次に、図面を参照して本発明の第1実施形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るトラクタ1の全体的な構成を示す右側面図である。
図1に示す作業車両としての4輪型の農作業用トラクタ1は、走行機体2を前輪3と後輪4とで支持するとともに、走行機体2の前部に配置されたエンジン5によって後輪4及び前輪3を駆動することにより、走行機体2を前進又は後進させるように構成している。このトラクタ1は、プラウ、ハロー等の図示しない作業機を必要に応じて後部に装着し、種々の作業を行うことが可能に構成されている。
前記走行機体2は、エンジンフレーム14と、このエンジンフレーム14の後部に固定された機体フレーム16と、を備える。機体フレーム16の後部には、エンジン5の回転を適宜変速して後輪4及び前輪3に伝達するためのミッションケース17が固定されている。
エンジン5はボンネット6によって覆われている。また、前記走行機体2は、ボンネット6の後方に配置されたキャビン7を備える。キャビン7の内部には、オペレータが着席するための運転座席8と、オペレータが走行機体2の操作を行うための操作部と、が配置されている。このキャビン7内部の前記操作部の様子を、図2の斜視図に示す。
図2に示すように、キャビン7の内部には、ステアリングハンドル9と、ブレーキペダル26と、クラッチペダル57と、が配置されている。また、ステアリングハンドル9近傍の適宜の位置には、ハンドアクセルレバー30が配置されている。
また、図1及び図2に示すように、キャビン7内には、運転座席8に座ったオペレータが足を置くための水平なステップ板(ステップ部材)12が固定される。図2に示すように、このステップ板12には長孔が形成されており、ステップ板12の下方から当該長孔を介して、前進ペダルアーム21及び後進ペダルアーム22がキャビン7内に(ステップ板12の上方に)突出している。そして、前進ペダルアーム21の先端には前進ペダル23が、後進ペダルアーム22の先端には後進ペダル24が、それぞれ取り付けられている。
前進ペダル23及び後進ペダル24は、走行機体2の走行速度の無段階変速、及び前後進の切替操作を行うためのものである。即ち、オペレータが前進ペダル23を踏み込むと、その踏込み量(操作量)に応じて無段階に変速された車速で、走行機体2が前進するように構成されている。一方、後進ペダル24を踏み込むと、その踏込み量に応じて無段階に変速された車速で、走行機体2が後進するように構成されている。
また、前進ペダル23と後進ペダル24とは、連動して互い違いに上下するように構成されている。即ち、前進ペダル23を踏み込む(下降させる)と、これに連動して後進ペダル24が上昇する。逆に、後進ペダル24を踏み込むと、これに連動して前進ペダル23が上昇する。また、前進ペダル23及び後進ペダル24から足を離すと(操作力を解除すると)、前進ペダル23及び後進ペダル24が中立位置まで復帰し、走行機体2が走行を停止させるように構成されている。
なお、前進ペダル23及び後進ペダル24の連動機構及び中立復帰機構については後に詳述する。
ハンドアクセルレバー30は、オペレータが手で操作することによりエンジン5の回転数を調整できるように構成されている。即ち、圃場内での作業時においては、前記作業機を安定してムラなく駆動するため、走行機体2の走行速度にかかわらずエンジン5の回転速度を略一定とする必要がある。そこで、本実施形態のトラクタ1では、走行速度を調整するためのペダル23,24とは別に、エンジン5の回転速度を調整するためのハンドアクセルレバー30が設けられている。
一方、非作業時において、エンジン5の回転速度が常に定格回転速度を維持しているようでは、効率が悪いうえに、騒音や振動の原因ともなる。従って、路上走行時等の非作業時においては、エンジン5の回転速度を走行速度に応じて適宜変更する方が好ましい。しかしながら、オペレータがハンドアクセルレバー30を走行速度に応じて細かく調整しなくてはならないとすると、操作の負担が大きく不便である。そこで、本実施形態のトラクタ1においては、エンジン5の回転速度を、前進ペダル23及び後進ペダル24の操作量に連動して変更することもできるように構成されている。
ペダル23,24の操作とエンジン5の回転速度との連動/非連動の切替えは、ステップ板12からキャビン内に突出している操作レバー(操作具)45を操作することにより行う。即ち、操作レバー45を上方に引くように操作すると、ペダル23,24とエンジン5の回転速度とが非連動状態となり、ペダル23,24の操作量にかかわらずエンジン5の回転速度が略一定となるため、作業機を安定してムラ無く駆動することができる。一方、操作レバー45を下方に押し込むように操作すると、ペダル23,24とエンジン5の回転速度とが連動状態となり、ペダル23,24の操作量に応じてエンジン5の回転速度を変更されるようになるので、騒音や振動の防止及び燃費向上の観点から優れるとともに、いわゆるオートマチック車感覚の操作を実現することができる。
なお、エンジン5の回転速度をペダル23,24の操作に連動して変更するための構成、及び、エンジン5の回転速度とペダル23,24の操作との連動/非連動を切り替えるための構成については、後に詳細に説明する。
次に、走行機体2の走行速度の無段階変速、及び前後進の切替えを行うための、駆動力伝達機構について説明する。まず、図3のスケルトン図を参照して、ミッションケース17の内部構造を説明する。なお、トラクタ1は、図略のPTO軸に対してエンジン5の駆動力を変速して伝達するためのPTO変速機構等も備えているが、図3においては省略している。
ミッションケース17は、図3に示すように、エンジン5からの動力を入力するための主変速入力軸27を備える。この主変速入力軸27は、エンジン5が備えるフライホイール25と、自在軸継手を備えた伸縮式の動力伝達軸28によって連結される。
ミッションケース17は、主変速入力軸27に伝達されたエンジン5の回転を、走行主変速機構である静油圧式の無段変速機29で適宜変速する。そして、その変速された出力回転を後輪用の差動ギア機構58に伝達して、左右の後輪4を駆動する。また、変速された回転は前輪用の差動ギア機構86に伝達され、左右の前輪3を駆動することもできる。
図3に示すように、前記無段変速機29は、前記主変速入力軸27と、この主変速入力軸27の径方向外側に配置される筒状の主変速出力軸36と、を備える、いわゆるインライン式HSTとして構成されている。主変速出力軸36は、主変速入力軸27と軸線を一致させて配置されている。また、主変速出力軸36には、主変速出力ギア37,39が固定されている。なお、無段変速機29の詳細な構成については後述する。
また、ミッションケース17内には、走行カウンタ軸38と、図示しない逆転軸と、が配置されている。前記走行カウンタ軸38には、前進ギア41と、後進ギア43と、がそれぞれ回転可能に支持されている。前記逆転軸には逆転ギア44が回転可能に支持されている。
前進ギア41と走行カウンタ軸38とは、前進クラッチ40によって連結することができる。また、後進ギア43と走行カウンタ軸38とは、後進クラッチ42によって連結することができる。前進ギア41は主変速出力ギア37に噛み合っている。後進ギア43は逆転ギア44に噛み合っており、逆転ギア44は主変速出力ギア39に噛み合っている。
そして本実施形態のトラクタ1においては、前進ペダル23及び後進ペダル24の操作によって、クラッチ40,42の作動を切り替えるように構成されている。即ち、オペレータが前進ペダル23を踏込み操作した場合は、前進クラッチ40が接続されて後進クラッチ42が切断されることにより、主変速出力ギア37と走行カウンタ軸38とが前進ギア41によって連結される。一方、後進ペダル24が踏込み操作された場合は、後進クラッチ42が接続されて前進クラッチ40が切断されることにより、主変速出力ギア39と走行カウンタ軸38とが後進ギア43及び逆転ギア44を介して連結される。
以上の構成で、前進ペダル23及び後進ペダル24の操作に応じて、走行カウンタ軸38の回転方向を切り替え、走行機体2を前進及び後進させることができる。
なお、前進ペダル23及び後進ペダル24が中立位置とされた場合は、クラッチ40,42の両方が切断されて、走行駆動力が下流側に伝達されないようになっている。
前記走行カウンタ軸38には駆動伝達ギア51が固定されている。また、ミッションケース17内には走行出力軸50が配置されており、当該走行出力軸50には駆動入力ギア52が固定されている。前記駆動伝達ギア51と前記駆動入力ギア52とは噛み合っており、これにより走行カウンタ軸38の回転駆動力が走行出力軸50に伝達される。
