JP5395264B2 - 黄色ブドウ球菌(staphylococcusaureus)抗原の免疫原性組成物 - Google Patents
黄色ブドウ球菌(staphylococcusaureus)抗原の免疫原性組成物 Download PDFInfo
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Description
この出願は、2009年6月22日に出願された米国仮特許出願第61/219,134号の優先権を主張するものであり、該出願の全体は、参照することによって本明細書に組み込まれる。
本発明は、ブドウ球菌生物、例えば黄色ブドウ球菌(S.aureus)から得られる少なくとも3つの抗原を含む免疫原性組成物に関する。抗原は、生化学的単離手順を用いて生物から単離され得るか、または、合成もしくは組換え手段によって生産され得る。抗原は、ポリペプチドまたは多糖またはそれらの組み合わせであり得る。これらの免疫原性組成物は、ブドウ球菌生物によって生じる感染に対して対象を免疫化するためのワクチンの製造において用いることができる。これらの組成物における使用に適した成分は、以下でさらに詳細に記載される。
黄色ブドウ球菌(S.aureus)は、表在性の皮膚感染から、肺炎、敗血症、および心内膜炎などの生命に関わる症状にわたる、広範なヒト疾患の原因物質である。Lowy N.Eng.J.Med.339:580〜532(1998)を参照されたい。侵襲性の疾患のケースでは、黄色ブドウ球菌(S.aureus)は、血液、脳脊髄液CSF、胸水、心膜液、腹水、関節液/滑液、骨、体内部位(リンパ節、脳、心臓、肝臓、脾臓、ガラス体液、腎臓、膵臓、卵巣)、または他の通常は無菌の部位を含む、通常は無菌の身体部位から単離され得る。これは、菌血症、肺炎、蜂巣炎、骨髄炎、心内膜炎、および敗血症性ショックなどの生命に関わる臨床的症状をもたらし得る。成人、高齢者、および小児の患者が、黄色ブドウ球菌(S.aureus)の感染について最もリスクがある。
あらゆる特定の院内株または疾患株が、由来源、クローンの関連性を決定するため、および発生の疫学をモニタリングするために有用である。多くの方法が、黄色ブドウ球菌(S.aureus)株の分類に利用可能である。細菌種の従来の実用的な定義は、70%を超えるゲノムハイブリダイゼーション(DDHのDNA−DNAゲノムハイブリダイゼーション)および97%を超える16SリボソームRNA遺伝子配列同一性によって特徴付けされる、株の1群である。Vandammeら、Microbiol.Rev.60:407〜438(1996)を参照されたい。バクテリオファージ分類(BT)は、特定のファージ型による溶解に対する感受性に基づいて黄色ブドウ球菌(S.aureus)株を分類する方法である。Blairら、Bull.W.H.O.24:771〜784(1961)を参照されたい。この古い方法は、実験室間での再現性を欠き、単離体の15〜20%を分類できない。
主要な黄色ブドウ球菌(S.aureus)株の感染に対して防御するための最適な免疫原性組成物が単一成分から構成されるべきかまたは多成分から構成されるべきかということについて、問題が生じる。多数の研究によって、単一のタンパク質成分または炭水化物成分に基づく免疫原性組成物が、特定の動物モデルにおいて、その成分を発現する黄色ブドウ球菌(S.aureus)株でのチャレンジからのある程度の防御をもたらし得ることが示されている。重要なことに、単一抗原からの防御が、選択される株に依存し得ることも実証されている。
本明細書において記載される免疫原性組成物はまた、特定の実施形態において、1つまたは複数のアジュバントを含む。アジュバントは、免疫原または抗原と共に投与されると免疫応答を増強させる物質である。限定はしないがインターロイキン1−α、1−β、2、4、5、6、7、8、10、12(例えば、米国特許第5,723,127号を参照されたい)、13、14、15、16、17、および18(およびその突然変異形態)、インターフェロンα、β、およびγ、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)(例えば、米国特許第5,078,996号およびATCC受託番号39900を参照されたい)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、ならびに腫瘍壊死因子αおよびβを含む、多くのサイトカインまたはリンホカインが、免疫調節活性を有し、したがってアジュバントとして有用であることが示されている。本明細書において記載される免疫原性組成物と共に有用であるさらに他のアジュバントには、限定はしないがMCP−1、MIP−1α、MIP−1β、およびRANTESを含むケモカイン;セレクチン、例えばL−セレクチン、P−セレクチン、およびE−セレクチンなどの接着分子;ムチン様分子、例えば、CD34、GlyCAM−1、およびMadCAM−1;LFA−1、VLA−1、Mac−1、およびp150.95などのインテグリンファミリーのメンバー;PECAM、ICAM(例えばICAM−1、ICAM−2、およびICAM−3)、CD2、およびLFA−3などの免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバー;B7−1、B7−2、CD40、およびCD40Lなどの共刺激分子;血管成長因子、神経成長因子、線維芽細胞成長因子、上皮成長因子、PDGF、BL−1、および血管内皮成長因子を含む成長因子;Fas、TNF受容体、Flt、Apo−1、p55、WSL−1、DR3、TRAMP、Apo−3、AIR、LARD、NGRF、DR4、DR5、KILLER、TRAIL−R2、TRICK2、およびDR6を含む受容体分子;ならびにカスパーゼ(ICE)が含まれる。
ClfA:ドメインの構成
クランピング因子A(ClfA)は、フィブリノーゲン結合部位を介する宿主マトリクスタンパク質への結合に関連する、黄色ブドウ球菌(S.aureus)の表面タンパク質である。ClfAは、カルボキシル末端のLPXTG(配列番号125)モチーフを含有するタンパク質ファミリーのメンバーであり、該モチーフによって、該タンパク質が細胞表面に共有結合することが可能になる。ClfAはまた、フィブリノーゲン(ClfAによって結合される)、フィブロネクチン結合タンパク質(FnbAおよびFnbB)、コラーゲン結合タンパク質(Cna)などの宿主タンパク質の結合に関連する、別のタンパク質ファミリー(微生物表面成分認識接着マトリクス分子、またはMSCRAMM)にも属する。これらのタンパク質は全て、細胞表面への輸送を仲介するアミノ末端シグナル配列を共有する。MSCRAMMはまた、リガンドの結合(例えば、フィブリノーゲン、フィブロネクチン、エラスチン、ケラチン)のための活性部位を含有する機能的領域であるAドメインを含む。Aドメインの後には、セリンアスパラギン酸反復(SD反復)から構成される領域があり、これはペプチドグリカン層に広がると考えられる。SD反復の後には、ペプチドグリカンへのタンパク質の共有結合のためのLPXTG(配列番号125)モチーフを含む膜貫通領域がある。ClfAは、米国特許第6,008,341号において記載されている。
ClfAと呼ばれるクランピング因子タンパク質Aの遺伝子はクローニングされており、配列決定されており、そして分子レベルで詳細に分析されている(McDevittら、Mol.Microbiol.11:237〜248(1994);McDevittら、Mol.Microbiol.16:895〜907(1995))。111個の黄色ブドウ球菌(S.aureus)疾患原因単離体のClfAのアミノ酸配列についての配列識別記号を、表10に示す。黄色ブドウ球菌(S.aureus)株PFESA0237の完全長(シグナル配列を含む)野生型ClfAのアミノ酸配列を、配列番号130に示す。この配列は、338位にチロシンを有し、これは、ClfAの突然変異形態ではアラニンに変化する。N123領域、反復領域、およびアンカー領域を含む、黄色ブドウ球菌(S.aureus)株PFESA0237の野生型ClfAをコードする完全長遺伝子を、配列番号131に示す。ClfAのY338A突然変異形態のアミノ酸配列を、配列番号123に示す。しかし、チロシンからアラニンへの変化は、野生型ClfAでは配列番号130の338位で生じ、Y338Aと呼ばれるが、ClfAの突然変異形態では、配列番号123の310位にあることに留意されたい。さらに、配列番号123のアミノ酸配列に示されるClfAの突然変異形態は、シグナル配列を有さないClfAの成熟形態であり、したがって、配列番号130と配列番号123との間のこの突然変異の位置の違いを説明するものである。
ClfBは、フィブリノーゲン結合活性を有する黄色ブドウ球菌(S.aureus)タンパク質であり、黄色ブドウ球菌(S.aureus)に血漿の存在下で凝集塊を形成させる。ClfBはMSCRAMMタンパク質であり、リガンドの結合(例えば、フィブリノーゲン、フィブロネクチン、エラスチン、ケラチン)のための活性部位を含有する機能的領域であるAドメインを含む特徴的なMSCRAMMドメイン構成を示す。Aドメインの後には、セリンアスパラギン酸反復(SD反復)から構成される領域があり、これはペプチドグリカン層に広がると考えられる。SD反復の後には、ペプチドグリカンへのタンパク質の共有結合のためのLPXTG(配列番号125)モチーフを含む膜貫通領域がある。ClfBは、WO99/27109および米国特許第6,680,195号において記載されている。
ClfBをコードする遺伝子は、核アドヘシン遺伝子として分類される。複数の病状に関連する92の黄色ブドウ球菌(S.aureus)株のClfBの配列を、表11にまとめる。さらなる配列は、GenBankから得た。
他のMSCRAMMSを、本発明の免疫原性組成物における使用のために考慮することができる。例えば、セリンアスパラギン酸反復(Sdr)タンパク質、SdrC、SdrD、およびSdrEは、一次配列および構造的構成においてClfAタンパク質およびClfBタンパク質に関連しており、細胞表面上に位置している。SdrCタンパク質、SdrDタンパク質、およびSdrEタンパク質は、細胞壁に関連するタンパク質であり、N末端にシグナル配列を有し、C末端にLPXTG(配列番号125)モチーフ、疎水性ドメイン、および正に荷電した残基を有する。それぞれはまた、細胞表面上でのリガンド結合ドメインの領域Aの効率的な発現をBモチーフに沿って可能にするために十分な長さの領域Rを含有する、SD反復を有する。細胞表面上に位置するSdrCタンパク質、SdrDタンパク質、およびSdrEタンパク質は、これらのタンパク質のA領域で、血漿内のタンパク質、細胞外マトリクス、または宿主細胞の表面上の分子と相互作用し得る。Sdrタンパク質は、ClfAおよびClfBと、ある程度限定されたアミノ酸配列類似性を共有する。ClfAおよびClfBと同様に、SdrC、SdrD、およびSdrEもまた、細胞外マトリクスタンパク質の、陽イオン依存性のリガンド結合を示す。
