以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この発明を実施するための最良の形態(以下実施形態という)によりこの発明が限定されるものではない。また、以下の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。なお、以下においては、ピストン機関の一例としてスターリングエンジンを取り上げるが、ピストン機関はこれに限定されるものではない。また、ピストン機関であるスターリングエンジンを用いて、車両等に搭載される内燃機関の排熱を回収する例を説明するが、排熱の回収対象は内燃機関に限られない。例えば工場やプラント、あるいは発電施設の排熱を回収する場合にも本発明は適用できる。
本実施形態に係るピストン機関は、ピストンとシリンダとの間に気体軸受を介在させるとともに、ピストンの往復運動方向において気体軸受が形成される領域の少なくとも一方の端部に、シリンダよりも硬度の低い環状の部材を設ける点に特徴がある。本実施形態において、気体軸受は、静圧気体軸受又は動圧気体軸受のいずれでもよい。
図1は、本実施形態に係るピストン機関であるスターリングエンジンの構成を示す断面図である。図2は、本実施形態に係るスターリングエンジンが備える気体軸受を示す平面図である。図3−1は、本実施形態に係るスターリングエンジンが備える気体軸受の構成例、及びピストンの支持構造を示す説明図である。図3−2は、本実施形態の変形例に係るスターリングエンジンが備える気体軸受の構成例、及びピストンの支持構造を示す説明図である。
本実施形態に係るピストン機関は熱機関であり、より具体的には外燃機関であるスターリングエンジン100である。スターリングエンジン100は、いわゆるα型の直列2気筒スターリングエンジンである。本実施形態において、スターリングエンジン100は、例えば、内燃機関の排ガスExから熱エネルギーを回収して運動エネルギーとして取り出す排熱回収機関として機能する。内燃機関の排ガスExを通過させる通路として機能するヒータケース3にスターリングエンジン100の熱交換器108が配置されて、スターリングエンジン100は、内燃機関の排ガスExから熱エネルギーを回収する。
スターリングエンジン100は、高温側シリンダ30H内に収められた高温側ピストン20Hと、低温側シリンダ30L内に収められた低温側ピストン20Lとが直列に配置されている。なお、以下において、高温側シリンダ30Hと低温側シリンダ30Lとを区別しない場合にはシリンダ30といい、高温側ピストン20Hと低温側ピストン20Lとを区別しない場合にはピストン20という。
高温側シリンダ30Hと低温側シリンダ30Lとは、基準体である基板111に、直接又は間接的に支持、固定されている。本実施形態においては、この基板111が、スターリングエンジン100の各構成要素の位置基準となる。また、後述するように、本実施形態に係るスターリングエンジン100は、高温側シリンダ30Hと高温側ピストン20Hとの間、及び低温側シリンダ30Lと低温側ピストン20Lとの間に気体軸受GBを介在させる。
スターリングエンジン100は、基準体である基板111に、高温側シリンダ30Hと低温側シリンダ30Lとを直接又は間接的に取り付けることにより、ピストン20とシリンダ30とのクリアランスを精度よく保持できる。これによって、気体軸受GBの機能を十分に発揮させることができる。さらに、スターリングエンジン100の組み立ても容易になる。
高温側シリンダ30Hと低温側シリンダ30Lとの間には、略U字形状のヒータ(加熱器)105と再生器106とクーラー107とで構成される熱交換器108が設けられる。ヒータ105及び再生器106及びクーラー107の内部はスターリングエンジン100の作動流体が充填されており、スターリングエンジン100の運転時には、作動流体がヒータ105及び再生器106及びクーラー107の内部を流動する。
熱交換器108を構成するヒータ105の一方の端部は高温側シリンダ30H側に配置され、他方の端部は再生器106側に配置される。ヒータ105は、内燃機関の排ガスExが有する熱エネルギーによって内部の作動流体を加熱する。再生器106は、一方の端部がヒータ105側に配置され、また他方の端部はクーラー107側に配置されて、ヒータ105又はクーラー107から流入する作動流体が通過する。クーラー107の一方の端部は再生器106側に配置され、他方の端部は低温側シリンダ30L側に配置される。クーラー107は、作動流体を冷却する。高温側シリンダ30H及び低温側シリンダ30Lは、熱交換器108を通過した作動流体が流入し、流出する。
高温側シリンダ30H及び低温側シリンダ30L及び熱交換器108内には作動流体(本実施形態では空気)が充填されており、ヒータ105から作動流体へ供給される熱エネルギーによってスターリングサイクルを構成し、スターリングエンジン100を駆動する。高温側ピストン20H及び低温側ピストン20Lの往復運動は、コネクティングロッド61によって出力軸であるクランクシャフト110に伝達され、ここで回転運動に変換される。高温側シリンダ30Hの作動流体が充填される空間を高温側作動流体空間MSH、低温側シリンダ30Lの作動流体が充填される空間を低温側作動流体空間MSLといい、両者を区別しない場合には、単に作動流体空間MSという。
