JP5315753B2 - 流体噴射装置および流体噴射方法 - Google Patents

流体噴射装置および流体噴射方法 Download PDF

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Description

本発明は、モータ制御装置、流体噴射装置およびモータ制御方法に関する。
インクジェット式のプリンタの中には、用紙サイズがA2以上の大判のものを用いるタ
イプがある。かかる大判のインクジェットプリンタにおいては、単票紙以外に、いわゆる
ロール紙(以下、用紙が巻回されたいわゆるロール紙をロール体とし、ロール体から引き
出される部分を用紙とする。)が利用されることが多い。ロール体からの用紙の引き出し
は、現状、紙送りモータ(PFモータ)によって為されている。このとき、PFモータは
、PID制御によって制御駆動させられる。このようなロール体を用いるプリンタとして
は、特許文献1に示すものがある。また、PID制御を行うプリンタとしては、特許文献
2〜4に示すものがある。
特開2007−290866号公報 特開2006−240212号公報 特開2003−79177号公報 特開2003−48351号公報
大判のプリンタにおけるロール体は、その重量が重く、従ってロール体から用紙を引き
出すときの負荷は、大きなものとなっている。そのため、PFモータからの駆動のみでは
、用紙が破断する等の可能性がある。そこで、ロール体を回転駆動させるためのロールモ
ータを設け、PFモータと共に、ロールモータを駆動させて、用紙を引き出すようにして
いる機種が開発されつつある。
ここで、ロール体から用紙を引き出すにつれて、ロール体の直径および重量は変動して
いく。そのため、ロールモータに対して、一定の出力(電力)を与える場合には、ロール
体の直径および重量の変動に伴って、PFモータによって回転駆動させられる搬送ローラ
対とロール体との間の用紙のテンションが大きく変動する。また、例えばロール体の重量
が小さくなり過ぎる場合には、搬送ローラ対とロール体との間の用紙にほとんどテンショ
ンが作用せず、用紙が弛んでしまう、という事態も生じ兼ねない。以上述べたようなテン
ションの変動が、用紙の印刷中に発生すると、印刷画質に影響を与えかねない。
本発明は上記の事情にもとづきなされたもので、その目的とするところは、第1モータ
と第2モータとの駆動によってロール紙を下流側に送る際に、ロール体の使用如何に拘わ
らずテンションの変動を防止することが可能なモータ制御装置、流体噴射装置およびモー
タ制御方法を提供しよう、とするものである。
上記課題を解決するために、本発明は、ロール紙が巻回されているロール体から当該ロ
ール紙を供給するべくロール体を回転させるための駆動力を与える第1モータと、ロール
紙の供給方向に沿ってロール体よりも下流側に設けられる搬送駆動ローラであってロール
紙を搬送させるための搬送駆動ローラを駆動させる駆動力を与える第2モータと、第2モ
ータを駆動させずに第1モータのみを駆動させる際に当該第1モータに作用する負荷と第
1モータの駆動速度との関係を測定する負荷測定手段と、いずれかのタイミングにおいて
第1モータと第2モータとを同時に駆動させると共に、その制御の際に負荷測定手段での
測定結果と第2モータの駆動速度とに基づく補間出力を第1モータに対して与えて、第2
モータの駆動によるロール紙の下流側に向かう搬送を実行させるモータ制御手段と、を具
備するものである。
このように構成する場合、負荷測定手段によって、第2モータを駆動させずに第1モー
タのみを駆動させる際に当該第1モータに作用する負荷と第1モータの駆動速度との関係
が測定される。そして、モータ制御手段では、負荷測定手段での測定結果と、第2モータ
の駆動速度とに基づく補間出力が第1モータに与えられる。それにより、ロール紙は破断
せずに下流側に良好に送ることが可能となる。また、補間出力は、第1モータに作用する
負荷に関して、第1モータの駆動速度との関係から求められるので、第2モータの駆動速
度が変動しても、第1モータには、第1モータの駆動速度の変動に追従する状態で補間出
力が与えられ、ロール紙に作用するテンションの変動が少ない状態が実現可能となる。
また、他の発明は、上述の発明に加えて更に、モータ制御手段で第1モータと第2モー
タとが同時に駆動される場合において、当該モータ制御手段は、第1モータに与える補間
出力に関してロール紙に所定のテンションを与えるための制御を行うものである。
