本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
被搬送物を搬送方向に搬送する第1ローラーと、前記第1ローラーを回転させる駆動力を与える第1モーターと、前記第1ローラーよりも前記搬送方向の上流側に配置された第2ローラーと、前記第2ローラーを回転させる駆動力を与える第2モーターと、前記第1モーターを制御することによって前記第1ローラーを駆動させて前記被搬送物を前記搬送方向に搬送させる制御部であって、前記第1ローラーの駆動時に前記第1ローラーと前記第2ローラーとの間の前記被搬送物に生じる張力が一定となるように前記第2モーターのトルクを制御し、且つ、前記第1ローラーの停止時には前記第2モーターに所定のトルクを発生させる制御部と、を備えたことを特徴とする搬送装置が明らかとなる。
このような搬送装置によれば、第1ローラーの停止時における第1ローラーと第2ローラー間の張力の乱れを抑制できる。よって被搬送物の停止精度の向上を図ることができる。
かかる搬送装置であって、前記第2モーターはPWM制御されており、前記制御部は、前記第1ローラーの停止時に、そのときの前記第2モーターのデューティーを保持して前記所定のトルクを発生させようにしてもよい。
このような搬送装置によれば、簡易に停止精度の向上を図ることができる。
かかる搬送装置であって、前記第2モーターはPWM制御されており、前記制御部は、少なくとも、前記被搬送物が目標位置に到達するよりも前に前記第1モーターを速度フィードバック制御から位置フィードバック制御に切り替えを行い、前記第1モーターを前記位置フィードバック制御に切り替えてから所定時間経過後の前記第2モーターのデューティーを保持して前記所定のトルクを発生させようにしてもよい。
このような搬送装置によれば、第1ローラーが停止したか否か検出することなく、第2モーターに所定のトルクを発生させることができる。
かかる搬送装置であって、前記第2モーターはPWM制御されており、前記制御部は、前記張力を一定とする張力制御の終了時における前記第2モーターのデューティーよりも小さいデューティーを保持して前記所定のトルクを発生させようにしてもよい。
このような搬送装置によれば、消費電力の低減を図ることができ、また発熱を抑制することができる。
かかる搬送装置であって、前記第2モーターに前記所定のトルクを発生させるべく保持されるデューティ(DutyA)は、前記張力制御の終了時におけるデューティー(DutyB)と積分減算量N(0〜128)を用いて
DutyA=DutyB−(DutyB×N)/128
であることが望ましい。
また、かかる搬送装置と、前記搬送装置によって目標位置に搬送された前記被搬送物に印刷を行う印刷部と、を備えたことを特徴とする印刷装置が明らかとなる。
このような印刷装置によれば、被搬送物の停止精度を高められるので、画質の向上を図ることができる。
また、被搬送物を搬送方向に搬送する第1ローラーと、前記第1ローラーを回転させる駆動力を与える第1モーターと、前記第1ローラーよりも前記搬送方向の上流側に配置された第2ローラーと、前記第2ローラーを回転させる駆動力を与える第2モーターとを有する搬送装置による搬送方法であって、前記第1モーターによって前記第1ローラーを駆動させて前記被搬送物を前記搬送方向に搬送することと、前記第1ローラーの駆動中に前記第1ローラーと前記第2ローラーとの間の前記被搬送物に生じる張力が一定となるように前記第2モーターのトルクを制御することと、前記第1ローラーの停止時に前記第2モーターに所定のトルクを発生させることと、を有することを特徴とする搬送方法が明らかとなる。
===第1実施形態===
≪プリンターの概略構成について≫
以下、一実施形態に係る搬送装置(主として制御部100と媒体搬送機構50)を備えるインクジェットプリンター(以下、プリンター10とよぶ)を例に挙げて説明する。なお、本実施形態のプリンター10は、サイズの大きな媒体(例えばJIS規格のA2以上のサイズの印刷用紙)に印刷をすることができるプリンターである。
また、以下の説明においては、下方側とは、プリンター10が設置される側を指し、上方側とは、設置される側から離間する側を指す。また、媒体が供給される側を供給側(後端側)、媒体が排出される側を排紙側(手前側)として説明する。
図1は、本発実施形態にかかるプリンター10の外観の構成例を示す図である。図2は、図1のプリンター10におけるDCモーターを用いる駆動系と制御系の関係を示す図である。図3は、回転ホルダ31と、ロールモーター33の外観の構成例を示す図である。
この例の場合、プリンター10は、一対の脚部11と、当該脚部11に支持される本体部20とを有している。脚部11には、支柱12が設けられていると共に、回転自在なキャスタ13がキャスタ支持部14に取り付けられている。
本体部20は、不図示のシャーシに支持される状態で、内部の各種機器が搭載されており、それらが外部ケース21によって覆われている。また、図2に示すように、本体部20には、DCモーターを用いる駆動系として、ロール体駆動機構30と、キャリッジ駆動機構40と、媒体搬送機構50と、搬送調整機構60とが設けられている。
ロール体駆動機構30は、本体部20に存在するロール搭載部22に設けられている。ロール搭載部22は、図1に示すように、本体部20のうち、背面側かつ上方側に設けられていて、上述の外部ケース21を構成する一要素である開閉蓋23を開くことにより、その内部にロール体RPを搭載し、ロール体駆動機構30によってロール体RPを回転駆動させることが可能となっている。
また、ロール体RPを回転させるためのロール体駆動機構30は、図2及び図3に示すように、回転ホルダ31と、ギア輪列32と、ロールモーター33を有している。回転ホルダ31は、ロール体RPに設けられている中空孔RP1の両端側から挿入されるものであり、ロール体RPを両端側から支持すべく、一対設けられている。ロール体RPには媒体(例えば用紙P)がロール状に巻かれており、このロール体RPが回転することにより、印刷に使用される分の用紙Pが引き出され、媒体搬送機構50や搬送調整機構60に供給される。
