現在、エネルギー線硬化樹脂がコーティング、インキ、電子材料などの分野で広く用いられている。エネルギー線硬化樹脂は、エネルギー線重合性組成物にエネルギー線、例えば紫外線や電子線などを照射することにより重合、硬化させることによって得られる。このエネルギー線で硬化させる技術は、例えば木工用塗料、金属などのコーティング材、スクリーン印刷やオフセット印刷用インキ、電子基板に用いられるドライフィルムレジスト、また、ホログラム材料、封止剤、オーバーコート材、光造形用樹脂、接着剤などさまざまな用途に用いられている。
そして、このエネルギー線重合性組成物は、主に重合性化合物とエネルギー照射により重合性化合物の重合を開始させる重合開始剤より構成されている。重合方法としては、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合があり、ラジカル重合が古くから最も広く用いられている。このラジカル重合では、ラジカル重合開始剤を用い、エネルギー線、主に紫外線を照射することにより、ラジカル重合開始剤によりラジカルを発生させ、重合性化合物の重合を開始させている。
ラジカル重合開始剤は、主に分子内開裂型と水素引抜き型に分類される。分子内開裂型のラジカル重合開始剤では、特定波長の光を吸収することで、特定の部位の結合が切断され、その切断された部位にラジカルが発生し、それが重合開始剤となり重合性化合物の重合が始まる。一方、水素引き抜き型の場合は、特定波長の光を吸収し励起状態になり、その励起種が周囲にある水素供与体から水素引き抜き反応を起こし、ラジカルが発生し、それが重合開始剤となり重合性化合物の重合が始まる。
水素引き抜き型ラジカル重合開始剤は、水素供与体が必要であり、ラジカル発生効率が悪く感度が低い等の問題がある。一方、分子内開裂型ラジカル重合開始剤は、ラジカル発生効率は良好で感度が高いため広く用いられている。
よく用いられている分子内開裂型ラジカル重合開始剤として、アルキルフェノン系ラジカル重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系ラジカル重合開始剤、オキシムエステル系ラジカル重合開始剤が知られている。これらはカルボニル基に隣接した結合がα開裂して、ラジカル種を生成するタイプのものである。アルキルフェノン系ラジカル重合開始剤としては、ベンジルメチルケタール系ラジカル重合開始剤、α−ヒドロキシアルキルフェノン系ラジカル重合開始剤、アミノアルキルフェノン系ラジカル重合開始剤等があり、具体的な化合物としては、例えば、ベンジルメチルケタール系ラジカル重合開始剤としては、2,2’−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(商品名イルガキュア651、イルガキュアはビーエーエスエフ社の登録商標)等があり、α−ヒドロキシアルキルフェノン系ラジカル重合開始剤としては2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(商品名ダロキュア1173、ダロキュアはビーエーエスエフ社の登録商標)、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名イルガキュア184)、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(商品名イルガキュア2959)、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル}−2−メチルプロパン−1−オン(商品名イルガキュア127)等があり、さらに、アミノアルキルフェノン系ラジカル重合開始剤としては、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン(商品名イルガキュア907)あるいは2−ベンジルメチル2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタノン(商品名イルガキュア369)等が知られている。さらに、アシルホスフィンオキサイド系ラジカル重合開始剤としては、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキサイド(商品名ルシリンTPO、ルシリンはビーエーエスエフ社の登録商標)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド(商品名イルガキュア819)、オキシムエステル系ラジカル重合開始剤としては、(2E)−2−(ベンゾイルオキシイミノ)−1−[4−(フェニルチオ)フェニル]オクタン−1−オン(商品名イルガキュアOXE−01)等が挙げられる(特許文献1)。
上記のラジカル重合開始剤の中で早くから開発された開始剤としてベンジルメチルケタール系、α−ヒドロキシアルキルフェノン系のラジカル重合開始剤があるが、これらのラジカル重合開始剤は、その吸収波長の関係でエネルギー線の照射源として高圧水銀ランプが主に用いられてきた。その後、より長波長の光を含むメタルハライドランプやガリウムドープドランプが用いられるようになり、それらの照射波長にあったアミノアルキルフェノン系やアシルホスフィンオキサイド系、さらにはオキシムエステル系のラジカル重合開始剤が開発されてきた。
一方、エネルギー線としてUV光を用いた重合反応において、近年、照射源としてLED(発光ダイオード)が用いられるようになってきた。LEDの特徴としては、水銀ランプと異なり、発熱が少なく、かつ長寿命なことから、近年LEDを用いたUV硬化技術の開発が加速している。このLEDの代表的なものとしては、紫外LED、青色LEDが知られている。特に、紫外LEDがUV硬化用照射源として、インクジェット用または半導体関連のレジスト用に開発が先行している。この紫外LEDの中心波長は395nmのものが一般的であり、中心波長が385nmのLEDや中心波長が375nmのLEDも開発されている。これらの波長に適合する重合開始剤としては、先にあげた重合開始剤の中でも、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン(商品名イルガキュア907)あるいは2−ベンジルメチル2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(商品名イルガキュア369)、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキサイド(商品名ルシリンTPO)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド(商品名イルガキュア819)等が挙げられ、その中でも特にイルガキュア819が395nmの光に対して好感度であることが知られている(特許文献2)。
しかしながら、これらの重合開始剤は分子構造中の構成元素として、窒素原子、硫黄原子又はリン原子を含んでいることから、これらの原子を含む化合物は、生体に対する活性が高く、これらの重合開始剤は安全性に懸念が抱かれることが多い。
近年、より安全性の高い重合開始剤が求められるようになり、炭素原子、水素原子及び酸素原子のみからなる重合開始剤である、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(商品名ダロキュア1173),1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名イルガキュア184)、2,2’−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(商品名イルガキュア651)等のα−ヒドロキシアルキルフェノン系やベンジルメチルケタール系のラジカル重合開始剤が見直されるようになった。しかしながら、これらの炭素原子、水素原子及び酸素原子のみからなるα−ヒドロキシアルキルフェノン系、ベンジルメチルケタール系のラジカル重合開始剤は高圧水銀ランプに対してはある程度活性があるが、より長波長の範囲の光、すなわち波長が375nmから420nmまでの光を含むエネルギー線、例えば中心波長が395nmのLED光やガリウムドープドランプの発する光等に対しては活性が低いという問題があった。