走行出力軸50の後端部にはピニオン59が設けられており、このピニオン59を介して後輪用の差動ギア機構58に駆動力が伝達される。また、後輪用の差動ギア機構58は左右一対の差動出力軸62を備えており、この差動出力軸62はファイナルギア63等を介して後車軸64に接続されている。以上の構成で、走行駆動力は差動出力軸62から後車軸64に伝達され、左右の後輪4を駆動することができる。
一方、走行出力軸50の前端部にはギア70が設けられており、このギア70に伝達された走行駆動力は、ギア71、前輪入力軸72、ギア78を介して前輪駆動ギア75に入力される。この前輪駆動ギア75は、前輪出力軸73に回転可能に支持されている。また、この前輪駆動ギア75は、前輪駆動クラッチ74によって前輪出力軸73と連結することができる。
そして、4輪駆動と2輪駆動を切り替えるための図略の切替レバー又は切替スイッチが「4輪駆動」の位置に操作された場合、前輪駆動クラッチ74が接続されるように構成されている。この結果、前輪入力軸72と前輪出力軸73とが前輪駆動ギア75によって連結され、前輪3が後輪4とともに駆動される。一方、上記切替レバー(又は切替スイッチ)が「2輪駆動」の位置に操作されると、前輪駆動クラッチ74が遮断され、前輪3は駆動されない。
前輪駆動クラッチ74が接続された場合(4輪駆動とされた場合)は、前輪入力軸72の回転駆動力は、前輪出力軸73を介して前輪用の差動ギア機構86に伝達される。また、前輪用の差動ギア機構86は左右一対の差動出力軸90を備えており、この差動出力軸90はファイナルギア91等を介して前車軸92に接続されている。以上の構成で、走行駆動力は差動出力軸90から前車軸92に伝達され、左右の前輪3を駆動することができる。
次に、図4を参照して、無段変速機29の詳細な構成について説明する。図4は、無段変速機29近傍の断面図である。
図4に示すように、無段変速機29は、可変容量型の油圧ポンプ部501と、定容量型の油圧モータ部502と、を備えている。前記主変速入力軸27の長手方向中途部には、油圧ポンプ部501及び油圧モータ部502において用いられる共通のシリンダブロック505が固定されている。そして、シリンダブロック505からみて主変速入力軸27の長手方向一側に油圧ポンプ部501が配置され、他側に油圧モータ部502が配置されている。
油圧ポンプ部501は、第1ホルダ510と、可動型のポンプ斜板509と、複数のシュー508と、複数のポンププランジャ506と、を備える。
第1ホルダ510は、シリンダブロック505に対して軸線方向で対向するようにして、ミッションケース17の内部に固定されている。また、ポンプ斜板509は、主変速入力軸27の軸線に対する傾斜角を変更できるように、第1ホルダ510によって支持されている。このポンプ斜板509には斜板操作シリンダ556が連結されており、この斜板操作シリンダ556を駆動することで、ポンプ斜板509の傾斜角を変更することができる。
シュー508はポンプ斜板509上に複数配置され、それぞれがポンプ斜板509に対してスライド可能に構成されている。それぞれのポンププランジャ506は、シリンダブロック505に形成された第1プランジャ孔507に対してスライド可能に挿入される。また、ポンププランジャ506の頭部は、前記シュー508に対して球体自在継手を介して連結されている。
前記シリンダブロック505には第1スプール弁536が前記ポンププランジャ506と同数だけ設けられている。この第1スプール弁536は、シリンダブロック505において軸方向に形成された貫通状の第1弁孔532に対し、スライド可能に嵌合している。この第1弁孔532は、その中央部分が第1プランジャ孔507に連通している。また、前記第1ホルダ510には、リング状の第1スプールガイド部材537が固定されている。この第1スプールガイド部材537は主変速入力軸27の外周側に配置されており、その外周面には、前記第1スプール弁536の頭部を係合させるための円環溝が形成されている。
リング状の前記第1スプールガイド部材537は、その軸線方向が前記主変速入力軸27の軸線から若干傾斜するように配置されている。従って、その外周の円環溝も傾斜して配置されるので、シリンダブロック505の回転に伴って、第1スプール弁536は第1弁孔532内を軸方向に往復移動する。
油圧モータ部502は、第2ホルダ519と、モータ斜板518と、複数のシュー517と、複数のモータプランジャ515と、を備える。
第2ホルダ519は、シリンダブロック505に対して軸線方向で対向するようにして、前記主変速入力軸27に対して回転可能に支持されている。この第2ホルダ519は、前記主変速出力軸36に固定されている。また、モータ斜板518は、主変速入力軸27の軸線に対する傾斜角が一定となるようにして、前記第2ホルダ519に取り付けられている。
シュー517はモータ斜板518上に複数配置され、それぞれがモータ斜板518に対してスライド可能に構成されている。それぞれのモータプランジャ515は、シリンダブロック505に形成された第2プランジャ孔516に対してスライド可能に挿入される。また、モータプランジャ515の頭部は、前記シュー517に対して球体自在継手を介して連結されている。
前記シリンダブロック505には第2スプール弁540がモータプランジャ515と同数だけ設けられている。この第2スプール弁540は、シリンダブロック505において軸方向に形成された貫通状の第2弁孔533に対し、スライド可能に嵌合している。この第2弁孔533は、その中央部分が第2プランジャ孔516に連通している。また、前記第2ホルダ519には、リング状の第2スプールガイド部材541が取り付けられている。この第2スプールガイド部材541は主変速入力軸27の外周側に配置されており、その外周面には、前記第2スプール弁540の頭部を係合させるための円環溝が形成されている。
リング状の前記第2スプールガイド部材541は、第1スプールガイド部材537と同様に、その軸線方向が前記主変速入力軸27の軸線から若干傾斜するように配置されている。従って、その外周の円環溝も傾斜して配置されるので、シリンダブロック505の回転に伴って、第2スプール弁540は(第1スプール弁536と連動して)第2弁孔533内を軸方向に往復移動する。
前記シリンダブロック505の内部には、第1油室530と、第2油室531と、がそれぞれ形成されている。第1油室530及び第2油室531は何れも円環状に形成され、主変速入力軸27の外周側に配置されている。また、第1油室530及び第2油室531は何れも、第1弁孔532を介して第1プランジャ孔507に連通するとともに、第2弁孔533を介して第2プランジャ孔516に連通している。
以上の構成で、シリンダブロック505が1回転すると、第1スプールガイド部材537の作用によって第1スプール弁536が1往復し、第1プランジャ孔507が第1油室530又は第2油室531に交互に連通されるようになっている。また同時に、第2スプールガイド部材541の作用によって第2スプール弁540が1往復し、第2プランジャ孔516が第1油室530又は第2油室531に交互に連通されるようになっている。それぞれのプランジャ孔507,516が連通される油室は、シリンダブロック505が180°回転するごとに、第1油室530及び第2油室531の間で切り替えられる。
なお、図4において、ポンププランジャ506、第1プランジャ孔507、シュー508、第1弁孔532、第1スプール弁536、モータプランジャ515、第2プランジャ孔516、第2弁孔533、及び第2スプール弁540等については、図面の都合上1つずつしか描かれていないが、実際は、上記に列挙した部品等は主変速入力軸27の周囲に複数並べて配置されている。
次に、以上に説明した無段変速機29の動作について詳細に説明する。
最初に、ポンプ斜板509が主変速入力軸27の軸線に対して略直交している場合を説明する。この場合は、主変速入力軸27に伝達される動力によってシリンダブロック505が回転しても、ポンププランジャ506が往復動しない。従って、モータプランジャ515も往復動しないので、モータ斜板518はシリンダブロック505と一体的に回転する。従って、主変速入力軸27の回転速度が変更されることなく主変速出力軸36に伝達される。
次に、主変速入力軸27の軸線に対してポンプ斜板509を一側に傾斜させた場合について説明する。この場合は、シリンダブロック505の回転に従ってポンププランジャ506が往復動するので、第1プランジャ孔507における作動油の吸入及び吐出が繰り返し行われる。そして、第1プランジャ孔507と第2プランジャ孔516との間には、第1スプール弁536及び第2スプール弁540が適宜動作することにより、閉じた油圧回路が第1油室530又は第2油室531を通じて形成される。従って、ポンププランジャ506の吐出行程では第1プランジャ孔507から第2プランジャ孔516に作動油が圧送され、ポンププランジャ506の吸入行程では逆向きに作動油が戻される。こうして、アキシャルピストンポンプ及びアキシャルピストンモータの動作が行われる。