ここで、例えば、ヒータ105、クーラー107は、熱伝導率が高く耐熱性に優れた材料のチューブを複数束ねて構成できる。クーラー107は空冷としてもよいし、水冷としてもよい。また、再生器106は、多孔質の蓄熱体で構成できる。なお、ヒータ105、クーラー107及び再生器106の構成は、この例に限られるものではなく、排熱回収対象の熱条件やスターリングエンジン100の仕様等によって、好適な構成を選択できる。
高温側ピストン20Hと低温側ピストン20Lとは、高温側シリンダ30Hと低温側シリンダ30Lとの内部に、それぞれ気体軸受GBを介して支持されている。すなわち、ピストンリングを介さず、潤滑油を用いないで、ピストン20をシリンダ30内に支持する構造である。これによって、ピストン20とシリンダ30との間の摩擦を低減して、スターリングエンジン100の効率を向上させることができる。また、ピストン20とシリンダ30との摩擦を低減することにより、例えば、内燃機関の排熱の熱エネルギーを回収する場合のような、低質、低温度差の運転条件下でスターリングエンジン100を使用する場合でも、スターリングエンジン100により排熱から熱エネルギーを回収できる。
気体軸受GBを構成するため、図2に示すように、ピストン20(高温側ピストン20H、低温側ピストン20L)とシリンダ30(高温側シリンダ30H、低温側シリンダ30L)との間には、所定のクリアランスtcを設ける。クリアランスtcは、ピストン20の全周にわたって10μm〜数10μmとする。ここで、図2に示すクリアランスtcは、ピストン20の軸を含む平面でピストン20を切ったときの断面において、一方のクリアランスである。したがって、気体軸受GBが形成される領域におけるピストン20の直径をDPgとし、シリンダ30の内径をDCgとすると、DCg=DPg+2×tcとなる。
ここで、気体軸受GBは、ピストン20の直径方向(横方向、スラスト方向)の力に耐える能力(負荷能力)が低いため、ピストン20のサイドフォースFsを実質的に0にすることが好ましい。このため、シリンダ30の軸線(中心軸)に対するピストン20の直線運動精度を高くする必要がある。これを実現するため、図3−1に示すように、本実施形態において、高温側ピストン20H及び低温側ピストン20Lは、例えばグラスホッパ機構のような近似直線機構60によって支持される。
近似直線機構60は、一端部がスターリングエンジン100の筐体100Cへ回動可能に取り付けられる第1腕62と、同じく一端部がスターリングエンジン100の筐体100Cへ回動可能に取り付けられる第2腕63と、一端部がコネクティングロッド61の端部と回動可能に連結され、他端部が第2腕63の他端部と回動可能に連結される第3腕64とで構成される。コネクティングロッド61は、クランクシャフト110と回動可能に取り付けられる端部とは異なる端部が、第3腕64の端部と回動可能に連結される。また、第1腕62の他端部は、第3腕63の両端部の間に、回動可能に連結される。
このように構成される近似直線機構60を用いれば、高温側ピストン20H及び低温側ピストン20Lを略直線状に往復運動させることができる。その結果、高温側ピストン20H及び低温側ピストン20LのサイドフォースFsがほとんど0になるので、負荷能力の小さい気体軸受GBによっても十分にピストン20を支持できる。なお、ピストン20を支持する近似直線機構はグラスホッパ機構に限られるものではなく、ワットリンク等を用いてもよい。
なお、グラスホッパ機構は、他の直線近似機構に比べて、同じ直線運動精度を得るために必要な機構の寸法が小さくて済むため、スターリングエンジン100全体をコンパクトに構成できるという利点がある。特に、本実施形態に係るスターリングエンジン100を車両に搭載される内燃機関の排熱回収に用い、内燃機関の排ガスの通路に熱交換器108を配置するというような、限られたスペースにスターリングエンジンを設置する場合、スターリングエンジン100の全体がコンパクトである方が設置の自由度は向上する。また、近似直線機構60は、同じ直線運動精度を得るために必要な機構の質量が他の機構よりも軽量で済むため、熱効率を向上させる点で有利である。さらに、近似直線機構60は、機構の構成が比較的簡単であるため、製造・組み立てが容易であり、また製造コストも低減できるという利点もある。
図1に示すように、スターリングエンジン100を構成する高温側シリンダ30H、高温側ピストン20H、コネクティングロッド61、クランクシャフト110等の構成要素は、筺体100Cに格納される。スターリングエンジン100の筺体100Cは、クランクケース114Aと、シリンダブロック114Bとを含んで構成される。筺体100C内を構成するクランクケース114A内の空間(クランクケース内空間)CSには気体が充填される。本実施形態において、前記気体は、スターリングエンジン100の作動流体と同一である。クランクケース内空間CSに充填される気体は、圧力調整手段であるポンプ115により加圧される。ポンプ115は、例えば、スターリングエンジン100の排熱回収対象である内燃機関によって駆動してもよいし、例えば電動機のような駆動手段を用いて駆動してもよい。