そこで近年、このような欠点を補うため、波長が375nmから420nmまでの光を含むエネルギー線に感応し、かつ炭素原子、水素原子及び酸素原子のみからなるラジカル重合開始剤として、アントラセン系誘導体が報告されている。例えば、9,10−ビス(アシルオキシ)アントラセン化合物、9、10―ビス(置換カルボニルオキシ)アントラセン化合物は、波長が375nmから420nmまでの光を含むエネルギー線に感応するラジカル重合開始剤として有用であることが報告されている(特許文献3)。しかしながら、これらの化合物の重合開始剤としての活性は、市販のイルガキュア907(2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン)に比べて満足のいくものではなかった。
そこで、炭素原子、水素原子及び酸素原子のみからなる環境に優しいベンジルメチルケタール系、α−ヒドロキシアルキルフェノン系のラジカル重合開始剤が、波長が375nmから420nmまでの光を含むエネルギー線に感応可能となるようにしうるラジカル重合増感剤であり、かつ、それ自身も環境に優しい炭素原子、水素原子及び酸素原子のみからなるラジカル重合増感剤が求められている。
このようなラジカル重合増感剤として、9,10−ビス[(メタ)アクリロイルオキシ]アントラセン化合物が報告されている(特許文献4)。しかしながら、9,10−ビス[(メタ)アクリロイルオキシ]アントラセン化合物は、ラジカル重合性化合物であるアクリレートモノマーに対する溶解度が小さく、ラジカル重合増感剤としての活性も十分ではなく、いまだ十分満足できる性能を有するものではなかった。
以下、本発明を詳細に記述する。
(化合物)
まず、一般式(1)で表される9’−アシルオキシ−10’−[1,4−ビス(アシルオキシ)−2−ナフチル]アントラセン化合物について説明する。
一般式(1)において、Rは炭素数1〜8のアルキル基を示し、X、Y及びZは同一であっても異なっていてもよく、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基のうちのいずれかを示す。
一般式(1)で表される9’−アシルオキシ−10’−[1,4−ビス(アシルオキシ)−2−ナフチル]アントラセン化合物において、Rで示されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられる。X、Y及びZで示されるアルキル基としては、直鎖のもの分枝しているものいずれでも良く、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられる。
一般式(1)で表される9’−アシルオキシ−10’−[1,4−ビス(アシルオキシ)−2−ナフチル]アントラセン化合物の具体例としては、たとえば次のものが挙げられる。すなわち、X、Y及びZがいずれも水素原子である場合は、9’−アセチルオキシ−10’−[1,4−ビス(アセチルオキシ)−2−ナフチル]アントラセン、9’−プロピオニルオキシ−10’−[1,4−ビス(プロピオニルオキシ)−2−ナフチル]アントラセン、9’−ブチリルオキシ−10’−[1,4−ビス(ブチリルオキシ)−2−ナフチル]アントラセン、9’−バレリルオキシ−10’−[1,4−ビス(バレリルオキシ)−2−ナフチル]アントラセン、9’−ヘキサノイルオキシ−10’−[1,4−ビス(ヘキサノイルオキシ)−2−ナフチル]アントラセン、9’−ヘプタノイルオキシ−10’−[1,4−ビス(ヘプタノイルオキシ)−2−ナフチル]アントラセン、9’−オクタノイルオキシ−10’−[1,4−ビス(オクタノイルオキシ)−2−ナフチル]アントラセン、9’−(2−エチルヘキサノイルオキシ)−10’−[1,4−ビス(2−エチルヘキサノイルオキシ)−2−ナフチル]アントラセン、9’−ノナノイルオキシ−10’−[1,4−ビス(ノナノイルオキシ)−2−ナフチル]アントラセン等が挙げられる。
次に、X、Y、Zのいずれか一つ以上がアルキル基である場合の具体例としては、2’−メチル−9’−アセチルオキシ−10’−[1,4−ビス(アセチルオキシ)−2’−ナフチル]アントラセン、2’−メチル−9’−プロピオニルオキシ−10’−[1,4−ビス(プロピオニルオキシ)−2’−ナフチル]アントラセン、2’−メチル−9’−ブチリルオキシ−10’−[1,4−ビス(ブチリルオキシ)−2’−ナフチル]アントラセン、2’−メチル−9’−バレリルオキシ−10’−[1,4−ビス(バレリルオキシ)−2’−ナフチル]アントラセン、2’−メチル−9’−ヘキサノイルオキシ−10’−[1,4−ビス(ヘキサノイルオキシ)−2’−ナフチル]アントラセン、2’−メチル−9’−ヘプタノイルオキシ−10’−[1,4−ビス(ヘプタノイルオキシ)−2’−ナフチル]アントラセン、2’−メチル−9’−オクタノイルオキシ−10’−[1,4−ビス(オクタノイルオキシ)−2’−ナフチル]アントラセン、2’−メチル−9’−(2’−エチルヘキサノイルオキシ)−10’−[1,4−ビス(2’−エチルヘキサノイルオキシ)−2’−ナフチル]アントラセン、2’−メチル−9’−ノナノイルオキシ−10’−[1,4−ビス(ノナノイルオキシ)−2’−ナフチル]アントラセン、2’−エチル−9’−アセチルオキシ−10’−[1,4−ビス(アセチルオキシ)−2’−ナフチル]アントラセン、2’−エチル−9’−プロピオニルオキシ−10’−[1,4−ビス(プロピオニルオキシ)−2’−ナフチル]アントラセン、2’−エチル−9’−ブチリルオキシ−10’−[1,4−ビス(ブチリルオキシ)−2’−ナフチル]アントラセン、2’−エチル−9’−バレリルオキシ−10’−[1,4−ビス(バレリルオキシ)−2’−ナフチル]アントラセン、2’−エチル−9’−ヘキサノイルオキシ−10’−[1,4−ビス(ヘキサノイルオキシ)−2’−ナフチル]アントラセン、2’−エチル−9’−ヘプタノイルオキシ−10’−[1,4−ビス(ヘプタノイルオキシ)−2’−ナフチル]アントラセン、2’−エチル−9’−オクタノイルオキシ−10’−[1,4−ビス(オクタノイルオキシ)−2’−ナフチル]アントラセン、2’−エチル−9’−(2’−エチルヘキサノイルオキシ)−10’−[1,4−ビス(2’−エチルヘキサノイルオキシ)−2’−ナフチル]アントラセン、2’−エチル−9’−ノナノイルオキシ−10’−[1,4−ビス(ノナノイルオキシ)−2’−ナフチル]アントラセン、2’、6’−ジメチル−9’−アセチルオキシ−10’−[1,4−ビス(アセチルオキシ)−2’−ナフチル]アントラセン、2’、6’−ジメチル−9’−プロピオニルオキシ−10’−[1,4−ビス(プロピオニルオキシ)−2’−ナフチル]アントラセン、2’、6’−ジメチル−9’−ブチリルオキシ−10’−[1,4−ビス(ブチリルオキシ)−2’−ナフチル]アントラセン、2’、6’−ジメチル−9’−バレリルオキシ−10’−[1,4−ビス(バレリルオキシ)−2’−ナフチル]アントラセン、2’、6’−ジメチル−9’−ヘキサノイルオキシ−10’−[1,4−ビス(ヘキサノイルオキシ)−2’−ナフチル]アントラセン、2’、6’−ジメチル−9’−ヘプタノイルオキシ−10’−[1,4−ビス(ヘプタノイルオキシ)−2’−ナフチル]アントラセン、2’、6’−ジメチル−9’−オクタノイルオキシ−10’−[1,4−ビス(オクタノイルオキシ)−2’−ナフチル]アントラセン、2’、6’−ジメチル−9’−(2’−エチルヘキサノイルオキシ)−10’−[1,4−ビス(2’−エチルヘキサノイルオキシ)−2’−ナフチル]アントラセン、2’、6’−ジメチル−9’−ノナノイルオキシ−10’−[1,4−ビス(ノナノイルオキシ)−2’−ナフチル]アントラセン、6−メチル−9’−アセチルオキシ−10’−[1,4−ビス(アセチルオキシ)−2−ナフチル]アントラセン、6−メチル−9’−プロピオニルオキシ−10’−[1,4−ビス(プロピオニルオキシ)−2−ナフチル]アントラセン、6−メチル−9’−ブチリルオキシ−10’−[1,4−ビス(ブチリルオキシ)−2−ナフチル]アントラセン、6−メチル−9’−バレリルオキシ−10’−[1,4−ビス(バレリルオキシ)−2−ナフチル]アントラセン、6−メチル−9’−ヘキサノイルオキシ−10’−[1,4−ビス(ヘキサノイルオキシ)−2−ナフチル]アントラセン、6−メチル−9’−ヘプタノイルオキシ−10’−[1,4−ビス(ヘプタノイルオキシ)−2−ナフチル]アントラセン、6−メチル−9’−オクタノイルオキシ−10’−[1,4−ビス(オクタノイルオキシ)−2−ナフチル]アントラセン、6−メチル−9’−(2−エチルヘキサノイルオキシ)−10’−[1,4−ビス(2−エチルヘキサノイルオキシ)−2−ナフチル]アントラセン、6−メチル−9’−ノナノイルオキシ−10’−[1,4−ビス(ノナノイルオキシ)−2−ナフチル]アントラセン等が挙げられる。
