JP5299838B2 - 10−ヒドロキシ−10−ナフチルメチルアントラセン−9(10h)−オン化合物及びその光ラジカル重合開始剤としての用途。 - Google Patents

10−ヒドロキシ−10−ナフチルメチルアントラセン−9(10h)−オン化合物及びその光ラジカル重合開始剤としての用途。 Download PDF

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Description

本発明は、10−ヒドロキシ−10−ナフチルメチルアントラセン−9(10H)−オン化合物、その製造法及びそれを有効成分として含有する光ラジカル重合開始剤に関する。
現在、エネルギー線硬化樹脂がコーティング、インキ、電子材料などの分野で広く用いられている。エネルギー線硬化樹脂はエネルギー線硬化性組成物に紫外線や電子線などを照射することにより重合、硬化させることによって得られる。このエネルギー線で硬化させる技術は、例えば木工用塗料、金属などのコーティング材、スクリーン印刷やオフセット印刷用インキ、電子基板に用いられるドライフィルムレジスト、また、ホログラム材料、封止剤、オーバーコート材、光造形用樹脂、接着剤などさまざまな用途に用いられている。
そして、このエネルギー線硬化性組成物は主に重合性化合物とエネルギー照射により重合性化合物の重合を開始させる重合開始剤より構成されている。この重合を開始させる方法として、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合があるが、ラジカル重合が古くから最も広く用いられている。エネルギー線、主に紫外線によってラジカルを発生し、重合性化合物の重合を開始させるものが、光ラジカル重合開始剤である。
光ラジカル重合開始剤は、主に分子内開裂型と水素引き抜き型に分類される。分子内開裂型の開始剤では、特定波長の光を吸収することで、特定の部位の結合が切断され、その分断された部位にラジカルが発生し、それが開始剤となり重合性化合物の重合が始まる。水素引き抜き型の場合は、特定波長の光を吸収し励起状態になり、その励起種が周囲にある水素供与体から水素を引き抜き反応を起こし、水素引き抜きによりラジカルが発生し、それが開始剤となり重合性化合物の重合が始まる。
水素引き抜き型光ラジカル重合開始剤は、水素供与体が必要なこと、ラジカル発生効率が悪く感度が低い等の問題がある。
一方、分子内開裂型光ラジカル重合開始剤は、ラジカル発生効率は良好で感度が高いため広く用いられている。通常、光硬化においては硬化物がそのまま製品となり、添加した開始剤を除去する工程は含まれない。その結果、一般に、露光後の硬化物中にはこの開始剤および開始剤由来の化合物が残存している。これら開始剤由来の物質のうち、未開裂の光ラジカル重合開始剤が硬化膜外に昇華などにより拡散し、硬化膜の臭気や刺激性が問題となることがある。よって、光ラジカル重合開始剤の耐昇華性が問題となる。
よく用いられている分子内開裂型光ラジカル重合開始剤として、ベンジルメチルジメチルケタールやヒドロキシアルキルフェノン類がある。このものはカルボニル基に隣接した結合がα開裂して、ラジカル種を生成するタイプのものである。例えば、チバ社製の1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名イルガキュア184)、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン(商品名イルガキュア907)あるいは2−ベンジルメチル2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(商品名イルガキュア369)などが挙げられる(イルガキュアはチバスペシャリティーケミカル社登録商標)。
しかし、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンは、高圧水銀ランプに対して活性が高いことから広く使用されているが、昇華性が高いことが欠点とされている。また、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オンは、硬化膜に臭気が発生する等の問題がある(非特許文献1)。また、従来の光ラジカル重合開始剤はモルホリノ基やメチルチオ基といった窒素原子や硫黄原子を有する化合物が多く、これら光ラジカル重合開始剤を含有するフィルム等を焼却廃棄したとき、窒素化合物や硫黄化合物の環境への汚染の問題も懸念される。
そこで、窒素原子や硫黄原子を含有せず、光硬化後も臭気などの問題のない耐昇華性の優れた分子内開裂型光ラジカル重合開始剤が求められている。
一方、本発明の化合物はアントラキノンの還元体のひとつである10−ヒドロキシアントラセン−9(10H)−オン骨格を持つ。アントラキノンの還元体としては、9, 10−アントラヒドロキノンが知られており、このふたつは異性体の関係にある。この9, 10−アントラヒドロキノンのジエーテル化合物と光感応性酸発生剤であるヨードニウム塩を組成とする光ラジカル重合開始剤組成物が知られている(特許文献1)。しかし、この光ラジカル重合開始剤組成物では、9,10−アントラヒドロキノンのジエーテル化合物は、光感応性酸発生剤であるヨードニウム塩を活性化する助剤として用いられ、ラジカル発生剤として9,10−アントラヒドロキノン骨格が用いられているものではない。そして、本発明の10−ヒドロキシアントラセン−9(10H)−オン骨格を持つ化合物について、そのラジカル発生剤としての検討がなされた例は無い。