侵襲的な疾患を生じさせ得るブドウ球菌微生物はまた、通常、細菌を莢膜化し、宿主の本来の免疫系によるクリアランスに対するその耐性を増強させる、被膜多糖(CP)を生産し得る。CPは、細菌細胞を、貪食作用および細胞内死滅に対する耐性を細菌にもたらす防御性被膜で覆うために役立つ。被膜を有さない細菌は、より貪食作用を受けやすい。莢膜多糖は、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、およびB群ブドウ球菌を含む多くの細菌病原体にとって重要な病原性因子であることが多い。
特定の被膜血清型と疾患との関連付けは、臨床単離体のモニタリングを通して可能である。同定された(KarakawaおよびVann(1982)黄色ブドウ球菌(S.aureus)の8つの異なる血清型のうち、血清型1および2のみが重度に莢膜化されており、これらはほとんど単離されない。Capsular Polysaccharides of Staphylococcus aureus、p.285〜293、In J.B.Robbins、J.C.HillおよびJ.C.Sadoff(編)、Seminars in infectious disease、vol.4、Bacterial Vaccines.Thieme Stratton,Inc.New York)を参照されたい。調査によって、黄色ブドウ球菌(S.aureus)の臨床単離体のおよそ85〜90%がCP5またはCP8を発現することが示されている(Arbeit RDら、Diagn.Microbiol.Infect.Dis.(1984)Apr、2(2):85〜91;Karakawa WWら、J.Clin.Microbiol.(1985)Sep、22(3):445〜7;Essawi Tら、Trop.Med.Int.Health.(1998)Jul、3(7):576〜83;Na’was Tら、J.Clin.Microbiol.(1998)36(2):414〜20。CP5およびCP8の分類不可能な株のほとんどは、遺伝的に、cap5/8遺伝子座内に突然変異を含有する5型または8型である(Cocchiaro,Gomezら、(2006)、Mol.Microbiol.Feb.59(3):948〜960)。いくつかの株の莢膜化は、インビトロでの数回の継代の間に迅速に喪失し、これは、被膜の生産に対する臨床診断で用いられる培地における高いリン酸濃度の抑制作用に起因する。莢膜化されていない単離体が、牝牛を通った後に被膜の発現を回復することも報告された。Opdebeck,J.P.ら、J.Med.Microbiol.19:275〜278(1985)を参照されたい。いくつかの分類不可能な株は、適切な成長条件下で被膜陽性となる。
CP5およびCP8の両方の反復単位は、2−アセトアミド−2−デオキシ−D−マンヌロン酸、2−アセトアミド−2−デオキシ−L−フコース、および2−アセトアミド−2−デオキシ−D−フコースから構成される。C.Jonesら、Carbohydr.Res.340:1097〜1106(2005)を参照されたい。CP5およびCP8は同一の糖組成を有するが、これらは、免疫学的に異なることが実証されている。これらは、グリコシド結合およびウロン酸のO−アセチル化の部位が異なる。FucNAc残基の1つの株依存性の不完全なN−アセチル化が観察された。Tzianabosら、PNAS V98:9365(2001)を参照されたい。
黄色ブドウ球菌(S.aureus)の被膜多糖の分子量は、免疫原性組成物における使用のための重要な考慮事項である。高分子量の被膜多糖は、抗原表面上に存在するエピトープの価数が高いことに起因して、特定の抗体免疫応答を誘発し得る。本明細書において記載される方法は、これまでに入手可能であったものよりもはるかに高い分子量の被膜多糖5型および8型の単離および精製を提供する。
MntC/SitC/唾液結合タンパク質は、ABC輸送タンパク質であり、表皮ブドウ球菌(S.epidermidis)および黄色ブドウ球菌(S.aureus)において相同体を有する。これは本発明において、MntCと呼ばれる。このタンパク質は、32kDaのリポタンパク質であり、細菌細胞壁内に位置する。SellmanらおよびCockayneら、Infect.Immun.66:3767(1998)を参照されたい。表皮ブドウ球菌(S.epidermidis)において、これは、鉄調節型オペロンの成分である。これは、ストレプトコッカス・パラサングイス(S.parasanguis)のFimAを含むアドヘシンおよび証明されたまたは推定上の金属鉄輸送機能を有するABC輸送体ファミリーのリポタンパク質の両方に対して、顕著な相同性を示す。(黄色ブドウ球菌(S.aureus)の株および配列については表12を参照されたい。)
MntCの黄色ブドウ球菌(S.aureus)相同体は、唾液結合タンパク質として知られており、米国特許第5,801,234号において開示され、本発明の免疫原性組成物内に含まれ得る。MntC/SitC/唾液結合タンパク質の黄色ブドウ球菌(S.aureus)相同体のタンパク質配列は、株Mu50では、GenBank受託番号NP_371155で見られる。(SAV0631としても知られている。)配列識別記号は、配列番号119である。株Mu50の完全なゲノムのヌクレオチド配列についての受託番号は、NC_002758.2(座標704988〜705917)である。
MntC/SitC/唾液結合タンパク質の表皮ブドウ球菌(S.epidermidis)相同体は、SitCとして知られており、Sellmanら(Sellmanら、Infect.Immun.2005 October、73(10):6591〜6600)において開示された。MntC/SitC/唾液結合タンパク質の表皮ブドウ球菌(S.epidermidis)相同体のタンパク質配列は、GenBank受託番号YP_187886.1で見られる。(SERP0290としても知られている。)配列識別記号は、配列番号121である。
本発明の免疫原性組成物における使用のために考慮される別の考えられる候補抗原には、黄色ブドウ球菌(S.aureus)表面タンパク質鉄表面決定基B(IsdB)が含まれる。このMSCRAMMは、Mazmanianら(Mazmanian,SKら、Proc.Natl.Acad.Sci.、USA 99:2293〜2298(2002))によって記載されており、これはその後試験されて、感染のマウスモデルおよびKuklinら(Kuklin,NAら、Infection and Immunity、Vol.74、No.4、2215〜2223(2006))によるアカゲザルの免疫原性研究において、ワクチン候補として効果的であることが示されている。このIsdB分子は、株MRSA252(タンパク質受託番号CAG40104.1)、株Newman(タンパク質受託番号BAF67312.1)、株MSSA476(タンパク質受託番号CAG42837.1)、株Mu3(タンパク質受託番号BAF78003.1)、株RF122(タンパク質受託番号CAI80681.1)を含む、様々な株の黄色ブドウ球菌(S.aureus)において存在する。
本発明の免疫原性組成物はまた、Opp3a、DltD、HtsA、LtaS、IsdA、IsdC、SdrF、SdrG、SdrH、SrtA、SpA、Sbiα溶血素(hla)、β溶血素、フィブロネクチン結合タンパク質A(fnbA)、フィブロネクチン結合タンパク質B(fnbB)、コアグラーゼ、Fig、map、パントン・バレンタイン型ロイコシジン(pvl)、α毒素およびその変型、γ毒素(hlg)および変型、ica、免疫優性ABC輸送体、Mg2+輸送体、Ni ABC輸送体、RAP、自己溶解酵素、ラミニン受容体、IsaA/PisA、IsaB/PisB、SPOIIIE、SsaA、EbpS、Sas A、SasF、SasH、EFB(FIB)、SBI、Npase、EBP、骨シアロ結合タンパク質II、アウレオリシン前駆体(AUR)/Sepp1、Cna、ならびにそれらの断片、例えば、M55、TSST−1、mecA、ポリ−N−アセチルグルコサミン(PNAG/dPNAG)エキソ多糖、GehD、EbhA、EbhB、SSP−1、SSP−2、HBP、ビトロネクチン結合タンパク質、HarA、EsxA、EsxB、エンテロトキシンA、エンテロトキシンB、エンテロトキシンC1、および新規な自己溶解酵素という抗原の1つまたは複数を含み得る。本発明の特定の実施形態において、免疫原性組成物が特定の形態のCP5および/またはCP8を含む場合、これはPNAGをさらに含まない可能性がある。
1つの実施形態において、本発明の免疫原性組成物はさらに、アジュバント、緩衝剤、抗凍結剤、塩、二価陽イオン、非イオン性洗浄剤、遊離ラジカル酸化の阻害剤、希釈剤、または担体の、少なくとも1つを含む。
本発明の免疫原性組成物は、単位用量形態または複数用量形態(例えば、2回用量、4回用量、またはそれ以上)に包装され得る。複数用量形態では、バイアルが典型的であるが、必ずしも充填前のシリンジより好ましいというわけではない。適切な複数用量形態には、限定はしないが、用量あたり0.1から2mLでの容器当たり2から10回用量が含まれる。特定の実施形態において、用量は、0.5mL用量である。例えば、参照することによって本明細書に組み込まれる国際特許出願WO2007/127668を参照されたい。
1つの実施形態において、本発明は、黄色ブドウ球菌(S.aureus)生物の少なくとも3つの抗原を含む免疫原性組成物を提供する。
ブドウ球菌感染を予防するために宿主を免疫化するための方法も提供される。好ましい実施形態において、宿主はヒトである。したがって、宿主または対象は、免疫学的量の、本明細書において記載される免疫原性組成物を投与される。免疫原性組成物の免疫学的量は、徐々に増加する量の免疫原性組成物で対象を免疫化し、そして免疫応答を分析して最適な投薬量を決定する、用量応答研究を行うことによって決定され得る。研究の開始点は、動物モデルにおける免疫化データから推論することができる。投薬量は、個体の具体的な状態に応じて変化し得る。量は、当業者に知られている手段を用いる習慣的な試験で決定され得る。いくつかの実施形態において、ブドウ球菌感染、疾患、または症状を予防するために宿主を免疫化する方法は、ヒトの、獣医的な、動物の、または農業的な治療を含む。別の実施形態は、対象におけるブドウ球菌属(Staphylococcus sp.)に関連するブドウ球菌感染、疾患、または症状を予防するために宿主を免疫化する方法を提供し、この方法は、本明細書において記載される免疫原性組成物からポリクローナル抗体調製物またはモノクローナル抗体調製物を生成すること、および前記抗体調製物を用いて対象に受動免疫をもたらすことを含む。
本明細書において記載される免疫原性組成物のいずれか1つの効力の評価において用いるためのいくつかの動物モデルを、以下に記載する。
受動免疫化モデル
マウスを、免疫性のIgGまたはモノクローナル抗体で、腹腔内(i.p.)で受動免疫化する。マウスをその後、24時間後に、致死用量の黄色ブドウ球菌(S.aureus)でチャレンジする。細菌チャレンジは静脈内(i.v.)またはi.p.で投与して、あらゆる生存が確実に抗体と細菌との特異的なインビボでの相互作用に起因し得るようにする。細菌チャレンジ用量は、免疫化されていない対照マウスのおよそ20%が致死的な敗血症となるために必要な用量となるよう決定される。生存研究の統計的評価は、カプランマイヤー分析によって実施され得る。