上記に挙げた化合物の中でも、合成の容易さと増感剤としての性能の高さから、特に、9’−アセチルオキシ−10’−[1,4−ビス(アセチルオキシ)−2−ナフチル]アントラセン、9’−プロピオニルオキシ−10’−[1,4−ビス(プロピオニルオキシ)−2−ナフチル]アントラセンが好ましい。
(製造方法)
次に、上記一般式(1)で表される9’−アシルオキシ−10’−[1,4−ビス(アシルオキシ)−2−ナフチル]アントラセン化合物の製造方法について説明する。
本発明の9’−アシルオキシ−10’−[1,4−ビス(アシルオキシ)−2−ナフチル]アントラセン化合物は、まず、下記第一反応に示すように1,4−ナフトキノン化合物と9−アントロン化合物とを酸存在下反応させることにより10’−(1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチル)アントラセン−9’(10’H)−オン化合物を製造し、そして、下記第二反応に示すように、第一反応で得られた10’−(1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチル)アントラセン−9’(10’H)−オン化合物とアシル化剤を塩基性化合物の存在下に反応させることにより得ることが出来る。
第一反応において、X、Y及びZは同一であっても異なっていてもよく、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基のうちのいずれかを示す。
第二反応において、Rは、炭素数1〜8のアルキル基を示し、X、Y及びZは同一であっても異なっていてもよく、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基のうちのいずれかを示す。
第一反応に用いられる1,4−ナフトキノン化合物としては、例えば次のものが挙げられる。すなわち、1,4−ナフトキノン、6−メチル−1,4−ナフトキノン、6−エチル−1,4−ナフトキノン等である。
第一反応に用いられる9−アントロン化合物としては、例えば次の化合物が挙げられる。すなわち、9−アントロン、2−メチル−9−アントロン、2−エチル−9−アントロン、6−メチル−9−アントロン、6−エチル−9−アントロン、2,6−ジメチル−9−アントロン等である。
第一反応に用いられる酸としては、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸、硫酸、塩酸等の無機酸等が用いられる。p−トルエンスルホン酸が、反応操作上取り扱いが容易なことから好ましい。
第一反応は通常溶媒の存在下で行われる。使用する溶媒としては、使用する酸と反応しなければよく、通常、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族系溶媒、ジクロルメタン、ジクロロエタン、ジクロロエチレン等のハロゲン系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒が用いられる。反応操作上取り扱いが容易なことから特に好ましいのはトルエンである。
第一反応において、1,4−ナフトキノン化合物は9−アントロン化合物より等モル以下に用いることが望ましい。1,4−ナフトキノン化合物を9−アントロン化合物に対して等モルを越えて添加すると反応混合物が黒くなり、生成物の脱色・精製が困難となる場合がある。好ましくは、1,4−ナフトキノン化合物の9−アントロン化合物に対する添加比率は0.8モル倍程度が望ましい。ナフトキノンを等モルを越えて添加した場合は生成物の10’−(1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチル)アントラセン−9’(10’H)−オン化合物と未反応の1,4−ナフトキノンがキンヒドロン化合物を作るために真っ黒な結晶が生成し、その後の精製が困難となる場合がある。
第一反応の反応温度は、80℃以上、140℃以下が望ましい。当該温度範囲が実用的な反応速度を得るために好ましく、140℃を超える温度では副反応による副生物が増加する傾向にある。特に好ましくは100℃以上、120℃以下である。反応時間は反応温度によるが、通常0.5時間から2時間である。トルエン等、芳香族系の溶媒を用いた場合、反応の進行に伴い、生成物が析出してくるので、このものを濾過乾燥すれば、10’−(1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチル)アントラセン−9’(10’H)−オン化合物が得られる。
第一反応により得られる10’−(1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチル)アントラセン−9’(10’H)−オン化合物としては、例えば、10’−(1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチル)アントラセン−9’(10’H)−オン、2’−メチル−10’−(1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチル)アントラセン−9’(10’H)−オン、2’−エチル−10’−(1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチル)アントラセン−9’(10’H)−オン、1’−メチル−10’−(1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチル)アントラセン−9’(10’H)−オン、1’−エチル−10’−(1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチル)アントラセン−9’(10’H)−オン、3’−メチル−10’−(1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチル)アントラセン−9’(10’H)−オン、3’−エチル−10’−(1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチル)アントラセン−9’(10’H)−オン、4’−メチル−10’−(1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチル)アントラセン−9’(10’H)−オン、4’−エチル−10’−(1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチル)アントラセン−9’(10’H)−オン、2’,6’−ジメチル−10’−(1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチル)アントラセン−9’(10’H)−オン、2’,6’−ジエチル−10’−(1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチル)アントラセン−9’(10’H)−オン、2’,7’−ジメチル−10’−(1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチル)アントラセン−9’(10’H)−オン、10’−(5−メチル−1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチル)アントラセン−9’(10’H)−オン、10’−(5−エチル−1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチル)アントラセン−9’(10’H)−オン、10’−(6−メチル−1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチル)アントラセン−9’(10’H)−オン、10’−(6−エチル−1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチル)アントラセン−9’(10’H)−オン等が挙げられる。
