JP5324715B1 - 複層塗膜形成方法 - Google Patents
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Abstract
防食性および耐候性の両方が優れた複層塗膜を、被塗物に好適に設けることができる方法を提供すること。
【解決手段】
被塗物上に、下塗り塗料組成物を塗装して、未乾燥の下塗り塗膜を形成する、下塗り塗膜形成工程、得られた未乾燥の下塗り塗膜の上に、上塗り塗料組成物を、ウェットオンウェットで塗装し、未乾燥の上塗り塗膜を形成する、上塗り塗膜形成工程、および得られた未乾燥の下塗り塗膜および未乾燥の上塗り塗膜を同時に乾燥させて複層塗膜を形成する、乾燥工程、を包含する、複層塗膜形成方法において、下塗り塗膜と上塗り塗膜の表面張力の差およびラメラ長を限定した複層塗膜形成方法。
【選択図】なし
Description
なお、ワキとは塗膜表面に発生する針穴のような小さな穴や突起を意味します。
被塗物上に、下塗り塗料組成物を塗装して、未乾燥の下塗り塗膜を形成する、下塗り塗膜形成工程、
得られた未乾燥の下塗り塗膜の上に、上塗り塗料組成物を、ウェットオンウェットで塗装し、未乾燥の上塗り塗膜を形成する、上塗り塗膜形成工程、および
得られた未乾燥の下塗り塗膜および未乾燥の上塗り塗膜を同時に乾燥させて複層塗膜を形成する、乾燥工程、を包含する、複層塗膜形成方法であって、
該下塗り塗料組成物がアクリル樹脂(A−1)とエポキシ樹脂(C)とを含む塗膜形成樹脂、イソシアネート化合物(D−1)を含む硬化剤および表面調整剤(E―1)を含んでおり、
アクリル樹脂(A−1)、エポキシ樹脂(C)、イソシアネート化合物(D−1)および表面調整剤(E―1)の固形分比率は、アクリル樹脂(A−1)25〜70質量%、エポキシ樹脂(C)5〜30質量%、イソシアネート化合物(D−1)20〜60質量%および表面調整剤(E―1)0.01〜5質量%であり、
該上塗り塗料組成物が、アクリル樹脂(A−2)を含む塗膜形成樹脂、イソシアネート化合物(D−2)を含む硬化剤および表面調整剤(E―2)を含んでおり、
アクリル樹脂(A−2)、イソシアネート化合物(D−2)および表面調整剤(E―2)の固形分比率は、アクリル樹脂(A−2)30〜70質量%、イソシアネート化合物(D−2)20〜60質量%および表面調整剤(E―2)0.01〜5質量%であり、
前記下塗り塗料組成物の表面張力の値(γ1)から、前記上塗り塗料組成物の表面張力の値(γ2)を、差し引いた値であるΔγ(γ1−γ2)が−2〜8mN/mであり、かつ、
前記下塗り塗料および上塗り塗料組成物がラメラ長4mm以下を有する、複層塗膜形成方法、を提供するものであり、これにより上記課題が解決される。
前記アクリル樹脂(A−1)、ポリエステル樹脂(B−1)、エポキシ樹脂(C)、イソシアネート化合物(D−1)および表面調整剤(E―1)の固形分比率は、アクリル樹脂(A−1)25〜50質量%、ポリエステル樹脂(B−1)5〜30質量%、エポキシ樹脂(C)5〜25質量%、イソシアネート化合物(D−1)20〜50質量%および表面調整剤(E―1)0.01〜5質量%であり、
前記上塗り塗料組成物に含まれる塗膜形成樹脂が、さらに、ポリエステル樹脂(B−2)を含んでおり、
前記アクリル樹脂(A−2)、ポリエステル樹脂(B−2)、イソシアネート化合物(D−2)および表面調整剤(E―2)の固形分比率は、アクリル樹脂(A−2)30〜60質量%、ポリエステル樹脂(B−2)5〜35質量%、イソシアネート化合物(D−2)20〜50質量%および表面調整剤(E―2)0.01〜5質量%であるのが好ましい。
被塗物上に、下塗り塗料組成物を塗装して、未乾燥の下塗り塗膜を形成する、下塗り塗膜形成工程、得られた下塗り塗膜の上に、上塗り塗料組成物を、ウェットオンウェットで塗装し、未乾燥の上塗り塗膜を形成する、上塗り塗膜形成工程、および得られた未乾燥の下塗り塗膜および未乾燥の上塗り塗膜を同時に乾燥させる、乾燥工程、を包含する。
この下塗り塗料組成物が、アクリル樹脂(A−1)とエポキシ樹脂(C)とを含む塗膜形成樹脂、表面調整剤(E−1)およびイソシアネート化合物(D−1)を硬化剤として含んでいて、さらにポリエステル樹脂(B−1)を含むことができる。
また、上塗り塗料組成物が、アクリル樹脂(A−2)を含む塗膜形成樹脂、表面調整剤(E−2)およびイソシアネート化合物(D−2)を硬化剤として含んでいて、さらにポリエステル樹脂(B−2)を含むことができる。