スターリングエンジン100は、ヒータ105とクーラー107との温度差が同じ場合、作動流体の平均圧力が高い程、高温側と低温側との圧力差が大きくなるので、より高い出力が得られる。本実施形態に係るスターリングエンジン100は、クランクケース内空間CSに充填される気体を加圧することにより、作動流体空間MS内の作動流体を高圧に保持して、スターリングエンジン100からより多くの出力を取り出すように構成してある。これによって、排熱回収のように低質な熱源しか用いることができない場合でも、より多くの出力をスターリングエンジン100から取り出すことができる。ここで、スターリングエンジン100の出力は、筺体100C内に充填される気体の圧力に略比例して大きくなる。
本実施形態に係るスターリングエンジン100では、筺体100Cにシール軸受116が取り付けられており、クランクシャフト110はシール軸受116により支持される。本実施形態に係るスターリングエンジン100は、筺体100C内に充填される気体を加圧するが、シール軸受116により、筺体100C内に充填される気体の漏れを最小限に抑えることができる。クランクシャフト110の出力は、例えば、オルダムカップリングのようなフレキシブルカップリング118を介して筺体100Cの外部へ取り出される。
図1、図3−1に示すように、スターリングエンジン100が備えるピストン20は、頂部20Tpと、側部20Spと、底部20Bpとを外殻とし、頂部20Tpと、側部20Spと、底部20Bpとで囲まれる空間を気体溜め(以下蓄圧空間という)20Iとする。なお、ピストン20の外殻は、少なくとも頂部20Tpと、側部20Spと、底部20Bp、あるいは底部20Bpに相当する部材とで構成される。ピストン20の頂部20Tpには、蓄圧空間20Iと連通する気体導入通路21が設けられる。作動流体空間MS内の作動流体FLは、気体導入通路21を通ってピストン20の蓄圧空間20Iへ導入される。
ピストン20の頂部20Tpの蓄圧空間20I側には、蓄圧空間20I内に導入された作動流体FLの逆流を防止するため、加圧状態保持手段として逆止弁25が設けられる。逆止弁25は、蓄圧空間20Iの内部へ配置され、作動流体空間MS内の作動流体FLを気体導入通路21から蓄圧空間20Iへ導入し、また、蓄圧空間20I内の作動流体FLが作動流体空間MS内へ逆流することを防止する。
ピストン20の動きにより、図3−1に示すシリンダ30内の作動流体空間MSに存在する作動流体FLの圧力(作動流体空間内圧力)Pmsが上昇し、逆止弁25が開くときの圧力(開弁圧力)Poを上回ると、逆止弁25が開弁する。そして、作動流体空間MS内の作動流体FLが気体導入通路21を通って蓄圧空間20I内へ流入する。ここで、開弁圧力Poは、蓄圧空間20I内の圧力(蓄圧空間内圧力)Ppよりも高い所定の圧力に設定される。
ピストン20の動きにより作動流体空間内圧力Pmsが低下し、開弁圧力Poよりも低くなると、逆止弁25は閉弁する。これによって、蓄圧空間20I内の作動流体FLが作動流体空間MSへ逆流することを防ぐ。このように、逆止弁25は、蓄圧空間20I内の加圧状態を保持する加圧状態保持機能を有するとともに、作動流体FLを蓄圧空間20I内へ導入する作動流体導入機能を有する。作動流体空間MSからピストン20の蓄圧空間20Iへ導入された作動流体FLは、ピストン20の側部20Spに設けられた複数の給気孔22を通ってピストン20の側部20Spとシリンダ30の内面30Sとの間のクリアランスtcに流出する。これによって、ピストン20とシリンダ30の内面30Sとの間に気体軸受GBが構成される。なお、気体軸受GBは、静圧気体軸受であるが、本実施形態に適用できる気体軸受はこれに限定されるものではなく、動圧気体軸受であってもよい。
このように、図1に示すスターリングエンジン100の運転時には、ピストン20の上昇にともない、作動流体空間MSの作動流体FLが圧縮される。作動流体空間内圧力Pmsが逆止弁25の開弁圧力よりも高くなると、逆止弁25が開弁する。そして、気体導入通路21を介して、作動流体空間MSの作動流体FLの一部が蓄圧空間20Iに導入される。蓄圧空間20Iへ導入された作動流体FLは、その一部が、ピストン20の周方向に向かって複数設けられる給気孔22を通ってピストン20とシリンダ30との間のクリアランスtcに流出し、気体軸受GBを形成する。
このように、ピストン20の蓄圧空間20Iへ導入した作動流体FLをピストン20とシリンダ30との間に流出させて気体軸受GBを形成する他、図3−2に示すスターリングエンジン100aのように、筺体100Cの外部へ配置した、気体軸受用圧力生成手段である気体軸受ポンプ120から気体供給通路45を介してピストン20の蓄圧空間20Iへ作動流体FLを供給してもよい。そして、蓄圧空間20Iへ導入された作動流体FLを、給気孔22からピストン20とシリンダ30との間のクリアランスtcに流出させ、気体軸受GBを形成してもよい。