第一反応で得られた10’−(1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチル)アントラセン−9’(10’H)−オン化合物を塩基性化合物存在下、アシル化剤と反応させる第二反応により、一般式(1)に示す9’−アシルオキシ−10’−[1,4−ビス(アシルオキシ)−2−ナフチル]アントラセン化合物を製造することができる。
アシル化剤としては、酸無水物又は酸ハロゲン化物が用いられる。酸無水物としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸等が挙げられる。また、酸ハロゲン化物としては、塩化アセチル、塩化プロピオニル、塩化n−ブチリル、塩化i−ブチリル、塩化n−バレリル、塩化i−バレリル、塩化n−ヘキサノイル、塩化n−ヘプタノイル、塩化n−オクタノイル、塩化2−エチルヘキサノイル、臭化アセチル、臭化プロピオニル、臭化n−ブチリル、臭化i−ブチリル、臭化n−バレリル、臭化i−バレリル、臭化n−ヘキサノイル、臭化n−ヘプタノイル、臭化n−オクタノイル、臭化2−エチルヘキサノイル等が挙げられる。
10’−(1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチル)アントラセン−9’(10’H)−オン化合物に対するアシル化剤の添加比率は、アシル化剤が酸ハロゲン化物の場合は、3モル倍以上4モル倍未満、好ましくは3.3モル倍以上3.6モル倍未満である。3モル倍未満では原料の9−アントロンが残留し得られた反応物の純度が低下し、また、4モル倍以上では、多量残留した酸ハロゲン化物のため、反応物が結晶化し難くなり収率が低下し、いずれも好ましくない。一方、アシル化剤が酸無水物の場合も同様に、10’−(1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチル)アントラセン−9’(10’H)−オン化合物に対して3モル倍以上4モル倍未満用いることで十分であるが、酸無水物を反応溶媒と兼ねて用いることも可能であり、その場合は、10’−(1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチル)アントラセン−9’(10’H)−オン化合物に対して酸無水物を4モル倍以上用いても良い。
塩基性化合物としては、有機塩基又は無機塩基が用いられる。有機塩基としては、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、ピリジン、α−ピコリン、β−ピコリン、γ−ピコリン、ピペリジン等が挙げられる。一方、無機塩基としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられる。
アシル化反応における塩基性化合物の添加比率であるが、塩基性化合物が無機塩基の場合は原料10’−(1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチル)アントラセン−9’(10’H)−オン化合物に対して3モル倍以上、3.3モル倍未満添加する。一方、塩基性化合物が有機塩基の場合は、原料の10’−(1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチル)アントラセン−9’(10’H)−オン化合物に対して3モル倍以上、5モル倍未満添加する。
10’−(1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチル)アントラセン−9’(10’H)−オン化合物とアシル化剤との反応においては、通常、溶媒を使用する。塩基性化合物が有機塩基である場合は、溶媒としては、アシル化剤と反応しなければ特に種類を選ばない。例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族系溶媒又は塩化メチレン、ジクロロエタン、ジクロロエチレン等のハロゲン系溶媒のような水非混和性溶媒、さらには、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒又はテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒のような水混和性溶媒を用いることが出来る。
一方、塩基性化合物が無機塩基である場合は、アシル化剤を溶解させる溶媒としては水非混和性の溶媒が好ましい。水混和性の溶媒を使用する場合、アシル化剤が容易に加水分解され有機酸となるため、生成物の収率が大幅に低下し、好ましくない。水非混和性の溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、p−キシレン、クロロベンゼン、メチルナフタレン、テトラリン等の芳香族系溶媒、塩化メチレン、ジクロロエタン、ジクロロエチレン等のハロゲン系溶媒を使用することが出来る。
溶媒の使用量は、水混和性の溶媒を用いる場合は、10’−(1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチル)アントラセン−9’(10’H)−オン化合物を溶解し得る量であればよい。具体的には、水混和性溶媒に対する10’−(1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチル)アントラセン−9’(10’H)−オン化合物の仕込濃度は、通常5重量%以上、30重量%未満である。一方、水非混和性の溶媒を用いる場合は、アシル化剤を溶解し得る量であれば良い。通常、水非混和性の溶媒に対するアシル化剤の濃度は5重量%以上、30重量%未満である。また、無機塩基を用いて10’−(1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチル)アントラセン−9’(10’H)−オン化合物のアルカリ塩水溶液を調製する場合は、その濃度は通常5重量%以上20重量%未満である。
無機塩基の水溶液中に10’−(1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチル)アントラセン−9’(10’H)−オン化合物を溶解させ、アシル化剤を溶解した水非混和性溶媒を加えて反応させる場合は、相間移動触媒の使用が有効である。相間移動触媒としては、例えば、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラプロピルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、トリオクチルメチルアンモニウムブロマイド、トリオクチルエチルアンモニウムブロマイド、トリオクチルプロピルアンモニウムブロマイド、トリオクチルブチルアンモニウムブロマイド、ベンジルジメチルオクタデシルアンモニウムブロマイド、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラプロピルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムクロライド、トリオクチルメチルアンモニウムクロライド、トリオクチルエチルアンモニウムクロライド、トリオクチルプロピルアンモニウムクロライド、トリオクチルブチルアンモニウムクロライド、ベンジルジメチルオクタデシルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