ロールモーター33は、一対の回転ホルダ31のうち、一端側に位置する回転ホルダ31aに対して、ギア輪列32を介して駆動力(回転力)を与えるものである。
ロールモーター33は回転方向を自在に変更することができる。以下において、用紙Pを供給方向(以下、搬送方向ともいう)に送り出す際のロールモーター33の回転の向きを正転方向とし、その逆方向の回転を逆転方向と称する。
キャリッジ駆動機構40は、インク供給/吐出機構の構成要素の一部ともなるキャリッジ41と、キャリッジ軸42と、その他不図示のキャリッジモーター、ベルト等を具備している。
キャリッジ41は、各色のインクを貯留するためのインクタンク43を具備していて、このインクタンク43には、不図示のチューブを介して、本体部20の前面側に固定的に設けられているインクカートリッジ(図示省略)からインクが供給可能となっている。また、図2に示すように、キャリッジ41の下面には、インク滴を吐出可能な印刷ヘッド44(印刷部に相当する)が設けられている。印刷ヘッド44には、各インクに対応づけられた不図示のノズル列が設けられていて、このノズル列を構成するノズルには、ピエゾ素子が配置されている。このピエゾ素子の作動により、インク通路の端部にあるノズルからインク滴を吐出することが可能となっている。
なお、これらキャリッジ41、インクタンク43、印刷ヘッド44、不図示のチューブ、インクカートリッジによって、インク供給/吐出機構が構成されている。また、印刷ヘッド44は、ピエゾ素子を用いたピエゾ駆動方式に限られず、例えばインクをヒーターで加熱し、発生する泡の力を利用するヒーター方式、磁歪素子を用いる磁歪方式、ミストを電界で制御するミスト方式等を採用しても良い。また、インクカートリッジ/インクタンク43に充填されるインクは、染料系インク/顔料系インク等、いずれの種類のインクを搭載しても良い。
図4は、ロール体RPから搬送される用紙Pと搬送ローラー対51と搬送調整ローラー対61、及び印刷ヘッド44の位置関係を示す図である。
媒体搬送機構50は、図2及び図4に示すように、搬送ローラー対51と、ギア輪列52と、PFモーター53と、回転検出部54とを有している。搬送ローラー対51は、搬送ローラー51a(第1ローラーに相当)と、搬送従動ローラー51bとを具備していて、これらの間で、ロール体RPから引き出され搬送される用紙Pを挟持可能となっている。
PFモーター53は、搬送ローラー51aに対して、ギア輪列52を介して駆動力(回転力)を与えるものである。すなわち、PFモーター53は、搬送ローラー51aを回転させる駆動力を与えるモーター(第1モーター)に相当する。PFモーター53は、ロールモーター33と同様に回転方向を自在に変更することができる。以下において、用紙Pを搬送方向に送り出す際のPFモーター53の回転の向きを正転方向とし、その逆方向の回転を逆転方向と称する。
回転検出部54は、本実施形態ではロータリーエンコーダーを用いており、円盤状スケール54aと、ロータリーセンサー54bとを具備している。そして、回転検出部54はPFモーター53(言い換えると搬送ローラー51a)の回転量を検出する。なお、回転検出部54(ロータリーエンコーダー)の詳細については後述する。
搬送ローラー対51よりも搬送方向の下流側(排紙側)には、プラテン55が設けられていて、用紙Pは当該プラテン55上をガイドさせられる(図4参照)。また、プラテン55の上方側には、印刷ヘッド44が対向するように配設されている。このプラテン55には、吸引孔55aが形成されている。一方、吸引孔55aは、吸引ファン56に連通可能に設けられていて、吸引ファン56が作動することによって、印刷ヘッド44側から吸引孔55aを介して空気が吸引される。それにより、プラテン55上に用紙Pが存在する場合には、用紙Pを吸引保持することが可能となっている。なお、プリンター10は、その他、用紙Pの幅を検出する媒体幅検出センサー等、その他の各種センサーを備えている。
搬送調整機構60の構成は媒体搬送機構50とほぼ同様であり、図2に示すように、搬送調整ローラー対61と、ギア輪列62と、FCモーター63と、回転検出部64とを有している。搬送調整ローラー対61は、搬送調整ローラー61a(第2ローラーに相当)と、調整従動ローラー61bとを具備していて、これらの間で、ロール体RPから引き出される用紙Pを挟持可能となっている。FCモーター63は、搬送調整ローラー61aに対して、ギア輪列62を介して駆動力(回転力)を与える。すなわち、FCモーター63は、搬送調整ローラー61aを回転させる駆動力を与えるモーター(第2モーター)に相当する。FCモーター63は、ロールモーター33と同様に回転方向を自在に変更することができる。以下において、用紙Pを搬送方向に送り出す際のFCモーター63の回転の向きを正転方向とし、その逆方向の回転を逆転方向と称する。回転検出部64は、回転検出部54と同様のロータリーエンコーダーであり、円盤状スケール64aと、ロータリーセンサー64bとを具備している。そして回転検出部64は、FCモーター63(搬送調整ローラー61a)の回転量を検出する。
搬送調整機構60(搬送調整ローラー対61)はロール体RPと搬送ローラー対51との間(すなわち搬送ローラー51aよりも搬送方向の上流側)に配置され、用紙Pの搬送量を調整する機能を有する。用紙Pの搬送調整についての詳細は後述する。
搬送調整ローラー対61とロール体RPとの間には弛みセンサー68が設けられている。図4に示すように、弛みセンサー68は用紙Pの下方側に設置されている。この弛みセンサー68は、搬送調整ローラー対61とロール体RPとの間において、用紙Pの上下方向の位置(弛みセンサー68と用紙Pとの上下方向の相対位置)を検出可能なセンサーである。弛みセンサー68を用いることによって、用紙Pが弛まない状態で(張った状態で)搬送される場合の上下方向の搬送位置に対して、どれだけ弛んでいるかを表す「弛み量」を取得することができる。
