JP4120643B2 - ピストン装置 - Google Patents
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Description
本発明は、シリンダ内をピストンが往復するピストン装置に関する。
近年、乗用車やバス、トラック等の車両に搭載される内燃機関の排熱や工場排熱を回収するために、理論熱効率に優れたスターリングエンジンが注目されてきている。スターリングエンジンを含む外燃機関に適用可能なピストン装置として、特許文献1に開示された技術が知られている。
上記特許文献1に開示された熱機関のピストンは、ピストンのシリンダ内の往復運動にともなって作動空間内で圧縮、膨張を繰返す作動媒体の働きにより駆動されるディスプレーサを用いるタイプのスターリングエンジンに適用されるものであって、ピストン内部に形成され、作動空間内で圧縮された作動媒体を一時的に蓄える加圧室と、加圧室内の作動媒体が作動空間内へ逆流することを防止する逆止弁と、加圧室内の作動媒体をピストンとシリンダとのクリアランス部に噴出するオリフィスとを具備するものである。
ところで、熱源の温度が低い場合、熱機関の内部摩擦を低減しないと、熱源から取り出される動力は極めて少なくなるか、あるいは動力を取り出すことができない。特許文献1に開示された熱機関が備えるピストンは、内部摩擦を低減するため、ピストンとシリンダとのクリアランス部に作動媒体を噴出する。ここで、特許文献1に開示された熱機関は、ピストンの往復運動を回転運動に変換する必要はない。しかし、ピストンの往復運動を回転運動に変換する熱機関では、クランク軸とコンロッドとの組み付け部、及びコンロッドとピストンピンとの組み付け部等にも摩擦が発生するため、特許文献1に開示された熱機関のように、ピストンとシリンダとの摩擦を低減しただけでは不十分である。
そこで、この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、ピストンの往復運動を回転運動に変換する熱機関において、内部摩擦を低減できるピストン装置を提供することを目的とする。
上述の目的を達成するために、本発明に係るピストン装置は、内部に設けられるピン側中空部から気体を流出させるピン側給気口と、前記ピン側中空部に気体を取り込む気体流入口とを備え、かつシリンダ内を往復運動するピストンに取り付けられるピストンピンと、内部に設けられるクランク側中空部から気体を流出させるクランク側給気口と、前記クランク側中空部の気体を前記ピン側中空部へ送るための気体流出口とを備えるクランク軸と、第1端部が前記クランク軸の偏芯部に組み付けられ、第2端部が前記ピストンピンに組み付けられて、内部に形成される気体通路を介して前記クランク側中空部の気体を前記ピン側中空部へ送る連結棒と、前記気体流出口と前記クランク側給気口との間に設けられる第1圧抜き部と、前記気体流入口と前記ピン側給気口との間に設けられる第2圧抜き部と、を備えることを特徴とする。
また、次の本発明に係るピストン装置は、前記ピストン装置において、前記第1圧抜き部と前記気体流出口との間、及び前記第2圧抜き部と前記気体流入口との間には、ラビリンスシールが設けられることを特徴とする。
また、次の本発明に係るピストン装置は、内部に設けられるピン側中空部から気体を流出させるピン側給気口と、前記ピン側中空部に気体を取り込む気体流入口とを備え、かつシリンダ内を往復運動するピストンに取り付けられるピストンピンと、内部に設けられるクランク側中空部から気体を流出させるクランク側給気口と、前記クランク側中空部の気体を前記ピン側中空部へ送るための気体流出口とを備えるクランク軸と、第1端部が前記クランク軸の偏芯部に組み付けられ、第2端部が前記ピストンピンに組み付けられて、内部に形成される気体通路を介して前記クランク側中空部の気体を前記ピン側中空部へ送る連結棒と、を含み、前記クランク軸が備える気体流出口は、前記偏芯部の最も偏芯している部分を避けて設けられることを特徴とする。
また、次の本発明に係るピストン装置は、内部に設けられるピン側中空部から気体を流出させるピン側給気口と、前記ピン側中空部に気体を取り込む気体流入口とを備え、かつシリンダ内を往復運動するピストンに取り付けられるピストンピンと、内部に設けられるクランク側中空部から気体を流出させるクランク側給気口と、前記クランク側中空部の気体を前記ピン側中空部へ送るための気体流出口とを備えるクランク軸と、第1端部が前記クランク軸の偏芯部に組み付けられ、第2端部が前記ピストンピンに組み付けられて、内部に形成される気体通路を介して前記クランク側中空部の気体を前記ピン側中空部へ送る連結棒と、を含み、前記第1端部及び前記第2端部の内周、又は前記ピストンピンの外周及び前記偏芯部の外周に溝を形成し、前記クランク軸の前記気体流出口、及び前記ピストンピンの前記気体流入口は、前記ピストンが1往復する間に前記溝に連通することを特徴とする。
また、次の本発明に係るピストン装置は、前記ピストン装置において、前記溝は、前記偏芯部の最も偏芯している部分を含み、かつ前記偏芯部の最も偏芯している部分に対して前記クランク軸の回転軸側に対向する部分を避けて形成されることを特徴とする。
また、次の本発明に係るピストン装置は、内部に設けられるピン側中空部から気体を流出させるピン側給気口と、前記ピン側中空部に気体を取り込む気体流入口とを備え、かつシリンダ内を往復運動するピストンに取り付けられるピストンピンと、内部に設けられるクランク側中空部から気体を流出させるクランク側給気口と、前記クランク側中空部の気体を前記ピン側中空部へ送るための気体流出口とを備えるクランク軸と、第1端部が前記クランク軸の偏芯部に組み付けられ、第2端部が前記ピストンピンに組み付けられて、内部に形成される気体通路を介して前記クランク側中空部の気体を前記ピン側中空部へ送る連結棒と、を含み、前記クランク軸の回転軸部における前記クランク軸の回転軸に垂直な断面形状は、前記偏芯部における前記クランク軸の回転軸に垂直な断面形状に包含されることを特徴とする。