このモデルにおいて、マウス(例えば、Swiss Websterマウス)を、0週目、3週目、および6週目に(または他の類似の適切に間隔の開いたワクチン接種スケジュールで)標的抗原で腹腔内(i.p.)または皮下(s.c.)で能動免疫化し、その後、8週目に、静脈内経路で黄色ブドウ球菌(S.aureus)でチャレンジする。細菌チャレンジ用量は、10〜14日間の期間にわたり対照群のおよそ20%が生存するように調整される。生存研究の統計的評価は、カプランマイヤー分析によって実施され得る。
黄色ブドウ球菌(S.aureus)により生じる感染性心内膜炎(IE)の受動免疫化モデルは、これまでに用いられており、ClfAが防御免疫を誘発し得ることを示している。Vernachioら、Antmicro.Agents & Chemo.50:511〜518(2006)を参照されたい。IEのこのモデルにおいて、ウサギまたはラットを用いて、中心静脈カテーテル、菌血症、および遠位の器官への血行性播種を含む臨床的感染を刺激する。無菌性大動脈弁疣腫を有する、カテーテル挿入されたウサギまたはラットに、標的抗原に特異的なモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体の単回または複数回の静脈内注射を投与する。その後、動物を、黄色ブドウ球菌(S.aureus)株または表皮ブドウ球菌(S.epidermidis)株で、i.v.でチャレンジする。チャレンジ後、心臓、心臓疣腫、および腎臓を含むさらなる組織、および血液を採取し、培養する。次に、心臓組織、腎臓、および血液におけるブドウ球菌感染の頻度を測定する。1つの研究において、動物をMRSE ATCC 35984またはMRSA 67−0でチャレンジした場合、ClfAに対するポリクローナル抗体調製物またはモノクローナル抗体を用いて、感染率の有意な低減が示された。Vernachioら、Antmicro.Agents & Chemo.50:511〜518(2006)を参照されたい。
腎盂腎炎モデルにおいて、マウスを、0週目、3週目、および6週目に(または他の類似の適切に間隔の開いたワクチン接種スケジュールで)標的抗原で免疫化する。その後、動物を、黄色ブドウ球菌(S.aureus)PFESA0266でi.p.またはi.v.でチャレンジする。48時間後、腎臓を採取し、細菌CFUを数える。
本発明はさらに、本発明の免疫原性組成物の1つまたは複数の抗原に特異的および選択的に結合する抗体および抗体組成物を提供する。いくつかの実施形態において、抗体は、本発明の免疫原性組成物を対象に投与すると生成する。いくつかの実施形態において、本発明は、本発明の免疫原性組成物の抗原の1つまたは複数に対する精製または単離された抗体を提供する。いくつかの実施形態において、本発明の抗体は、動物効力モデルにおける細菌の死滅またはオプソニン性貪食死滅アッセイを介する細菌の死滅によって測定されるように機能的である。いくつかの実施形態において、本発明の抗体は、対象に受動免疫をもたらす。本発明はさらに、当業者に周知の技術を用いて、本発明の抗体または抗体断片をコードするポリヌクレオチド分子、ならびに本発明の抗体または抗体組成物を生産する細胞または細胞系(ハイブリドーマ細胞または抗体の組換え生産のための他の操作された細胞系)およびトランスジェニック動物を提供する。
クランピング因子A(ClfA)およびB(ClfB)は、フィブリノーゲン(ClfA、ClfB)およびサイトケラチン10(ClfB)を含む宿主タンパク質への結合に寄与する、黄色ブドウ球菌(S.aureus)の表面タンパク質である。ClfAおよびClfBは、カルボキシ末端のLPXTG(配列番号:125)モチーフを含有するタンパク質ファミリーのメンバーであり、該モチーフによって、該タンパク質が細胞表面に共有結合することが可能になる。ClfAおよびClfBの両方は、フィブリノーゲン(ClfA、ClfB)、フィブロネクチン(FnbAおよびFnbB)、コラーゲン(Cna)などの宿主の細胞外マトリクスタンパク質を認識し結合するタンパク質(微生物表面成分認識接着マトリクス分子、またはMSCRAMM)ファミリーに属する。これらのタンパク質は全て、細胞表面への輸送を仲介するアミノ末端シグナル配列を共有する。MSCRAMMはまた、フィブリノーゲン、フィブロネクチン、エラスチン、およびケラチンのためのリガンド結合部位を含有する機能的領域であるAドメインを含む。Aドメインの後には、セリン−アスパラギン酸反復(SD反復)から構成される領域があり得、これはペプチドグリカン層に広がると考えられる。SD反復の後には、ペプチドグリカンへのタンパク質の共有結合のためのLPXTG(配列番号125)モチーフを含む膜貫通領域がある。
前臨床効力データを生成するために用いられる異なる形態のrClfAタンパク質には、HisClfA(N123)、T7ClfA(N123)、T7ClfA(N123)、Y338A、ClfA(N23)、およびClfA(N23)Y338Aが含まれる。図1を参照されたい。ClfA遺伝子は、残基40〜559に対応する黄色ブドウ球菌(S.aureus)PFESA0237のA領域コード配列を含有する。黄色ブドウ球菌(S.aureus)からクローニングされたリーディングフレームを、ベクター(MRGSHHHHHHGS 配列番号127)のN末端HisTagおよびリンカー配列に融合し、それとともに、C末端に3つのさらなるコード配列(KLN)を導入した。(詳細な手順については以下を参照されたい。)このベクターから発現されたタンパク質を全ての実験に用い、その際、これはHisClfA(N123)と呼ばれる。
黄色ブドウ球菌(S.aureus)株PFESA0237のアミノ酸残基40〜559に対応するClfAのコード配列をクローニングし、突然変異Y338Aを導入して、フィブリノーゲンの結合を排除した。突然変異型ClfA遺伝子をT7 RNAポリメラーゼ発現ベクターpET9a(Novagen)内に導入して、プラスミドpLP1179を得た。pLP1179内のT7プロモーターおよびコード領域を含む領域のDNA配列は、配列番号124である。発現ベクターを大腸菌(E.coli)BLR(DE3)(Novagen)内に形質転換し、組換えClfAを生産した。
プラスミド骨格pET9a(Novagenから得た)を用いて、T7プロモーターのT7ClfA(N123)Y338Aを発現するpLP1179を構築した。このプラスミドは、正の選択のためのカナマイシン耐性遺伝子(KanR)を含有する。当初、BL21(DE3)大腸菌(E.coli)宿主株 [F−ompT hsdSB(rB −mB −)gal dcm(DE3)](Novagen)を用いて、T7ClfA(N123)Y338Aの発現を得た。DE3という記号は、T7 RNAポリメラーゼの発現の誘発とその後のpLP1179内に存在するClfA(N123)Y338Aコード配列に近接するT7プロモーターからの転写とに用いられるlacUV5(IPTG誘発性)プロモーターの制御化にあるT7 RNAポリメラーゼ遺伝子を含有するラムダ溶原菌を意味する。宿主株は、BL21(DE3)溶原性宿主株が大規模な発酵の際に溶解性ファージを誘発し得るという情報を受けると、recA BLR(DE3)宿主株[F−ompT hsdSB(rB −mB −)gal dcmΔ(sri−recA)306::Tn10(TcR)(DE3)](Novagen)に変化した。
ClfAの生産のために、大腸菌(E.coli)BLR(DE3)/pLP1179を、バイオリアクターにおいてグルコースフェドバッチモードで、規定の培地内で成長させた。培養物が30〜50の間の光学密度(OD600)に達すると、IPTGを添加することによってClfAの発現を誘発した。培養物を、誘発後3〜16時間の間に採取した。
アミノ酸残基44〜542に対応するClfBコード配列をT7 RNAポリメラーゼ発現ベクターpET28a(Novagen)内にクローニングして、プラスミドpPX1189を得た。発現ベクターを大腸菌(E.coli)BLR(DE3)(Novagen)内に形質転換し、組換えClfBを生産した。(Walshら、Microbiology 154:550〜558(2008)を参照されたい。)
黄色ブドウ球菌(S.aureus)の脂質化されたMntCのクローニング
組換えMntCを、当初、黄色ブドウ球菌(S.aureus)株Mu50からクローニングした。rMntCコード配列を、黄色ブドウ球菌(S.aureus)Mu50のゲノムDNAから、PCRによって増幅した。2対のネステッドプライマーを増幅に用いた(表2)。最初のプライマー対である上流側5’SA926−MntCおよび下流側3’SA926−MntCは、rMntCのオープンリーディングフレームの上流および下流の配列にアラインする。第2のプライマー組はrMntCのコード配列にアラインし、アミノ酸残基19〜309に対応する配列の増幅を可能にする。制限酵素部位をこれらのプライマーの5’末端に組み込んで、方向性クローニングを容易にした。TaKaRa PrimeSTAR HS DNA Polymerase Premix(Takara Bio USA、Madison、WI)を用いて、Peltier Thermal Cycler(MJ Research Inc、Walthan、MA)内でPCRを実施した。QIAEX II(Qiagen、Valencia、CA)によってPCR産物を精製し、適切な制限エンドヌクレアーゼ(New England BioLabs、Ipswich、MA)で切断し、araBADプロモーター駆動型の発現ベクターpBAD18Cm内にサブクローニングした。このベクターはまた、インフルエンザ菌(H.influenza)のリポタンパク質P4のシグナルペプチドを含有する。MntC PCR産物をインフレームでP4シグナルペプチドから下流においてサブクローニングして、pLP1194を生じさせた。pLP1194のMntCコード領域のDNA配列を、配列番号120に示す。pLP1194から発現されるMntCは、リポタンパク質である。組換えプラスミドDNAを、ABI PRISM BigDye(商標)Terminator V.3.1(Applied Biosystems、Foster City、CA)によって配列決定し、組換えタンパク質を大腸菌(E.coli)BLR(NOVAGEN)において発現させて、脂質化されたrMntCを生産した。
脂質化されたMntCの生産のために、大腸菌(E.coli)BLR/pLP1194を、バイオリアクターにおいてグルコースフェドバッチモードで、規定の培地内で成長させた。培養物が約60の光学密度(OD600)に達すると、栄養をグルコースとアラビノースとの混合物に切り替えることによって、rMntCの発現を誘発した。培養物を、誘発の約24時間後に採取した。
脂質化されていないrMntCを発現させるために採用されたDNA配列を、プラスミドpLP1194からPCR増幅によって単離した。得られた配列はアミノ酸残基19〜309に対応し、分泌および脂質化を指示するシグナル配列は含有していない。pLP1215のrMntCコード領域のDNA配列は、DNAの配列番号120において見られる。