このように構成する場合、第1モータと第2モータとが同時に駆動され、速度変動が生
じる場合であっても、ロール紙には、常に所定のテンションが与えられる。そのため、ロ
ール紙が弛むことがないばかりか、常に所定のテンションが作用することによって、搬送
の下流側における印刷等の所定の処理の品質を向上させることが可能となる。
また、他の発明は、上述の各発明に加えて更に、モータ制御手段は、第2モータの駆動
によるロール紙の送り量が、第1モータの駆動によるロール紙の送り量よりも大きくなる
状態で、第1モータおよび第2モータの駆動を制御するものである。
このように構成する場合、ロール紙には、第1モータと第2モータとの間の送り量の差
を起因とするテンションが付与される。そのため、ロール紙が弛むことがないばかりか、
常に所定のテンションが作用することによって、搬送の下流側における印刷等の所定の処
理の品質を向上させることが可能となる。
さらに、他の発明は、上述の各発明に係るモータ制御装置を具備すると共に、ロール紙
に対して流体を噴射する流体噴射ヘッドを備える流体噴射装置としたものである。
このように構成する場合、ロール体からロール紙が引き出されるタイプの流体噴射装置
において、モータ制御手段では、負荷測定手段での測定結果と、第2モータの駆動速度と
に基づく補間出力が第1モータに与えられる。それにより、ロール紙は破断せずに下流側
に良好に送ることが可能となる。また、補間出力は、第1モータに作用する負荷に関して
、第1モータの駆動速度との関係から求められるので、第2モータの駆動速度が変動して
も、第1モータには、第1モータの駆動速度の変動に追従する状態で補間出力が与えられ
、ロール紙に作用するテンションの変動が少ない状態が実現可能となる。
また、他の発明は、ロール紙が巻回されているロール体から当該ロール紙を供給するべ
くロール体を回転させるための駆動力を与える第1モータを駆動させると共に、ロール紙
の供給方向に沿ってロール体よりも下流側に設けられる搬送駆動ローラであってロール紙
を搬送させるための搬送駆動ローラを駆動させる駆動力を与える第2モータを駆動させな
い状態において第1モータに作用する負荷と第1モータの駆動速度との関係を測定する負
荷測定工程と、いずれかのタイミングにおいて第1モータと第2モータとを同時に駆動さ
せると共に、その制御の際に負荷測定工程での測定結果と第2モータの駆動速度とに基づ
く補間出力を第1モータに対して与えて、第2モータの駆動によるロール紙の下流側に向
かう搬送を実行させるモータ制御工程と、を具備するものである。
このように構成する場合、負荷測定工程によって、第2モータを駆動させずに第1モー
タのみを駆動させる際に当該第1モータに作用する負荷と第1モータの駆動速度との関係
が測定される。そして、モータ制御工程では、負荷測定工程での測定結果と、第2モータ
の駆動速度とに基づく補間出力が第1モータに与えられる。それにより、ロール紙は破断
せずに下流側に良好に送ることが可能となる。また、補間出力は、第1モータに作用する
負荷に関して、第1モータの駆動速度との関係から求められるので、第2モータの駆動速
度が変動しても、第1モータには、第2モータの駆動速度の変動に追従する状態で補間出
力が与えられ、ロール紙に作用するテンションの変動が少ない状態が実現可能となる。
以下、本発明の一実施の形態に係るモータ制御装置(主として制御部100)を備える
、流体噴射装置としてのプリンタ10および駆動制御方法について、図1から図11に基
づいて説明する。なお、本実施の形態のプリンタ10は、例えばJIS規格のA2以上の
サイズを有する、サイズの大きな用紙を印刷するためのプリンタである。また、本実施の
形態におけるプリンタは、インクジェット式のプリンタであるが、かかるインクジェット
式プリンタは、インクを吐出して印刷可能な装置であれば、いかなる吐出方法を採用した
装置でも良い。
また、以下の説明においては、下方側とは、プリンタ10が設置される側を指し、上方
側とは、設置される側から離間する側を指す。また、用紙Pが供給される側を給送側(後
端側)、用紙Pが排出される側を排紙側(手前側)として説明する。
<プリンタ10の概略構成>
図1に示すように、プリンタ10は、一対の脚部11と、当該脚部11に支持される本
体部20とを有している。脚部11には、支柱12が設けられていると共に、回転自在な
キャスタ13がキャスタ支持部14に取り付けられている。そのため、プリンタ10は、