従って、ポンプ斜板509を傾斜させた場合、主変速入力軸27の回転数に、油圧ポンプ部501によって駆動される油圧モータ部502の回転数が加算又は減算されて、主変速出力軸36に伝達される。以上の作用により、無段変速された回転を主変速出力軸36に得ることができる。
前述のように、ポンプ斜板509の傾斜角は、斜板操作シリンダ556が駆動されることによって変更される。そして本実施形態のトラクタ1においては、前記斜板操作シリンダ556は後述の車体コントローラからの制御信号に応じて駆動されるように構成されている。前記車体コントローラは、前進ペダル23及び後進ペダル24の踏込み量(操作量)に応じて前記制御信号を生成し、斜板操作シリンダ556に送信するように構成されている。これにより、前進ペダル23又は後進ペダル24によってポンプ斜板509の傾斜角度を変更し、走行機体2の走行速度を直感的かつ無段階に変速することができる。
なお、前進ペダル23及び後進ペダル24を中立位置としたときは、ポンプ斜板509を所定傾斜角度とすることで主変速入力軸27の回転を完全に打ち消し、車速ゼロ状態(停車状態)となるように構成されている。
また、ポンプ斜板509には、図略の機械的な連結機構を介して前記クラッチペダル57が接続されており、当該クラッチペダル57を踏み込むことにより、ポンプ斜板509の傾斜角を強制的に前記所定傾斜角度とすることができるように構成されている。これにより、クラッチペダル57の踏込み操作によって主変速入力軸27の回転を完全に打ち消すことができるので、例えば前記車体コントローラが故障して斜板操作シリンダ556の制御に不都合が発生した場合であっても、強制的に車速ゼロ状態(停車状態)とすることができる。
次に、本実施形態のトラクタ1が備える前後進ペダルユニット10について説明する。前記前後進ペダルユニット10は、前進ペダルアーム21や後進ペダルアーム22等に関する構成をユニット状にまとめたものである。
前後進ペダルユニット10の外観斜視図を図5に示す。また、当該前後進ペダルユニット10の右側面図を図6に、左側面図を図7に、分解斜視図を図8に示す。
図5から図7に示すように、前後進ペダルユニット10は、ペダルアーム21,22と、ペダルブラケット(支持部材)31と、ペダルリンク部材32と、中立復帰機構33と、ポテンショメータ(検出部)34と、を備えている。
ペダルブラケット31は金属板で構成されており、図5に示すように略直角に折り曲げられて形成されることにより、略垂直な平板部(アーム取付部31a)と、略水平な平板部(ステップ取付部31b)と、が構成されている。そして、図5等に示すように、アーム取付部31aの左右の側面にはペダルアーム21,22等が取り付けられている。また、図6及び図7に示すように、ステップ取付部31bの上面はステップ板12の底面に固定されている。
このように、ペダルブラケット31が、前後進ペダルユニット10の各構成を支持する役割と、当該前後進ペダルユニット10をトラクタ1の車体本体側(ステップ板12)に取り付けるための部材としての役割と、を兼ねている。これにより、前後進ペダルユニット10をコンパクトに構成することができる。また、前後進ペダルユニット10をユニットとしてまとめて取り扱うことが可能となるので、当該前後進ペダルユニット10をステップ板12に取り付ける際の作業性が向上する。
図6の右側面図に示すように、前進ペダルアーム21は、長手方向が斜め前上方を向くようにして配置されている。この前進ペダルアーム21の上端には前進ペダル23が取り付けられており、下端には第1連結部21bが設けられている。また、前進ペダルアーム21の長手方向の中間部には、当該前進ペダルアーム21の回転中心部21aが設けられている。
また、図7の左側面図に示すように、後進ペダルアーム22も、長手方向が斜め前上方を向くようにして配置されている。この後進ペダルアーム22の上端には後進ペダル24が取り付けられており、下端には当該後進ペダルアーム22の回転中心部22aが設けられている。また、後進ペダルアーム22の長手方向の中間部には、第2連結部22bが設けられている。
次に、ペダルブラケット31に対してペダルアーム21,22を支持するための構成について説明する。本実施形態のトラクタ1においては、前進ペダルアーム21はアーム取付部31aの一側に、後進ペダルアーム22はアーム取付部31aの他側に、それぞれ片持ち支持される構成としている。
即ち、仮にペダルブラケット31の一側に両方のペダルアーム21,22を支持する構成とした場合、ペダル23,24間の干渉を避けるために両ペダルアーム21,22間にオフセットをとらなければならない。この場合、前記オフセットを確保するために、ペダルアーム21,22のうち何れか一方をペダルブラケット31に支持するための軸部分が長くなり、強度上の問題があるとともにペダルブラケットが大型化してしまうという問題がある。この点、本実施形態では、上記のようにペダルアーム21,22をアーム取付部31aの一側と他側に振り分けてそれぞれ片持ち支持する構成とすることにより、ペダルブラケット31をコンパクトに構成することができる。
具体的には、ペダルアーム21,22及びペダルブラケット31の何れか一方にボス部を設け、他方に丸棒状の回動軸を設ける。そして、前記回動軸を前記ボス部に挿入することにより、ペダルアーム21,22を回動可能に片持ち支持する構成になっている。例えば本実施形態では、図8に示すように、前進ペダルアーム21の回転中心部21aは、丸棒状の回動軸として形成されている。一方、アーム取付部31aの一側面には、ボス状に突出する第1支持部31cが形成されている。このボス状の第1支持部31cの内部の挿入孔に対して、当該ボスが突出している側から回転中心部21aを挿入することにより、前進ペダルアーム21をペダルブラケット31に対して回動可能に支持することができる。
また、図8に示すように、アーム取付部31aにおいて、前記第1支持部31cが形成されている面と反対側の面には、丸棒状に突出する第2支持部31dが設けられている。一方、後進ペダルアーム22の回転中心部22aは、ボス状に形成されている。そして、丸棒状の回動軸として構成された第2支持部31dを、ボス状の回転中心部22aが突出している側から当該ボスの内部の挿入孔に挿入することにより、後進ペダルアーム22をペダルブラケット31に対して回動可能に支持することができる。
次に、ペダルリンク部材32によって前進ペダルアーム21及び後進ペダルアーム22を連結する構成について説明する。
図8に示すように、ペダルリンク部材32は、適宜曲げられた丸棒状の部材として構成されており、第1端部32aと、リンク部32bと、第2端部32cと、を有している。一方、ペダルアーム21に設けられた前記連結部21bは、丸棒状のペダルリンク部材32を挿入可能な筒部として形成されている。また、後進ペダルアーム22に設けられた連結部22bは、ペダルリンク部材32を挿入可能な挿入孔として形成されている。
そして、第1端部32aが第1連結部21bに挿入されることにより、ペダルリンク部材32が、前進ペダルアーム21に対して、前記第1連結部21bを中心に回転可能となるように取り付けられている。同様に、第2端部32cが第2連結部22bに挿入されることにより、ペダルリンク部材32が、後進ペダルアーム22に対して、前記第2連結部22bを中心に回転可能となるように取り付けられている。
なお、ペダルリンク部材32が前進ペダルアーム21に対して回転する際の軸がブレないようにするため、第1連結部21bは、図8に示すように細長い筒部として形成されている。
以上の構成で、前進ペダルアーム21及び後進ペダルアーム22が、ペダルリンク部材32のリンク部32bを含んで構成されるリンク機構を介して連結される。これにより、前進ペダル23と後進ペダル24とを連動させることができる。以下、前進ペダル23と後進ペダル24とが連動する様子について、図7、図9及び図10を参照して説明する。図7は前進ペダル23及び後進ペダル24が中立位置にあるときの様子を示す左側面図、図9は前進ペダル23を踏込み操作したときの様子を示す左側面図、図10は後進ペダル24を踏込み操作したときの様子を示す左側面図である。
前進ペダル23を踏込み操作したときの様子について説明する。前進ペダルアーム21においては、当該前進ペダルアーム21の長手方向で考えたときに、回転中心部21aから見て前進ペダル23の反対側に第1連結部21bが設けられている。従って、図7に示す中立位置から、図9に示すように前進ペダル23の踏込み操作(即ち、前進ペダル23を下降させる操作)を行うと、前進ペダルアーム21が回転中心部21aを中心にして回動する結果、第1連結部21bは回転中心部21aを中心にして上方に移動する。