相間移動触媒の添加量としては、10’−(1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチル)アントラセン−9’(10’H)−オン化合物に対して、好ましくは 0.01重量%以上、10重量%未満、より好ましくは、0.1重量%以上、1.0重量%未満である。0.01重量%未満であると、反応速度が遅く、また、10重量%以上だと生成物の純度が低下するので好ましくない。
反応温度は、好ましくは0℃以上80℃未満、より好ましくは0℃以上20℃未満である。本反応は発熱反応であり、冷却が必要である。0℃未満では、溶媒の使用量にもよるが、10’−(1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチル)アントラセン−9’(10’H)−オン化合物の溶媒に対する溶解度が低くなるため、10’−(1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチル)アントラセン−9’(10’H)−オン化合物がスラリー状態となり、反応速度が低下する。一方、80℃以上だと、副反応が進行し、目的物の純度が低下し、好ましくない。
反応時間は、反応温度にもよるが、通常、15分以上3時間未満である。反応終了後、溶媒が水混和性の場合はメタノール等のアルコール系溶媒を加えて未反応のアシル化剤を中和した後、水を加えて生成物を結晶化させる。また、溶媒が水非混和性の場合は、沈殿した塩基性化合物の塩酸塩を水を加えて溶解して二層とし、次いで分液した水非混和溶媒にメタノールを加えた後濃縮し、生成物を結晶化させる。析出した結晶を濾別・洗浄することにより、目的物を得ることができる。また、必要に応じて再結晶等により精製してもよい。
得られた化合物の同定は、1H−NMRスペクトル、IRスペクトルを用いて行い、9’−アシルオキシ−10’−[1,4−ビス(アシルオキシ)−2−ナフチル]アントラセン化合物であることを確認した。
(ラジカル重合増感剤)
本発明の一般式(1)で示される9’−アシルオキシ−10’−[1,4−ビス(アシルオキシ)−2−ナフチル]アントラセン化合物はラジカル重合において増感作用を有するので、ラジカル重合増感剤とすることができる。即ち、本発明のラジカル重合増感剤は、当該化合物を含有するラジカル重合増感剤である。
(ラジカル重合性組成物)
本発明の9’−アシルオキシ−10’−[1,4−ビス(アシルオキシ)−2−ナフチル]アントラセン化合物を含有するラジカル重合増感剤とラジカル重合開始剤及びラジカル重合性化合物とを混合することにより、ラジカル重合性組成物とすることができる。当該ラジカル重合性組成物は、波長が375nmから420nmの光を含むエネルギー線を照射することにより、容易に光硬化させることができる。
本発明で用いるラジカル重合開始剤としては、炭素原子、水素原子及び酸素原子のみからなり環境にやさしいという点と本発明のラジカル重合増感剤の効果が顕著であるという点から、波長が375nmから420nmの光を含むエネルギー線に対して吸光係数が小さいベンジルメチルケタール系、α−ヒドロキシアルキルフェノン系重合開始剤等のラジカル重合開始剤が特に挙げられる。
具体的な化合物としては、ベンジルメチルケタール系ラジカル重合開始剤としては、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(商品名「イルガキュア651」ビーエーエスエフ社製)等が挙げられ、α−ヒドロキシアルキルフェノン系ラジカル重合開始剤としては2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(商品名「ダロキュア1173」ビーエーエスエフ社製)、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名「イルガキュア184」ビーエーエスエフ社製)、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(商品名「イルガキュア2959」ビーエーエスエフ社製)、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−1−オン(商品名「イルガキュア127」ビーエーエスエフ社製)が挙げられる。
特に、ベンジルメチルケタール系ラジカル重合開始剤である2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(商品名「イルガキュア651」ビーエーエスエフ社製)、α−ヒドロキシアルキルフェノン系ラジカル重合開始剤である2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(商品名「ダロキュア1173」ビーエーエスエフ社製)、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名「イルガキュア184」ビーエーエスエフ社製)が好ましい。また、アセトフェノン系ラジカル重合開始剤であるアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−エトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−メトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−イソプロポキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−i−ブトキシ−2−フェニルアセトフェノン、ベンジル系ラジカル重合開始剤であるベンジル、4,4’−ジメトキシベンジル、アントラキノン系ラジカル重合開始剤である2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−フェノキシアントラキノン、2−(フェニルチオ)アントラキノン、2−(ヒドロキシエチルチオ)アントラキノン等も用いることができる。
ラジカル重合開始剤に対するラジカル重合増感剤である本発明の9’−アシルオキシ−10’−[1,4−ビス(アシルオキシ)−2−ナフチル]アントラセン化合物の添加量は、0.01重量倍以上、10重量倍未満、より好ましくは0.05重量倍以上、1.0重量倍未満である。0.01重量倍未満であれば、増感剤の効果が乏しく,また、10重量倍以上加えても性能はそれ以上には上がらないので添加する意味がない。
本発明のラジカル重合増感剤の作用機構は明らかでないが、紫外LED領域の光を吸収して9’−アシルオキシ−10’−[1,4−ビス(アシルオキシ)−2−ナフチル]アントラセン化合物が励起され、励起種がラジカル重合開始剤にエネルギーを与え、ラジカル重合開始剤の開裂によりラジカル種の発生を促進するためと考えられる。
本発明で用いるラジカル重合性化合物としては、例えば、スチレン、p−ヒドロキシスチレン、酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等、又はこれらのオリゴマー等が挙げられる。
アクリル酸エステルとしては、単官能アクリレートとしてアクリル酸メチル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、2−アクリロイルオキシエチルサクシネート、イソステアリルアクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチルアクリレート、ステアリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、イソデシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、トリデシルアクリレート、カプロラクトンアクリレート、エトキシ化ノニルフェニルアクリレート、イソボニルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、i−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、ベンジルアクリレート等が挙げられ、二官能アクリレートとして、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、1,10−デカンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、エトキシ化(3)ビスフェノールAジアクリレート、アルコキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート等が挙げられ、多官能アクリレートとして、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス−(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等が挙げられる。さらには、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリブタジエンアクリレート、ポリオールアクリレート、ポリエーテルアクリレート、シリコーン樹脂アクリレート、イミドアクリレート等も使用可能である。