脂質化されていないrMntCの生産のために、大腸菌(E.coli)HMS174(DE3)/pLP1215を、バイオリアクターにおいてグルコースフェドバッチモードで、規定の培地内で成長させた。培養物が約60から80の光学密度(OD600)に達すると、IPTGを添加することによってrMntCの発現を誘発した。培養物を、誘発の約24時間後に採取した。細胞を分離させ、澄明化した可溶性画分を回収した。陽イオン交換樹脂(SP−Sepharose)を含有するカラムに溶解物をアプライし、塩の線形勾配で溶出した。MntCを含有する画分を同定した。硫酸アンモニウムを添加した後、フェニル−セファロース樹脂を含有するカラムに材料をアプライし、溶出した。溶出した後、rMntCを含有する画分を同定し、プールし、脱塩した。この時点でのrMntCの純度は、SDS−PAGEによって測定すると>95%であった。
この実施例において、様々なサイズの黄色ブドウ球菌(S.aureus)被膜多糖5型および8型の生産が記載される。CP5多糖およびCP8多糖の構造を図4に示す。本明細書において記載される方法は、約50kDaから800kDaにわたる分子量のCP5およびCP8の生産において効果的である。成長の特徴および生産される被膜の量に基づいて、CP5の生産には株PFESA0266が選択され、一方、CP8の生産には株PFESA0005またはPFESA0286が用いられた。株PFESA0005およびPFESA0286から単離された被膜は同一であることが示された。
この動態分析によって、広範な分子量の被膜多糖が本明細書において記載される方法によって生成され得ることが実証される。まず、大き目の多糖を細菌細胞によって生産し、その後、所望の分子量範囲を選択することができ、次に、加熱および加水分解のステップのpHおよび熱の条件を操作することによって精製することができる。
様々な分子量範囲の被膜多糖を選択するための温度およびpHの条件が決定された。培養液のpHを、濃硫酸で調節した。次に、培養液の温度を設定値まで上昇させた。熱処理時間は、温度が設定値に達するとすぐに開始した。所望の処理時間に達すると、培養液を室温まで冷却した。プロセス中の試料を採取して、それぞれHPLC系およびSEC−MALLS系によって多糖の濃度および分子量を決定した。MWデータを動態分析において用いた。MWのプロフィールは、CP5ではpH4.0、4.5、および5.0で、CP8ではpH3.5、4.0、および5.0で、経時的に決定した。図5Aおよび5Bを参照されたい。
熱処理におけるMWの低減に対するpHの効果を、CP−5およびCP−8についてそれぞれ図5Aおよび5Bに示す。低いpHが多糖のサイズの低減においてより効果的であったことを見ることができる。データはまた、CP−5が同一のpHでCP−8よりも加水分解しにくかったことを示唆する。CP8のプロフィールを考慮すると、300kDaから600kDaの間の分子量範囲が、15分間から120分間の間にわたり95℃でpH5を用いることにより生じ得る。同様に、15分間から120分間の間にわたり95℃でpH4を選択することにより、250kDaから450kDaの間のCP8多糖の分子量範囲が得られ得る。さらに、15分間から120分間の間にわたり95℃でpH3.5を選択することにより、120kDaから450kDaの間のCP8多糖の分子量範囲が得られ得る。
この実施例は、黄色ブドウ球菌(S.aureus)CP5−CRM197コンジュゲートおよびCP8−CRM197コンジュゲートの生産において用いられるプロセスおよび特徴付けアッセイを記載する。いくつかのコンジュゲーション化学を、担体タンパク質への黄色ブドウ球菌(S.aureus)被膜多糖CP5およびCP8のコンジュゲーションについて評価した。PDPH(3−2−ピリジルジチオ)プロピオニルヒドラジン)を用いるコンジュゲーションによって、チオエーテル共有結合が生じ、CDI/CDT(1,1−カルボイルジイミダゾール/1,1−カルボイル−ジ−1,2,4−トリアゾール)によって、CPと担体タンパク質との間の1つの炭素または0個の炭素のリンカーが生じる。
PDPHコンジュゲーション化学は、多糖の活性化、チオール保護基の除去、活性化された多糖中間体の精製、CRM197タンパク質の活性化および精製、ならびに活性化された成分のコンジュゲーションおよびその後の精製を伴う、多段階プロセスである。リンカーを含有するチオール基を多糖に導入し、ハロアセチル基をCRM197タンパク質担体に導入した後、黄色ブドウ球菌(S.aureus)のCP5多糖およびCP8多糖を、チオエーテル結合を介してタンパク質担体に結合させた。ブロモ酢酸のN−ヒドロキシスクシンイミドエステルとアミン基とを反応させることによって、ブロモアセチル基をCRM197タンパク質内に導入した。チオール化されたCPを生成するために、CP内のN−アセチルマンノサミノウロン酸の、カルボジイミドで活性化されたカルボキシレート基を、スルフィドリル反応性のヒドラジンヘテロ二機能性のリンカーである3−(2−ピリジルジチオ)プロピニルヒドラジド(PDPH)にカップリングさせた。DTTでの還元によって生成し、Sephadex G25カラムでのSECによって精製した、PDPHでチオール化されたCPのチオールを、活性化されたタンパク質のブロモアセチル基と反応させることによって、CPとタンパク質との間の臭素の転移によって形成されたチオエーテル共有結合が生じた。未反応のブロモアセチル基を、システアミン塩酸塩(2−アミノエタンチオールヒドロクロリド)で「キャップ」した。反応混合物を次に濃縮し、ダイアフィルトレーションした。残りのコンジュゲートしていないブロモアセチル基を、システアミン塩酸塩でキャップし、それによって、確実に、反応性のブロモアセチル基がコンジュゲーション後に残らないようにした。これによって、臭素の転移の後に、システアミンのチオール末端とリジン残基上のアセチル基との間の共有結合が形成された。
多糖をまず、PDPHでのチオール化によって活性化した。多糖を新たに調製したPDPHストック溶液(DMSO内に250mg/mL)、EDACストック溶液(diH2O内に90mg/mL)、およびMES緩衝液ストック溶液(0.5M、pH4.85)と混合して、0.1MのMESならびに1mL当たり2mgおよび4mgのCPという最終濃度とし、一方で、CP:PDPH:EDACの重量比をCP5では1:5:3に、CP8では1:0.6:1.25に維持した。この混合物を室温で1時間にわたりインキュベートし、次に、4℃から8℃の間で3500MWCO透析装置を用いて1000倍の容積の蒸留H2Oに対して4回透析して、未反応のPDPHを除去した。0.2MのDTTで、PDPHに結合した多糖を作製し、室温で3時間にわたり、または4℃から8℃の間で一晩、インキュベートした。過剰なDTTおよび反応副産物を、Sephadex G25樹脂および移動相としての蒸留水を用いるSECによって、活性化された多糖から分離した。DTDPアッセイによって、チオール基について画分をアッセイし、カラムの空隙容積の近辺に溶出されたチオール陽性画分をプールした。画分のプールをPAHBAHアッセイおよびO−アセチルアッセイによってアッセイして、活性の程度を決定し、これは、チオール基を含有する反復単位のモル濃度パーセント(チオールのモル濃度/反復単位のモル濃度)として表される。活性化された多糖を凍結乾燥し、コンジュゲーションに必要となるまで−25℃で保管した。
個別に、担体タンパク質をブロモアセチル化によって活性化した。CRM197を、10mMのリン酸緩衝した0.9%NaCl(pH7)(PBS)で5mg/mLに希釈し、次に、1Mのストック溶液を用いて、0.1M NaHCO3(pH7.0)を作製した。ブロモ酢酸のN−ヒドロキシスクシンイミドエステル(BAANS)を、20mg/mLのDMSOのBAANSストック溶液を用いて、1:0.25(w:w)のCRM197:BAANS比で添加した。この反応混合物を、4から8℃の間で1時間にわたりインキュベートし、次に、Sephadex G−25上でのSECを用いて精製した。精製された、活性化されたCRM197を、Lowryアッセイによってアッセイして、タンパク質濃度を決定し、次にPBSで5mg/mLに希釈した。抗凍結剤としてショ糖を5%wt/容積まで添加し、活性化されたタンパク質を凍結し、コンジュゲーションに必要となるまで−25℃で保管した。
活性化された被膜多糖および活性化された担体タンパク質を調製すると、2つをコンジュゲーション反応において組み合わせた。凍結乾燥およびチオール化された多糖を、0.16Mのホウ酸(pH8.95)内に溶解し、解凍したブロモアセチル化されたCRM197および蒸留水と混合して、0.1Mのホウ酸塩、1:1wt/wt比のCRM197:CP、ならびにCP8では1mg/mLの多糖およびCP5では2mg/mLの多糖という最終濃度とした。この混合物を室温で16から24時間の間にわたりインキュベートした。タンパク質上の未反応のブロモアセチル基を、0.1Mのホウ酸塩(pH8.95)内に溶解したシステアミンストック溶液135mg/mLを用いて、1:2(wt/wt)のCRM197:システアミン比でシステアミン塩酸塩を添加することによって、キャップし、室温で4時間にわたりインキュベートした。被膜多糖−CRM197コンジュゲート(コンジュゲート)を、100Kポリエーテルスルホン限外濾過装置を用いて、0.9%NaClに対して50倍ダイアフィルトレーションすることによって精製した。
CDIおよびCDTは、多糖が無水環境(DMSO)内で活性化されて、利用可能なヒドロキシルを有するカルバミン酸イミダゾール部分またはカルバミン酸トリアゾール部分、およびカルボン酸を有するアシルイミダゾール部分またはアシルトリアゾール部分を形成する、1段階のコンジュゲーションプロセスを提供する。タンパク質担体(DMSO内)を添加すると、リジンによるイミダゾールまたはトリアゾールの求核置換、ならびにカルバメート結合(活性化されたヒドロキシルで)およびアミド結合(活性化されたカルボン酸で)が生じる。反応溶液は、水性溶液内に10倍希釈されて、未反応の活性化基が除去され、その後、ダイアフィルトレーションによって精製される。
この実施例において、様々な由来源から得られる疾患原因単離体から得られるClfAポリペプチド断片N1、N2、およびN3のタンパク質配列の不均一性を評価した。ClfA遺伝子を、複数の病状に関連する黄色ブドウ球菌(S.aureus)株から配列決定した。さらなる株から得られる配列情報を、GenBankから得て、関連する株から配列を生成した。表10は、異なるClfA配列を列挙する。
この実施例において、様々な由来源から得られる92個の疾患原因単離体から得られるClfBのN1、N2、およびN3ポリペプチド断片のタンパク質配列の不均一性を評価した。ClfB遺伝子を、複数の病状に関連する黄色ブドウ球菌(S.aureus)株から配列決定した。表11を参照されたい。さらなる株から得られる情報を、GenBankから得て、さらなる配列を生成した。
この実施例において、様々な由来源から得られる104個の疾患原因単離体から得られるMntC遺伝子のタンパク質配列の不均一性を評価した。MntC遺伝子を、複数の病状に関連する黄色ブドウ球菌(S.aureus)の株から配列決定した。表12を参照されたい。さらなる株から得られる情報を、GenBankから得て、株の配列を生成した。