ユーザが自在に移動させることを可能としている。
本体部20は、不図示のシャーシに支持される状態で、内部の各種機器が搭載されてお
り、それらが外部ケース21によって覆われている。また、図2に示すように、本体部2
0には、DCモータを用いる駆動系として、ロール駆動機構30と、キャリッジ駆動機構
40と、用紙搬送機構50とが設けられている。これらのうち、ロール駆動機構30は、
本体部20に存在するロール搭載部22に設けられている。ロール搭載部22は、図1に
示すように、本体部20のうち、背面側かつ上方側に設けられていて、上述の外部ケース
21を構成する一要素である開閉蓋23を開くことにより、その内部にロール体RPを搭
載し、ロール駆動機構30によってロール体RPを回転駆動させることが可能となってい
る。
また、ロール体RPを回転させるためのロール駆動機構30は、図2および図3に示す
ように、回転ホルダ31と、ギヤ輪列32と、ロールモータ33と、回転検出部34とを
有している。これらのうち、回転ホルダ31は、ロール体RPに設けられている中空孔R
P1の両端側から挿入されるものであり、ロール体RPを両端側から支持すべく、一対設
けられている。また、ロールモータ33は、第1モータに対応する。このロールモータ3
3は、一対の回転ホルダ31のうち、一端側に位置する回転ホルダ31aに対して、ギヤ
輪列32を介して駆動力(回転力)を与えるものである。さらに、回転検出部34は、本
実施の形態ではロータリエンコーダを用いている。そのため、回転検出部34は、円盤状
スケール34aと、ロータリセンサ34bとを具備している。円盤状スケール34aは、
その周方向に沿って一定の間隔毎に、光を透過させる透光部と、光の透過を遮断する遮光
部とを有している。また、ロータリセンサ34bは、不図示の発光素子と、同じく不図示
の受光素子と、同じく不図示の信号処理回路を主要な構成要素としている。
なお、本実施の形態では、ロータリセンサ34bからの出力により、図4に示すような
、互いに位相が90度異なるパルス信号(A相のENC信号,B相のENC信号)が制御
部100に入力される。そのため、ロールモータ33が正転状態にあるのか、または逆転
状態にあるのかを、位相の進行/遅れによって検出可能となっている。
また、本体部20には、キャリッジ駆動機構40が設けられている。キャリッジ駆動機
構40は、インク供給/噴射機構の構成要素の一部ともなるキャリッジ41と、キャリッ
ジ軸42と、その他不図示のキャリッジモータ、ベルト等を具備している。
これらのうち、キャリッジ41は、各色のインク(流体に対応)を貯留するためのイン
クタンク43を具備していて、このインクタンク43には、図示しないチューブを介して
、本体部20の前面側に固定的に設けられているインクカートリッジ(図示省略)からイ
ンクが供給可能となっている。また、図2に示すように、キャリッジ41の下面には、イ
ンク滴を吐出可能な印刷ヘッド44(流体噴射ヘッドに対応)が設けられている。印刷ヘ
ッド44には、各インクに対応づけられた不図示のノズル列が設けられていて、このノズ
ル列を構成するノズルには、不図示のピエゾ素子が配置されている。このピエゾ素子の作
動により、インク通路の端部にあるノズルからインク滴を吐出することが可能となってい
る。
なお、これらキャリッジ41、インクタンク43、不図示のチューブ、インクカートリ
ッジ、印刷ヘッド44によって、インク供給/噴射機構が構成されている。また、印刷ヘ
ッド44は、ピエゾ素子を用いたピエゾ駆動方式に限られず、例えばインクをヒータで加
熱し、発生する泡の力を利用するヒータ方式、磁歪素子を用いる磁歪方式、ミストを電界
で制御するミスト方式等を採用しても良い。また、インクカートリッジ/インクタンク4
3に充填されるインクは、染料系インク/顔料系インク等、いずれの種類のインクを搭載
しても良い。
図2、図5等に示すように、用紙搬送機構50は、搬送ローラ対51と、ギヤ輪列52
と、PFモータ53と、回転検出部54とを有している。搬送ローラ対51は、搬送駆動
ローラ51aと、搬送従動ローラ51bとを具備していて、これらの間で、ロール体RP
から引き出される用紙P(ロール紙に対応)を挟持可能となっている。また、PFモータ
53は、搬送駆動ローラ51aに対して、ギヤ輪列52を介して駆動力(回転力)を与え
るものである。さらに、回転検出部54は、本実施の形態ではロータリエンコーダを用い
ていて、上述の回転検出部34と同様に、円盤状スケール54aと、ロータリセンサ54