また、次の本発明に係るピストン装置は、内部に設けられるピン側中空部から気体を流出させるピン側給気口と、前記ピン側中空部に気体を取り込む気体流入口とを備え、かつシリンダ内を往復運動するピストンに取り付けられるピストンピンと、内部に設けられるクランク側中空部から気体を流出させるクランク側給気口と、前記クランク側中空部の気体を前記ピン側中空部へ送るための気体流出口とを備えるクランク軸と、第1端部が前記クランク軸の偏芯部に組み付けられ、第2端部が前記ピストンピンに組み付けられて、内部に形成される気体通路を介して前記クランク側中空部の気体を前記ピン側中空部へ送る連結棒と、を含むとともに、前記ピストンは、その内部に形成されるピストン側中空部から、前記ピストンと前記シリンダとの間に気体を流出させるピストン側給気口が側周部に設けられており、前記ピストンピン内部に形成されるピン側中空部は、前記ピストン側中空部に連通していることを特徴とする。
この発明によれば、ピストンの往復運動を回転運動に変換する熱機関において、内部摩擦を低減できる。
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この発明を実施するための最良の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記発明を実施するための最良の形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
なお、以下においては、ピストン装置を備える装置の一例として熱機関であるスターリングエンジンを取り上げるが、この発明に係るピストン装置が適用できる装置はこれに限定されるものではない。また、以下においては、スターリングエンジンを用いて車両等に搭載される内燃機関の排熱を回収する例を説明するが、排熱の回収対象は内燃機関に限られない。例えば工場やプラント、あるいは発電施設の排熱を回収する場合にも本発明は適用できる。
この実施例に係るピストン装置は、内部に設けられるピン側中空部に気体を取り込む気体流入口とを備えるピストンピンと、内部に設けられるクランク側中空部からピン側中空部へ送るための気体流出口とを備えるクランク軸と、内部に形成される気体通路を介してクランク側中空部の気体を前記ピン側中空部へ送る連結棒とを備える。そして、クランク軸の気体流出口とクランク側中空部内の気体を流出させるクランク側給気口との間に第1圧抜き部を設け、また、ピストンピンの気体流入口とピン側中空部内の気体を流出させるピン側給気口との間に第2圧抜き部を設ける点に特徴がある。
図1は、この実施例に係るスターリングエンジンを示す断面図である。図2は、この実施例に係るスターリングエンジンのピストンとシリンダとの間における空気軸受を示す断面図である。この実施例に係るピストン装置を備える熱機関のスターリングエンジン100は、いわゆるα型のスターリングエンジンであって、高温側ピストン装置1と、低温側ピストン装置2とを備える。高温側ピストン装置1は、高温側シリンダ3と、この内部に収められて往復運動する高温側ピストン50aと、高温側ピストン50aの往復運動をクランク軸30へ伝達する高温側コンロッド20aとを含んで構成される。低温側ピストン装置2は、低温側シリンダ4と、この内部に内に収められて往復運動する低温側ピストン50bと、低温側ピストン50bの往復運動をクランク軸30へ伝達する低温側コンロッド20bとを含んで構成される。ここで、低温側ピストン50bは、高温側ピストン50aに対して、クランク角で90°程度の位相差がつけられている。
高温側シリンダ3と低温側シリンダ4とは、ヒータ5と再生器6とクーラー7とで構成される熱交換器8によって接続されている。ヒータ5の一端は高温側シリンダ3に接続され、他端は再生器6に接続される。再生器6は、一端がヒータ5に接続され他端はクーラー7に接続される。クーラー7の一端は再生器6に接続され、他端は低温側シリンダ4に接続される。また、高温側シリンダ3と低温側シリンダ4とには作動流体(ここでは空気)が封入されており、ヒータ5から供給される熱によってスターリングエンジン100を駆動する。
この実施例に係るスターリングエンジン100は、例えば車両において、ガソリンエンジンのような内燃機関とともに用いられて、内燃機関の排気ガスを熱源として駆動される。この場合、スターリングエンジン100のヒータ5は、車両に搭載される内燃機関の排気管内部に配置される。そして、内燃機関の排気ガスから回収した熱エネルギにより作動流体が加熱されて、スターリングエンジン100が作動する。
この実施例に係るスターリングエンジン100は、排気管の内部にそのヒータ5が収容される。このように、このスターリングエンジン100は、車両内の限られたスペースに設置されるため、装置全体がコンパクトである方が設置の自由度が増し、好ましい。そのために、このスターリングエンジン100では、高温側及び低温側シリンダ3、4を、V字形ではなく、直列並行に配置した構成を採用している。
図1、図2に示すように、高温側ピストン50aと低温側ピストン50bとは、高温側シリンダ3と低温側シリンダ4内に空気軸受12を介して浮いた状態で支持されている。空気軸受12を構成するために、ピストンとシリンダとの間隔tcは全周にわたって数十μmとする。すなわち、ピストンリングを使用せず、また潤滑油も使用しないで、ピストンをシリンダ内で往復運動させる構造である。これによって、ピストンとシリンダとの摩擦を低減して、スターリングエンジン100の熱効率を向上させることができる。また、ピストンとシリンダとの摩擦を低減することにより、内燃機関の排熱回収のような低温度差の運転条件下においてもスターリングエンジン100を運転することができる。
なお、高温側及び低温側シリンダ3、4の内周面に固体潤滑材を付してもよい。これによって、ピストンとシリンダとの摺動抵抗をさらに低減させることができる。ここで、この実施例においては、スターリングエンジンの作動流体に空気を用い、それを利用して空気軸受を構成する。作動流体が変更すれば、空気軸受12を構成する作動流体も変更されるが、かかる場合であっても、空気軸受という。
高温側ピストン50a、低温側ピストン50bの往復運動は、それぞれ高温側ピストンピン40a、低温側ピストンピン40b、及び高温側コンロッド20a、低温側コンロッド20bによってクランク軸30に伝達され、ここで回転運動に変換される。クランク軸30は、クランクケース9の内部に軸受11を介して支持されている。クランク軸30の端部は、シール部13を介してクランクケース9の外部へ突出しており、スターリングエンジン100の出力は、ここから取り出される。なお。クランクケース9内は、加圧手段により加圧してもよい。これは、高温側及び低温側シリンダ3、4、及びヒータ5内の作動流体(本実施例では空気)を加圧して、スターリングエンジン100からより多くの出力を取り出すためである。