(メタ)クリレート化合物としては、単官能メタクリレートとして、メタクリル酸メチル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、フェノキシエチレングリコールメタクリレート、ステアリルメタクリレート、2−メタクリロイルオキシエチルサクシネート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、2−フェノキシエチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、トリデシルメタクリレート等が挙げられ、二官能メタクリレートとして、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、グリセリンジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレンジオールジメタクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート等が挙げられ、多官能メタクリレートとしては、トリメチロールプロパントリメタクリレート等が挙げられる。又、これらのラジカル重合性化合物は、単独で用いても、二種以上組み合わせて用いてもよい。
本発明のラジカル重合開始剤及びラジカル重合増感剤の合計した添加量は、ラジカル重合性化合物に対して0.01重量%以上3.0重量%未満、好ましくは0.05重量%以上1.0重量%未満である。ラジカル重合開始剤及びラジカル重合増感剤の合計量の濃度が0.01重量%より低すぎると、光硬化速度が遅くなってしまい、一方、ラジカル重合開始剤及びラジカル重合増感剤の合計量の濃度が3.0重量%より多すぎると、光硬化物の物性が悪化するため好ましくない。
なお、本発明のラジカル重合性組成物には、本発明のラジカル重合増感剤、ラジカル重合開始剤及びラジカル重合性化合物の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、本発明のラジカル重合増感剤以外のラジカル重合増感剤を含有させることができる。また、希釈剤、着色剤、有機又は無機の充填剤、レベリング剤、界面活性剤、消泡剤、増粘剤、難燃剤、酸化防止材、安定剤、滑剤、可塑剤などの各種樹脂添加剤を含有させることができる。
(重合方法)
当該ラジカル重合性組成物の重合はフィルム状で行うことも出来るし、塊状に硬化させることも可能である。フィルム状に重合させる場合は、当該ラジカル重合性組成物を液状にし、たとえばポリエステルフィルムまたはタックフィルムなどの基材上に、たとえばバーコーターなどを用いてラジカル重合性組成物を塗布し、波長が375nmから420nmの光を含むエネルギー線を照射して重合させる。
(塗布)
フィルム状に重合させる場合に用いられる基材としてはフィルム、紙、アルミ箔、金属等が主に用いられるが特に限定されない。基材としてのフィルムに用いられる素材としてはポリエステル、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリビニルアルコール(PVA)等が用いられる。当該基材フィルムの膜厚は通常100μm未満の膜厚のものを使用する。光硬化性組成物を塗布して得られる塗膜の膜厚を調整するために使用するバーコーターは特に指定しないが、膜厚が1μm以上100μm未満に調整できるバーコーターを使用する。一方、スピンコーティング法やスクリーン印刷法により、さらに薄い膜厚あるいは厚い膜厚にして塗布することもできる。
(雰囲気)
また、フィルム状に重合させるときは、酸素存在下では酸素阻害のためフィルム表面のべたつきがなかなか取れず、開始剤の大量添加が必要となる。よって酸素非存在下で重合させることが望ましい。そのような重合方法としては、窒素ガス、ヘリウムガス等の雰囲気で行うことが挙げられる。また、タックフィルムまたはポリエチレンフィルム等で塗布した組成物を覆った後に、ラジカル重合させる方法も有効である。
(照射源)
このようにして調製したラジカル重合性組成物からなる塗膜に、波長が375nmから420nmまでの範囲の光を含むエネルギー線を1〜2000mW/cm2程度の強さで光照射することにより、光硬化物を得ることができる。用いる照射源としては395nmの光を中心波長とする紫外LED、385nm光を中心波長とする紫外LED及び375nmの光を中心波長とする紫外LEDが好ましいが、波長が375nmから420nmの間に発光スペクトルを持つランプであれば使用可能であり、フュージョン社製のD−バルブ、V−バルブ等の無電極ランプや、キセノンランプ、ブラックライト、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ及びガリウムドープドランプ等も使用可能である。また、太陽光によっても硬化させることもできる。
(タック・フリー・テスト)
本発明のラジカル重合性組成物が光硬化したかどうかを判定する方法としては、タック・フリー・テスト(指触テスト)を用いた。すなわち、ラジカル重合性組成物に光を照射すると、硬化して組成物のタック(べたつき)がなくなるため、光を照射してからタック(べたつき)がなくなるまでの時間を測定することにより、光硬化時間を測定した。
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はその趣旨を超えない限り、以下の記載例に限定されるものではない。特記しない限り、すべての部および百分率は重量%である。
生成物の確認は下記の機器による測定により行った。
(1)融点:ゲレンキャンプ社製の融点測定装置、型式MFB−595(JIS K0064に準拠)
(2)赤外線(IR)分光光度計:日本分光社製、型式IR−810
(3)核磁気共鳴装置(NMR):日本電子社製、型式GSX FT NMR Spect orometer
(合成実施例1)10’−(1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチル)アントラセン−9’(10’H)−オンの合成
温度計、攪拌機付きの100ml三口フラスコ中に9−アントロン3.88g(20.0ミリモル)、1,4−ナフトキノン2.95g(18.7ミリモル)、p−トルエンスルホン酸60mgを仕込み、トルエン14g加えた後、窒素置換し、105℃のオイルバスに50分間浸漬した。加熱により一旦均一な溶液となった後結晶が析出した。析出した結晶を濾別して10gのアセトン中リスラリーし、濾別・乾燥して淡黄白色の10’−(1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチル)アントラセン−9’(10’H)−オン4.96g(14.1ミリモル)を得た。原料1,4−ナフトキノンに対する収率は75モル%であった。
(1)融点:191−193℃
(2)IR(KBr,cm−1):3450,3350,1646,1604,1460,1336,1282,1160,1072,938,760,710,695.
(3)1H−NMR(270MHz,CDCl3):δ=5.94(s,1H),6.46(s,1H),7.42−7.51(m,4H),7.51−7.58(m,4H),8.20(s,1H),8.26−8.34(m,4H).
