または発色剤を加え、さらに保存安定性を向上させるリン酸緩衝液等のpH調整剤、防腐剤等の保存料や、飲用し易いように香料・甘味料等の調味料を添加した組成のものが本発明の「液体」の形態を示す検査材として例示できる。また、風味を向上させるために、このような組成にさらに、乳化材によって乳化させた風味が好ましい油脂を含有させたエマルジョン液となったものも本発明の「液体」の形態を示す検査材として例示できる。
 また、本発明のこれらの検査材のうち「粘稠な液体」の形態を示す検査材は、粘稠性とともにまとまり感があり、「液体」の形態を示す検査材と比較して口腔から咽頭への通過速度が遅い必要がある。これにより、「液体」の形態を示す検査材と同様に、被験者における嚥下時の口腔から咽頭への運動の反射、連携の障害度合いを評価することが可能となる。
 このような本発明の「粘稠な液体」の形態を示す検査材は、20~37℃で測定した際にずり速度10sec-1~50sec-1において75mPa・s以上4,000mPa・s以下の粘度を示すものであることが好ましい。75mPa・s未満では、低粘性のため咽頭通過の際に流動性が「液体」の形態を示す検査材に類似した挙動を示し、食物の誤嚥有無に関する検査が困難となる。さらに4,000mPa・sを超えると高粘性のため流動性が無くなり「ゼリー状半固体」の形態を示す検査材に類似した挙動を示し、粘稠な液体で検査する液体嚥下の検査結果が得られない。
 また、粘度150mPa・s以下でも液体の挙動が強く食物誤嚥を検出する感度が鈍り、600mPa・s以上の粘度では飲み込み難く液体嚥下の運動・動態を検査する正確性が低下するため、ずり速度50sec-1において150mPa・s以上600mPa・s以下の粘度を示すものであることが特に好ましい。
 このような本発明の「粘稠な液体」の形態を示す検査材の調製においては、水と増粘剤が必須の成分であり、検査材の用途に応じてイオヘキソール等の造影剤、放射性物質や発色剤等や、その他の添加物を含むことができる。これらの増粘剤、造影剤、放射性物質、発色剤等や、その他の添加物も特に限定されるものではなく、他の種類のものに代替することができる。
 すなわち、本発明の「粘稠な液体」の形態を示す検査材の調製において必須とされる増粘剤は、上記機能を有する本発明の「粘稠な液体」の形態を示す検査材が調製できるものであればいずれのものであってもよく、その種類や添加量は特に限定されない。また、一種以上の増粘剤を添加すればよく、二種以上の増粘剤を添加する場合、調製時においてどのような順番で添加してもよい。
 増粘剤としては、キサンタンガム、グアガム、ペクチン、ローカストビーンガム、CMCナトリウム、アルギン酸塩等が例示でき、必要に応じて加熱したり、溶解補助剤を使用して添加したりしても良い。増粘剤以外に、ゲルを形成しない程度の量のゲル化剤を添加しても良い。
 これらの増粘剤のうち、ローカストビーンガムは、ローカストビーン(イナゴマメ)を原料として調製される。これはカロブビーンとも呼ばれ、Ceratonia siliquaとして知られるマメ科植物の種子である。従って、カロブビーンガムも同様に本発明に使用でき、これらの原料から調製できるガムであれば特に限定されず、本発明の検査材の原料とすることができる。
 また、キサンタンガムは、キサントモナス・キャンペストリス(Xanthomonas campestris)が菌体外に生産する多糖類であり、キサンタンガムに該当するものであれば、特に限定されず、本発明の検査剤の原料とすることができる。
 さらに、本発明のこれらの検査材のうち「ゼリー状半固体」の形態を示す検査材は、自重では非流動で型崩れをせず、低付着性、易変形性で口腔咽頭を通過し易い必要がある。これにより、「粘稠な液体」の形態を示す検査材と同様に被験者における嚥下時の口腔から咽頭への運動の反射、連携の障害度合いを評価することが可能となり、さらに、咽頭における送り込み機能の評価、喉頭蓋反射の適格性等の機能の評価も可能となる。
 このような本発明の「ゼリー状半固体」の形態を示す検査材は、次の1)~3)のいずれか一種以上の物性を示すものであることが好ましい。
1)かたさが2,000N/m2~10,000N/m2で示されるものである。かたさが2,500N/m2~6,000N/m2で示されるものであることがより好ましい。
2)付着性が400J/m3以下で示されるものである。
3)凝集性が0.3~0.8で示されるものである。
 上記1)において、本発明の検査物の「ゼリー状半固体」の形態を示す検査材の好ましいかたさは2,000N/m2~10,000N/m2であるが、2,000N/m2未満であると、過度に軟らかくなるため、口腔内で容易に組織が崩壊し、咽頭では「ゼリー状半固体」の形態を示す検査材としての機能を失い、「粘稠な液体」の形態を示す検査材と類似した挙動を示すためである。また、10,000N/m2を超えると、丸呑み嚥下を評価する検査材としては硬く、咀嚼を伴う咀嚼嚥下を評価するための検査材になったり、被験者の障害度によっては咽頭を通過し難くなったりするため、検査ができないためである。
 さらに、2,500N/m2未満では、被験者の口腔機能障害によっては容易に崩壊することがあり、本来の「ゼリー状半固体」の形態を示す検査材としての機能を失って検査精度が低く場合がある。また、6,000N/m2を超えると、丸呑み嚥下するには咽頭通過時の運動が低い被験者にとって咽頭通過が困難となるため、検査精度が低くなる場合がある。そのため、このかたさが2,500N/m2~6,000N/m2で示されるものであることがより好ましい。
 上記2)において、本発明の検査物の「ゼリー状半固体」の形態を示す検査材の好ましい付着性は400J/m3以下であるが、400J/m3を超える場合には、付着性が高いため、丸呑み嚥下した際に咽頭に残留物を顕著に与え、その残留物により咽頭通過の動態を観察するのが困難となり、検査結果の精度が悪くなるためである。従って、「ゼリー状半固体」の形態を示す検査材の付着性は、咽頭残留を認めず、動態が観察し易い400J/m3以下であることが好ましく、より好ましくは10J/m3~100J/m3であることが好ましい。
 上記3)において、本発明の検査物の「ゼリー状半固体」の形態を示す検査材の好ましい凝集性は0.3~0.8であるが、この凝集性が0.3未満では脆く、咽頭通過時に徐々に崩壊して、その崩壊物が咽頭内に残留して咽頭通過の動態を観察するのが困難となり、検査結果の精度が悪くなるためである。
 また、凝集性が0.8を超える場合では、外部圧縮による変形に対して崩壊し難く、崩壊しても直ちに元の物性に回復することから、咽頭に閉塞を起こした場合、圧力負荷により容易に崩壊し難く、閉塞・窒息の危険性をも含むためである。
 このような本発明の「ゼリー状半固体」の形態を示す検査材の調製においては、水とゲル化剤や増粘剤が必須の成分であり、検査材の用途に応じてイオヘキソール等の造影剤、放射性物質や発色剤等や、その他の添加物を含むことができる。これらのゲル化剤、増粘剤、造影剤、放射性物質、発色剤等や、その他の添加物も特に限定されるものではなく、他の種類のものに代替することができる。
 すなわち、本発明の「ゼリー状半固体」の形態を示す検査材の調製において必須とされる増粘剤やゲル化剤は、上記機能を有する本発明の「ゼリー状半固体」の形態を示す検査材が調製できるものであればいずれのものであってもよく、その種類や添加量は特に限定されない。また、増粘剤やゲル化剤を一種以上添加すればよく、二種以上の増粘剤やゲル化剤を添加する場合、調製時においてどのような順番で添加してもよい。
 増粘剤やゲル化剤としては、寒天、カラギーナン、ゼラチン、キサンタンガム、グアガム、ペクチン、ローカストビーンガム、CMCナトリウム、アルギン酸塩等が例示でき、必要に応じて加熱したり、溶解補助剤を使用して添加したりしても良い。
 これらの増粘剤やゲル化剤のうち、寒天はテングサ、オゴノリ等の紅藻類から調製されたものであり、寒天に該当するものであれば、特に限定されず、本発明の検査材の原料とすることができる。
 そして、本発明のこれらの検査材のうち「粘性固体」の形態を示す検査材は、咀嚼を要するかたさがあり、食塊形成、咽頭での段階的な送り込みが確認でき、さらに液体と共存した場合、咀嚼中に固相と液相が分離し、液相を先に嚥下し、固相を後に嚥下する混合嚥下が確認できる必要がある。これにより、嚥下動態のプロセスモデルである咀嚼嚥下の運動、機能の障害度を評価することが可能となる。
 このような本発明の「粘性固体」の形態を示す検査材は、次の1)~3)のいずれか一種以上の物性を示すものであることが好ましく、これらの全ての物性を示すものであることが特に好ましい。
1)かたさが10,000N/m2~100,000N/m2で示されるものである。かたさが20,000N/m2~50,000N/m2で示されるものであることがより好ましい。
2)付着性が1,000J/m3~5,000J/m3で示されるものである。
3)凝集性が0.2~0.6で示されるものである。