なお、高温側及び低温側ピストン50a、50bの往復運動は、例えばグラスホッパ機構のような近似直線機構を介して、クランク軸30に伝達してもよい。このようにすれば、高温側及び高温側ピストン50a、50bのサイドフォース(ピストンの径方向に向かう力)をほとんど0にできるので、負荷能力の小さい空気軸受12を用いても、十分に高温側及び高温側ピストン50a、50bを支持することができる。次に、この実施例に係るスターリングエンジン100が備えるピストン装置について、より詳細に説明する。
図3は、この実施例に係るピストン装置を示す拡大断面図である。この実施例に係るスターリングエンジン100は、高温側ピストン装置1も低温側ピストン装置2も同様の構成なので、以下においては、高温側ピストン装置1について説明する。なお、以下の説明では、便宜上、高温側ピストン装置1をピストン装置1といい、高温側ピストン50aをピストン50といい、高温側ピストンピン40aをピストンピン40といい、高温側シリンダ3をシリンダ3といい、また高温側コンロッド20aをコンロッド20という。
ピストン装置1が備えるクランク軸30は、回転軸部30sと、偏芯部30cとを含んで構成される。クランク軸30の回転軸部30sは、クランクケース9に取り付けられる軸受部9Bによって、回転可能に支持される。また、偏芯部30cには、連結棒(以下コンロッドという)20の第1端部(以下大端部)201が組み付けられる。これによって、ピストン50の往復運動がコンロッド20を介して回転運動に変換され、スターリングエンジン100の出力として回転軸部30sから取り出される。
クランク軸30の内部には中空部(以下クランク側中空部)31が形成されている。クランク軸30の一端部には、蓋32が取り付けられており、クランク側中空部31を封止する。また、クランク軸30の回転軸部30sには、クランク側中空部31に連通する気体供給口36が形成されている。この気体供給口36は、軸受部9Bの内側に形成される気体供給溝16に連通している。この気体供給溝16は、軸受部連通孔14を介して、気体供給手段であるポンプ10に接続されている。このような構成によって、ポンプ10からクランク側中空部31内へ気体を供給する。なお、この実施例において、ポンプ10から供給される気体は、空気であり、スターリングエンジン100の作動流体と同じである。
ここで、軸受部9Bの内側には、気体供給溝16を挟むように、軸受側圧抜き溝15が形成されている。そして、軸受側圧抜き溝15には、クランクケース内部9i及びクランクケース外に連通する圧抜き孔17が接続されている。これによって、クランク軸30の回転軸部30sに設けられる気体供給口36の周辺に漏れ出た気体をクランクケース内部9iやクランクケース外部に抜いて、気体供給口36周辺における気体の圧力上昇を抑制し、回転軸部30sの周方向における圧力をバランスさせる。
クランク軸30には、クランク側給気口35、37及び34が設けられている。より具体的には、回転軸部30sの側周部にはクランク側給気口35が設けられ、偏芯部30cの側周部にはクランク側給気口34が設けられる。また、偏芯部30cの端面には、クランク側給気口37が設けられる。
ポンプ10によってクランク側中空部31内に導入される気体は、クランク側給気口35、37から軸受部9Bとクランク軸30との間に流出して、空気軸受を構成する。また、クランク側中空部31内に導入される気体は、偏芯部30cの側周部に設けられるクランク側給気口34から流出して、偏芯部30cとコンロッド20の大端部201との間に空気軸受を構成する。これによって、クランク軸30と軸受部9Bとの摩擦、及びクランク軸30とコンロッド20の大端部201との摩擦を極めて低減できる。なお、前記空気軸受は、いわゆる静圧空気軸受である。ここで、この実施例では、クランク側中空部31内に導入される気体が空気であるため、「空気軸受」というが、「空気軸受」には、前記気体が空気以外のものも含まれるものとする(以下同様)。
クランク軸30の偏芯部30cには、クランク側中空部31内の気体を、ピストンピン40内のピストンピン側中空部43へ送るための気体流出口33が形成されている。クランク軸30の偏芯部30cに大端部201が組み付けられるコンロッド20は、内部に気体通路21が形成されている。そして、クランク軸30の偏芯部30cに設けられる気体流出口33から流出するクランク側中空部31内の空気が、前記気体通路21内へ送り込まれる。
また、コンロッド20は、第2端部(以下小端部)202が、ピストンピン40に組み付けられている。なお、大端部201と小端部202とは、コンロッド軸部20sで連結されている。コンロッド20の内部(すなわち、コンロッド軸部20sの内部)に形成される気体通路21は、前記大端部201内と前記小端部202内とを連通している。そして、クランク軸30の偏芯部30cに設けられる気体流出口33から放出されたクランク側中空部31内の空気は、前記気体通路21内を通ってコンロッド20の小端部202まで送られる。
ピストンピン40は、内部に中空部(以下ピン側中空部)43が形成される。このピン側中空部43は、ピストンピン40を貫通している貫通孔である。また、ピストンピン40には、コンロッド20の気体通路21を介して送られるクランク側中空部31内の気体を、ピン側中空部43内へ取り込むための気体流入口41が設けられる。この気体流入口41は、ピストンピン40の側周部に開口して、ピン側中空部43へ連通する。
また、ピストンピン40の側周部には、ピン側中空部43と連通するピン側給気口42が設けられている。そして、ピン側中空部43内の気体は、ピン側給気口42からピストンピン40とコンロッド20の小端部202との間に流出して、空気軸受を構成する。これによって、ピストンピン40とコンロッド20の小端部202との摩擦を極めて低減できる。