≪制御部について≫
図5は、制御部100の機能的構成例を示すブロック図である。制御部100には媒体搬送機構50の回転検出部54,搬送調整機構60の回転検出部64、弛みセンサー68、及び不図示のリニアセンサーの出力信号が入力される。他にも、紙幅検出センサー、ギャップ検出センサー、プリンター10の電源をオン/オフする電源スイッチ等(全て不図示)の各出力信号が入力される。
なお、図2に示すように、制御部100は、CPU101、ROM102、RAM103、PROM104、ASIC105、モータードライバー106等を具備していて、これらが例えばバス等の伝送路107を介して相互に接続されている。また、制御部100は、コンピューターCOMに接続されている。そして、これらのハードウエアと、ROM102やPROM104に記憶されているソフトウエア及び/又はデータの協働、又は特有の処理を行う回路や構成要素の追加等によって、図5に示すような、主制御部110と、ロールモーター制御部111と、PFモーター制御部112と、FCモーター制御部113とが実現される。
主制御部110は、ロールモーター制御部111、PFモーター制御部112、及びFCモーター制御部113の動作を制御し、用紙Pを搬送方向に搬送する処理を行う。
ロールモーター制御部111は、弛みセンサー68の出力信号に基づいて、プリンター10の媒体搬送機構50に適正な量の用紙Pを供給(搬送)するように、ロールモーター33の駆動を制御する。具体的には、ロールモーター制御部111は、ロール体RPと搬送調整ローラー61aの間で用紙Pが所定量弛むようにロールモーター33を制御して、ロール体RPと搬送調整ローラー61aとの間の用紙Pにテンションが生じないようにしている。
PFモーター制御部112は、回転検出部54の出力信号に基づいて、PFモーター53の駆動を制御する。これによって搬送ローラー51aの回転量を制御し、用紙Pを搬送方向に搬送する。
FCモーター制御部113は、回転検出部64の出力信号に基づいて、FCモーター63の駆動を制御する。これによって搬送調整ローラー61aの回転量を制御し、後述するように、搬送調整ローラー61aと搬送ローラー51a間の用紙Pに生じるテンション(張力)を調整する。
≪印刷動作について≫
プリンター10がコンピューターCOMから印刷データを受信すると、制御部100は、ロール体駆動機構30やキャリッジ駆動機構40等の各ユニットを制御することにより、給紙処理・ドット形成処理・搬送処理等を行う。
給紙処理は、印刷すべき媒体(用紙P)をロール体RPからプリンター10内に供給し、印刷開始位置(頭出し位置とも言う)に紙を位置決めする処理である。制御部100は、ロール体RPを正転方向に回転させ、用紙Pを搬送調整ローラー61a及び搬送ローラー51aまで送る。続いて、搬送調整ローラー61a及び搬送ローラー51aを回転させ、ロール体RPから送られてきた用紙Pを印刷開始位置に位置決めする。
ドット形成処理は、用紙Pの搬送方向と交差する方向(以下、移動方向とも呼ぶ)に沿って移動する印刷ヘッド44からインクを断続的に吐出させ、用紙P上にインクドットを形成(印刷)する処理である。制御部100は、キャリッジ41を移動方向に移動させ、キャリッジ41が移動している間に、印刷データに基づいて印刷ヘッド44からインクを吐出させる。吐出されたインク滴が用紙P上に着弾するとドットが形成され、用紙P上には移動方向に沿った複数のドットからなるドットラインが形成される。
搬送処理は、用紙Pを印刷ヘッド44に対して搬送方向に沿って相対的に移動させる処理である。制御部100は、搬送ローラー51aを回転させて用紙Pを搬送方向に搬送する。この搬送処理により、印刷ヘッド44は、先ほどのドット形成処理によって形成されたドットの位置とは異なる位置に、ドットを形成することが可能になる。搬送時の用紙Pの送り量の制御については後で説明する。
制御部100は印刷すべきデータがなくなるまで、ドット形成処理と搬送処理とを交互に繰り返し、用紙Pに画像を印刷する。
≪回転検出部54について≫
図6は、回転検出部54の構成を模式的に示した説明図である。図6に示した回転検出部54は、上述したように円盤状スケール54aと、ロータリーセンサー54bを備えている。また、ロータリーセンサー54bは、発光ダイオード541と、コリメーターレンズ542と、検出処理部543とを備えている。検出処理部543は、複数(例えば4個)のフォトダイオード544と、信号処理回路545と、例えば2個のコンパレーター546a、546bとを有している。
発光ダイオード541の両端に抵抗を介して電圧VCCが印加されると、発光ダイオード541から光が発せられる。この光はコリメーターレンズ542により平行光に集光されて円盤状スケール54aを通過する。なお、円盤状スケール54aには、所定の間隔(例えば1/180インチ)毎にスリットが設けられている。
円盤状スケール54aを通過した平行光は、図示しない固定スリットを通って各フォトダイオード544に入射し、電気信号に変換される。4個のフォトダイオード544から出力される電気信号は信号処理回路545において信号処理される。また、信号処理回路545から出力される信号はコンパレーター546a、546bにおいて比較され、比較結果がパルスとして出力される。コンパレーター546a、546bから出力されるパルスENC−A、ENC−Bが回転検出部54の出力となる。