 上記1)において、本発明の検査物の「粘性固体」の形態を示す検査材の好ましいかたさは10,000N/m2~100,000N/m2であるが、最大圧縮応力がして10,000N/m2未満のかたさでは、咀嚼せずに飲み込み摂食をした際の咀嚼機能評価が困難になる場合があるためであり、100,000N/m2を超えるかたさでは咀嚼力が低下した患者において咀嚼できず摂食機能の評価が困難になる場合があるためである。
 さらに、20,000N/m2未満のかたさでは、咀嚼を引き起こさず、咀嚼を伴わない丸呑み嚥下となる事例が認められ、50,000N/m2を超えると、咀嚼力が低下した被験者においては咀嚼し難い、もしくは咀嚼に時間を要して、不完全な食塊が形成し、それによって咽頭通過障害等が起こることにより検査時間が長くなり、検査の精度が損なわれる場合がある。そのため、このかたさが20,000N/m2~50,000N/m2で示されるものであることがより好ましい。
 上記2)において、本発明の検査物の「粘性固体」の形態を示す検査材の好ましい付着性は1,000J/m3~5,000J/m3であるが、1,000J/m3未満の付着性では、口腔内滞留時間が短く、咀嚼により十分な食塊形成を伴わないまま咽頭に移送されてしまうことから、咀嚼嚥下機能が診断し難く、かつ咀嚼嚥下における第2期輸送(Stage II transport)過程における食塊の通過挙動に対する障害の診断や、食塊の咽頭残留の可能性の診断も困難になるためである。また、検査材5,000J/m3を超える付着性では、口腔でのべたつきが強く、口腔内で多量に残留して、まとまり感のある食塊が形成させずに、咽頭通過速度の遅延がみられ、検査時間が長くなったり、検査の精度が損なわれたりするためである。
 第2期輸送(Stage II transport)は、主に固形物を咀嚼し嚥下する際に生じる運動であり、液体や粘稠な液体、ゼリー状半固体等の形態のものを咀嚼せずに嚥下する丸呑み嚥下(液体嚥下)の際には観察されない運動である。そのため、第2期輸送(Stage II transport)の運動機能を検査することは、咀嚼を必要とする固形物の摂食機能の障害度合いを評価する上で極めて重要となる。
 上記3)において、本発明の検査物の「粘性固体」の形態を示す検査材の好ましい凝集性は0.2~0.6であるが、この凝集性が0.2未満では咀嚼時に口腔内でばらばらになりすぎて食塊を形成し難く、また、凝集性が0.6を超える場合では、咀嚼によって崩壊し難い、もしくは崩壊しても直ちに元の物性に回復することから、咀嚼時の摂食機能である正常な舌運動等の食塊形成機能を判断するには適さないためである。
 このような本発明の「粘性固体」の形態を示す検査材の調製においては、水とゲル化剤や増粘剤が必須の成分であり、検査材の用途に応じてイオヘキソール等の造影剤、放射性物質や発色剤等や、その他の添加物を含むことができる。これらのゲル化剤、増粘剤、造影剤、放射性物質、発色剤等や、その他の添加物も特に限定されるものではなく、他の種類のものに代替することができる。
 すなわち、本発明の「粘性固体」の調製にあたり、使用する増粘剤やゲル化剤は、上記機能を有する本発明の「粘性固体」の形態を示す検査材が調製できるものであればいずれのものであってもよく、その種類や添加量は特に限定されない。また、添加する増粘剤やゲル化剤は一種以上であればよく、二種以上の増粘剤やゲル化剤を添加する場合、調製時においてどのような順番で添加してもよい。
 このような本発明の「粘性固体」の形態を示す検査材は、ゲルを含んで形成される検査材であればよく、例えば、次のような調製方法により調製することができる。
 カルメロースナトリウム、カロブビーンガム、キサンタンガム、グアガム等のガラクトマンナン系増粘剤および/または水溶性セルロース系増粘剤、寒天、還元麦芽水アメ等の分散剤に造影剤、放射性物質、着色剤または発光剤等の消化管内での検査材の動態を観察するための物質を添加し、必要に応じてpH調整剤、防腐剤、保存料、安定剤等を添加してゲルを形成し、これを本発明の「粘性固体」の形態を示す検査材として調製する。
 また、本発明の「粘性固体」の形態を示す検査材は、次のような調製方法によっても調製することができる。
 カルメロースナトリウム、カロブビーンガム、キサンタンガム等のガラクトマンナン系増粘剤および/または水溶性セルロース系増粘剤と、デンプン等の不溶性多糖類に造影剤、放射性物質、着色剤または発光剤等の消化管内での検査材の動態を観察するための物質を添加し、必要に応じてpH調整剤、防腐剤、保存料、安定剤等を添加してゲルを形成し、これを本発明の「粘性固体」の形態を示す検査材として調製する。
 さらに、本発明の「粘性固体」の形態を示す検査材は、ゲルを粉砕した「粉砕ゲル」を「分散媒ゲル」によって分散させることにより構築される二重のゲル構造からなる検査材であってもよい。
 ここで「粉砕ゲル」とは、増粘剤やゲル化剤等を添加してゲルを形成した後、形成したゲルを粉砕したもののことをいう。この「粉砕ゲル」には、増粘剤やゲル化剤等に加えて造影剤、放射性物質、着色剤または発光剤等の消化管内での検査材の動態を観察するための物質を添加し、必要に応じてpH調整剤、防腐剤、保存料、安定剤等を添加してゲルを形成した後、形成したゲルを粉砕したもの等も含まれる。
 また、「分散媒ゲル」とは、上記の「粉砕ゲル」を分散させるためのゲルのことをいい、増粘剤やゲル化剤等を添加して形成される。この「分散媒ゲル」に上記「粉砕ゲル」を混合し、攪拌等することにより、上記「粉砕ゲル」を分散させることができるゲル状のものであれば、本発明の「分散媒ゲル」に該当し得る。
 このような二重のゲル構造からなる「粘性固体」の形態を示す検査材は、例えば、次の1)~3)の工程を含む調製方法により調製することができる。
1)ローカストビーンガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム以外のガラクトマンナン系増粘剤および/または水溶性セルロース系増粘剤、カルメロースナトリウムに造影剤、放射性物質、着色剤または発光剤等の消化管内での検査材の動態を観察するための物質を添加し、必要に応じてpH調整剤、防腐剤、保存料、安定剤等を添加してゲルを形成した後、形成したゲルを粉砕し、粉砕ゲルとする工程
2)上記1)の粉砕ゲルに、分散媒ゲルとして寒天とローカストビーンガム以外のガラクトマンナン系増粘剤、造影剤、放射性物質、着色剤または発光剤等の消化管内での検査材の動態を観察するための物質、必要に応じてpH調整剤、防腐剤、保存料、安定剤等を混合した分散媒ゲルを添加した後、攪拌して粉砕ゲルを分散媒ゲルに分散させる工程
3)上記2)を再度ゲル化させ、粉砕ゲルと分散媒ゲルの2種類のゲルで二重のゲル構造を形成し、本発明の「粘性固体」の形態を示す検査材とする工程
 また、上記に例示したように、本発明の二重のゲル構造からなる「粘性固体」の形態を示す検査材は、例えば、
次の1)~5)の工程を含む調製方法により調製することもできる。
1)造影剤等の添加物、ゲル化剤および増粘剤を水に添加し加熱溶解後、冷却してゲル化
させる工程
2)上記1)のゲルを粉砕する工程
3)分散媒ゲルを加熱溶解する工程
4)上記2)の粉砕ゲルに上記3)の分散媒ゲルを添加混合する工程
5)上記4)の二重のゲル構造を示すゲルを容器に充填後、必要に応じて殺菌し、冷却してゲル化させる工程
 なお、本発明の二重のゲル構造からなる「粘性固体」の形態を示す検査材の調製における粉砕ゲルを調製する工程は次の1)および2)のように行うことができる。
1)水に造影剤等の添加物、ゲル化剤、増粘剤を添加し攪拌しながら分散させ、加熱しながら溶解させる。なお、ゲル化剤や増粘剤は溶解し難いので、添加する際に予め還元麦芽水アメ等の分散剤に分散して水に添加することが好ましい。また、溶解はゲル化剤が溶解する温度まで加熱する必要がある。なお、分散剤はゲル化剤や増粘剤が溶解時に溶解し難いダマを形成せず、容易に分散させる効果をするものであれば特に限定はなく、例えば、乳糖、白糖や、アルコール等も使用できる。
 ゲル化剤や増粘剤が溶解した後は、攪拌を止めて、そのまま40℃以下に冷却することでゲル化させてもよく、別途容器に移して冷却し、ゲル化させてもよい。
2)上記1)において調製したゲルを粉砕する工程に進む。粉砕は攪拌プロペラやミキサー等を用いるが、粉砕されたゲルの粒度が2~3mm以下になれば特に粉砕する機械や条件に限定はない。なお、粉砕したゲルは必要に応じて篩等を通過させ、粒度を整えることが好ましい。
 また、分散媒ゲルは、粉砕ゲルと同様の方法で、造影剤、ゲル化剤・増粘剤を溶解させる。これに、上記のように調製した粉砕ゲルを、分散媒ゲルがゲル化しない温度(50℃以上)で添加し混合する。混合した後は、適当な容器に充填し、必要に応じて加熱殺菌する。なお、加熱殺菌はゲルが溶解しない程度の条件とする。保存量や防腐剤を添加することにより、穏和な加熱条件で殺菌が可能であり、殺菌後は冷却してゲル化させることになる。
