(化合物)
本発明のエステル基を有する9,10-ビス(シクロアルキル置換アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物は、下記一般式(1)で表される化合物である。
一般式(1)において、Aは炭素数1から20のアルキレン基を表し、該アルキレン基はアルキル基によって分岐していてもよい。Rは炭素数3から20のシクロアルキル基又は炭素数4から20のシクロアルキルアルキル基を表し、該シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基はアルキル基、ヒドロキシ基によって置換されていてもよい。X、Yは同一であっても異なってもよく、水素原子、炭素数1から8のアルキル基又はハロゲン原子を表す。
一般式(1)において、Aで表される炭素数1から20のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、ヘキサデシレン基、ヘプタデシレン基、オクタデシレン基、ノナデシレン基、イコシレン基等が挙げられ、該アルキレン基はアルキル基によって分岐していてもよい。
一般式(1)において、X又はYで表される炭素数1から8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、n-ペンチル基、i-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基又は2-エチルヘキシル基等が挙げられ、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子が挙げられる。
一般式(1)において、Rで表されるシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基、4-n-ドデシルシクロヘキシル基、デカヒドロナフチル基、ヒドロキシシクロヘキシル基等が挙げられ、シクロアルキルアルキル基としては、例えば、シクロプロピルメチル基、シクロブチルメチル基、シクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘプチルメチル基、シクロオクチルメチル基、シクロノニルメチル基、シクロデシルメチル基、2-シクロブチルエチル基、2-シクロペンチルエチル基、2-シクロヘキシルエチル基、2-シクロヘプチルエチル基、2-シクロオクチルエチル基、2-シクロノニルエチル基、2-シクロデシルエチル基、3-シクロブチルプロピル基、3-シクロペンチルプロピル基、3-シクロヘキシルプロピル基、3-シクロヘプチルプロピル基、3-シクロオクチルプロピル基、3-シクロノニルプロピル基、3-シクロデシルプロピル基、4-シクロブチルブチル基、4-シクロペンチルブチル基、4-シクロヘキシルブチル基、4-シクロヘプチルブチル基、4-シクロオクチルブチル基、4-シクロノニルブチル基、4-シクロデシルブチル基、3-3-アダマンチルプロピル基、デカハイドロナフチルプロピル基等が挙げられる。
本発明の一般式(1)で表されるエステル基を有する9,10-ビス(シクロアルキル置換アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物の具体例としては、例えば、9,10-ビス(シクロプロピルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(シクロブチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(シクロペンチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(シクロヘキシルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(シクロヘプチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(シクロオクチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(シクロヘキシルメチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(シクロヘキシルエチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(ノルボルニルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(アダマンチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(4-n-ドデシルシクロヘキシルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(デカヒドロナフチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(シクロプロピルメチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(シクロブチルメチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(シクロペンチルメチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(シクロヘプチルメチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(シクロオクチルメチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(シクロヘキシルメチルメチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(シクロヘキシルエチルメチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(ノルボルニルメチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(アダマンチルメチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(4-n-ドデシルシクロヘキシルメチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(デカヒドロナフチルメチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(シクロプロピルエチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(シクロブチルエチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(シクロペンチルエチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(シクロヘプチルエチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(シクロオクチルエチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(シクロヘキシルメチルエチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(シクロヘキシルエチルエチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(ノルボルニルエチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(アダマンチルエチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(4-n-ドデシルシクロヘキシルエチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(デカヒドロナフチルエチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン等が挙げられる。