図7A及び図7Bは、回転検出部54によって出力される信号を説明するための図である。図7Aは、PFモーター53正転時におけるタイミングチャートであり、図4BはPFモーター53逆転時におけるタイミングチャートである。図に示すように、PFモーター53正転時及び逆転時のいずれの場合も、パルスENC−AとパルスENC−Bとは位相が90度だけ異なっている。PFモーター53が正転しているとき、即ち、搬送ローラー51aが用紙Pを搬送方向に搬送しているときは、図7Aに示すように、パルスENC−AはパルスENC−Bよりも90度だけ位相が進み、PFモーター53が逆転しているときは、図7Bに示すように、パルスENC−AはパルスENC−Bよりも90度だけ位相が遅れる。そして、パルスENC−A及びパルスENC−Bの1周期Tは、PFモーター53が円盤状スケール54aのスリット間隔を移動(回転)する時間に等しい。
≪PFモーター制御部112について≫
本実施形態の制御部100(より具体的にはPFモーター制御部112)は、このような回転検出部54(ロータリーエンコーダー)を用いて、後述するように速度制御部120による速度PID制御と位置制御部140による位置PID制御を行う。また、速度制御部120による制御と位置制御部140による位置PID制御の切り替えを行う。この切り替えは、後述するように、搬送ローラー51aの回転量(すなわち用紙Pの現在位置)に基づいて行われる。なお、速度制御部120及び位置制御部140は、それぞれPFモーター制御部112によって実現される構成である。
また、PFモーター制御部112は、速度PID制御から位置PID制御に切り替えた後、用紙Pが目標位置に到達すると、用紙Pをその目標位置から移動させないようにする制御(後述するホールド制御)をさらに行う。以下、PFモーター制御部112が実行するPFモーター53の制御方法について説明する。
図8は、速度制御部120の構成を説明するためのブロック図である。また、図9は、位置制御部140の構成を説明するためのブロック図である。
図8に示すように、速度制御部120は、位置演算部121と、速度演算部122と、第1減算部123と、目標速度発生部124と、第2減算部125と、比例要素126と、積分要素127と、微分要素128と、加算部132と、PWM信号出力部133と、を備えている。これらのうち、位置演算部121は、回転検出部54から入力される矩形波の出力信号(図7A、図7B参照)のエッジをカウントすることにより、搬送ローラー51aの回転量(言い換えると用紙Pの送り量)を算出する。なお、用紙Pを目標位置まで搬送させる際には、用紙Pを目標位置に到達させるための搬送ローラー51aの回転量(目標回転量)が予め設定されている。
また、速度演算部122は、回転検出部54から入力される矩形波の出力信号のエッジをカウントする。また、速度演算部122には不図示のタイマーで計測される時間(周期)に関する信号も入力される。そして、速度演算部122は、カウントしたエッジと時間(周期)に基づいて、搬送ローラー51aの回転速度(用紙Pの送り速度)を算出する。
また、第1減算部123は、位置演算部121から出力される送り量に関する情報と、目標位置に関する情報とに基づき、目標位置(用紙Pを目標位置に到達させるための搬送ローラー51aの目標回転量)から現在位置(現在の搬送ローラー51aの回転量)を減算して位置偏差を算出する。
目標速度発生部124には、第1減算部123から出力される位置偏差に関する情報が入力される。目標速度発生部124は、速度プロファイルを参照し、位置偏差に応じた目標速度に関する情報を出力する。
図10は、現在位置に対する目標速度の一例を説明するための図である。図には、目標速度発生部124が速度プロファイルを参照して出力する目標速度が示されている。尚、目標速度発生部124には、位置偏差が入力されるが、ここでは理解の容易のために横軸を現在位置として示している。すなわち、目標速度発生部124が速度プロファイルを参照して目標速度を出力すると、図に示すような関係の目標速度が出力されることになる。図には、目標位置から所定距離よりも離れた位置においては、速度PIDによる制御が行われることが示されている。また、目標位置から所定距離以内の位置においては、位置PIDによる制御が行われることが示されている。出力される目標速度は、駆動開始から徐々に上昇し一定速度を保ってから徐々に低下する曲線となっている。
第2減算部125は、目標速度から現在のPFモーター53の送り速度(現在速度)を減算して、速度偏差ΔVを算出し、比例要素126、積分要素127および微分要素128にそれぞれ出力する。比例要素126、積分要素127および微分要素128は、入力される速度偏差ΔVに基づいて、以下の比例制御値QPと、積分制御値QIと、微分制御値QDとを算出する。
QP(j)=ΔV(j)×Kp …(式1)
QI(j)=QI(j−1)+ΔV(j)×Ki …(式2)
QD(j)={ΔV(j)−ΔV(j−1)}×Kd …(式3)
ここで、jは、時間であり、Kpは比例ゲイン、Kiは積分ゲイン、Kdは微分ゲインである。
加算部132は、比例要素126、積分要素127、及び、微分要素128から出力される制御値を加算し、その加算により求めた制御値の和をPWM信号出力部133へ出力する。PWM信号出力部133は、加算部132から供給される制御値の和を換算して得たデューティー比のPWM信号を出力する。
また、モータードライバー106は、PWM信号出力部133から出力されるPWM信号に基づいて、PFモーター53をPWM制御にて制御駆動する。
また、図9に示すように、位置制御部140は、位置演算部141と、速度演算部142と、第1減算部143と、位置ゲイン乗算部144と、第3減算部145と、比例要素146と、積分要素147と、微分要素148と、加算部152と、PWM信号出力部153と、を備えている。
これらのうち、位置演算部141、速度演算部142、第1減算部143、比例要素146、積分要素147、微分要素148、加算部152、PWM信号出力部153は、上述の速度制御部120の対応する構成の位置演算部121、速度演算部122、第1減算部123、比例要素126、積分要素127、微分要素128、加算部132、PWM信号出力部134のそれぞれと同様であるため、その説明を省略する。