bとを具備し、図4に示すようなパルス信号を出力可能としている。
また、搬送ローラ対51よりも下流側(排紙側)には、プラテン55が設けられていて
、用紙Pは当該プラテン55上をガイドさせられる。また、プラテン55には、印刷ヘッ
ド44が対向するように配設されている。このプラテン55には、吸引孔55aが形成さ
れている。一方、吸引孔55aは、吸引ファン56に連通可能に設けられていて、吸引フ
ァン56が作動することによって、印刷ヘッド44側から吸引孔55aを介して空気が吸
引される。それにより、プラテン55上に用紙Pが存在する場合には、当該用紙Pを吸引
保持することが可能となっている。なお、プリンタ10は、その他、用紙Pの幅を検出す
る紙幅検出センサ等、その他の各種センサを備えている。
<制御部に関して>
次に、制御部100について、図6、図7等に基づいて説明する。制御部100は、各
種の制御を行う部分である。この制御部100は、後述するようなロールモータ33、P
Fモータ53の制御を実現するための部分であり、モータ制御装置、負荷制御手段、モー
タ制御手段として機能する部分である。この制御部100には、上述のロータリセンサ3
4b,54b、不図示のリニアセンサ、不図示の紙幅検出センサ、不図示のギャップ検出
センサ、プリンタ10の電源をオン/オフする電源スイッチ等の各出力信号が入力される
図2に示すように、制御部100は、CPU101、ROM102、RAM103、P
ROM104、ASIC105、モータドライバ106等を具備していて、これらが例え
ばバス等の伝送路107を介して接続されている。また、制御部100は、コンピュータ
COMに接続されている。そして、これらのハードウエアと、ROM102やPROM1
04に記憶されているソフトウエアおよび/またはデータの協働、または特有の処理を行
う回路や構成要素の追加等によって、図6のブロック図に示すような、主制御部110と
、ロールモータ制御部120と、PFモータ制御部130とが実現される。
これらのうち、主制御部110は、後述するようなロールモータ33とPFモータ53
との同期駆動(シンクロ駆動)を実現すべく、ロールモータ制御部120と、PFモータ
制御部130との両方に対して指令を与える。また、ロールモータ制御部120と、PF
モータ制御部130の両方には、それぞれ出力演算部140a,140b(以下、両者を
区別する必要がない場合には、単に出力演算部140と表記する。)が実現される。出力
演算部140aにおいては、PID演算は行わずに、後述するようなモータ実出力値Dx
を算出するための出力制御を行う。また、出力演算部140bにおいては、PID制御を
行うためのPID演算が実行される。まず、最初に、図7に基づいて、これらPID演算
を行うための出力演算部140bのブロック図について先に説明する。
図7に示すように、出力演算部140bは、位置演算部141と、速度演算部142と
、第1減算部143と、目標速度発生部144と、第2減算部145と、比例要素146
と、積分要素147と、微分要素148と、加算部150と、PWM信号出力部152と
、タイマ153とを具備している。
これらのうち、位置演算部141は、ロータリセンサ34b,54bから入力される、
矩形波である出力信号(図4参照)のエッジをカウントすることにより、用紙Pの送り量
を算出する。また、速度演算部142には、ロータリセンサ34b,54bから入力され
る、矩形波である出力信号のエッジをカウントすると共に、タイマ153で計測される時
間(周期)に関する信号も入力される。そして、カウントしたエッジと時間(周期)に基
づいて、用紙Pの送り速度を算出する。
また、第1減算部143は、位置演算部141から出力される送り量(現在位置)に関
する情報と、ROM102またはPROM104等のメモリから出力される目標位置(目
標停止位置)に関する情報とに基づき、目標位置(目標停止位置)から現在位置を減算し
て位置偏差を算出する。目標速度発生部144には、第1減算部143から出力される位
置偏差に関する情報が入力される。そして、目標速度発生部144は、この位置偏差に応
じた目標速度に関する情報を出力する。なお、この目標速度に関する情報は、図8に示す
ような速度テーブルに関するものである。図8に示すように、速度テーブルは、ロールモ
ータ33に関する速度テーブルRollと、PFモータ53に関する速度テーブルPFの
2つが存在する。