更に、例えば9,10-ビス(シクロペンチルオキシカルボニルエチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(シクロヘキシルオキシカルボニルエチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(シクロヘキシルメチルオキシカルボニルエチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(シクロヘキシルエチルオキシカルボニルエチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(ノルボルニルオキシカルボニルエチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(アダマンチルオキシカルボニルエチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(4-n-ドデシルシクロヘキシルオキシカルボニルエチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(シクロペンチルオキシカルボニルプロピレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(シクロヘキシルオキシカルボニルプロピレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(シクロヘキシルメチルオキシカルボニルプロピレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(シクロヘキシルエチルオキシカルボニルプロピレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(ノルボルニルオキシカルボニルプロピレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(アダマンチルオキシカルボニルプロピレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(4-n-ドデシルシクロヘキシルオキシカルボニルプロピレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(シクロペンチルオキシカルボニルブチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(シクロヘキシルオキシカルボニルブチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(シクロヘキシルメチルオキシカルボニルブチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(シクロヘキシルエチルオキシカルボニルブチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(ノルボルニルオキシカルボニルブチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(アダマンチルオキシカルボニルブチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(4-n-ドデシルシクロヘキシルオキシカルボニルブチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(シクロペンチルメチルオキシカルボニルエチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(シクロヘキシルメチルオキシカルボニルエチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(シクロヘキシルメチルメチルオキシカルボニルエチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(シクロヘキシルエチルメチルオキシカルボニルエチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(ノルボルニルメチルオキシカルボニルエチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(アダマンチルメチルオキシカルボニルエチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(4-n-ドデシルシクロヘキシルメチルオキシカルボニルエチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(シクロペンチルメチルオキシカルボニルプロピレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(シクロヘキシルメチルオキシカルボニルプロピレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(シクロヘキシルメチルメチルオキシカルボニルプロピレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(シクロヘキシルエチルメチルオキシカルボニルプロピレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(ノルボルニルメチルオキシカルボニルプロピレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(アダマンチルメチルオキシカルボニルプロピレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(4-n-ドデシルシクロヘキシルメチルオキシカルボニルプロピレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(シクロペンチルメチルオキシカルボニルブチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(シクロヘキシルメチルオキシカルボニルブチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(シクロヘキシルメチルメチルオキシカルボニルブチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(シクロヘキシルエチルメチルオキシカルボニルブチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(ノルボルニルメチルオキシカルボニルブチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(アダマンチルメチルオキシカルボニルブチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(4-n-ドデシルシクロヘキシルメチルオキシカルボニルブチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(シクロペンチルエチルオキシカルボニルエチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(シクロヘキシルエチルオキシカルボニルエチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(シクロヘキシルメチルエチルオキシカルボニルエチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