JP2017115113A - 光重合増感剤 - Google Patents

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山田 暁彦
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暁彦 山田
修司 横山
Shuji Yokoyama
修司 横山
繁明 沼田
Shigeaki Numata
繁明 沼田
辰樹 竹内
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辰樹 竹内
勇希 長澤
Yuki Nagasawa
勇希 長澤
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Abstract

【課題】耐マイグレーション性、及び耐昇華性に優れ、且つ、着色が少ない光重合増感剤の提供。
【解決手段】式(1)で表される9,10−ビス(2−ヒドロキシアルコキシ)アントラセン化合物を含有する光重合増感剤。
Figure 2017115113

【選択図】なし

Description

本発明は、9,10−ビス(2−ヒドロキシアルコキシ)アントラセン化合物を含有する光重合増感剤に関する。
紫外線や可視光線等の活性エネルギー線により重合する光硬化性樹脂は、硬化が速く、熱硬化性樹脂に比べ有機溶剤の使用量を大幅に減らすことができることから、作業環境の改善、環境負荷を低減することができるという点で優れている。従来の光硬化性樹脂はそれ自体では重合開始機能が乏しく、硬化させるには通常、光重合開始剤を用いる必要がある。光重合開始剤として、ヒドロキシアセトフェノンやベンゾフェノン等のアルキルフェノン系重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤又はオニウム塩等が用いられる(特許文献1、2、3)。これら光重合開始剤の内でオニウム塩系開始剤を用いる場合、オニウム塩の光吸収は225nm〜350nm付近にあり、350nm以上には吸収を持たないため、350nm以上の長波長のランプを光源とした場合、光硬化反応が進行しにくい等の問題があり、光重合増感剤を添加するのが一般的である。光重合増感剤としては、アントラセン、チオキサントン化合物が知られており、色目の問題等で、特にアントラセン化合物が用いられることが多い(特許文献4)。
アントラセン系の光重合増感剤としては、9,10−ジアルコキシアントラセン化合物が用いられている。例えば、光重合における光重合開始剤であるヨードニウム塩に対し、光重合増感剤として9,10−ジブトキシアントラセンや9,10−ジエトキシアントラセン等の9,10−ジアルコキシアントラセン化合物が使用されている(特許文献5、6、7、8)。
しかしながら、この9,10−ジアルコキシアントラセン化合物は光硬化時あるいは硬化物の保存中にブルーミングにより、光重合増感剤等が表面ににじみ出し、硬化物の粉吹きや着色の問題を引き起こすことが知られている。例えば、フィルムとフィルムを接着する光接着剤の一成分としてこれらの光重合増感剤を使用する場合、光重合増感剤が上部に被せたフィルムに移行する(マイグレーション)ことがあり、上部フィルム上に光重合増感剤の粉吹きや着色の問題を引き起こす場合がある。さらに、光重合増感剤の粉吹きにより、周囲の設備を汚染してしまう等の問題(昇華)を引き起こす場合もある。
特開平06−345614号公報 特開平07−062010号公報 特開平05−249606号公報 特開平10−195117号公報 特開2002−302507号公報 特開平11−279212号公報 特開2000−344704号公報 WO2007/126066号公報
そこで、光硬化時あるいは硬化物の保存中において、耐マイグレーション性を有し、かつ、耐昇華性を有し、硬化物の粉吹きや着色の問題を引き起こすことがない新しい光重合増感剤の開発が望まれている。
本発明者は、アントラセン化合物の構造と物性に関してさらに鋭意検討した結果、本発明に示す、9,10−ビス(2−ヒドロキシアルコキシ)アントラセン化合物が、光重合反応において光重合増感剤として優れた効果を示すと同時に、該光重合性組成物の上にフィルムを被せた場合でも光重合増感剤がマイグレーション等を起こし難くなることを見出し、さらに9,10−ビス(2−ヒドロキシアルコキシ)アントラセン化合物が、耐昇華性にも優れた化合物であることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明の第1の要旨は、下記一般式(1)で表される9,10−ビス(2−ヒドロキシアルコキシ)アントラセン化合物を含有する光重合増感剤に存する。
Figure 2017115113
(一般式(1)において、Aは、水素原子、炭素数1から8のアルキル基、炭素数1から5のアルコキシ基を持つアルコキシメチル基又は炭素数6から10のアリール基を持つアリールオキシメチル基を表し、X、Yは同一であっても異なっていてもよく、水素原子、炭素数1から8のアルキル基又はハロゲン原子のいずれかを示す。)
本発明の第2の要旨は、第1の要旨に記載の光重合増感剤と、光重合開始剤とを含有する光重合開始剤組成物に存する。
本発明の第3の要旨は、第2の要旨に記載の光重合開始剤組成物と、光重合性化合物とを含有する光重合性組成物に存する。
本発明の第4の要旨は、第3の要旨に記載の光重合性組成物に、波長250nmから500nmの範囲の光を含むエネルギー線を照射することにより硬化する、硬化方法に存する。
本発明の9,10−ビス(2−ヒドロキシアルコキシ)アントラセン化合物は、光重合反応において、光重合増感剤としての高い効果を有するだけでなく、本発明の化合物を光重合増感剤として含有する光重合性組成物の上にフィルムを被せた場合、本発明の化合物の被覆フィルムに対するマイグレーション性が極めて低いという有用な化合物である。
(化合物)
本発明の9,10−ビス(2−ヒドロキシアルコキシ)アントラセン化合物は、下記一般式(1)に表される化合物である。
Figure 2017115113
(一般式(1)において、Aは、水素原子、炭素数1から8のアルキル基、炭素数1から5のアルコキシ基を持つアルコキシメチル基又は炭素数6から10のアリール基を持つアリールオキシメチル基を表し、X、Yは同一であっても異なっていてもよく、水素原子、炭素数1から8のアルキル基又はハロゲン原子のいずれかを示す。)
一般式(1)において、Aで表される炭素数1から8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、i−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基又は2−エチルヘキシル基等が挙げられる。炭素数1から5のアルコキシ基を持つアルコキシメチル基としては、メトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、ブトキシメチル基、ペンチルオキシメチル基、アリルオキシメチル基等が挙げられる。炭素数6から10のアリール基を持つアリールオキシメチル基としては、フェノキシメチル基、トリルオキシメチル基、1−ナフチルオキシメチル基又は2−ナフチルオキシメチル基等が挙げられる。
一般式(1)において、X又はYで表される炭素数1から8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、i−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基又は2−エチルヘキシル基等が挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子が挙げられる。
本発明の一般式(1)で表される9,10−ビス(2−ヒドロキシアルコキシ)アントラセン化合物の具体例としては、X及びYが水素原子である場合としては、例えば、9,10−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)アントラセン、9,10−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)アントラセン、9,10−ビス(2−ヒドロキシブトキシ)アントラセン、9,10−ビス(2−ヒドロキシペンチルオキシ)アントラセン、9,10−ビス(2−ヒドロキシヘキシルオキシ)アントラセン、9,10−ビス(2−ヒドロキシヘプチルオキシ)アントラセン、9,10−ビス(2−ヒドロキシオクチルオキシ)アントラセン、9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−メトキシプロポキシ)アントラセン、9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−エトキシプロポキシ)アントラセン、9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−プロポキシプロポキシ)アントラセン、9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−ブトキシプロポキシ)アントラセン、9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−ペンチルオキシプロポキシ)アントラセン、9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−ヘキシルオキシプロポキシ)アントラセン、9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−ヘプチルオキシプロポキシ)アントラセン、9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−オクチルオキシプロポキシ)アントラセン、9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロポキシ)アントラセン、9,10−ビス[2−ヒドロキシ−3−(トリルオキシ)プロポキシ]アントラセン、9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−ナフチルオキシプロポキシ)アントラセン等が挙げられる。