また、10−ヒドロキシアントラセン−9(10H)−オン骨格を持つ化合物として、10位にベンジル基が置換した10−ヒドロキシ−10−ベンジル−1−アミノアントラセン−9(10H)−オン(非特許文献2)、メトキシベンジル基が置換した10−ヒドロキシ−10−[(4−メトキシフェニル)メチル]アントラセン−9(10H)−オン(非特許文献3)が知られている。しかし、この10−ヒドロキシアントラセン−9(10H)−オン骨格にナフチルメチル基が付加した化合物が合成された例はない。
特開2007−39475号公報 上田充監修、「UV・EB硬化技術の最新動向」、株式会社シーエムシー出版、2006年3月31日、p.45−48 「日本化学会誌」、1980年、第3号、p.309−313 「ジャーナル オブ ウッドケミストリー アンド テクノロジー (Journal of Wood Chemistry and Technology)」、(米国)、1981年、第1巻、第2号、p.147−167
本発明者らは、かかる状況に鑑み、これら欠点を排除した技術を提供すべく鋭意検討した結果、本発明を完成するに至ったものである。すなわち、本発明の目的は、窒素原子や硫黄原子を含有せず、耐昇華性の優れた光ラジカル重合開始剤を提供することである。
上記目的を達成するために、第1発明では、一般式(1)で表される10−ヒドロキシ−10−ナフチルメチルアントラセン−9(10H)−オン化合物を提供する。
(一般式(1)において、X及びYは同一であっても異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基又はカルボキシル基を示し、Zは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、水酸基又はアルコキシ基を示し、nは1〜7の整数であり、nが2以上のとき、複数あるZは同一でも異なってもよい。)
第2発明では、一般式(1)で表される10−ヒドロキシ−10−ナフチルメチルアントラセン−9(10H)−オン化合物を有効成分として含有する光ラジカル重合開始剤を提供する。
第3発明では、一般式(2)で表される9,10−アントラヒドロキノン化合物と一般式(3)で表されるハロゲン化メチルナフタレン化合物を反応させることによる、第1発明に記載の10−ヒドロキシ−10−ナフチルメチルアントラセン−9(10H)−オン化合物の製造法を提供する。
(一般式(2)において、X及びYは同一であっても異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基又はカルボキシル基を示す。)
(一般式(3)において、Wは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を示し、Zは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、水酸基又はアルコキシ基を示し、nは1〜7の整数であり、nが2以上のとき、複数あるZは同一でも異なってもよい。)
本発明の10−ヒドロキシ−10−ナフチルメチルアントラセン−9(10H)−オン化合物は光照射によりラジカルを発生する化合物であり、当該化合物を有効成分として含有する光ラジカル重合開始剤は、耐昇華性が優れ、かつ窒素原子や硫黄原子を含有しない環境に優しい化合物である。
以下、本発明を詳細に記述する。
以下の記述において、アントラセン−9(10H)−オン骨格とは、一般式(1)における下記構造式(4)の部分を称し、ナフタレン骨格とは、一般式(1)における下記構造式(5)または構造式(6)の部分を称する。
また、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
一般式(1)で表される10−ヒドロキシ−10−ナフチルメチルアントラセン−9(10H)−オン化合物において、X又はYで示されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子が挙げられる。またアルキル基としては、直鎖のもの分枝しているものいずれでも良く、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、アミル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられる。またカルボキシル基としては、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、カルボン酸アミド基等が挙げられる。
一方、一般式(1)で表される10−ヒドロキシ−10−ナフチルメチルアントラセン−9(10H)−オン化合物において、Zで示されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子が挙げられる。またアルキル基としては、直鎖のもの分枝しているものいずれでも良く、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、アミル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられる。またアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、アミルオキシ基、ヘキシルオキシ基等が挙げられる。ここで、置換基Zの数を表すnは1〜7の整数であり、nが2以上のとき、複数あるZは、それぞれ同一でも異なってもよく、そのナフタレン骨格上の位置は、1位又は2位を除いた任意の位置である。