ここで、第1連結部21bと第2連結部22bとは、ペダルリンク部材32を介して連結されているから、第1連結部21bが上方に移動すると、ペダルリンク部材32によって第2連結部22bが上方に押し上げられる。一方、後進ペダルアーム22においては、当該後進ペダルアーム22の長手方向で考えたときに、後進ペダル24と第2連結部22bは回転中心部22aから見て同じ側に設けられている。従って、第2連結部22bがペダルリンク部材32によって上方に押し上げられると、後進ペダル24も回転中心部22aを中心にして上方に移動する(図9の状態)。
一方、後進ペダル24を踏込み操作した場合は、上記の場合とは逆に前進ペダル23が上昇する。即ち、図7の中立位置の状態から後進ペダル24を踏み込むと、第2連結部22bは回転中心部22aを中心にして下方に移動する。従って、ペダルリンク部材32に押し下げられて第1連結部21bも下方に移動する結果、回転中心部21aを中心にして前進ペダル23が上方に移動する(図10の状態)。
以上のように、前進ペダルアーム21と後進ペダルアーム22とをペダルリンク部材32によって連結するという簡単な構成で、前進ペダル23と後進ペダル24とを連動させて、互い違いに上下させる機構を実現することができる。
次に、前進ペダル23及び後進ペダル24の踏込み量(操作量)を検出するための構成について説明する。
本実施形態のトラクタ1においては、前記操作量を、ポテンショメータ34によって電気的に検出することとしている。なお、ペダルの踏込み量に応じて車速を変速する構成は、例えば、無段変速機29のポンプ斜板509と、ペダルアーム21,22と、を機械的なリンク機構等で連結することによっても実現することができる。しかしながら、図1に示すように、ペダル23,24はキャビン7内において前部に配置されている一方、無段変速機29を内部に有するミッションケース17は車体後部に配置されている。従って、無段変速機29とペダルアーム21,22等を機械的なリンク機構等で連結した場合、当該リンク機構が長尺なものとならざるを得ず、当該リンク機構の取付作業が煩雑となり、前後進ペダルユニット10の取付性が悪化してしまう。この点、実施形態では、ポテンショメータ34によって操作量を電気的に検出する構成とすることにより、機械的な連結構造を少なくして前後進ペダルユニット10の取付性を向上させている。以下、具体的に説明する。
前述のように、第1支持部31cは、ボス状に形成されている(図8を参照)。このボス状の第1支持部31cの内部の挿入孔は貫通状に形成されており、アーム取付部31aの厚み方向一側の空間と他側の空間とを互いに連通している。そして、丸棒状の回転中心部21aを前記挿入孔に挿入すると、当該回転中心部21aの先端部が、アーム取付部31aの他面側に突出するように構成されている。
一方、図5及び図7に示すように、アーム取付部31aの、第1支持部31cが形成されている面とは反対側の面には、補助ブラケット35が配置されている。そして、この補助ブラケット35に対して、ポテンショメータ34が固定されている。
このポテンショメータ34は、第1支持部31cのボス内部に挿入されて反対側の面から突出した回転中心部21aの前記先端部に取り付けられ、当該回転中心部21aの回動量を電気的に検出するように構成されている。以上の構成により、簡単な構成で、前進ペダルアーム21の回動量を電気的に検出することができる。
また上記のように、本実施形態では、前進ペダル23と後進ペダル24とを連動させているので、1つのポテンショメータ34によって、前進ペダル23と後進ペダル24の両方の操作量を電気的に検出することができる。例えば図7の左側面図において、当該図7に示す中立位置の状態から、回転中心部21aが時計回りに回転したことをポテンショメータ34が検出した場合、前進ペダル23が踏み込まれたと分かるので、当該時計回りの回転量を前進ペダル23の操作量として検出する。一方、図7の中立位置の状態から、回転中心部21aが反時計回りに回転したことをポテンショメータ34が検出した場合、後進ペダル24が踏み込まれたと分かるので、当該反時計回りの回転量を後進ペダル24の操作量として検出する。
このように、1つのポテンショメータ34によって、前進ペダル23又は後進ペダル24の何れが踏み込まれたかに関する情報と、前進ペダル23又は後進ペダル24の踏込み量(操作量)と、を得ることができる。
一方、本実施形態のトラクタ1は、図略の車体コントローラを備えている。この車体コントローラは、例えばマイクロコントローラとして構成される。前記ポテンショメータ34の検出値は、この車体コントローラに対して送信されるように構成されている。そして、車体コントローラは、ポテンショメータ34の検出値から、前進ペダル23又は後進ペダル24の何れが踏み込まれたかを判断し、この判断結果に基づいて、前述の前進クラッチ40及び後進クラッチ42の切替えを行う。これにより、前進ペダル23及び後進ペダル24の操作によって、走行機体2の前進及び後進を切り替えることができる。
また、前記車体コントローラは、ポテンショメータ34の検出値から得られる前進ペダル23又は後進ペダル24の踏込み量に基づいて、前述の斜板操作シリンダ556を操作するための制御信号を送信する。この制御信号に基づいて斜板操作シリンダ556が駆動され、ポンプ斜板509の傾斜角が調整される。以上の構成により、前進ペダル23及び後進ペダル24を操作することによって、走行機体2の前進及び後進の走行速度を無段階に変速することができる。
次に、前後進ペダルユニット10が備える中立復帰機構33について、図6、図11、図12を参照して説明する。図6は前進ペダル23及び後進ペダル24が中立位置にあるときの様子を示す右側面図、図11は前進ペダル23を踏込み操作したときの様子を示す右側面図、図12は後進ペダル24を踏込み操作したときの様子を示す右側面図である。
中立復帰機構33は、中立復帰アーム(第1アーム部材)53と、中立復帰ローラ54と、付勢バネ55と、を備えている。
中立復帰アーム53はローラ支持軸53aを有しており、このローラ支持軸53aに対して前記中立復帰ローラ54が回転可能に取り付けられている。一方、ペダルブラケット31のアーム取付部31aであって、第1支持部31cが形成されている側の面には、丸棒状に突出する中立復帰アーム支持部31eが配置されている(図8を参照)。中立復帰アーム53は、この中立復帰アーム支持部31eに対して回転可能に支持されている。
以上の構成で、中立復帰ローラ54が、中立復帰アーム支持部31eを中心にして回動可能となっている。なお、この中立復帰ローラ54が中立復帰アーム支持部31eを中心にして回動する平面は、前進ペダルアーム21が回転中心部21aを中心にして回動する平面と、略一致するように構成されている。これにより、中立復帰ローラ54が、前進ペダルアーム21に形成されたカム面21dに対して接触可能となっている。
また、付勢バネ55は引張コイルバネとして構成されており、図5及び図7等に示すように、中立復帰アーム53と、補助ブラケット35と、を連結するようにして配置されている。この付勢バネ55によって、中立復帰アーム53が、中立復帰アーム支持部31eを中心にして所定方向に回転するような付勢力が加えられている。そして、この付勢力によって、中立復帰アーム53に支持されている中立復帰ローラ54が、前進ペダルアーム21のカム面21dに対して押圧されるように構成されている。
一方、前進ペダルアーム21においては、前記カム面21dのほぼ中央部に、中立復帰ローラ54が付勢されている方向に凹(回転中心部21aに近づく向きに凹)となるような凹部21cが形成されている。なお、この凹部21cは、周囲のカム面21dと滑らかに連続して形成されている。そして、前進ペダル23及び後進ペダル24が中立位置にあるとき(図6の状態のとき)に、中立復帰ローラ54の一部が凹部21cに入り込むように構成されている。
ここで、中立復帰ローラ54が凹部21cに嵌まっている状態(図6の中立位置の状態)において、引張コイルバネである付勢バネ55の伸びが最も小さくなるように、前記凹部21cの位置及び回転中心部21aの位置等が適宜設定されている。以上のように構成された中立復帰機構33によって、前進ペダル23及び後進ペダル24を自動的に中立位置に復帰させることができる。
以下、具体的に説明する。例えば、図6の中立位置から前進ペダル23を踏み込むと、前進ペダルアーム21が回転中心部21aを中心にして回動する。このとき、図11に示すように、凹部21cを含んだカム面21dが回転中心部21aを中心に移動するため、凹部21cから中立復帰ローラ54が外れるとともに、カム面21dが中立復帰ローラ54を押す。この結果、付勢バネ55の付勢力に逆らって、中立復帰アーム53が回動する。