X、Yが水素原子以外の場合は、例えば、X及び/又はYがアルキル基である、2−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)アントラセン、2−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)アントラセン、2−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシブトキシ)アントラセン、2−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシペンチルオキシ)アントラセン、2−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシヘキシルオキシ)アントラセン、2−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシヘプチルオキシ)アントラセン、2−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシオクチルオキシ)アントラセン、2−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−メトキシプロポキシ)アントラセン、2−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−エトキシプロポキシ)アントラセン、2−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−プロポキシプロポキシ)アントラセン2−メチル−、9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−ブトキシプロポキシ)アントラセン、2−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−ペンチルオキシプロポキシ)アントラセン、2−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−ヘキシルオキシプロポキシ)アントラセン、2−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−ヘプチルオキシプロポキシ)アントラセン、2−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−オクチルオキシプロポキシ)アントラセン、2−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロポキシ)アントラセン、2−メチル−9,10−ビス[2−ヒドロキシ−3−(トリルオキシ)プロポキシ]アントラセン、2−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−ナフチルオキシプロポキシ)アントラセン等が挙げられる。
更に、2−エチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)アントラセン、2−エチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)アントラセン、2−エチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシブトキシ)アントラセン、2−エチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシペンチルオキシ)アントラセン、2−エチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシヘキシルオキシ)アントラセン、2−エチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシヘプチルオキシ)アントラセン、2−エチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシオクチルオキシ)アントラセン、2−エチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−メトキシプロポキシ)アントラセン、2−エチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−エトキシプロポキシ)アントラセン、2−エチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−プロポキシプロポキシ)アントラセン2−エチル−、9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−ブトキシプロポキシ)アントラセン、2−エチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−ペンチルオキシプロポキシ)アントラセン、2−エチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−ヘキシルオキシプロポキシ)アントラセン、2−エチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−ヘプチルオキシプロポキシ)アントラセン、2−エチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−オクチルオキシプロポキシ)アントラセン、2−エチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロポキシ)アントラセン、2−エチル−9,10−ビス[2−ヒドロキシ−3−(トリルオキシ)プロポキシ]アントラセン、2−エチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−ナフチルオキシプロポキシ)アントラセン等が挙げられる。
更にまた、2,6−ジメチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)アントラセン、2,6−ジメチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)アントラセン、2,6−ジメチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシブトキシ)アントラセン、2,6−ジメチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシペンチルオキシ)アントラセン、2,6−ジメチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシヘキシルオキシ)アントラセン、2,6−ジメチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシヘプチルオキシ)アントラセン、2,6−ジメチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシオクチルオキシ)アントラセン、2,6−ジメチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−メトキシプロポキシ)アントラセン、2,6−ジメチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−エトキシプロポキシ)アントラセン、2,6−ジメチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−プロポキシプロポキシ)アントラセン、2,6−ジメチル−、9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−ブトキシプロポキシ)アントラセン、2,6−ジメチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−ペンチルオキシプロポキシ)アントラセン、2,6−ジメチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−ヘキシルオキシプロポキシ)アントラセン、2,6−ジメチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−ヘプチルオキシプロポキシ)アントラセン、2,6−ジメチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−オクチルオキシプロポキシ)アントラセン、2,6−ジメチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロポキシ)アントラセン、2,6−ジメチル−9,10−ビス[2−ヒドロキシ−3−(トリルオキシ)プロポキシ]アントラセン、2,6−ジメチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−ナフチルオキシプロポキシ)アントラセン等が挙げられる。
そしてさらに、X及び/又はYがハロゲン原子である、2−クロロ−9,10−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)アントラセン、2−クロロ−9,10−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)アントラセン、2−クロロ−9,10−ビス(2−ヒドロキシブトキシ)アントラセン、2−クロロ−9,10−ビス(2−ヒドロキシペンチルオキシ)アントラセン、2−クロロ−9,10−ビス(2−ヒドロキシヘキシルオキシ)アントラセン、2−クロロ−9,10−ビス(2−ヒドロキシヘプチルオキシ)アントラセン、2−クロロ−9,10−ビス(2−ヒドロキシオクチルオキシ)アントラセン、2−クロロ−9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−メトキシプロポキシ)アントラセン、2−クロロ−9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−エトキシプロポキシ)アントラセン、2−クロロ−9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−プロポキシプロポキシ)アントラセン2−クロロ−、9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−ブトキシプロポキシ)アントラセン、2−クロロ−9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−ペンチルオキシプロポキシ)アントラセン、2−クロロ−9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−ヘキシルオキシプロポキシ)アントラセン、2−クロロ−9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−ヘプチルオキシプロポキシ)アントラセン、2−クロロ−9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−オクチルオキシプロポキシ)アントラセン、2−クロロ−9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロポキシ)アントラセン、2−クロロ−9,10−ビス[2−ヒドロキシ−3−(トリルオキシ)プロポキシ]アントラセン、2−クロロ−9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−ナフチルオキシプロポキシ)アントラセン等が挙げられる。
