JP5415831B2 - 煮豆の生産方法およびそれを含む機能性食品 - Google Patents
煮豆の生産方法およびそれを含む機能性食品 Download PDFInfo
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Description
第一に、煮豆は健康に良い成分を含有する有用な食品であるが、上記文献記載の従来技術においては、咀嚼を促進させる効果を持った煮豆の生産方法が明らかになっていない。そのため、食すことで、咀嚼による健康増進効果をもたらす煮豆、つまり咀嚼を促進させる効果を持った煮豆の生産方法を明らかにする必要があった。
本願発明者は、特に若年層を中心に社会問題となっている、咀嚼力不足や栄養過多による健康の悪化を憂い、咀嚼促進効果を持ち、栄養バランスの取れた食品の開発を目指し研究を行っている。「かむ人は強い」と言われる程、生きて行く上で大事な「咀嚼力」を促進し習慣化する為には、ガム等ではゴミも発生し、機能的に限度があり、他の価値(栄養補給等)は望めない。そこで、素材としては、栄養成分を豊富に含み、安価で、種々の食品(食材)との相性も良いことから、煮豆に着目し、煮豆に咀嚼促進効果を付することを目指して鋭意研究を行った。加えて、毎日摂取してもご飯感覚で飽きがこないように「利用範囲を広く出来るように工夫」することによって、ムリ、ムダのない「合理的摂取方法」で、噛む事を習慣化し、最も大切な「継続」が可能になると考えた。
本実施形態に係る煮豆の生産方法は、a)豆を冷却し、冷却豆を調整する工程と、b)冷却豆と、添加物を含む温水とを混合し、冷却豆/温水混合物を調整する工程と、c)冷却豆/温水混合物を温め、煮豆/温水混合物を調整する工程と、d)煮豆/温水混合物から煮豆を分離する工程と、を含む生産方法である。この生産方法によると、後述する実施例で、微生物の増殖抑制、咀嚼促進効果、高い圧縮応力、好ましい味、好ましい香りを有しており、市販の煮豆と比較して非常に優れた性質を有していることが示されている、煮豆を得ることができる。そのため、この生産方法は煮豆の生産方法として優れており、特に咀嚼促進効果を持った煮豆を生産するために好適に使用できる。
他の実施形態は、a)豆を冷却し、冷却豆を調整する工程と、b)冷却豆と、添加物を含む温水とを混合し、冷却豆/温水混合物を調整する工程と、c)冷却豆/温水混合物を温め、煮豆/温水混合物を調整する工程と、d)煮豆/温水混合物から煮豆を分離する工程と、を含む生産方法で得られうる煮豆を含む咀嚼促進用食品である。この咀嚼促進用食品は、後述する実施例、微生物の増殖抑制、咀嚼促進効果、高い圧縮応力、好ましい味、好ましい香りを有しており、市販の煮豆と比較して非常に優れた性質を有していることが示されている、煮豆を含む。そのため、優れた食品であり、特に咀嚼促進用の食品として好適に使用できる。
他の実施形態は、a)豆を冷却し、冷却豆を調整する工程と、b)冷却豆と、添加物を含む温水とを混合し、冷却豆/温水混合物を調整する工程と、c)冷却豆/温水混合物を温め、煮豆/温水混合物を調整する工程と、d)煮豆/温水混合物から煮豆を分離する工程と、さらに、煮豆を粉末化する工程と、を含む豆粉末の生産方法である。この生産方法で得られる豆粉末は、食品の調理中のみならず、調理後や、調理済みの食品、さらには調味料に混ぜて使用することができる。豆は、栄養バランスに優れた食材なので、上記のように汎用性の高い豆粉末は、優れた栄養補助添加物として好適に使用できる。また、該豆粉末は、そのままでも食べることができるため、優れた機能性食品として好適に使用できる。
(1−1)下準備の工程
乾燥した黒大豆250gを鍋に入れ、2〜3倍量のぬるま湯を加えて2〜3時間程浸す(ぬるま湯の代わりに水を使用した場合は、4時間程度浸す)。次に、黒大豆の入った漬け汁を加熱し、沸騰したら火を止め、すぐに鍋の中身を笊に供し、黒大豆と漬け汁を分離する。なお、煮汁にアクが浮いていたら取り除く。
前記工程で分離した煮豆を笊の上に広げ、冷風機で2〜3分風を当てることで急速冷却し、冷却煮豆を調整する。
前記工程で分離した煮豆を笊の上に広げ、冷風機で2〜3分風を当てることで急速冷却し、冷却煮豆を調整する。