この実施例に係るピストン装置1が備えるピストン50は、内部に中空部(以下ピストン側中空部)51が設けられている。ピストン側中空部51には、ピストン50に取り付けられるピストンピン40のピン側中空部43が連通しており、ピン側中空部43内の気体がピストン側中空部51へ供給される。また、ピストン50の側周部には、ピストン側給気口53が、ピストン50の周方向に一定の間隔で複数設けられている。ピストン側給気口53は、ピストン側中空部51に連通しており、ピストン側中空部51内の気体をピストン50とシリンダ3との間に流出させる。これによって、ピストン50とシリンダ3との間に空気軸受を形成し、ピストン50の運動時における、ピストン50とシリンダ3との摩擦を極めて低減できる。なお、ピストン側中空部51及びピストン側給気口53は、近似直線機構等によってピストン50のサイドフォースを押さえ込めれば、必ずしも設ける必要はない。
次に、クランク軸30の偏芯部30cと、コンロッド20の大端部201とを組み付ける構成について説明する。図4は、クランク軸の偏芯部と、コンロッドの大端部との組み付け状態を示す断面図である。図5−1は、図4のA−A断面図である。図5−2は、図4のB−B断面図である。図5−3は、クランク軸の偏芯部と、コンロッドの大端部との組み付け状態を示す一部断面図である。図5−4は、図4の矢印C方向からみた正面図である。
上述したように、コンロッド20の大端部201は、クランク軸30の偏芯部30cに組み付けられる(図4、図5−1〜図5−3)。図4に示すクランク側給気口34は、偏芯部30cの側周部30csに設けられるとともに、偏芯部30cの周方向に対して、略等間隔で複数配置される。また、図5−2に示すように、クランク軸30の偏芯部30cの端面に設けられるクランク側給気口37は、偏芯軸(偏芯部30cの中心軸)Zcの周囲に、略等間隔で配置される。
また、偏芯部30cの側周部30csの表面には、クランク側中空部31と連通する気体流出口33が開口している。この気体流出口33は、コンロッド20の大端部201の内周に設けられる溝25とクランク側中空部31とを連通させる。溝25は、図5−1に示すように、コンロッド20を構成する大端部201の内周の全周にわたって形成されており、ピストン50(図3)が1往復する間に、気体流出口33は溝25に連通する。この溝25によって、クランク軸30の偏芯部30c、及びコンロッド20の大端部201の周方向における気体の圧力をバランスさせて、偏芯部30cと大端部201との間に形成される空気軸受の性能を十分に発揮させることができる。
また、溝25には、大端部201側における気体通路21が開口している。ピストン50(図3)が往復運動すると、クランク軸30が回転軸Zrを中心として回転するが、そのとき、クランク軸30の偏芯部30cは、コンロッド20の大端部201内を回転する。このとき、前記溝25によって、気体流出口33の位置にかかわらず、クランク側中空部31内の気体を、気体流出口33から気体通路21内へ送り込むことができる。なお、前記溝25は、クランク軸30が備える偏芯部30cの外周に形成してもよい。
偏芯部30cの側周部に設けられる気体流出口33は、図5−1に示すように、偏芯部30cの最も偏芯した部分(最偏芯部)30Eを避けて配置することが好ましい。スターリングエンジン100は、ピストン50(図3)が上死点にくると、最偏芯部30Eには、上死点から下死点に向かう押付力が作用する。また、クランクケース9内を加圧する場合、ピストン50が下死点にくると、最偏芯部30Eには、下死点から上死点に向かう押付力が作用する。
クランク軸30の偏芯部30cに気体流出口33を設けると、それだけクランク軸30の強度は低下することになるが、最偏芯部30Eを避けて気体流出口33を設ければ、上又は下死点位置における前記押付力の影響を緩和することができる。その結果、クランク軸30は強度面で有利になる。最偏芯部30Eを避けて気体流出口33を設けるにあたっては、最偏芯部30Eを含む所定の中心角θ1の範囲を避けるようにする。この所定の中心角θ1は、上又は下死点位置における前記押付力の影響が許容できない範囲であり、スターリングエンジン100の仕様等から決定する。なお、気体流出口33の個数は1個に限定されるものではないが、クランク軸30の強度を考慮すると、できるだけ少ない方が好ましい。
図4、図5−2、図5−3に示すように、コンロッド20の大端部201をクランク軸30の偏芯部30cに組み付けた場合において、コンロッド20の大端部201であって、クランク軸30の偏芯部30cに設けられる気体流出口33と、クランク側給気口34との間には、第1圧抜き部26が設けられる。第1圧抜き部26は、第1圧抜き溝26gと、第1連通孔26hとから構成される。
この実施例において、第1圧抜き溝26gは、コンロッド20を構成する大端部201の内周の全周にわたって設けられる。なお、第1圧抜き溝26gは、クランク軸30を構成する偏芯部30cの外周の全周にわたって設けてもよい。第1連通孔26hは、一端がコンロッド20の大端部201の表面に、他の一端は第1圧抜き溝26g内に開口して、第1圧抜き溝26gと、クランクケース内部9i(図3)とを連通させる。なお、説明の便宜上、図5−3に示す第1連通孔26hの位置は、図4に示す位置と異なっている。
これによって、クランク軸30の偏芯部30cに設けられる気体流出口33の周辺に漏れ出た気体をクランクケース内部9iに抜いて、気体流出口33周辺における圧力の上昇を抑制し、偏芯部30cの周方向における圧力をバランスさせる。その結果、クランク軸30の偏芯部30cと、コンロッド20の大端部201との間に形成される空気軸受は、安定して性能を発揮できる。
図4、図5−3に示すように、コンロッド20の大端部201をクランク軸30の偏芯部30cに組み付けた場合において、コンロッド20の大端部201であって、クランク軸30の偏芯部30cに設けられる気体流出口33と、第1圧抜き部26との間には、ラビリンスシール27が設けられる。クランク軸30の偏芯部30cに設けられる気体流出口33の周囲に漏れ出て、第1圧抜き部26からクランクケース内部9iに流出する気体は、できるだけ少ない方がよい。したがって、前記位置にラビリンスシール27を設けて、第1圧抜き部26を通ってクランクケース内部9iへ流出する気体の量を低減する。ラビリンスシール27を設ける場合、気体流出口33と、第1圧抜き部26との間に少なくとも1個設ける。また、気体の漏れ抑制という観点から、ラビリンスシール27は、気体流出口33に、できるだけ近づけて設けることが好ましい。ラビリンスシール27の個数は、スターリングエンジン100やピストン装置1の仕様等によって、適宜決定する。