ここで、上記ポリエステル樹脂(B−1)および上記ポリエステル樹脂(B−2)は、下塗り塗料組成物および上塗り塗料組成物の両方とも含まないか、あるいは、両方ともに含まれる態様が一般的であり、いずれか一方だけに含まれることはまれである。以下の各塗料組成物の成分の説明では、単純化するために、主として下塗り塗料組成物の塗膜形成樹脂としてさらにポリエステル樹脂(B−1)を、また、上塗り塗料組成物の塗膜形成樹脂としてさらにポリエステル樹脂(B−2)を含んだ態様で説明する。
本発明における下塗り塗料組成物は、アクリル樹脂(A−1)とポリエステル樹脂(B−1)とエポキシ樹脂(C)とを含む塗膜形成樹脂、イソシアネート化合物(D−1)を含む硬化剤および表面調整剤(E−1)を含む。以下、各成分について記載する。尚、前述のように、ポリエステル樹脂(B−1)を含まない場合も、本発明の複層塗膜形成方法に用いる下塗り塗料組成物の範囲内である。
本発明における下塗り塗料組成物は塗膜形成樹脂としてアクリル樹脂(A−1)を含む。アクリル樹脂(A−1)が含まれることによって、下塗り塗膜に密着性や耐水性などの良好な塗膜性能が付与される。下塗り塗料組成物に含まれるアクリル樹脂(A−1)は、水酸基含有モノマー(a)および他のモノマー(b)を共重合することによって調製することができる。
アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、フマール酸などの、カルボキシル基含有モノマー、および、マレイン酸エチル、マレイン酸ブチル、イタコン酸エチル、イタコン酸ブチルなどのジカルボン酸モノエステルモノマー;
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n、iまたはt−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー;
(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレートなどの脂環基含有モノマー;
(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ブチルアミノエチルなどの(メタ)アクリル酸アミノアルキルエステルモノマー;
アミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリルアミド、メチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリル酸アミノアルキルアミドモノマー;
アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、メトキシブチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドなどのその他のアミド基含有モノマー;
(メタ)アクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリルなどのシアン化ビニル系モノマー;
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどの飽和脂肪族カルボン酸ビニルエステルモノマー;
スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどのスチレン系モノマー;
などを挙げることができる。これらの他のモノマー(b)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明における下塗り塗料組成物は塗膜形成樹脂としてポリエステル樹脂(B−1)を含むことができる。下塗り塗料組成物にポリエステル樹脂(B−1)を含むことによって塗装作業性が向上し、得られる塗膜の外観が向上するという利点がある。このようなポリエステル樹脂(B−1)として、一般にポリエステルポリオールと呼ばれる、1分子中に2個以上の水酸基を有するポリエステル樹脂が好適に用いられる。このようなポリエステル樹脂は、多価アルコールと多塩基酸またはその無水物とを重縮合(エステル反応)して調製することができる。
本発明における下塗り塗料組成物は塗膜形成樹脂としてエポキシ樹脂(C)が含まれる。下塗り塗料組成物中にエポキシ樹脂(C)が含まれることによって、得られる複層塗膜の防食性が向上するという利点がある。エポキシ樹脂(C)として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂またはノボラック型エポキシ樹脂の少なくともいずれか一方が含まれるのが好ましい。