第2減算部145は、目標速度から現在のモータ(ロールモータ33またはPFモータ
53)の送り速度(現在速度)を減算して、速度偏差ΔVを算出し、比例要素146、積
分要素147および微分要素148にそれぞれ出力する。比例要素146、積分要素14
7および微分要素148は、入力される速度偏差ΔVに基づいて、以下の比例制御値QP
と、積分制御値QIと、微分制御値QDとを算出する。
QP(j)=ΔV(j)×Kp …(式1)
QI(j)=QI(j−1)+ΔV(j)×Ki …(式2)
QD(j)={ΔV(j)−ΔV(j−1)}×Kd …(式3)
ここで、jは、時間であり、Kpは比例ゲイン、Kiは積分ゲイン、Kdは微分ゲイン
である。
加算部150は、比例要素146、積分要素147、および微分要素148から出力さ
れる各制御値を加算し、その加算により求めた制御値の和(合計値;Qpid)をPWM
信号出力部152へ出力する。
PWM信号出力部152には、加算部150から出力される制御値Qpidが入力され
る。そして、PWM信号出力部152では、供給される制御値Qpidを換算して得たDu
ty値のPWM信号を出力する。タイマ153は、不図示のクロックからの信号を受信する
。そして、例えば100μsec等のような、所定のPID演算周期が到来すると、その
PID演算周期ごとに、速度演算部142にタイマ信号を出力する。
また、モータドライバ106は、PWM信号出力部152から出力されるPWM信号に
基づいて、ロールモータ33またはPFモータ53をPWM制御にて、制御駆動する。
続いて、出力演算部120aに関して説明する。出力演算部120aは、次に述べるモ
ータ実出力値Dx(このモータ実出力値Dxが補間出力に対応)を求めるための計算を実
行する。このモータ実出力値Dxの計算は、(式4)に示すように、基本的には、用紙P
が弛まないようにするテンションを与える規定のテンションFを与えるのに必要なDuty値
であるDuty(f)を、ある速度Vnでロールモータ33を駆動させるのに必要なDuty値であ
るDuty(ro)から減算することにより求められる。
Dx=Duty(ro)−Duty(f)=aVn+b−(F×r/M)×Duty(max)/Ts
…(式4)
ここで、rはロール体RPの半径、Duty(max)はDuty値の最大値、Ktはロールモー
タ33のモータ定数、Eはロールモータ33に供給される電源電圧値、Mはギヤ輪列32
による減速比、Tsはロールモータ33の起動トルク、係数a,bは、以下の(式6)お
よび(式7)で定義される値である。上述の(式4)は、以下のようにして求められる。
なお、上述の(式4)において、(F×r/M)は、ギヤ輪列の減速比を考慮した、テ
ンションFによるトルクであり、この(F×r/M)というトルクをロールモータ33の
起動トルクTsで除算すると、無次元の比(Duty(max)を1とした場合に対する比)で
ある、(F×r/M)/Tsが得られる。そして、かかる無次元の比の(F×r/M)/
Tsに、Duty(max)を乗じることにより、テンションFを与えるのに必要なDuty値であ
るDuty(f)が算出される。
ここで、ロールモータ33は、PFモータ53の駆動によって、用紙Pを介して引っ張
られる。そのため、ロールモータ33は、結果的にはPFモータ53と同じ速度Vnで駆
動させられる。なお、ロールモータ33においては、ロータリセンサ54bで検出された
検出値に基づいて、速度Vnを算出している。
また、PFモータ53と同じ速度Vnで駆動させるべく、ロールモータ33に対し、当
該ロールモータ33を速度Vnで駆動させるのに必要なDuty値であるDuty(ro)を与える
場合、用紙Pは弛まず、かつロールモータ33とPFモータ53との間にテンションが作
用しない状態となる。そこで、ロールモータ33を速度Vnで駆動させるのに必要なDuty
値であるDuty(ro)から、テンションFを与えるのに必要なDuty値であるDuty(f)を減
じれば、用紙Pが弛まないようなテンションFを、当該用紙Pに与えることが可能となる
。以上のようにして、(式4)のモータ実出力値Dxが求められる。
<(式4)の係数a,bの算出に関して>
ある速度Vnでロールモータ33を駆動させるのに必要なDuty値を求めるために、メジ
ャメント動作を実行している。このメジャメント動作では、図9に示すように、低速側の
速度VLと高速側の速度VHとでロール体RPを回転駆動させる。そして、低速側の速度V