図5−4に示すように、クランク軸30の回転軸部30sの直径はDsであり、クランク軸30の偏芯部30cの直径であるDcよりも小さい(Ds<Dc)。そして、クランク軸30の回転軸部30sにおけるクランク軸30の回転軸Zrに垂直な断面形状は、偏芯部30cにおけるクランク軸30の回転軸Zrに垂直な断面形状に包含される。これによって、クランク軸30の加工が容易になるとともに、偏芯部30cの加工精度も向上させやすくなる。
次に、ピストンピン40と、コンロッド20の小端部202とを組み付ける構成について説明する。図6は、クランク軸の偏芯部と、コンロッドの大端部との組み付け状態を示す断面図である。図7−1は、図6のD−D断面図である。図7−2は、図6のE−E断面図である。図6に示すように、ピストンピン40は、ピストン50の取り付け座54に挿入され、固定手段によってピストン50へ固定される。
このピストン50は、上述したように、裾部側が仕切り部材52で閉じられている。これによって、ピストン50は、内部にピストン側中空部51が形成される。そして、ピストン側中空部51内の気体が、ピストン50の側周部50scに開口するピストン側給気口53から気体を流出して、シリンダ3(図2)との間に空気軸受を形成する。ピストン側中空部51には、ピストンピン40の両端部に設けられるピストンピン開口部40oが開口しており、ピン側中空部43とピストン側中空部51とを連通させる。これによって、簡単な構造で、ピン側中空部43内の気体をピストン側中空部51へ供給することができる。
上述したように、コンロッド20の小端部202は、ピストンピン40に組み付けられる(図6、図7−1、図7−3)。図6に示すピン側給気口42は、ピストンピン40の側周部40sに設けられるとともに、ピストンピン40の周方向に対して、略等間隔で複数配置される。
また、ピストンピン40の側周部40sには、ピン側中空部43と連通する気体流入口41が開口している。この気体流入口41は、コンロッド20の小端部202の内周に設けられる溝22とピン側中空部43とを連通させる。溝22は、図7−1に示すように、コンロッド20を構成する小端部202の内周の全周にわたって形成され、ピストン50(図3)が1往復する間に、気体流入口41は溝22に連通する。この溝22によって、ピストンピン40、及びコンロッド20の小端部202の周方向における気体の圧力をバランスさせて、ピストンピン40と小端部202との間に形成される空気軸受の性能を十分に発揮させることができる。
また、溝22には、小端部202側における気体通路21が開口している。ピストン50(図6)が往復運動すると、クランク軸30(図3)が回転軸を中心として回転し、コンロッド20は、ピストンピン40を中心として、ピストンピン40の軸方向に垂直な平面内を所定の角度で揺動運動する。このとき、前記溝22によって、気体流入口41の位置にかかわらず、コンロッド20の気体通路21内の気体を、気体流入口41からピン側中空部43内へ送り込むことができる。なお、前記溝22は、ピストンピン40の外周に形成してもよい。
ピストンピン40の側周部に設けられる気体流入口41は、図7−1に示すように、ピストンピン40のクランク軸側頂部40TB、及びピストン頂面側頂部40TPを避けて配置することが好ましい(図7−1の41a、41b)。スターリングエンジン100は、ピストン50(図3、図6)が上死点にくると、ピストンピン40のピストン頂面側頂部40TPには、上死点から下死点に向かう押付力が作用する。また、クランクケース9内を加圧する場合、ピストン50が下死点にくると、ピストンピン40のクランク軸側頂部40TBには、下死点から上死点に向かう押付力が作用する。
ピストンピン40に気体流入口41を設けると、それだけクランク軸30の強度は低下することになるが、ピストンピン40のクランク軸側頂部40TB、及びピストン頂面側頂部40TPを避けて気体流入口33を設ければ、上死点位置における前記押付力の影響を緩和することができる。その結果、ピストンピン40は強度面で有利になる。
ピストンピン40のクランク軸側頂部40TBを避けて気体流入口41を設けるにあたっては、ピストンピン40のクランク軸側頂部40TBを含む所定の中心角θ2の範囲を避けるようにする。また、ピストンピン40のピストン頂面側頂部40TPを避けて気体流入口41を設けるにあたっては、ピストンピン40のクランク軸側頂部40TBを含む所定の中心角θ4の範囲を避けるようにする。この所定の中心角θ2、θ4は、上又は下死点位置における前記押付力の影響が許容できない範囲であり、スターリングエンジン100の仕様等から決定する。なお、気体流入口41の個数は1個に限定されるものではないが、ピストンピン40の強度を考慮すると、できるだけ少ない方が好ましい。
図6、図7−2に示すように、コンロッド20の小端部202をピストンピン40に組み付けた場合において、コンロッド20の小端部202であって、ピストンピン40に設けられる気体流入口41と、ピン側給気口42との間には、第2圧抜き部23が設けられる。第2圧抜き部23は、第2圧抜き溝23gと、第2連通孔23hとから構成される。
この実施例において、第2圧抜き溝23gは、コンロッド20を構成する小端部202の内周の全周にわたって設けられる。なお、第2圧抜き溝23gは、ピストンピン40の外周の全周にわたって設けてもよい。第2連通孔23hは、一端がコンロッド20の小端部202の表面に、他の一端は第2圧抜き溝23g内に開口して、第2圧抜き溝23gと、クランクケース内部9i(図3)とを連通させる。
これによって、ピストンピン40に設けられる気体流入口41の周辺に漏れ出た気体をクランクケース内部9iに抜いて、気体流入口41周辺における気体の圧力上昇を抑制し、ピストンピン40の周方向における圧力をバランスさせる。その結果、ピストンピン40と、コンロッド20の小端部202との間に形成される空気軸受は、安定して性能を発揮できる。