そしてまた、2−ブロモ−9,10−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)アントラセン、2−ブロモ−9,10−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)アントラセン、2−ブロモ−9,10−ビス(2−ヒドロキシブトキシ)アントラセン、2−ブロモ−9,10−ビス(2−ヒドロキシペンチルオキシ)アントラセン、2−ブロモ−9,10−ビス(2−ヒドロキシヘキシルオキシ)アントラセン、2−ブロモ−9,10−ビス(2−ヒドロキシヘプチルオキシ)アントラセン、2−ブロモ−9,10−ビス(2−ヒドロキシオクチルオキシ)アントラセン、2−ブロモ−9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−メトキシプロポキシ)アントラセン、2−ブロモ−9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−エトキシプロポキシ)アントラセン、2−ブロモ−9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−プロポキシプロポキシ)アントラセン2−ブロモ−、9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−ブトキシプロポキシ)アントラセン、2−ブロモ−9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−ペンチルオキシプロポキシ)アントラセン、2−ブロモ−9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−ヘキシルオキシプロポキシ)アントラセン、2−ブロモ−9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−ヘプチルオキシプロポキシ)アントラセン、2−ブロモ−9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−オクチルオキシプロポキシ)アントラセン、2−ブロモ−9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロポキシ)アントラセン、2−ブロモ−9,10−ビス[2−ヒドロキシ−3−(トリルオキシ)プロポキシ]アントラセン、2−ブロモ−9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−ナフチルオキシプロポキシ)アントラセン等が挙げられる。
これら例示した化合物の中で、製造が容易でかつ光重合増感剤としての効果が大きいという点で、下記に示した9,10−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)アントラセン(化合物B)、9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−ブトキシプロポキシ)アントラセン(化合物D)、9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−アリルオキシプロポキシ)アントラセン(化合物E)が好ましい。
Figure 2017115113
(製造方法)
次に本発明の9,10−ビス(2−ヒドロキシアルコキシ)アントラセン化合物の製造方法について説明する。本発明の9,10−ビス(2−ヒドロキシアルコキシ)アントラセン化合物は、一般式(4)で表される9,10−アントラキノン化合物を還元し、次いでヒドロキシヒドロキシエーテル化剤と反応させて合成することができる。
具体的には、本発明の9,10−ビス(2−ヒドロキシアルコキシ)アントラセン化合物の合成は、次のようにして行われる。すなわち、対応する9,10−アントラキノン化合物を溶媒中還元し(第一反応)、次いで得られた9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物を塩基化合物の存在下もしくは非存在下、ヒドロキシエーテル化する(第二反応)。
Figure 2017115113
第一反応において、X、Yは同一であっても異なっていてもよく、水素原子、炭素数1から8のアルキル基又はハロゲン原子のいずれかを示す。
Figure 2017115113
第二反応において、X、Yは同一であっても異なっていてもよく、水素原子、炭素数1から8のアルキル基又はハロゲン原子のいずれかを示す。また、一般式(1)において、Aは、水素原子、炭素数1から8のアルキル基、炭素数1から5のアルコキシ基を持つアルコキシメチル基又は炭素数6から10のアリール基を持つアリールオキシメチル基を表し、X、Yは同一であっても異なっていてもよく、水素原子、炭素数1から8のアルキル基又はハロゲン原子のいずれかを示す。
第一反応において原料として用いられる、一般式(4)で表される9,10−アントラキノン化合物において、X、Yは同一であっても異なっていてもよく、水素原子、炭素数1から8のアルキル基又はハロゲン原子のいずれかを示す。
一般式(4)においてX、Yで表される炭素数1から8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられる。ハロゲン原子としては、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。
一般式(4)で表される9,10−アントラキノン化合物の具体例としては、アントラキノン、2−メチル−9,10−アントラキノン、2−エチル−9,10−アントラキノン、2−(n−プロピル)−9,10−アントラキノン、2−(i−プロピル)−9,10−アントラキノン、2−(n−ブチル)−9,10−アントラキノン、2−(i−ブチル)−9,10−アントラキノン、2−(n−ペンチル)−9,10−アントラキノン、2−(n−ヘキシル)−9,10−アントラキノン、2−(n−ヘプチル)−9,10−アントラキノン、2−(n−オクチル)−9,10−アントラキノン、2−(2−エチルヘキシル)−9,10−アントラキノン、2−フルオロ−9,10−アントラキノン、2−クロロ−9,10−アントラキノン、2−ブロモ−9,10−アントラキノン等が挙げられる。
第一反応において使用する還元剤としては、特にケトン基を還元するものであれば良く、水素化ホウ素ナトリウム、水素化リチウムアルミニウム、亜ジチオン酸ナトリウム、過酸化チオ尿素等が用いられる。これら還元剤は2−置換−9,10−アントラキノン化合物に対して2モル倍以上添加する。通常は2から4モル倍である。
還元反応は通常溶媒中で行われる。溶媒としては、特に種類を選ばないが、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドのようなアミド系溶媒、メタノール、エタノールのようなアルコール系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサンのようなエーテル系溶媒が好適に用いられる。
第一反応において、9,10−アントラキノン化合物の還元反応の反応温度は、通常0℃以上、120℃以下で行われる。より好ましくは、40℃以上、80℃以下である。0℃以下であれば、反応が遅く、また120℃以上では副反応がおきやすく製品の純度が低下する。反応時間は、0.5時間から3時間、通常1時間で還元は終了する。得られた、9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物は、通常単離せずに次のヒドロキシエーテル化反応に用いることができる。
第一反応においては、貴金属を触媒とする接触水素還元も可能である。使用可能な貴金属触媒としては、パラジウム担持活性炭、パラジウム担持アルミナ、白金担持活性炭が挙げられる。特に、5%パラジウム/カーボンは好適に用いられる。2−置換−9,10−アントラキノン化合物に対する貴金属触媒の添加量は、通常0.01%以上、5%以下、より好ましくは0.2%以上、2%以下の間である。触媒の添加量が0.01%未満では水素化速度が遅く、5%を超えて添加すると副反応で芳香環の水素化が併発し好ましくない。近年開発が進んだルテニウム触媒も有用である。
還元反応は通常溶媒中で行われる。使用する溶媒としては、メタノール、エタノール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒が挙げられる。溶媒中の、9,10−アントラキノン化合物の濃度は、溶媒に対する溶解度によるが、通常5%から20%程度である。水素の圧力は、通常1Paから10Pa程度である。反応時間は、1時間から3時間程度である。水素還元終了後、触媒を濾別して除き、濾液を次のヒドロキシエーテル化反応に供する。
次に第二反応について説明する。第二反応において使用されるヒドロキシエーテル化剤としては、酸化エチレン、酸化プロピレン、酸化ブチレン、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、プロピルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、ペンチルグリシジルエーテル、ヘキシルグリシジルエーテル、オクチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、メタリルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、トリルグリシジルエーテル又はナフチルグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル等が挙げられる。
第二反応において、9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物に対するヒドロキシエーテル化剤の添加比率は2.0モル倍以上、30モル倍以下、好ましくは3.0モル倍以上20モル倍以下である。2.0モル倍未満では9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物が未反応のままで残留し、30モル倍を超えて添加すると生成した9,10−ビス(2−ヒドロキシアルコキシ)アントラセン化合物の反応液に対する溶解度が高くなり、反応生成物から結晶化し難くなり収率が低下する。
塩基化合物の存在下に第二反応を実施する場合に用いられる塩基化合物は、通常無機のアルカリ塩、アルカリ金属炭酸塩等が用いられる。無機のアルカリ塩としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等が用いられる。アルカリ金属炭酸塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム等が挙げられる。他にも、有機塩基である、ピリジン、ピペリジン、トリメチルアミン、トリエチルアミン等を用いることもできる。
ヒドロキシエーテル化の温度は、0℃以上、100℃以下、好ましくは室温以上、80℃以下で行われる。0℃未満であれば反応速度が遅すぎて、反応に時間がかかりすぎ、100℃を超えて加熱すると、副反応が起きて生成物の純度が低下する。反応時間は通常0.5時間から24時間程度である。反応の進行に伴い、生成物の結晶が沈殿するので、沈殿物をろ過・乾燥し、9,10−ビス(2−ヒドロキシアルコキシ)アントラセン化合物が得られる。
(光重合増感剤)
このようにして得られた本発明の一般式(1)で表される9,10−ビス(2−ヒドロキシアルコキシ)アントラセン化合物は、光カチオン重合性化合物や光ラジカル重合性化合物等の光重合性化合物を、光重合開始剤存在下に重合させる際に、光カチオン重合増感剤又は光ラジカル重合増感剤として用いることができる。
