例えば、液晶プロジェクタやDLP(TM)プロジェクタのような画像表示用などの光学装置のための光源装置においては、高輝度放電ランプ(HIDランプ)が使用される。前記したプロジェクタには、ダイクロイックプリズム等によりR,G,Bの3原色を分離し、各色毎に設けた空間変調素子によって各3原色別の画像を発生させ、ダイクロイックプリズム等により光路を再合成してカラー画像を表示する方式のものがある。また他方では、R,G,Bの3原色を有する色フィルタを回転させ、光源からの光をこのフィルタに通すことにより各3原色の光束を順次発生させ、これに同期させて空間変調素子を制御することにより、各3原色別の画像を時間分割によって順次発生させ、カラー画像を表示する方式のものもある。
定常点灯時における放電ランプの駆動の方式に関しては、直流駆動方式と、インバータをさらに具備することによって周期的極性反転を行う交流駆動方式とがある。直流駆動方式の場合は、ランプからの光束もまた直流的、すなわち時間的に変化しないため、基本的に、前記したプロジェクタの両方の方式において、全く同様に適用することができるという大きな利点がある。これに対し、交流駆動方式の場合は、極性反転周波数という、直流駆動方式には無い自由度を利用して、放電ランプの電極の消耗や成長を制御できる可能性があるという利点がある。
この種のランプを始動する場合、ランプに無負荷開放電圧と呼ばれる電圧を印加した状態で、高電圧を印加して放電空間内に絶縁破壊を発生させ、グロー放電を経てアーク放電に移行させる。交流駆動方式の場合にこれを達成する方法として、インバータの後段に共振インダクタと共振コンデンサとによる直列共振回路を設け、始動時にインバータの極性周波数をこの共振回路の共振周波数に合致するようにして直列共振現象を発生させ、ランプに印加する電圧を高める直列共振方式による共振始動が従来から行われている。さらに、この共振始動とイグナイタの併用により、印加する高電圧のピーク値を高めて始動確率を高めることも行われる。
図18は、従来の放電ランプ点灯装置の一形態の簡略化された構成であり、共振始動に関する原理を説明するものである。この図の放電ランプ点灯装置は、放電ランプ(Ld)に給電する給電回路(Ux’)と、その出力電圧を極性反転するための、フルブリッジ方式のインバータ(Ui’)と、共振インダクタ(Lh’)と共振コンデンサ(Ch’)とを備え、始動時は、前記インバータ(Ui’)を、前記共振インダクタ(Lh’)のインダクタンスと前記共振コンデンサ(Ch’)の静電容量の積の値で決まる共振周波数もしくはそれに近い周波数で極性反転駆動し、これにより生ずるLC直列共振現象により前記共振コンデンサ(Ch’)の両端子間に高い電圧を発生させ、前記放電ランプ(Ld)に高い電圧を印加するものである。
直列共振動作時に、前記インバータ(Ui’)に流れる共振電流が過大にならないためには、共振コンデンサの静電容量を小さくし、かつ共振インダクタのインダクタンスをある程度大きくする必要があるが、このインダクタンスが大きいほど、定常点灯時におけるランプ光束の瞬断やオーバーシュート、振動が発生し易くなる。そして直列共振方式において、ランプに印加する電圧の十分な高まりを得るためには、周期電圧印加手段の周波数、またはその高調波成分の周波数が、共振回路の共振周波数、または共振周波数の奇数次の周波数に合致、すなわち同調するように設定する必要がある。
しかしながら、部品にはバラツキが存在するため、前記インバータ(Ui’)を、前記共振インダクタ(Lh’)の設計上のインダクタンスと前記共振コンデンサ(Ch’)の設計上の静電容量で決まる、予め設定された固定の周波数で極性反転駆動しても、期待する高電圧が得られない問題があった。さらに、バラツキの存在下において、個々の放電ランプ点灯装置における共振周波数を測定し、それを設定する方法も考えられるが、接続されるケーブルの長さや、ケーブルと他の導体との近接の程度などの影響が加わるため、共振周波数を予め厳密に設定することは困難であるという問題がある。
この問題を解決するためにインバータ(Ui’)の駆動周波数を前記共振周波数、またはその近傍に設定または掃引動作する方法が従来より提案されている。図19は、従来の放電ランプ点灯装置の一形態の簡略化されたタイミング図である。本図の(a)は前記共振コンデンサ(Ch’)に発生する出力電圧(Vnh)の波形、(b)は前記インバータ(Ui)の駆動周波数(f)の変化を表す。 これは、点灯開始時にインバータ(Ui’)が発生する交流電圧の周波数を共振回路の共振周波数を含む所定範囲で自動掃引することを繰り返すものであって、期間(Ta)においては、下限周波数から上限周波数に向けて掃引動作を行い、その過程でインバータ回路の発生する交流電圧の周波数が共振周波数にたまたま一致する時点(ta)にて出力電圧(Vnh)が高電圧となる。一方、期間(Tb)においては、上限周波数から下限周波数に向けて掃引動作を逆方向に行う。したがって、点灯開始時の所定の期間(T)の範囲において前記バラツキから想定される共振周波数の範囲で複数回の掃引動作を繰り返し、高電圧を放電ランプ(Ld)に印加することができる。この高電圧のピーク電圧は、例えば、2kV〜5kVとなるように設定される。(前記ピーク電圧は、0Vからピーク値に至る電圧を測ったもので、本明細書における交流高電圧のピーク電圧の測り方は全て同様とする。)
しかしながら、放電ランプに高電圧を印加し始動する前記期間(T)の間でインバータ(Ui’)の駆動周波数が前記共振周波数またはその近傍の周波数から離れている期間(図において、期間(Tc)に代表される、出力電圧(Vnh)が比較的低い期間の全て)においては、出力電圧(Vnh)には、共振による電圧の高まりが全く発生しない問題があった。
以上において述べたような、インバータなどの交流駆動回路の駆動周波数と共振周波数の一致するタイミングを特定せず、放電ランプの始動期間全体にわたって、駆動周波数の掃引動作を繰返し続けるものに関して、従来より様々な技術が提案されて来た。
特開平02−215091号には、駆動周波数が共振周波数に一致する条件を、少なくとも一瞬発生させるものとして、点灯開始時に、インバータ回路の発生する交流電圧の周波数を共振回路の共振周波数を含む所定範囲で自動掃引するものが記載されている。
また、特開平03−102798号には、LC回路にランプが点火するように高電圧をランプへ印加させる高周波数手段を含み、高周波数手段が時間的に変化する周波数で、あるいは共振周波数より高い周波数から時間的に減少する周波数でLC回路へ印加するものが記載されている。
また、特開平04−017296号には、インバータ手段の発振周波数を高い周波数に変えるとき鋸歯状波発生手段または三角波発生手段の出力電圧に応じて発振周波数を所定の範囲内で変化させるように構成するものが記載されている。
さらに、特開平04−272695号には、始動の際、インバータの出力周波数が、LC回路の共振周波数から音響的共鳴現象の発生し得る周波数領域以下の周波数まで連続的に変わるようにインバータを制御するもの、あるいは、定常時には音響的共鳴現象の発生し得る周波数領域以下の周波数になるようにインバータを制御するものが記載されている。
さらに、特開平10−284265号には、始動期間において出力接続部から出力する交流電圧の周波数を共振回路の共振周波数を含む範囲で掃引するもの、あるいは、始動期間に高周波の交流電圧を出力接続部から出力し、放電ランプの始動後の定常点灯期間に低周波の交流動作電圧のみを放電ランプに供給するものが記載されている。
さらに、特開2000−195692号では、共振始動中のブリッジの動作周波数の掃引を行い共振点を通過させるものが実施例として記載されている。
さらに、特開2001−338789号には、所定時間に各スイッチ素子のスイッチング周波数を連続的に変化させる制御を行い、そのスイッチング周波数の掃引範囲は、負荷共振回路のインダクタおよびコンデンサによる共振周波数を含むようにするもの、さらには所定の期間、周波数を高い方から低い方に変化、つまり掃引させる制御を行うもの、さらには、放電ランプ絶縁破壊後の共振周波数が変化した際にインバータの周波数も変化させアーク放電に大きなエネルギーを供給し、放電ランプをより安定的にアーク放電に移行させるものが記載されている。
さらに、特開2002−151286号には、インバータの駆動周波数の掃引を複数回繰り返すもの、高周波からアーク点灯で低周波に切り替わり移行するものが実施例として記載されている。
さらに、特開2004−146300号には、2つの共振系を用いたものではあるが、周波数可変範囲の下限周波数と上限周波数は、共振回路部 の部品ばらつきや高圧放電ランプ点灯装置からランプまでの出力線の浮遊容量の影響により共振周波数が変化してもカバーできるだけの可変範囲に設定し掃引動作をマイクロプロセッサを用いて行う実施例が記載されている。
さらに、特開2004−221031号では、前記方形波の周波数を段階的に低減するとともに、少なくともその第1段階における周波数を共振回路の共振周波数の奇数分の1近辺に設定する制御手段を備えることを特徴とする放電ランプ点灯装置であって、LC部品のバラツキによる共振電圧を抑えるためにインバータの前段に配置されたDC−DC変換回路の周波数とデューティを変動させるものが記載されている。
さらに、特開2005−038813号には、奇数次共振を行うために、始動時の高周波スイッチング動作のインバータ周波数を連続的に、あるいは多段階的に変化させるものが実施例として記載されている。
さらに、特開2005−050661号には、放電ランプ始動時において、インバータの出力周波数を上限値から下限値まで連続的に変化させるとともに、下限値に達したら再び上限値に戻って同じ動作を繰り返し、共振点を通過させるものが実施例として記載されている。
さらに、特開2005−038814号では、2つのスイッチ素子にて、ハーフブリッジ機能と降圧チョッパ機能を達成したものであるが、始動中は共振周波数の奇数分の1の周波数で動作させるべく複数回に割ってインバータの周波数を掃引するものが実施例として記載されている。
さらに、特開2008−243629号では、共振周波数を得るためにインバータの周波数の掃引動作を繰り返し実施するもの、あるいは、無負荷状態、始動改善モード、定常点灯状態での各々のモードにおけるインバータの周波数を、無負荷>定常>始動改善モード と規定したものが記載されている。
ここまで、インバータなどの交流駆動回路の駆動周波数と共振周波数の一致するタイミングを特定せず、放電ランプの始動期間全体にわたって、駆動周波数の掃引動作を繰返し続けるものに関して、従来技術の提案について説明してきた。しかしながら、前記したように、放電ランプに高電圧を印加し始動する前記期間(T)の間でインバータ(Ui’)が前記共振周波数またはその近傍の周波数から離れた周波数で動作している期間においては、共振による電圧の高まりが全く発生しない前記した問題は解決されていなかった。
この問題を解決するためにインバータ(Ui’)の駆動周波数を前記共振インダクタ(Lh’)と共振コンデンサ(Ch’)からなる共振回路の前記共振周波数、またはその近傍にあるいは高次の共振周波数に自動的に同調または設定する方法が従来より提案されている。
前記図18における、放電ランプ点灯装置について再度説明する。本回路では、出力電圧を極性反転するための、フルブリッジ方式のインバータ(Ui’)と、共振インダクタ(Lh’)と共振コンデンサ(Ch’)とを備え、共振周波数もしくはそれに近い周波数で極性反転駆動し、これにより生ずるLC直列共振現象により前記共振コンデンサ(Ch’)の両端子間に高い出力電圧(Vnh)を発生させ、前記放電ランプ(Ld)に高い電圧を印加するものであるが、前記出力電圧(Vnh)の電圧を制御するために、共振状態が実現していることの検出手段としての同調度検出手段(Un’)を設けてある。