図6に示すように、コンロッド20の小端部202をピストンピン40に組み付けた場合において、コンロッド20の小端部202であって、ピストンピン40に設けられる気体流入口41と、第2圧抜き部23との間には、ラビリンスシール24が設けられる。ピストンピン40に設けられる気体流入口41の周囲に漏れ出て、第2圧抜き部26からクランクケース内部9iに流出する気体は、できるだけ少ない方がよい。したがって、前記位置にラビリンスシール24を設けて、第2圧抜き部23を通ってクランクケース内部9iへ流出する気体の量を低減する。ラビリンスシール24を設ける場合、気体流入口41と、第2圧抜き部23との間に少なくとも1個設ける。ラビリンスシール24の個数は、スターリングエンジン100やピストン装置1の仕様等によって、適宜決定する。また、気体の漏れ抑制という観点から、ラビリンスシール24は、できるだけ気体流入口41の近傍に設けることが好ましい。
図8−1〜図8−3は、この実施例に係るピストンピンとコンロッドとの他の組み付け例を示す断面図である。ピストンピン40A内のピン側中空部43には、クランク側中空部31、コンロッド20Aの気体通路21を通って、ポンプ10(図3)から気体が供給される。ここで、ピン側中空部43は、ある程度の体積を有しているため、バッファーとしての機能も有する。すなわち、時間にもよるが、気体の供給が短時間断たれたとしても、ピストンピン40Aとコンロッド20Aの小端部202との間に空気軸受を形成できないほど、ピン側中空部43内の気体の圧力が低下する訳ではない。
したがって、気体通路21とピン側中空部43とは、必ずしも常に連通している必要はない。また、図8−1に示すように、コンロッド20Aは、ピストン50が一往復する間に、ピストンピン40Aを中心として、振れ角2×αの範囲で揺動運動する。こおため、ピストン50(図6)が1往復する間に気体通路21と第1気体流入口411とが重なる期間は、気体通路21とクランク軸30の偏芯部30cの気体流出口33(図4、図5−1)とが重なる期間よりも長い。したがって、ピン側中空部43内への気体の供給が断たれる期間は比較的短い。
このため、コンロッド20の小端部の内周等に、周方向に向かう溝(図6、図7−1)を設けなくとも、ピストンピン40Aとコンロッド20Aの小端部202との間に形成される空気軸受を維持できる。図8−1に示すコンロッド20Aの小端部202の内周等には、前記溝22(図6、図7−1)は設けられていない。このようにすれば、コンロッド20A等の加工が容易になる。ただし、第1気体流入口411のみでは、ピストンピン40Aの周方向における気体の圧力バランスが崩れるおそれがある。このため、ピストンピン40Aの中心軸Zpに対して中心角120度の間隔で、第1、第2及び第3気体流入口411、412及び413を配置している。これによって、ピストンピン40Aの周方向における気体の圧力バランスの均衡を維持し、ピストンピン40Aとコンロッド20Aの小端部202との間に形成される空気軸受の機能を安定して発揮させるようにしてある。
なお、ピストンピン40Aの強度を考慮して、上述したように、第1、第2及び第3気体流入口411、412及び413は、ピストンピン40Aのクランク軸側頂部40TB、及びピストン頂面側頂部40TPを避けて配置することが好ましい。これにあたっては、ピストンピン40aのクランク軸側頂部40TBを含む所定の中心角θ2の範囲、及びピストンピン40aのピストン頂面側頂部40TPを含む所定の中心角θ4の範囲を避けるようにする。(中心角θ2、中心角θ4については、図7−1参照)
また、図8−2に示す例では、コンロッド20Bの気体通路21と、ピストンピン40Bの第1気体流入口411とを常に連通させるようにしてある。このため、コンロッド20Bの小端部202の内周には、コンロッド20bの揺動を考慮して、コンロッド20Bの振れ角2×αよりもやや大きい範囲で、第1溝221を設けている。このようにすれば、常にコンロッド20Bの気体通路21とピストンピン40B内のピン側中空部43とが連通するようになる。
なお、ピストンピン40Bの中心軸Zpに対して中心角120度の間隔で、第1、第2及び第3気体流入口411、412及び413と、これらに対応して第1、第2及び第3溝221、222、及び223を配置している。これによって、ピストンピン40Bの周方向における気体の圧力バランスの均衡を維持することができる。また、ピストン50(図6)が1往復する間に、第1、第2及び第3気体流入口411、412及び413は、第1、第2及び第3溝221、222、及び223に連通する。
図8−3に示す例では、ピストンピン40Cの強度を考慮して、上述したように、第1気体流入口411を、ピストンピン40Cのクランク軸側頂部40TBを避けて配置している。これにあたっては、ピストンピン40Cのクランク軸側頂部40TBを含む所定の中心角θ2の範囲を避けるようにする。このため、第1気体流入口411と、コンロッド20Cの気体通路21とが重なり合う期間が短くなり、十分な気体をピン側中空部43内へ供給できないおそれがある。これを回避するため、コンロッド20Cの小端部202の内周に、前記中心角θ2を考慮して、これよりもやや大きい範囲で第1溝221を設けている。このようにすれば、常にコンロッド20Cの気体通路21とピストンピン40C内のピン側中空部43とが連通するようになる。
第1気体流入口411のみでは、ピストンピン40Cの周方向における気体の圧力バランスが崩れるおそれがある。このため、ピストンピン40Cには、ピストンピン40Cの中心軸Zpに対して、第1気体流入口411と対称となる位置に、第2気体流入口412が設けられる。また、コンロッド20Cの小端部202の内周には、ピストンピン40Cの中心軸Zpに対して、第1溝221と対称となる位置に、第2溝222が設けられる。これによって、ピストンピン40Cの周方向における気体の圧力バランスの均衡を維持し、ピストンピン40Cとコンロッド20Cの小端部202との間に形成される空気軸受の機能を安定して発揮させるようにしてある。なお、ピストン50(図6)が1往復する間に、第1、第2気体流入口411、412は、第1、第2溝221、222に連通する。