前記工程で分離した煮豆を笊の上に広げ、冷風機で2〜3分風を当てることで急速冷却し、冷却煮豆を調整する。
前記工程で分離した煮豆を笊の上に広げ、冷風機で2〜3分風を当てることで急速冷却し、冷却煮豆を調整する。
工程(1−5)と同様の操作を1回または2回繰り返し行う。1回目または2回目の途中で調整される煮豆/温水混合物を、時々混ぜながら約1.5時間静置する。なお、1回目で調整される煮豆/温水混合物を使用する場合は、2回目の繰り返し動作を省く。
一般的に煮豆は、漬ける工程や煮る工程等に長時間を要し、短くても8時間以上かけて調整することも多い。それに比べて、上記の工程は、その3分の1程度の時間で済み、煮る工程を含めても早ければ3.5時間程度で完成するため、優れた調整方法といえる。また、一般的に黒豆は他の乾燥豆類(例えば、金時豆や小豆など)に比べて硬く、煮豆調整工程における漬け込み時間が長く必要になるが、上記の工程は、黒豆において比較的短時間で煮豆を調整できる優れた方法である。
(2−1)煮豆保存時における微生物増殖の評価
実施例1の方法で調整した揚げ煮豆(黒豆添加物A)と、市販の煮豆(黒豆添加物B)について、保存中の微生物の増殖の様子を観測した。その結果を図1に示す。3週間、37℃に設定したふらん器中に両煮豆をそれぞれ保存したところ、市販の煮豆にのみ1.8×107(個/g)の微生物が見られた。なお、本試験は熊本県産業技術センターに委託して行った。
(2−2)結果の考察
上記の結果から、本発明によって得られる煮豆は、微生物が増殖しにくい性質を持っていることがわかる。したがって、該煮豆は、食品として使用する場合に長時間、安全に保存することができる優れた煮豆であると考えられる。
(3−1)煮豆入りヨーグルトの咀嚼試験
実施例1の方法で調整した揚げ煮豆10gをヨーグルト50gに加え、煮豆入りヨーグルトを調整した。次に、10〜60歳代の男女5名に、煮豆入りヨーグルトとヨーグルトのみをそれぞれ試食させ、飲み込み終わるまでの咀嚼回数と所要時間を計測した。
また、(3−1)と同様の方法において、上記ヨーグルトをアイスクリームに代えて咀嚼回数と所要時間を計測した。
上記の結果から、本発明によって得られる煮豆は、食品に添加することで、咀嚼回数と咀嚼時間をともに増加させる効果を持っていることがわかる。また、該煮豆は、咀嚼効果によって、Ookuma et al., Japanese Journal of Psychosomatic Medicine 40(3) 247-253に記載されている肥満治療や、Tokaji Akihiko, Hiroshima University management review 2 31-40.に記載されている記憶増強のような、好ましい生理的作用をもたらすことが考えられる。加えて、咀嚼促進効果のある煮豆を咀嚼する過程で、同時に煮豆以外の食材を細かく粉砕するため、胃や腸へ運ばれる食材が通常よりも小さい形状になり、胃や腸での消化吸収を助ける効果が得られる。さらには沢山噛むことで満腹中枢を刺激し、少量でも満腹感を得ることができる。
(4−1)各種条件下における煮豆の圧縮応力評価
実施例1の方法で調整した揚げ煮豆を、常温保存、冷凍後に解凍、蒸す、または茹でる、の4種類の条件を与えた後に圧縮させ、そのときの該煮豆の応力を測定した。その実施条件と結果を図3に示す。なお、図中の試験区は実施例1の方法で調整した揚げ煮豆を、対象区は市販の煮豆を表す。測定の結果、4種類の条件いずれにおいても、対照区と比較して試験区の煮豆の方が、高い圧縮応力を示した。
上記の結果から、本発明によって得られる煮豆は、高い圧縮応力を有していることがわかる。また、常温保存、冷凍後に解凍、蒸す、または茹でるといった種々の条件下においても、市販の煮豆よりも優位な圧縮応力を保つことがわかる。したがって、本発明によって得られる煮豆は、上記の条件を与えた後においても高い咀嚼効果を持続することができる、優れた煮豆であると考えられる。
(5−1)煮豆の、味、香り、粉っぽさの評価