一般式(1)で表される化合物の具体例としては、たとえば次のものが挙げられる。すなわち、10−ヒドロキシ−10−(1−ナフチルメチル)アントラセン−9(10H)−オン、10−ヒドロキシ−10−(2−ナフチルメチル)アントラセン−9(10H)−オン、さらにこれらもののアントラセン−9(10H)−オン骨格の2位に置換基がついた、10−ヒドロキシ−10−(1−ナフチルメチル)−2−メチルアントラセン−9(10H)−オン、10−ヒドロキシ−10−(1−ナフチルメチル)−2−エチルアントラセン−9(10H)−オン、10−ヒドロキシ−10−(1−ナフチルメチル)−2−(t−ブチル)アントラセン−9(10H)−オン、10−ヒドロキシ−10−(1−ナフチルメチル)−2−アミルアントラセン−9(10H)−オン、10−ヒドロキシ−10−(1−ナフチルメチル)−2−クロロアントラセン−9(10H)−オン、10−ヒドロキシ−10−(1−ナフチルメチル)−2−ブロモアントラセン−9(10H)−オン、10−ヒドロキシ−10−(1−ナフチルメチル)−2−フルオロアントラセン−9(10H)−オン、10−ヒドロキシ−10−(1−ナフチルメチル)−9−オキソ−9,10−ジヒドロアントラセン−2−カルボン酸、10−ヒドロキシ−10−(2−ナフチルメチル)−2−メチルアントラセン−9(10H)−オン、10−ヒドロキシ−10−(2−ナフチルメチル)−2−エチルアントラセン−9(10H)−オン、10−ヒドロキシ−10−(2−ナフチルメチル)−2−(t−ブチル)アントラセン−9(10H)−オン、10−ヒドロキシ−10−(2−ナフチルメチル)−2−アミルアントラセン−9(10H)−オン、10−ヒドロキシ−10−(2−ナフチルメチル)−2−クロロアントラセン−9(10H)−オン、10−ヒドロキシ−10−(2−ナフチルメチル)−2−ブロモアントラセン−9(10H)−オン、10−ヒドロキシ−10−(2−ナフチルメチル)−2−フルオロアントラセン−9(10H)−オン、10−ヒドロキシ−10−(2−ナフチルメチル)−9−オキソ−9,10−ジヒドロアントラセン−2−カルボン酸等が挙げられる。
さらにはアントラセン−9(10H)−オン骨格の1位に置換基がついた、10−ヒドロキシ−10−(1−ナフチルメチル)−1−メチルアントラセン−9(10H)−オン、10−ヒドロキシ−10−(1−ナフチルメチル)−1−エチルアントラセン−9(10H)−オン、10−ヒドロキシ−10−(1−ナフチルメチル)−1−(t−ブチル)アントラセン−9(10H)−オン、10−ヒドロキシ−10−(1−ナフチルメチル)−1−アミルアントラセン−9(10H)−オン、10−ヒドロキシ−10−(1−ナフチルメチル)−1−クロロアントラセン−9(10H)−オン、10−ヒドロキシ−10−(1−ナフチルメチル)−1−ブロモアントラセン−9(10H)−オン、10−ヒドロキシ−10−(1−ナフチルメチル)−1−フルオロアントラセン−9(10H)−オン、10−ヒドロキシ−10−(1−ナフチルメチル)−9−オキソ−9,10−ジヒドロアントラセン−1−カルボン酸、10−ヒドロキシ−10−(2−ナフチルメチル)−1−メチルアントラセン−9(10H)−オン、10−ヒドロキシ−10−(2−ナフチルメチル)−1−エチルアントラセン−9(10H)−オン、10−ヒドロキシ−10−(2−ナフチルメチル)−1−(t−ブチル)アントラセン−9(10H)−オン、10−ヒドロキシ−10−(2−ナフチルメチル)−1−アミルアントラセン−9(10H)−オン、10−ヒドロキシ−10−(2−ナフチルメチル)−1−クロロアントラセン−9(10H)−オン、10−ヒドロキシ−10−(2−ナフチルメチル)−1−ブロモアントラセン−9(10H)−オン、10−ヒドロキシ−10−(2−ナフチルメチル)−1−フルオロアントラセン−9(10H)−オン、10−ヒドロキシ−10−(2−ナフチルメチル)−9−オキソ−9,10−ジヒドロアントラセン−1−カルボン酸等が挙げられる。
さらにはアントラセン−9(10H)−オン骨格の2,7位に置換基のついた、10−ヒドロキシ−10−(1−ナフチルメチル)−2,7−ジメチルアントラセン−9(10H)−オン、10−ヒドロキシ−10−(1−ナフチルメチル)−2,7−ジエチルアントラセン−9(10H)−オン、10−ヒドロキシ−10−(1−ナフチルメチル)−2,7−ジ(t−ブチル)アントラセン−9(10H)−オン、10−ヒドロキシ−10−(1−ナフチルメチル)−2,7−ジアミルアントラセン−9(10H)−オン、10−ヒドロキシ−10−(1−ナフチルメチル)−2,7−ジクロロアントラセン−9(10H)−オン、10−ヒドロキシ−10−(1−ナフチルメチル)−2,7−ジブロモアントラセン−9(10H)−オン、10−ヒドロキシ−10−(1−ナフチルメチル)−2,7−ジフルオロアントラセン−9(10H)−オン、10−ヒドロキシ−10−(1−ナフチルメチル)−9−オキソ−9,10−ジヒドロアントラセン−2,7−ジカルボン酸、10−ヒドロキシ−10−(2−ナフチルメチル)−2,7−ジメチルアントラセン−9(10H)−オン、10−ヒドロキシ−10−(2−ナフチルメチル)−2,7−ジエチルアントラセン−9(10H)−オン、10−ヒドロキシ−10−(2−ナフチルメチル)−2,7−ジ(t−ブチル)アントラセン−9(10H)−オン、10−ヒドロキシ−10−(2−ナフチルメチル)−2,7−ジアミルアントラセン−9(10H)−オン、10−ヒドロキシ−10−(2−ナフチルメチル)−2,7−ジクロロアントラセン−9(10H)−オン、10−ヒドロキシ−10−(2−ナフチルメチル)−2,7−ジブロモアントラセン−9(10H)−オン、10−ヒドロキシ−10−(2−ナフチルメチル)−2,7−ジフルオロアントラセン−9(10H)−オン、10−ヒドロキシ−10−(2−ナフチルメチル)−9−オキソ−9,10−ジヒドロアントラセン−2,7−ジカルボン酸等が挙げられる。