(シクロヘキシルエチルエチルオキシカルボニルエチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(ノルボルニルエチルオキシカルボニルエチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(アダマンチルエチルオキシカルボニルエチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(4-n-ドデシルシクロヘキシルエチルオキシカルボニルエチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(シクロペンチルエチルオキシカルボニルプロピレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(シクロヘキシルエチルオキシカルボニルプロピレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(シクロヘキシルメチルエチルオキシカルボニルプロピレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(シクロヘキシルエチルエチルオキシカルボニルプロピレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(ノルボルニルエチルオキシカルボニルプロピレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(アダマンチルエチルオキシカルボニルプロピレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(4-n-ドデシルシクロヘキシルエチルオキシカルボニルプロピレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(シクロペンチルエチルオキシカルボニルブチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(シクロヘキシルエチルオキシカルボニルブチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(シクロヘキシルメチルエチルオキシカルボニルブチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(シクロヘキシルエチルエチルオキシカルボニルブチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(ノルボルニルエチルオキシカルボニルブチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(アダマンチルエチルオキシカルボニルブチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(4-n-ドデシルシクロヘキシルエチルオキシカルボニルブチレンオキシ)アントラセン等が挙げられる。
また、X及び/又はYがアルキル基の具体例としては、例えば、2-エチル-9,10-ビス(シクロペンチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(シクロヘキシルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(シクロヘキシルメチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(シクロヘキシルエチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(ノルボルニルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(アダマンチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(4-n-ドデシルシクロヘキシルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(デカヒドロナフチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(シクロヘキシルオキシカルボニルエチレンオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(シクロヘキシルオキシカルボニルプロピレンオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(シクロヘキシルオキシカルボニルブチレンオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(シクロペンチルメチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(シクロヘキシルメチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(シクロヘキシルメチルメチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(シクロヘキシルエチルメチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(ノルボルニルメチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(アダマンチルメチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(4-n-ドデシルシクロヘキシルメチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(デカヒドロナフチルメチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(シクロヘキシルメチルオキシカルボニルエチレンオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(シクロヘキシルメチルオキシカルボニルプロピレンオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(シクロヘキシルメチルオキシカルボニルブチレンオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(シクロペンチルエチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(シクロヘキシルエチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(シクロヘキシルメチルエチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(シクロヘキシルエチルエチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(ノルボルニルエチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(アダマンチルエチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(4-n-ドデシルシクロヘキシルエチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(デカヒドロナフチルエチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(シクロヘキシルエチルオキシカルボニルエチレンオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(シクロヘキシルエチルオキシカルボニルプロピレンオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(シクロヘキシルエチルオキシカルボニルブチレンオキシ)アントラセン等が挙げられる。