ここで、第1溝221が設けられる範囲には、ピストンピン40Cのクランク軸側頂部40TBが含まれる。また、第2溝222が設けられる範囲には、ピストンピン40Cのピストン頂面側頂部40TPが含まれる。ピストン50(図6)が上死点又は下死点にくると、ピストンピン40Cのピストン頂面側頂部40TP、又はクランク軸側頂部40TBには押付力が作用する。図8−3に示すピストンピン40Cとコンロッド20Cとの組み付け構造では、コンロッド20Cの小端部202の内周に設けられる第1及び第2溝221、222内の気体の圧力によって、前記押付力を耐えることができる。
(変形例)
この実施例の変形例では、クランク軸の偏芯部の外周に、偏芯部の周方向に向かうとともに偏芯部の最偏芯部を含む溝を設け、さらに前記溝は、前記偏芯部の最も偏芯している部分(最偏芯部)に対してクランク軸の回転軸側に対向する部分を避けて形成される点に特徴がある。図9は、この実施例の変形例に係るクランク軸とコンロッドとの組み付け構造を示す断面図である。図10−1、図10−2は、図9のF−F断面図である。
この実施例の変形例では、クランク軸の偏芯部の外周に、偏芯部の周方向に向かうとともに偏芯部の最偏芯部を含む溝を設け、さらに前記溝は、前記偏芯部の最も偏芯している部分(最偏芯部)に対してクランク軸の回転軸側に対向する部分を避けて形成される点に特徴がある。図9は、この実施例の変形例に係るクランク軸とコンロッドとの組み付け構造を示す断面図である。図10−1、図10−2は、図9のF−F断面図である。
図9、図10−1に示すように、この変形例に係るクランク軸30Aは、偏芯部30cの外周に、偏芯部30cの周方向に向かう溝38が形成されている。溝38は、図10−1に示すように、偏芯部30cの最偏芯部30Eを含み、かつ、最偏芯部30Eに対してクランク軸の回転軸Zr側に対向する部分(最偏芯部対向部)30EOを避けて設けられる。このため、溝38は、回転軸Zrに垂直な断面形状が略C字形状となっている。すなわち、図10−1に示すように、偏芯軸Zcに対して、最偏芯部対向部30EOを含む所定の中心角θ3の範囲には溝38が設けられず、前記中心角θ3を避けて溝38が設けられる。これにより、ピストン50(図3)が1往復する間に、気体流出口33は溝38に連通する。なお、溝38とクランク側中空部31とを連通する気体流出口33は、クランク軸30は強度面を考慮して、偏芯部30の最偏芯部30Eを避けて設けられる。この点は、上記実施例ですでに説明した通りである。
図10−1は、ピストン50(図3)が上死点に位置する状態を示し、図10−2は、ピストン50が下死点に位置する状態を示す。この変形例に係るクランク軸30Aのように溝38を形成すると、偏芯部30cの周方向に対して、偏芯部30cとコンロッド20Dの大端部201との間に存在する気体の圧力に偏りが生ずる。その結果、偏芯部30cの周方向に対して、気体の圧力の不均衡が発生し、最偏芯部対向部30EOから最偏芯部30Eへ向かう押付力FEが、コンロッド20Dの大端部201から偏芯部30cに対して作用する。
ここで、すでに説明したように、ピストン50が上死点にくると、最偏芯部30Eには、上死点から下死点に向かう押付力FTが作用する(図10−1)。この変形例に係るクランク軸とコンロッドの組み付け構造によれば、最偏芯部対向部30EOを避けて溝38を設けたことにより発生する前記押付力FEが、上死点において発生する前記押付力FTを支える。また、クランクケース9内を加圧する場合には、ピストン50が下死点にくると、最偏芯部30Eには、下死点から上死点に向かう押付力FBが作用する(図10−2)。この変形例に係るクランク軸とコンロッドの組み付け構造によれば、最偏芯部対向部30EOを避けて溝38を設けたことにより発生する前記押付力FEが、下死点において発生する前記押付力FBを支える。
ピストン50の上死点、又は下死点においては、ピストン50の往復運動中、最も大きな押付力FTやFEがクランク軸30Aの偏芯部30cに作用するが、この変形例によれば、前記押付力FTやFBは緩和できるので、クランク軸30Aやその偏芯部30cの強度面で有利になる。ここで、前記中心角θ3は、上又は下死点位置における押付力FT又はFB、溝38内に導入される気体の圧力、溝の開口面積等を考慮して決定する。
以上、この実施例及びその変形例では、クランク軸の内部に設けたクランク側中空部から、クランク軸と軸受との間、及びクランク軸の偏芯部とコンロッドの大端部との間に気体を流出させ、空気軸受を形成する。また、ピストンピンの内部に設けたピン側中空部からピストンピンとコンロッドの小端部との間に気体を流出させ、空気軸受を形成する。これによって、ピストンの往復運動を回転運動に変換する熱機関において内部摩擦を低減して、例えば熱源の温度が低い場合であっても、熱機関から動力を取り出すことができる。
また、この実施例及びその変形例では、クランク軸の偏芯部に設けられる気体流出口とクランク側給気口との間に第1圧抜き部を設け、また、ピストンピンに設けられる気体流入口とピン側給気口との間に第2圧抜き部を設ける。これにより、クランク軸の偏芯部の周方向、及びピストンピンの周方向における気体の圧力分布をバランスさせて、安定して空気軸受の機能を発揮させることができる。
なお、上記においては、ピストン装置を備える熱機関がスターリングエンジンである場合の例を用いて、その構成、作用、効果を説明したが、この実施例に係るピストン装置は、スターリングエンジン以外の熱機関や装置に対しても容易に適用可能である。そして、適用された場合には、上記と同様の有用性を有する。
以上のように、本発明に係るピストン装置は、摩擦の低減に有用であり、特に、クランク軸とコンロッドとの組み付け部、及びコンロッドとピストンピンとの組み付け部の摩擦を低減することに適している。
1 ピストン装置(高温側ピストン装置)
3 シリンダ(高温側シリンダ)
9 クランクケース
10 ポンプ
14 軸受部連通孔
15 軸受側圧抜き溝
16 気体供給溝
17 圧抜き孔
20、20A、20B、20C、20D コンロッド
201 大端部(第1端部)
202 小端部(第2端部)
20s コンロッド軸部
21 気体通路
22 溝
23 第2圧抜き部
23g 第2圧抜き溝
23h 第2連通孔
24 ラビリンスシール
25 溝
26 第1圧抜き部
26g 第1圧抜き溝
26h 第1連通孔
27 ラビリンスシール
30、30A クランク軸
30c 偏芯部
30s 回転軸部
30E 最偏芯部
30EO 最偏芯部対向部
31 クランク側中空部
33 気体流出口