スターリングエンジン100は、特に熱交換器108内における作動流体の通路が複雑で、スターリングエンジン100の組み立て工程で微小な塵やゴミ等の異物を完全に除去できるとは限らない。また、熱交換器108のヒータ105等から、長時間運転後に異物が遊離するおそれもある。このため、スターリングエンジン100の作動流体FLには、異物が混入するおそれがある。
上述したように、スターリングエンジン100は、ピストン20とシリンダ30との間に形成される微小なクリアランスtcに気体軸受GBを形成し、これによってピストン20をシリンダ30内へ支持する。このため、作動流体FLに混入した微小な異物がピストン20とシリンダ30との間に形成される微小なクリアランスtcへ侵入するおそれがある。異物がクリアランスtcへ侵入すると、ピストン20やシリンダ30の表面に影響を与えてこれらの耐久性を低下させたり、ピストン20とシリンダ30との間の摺動抵抗を増加させたりするおそれがある。そこで、スターリングエンジン100は、次に説明する構成によって、ピストン20とシリンダ30とのクリアランスtcへの異物の侵入を抑制する。
図4は、本実施形態に係るスターリングエンジンが備えるピストン及びシリンダの拡大図である。図5は、本実施形態に係るスターリングエンジンのピストンに設けられる環状の部材の斜視図であり、図6は、本実施形態に係るスターリングエンジンのピストンに設けられる環状の部材の平面図である。図7は、本実施形態に係るスターリングエンジンが備えるピストンに環状の部材が取り付けられる部分の拡大図である。
本実施形態では、ピストン20の往復運動方向において気体軸受GBが形成される領域の少なくとも一方の端部に、シリンダ30の内面30Sよりも硬度の低い環状の部材(以下環状部材という)40を設ける。そして、環状部材40によって、気体軸受GBが形成される、ピストン20とシリンダ30とのクリアランスtcへ侵入しようとする異物を除去する。これによって、ピストン20とシリンダ30とのクリアランスtcへの異物の侵入を抑制する。
図4に示すように、ピストン20の頂面(以下ピストン頂面という)20Tと側面20Sとの接続部は、この接続部よりもピストン頂面20Tの反対側における端部(頂面反対側端部という)20B側における側面20Sの直径DP2よりもピストン頂面20T側の直径DP1が小さくなるように、階段状に形成されている。また、頂面反対側端部20Bと側面20Sとの接続部は、この接続部よりもピストン頂面20T側における側面20Sの直径DP2よりも頂面反対側端部20B側の直径DP1が小さくなるように、階段状に形成されている。
ピストン頂面20Tと側面20Sとの接続部では、ピストン頂面20Tから頂面反対側端部20Bへ向かってピストン20の直径がDP1からDP2に変化する。ピストン頂面20Tと側面20Sとの接続部を、頂面側ピストン径変化部GT1という。また、頂面反対側端部20Bと側面20Sとの接続部では、頂面反対側端部20Bからピストン頂面20Tへ向かってピストン20の直径がDP1からDP2に変化する。頂面反対側端部20Bと側面20Sとの接続部を、頂面反対側ピストン径変化部GT2という。
ピストン20は、ピストン頂面20T側の階段状に形成された部分に環状部材(頂面側環状部材)40Tを設け、頂面反対側端部20B側の階段状に形成された部分に環状部材(頂面反対側環状部材)40Bを設ける。なお、頂面側環状部材40Tと頂面反対側環状部材40Bとを区別しない場合には、単に環状部材40という。環状部材40は、ピストン20の往復運動方向において気体軸受GBが形成される領域の少なくとも一方の端部に設けられる。なお、本実施形態では、ピストン20の往復運動方向において気体軸受GBが形成される領域の両方の端部に環状部材40が設けられる。
ピストン20の往復運動方向において気体軸受GBが形成される領域の一方の端部に環状部材40を設ける場合、ピストン頂面20T側に設けることが好ましい。ピストン頂面20Tは、作動流体空間MS内の作動流体と常に接触しているので、頂面反対側端部20Bよりもピストン頂面20T側からピストン20とシリンダ30との間に異物が入り込むおそれがより高くなるからである。このように、気体軸受GBが形成される領域の両端部のうち、少なくともピストン頂面20T側に環状部材40を設けることにより、ピストン20とシリンダ30との間に異物が入り込むおそれを低減できる。
図6に示すように、環状部材40は、環状かつ無端の部材である。環状部材40は、例えば、接着や溶着等によってピストン20に取り付けられる。また、環状部材40の内径を、ピストン20の環状部材40が取り付けられる部分の外径よりも小さくして、ピストン20へ環状部材40を嵌め込んでもよい。環状部材40の硬度は、シリンダ30の内面30Sの硬度よりも低くする。これによって、シリンダ30の内面30Sへ異物が食い込もうとした場合には、シリンダ30の内面30Sよりも硬度の低い環状部材40へ異物が食い込むので、シリンダ30の内面30Sが異物によって傷付けられるおそれを低減できる。