位置ゲイン乗算部144は、第1減算部143で算出された位置偏差ΔL(=目標位置−現在位置)に、所定の位置ゲイン(フィードバックゲイン)を乗じた値を算出する部分である。また、第3減算部145は、第1減算部143で算出された値から、現在速度を減算して、偏差ΔHを算出する部分である。なお、位置ゲインをG、現在速度をVとすると、偏差ΔHを式に示すと、以下のようになる。
ΔH=ΔL(j)×G−V(j) …(式4)
≪PFモーター53の制御方法について≫
以上のような構成を有するプリンター10におけるPFモーター53の制御方法について、以下に説明する。
例えば、プリンター10の印刷の実行等に際して、制御部100にPFモーター53の駆動指令が発せられると、PFモーター53は、図10に示すような目標速度に従って駆動させられる。制御部100(PFモーター制御部112)は、まず、速度制御部120を用いた速度PID制御(速度フィードバック制御)にてPFモーター53を制御する。これにより、PFモーター53は、目標速度と現在速度との間の速度偏差ΔVに基づいて、速度PID制御により制御される。すなわち、PFモーター53は、図10に示す目標速度に収束するように速度PID制御で駆動される。この速度PID制御は、PFモーター53の加速領域、および定速領域の間に行われ、さらに減速領域においても、図10に示す切り替え位置の手前側(左側;図10では実線で示される部分)まで行われる。
また、PFモーター53の駆動に際して、制御部100は、常に、搬送ローラー51aの回転量(用紙Pの現在位置)を求めている。そして、制御部100は、現在位置に基づいて、用紙Pが目標位置(図10参照)から所定距離だけ離れた位置(切り替え位置)に到達したか否かを判断する。言い換えると、制御部100は、搬送ローラー51aの回転量が、切り替え位置に到達させるための回転量になったか否かを判断する。
この判断において、切り替え位置に到達したと判断される場合、制御部100は、速度制御部120に基づく速度PID制御から、位置制御部140に基づく位置PID制御(位置フィードバック制御)へと、PFモーター53の制御を切り替える。
速度PID制御から位置PID制御に切り替えられると、(式4)に基づいて偏差ΔHが算出される。この(式4)等から明らかなように、切り替え後、位置偏差ΔLは、PFモーター53が駆動するにつれて、徐々に小さくなっていく。また、一般に、PID制御は、偏差が0(ゼロ)となるように制御するものなので、上述の(式4)の位置PID制御においては、位置偏差ΔLが小さくなっていけば、その位置偏差ΔLを解消する(ゼロとする)ための現在速度も小さくなっていく。なお、位置PID制御への切り替え後は、速度プロファイルに基づく制御駆動ではなくなるため、図10では、切り替え後の速度と位置との関係を、仮想的なものとして破線で示している。
なお、プリンター10では、用紙Pが目標位置に到達した後においても、用紙Pを目標位置(停止位置)から移動させないようにするために位置PID制御を行っている(ホールド制御)。
図11は、PFモーター53による用紙Pの搬送の制御についての説明図である。図において横軸は時間(t)、縦軸は用紙Pの位置(現在位置)を示している。図の左側ではPFモーター53が速度PID制御によって駆動されている。このように速度PID制御によって、目標位置と現在位置との間の距離が小さくなっていく。そして、制御部100は、用紙Pの現在位置が目標位置から所定の距離以内になると、速度PID制御から位置PID制御へとPFモーター53の制御を切り替える。さらに、制御部100は、用紙Pが目標位置に到達したと判断すると、ホールド制御に切り替えてPFモーター53を制御する。前述したように、ホールド制御は用紙Pを目標位置から移動させないための制御であり、目標位置に到達する前の位置PID制御の位置ゲインよりも小さい位置ゲインを用いた制御(位置PID制御)である。
このように、制御部100は、目標位置から所定距離より離れているときには速度PID制御を行って予め定められた速度プロファイルで目標位置へと近づけるようにPFモーター53を制御する。そして、目標位置から所定距離以内では、位置PID制御に切り替えて、用紙Pが正確に(精度良く)目標位置へ到達するようにPFモーター53を制御する。このようにすることで、用紙Pを精度良く目標位置に到達させることができるようになる。また、制御部100は、用紙Pが目標位置へ到達したと判断すると、ホールド制御(位置PID制御)を行って用紙Pを目標位置から移動させないようにしている。
≪搬送調整機構60について≫
搬送調整機構60は、搬送ローラー51aの手前(搬送方向の上流側)の用紙Pに一定のテンションを発生させるために設けられている。仮に、搬送調整機構60を設けていないとし、ロール体RPの径(半径)をr(cm)、ロール体RPの負荷をM(gcm)とすると、搬送ローラー51aとロール体RPの間の用紙PのテンションTは、
T=M/r …(式5)
となる。ここで、ロール体RPから用紙Pを引き出して印刷を行っていくと、ロール体RPの径rと負荷Mがそれぞれ独立して変化することになる。このため、テンションTが一定になるように制御するのは困難であることがわかる。
そこで、本実施形態のプリンター10では、ロール体RPと搬送ローラー51a(第1ローラーに相当)の間に搬送調整機構60(搬送調整ローラー61a:第2ローラーに相当)を設けている。そして、制御部100は、搬送ローラー51aと搬送調整ローラー61aの間の用紙Pに生じるテンションが一定になるように制御(アシスト)を行っている(張力制御に相当)。ここで、搬送調整ローラー61aの負荷をMrollとし、搬送調整ローラー61aの径(半径)をRとし、アシスト量をMatcとすると、搬送ローラー51aと搬送調整ローラー61aの間の用紙PのテンションTは、