黄色ブドウ球菌(S.aureus)は、様々なヒト感染の原因である。その結果、この細菌は、感染に必要な病原性因子の差次的な発現によって、異なる環境ニッチに適応するはずである。標的抗原の発現を、感染の原発部位での抗原の発現を測定するための創傷モデル、血液内での抗原の発現をモニタリングする菌血症モデル、および栄養/酸素限定条件での抗原発現をモニタリングする留置チャンバモデルという3つのインビボでの齧歯動物アッセイにおいて研究して、感染の際のそれらの発現を評価した。これらのモデル全てで、齧歯動物を、研究部位で細菌によってチャレンジした。感染の後、細菌を様々な時点で採取し、抗原の発現(ClfA、CP5、CP8、MntC)を、免疫蛍光顕微鏡法(創傷および菌血症)またはフローサイトメトリー(チャンバ)を用いて評価した。
創傷モデルにおける発現
創傷感染実験は、1群あたり5頭の動物、かつ最大5群で、1実験当たり最大25頭の動物から構成される。6から8週(wk)齢のオスのC57BL/6マウスを手術して、大腿筋の切開部内に輪状の縫合糸を包埋した。これにより、細菌の付着のための外来の身体構造が提供され、ブドウ球菌による創傷感染をもたらすために必要な最少感染用量が有意に低減する。5μLの黄色ブドウ球菌(S.aureus)または無菌生理食塩水を、4−0シルクの深部組織構造下の切開部内に導入した。皮膚を4−0Prolene構造または外科用接着剤(例えば、シアノアクリレート)で閉じた。動物を感染後30分間から10日間の間の時点で安楽死させ、大腿筋を切除し、ホモジナイズし、細菌計数した。感染部位の細菌を、免疫蛍光(IF)共焦点顕微鏡法によって、抗原の発現について分析した。
10頭の4週齢のCD−1マウスまたはBalb/Cマウスからなる群を、0週目、3週目、および6週目に、皮下注射によって、1μgのタンパク質またはCPコンジュゲートで免疫化した。動物を0週目および8週目に出血させ、その後、TSB内の後期対数期まで成長した黄色ブドウ球菌(S.aureus)で腹腔内チャレンジした。チャレンジの3時間後に動物を安楽死させ、IF共焦点顕微鏡法のために血液を回収した。
黄色ブドウ球菌(S.aureus)の単離体をTSAプレート上で、37℃で一晩成長させた。細菌をプレートから擦り取り、無菌PBS内に再懸濁し、OD600を1、すなわちおよそ109コロニー形成単位(cfu)/mLに調節した。細菌を103cfu/mLの濃度まで希釈し、透析管内に接種した。懸濁液のアリコートを平板培養して、cfuの実際の数値を決定した。3.5kDaのMWCOを有する透析管を、70%エタノール内で30分間にわたり滅菌し、その後、滅菌水内で十分にすすぎ、次に無菌生理食塩水内で十分にすすぐことによって、移植のために調製した。細菌懸濁液の2mLのアリコートを透析管に移し、袋を結んで閉じ、次に、滅菌生理食塩水で十分にすすいだ。オスのSprague Dawleyラット(6週齢)を麻酔し、2〜3cmの切開部を背側正中線に沿って形成した。下層の組織から皮膚を穏やかに分離することによって、切開部でポケットを生じさせた。管をポケット内に移植し、外科用ステープルを用いて皮膚を閉じた。24時間後、ラットを安楽死させ、管を取り外し、フローサイトメトリー分析のために細菌を回収した。
5頭のマウスの血液を、氷冷したクエン酸ナトリウム(pH7.0)内にプールした(最終濃度0.4%)。真核細胞を1%NP−40(Pierce Biotechnology)ですすいだ。細菌をPBSで洗浄し、ウサギの免疫血清または免疫前血清(1:100)と共に4℃で一晩インキュベートし、ALEXA488にコンジュゲートしたヤギαウサギ抗体(1:250、Invitrogen)で検出した。標識された細菌を顕微鏡スライド上で乾燥させ、カバースリップをVectashield HardSet培地(Vector Laboratories,Inc.)と共に載せた。Leica TCS SLスペクトル共焦点顕微鏡(Leica Microsystems)で画像を得た。
黄色ブドウ球菌(S.aureus)の単離体を、ラット透析管モデルの手順において記載したように成長させた。およそ107個の細菌細胞を、染色緩衝液(10%ヤギ血清を有するHanks平衡塩溶液)内で、氷上で1時間にわたりブロックした。細菌細胞を10000rpmで5分間にわたり遠心分離し、上清を除去し、マウス抗体またはアイソタイプ対照抗体と共に、氷上で30分間にわたりインキュベートした。次に、細胞を洗浄し、FITCにコンジュゲートしたヤギ抗マウスIgG(Jackson ImmunoResearch)で、氷上で30分間にわたり染色した。細菌を染色緩衝液で洗浄し、2%パラホルムアルデヒドで固定し、データを得、FACS CaliberフローサイトメーターおよびCell探求ソフトウェア(Becton,Dickinson and Co.)を用いて分析した。全部で30000の事象を各サンプルについて回収した。
19個の黄色ブドウ球菌(S.aureus)単離体の組み合わせを、感染の際の黄色ブドウ球菌(S.aureus)細胞表面上でのClfA、CP5、CP8、またはMntCの発現について試験した(表13a、13b、および13c)。これらの単離体は、最近の臨床的に関連する株を含み、MLSTでモニタリングすると多様であった。抗原の発現は、株、時点、および感染モデルに依存した。異なるインビボ環境(血流と創傷)における単離体間の抗原発現における変化は、様々な異なる感染における広範なブドウ球菌単離体を誘発するための多抗原免疫原性組成物の使用を裏付けるものである。抗原は、感染の最初の24時間以内に表面に発現し、したがって、抗ブドウ球菌免疫原性組成物のための有効な成分である。タンパク質抗原ClfAおよびMntCは、被膜の発現の存在下での染色において利用しやすく、このことは、被膜の存在によって、これらのタンパク質に対する抗体から、これらのタンパク質が隠されないことを示す。
この実施例において、本発明者らは、ClfA、CP5−CRM197、およびCP8−CRM197の組み合わせの免疫原性を評価した。
この実施例において、ウサギにおける組み合わされたCP5−CRM197およびCP8−CRM197免疫原性製剤の免疫原性に対する用量の効果を評価した。ウサギを0週目、3週目、および6週目に、二価コンジュゲートと125μgのAlPO4とを皮下注射によって投与して免疫化した。この研究において評価された用量は、それぞれ0.1μg、1μg、または10μgのCP5−CRM197およびCP8−CRM197(0.2μg、2μg、および20μgの、最終的な組み合わされたCP−CRM197用量)であった。コンジュゲートの用量は、タンパク質多糖コンジュゲートの全多糖成分を反映する。ウサギを0週目、3週目、6週目、および8週目に出血させた。プールされた個別の血清に対してELISAを行った。終点の抗体力価を、0.1OD405での希釈の逆数として決定した。統計分析を個別の8週目の力価に対して行った。結果は、CP5では5×105およびCP8では1×106の、最大のCP5特異的抗体力価およびCP8特異的抗体力価が、各成分のCP用量が1μgので二価免疫原性製剤を用いてウサギをワクチン接種することによって誘発されたことを実証した(データは示されていない)。
各成分に対する免疫応答に対する、rClfAおよびCP5コンジュゲートおよびCP8コンジュゲートの組み合わせの効果を試験した。3つの群を、1、10、および100μgという3つの異なる用量のT7−ClfA(N1N2N3)と組み合わされた二価黄色ブドウ球菌(S.aureus)CP5−CRM197+CP8−CRM197(1μg用量の各コンジュゲート)で免疫化した。対照群は、100μgのT7−ClfA(N1N2N3)と組み合わされた、コンジュゲートしていないCP5およびCP8(それぞれ50μg)で免疫化した。各免疫原性組成物は、500μgのアジュバントAlPO4と共に製剤した。免疫原性組成物は、頸部に皮下注射することによって投与した。ウサギを0週目、6週目、および8週目に出血させた。プールされた個別の血清に対してELISAを行い、終点の抗体力価を、0.1OD405での希釈の逆数として決定した。
ブドウ球菌免疫原性組成物の標的を、黄色ブドウ球菌(S.aureus)の表面成分に対する既存の抗体を有する成体集団とした。免疫原性製剤に対する応答に対する、免疫原性製剤成分に対する既存の抗体の効果を研究するために、本発明者らは、高い力価の自然獲得された抗CP5抗体、抗CP8抗体、および抗ClfA抗体を有するウサギを選択した。2つの群のウサギ(n=6/7)を、0週目、3週目、および6週目に、三抗原免疫原性製剤(CP5−CRM197(1μg)およびCP8−CRM197(1μg)およびT7−ClfA(N1N2N3)Y338A(10μg))で免疫化した。第1の群は、アジュバントである500μgのAlPO4と共に製剤された免疫原性組成物で免疫化し、第2の群は、アジュバントを含有しない免疫原性組成物製剤で免疫化した。免疫原性組成物は、皮下注射によって投与した。ウサギを0週目、3週目、6週目、および8週目に出血させた。CP5、CP8、およびrClfAに対する抗体力価を、プールされた個別の血清に対する終点の抗体力価として、ELISAによって決定した(0.1OD405での希釈の逆数として決定した)。
A. ウサギにおける二価CP5−CRM197/CP8−CRM197コンジュゲート免疫原性組成物に対する応答に対するAlPO4の2つの異なる用量の効果
ウサギにおける抗CP5応答および抗CP8応答に対する、アジュバントAlPO4の用量効果を研究した。ウサギを、0週目、3週目、および6週目に、二価黄色ブドウ球菌(S.aureus)CP5−CRM197/CP8−CRM197(1μg用量の各コンジュゲート)で免疫化した。第1の群(n=5/群)は、アジュバントである125μgのAlPO4と共に製剤された免疫原性組成物で免疫化し、第2の群は、500μgのAlPO4と共に製剤された免疫原性組成物製剤で免疫化した。免疫原性組成物は、頸部における皮下注射によって投与した。ウサギを0週目、6週目、および8週目に出血させ、抗莢膜抗体を、0.1OD405での希釈の逆数として決定される終点の抗体力価として、ELISAによって決定した。結果は、125μgまたは500μgのAlPO4で免疫化されたウサギにおいてCP8特異的抗体応答に差がないことを示した。125μgのアジュバントを有する製剤は、より高いCP5抗体応答をもたらした。また、125μgの群における全てのウサギは、より高いCP5抗体応答で応答したが、500μgのアジュバントの群では、2頭のウサギが製剤に対して低い応答であった。
ウサギ(NZW、1群当たりn=6/7のウサギ)を、0週目、3週目、および6週目に、CP5−CRM197(1μg)およびCP8−CRM197(1μg)およびT7−ClfA(N1N2N3)Y338A(10μg)からなる三抗原製剤で免疫化した。第1のウサギ群は、500μgのAlPO4を有する免疫原性製剤で免疫化し、第2の群はアジュバントを伴わずに製剤され、第3の群は、500μgのAlPO4を有する免疫原性製剤で0週目に免疫化し、かつアジュバントを有さない免疫原性製剤で3週目および6週目に免疫化した。免疫原性製剤は皮下注射によって投与し、ウサギを0週目、3週目、6週目、および8週目に出血させ、血清を抗原特異的ELISAによって評価した。結果は、免疫原性製剤におけるアジュバントの存在が、ウサギにおける抗CP5応答または抗CP8応答に対する効果を有さないことを示した(データは示されていない)。両被膜に対するAbのGMT力価は同程度であった。しかし、3つ全てのワクチン接種において、アジュバントを伴って免疫化された群において示されるClfA特異的抗体応答に対するアジュバントの効果が存在した。アジュバントを含有する免疫原性製剤で初回免疫されたウサギにおける、AlPO4を含有しない免疫原性製剤での2回目および3回目のブーストは、アジュバントを伴わない群と比較して高いClfA応答をもたらした。