また、本発明の一般式(1)で表される9,10−ビス(2−ヒドロキシアルコキシ)アントラセン化合物を含有する光重合増感剤は、9,10−ビス(2−ヒドロキシアルコキシ)アントラセン化合物を有効成分とするものであり、その全量を、9,10−ビス(2−ヒドロキシアルコキシ)アントラセン化合物とするもののほか、本発明の効果を損なわない限り、9,10−ビス(2−ヒドロキシアルコキシ)アントラセン化合物以外の光重合増感剤等を含んでもよい。
このような9,10−ビス(2−ヒドロキシアルコキシ)アントラセン化合物以外の光重合増感剤としては、チオキサントン化合物(例えば2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン)、ナフタレン化合物(例えば1,4−ジエトキシナフタレン、1,4−ジメトキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、4−メトキシ−1−ナフトール)、アミン化合物(例えばジエチルアミノ安息香酸メチル)等が挙げられる。
9,10−ビス(2−ヒドロキシアルコキシ)アントラセン化合物に対する9,10−ビス(2−ヒドロキシアルコキシ)アントラセン化合物以外の光重合増感剤の添加比率は、特に限定されないが、9,10−ビス(2−ヒドロキシアルコキシ)アントラセン化合物に対して0.1重量倍以上10重量倍未満である。
(光重合開始剤)
光重合開始剤としては、オニウム塩、ベンジルメチルケタール系光重合開始剤、α−ヒドロキシアルキルフェノン系光重合開始剤、α−アミノフェノン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤、オキシムエステル系光重合開始剤、ビイミダゾール系光重合開始剤などが挙げられる。
オニウム塩としては、通常ヨードニウム塩またはスルホニウム塩が用いられる。ヨードニウム塩としては4−イソブチルフェニル−4’−メチルフェニルヨードニウムヘキサフルオロフォスフェート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサメトキシアンチモネート、4−イソプロピルフェニル−4’−メチルフェニルヨードニウムテトラキスペンタメトキシフェニルボレート、4−イソプロピルフェニル−4’−メチルフェニルヨードニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート等が挙げられ、例えばビー・エー・エス・エフ社製イルガキュア250(イルガキュアはビー・エー・エス・エフ社の登録商標)、ローディア社製ロードシル2074(ロードシルはローディア社の登録商標)、サンアプロ社製のIK−1等を用いることができる。一方、スルホニウム塩としてはS,S,S’,S’−テトラフェニル−S,S’−(4、4’−チオジフェニル)ジスルホニウムビスヘキサメトキシフォスフェート、ジフェニル−4−フェニルチオフェニルスルホニウムヘキサメトキシフォスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサメトキシフォスフェート等が挙げられ、例えばダイセル社製CPI−100P、CPI101P、CPI−200K、ビー・エー・エス・エフ社製イルガキュア270、ダウ・ケミカル社製UVI6992等を用いることができる。これらの光重合開始剤は単独で用いても2種以上併用しても構わない。
ベンジルメチルケタール系ラジカル重合開始剤としては、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(商品名「イルガキュア651」ビー・エー・エス・エフ社製)等が挙げられる。α−ヒドロキシアルキルフェノン系ラジカル重合開始剤としては、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(商品名「ダロキュア1173」ビー・エー・エス・エフ社製)、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名「イルガキュア184」ビー・エー・エス・エフ社製)、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(商品名「イルガキュア2959」ビー・エー・エス・エフ社製)、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−1−オン(商品名「イルガキュア127」ビー・エー・エス・エフ社製)が挙げられる。
特に、ベンジルメチルケタール系ラジカル重合開始剤である2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(商品名「イルガキュア651」ビー・エー・エス・エフ社製)、α−ヒドロキシアルキルフェノン系ラジカル重合開始剤である2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(商品名「ダロキュア1173」ビー・エー・エス・エフ社製)、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名「イルガキュア184」ビー・エー・エス・エフ社製)が好ましい。
また、アセトフェノン系ラジカル重合開始剤であるアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−エトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−メトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−イソプロポキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−イソブトキシ−2−フェニルアセトフェノン、ベンジル系ラジカル重合開始剤であるベンジル、4,4’−ジメトキシベンジル、アントラキノン系ラジカル重合開始剤である2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−フェノキシアントラキノン、2−(フェニルチオ)アントラキノン、2−(ヒドロキシエチルチオ)アントラキノン等も用いることができる。
例示した光重合開始剤の中でもオニウム塩が特に好ましい。オニウム塩として、ヨードニウム塩だけではなく、スルホニウム塩に対しても、本発明の9,10−ビス(2−ヒドロキシアルコキシ)アントラセン化合物は、光重合増感効果を持つことも特徴の一つである。
本発明の一般式(1)で表される9,10−ビス(2−ヒドロキシアルコキシ)アントラセン化合物を含有する光重合増感剤の光重合開始剤に対する使用量は、特に限定されないが、光重合開始剤に対して通常5重量%以上、100重量%以下の範囲、好ましくは10重量%以上、50重量%以下の範囲である。光重合増感剤の使用量が5重量%未満では光重合性化合物を光重合させるのに時間がかかりすぎてしまい、一方、100重量%を超えて使用しても添加に見合う効果は得られない。
(光重合開始剤組成物)
本発明の一般式(1)で表される9,10−ビス(2−ヒドロキシアルコキシ)アントラセン化合物を含有する光重合増感剤は、直接、光重合性化合物に添加することもできるが、あらかじめ光重合開始剤と配合することにより光重合開始剤組成物を調製したのち、光重合性化合物に添加することもできる。すなわち、本発明の光重合開始剤組成物は、少なくとも、一般式(1)で表される9,10−ビス(2−ヒドロキシアルコキシ)アントラセン化合物を含有する光重合増感剤と光重合開始剤を含有する組成物である。
(光重合性組成物)
該光重合開始剤組成物と光重合性化合物を配合することにより、光重合性組成物を調製することもできる。本発明の光重合性組成物は、本発明の一般式(1)で表される9,10−ビス(2−ヒドロキシアルコキシ)アントラセン化合物を含有する光重合増感剤と、光重合開始剤を含有する光重合開始剤組成物と、光カチオン重合性化合物又は光ラジカル重合性化合物とを含有する組成物である。
本発明の一般式(1)で表される9,10−ビス(2−ヒドロキシアルコキシ)アントラセン化合物を含有する光重合増感剤と、光重合開始剤は、別々に光カチオン重合性化合物又は光ラジカル重合性化合物に添加され、光カチオン重合性化合物又は光ラジカル重合性化合物中で、結果として光重合開始剤組成物を形成してもよい。
光カチオン重合性化合物としては、エポキシ化合物、ビニルエーテル等が挙げられる。エポキシ化合物として一般的なものは、脂環式エポキシ化合物、エポキシ変性シリコーン、芳香族のグリシジルエーテル等が挙げられる。これらの光カチオン重合性化合物のうち、フィルム形成能等の面と本発明の化合物の溶解度が高いという点で、脂環式エポキシ化合物、エポキシ変性シリコーンが好ましい。脂環式エポキシ化合物としては、3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート等が挙げられ、例えばダウ・ケミカル社製UVR6105、UVR6110等を用いることができる。エポキシ変性シリコーンとしては、東芝GEシリコーン製UV−9300等が挙げられる。芳香族グリシジル化合物としては、2,2’−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)プロパン等が挙げられる。ビニルエーテルとしては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル等が挙げられる。これらの光カチオン重合性化合物は、一種でも二種以上の混合物であっても良い。
光ラジカル重合性化合物としては、例えば、スチレン、酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等の二重結合を有する有機化合物を用いることができる。これらの光ラジカル重合性化合物のうち、フィルム形成能等の面と本発明の化合物の溶解度が高いという点で、アクリル酸エステルやメタクリル酸エステル(以下、両者をあわせて(メタ)アクリル酸エステルという)が好ましい。(メタ)アクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸イソボルニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリブタジエンアクリレート、ポリオールアクリレート、ポリエーテルアクリレート、シリコーン樹脂アクリレート、イミドアクリレート等が挙げられる。これらの光ラジカル重合性化合物は、一種でも二種以上の混合物であっても良い。
本発明の光重合性組成物において、光重合開始剤組成物の使用量は、光重合性組成物に対して0.005重量%以上、10重量%以下の範囲、好ましくは0.025重量%以上、5重量%以下である。0.005重量%未満だと光重合性組成物を光重合させるのに時間がかかってしまい、一方、10重量%を超えて添加すると光重合させて得られる光硬化物の硬度が低下し、硬化物の物性を悪化させるため好ましくない。
なお、本発明の光重合性組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、希釈剤、着色剤、有機又は無機の充填剤、レベリング剤、界面活性剤、消泡剤、増粘剤、難燃剤、酸化防止剤、安定剤、滑剤、可塑剤等の各種樹脂添加剤を配合してもよい。
(光硬化物)