アントラセン−9(10H)−オン骨格における置換基は本発明の化合物の光ラジカル重合開始剤としての能力に大きな影響を与えるものではないが、電子吸引基である方が若干有利となる。また、昇華性を抑制するという点では炭素数が多いほうが、また炭素より原子量の大きい酸素原子が置換したほうが好ましいといえる。水酸基は、水素結合を形成するので昇華性を抑制するという点ではさらに好ましい。スルホン酸基も可能であるが、硫黄原子を含むことから環境に対する化合物の安全性の観点で好ましくない。
ナフタレン骨格に置換基が付いたものとして、たとえばナフタリン骨格の4位に置換基がついた、10−ヒドロキシ−10−[(4−ヒドロキシ−1−ナフチル)メチル]アントラセン−9(10H)−オン、10−ヒドロキシ−10−[(4−メトキシ−1−ナフチル)メチル]アントラセン−9(10H)−オン、10−ヒドロキシ−10−[(4−エトキシ−1−ナフチル)メチル]アントラセン−9(10H)−オン、10−ヒドロキシ−10−[(4−ブトキシ−1−ナフチル)メチル]アントラセン−9(10H)−オン、10−ヒドロキシ−10−[(4−クロロ−1−ナフチル)メチル]アントラセン−9(10H)−オン、10−ヒドロキシ−10−[(4−ブロモ−1−ナフチル)メチル]アントラセン−9(10H)−オン、10−ヒドロキシ−10−[(4−メチル−1−ナフチル)メチル]アントラセン−9(10H)−オン、10−ヒドロキシ−10−[(4−エチル−1−ナフチル)メチル]アントラセン−9(10H)−オン、10−ヒドロキシ−10−[(4−ヒドロキシ−2−ナフチル)メチル]アントラセン−9(10H)−オン、10−ヒドロキシ−10−[(4−メトキシ−1−ナフチル)メチル]アントラセン−9(10H)−オン、10−ヒドロキシ−10−[(4−エトキシ−1−ナフチル)メチル]アントラセン−9(10H)−オン、10−ヒドロキシ−10−[(4−ブトキシ−1−ナフチル)メチル]アントラセン−9(10H)−オン、10−ヒドロキシ−10−[(4−クロロ−2−ナフチル)メチル]アントラセン−9(10H)−オン、10−ヒドロキシ−10−[(4−ブロモ−2−ナフチル)メチル]アントラセン−9(10H)−オン、10−ヒドロキシ−10−[(4−メチル−2−ナフチル)メチル]アントラセン−9(10H)−オン、10−ヒドロキシ−10−[(4−エチル−2−ナフチル)メチル]アントラセン−9(10H)−オン等が挙げられる。
また、ナフタレン骨格の2位に置換基がついた、10−ヒドロキシ−10−[(2−ヒドロキシ−1−ナフチル)メチル]アントラセン−9(10H)−オン、10−ヒドロキシ−10−[(2−メトキシ−1−ナフチル)メチル]アントラセン−9(10H)−オン、10−ヒドロキシ−10−[(2−エトキシ−1−ナフチル)メチル]アントラセン−9(10H)−オン、10−ヒドロキシ−10−[(2−ブトキシ−1−ナフチル)メチル]アントラセン−9(10H)−オン、10−ヒドロキシ−10−[(2−クロロ−1−ナフチル)メチル]アントラセン−9(10H)−オン、10−ヒドロキシ−10−[(2−ブロモ−1−ナフチル)メチル]アントラセン−9(10H)−オン、10−ヒドロキシ−10−[(2−メチル−1−ナフチル)メチル]アントラセン−9(10H)−オン、10−ヒドロキシ−10−[(2−エチル−1−ナフチル)メチル]アントラセン−9(10H)−オン等が挙げられる。
さらには、ナフタレン骨格の6位に置換基がついた、10−ヒドロキシ−10−[(6−ヒドロキシ−1−ナフチル)メチル]アントラセン−9(10H)−オン、10−ヒドロキシ−10−[(6−メトキシ−1−ナフチル)メチル]アントラセン−9(10H)−オン、10−ヒドロキシ−10−[(6−エトキシ−1−ナフチル)メチル]アントラセン−9(10H)−オン、10−ヒドロキシ−10−[(6−ブトキシ−1−ナフチル)メチル]アントラセン−9(10H)−オン、10−ヒドロキシ−10−[(6−クロロ−1−ナフチル)メチル]アントラセン−9(10H)−オン、10−ヒドロキシ−10−[(6−ブロモ−1−ナフチル)メチル]アントラセン−9(10H)−オン、10−ヒドロキシ−10−[(6−メチル−1−ナフチル)メチル]アントラセン−9(10H)−オン、10−ヒドロキシ−10−[(6−エチル−1−ナフチル)メチル]アントラセン−9(10H)−オン、10−ヒドロキシ−10−[(6−ヒドロキシ−2−ナフチル)メチル]アントラセン−9(10H)−オン、10−ヒドロキシ−10−[(6−メトキシ−2−ナフチル)メチル]アントラセン−9(10H)−オン、10−ヒドロキシ−10−[(6−エトキシ−2−ナフチル)メチル]アントラセン−9(10H)−オン、10−ヒドロキシ−10−[(6−ブトキシ−2−ナフチル)メチル]アントラセン−9(10H)−オン、10−ヒドロキシ−10−[(6−クロロ−2−ナフチル)メチル]アントラセン−9(10H)−オン、10−ヒドロキシ−10−[(6−ブロモ−2−ナフチル)メチル]アントラセン−9(10H)−オン、10−ヒドロキシ−10−[(6−メチル−2−ナフチル)メチル]アントラセン−9(10H)−オン、10−ヒドロキシ−10−[(6−エチル−2−ナフチル)メチル]アントラセン−9(10H)−オン等が挙げられる。
ナフタリン骨格における置換基は、電子供与基である方が光ラジカル重合開始剤としての能力が高い傾向にある。また、昇華性を抑制するという点では炭素数が多いほうが、また炭素より原子量の大きい酸素原子が置換したほうが好ましいといえる。水酸基は、水素結合を形成するので昇華性を抑制するのでさらに好ましい。モルホリノ基やジメチルアミノ基等のアルキルアミノ基も可能であるが、窒素原子を含むことから環境に対する化合物安全性の観点で好ましくない。