環状部材40の硬度は、シリンダ30の内面30Sの硬度の1/10以下とすることが好ましい。このようにすれば、より確実に環状部材40が異物を捕捉できるので、シリンダ30の内面30Sを傷付けるおそれがより低減される。環状部材40を構成する材料としては、耐熱性を有する樹脂材料を用いることができる。このような材料としては、例えば、ポリアミド系樹脂やアラミド樹脂等を用いることができる。
ピストン20とシリンダ30との間には気体軸受GBが形成されるが、ピストン20の往復運動方向において気体軸受GBが形成される領域は、頂面側ピストン径変化部GT1と頂面反対側ピストン径変化部GT2との間となる。したがって、頂面側ピストン径変化部GT1と頂面反対側ピストン径変化部GT2とが、ピストン20の往復運動方向において気体軸受GBが形成される領域のそれぞれの端部となる。
なお、後述するように、環状部材40の外周面40Sとピストン20の側面20Sとは略同一となるように形成されるので、環状部材40が配置される部分でも実質的に気体軸受GBの機能を発揮できると考えられる。しかし、例えば、環状部材40の摩耗が進んだり、環状部材40の一部が欠落したり、環状部材40に異物が食い込むことによって捕捉されたりして環状部材40とシリンダ30とのクリアランスが変化した場合には、気体軸受GBの機能を十分に発揮できないことも考えられる。
このような場合であっても、頂面側ピストン径変化部GT1と頂面反対側ピストン径変化部GT2との間の領域は、ピストン20とシリンダ30とのクリアランスが変化しない領域であるので、本実施形態では、この領域をピストン20の往復運動方向において気体軸受GBが形成される領域として取り扱う。すなわち、ピストン20から環状部材40を取り外した状態において、ピストン20とシリンダ30とのクリアランスが、気体軸受GBを形成するために予め設定された寸法となる領域を、ピストン20の往復運動方向において気体軸受GBが形成される領域として取り扱う。
ピストン20の往復運動方向におけるピストン頂面20Tから頂面側ピストン径変化部GT1までの距離はL1であり、ピストン20の往復運動方向における頂面反対側端部20Bから頂面反対側ピストン径変化部GT2までの距離はL2である。距離L1が頂面側環状部材40Tの厚さとなり、距離L2が頂面反対側環状部材40Bの厚さとなる。ここで、環状部材40の厚さとは、環状部材40の中心軸(環状部材中心軸)Zr(図5、図6)と平行な方向における環状部材40の寸法である。なお、環状部材40をピストン20へ取り付けたときには、環状部材中心軸Zrとピストン中心軸Zpとは一致する。
本実施形態では、頂面側環状部材40Tの厚さL1と、頂面反対側環状部材40Bの厚さL2とは同じ大きさであるが、スターリングエンジン100の仕様によって、両者を異ならせてもよい。頂面側環状部材40T及び頂面反対側環状部材40Bの厚さ、すなわち環状部材40の厚さは、気体軸受GBのクリアランス、すなわちピストン20とシリンダ30とのクリアランスtcの設計値の10倍以上100倍以下とすることが好ましい。このようにすれば、ピストン20とシリンダ30とのクリアランスtcに侵入しようとする異物を確実に環状部材40へ食い込ませて捕捉でき、また、捕捉した異物の脱落も抑制できる。また、このようにすれば、環状部材40を設けることによる気体軸受GBが形成される領域の減少を抑制できる。
環状部材40の外径をDR1、内径をDR2とすると、環状部材40の径方向における寸法(径方向厚さという)は、(DR1−DR2)/2となる(図6参照)。環状部材40の径方向厚さは、ピストン20とシリンダ30とのクリアランスtcの設計値の10倍以上とすることが好ましい。このようにすれば、ピストン20とシリンダ30とのクリアランスtcに侵入しようとする異物を確実に環状部材40へ食い込ませて捕捉でき、また、捕捉した異物の脱落も抑制できる。
図7−1に示すように、環状部材40をピストン20に取り付けた状態において、環状部材40の外周面40Sは、少なくともピストン20の側面20Sと同一(面一)となるようにする。この場合、シリンダ30と環状部材40との距離tcrは、シリンダ30とピストン20とのクリアランスtcに等しくなる。ここで、シリンダ30とピストン20とのクリアランスtcは、環状部材40が取り付けられていない部分におけるピストン20とシリンダ30との距離であり、気体軸受GBが形成される領域におけるシリンダ30とピストン20とのクリアランスtcである。
本実施形態では、図7に示すシリンダ30と環状部材40との距離tcrが、シリンダ30とピストン20とのクリアランスtc以下となるようにする。このように、シリンダ30と環状部材40との距離tcrを、シリンダ30とピストン20とのクリアランスtc以下にすることで、気体軸受GBが形成される領域の端部でより確実に異物を環状部材40で捕捉できる。これによって、シリンダ30とピストン20とのクリアランスtcへの異物の侵入を抑制して、ピストン20やシリンダ30の耐久性低下を抑制でき、また、確実に気体軸受GBの機能を発揮させることができる。