すると、付勢バネ55が伸びることにより、前進ペダルアーム21に対する中立復帰ローラ54の押圧力が増大する。これにより、中立復帰ローラ54の押圧力が最も小さい状態(即ち、中立位置)に戻ろうとする力が前進ペダルアーム21に働く。従って、前進ペダル23から足を離す(踏込み操作を止める)と、中立位置まで前進ペダルアーム21が自動的に回動する。
また、図12に示すように、後進ペダル24を踏み込んだ場合も、上記の場合と同様に、付勢バネ55の付勢力に逆らって中立復帰アーム53が回動するので、中立位置に戻ろうとする力が後進ペダルアーム22に働く。従って、後進ペダル24から足を離すと、中立位置まで後進ペダルアーム22が自動的に回動する。
以上のように、簡単な構成により、前進ペダル23と後進ペダル24の中立復帰機構を実現することができる。なお、前記凹部21cは、何かの弾みで小さな力が加わった程度では前進ペダル23及び後進ペダル24が中立位置から動かないように保持するとともに、前進ペダル23及び後進ペダル24を中立位置から踏み込んで操作するときに適度なクリック感を与える機能も有している。
次に、前進ペダル23及び後進ペダル24の操作量に連動してエンジン5の回転速度を調整するための構成について、図6及び図13等を参照して説明する。図13は、アクセル連動切替機構100の分解斜視図である。図13及び図6に示すように、アクセル連動切替機構100は、前記中立復帰機構33の各構成(前述の中立復帰アーム53や中立復帰ローラ54等)と、アクセル操作アーム(第2アーム部材)65と、連結プレート46と、操作レバー45と、を備えている。
図13に示すように、アクセル操作アーム65の長手方向の一端には、孔状に形成された回転中心部65aが形成されている。この回転中心部65aにローラ支持軸53aが挿通されることにより、アクセル操作アーム65が、ローラ支持軸53aを中心に中立復帰アーム53に対して相対回転可能に支持されている。一方、アクセル操作アーム65の長手方向の他端にはワイヤ接続部65bが設けられており、このワイヤ接続部65bに、第1ワイヤ(第1連動部材)66の端部が接続されている。
次に、図14の模式的な側面図を参照して説明する。図14に示すように、前記第1ワイヤ66の他端部は、後述の作動部80に接続されている。また、図14に示すように、前記作動部80と、エンジン5のガバナ装置5aが備える調速レバー5bとは、第2ワイヤ(第2連動部材)67によって接続されている。この調速レバー5bは、支点を中心に回動操作されることにより、エンジン5の回転速度を変更することができるように構成されている。そして、調速レバー5bに接続された第2ワイヤ67によって当該調速レバー5bを引っ張ることにより、当該調速レバー5bを回動操作することができる。
図14の側面図に示すように、前記作動部80は、ハンドアクセルレバー30の近傍に配置されている。ここで、ハンドアクセルレバー30及びペダル23,24は、運転座席8に座ったオペレータが操作するものであるから、平面視でエンジン5と運転座席8との間の位置(エンジン5のすぐ後方)に配置されている。言い換えれば、エンジン5、ハンドアクセルレバー30及びペダル23,24は、比較的小さな範囲にまとまって(集中的に)配置されている。
従って、ハンドアクセルレバー30の近傍に配置された作動部80と、前後進ペダルユニット10が備えるアクセル操作アーム65と、を連結する第1ワイヤ66を、効果的に短縮することができる。また、ハンドアクセルレバー30の近傍に配置された作動部80と、エンジン5が備える調速レバー5bと、を連結する第2ワイヤ67についても、上記と同様に短縮することができる。本実施形態のトラクタ1は、このように第1ワイヤ66及び第2ワイヤ67を短くすることができるので、当該ワイヤ66,67の取付性及びメンテナンス性に優れている。
一方、図13に示すように、中立復帰アーム53には長孔(第1挿入孔)53cが、アクセル操作アーム65には長孔(第2挿入孔)65cが、それぞれ形成されている。これらの長孔53c,65cは、何れも貫通状に形成されている。また、前記長孔53c及び長孔65cは、アクセル操作アーム65の中立復帰アーム53に対する相対的な向きが所定の向きとなったときに、その位置が互いに重なり合うように形成されている。そして、長孔53c及び長孔65cが互いに重なり合った(対面した)状態で、図13に示す連結プレート46に形成された凸部46bを挿入することにより、アクセル操作アーム65と中立復帰アーム53を相対回転不能に固定することができる。なお、連結プレート46及び凸部46bの構成については後述する。これにより、アクセル操作アーム65は(ローラ支持軸53aを中心に回転しないように)中立復帰アーム53と一体化され、中立復帰アーム53とともに中立復帰アーム支持部31eを中心にして回動する構成となっている。
一方、前述のように、前進ペダル23又は後進ペダル24を操作すると、中立復帰アーム53が回動する。従って、中立復帰アーム53とアクセル操作アーム65とを連結した状態(長孔53c,65cに凸部46bを挿入した状態)において、ペダル23,24を操作することにより、アクセル操作アーム65を回動させることができる(図11及び図12を参照)。そして、図11及び図12に示すように、ペダル23,24を踏み込むのに従って、第1ワイヤ66がワイヤ接続部65bによって引っ張られるように構成されている。
第1ワイヤ66がワイヤ接続部65bによって引っ張られると、第1ワイヤ66に接続された作動部80(図14を参照)が作動することにより(詳しくは後述)、作動部80に接続された第2ワイヤ67が、ガバナ装置5aの調速レバー5bを引っ張る。なお、このガバナ装置5aは、前記調速レバー5bが第2ワイヤ67によって引っ張られるのに応じて、エンジン5の回転数を上昇させるように構成されている。
以上の構成により、前進ペダル23又は後進ペダル24を踏み込むとエンジン5の回転数が上昇し、前進ペダル23及び後進ペダル24の踏込みを解除すると(中立復帰機構33によって中立位置に戻るため)エンジン5の回転数が低下する。これにより、いわゆるオートマチック車感覚の操作が実現されている。以上のように、前進ペダルアーム21のカム面21d、中立復帰ローラ54及び中立復帰アーム53等は、前進ペダル23又は後進ペダル24をオペレータが操作する操作力を(第1ワイヤ66を介して)ガバナ装置5aに伝達する機能を有しているということができる。
一方で、前記長孔53c及び長孔65cから前記凸部46bを抜くことにより、アクセル操作アーム65が中立復帰アーム53に対して相対回転可能な状態とすることができる。このように凸部46bを外した状態では、図15に示すように前進ペダルアーム21の回動に応じて中立復帰アーム53が回動しても、アクセル操作アーム65の先端のワイヤ接続部65bが殆ど移動しないので、第1ワイヤ66が引っ張られない。従って、エンジン5の回転数を、前進ペダル23又は後進ペダル24の操作量にかかわらず略一定とし、PTO軸(図略)に接続された作業機を安定して駆動することができる。
次に、前進ペダル23及び後進ペダル24の操作とエンジン5の回転速度との連動/非連動を切り替えるための構成について、図13、図16及び図17等を参照して説明する。図16及び図17は、アクセル連動切替機構100を主に示す模式的な正面断面図である。
前記連結プレート46は金属板によって構成され、図13等に示すように、当該連結プレート46には回転中心部46aが形成される。一方、中立復帰アーム53には、連結プレート46を回転可能に支持するプレート支持部(固定部材支持部)53dが固定されている。このプレート支持部53dに対して回転中心部46aを回転可能に支持することにより、当該回転中心部46aを中心として連結プレート46を回転させることができる。
また、前述のように、連結プレート46には、図13に示すような凸部46bが形成されている。そして、連結プレート46が回転中心部46aを中心に回転することにより、前記凸部46bが、長孔53cの長手方向を含む平面内で円弧状の軌跡を描いて移動するように構成されている。
また、前述のように、中立復帰アーム53とアクセル操作アーム65とを所定の位置関係とすることで、中立復帰アーム53に形成された長孔53cと、アクセル操作アーム65に形成された長孔65cとを、互いに対面した状態とすることができる。そして、回転中心部46aを中心として連結プレート46を所定の位置まで回転させると、図16のように、当該連結プレート46の凸部46bを両方の長孔53c,65cに挿入できるように構成されている。