図20は、従来の放電ランプ点灯装置の一形態の簡略化されたタイミング図で、直列共振に関するインバータ(Ui’)の制御のための同調度検出手段(Un’)を用いる場合に関する。(a)は前記共振コンデンサ(Ch’)に発生する出力電圧(Vnh)の波形、(b)は前記インバータ(Ui’)の駆動周波数(f)の変化の様子を表す。これは、点灯開始時にインバータ(Ui’)の発生する交流電圧の周波数を共振回路の共振周波数を含む所定範囲で自動掃引するものであって、期間(Td)においては、下限周波数から上限周波数に向けて掃引動作を行い、時点(td)において、共振が実現して、出力電圧(Vnh)が目標電圧に至ったことを、電圧検出手段で構成した同調度検出手段(Un’)が検出し、その周波数(fp)を維持し、連続して所望した高電圧を発生し得ることができる。
前記したように出力電圧(Vnh)は、例えば、ピーク電圧が2kV〜5kVとなるように設定されるため、同調度検出手段(Un’)は、高電圧に耐えうる能力を有する必要がある。共振状態が実現していることの検出手段の一つの形態としては、共振コンデンサ(Ch’)と共振インダクタ(Lh’)との接続ノードとグランド間、あるいは放電ランプ(Ld)の両端間の電圧を測定し信号化する形態がある。例えば、高電圧に耐えるべく、抵抗素子やコンデンサを直列に複数個並べ、その分圧された中間の点から信号を得るようにすることができる。しかし、この形態の場合、構成部品の個数が増加するため、放電ランプ点灯装置の小型化や低コスト化にとって不利になる問題があった。
また、共振状態が実現していることの検出手段の他の形態としては、共振インダクタ(Lh’)に対して適当な小さい巻き数比を有する2次巻き線を付け加え、共振インダクタ(Lh’)をトランス構造とし、前記2次巻き線から得られる、概ね前記共振インダクタ(Lh’)の振幅電圧に比例する振幅電圧を有する信号を、抵抗やダイオード、コンデンサなどを用いて整流し、前記電圧検出手段とする形態がある。しかしながら、この形態では、始動時に共振インダクタに前記した高電圧が発生するため、トランス構造とした共振インダクタ(Lh’)においては、高電圧発生部に対する2次巻き線の絶縁を十分確保して、絶縁破壊やコロナ放電を防止する必要があり、そのため十分なバリアテープや巻き線層間テープを具備する方法や、各巻き線をセクションでセパレートする方式を採用するなど、結果としてコストの増加を招いてしまう問題があった。
共振状態が実現していることの検出手段のさらなる形態としては、インバータ(Ui’)の駆動周波数が共振回路の共振周波数と一致したときは、インバータ(Ui’)から電流が多く流れる現象を利用するもので、インバータ(Ui’)の電流検出手段を設ける方法が考えられる。しかし、前記電流検出手段として例えば、抵抗値の小さな抵抗を用いた場合、放電ランプ点灯をしている定常動作においても定常的に電流が流れるため、不要な抵抗損失を招くことになるし、あるいは、カレントトランスをインバータ(Ui’)の出力に配置する方式では、コストが増加する問題がある。
共振状態が実現していることの検出手段のさらなる形態として、インバータの電流位相検出手段とインバータの電圧位相検出手段と設け、検出されたインバータ電流位相とインバータ電圧位相とを比較する方式があり、実際、所定の位相関係が実現するようフィードバックを行うものが提案されている。しかし、この方式でも同様に、位相の比較判定のための回路、また電流検出のためのカレントトランスや電流検出用の抵抗が必要となり、コストを増大させる欠点がある。
以上において述べたような、共振状態が実現していることの検出手段を有して、インバータの駆動周波数を共振周波数に一致するように設定し、連続的な高電圧発生を目指すものに関して、従来より様々な技術が提案されて来た。
例えば、特開昭52−121975号には、動作周波数を掃引し、共振条件を検出したときに動作周波数を固定するものとして、共振周波数の第3次高調波でインバータを駆動するものであってインバータが共振周波数を捜し、その周波数で動作するようにするものが記載されている。
例えば、特開昭55−148393号には、自励発振的に共振状態を維持するものとして、ガス入り放電ランプの起動時に、共振回路に流れる電流を検出する手段を用意し変化率が最大または最大に近い時に、共振回路に印加された電圧を転流することによってインバータが共振回路の共振周波数に保たれるようにするものが記載されている。
また、特開2000−012257号には、同様に、自励発振的に共振状態を維持するものとして、共振状態で放電ランプを始動する際、インダクタとコンデンサの共振回路の自励発振で自動同調を行うものが記載されている。
さらに、特表2001−501767号には、ガス放電ランプの状態を検出するように構成された検出手段を有し、制御回路手段は、検出手段の出力の関数としてインバータの周波数を制御するもの、あるいは、電力検出手段に応答して、インバータの周波数を有効に変化させるフィードバック回路手段を有し、ガス放電ランプに供給される電力が所定レベル近くに維持されるもの、あるいは、インバータは、ガス放電ランプが始動するまでおよび始動した後に、共振周波数に近づくように低下する周波数で連続的に作動するように構成され、インバータは、少なくともガス放電ランプの作動がグローモードからアークモードに変化するまで、特定周波数近くの周波数に近づくように低下する周波数で作動するように構成され、インバータは、ガス放電ランプの作動がグローモードからアークモードに変化した後、他の共振周波数より高い周波数で作動するように構成されることにより、ガス放電ランプが、始動され、グローモードからアークモードに遷移し、かつ定常状態で作動するもの、あるいは、ガス放電ランプが始動するまで、特定周波数から共振周波数に近づくように低下する周波数でインバータを作動させるステップと、ガス放電ランプのグローからアークへの遷移が生じるまで、特定周波数の近くにに向かって増大する周波数でインバータを作動させるステップと、ガス放電ランプが安定作動状態になる他の共振周波数より高い周波数でインバータを作動させるステップとを更に有するものが記載されている。
さらに、特表2001−511297号にはブリッジの駆動周波数における共振周波数の検出と決定方法に関する方式が提案されており、ランダムサンプリングによるサーチ方法を行い、例えばガス電灯ランプのブレークダウンおよびガス放電ランプの点火が生じるまで連続して行われる方式が記載されている。
さらに、特表2001−515650号には、無負荷・グロー・アークの各フェイズでブリッジ周波数を低下させるものであって、最初に共振イグナイタを公称共振周波数より十分高い周波数で励起するように制御し、ランプ端子電圧を監視しながら励起周波数を減少させるもの、あるいは、周波数を公称共振周波数に向って減少させると、ランプの端子電圧が増大し測定ランプ端子電圧が制御してい周波数において最小限度値に到達すると、コントローラは周波数の減少を停止し、ランプをこの周波数で指定最小持続時間に亘って励起し続けるものが記載されている。
さらに、特開2004−095334号においてインバータが駆動する駆動電圧の周波数を検出する周波数検出手段と、共振回路を駆動して生じた電圧を検出する電圧検出手段を共振回路部に設け、駆動周波数を高い周波数から低い周波数と変化させ、電圧検出手段が最大電圧に達した際の周波数を駆動周波数とするもの、あるいは、駆動周波数を高い周波数から低い周波数と変化させ、電圧検出手段が閾電圧に達した際の周波数を駆動周波数とするもの、また、前記周波数の検出は、放電ランプを始動させ得る始動電圧より小さい定電圧を共振回路に印加するもの、また、電圧検出手段として、共振インダクタの2次巻き線を利用したもの、あるいは、共振コンデンサと共振インダクタとの接続ノード測定するものが記載されている。
また、特開2004−127656号には、放電ランプを点灯するために、インバータ回路の出力電圧の周波数を、共振回路の奇数次共振周波数よりも低い周波数で起動した後に、出力電圧の周波数を次第に上昇させ、または段階的に高くし、共振回路の振動電圧の振幅が所定値以上になったときにおける出力電圧の周波数に、インバータ回路の出力電圧の周波数を設定するもの、あるいは、所定時間内に、共振回路の出力電圧の振幅が所定値以上にならない場合、出力電圧の周波数が上限値まで達した後に、周波数を高くするときにおける速度と同等の速度で、起動時の周波数である初期周波数を目標に、周波数を下げる過程で、共振回路の出力電圧の振幅が所定値以上になれば、そのときの周波数よりも数%低い周波数に設定し、一方、周波数を下げる過程で、共振回路の出力電圧の振幅が所定値以上にならずに、初期周波数に達した場合は、周波数を再度高くする動作を、点灯するまで、または予め定めた最大時間が経過するまで、繰り返すものが記載されている。
さらに、特開2004−327117号には、インバータ回路部で発生する高周波電圧の動作周波数は、高圧パルスを出力できるよう、共振回路の共振周波数又はその奇数倍の周波数近傍に設定され、且つ、高圧パルスを略一定に出力できるように周波数掃引しており、共振昇圧電圧を検出し、略目標電圧値になった時点で共振昇圧電圧を停止し、あるいは動作周波数を固定し一定期間略目標電圧値で出力継続するもの、あるいは、略目標電圧値になった時点で動作周波数をそれまでの掃引方向と逆方向に掃引し、一定期間、略目標電圧値以下で出力継続するもの、あるいは、共振電圧検出手段が共振回路のインダクタンスの二次巻線により構成されたもの、あるいは、共振電圧検出手段が共振回路のコンデンサの両端に接続された分圧抵抗により構成されたもの、あるいは、周波数掃引の制御をマイクロプロセッサでコントロールしているものが記載されている。
さらに、特表2005−520294号には、自動同調を行うために、3次共振の自動フィードバックによる同調に関して、例えば、共振回路に生じる高電圧出力の検出部としてアンテナ回路を用いPLL回路を用いてフィードバックを行うものが記載されている。
さらに、特表2005−515589号には、自動同調を行うものとしてVCOとマイクロプロセッサを使ったフィードバックを行うもの、電圧、電流、高電圧をフィードバックするものが記載されている。
さらに、特表2005−507554号には、コイルの自己誘導係数及びコンデンサの静電容量の値と時間変動スイッチング周波数とが、周波数変動の間のある時点で前記時間変動スイッチング周波数の奇数次の高調波周波数がコイル及びコンデンサの共振周波数に少なくとも近づくように、互いに関連して決定されることを特徴とするバラスト装置について記載されている。
さらに、特表2005−507553号には、イグナイタ動作中のブリッジは高次共振動作を行うべく、放電ランプの両端電圧を測定する手段を設けて放電開始前に共振動作を行うためのブリッジの駆動周波数を掃引して目標電圧に達したところで周波数固定とした方式のもの、また、点灯後は段階的に低周波動作に移行する方法について記載されている。
さらに、特開2007−103290号において、共振回路に発生する電圧を測定する手段を設け無負荷時に共振動作を行うためブリッジの周波数を掃引し、目標電圧に達したところで周波数を固定するものが記載されている。