 この二重のゲル構造からなる「粘性固体」の形態を示す検査材の調製にあたり、「粉砕ゲル」に含有する増粘剤やゲル化剤は、「粘性固体」の形態を示す検査材として調製した際に、口腔内で咀嚼を引き起こす20,000N/m2~50,000N/m2のかたさと、咀嚼中にまとまり感のある0.3~0.6の凝集性の食塊を形成できるものであることが好ましい。このような増粘剤やゲル化剤としてローカストビーンガムやキサンタンガムが挙げられ、これらにさらに、寒天やカラギーナンを添加してもよい。
 そしてさらに、このような増粘剤やゲル化剤として、二重のゲル構造からなる「粘性固体」の形態を示す検査材として調製し、被験者の咽頭を通過する際に食事の食塊と同等な流動挙動を与える1,000J/m3~5,000J/m3の付着性を示すために、ローカストビーンガム以外のガラクトマンナン系増粘剤および/または水溶性セルロース系増粘剤を添加することが好ましい。
 これらの増粘剤のうち、水溶性セルロース系増粘剤には、不溶性のセルロースをエーテル化し水溶性にしたタイプの、カルメロースナトリウム(カルボシキメチルセルロースナトリウム(CMC・Na))等が例示できる。
 また、ローカストビーンガム以外のガラクトマンナン系増粘剤には、グアー(Cyamopsis tetragonolobus)から調製されるグアガムや、タラ(Casealpinia spinosa)から調製されるタラガムが例示できる。このうちグアガムを使用することが特に好ましいが、これらの増粘剤であれば、特に限定されず、いずれのものも使用することができる。
 このようにして調製された本発明の「粘性固体」の形態を示す検査材、二重のゲル構造からなる「粘性固体」の形態を示す検査材は、いずれも40℃の保存条件下で6ヶ月保存しても物性の問題となる顕著な変化はみられなかった。なお、通常のゼリーでは、同様の保存条件下で同期間保存した場合、物性が変化する。従って、本発明の「粘性固体」の形態を示す検査材、二重のゲル構造からなる「粘性固体」の形態を示す検査材は、長期間物性が安定したままで流通させることが可能な検査材となる。
 本発明では、これらの「液体」の形態を示す検査材、「粘稠な液体」の形態を示す検査材、「ゼリー状半固体」の形態を示す検査材、または「粘性固体」の形態を示す検査材の調製において、増粘剤やゲル化剤以外の原材料として、ゲル化剤や増粘剤の水への溶解を補助する還元麦芽糖水アメ等の糖類や、微生物学的な観点から保存剤・防腐剤、造影剤の安定性を高めるpH調整剤やキレート剤、風味を矯正する甘味料や香料を適宜添加することもできる。
 また、嚥下造影時の体力消耗の回復を図るための、ビタミン等の栄養素や、誤嚥時の炎症を抑える各種薬剤を添加することも可能である。
 本発明では、これらの液体、粘稠な液体、ゼリー状半固体、または粘性固体のいずれかの形態を示す検査材を組み合わせ、「摂食嚥下機能の検査用キット」とすることができる。
 本発明における「摂食嚥下機能の検査用キット」とは、食事等を摂食、嚥下するための機能がどのように働いているか、また、どの程度正常に働いているか等検査することを目的とするものであり、その検査のために必要な試料をキットとして組み合わせたもののことをいう。
 本発明の「摂食嚥下機能の検査用キット」は、本発明における液体、粘稠な液体、ゼリー状半固体、ないしは粘性固体のいずれかの形態を示す検査材、またはこれらの検査材を二種以上混合して形成される検査材を一種以上含むものであればよく、これらとその他検査に必要な試料とを組み合わせたものであってもよい。本発明の「摂食嚥下機能の検査用キット」は、特に、粘性固体の形態を示す検査材を含むものであることが好ましい。
 本発明の検査材は「検査用キット」は、さらに、本発明の検査材を容器に充填したものを二種以上組み合わせて検査用のキットとして提供することもできる。二種以上の検査材を組み合わせる場合には、ひとつの容器を隔壁で隔てて各検査材をそれぞれ充填できる容器を使用してもよい。
 本発明の液体、粘稠な液体、ゼリー状半固体、ないしは粘性固体のいずれかの形態を示す検査材、またはこれらの検査材を二種以上混合して形成される検査材、さらには、これらの検査材を一種以上含む検査用キットによって検査した結果から、検査材を摂食した被験者に適切な食事形態を提示することが可能である。
 例えば本発明の検査材のうち、「液体」の形態を示す検査材による検査結果から、被験者が摂食する飲料や食事用の液体にとろみを付ける必要があるか否かの判断ができる。
 また、「粘稠な液体」の形態を示す検査材による検査結果から、被験者が栄養を経口摂取できるか否かの判断ができる。
 さらに、「ゼリー状半固体」の形態を示す検査材による検査結果から、被験者が嚥下障害リハビリテーションにおいて、直接訓練を行うためのゼリーを摂食できるか否かの判断ができる。
 そして、「粘性固体」の形態を示す検査材による検査結果から、咀嚼や押し潰しを要する、液体やゼリーのような丸呑みではない軟らかい食材を被験者が経口摂取できるか否かかの判断ができる。
 また、「粘性固体」の形態を示す検査材と「液体」の形態を示す検査材を混合して形成される検査材による検査結果では、具と汁からなる味噌汁や煮物等、汁気の強い食事について、被験者が摂食するためにとろみを付ける必要があるか否かの判断ができる。
 本発明者らは、これらの形態を示す「検査材」はそれぞれ上記の機能を有することから、それぞれの「検査材」を組み合せて順次検査することにより詳細な摂食嚥下の障害度を判断することも可能である。
 本発明の検査材による検査や、得られた結果から被験者における摂食嚥下の障害度を判断する場合の組み合わせの具体的な例を、次の1.~4.のように示すが、組合せは例示したものに限定されることはなく、適切に組合せを選択することにより摂食嚥下機能の検査、食事形態の提示、特定部位の運動機能障害の判断等に活用できる。
1.粘稠な液体の形態を示す検査材と、ゼリー状半固体の形状を示す検査材との組合せ
 上記2種類を用いて摂食嚥下検査を行うと、次の1)~4)に示されるように、食物摂食における誤嚥の危険性や、基本的な摂食嚥下運動の機能障害を評価・判断することができる。
1)これらの検査材による検査において、両検査材ともに誤嚥または嚥下運動の機能に障害が観察された場合、食物の摂食は困難で、嚥下機能障害は極めて重症であると判断できる。
 そして、この結果から、栄養摂取の方法として経腸栄養・チューブ栄養、または経静脈栄養等を提示することができる。
2)これらの検査材による検査において、粘稠な液体の形態を示す検査材で誤嚥または嚥下運動機能に障害が観察されたが、ゼリー状半固体の形状を示す検査材では正常な嚥下が観察された場合は、食物誤嚥の危険性があり摂食嚥下障害は重症であるものの、咀嚼を必要とせず丸呑み嚥下の機能をわずかながら保持していると判断できる。
 そして、この結果から、栄養摂取の方法として均一で硬さ・付着性・凝集性を配慮した、例えばゼリー状、または酵素で食材を軟化した食事のようなもので、残留した場合に吸引が容易なものや、少量をすくってもそのまま丸飲み可能な食事形態等を提示することができる。
3)これらの検査材による検査において、粘稠な液体の形態を示す検査材では正常な嚥下が観察され、ゼリー状半固体の形状を示す検査材では誤嚥または嚥下運動機能に障害が観察された場合は、食物移送運動等に障害があり、流動物を重力で流し込むことを中心とする以外嚥下機能が低下しているため食物誤嚥が起こる等の判断ができる。
 そして、この結果から、栄養摂取の方法として液体に増粘剤を添加してとろみを付けたような食事形態、例えばとろみを付けたとろみ・ペースト状の栄養食のようなもの等を提示することができる。
4)これらの検査材による検査において、両検査材ともに正常に嚥下できた場合は、食物の誤嚥を起こすまでの重症な摂食嚥下機能障害がないもの等の判断ができる。
 そして、両検査材の口腔期における運動状態を観察する、または、液体の形態を示す検査材等他の形態の検査材を適切に組み合わせて検査することによってさらに詳細な摂食嚥下障害の重症度や、具体的な食事形態を提示する等の評価・判断が可能となる。
2.ゼリー状半固体の形状を示す検査材と液体の形態を示す検査材との組合せ
上記2種類を用いて摂食嚥下検査を行うと、次の1)~4)に示されるように、水分の誤嚥の危険性や、食物の嚥下の中で、特に液体嚥下様式の動態を示す摂食機能を評価・判断することができる。
1)これらの検査材による検査において、両検査材ともに誤嚥または嚥下運動機能に障害が観察された場合、液体嚥下の機能障害が極めて重症であると判断できる。
 そして、この結果から、あらゆる食事形態(水分を含む)をとることが難しいと判断でき、栄養摂取の方法として経腸栄養・チューブ栄養、あるは経静脈栄養を提示することができる。
2)これらの検査材による検査において、ゼリー状半固体の形態を示す検査材では誤嚥が観察されないが、液体の形態を示す検査材では誤嚥または嚥下運動機能に障害が観察された場合は、咽頭期の嚥下反射が正常でなく、液体嚥下の機能障害があると判断できる。
 この場合、さらに検査を追加し、ゼリー状半固体の形状を示す検査材の嚥下運動動態を観察する。この観察において、嚥下ができるもののその運動に異常が観察された場合には、均一で硬さ・付着性・凝集性を配慮した食事、例えばゼリー状または酵素で食材を軟化した食事のようなものであって、口腔内に残留した場合でも吸引が容易なものや、少量をすくってそのまま丸呑みすることが可能な食事形態等を提示することができる。