以下の実施例12から29において、CP5およびCP8コンジュゲート、ClfA、およびMntCの臨床前評価の結果が記載される。これらの実施例は、臨床前動物モデルにおけるこれらの抗原の効力を実証する。これらの実施例はまた、CPコンジュゲート、ClfA、およびMntCにより生成される抗体が、インビトロのアッセイにおいて機能的活性を有することを実証する。
ELISA
MaxisorpマイクロタイターELISAプレート(Nalge Nunc International、Rochester、NY)を、4℃で18時間、または37℃で90分間にわたり、PBS(pH7.5)内の1μg/mLのClfA抗原で被覆した。プレートをPBST(1×PBS、0.1%ポリソルベート20)内で5回洗浄し、PBS内の1%(w/v)無脂肪乳および0.05%ポリソルベート20で、室温で1時間にわたりブロックした。プレートをPBSTで洗浄し、連続希釈(3倍)し、個別の0週目、3週目、6週目、および8週目にウサギ抗血清をプレートに添加し、4℃で一晩または37℃で2時間インキュベートした。プレートを洗浄し、結合した一次抗体を、PBST内のホースラディッシュペルオキシダーゼコンジュゲート型ヤギ抗ウサギIgG(1:1000希釈)で検出した。プレートを37℃で1時間にわたりインキュベートし、次に、洗浄し、ABTS−ペルオキシダーゼ基質溶液(KPL,Inc.、Gaithersburg、MD)で、室温でおよそ20分間にわたり発色させた。1%(v/v)SDS溶液を添加することによって反応を止めた。吸光度を、自動プレートリーダー(Molecular Devices Corporation、Sunnyvale、CA)で、405nmで測定した。抗体力価は、吸光度値が0.1の最大の血清希釈の逆数として表した。JMP Software(SAS Institute、Cary、NC)を用いるスチューデントt検定を用いて、異なる群間の抗体力価における差を決定した。0.05未満の確率を、統計的に有意な差を示すと考えた。
マウス敗血症モデルは、血液感染性疾患を模倣する。受動免疫化のために、15頭のSwiss−Websterマウスからなる群をIgGで腹腔内(i.p.)処理した。24時間後、マウスを、尾部静脈を介する単回の静脈内(i.v.)注射(0.1ml)によって、黄色ブドウ球菌(S.aureus)659−018でチャレンジした。全ての動物を14から15日間にわたり追跡し、その時点で、全ての残っているマウスを屠殺した。
成体のNew Zealand Whiteウサギを、25μgの抗原で4回、筋肉内で免疫化した。手術の1日後、動物を、黄色ブドウ球菌(S.aureus)のボーラスでi.v.でチャレンジし、心臓組織におけるコロニー形成単位(cfu)の数をチャレンジの24時間後に決定する。
3時間の菌血症モデルを用いて、感染早期の細菌数に対するワクチン接種の効果を決定した。マウスを0週目、3週目、および6週目に抗原で免疫化し、その後、8週目に黄色ブドウ球菌(S.aureus)でi.p.チャレンジした。動物を3時間後に放血させ、血液の連続希釈物を平板培養して細菌を数えた。
マウス腎盂腎炎モデルは、菌血症からの黄色ブドウ球菌(S.aureus)の播種を模倣する。10頭の4週齢のメスCD−1マウスからなる群を、0週目、3週目、および6週目に抗原で免疫化した。マウスを黄色ブドウ球菌(S.aureus)のi.p.注射によってチャレンジした。チャレンジの48時間後、マウスを屠殺し、腎臓および血液における細菌を数えた。
ラット心内膜炎モデルは、血液感染性疾患が損傷した心臓組織のコロニー形成をもたらす後にコロニー形成が生じる、ヒト心内膜炎を模倣する。5頭の5週齢のオスSprague−Dawleyラット(Charles River、Kingston、NY)を、0週目、2週目、および4週得目に、100μgのAlPO4と共に製剤された1μgのCP5−CRM197コンジュゲートで免疫化した。0週目の、ワクチン接種する前、および5週目の最後に、動物を出血させた。72時間後、カテーテル(PE−10管)を、頸動脈を介して左心室内に外科的に置いた。カテーテルを置くことで、ブドウ球菌が感染の際に付着し得る無菌性疣腫が形成される。外科手術から生じる感染を防ぐために、動物を、手術の時点および手術の8時間後に、抗生物質バイトリル(5mg/kg)で処理した。手術の48時間後、ラットをPFESA0266(およそ4×108cfu)またはSA315(およそ1×109cfu)で腹腔内注射によってチャレンジした。チャレンジの48時間後、ラットを安楽死させ、心臓および腎臓を取り出し、3mLのリン酸緩衝溶液(PBS)内に置いた。次に、これらの器官を組織ホモジナイザー(Kinematica AG、Luzernerstrasse、Germany)でホモジナイズし、PBSで10mLにした。次に、ホモジネートを連続希釈し、細菌を数えるために平板培養した。
LYMPHOLYTE(登録商標)−ポリ溶液(Cedarlane laboratories limited、Ontario、Canada)を製造者のプロトコルに従って用いてドナーヒト血液から単離される細胞系(例えばHL60)または多形核細胞(PMN)から得られる分化したエフェクター細胞を、このアッセイに用いることができる。エフェクター細胞をアッセイ緩衝液(1%ウシ血清アルブミンを含有する変法イーグル培地)内におよそ2×107個細胞/mlの濃度で再懸濁し、使用する直前まで37℃のインキュベーター内に置いた。黄色ブドウ球菌(S.aureus)株PFESA0266をトリプシン大豆寒天プレート上で一晩成長させた。細菌細胞を擦り取り、2回洗浄し、およそ5×108cfu/mlの濃度に等しいOD600=1まで、5%グリセロールを含有するアッセイ緩衝液内に再懸濁した。細菌懸濁液の1mlのアリコートを凍結し、使用する直前まで−40℃で保管した。凍結した細菌懸濁液を解凍し、アッセイ緩衝液内で106cfu/mlの濃度まで調節し、氷上に置いた。無菌96ディープウェル1mlポリプロピレンプレートを用いて、アッセイを行った。抗体試料(50ml)の2倍連続希釈物を調製し、その後、300μlのアッセイ緩衝液を抗体混合物に添加した。細菌をプレートに添加し(50μl)、4℃で30分間にわたり回転振とう機上に置いた。50μlのヒト補体(1%の最終濃度)を添加して、オプソニン化ステップを生じさせた。最後に、50μlのエフェクター細胞(107個細胞/mlの濃度)をプレートに添加し、懸濁液を、ピペッティングを繰り返すことによって良く混合した。懸濁液の50μlのアリコートを無菌1%サポニン溶液内に10倍連続希釈し、ボルテックスして細菌のクラピングを最小化し、トリプシン大豆寒天上に2回平板培養した。アッセイプレートを、回転式肉焼き機様式の振とう機を用いて連続的に混合しながら、37℃で1時間にわたりインキュベートした。インキュベーションの最後に、懸濁液の50μlのアリコートを無菌1%サポニン溶液内に10倍連続希釈し、ボルテックスすることによって混合して細菌のクラピングを最小化し、トリプシン大豆寒天上に2回平板培養した。抗体を有さないが細菌、補体、およびエフェクター細胞を含有する試験管内で生存しているcfuの数に対する、細菌、抗体、補体、およびエフェクター細胞を有するウェルにおいて60分の時点で生存しているcfuの数の比率を決定することによって、死滅のパーセンテージを計算した。細菌、補体、および血清を含有する対照を、クランピングに起因するcfuのあらゆる低減について調節するために含めた。
黄色ブドウ球菌(S.aureus)株PFESA0266、PFESA0286、およびPFESA0270に対して吸着したヒトドナーの血清を、アッセイにおける補体源として用いることができる。黄色ブドウ球菌(S.aureus)株を、37℃で、TSAプレート上で一晩成長させた。細胞をプレートから擦り取り、無菌PBS内に再懸濁した。細菌細胞を4℃で10分間にわたり、10000rmpで遠心分離し、細胞ペレットを、吸着のために、ヒト血清内に再懸濁した。血清を4℃で30分間にわたりnutator上で細菌と共にインキュベートした。細胞を遠心分離し、細菌を含有する別の試験管に血清を移し、吸着ステップを再び30分間にわたり繰り返した。最後に、細胞を遠心分離し、血清を0.2ミクロンのフィルターに通し、その後、0.5mlのアリコートを液体窒素内で凍結した。
HL−60細胞を、S.Romero−Steinerら、Clin Diagn Lab Immunol 4(4)(1997)、pp.415〜422に従って分化させた。採取したHL−60細胞をアッセイ緩衝液(1%ウシ血清アルブミンを含有する変法イーグル培地)内におよそ108個細胞/mlで再懸濁し、使用する直前まで37℃のインキュベーター内に置いた。黄色ブドウ球菌(S.aureus)をトリプシン大豆寒天プレート上で一晩成長させた。細菌細胞を擦り取り、2回洗浄し、およそ5×108cfu/mlに等しいOD600=1まで、5%グリセロールを含有するアッセイ緩衝液内に再懸濁した。細菌懸濁液の1mlのアリコートを凍結し、使用する直前まで−40℃で保管した。凍結した細菌懸濁液を解凍し、アッセイ緩衝液内で106cfu/mlの濃度まで調節し、氷上に置いた。無菌96ディープウェル1mlポリプロピレンプレートを用いて、アッセイを行った。モノクローナル抗体試料(25ml)の2倍連続希釈物を調製し、その後、150μlのアッセイ緩衝液を抗体懸濁液に添加した。細菌をプレートに添加し(25μl)、4℃で30分間にわたり回転振とう機上に置き、その後、25μlのヒト補体(1%の最終濃度)を添加した。最後に、25μlのHL−60細胞(107個細胞/ml)をプレートに添加し、懸濁液を、ピペッティングを繰り返すことによって良く混合した。懸濁液の25μlのアリコートを無菌1%サポニン溶液内に10倍連続希釈し、ボルテックスすることによって混合して細菌のクラピングを最小化し、トリプシン大豆寒天上に2回平板培養した。アッセイプレートを、回転式肉焼き機様式の振とう機を用いて連続的に混合しながら、37℃で1時間にわたりインキュベートした。インキュベーションの最後に、懸濁液の25μlのアリコートを無菌1%サポニン溶液内に10倍連続希釈し、ボルテックスすることによって混合して、トリプシン大豆寒天上に2回平板培養した。抗体を有さないが細菌、補体、およびHL−60細胞を含有する試験管内で生存しているcfuの数に対する、細菌、抗体、補体、およびHL−60細胞を有するウェルにおいて60分の時点で生存しているcfuの数の比率を決定することによって、死滅のパーセンテージを計算した。細菌、補体、およびmAbを含有する対照を、クランピングに起因するcfuのあらゆる低減について調節するために含めた。
ClfAに対して誘導されたポリクローナルウサギ抗体がマウス敗血症モデルにおいて黄色ブドウ球菌(S.aureus)のコロニー数を低減させ得るかどうかを評価するために、精製されたウサギポリクローナル抗ClfA IgGを、受動免疫化研究において2つの投薬量(0.8mgおよび1.6mg)で用いた(図13)。黄色ブドウ球菌(S.aureus)チャレンジ株は、最近の臨床単離体659−018であった。両抗体投薬量により、マウス敗血症モデルにおいて細菌コロニー数が有意に低減した(1.8mg用量ではp=0.0134であり、0.8mg用量ではp=0.0013)。この実験は、さらなる黄色ブドウ球菌(S.aureus)単離体で繰り返され、類似の結果を示している(データは示されていない)。