さらに、特開2007−173121号において、インバータの駆動周波数を高い周波数から低い周波数に連続あるいは段階で変動し、共振電圧から得られる値を基に、共振電圧が第2電圧レベルに達したか否かを判別し、達した旨の判別結果が得られた後は、共振電圧を第2電圧レベルに維持するように可変の周波数を固定するものが記載されている。
さらに、特開2007−179869号において、放電ランプの始動シーケンスにおける周波数制御回路は、同調度信号を監視しながら周波数可変発振器の上限周波数または下限周波数の何れか一方の周波数から開始して他方の周波数を超えない範囲まで掃引するよう周波数制御信号を変化させる掃引動作を行い、周波数制御回路は掃引動作の終了後、共振回路の共振周波数に対する周波数制御信号の値を決定して周波数可変発振器に入力するもの、また、共振周波数のドリフトに対応するために、周波数制御信号の値を決定後、狭い範囲に亘る掃引動作を継続するもの、さらに、共振回路を並列共振回路を用いた構成としたものであって共振インダクタをトランス構造とし同調度信号を監視できるよう構成したものが記載されている。
さらに、特開2008−027705号において第一の電圧測定手段として共振インダクタの2次巻き線にコンデンサと抵抗を接続した構成とし共振作用による高電圧出力のフィードバックに持いるものが記載されている。
さらに、特開2008−269836号において共振作用による高電圧出力のフィードバックに持いるため、共振インダクタの2次巻き線にコンデンサと抵抗を接続した構成とし共振電圧を間接的に検出し、インバータ駆動周波数を目標の電圧に達した際の周波数に固定するものが記載されている。
ここまで、共振状態が実現していることの検出手段を有して、インバータの駆動周波数を共振周波数に一致するように設定し、連続的な高電圧発生を目指すものに関して、従来技術の提案について説明してきた。しかしながら、前記したように、共振状態が実現していることの検出手段が必要となり、コストの増加を招く問題があった。
以上において述べた問題は、共振回路において共振現象に伴う高電圧を発生させてこれをランプに印加し、ランプにおいて絶縁破壊を発生させるまでのステップにおける問題であった。しかし、放電ランプ点灯装置として安定点灯状態を実現するためには、ランプにおいて絶縁破壊を発生し、放電が開始した後において、さらに、インバータの駆動周波数を、高い共振周波数から、最終的な安定点灯状態の低周波に移行さるステップを、安全かつ確実に完了させなければならないという問題が残っている。
放電ランプの高電圧印加時と安定時とのインバータの駆動周波数の切り替えに関する技術には、グロー放電からアーク放電へ確実に移行させる共振始動の機能をその過程に含めるもの、あるいは、高周波を印加する始動方式に見られる放電ランプ電極の片側方向にしか電流が流れない非対称放電現象を短時間で収束させるとともに、電極に対するダメージを抑制しつつ放電ランプ電極の両方向にて安定的に移行点灯させる機能をその過程に含めるもの、などが挙げられる。
これらを改善するためインバータの周波数を効果的に切り替えたり変化させる方法、あるいは、放電ランプへの電流値を切り替える方法が従来から提案されている。
特開平03−167795号には、放電ランプの放電開始が検出されたとき、スイッチ素子の動作周波数を無負荷時の周波数から点灯時の周波数に徐々に移動させるもので非対称放電となった際、周波数を急激に落とさないため点灯している方向に極端な過電流を流すことを防止しているものが記載されている。
さらに、特開平04−121997号には、ランプが始動した後は共振周波数またはその近傍の周波数から低い周波数に切り替える、あるいは連続して周波数を低減させるようしたものが記載されている。
さらに特開平04−342990号には、放電ランプの始動時、出力周波数がLC直列共振回路における共振周波数の近傍の周波数にてインバータを駆動させ、ランプ電流検出手段の出力が所定値を超えると、インバータの出力または周波数を減少した予め決定された値に切り替わるものが記載されている。
さらに、特開平07−169583号には、直流−交流変換回路の出力電圧の周波数を変化させるための周波数制御手段を設け、点灯判別手段により放電ランプの不点灯状態が判別された時に周波数制御手段が直流−交流変換手段の出力電圧の周波数をインダクタ及びコンデンサによる直列共振を起こすに足る値にまで高め、また、点灯判別手段により放電ランプの点灯状態が判別された時に周波数制御手段が直流−交流変換回路の出力電圧の周波数を低くするものが記載されている。
さらに、特開平07−230882号には、始動した後から所定期間は、直列共振回路の共振周波数以上且つ共振周波数の近傍周波数でインバータ部を連続的に動作させるものが記載されている。
さらに、特開平08−124687号には、共振回路を無負荷時のみ高次共振周波数でフルブリッジを動作させ、点灯したら低い周波数の電圧をランプに印加するための周波数切替制御回路を持つものが記載されている。
さらに、特開平11−265796号には、放電ランプが点灯状態に移行したと判断した際は、周波数を減少した予め決定された値に切り替わるものが記載されている。
さらに、特開2004−265707には、LC共振回路を用いてフルブリッジを高次共振周波数動作し、点灯後は低い周波数の電圧をランプに印加するもの、共振回路は高電圧を発生する期間と直流電圧を出力する期間、または異なる期間とを交互に繰り返すことを特徴としたものが記載されている。
さらに、特開2008−171742には、ランプ始動開始から所定時間経過後に根元放電か先端放電かを判別し、先端放電である場合は高周波動作から低周波定常動作に切り替えるが、根元放電である場合は高周波動作を継続するものが記載されている。
さらに、特開2007−005260には、放電ランプが全波放電か非対称放電かを判断する判断回路が全波放電と判断すると放電ランプを所定期間内に安定点灯状態に移行させるように設定された定電流を放電ランプに供給し、一方、判断回路が半波放電と判断すると前記定電流よりピーク値の大きい電流を放電ランプDLに供給するように、両電極間に流す電流を切替える切替え部を有するものが記載されている。
先ず本発明の放電ランプ点灯装置の実施例の一形態を簡略化して示すブロック図である図1を用いて説明する。降圧チョッパや昇圧チョッパなどの方式のスイッチング回路などから構成される給電回路(Ux)は、放電ランプ(Ld)の状態あるいは点灯シーケンスに応じて、適合する電圧・電流を出力する。フルブリッジ回路などから構成されるインバータ(Ui)は、前記給電回路(Ux)の出力電圧を、例えば周期的に反転した交流電圧に変換して出力し、前記放電ランプ(Ld)の一対の主放電のための電極(E1,E2)に対し、共振インダクタ(Lh)と共振コンデンサ(Ch)からなる共振回路(Nh)を介して電圧を印加する。
なお、ランプの始動に際して印加する、無負荷開放電圧は典型的には略200V程度、グロー放電時のランプ電圧は典型的には100〜200V、アーク放電移行直後のランプ電圧は典型的には10V程度であり、前記給電回路(Ux)は、グロー放電時およびアーク放電時には、流れる電流が規定の制限電流値を超えないように制御される。
前記共振回路(Nh)の共振周波数は、主として前記共振コンデンサ(Ch)の静電容量と前記共振インダクタ(Lh)のインダクタンスの積に依存して計算される。始動時においては、前記インバータ(Ui)に対して、周期駆動回路(Uj)から周期的なインバータ駆動信号(Sj)が出力される。前記周期駆動回路(Uj)からの前記インバータ駆動信号(Sj)に対して、前記した共振周波数が、基本波共振もしくは高次共振の関係、もしくはそれに近い関係になるとき、前記共振回路(Nh)において共振現象が発生して共振電流が流れ、前記共振インダクタ(Lh)および前記共振コンデンサ(Ch)には高い電圧が発生する。
例えば、ノード(T32)に対するノード(T31)の電圧が200Vであり、ノード(T42)とノード(T41)の間、すなわち前記放電ランプ(Ld)の主放電のための前記電極(E1,E2)には、ピーク電圧2kV〜5kVが印加される。
前記した共振回路(Nh)のバラツキ、具体的には前記共振コンデンサ(Ch)の静電容量や前記共振インダクタ(Lh)のインダクタンスなどのバラツキに起因する共振周波数のバラツキの存在の下で、共振条件を成立させるために、本発明においては、前記インバータ(Ui)の駆動周波数を変更可能にする。そのため、前記インバータ(Ui)を駆動するための前記インバータ駆動信号(Sj)を生成する前記周期駆動回路(Uj)は、発振周波数が可変の発振器である周波数可変発振器を構成要素として含んでいる。前記周期駆動回路(Uj)は、周波数制御信号(Sf)の入力を受けて発振周波数が制御されるもので、該周波数制御信号(Sf)の電圧の高さと発振周波数の高さとの関係が、例えば正相関するものが使用できる。もちろん負相関するものであっても構わない。
一方、前記周期駆動回路(Uj)の発振周波数を共振周波数に同調させるためには、共振条件がどの程度成立しているかを検出する必要があり、そのための同調度検出手段(Un)は、前記インバータ(Ui)の周波数と前記共振回路(Nh)の共振周波数、すなわち基本周波数またはその高次共振周波数との差異に対応して大きさが変化する前記同調度信号(Sn)を生成できるように構成しなければならない。これを実現するために、掃引時電源回路(Uy)を構成する前記定電圧電源(Up)を独立して設けてもよいが、放電ランプ点灯装置には、シーケンス制御や論理回路、アナログ信号処理などの制御回路を動作させるための、制御回路用DC電源(Vcc)を具備しているため、図1においては、前記制御回路用DC電源(Vcc)を前記定電圧電源(Up)として兼用する場合を描いてある。なお、前記制御回路用DC電源(Vcc)は一般的に3.3V〜20Vの電圧が使用される。また、前記制御回路用DC電源(Vcc)は、外部から供給されるものであっても良い。本図の回路は、前記給電回路(Ux)が停止状態であるときに、インバータ(Ui)の入力のプラス側のノード(T21)に対し、抵抗(Rr)とダイオード(Dr)との直列回路を介して、前記制御回路用DC電源(Vcc)から電圧を供給する回路構成としている。 そして前記ダイオード(Dr)と前記抵抗(Rr)との接続点から前記同調度信号(Sn)を取得するようにしてある。
前記制御回路用DC電源(Vcc)は、3.3V〜20Vであるのに対し、前記給電回路(Ux)の出力は、電圧が最も高くなる無負荷開放電圧を出力している状態では略200V程度となるため、前記給電回路(Ux)からの高い電圧が前記制御回路用DC電源(Vcc)に印加されないよう前記ダイオード(Dr)を設けてある。
本発明の放電ランプ点灯装置の実施例の一部の一形態を抽象化して示すブロック図である図2は、前記図1記載の前記給電回路(Ux)が停止状態であるときの、前記定電圧電源(Up)およびそれより負荷側を、等価回路として図示したものである。すると、前記インバータ(Ui)と共振インダクタ(Lh)と共振コンデンサ(Ch)とを1個の負荷(Z)として扱うことができる。なお、前記放電ランプ(Ld)は点灯していない状態であるので前記負荷(Z)に含めない。
前記定電圧電源(Up)から前記抵抗(Rr)と前記ダイオード(Dr)を介して前記負荷(Z)へ電流が流れ得るものとし、その上で、前記抵抗(Rr)と前記ダイオード(Dr)との直列接続の中点を前記同調度信号(Sn)としてその電位を監視するものとする。前記負荷(Z)の電力消費が小さいときは、前記定電圧電源(Up)から流れ出る電流が小さく、したがって前記抵抗(Rr)での電圧降下が小さいため、前記同調度信号(Sn)の電位は、前記定電圧電源(Up)の出力電圧に近い高い電圧を示す。逆に前記負荷(Z)の電力消費が大きいときは、前記定電圧電源(Up)から流れ出る電流が大きく、したがって前記抵抗(Rr)での電圧降下が大きいため、前記同調度信号(Sn)は、グランド電位に近い低電位となる。