ビスフェノールA型エポキシ樹脂の市販品である「エピコート #828」(ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂、エポキシ当量184〜194g/eq、数平均分子量約380、三菱化学社製)、「エピコート #834−90X」(ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂、エポキシ当量230〜270g/eq、数平均分子量約470、三菱化学社製)、「エピコート #872−X−75」(ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂、エポキシ当量600〜700g/eq、三菱化学社製)、「エピコート #1001」(ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂、エポキシ当量450〜500g/eq、数平均分子量約900、三菱化学社製)、「エピコート #1004」(ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂、エポキシ当量875〜975g/eq、数平均分子量約1600、三菱化学社製)など;
ノボラック型エポキシ樹脂の市販品である「EPICLON 5250−80IX」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量230〜250g/eq、数平均分子量約470、DIC社製)、「EPICLON 5270−80IX」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量245〜270g/eq、数平均分子量約540、DIC社製)、「エピコート #154」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量176〜180g/eq、数平均分子量約540、三菱化学社製)など;
他のエポキシ樹脂の市販品である「エピコート #807」(ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂、エポキシ当量160〜175g/eq、数平均分子量約330、三菱化学社製)、「YR−450」(ゴム変性エポキシ樹脂、エポキシ当量400〜500g/eq、数平均分子量約800〜1000、東都化成社製)など;
を挙げることができる。本発明に用いられるエポキシ樹脂(C)は、上記例示されたエポキシ樹脂に限定されるものではなく、一般に市販されている、その他のエポキシ樹脂も使用することができる。
本発明における下塗り塗料組成物は硬化剤としてイソシアネート化合物(D−1)が含まれる。イソシアネート化合物(D−1)としては、脂肪族、脂環式、芳香族基含有脂肪族または芳香族の、ジイソシアネート、ジイソシアネートの二量体、ジイソシアネートの三量体(好ましくはイソシアヌレート型イソシアネート(いわゆるイソシアヌレート))など多官能イソシアネート化合物を用いることができる。このようなイソシアネート化合物はいわゆるアシンメトリー型のものであってもよい。
上記イソシアヌレート型イソシアネートとしては上述したジイソシアネートの三量体を挙げることができる。
なお、このようなイソシアネート化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
尚、ポリエステル樹脂(B−1)を含まない場合は、塗膜形成樹脂はアクリル樹脂(A−1)およびエポキシ樹脂(C)となる。
本発明における下塗り塗料組成物は、塗膜形成樹脂および硬化剤の他に、表面調整剤(E−1)が含まれる。この表面調整剤(E−1)は、上塗り塗膜とのなじみを制御する成分で、後述するように上塗り塗料組成物との表面張力の値の差が所定範囲内にあることがウェットオンウェット塗装を有効にするために必要である。
なお、ポリエステル樹脂(B−1)を含まない場合は、塗膜形成樹脂はアクリル樹脂(A−1)およびエポキシ樹脂(C)となる。