そして、長孔53c,65cに凸部46bを挿入した状態とすることで、中立復帰アーム53とアクセル操作アーム65とを互いに固定した状態(図11及び図12の状態)とすることができる。これにより、ペダル23,24の操作によって第1ワイヤ66を操作できるようになるので、ペダル23,24とエンジン5の回転速度とを連動させることができる。
一方、図16の状態から連結プレート46を所定角度回転させると、図17に示すように、長孔53c,65cから凸部46bが抜けるので、中立復帰アーム53とアクセル操作アーム65との固定が解除された状態(図15の状態)とすることができる。これにより、ペダル23,24を操作しても第1ワイヤ66が操作されなくなるので、エンジン5の回転速度とペダル23,24の操作とを非連動とすることができる。
また、連結プレート46には操作レバー45が接続されている。この操作レバー45を上下させることにより、連結プレート46を、回転中心部46aを中心にして回転させることができる。
例えば本実施形態では、図16に示すように操作レバー45を下方に押し下げた状態にすることで、長孔53c,65cに対して、凸部46bが挿入された状態とすることができる。一方、図17に示すように、操作レバー45を上方に引き上げた状態とすることで、長孔53c,65cに対して、凸部46bが挿入されていない状態とすることができる。
以上の構成により、操作レバー45を操作することによって、エンジン5の回転速度とペダル23,24の操作とが連動した状態と、ペダル23,24の操作にかかわらずエンジン5の回転速度を略一定とする状態と、を切り替えることができる。そして、図2及び図7等に示すように、操作レバー45の先端はステップ板12の上方に突出して、キャビン7内に露出している。これにより、オペレータがキャビン7内から連結プレート46を簡単に操作することができる。
なお、図16及び図17に示すように、操作レバー45の基端部とプレート支持部53dとの間には、引張コイルバネとして構成された付勢バネ68が設けられている。この付勢バネ68のバネ力は、長孔53c及び長孔65cに凸部46bが挿入された状態(図16の状態)、又は、長孔53c,65cから凸部46bが完全に外れた状態(図17の状態)で、連結プレート46の回転位置を保持するように作用する。
この構成で、図16の状態からオペレータが操作レバー45を押し下げようとすると、当初は、付勢バネ68はそれに抗するバネ力を作用させる。しかしながら、そのバネ力に逆らって操作レバー45を操作し、連結プレート46をある程度回転させると、付勢バネ68の支点越えにより、バネ力が連結プレート46を回転させようとする向きが反対になる。この結果、図17の状態に切り替えられた後は、その連結プレート46の回転位置が付勢バネ68によって保持されることになる。なお、上記の付勢バネ68の作用は、図17の状態から図16の状態へ連結プレート46の回転位置を切り替える場合も同様に働く。
次に、ハンドアクセルレバー30によってエンジン5の回転速度を変更するための構成について、図18及び図19等を参照して説明する。図18はハンドアクセルレバー30近傍の構成の分解斜視図、図19はハンドアクセルレバー30近傍の側面図である。
図18に示すように、ハンドアクセルレバー30は、回動軸部30aの一端に固定された把手部30bと、回動軸部30aの他端に固定された作動部操作部材30cと、を備える。また、トラクタ1は、ハンドアクセルレバー30を支持するための第1ブラケット47を備える。回動軸部30aは、第1ブラケット47に対して当該回動軸部30aの軸線を中心に回動可能に取り付けられる。以上の構成で、把手部30bをオペレータが回動操作することで、作動部操作部材30cを回動させることができる。
一方、前記第1ブラケット47の下方には、第2ブラケット48が固定される。第2ブラケット48は、作動部80と、ポテンショメータ49と、を支持している。
図18に示すように、作動部80は、第1作動部材93と、第2作動部材94と、回動軸77と、を備えている。一方、第2ブラケット48にはボス状の作動部支持部48aが形成されている。また、ボス状の作動部支持部48aに形成された挿入孔は、第2ブラケット48を貫通するように構成されている。
そして、回動軸77の一端側に第1作動部材93を回転不能に固定した状態で、ボス状の作動部支持部48aが有する挿入孔に、当該回動軸77が挿通される。これにより、第1作動部材93が、第2ブラケット48に対して回動軸77を中心に回転可能に支持される。
第1作動部材93には、第2ワイヤ接続部93aが形成されている。図19に示すように、第2ワイヤ接続部93aには、第2ワイヤ67の端部が接続されている。そして、第1作動部材93を、図19において回動軸77を中心にして時計回りに回動させることにより、第2ワイヤ接続部93aが第2ワイヤ67を引っ張ることができるように構成されている。
一方、前述のように、第2ワイヤ67の他端部は、ガバナ装置5aが備える調速レバー5bに接続されている(図14を参照)。以上の構成により、第1作動部材93を、図19において回動軸77を中心に時計回りに回動させると、第2ワイヤ67が前記調速レバー5bを引っ張って回動させるので、エンジン5の回転数を変更することができる。
なお、前述のように、本実施形態のガバナ装置5aは、調速レバー5bが第2ワイヤ67によって引っ張られるほどエンジン5を高速回転するように構成されているので、図19の状態から第1作動部材93が時計回りに回転するほどエンジン5が高速回転することになる。また、第1作動部材93は、図略のバネ部材によって、エンジン5の低速回転側に付勢されている(即ち、図19において、第1作動部材93が回動軸77中心に反時計回り方向に付勢されている)。また、調速レバー5bは、図略のバネ部材によって低速回転側に付勢されている。以上の構成により、第1作動部材93に対して操作力を加えない場合は、当該第1作動部材93が回動軸77を中心として反時計回りに自然と回動し、エンジン5が低速回転状態に保たれる。
図18等に示すように、第1作動部材93は棒状の当接部93bを有している。一方、ハンドアクセルレバー30が備える作動部操作部材30cには、当接部30dが形成されている。この当接部30dは、第1ブラケット47に形成された円弧状の貫通孔47aを通過して、第1ブラケット47の下方に突出している。そして、図19に示すように、ハンドアクセルレバー30側の当接部30dは、第1作動部材93側の当接部93bに対して、回動軸77を中心にして図19の時計回り方向上流側から当接するように構成されている。
以上の構成で、ハンドアクセルレバー30を回動操作することにより、ハンドアクセルレバー30側の当接部30dが第1作動部材93の当接部93bを押し、当該第1作動部材93を回動させることができる。これにより、ハンドアクセルレバー30によって、エンジン5の回転速度を調整することができる。以下、具体的に説明する。
図19の状態は、第1作動部材93が反時計回りに限界まで回転した状態である(なお、第1作動部材93の回転範囲を制限するため、当該第1作動部材93に当接可能なストッパ48bが、第2ブラケット48に形成されている)。この状態においては、第2ワイヤ67が第2ワイヤ接続部93aによって引っ張られていない状態、即ちエンジン5の低速回転状態となっている。またこのとき、ハンドアクセルレバー30は「低速回転」の位置となっている。
図19の状態から、オペレータがハンドアクセルレバーを「高速回転」の位置まで回動操作した様子を図20に示す。ハンドアクセルレバーが「低速回転」から「高速回転」の位置まで回動操作されると、ハンドアクセルレバー30側の当接部30dが、図19において左から右に移動する。これにより、当該当接部30dによって第1作動部材93側の当接部93bが押され、第1作動部材93が時計回りに回転するように構成されている。結果として、第2ワイヤ67が第2ワイヤ接続部93aによって引っ張られ、当該第2ワイヤ67が調速レバー5bを引っ張るので、エンジン5の回転速度が増加する。
一方、図20の状態から、ハンドアクセルレバー30が「低速回転」の位置まで回動操作される(図19の状態に戻す)と、ハンドアクセルレバー30側の当接部30dは図20の右から左に移動する。これにより、当該当接部30dが第1作動部材93側の当接部93bを押す力が解除される。前述のように、第1作動部材93は図略の付勢バネによって反時計回りに付勢されているので、当該第1作動部材93は反時計回りに回動して自然に元の位置に戻る。これにより、第2ワイヤ接続部93aが第2ワイヤ67を引っ張る力が解除されるので、エンジン5の回転速度が減少する。