ここで、前記負荷(Z)を構成する前記インバータ(Ui)の周波数を共振周波数を含んだ範囲において掃引動作を実施するとする。このとき、前記インバータ(Ui)を構成する、例えば後述するスイッチ素子(Q1,Q2,Q3,Q4)のオン抵抗によって消費される電力は、これらを流れる電流が増すほど大きくなるから、前記インバータ(Ui)の駆動周波数が共振周波数に近づくほど、前記負荷(Z)の消費電力が大きくなるため、前記同調度信号(Sn)の電位は低くなることがわかる。
この場合は、供給能力一定の給電を行う前記掃引時電源回路(Uy)として、前記抵抗(Rr)による一定の限流抵抗によって供給能力一定となるよう制限されるものを用いたが、前記掃引時電源回路(Uy)として、他に、例えば、供給電流が一定もしくは供給電力が一定となるように制限されるものでも構わない。また、DC的に一定なものに限定されず、電流パルス列や電力パルス列であって、その平均値が一定であるものでもよい。ただし、ここで言う一定とは、前記インバータ(Ui)の駆動周波数の掃引範囲の全体にわたって厳密に一定であることを要請するものではなく、少なくとも共振周波数に近い範囲において、略一定であればよい。逆に言えば、前記インバータ(Ui)の入力側の電位が最も低下する条件を見出すことにより、共振周波数への同調達成を検知できればよい。このように小さい供給能力一定の給電条件の下で、前記インバータ(Ui)に給電し、前記インバータ(Ui)の入力側の電位を監視しながら前記インバータ(Ui)の駆動周波数を変化させれば、共振状態が実現している条件を正確に知ることができる。
なお、いま述べた小さい供給能力一定の給電条件における、具体的な小ささの程度については、共振状態が実現した場合でも、発生する共振電圧によって、接続されている前記放電ランプ(Ld)において絶縁破壊が生じることのない程度の小ささとすることが重要である。何故ならば、前記したように、もし、前記放電ランプ(Ld)において絶縁破壊が生じると、監視している前記インバータ(Ui)の入力側の電位が不規則に変化してしまい、共振状態が実現している条件を正確に知ることを困難にしてしまうからである。
図3は、本発明の放電ランプ点灯装置で使用することのできる前記給電回路(Ux)の具体化された一例を示すものである。降圧チョッパ回路を基本とした前記給電回路(Ux)は、PFC等のDC電源(Mx)より電圧の供給を受けて動作し、前記放電ランプ(Ld)への給電量調整を行う。前記給電回路(Ux)においては、FET等のスイッチ素子(Qx)によって前記DC電源(Mx)よりの電流をオン・オフし、チョークコイル(Lx)を介して平滑コンデンサ(Cx)に充電が行われ、この電圧が前記放電ランプ(Ld)に印加され、前記放電ランプ(Ld)に電流を流すことができるように構成されている。
なお、前記スイッチ素子(Qx)がオン状態の期間は、前記スイッチ素子(Qx)を通じた電流により、直接的に前記平滑コンデンサ(Cx)への充電と負荷である前記放電ランプ(Ld)への電流供給が行われるとともに、チョークコイル(Lx)に磁束の形でエネルギーを蓄え、前記スイッチ素子(Qx)がオフ状態の期間は、前記チョークコイル(Lx)に磁束の形で蓄えられたエネルギーによって、フライホイールダイオード(Dx)を介して前記平滑コンデンサ(Cx)への充電と前記放電ランプ(Ld)への電流供給が行われる。なお、先に図2に関連して説明した、図1における前記給電回路(Ux)の停止状態とは、前記スイッチ素子(Qx)がオフ状態で停止している状態を言う。
前記降圧チョッパ型の前記給電回路(Ux)においては、前記スイッチ素子(Qx)の動作周期に対する、前記スイッチ素子(Qx)がオン状態の期間の比、すなわちデューティサイクル比により、前記放電ランプへの給電量を調整することができる。ここでは、あるデューティサイクル比を有するゲート駆動信号(Sg)が給電制御回路(Fx)によって生成され、ゲート駆動回路(Gx)を介して、前記スイッチ素子(Qx)のゲート端子を制御することにより、前記したDC電源(Mx)よりの電流のオン・オフが制御される。
前記放電ランプ(Ld)の電極(E1,E2)間を流れるランプ電流と、電極(E1,E2)間に発生するランプ電圧とは、給電電流検出手段(Ix)と、給電電圧検出手段(Vx)とによって、検出できるように構成される。なお、前記給電電流検出手段(Ix)については、シャント抵抗を用いて、また前記給電電圧検出手段(Vx)については、分圧抵抗を用いて簡単に実現することができる。
前記給電電流検出手段(Ix)よりの給電電流検出信号(Si)、および前記給電電圧検出手段(Vx)よりの給電電圧検出信号(Sv)は、前記給電制御回路(Fx)に入力される。前記給電制御回路(Fx)は、ランプ始動時の、ランプ電流が流れていない期間においては、無負荷開放電圧をランプに印加するために所定の電圧を出力するよう、前記ゲート駆動信号(Sg)をフィードバック的に生成する。また前記給電制御回路(Fx)は、ランプが始動して放電電流が流れると、目標ランプ電流が出力されるよう前記ゲート駆動信号(Sg)をフィードバック的に生成する。ここで前記目標ランプ電流は、前記放電ランプ(Ld)の電圧に依存して、前記放電ランプ(Ld)に投入される電力が所定の電力となるような値を基本とする。ただし、始動直後は、前記放電ランプ(Ld)の電圧が低く、定格電力を供給できないため、前記目標ランプ電流は、初期制限電流と呼ばれる一定の制限値を超えないように制御される。そして温度上昇とともに前記放電ランプ(Ld)の電圧が上昇し、所定の電力投入に必要な電流が前記初期制限電流以下になると、前記した所定の電力投入が実現できる状態に滑らかに移行する。
図4は、本発明の放電ランプ点灯装置で使用することのできるインバータ(Ui)の簡略化された一例を示すものである。インバータ(Ui)は、FET等のスイッチ素子(Q1,Q2,Q3,Q4)を用いたフルブリッジ回路により構成してある。それぞれのスイッチ素子(Q1,Q2,Q3,Q4)は、それぞれのゲート駆動回路(G1,G2,G3,G4)により駆動され、前記ゲート駆動回路(G1,G2,G3,G4)は、一方の対角要素の前記スイッチ素子(Q1)と前記スイッチ素子(Q3)がオン状態の位相においては、他方の対角要素の前記スイッチ素子(Q2)と前記スイッチ素子(Q4)はオフ状態に維持され、逆に他方の対角要素の前記スイッチ素子(Q2)と前記スイッチ素子(Q4)がオン状態の位相においては、一方の対角要素の前記スイッチ素子(Q1)と前記スイッチ素子(Q3)はオフ状態に維持されるよう、インバータのインバータ駆動回路(Uc)により生成されるインバータ制御信号(Sf1,Sf2)によりゲート駆動回路(G1、G2、G3、G4)を介して制御される。前記した2つの位相の切換えを行うときは、前記スイッチ素子(Q1,Q2,Q3,Q4)の全てがオフ状態になる、デッドタイムと呼ばれる期間が挿入される。
なお、前記スイッチ素子(Q1,Q2,Q3,Q4)が例えばMOSFETである場合は、ソース端子からドレイン端子に向かって順方向となる寄生ダイオードが素子自体に内蔵されている(図示を省略)が、バイポーラトランジスタのような、前記寄生ダイオードが存在しない素子の場合は、前記した位相の切換え時、またはデッドタイムの期間において、インバータ(Ui)の後段に存在しているインダクタンス成分に起因する誘導電流が流れようとすることにより、逆電圧の発生により素子が破損される恐れがあるため、前記寄生ダイオードに相当するダイオードを、逆並列に接続することが望ましい。前記スイッチ素子(Q1,Q2,Q3,Q4)は、前記周期駆動回路(Uj)から出力される前記インバータ駆動信号(Sj)の信号を受けたインバータ駆動回路(Uc)によって駆動される。
図5は、本発明の放電ランプ点灯装置の実施例の一形態における波形の概念図である。
本図は、図1に記載の放電ランプ点灯装置を3次共振の条件で動作させる場合の例を示すもので、(a)は前記共振コンデンサ(Ch)の端子間電圧、(b)前記インバータ駆動信号(Sj)の状態を表し、前記インバータ駆動信号(Sj)の1周期の期間(Ti)において、前記共振コンデンサ(Ch)の端子間電圧においては3周期の振動が発生していることが判る。本発明は、基本波共振、すなわち共振回路(Nh)の共振周波数が前記インバータ(Ui)の周波数と同じである場合に限らず、高次共振、すなわち前記インバータ(Ui)の周波数が共振回路(Nh)の共振周波数の奇数分の1になる条件の場合においても適用できる。
図6は、本発明の放電ランプ点灯装置の実施例の一形態における特性の概念図である。横軸はインバータの駆動周波数、縦軸は前記放電ランプ(Ld)に印加される出力電圧(Vnh)である。基本波共振周波数(f0)から、3次共振周波数(f0/3)、5次共振周波数(f0/5)と次数の高い高次共振になるほど前記出力電圧(Vnh)の値は低下する傾向はあるが各奇数次の共振周波数においてインバータ(Ui)を駆動することで共振作用を得ることができる。
インバータ(Ui)を基本波共振周波数(f0)で駆動することで最も強い共振が得られ、前記出力電圧(Vnh)として高い電圧を期待できる。しかしながら前記インバータ(Ui)の動作可能な周波数の限界、つまり前記スイッチ素子(Q1、Q2、Q3、Q4)のゲート容量値とゲート抵抗に起因した駆動周波数の制約や前記インバータ駆動回路(Uc)の上限周波数の制約により、高い基本波共振周波数(f0)での駆動が不可能な場合は、前記した高次共振を利用することで、この制約を回避することができる。
本発明の放電ランプ点灯装置の実施例の一形態の簡略化されたタイミング図である図7は、前記図1で説明した放電ランプ点灯装置の動作を表すものであって、前記インバータ(Ui)の前記共振回路(Nh)の同調を行なうために最適なインバータ周波数を検出するシーケンスについて表したものである。前記周波数制御回路(Uf)は、先ず、前記周波数制御信号(Sf)を、その下限値と上限値との間で変化させる、すなわち掃引動作することにより、前記周期駆動回路(Uj)の発振周波数を上限周波数から開始して下限周波数まで掃引する。当然ながら、逆に下限周波数から上限周波数へ掃引するものでもよく、また、連続的に掃引するものに限らず、段階的に変化させてゆくものでも構わない。
図7においては、掃引動作は時点(ti)から時点(tj)まで、前記周波数制御信号(Sf)を、上限周波数対応値(Sfmax)から下限周波数対応値(Sfmin)まで掃引する状況を描いてある。このとき、上限周波数から下限周波数に至る周波数範囲の幅は、前記共振インダクタ(Lh)のインダクタンスと前記共振コンデンサ(Ch)の静電容量の想定バラツキに対応する共振周波数のバラツキの幅を包含するように設定すべきである。
前記周波数制御回路(Uf)は、掃引動作を行う際に前記同調度信号(Sn)を監視し、この信号が最小値(Snmin)を示すとき、すなわち時点(th)での前記周波数制御信号(Sf)の生成条件を記憶する。このようにすることにより、前記インバータ(Ui)の駆動周波数が共振(基本波共振または高次共振)条件に概ね一致する状態を記憶できることになる。そして、掃引動作の終了後に、前記周波数制御回路(Uf)は、前記インバータ(Ui)の駆動周波数が共振(基本波共振または高次共振)条件に概ね一致する状態であった時の前記周波数制御信号(Sf)の生成条件を再現して固定すればよい。