本発明における下塗り塗料組成物は顔料(F−1)を含むことが好ましい。顔料としては、塗料分野において一般的に用いられる顔料を用いることができ、例えば、タルク、クレー、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、ケイ酸、ケイ酸塩、酸化アルミニウム水和物、硫酸カルシウム、石膏、雲母状酸化鉄(MIO)、ガラスフレーク、スゾライト・マイカ、クラライト・マイカなどの体質顔料;酸化チタン、カーボンブラック、鉛白、黒鉛、硫化亜鉛、酸化亜鉛(亜鉛華)、酸化クロム、黄色ニッケルチタン、黄色クロムチタン、黄色酸化鉄、赤色酸化鉄、黒色酸化鉄、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ウルトラマリンブルー、キナクリドン類、アゾ系赤・黄色顔料などの着色顔料;モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸アルミニウム、亜鉛末(Zn)、リン酸亜鉛、アルミ粉(Al)などの防錆顔料が挙げられる。これらの体質顔料、着色顔料および防錆顔料は、それぞれ1種のみが用いられてもよいし、2種以上を併用してもよい。
下塗り塗料組成物においては、防錆顔料を1種以上および体質顔料を1種以上が含まれることが好ましい。これらの顔料を含むことによって、得られる複層塗膜の防食性や耐候性などの塗膜性能および塗膜隠ぺい性が向上し、また意匠性に優れた塗膜外観が得られるという利点がある。
本発明における上塗り塗料組成物は、アクリル樹脂(A−2)とポリエステル樹脂(B−2)とを含む塗膜形成樹脂、イソシアネート化合物(D−2)を含む硬化剤および表面調整剤(E−2)を含んでいる。
ここで、アクリル樹脂(A−2)として具体的には、上記下塗り塗料組成物のところで述べたアクリル樹脂(A−1)を、また、ポリエステル樹脂(B−2)として具体的には、上記下塗り塗料組成物のところで述べたポリエステル樹脂(B−1)を、さらに、イソシアネート化合物(D−2)として具体的には、上記下塗り塗料組成物のところで述べたイソシアネート化合物(D−1)を挙げることができる。下塗り塗料組成物および上塗り塗料組成物に含まれる上記塗膜形成樹脂および硬化剤は、同一のものであってもよく、異なるものであってもよい。尚、前述のように、ポリエステル樹脂(B−2)を含まない場合も、本発明の複層塗膜形成方法に用いられる上塗り塗料組成物の範囲内である。
なお、ポリエステル樹脂(B−2)を含まない場合は、塗膜形成樹脂はアクリル樹脂(A−2)となる。
尚、ポリエステル樹脂(B−2)を含まない場合は、塗膜形成樹脂はアクリル樹脂(A−2)となる。
本発明における複層塗膜は、被塗物上に、上記下塗り塗料組成物を塗装して、未乾燥の下塗り塗膜を形成する、下塗り塗膜形成工程、得られた未乾燥の下塗り塗膜の上に、上記上塗り塗料組成物を、ウェットオンウェットで塗装し、未乾燥の上塗り塗膜を形成する、上塗り塗膜形成工程、および、得られた未乾燥の下塗り塗膜および未乾燥の上塗り塗膜を同時に乾燥させて複層塗膜を形成する、乾燥工程、を包含する方法によって形成することができる。
本発明の複層塗膜形成方法における被塗物として、例えば、鉄、亜鉛、錫、銅、チタン、ブリキ、トタンなどの金属基材が挙げられる。これらの金属基材は、亜鉛、銅、クロムなどのメッキが施されていてもよく、また、クロム酸、リン酸亜鉛またはジルコニウム塩などの表面処理剤を用いた表面処理が施されていてもよい。本発明の複層塗膜形成方法は、例えば、熱容量が大きく、加熱炉中において被塗物に熱が十分に伝達しない金属基材などが被塗物である場合において、特に好適に用いることができる。このような被塗物として、具体的には、建設機械(例えば、ブルドーザー、スクレイパー、油圧ショベル、堀削機、運搬機械(トラック、トレーラーなど)、クレーン・荷役機械、基礎工事用機械(ディーゼルハンマー、油圧ハンマーなど)、トンネル工事用機械(ボーリングマシーンなど)、ロードローラーなど);一般工業用と呼ばれる弱電・重電機器、農業機械、鋼製家具、工作機械および大型車両などの産業機械;そして熱容量が大きく加熱しても昇温し難い被塗物など、が挙げられる。本発明における複層塗膜方法は、熱容量が大きく加熱しても昇温し難い被塗物である建設機械または産業機械の塗装に好適に用いることができる。