Lでロールモータ33を駆動させるのに必要なメジャメント値ave TiLと、高速側の速度
VHでロールモータ33を駆動させるのに必要なメジャメント値ave TiHを算出する。な
お、メジャメント値ave TiLとメジャメント値ave TiHは、それぞれの速度でPID制御
を行う場合における、積分要素127から出力される制御値の平均となっている。
図9に示すような一次式の関係から、ある速度Vnでロールモータ33を駆動させるた
めのDuty(ro)は、係数a,bを用いて容易に求められる。
Duty(ro)=aVn+b …(式6)
a=(ave TiH−ave TiL)/(VH−VL) …(式7)
b=ave TiH−(ave TiH−ave TiL)×VL/(VH−VL) …(式8)
以上のような(式7)、(式8)に基づいて、係数a,bが決定され、(式4)に反映
させられる。
<ロールモータ33とPFモータ53の制御方法>
以上のような構成を有するプリンタ10における、ロールモータ33とPFモータのシ
ンクロ駆動制御(スキュー取り)の方法について、図10の処理フローに基づきながら以
下に説明する。
まず、ロールモータ33とPFモータ53とを駆動させるのに先立って、メジャメント
動作を実行する(S01)。メジャメント動作においては、主制御部110からの指令に
基づいて、低速側と高速側の2つの速度VL,VHでロールモータ33を駆動させ、それに
よって上述したような(式4)における、係数a,bが求められる。なお、PFモータ5
3が駆動しない状態で、メジャメント動作は実行される。
続いて、PFモータ53の駆動による送り量LpfをPROM104等のメモリから読み
込む(S02)。送り量Lpfは、例えば用紙Pに対する印刷を、1パスだけ実行するのに
必要な値となっている。
S02で送り量Lpfが読み込まれると、主制御部110からの指令に基づいて、ロール
モータ33およびPFモータ53の駆動を開始させる(S03)。このとき、PFモータ
53は、図8に示すような駆動テーブルに従って、駆動させられるが、ロールモータ33
は、ロータリセンサ34bで検出される速度に関する検出値に基づいて、モータ実出力値
Dxが定められる。また、ロールモータ33およびPFモータ53の駆動に際しては、ロ
ールモータ33の駆動によって、当該ロールモータ33が何等駆動力を発生させない場合
よりも、用紙Pが引き出され易い状態となっている。
また、S03におけるロールモータ33およびPFモータ53の駆動に際しては、用紙
Pに、テンションFを作用させるように制御しつつ、駆動させることになる。このテンシ
ョンFの制御では、出力演算部140aでの上述したような計算によって、(式4)に示
すようなモータ実出力値Dxが求められる。そして、このモータ実出力値Dxでは、ある
速度Vnでロールモータ33を駆動させるのに必要なDuty値であるDuty(ro)から、用紙
Pが弛まないようにするテンションを与える規定のテンションFを与えるのに必要なDuty
値であるDuty(f)を減算している。このとき、ある速度Vnは、PFモータ53の駆動に
よりロールモータ33が用紙Pを介して引っ張られて、結果的に回転させられるときの駆
動速度である。以上のように、Duty(ro)からDuty(f)が減じられることにより、用紙
Pには、テンションFが及ぼされる状態となる。以上のようなS03の、テンション制御
しながらの駆動が進行すると、用紙Pは、テンションFが作用する状態で、印刷ヘッド4
4と対向する部位に送り込まれていく。
なお、上述のテンションFは、その値の調整が可能となっている。すなわち、用紙Pの
種類やサイズ、印刷特性等に応じて、テンションFの値を変数として調整可能となってい
る。
また、上述のようなS03の処理をしている際には、主制御部110は、所定のタイミ
ング毎に、予め定められている送り量Lpfだけ送られたか否かを判断する(S04)。
また、上述のS04において、予め定められている送り量Lpfだけ送られたと判断され
る場合(Yesの場合)、ロールモータ33およびPFモータ53の駆動を停止させる(
S05)。
続いて、印刷ヘッド44が不図示のキャリッジモータの駆動によって用紙Pの幅方向に
走査しつつ、印刷ヘッド44が駆動させられる(S06)。それにより、用紙Pに対して
、インク滴が付着して、1パス分の印刷が実行される。また、この1パス分の印刷が終了
すると、続いて、全てのパスの紙送りが終了したか否かを判断する(S07)。そして、