因みに、時点(ti)において前記インバータ(Ui)を上限周波数で駆動した際に、前記同調度信号(Sn)が低い状態から動作を開始し、それから上昇しているように描いてある理由について述べておくと、これは、最初に設定した上限周波数が、比較的基本波共振周波数に近かったものが、掃引動作に伴って、この周波数から離れて行ったからである。そして、掃引動作のさらなる進行に伴って、やがて前記同調度信号(Sn)が極大に至り、その後、3次共振周波数に近づくにつれて前記同調度信号(Sn)が低下し、3次共振周波数に概ね一致した前記時点(th)で、前記同調度信号(Sn)が極小値を示したものである。(最初に設定した上限周波数が基本波共振周波数から遠い場合は、前記した前記同調度信号(Sn)の上昇や極大は現れない。)
ところで、掃引動作の過程において、前記時点(th)で、放電ランプ点灯装置が前記同調度信号(Sn)の小さい値を取得したとき、これが極小値であることは、もし、他に何の情報も無ければ、予め定めた周波数範囲の掃引動作を行う前記期間(Tm)の終了の時点(tj)まで正しく判断できない。しかし、例えばこの最適周波数検出シーケンスが、放電ランプ点灯装置の通電後の2回目以降のものである場合は、前回のこのシーケンスにおいて取得した、前記周波数制御信号(Sf)の生成条件や前記同調度信号(Sn)の値などの情報を援用するならば、時点(th)を過ぎてからの期間(Tm)の残りの期間の掃引動作を省略することができる。また、2回目以降では、前記情報を援用して、上限周波数から下限周波数に至る掃引範囲を狭めることができる。
すなわち、前記時点(th)で前記同調度信号(Sn)の小さい値を取得したとき、あるいはそれが少し上昇に転ずることを検知したときに、前記時点(th)での前記周波数制御信号(Sf)の生成条件が、前回のこのシーケンスにおいて取得した前記周波数制御信号(Sf)の生成条件に近いこと、あるいはさらに、前回のこのシーケンスにおいて取得した前記同調度信号(Sn)の値に近いことが確認できれば、前記時点(th)での前記周波数制御信号(Sf)の生成条件によって、最適なインバータ周波数を検出することができたと判断することができる。
以上において述べたような、図1の本発明の実施例に従って、前記インバータ(Ui)が前記共振回路(Nh)を駆動する際の最適な周波数を検出し、設定する構成を採用することにより、従来に比して、前述した従来の高い電圧耐量を必要とする出力電圧検出手段や、共振インダクタに2次巻線を配置するなどの構成は不要であり、特に低コスト化の利点を享受できるものである。具体的には、前記抵抗(Rr)として1.6mm×0.8mm(1608サイズ)の表面実装抵抗、前記ダイオード(Dr)として2.0mm×1.2mm(2012サイズ)の表面実装ダイオードを使用して、非常に低コストで、ここで述べた前記共振回路(Nh)を駆動する際の最適な周波数を検出するための回路を実現できている。
本発明の放電ランプ点灯装置の実施例の一形態の簡略化されたタイミング図である図8を用いてさらに説明する。本図の(a)は前記共振回路(Nh)に発生する電圧(Vnh)の波形、(b)は前記給電電圧検出信号(Sv)の波形、(c)は前記周波数制御信号(Sf)の波形、を表す。図に記載の掃引動作の期間(Tm)における放電ランプ点灯装置の動作については、前記した図7に関連して説明した通りである。前記共振回路(Nh)において強い共振現象を発生させるためには、正確に周波数制御信号(Sf)を決定することが必要である。しかしながら同調度信号(Sn)の評価処理などの時間的な遅れや、前記周波数制御回路(Uf)の分解能に関する制約などによって、周波数制御信号(Sf)が最適の値から少々外れて決定される可能性がある。さらに前記周波数制御信号(Sf)の決定後であっても、前記共振インダクタ(Lh)および前記共振コンデンサ(Ch)からなる前記共振回路(Nh)に電流を流すことで、これらの回路素子が発熱し、その結果、これらの回路素子のインダクタンスまたは静電容量が変化して、共振周波数がドリフトすることにより、決定された周波数制御信号(Sf)が最適の値から少々外れてしまう可能性がある。
このような現象を回避するために、期間(Tm)での前記掃引動作を終了し、前記周波数制御信号(Sf)の最適の値の決定後において、決定された前記周波数制御信号(Sf)の最適の値を含む狭い範囲において、前記周波数制御信号(Sf)を揺動させる動作(連続的に上げたり下げたりする動作)を継続することが効果的である。このように動作させることにより、もし、決定された前記周波数制御信号(Sf)の値が最適の値から少々外れていたり、共振周波数が変化したような場合であっても、前記した前記周波数制御信号(Sf)を含む狭い範囲に亘る掃引動作を継続する動作により、高い頻度で必ず最適の前記周波数制御信号(Sf)が実現されるし、最適の前記周波数制御信号(Sf)から外れている期間においても、その外れ量は微小であるから、図19の(a)に示したように、前記放電ランプ(Ld)の共振始動に有害なほどの電圧の低下は生じない。
したがって、掃引動作により決定された前記共振回路(Nh)の共振周波数に対応する前記周波数制御信号(Sf)の値に誤差があったり、共振回路素子の温度変化による共振周波数のドリフトがあった場合でも、ランプへの印加電圧の十分な高まりを確保することができる。さらに、共振回路(Nh)の高電圧によって前記放電ランプ(Ld)が放電を開始したことによって、点灯シーケンスを次のステップ、例えばグロー放電からアーク放電への移行を待つステップに進んだ後に、前記放電ランプ(Ld)の放電が立消えを起こした場合でも、前記周波数制御信号(Sf)の最適な値を記憶しているため、再度、共振回路に共振現象を発生させてランプに高電圧を印加する状態に直ちに戻ることができ、また、このような動作を何度も試行することができるため、点灯失敗に陥る確率を著しく減らすことができる。
図8においては、前記周波数制御信号(Sf)の値を決定するための最適周波数検出シーケンスの期間(Tm)の終了の時点(tj)から前記出力電圧(Vnh)の出力が開始される時点(tc)との間に合間の期間(Tn)が存在するように描いてあるが、該期間(Tn)の長短もしくは有無は、放電ランプ点灯装置の使用条件によって設定すればよい。例えば、毎回のランプ点灯の度毎に前記した最適周波数検出シーケンスを挿入する形態の場合には、前記した合間の期間(Tn)は非常に短くするか、または特に必要が無ければ存在させなくともよい(期間(Tn)の長さを零にすればよい)。
放電ランプ点灯装置の通電時に前記した最適周波数検出シーケンスを実施して、前記周波数制御信号(Sf)の生成条件を記憶しておき、その後、例えば、放電ランプ点灯装置を内部に実装しているプロジェクタ本体からのランプ点灯指令を受けて、ランプ点灯シーケンスを開始するに先立ち、記憶しておいた前記周波数制御信号(Sf)の生成条件を再現して適用する形態とする場合は、最適周波数検出シーケンスの期間(Tm)に相当する期間だけ、前記したランプ点灯指令を受けてから実際にランプが点灯するまでの時間の節約を図ることができる。ただし、この形態の場合、前記した合間の期間(Tn)は長くなるが、この期間が長くなり過ぎると、例えば、その間に温度変化が生じて、前記したような共振周波数のドリフトが大きくなり過ぎ、結果として、前記インバータ(Ui)の駆動周波数と共振周波数のずれが大きくなり過ぎて共振による電圧の高まりが不十分になるという不都合が生ずる可能性があるため、例えば、合間の期間が一定期間を経過する度に前記した最適周波数検出シーケンスを実施して、前記周波数制御信号(Sf)の生成条件の記憶を更新したり、あるいは、合間の期間が一定期間以上を経過した後にランプ点灯シーケンスを開始する場合は、その直前に前記した最適周波数検出シーケンスを実施する、などの工夫を施すことが望ましい。
前記したように、毎回のランプ点灯の度毎に前記した最適周波数検出シーケンスを挿入する形態の場合には、前記した合間の期間(Tn)は存在させなくともよく、この期間を省略することによる時間の節約を図ることができるが、さらに、先に図7に関して説明したように、例えば最適周波数検出シーケンスが放電ランプ点灯装置の通電後の2回目以降のものである場合は、前回のこのシーケンスにおいて取得した、前記周波数制御信号(Sf)の生成条件や前記同調度信号(Sn)の値の情報を援用して、時点(th)を過ぎてからの期間(Tm)の残りの期間の掃引動作を省略することができる。図9には、このような場合の放電ランプ点灯装置の動作を図示してある。前記時点(th)を過ぎた時点(tn)において、前回の最適周波数検出シーケンスにおいて取得した前記情報を援用して、最適周波数が検出されたと判断し、直ちに前記出力電圧(Vnh)の出力を開始することができる。
本発明の放電ランプ点灯装置の実施例の一形態の簡略化されたフローチャートである図10を用いてさらに説明する。本図は、マイクロプロセッサユニットを含んで前記周波数制御回路(Uf)を構成した場合の、図7に基づいて説明した動作の一部についてのマイクロプロセッサプログラムのフローチャートの一例である。
同調度信号変数(Dsn)は、前記同調度信号(Sn)をAD変換した値であってこれを一時保存するための変数とする。最低同調度信号変数(DsnMin)は、最適周波数検出シーケンス実行中の、後述する処理ブロック(B12)から処理ブロック(B24)に至るループのなかで取得した前記同調度信号(Sn)の中で最も低かった値を一時保存するための変数とする。周波数制御信号変数(Dsf)は、周波数制御信号(Sf)を設定する値であってこれを一時保存するための変数とする。周波数制御最適値変数(DsfOptim)は、前記周波数制御信号(Sf)を設定する値として最適なものの候補として保存するための変数とする。なお、前記周波数制御信号(Sf)がアナログ信号の場合は、前記周波数制御信号変数(Dsf)または前記周波数制御最適値変数(DsfOptim)がDA変換されて出力される。
検出完了フラグ(F_Valid)は、前記した最適周波数検出シーケンスを完了したことを表すフラグである。このフラグがfalseである場合においては、処理ブロック(B21)における判断により、以降の最適周波数検出シーケンスを実行するが、trueである場合は、前記周波数制御信号(Sf)の生成条件を記憶しているため、最適周波数検出シーケンスは実行せず、直ちに前記出力電圧(Vnh)の出力を開始する。
処理ブロック(B10)では最適周波数検出シーケンスの実行前の初期設定を行う。前記最低同調度信号変数(DsnMin)を、前記同調度信号変数(Dsn)として取得され得る最大値またはそれ以上の値に設定する。例えば、前記同調度信号(Sn)がAD変換されるときのデータ幅が10ビットである場合は1023、あるいは、このときの前記同調度信号変数(Dsn)のデータ幅が16ビットである場合は65535に設定すればよい。また、前記周波数制御信号変数(Dsf)には、掃引を行うための駆動周波数の上限周波数対応値(Sfmax)をセットする。
次に処理ブロック(B12)で前記同調度信号(Sn)をデータとして取り込み同調度信号変数(Dsn)に保存する。前記処理ブロック(B10)による初期設定の直後は、周波数制御信号(Sf)には、上限周波数対応値(Sfmax)が設定されているから、インバータ(Ui)は上限周波数で動作し、そのときの前記同調度信号(Sn)を取り込む。後述する処理ブロック(B14)でインバータ(Ui)の駆動周波数が更新されることにより掃引動作が遂行され、この処理ブロック(B12)に戻る度に前記同調度信号(Sn)を取り込み同調度信号変数(Dsn)に保存する。