窒素導入管、撹拌機、温度調節機、滴下ロート及びデカンターを備えた冷却管を取り付けた1Lの反応容器にキシレン25部、酢酸ブチル10部を仕込み、温度を120℃にした。次に、アクリルモノマーとして、スチレン16.0部、メタクリル酸1.0部、2−エチルヘキシルメタクリレート23.0部、2−エチルヘキシルアクリレート25.0部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート35.0部およびt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート4部を滴下ロートに仕込みモノマー溶液とした。反応容器内を120℃に保持しながら3時間かけてこのモノマー溶液を滴下した。滴下後さらに1時間120℃で保持した。得られたアクリル樹脂1は数平均分子量2,500(GPC測定によるポリスチレン換算値)、固形分水酸基価180mgKOH/g、固形分酸価7mgKOH/g、固形分濃度は75%であった。
モノマーを、スチレン52.3部、メタクリル酸1.3部、エチルアクリレート36.1部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート10.4部にした以外は製造例1と同様に作成した。得られたアクリル樹脂2は数平均分子量5,500(GPC測定によるポリスチレン換算値)、固形分水酸基価55mgKOH/g、固形分酸価7mgKOH/g、固形分濃度は75%であった。
撹拌機、温度調節機、冷却管を備えた2Lの反応容器に、イソフタル酸15.6部、ヘキサヒドロ無水フタル酸21.8部、ネオペンチルグリコール15.2部、トリメチロールプロパン18.0部、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル6.1部、カージュラーE(シェル社製 バーサティック酸グリシジルエステル)7.9部、ε−カプロラクトン15.4部を仕込み、昇温した。反応により生成する水をキシレンと共沸させて除去した。還流開始より約2時間をかけて温度を190℃にし、カルボン酸相当の酸価が8になるまで撹拌と脱水を継続し、反応を終了した。さらにキシレン16部を加えた。得られたポリエステル樹脂1は数平均分子量1,500(GPC測定によるポリスチレン換算値)、固形分水酸基価230mgKOH/g、固形分酸価8mgKOH/g、固形分濃度は80%であった。
モノマーを、イソフタル酸45.6部、ネオペンチルグリコール16.0部、トリメチロールプロパン5.2部、1,6−へキサンジオール12.0部、ε−カプロラクトン21.2部にした以外は製造例1と同じ方法で作成した。得られたポリエステル樹脂2は数平均分子量4,200(GPC測定によるポリスチレン換算値)、固形分水酸基価54mgKOH/g、固形分酸価7mgKOH/g、固形分濃度は80%であった。
分散容器に、アクリル樹脂であるアクリディックA−859B(固形分濃度75質量%、固形分水酸基価130mgKOH/g、数平均分子量2,100、DIC社製)215部、アミン系分散剤BYK161(ビックケミー・ジャパン社製、固形分濃度30質量%)15部、分散剤BYK110(ビックケミー・ジャパン社製、固形分濃度52質量%)9部、酸化チタン顔料Ti−Pure R−706(デュポン株式会社社製) 164部、カーボンブラック 三菱カーボンブラック MA−100(三菱化学社製) 1部、重質炭酸カルシウム(丸尾カルシウム社製)111部、リン酸亜鉛防錆顔料LFボウセイZP−DL(キクチカラー社製)160部、ソルベッソ100(登録商標 エクソンモービル社製) 64部、メトキシブチルアセテート 60部を配合した。その後、ガラスビーズを入れて分散し、粒度が10μm以下になるまで分散を行い、分散ペースト1を得た。
各成分の量を下記表1に示す量に変更したこと以外は、製造例5と同様にして、分散ペースト2〜5を製造した。なお、表1中の「有機イエロー顔料」は、ホスターパームエローH3G(クラリアントジャパン社製)である。
製造例5で得られた分散ペースト799部に、製造例3で得られたポリエステ
ル樹脂1を87部、エポキシ樹脂1としてエピコート#872(固形分濃度75質量%、エポキシ当量650g/eq、三菱化学社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂)96部、アクリル系表面調整剤 BYK392(ビックケミー・ジャパン社製、固形分濃度52質量%)8部を加えて、攪拌を行った。その後、塗膜形成樹脂であるアクリル樹脂とポリエステル樹脂とに含まれる水酸基の総数と、イソシアネート基との比率が1:1になるように、イソシアヌレート型のイソシアネート樹脂コロネートHXLV(固形分濃度100質量%、日本ポリウレタン社製、HDIのイソシアヌレート体(3量体))のキシレン溶液(固形分濃度75%)204部を加えて攪拌を行い、下塗り塗料組成物1を得た。