 また、ゼリー状半固体の形状を示す検査材の嚥下運動が正常であると観察された場合には、硬さ、付着性、凝集性に配慮した、例えばゼリー・プリン状、または酵素で食材を軟化した食事のようなものであり、スプーンですくって食塊状にすることができる食事形態を提示する等の判断ができる。
3)一方、ゼリー状半固体の形状を示す検査材で誤嚥または嚥下運動機能に障害があることが観察され、液体の形状を示す検査材では誤嚥が観察されない場合には、液体嚥下における口腔準備期または口腔送り込み期の過程に障害があると判断できる。
 また、液体以外の食事形態の摂取が困難であり、流動食による経口栄養を提示する等の判断ができる。
4)両検査材ともに誤嚥が発生しない患者では、両検査材の口腔期における運動状態を観察する、またはさらに他の形態の検査材を用いて検査することによって適時食事形態の選択を行う等の判断ができる。
3.液体の形態を示す検査材と粘性固体の形態を示す検査材との組合せ
 上記2種類を用いて摂食嚥下検査を行うと、次の1)~3)に示されるように、液体嚥下様式の中で、水分誤嚥を起こす障害の重症度について、咀嚼運動や咽頭期の嚥下との連携への機能を加えて、より詳細に評価・診断することができる。
 この組み合わせでは、特に、液体の形態を示す検査材の摂取量を変えながら検査を進めると、液体嚥下様式の内、連続嚥下の機能までも検査できるので好ましい。
1)この場合の検査では、まず少量(例えば5ml程度)の液体の形態を示す検査材によって検査を行う。その結果、誤嚥が認められた場合には、液体嚥下において、流動性の高い水分に対する咽頭期の嚥下反射や各時期の組織運動の連携等が正常に機能できないという障害があり、水分誤嚥の危険性が高いと評価することができる。
 このような少量の液体の形態を示す検査材により、誤嚥を起こす場合には、次いで、粘性固体によって咀嚼運動、咽頭への送り込み運動の観察を行う。その結果、咀嚼運動が困難な場合には摂食嚥下機能が不能で、すべての食物が経口摂取困難と判断できる。
 また、この検査において、咀嚼運動とそれに連動した組織の運動や嚥下反射がわずかながら機能していると観察された場合には、(1)まず均一で硬さ・付着性・凝集性を配慮した、例えばゼリー状または酵素で食材を軟化した食事のようなもので、口腔内に残留した場合に吸引が容易なもの、少量をすくってもそのまま丸呑み可能な食事形態を提示し、(2)次に、この(1)に、とろみを加えた食事形態とする等を提示することができる。
 この検査において、咀嚼運動とそれに連動した組織の運動や嚥下反射がある程度機能していると観察された場合には、硬さ、付着性、凝集性に配慮した、例えばゼリー・プリン状または酵素で食材を軟化した食事のようなもので、スプーンですくって食塊状にすることができる食事形態であって、かつ、水分にとろみを有する食事形態等の提示ができる。
2)上記1)の、少量の液体形態を示す検査材による検査では誤嚥がない場合には、続いて、多量(例えば10ml以上等)の液体の形態を示す検査材によって検査を行う。
 この検査において、誤嚥または嚥下運動機能に障害が観察された場合には、液体嚥下様式における短回の飲込みには問題がないが、高度な運動機能である連続嚥下に問題があり、連続した嚥下運動に対する組織連携に障害があると判断ができる。そして、この結果から、増粘剤等を添加してとろみを付けた状態で水分補給を行うことが必要になることを提示することができる。
3)さらに、適切な食事形態を評価判断するために、粘性固体による検査を行う。その結果、口腔咀嚼運動、並びに嚥下運動との連携性の障害度を観察しながら詳細な食事形態を判断することが可能である。
 この検査の結果、多量(10ml以上)の液体の形態を示す検査材で誤嚥がない場合、液体嚥下様式における連続嚥下の運動機能に問題ないと判断できる。
 また、さらに適切な食事形態を評価判断するために、粘性固体による検査を行うこともでき、この検査の結果、口腔咀嚼運動、並びに嚥下運動との連携性の障害度を観察しながら、水分にとろみ付けを行うか否かの判断や、適切な食事形態の判断を行うことが可能である。
4.上記3.の液体の形態を示す検査材と粘性固体の形態を示す検査材に、さらに、これらの検査材(2種)を混合した検査材を追加した組み合わせ
 上記3.の検査材(2種)に、さらに液体の形態を示す検査材と粘性固体の形態を示す検査材を混合した検査材を追加して摂食嚥下検査を行うと、次の1)~4)に示されるように、咀嚼嚥下の様式における嚥下障害度まで検査することができ、より詳細な食事形態の提示が可能となる。
1)少量(5ml)の液体の形態を示す検査材で誤嚥がない場合には、多量(10ml以上)の液体の形態を示す検査材と、液体の形態を示す検査材と粘性固体の形態を示す検査材を混合した検査材(以下、検査材(混合物)と示す場合がある)で検査を行う。
 両検査材ともに誤嚥、または喉頭侵入等嚥下運動機能に異常が認められる場合には、基本的な液体嚥下の機能が正常であっても連続嚥下に障害があり、しかも口腔での咀嚼運動と咽頭での嚥下運動との連携に障害がある等の評価・判断ができる。そして、この結果から咀嚼が不要な食事、例えば、ピューレ・ペースト・ムース・ミキサー食、または酵素を用いて食材を軟化した食事等で、べたつかず、まとまり易いような食事形態を提示することができる。
1)また、多量(10ml)の液体の形態を示す検査材では誤嚥または嚥下運動機能に異害が観察されるが、検査材(混合物)では誤嚥が認められない場合には、液体嚥下における連続嚥下の運動に障害があるものの、咀嚼嚥下における固形の食事の摂食は可能と評価・診断できる。
 この場合には、さらに粘性固体の形態を示す検査材で口腔期の咀嚼運動を観察し、その障害度合に応じて、次の(1)~(3)のいずれかの食事形態を提示することができる。
(1)咀嚼運動に障害が認められる場合、形があるが、歯がなくても押し潰しが可能であり、かつ食塊形成や移送が容易で、咽頭ではらばらになり辛く、嚥下し易いように配慮した食事形態のものを提供する(例えば、酵素を用いて軟化した食事等)。
(2)咀嚼運動に軽度な異常が認められる場合、誤嚥と窒息のリスクを配慮して食材と調理方法を選択した食事で、硬くなく、ばらばらになり辛く、口腔内に貼り付きにくい食事形態のものを提示する。
(3)咀嚼運動が正常である場合、普通食等の食事形態のものを提示する。
 なお、(1)~(3)のいずれの場合においても、水分にはとろみ付けをしたものを提供することが必要である。
3)一方、多量(10ml)の液体の形態を示す検査材では誤嚥しないが、検査材(混合物)では誤嚥または嚥下運動機能に異害が観察される場合には、液体嚥下の動態や運動機能は正常であるが、咀嚼嚥下における口腔期の運動と咽頭での嚥下の連携や嚥下反射に障害があると評価・判断できる。
 この場合には、さらに粘性固体の形態を示す検査材で口腔期の咀嚼運動を観察し、その障害度合に応じて、次の(1)~(3)のいずれかの食事形態を提示することができる。
(1)咀嚼が困難な場合、均一で硬さ・付着性・凝集性を配慮した、例えばゼリー状または酵素で食材を軟化したようなものであって、口腔内に残留した場合に吸引が容易なもの、少量をすくってもそのまま丸呑み可能な食事形態のものを提示する。
(2)咀嚼運動には異常が認められるが、咽頭への送り込み等その後の嚥下運動との連携性には異常が認められない場合、ピューレ・ペースト・ムース・ミキサー食、または酵素によって食材を軟化した食事等で、べたつかず、まとまり易いような食事形態を提示する。
(3)咀嚼運動が正常な場合、食材の形は維持しているが、歯がなくても押し潰しが可能で、かつ食塊形成や移送が容易で、咽頭でばらばらになりにくく、嚥下し易いように配慮した食事、例えば、酵素を用いて軟化した食事形態等を提示する。
 なお、(1)~(3)のいずれの場合においても、水分にはとろみ付けをしたものを提供することが必要である。
4)両検査材で誤嚥が認められない場合には、液体嚥下様式における水分の誤嚥、および咀嚼嚥下における固形成分と液体成分の混合における水分の誤嚥が起こらないと評価・判断できる。
 この場合は、さらに粘性固体の形態を示す検査材で口腔期の咀嚼運動を観察し、その障害度合に応じて、次の(1)~(4)のいずれかの食事形態を提示することができる。
(1)咀嚼が困難な場合、ピューレ・ペースト・ムース・ミキサー食、または酵素を用いて食材を軟化した食事等で、べたつかず、まとまり易いような食事形態のものを提示する。
(2)咀嚼運動には異常が認められるが、咽頭への送り込み等その後の嚥下運動との連携性には異常が認められない場合、食材の形は維持しているが、歯がなくても押し潰しが可能で、かつ食塊形成や移送が容易で、咽頭でばらばらになりにくく、嚥下し易いように配慮した食事、例えば、酵素を用いて軟化した食事形態のものを提示する。