本発明の光重合性組成物に光を照射することにより光硬化物を得ることができる。光重合性組成物に光を照射し重合させ光硬化させる場合、当該光重合性組成物をフィルム状に成形して光硬化させることもできるし、塊状に成形して光硬化させることもできる。フィルム状に成形して光硬化させる場合は、液状の当該光重合性組成物を例えばポリエステルフィルム等の基材にバーコーター等を用いて膜厚5〜300ミクロンになるように塗布する。一方、スピンコーティング法やスクリーン印刷法により、さらに薄い膜厚あるいは厚い膜厚にして塗布することもできる。
このようにして調製した光重合性組成物からなる塗膜に、250〜500nmの波長範囲を含む紫外線を1〜1000mW/cm程度の強さで光照射することにより、光硬化物を得ることができる。用いる光源としては、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ガリウムドープドランプ、ブラックライト、395nm紫外線LED、385nm紫外線LED、365nm紫外線LED、青色LED、白色LED、フュージョン社製のDバルブ、Vバルブ等が挙げられる。また、太陽光等の自然光を使用することもできる。特に、395nm紫外線LED、385nm紫外線LED、365nm紫外線LEDが好ましい。
(タック・フリー・テスト)
本発明の光重合性組成物が光硬化したかどうかを判定する方法としては、タック・フリー・テスト(指触テスト)がある。すなわち、光重合性組成物に光を照射すると、硬化して表面のタック(べたつき)がなくなるため、光を照射してからタック(べたつき)がなくなるまでの時間を測定することにより、光硬化時間を測定することができる。
(耐マイグレーション性の判定)
本発明の光重合性組成物に含まれる光重合増感剤がフィルム等に移行(マイグレーション)するかどうかを判定する方法としては、光重合増感剤を含む光重合性組成物を薄いフィルム状物に塗布したものを作成し、その上にポリエチレンフィルムを被せて一定温度(26℃)で一定期間保管し、その後ポリエチレンフィルムを剥がし、光重合増感剤がポリエチレンフィルムに移行しているかを調べ、耐マイグレーション性を判定した。剥がしたポリエチレンフィルムは、アセトンで表面の組成物を洗った後乾燥し、当該ポリエチレンフィルムのUVスペクトルを測定し、光重合増感剤に起因する吸収強度の増大を調べることにより耐マイグレーション性を測定した。なお、当該測定には、紫外・可視分光光度計(島津製作所製、型式:UV2200)を用いた。比較例の化合物である9,10−ジブトキシアントラセンと量的な比較するために、得られた吸光度を9,10−ジブトキシアントラセンの吸光度の値に換算した。換算に当たっては、紫外・可視分光光度計により本発明の化合物及び9,10−ジブトキシアントラセンの260nmにおける吸光度を測定し、その吸光度の値とモル濃度からそれぞれのモル吸光係数を計算し、その比をもちいて換算した。
下記の実施例により本発明を例示するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。また、特記しない限り、すべての部は重量部である。生成物の確認は下記の機器による測定に基づいて行った。
(1)融点:ゲレンキャンプ社製の融点測定装置、型式MFB−595(JIS K0064に準拠)
(2)赤外線(IR)分光光度計:日本分光社製、型式IR−810
(3)核磁気共鳴装置(NMR):日本電子社製、型式GSX FT NMR Spectorometer
(合成例1)9,10−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)アントラセン(化合物A)の合成
9,10−アントラキノンと1,4,4a,9a−テトラヒドロアントラキノンのナトリウム塩水溶液を90℃に2時間加熱することにより得られた9,10−ジヒドロキシアントラセンのナトリウム塩の21.5wt%(アントラキノン換算)水溶液154g(アントラキノンとして0.16モル)を窒素ボックス中で攪拌機を付したオートクレーブに入れ密閉した。そこに酸化エチレン35g(0.8モル)を温度を50℃ 以下、かつ圧力を0.3MPa以下に保ちつつ60分要して導入した。導入後更に、反応温度を40℃に保持しながら反応を3時間続けた。反応終了後、得られた結晶を濾別して水洗した。80℃で乾燥することで9,10−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)アントラセンの薄黄色粉末27g(0.093モル)を得た。原料の9,10−ジヒドロキシアントラセンに対する収率は58モル%であった。
(合成例2)9,10−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)アントラセン(化合物B)の合成
合成例1と同様にして得られた9,10−ジヒドロキシアントラセンのナトリウム塩の21.5wt%(アントラキノン換算)水溶液154g(アントラキノンとして0.16モル)を窒素ボックス中で攪拌機を付したオートクレーブに入れ密閉した。そこに酸化プロピレンを46g(0.78モル)窒素雰囲気下加えた。反応の進行に伴い、反応液は弱く発熱する。10分以内で内温40℃ に達し、ついで液温は次第に下がってくるが、それと共に結晶が析出する。3時間後、メタノール100ml加え、リスラリーした後、沈殿生成物を濾過して9,10−ジ(2−ヒドロキシプロポキシ)アントラセンの黄色粉末35.6g(0.11モル)を得た。原料の9,10−ジヒドロキシアントラセンに対する収率は70モル%であった。
(合成例3)9,10−ビス(2−ヒドロキシブトキシ)アントラセン(化合物C)の合成
合成例1と同様にして得られた9,10−ジヒドロキシアントラセンのナトリウム塩の21.5wt%(アントラキノン換算)水溶液35g(アントラキノンとして0.036モル)を窒素ボックス中で攪拌機を付したオートクレーブに入れ密閉した。そこに1,2−酸化ブチレンを8.0g(0.11モル)窒素雰囲気下加えた。反応温度を60℃とし、1時間加熱する。反応の進行に伴い、次第に結晶が析出する。1時間後、メタノール20mlを加え、リスラリーする。沈殿した固形物を濾過して9,10−ビス(2−ヒドロキシブトキシ)アントラセンの黄色粉末8.9g(0.025モル)を得た。原料の9,10−ジヒドロキシアントラセンに対する収率は68モル%であった。
(合成例4)9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−n−ブトキシプロポキシ)アントラセン(化合物D)の合成
合成例1と同様にして得られた9,10−ジヒドロキシアントラセンのナトリウム塩の20.0wt%(アントラキノン換算)水溶液60g(アントラキノンとして0.058モル)を窒素ボックス中で攪拌機を付したオートクレーブに入れ密閉した。これにメタノール30ml中に溶かしたブチルグリシジルエーテルを23g(0.18モル)を窒素雰囲気下加えた。1時間反応液、温度を60℃に加熱した後、冷却し生成した固形物をろ別した。次いで、得られた固形物をジクロルメタン80mlに溶解し、無水の硫酸ナトリウムで脱水した後、メタノール100mlを加え、冷蔵庫に保管した。2日後、結晶が析出するので、吸引濾過・乾燥し黄色の9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−n−ブトキシプロポキシ)アントラセンの黄色結晶16.5g(0.036モル)を得た。原料の9,10−ジヒドロキシアントラセンに対する収率は62モル%であった。
(合成例5)9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−アリルオキシプロポキシ)アントラセン(化合物E)の合成
合成例1と同様にして得られた9,10−ジヒドロキシアントラセンのナトリウム塩の20.0wt%(アントラキノン換算)25g(アントラキノンとして0.024モル)にメチルイソブチルケトン20g、テトラブチルアンモニウムブロマイド1.2gを加えた。内温を70℃まで昇温し、アリルグリシジルエーテル10.9g(0.095モル)を30分かけて滴下し、その後5時間攪拌を行った。反応液を室温まで冷却し、水層を除いた。反応液に純水20mlを加え、攪拌後、水層を除くことにより抽出洗浄を行った。同様の操作をもう一度行った後、反応液を吸引濾過し、不溶分を取り除いた。濾液を濃縮乾固し、茶色の固形分を得た。得られた茶色結晶にヘキサン60mlを加え攪拌、スラリー化し、吸引濾過を行った後、ヘキサン20mlで2回洗浄し、乾燥することで9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−アリルオキシプロポキシ)アントラセンの薄茶色粉末10.2g(0.023モル)を得た。原料の9,10−ジヒドロキシアントラセンに対する収率は96モル%であった。
(合成例6)9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロポキシ)アントラセン(化合物F)の合成
合成例1と同様にして得られた9,10−ジヒドロキシアントラセンのナトリウム塩の20.0wt%(アントラキノン換算)20g(アントラキノンとして0.019モル)にメタノール40mlに溶解した。これにフェニルグリシジルエーテル7.5g(0.05モル)を加えた。60℃で1時間加熱した後、沈殿した結晶を集め、9,10−ジ(2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロポキシ)アントラセンの薄黄色粉末6.2g(0.012モル)を得た。原料の9,10−ジヒドロキシアントラセンに対する収率は64モル%であった。
(評価実施例1)9,10−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)アントラセン(化合物A)を用いたカチオン重合
カチオン重合性化合物として、脂環式エポキシ化合物 3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ダイセル社製 商品名:セロキサイド2021P)100部に、光重合開始剤として、イソブチルフェニル(4−メチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスファート(商品名:イルガキュア250、「イルガキュア」はビー・エー・エス・エフ社の登録商標)5部、光重合増感剤として、合成例1で合成した9,10−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)アントラセン(化合物B)1部を混合して得た光重合開始剤組成物を添加し、光重合性組成物を調製した。次に、ポリエステルフィルム(商品名:ルミラー、膜厚100ミクロン、「ルミラー」は東レ株式会社の登録商標)上に、調製した光重合性組成物をバーコーターを用いて膜厚が12ミクロンになるように塗布した。その後、その上から紫外LED(Phoseon社製、中心波長395nm、照射強度50mW/cm2)を用いて光照射することにより光硬化物を得た。一定時間毎に塗膜のべたつき(タック)を指触により確認した。光照射開始から当該光重合性組成物の塗布面のべたつき(タック)がなくなるまでの光照射時間「タック・フリー・タイム」は8秒であった。