処理ブロック(B23)では、前記同調度信号変数(Dsn)が過去に取得した最低同調度信号変数(DsnMin)よりも低いかどうかを判定し、もしそうであれば、処理ブロック(B13)を実行して、現在の同調度信号変数(Dsn)を最低同調度信号変数(DsnMin)へ保存すると共に現在の周波数制御信号変数(Dsf)を周波数制御最適値変数(DsfOptim)へ保存し、もしそうでないならば、前記処理ブロック(B13)は実行しない。
次に処理ブロック(B14)にて上限周波数対応値(Sfmax)から下限周波数対応値(Sfmin)へ掃引動作を行なうために周波数制御信号変数(DSf)を減じて前記周波数制御信号(Sf)にセットする。これにより前記インバータ(Ui)の駆動周波数が更新される。そして、処理ブロック(B24)において、周波数制御信号変数(DSf)が下限周波数対応値(Sfmin)に達したかどうかを判定し、もしそうなら、掃引動作が終了したとして、処理ブロック(B15)に進み、もしそうでないなら、前記処理ブロック(B12)に戻り、掃引動作を継続する。
処理ブロック(B15)では、最適周波数検出シーケンスを完了したことを表す検出完了フラグ(F_Valid)をtrueとする。このとき、直近に実行した前記処理ブロック(B13)において記憶された周波数制御最適値変数(DsfOptim)の値が前記インバータ(Ui)の駆動周波数に対応した最適な値でとして決定されたことになる。
最適周波数検出シーケンスを完了した後の処理ブロック(B16)では、前記周波数制御信号(Sf)に、検出した最適な周波数制御最適値変数(DsfOptim)を設定し、前記インバータ(Ui)の駆動周波数を最適な周波数に設定する。このルーチンを抜けると、給電回路を前記出力電圧(Vnh)を出力し、引き続く点灯始動シーケンスに移行する。
図11は、さらに本発明の放電ランプ点灯装置の実施例の一形態を簡略化して示すブロック図である。前記図1の実施形態においては、前記抵抗(Rr)と前記ダイオード(Dr)との直列回路から前記同調度信号(Sn)を得ていたものを、図11の実施形態においては、前記給電回路(Ux)のなかの前記給電電圧検出手段(Vx)が前記同調度検出手段(Un)を兼ね、前記給電電圧検出信号(Sv)が、前記同調度信号(Sn)を兼ねるように構成したものである。前記図2または図7に関連して説明したように、最適周波数検出シーケンスにおいては、前記インバータ(Ui)の駆動周波数が共振周波数に近づくほど、前記インバータ(Ui)の電圧入力のノード(T21)の電位が低くなり、したがって前記同調度信号(Sn)の電位が低くなる現象を検出するものであるが、前記同調度信号(Sn)代わりに、前記インバータ(Ui)の入力電圧と同等な前記給電回路(Ux)の出力電圧に対応する、前記給電電圧検出信号(Sv)の電位が低くなる現象を検出することによっても同様のことが可能となるからである。
マイクロプロセッサやデジタルシグナルプロセッサを用いて、前記給電制御回路(Fx)や前記周波数制御回路(Uf)、前記周期駆動回路(Uj)などを合わせて、一体の信号処理・制御回路として構成する場合、前記給電電圧検出信号(Sv)と前記同調度信号(Sn)とを別々の信号として前記信号処理・制御回路に取り込むよりも、図11の実施形態のように、1個の信号として(例えばAD変換して)取り込み、前記信号処理・制御回路内の、ランプ電力制御などの処理を行う機能と、最適周波数検出シーケンスの処理を行う機能のそれぞれの機能を実現する箇所においてそれを利用する構成とする方が、信号の入力ポートやAD変換チャンネルなどの、素子のリソースの使用を節約できるため、低コスト化の点で有利となる。
ただし、前記したように、前記給電回路(Ux)が発生する電圧は、前記定電圧電源(Up)が発生する電圧よりもはるかに高いため、前記図1における前記同調度信号(Sn)よりも前記給電電圧検出信号(Sv)の方が信号のダイナミックレンジが広いため、これを測定する系には、それに整合した広さのダイナミックレンジが必要になる点に注意が必要である。逆に言えば、放電ランプ点灯装置を構成するマイクロプロセッサやデジタルシグナルプロセッサの都合により、前記インバータ(Ui)の駆動周波数の共振周波数への同調を検出できるほどに、前記給電電圧検出信号(Sv)のダイナミックレンジを十分に広く取れない場合は、図1の実施形態の方が有利となる。
図12は、さらに本発明の放電ランプ点灯装置の実施例の一形態を簡略化して示すブロック図である。前記図11の実施形態においては、前記インバータ(Ui)は、前記抵抗(Rr)を介することにより、前記定電圧電源(Up)としての前記制御回路用DC電源(Vcc)から供給能力一定の給電を受けて動作するようにしていたものを、図12の実施形態においては、前記抵抗(Rr)を介した前記定電圧電源(Up)からの電力供給を廃し、最適周波数検出シーケンスの、少なくとも前記インバータ(Ui)の掃引動作の期間においては、前記給電回路(Ux)が供給能力一定の動作を行うように構成したものである。
なお、前記給電回路(Ux)の供給能力一定の動作を実現する方法として、最も簡単には、例えば、前記給電回路(Ux)を構成する前記スイッチ素子(Qx)のデューティーサイクル比が略一定になるよう制御して前記ゲート駆動信号(Sg)を生成する方法、あるいは、前記給電回路(Ux)の出力電流が略一定になるよう制御して前記ゲート駆動信号(Sg)を生成する方法が挙げられる。このようにして前記インバータ(Ui)が動作中において、前記給電回路(Ux)が供給能力一定の動作をするように構成することにより、前記図2または図7に関連して説明したものと同様に、最適周波数検出シーケンスにおいては、前記インバータ(Ui)の駆動周波数が共振周波数に近づくほど、前記インバータ(Ui)の電圧入力のノード(T21)の電位が低くなり、前記給電電圧検出信号(Sv)の電位が低くなる現象を検出することによって最適周波数を検出することが可能となる。
ただし、ここで述べた、前記スイッチ素子(Qx)のデューティーサイクル比を略一定に、あるいは前記給電回路(Ux)の出力電流を略一定に制御するに際しては、例えば前記給電電圧検出信号(Sv)を監視して、この電圧が、前記制御回路用DC電源(Vcc)に相当するような比較的低い、より具体的に言えば、先に前記図2に関連して説明したように、接続されている前記放電ランプ(Ld)において絶縁破壊が生じるような高い共振電圧が発生することのないよう、規定の電圧を超えないようにすべきで、そして、もしこの電圧が、前記規定の電圧を超えた場合は、前記ゲート駆動信号(Sg)の生成を停止するように構成すべきである。本発明に関連する放電ランプ点灯装置の一形態の簡略化されたタイミング図である図13を用いてさらに説明する。本図は、図1に記載の放電ランプ点灯装置を3次共振の条件で動作させ、共振始動により前記放電ランプ(Ld)を始動する場合の、始動シーケンスの調整段階などにおいて観測される可能性のある波形の例を示すもので、(a)は前記放電ランプ(Ld)に流れるランプ電流(IL)の波形、(b)は前記インバータ駆動信号(Sj)の波形、(c)は前記インバータ(Ui)の周波数(f)の変化の様子を表す図であって、前記図8に記載の前記時点(tc)以降の動作を表している。ただし、前記図8に関連して説明した、前記周波数制御信号(Sf)の最適の値を含む狭い範囲において、前記周波数制御信号(Sf)を揺動させる動作は省略して記載してある。
共振始動により、時点(tz)において、前記放電ランプ(Ld)が絶縁破壊に至って前記放電ランプ(Ld)に電流が流れ始めている。絶縁破壊後は、放電ランプ電極の片側方向にしか電流が流れない非対称放電現象やグロー放電が発生するが、グロー放電の発生中は、あたかもツェナーダイオードのように、ランプの両電極間の電圧は、ランプの放電状態に固有の電圧となり、またランプで電力が消費されるため、前記共振回路(Nh)のQ値は非常に低い状態となり、共振による電圧の高まりはほとんど発生しない。
図13は、前記放電ランプ(Ld)が非対称放電している状態を表しており、本図の(a)においては、一例として、ランプ電流(IL)の正の側の方向には多く流れ、負の側の方向には少なく流れているように描いてある。このような波形は、ランプ電流(IL)の正の側の方向ではアーク放電が、負の側の方向ではグロー放電が生じている場合に観測され易い。グロー放電の期間は、ランプ電流は小さくても、ランプ電圧が高いため、ランプの放電空間では正イオンが高いエネルギーに加速されてランプの陰極電極に衝突するため、もしグロー放電が長期間にわたって持続すると、スパッタリングによりタングステンなどの電極材料が放電空間に跳びだし、ランプバルブの内面に付着して生ずる、ランプの黒化現象が生じる不都合がある。そのため、このような非対称放電の期間においては、ランプ電流を多く流して電極の加熱を促進し、早くグロー放電からアーク放電に移行させることが有利である。
前記図13に記載したような、ランプの始動シーケンスの、少なくとも初期段階においては、前記給電回路(Ux)の出力は、先に述べた無負荷開放電圧(Vop)、すなわち典型的には略200V程度の電圧を出力可能な制御状態を維持する必要がある。その理由は、ランプのグロー放電を維持できる必要があるからである。先に、グロー放電が長期間にわたって持続すると、ランプの黒化現象が生じる不都合がある旨を説明したが、グロー放電の維持すらできなければ、放電電流が停止して立消えが発生してしまう。理由のもう一つは、前記インバータ(Ui)の駆動周波数が、例えば100kHzであった場合、これは高周波であるから、前記共振インダクタ(Lh)のインピーダンスも高くなり、したがって、アーク放電に移行して、それを維持させるためには、前記放電ランプ(Ld)と前記共振インダクタ(Lh)の直列接続に印加する電圧として、前記した程度の電圧が必要だからである。
先に、早くグロー放電からアーク放電に移行させることが有利である旨を説明したが、そのための方策として、例えば、無負荷開放電圧をより高くして、グロー放電時のランプへの投入電力を増す方法が考えられる。しかし、この方法を実現できるためには、前記インバータ(Ui)の前記スイッチ素子(Q1,Q2,Q3,Q4)として、印加する、高い無負荷開放電圧に相応した耐電圧の高い素子が必要になり、低コスト化の点で不利になる。
したがって、非対称放電の期間において、ランプ電流を多く流して電極の加熱を促進し、グロー放電からアーク放電に早く移行させるための残りの方策として、前記共振インダクタ(Lh)の高いインピーダンスを低くする必要があることが判る。そもそも、ランプの始動シーケンスが終了すると、前記インバータ(Ui)駆動周波数は、最終的に、前記放電ランプ(Ld)の安定点灯時の周波数である50Hz〜400Hz程度の低周波に移行させことになる。そのため、低周波への移行を完了した時点で、前記した前記共振インダクタ(Lh)のインピーダンスが高い問題は自ずと解決してしまうと考えられるかも知れない。
しかし、前記インバータ(Ui)の駆動周波数を共振始動時の高周波、例えば100kHz近辺から前記した低周波に突然に変えた場合、前記放電ランプ(Ld)へ過剰な突入電流が流れることがある。これは、前記インバータ(Ui)の周波数の急激な低下に伴い、前記共振インダクタ(Lh)のインピーダンスが急激に低下するため、そして、前記放電ランプ(Ld)に突入電流が流れた結果、前記放電ランプ(Ld)自身のインピーダンスが低下するため、前記給電回路(Ux)の制御が追従できずに、前記放電ランプ(Ld)に流れる電流の正帰還的な増大が瞬間的に発生するからであり、前記放電ランプ(Ld)や、前記インバータ(Ui)の前記スイッチ素子(Q1,Q2,Q3,Q4)、あるいは前記給電回路(Ux)の前記スイッチ素子(Qx)などにダメージを与える可能性が生じる問題がある。