ナフタレン骨格とアントラセン−9(10H)−オン骨格の結合に用いられるメチレン基のナフタレン骨格での置換位置として、1位(構造式(5)に相当)と2位(構造式(6)に相当)があるが、どちらも用いることができる。一般に、当該化合物を合成するときの原料となるハロゲン化メチルナフタレンにおいて1位でハロゲン化メチルが置換した1−ハロゲン化メチルナフタレン化合物が市場で容易に入手できるので、合成的には1位が好ましい。
次に、上記一般式(1)で表される10−ヒドロキシ−10−ナフチルメチルアントラセン−9(10H)−オン化合物の製造方法について説明する。一般式(1)によって表される10−ヒドロキシ−10−ナフチルメチルアントラセン−9(10H)−オン化合物は、一般式(2)で表される9,10−アントラヒドロキノン化合物と一般式(3)で表されるハロゲン化メチルナフタレン化合物を反応させることにより得ることが出来る。
原料として用いられる9,10−アントラヒドロキノン化合物は通常9,10−アントラキノン化合物を還元することによって得られる。使用されるアントラキノン化合物としては、例えば、9,10−アントラキノンさらにはアントラキノン骨格の2位に置換基のついた2−メチル−9,10−アントラキノン、2−エチル−9,10−アントラキノン、2−(t−ブチル)−9,10−アントラキノン、2−アミル―9,10−アントラキノン、2−フルオロ−9,10−アントラキノン、2−クロロ−9,10−アントラキノン、2−ブロモ−9,10−アントラキノン、9,10−アントラキノン−2−カルボン酸、さらにはアントラキノン骨格の1位に置換基のついた1−メチル−9,10−アントラキノン、1−エチル−9,10−アントラキノン、1−(t−ブチル)−9,10−アントラキノン、1−アミル―9,10−アントラキノン、1−フルオロ−9,10−アントラキノン、1−クロロ−9,10−アントラキノン、1−ブロモ−9,10−アントラキノン、9,10−アントラキノン−1−カルボン酸、さらにはアントラキノン骨格の2,7−位に置換基のついた2,7−ジメチル−9,10−アントラキノン、2,7−ジエチル−9,10−アントラキノン、2,7−ジ(t−ブチル)−9,10−アントラキノン、2,7−ジアミル―9,10−アントラキノン、2,7−ジフルオロ−9,10−アントラキノン、2,7−ジクロロ−9,10−アントラキノン、2,7−ジブロモ−9,10−アントラキノン、9,10−アントラキノン−2,7−ジカルボン酸等が挙げられる。
アントラキノン化合物の還元反応において使用される還元剤としては、9,10−アントラキノンのカルボニル基を還元するものであれば良く、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、水素化リチウムアルミニウム、亜ジチオン酸ナトリウム、過酸化チオ尿素等が用いられる。これら還元剤の添加量は、9,10−アントラキノン化合物に対して2モル倍以上通常は2から4モル倍である。2モル倍より少ないと、未反応の9,10−アントラキノンが残存するので好ましくない。一方、4モル倍より多く添加した場合は、還元剤の使用量が多くなり工業的に不利となる。
反応は、一般に溶媒中で行われる。用いる溶媒としては、とくに種類を選ばないが、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドのようなアミド系溶媒、メタノール、エタノールのようなアルコール系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサンのようなエーテル系溶媒が好適に用いられる。水もしくは水と水混和性の溶媒たとえばメタノール、エタノール等のアルコール系溶媒、アセトン等のケトン系溶媒、テトラヒドロフラン等の水溶性エーテル系溶媒と水との混合溶媒も使用可能である。溶媒を使用する場合は、通常9,10−アントラキノン化合物に対して5〜10重量倍程度用いる。また、この還元反応は窒素等の還元反応に不活性なガス雰囲気で行う方が好ましい。溶媒や反応器内を不活性ガスで置換することにより、還元剤の使用量を減らすことができる。
9,10−アントラキノン化合物の還元反応の反応温度は通常0℃以上、120℃以下で行われる。より好ましくは、40℃以上、80℃以下である。0℃未満の場合反応が遅く、また120℃を超えると副反応がおきやすく、9,10−アントラヒドロキノン化合物の純度が低下するので好ましくない。反応時間は、0.5時間から3時間、通常1時間で還元は終了する。得られた9,10−アントラヒドロキノン化合物は、通常単離せずに次のハロゲン化メチルナフタレンとの反応に供する。
9,10−アントラキノン化合物の還元反応においては、貴金属を触媒とする水素還元も可能である。使用可能な貴金属触媒としては、パラジウム担持活性炭、パラジウム担持アルミナ、白金担持活性炭が挙げられる。特に、5%パラジウム/カーボンは好適に用いられる。アントラキノン化合物に対する貴金属触媒の添加量は、通常0.01〜5重量%、より好ましくは0.2〜2重量%の間である。触媒の添加量が0.01重量%未満であれば水素化速度が遅く、5重量%を超えると副反応で芳香環の水素化が併発し好ましくない。使用する溶媒としては、メタノール、エタノール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒が挙げられる。溶媒中の9,10−アントラキノン化合物の濃度は、溶媒に対する溶解度によるが、通常5重量%から20重量%程度である。水素の圧力は、通常1Paから10Pa程度である。反応時間は1時間から3時間程度である。水素還元終了後、触媒を濾別して除き、濾液を次の反応におけるハロゲン化ナフチルメチル化合物との反応に供する。