なお、ハンドアクセルレバー30と第1ブラケット47との間にはフリクションプレート60が配置されており、このフリクションプレート60による摩擦力によって、ハンドアクセルレバー30の回動操作時に一定の抵抗トルクが負荷されるようになっている。このフリクションプレート60による摩擦力の大きさは、第1作動部材93に加えられている反時計回りの付勢力にかかわらず、ハンドアクセルレバー30の向きを保持し得るように設定されている。これにより、ハンドアクセルレバー30から手を離しても(ハンドアクセルレバー30に対する操作力を解除しても)、ハンドアクセルレバー30及び第1作動部材93の位置が保持されるため、エンジン5の回転速度を一定に保つことができる。
次に、前後進ペダルユニット10が備えるアクセル連動切替機構100と、エンジン5のガバナ装置5aと、を連動させる構成について詳しく説明する。
前記第2作動部材94は、第1作動部材93に対して相対回転可能となるように、回動軸77に支持されている。図18等に示すように、第2作動部材94は第1ワイヤ接続部94aを有しており、この第1ワイヤ接続部94aには第1ワイヤ66の端部が接続されている。一方、前述したように、第1ワイヤ66の他端部は、アクセル操作アーム65のワイヤ接続部65bに接続されている(図6等を参照)。
前述のように、操作レバー45が押下げ位置とされている場合(連結プレート46によって中立復帰アーム53とアクセル操作アーム65とが互いに固定されている場合)には、ペダル23,24を踏込み操作することにより、第1ワイヤ66の他端部がワイヤ接続部65bによって引っ張られる。これにより、第2作動部材94の第1ワイヤ接続部94aが、第1ワイヤ66に引っ張られる。これにより、第2作動部材94が、回動軸77を中心にして図19の時計回りに回動するように構成されている。
また、図18に示すように、第2作動部材94は当接部94bを有している。一方、第1作動部材93には、前記当接部94bに対して、回動軸77を中心とした図19の時計回り方向下流側から当接可能な当接部93cが形成されている。これにより、第2作動部材94側の当接部94bが第1作動部材93側の当接部93cに当接した状態で、第2作動部材94が回動軸77を中心として図19の時計回り方向に回転した場合には、当接部94bが当接部93cを押すことにより、第1作動部材93を時計回りに回転駆動することができる。
以上の構成で、ペダル23,24を操作することにより、第2作動部材94側の当接部94bが第1作動部材93側の当接部93cを押し、当該第1作動部材93を回動させることができる。これにより、ペダル23,24を操作することによって、エンジン5の回転速度を調整することができる。以下、具体的に説明する。
図19の状態は、前進ペダル23及び後進ペダル24を操作していない中立状態(図6の状態)に対応している。この状態から、前進ペダル23又は後進ペダル24がオペレータによって踏込み操作されると(図11又は図12の状態)、第1ワイヤ66によって第1ワイヤ接続部94aが引っ張られ、第2作動部材94が回動軸77を中心にして図19の時計回りに回動する。これにより、第2作動部材側の当接部94bによって第1作動部材93側の当接部93cが押され、当該第1作動部材93が回動軸77を中心にして図19の時計回りに回動する(図21の状態)。これにより、第2ワイヤ接続部93aによって第2ワイヤ67が引っ張られ、当該第2ワイヤ67によって調速レバー5bが引っ張られるので、エンジン5の回転速度が増加する。
一方、図21の状態から、前進ペダル23及び後進ペダル24に対する踏込み操作を解除すると、前記付勢バネの付勢力により、第1作動部材93が回動軸77を中心として図19の反時計回りに回動する。これにより、エンジン5の回転速度が減少する。このとき、第1作動部材93側の当接部93cによって第2作動部材94側の当接部94bが押されるので、当該第2作動部材94が回動軸77を中心にして図21の反時計回りに回動し、図19の状態に戻る。
以上のように、ハンドアクセルレバー30とペダル23,24は、ともに作動部80を介して調速レバー5bに接続されている。これにより、ハンドアクセルレバー30とペダル23,24の両方によって、エンジン5の回転速度を調整可能となっている。ところで、ハンドアクセルレバー30の操作に伴ってペダル23,24が動いたり、ペダル23,24の操作に伴ってハンドアクセルレバー30が動いたりしてしまうようでは、自然な操作を行うことができない。この点、本実施形態のトラクタ1においては、ハンドアクセルレバー30及び作動部80を上記のように構成することによって、ハンドアクセルレバー30とペダル23,24とが連動して動かないようにしている。
具体的に説明すると、図19の状態からハンドアクセルレバー30を「高速回転」側に回動させても、図20に示すように、第2作動部材94は回動しない。即ち、ハンドアクセルレバー30を操作しても、ペダル23,24側が連動して動くことが無い。また、図19の状態からペダル23,24を踏込み操作しても、図21に示すように、ハンドアクセルレバー30は回動しない。即ち、ペダル23,24を操作しても、ハンドアクセルレバー30側が連動して動くことが無い。
次に、第2ブラケット48に取り付けられたポテンショメータ49について説明する。図18に示すように、このポテンショメータ49は、作動部80が取り付けられている側とは反対側から第2ブラケット48に取り付けられている。また、このポテンショメータ49には、ボス状の作動部支持部48aを挿通した回動軸77の端部が接続されている。以上の構成で、ポテンショメータ49は、回動軸77の回転量(第1作動部材93の回動量)を電気的に検出するように構成されている。そして、第1作動部材93の回動量から、第2ワイヤ67が第2ワイヤ接続部93aによってどれくらい引っ張られたか、即ち、ガバナ装置5aの調速レバー5bがどの程度操作されたかを知ることができる。従って、ポテンショメータ49によって第1作動部材93の回動量を検出することにより、ペダル23,24又はハンドアクセルレバー30の操作位置に対応したエンジン回転速度(目標回転速度)を検出することができる。
ポテンショメータ49の検出値は、前記車体コントローラに入力される。車体コントローラは、ポテンショメータ49の検出値に基づいて、前記目標回転速度を求める。そして、車体コントローラは、前記目標回転速度に基づいて、エンジン5のアンチストール制御を行う。具体的には、車体コントローラは、エンジン5の実際の回転速度と、ポテンショメータ49の検出値に基づいて求めた目標回転速度と、を比較し、エンジン5の負荷を計算する。そして、この計算された負荷に応じて無段変速機29の斜板操作シリンダ556を駆動することにより、エンジン5の負荷を調整し、当該エンジン5のストールを防止する。
以上で説明したように、本実施形態のトラクタ1は、車体の前部に配置されたエンジン5と、エンジン5の後方に配置された運転座席8と、を備える。また、このトラクタ1は、ハンドアクセルレバー30と、作動部80と、ペダル23,24と、ペダルブラケット31と、アクセル連動切替機構100と、を備える。ハンドアクセルレバー30は、平面視でエンジン5と運転座席8との間に配置される。作動部80は、ハンドアクセルレバー30の近傍に配置され、当該ハンドアクセルレバー30の操作に連動して作動可能である。ペダル23,24は、平面視でエンジン5と運転座席8との間に配置される。ペダルブラケット31は、ペダルアーム21,22を支持する。アクセル連動切替機構100は、ペダルブラケット31に支持される。また、作動部80と、アクセル連動切替機構100と、が第1ワイヤ66によって連結される。作動部80と、エンジン5のガバナ装置5aと、が第2ワイヤ67によって連結される。そして、アクセル連動切替機構100は、ペダル23,24と第1ワイヤ66とを連動させる状態と、当該連動を解除する状態と、を切替可能である。
これにより、アクセル連動切替機構100によってペダル23,24と第1ワイヤ66との連動の有無を切り替えることにより、当該ペダル23,24とエンジン5のガバナ装置5aとが連動した状態と、当該連動が解除された状態と、を切り替えることができる。また、作動部80、ハンドアクセルレバー30、ペダル23,24、アクセル連動切替機構100等が、エンジン5の後方にまとめて配置されているため、第1ワイヤ66及び第2ワイヤ67を短くすることが可能となり、組立性及びメンテナンス性に優れる。
また、本実施形態のトラクタ1は、以下のように構成されている。即ち、このトラクタ1は、無段変速機29と、ポテンショメータ34と、を備える。無段変速機29は、車体の後部に配置され、エンジン5の出力を変速する。ポテンショメータ34は、ペダル23,24の操作量を電気的に検出する。そして、ポテンショメータ34の検出結果に基づいて、無段変速機29の変速比を変更する。