(3)咀嚼運動には軽度な異常が認められるが、咽頭への送り込み等その後の嚥下運動との連携性には異常が認められない場合、誤嚥と窒息のリスクを配慮して食材と調理方法を選択した食事で、硬くない、ばらばらになり辛く、口腔内に貼り付きにくい食事を提示する。
(4)咀嚼運動が正常な場合には、普通食等の食事形態のものを提示する。
 このように、4形態の検査材や、これらを混合して形成される検査材を組み合わせて検査を行うことによって、摂食嚥下運動機能の詳細な検査、適切な食事形態の提示等が可能となる。
 さらに、4形態のすべてを組み合わせると、あらゆる摂食嚥下障害患者に対して、あらゆる食事形態の中から、詳細かつ適切な食事形態の提示等が可能になる。
 なお、上記のように、液体、粘稠な液体、ゼリー状半固体または粘性固体のいずれか一種以上の形態を示す摂食嚥下機能の検査材を二種以上混合して形成される検査材を得る場合、使用する検査材の種類や組合せは、検査する対象に応じて選択することができる。
 また、上記1~4に例示された検査材を検査に使用する順番は、あくまでも一例に過ぎず、順番を変えても同様の摂食嚥下の障害の程度の検査や分類が可能である。最初に検査に使用する検査材を、「粘稠な液体」の形態を示す検査材としても、「液体」の形態を示す検査材としても、「ゼリー状半固体」の形態を示す検査材としてもよく、いずれも同様に摂食嚥下の障害の程度の分類が可能である。
 このように本発明の「検査材」によって、上記のような摂食嚥下の障害度を分類することにより、摂食嚥下機能が低下したヒトに対し、従来にない適切な治療を行うことが可能となる。また、障害の程度を考慮した食事形態の適切な提示も可能となり、食事中の誤嚥、窒息の防止、誤嚥性肺炎の予防に貢献できる。
 すなわち、本発明の「検査材」によって、才藤の「嚥下障害の臨床的重症度分類(DSS分類)(才藤栄一,摂食・嚥下障害,最新リハビリテーション医学(米本恭三 監修),第2版,医歯薬出版,2005)における重症度分類、さらに、その中の細かな分類までが可能となる。
 本発明の「検査材」のひとつである、「粘性固体」の形態を示す検査材では、咀嚼機能、咀嚼嚥下での咽頭送り込み機能の検査も可能である。「粘性固体」の形態を示す検査材は、嚥下のみでなく、例えば食事場面で誤嚥が疑われる等、咽頭送り込みの問題の評価、咀嚼の影響の判断が必要な場合の検査に利用できる。
 さらに、本発明の「液体」の形態を示す検査材または「粘稠な液体」の形態を示す検査材という液体の検査材と、「ゼリー状半固体」の形態を示す検査材または「粘性固体」の形態を示す検査材という固体の検査材とを混合して形成される検査材を摂食させる検査においては、固体咀嚼、食塊形成の間に、液体が分離し咽頭に移動して、固体でみられる系列的な食塊移送運動を伴わないが、それと類似の嚥下反射(孤発的咽頭嚥下(Isolated pharyngeal swallow;IPS)が生じることから、このような検査材によって、このIPSの機能状態の診断も可能である。
 本発明の「液体」の形態を示す検査材、「粘稠な液体」の形態を示す検査材、「ゼリー状半固体」の形態を示す検査材、または「粘性固体」の形態を示す検査材は、必要に応じて、造影剤、放射性物質、着色剤、発光剤等、消化管内での製剤の動態を観察できる物質を含むことができる。
 これらの物質は、本発明の「液体」の形態を示す検査材、「粘稠な液体」の形態を示す検査材、「ゼリー状半固体」の形態を示す検査材、または「粘性固体」の形態を示す検査材がそれぞれの機能を発揮するために、物性を安定して維持できるように添加すればよく、各検査材の調製時に他の成分と一緒に添加してもよく、各検査材を調製した段階で添加しても良い。
 この造影剤、放射性物質、着色剤、発光剤等、消化管内での製剤の動態を観察できる物質は、嚥下検査の手法に応じて選択することができる。
 例えば、X線透視装置を使用した嚥下造影検査(VF)や、コンピュータ断層撮影(Computed Tomography、CT)を行う場合、硫酸バリウムやヨード系造影剤を添加することが好ましい。この場合、不溶性の硫酸バリウムは誤嚥した際、肺に長期間硫酸バリウムが残存し、炎症を誘発するため、肺からの消失が早いヨード系造影剤を用いるのが好ましい。ヨード系造影剤の中でも、低浸透圧の非イオン性のものが肺への影響が少なくさらに好ましい。なお、コストや風味を考慮すると、比較的安価で、苦味等の不快な風味が少ないイオヘキソールがより好ましい。このような造影剤を、本発明の検査材に添加する濃度は機器の性能により異なるが、一般的には3w/v%~80w/v%、VF検査では30w/v%~50w/v%であることが好ましく、CTでは3~10w/v%であることが好ましい。
 嚥下検査には、核磁気共鳴画像法(Magnetic resonance imaging,MRI)も使用できる。この場合、造影剤には、塩化マンガン四水和物、ガドニリウム、クン酸鉄アンモニウム等を添加することが好ましい。さらに、超音波検査法(Ultrasonography、US Echo)では、ペルフルブタン(C410)ガス等を含む微小気泡の懸濁液(ソナゾイド)等を添加することが可能である。
 嚥下内視鏡検査(Video Endoscopy, VE)では、検査材と生体組織との区別を付けるために検査材に色素を添加し着色するとその動態が良く観察できて好ましい。この場合、生体組織の色調の補色である緑色を着色すると検査材が鮮明に観察できてさらに好ましい。
 本発明の「液体」の形態を示す検査材、「粘稠な液体」の形態を示す検査材、「ゼリー状半固体」の形態を示す検査材、および「粘性固体」の形態を示す検査材はいずれも、各物性を長期間維持できる保存安定性の高い検査材であることが好ましい。
 例えば、本発明の「ゼリー状半固体」の形態を示す検査材、および「粘性固体」の形態を示す検査材の調製においては、非イオン性ヨード系造影剤のうち、特にイオヘキソールを中性域で添加すると、得られた検査材の物性を長期間極めて安定に維持することが可能となる。特に、ゼリー状半固体、および粘性固体の物性の安定性には顕著な効果があることを見出した。
 また、「液体」の形態を示す検査材では、造影剤等検査に必要な添加物を安定に保つ物質として、例えば、pH調整剤、キレート剤、保存剤や防腐剤を添加することが好ましく、必要に応じて、調製した検査材を加熱殺菌もしくは滅菌することも好ましい。
 さらに、「粘稠な液体」の形態を示す検査材においては、粘度等の物性を長期間安定に維持するために、キサンタンガムを増粘剤として含有することが好ましく、造影剤として非イオン性ヨード系造影剤、特にイオヘキソールを含有することも好ましい。
 キサンタンガムに加え、キサンタンガムの糸を引くような強い曳糸性による、検査材の咽頭内での残留を抑制するために、曳糸性を軽減する、グアガム等のガラクトマンナン系増粘剤やグルコマンナンをゲル化しない範囲で添加することも好ましい。これらのガラクトマンナン系増粘剤やグルコマンナンを添加する量はキサンタンガムと混合する増粘剤の種類によって異なるが、例えば、グアガムを使用した場合、グアガムの添加量はキサンタンガムに対して重量比で10%~80%、特に10%~30%となるように混合することが好ましい。
 また、「ゼリー状半固体」の形態を示す検査材においては、長期間、かたさ、付着性、凝集性等の物性を維持するために、寒天、ローカストビーンガム、キサンタンガムのゲル化剤、グアガム、カルボキシメチルセルロース(CMC-Na)等の増粘剤を含有することが好ましい。また、非イオン性ヨード系造影剤、特にイオヘキソールを添加物とすることも好ましい。
 一般的なゼリー食品では保存期間が進むに従い、ゼリー内部から水分が分離し、ゼリーと水分の2層に分かれる離水減少を生じることが多いが、上記増粘剤等を添加した本発明の「ゼリー状半固体」の形態を示す検査材は保存中に離水の発生が少なく、さらにイオヘキソールを添加したものは、長期間の物性の安定性が上がり、しかも離水の増加もほとんど認められない。
 さらに、「粘性固体」の形態を示す検査材においては、食事を咀嚼した際と同様の傾向を示すために、咀嚼によって容易に粉砕でき、食事を咀嚼した際に生じる食塊と同様に付着性を保持している細かいゲルが粉砕物として形成し得るものであることが好ましい。
 このような細かいゲルを得るために、ゲル構造中にデンプン等の不溶性多糖類を不溶物のまま分散させておくことが好ましい。これによって、咀嚼の際、粘性固体のゲル構造と不溶性多糖類の接着境界でゲルの破壊が容易に起こり、付着性を保持している細かいゲルが粉砕物として形成され易くなる。
 また、「粘性固体」の形態を示す検査材が、「粉砕ゲル」と「分散媒ゲル」により構築される二重のゲル構造からなる検査材である場合には、長期間、かたさ、付着性、凝集性等の物性を安定して維持するために、粉砕ゲルにローカストビーンガム、キサンタンガム、水溶性セルロース系増粘剤、ローカストビーンガム以外のガラクトマンナン系増粘剤を使用することが好ましく、分散媒ゲルに寒天、セルロース系増粘剤、ガラクトマンナン系増粘剤を使用することが好ましい。
 そして、これらの「粘性固体の形態を示す検査材」には、非イオン性ヨード系造影剤、特にイオヘキソールを添加物とすることも好ましい。