また、1,4−ナフトキノンと1、3−ブタジエンとのディールス・アルダー反応によって得られる1,4,4a,9a―テトラヒドロ−9,10−アントラキノンまたはこのものが異性化した1,4−ジヒドロ−9,10−アントラヒドロキノンのアルカリ塩を9,10−アントラキノン化合物の還元剤として用いることができる。たとえば、9,10−アントラキノンと1,4−ジヒドロ−9,10−アントラヒドロキノンのアルカリ金属塩の水溶液の等モル混合物を窒素中で加熱することにより、9,10―アントラヒドロキノンのアルカリ金属塩の深紅水溶液を得ることができる。得られた、9,10−アントラヒドロキノンのアルカリ金属塩の水溶液は、通常単離せずに、次のハロゲン化メチルナフタレンとの反応に供することができる。
次に、9,10―アントラヒドロキノン化合物とハロゲン化メチルナフタレン化合物を反応させることにより、一般式(1)の化合物を得ることができる。この反応において使用されるハロゲン化メチルナフタレン化合物としては、まず、ナフタレン骨格の1位にハロゲン化メチル基が付いた1−クロロメチルナフタレン、1−ブロモメチルナフタレン、1−ヨードメチルナフタレン、さらにはナフタレン骨格の4位に置換基のついた4−メトキシ−1−クロロメチルナフタレン、4−エトキシ−1−クロロメチルナフタレン、4−クロロ−1−クロロメチルナフタレン、4−ブロモ−1−クロロメチルナフタレン、4−メチル−1−クロロメチルナフタレン、4−エチル−1−クロロメチルナフタレン、さらにはナフタレン骨格の2位に置換基のついた2−メトキシ−1−クロロメチルナフタレン、2−エトキシ−1−クロロメチルナフタレン、2−クロロ−1−クロロメチルナフタレン、2−ブロモ−1−クロロメチルナフタレン、2−メチル−1−クロロメチルナフタレン、2−エチル−1−クロロメチルナフタレン、さらにはナフタレン骨格の6位に置換基のついた6−メトキシ−1−クロロメチルナフタレン、6−エトキシ−1−クロロメチルナフタレン、6−クロロ−1−クロロメチルナフタレン、6−ブロモ−1−クロロメチルナフタレン、6−メチル−1−クロロメチルナフタレン、6−エチル−1−クロロメチルナフタレンなどが挙げられる。
そして、ナフタレン骨格の2位にハロゲン化メチル基の付いた2−クロロメチルナフタレン、2−ブロモメチルナフタレン、2−ヨードメチルナフタレン、さらにはナフタレン骨格の4位に置換基のついた4−メトキシ−2−クロロメチルナフタレン、4−エトキシ−2−クロロメチルナフタレン、4−クロロ−2−クロロメチルナフタレン、4−ブロモ−2−クロロメチルナフタレン、4−メチル−2−クロロメチルナフタレン、4−エチル−2−クロロメチルナフタレン、さらにはナフタレン骨格の6位に置換基のついた6−メトキシ−2−クロロメチルナフタレン、6−エトキシ−2−クロロメチルナフタレン、6−クロロ−2−クロロメチルナフタレン、6−ブロモ−2−クロロメチルナフタレン、6−メチル−2−クロロメチルナフタレン、6−エチル−2−クロロメチルナフタレン等が挙げられる。
9,10−アントラヒドロキノン化合物との反応において、1−ハロゲン化メチルナフタレンと2−ハロゲン化メチルナフタレンとの間に、顕著な反応性の差は見られない。
9,10−アントラヒドロキノン化合物に対するハロゲン化メチルナフタレン化合物の添加モル比率は、1.0〜3.0、好ましくは1.1〜2.0が好ましい。1.0未満では9,10−アントラヒドロキノン化合物が未反応のままで残り、3.0を超えると生成する10−ヒドロキシ−10−ナフチルメチルアントラセン−9(10H)−オン化合物の反応液に対する溶解度が高くなり、反応生成物から結晶化しがたくなり収率が低下する。
反応は、一般に溶媒中で行われる。用いる溶媒としては、とくに種類を選ばないが、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドのようなアミド系溶媒、メタノール、エタノールのようなアルコール系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサンのようなエーテル系溶媒が好適に用いられる。水もしくは水と水混和性の溶媒たとえばメタノール、エタノール等のアルコール系溶媒、アセトン等のケトン系溶媒、テトラヒドロフラン等の水溶性エーテル系溶媒と水との混合溶媒も使用可能である。溶媒を使用する場合は、通常9,10−アントラヒドロキノン化合物に対して5〜10重量倍程度用いる。また、9,10−アントラキノン化合物から9,10−アントラヒドロキノン化合物を合成した後、9,10−アントラヒドロキノン化合物を単離することなく、溶媒中に溶解あるいは懸諾した状態のまま、ハロゲン化メチルナフタレン化合物との反応を実施しても良い。
また、この反応において窒素等の不活性ガスで溶媒や反応器内を置換することが必要である。反応系に酸素が含まれると、9,10−アントラヒドロキノン化合物が酸化され、ハロゲン化メチルナフタレン化合物との反応が阻害され収率が低下する。
9,10−アントラヒドロキノン化合物とハロゲン化メチルナフタレン化合物との反応における反応温度は、0℃以上、100℃以下、より好ましくは20℃以上、60℃以下である。0℃未満では反応速度が遅すぎて、反応に時間がかかりすぎ、100℃を超えると、副反応が起きて生成物の純度が低下する。反応時間は通常0.5時間から3時間程度である。反応は、9,10−アントラヒドロキノン化合物を含む溶液に、攪拌下、ハロゲン化メチルナフタレン化合物を含む溶液を添加する方法がとられる。この添加速度は特に限定されないが、10分から1時間程度である。