また、得られた下塗り塗料組成物1の表面張力(γ1)を、ダイノメーター(ドイツ・ビックガードナー社製)を用いて白金リング法により測定したところ、27.2mN/mであった。
また、得られた下塗り塗料組成物1のラメラ長を、ダイノメーター(ドイツ・ビックガードナー社製)を用いて白金リング法により測定したところ、0.9mmであった。測定条件としては、塗料温度が25℃、リングの引き上げ速度が1.5mm/分であった。
各成分の量を、下記表2に示す量に変更したこと以外は、製造例11と同様にして、下塗り塗料組成物2〜10を製造した。得られた下塗り塗料組成物の表面張力(r1)およびラメラ長も製造例11と同様に測定し、結果を表2に示す。
なお、下記表2に示されるエポキシ樹脂2は、エピコート #828(固形分濃度75質量%、エポキシ当量185g/eq、三菱化学社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂)である。
各成分の量を、下記表3に示す量に変更したこと以外は、製造例11と同様にして、上塗り塗料組成物1〜10を製造した。さらに、上塗り塗料組成物1〜10の各表面張力(γ2)およびラメラ長を製造例11と同様に測定し、測定値を表3に示した。
大きさ0.8×70×150mmのJIS G 3141(SPCC−SB)冷間圧延鋼板を、キシレンで脱脂した。次いで、製造例11で得られた下塗り塗料組成物1を、30μmあるいは60μmの乾燥膜厚になるようにエアレススプレーを用いて塗装して未乾燥の下塗り塗膜を形成した。続けて、室温で3分のインターバルを置いて、下塗り塗膜が未乾燥の状態で、製造例21で得られた上塗り塗料組成物1を、30μmあるいは60μmの乾燥膜厚になるようにエアレススプレーを用いてウェットオンウェット塗装をして未乾燥の上塗り塗膜を形成した。10分間室温で放置した後、80℃で30分間乾燥させて(強制乾燥)、所定の乾燥膜厚の複層塗膜を得た。乾燥膜厚は60μm(下塗り塗膜、上塗り塗膜共に30μm)および120μm(下塗り塗膜、上塗り塗膜共に60μm)の2種を得た。
なお、塗膜外観(ワキ)の測定は0.3×400×600mmのJIS G 3141(SPCC−SB)ブリキ板を用い、上記と同様の方法で複層塗膜を得た。
室温で3分間のインターバルを置いた後、得られた未乾燥の下塗り塗膜を80℃で2分で仮乾燥した後に、上塗り塗料組成物1を塗装したこと以外は、実施例1と同様にして塗装を行い、複層塗膜を得た。
下塗り塗料組成物および上塗り塗料組成物の種類、ならびに、下塗り塗料組成物塗装後の仮乾燥の有無を、表4および表5に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、複層塗膜を得た。
JIS K 5600−7−7記載のキセノンランプ法に従い、スーパーキセノンウェザーメーターSX2−75(スガ試験機社製)で促進耐候性試験を実施した。試験時間500時間後の塗膜の光沢値を、多角度光沢計GS-4K(スガ試験機社製)により測定し、試験前の光沢値に対する変化率(光沢保持率)で評価した。60°光沢値が光沢保持率80%以上が合格である。
得られた複層塗膜に、基材に達するようにカッターナイフで長さ10cmのクロスカット傷を入れた。JIS K 5600−7−1(JIS Z 2371)記載の耐中性塩水噴霧性試験法に従い、塩水噴霧試験機ST-11L(スガ試験機社製)で240時間、塩水噴霧試験を実施した。その後、クロスカット部からの錆およびフクレの発生を、下記基準に基づき、目視で評価した。
A:発生した錆またはフクレの最大幅がクロスカット部より2mm未満
B:発生した錆またはフクレの最大幅がクロスカット部より2mm以上4mm未満
C:発生した錆またはフクレの最大幅がクロスカット部より4mm以上
防錆性を評価した塗板をクロスカットに沿ってセロハン粘着テープを貼り、それを剥がし、クロスカットからの剥離幅を測った。剥離幅が1mm以内である場合を合格とした。
JIS K 5600−6−2の基準に従い、23℃×96時間水に浸漬させ、下記基準に基づき、目視で評価した。
A:全く異常なし
B:一部ワレ、はがれが見られる
C:大部分でワレ、はがれが見られる
A:反転が認められない
B:反転が1〜2箇所認められる。
C:反転が3〜9箇所認められる。
D:反転が10箇所以上認められる
上塗り塗料組成物を塗装した直後の未乾燥の複層塗膜外観を、下記基準に基づき、目視で評価した。