これにより、ペダル23,24の操作に応じて、走行速度を無段階で変速することができる。また、ペダル23,24は運転座席8の前方に配置されており、一方、無段変速機29は車体の後部に配置されているため、仮にペダル23,24と無段変速機29とを機械的に接続する構成とすれば、当該機械的な接続機構が長尺となってしまう。この点、上記のようにペダル23,24の操作量を電気的に検出する構成とすることにより、機械的な接続機構を省略し、組立性及びメンテナンス性を更に向上させることができる。
また、本実施形態のトラクタ1は、以下のように構成されている。即ち、アクセル連動切替機構100は、中立復帰アーム53と、アクセル操作アーム65と、連結プレート46と、を備える。中立復帰アーム53は、ペダル23,24と連動して作動する。アクセル操作アーム65は、第1ワイヤ66に連結されるとともに、中立復帰アーム53に対して相対回転可能に構成されている。連結プレート46は、中立復帰アーム53とアクセル操作アーム65とを互いに固定した状態と、当該固定を解除した状態と、を切替可能である。
即ち、中立復帰アーム53とアクセル操作アーム65とを連結プレート46によって互いに固定することにより、ペダル23,24と第1ワイヤ66とが連動した状態になる。更に、第1ワイヤ66は、作動部80と第2ワイヤ67を介してエンジン5のガバナ装置5aと連動している。従って、中立復帰アーム53とアクセル操作アーム65とを連結プレート46によって互いに固定することにより、ペダル23,24とエンジン5のガバナ装置5aとを連動させることができる。これにより、ペダル23,24の操作によってエンジン5の回転速度を変更することが可能となる。一方、連結プレート46による中立復帰アーム53とアクセル操作アーム65との固定を解除することにより、ペダル23,24とガバナ装置5aとの連動が解除される。以上のように、ペダル23,24とエンジン5の回転速度との連動の有無の切替えを、簡単な構成で実現することができる。
また、本実施形態のトラクタ1は、以下のように構成されている。即ち、ペダルブラケット31は、運転座席のステップ板12の下面側から当該ステップ板12に対して取り付けられる。アクセル連動切替機構100は、ステップ板12の上方に露出する操作レバー45を備える。そして、連結プレート46による中立復帰アーム53とアクセル操作アーム65との固定及び当該固定の解除を、操作レバー45によって切替可能である。
これにより、オペレータはステップ上方に露出した操作レバー45によって連結プレート46を操作することが可能となるので、ペダル23,24の操作とエンジン5の回転速度との連動の有無を簡単に切り替えることができる。
また、本実施形態のトラクタ1は、以下のように構成されている。即ち、中立復帰アーム53は、連結プレート46を回転可能に支持するプレート支持部53dを有する。中立復帰アーム53は長孔53cを有する。アクセル操作アーム65は長孔65cを有する。連結プレート46は、長孔53c,65cに挿入可能な凸部46bを有する。そして、連結プレート46の回転により、2つの長孔53c,65cの両方に凸部46bが挿入された状態と、長孔53c,65cの何れにも凸部46bが挿入されていない状態と、を実現可能に構成される。そして、操作レバー45が連結プレート46に連結されている。
これにより、ステップ板12の上方に露出した操作レバー45の端部を操作することにより、連結プレート46を回転させることができる。以上により、簡単な構成で、ペダル23,24とエンジン5の回転速度との連動の有無を、ステップの上方からオペレータが切り替えることができる。
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態は、エンジン5の回転速度とペダル23,24の操作との連動の有無を、上記実施形態よりも更に簡素化した構成となっている。
この第2実施形態に係る前後進ペダルユニット10の斜視図を図22に、模式的な正面断面図を図23に示す。なお、以下の説明において、上記実施形態と同一又は類似する構成については、上記実施形態と同一の符号を図面に付し、説明を省略する。図22等に示すように、本実施形態におけるアクセル連動切替機構101は、中立復帰アーム53と、アクセル操作アーム65と、連結ピン(固定部材)56と、を備えている。
この実施形態においては、固定部材として、第1実施形態の連結プレート46の代わりに連結ピン56を用いている。連結ピン56は、図22及び図23に示すように、U字状(折返し状)に曲げられた丸棒状の部材として形成されている。
一方、図23に示すように、中立復帰アーム53には、前記丸棒状の連結ピン56の端部を挿入可能な挿入孔(第1挿入孔)53xが形成されている。同様に、アクセル操作アーム65には、前記丸棒状の連結ピン56の端部を挿入可能な挿入孔(第2挿入孔)65xが形成されている。
連結ピン56の前記U字の一端側は、中立復帰アーム53に対して回転可能かつ軸方向移動可能に支持されている。また、連結ピン56の前記U字の他端側は、前記挿入孔53x,65xに挿入可能である。そして、挿入孔53x,65xに連結ピン56の端部を挿入することにより、中立復帰アーム53と、アクセル操作アーム65とが互いに固定される。これにより、第1実施形態と同様に、ペダル23,24の操作とエンジン5の回転速度とを連動させることができる。
また、連結ピン56は、前記挿入孔53xが形成されている向きに移動可能となるように、中立復帰アーム53に支持されている。従って、図23の状態から連結ピン56をスライドさせることにより、挿入孔53x,65xから連結ピン56を抜いて、中立復帰アーム53とアクセル操作アーム65との固定を解除することができる。なお、連結ピン56と中立復帰アーム53との間には、連結ピン56を挿入孔53x,65xに挿入させる方向に当該連結ピン56を付勢する付勢バネ56aが配置されている。これにより、連結ピン56が走行時の振動等によって挿入孔53x,65xから外れてしまうことを防ぐことができる。
中立復帰アーム53とアクセル操作アーム65との固定を解除するには、オペレータは以下のような操作を行う。
即ち、本実施形態の連結ピン56は、上記の第1実施形態のようにステップ板12の上から操作することができないので、オペレータは、ステップ板12の下に手を差し込んで連結ピン56の操作を行う。具体的には、連結ピン56の端部を挿入孔53x,65xから抜くようにして、当該連結ピン56を中立復帰アーム53に対して(図23の状態から左側へ)スライドさせる。これにより、中立復帰アーム53とアクセル操作アーム65との固定を解除することができる。
そして、挿入孔53xから連結ピン56を完全に抜いた状態で、中立復帰アーム53に対して連結ピン56を回転させることにより、図24の状態とする。このようにすると、図24に示すように連結ピン56の端部の位置が挿入孔53xと一致しなくなるから、オペレータが連結ピン56から手を離しても挿入孔53xに連結ピン56が挿入されない。これにより、中立復帰アーム53とアクセル操作アーム65との固定が解除された状態を保持することができる。
以上で説明したように、本実施形態のトラクタは、以下のように構成されている。即ち、中立復帰アーム53は、挿入孔53xを有する。アクセル操作アーム65は、挿入孔65xを有する。そして、2つの挿入孔53x,65xの両方に連結ピン56を挿入することにより、中立復帰アーム53とアクセル操作アーム65とを互いに固定した状態とする。一方、2つの挿入孔53x,65xから連結ピン56を抜くことにより、中立復帰アーム53とアクセル操作アーム65との固定を解除した状態とする。
これにより、ペダル23,24とエンジン5の回転速度との連動状態の切替えを、連結ピン56の挿入孔53x,65xへの抜差しを用いた簡単な構成で実現することができる。
以上に本発明の好適な実施の形態について説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
第1連動部材、第2連動部材はワイヤとしたが、これに限らず、例えばアーム状の部材によって構成しても良い。また、複数の部品からなるリンク機構として構成しても良い。
無段変速機はインライン式のHSTに限らず、例えば通常のHSTでも良い。
上記実施形態では前進ペダルアーム21側に中立復帰機構33を設けたが、この構成に代えて後進ペダルアーム22側に中立復帰機構33を設けても良い。
また、上記実施形態では前進ペダルアーム21の回転量(正確には前進ペダルアーム21の回転中心部21aの回転量)をポテンショメータ34で検出する構成としたが、後進ペダルアーム22の回転量をポテンショメータで検出するように構成しても良い。
また、前進ペダル23及び後進ペダル24の操作量を電気的に検出するための検出機構は、ポテンショメータに限らず、例えばロータリエンコーダでも良い。