反応終了後、反応液に貧溶媒例えば水を加え、析出した結晶もしくはオイル状物質を取り出し、アルコール等に溶解し、冷蔵庫に冷やして結晶化させ濾別する等により、結晶として取得することができる。
本発明の10−ヒドロキシ−10−ナフチルメチルアントラセン−9(10H)−オン化合物は、紫外線領域の光を吸収し、自身が励起され、励起種が分子内開裂を起こし、ラジカル種を発生する。開裂機構は明確ではないが、開裂によってナフチルメチルラジカルが発生するものと推測している。この開裂によって発生したラジカルがビニルモノマーの重合を開始させる働きがあることから、10−ヒドロキシ−10−ナフチルメチルアントラセン−9(10H)−オン化合物は光ラジカル重合開始剤として有用である。
ラジカル重合させるビニルモノマーとしてはスチレン、酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルを用いることが出来る。アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸−2−エチル−ヘキシル、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート等が挙げられる。
光ラジカル重合開始剤としての10−ヒドロキシ−10−ナフチルメチルアントラセン−9(10H)−オン化合物の添加量はビニルモノマーに対して0.01重量%から10重量%が好ましく、さらに好ましくは0.1重量%から3重量%である。光ラジカル重合開始剤の添加量が低すぎれば、硬化速度が遅くなり、また光ラジカル重合開始剤の添加量が多すぎると硬化物の物性が悪化する。
硬化はフィルム状で行うことも出来るし、塊状に硬化させることも可能である。フィルム状に硬化させる場合は、たとえばポリエステルフィルムの基材に光硬化性組成物をバーコーター用いて塗布し、ついで光照射する。用いる光源としては高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、白熱灯、紫外LED、青色LED、白色LED、フュージョン社製のHランプ、Dランプ、Vランプ等が挙げられる。太陽光の使用も可能である。光照射は酸素非存在下で実施することが望ましい。酸素存在下では酸素阻害のため表面のタック(べたつき)がなかなか取れず、開始剤の大量添加が必要となる。酸素非存在下での硬化方法としては、窒素ガス、ヘリウムガス等の雰囲気で行うことが挙げられる。また、酸素非過性の膜をかぶせて光硬化させる方法も有効である。
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はその趣旨を超えない限り、以下の記載例に限定されるものではない。特記しない限り、すべての部および百分率は重量%である。
生成物の確認および物性は下記の機器による測定により行った。
(1)融点:ゲレンキャンプ社製の融点測定装置、型式MFB−595(JIS K0064に準拠)
(2)赤外線(IR)分光光度計:日本分光社製、型式IR−810
(3)核磁気共鳴装置(NMR):日本電子社製、型式GSX FT NMR Spectorometer
(4)Massスペクトル:島津製作所社製、質量分析計、型式GCMS−QP5000
また、ラジカル重合性の判定は、ポリエステルフィルム表面に光ラジカル重合開始剤を含む重合組成物を塗布した後、光照射を行い、その表面のタック(べたつき)がなくなるまでの時間(タックフリータイム)の測定により行った。
また、昇華性は示差熱測定装置(DTA)を用いて測定した。示差熱測定装置によって、試料を10℃/分で昇温し、化合物の重量測定を行い、所定の重量減少値となった時点の温度を指標に昇華性を評価した。
示差熱測定装置(DTA):島津製作所製 DTG50H型
(実施例1)10−ヒドロキシ−10−(1−ナフチルメチル)アントラセン−9(10H)−オンの合成
9,10−アントラキノン2.4g(11.4ミリモル)、1,4,4a,9a−テトラヒドロアントラキノン 2.5g(11.4ミリモル)、水酸化ナトリウム1g(25ミリモル)、水18gを100mlオートクレーブに仕込み、窒素雰囲気下、110℃のオイルバスに浸漬し1時間加熱した。反応終了後、オートクレーブを室温まで冷却し、9,10−アントラヒドロキノンのジナトリウム塩の水溶液である深紅の溶液20mlを得た。次に、攪拌機、温度計を装備した容量が300ml三口フラスコに、先に得られた9,10−アントラヒドロキノンのジナトリウム塩20mlの水溶液(9,10−アントラキノン換算で20重量%、22.6ミリモル)を窒素雰囲気下で入れ、次に溶媒としてメタノール26mlを加え、最後に1−クロロメチルナフタレン4.6g(26ミリモル)のメタノール40ml溶液を約0.5時間かけて添加した。反応温度を20〜30℃程度にコントロールしながら、添加から約0.5時間攪拌を続けると次第に結晶が析出した。その後さらに約2時間攪拌後、反応液に水20mlを加えさらに0.5時間攪拌した後、反応液をロータリーエバポレーターを使用して反応液の容量が2/3程度まで減圧濃縮した。沈殿した結晶を吸引濾過・水洗い・乾燥し、薄黄色の結晶を4.2g(11.8ミリモル)得た。9,10−アントラヒドロキノンに対する生成物の収率は52モル%であった。
得られた結晶のIR、NMR、Massスペクトルを測定した結果、得られた薄黄色結晶は10−ヒドロキシ−10−(1−ナフチルメチル)アントラセン−9(10H)−オンであることがわかった。
(1)融点:125−127℃
(2)IR(KBr、cm−1):3480,3055,2960,2940,1654,1600,1582、1462,1322,1298、1221,1200,1178,1034,960、932,760,695.