更に、例えば、2-アミル-9,10-ビス(シクロペンチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-アミル-9,10-ビス(シクロヘキシルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-アミル-9,10-ビス(シクロヘキシルメチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-アミル-9,10-ビス(シクロヘキシルエチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-アミル-9,10-ビス(ノルボルニルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-アミル-9,10-ビス(アダマンチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-アミル-9,10-ビス(4-n-ドデシルシクロヘキシルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-アミル-9,10-ビス(デカヒドロナフチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-アミル-9,10-ビス(シクロヘキシルオキシカルボニルエチレンオキシ)アントラセン、2-アミル-9,10-ビス(シクロヘキシルオキシカルボニルプロピレンオキシ)アントラセン、2-アミル-9,10-ビス(シクロヘキシルオキシカルボニルブチレンオキシ)アントラセン、2-アミル-9,10-ビス(シクロペンチルメチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-アミル-9,10-ビス(シクロヘキシルメチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-アミル-9,10-ビス(シクロヘキシルメチルメチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-アミル-9,10-ビス(シクロヘキシルエチルメチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-アミル-9,10-ビス(ノルボルニルメチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-アミル-9,10-ビス(アダマンチルメチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-アミル-9,10-ビス(4-n-ドデシルシクロヘキシルメチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-アミル-9,10-ビス(デカヒドロナフチルメチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-アミル-9,10-ビス(シクロヘキシルメチルオキシカルボニルエチレンオキシ)アントラセン、2-アミル-9,10-ビス(シクロヘキシルメチルオキシカルボニルプロピレンオキシ)アントラセン、2-アミル-9,10-ビス(シクロヘキシルメチルオキシカルボニルブチレンオキシ)アントラセン、2-アミル-9,10-ビス(シクロペンチルエチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-アミル-9,10-ビス(シクロヘキシルエチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-アミル-9,10-ビス(シクロヘキシルメチルエチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-アミル-9,10-ビス(シクロヘキシルエチルエチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-アミル-9,10-ビス(ノルボルニルエチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-アミル-9,10-ビス(アダマンチルエチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-アミル-9,10-ビス(4-n-ドデシルシクロヘキシルエチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-アミル-9,10-ビス(デカヒドロナフチルエチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-アミル-9,10-ビス(シクロヘキシルエチルオキシカルボニルエチレンオキシ)アントラセン、2-アミル-9,10-ビス(シクロヘキシルエチルオキシカルボニルプロピレンオキシ)アントラセン、2-アミル-9,10-ビス(シクロヘキシルエチルオキシカルボニルブチレンオキシ)アントラセン等が挙げられる。
また、X及び/又はYがハロゲン原子の具体例としては、例えば、2-クロロ-9,10-ビス(シクロペンチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-クロロ-9,10-ビス(シクロヘキシルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-クロロ-9,10-ビス(シクロヘキシルメチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-クロロ-9,10-ビス(シクロヘキシルエチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-クロロ-9,10-ビス(ノルボルニルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-クロロ-9,10-ビス(アダマンチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-クロロ-9,10-ビス(4-n-ドデシルシクロヘキシルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-クロロ-9,10-ビス(デカヒドロナフチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-クロロ-9,10-ビス(シクロヘキシルオキシカルボニルエチレンオキシ)アントラセン、2-クロロ-9,10-ビス(シクロヘキシルオキシカルボニルプロピレンオキシ)アントラセン、2-クロロ-9,10-ビス(シクロヘキシルオキシカルボニルブチレンオキシ)アントラセン、2-クロロ-9,10-ビス(シクロペンチルメチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-クロロ-9,10-ビス(シクロヘキシルメチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-クロロ-9,10-ビス(シクロヘキシルメチルメチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-クロロ-9,10-ビス(シクロヘキシルエチルメチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-クロロ-9,10-ビス(ノルボルニルメチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-クロロ-9,10