(評価実施例2)9,10−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)アントラセン(化合物B)を用いたカチオン重合
カチオン重合性化合物として、脂環式エポキシ化合物 3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ダイセル社製 商品名:セロキサイド2021P)100部に、光重合開始剤として、イソブチルフェニル(4−メチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスファート(商品名:イルガキュア250、「イルガキュア」はビー・エー・エス・エフ社の登録商標)5部、光重合増感剤として、合成例2で合成した9,10−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)アントラセン(化合物B)2部を混合して得た光重合開始剤組成物を添加し、光重合性組成物を調製した。次に、ポリエステルフィルム(商品名:ルミラー、膜厚100ミクロン、「ルミラー」は東レ株式会社の登録商標)上に調製した光重合性組成物をバーコーターを用いて膜厚が12ミクロンになるように塗布した。その後、その上から紫外LED(Phoseon社製、中心波長395nm、照射強度50mW/cm2)を用いて光照射することにより光硬化物を得た。一定時間毎に塗膜のべたつき(タック)を指触により確認した。光照射開始から当該光重合性組成物の塗布面のべたつき(タック)がなくなるまでの光照射時間「タック・フリー・タイム」は4秒であった。
(評価実施例3)9,10−ビス(2−ヒドロキシブトキシ)アントラセン(化合物C)を用いたカチオン重合
光重合増感剤として、9,10−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)アントラセン(化合物B)の代わりに、合成例3と同様にして合成した9,10−ビス(2−ヒドロキシブトキシ)アントラセン(化合物C)を添加すること以外は評価実施例2と同様にして光重合性組成物を調製し、塗布・光照射した。光照射開始から当該組成物の塗布面のべたつき(タック)がなくなるまでの光照射時間「タック・フリー・タイム」は4秒であった。
(評価実施例4)9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−n−ブトキシプロポキシ)アントラセン(化合物D)を用いたカチオン重合
光重合増感剤として、9,10−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)アントラセン(化合物B)の代わりに、合成例4と同様にして合成した9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−n−ブトキシプロポキシ)アントラセン(化合物D)を添加すること以外は評価実施例2と同様にして光重合性組成物を調製し、塗布・光照射した。光照射開始から当該組成物の塗布面のべたつき(タック)がなくなるまでの光照射時間「タック・フリー・タイム」は4秒であった。
(評価実施例5)9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−アリルオキシプロポキシ)アントラセン(化合物E)を用いたカチオン重合
光重合増感剤として、9,10−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)アントラセン(化合物B)の代わりに合成例5と同様にして合成した9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−アリルオキシプロポキシ)アントラセン(化合物E)を添加すること以外は評価実施例2と同様にして光重合性組成物を調製し、塗布・光照射した。光照射開始から当該組成物の塗布面のべたつき(タック)がなくなるまでの光照射時間「タック・フリー・タイム」は4秒であった。
(評価実施例6)9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロポキシ)アントラセン(化合物F)を用いたカチオン重合
光重合増感剤として、9,10−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)アントラセン(化合物B)の代わりに合成例6と同様にして合成した9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロポキシ)アントラセン(化合物F)を添加すること以外は評価実施例2と同様にして光重合性組成物を調製し、塗布・光照射した。光照射開始から当該組成物の塗布面のべたつき(タック)がなくなるまでの光照射時間「タック・フリー・タイム」は4秒であった。
(評価比較例1)9,10−ジブトキシアントラセン(化合物G)を用いたカチオン重合
光重合増感剤として、9,10−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)アントラセン(化合物A)の代わりに、市販の光重合増感剤である9,10−ジブトキシアントラセン(化合物G)を添加すること以外は評価実施例1と同様にして光重合性組成物を調製し、塗布・光照射した。光照射開始から当該組成物の塗布面のべたつき(タック)がなくなるまでの光照射時間「タック・フリー・タイム」は8秒であった。
(評価比較例2)9,10−ジブトキシアントラセン(化合物G)を用いたカチオン重合
光重合増感剤として、9,10−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)アントラセン(化合物B)の代わりに、市販の光重合増感剤9,10−ジブトキシアントラセン(化合物G)を添加すること以外は評価実施例2と同様にして光重合性組成物を調製し、塗布・光照射した。光照射開始から当該組成物の塗布面のべたつき(タック)がなくなるまでの光照射時間「タック・フリー・タイム」は4秒であった。
(評価比較例3)光重合増感剤を用いないで行なったカチオン重合
光重合増感剤を添加しないこと以外は評価実施例1と同様にして光重合性組成物を調製し、塗布・光照射した。しかし、光照射開始から300秒照射しても当該組成物の塗布面のべたつき(タック)はなくならなかった。
(評価実施例7)9,10−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)アントラセン(化合物B)を用いたラジカル重合
ラジカル重合性化合物として、ペンタエリスリトールテトラアクリレート100部に対し、光重合開始剤として、イソブチルフェニル(4−メチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスファート(商品名:イルガキュア250、「イルガキュア」はビー・エー・エス・エフ社の登録商標)2.5部、光重合増感剤として、合成例2と同様にして得た9,10−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)アントラセン(化合物B)を0.8部添加し、攪拌したところごく薄い黄色の光重合性組成物の液状物が得られた。次に、ポリエステルフィルム(商品名:ルミラー、膜厚100ミクロン、「ルミラー」は東レ株式会社の登録商標)上に、調製した光重合性組成物を膜厚が30ミクロンとなるようにバーコーターを使用して塗布した。塗布後、この塗布膜をタックフィルムで覆い、次いで空気雰囲気下、紫外LED(Phoseon社製、中心波長395nm、照射強度50mW/cm)を用いて光照射することにより光硬化物を得た。一定時間毎に塗膜のべたつき(タック)を指触により確認した。光照射開始から当該光重合性組成物の塗布面のべたつき(タック)がなくなるまでの光照射時間「タック・フリー・タイム」は6秒であった。
(評価実施例8)9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−n−ブトキシプロポキシ)アントラセン(化合物D)を用いたラジカル重合
光重合増感剤として、9,10−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)アントラセン(化合物B)の代わりに合成例4と同様にして合成した9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−n−ブトキシプロポキシ)アントラセン(化合物D)を添加すること以外は評価実施例7と同様にして光重合性組成物を調製し、塗布・光照射した。光照射開始から当該組成物の塗布面のべたつき(タック)がなくなるまでの光照射時間「タック・フリー・タイム」は5秒であった。
(評価実施例9)9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−アリルオキシプロポキシ)アントラセン(化合物E)を用いたラジカル重合
光重合増感剤として、9,10−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)アントラセン(化合物B)の代わりに合成例5と同様にして合成した9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−アリルオキシプロポキシ)アントラセン(化合物E)を添加すること以外は評価実施例7と同様にして光重合性組成物を調製し、塗布・光照射した。光照射開始から当該組成物の塗布面のべたつき(タック)がなくなるまでの光照射時間「タック・フリー・タイム」は5.5秒であった。
(評価比較例4)9,10−ジブトキシアントラセン(化合物G)を用いたラジカル重合
光重合増感剤として、9,10−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)アントラセン(化合物B)の代わりに、市販の光重合増感剤である9,10−ジブトキシアントラセン(化合物G)を添加すること以外は評価実施例7と同様にして光重合性組成物を調製し、塗布・光照射した。光照射開始から当該組成物の塗布面のべたつき(タック)がなくなるまでの光照射時間「タック・フリー・タイム」は5秒であった。
(評価比較例5)光重合増感剤を用いないで行なったラジカル重合
光重合増感剤として、9,10−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)アントラセン(化合物B)を添加しないこと以外は評価実施例7と同様にして光重合性組成物を調製し、塗布・光照射した。しかし、光照射開始から300秒照射しても当該組成物の塗布面のべたつき(タック)はなくならなかった。
(評価実施例1)〜(評価実施例6)並びに(評価比較例1)〜(評価比較例3)の結果を表1に、(評価実施例7)〜(評価実施例9)並びに(評価比較例4)及び(評価比較例5)の結果を表2にそれぞれまとめた。
Figure 2017115113
Figure 2017115113
以上の評価実施例と評価比較例の結果より、次のことが明らかである。すなわち、評価実施例1〜6と評価比較例1〜3とその結果をまとめた表1より、本発明の9,10−ビス(2−ヒドロキシアルコキシ)アントラセン化合物を光重合増感剤として用いて光カチオン重合させた場合、優れた光重合増感効果を示し、タック・フリー・テストの結果からも、公知の光重合増感剤である9,10−ジブトキシアントラセンとほぼ同等の光重合増感能を有することがわかる。