T=(Mroll−Matc)/R …(式6)
となる。また、式6から、以下の式が得られる。
Matc=Mroll−RT …(式7)
式7において、R(搬送調整ローラー61aの径)は一定であり、Mrollはメジャメントから算出することが可能である。よって、式7からテンションTを一定にするためのMatcが算出できる。
なおメジャメントとは、或る速度Vnでモーター(ここでは、FCモーター63)を駆動させるときの負荷を求めるための処理であり、例えば、用紙Pのセット後(ロール体RPの取替え後)や印刷前に実行される。メジャメントでは、用紙Pをセットした状態で、低速側の速度(Vl)と高速側の速度(Vh)とで搬送調整ローラー61aが正転方向に回転駆動される。そして、速度VlでFCモーター63を駆動させるときの負荷の値(具体的にはDuty値)と、速度VhでFCモーター63を駆動させるときの負荷の値(Duty値)がそれぞれ算出される。このようにして得られた各速度に対応する負荷の直線近似により、任意の回転速度に対する負荷Mrollが算出される。そして、その負荷MrollからテンションTを一定とするためのアシスト量Matcを算出することができる。制御部100は、このようにメジャメントによって得られた負荷Mrollを用いて、アシスト量Matcを設定する。
≪搬送調整機構60によるテンション制御について≫
<比較例>
前述したように、制御部100(PFモーター制御部112)は、図10に示すような速度プロファイルに基づいてPFモーター53を制御している。なお、以下の説明では、制御部100は、加速域と減速域のみの速度プロファイルに基づいてPFモーター53を制御することとする(定速域は設けられていない)。また、制御部100は、減速域において、用紙Pが目標位置に到達する前に速度PID制御から位置PID制御に切り替えている。さらに、用紙Pが目標位置に到達するとホールド制御を行っている。
また、制御部100(FCモーター制御部113)は、搬送ローラー51aと搬送調整ローラー61aの間の用紙Pに生じるテンションが一定となるようにFCモーター63の制御を行っている。なお、この比較例では、消費電力の低減のため、搬送ローラー51a停止時には、FCモーター63への電流の供給を停止している(すなわちFCモーター63のPWM制御のDutyを0(ゼロ)としている)。
図12は、比較例における各モーターの速度の時間変化を示す図であり、図13は、比較例における各モーターのDutyの時間変化を示す図である。
図12において、横軸は時間、縦軸(左側)はモーター速度を示している。また図12には、用紙Pの搬送目標位置にする残り距離の時間変化も示されており、縦軸(右側)は残り距離を示している。また、図13において、横軸は時間、縦軸はDuty値を示している。
制御部100(PFモーター制御部112)は、駆動開始から30msecまではPFモーター53が加速するように速度PID制御を行う。また、制御部100(FCモーター制御部113)は、搬送ローラー51aと搬送調整ローラー61aの間の用紙Pに生じるテンションが一定となるようにFCモーター63のトルクを制御する。これにより、例えば図12に示すように、PFモーター53の速度変化と同様にFCモーター63の速度が変化している。
そして、PFモーター53の速度は30msecで最高速度に達し、それ以降は減速域となり速度が低下する。このとき、制御部100(PFモーター制御部112)は、用紙Pが目標位置に到達する所定距離前に、PFモーター53の制御を速度PID制御から位置PID制御に切り替え、さらに目標位置に到達するとホールド制御に切り替える(PFモーター53にホールド制御のための電流が供給される)。
また、減速域においても制御部100(FCモーター制御部113)は、搬送ローラー51aと搬送調整ローラー61aの間の用紙Pに生じるテンションが一定となるようにFCモーター63を制御する。ここでも図12に示すように、PFモーター53の速度変化と同様にFCモーター63の速度が変化している。
減速域の後半では、用紙Pが目標位置に近づくため、図12に示すように残り距離が小さくなっていく。そして、約90msecで、制御部100(FCモーター制御部113)は、用紙Pが目標位置に到達したと判断し、図13に示すように、Dutyを0(ゼロ)にし、FCモーター63への電流の供給を停止する。
図14は、比較例における用紙Pの搬送結果についての説明図である。図には、PFモーター53側の制御(Duty、現在速度、目標速度)と、用紙Pの残り移動距離の時間変化が示されている。図の横軸は時間を示し、縦軸(左側)は、Duty、縦軸(右側)は、速度、残り距離を示している。なお、図14において、横軸(時間)は、図12及び図13と同じ時間を示している。
この比較例では、図13に示したように、用紙Pが目標位置に到達した約90msecにおいてFCモーター63への電流の供給が停止される。一方、PFモーター53は前述したように用紙Pが目標位置に到達した後もホールド制御されている(電流が供給されている)。このため、FCモーター63への電流の供給が停止された時に、搬送ローラー51aと搬送調整ローラー61aの間のテンションのバランスが乱れてしまう。例えば図14において、残り移動距離から、約90msecで用紙Pが搬送方向の逆方向に戻っているのがわかる。このように比較例では、用紙Pが目標位置に到達すると(すなわち搬送ローラー51aが停止すると)、FCモーター63への電流の供給を停止するのでテンションのバランスが乱れてしまい、用紙Pを目標位置に精度よく停止させることができていない。
そこで、本実施形態では、用紙Pの停止精度の向上を図っている。
<本実施形態>