-ビス(アダマンチルメチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-クロロ-9,10-ビス(4-n-ドデシルシクロヘキシルメチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-クロロ-9,10-ビス(デカヒドロナフチルメチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-クロロ-9,10-ビス(シクロヘキシルメチルオキシカルボニルエチレンオキシ)アントラセン、2-クロロ-9,10-ビス(シクロヘキシルメチルオキシカルボニルプロピレンオキシ)アントラセン、2-クロロ-9,10-ビス(シクロヘキシルメチルオキシカルボニルブチレンオキシ)アントラセン、2-クロロ-9,10-ビス(シクロペンチルエチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-クロロ-9,10-ビス(シクロヘキシルエチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-クロロ-9,10-ビス(シクロヘキシルメチルエチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-クロロ-9,10-ビス(シクロヘキシルエチルエチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-クロロ-9,10-ビス(ノルボルニルエチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-クロロ-9,10-ビス(アダマンチルエチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-クロロ-9,10-ビス(4-n-ドデシルシクロヘキシルエチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-クロロ-9,10-ビス(デカヒドロナフチルエチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-クロロ-9,10-ビス(シクロヘキシルエチルオキシカルボニルエチレンオキシ)アントラセン、2-クロロ-9,10-ビス(シクロヘキシルエチルオキシカルボニルプロピレンオキシ)アントラセン、2-クロロ-9,10-ビス(シクロヘキシルエチルオキシカルボニルブチレンオキシ)アントラセン等が挙げられる。
上記挙げた具体例の中でも、製造しやすさから、9,10-ビス(シクロペンチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(シクロヘキシルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(シクロヘキシルメチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(シクロヘキシルエチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(ノルボルニルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(アダマンチルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(4-n-ドデシルシクロヘキシルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンが好ましく、9,10-ビス(シクロヘキシルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンが特に好ましい。
本発明のエステル基を有する9,10-ビス(シクロアルキル置換アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物は、その構造にシクロアルキル基を有することにより種々のモノマーに対する溶解度が向上するため、添加量の限界を上げることができるなど適用範囲が広がるという利点を持っている。
(製造法)
次に本発明のエステル基を有する9,10-ビス(シクロアルキル置換アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物の製造法について説明する。本発明の一般式(1)で表されるエステル基を有する9,10-ビス(シクロアルキル置換アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物は、下記一般式(9)で表される9,10-アントラキノン化合物を出発原料として合成する方法と下記一般式(2)で表される9,10-ジヒドロキシアントラセン化合物を出発原料とする合成方法がある。9,10-アントラキノン化合物を出発原料として合成する方法も中間生成物として9,10-ジヒドロキシアントラセン化合物を経て合成される。更に、当該9,10-ジヒドロキシアントラセン化合物を経てまたは出発原料として一段階の反応で合成する方法(一段階製造法)と下記一般式(5)で表される中間生成物を経て二段階の反応で合成する方法(二段階製造法)とがある。
一般式(9)において、X、Yは同一であっても異なってもよく、水素原子、炭素数1から8のアルキル基又はハロゲン原子を表す。
一般式(2)において、X、Yは同一であっても異なってもよく、水素原子、炭素数1から8のアルキル基又はハロゲン原子を表す。
一般式(5)において、Aは炭素数1から20のアルキレン基を表し、該アルキレン基はアルキル基によって分岐していてもよい。X、Yは同一であっても異なってもよく、水素原子、炭素数1から8のアルキル基又はハロゲン原子を表す。
(一段階製造法-1)
まず、9,10-ジヒドロキシアントラセン化合物を出発原料として、本発明のエステル基を有する9,10-ビス(シクロアルキル置換アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物を一段階製造法で合成する方法について説明する。本発明の一般式(1)で表されるエステル基を有する9,10-ビス(シクロアルキル置換アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物は、一般式(2)で表される9,10-ジヒドロキシアントラセン化合物を下記の反応式-1に従い、塩基性化合物存在下、あるいは非存在下で対応する一般式(3)で表されるエステル化合物と反応させることにより得ることができる。
一般式(1)において、Aは炭素数1から20のアルキレン基を表し、該アルキレン基はアルキル基によって分岐していてもよい。Rは炭素数3から20のシクロアルキル基又は炭素数4から20のシクロアルキルアルキル基を表し、該シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基はアルキル基、ヒドロキシ基によって置換されていてもよい。X、Yは同一であっても異なってもよく、水素原子、炭素数1から8のアルキル基又はハロゲン原子を表す。
反応式-1において、原料として用いられる一般式(2)で表される9,10-ジヒドロキシアントラセン化合物は、対応する9,10-アントラキノン化合物を還元して得られる。
当該反応において、原料となる9,10-ジヒドロキシアントラセン化合物の具体的な例としては、9,10-ジヒドロキシアントラセン、2-メチル-9,10-ジヒドロキシアントラセン、2-エチル-9,10-ジヒドロキシアントラセン、2-t-ペンチル-9,10-ジヒドロキシアントラセン、2,6-ジメチル-9,10-ジヒドロキシアントラセン、2-クロロ-9,10-ジヒドロキシアントラセン、2-ブロモ-9,10-ジヒドロキシアントラセン等が挙げられる。
当該9,10-ジヒドロキシアントラセン化合物は、酸素に対して不安定なため、ヒドロキシル基を公知の保護基によって保護された形で用いてもよい。