一方、評価実施例7〜9と評価比較例4、5とその結果をまとめた表2より、本発明の9,10−ビス(2−ヒドロキシアルコキシ)アントラセン化合物を光重合増感剤として用いて光ラジカル重合させた場合、優れた光重合増感効果を示し、タック・フリー・テストの結果からも、公知の光重合増感剤である9,10−ジブトキシアントラセンとほぼ同等の光重合増感能を有することがわかる。
(光カチオン重合における耐マイグレーション性の評価実施例)
(評価実施例10)9,10−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)アントラセン(化合物B)を用いたカチオン重合におけるマイグレーション試験
カチオン重合性化合物として、脂環式エポキシ化合物 3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ダイセル社製 商品名:セロキサイド2021P)100部に対し、光重合増感剤として、合成例2と同様の方法で合成した9,10−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)アントラセン(化合物B)1部を混合し、光重合性組成物を調製した。次に、ポリエステルフィルム(商品名:ルミラー、膜厚100ミクロン、「ルミラー」は東レ株式会社の登録商標)上に、調製した光重合性組成物を膜厚が12ミクロンとなるようにバーコーターを使用して塗布した。次いで、得られた塗布物上に低密度ポリエチレンフィルム(膜厚30ミクロン)を被せて、暗所で一日間保管したもの、二日間保管したもの、四日間保管したものを、それぞれ保管後、ポリエチレンフィルムを剥がし、ポリエチレンフィルムをアセトンで洗い乾燥した後、ポリエチレンフィルムのUVスペクトルを測定し、260nmの吸光度を測定した。得られた9,10−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)アントラセン(化合物B)の吸光度を9,10−ジブトキシアントラセン換算した。吸光度は、一日保管後0.001、二日保管後0.001、四日保管後0.001であった。
(評価実施例11)9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−n−ブトキシプロポキシ)アントラセン(化合物D)を用いたカチオン重合におけるマイグレーション試験
光重合増感剤として、9,10−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)アントラセンの代わりに合成例4と同様の方法で合成した9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−n−ブトキシプロポキシ)アントラセン(化合物D)を使用すること以外は、評価実施例10と同様にして光重合性組成物を調製した。同様に、ポリエステルフィルム(商品名:ルミラー、膜厚100ミクロン、「ルミラー」は東レ株式会社の登録商標)上に、調製した光重合性組成物を膜厚が12ミクロンとなるようにバーコーターを使用して塗布した。次いで、得られた塗布物上に低密度ポリエチレンフィルム(膜厚30ミクロン)を被せて、暗所で一日間保管したもの、二日間保管したもの、四日間保管したものを、それぞれ保管後、ポリエチレンフィルムを剥がし、ポリエチレンフィルムをアセトンで洗い乾燥した後、ポリエチレンフィルムのUVスペクトルを測定し、260nmの吸光度を測定した。得られた9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−n−ブトキシプロポキシ)アントラセン(化合物D)の吸光度を9,10−ジブトキシアントラセン換算した。吸光度は、一日保管後0.004、二日保管後0.004、四日保管後0.004であった。
(評価実施例12)9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−アリルオキシプロポキシ)アントラセン(化合物E)を用いたカチオン重合におけるマイグレーション試験
光重合増感剤として、9,10−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)アントラセンの代わりに合成例5と同様の方法で合成した9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−アリルオキシプロポキシ)アントラセン(化合物E)を使用すること以外は評価実施例10と同様にして光重合性組成物を調製した。同様に、ポリエステルフィルム(商品名:ルミラー、膜厚100ミクロン、「ルミラー」は東レ株式会社の登録商標)上に、調製した光重合性組成物を膜厚が12ミクロンとなるようにバーコーターを使用して塗布した。次いで、得られた塗布物上に低密度ポリエチレンフィルム(膜厚30ミクロン)を被せて、暗所で一日間保管したもの、二日間保管したもの、四日間保管したものを、それぞれ保管後、ポリエチレンフィルムを剥がし、ポリエチレンフィルムをアセトンで洗い乾燥した後、ポリエチレンフィルムのUVスペクトルを測定し、260nmの吸光度を測定した。得られた9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−アリルオキシプロポキシ)アントラセン(化合物E)の吸光度を9,10−ジブトキシアントラセン換算した。吸光度は、一日保管後0.004、二日保管後0.004、四日保管後0.004であった。
(評価比較例6)9,10−ジブトキシアントラセン(化合物G)を用いたカチオン重合におけるマイグレーション試験
光重合増感剤として、9,10−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)アントラセンの代わりに市販の光重合増感剤である9,10−ジブトキシアントラセン(化合物G)を使用すること以外は評価実施例10と同様に光重合性組成物を調製した。同様に、ポリエステルフィルム(商品名:ルミラー、膜厚100ミクロン、「ルミラー」は東レ株式会社の登録商標)上に、調製した光重合性組成物を膜厚が12ミクロンとなるようにバーコーターを使用して塗布した。次いで、得られた塗布物上に低密度ポリエチレンフィルム(膜厚30ミクロン)を被せて、暗所で一日間保管したもの、二日間保管したもの、四日間保管したものを、それぞれ保管後、ポリエチレンフィルムを剥がし、ポリエチレンフィルムをアセトンで洗い乾燥した後、ポリエチレンフィルムのUVスペクトルを測定し、260nmの吸光度を測定した。得られた9,10−ジブトキシアントラセンの吸光度は、一日保管後0.76、二日保管後0.73、四日保管後0.75であった。
(光ラジカル重合における耐マイグレーション性の評価実施例)
(評価実施例13)9,10−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)アントラセン(化合物B)を用いたラジカル重合におけるマイグレーション試験
ラジカル重合性化合物として、トリメチロールプロパントリアクリレート100部、光重合増感剤として、合成例2と同様の方法で合成した9,10−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)アントラセン(化合物B)1部を混合し、光重合性組成物を調製した。次に、ポリエステルフィルム(商品名:ルミラー、膜厚100ミクロン、「ルミラー」は東レ株式会社の登録商標)上に、調製した光重合性組成物を膜厚が12ミクロンとなるようにバーコーターを使用して塗布した。次いで、得られた塗布物上に低密度ポリエチレンフィルム(膜厚30ミクロン)を被せて、暗所で一日間保管したもの、二日間保管したもの、四日間保管したものを、それぞれ保管後、ポリエチレンフィルムを剥がし、ポリエチレンフィルムをアセトンで洗い乾燥した後、ポリエチレンフィルムのUVスペクトルを測定し、260nmの吸光度を測定した。得られた9,10−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)アントラセン(化合物B)の吸光度を9,10−ジブトキシアントラセン換算した。吸光度は、一日保管後0.002、二日保管後0.003、四日後保管後0.002であった。
(評価実施例14)9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−n−ブトキシプロポキシ)アントラセン(化合物D)を用いたラジカル重合におけるマイグレーション試験
光重合増感剤として、9,10−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)アントラセンの代わりに合成例4と同様の方法で合成した9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−n−ブトキシプロポキシ)アントラセン(化合物D)を使用すること以外は評価実施例13と同様に光重合性組成物を調製した。次に、ポリエステルフィルム(商品名:ルミラー、膜厚100ミクロン、「ルミラー」は東レ株式会社の登録商標)上に、調製した光重合性組成物を膜厚が12ミクロンとなるようにバーコーターを使用して塗布した。次いで、得られた塗布物上に低密度ポリエチレンフィルム(膜厚30ミクロン)を被せて、暗所で一日間保管したもの、二日間保管したもの、四日間保管したものを、それぞれ保管後、ポリエチレンフィルムを剥がし、ポリエチレンフィルムをアセトンで洗い乾燥した後、ポリエチレンフィルムのUVスペクトルを測定し、260nmの吸光度を測定した。得られた9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−n−ブトキシプロポキシ)アントラセン(化合物D)の吸光度を9,10−ジブトキシアントラセン換算した。吸光度は、一日保管後0.01、二日保管後0.01、四日保管後0.01であった。
(評価実施例15)9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−アリルオキシプロポキシ)アントラセン(化合物E)を用いたラジカル重合におけるマイグレーション試験
光重合増感剤として、9,10−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)アントラセンの代わりに合成例5と同様の方法で合成した9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−アリルオキシプロポキシ)アントラセン(化合物E)を使用すること以外は評価実施例13と同様に光重合性組成物を調製した。次に、ポリエステルフィルム(商品名:ルミラー、膜厚100ミクロン、「ルミラー」は東レ株式会社の登録商標)上に、調製した光重合性組成物を膜厚が12ミクロンとなるようにバーコーターを使用して塗布した。次いで、得られた塗布物上に低密度ポリエチレンフィルム(膜厚30ミクロン)を被せて、暗所で一日間保管したもの、二日間保管したもの、四日間保管したものを、それぞれ保管後、ポリエチレンフィルムを剥がし、ポリエチレンフィルムをアセトンで洗い乾燥した後、ポリエチレンフィルムのUVスペクトルを測定し、260nmの吸光度を測定した。得られた9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−アリルオキシプロポキシ)アントラセン(化合物E)の吸光度を9,10−ジブトキシアントラセン換算した。吸光度は、一日保管後0.006、二日保管後0.005、四日保管後0.006であった。