前述の比較例では、制御部100は、用紙Pが目標位置に到達すると(搬送ローラー51aが停止すると)、FCモーター63への電流の供給を停止していたのに対し、本実施形態では、用紙Pが目標位置に到達しても、FCモーター63に一定の電流の供給を行っている。より具体的には、制御部100(FCモーター制御部113)は、用紙Pが目標位置に到達したとき(搬送ローラー51aが停止したとき)のFCモーター63の出力Dutyを保持するようにしている。
図15は、本実施形態におけるFCモーター63の制御方法を示すフロー図である。なお、ここではロール体RPがプリンター10にセットされ、用紙Pが印刷開始位置に位置決めされていることとする。すなわち、搬送ローラー51aと搬送調整ローラー61aの間に用紙Pが搬送された状態となっている。
まず、制御部100は、回転検出部54の出力に基づいて、搬送ローラー51aが駆動したか否かを判断する(S101)。搬送ローラー51aが駆動していないと判断すると(S101でNO)、再度ステップS101を実行する。搬送ローラー51aが駆動したと判断すると(S101でYES)、制御部100(FCモーター制御部113)は、搬送ローラー51aと搬送調整ローラー61aの間の用紙Pに生じるテンションが一定となるように(式7を用いて)、FCモーター63のDuty値を制御する(S102)。これにより搬送調整ローラー61aの回転が調整される。
その後、制御部100は、回転検出部54の出力に基づいて、搬送ローラー51aが停止したか否かを判断する(S103)。搬送ローラー51aが停止していないと判断すると(S103でNO)、再度ステップS103を実行する。搬送ローラー51aが停止したと判断すると(S103でYES)、制御部100(FCモーター制御部113)は、搬送ローラー51a停止時のFCモーター63のDuty値を保持して、FCモーター63に一定のトルクを発生させる。
そして、制御部100は、印刷終了か否かを判断する(S105)。印刷終了と判断すると(S105でYES)、FCモーター63への電流の供給を停止し、FCモーター63の制御を終了する(END)。印刷終了でないと判断すると(S105でNO)、ステップS101の判断を再度行う。
図16は、本実施形態における各モーターの速度の時間変化を示す図であり、図17は、本実施形態における各モーターのDutyの時間変化を示す図である。各図には、比較例(図12、図13)と同様に、PFモーター53とFCモーター63の速度やDutyの値が示されている。
本実施形態においても、制御部100(PFモーター制御部112)は、駆動開始から30msecまではPFモーター53が加速するように速度PID制御を行う。また、制御部100(FCモーター制御部113)は、搬送ローラー51aと搬送調整ローラー61aの間の用紙Pに生じるテンションが一定となるようにFCモーター63を制御する。
そして、PFモーター53の速度は30msecで最高速度に達し、それ以降は減速域となり速度は低下する。この減速域において制御部100(PFモーター制御部112)は、用紙Pが目標位置に到達する所定距離前にPFモーター53の制御を速度PID制御から位置PID制御に切り替える。さらに制御部100(PFモーター制御部112)は、用紙Pが目標位置に到達するとホールド制御に切り替える(ホールド制御のための電流がPFモーター53に供給される)。
また、制御部100(FCモーター制御部113)は、減速域においても搬送ローラー51aと搬送調整ローラー61aの間の用紙Pに生じるテンションが一定となるようにFCモーター63のトルクを制御する(PFモーター53の速度変化と同様にFCモーター63の速度が変化している)。
図16に示すように、減速域の後半では、用紙Pが目標位置に近づくため、残り距離が小さくなっていく。そして、制御部100は、約90msecで、用紙Pが目標位置に到達したと判断する。
比較例(図13)では、この時点でFCモーター63への電流の供給を停止していたのに対し、本実施形態の制御部100(FCモーター制御部113)は、図17に示すようにこの時点のDuty値を保持する。言い換えると、制御部100は、FCモーター63に一定のトルクを発生させる。
図18は、本実施形態における用紙Pの搬送結果についての説明図である。図には、比較例(図14)と同様に、PFモーター53側の制御(Duty、現在速度、目標速度)と、用紙Pの残り移動距離の時間変化が示されている。図の横軸は時間を示し、縦軸(左側)は、Duty、縦軸(右側)は、速度、残り距離を示している。なお、図18において、横軸(時間)は、図16及び図17と同じ時間を示している。
本実施形態では、図17に示したように、用紙Pが目標位置に到達した約90msec以降においてもFCモーター63に一定の電流が供給され続けている。すなわちFCモーター63に一定のトルクが発生している。これにより、搬送ローラー51aの停止時に搬送ローラー51aと搬送調整ローラー61aの間のテンションのバランスが乱れるのを抑制でき、図18に示すように用紙Pを目標位置に精度よく停止させることができる。
以上説明したように、本実施形態のプリンター10は、用紙Pを搬送方向に搬送する搬送ローラー51aと、搬送ローラー51aを回転させる駆動力を与えるPFモーター53と、搬送ローラー51aよりも搬送方向の上流側に設けられた搬送調整ローラー61aと、搬送調整ローラー61aを回転させる駆動力を与えるFCモーター63を備えている。
そして制御部100は、PFモーター53を制御することによって搬送ローラー51aを駆動させて用紙Pを搬送方向に搬送させる際に、搬送ローラー51aと搬送調整ローラー61aとの間の用紙Pに生じるテンションが一定となるようにFCモーター63をPWM制御している。さらに制御部100は、搬送ローラー51aの停止時においても、搬送ローラー51aが停止する時のFCモーター63のDutyを保持している(一定のトルクを発生させている)。
これにより、用紙Pの搬送の停止時における搬送ローラー51aと搬送調整ローラー61aとの間のテンションの乱れを抑制することができる。よって用紙Pの停止精度の向上を図ることができる。