また、前記放電ランプ(Ld)における非対称放電の状態においては、前記電極(E1、E2)のうち、陰極になったサイクルでアーク放電にならない側の電極に対して、それが熱電子放出を開始できるように加熱を促進しなければ、非対称放電の状態を解消することができない。このような状態においては、前記インバータ(Ui)の交流駆動の一つのサイクル内に、ランプへの投入電力が大きい半サイクルと小さい半サイクルを繰り返していることになるが、ランプへの投入電力が小さい半サイクルの期間においては、熱電子放出を開始できていない側の電極は温度が下がる。非対称放電の状態が解消されないまま、前記インバータ(Ui)の駆動周波数を急に低周波に移行すれば、各半サイクルの時間が急に長くなるため、熱電子放出を開始できていない側の電極の温度が、長くなった、ランプへの投入電力が小さい半サイクルの期間において、過剰に下がることになり、前記放電ランプ(Ld)が放電を維持できずに、立ち消えを発生してしまう可能性が高くなる。
ここまで述べたことを振り返ると、ランプの始動シーケンスにおいて、前記インバータ(Ui)の駆動周波数を、最終的な前記放電ランプ(Ld)の安定点灯時の低周波に移行させるにあたっては、急激に移行させるのではなく、共振始動時の高周波から徐々に周波数を低下させるステップを含んで、最終的な低周波に移行させる必要があることが判る。
図13においては、時点(tz)において、前記放電ランプ(Ld)が絶縁破壊に至って前記放電ランプ(Ld)に電流が流れ始めて後において、前記周波数制御信号(Sf)を連続して低下させ、前記インバータ(Ui)の極性反転が発生する周期を除々に長くするように前記インバータ(Ui)を動作させる様子を描いてある。(a)の前記ランプ電流(IL)の波形は、(b)の前記インバータ駆動信号(Sj)を積分するように、同期して鋸歯状波形状の波形を呈しているが、そのなかの代表的な期間(Tp)における電流波形について簡単に説明する。
図の(a)の前記ランプ電流(IL)は、正側(図における上側)がアーク放電が起きている方向に対応している。例えば、前記インバータ(Ui)の入力電圧、すなわち前記給電回路(Ux)の出力電圧が200V、前記放電ランプ(Ld)のアーク放電電圧が20Vであるとすると、前記共振インダクタ(Lh)に掛かる電圧である、200Vと20Vの電圧差を、前記共振インダクタ(Lh)のインダクタンス値で除して算出した速さで前記ランプ電流(IL)が増加する。前記給電回路(Ux)の出力電圧に比してアーク放電電圧は十分小さいため、前記ランプ電流(IL)における鋸歯状波形状の波形のピーク値は、概ね、前記給電回路(Ux)の出力電圧に比例し、また前記インバータ(Ui)の半サイクルの時間に比例する。したがって、前記給電回路(Ux)の出力電圧が増加すれば、前記ランプ電流(IL)の最大値も増加するし、前記インバータ(Ui)の周期が増加すれば、前記ランプ電流(IL)の最大値も増加する。
前記インバータ(Ui)が図における正側の向きに電流が流れる半サイクルにおいては、前記共振インダクタ(Lh)に磁気エネルギーを蓄積しながら前記ランプ電流(IL)を増加させ、前記インバータ(Ui)から共振インダクタ(Lh)を介して前記放電ランプへ電流が流れ、前記インバータ(Ui)の極性が反転すると前記共振インダクタ(Lh)に蓄積された磁気エネルギーを開放しながら前記ランプ電流(IL)を減少させる動作を交互に繰り返す。このように前記インバータ(Ui)の駆動周波数を、低い周波数に向かって連続的に低下させることにより、前記ランプ電流(IL)の最大電流値を徐々に増加できるため、陰極になったサイクルでアーク放電にならない側の電極に対して、それが熱電子放出を開始できるように加熱を促進し、非対称放電の状態を解消し、立ち消えを防止する効果が得られる。
しかしながら、本図の期間(Tq)においては、前記ランプ電流(IL)の波形は、前記期間(Tp)における理想的な鋸歯状波形状とは相違して、そのピーク付近で過大電流が流れており、しかも、前記インバータ(Ui)の駆動周波数が低くなるほどその過大電流は大きくなっている。これは、前記ランプ電流(IL)が前記共振インダクタ(Lh)の飽和限界電流値(Ih)を超過しているためで、前記インバータ(Ui)の駆動周波数が低くなるほど、前記飽和限界電流値(Ih)を超過している期間が長くなるからである。
本発明の放電ランプ点灯装置の実施例の一形態の簡略化されたタイミング図である図14を用いてさらに説明する。本図の(a)は前記共振回路(Nh)に発生する電圧(Vnh)の波形、(b)は前記給電回路出力電圧(Vo)の波形、(c)は前記ランプ電流(IL)の波形、(d)は前記インバータ(Ui)の周波数(f)の変化の様子を表す。最適周波数検出シーケンスは既に完了しているとして、時点(tr)において前記放電ランプ(Ld)の始動シーケンスを開始する。前記周波数制御信号(Sf)に対応した前記インバータ(Ui)の最適な周波数で駆動されるから、前記出力電圧(Vnh)において直ちに高電圧が発生する。時点(ts)において前記放電ランプ(Ld)に絶縁破壊が生じ、前記ランプ電流(IL)が流れ始めたことが見て取れるが、それから暫く後の期間においては前記ランプ電流(IL)の波形が正側に偏っていることから判るように、非対称放電の状態が生じている。一方、前記給電電圧検出信号(Sv)の波形からも判るように、前記給電回路(Ux)は、始動シーケンスの開始から一貫して、無負荷開放電圧(Vop)を出力して前記インバータ(Ui)に供給している。
時点(tt)において、前記したように、前記インバータ(Ui)の駆動周波数を、共振始動時の高周波から徐々に低下させるステップを含んで、最終的な低周波に移行させるシーケンスを開始したことにより、前記したように、ランプ電流が多く流れて電極の加熱が促進される。そのため、図14における前記ランプ電流(IL)の波形において正側に偏っている状態から、正負のバランスが改善された状態に徐々に移行していることから判るように、非対称放電の状態が徐々に解消される。
そして、前記インバータ(Ui)の周波数が第1限界周波数(fj1)まで低下した時点(tu)において、それまでの無負荷開放電圧(Vop)を出力するように制御する状態(電圧制御モード)を解除して、例えば、前記給電電流検出信号(Si)が目標値になるように制御する状態(電流制御モード)に切換えるべく、前記給電回路(Ux)の制御モードを変更するとともに、前記インバータ(Ui)の周波数を第2限界周波数(fj2)まで、急激に低下させるように制御している。ここで、前記給電電流検出信号(Si)が目標値になるように制御する状態(電流制御モード)とは、先に、前記給電制御回路(Fx)は、ランプが始動して放電電流が流れると、目標ランプ電流が出力されるよう前記ゲート駆動信号(Sg)をフィードバック的に生成する旨の説明において述べた動作を指す。
このように制御することにより、前記インバータ(Ui)の周波数が十分に低くなったため、前記共振インダクタ(Lh)のインピーダンスが十分に低く、前記給電回路(Ux)の電圧は、前記放電ランプ(Ld)が呈するランプ電圧にほぼ等しくなるため、したがって、前記給電回路(Ux)の出力電圧として、無負荷開放電圧のような高い電圧は不必要となる。このように、前記インバータ(Ui)の周波数が十分に低く、また、前記給電回路(Ux)の出力電圧が前記放電ランプ(Ld)のアーク放電電圧程度に十分低くなった状態では、前記図13の(a)に記載のような前記ランプ電流(IL)の速い変化やピークは存在しないため、前記給電電流検出信号(Si)に対する制御によって前記ランプ電流(IL)を正しく制御することができる。結果として、前記した、前記ランプ電流(IL)が前記共振インダクタ(Lh)の飽和限界電流値(Ih)の超過に起因する、前記ランプ電流(IL)の過大電流の発生を避けることができる。
なお、前記時点(tu)においては、前記インバータ(Ui)の周波数と前記給電回路(Ux)における前記の制御モードを同時に切換えるため、微妙な切換えタイミングのバラツキ(ジッタ)によっては、前記時点(tu)において前記放電ランプ(Ld)に突入電流が流れてしまうことがある。前記スイッチ素子(Qx)のオン状態の期間の長さをパルスバイパルス制御技術を用いて制限したり、あるいは、時点(tu)の出現は、放電ランプ点灯装置自身がコントロールできるため、時点(tu)の出現の直前に、前記給電回路(Ux)の出力電圧または出力電流の目標値を低めに設定したり、前記スイッチ素子(Qx)のオン状態の期間の長さに制限を加えるなどの方策により、前記突入電流が流れる現象を回避することができる。
無負荷開放電圧を印加した状態で、前記共振インダクタ(Lh)が飽和し始めるまでの正確な時間は、飽和現象が非線形現象であるために、前記したように前記共振インダクタ(Lh)に掛かる電圧をそのインダクタンス値で除して算出した速さによって単純に計算することはできないため、前記第1限界周波数(fj1)は、前記共振インダクタ(Lh)の前記飽和限界電流値(Ih)バラツキも含めて実験的に求めて設定することが望ましい。前記図14においては、前記インバータ(Ui)の周波数が前記第1限界周波数(fj1)まで低下した前記時点(tu)において、前記インバータ(Ui)の周波数を直ちに前記第2限界周波数(fj2)まで低下させるように制御する場合を描いてあるが、非対称放電の状態の解消には、ランプの前記電極(E1,E2)の熱的バランスが達成するまでの時間が必要であるため、前記インバータ(Ui)の周波数を前記第2限界周波数(fj2)まで低下させる前に、前記第1限界周波数(fj1)の状態において、適当な時間だけ待機するように制御することにより、非対称放電の状態解消の確実性を増すことができる。
なお、前記インバータ(Ui)の周波数を前記第1限界周波数(fj1)から前記安定点灯周波数(fstb)まで、直接移行するのではなく、一旦、前記第2限界周波数(fj2)に移行後、徐々に前記安定点灯周波数(fstb)まで移行させる理由は、前記インバータ(Ui)の周波数を前記第1限界周波数(fj1)から急激に低下させる時点において、もし非対称放電の状態の解消が完了していない場合は、前記第2限界周波数(fj2)に移行してから、前記安定点灯周波数(fstb)まで移行を完了するまでに、非対称放電の状態の解消を完了させるためである。
したがって、先に、前記インバータ(Ui)の周波数を前記第2限界周波数(fj2)まで低下させる前に、前記第1限界周波数(fj1)の状態において、適当な時間だけ待機するように制御することについて説明したが、このことを実施することにより、あるいは、このことを実施しなくても、例えば、ランプの前記電極(E1,E2)の熱的バランスが達成し易いよう、すなわち温度が上昇し易いよう熱容量を小さく設計するなどにより、前記インバータ(Ui)の周波数を前記第1限界周波数(fj1)から急激に低下させる時点において、もし非対称放電の状態の解消が完了している場合は、前記インバータ(Ui)の周波数を前記第1限界周波数(fj1)から前記安定点灯周波数(fstb)まで、直接移行する(移行時間が零)ように制御するものでも構わない。このときの前記インバータ(Ui)の周波数の制御の様子を、本発明の放電ランプ点灯装置の実施例の一形態の簡略化されたタイミング図である図16に示す。