(評価比較例7)9,10−ジブトキシアントラセン(化合物G)を用いたラジカル重合におけるマイグレーション試験
光重合増感剤として、9,10−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)アントラセンの代わりに市販の光重合増感剤である9,10−ジブトキシアントラセン(化合物G)を使用すること以外は評価実施例13と同様に光重合性組成物を調製した。次に、ポリエステルフィルム(商品名:ルミラー、膜厚100ミクロン、「ルミラー」は東レ株式会社の登録商標)上に、調製した光重合性組成物を膜厚が12ミクロンとなるようにバーコーターを使用して塗布した。次いで、得られた塗布物上に低密度ポリエチレンフィルム(膜厚30ミクロン)を被せて、暗所で一日間保管したもの、二日間保管したもの、四日間保管したものを、それぞれ保管後、ポリエチレンフィルムを剥がし、ポリエチレンフィルムをアセトンで洗い乾燥した後、ポリエチレンフィルムのUVスペクトルを測定し、260nmの吸光度を測定した。得られた9,10−ジブトキシアントラセンの吸光度は、一日保管後1.23、二日保管後1.34、四日後1.34であった。
(評価実施例10)〜(評価実施例12)及び(評価比較例6)並びに(評価実施例13)〜(評価実施例15)及び(評価比較例7)の結果をそれぞれ表3、4にまとめると以下の通りとなる。
Figure 2017115113
Figure 2017115113
以上の評価実施例と評価比較例の結果より、次のことが明らかである。すなわち、評価実施例10〜12と評価比較例6とその結果をまとめた表3より、光カチオン重合において、本発明の9,10−ビス(2−ヒドロキシアルコキシ)アントラセン化合物は、公知の光重合増感剤である9,10−ジブトキシアントラセン化合物と比較して、当該光重合増感剤を含有する光重合性組成物において、耐マイグレーション性が高い優れた化合物であることがわかる。
一方、評価実施例13〜15と評価比較例7とその結果をまとめた表4より、光ラジカル重合において、本発明の9,10−ビス(2−ヒドロキシアルコキシ)アントラセン化合物は公知の光重合増感剤である9,10−ジブトキシアントラセン化合物と比較して、当該光重合増感剤を含有する光重合性組成物において、耐マイグレーション性が高い優れた化合物であることがわかる。
すなわち、本発明の9,10−ビス(2−ヒドロキシアルコキシ)アントラセン化合物は、光カチオン重合及び光ラジカル重合いずれにおいても、公知の光重合増感剤である9,10−ジブトキシアントラセン化合物と比較して、当該光重合増感剤を含有する光重合性組成物において、耐マイグレーション性が高い優れた化合物である。
(評価実施例16)9,10−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)アントラセン(化合物B)の昇華性試験
合成例2で合成した9,10−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)アントラセン(化合物B)を窒素雰囲気下(流量100ml/分)で加熱し、重量減少を示差熱測定装置(日立ハイテックサイエンス社製 TG/DTA7200)で測定した。加熱条件は、室温から150℃まで昇温し(10℃/分)その後60分保持した。加熱前後の重量減少は0.03%であった。
(評価実施例17)9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−n−ブトキシプロポキシ)アントラセン(化合物D)の昇華性試験
9,10−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)アントラセン(化合物B)の代わりに、合成例4で合成した9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−n−ブトキシプロポキシ)アントラセン(化合物D)を使用すること以外は、評価実施例16と同様にして重量減少を示差熱測定装置(日立ハイテックサイエンス社製 TG/DTA7200)で測定した。加熱条件は、室温から150℃まで昇温し(10℃/分)その後60分保持した。加熱前後の重量減少は0.13%であった。
(評価比較例8)9,10−ジブトキシアントラセン(化合物G)の昇華性試験
9,10−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)アントラセン(化合物B)の代わりに、市販の光重合増感剤である9,10−ジブトキシアントラセン(化合物G)を使用すること以外は、評価実施例16と同様にして重量減少を示差熱測定装置(日立ハイテックサイエンス社製 TG/DTA7200)で測定した。加熱条件は、室温から150℃まで昇温し(10℃/分)その後60分保持した。加熱前後の重量減少は2.26%であった。
評価実施例16、17及び評価比較例8より、本発明の9,10−ビス(2−ヒドロキシアルコキシ)アントラセン化合物は、公知の光重合増感剤である9,10−ジブトキシアントラセンと比べ加熱時の重量減少が少ないことから、昇華性が低い、すなわち耐昇華性に優れた化合物であることがわかる。
(評価実施例18)9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−n−ブトキシプロポキシ)アントラセン(化合物D)を用いた光硬化物の着色測定
カチオン重合性化合物として、脂環式エポキシ化合物 3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ダイセル社製 商品名:セロキサイド2021P)100部に、光重合開始剤として、イソブチルフェニル(4−メチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスファート(商品名:イルガキュア250、「イルガキュア」はビー・エー・エス・エフ社の登録商標)5部、光重合増感剤として、合成例4で合成した9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−n−ブトキシプロポキシ)アントラセン(化合物D)2部を混合し、光重合性組成物を調製した。次に、ポリエステルフィルム(商品名:ルミラー、膜厚100ミクロン、「ルミラー」は東レ株式会社の登録商標)上に、調製した光重合性組成物を膜厚が12ミクロンとなるようにバーコーターを使用して塗布した。塗布後、この塗布膜に空気雰囲気下、紫外LED(Phoseon社製、中心波長395nm、照射強度50mW/cm)を用いて4秒間光照射して光硬化物を得た。その光硬化物の黄色度を分光光度計(島津製作所社製 UV2600)で測定した。黄色度は2.43であった。
(評価実施例19)9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−アリルオキシプロポキシ)アントラセン(化合物E)を用いた光硬化物の着色測定
光重合増感剤として、9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−n−ブトキシプロポキシ)アントラセン(化合物D)の代わりに、合成例5と同様にして合成した9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−アリルオキシプロポキシ)アントラセン(化合物E)を添加すること以外は、評価実施例18と同様にして光重合性組成物を調製し、紫外LEDを用いて光硬化物を得た。その光硬化物の黄色度を分光光度計(島津製作所社製 UV2600)で測定した。黄色度は2.08であった。
(評価比較例9)9,10−ジブトキシアントラセン(化合物G)を用いた光硬化物の着色測定
光重合増感剤として、9,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−n−ブトキシプロポキシ)アントラセン(化合物D)の代わりに、市販の光重合増感剤である9,10−ジブトキシアントラセン(化合物G)を添加すること以外は、評価実施例18と同様にして光重合性組成物を調製し、紫外LEDを用いて光硬化物を得た。その光硬化物の黄色度を分光光度計(島津製作所社製 UV2600)で測定した。黄色度は4.69であった。
評価実施例18、19及び評価比較例9の結果より、本発明の9,10−ビス(2−ヒドロキシアルコキシ)アントラセン化合物を光重合増感剤として用いて得られた光硬化物は、公知の光重合増感剤である9,10−ジブトキシアントラセンを用いて得られた光硬化物よりも、黄色度が低い、すなわち着色が少ないことがわかる。
以上の評価実施例及び評価比較例の結果より、本発明の9,10−ビス(2−ヒドロキシアルコキシ)アントラセン化合物は、光カチオン重合及び光ラジカル重合のいずれにおいても、公知の光重合増感剤である9,10−ジブトキシアントラセン化合物と比較して、同等の光重合増感能を有するだけでなく、優れた耐昇華性を有し、かつ、当該光重合増感剤を含有する光重合性組成物においても、耐マイグレーション性に優れた化合物であり、光重合増感剤として極めて有用な化合物であることがわかる。さらに、当該光重合増感剤を用いて得られた光硬化物は、公知の光重合増感剤である9,10−ジブトキシアントラセン化合物を用いて得られた光硬化物よりも着色が少なく、あらゆる要素において、光重合増感剤として極めて優れた化合物であることがわかる。

Claims (4)

  1. 下記一般式(1)で表される9,10−ビス(2−ヒドロキシアルコキシ)アントラセン化合物を含有する光重合増感剤。
    Figure 2017115113
    (上記一般式(1)において、Aは、水素原子、炭素数1から8のアルキル基、炭素数1から5のアルコキシ基を持つアルコキシメチル基又は炭素数6から10のアリール基を持つアリールオキシメチル基を表し、X、Yは同一であっても異なっていてもよく、水素原子、炭素数1から8のアルキル基又はハロゲン原子のいずれかを示す。)
  2. 請求項1に記載の光重合増感剤と、光重合開始剤とを含有する光重合開始剤組成物。
  3. 請求項2に記載の光重合開始剤組成物と、光重合性化合物とを含有する光重合性組成物。
  4. 請求項3に記載の光重合性組成物に、波長250nmから500nmの範囲の光を含むエネルギー線を照射することにより硬化する、硬化方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2017221824A1 (ja) * 2016-06-21 2017-12-28 川崎化成工業株式会社 光重合増感剤組成物とそれを含む光重合性組成物
JP2019031471A (ja) * 2017-08-09 2019-02-28 川崎化成工業株式会社 反応性光重合増感剤
JP2019199405A (ja) * 2018-05-14 2019-11-21 川崎化成工業株式会社 反応性光重合増感剤

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