また、9,10-ジヒドロキシアントラセンの場合は、工業的な方法として、1,4-ナフトキノンと1,3-ブタジエンとのディールス・アルダー反応生成物である1,4,4a,9a-テトラヒドロアントラキノン又はその異性体である1,4-ジヒドロ9,10-ジヒドロキシアントラセンのアルカリ金属塩を用いて9,10-アントラキノンを還元することにより、より簡便に9,10-ジヒドロキシアントラセンを得ることができる。すなわち、1,4-ナフトキノンと1,3-ブタジエンとの反応により得られる1,4,4a,9a-テトラヒドロアントラキノンを、水性媒体中、アルカリ金属水酸化物のようなアルカリ性化合物の存在下に9,10-アントラキノンと反応させることにより9,10-ジヒドロキシアントラセンのアルカリ金属塩の水溶液を得ることができる。
当該反応で得られた9,10-ジヒドロキシアントラセンのアルカリ金属塩の水溶液を酸素不存在下に酸性化することにより、9,10-ジヒドロキシアントラセンの沈殿を得ることができる。この沈殿を精製することにより、9,10-ジヒドロキシアントラセンを得ることができる。置換基を有する9,10-ジヒドロキシアントラセン化合物も同様にして得ることができる。
反応式-1において、原料となる一般式(3)で表されるエステル化合物の具体例としては、クロロ酢酸シクロプロピル、クロロ酢酸シクロブチル、クロロ酢酸シクロペンチル、クロロ酢酸シクロヘキシル、クロロ酢酸シクロヘプチル、クロロ酢酸シクロオクチル、クロロ酢酸ノルボルニル、クロロ酢酸アダマンチル、クロロ酢酸4-n-ドデシルシクロヘキシル、クロロ酢酸デカヒドロナフチル、クロロ酢酸シクロヘキシルメチル、クロロ酢酸シクロヘキシルエチル、クロロプロピオン酸シクロペンチル、クロロプロピオン酸シクロヘキシル、クロロプロピオン酸ノルボルニル、クロロプロピオン酸アダマンチル、クロロプロピオン酸4-n-ドデシルシクロヘキシル、クロロプロピオン酸シクロヘキシルメチル、クロロプロピオン酸シクロヘキシルエチル、クロロ酪酸シクロペンチル、クロロ酪酸シクロヘキシル、クロロ酪酸ノルボルニル、クロロ酪酸アダマンチル、クロロ酪酸4-n-ドデシルシクロヘキシル、クロロ酪酸シクロヘキシルメチル、クロロ酪酸シクロヘキシルエチル、クロロ吉草酸シクロペンチル、クロロ吉草酸シクロヘキシル、クロロ吉草酸ノルボルニル、クロロ吉草酸アダマンチル、クロロ吉草酸4-n-ドデシルシクロヘキシル、クロロ吉草酸シクロヘキシルメチル、クロロ吉草酸シクロヘキシルエチル等が挙げられる。
更に、ブロモ酢酸シクロプロピル、ブロモ酢酸シクロブチル、ブロモ酢酸シクロペンチル、ブロモ酢酸シクロヘキシル、ブロモ酢酸シクロヘプチル、ブロモ酢酸シクロオクチル、ブロモ酢酸ノルボルニル、ブロモ酢酸アダマンチル、ブロモ酢酸4-n-ドデシルシクロヘキシル、ブロモ酢酸デカヒドロナフチル、ブロモ酢酸シクロヘキシルメチル、ブロモ酢酸シクロヘキシルエチル、ブロモプロピオン酸シクロペンチル、ブロモプロピオン酸シクロヘキシル、ブロモプロピオン酸ノルボルニル、ブロモプロピオン酸アダマンチル、ブロモプロピオン酸4-n-ドデシルシクロヘキシル、ブロモプロピオン酸シクロヘキシルメチル、ブロモプロピオン酸シクロヘキシルエチル、ブロモ酪酸シクロペンチル、ブロモ酪酸シクロヘキシル、ブロモ酪酸ノルボルニル、ブロモ酪酸アダマンチル、ブロモ酪酸4-n-ドデシルシクロヘキシル、ブロモ酪酸シクロヘキシルメチル、ブロモ酪酸シクロヘキシルエチル、ブロモ吉草酸シクロペンチル、ブロモ吉草酸シクロヘキシル、ブロモ吉草酸ノルボルニル、ブロモ吉草酸アダマンチル、ブロモ吉草酸4-n-ドデシルシクロヘキシル、ブロモ吉草酸シクロヘキシルメチル、ブロモ吉草酸シクロヘキシルエチル等が挙げられる。
そして更に、ヨード酢酸シクロプロピル、ヨード酢酸シクロブチル、ヨード酢酸シクロペンチル、ヨード酢酸シクロヘキシル、ヨード酢酸シクロヘプチル、ヨード酢酸シクロオクチル、ヨード酢酸ノルボルニル、ヨード酢酸アダマンチル、ヨード酢酸4-n-ドデシルシクロヘキシル、ヨード酢酸デカヒドロナフチル、ヨード酢酸シクロヘキシルメチル、ヨード酢酸シクロヘキシルエチル、ヨードプロピオン酸シクロペンチル、ヨードプロピオン酸シクロヘキシル、ヨードプロピオン酸ノルボルニル、ヨードプロピオン酸アダマンチル、ヨードプロピオン酸4-n-ドデシルシクロヘキシル、ヨードプロピオン酸シクロヘキシルメチル、ヨードプロピオン酸シクロヘキシルエチル、ヨード酪酸シクロペンチル、ヨード酪酸シクロヘキシル、ヨード酪酸ノルボルニル、ヨード酪酸アダマンチル、ヨード酪酸4-n-ドデシルシクロヘキシル、ヨード酪酸シクロヘキシルメチル、ヨード酪酸シクロヘキシルエチル、ヨード吉草酸シクロペンチル、ヨード吉草酸シクロヘキシル、ヨード吉草酸ノルボルニル、ヨード吉草酸アダマンチル、ヨード吉草酸4-n-ドデシルシクロヘキシル、ヨード吉草酸シクロヘキシルメチル、ヨード吉草酸シクロヘキシルエチル等が挙げられる。
上記挙げた具体例の中でも、クロロ化合物とブロモ化合物が反応性の点で好ましく、特に、ブロモ酢酸シクロヘキシルが好ましい。
反応式-1において一般式(3)で表されるエステル化合物の使用量としては、9,10-ジヒドロキシアントラセン化合物に対して、好ましくは2.0モル倍以上、10.0モル倍未満、より好ましくは、2.2モル倍以上、5.0モル倍未満である。2.0モル倍未満であると、反応が完結せず、また、10.0モル倍以上だと副反応が起こり収率及び純度が低下するので好ましくない。
反応式-1において、一般式(3)で表されるエステル化合物は市販品を購入してもよく、対応するカルボン酸とアルコールで合成したものを使用してもよい。
反応式-1において、一般式(3)で表されるエステル化合物として対応するカルボン酸とアルコールで合成したものを使用する場合は、系内であらかじめエステル化合物を合成し、そこに一般式(2)で表される9,10-ジヒドロキシアントラセン化合物を投入することで、効率よく反応を行うことができる。
反応式-1において使用される塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、リチウムヘキサメチルジシラジド、リチウムジイソプロピルアミド、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリヘキシルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、シクロヘキシルアミン、ジメチルアニリン、ピリジン、4,4-ジメチルアミノピリジン、ピペリジン、γ-ピコリン、ルチジン等が挙げられる。
塩基性化合物の添加量としては、9,10-ジヒドロキシアントラセン化合物に対して、好ましくは2.0モル倍以上、10.0モル倍未満、より好ましくは、2.2モル倍以上、5.0モル倍未満である。2.0モル倍未満であると、反応が完結せず、また、10.0モル倍以上だと副反応が起こり収率及び純度が低下するので好ましくない。
当該反応は溶媒中もしくは無溶媒で行う。用いられる溶媒としては使用するエステル化合物と反応しなければ特に種類を選ばず、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族溶媒、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒、塩化メチレン、二塩化エチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭素系溶媒、メタノール、エタノール、1-プロパノール等のアルコール溶媒が用いられる。