 このような増粘剤やゲル化剤を含む二重のゲル構造からなる「粘性固体」の形態を示す検査材は、次の1)~3)の理由により、固体としての要素が強く、高い保存性安定性が得られるものと考えられる。
1)粉砕ゲルに、硬く弾力性と付着性を有するゲル構造を形成するローカストビーンガムとキサンタンガムを組合せて重力や振動衝撃に耐久性があるゲルとしたこと。
2)分散媒ゲルにおいて、上記1)の粉砕ゲルおよび水分子ともに水素結合等で保持させることが可能なローカストビーンガム以外のガラクトマンナン系増粘剤や水溶性セルロース系増粘剤、特にグアガムやカルボキシメチルセルロースの組合せを配合し、ゲル構造内で長期間水分子の運動や移動を抑制させたこと。
3)非イオン性でありながら水との親和性が高いヨード系造影剤、特にイオヘキソールを添加することにより、水分子と強く結合し、水分活性を低下させたこと。
 長期間、物性の保存安定性が向上した各形態の検査材には、造影剤として非イオン性ヨード系造影剤、特にイオヘキソールを添加することが好ましい。造影剤の濃度は検査時の造影能に強く影響を及ぼす。添加する造影剤がイオヘキソールの場合、検査材への含量が20w/v%以下では、嚥下造影検査において検査材の口腔、咽頭、食道における動態を評価診断に十分な造影能には至らなかった。一方、80w/v%以上では嚥下造影検査において評価診断に十分な造影能は有するものの、造影剤独特の苦味等の風味の影響を受け、摂食し難い風味となる傾向があった。また、80w/v%以上の高濃度では、増粘化またはゲル化に対して調製毎に物性が変動し易いことも見出された。従って、これらの検討の結果、検査材に含有する造影剤の濃度は20w/v%~80w/v%であることが好ましく、風味の変化や物性の安定性も考慮すると、十分な造影能を有する30w/v%~60w/v%濃度であることが最も好ましかった。
 なお、イオヘキソールを含むこれらの検査物は、わずかに苦味があり、その苦味が摂食嚥下状態に影響を及ぼす可能性もある。その場合、必要に応じて、甘味料や香料を添加して苦味をマスキングすることができる。甘味料や香料の種類や添加量には特に限定なく、いずれも使用できるが、より効果的に苦味をマスキングするためには、甘味料としてソーマチン、香料として苦味と調和する香料、例えば、黒糖フレーバー、チョコレートフレーバー、お茶フレーバーや、紅茶フレーバー等の香料を添加すると、飲用または摂食し易くなるので好ましい。
 本発明において、「粘性固体」の形態を示す検査材と、非イオン性ヨード系造影剤を上記濃度で含む「液体」の形態を示す検査材を混合した「検査材」は、嚥下造影検査において、口腔および咽頭において「粘性固体」の形態を示す検査材からなる咀嚼物と非イオン性ヨード系造影剤を上記濃度で含む液体とが分離し、液体と固体が別々に嚥下される様子を観察することができることから、日常の食事において、うどんのような固体と液体を同時に摂食する食品による誤嚥発生の有無等の検査診断が可能であることを明らかとできた。
 このような本発明の検査材においては、本発明の「粘性固体」の形態を示す検査材と非イオン性ヨード系造影剤を上記濃度で含む液体との混合比率を、重量比で8:2から2:8の範囲、好ましくは、7:3~5:5の範囲とすることが好ましい。
 また、本発明の検査材は、検査において嚥下造影中に被験者が検査物を誤嚥することで、呼吸困難や窒息、異物混入による炎症惹起で誤嚥性肺炎を引き起こし、死に至る等の危険を避けるため、安全に摂食できる検査材とする必要がある。
 本発明者の「ゼリー状半固体」の形態を示す検査材、および「粘性固体」の形態を示す検査材は、健常人を対象とした誤嚥時の気道閉塞の危険性評価(官能試験)において、いずれも窒息を引き起こし易いコンニャクのような弾力性を感じることなく、小さい変形により容易に崩壊することが検証できた。従って、これらの検査材は、誤嚥時にも容易に崩壊し、気道閉塞等に伴う呼吸困難や窒息の危険性は極めて少ないことが確認できたものであった。
 また、ラットを対象とした誤嚥時の肺への影響を評価したところ、イオヘキソールを添加した「液体」の形態を示す検査材は、肺投与直後に一過性の肺への障害を引き起こすものの、その程度は水を誤嚥した場合と同程度の障害であり、しかも比較的速やかに、通常の誤嚥量であれば誤嚥後6時間~8時間以内に肺から消失することを見出した。従って、ヨード系造影剤、特に非イオン性であり浸透圧が低いイオヘキソールのような造影剤を配合することにより、肺への影響が低く、誤嚥時も比較的安全な検査材が提供できることが確認できた。
 このような本発明の「液体」の形態を示す検査材、「粘稠な液体」の形態を示す検査材、「ゼリー状半固体」の形態を示す検査材、および「粘性固体」の形態を示す検査材はいずれも、そのまま検査に使用できるように、5g~20gずつ個別に容器、チューブ等に充填して提供することができる。また、20g以上の量を容器、チューブ等に充填して提供することもできる。容器の形状は特に限定されない。
 本発明の検査材で検査を行う際の一例として、本発明の検査材を一口大(5g~6g)に分けてスプーンで被験者に投与することが挙げられる。例えば、VF検査のための検査材であれば、被験者が摂食嚥下する状態をX線造影検査装置で造影する。被験者に投与された本発明の検査材には十分量の造影剤が含有されているために、X線造影検査装置の種類によらず検査することが可能である。
 また、本発明の「粘性固体」の形態を示す検査材と「液体」の形態を示す検査材を混合した検査材による嚥下造影検査の一例として、「粘性固体」の形態を示す検査材4gに対して「液体」の形態を示す検査材5mLを被験者に投与するが、「粘性固体」の形態を示す検査材と「液体」の形態を示す検査材の量と混合比率は被験者の状態や検査する内容によって適宜変更することができる。
 被験者にこの検査材を投与した後、咀嚼し嚥下する状態をX線造影検査装置で造影する。これらの検査材には十分量の造影剤が含有されているために、X線造影検査装置の種類によらず検査することが可能である。
 なお、被験者の状態によって、混合する検査材の種類を選択することが出来、「粘性固体」の形態を示す検査材と、「液体」の形態を示す検査材との混合に限定されず、各形態の検査材から複数種類混合して嚥下検査に使用することも可能である。
 また、本発明の検査材に含まれる造影剤の濃度に対して、混合するその他の形態の造影剤の濃度が異なるように調製することで、各検査材を混合することにより、造影濃淡の違いから各形態の検査材の動態をそれぞれ区別して診断することも可能である。
 以下、本発明に関して実施例、試験例を例示して説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
[試験例1]
液体の形態を示す検査材
 次の1.~3.の工程により液体の形態を示す検査材を調製した。
1.水66.9gにpH調整剤(リン酸二水素ナトリウム二水和物(和光純薬製)42mgおよびリン酸水素二ナトリウム一二水和物(和光純薬製)144mg)を添加し、pH7.0に調整した後、イオヘキソール(インターファーマ・プラハ製)32.8gを添加溶解した。
2.次いで、ソーマチン(三栄源FFI製)0.4mg、黄色4号(三栄源FFI製)9mg、青色1号(三栄源FFI製)3mg、エテド酸カルシウム二ナトリウム(和光純薬製)8.2mg、パラベン(上野製薬製)適量を添加して90℃に加熱しながら攪拌溶解し、冷却後紅茶フレーバー香料(長谷川香料製)33.4mgを添加した。
3.これに重量が100gになるように水を添加し、均質に攪拌して液体の形態を示す検査材を調製した。
 上記1.~3.の工程により調製された液体の形態を示す検査材は、イオヘキソール含量が40w/v%であり、粘度は20℃で測定した際にずり速度10sec-1において3.8mPa・sであり、ずり速度50sec-1において3.4mPa・sであった。また、37℃で測定した際の粘度はずり速度10sec-1において2.3mPa・sであり、ずり速度50sec-1においても2.3mPa・sであった。このようにして調製された液体の形態を示す検査材を、プラスティック製ボトルにそれぞれ20mlとなるように充填した。
[試験例2]
粘稠な液体の形態を示す検査材
 次の1.~3.の工程により粘稠な液体の形態を示す検査材を調製した。
1.水66.5gにpH調整剤(リン酸二水素ナトリウム二水和物(和光純薬製)42mgおよびリン酸水素二ナトリウム一二水和物(和光純薬製)144mg)を添加し、pH7.0に調整した後、イオヘキソール(インターファーマ・プラハ製)32.8gを添加溶解した。
2.次いで、ソーマチン(三栄源FFI製)0.4mg、黄色4号(三栄源FFI製)9mg、青色1号(三栄源FFI製)3mg、エテド酸カルシウム二ナトリウム(和光純薬製)8.2mg、パラベン(上野製薬製)適量を添加した後、増粘剤であるキサンタンガム(DSP五協フード&ケミカル製)0.56gおよびグアガム(伊那食品工業製)62.2mgを添加して90℃に加熱しながら攪拌溶解し、冷却後紅茶フレーバー香料(長谷川香料製)33.4mgを添加した。