ClfAでのウサギの能動免疫化によって、ウサギ心内膜炎モデルが防御された。本発明者らは、陰性対照(PBSまたはAlPO4)で免疫化された動物と比較して、ClfAで免疫化された動物で、心臓疣腫から回収される黄色ブドウ球菌(S.Aureus)のcfuが3〜4log低減することを見出した(図14)。
MntCでの能動免疫化は、黄色ブドウ球菌(S.aureus)でのチャレンジ後の早い時点からマウスの一貫した防御を示した。i.p.での黄色ブドウ球菌(S.Aureus)チャンレジを受けたマウスの血液における細菌数は、PBSで免疫化された対照と比較して有意に低減した(図15Aおよび15B)。6回の個別の研究のうち4回は、免疫化された動物における血液1ml当たりのcfuの有意な低減を示した。MntCでの免疫化により仲介される防御は、PFESA0237(図15A)およびPFESA0266(図15)という2つの異なる黄色ブドウ球菌(S.Aureus)チャレンジ株を用いて実証された。
CP5コンジュゲートを、能動免疫化腎盂腎炎モデルにおいてマウスを防御する能力について評価した。図16は、いくつかの研究からの結果を示す。i.p.で黄色ブドウ球菌(S.aureus)チャレンジを受けたマウスの血液における細菌数は、pbsで免疫化された対照と比較して有意に低減した(図16)。6回の個別の研究のうち6回が、免疫化された動物における腎臓1ml当たりのcfuの有意な低減を示した。データは、CP5コンジュゲートでの能動免疫化後の腎臓のコロニー形成の一貫した低減を示した。
マウス腎盂腎炎モデルにおける能動免疫化研究を、PDPH化学またはCDT化学によって調製されたCP5コンジュゲートを用いて行った。CRM197にCP5またはCP8をコンジュゲートさせるための方法は、上記に記載した。結果は、両コンジュゲートが、偽免疫化動物と比較して、マウスにおけるコロニー形成を有意に低減させることを示した(表14)。
1μg用量のCP5−CRM197PDPHコンジュゲートおよび関連していないコンジュゲート(PP5−CRM197)を用いて、4つの研究を行った。CP5コンジュゲートは、3つの実験のうち2つにおいて、心臓および腎臓の両方においてコロニー形成を有意に低減させ、前記チャレンジにおいて、5型チャレンジ株はPFESA0266であった(表15)。第3の研究において、幾何平均力価(GMT)抗CP5力価は、3つの実験のうち最も低かったが、これは、先の実験における力価よりわずかに低いのみであった(51000対67000)。
コンジュゲートの効力を調べる最初の研究を、25kDaのMWのCP5で行った。発酵プロセスの向上によって、高いMWの多糖が生産され、これを、タンパク質担体にコンジュゲートさせ、25kDaのCP5コンジュゲートと並行して試験した。25kDa(低いMW)および300kDa(高いMW)のMWを有するCPを含むコンジュゲートを、CDTコンジュゲーション化学を用いて調製し、マウス腎盂腎炎モデルにおいて評価した。3つの用量(0.01、0.1、および1μg)のHMWコンジュゲートを試験し、1μgの用量の、対照であるLMW CP5−CRM197および関連していないコンジュゲート(PP5−CRM197)と比較した。結果は、1μgの用量での、腎臓から回収された黄色ブドウ球菌(S.aureus)PFESA0266のCFUにおける有意な低減を示した。1μgの用量では、異なるサイズのCP5で調製されたコンジュゲートの防御間に、統計的な差はなかった(表16)。低用量(0.01μgおよび0.1μg)のコンジュゲートは、感染を有意に低減させるほどに十分には免疫応答を誘導することができなかった。同一の免疫化およびチャレンジの手順を用いて実験を繰り返した。繰り返された実験において、1μgの用量のLMW CP5−CRM197のみが、コロニー形成を有意に低減させた(p=0.01)。1μgの用量のHMW CP5−CRM197は、腎臓においてcfuを低下させたが、低減は統計的に有意ではなかった(p=0.056)。
CP5のO−アセチル化の重要性を評価するために、天然CP5を脱O−アセチル化(dOAc)し、PDPHコンジュゲーション化学を用いてCRM197にコンジュゲートした(dOAc−CRM197)。dOAcCP−CRM197コンジュゲートの効率を、マウス腎盂腎炎モデルにおいて、CP5−CRM197と並行して比較した。結果は、腎臓における細菌のコロニー形成において有意な変化がないことにより実証されるように、O−アセチル基を有さないコンジュゲート(dOAc CP5−CRM197)がこのモデルにおいて有効ではないことを示した。これらのデータ(表17)は、O−アセチル化が、CP5に対する機能的抗体の誘導に重要であったことを示す。
CP8−CRM197コンジュゲートの効力を、黄色ブドウ球菌(S.aureus)PFESA0268(8型)でチャレンジした後のマウス敗血症モデルにおいて評価した。Swiss Websterマウス(n=30)を、共に100μgのAlPO4と共に製剤された、1μgのCP8−CRM197および生理食塩水で、皮下注射によって能動免疫化した。研究は、AlPO4のみで免疫化したマウスと比較して、敗血症の有意な低減(p=0.0308)を示した。図17を参照されたい。
機能的抗体応答の誘発にとっての、コンジュゲーションする前の天然CP8上に存在するO−アセチル基の重要性を、CP8コンジュゲートについて評価した。CP8多糖を、弱塩基条件下で脱O−アセチル化し、NMRおよびイオンクロマトグラフィー(IC)の両方によって、CP8脱O−Ac−CRM197におけるO−アセチル化の不存在を確認した。
CP5 OAc+(CP5−7−1)、CP5 OAc+/−(CP5−5−1)、およびCP5 OAc−(CP5−6−1)に対する特異性を有するCP5モノクローナル抗体を、5型株PFESA0266に対するOP死滅活性について評価した(表19)。CP8 OAc+に特異的なMAb CP8−3−1を陰性対照として用いた。結果は、CP5−7−1 mAb(CP5 OAc+特異性)が、試験された両方の5型株の死滅を仲介することを示した。また、CP5 OAc+およびCP5 OAc−の両方により共有されるエピトープを認識するmAb CP5−5−1は、PFESA0266株の死滅を仲介した。CP5 OAc−多糖上に存在するエピトープに特異的なMAbは、PFESA0266株の死滅を仲介しなかった。これらの結果は、CP5上のO−アセチルエピトープがCP5特異的抗体の機能的活性に関与することを示す。
実施例18の1μgの高分子量群および低分子量群から得られる高いCP5 ELISA力価を有するマウス(n=5)の血清を、黄色ブドウ球菌(S.aureus)PFESA0266を用いてオプソニン活性について比較した。OPAの結果は、両コンジュゲートがマウスにおいてオプソニン抗体を誘導することを示した(表20)。高MWのコンジュゲートが、より高い力価のオプソニン抗体を誘導する傾向が観察された。データは、5つの個別のマウス血清についての死滅%の平均±SEMとして示される。抗体は、動物効力モデルにおける細菌の死滅または抗体が細菌を死滅させることを実証するオプソニン性貪食死滅アッセイを介する細菌の死滅によって測定されるように機能的である必要がある。機能的死滅は、効力における高分子量コンジュゲートの重要性の指標ではない抗体生成のみをモニタリングするだけのアッセイを用いては実証され得ない。
実施例21における研究から得られる高いCP8力価を有する選択されたマウス血清(n=5)を、PFESA0005株を用いてオプソニン活性について比較した。OPAの結果(表21)は、天然CP8のコンジュゲーションによって調製されたコンジュゲートのみがマウスにおいてオプソニン抗体を誘導したことを示す。このアッセイにおいて、脱OAc CP8コンジュゲートはマウスにおいて免疫原性であったが、誘導された抗体はオプソニン性ではなかったということは、注目に値する。OPAの力価は、40%の死滅が観察された希釈の逆数として報告される。抗体は、動物効力モデルにおける細菌の死滅または抗体が細菌を死滅させることを実証するオプソニン性貪食死滅アッセイを介する細菌の死滅により測定されるように機能的である必要がある。機能的死滅は、効力におけるO−アセチル化の重要性の指標ではない抗体生成のみをモニタリングするだけのアッセイを用いては実証され得ない。
ヒトではない霊長類のCPコンジュゲート抗血清による8型株の死滅は天然CP8の添加によって阻害される
CP8コンジュゲートで免疫化されたヒトではない霊長類の血清における死滅活性の特異性を確認するため、天然CP8の存在下でアッセイを行った。OP方法IIを、以下の変更を伴って用いた。抗体試料(25μl)の2倍連続希釈物を調製し、その後、150μl(Pn14競合物質)または125μl(CP8競合物質)のアッセイ緩衝液を抗体懸濁液に添加した。競合物質は精製されたCP8多糖(CP8ポリ)であり、関連していない肺炎球菌多糖(Pn14ポリ)を対照として用いた。多糖を抗体懸濁液に添加し(50μg)、プレートを、転倒混合しながら、4℃で30分間にわたりインキュベートした。多糖とインキュベーションした後、細菌をプレートに添加し(25μl)、4℃で30分間にわたり回転振とう機上に置き、その後、25μlのヒト補体(1%の最終濃度)を添加した。結果(表22)は、反応混合物内における天然CP8の存在が、黄色ブドウ球菌(S.aureus)8型のオプソニン性貪食死滅を阻害することを示した。これらの結果は、免疫血清によるオプソニン性貪食死滅が被膜特異的Abによって仲介されたことを裏付けるものである。
集団内のヒトは、黄色ブドウ球菌(S.aureus)に自然に曝露されており、したがって、それらの循環においてその細菌に対する既存の抗体を有する。本発明者らは、ヒト血清から抗ClfA抗体をアフィニティー精製し、抗体がオプソニン性死滅を仲介し得るかどうかを評価した。ClfAに対する抗体が黄色ブドウ球菌(S.aureus)莢膜多糖についてオプソニン性であることが示されている(データは示されていない)。株PFESA0266を、2%NaClを有するColumbia培養液において一晩成長させた。細菌を、ClfAアフィニティー精製されたヒトIgGまたは関係のない抗原でアフィニティー精製されたヒトIgG(陰性対照、ブドウ球菌SCPタンパク質)でオプソニン化し、オプソニン活性を試験した。分化したHL−60細胞を、100:1のエフェクター/標的比でオプソニン性貪食アッセイにおいて用いた。さらなる対照として、CP5 mAbを、表面上のCP5の存在を実証するために、実験に含めた。結果は、2つの独立した実験の平均である。ClfA特異的抗体およびCP5特異的抗体は、オプソニン性死滅を仲介し、SCP特異的(陰性対照)抗体は、このアッセイにおいて活性を有さなかった。