無機塩基の水溶液中に9,10-ジヒドロキシアントラセン化合物を溶解させ、エステルと反応させる場合は、相間移動触媒の使用が有効である。相間移動触媒としては、例えば、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラプロピルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、トリオクチルメチルアンモニウムブロマイド、トリオクチルエチルアンモニウムブロマイド、トリオクチルプロピルアンモニウムブロマイド、トリオクチルブチルアンモニウムブロマイド、ベンジルジメチルオクタデシルアンモニウムブロマイド、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラプロピルアンモニウムクロライド、テトラフブチルアンモニウムクロライド、トリオクチルメチルアンモニウムクロライド、トリオクチルエチルアンモニウムクロライド、トリオクチルプロピルアンモニウムクロライド、トリオクチルブチルアンモニウムクロライド、ベンジルジメチルオクタデシルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
相間移動触媒の添加量としては、9,10-ジヒドロキシアントラセン化合物に対して、好ましくは 0.01モル倍以上、1.0モル倍未満、より好ましくは、0.05モル倍以上、0.5モル倍未満である。0.01モル倍未満であると、反応速度が遅く、また、1.0モル倍以上だと生成物の純度が低下するので好ましくない。
当該反応の反応温度は、通常0℃以上、200℃以下、好ましくは10℃以上、100℃以下である。0℃未満だと、反応時間がかかりすぎ、100℃を超えて加熱すると、不純物が多くなり目的化合物の純度が低下し、共に好ましくない。
当該反応における反応時間は、反応温度によって異なるが、通常1時間から20時間程度である。より好ましくは2時間から10時間である。
反応終了後、必要に応じて未反応原料・溶媒及び触媒を洗浄・減圧留去・濾過等の操作を単独あるいは複数組み合わせる方法で除去する。生成物が固体の場合は反応途中に結晶が析出するので、濾過によって固液分離を行い、必要に応じてアルコールやヘキサン等の貧溶媒から再結晶させる。あるいはそのままドライアップして結晶を得ることができる。生成物が液体の場合は、そのままドライアップし、必要に応じて蒸留等の精製を行ってエステル基を有する9,10-ビス(シクロアルキル置換アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物を得ることができる。
(二段階製造法-1)
次に、9,10-ジヒドロキシアントラセン化合物を出発原料として、本発明のエステル基を有する9,10-ビス(シクロアルキル置換アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物を二段階製造法で合成する方法について説明する。本発明の一般式(1)で表されるエステル基を有する9,10-ビス(シクロアルキル置換アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物は、一般式(2)で表される9,10-ジヒドロキシアントラセン化合物を下記の反応式-2に従い、まず、塩基性化合物存在下、あるいは非存在下で対応する一般式(4)で表されるカルボン酸と反応させて中間体である一般式(5)で表される9,10-ビス(ヒドロキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物を合成した後、反応式-3に従い、一般式(5)で表される9,10-ビス(ヒドロキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物と一般式(6)で表されるアルコール化合物、反応式-4に従い、一般式(7)で表されるハロゲン化アルキル化合物、反応式-5に従い、一般式(8)で表されるグリシジルエーテル化合物と反応させることにより得ることにより、一般式(1)で表されるエステル基を有する9,10-ビス(シクロアルキル置換アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物を得ることができる。
反応式-2においてAは炭素数1から20のアルキレン基を表し、該アルキレン基はアルキル基によって分岐していてもよい。X、Yは同一であっても異なってもよく、水素原子、炭素数1から8のアルキル基又はハロゲン原子を表す。Zは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す。
反応式-3においてAは炭素数1から20のアルキレン基を表し、該アルキレン基はアルキル基によって分岐していてもよい。Rは炭素数3から20のシクロアルキル基又は炭素数4から20のシクロアルキルアルキル基を表し、該シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基はアルキル基、ヒドロキシ基によって置換されていてもよい。X、Yは同一であっても異なってもよく、水素原子、炭素数1から8のアルキル基又はハロゲン原子を表す。
反応式-4においてAは炭素数1から20のアルキレン基を表し、該アルキレン基はアルキル基によって分岐していてもよい。Rは炭素数3から20のシクロアルキル基又は炭素数4から20のシクロアルキルアルキル基を表し、該シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基はアルキル基、ヒドロキシ基によって置換されていてもよい。X、Yは同一であっても異なってもよく、水素原子、炭素数1から8のアルキル基又はハロゲン原子を表す。Dは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を表す。
反応式-5においてAは炭素数1から20のアルキレン基を表し、該アルキレン基はアルキル基によって分岐していてもよい。R1は炭素数3から17のシクロアルキル基又は炭素数4から17のシクロアルキルアルキル基を表し、該シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基はアルキル基、ヒドロキシ基によって置換されていてもよい。X、Yは同一であっても異なってもよく、水素原子、炭素数1から8のアルキル基又はハロゲン原子を表す。上記反応式-5において、例えば、一般式(8)で表されるグリシジルエーテル化合物の置換基R1がシクロヘキシル基である場合、対応する一般式(1)で表されるエステル基を有する9,10-ビス(アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物の置換基Rは2―ヒドロキシ-3-シクロヘキシルオキシプロピル基となる。すなわち、反応式-5に従い、一般式(8)で表されるグリシジルエーテル化合物と反応させることにより一般式(1)で表されるエステル基を有する9,10-ビス(アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物を得る場合は、一般式(1)におけるRは炭素数が6から20のアルキル基を表す。
まずは中間体である一般式(5)で表される9,10-ビス(ヒドロキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物の製造法について説明する。
反応式-2において、原料として用いられる一般式(2)で表される9,10-ジヒドロキシアントラセン化合物は、反応式-1で挙げたものと同様のものを用いることができ、同様の方法で得ることができる。
次に、反応式-2において、もう一方の原料となる一般式(4)で表されるカルボン酸の具体例としては、クロロ酢酸、2-クロロプロピオン酸、3-クロロプロピオン酸、2-クロロ酪酸、3-クロロ酪酸、4-クロロ酪酸、2-クロロ吉草酸、3-クロロ吉草酸、4-クロロ吉草酸、5-クロロ吉草酸、ブロモ酢酸、2-ブロモプロピオン酸、3-ブロモプロピオン酸、2-ブロモ酪酸、3-ブロモ酪酸、4-ブロモ酪酸、2-ブロモ吉草酸、3-ブロモ吉草酸、4-ブロモ吉草酸、5-ブロモ吉草酸、ヨード酢酸、2-ヨードプロピオン酸、3-ヨードプロピオン酸、2-ヨード酪酸、3-ヨード酪酸、4-ヨード酪酸、2-ヨード吉草酸、3-ヨード吉草酸、4-ヨード吉草酸、5-ヨード吉草酸、等が挙げられる。