(3)H−NMR(CDCl,270MHz):δ=2.61(s,1H),3.72(s,2H),6.58(d,J=8Hz,1H),7.09(d,J=8Hz,1H),7.15(t,J=8Hz,1H),7.40(t,J=8Hz,2H),7.52(t,J=8Hz,2H),7.68(t,J=8Hz,2H),7.76(d,J=8Hz,2H),7.82(d,J=8Hz,1H),8.02(d,J=8Hz,2H),8.32(d,J=8Hz,1H).
(4)MASSスペクトル(EI−MS)m/z:354(M
(実施例2) 10−ヒドロキシ−10−(1−ナフチルメチル)アントラセン−9(10H)−オンを光ラジカル重合開始剤とする組成物の光硬化速度評価実験
トリメチロールプロパントリアクリレート100重量部に対し、実施例1で得た10−ヒドロキシ−10−(1−ナフチルメチル)アントラセン−9(10H)−オンを1重量部添加した光ラジカル重合性組成物を調製した。次に、ポリエステルフィルム(東レ製ルミラー膜厚100μm、ルミラーは東レ株式会社の登録商標)上に調製した組成物を膜厚が12μmとなるようにバーコーターを使用して塗布した。この塗布膜に窒素雰囲気下、高圧水銀ランプ(CAMAG社製UVランプ)を使用し、照射強度1.8mw/cmの条件で照射したところ、硬化していることを確認した。タックフリータイムは30秒であった。
(比較例1)1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンを光ラジカル重合開始剤とする組成物の光硬化速度評価実験
10−ヒドロキシ−10−(1−ナフチルメチル)アントラセン−9(10H)−オン1重量部の代わりに、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン1重量部を添加した以外は実施例2と同様の方法で重合組成物を調整し、塗布膜を作成し、塗布膜に窒素雰囲気下、実施例2と同様に高圧水銀ランプを照射したところ、フィルム表面が硬化していることを確認した。タックフリータイムは30秒であった。
実施例2と比較例1から次のことが明らかである。すなわち、10−ヒドロキシ−10−(1−ナフチルメチル)アントラセン−9(10H)−オン化合物は、一般的な光ラジカル重合開始剤である1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンと同等の光ラジカル重合開始効果を有する。
(実施例3)10−ヒドロキシ−10−(1−ナフチルメチル)アントラセン−9(10H)−オンの昇華性の評価実験
実施例1で得た10−ヒドロキシ−10−(1−ナフチルメチル)アントラセン−9(10H)−オンを示差熱測定装置(DTA)に10−ヒドロキシ−10−(1−ナフチルメチル)アントラセン−9(10H)−オンの結晶 10mgを入れ、窒素ガス供給速度50ml/分の条件で、10℃/分の速度で昇温し、その間の試料の重量変化を測定した。所定の重量減少値となった時の温度を指標として昇華性を調べた。結果を表1に示す。
(比較例2)1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンの昇華性の評価
1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンをDTA(示差熱分析)により昇華性の評価を行った。評価方法は実施例3と同様に行い、所定の重量減少値となった時の温度を指標として昇華性を調べた。結果を表1に示す。
表1から次のことが明らかである。すなわち、10−ヒドロキシ−10−(1−ナフチルメチル)アントラセン−9(10H)−オンは一般的な光ラジカル重合開始剤である1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンと比べ、各重量減少値における温度が高く、たとえば、10−ヒドロキシ−10−(1−ナフチルメチル)アントラセン−9(10H)−オンが2%重量減少を示す温度では、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンは10%以上重量減少していることがわかる。このことから、10−ヒドロキシ−10−(1−ナフチルメチル)アントラセン−9(10H)−オンは、耐昇華性に優れているといえる。

Claims (3)

  1. 一般式(1)で表される10−ヒドロキシ−10−ナフチルメチルアントラセン−9(10H)−オン化合物。
    (一般式(1)において、X及びYは同一であっても異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基又はカルボキシル基を示し、Zは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、水酸基又はアルコキシ基を示し、nは1〜7の整数であり、nが2以上のとき、複数あるZは同一でも異なってもよい。)
  2. 請求項1記載の10−ヒドロキシ−10−ナフチルメチルアントラセン−9(10H)−オン化合物を有効成分として含有する光ラジカル重合開始剤。
  3. 一般式(2)で表される9,10−アントラヒドロキノン化合物と一般式(3)で表されるハロゲン化メチルナフタレン化合物を反応させることによる、請求項1記載の10−ヒドロキシ−10−ナフチルメチルアントラセン−9(10H)−オン化合物の製造法。
    (一般式(2)において、X及びYは同一であっても異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基又はカルボキシル基を示す。)

    (一般式(3)において、Wは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を示し、Zは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、水酸基又はアルコキシ基を示し、nは1〜7の整数であり、nが2以上のとき、複数あるZは同一でも異なってもよい。)
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