3.これに重量が100gになるように水を添加し、均質に攪拌して粘稠な液体の形態を示す検査材を調製した。
 上記1.~3.の工程により調製された粘稠な液体の形態を示す検査材は、イオヘキソール含量が40w/v%で、粘度は20℃で測定した際にずり速度10sec-1において1700mPa・sであり、ずり速度50sec-1においては360mPa・sであった。また、37℃で測定した際の粘度はずり速度10sec-1において674mPa・sであり、ずり速度50sec-1においても198mPa・sであった。このようにして調製された粘稠な液体の形態を示す検査材を、プラスティック製ボトルにそれぞれ20mlとなるように充填した。
[試験例3]
ゼリー状半固体の形態を示す検査材
 次の1.~3.の工程によりゼリー状半固体の形態を示す検査材を調製した。
1.水66.8gにpH調整剤(リン酸二水素ナトリウム二水和物(和光純薬製)42mgおよびリン酸水素二ナトリウム一二水和物(和光純薬製)144mg)を添加し、pH7.0に調整した後、イオヘキソール(インターファーマ・プラハ製)32.8gを添加溶解した。
2.次いで、ソーマチン(三栄源FFI製)0.4mg、黄色4号(三栄源FFI製)9mg、青色1号(三栄源FFI製)3mg、エテド酸カルシウム二ナトリウム(和光純薬製)8.2mg、パラベン適量を添加した後、ゲル化剤や増粘剤である寒天(伊那食品工業製)0.14g、キサンタンガム(DSP五協フード&ケミカル製)0.04g、ローカストビーンガム(別名:カロブビーンガム、MRCポリサッカライド製)0.02g、カルメロースナトリウム(第一工業薬品製)0.02gおよびグアガム(伊那食品工業製)0.02gを還元麦芽水飴粉末(三菱フードテック製)で分散後に添加して90℃に加熱しながら攪拌溶解した。
3.上記2.において得られた溶液は冷却せずそのままプラスティック製ゼリーカップ容器に20ml充填し、これを冷却することによりゼリー状半固体の形態を示す検査材とした。
 上記1.~3.の工程により調製されたゼリー状半固体の形態を示す検査材は、イオヘキソール含量が40w/v%で、かたさは3,200N/m2、付着性は60J/m3、凝集性は0.4であった。
[試験例4]
粘性固体の形態を示す検査材(1)~(3)
 500mlステンレスビーカーにイオヘキソール(インターファーマ・プラハ製)75.45gと水145.63gを加え攪拌溶解した。次いで、ソーマチン0.8mg、黄色4号(三栄源FFI製)18mg、青色1号(三栄源FFI製)6mg、エテド酸カルシウム二ナトリウム水和物(和光純薬製)10mg、pH調整剤のトロメタモール121.1mg、パラベン(上野製薬製)適量を添加した。その後、これにゲル化剤と増粘剤を表1に記載した比率で混合したゲル原材料ミックス(3種類)をそれぞれ20.0g添加して攪拌しながら懸濁分散させた。これを沸騰するまで加熱し溶解させた後、60℃まで冷却して、紅茶フレーバー香料(長谷川香料製)66.8mgを添加し、蒸発した水分量を補水して全体量240gになるように熱水で添加調整した。次いで、25g入るカップに充填し、85℃15分殺菌して冷却し室温で放置してゲル化させた。これにより、3種類の粘性固体の形態を示す検査材(1)~(3)を得た。
 上記により調製した粘性固体の形態を示す検査材(1)~(3)の物性を試験例1と同様の条件で測定した。
 これらの粘性固体の形態を示す検査材(1)~(3)は、いずれもイオヘキソール含量が40w/v%で、表2に示したように、いずれも粘性固体の形態を示す検査材としてかたさ、付着性、凝集性等において好ましい物性を示すものであった。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000001
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000002
[試験例5]
粘性固体の形態を示す検査材(4)~(6)
 ゲル化剤と増粘剤を表3に記載した比率で混合したゲル原材料ミックス(3種類)をそれぞれ全量使用した以外は、粘性固体の形態を示す検査材(1)~(3)の調製と同様の方法により、3種類の粘性固体の形態を示す検査材(4)~(6)を調製した。その後、調製した粘性固体の形態を示す検査材(4)~(6)の物性を試験例1と同様の条件で測定した。
 これらの粘性固体の形態を示す検査材(4)~(6)は、いずれもイオヘキソール含量が40w/v%で、表4に示したように、いずれも粘性固体の形態を示す検査材としてかたさ、付着性、凝集性等において好ましい物性を示すものであった。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000003
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000004
[試験例6]
粘性固体の形態を示す検査材(7)
 次の1.~3.の工程により二重のゲル構造からなる粘性固体の形態を示す検査材を調製した。
1.粉砕ゲルの調製
 次の1)~4)の工程により粉砕ゲルを調製した。
1)水63.6gにpH調整剤(リン酸二水素ナトリウム二水和物(和光純薬製)40mgおよびリン酸水素二ナトリウム一二水和物(和光純薬製)137mg)を添加し、pH7.0に調整した後、イオヘキソール(インターファーマ・プラハ製)31.2gを添加溶解した。
2)次いで、ソーマチン(三栄源FFI製)0.4mg、黄色4号(三栄源FFI製)9mg、青色1号(三栄源FFI製)3mg、エテド酸カルシウム二ナトリウム(和光純薬製)7.8mg、パラベン(上野製薬製)適量を添加して90℃に加熱しながら攪拌溶解し、次いで紅茶フレーバー香料(長谷川香料製)33.4mgを添加した。
3)これにさらにゲル化剤や増粘剤であるキサンタンガム(DSP五協フード&ケミカル製)2.5g、ローカストビーンガム(別名:カロブビーンガム、MRCポリサッカライド製)2.5gを添加して80℃になるまで加熱しながら攪拌し、重量が100gになるように熱水で補水した。これを攪拌して均質にした後、冷却してゲル化させた。
4)上記1)~3)の工程を経て形成したゲルを、ミキサーで粉砕し粉砕ゲルを調製した。
2.分散媒ゲルの調製
 次の1)~3)の工程により分散媒ゲルを調製した。
1)水67.2gにpH調整剤(リン酸二水素ナトリウム二水和物42mgおよびリン酸水素二ナトリウム一二水和物145mg)を添加し、pH7.0に調整した後、イオヘキソール31.2gを添加溶解した。
2)次いで、ソーマチン(三栄源FFI製)0.4mg、黄色4号(三栄源FFI製)9mg、青色1号(三栄源FFI製)3mg、エテド酸カルシウム二ナトリウム(和光純薬製)7.8mg、パラベン(上野製薬製)適量を添加して90℃に加熱しながら攪拌溶解し、次いで紅茶フレーバー香料33.4mgを添加した。
3)これにさらにゲル化剤や増粘剤であるグアガム(伊那食品工業)1.0g、キサンタンガム0.25g、寒天(伊那食品工業製)0.15gを添加して90℃になるまで加熱しながら攪拌し、重量が100gになるように熱水で補水した。これを攪拌して均質にし、分散媒ゲルを調製した。
3.粘性固体の形態を示す検査材の調製
 上記1.で調製した粉砕ゲル4重量部と、上記2.で調製した分散媒ゲル1重量部をこの比率で混合した。分散媒ゲルは加熱し、ゲル化していない状態のものを混合した。この混合物をミキサーで攪拌することで調製された懸濁物を冷却することなくそのままプラスティック製ゼリーカップ容器に20g充填し、これを冷却することにより粘性固体の形態を示す検査材とした。
 上記1.~3.の工程により調製された粘性固体の形態を示す検査材(7)は、イオヘキソール含量が40w/v%で、かたさは33,000N/m2、付着性は3,800J/m3、凝集性は0.5であった。
[試験例7]
粘性固体の形態を示す検査材(8)
 次の1.~3.の工程により二重のゲル構造からなる粘性固体の形態を示す検査材を調製した。
1.500mlステンレスビーカーにイオヘキソール(インターファーマ・プラハ製)40gと水52gを加え攪拌溶解した。その後、これにゲル化剤や増粘剤を表5に示した比率で混合した粉砕ゲル原材料ミックス8.0gと、試験例1に示したpH調整剤、キレート剤、防腐剤、香料、甘味料、着色料を試験例1と同量添加して攪拌しながら懸濁分散させた。これを沸騰するまで加熱し溶解させた後、60℃まで冷却し、蒸発した水分量を補水して全体の重量を100gとした。これを均質に混合した後、冷却しゲル化させた。このようにして形成したゲルを、ミキサーで粒径1mm程度の粒子に粉砕し粉砕ゲルを調製した。
2.表6に示したゲル化剤や増粘剤を含む材料、および試験例6の分散剤と同様にpH調整剤、キレート剤、防腐剤、香料、甘味料、着色料を徐々に添加しながら懸濁分散させた。その後これを沸騰するまで加熱し溶解させた後、60℃まで冷却し、蒸発した水分を補水して全体の重量を124.3gとして、分散媒ゲルを調製した。