(合成実施例2)9’−アセチルオキシ−10’−[1,4−ビス(アセチルオキシ)−2−ナフチル]アントラセンの合成
温度計、攪拌機付きの200ml三口フラスコ中、窒素雰囲気下、合成実施例1と同様の方法で得た10’−(1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチル)アントラセン−9’(10’H)−オン3.52g(10.0ミリモル)、無水酢酸10.2g(100.0ミリモル)、酢酸20mlを仕込み、得られたスラリーを氷水で冷やしながらピリジン3.2g(40.0ミリモル)を加えて反応させた。均一溶液となった反応液を、水100ml/メタノール100mlの混合液に投入し沈殿を析出させた。析出した沈殿を吸引ろ過・乾燥し、9’−アセチルオキシ−10’−[1,4−ビス(アセチルオキシ)−2−ナフチル]アントラセンの薄黄色の紛体4.11g(8.6ミリモル)を得た。10’−(1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチル)アントラセン−9’(10’H)−オンに対する単離収率は86モル%であった。
(1)融点:147−149℃
(2)IR(KBr,cm−1):3070,2940,1765,1604,1360,1200,1170,1165,1062,1025,1008,890,770,741,600.
(3)1H−NMR(400MHz、CDCl3):δ=1.59(s,3H),2.48(s,3H),2.69(s,3H),7.34(s,1H),7.36−7.44(m,2H),7.50−7.57(m,2H),7.63−7.68(m,1H),7.68−7.76(m,3H),7.86−7.92(m,1H).7.95−8.05(m、3H).
(合成実施例3)9’−プロピオニルオキシ−10’−[1,4−ビス(プロピオニルオキシ)−2−ナフチル]アントラセンの合成
温度計、攪拌機付きの200ml三口フラスコ中、窒素雰囲気下、合成実施例1と同様の方法で得た10’−(1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチル)アントラセン−9’(10’H)−オン3.52g(10.0ミリモル)、無水プロピオン酸13.0g(100.0ミリモル)、酢酸20mlを仕込み、得られたスラリーを氷水で冷やしながらピリジン3.2g(40.0ミリモル)を加えて反応させた。均一溶液になった反応液を、水100ml/メタノール100mlの混合液に投入し沈殿を析出させた。析出した沈殿を吸引ろ過・乾燥し、9’−プロピオニルオキシ−10’−[1,4−ビス(プロピオニルオキシ)−2−ナフチル]アントラセンの薄黄色の粉末4.2g(8.3ミリモル)を得た。10’−(1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチル)アントラセン−9’(10’H)−オンに対する単離収率は83モル%であった。
(1)融点:212−214℃
(2)IR(KBr,cm−1):3075,2990,2950,1763,1600,1462,1442,1422,1368,1260,1204、1190,1170,1158,1136,900,772,730,620.
(3)1H−NMR(400MHz、CDCl3):δ=0.31(t,J=8Hz,3H),1.36(t,J=8Hz,3H),1.50(t,J=8Hz,3H),1.89(q,J=8Hz,2H),2.76(q,J=8Hz,2H),3.00(q,J=8Hz,2H),7.34(s,1H),7.25−7.41(m,2H),7.45−7.51(m,2H),7.61−7.66(m,1H),7.66−7.74(m,3H),7.86−7.91(m,1H),7.94−8.03(m,3H).
(評価実施例1)9’−アセチルオキシ−10’−[1,4−ビス(アセチルオキシ)−2−ナフチル]アントラセンをラジカル重合増感剤とする光硬化速度評価実験(ラジカル重合開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(ダロキュア1173)を使用した例)
ラジカル重合性化合物であるトリメチロールプロパントリアクリレート100重量部、ラジカル重合開始剤としての2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン1.4重量部に対し、ラジカル重合増感剤として、合成実施例2と同様の方法で得た9’−アセチルオキシ−10’−[1,4−ビス(アセチルオキシ)−2−ナフチル]アントラセンを0.4重量部添加したラジカル重合性組成物を調製した。次に、ポリエステルフィルム(東レ製ルミラー膜厚100ミクロン、ルミラーは東レ株式会社の登録商標)上に調製した組成物を膜厚が30ミクロンとなるようにバーコーターを使用して塗布した。塗布後、この塗布膜をタックフィルムで覆い、ついで空気雰囲気下、紫外LED(Phoseon社製、中心波長395nm、照射強度1.0W/cm2)を用いて光照射したところ、硬化していることを確認した。タックフリータイムは0.8秒であった。
(評価実施例2)9’−プロピオニルオキシ−10’−[1,4−ビス(プロピオニルオキシ)−2−ナフチル]アントラセンをラジカル重合増感剤とする光硬化速度評価実験(ラジカル重合開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(ダロキュア1173)を使用した例)
9’−アセチルオキシ−10’−[1,4−ビス(アセチルオキシ)−2−ナフチル]アントラセンを合成実施例3と同様の方法で得た9−(プロピオニルオキシ)アントラセンに代えたこと以外は、評価実施例1と全く同様にしてラジカル重合性組成物を調製し、塗布後紫外LED光を照射した。タックフリータイムは0.8秒であった。
(評価実施例3)9’−アセチルオキシ−10’−[1,4−ビス(アセチルオキシ)−2−ナフチル]アントラセンをラジカル重合増感剤とする光硬化速度評価実験(ラジカル重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(イルガキュア184)を使用した例)
ラジカル重合性化合物であるトリメチロールプロパントリアクリレート100重量部、ラジカル重合開始剤としての1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン1.0重量部に対し、ラジカル重合増感剤として、合成実施例2と同様にして得た9’−アセチルオキシ−10’−[1,4−ビス(アセチルオキシ)−2−ナフチル]アントラセンを0.4重量部添加したラジカル重合性組成物を調製した。次に、ポリエステルフィルム(東レ製ルミラー膜厚100ミクロン、ルミラーは東レ株式会社の登録商標)上に調製した組成物を膜厚が30ミクロンとなるようにバーコーターを使用して塗布した。塗布後、この塗布膜をタックフィルムで覆い、ついで空気雰囲気下、紫外LED(Phoseon社製、中心波長395nm、照射強度1.0W/cm2)を用いて光照射したところ、硬化していることを確認した。タックフリータイムは0.8秒であった。
(評価実施例4)9’−プロピオニルオキシ−10’−[1,4−ビス(プロピオニルオキシ)−2−ナフチル]アントラセンをラジカル重合増感剤とする光硬化速度評価実験(ラジカル重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(イルガキュア184)を使用した例)