また、第1実施形態では搬送ローラー51aの停止時のDuty値をそのまま保持しているので、簡易に停止精度の向上を図ることができる。
===第2実施形態===
第2実施形態では、搬送ローラー51aと搬送調整ローラー61aとの間のテンションを一定にする制御の終了時におけるFCモーター63のDutyの設定方法が第1実施形態と異なっている。なお、装置の構成、及び、FCモーター63制御以外の制御については第1実施形態と同じであるので、説明を省略する。
第1実施形態では、用紙Pが目標位置に到達したときのFCモーター63への出力Dutyが保持されていたのに対し、第2実施形態では、制御部100(FCモーター制御部113)は、速度PID制御から位置PID制御に切り替えを行ってから、所定時間経過後のDuty値を保持する。なお、この時間の測定は、例えば、前述した速度演算部122に入力される信号(不図示のタイマーで計測された時間に関する信号)に基づいて行う。
例えば、所定時間として40msecが設定された場合、図17において、約50msecで速度PIDから位置PIDへの切り替えが行われたとすると、90msec(速度PIDから位置PIDへの切り替えが行われてから40msec後)におけるDutyを保持する。なお、搬送ローラー51aの回転が停止する前に所定時間に達してもよいが、搬送ローラー51aの回転が停止した後に所定時間に達するように時間(所定時間)を設定する方が望ましい。
このように、第2実施形態では、速度PID制御から位置PID制御に切り替えを行ってから、所定時間経過後のDuty値を保持している。この第2実施形態においても、停止精度の向上を図ることができる。なお、第2実施形態では、搬送ローラー51aが停止したか否かを検出することなくFCモーター63に一定のトルクを発生させることができる。
===第3実施形態===
前述の実施形態では、テンションを一定にする制御における最後のDutyをそのまま保持していたが、第3実施形態では、その最後のDutyよりも低いDutyを保持する。
なお、第3実施形態においても、装置の構成、及び、FCモーター63制御以外の制御については前述の実施形態と同じであるので、説明を省略する。
第3実施形態では、制御部100(FCモーター制御部113)は、用紙Pが目標位置に到達したときのFCモーター63のDutyよりも小さいDutyを保持する。保持するDutyをDutyA、用紙Pが目標位置に到達したときのDutyをDutyBとすると、DutyAは、以下の式で算出される。
DutyA=DutyB−(DutyB×N)/128 …(式8)
ここで、Nは、積分減算量(0〜128)である。
このように、用紙Pが目標位置に到達した時のFCモーター63のDuty(DutyB)よりも小さいDuty(DutyA)を保持するようにしてもよい。このDutyAが小さいほど、消費電力の低減を図ることができ、さらに発熱を抑制することができる。一方、DutyAが大きい(DutyBに近い)ほど、用紙Pの停止位置の精度の向上を図ることができる。
なお、第3実施形態では、DutyBとして用紙Pが目標位置に到達したときのDutyを適用したが、第2実施形態のように、DutyBとして、速度PID制御から位置PID制御に切り替わってから所定時間経過後のDutyを用いても良い。
===その他の実施の形態===
一実施形態としてのプリンター等を説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
<プリンターについて>
プリンター10は、スキャナ装置やコピー装置のような、複合的な機器の一部であっても良い。さらに、上述の実施の形態においては、インクジェット方式のプリンター10に関して説明している。しかしながら、プリンター10としては、目標位置に搬送された媒体に印刷可能なものであれば、インクジェット方式のプリンターには限られない。例えば、ジェルジェット方式のプリンター、トナー方式のプリンター、ドットインパクト方式のプリンター等、種々のプリンターに対して、本実施形態を適用することが可能である。
また、プロッターもプリンターに含まれる。
<PFモーター53の制御について>
前述の実施形態では、速度制御部120および位置制御部140は、それぞれPID制御を行うように構成されている。しかしながら、PFモーター53の制御は、PID制御には限られない。PID制御以外の制御としては、PI制御、PD制御、P制御等のフィードバック制御、その他、フィードフォワード制御とフィードバック制御の併用等がある。
<媒体について>
前述の実施形態では、プリンター10にセットされるロール体RPは一つであったが、これには限られない。
図19は、2つのロール体RPをセット可能な構成例を示した図である。
図に示すプリンターでは、上側ロール体RPaと下側ロール体RPbの2つのロール体がセットできるようになっている。また図では、2つのロール体から用紙Pを引き出す方向を点線の矢印で示している。
図に示すようにロール体(上側ロール体RPa又は下側ロール体RPb)から引き出された用紙Pは、搬送調整ローラー対61を介して搬送ローラー対51に搬送される。
なお、これらの各ローラーやモーターの制御は前述の実施形態と同様であるので説明を省略する。この例では、一方のロール体RPへの印刷が終了すると、他方のロール体RPに印刷することができ、ロール体RPの取替えによる時間を短縮することができる。また、この場合においても前述の実施形態と同様の制御(テンションの制御)を行うことで、各ロール体から引き出された用紙Pの停止精度の向上を図ることができる。
また、本実施形態では媒体としてロール体に巻かれた用紙Pを用いていたがこれには限られない。例えば、所定サイズに裁断された普通紙であってもよい。但し、本実施形態のようにロール体RPを用いた場合、特に停止精度を向上させる効果を得ることができる。