この判断において全てのパスの紙送りが終了したと判断される場合(Yesの場合)、一
連の処理が終了する。また、S07において、全てのパスの紙送りが終了していないと判
断される場合(Noの場合)、S02に戻り、一連の処理が継続する。
なお、上述のS04における判断において、予め定められている送り量Lpfだけ送られ
ていないと判断される場合(Noの場合)、S03に戻り、処理を継続する。
<本発明の適用による効果>
上述のような構成のプリンタ10によると、図9に示すようなメジャメント動作を実行
することによって、PFモータ53を駆動させずにロールモータ33のみを駆動させる際
における、ロールモータ33に作用する負荷と駆動速度との関係が測定される。そして、
制御部100では、図9に示すようなメジャメント動作と、PFモータ53の駆動速度と
に基づくモータ実出力値Dxが、ロールモータ33に与えられる。それにより、用紙Pは
破断せずに下流側に良好に送ることが可能となる。また、モータ実出力値Dxは、ロール
モータ33に作用する負荷に関して、図9に示すような関係からDuty(ro)を求め、その
Duty(ro)を反映させて算出されている。そのため、PFモータ53の駆動速度が変動し
ても、ロールモータ33には、その駆動速度の変動に追従する状態でモータ実出力値Dx
が与えられる。それにより、用紙Pを弛ませることがなくなり、しかも用紙Pに作用させ
るテンションFの変動が少ない状態が実現可能となる。
また、ロールモータ33、PFモータ53、およびこれらロールモータ33、PFモー
タ53に電力を与える電源等に個体差(バラ付き)が存在していても、上述のようなテン
ション制御により、用紙Pに作用するテンションFのバラ付きを抑えることが可能となる
。また、本実施の形態では、ロールモータ33とPFモータ53とが同時に駆動され、速
度変動が生じる場合であっても、用紙Pには、常に所定のテンションFが与えられる。そ
のため、用紙Pが弛むことがないばかりか、常に所定のテンションFが作用する。このよ
うに、一度テンションFをある値に設定すれば、その設定が有効な限りにおいて、常に安
定した所定のテンションFが用紙Pに作用する状態で、印刷が実行されると、当該用紙P
に対する印刷品質を向上させることが可能となる。
また、用紙Pの種類やサイズ、印刷特性等に応じて、テンションFの値を変数として調
整可能となっており、印刷に対する種々の要請に対応させた値にテンションFを設定する
ことができる。
また、本発明においては、PFモータ53の駆動による用紙Pの送り量が、ロールモー
タ33の駆動による用紙Pの送り量よりも大きくなる状態で、ロールモータ33およびP
Fモータ53の駆動を制御することができる。この場合、用紙Pには、ロールモータ33
とPF2モータ53との間の送り量の差を起因とするテンションFが付与される。そのた
め、用紙Pが弛むことがないばかりか、常に所定のテンションFが作用することによって
、用紙Pの搬送の下流側における印刷品質を向上させることが可能となる。
<変形例>
以上、本発明の一実施の形態について述べたが、本発明は、種々変形可能である。以下
、それについて述べる。上述の実施の形態においては、モータ制御装置は、プリンタ10
に設けられている場合について説明している。しかしながら、モータ制御装置は、プリン
タ10に設ける場合には限られず、ロール体(ロール紙)を用いるファックス等に適用す
るようにしても良い。また、上述の実施の形態では、用紙Pをロール紙としているが、用
紙P以外に、フィルム状の部材、樹脂製のシート、アルミ箔等としても良い。
また、上述の実施の形態では、出力信号(ENC信号)のレベル変化を検出する場合、
A相およびB相の2つのENC信号を用いている。しかしながら、出力信号のレベル変化
を検出するのに際して、1つのみのENC信号、または位相が互いに異なる3つ以上のE
NC信号を用いるように構成しても良い。
また、制御部100は、上述の実施の形態のものには限られず、例えばASIC105
のみでロールモータ33、PFモータ53の制御を司るように構成しても良く、また、こ
れら以外に種々の周辺機器が組み込まれた1チップマイコン等を組み合わせて、制御部1
00を構成するようにしても良い。
さらに、上述の実施の形態では、制御部100におけるPID制御は、速度に関して行
っているが、位置に関するPID制御を行うようにしても良い。また、PFモータ53の
制御は、PID制御には限られず、PI制御に本発明を適用するようにしても良い。