9’−アセチルオキシ−10’−[1,4−ビス(アセチルオキシ)−2−ナフチル]アントラセンを合成実施例3と同様の方法で得た9’−プロピオニルオキシ−10’−[1,4−ビス(プロピオニルオキシ)−2−ナフチル]アントラセンに代えたこと以外は、評価実施例3と全く同様にしてラジカル重合性組成物を調製し、塗布後紫外LED光を照射した。タックフリータイムは0.9秒であった。
(評価実施例5)9’−アセチルオキシ−10’−[1,4−ビス(アセチルオキシ)−2−ナフチル]アントラセンをラジカル重合増感剤とする光硬化速度評価実験(ラジカル重合開始剤として2,2’−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(イルガキュア651)を使用した例)
ラジカル重合性化合物であるトリメチロールプロパントリアクリレート100重量部、ラジカル重合開始剤としての2,2’−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン0.15重量部に対し、ラジカル重合増感剤として、合成実施例2と同様にして得た9’−アセチルオキシ−10’−[1,4−ビス(アセチルオキシ)−2−ナフチル]アントラセンを0.4重量部添加したラジカル重合性組成物を調製した。次に、ポリエステルフィルム(東レ製ルミラー膜厚100ミクロン、ルミラーは東レ株式会社の登録商標)上に調製した組成物を膜厚が30ミクロンとなるようにバーコーターを使用して塗布した。塗布後、この塗布膜をタックフィルムで覆い、ついで空気雰囲気下、紫外LED(Phoseon社製、中心波長395nm、照射強度1.0W/cm2)を用いて光照射したところ、硬化していることを確認した。タックフリータイムは0.8秒であった。
(評価実施例6)9’−プロピオニルオキシ−10’−[1,4−ビス(プロピオニルオキシ)−2−ナフチル]アントラセンをラジカル重合増感剤とする光硬化速度評価実験(ラジカル重合開始剤として2,2’−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(イルガキュア651)を使用した例)
9’−アセチルオキシ−10’−[1,4−ビス(アセチルオキシ)−2−ナフチル]アントラセンを合成実施例3と同様の方法で得た9’−プロピオニルオキシ−10’−[1,4−ビス(プロピオニルオキシ)−2−ナフチル]アントラセンに代えたこと以外は、評価実施例5と全く同様にしてラジカル重合性組成物を調製し、塗布後紫外LED光を照射した。タックフリータイムは1.0秒であった。
(比較例1)ラジカル重合開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(ダロキュア1173)を用い、ラジカル重合増感剤を使用しない場合の光硬化実験
9’−アセチルオキシ−10’−[1,4−ビス(アセチルオキシ)−2−ナフチル]アントラセンを添加しないこと以外は、評価実施例1と全く同様にしてラジカル重合性組成物を調製し、塗布後紫外LED光を照射した。タックフリータイムは35秒であった。
(比較例2)ラジカル重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(イルガキュア184)を用い、ラジカル重合増感剤を使用しない場合の光硬化実験
9’−アセチルオキシ−10’−[1,4−ビス(アセチルオキシ)−2−ナフチル]アントラセンを添加しないこと以外は、評価実施例3と全く同様にしてラジカル重合性組成物を調製し、塗布後紫外LED光を照射した。タックフリータイムは25秒であった。
(比較例3)ラジカル重合開始剤として2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(イルガキュア651)を用い、ラジカル重合増感剤を使用しない場合の光硬化実験
9’−アセチルオキシ−10’−[1,4−ビス(アセチルオキシ)−2−ナフチル]アントラセンを添加しないこと以外は、評価実施例5と全く同様にしてラジカル重合性組成物を調製し、塗布後紫外LED光を照射した。タックフリータイムは17秒であった。
(比較例4)ラジカル重合開始剤を用いず、ラジカル重合増感剤である9’−アセチルオキシ−10’−[1,4−ビス(アセチルオキシ)−2−ナフチル]アントラセン単独使用の場合の光硬化実験
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンを添加しないこと以外は、評価実施例1と全く同様にしてラジカル重合性組成物を調製し、塗布後紫外LED光を照射した。タックフリータイムは14秒であった。
(比較例5)ラジカル重合開始剤を用いず、ラジカル重合増感剤である9’−プロピオニルオキシ−10’−[1,4−ビス(プロピオニルオキシ)−2−ナフチル]アントラセン単独使用の場合の光硬化実験
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンを添加しないこと以外は、評価実施例2と全く同様にしてラジカル重合性組成物を調製し、塗布後紫外LED光を照射した。タックフリータイムは17秒であった。
(比較例6)ラジカル重合開始剤として、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン(イルガキュア907)を用いたの場合の光硬化実験
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(ダロキュア1173)を2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン(イルガキュア907)に変えたこと以外は、比較例1と全く同様にしてラジカル重合性組成物を調製し、塗布後紫外LED光を照射した。タックフリータイムは4.0秒であった。
(比較例7)ラジカル重合開始剤として、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド(イルガキュア819)を用いたの場合の光硬化実験
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(ダロキュア1173)をビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド(イルガキュア819)に変えたこと以外は、比較例1と全く同様にしてラジカル重合性組成物を調製し、塗布後紫外LED光を照射した。タックフリータイムは0.4秒であった。
評価実施例1から評価実施例6、比較例1から比較例5の結果を下表にまとめた。
評価実施例1、2と比較例1、評価実施例3、4と比較例2、評価実施例5、6と比較例3を比べることにより明らかなように、本発明の9’−アシルオキシ−10’−[1,4−ビス(アシルオキシ)−2−ナフチル]アントラセン化合物は、α−ヒドロキシアルキルフェノン系ラジカル重合開始剤であるダロキュア1173、イルガキュア184、ベンジルメチルケタール系ラジカル重合開始剤であるイルガキュア651に対して、395nmのLED光を照射した際に増感効果があり、比較例6との比較で分かるようにその速度はアミノアルキルフェノン系のイルガキュア907を超えるものであり、イルガキュア819に迫るものである。したがって、本発明の9’−アシルオキシ−10’−[1,4−ビス(アシルオキシ)−2−ナフチル]アントラセン化合物を含有するラジカル重合増感剤は、炭素原子、酸素原子、水素原子のみからなるラジカル重合開始剤に対してラジカル重合増感剤として有用である。
また、比較例4、5のラジカル重合開始剤を用いない例からわかるように、本発明の9’−アシルオキシ−10’−[1,4−ビス(アシルオキシ)−2−ナフチル]アントラセン化合物は、ラジカル重合開始剤としての効果もあるが、硬化速度は十分ではないことが分かる。