図8は、本実施形態に係るスターリングエンジンが備えるピストン及びシリンダの他の構成例を示す拡大図である。図1に示す高温側ピストン20Hのピストン頂面20Tは、ヒータ105で加熱された高温の作動流体と接触するので熱膨張する。図1に示すスターリングエンジン100は、ピストン20とシリンダ30との間に気体軸受GBを介在させるため、両者のクリアランスtcは数μm〜数10μmと小さく設定されている。このため、ピストン20が径方向に熱膨張すると、ピストン20とシリンダ30とが接触するおそれがある。
図8に示すピストン20は、ピストン頂面20Tから頂面反対側端部20Bに向かって所定の部分(すなわち頂面側ピストン径変化部GT1)までの距離L0の範囲におけるピストン20の直径DP1は、距離L0の位置から頂面反対側端部20Bの範囲におけるピストン20の直径DP2よりも小さい。これによって、ピストン頂面20T側に、気体軸受GBが形成される領域のピストン20とシリンダ30とのクリアランスtcよりも、ピストン20とシリンダ30とのクリアランスtlが大きく形成される部分(クリアランス拡大部分)が形成される。ピストン頂面20T側に形成されるクリアランス拡大部分によって、ピストン20は、自身の径方向へ向かう熱膨張によってピストン20とシリンダ30との接触が回避される。
ここで、ピストン頂面20T側において、ピストン20の直径が変化する部分を、頂面側ピストン径変化部GT1という。図8に示すピストン20は、上述した図4に示すピストン20と同様であるが、頂面側ピストン径変化部GT1までの距離L0を、頂面側環状部材40Tの厚さL1よりも大きくしてある。これによって、頂面側環状部材40Tをピストン20に取り付けた場合には、ピストン頂面20T側におけるピストン20とシリンダ30とのクリアランスtlが、気体軸受GBが形成される領域のピストン20とシリンダ30とのクリアランスtcよりも大きくなる。
ピストン頂面20T側にクリアランス拡大部分を備えるピストン20(図8)では、図4に示すピストン20と同様に、ピストン20の往復運動方向において気体軸受GBが形成される領域は、頂面側ピストン径変化部GT1と頂面反対側ピストン径変化部GT2との間となる。したがって、頂面側ピストン径変化部GT1と頂面反対側ピストン径変化部GT2とが、ピストン20の往復運動方向において気体軸受GBが形成される領域のそれぞれの端部となる。
ピストン20は、クリアランス拡大部分と、気体軸受GBが形成される領域との境界、すなわち、ピストン20の往復運動方向において気体軸受GBが形成される領域の一方の端部である頂面側ピストン径変化部GT1に、頂面側環状部材40Tが設けられる。このピストン20は、ピストン20の往復運動方向において気体軸受GBが形成される領域の他方の端部である頂面反対側ピストン径変化部GT2にも頂面反対側環状部材40Bが設けられる。なお、上述したように、環状部材40は、ピストン20の往復運動方向において気体軸受GBが形成される領域の少なくとも一方の端部に設けられていればよい。
図9は、本実施形態の変形例に係るスターリングエンジンが備えるピストン及びシリンダの拡大図である。図10−1は、本実施形態の変形例に係るスターリングエンジンが備える環状部材の斜視図である。図10−2は、本実施形態の変形例に係るスターリングエンジンが備える環状部材の一部側面図である。図11−1、図11−2は、本実施形態の変形例に係るスターリングエンジンが備える環状部材の平面図である。図12は、本実施形態の変形例に係るスターリングエンジンが備えるピストンに環状の部材が取り付けられる部分の拡大図である。
本変形例のピストン20aは、ピストン頂面20T側に環状部材40aを取り付ける環状部材取付溝26が形成されている。環状部材取付溝26は、ピストン20aの周方向に向かって形成されている。環状部材取付溝26の頂面反対側端部20B側から頂面反対側端部20BまでのAGBで示す領域が、気体軸受GBが形成される領域である。
環状部材取付溝26に取り付けられる環状部材40aは、図10−1に示すように、合口42を有する環状かつ有端の部材である。図10−1に示す環状部材40aは、合口42における環状部材40aの端部同士が離れている。図11−1は、環状部材40aを取り付けたピストン20aをシリンダ30内へ組み付ける前の状態であり、環状部材40aの自由形状(開放形状であり、環状部材40aをピストン20aから取り外した状態の形状)を示している。本変形例では、自由形状において、環状部材40aの外径DR1_bは、図9に示すシリンダ30の内径DC2よりも大きく形成される。