実施例1の方法で調整した豆粉末をおにぎりに添加した場合の、味、香り、粉っぽさを評価した。その実施条件と結果を図4に示す。図中のAは実施例1の方法で調整した豆粉末を添加したおにぎりを、Bは調味料で味付けした市販の黒豆きな粉を添加した、おにぎりを表す。評点を1、1.5、2、2.5、3の5段階に設定し、20人の評価員が実際に食べて評価した。また、AとBの結果の有意差をt-検定で調べた。その実施条件と結果を図5に示す。
上記の結果より、本発明によって得られる豆粉末は、味、香り、粉っぽさいずれにおいても市販の豆粉末よりも高い水準にあることがわかる。また、t-検定においては、一般的な優位水準である5%をいずれも下回っており、検体として用いたAとBは統計的に優位に差があることがわかる。したがって、本発明によって得られる豆粉末は、市販の豆粉末と比較して、より好ましい味、より好ましい香りを有しており、非常に優れた豆粉末であると考えられる。なお、おにぎりは、それ自体には味がほとんどなく、かつ食感が適度にあるため、官能評価する際の素材として非常に優れている。そのため、上記官能評価の結果は高い信頼性を有していると考えられる。
(6−1)煮豆、豆粉末を含む食品の調整
炊き込みご飯、チャーハン、おにぎり、五色丼、野菜サラダ、ポテトサラダ、ホーレン草の和え物、白和え、カレーライス、パスタ、カマボコ、蒸し万十、餅、団子、くし団子、アイスクリームをそれぞれ調整する過程において、実施例1の方法で調整した揚げ煮豆を加えて調整した。また、卵焼き、およびおにぎりを調整する過程において、実施例1の方法で調整した豆粉末を加えて調整した。その結果を図6に示す。
図6によると、炊き込みご飯、チャーハン、おにぎり、五色丼、野菜サラダ、ポテトサラダ、ホーレン草の和え物、白和え、カレーライス、パスタ、カマボコ、蒸し万十、餅、団子、くし団子、アイスクリームの、いずれの食品においても煮豆が原形を留めている。そのため、本発明によって得られる煮豆は、食品へ添加して利用できることがわかる。また、実施例3と4より、本発明によって生産される煮豆が咀嚼促進効果を持っていることが示唆されていることから、本発明によって生産される煮豆を含有する上記食品群も、同様に咀嚼促進効果を持っていることが考えられる。
上記の実施例1〜5の実験結果から、冷却した豆と、添加物を含む温水とを混合し、冷却豆/温水混合物を調整する工程と、前記冷却豆/温水混合物を温め、煮豆/温水混合物を調整する工程と、前記煮豆/温水混合物から煮豆を分離する工程と、を含む生産方法によって、非常に優れた煮豆を生産できたことがわかる。つまり、上記生産方法によって、微生物の増殖抑制、咀嚼促進効果、高い圧縮応力、好ましい味、好ましい香りを有しており、市販の煮豆と比較して非常に優れた性質を有している、煮豆を得ることができる。また、該煮豆を食品に添加することで、咀嚼促進効果を有する食品を得ることができると考えられる。さらに、該煮豆を粉末化すれば、優れた栄養補助添加物として好適に使用できると考えられる。
Claims (1)
- a)豆を冷却し、冷却豆を調整する工程と、
b)前記冷却豆と、添加物を含む温水とを混合し、冷却豆/温水混合物を調整する工程と、
c)前記冷却豆/温水混合物を温め、煮豆/温水混合物を調整する工程と
d)前記煮豆/温水混合物から煮豆を分離する工程と、
e)前期分離した煮豆を冷却し、冷却豆を調整する工程と、
f)前記煮豆を分離する工程の後にさらに、工程b)、c)、d)を含む工程を1回以上含む工程と、
g)前記冷却豆を片栗粉でコーティングする工程と、
h)前記コーティングした冷却豆を、油で揚げる工程と、
i)前記油で揚げた豆を粉末化する工程と、を含み、
前記豆は、黒豆であり、
前記冷却豆を調整する工程には、乾燥した黒大豆をぬるま湯または水に所定時間浸したあと加熱し沸騰したらすぐに黒豆と漬け汁を分離し、分離した煮豆を冷却する工程を含み、
前記添加物を含む温水は、前記漬け汁に調味料を加えて加熱濃縮し、濃縮後の漬け汁に前記冷却黒豆を絡めて加熱し、煮豆と煮汁を分離した後の煮汁であり、
前記粉末化する豆の粒径は、0.5mm以下である黒豆調味料の生産方法。
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