3.上記1.で調製した粉砕ゲル100gをミキサーに入れ、そこに上記2.で調製した分散媒ゲル31gを添加した。分散媒ゲルは、調製されたままの、ゲル化していない状態のものを添加した。ミキサーで粉砕ゲルと分散媒ゲルを素早く混合し、25g入るカップに充填し、85℃15分殺菌して冷却し室温で放置してゲル化させた。
 上記1.~3.の工程により調製された粘性固体の形態を示す検査材(8)は、イオヘキソール含量が40w/v%で、かたさは21,000N/m2、付着性は1,800J/m3、凝集性は0.4であった。いずれも粘性固体として好ましい物性であった。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000005
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000006
[試験例8~12]
 試験例7、表5に示した粉砕ゲル原材料ミックスの組成を表7の試験例8~12に示した組成に変更した以外は、試験例7の粘性固体の形態を示す検査材(8)の調製と同様の方法により、比較試料1~5を調製した。調製した比較試料の物性を試験例1と同様な条件で測定した。
 その結果、表8に示したように、いずれも粘性固体の形態を示す検査材として好ましい物性を示すものではなかった。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000007
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000008
[試験例13~15]
 試験例7、表5に示した分散媒ゲルの組成を表9の試験例13~15に示した組成に変更した以外は、試験例7の粘性固体の形態を示す検査材(8)の調製と同様の方法により、比較試料6~8を調製した。調製した比較試料の物性を試験例1と同様な条件で物性を測定した。
 その結果、表10に示したように、いずれも粘性固体の形態を示す検査材として好ましい物性を示すものではなかった。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000009
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000010
[試験例16]
VF検査(1)
 上記の試験例7において、イオヘキソールの代わりにイオヘキソールを含む市販のオムニパーク(登録商標)350(イオヘキソール75.49w/v%含有)を用いてイオヘキソール含有量を40w/v%になるように水添加量を調整した以外は、試験例7と同様に調製した粘性固体の形態を示す検査材(8)により、健常人におけるVF検査を医療機関で行い、咀嚼嚥下の動態が観察されるか否かを評価した。
 VF装置はデジタルX線TVシステムとデジタルビデオレコーダーを使用した。VF検査は粘性固体の形態を示す検査材5gをスプーンで被験者に口腔内に与え、「味わうように噛んで食べてください」と被験者に指示し、自由摂食以降に生じる自由なタイミングでの嚥下をVF検査装置で観察した。
 その結果、粘性固体の形態を示す検査材(8)を投与した後、咀嚼運動によって食塊が形成され、その後、咀嚼しながら上咽頭において食塊のStage II transportが観察された。次いで、咽頭に集積された食塊が嚥下されていく様子が観察された。
 従ってこの結果より、本発明の粘性固体の形態を示す検査材は十分に造影されてVF検査に使用できることが確認できた。
[試験例17]
VF検査(2)
 検査材として、試験例7において、イオヘキソールの代わりにイオヘキソールを含む市販のオムニパーク350(イオヘキソール75.49w/v%含有)を用いてイオヘキソール含有量を40w/v%になるように水添加量を調整した以外は、試験例7と同様に調製した粘性固体の形態を示す検査材(8)4gと、試験例1において、イオヘキソールの代わりにイオヘキソールを含む市販のオムニパーク350(イオヘキソール75.49w/v%含有)を用いてイオヘキソール含有量を40w/v%になるように水添加量を調整した以外は、試験例1と同様に調整した液体の形態を示す検査材5mlとを混合して形成される検査材を調製した。
 この検査材を試験例15と同じ装置を用いて、健常人におけるVF検査を行い、液体の形態を示す検査材と粘性固体の形態を示す検査材のそれぞれにおける咀嚼嚥下する動態が観察できるか否かを調べた。VF検査は粘性固体の形態を示す検査材4gをスプーンで被験者に口腔内に与え、次いで直ちに液体の形態を示す検査材5mlを口腔前庭内にシリンジで注入した後、「味わうように噛んで食べてください」と被験者に指示し、自由摂食以降に生じる自由なタイミングでの嚥下をVF検査装置で観察した。
 その結果、この試験における検査材に含まれる、粘性固体の形態を示す検査材(8)を投与した後、咀嚼運動によって食塊が形成され、その間液体が粘性固体と分離し、液体のみの嚥下が観察された。また、上咽頭において食塊のStage II transportが観察され、次いで喉頭蓋に集積された食塊が嚥下していく様子が観察された。
 従って、この結果より、本発明の液体の形態を示す検査材と粘性固体の形態を示す検査材を混合して形成される検査材において、混合された各検査材は十分に造影されていた。また、これらの検査材は典型的な咽頭嚥下の動態を示していた。
 本発明品の液体、粘稠な液体、ゼリー状半固体、粘性固体の各形態を示す一種以上の検査材、またはこれらを複数組み合せることにより、摂食機能が低下したヒト等において食事や飲料を摂食する際の咀嚼嚥下運動や機能、障害の程度を詳細に検査することが可能となる。
 これらの検査材に、造影剤、放射性物質、着色剤、発光剤等を添加することで、X線透視や内視鏡、MRI等を用い消化管内での咀嚼嚥下の動態を観察し、咀嚼嚥下運動や機能、障害の程度を検査するのも容易となる。
 そして、この検査結果をもとに、摂食機能が低下したヒト等において精密な診断や適切な治療が可能となり、障害の程度を考慮した食事形態の適切な選択することにより、食事中の誤嚥、窒息の防止、誤嚥性肺炎の予防に貢献することができる。

Claims (11)

  1. 液体、粘稠な液体、ゼリー状半固体ないしは粘性固体のいずれかの形態を示す摂食嚥下機能の検査材、または該検査材を二種類以上混合して形成される摂食嚥下機能の検査材。
  2. 粘性固体の形態を示す検査材が、次の1.~3.のいずれか一種以上の物性を示す請求項1に記載の摂食嚥下機能の検査材。
    1.かたさが10,000N/m2~100,000N/m2で示されるものである
    2.付着性が1,000J/m2~5,000J/m3で示されるものである
    3.凝集性が0.2~0.6で示されるものである
  3. 請求項1または2に記載の粘性固体の形態を示す摂食嚥下機能の検査材と次の1.~4.のいずれかの検査材を一種以上含む摂食嚥下機能の検査用キット。
    1.液体の形態を示す摂食嚥下機能の検査材
    2.粘稠な液体の形態を示す摂食嚥下機能の検査材
    3.ゼリー状半固体の形態を示す摂食嚥下機能の検査材
    4.次の1)~4)の検査材を二種類以上混合して形成される摂食嚥下機能の検査材。
    1)液体の形態を示す摂食嚥下機能の検査材
    2)粘稠な液体の形態を示す摂食嚥下機能の検査材
    3)ゼリー状半固体の形態を示す摂食嚥下機能の検査材
    4)請求項1または2に記載の粘性固体の形態を示す摂食嚥下機能の検査材
  4. 粘度が、20℃~37℃で測定した際にずり速度10sec-1~50sec-1において50mPa・s以下である、請求項1または3に記載の液体の形態を示す摂食嚥下機能の検査材。
  5. 粘度が、20℃~37℃で測定した際にずり速度10sec-1~50sec-1において75~4,000mPa・sである、請求項1または3に記載の粘稠な液体の形態を示す摂食嚥下機能の検査材。
  6. 次の1.~3.のいずれか一種以上の物性を示す、請求項1または3に記載のゼリー状半固体の形態を示す摂食嚥下機能の検査材。
    1.かたさが2,000N/m2~10,000N/m2で示されるものである
    2.付着性が400J/m3以下で示されるものである
    3.凝集性が0.3~0.8で示されるものである
  7. ゲルを含んで形成される、請求項1~3のいずれかに記載の粘性固体の形態を示す摂食嚥下機能の検査材。
  8. 次の1.および2.の2種類のゲルを含んで形成される、請求項1~3のいずれかに記載の粘性固体の形態を示す摂食嚥下機能の検査材。
    1.ゲルを一端粉砕処理した後、そのまま固めて再形成した粉砕ゲル
    2.分散媒ゲル
  9. 請求項1~8のいずれかに記載の検査材であって、造影剤、放射性物質、着色剤または発光剤を一種以上含む摂食嚥下機能の検査材。
  10. 造影剤が非イオン性ヨード系造影剤である請求項9に記載の摂食嚥下機能の検査材。
  11. 着色剤が緑色系の色素である請求項9に記載の摂食嚥下機能の検査材。
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