A:ワキが発生個数が0個
B:ワキの発生個数が1〜9個
C:ワキの発生個数が10〜19個
D:ワキの発生個数が20個以上
得られた複層塗膜の光沢値(60°光沢値)を、多角度光沢計GS−4K(スガ試験機社製)により測定した。60°光沢値が80以上である場合を合格とし、85以上を優良とした。
塗装時のダストによる肌荒れの状態を、下記基準に基づき、目視で評価した。
A:全く異常なし
B:肌荒れが極わずかに認められる
C:肌荒れがわずかに認められる
D:肌荒れが顕著に認められる
Claims (7)
- 被塗物上に、下塗り塗料組成物を塗装して、未乾燥の下塗り塗膜を形成する、下塗り塗膜形成工程、
得られた未乾燥の下塗り塗膜の上に、上塗り塗料組成物を、ウェットオンウェットで塗装し、未乾燥の上塗り塗膜を形成する、上塗り塗膜形成工程、および
得られた未乾燥の下塗り塗膜および未乾燥の上塗り塗膜を同時に乾燥させて複層塗膜を形成する、乾燥工程、を包含する、複層塗膜形成方法であって、
該下塗り塗料組成物がアクリル樹脂(A−1)とエポキシ樹脂(C)とを含む塗膜形成樹脂、イソシアネート化合物(D−1)を含む硬化剤および表面調整剤(E―1)を含んでおり、
アクリル樹脂(A−1)、エポキシ樹脂(C)、イソシアネート化合物(D−1)および表面調整剤(E―1)の固形分比率は、アクリル樹脂(A−1)25〜70質量%、エポキシ樹脂(C)5〜30質量%、イソシアネート化合物(D−1)20〜60質量%および表面調整剤(E―1)0.01〜5質量%であり、
該上塗り塗料組成物が、アクリル樹脂(A−2)を含む塗膜形成樹脂、イソシアネート化合物(D−2)を含む硬化剤および表面調整剤(E―2)を含んでおり、
アクリル樹脂(A−2)、イソシアネート化合物(D−2)および表面調整剤(E―2)の固形分比率は、アクリル樹脂(A−2)30〜70質量%、イソシアネート化合物(D−2)20〜60質量%および表面調整剤(E―2)0.01〜5質量%であり、
前記下塗り塗料組成物の表面張力の値(γ1)から、前記上塗り塗料組成物の表面張力の値(γ2)を、差し引いた値であるΔγ(γ1−γ2)が−2〜8mN/mであり、かつ、
前記下塗り塗料組成物および上塗り塗料組成物がラメラ長4mm以下を有する、複層塗膜形成方法。 - 前記アクリル樹脂(A−1)および前記アクリル樹脂(A−2)が、いずれも固形分水酸基価50〜250mgKOH/gであり、前記エポキシ樹脂(C)がエポキシ当量100〜1000g/eqである、請求項1に記載の複層塗膜形成方法。
- 前記下塗り塗料組成物に含まれる塗膜形成樹脂が、さらに、ポリエステル樹脂(B−1)を含んでおり、
前記アクリル樹脂(A−1)、ポリエステル樹脂(B−1)、エポキシ樹脂(C)、イソシアネート化合物(D−1)および表面調整剤(E―1)の固形分比率は、アクリル樹脂(A−1)25〜50質量%、ポリエステル樹脂(B−1)5〜30質量%、エポキシ樹脂(C)5〜25質量%、イソシアネート化合物(D−1)20〜50質量%および表面調整剤(E―1)0.01〜5質量%であり、
前記上塗り塗料組成物に含まれる塗膜形成樹脂が、さらに、ポリエステル樹脂(B−2)を含んでおり、
前記アクリル樹脂(A−2)、ポリエステル樹脂(B−2)、イソシアネート化合物(D−2)および表面調整剤(E―2)の固形分比率は、アクリル樹脂(A−2)30〜60質量%、ポリエステル樹脂(B−2)5〜35質量%、イソシアネート化合物(D−2)20〜50質量%および表面調整剤(E―2)0.01〜5質量%である、請求項1または2に記載の複層塗膜形成方法。 - 前記ポリエステル樹脂(B−1)および(B−2)が、いずれも固形分水酸基価40〜350mgKOH/gを有する請求項3に記載の複層塗膜形成方法。
- 前記表面調整剤(E―1)がアクリル系表面調整剤およびシリコン系表面調整剤のうち、少なくとも一方を含んでおり、かつ、前記表面調整剤(E―2)がアクリル系表面調整剤を含んでいる、請求項1〜4のうちいずれか1つに記載の複層塗膜形成方法。
- 前記下塗り塗膜形成工程における塗装と前記上塗り塗膜形成工程における塗装との時間間隔が0〜60分である、請求項1〜5のいずれか1つに記載の複層塗膜形成方法。
- 前記被塗物が建設機械または産業機械である、請求項1〜6いずれか1つに記載の複層塗膜形成方法。
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