NHPにおける高分子量CP5−CRM197コンジュゲートと低分子量CP5−CRM197コンジュゲートとの機能性を比較するために、5頭のサルからなる群を、AlPO4アジュバントを有するかまたは有さない、2および20μg用量のコンジュゲートで免疫化した。サルには、それぞれ0日目および28日目に、第1のワクチン接種および第2のワクチン接種を行った。0日目、14日目、28日目、および42日目の出血を、OP活性について試験した。結果を表23にまとめる。20μgのHMWコンジュゲートは、他の群と比較して最も高いOP力価を有していた。また、OP陽性サルの頻度は、対応する低MW群と比較して、両用量の高MW群で高かった。これらの結果は、NHPにおいて、HMWのCP5−CRM197コンジュゲートが、LMWのCP5コンジュゲートよりも良好なOP応答を誘導する傾向があることを実証する。
異なる被膜コンジュゲート製剤の免疫原性を評価するために、ヒトではない霊長類(NHP)での研究を行った。2つの製剤を、2つの異なる投薬量レベル(2および20μg)で試験した。第1の製剤は、CRM197にコンジュゲートした、高分子量(HMW)の多糖(およそ130kDa)から構成されるものであった。第2の製剤は、CRM197にコンジュゲートした、低分子量(LMW)の多糖(およそ25kDa)を含有していた。5頭の霊長類からなる群を、単回用量のいずれかのワクチンでワクチン接種し、ワクチン接種の前およびワクチン接種の2週間後の免疫力価をモニタリングした。OPA力価は、OPAアッセイにおいて黄色ブドウ球菌(S.aureus)株PFESA0266の40%を死滅させるために必要な血清の希釈として定義された。抗体力価はまた、ELISAによってもモニタリングした。LMW製剤と比較して、HMWワクチンで、増強された活性が見られ(表24)、このことは、LMWワクチンと比較してHMWワクチンで抗体力価が10倍上昇することによって証明された。HMWワクチンを投与したNHPでのOPA応答者の比率もまた、より高かった(40%に対し80%)。
NHPにおける単回用量の二抗原免疫原性組成物(CP5−CRM197およびClfA)に対する免疫応答を評価するため、5頭のサルからなる群を、AlPO4を添加していない異なる用量の2つの抗原で免疫化した。0日目、14日目、および28日目の出血を、オプソニン性貪食(OP)活性およびELISA力価について試験し、結果を表24にまとめる。結果は、OP活性が、CP5偽群と比較して、CP5で免疫化した動物で一貫して観察されることを示した。全体的に、100μgの群は、他の群と比較して、最も高いELISA力価およびOP力価を有していた。ClfAのみの群の血清ではOP死滅活性は観察されなかった。ClfAまたはCP5の用量を上昇させて投与した群において、干渉は観察されなかった。表25を参照されたい。
CP5−CRM197コンジュゲートおよびCP8−CRM197コンジュゲートの両方は、マウス、ラット、ウサギ、およびヒトではない霊長類(NHP)において、莢膜血清型特異的抗体応答を誘発した。コンジュゲート誘発型の抗体は、インビトロでの機能的オプソニン性貪食死滅アッセイにおいて機能的であった。O−アセチル化がCP5およびCP8の両方にとって防御抗体を誘導するために重要であること、ならびにO−アセチル基が、CP5に対するOPA+mAbにより認識されるエピトープの一部であることを実証するために、データを得た。O−アセチル化された天然CP5を認識するMAbは、OPAにおいて機能的であり、細菌の死滅を仲介する。CP8コンジュゲートは、マウスおよびウサギの両方において、OPAにおいて8型株の死滅を仲介する、機能的抗体を誘発した。ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体による死滅の特異性は、相同な天然多糖をアッセイに添加した後に死滅がなくなったことによって確認された。様々な活性免疫化モデルを用いて、CP5−CRM197コンジュゲートおよびCP8−CRM197コンジュゲートの両方の臨床前効率を示した。CP5コンジュゲートは、マウス腎盂腎炎モデルおよびラット心内膜炎モデルにおいて一貫した効率を示した。CP5のO−アセチル化の重要性は、マウス腎盂腎炎モデルにおいて確認され、このモデルにおいて、CRM197にコンジュゲートした脱O−アセチル化型CP5は、実験的感染に対して動物を防御できなかった。
黄色ブドウ球菌(S.aureus)は、比較的軽度の皮膚感染から、心内膜炎、壊疽性筋膜炎、骨髄炎、敗血症性関節炎、および肺炎などの、より重症で侵襲性の感染にわたる、広範な感染の原因である。これらのインビボでの部位のそれぞれは固有であり、細菌は、それらの抗原発現プロフィールを、個別の株がコロニー形成し、成長し、最終的に疾患を生じさせるために最も適したプロフィールに改変することによって、環境刺激の差に応答する可能性がある。実施例12において例示されるように、黄色ブドウ球菌(S.aureus)株は、インビボでの抗原発現の多様性を示す。異なる抗原から構成される多成分免疫原性組成物は、黄色ブドウ球菌(S.aureus)により生じる多様な疾患所見に対して防御する可能性が高い。
ClfA、ClfB、MntC、CP5−、およびCP8というポリペプチドおよび/または多糖から選択される3つ、4つ、または5つの抗原を含有する様々な多抗原ブドウ球菌免疫原性製剤を、様々なインビボモデルにおいて免疫原性および効力について試験する。免疫原性組成物は以下の通りである。
抗原の組み合わせを用いると、OPAアッセイを用いて測定されるように増強された効力が観察された。3〜10頭のサルからなる群を多成分ワクチンで免疫化する、ヒトではない霊長類での研究を行った。単回用量のワクチンを与えた動物およびOPA力価を、0日目およびワクチン接種の2週間後にモニタリングした。OPA力価は、OPAアッセイにおいて黄色ブドウ球菌(S.aureus)株Pfe5−1の50%を死滅させるために必要な血清の希釈として定義された。増強された活性が、3抗原ワクチン製剤と比較して、4抗原の組み合わせで見られた(p=0.0272、図18)。
Claims (22)
- 単離された黄色ブドウ球菌(S.aureus)クランピング因子A(ClfA)ポリペプチド、担体タンパク質にコンジュゲートした単離された黄色ブドウ球菌(S.aureus)莢膜多糖5型、および担体タンパク質にコンジュゲートした単離された黄色ブドウ球菌(S.aureus)莢膜多糖8型を含み、ここで莢膜多糖5型が70から300kDaの間の高分子量莢膜多糖である、免疫原性組成物。
- 単離された黄色ブドウ球菌(S.aureus)MntCタンパク質をさらに含む、請求項1に記載の免疫原性組成物。
- 単離された黄色ブドウ球菌(S.aureus)クランピング因子B(ClfB)ポリペプチドをさらに含む、請求項1または2に記載の免疫原性組成物。
- ClfAポリペプチドが、ClfAの、
リガンド結合領域;
N1ドメイン、N2ドメイン、およびN3ドメイン;ならびに
N2ドメインおよびN3ドメイン
からなる群から選択されるポリペプチド断片である、請求項1から3のいずれかに記載の免疫原性組成物。 - ClfBポリペプチドが、ClfBの、
リガンド結合領域;
N1ドメイン、N2ドメイン、およびN3ドメイン;ならびに
N2ドメインおよびN3ドメイン
からなる群から選択されるポリペプチド断片である、請求項3または4に記載の免疫原性組成物。 - ClfAポリペプチドが、フィブリノーゲンと天然ClfAとで観察される結合と比較して低減したレベルでフィブリノーゲンに結合する、請求項1から5のいずれかに記載の免疫原性組成物。
- ClfAポリペプチドが、Tyr338、Tyr256、Pro336、Lys389、Ala254、またはIle387の1つまたは複数におけるアミノ酸置換を有する、請求項1から6のいずれかに記載の免疫原性組成物。
- アミノ酸置換がAlaまたはSerへのものである、請求項7に記載の免疫原性組成物。
- Tyr338がAlaに置換されている、請求項8に記載の免疫原性組成物。
- 莢膜多糖5型が、10%から100%の間でO−アセチル化されている、50%から100%の間でO−アセチル化されている、または75%から100%の間でO−アセチル化されている、請求項1から9のいずれかに記載の免疫原性組成物。
- 莢膜多糖8型が、70から300kDaの間の高分子量莢膜多糖である、請求項1から10のいずれかに記載の免疫原性組成物。
- 莢膜多糖8型が、10%から100%の間でO−アセチル化されている、50%から100%の間でO−アセチル化されている、または75%から100%の間でO−アセチル化されている、請求項1から11のいずれかに記載の免疫原性組成物。
- 担体タンパク質が、ジフテリア菌(C.diphtheriae)毒素CRM197である、請求項1から12のいずれかに記載の免疫原性組成物。
- 黄色ブドウ球菌(S.aureus)MntCタンパク質が、脂質化されたタンパク質または脂質化されていないタンパク質である、請求項1から13のいずれかに記載の免疫原性組成物。
- アジュバントをさらに含む、請求項1から14のいずれかに記載の免疫原性組成物。
- 薬学的に許容できる担体をさらに含む、請求項1から15のいずれかに記載の免疫原性組成物。
- Opp3a、DltD、HtsA、LtaS、IsdA、IsdB、IsdC、SdrC、SdrD、SdrE、SdrF、SdrG、SdrH、SrtA、SpA、Sbi、FmtB、α溶血素(hla)、β溶血素、フィブロネクチン結合タンパク質A(fnbA)、フィブロネクチン結合タンパク質B(fnbB)、コアグラーゼ、Fig、map、パントン・バレンタイン型ロイコシジン(pvl)、α毒素およびその変型、γ毒素(hlg)および変型、ica、免疫優性ABC輸送体、Mg2+輸送体、Ni ABC輸送体、RAP、自己溶解酵素、ラミニン受容体、IsaA/PisA、IsaB/PisB、SPOIIIE、SsaA、EbpS、Sas A、SasF、SasH、EFB(FIB)、SBI、Npase、EBP、骨シアロ結合タンパク質II、アウレオリシン前駆体(AUR)/Sepp1、Cna、ならびにそれらの断片、M55、TSST−1、mecA、ポリ−N−アセチルグルコサミン(PNAG/dPNAG)エキソ多糖、GehD、EbhA、EbhB、SSP−1、SSP−2、HBP、ビトロネクチン結合タンパク質、HarA、EsxA、EsxB、エンテロトキシンA、エンテロトキシンB、およびエンテロトキシンC1からなる群から選択される抗原をさらに含む、請求項1から16のいずれかに記載の免疫原性組成物。
- 黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)に対する免疫応答を誘発する医薬の製造における、免疫学的に効果的な量の請求項1から17のいずれかに記載の免疫原性組成物の使用。
- 免疫応答が、対象におけるブドウ球菌生物に関連する疾患、症状、または少なくとも1つの症候を予防するかまたは低減させる、請求項18に記載の使用。
- 疾患が、侵襲性の黄色ブドウ球菌(S.aureus)疾患、敗血症、および保菌からなる群から選択される、請求項19に記載の使用。
- 誘発される免疫応答が、黄色ブドウ球菌(S.aureus)に対するオプソニン性貪食活性(OPA)を有する抗体の生成を含む、請求項18から20のいずれかに記載の使用。
- 対象に受動免疫をもたらす抗体調製物の製造における、請求項1から17のいずれか一項に記載の免疫原性組成物の使用。
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