前記したように、前記放電ランプ(Ld)における放電加熱による前記電極(E1,E2)の温度の上昇が重要であり、それはランプに投入される電力や電極の熱容量に依存する。前記した説明から明らかなように、ランプに投入される電力は、前記インバータ(Ui)の周波数をパラメータとした前記共振インダクタ(Lh)のインピーダンスにより規定されるだけでなく、前記給電回路(Ux)の出力電圧にも規定される。したがって、前記時点(tt)から前記時点(tu)までの移行期間の長さの最適値については、この移行期間における前記給電回路(Ux)の出力電圧や前記電極(E1,E2)の熱容量に依存するため、実験的に求める必要がある。前記時点(tu)から前記時点(tv)までの移行期間の長さの最適値についても、前記したような移行時間が零の場合も含めて、同様に実験的に求める必要がある。なお、前記第2限界周波数(fj2)から最終的な安定点灯状態の低周波、すなわち安定点灯周波数(fstb)まで移行する際の周波数の低下速さについては、前記図14においては、前記時点(tt)からの周波数の低下速さと同様に描いてあるが、これらの低下速さ(前記給電電圧検出信号(Sv)の傾き)は相違していても構わない。
ところで、前記した、前記インバータ(Ui)駆動周波数を共振始動時の高周波から徐々に周波数を低下させるシーケンスの開始点である前記時点(tt)の設定の仕方については、例えば最も単純には、前記した始動シーケンスの開始点である前記時点(tr)から、所定の長さの時間が経過した時点としてもよい。あるいは、前記放電ランプ(Ld)に絶縁破壊が生じ、前記ランプ電流(IL)が流れ始めた前記時点(ts)から、所定の長さの時間が経過した時点とすることもできる。さらに、前記ランプ電流(IL)が流れ始め、その電流値がアーク放電に相当する値まで増加した時点(tw)から、(零を含む)所定の長さの時間が経過した時点とするものでもよい。なお、前記放電ランプ(Ld)が流れ始めたこと、またはその電流値がアーク放電に相当する値まで増加したことは、前記給電電流検出手段(Ix)よりの前記給電電流検出信号(Si)を監視し、それが所定の値を超えたことにより検知することができる。
前記図14に記載した本発明の放電ランプ点灯装置の実施例の一形態の簡略化されたタイミング図における(a)と(c)の波形に対応する、実測された波形を図15に示す。この図の(a)は前記共振回路(Nh)に発生する電圧(Vnh)の波形、(c)は前記ランプ電流(IL)の波形を表し、図に記載の時点(tr,ts,tt,tu,tv,tw)は、前記図14に記載の前記時点(tr,ts,tt,tu,tv,tw)にそれぞれ対応する。実は、前記図14の(a)と(c)の波形は、前記図15の(a)と(c)の波形を模写するように描画したものである。ただし、図15の実測された波形においては、前記時点(tr)において始動シーケンスを開始し、共振による高電圧を前記放電ランプ(Ld)に印加を開始してから前記放電ランプ(Ld)に絶縁破壊が生じた前記時点(ts)が、あまりにも前記時点(tr)に接近しているため、説明の都合上、前記図14においては、前記時点(tr)と前記時点(ts)との間が長くなるよう少々変形して描画した。 前記時点(ts)と前記時点(tw)との間についても同様である。
前記図15に実測された波形を記載した本発明の放電ランプ点灯装置の一つの形態の実施例における、具体的な数値パラメータの設定は、以下の通りである。
・ランプ:定格200W高圧水銀ランプ
・無負荷開放電圧(Vop):200V
・共振周波数:約100kHz(3次共振)
・第1限界周波数(fj1):40kHz
・第2限界周波数(fj2): 8kHz
・安定点灯周波数(fstb):370Hz
・始動シーケンスの開始から徐々に周波数を低下させるシーケンスの開始まで(時点(tr)から時点(tt)まで)の待機期間:約3秒
・共振周波数から第1限界周波数まで(時点(tt)から時点(tu)まで)の移行期間:約1秒
・第2限界周波数から安定点灯周波数まで(時点(tu)から時点(tv)まで)の移行期間:約1秒
なお、この実測実験に使用した放電ランプにおいては、共振周波数から第1限界周波数までの移行期間として、0.2秒から3秒までの条件を試行したが、この範囲内では良好な結果得られた。
前記図15に関連して述べた本発明の実施形態に関するパラメータ等は、先端に突起が形成された一対の電極が2.0mm以下の間隔で対向配置され、1立方ミリメートルあたり0.2ミリグラム以上の水銀と、1立方ミリメートルあたり10のマイナス6乗マイクロモル〜10のマイナス2乗マイクロモルのハロゲンが封入された高圧水銀ランプについて適用できる。前記図15の実測された波形を見れば、前記図14に関連して説明したように、時点(tt)において、前記したように、前記インバータ(Ui)の駆動周波数を、共振始動時の高周波から徐々に低下させるステップを含んで、最終的な低周波に移行させるシーケンスを開始したことにより、前記したように、ランプ電流が多く流れて電極の加熱が促進され、前記ランプ電流(IL)の波形において正側に偏っている状態から、正負のバランスが改善された状態に徐々に移行していることから判るように、本発明の非対称放電の状態の解消の促進に効果があることが確認できる。
前記したように前記ランプ電流(IL)が前記共振インダクタ(Lh)の前記飽和限界電流値(Ih)を超過する現象は、前記インバータ(Ui)の駆動周波数が限界を超えて低くなった場合に発生する。前記飽和限界電流値(Ih)の大きさは、前記共振インダクタ(Lh)を構成するコア材料の物性や形状、体積に依存し、したがって、例えば良好なランプ寿命を実現するために前記第1限界周波数(fj1)として設定すべき値があったとすると、その値を実現可能なコア材料を選択しなければならないため、低コスト化や放電ランプ点灯装置の小型軽量化に大きな制約が生じてしまう問題があった。
この問題を回避するためには、前記周期駆動回路(Uj)による、前記インバータ(Ui)の周波数が前記共振回路(Nh)の共振周波数に対応する周波数であったものから第1限界周波数(fj1)に達するまで徐々に低下するように前記インバータ駆動信号(Sj)を生成する動作と並行して、前記無負荷開放電圧(Vop)より低い所定の電圧(Vo2)に達するまで、前記給電回路(Ux)が徐々に低下する電圧を出力するよう、前記給電制御回路(Fx)が制御するようにすればよい。何となれば、前記したように、前記共振インダクタ(Lh)の電流のピーク値は、前記インバータ(Ui)の半サイクルの時間に比例するが、前記給電回路(Ux)の出力電圧にも比例するため、このように制御することにより、時間の経過とともに、前者の半サイクルの時間は増加するが、後者の給電回路の出力電圧は低下するよう制御するから、前記共振インダクタ(Lh)の電流のピーク値の増加の速さが、給電回路の出力電圧が一定の場合よりも遅くなるからである。
この様子を本発明の放電ランプ点灯装置の実施例の一形態の簡略化されたタイミング図である図17に示す。図において(a)は前記給電回路出力電圧(Vo)の波形、(b)は前記インバータ(Ui)の駆動周波数(f)の変化の様子を表す。このように前記給電回路(Ux)の出力電圧と前記インバータ(Ui)の駆動周波数とを制御することにより、前記時点(tt)からの、前記インバータ(Ui)の駆動周波数を共振始動時の高周波から徐々に低下させるシーケンスの開始時点での条件、すなわち前記無負荷開放電圧(Vop)や前記インバータ(Ui)の周波数については、前記図14に関連して説明した場合と全く同じでありながら、前記飽和限界電流値(Ih)を超過する現象を生じることなく、より低い前記第1限界周波数(fj1)を設定することが可能となる。
なお、前記図17では、前記インバータ(Ui)の周波数の低下開始と前記給電回路(Ux)の出力電圧の低下開始のタイミングが同時である場合を描いてあるが、例えば、前記給電回路(Ux)の出力電圧の低下開始のタイミングが遅れるように制御してもよく、また、例えば、前記インバータ(Ui)の周波数の低下中に前記給電回路(Ux)の出力電圧の低下を停止させるように制御してもよい。
以上述べたように、本発明の実施形態に従って、前記インバータ(Ui)の駆動周波数を、共振始動時の高周波から最終的な前記放電ランプ(Ld)の安定点灯時の低周波に移行させるにあたっては、急激に移行させるのではなく、低い周波数に向かって連続的に低下させることにより、前記ランプ電流(IL)の最大電流値を徐々に増加できるため、陰極になったサイクルでアーク放電にならない側の電極に対して、それが熱電子放出を開始できるように加熱を促進し、非対称放電の状態を解消し、立ち消えを防止する効果が得られる。
その際、前記ランプ電流(IL)が前記共振インダクタ(Lh)の飽和限界電流値(Ih)を超過しないよう、前記インバータ(Ui)の周波数が、第1限界周波数(fj1)まで低下した時点において、それまでの無負荷開放電圧を出力するように制御する状態(電圧制御モード)を解除して、例えば、前記給電電流検出信号(Si)が目標値になるように制御する状態(電流制御モード)に切換えるべく、前記給電回路(Ux)の制御モードを変更するとともに、前記インバータ(Ui)の周波数を、前記給電回路(Ux)が前記ランプ電流(IL)を正しく制御することができる程度に十分低い周波数である、第2限界周波数(fj2)まで、急激に低下させるように制御することにより、過大なピーク電流が流れて、前記放電ランプ(Ld)や前記給電回路(Ux)、前記インバータ(Ui)の前記スイッチ素子(Qx,Q1,Q2,Q3,Q4)にダメージを与えることを防止することができる。
本明細書に記載の回路構成は、本発明の放電ランプ点灯装置の動作や機能、作用を説明するために、必要最少限のものを記載したものである。したがって、説明した回路構成や動作の詳細事項、例えば、信号の極性であるとか、具体的な回路素子の選択や追加、省略、或いは素子の入手の便や経済的理由に基づく変更などの創意工夫は、実際の装置の設計時に遂行されることを前提としている。
とりわけ前記給電制御回路(Fx)や前記周波数制御回路(Uf)、前記周期駆動回路(Uj)などの機能ブロックについては、放電ランプ点灯装置の実際の構成において、必ずしも、それぞれ独立して別個に存在させる必要は無く、例えば、これらの機能ブロックの幾つかを、マイクロプロセッサやデジタルシグナルプロセッサの中のソフトウェア的な機能として実現するように構成しても構わない。その場合は、前記同調度信号(Sn)や前記周波数制御信号(Sf)などの信号は、マイクロプロセッサやデジタルシグナルプロセッサにおけるディジタル的な信号または変数の値として実現され、アナログ的な電圧信号や電流信号としては存在しないことになるが、このような構成も本発明の形態の一つである。
また、前記周波数制御信号(Sf)の生成条件、あるいはディジタル的な信号または変数の値としての前記周波数制御信号(Sf)などを、FLASHメモリなどを用いた不揮発性メモリや、放電ランプ点灯装置との通信手段を有するプロジェクタなどの光学装置の側のメモリに記憶したり、記憶の有効期限を設けて、それを過ぎた場合は、記憶内容を破棄して再取得する、などの工夫により機能・性能向上を図ることは、放電ランプ点灯装置の設計の自由度の範囲内で実現できる。
さらに、過電圧や過電流、過熱などの破損要因からFET等のスイッチ素子などの回路素子を保護するための機構、または、給電装置の回路素子の動作に伴って発生する放射ノイズや伝導ノイズの発生を低減したり、発生したノイズを外部に出さないための機構、例えば、スナバ回路やバリスタ、クランプダイオード、(パルスバイパルス方式を含む)電流制限回路、コモンモードまたはノーマルモードのノイズフィルタチョークコイル、ノイズフィルタコンデンサなどは、必要に応じて、実施例に記載の回路構成の各部に追加されることを前提としている。本発明になる放電ランプ点灯装置の構成は、本明細書に記載の回路方式のものに限定されるものではない。