また、上述の実施の形態におけるプリンタ10は、スキャナ装置やコピー装置のような
、複合的な機器の一部であっても良い。さらに、上述の実施の形態においては、インクジ
ェット方式のプリンタ10に関して説明している。しかしながら、プリンタ10としては
、流体を噴射可能なものであれば、インクジェット方式のプリンタには限られない。例え
ば、ジェルジェット方式のプリンタ、トナー方式のプリンタ、ドットインパクト方式のプ
リンタ等、種々のプリンタに対して、本発明を適用することが可能である。
本発明の一実施の形態に係るプリンタの構成を示す斜視図である。 図1のプリンタの概略構成を示す図である。 ロール体を保持する回転ホルダの構成を示す斜視図である。 ENC信号を示す図である。 ロール体と搬送ローラ対、印刷ヘッドの位置関係を示す図である。 制御部の構成の一例を示すブロック図である。 PID演算部の概略構成を示すブロック図である。 速度テーブルの一例を示す図である。 メジャメント動作におけるDuty値と速度との関係を示す図である。 シンクロ駆動制御における動作フローを示す図である。 用紙にスキューが生じている状態を示す斜視図である。
符号の説明
10…プリンタ、20…本体部、30…ロール駆動機構、33…ロールモータ(第1モ
ータに対応、34,54…回転検出部、34b,54b…リニアセンサ、40…キャリッ
ジ駆動機構、44…印刷ヘッド(流体噴射ヘッドに対応)、50…用紙搬送機構、51…
搬送ローラ対、53…PFモータ(第2モータに対応)、100…制御部(モータ制御装
置、負荷測定手段、モータ制御手段に対応)、110…主制御部、120…ロールモータ
制御部、130…PFモータ制御部、140a,140b…出力演算部、RP…ロール体
、P…用紙(ウエブに対応)

Claims (4)

  1. ロール紙が巻回されているロール体から前記ロール紙を供給するべく前記ロール体を回転させるための駆動力を与える第1モータと、
    前記ロール体よりも下流側に設けられる搬送駆動ローラと、
    前記ロール紙を搬送させるための前記搬送駆動ローラを駆動させる駆動力を与える第2モータと、
    前記搬送駆動ローラよりも下流側に設けられ、前記ロール紙に対して流体を噴射する流体噴射ヘッドと、
    前記流体噴射ヘッドに対向するように設けられたプラテンと、
    前記第2モータを駆動させずに前記第1モータのみを駆動させる際に前記第1モータに作用する負荷と前記第1モータの駆動速度との関係を測定する負荷測定手段と、
    前記第1モータと前記第2モータとを同時に駆動させると共に、その制御の際に前記負荷測定手段での測定結果と前記第2モータの駆動速度とに基づく補間出力を前記第1モータに対して与えるモータ制御手段と、
    を備えることを特徴とする流体噴射装置。
  2. 前記モータ制御手段で前記第1モータと前記第2モータとが同時に駆動される場合において、前記モータ制御手段は、前記第1モータに与える補間出力に関して前記ロール紙に所定のテンションを与えるための制御を行うことを特徴とする請求項1記載の流体噴射装置。
  3. 前記モータ制御手段は、前記第2モータの駆動による前記ロール紙の送り量が、前記第1モータの駆動による前記ロール紙の送り量よりも大きくなる状態で、前記第1モータおよび前記第2モータの駆動を制御することを特徴とする請求項1から2記載の流体噴射装置。
  4. ロール紙が巻回されているロール体から前記ロール紙を供給するべく前記ロール体を回転させるための駆動力を与える第1モータを駆動させると共に、前記ロール紙を搬送させるための前記ロール体よりも下流側に設けられる搬送駆動ローラを駆動させる駆動力を与える第2モータを駆動させない状態において、前記第1モータに作用する負荷と前記第1モータの駆動速度との関係を測定する負荷測定工程と、
    前記第1モータと前記第2モータとを同時に駆動させると共に、その制御の際に前記負荷測定工程での測定結果と前記第2モータの駆動速度とに基づく補間出力を前記第1モータに対して与えるモータ制御工程と、
    前記ロール紙を搬送させるための前記搬送駆動ローラよりも下流側に設けられた流体噴射ヘッドに対向するように設けられたプラテン上に搬送された前記ロール紙に対して、前記流体噴射ヘッドにより前記流体を噴射させる流体噴射工程と、
    を備えることを特徴とする流体噴射方法。
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