図11−2は、環状部材40aを取り付けたピストン20aをシリンダ30内へ組み付けた後の状態であり、このときの環状部材40aの外径DR1_aは、図9に示すシリンダ30の内径DC2に等しくなる。すなわち、環状部材40aを取り付けたピストン20aをシリンダ30内へ組み付けると、図9に示すように、環状部材40aの外周面40Saとシリンダ30の内面30Sとが接触する。これによって、本変形例では、ピストン20aとシリンダ30との間に侵入しようとする異物を環状部材40aによって確実に捕捉できる。なお、環状部材40aがシリンダ30に接触する際には、環状部材40aとシリンダ30との摩擦が許容できる程度の力で両者が接触するように、環状部材40aの材質、形状、寸法を調整する。
なお、環状部材40aは、合口42における環状部材40aの端部同士が接するように構成してもよい。この場合、環状部材40aをピストン20aに取り付けたときに、環状部材40aの外周面40Saは、ピストン20aの側面20Sと同一か、シリンダ30の内面30S側になるようにする。これによって、ピストン20aとシリンダ30との間に侵入しようとする異物を環状部材40aによって捕捉する。
図9、図10−1、図10−2に示すように、環状部材40aの外周面40Saには、複数の溝(環状部材溝)41が形成される。環状部材溝41は、ピストン20aが往復運動する方向(図9の矢印U方向であり、ピストン中心軸Zpと平行な方向)と交差する方向に向かって形成され、ピストン20aが往復運動する方向における環状部材40aの端部43、43同士を貫通する。
図12に示すように、ピストン20aが上死点の方向に移動する、すなわち、作動流体空間MSの体積を小さくする方向に移動すると、環状部材40aよりも作動流体空間MS側の圧力P1は、環状部材40aに対して作動流体空間MSと反対側の圧力P2よりも高くなる。環状部材40aを境として作動流体空間MS側と作動流体空間MSとは反対側とに圧力差(P1−P2)が発生することによって、環状部材40aの内周面40aiがシリンダ30の内面30Sに向かう力を受ける。これによって、環状部材40aの外周面40Saは、シリンダ30の内面30Sに押し付けられる。その結果、環状部材40aとシリンダ30との間の摩擦が増加したり、気体軸受GBに圧力の偏りが発生したりするおそれがある。
このため、本変形例では、環状部材40aの外周面40Saに環状部材溝41を設け、環状部材40aに対して作動流体空間MS側の圧力と作動流体空間MSの圧力とを等しくする。これによって、気体軸受GBの圧力の偏りを抑制して気体軸受GBの機能を確実に発揮させ、また、環状部材40aとシリンダ30との間の摩擦を低減する。また、環状部材溝41を設けることによって環状部材40aの剛性が低下するので、環状部材40aがシリンダ30に押し付けられる力を低減して、環状部材40aとシリンダ30との間の摩擦を低減できる。
環状部材溝41は、環状部材40aの周方向に、等間隔で設けることが好ましい。このようにすれば、環状部材40aの周方向における圧力の不均一を抑制できる。また、環状部材40aの合口42に環状部材溝41の機能を発揮させてもよい。上述したように、環状部材溝41は、ピストン20aが往復運動する方向と交差する方向に向かって形成される。これによって、図9に示す作動流体空間MS側から環状部材溝41を通り、気体軸受GBが形成される領域へ異物が侵入することを抑制する。
図10−2に示すように、ピストン中心軸Zpに対する環状部材溝41の傾斜角度(ピストン中心軸Zpと環状部材溝41とのなす角度のうち小さい方)θは、30度以上とすることが好ましく、望ましくは45度以上である。なお、傾斜角度θを大きくすると、環状部材溝41を環状部材40aに形成することが困難になるので、傾斜角度θは30度以下とすることが好ましい。
図13−1は、本実施形態の変形例に係るスターリングエンジンが備える環状部材の他の構成例を示す一部側面図である。図13−1に示す環状部材40a1のように、V字形状の環状部材溝41aを備えるようにしてもよい。このようにすれば、図9に示す作動流体空間MS側から環状部材溝41aを通り、気体軸受GBが形成される領域へ異物が侵入することを、より効果的に抑制できる。V字形状の環状部材溝41aの傾斜角度はθ1、θ2であるが、θ1とθ2とを異ならせてもよいし、両者を同じ大きさとしてもよい。
図13−2は、本実施形態の変形例に係るスターリングエンジンが備える環状部材が有する合口の他の構成例を示す一部側面図である。図13−2に示す環状部材40a2のように、合口42aをV字形状としてもよい。これによって、異物が合口42aを通り、気体軸受GBが形成される領域へ侵入することを効果的に抑制できる。
図14は、本実施形態に係るスターリングエンジンを内燃機関の排熱回収に用いる場合の構成例を示す模式図である。本実施形態では、スターリングエンジン100の出力を、スターリングエンジン用変速機5を介して内燃機関用変速機4へ入力し、内燃機関1の出力と合成して取り出す。