口34 クランク側給気口
35 クランク側給気口
37 クランク側給気口
38 溝
40、40A、40B、40C ピストンピン
40o ピストンピン開口部
40TB クランク軸側頂部
40TP ピストン頂面側頂部
40s 側周部
41 気体流入口
42 ピン側給気口
43 ピン側中空部
50 ピストン
100 スターリングエンジン
3 シリンダ(高温側シリンダ)
9 クランクケース
10 ポンプ
14 軸受部連通孔
15 軸受側圧抜き溝
16 気体供給溝
17 圧抜き孔
20、20A、20B、20C、20D コンロッド
201 大端部(第1端部)
202 小端部(第2端部)
20s コンロッド軸部
21 気体通路
22 溝
23 第2圧抜き部
23g 第2圧抜き溝
23h 第2連通孔
24 ラビリンスシール
25 溝
26 第1圧抜き部
26g 第1圧抜き溝
26h 第1連通孔
27 ラビリンスシール
30、30A クランク軸
30c 偏芯部
30s 回転軸部
30E 最偏芯部
30EO 最偏芯部対向部
31 クランク側中空部
33 気体流出口
口34 クランク側給気口
35 クランク側給気口
37 クランク側給気口
38 溝
40、40A、40B、40C ピストンピン
40o ピストンピン開口部
40TB クランク軸側頂部
40TP ピストン頂面側頂部
40s 側周部
41 気体流入口
42 ピン側給気口
43 ピン側中空部
50 ピストン
100 スターリングエンジン
Claims (7)
- 内部に設けられるピン側中空部から気体を流出させるピン側給気口と、前記ピン側中空部に気体を取り込む気体流入口とを備え、かつシリンダ内を往復運動するピストンに取り付けられるピストンピンと、
内部に設けられるクランク側中空部から気体を流出させるクランク側給気口と、前記クランク側中空部の気体を前記ピン側中空部へ送るための気体流出口とを備えるクランク軸と、
第1端部が前記クランク軸の偏芯部に組み付けられ、第2端部が前記ピストンピンに組み付けられて、内部に形成される気体通路を介して前記クランク側中空部の気体を前記ピン側中空部へ送る連結棒と、
前記気体流出口と前記クランク側給気口との間に設けられる第1圧抜き部と、
前記気体流入口と前記ピン側給気口との間に設けられる第2圧抜き部と、
を備えることを特徴とするピストン装置。 - 前記第1圧抜き部と前記気体流出口との間、及び前記第2圧抜き部と前記気体流入口との間には、ラビリンスシールが設けられることを特徴とする請求項1に記載のピストン装置。
- 内部に設けられるピン側中空部から気体を流出させるピン側給気口と、前記ピン側中空部に気体を取り込む気体流入口とを備え、かつシリンダ内を往復運動するピストンに取り付けられるピストンピンと、
内部に設けられるクランク側中空部から気体を流出させるクランク側給気口と、前記クランク側中空部の気体を前記ピン側中空部へ送るための気体流出口とを備えるクランク軸と、
第1端部が前記クランク軸の偏芯部に組み付けられ、第2端部が前記ピストンピンに組み付けられて、内部に形成される気体通路を介して前記クランク側中空部の気体を前記ピン側中空部へ送る連結棒と、を含み、
前記クランク軸が備える気体流出口は、前記偏芯部の最も偏芯している部分を避けて設けられることを特徴とするピストン装置。 - 内部に設けられるピン側中空部から気体を流出させるピン側給気口と、前記ピン側中空部に気体を取り込む気体流入口とを備え、かつシリンダ内を往復運動するピストンに取り付けられるピストンピンと、
内部に設けられるクランク側中空部から気体を流出させるクランク側給気口と、前記クランク側中空部の気体を前記ピン側中空部へ送るための気体流出口とを備えるクランク軸と、
第1端部が前記クランク軸の偏芯部に組み付けられ、第2端部が前記ピストンピンに組み付けられて、内部に形成される気体通路を介して前記クランク側中空部の気体を前記ピン側中空部へ送る連結棒と、を含み、
前記第1端部及び前記第2端部の内周、又は前記ピストンピンの外周及び前記偏芯部の外周に溝を形成し、
前記クランク軸の前記気体流出口、及び前記ピストンピンの前記気体流入口は、前記ピストンが1往復する間に前記溝に連通することを特徴とするピストン装置。 - 前記溝は、前記偏芯部の最も偏芯している部分を含み、かつ前記偏芯部の最も偏芯している部分に対して前記クランク軸の回転軸側に対向する部分を避けて形成されることを特徴とする請求項4に記載のピストン装置。
- 内部に設けられるピン側中空部から気体を流出させるピン側給気口と、前記ピン側中空部に気体を取り込む気体流入口とを備え、かつシリンダ内を往復運動するピストンに取り付けられるピストンピンと、
内部に設けられるクランク側中空部から気体を流出させるクランク側給気口と、前記クランク側中空部の気体を前記ピン側中空部へ送るための気体流出口とを備えるクランク軸と、
第1端部が前記クランク軸の偏芯部に組み付けられ、第2端部が前記ピストンピンに組み付けられて、内部に形成される気体通路を介して前記クランク側中空部の気体を前記ピン側中空部へ送る連結棒と、を含み、
前記クランク軸の回転軸部における前記クランク軸の回転軸に垂直な断面形状は、前記偏芯部における前記クランク軸の回転軸に垂直な断面形状に包含されることを特徴とするピストン装置。 - 内部に設けられるピン側中空部から気体を流出させるピン側給気口と、前記ピン側中空部に気体を取り込む気体流入口とを備え、かつシリンダ内を往復運動するピストンに取り付けられるピストンピンと、
内部に設けられるクランク側中空部から気体を流出させるクランク側給気口と、前記クランク側中空部の気体を前記ピン側中空部へ送るための気体流出口とを備えるクランク軸と、
第1端部が前記クランク軸の偏芯部に組み付けられ、第2端部が前記ピストンピンに組み付けられて、内部に形成される気体通路を介して前記クランク側中空部の気体を前記ピン側中空部へ送る連結棒と、を含むとともに、
前記ピストンは、その内部に形成されるピストン側中空部から、前記ピストンと前記シリンダとの間に気体を流出させるピストン側給気口が側周部に設けられており、
前記ピストンピン内部に形成されるピン側中空部は、前記ピストン側中空部に連通していることを特徴とするピストン装置。
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