本実施形態において、内燃機関1は、例えば、乗用車やトラック等の車両に搭載されて、前記車両の動力源となる。内燃機関1は、前記車両の走行中においては主たる動力源として出力を発生する。一方、スターリングエンジン100は、排ガスExの温度がある程度の温度にならないと、必要最低限の出力を生み出すことができない。したがって、本実施形態において、スターリングエンジン100は、内燃機関1の排出する排ガスExの温度が所定温度を超えたら内燃機関1の排ガスExから熱エネルギーを回収して出力を発生し、内燃機関1とともに前記車両を駆動する。このように、スターリングエンジン100は、前記車両の従たる動力源となる。
スターリングエンジン100が備えるヒータ105は、内燃機関1の排気通路2内に配置される。なお、排気通路2内には、スターリングエンジン100の再生器(図1参照)106を配置してもよい。スターリングエンジン100が備えるヒータ105は、排気通路2に設けられる中空のヒータケース3内に設けられる。
本実施形態において、スターリングエンジン100を用いて回収した排ガスExの熱エネルギーは、スターリングエンジン100で運動エネルギーに変換される。スターリングエンジン100の出力軸であるクランク軸110には、動力断続手段であるクラッチ6が取り付けられており、スターリングエンジン100の出力は、クラッチ6を介してスターリングエンジン用変速機5に伝達される。
内燃機関1の出力は、内燃機関1の出力軸1sを介して内燃機関用変速機4に入力される。そして、内燃機関用変速機4は、内燃機関1の出力と、スターリングエンジン用変速機5から出力されるスターリングエンジン100の出力とを合成して、変速機出力軸9に出力し、デファレンシャルギヤ10を介して駆動輪11を駆動する。
ここで、動力断続手段であるクラッチ6は、内燃機関用変速機4とスターリングエンジン100との間に設けられる。本実施形態では、スターリングエンジン用変速機5の入力軸5sとスターリングエンジン100のクランク軸110との間に設けられる。クラッチ6は、係合、解放することによって、スターリングエンジン100のクランク軸110と、スターリングエンジン用変速機5の入力軸5sとの機械的な接続を断続する。ここで、クラッチ6は、機関ECU50によって制御される。
スターリングエンジン100は、内燃機関1の排出する排ガスExの熱エネルギーを回収するため、内燃機関1の冷間始動時等のように排ガスExの温度が低い場合には、排ガスExから熱エネルギーを回収できず、出力を発生することができない。このため、スターリングエンジン100が出力を発生できるようになるまではクラッチ6を解放して、スターリングエンジン100と内燃機関1とを切り離して、スターリングエンジン100が内燃機関1に駆動されることによるエネルギー損失を抑制する。
クラッチ6を係合すると、スターリングエンジン100のクランク軸110と内燃機関1の出力軸1sとは、スターリングエンジン用変速機5及び内燃機関用変速機4を介して直結される。これによって、スターリングエンジン100の発生する出力と内燃機関1の発生する出力とは、内燃機関用変速機4で合成され、変速機出力軸9から取り出される。一方、クラッチ6を開放すると、内燃機関1の出力軸1sはスターリングエンジン100のクランク軸110と切り離されて回転する。
図12に示す本実施形態のスターリングエンジン100が備えるピストンは、ピストンに設けた環状部材によりピストンとシリンダとの間へ異物が侵入することを防止するので、ピストンやシリンダの耐久性低下を抑制して、安定した運転が実現できる。また、本実施形態に係るスターリングエンジン100は、ピストンに設けた環状部材によりピストンとシリンダとの間に異物はほとんど侵入しない。
これによって、車両に搭載されるスターリングエンジン100が振動を受けてピストンとシリンダとのクリアランスが変化したとしても、ピストンとシリンダとの間の異物によってピストンやシリンダの耐久性が低下することを回避できる。このように、本実施形態に係るスターリングエンジン100を、車両に搭載された内燃機関1の排熱回収に用いる場合には、安定して排熱を回収できるとともに、十分な耐久性を確保できる。
以上、本実施形態では、ピストンとシリンダとの間に気体軸受を介在させるとともに、ピストンの往復運動方向において気体軸受が形成される領域の少なくとも一方の端部に、シリンダよりも硬度の低い環状部材を設ける。このような構成により、ピストンとシリンダとの間へ侵入しようとする異物を環状部材に食い込ませて捕捉する。これによって、ピストンとシリンダとの間への異物の侵入を抑制して、ピストンやシリンダの耐久性低下を抑制できる。また、ピストンとシリンダとの間への異物の混入を抑制できるので、気体軸受の荷重負荷能力を確実に発揮させるとともに、ピストンとシリンダとの間の潤滑を確保できる。その結果、ピストン機関の信頼性が向上する。
また、洗浄では除去し切れなかった塵や部品のバリ等が作動流体へ混入したり、ピストン機関がスターリングエンジンである場合は、高温にさらされた熱交換器の構成部品からの異物等が作動流体へ混入したりすることが考えられる。本実施形態の構成によれば、ピストンに設けた環状部材によって、そのような異物も確実に除去できるので、ピストンとシリンダとの間への異物の侵入を抑制して、ピストンやシリンダの耐久性低下を抑制できる。