上記挙げた具体例の中でも、クロロ化合物とブロモ化合物が入手容易性、反応性の点で好ましく、特に、クロロ酢酸、ブロモ酢酸が好ましい。
反応式-2において一般式(4)で表されるカルボン酸の使用量としては、9,10-ジヒドロキシアントラセン化合物に対して、好ましくは2.0モル倍以上、10.0モル倍未満、より好ましくは、2.2モル倍以上、5.0モル倍未満である。2.0モル倍未満であると、反応が完結せず、また、10.0モル倍以上だと副反応が起こり収率及び純度が低下するので好ましくない。
反応式-2において使用される塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、リチウムヘキサメチルジシラジド、リチウムジイソプロピルアミド、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリヘキシルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、シクロヘキシルアミン、ジメチルアニリン、ピリジン、4,4-ジメチルアミノピリジン、ピペリジン、γ-ピコリン、ルチジン等が挙げられる。
塩基性化合物の添加量としては、9,10-ジヒドロキシアントラセン化合物に対して、好ましくは2.0モル倍以上、10.0モル倍未満、より好ましくは、2.2モル倍以上、8.0モル倍未満である。2.0モル倍未満であると、反応が完結せず、また、10.0モル倍以上だと副反応が起こり収率及び純度が低下するので好ましくない。
当該反応は溶媒中もしくは無溶媒で行う。用いられる溶媒としては使用する原料と反応しなければ特に種類を選ばず、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族溶媒、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒、塩化メチレン、二塩化エチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭素系溶媒、メタノール、エタノール、1-プロパノール等のアルコール溶媒、水等が用いられる。
無機塩基の水溶液中に9,10-ジヒドロキシアントラセン化合物を溶解させ、エステルと反応させる場合は、相間移動触媒の使用が有効である。相間移動触媒としては、例えば、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラプロピルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、トリオクチルメチルアンモニウムブロマイド、トリオクチルエチルアンモニウムブロマイド、トリオクチルプロピルアンモニウムブロマイド、トリオクチルブチルアンモニウムブロマイド、ベンジルジメチルオクタデシルアンモニウムブロマイド、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラプロピルアンモニウムクロライド、テトラフブチルアンモニウムクロライド、トリオクチルメチルアンモニウムクロライド、トリオクチルエチルアンモニウムクロライド、トリオクチルプロピルアンモニウムクロライド、トリオクチルブチルアンモニウムクロライド、ベンジルジメチルオクタデシルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
相間移動触媒の添加量としては、9,10-ジヒドロキシアントラセン化合物に対して、好ましくは 0.01モル倍以上、1.0モル倍未満、より好ましくは、0.03モル倍以上、0.5モル倍未満である。0.01モル倍未満であると、反応速度が遅く、また、1.0モル倍以上だと生成物の純度が低下するので好ましくない。
当該反応の反応温度は、通常0℃以上、100℃以下、好ましくは10℃以上、50℃以下である。0℃未満だと、反応時間がかかりすぎ、100℃を超えて加熱すると、不純物が多くなり目的化合物の純度が低下し、共に好ましくない。
当該反応における反応時間は、反応温度によって異なるが、通常1時間から20時間程度である。より好ましくは2時間から10時間である。
反応終了後、必要に応じて未反応原料・溶媒及び触媒を抽出・濾過等の操作を単独あるいは複数組み合わせる方法で除去する。生成物はカルボン酸塩の状態なので、鉱酸あるいは有機酸によって中和することで結晶を析出させ、濾過によって固液分離を行い、必要に応じて再結晶することで、一般式(5)で表される9,10-ビス(ヒドロキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物を得ることができる。
次に反応式-3で示される、一般式(5)で表される9,10-ビス(ヒドロキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物と一般式(6)で表されるアルコール化合物を触媒存在下あるいは非存在下で反応させて一般式(1)で表されるエステル基を有する9,10-ビス(シクロアルキル置換アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物を製造する方法について説明する。
反応式-3において、原料となる一般式(6)で表されるアルコール化合物の具体例としては、シクロプロピルアルコール、シクロブチルアルコール、シクロペンチルアルコール、シクロヘキシルアルコール、シクロヘプチルアルコール、シクロオクチルアルコール、ノルボルニルアルコール、アダマンチルアルコール、4-n-ドデシルシクロヘキシルアルコール、デカヒドロナフチルアルコール、シクロヘキサンメタノール、シクロヘキサンエタノール等が挙げられる。
上記挙げた具体例の中でも、シクロヘキシルアルコールが好ましい。
反応式-3において一般式(6)で表されるアルコール化合物の使用量としては、一般式(5)で表される9,10-ビス(ヒドロキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物に対して、好ましくは5モル倍以上、100モル倍未満、より好ましくは、10モル倍以上、50モル倍未満である。5モル倍未満であると、反応が完結せず、また、100モル倍以上だと反応速度が遅くなり収率及び純度が低下するので好ましくない。
反応式-3において使用される触媒としては、鉱酸(硫酸、塩酸)、有機酸(メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸)、ルイス酸(フッ化ホウ素エーテラート、三塩化アルミニウム、四塩化チタン、三塩化鉄、二塩化亜鉛)、固体酸触媒(フタムラ化学社製)、アンバーリスト(オルガノ社製)、ナフィオン(デュポン社製、ナフィオンはデュポン社登録商標)、テトラアルコキシチタン化合物(テトライソプロポキシチタン、テトラn-ブトキシチタン、テトラメトキシチタン)、有機スズ化合物(ジラウリン酸ジブチルスズ、ジブチルスズオキシド)等が挙げられる。
触媒の添加量としては、一般式(5)で表される9,10-ビス(ヒドロキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物に対して、好ましくは0.01モル%以上、50モル%未満、より好ましくは、0.1モル%以上、20モル%未満である。0.01モル%未満であると、反応が完結せず、また、50モル%以上だと副反応が起こり収率及び純度が低下するので好ましくない。
当該反応は溶媒中もしくは無溶媒で行う。用いられる溶媒としては使用するアルコール化合物と反応しなければ特に種類を選ばず、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族溶媒、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒、塩化メチレン、二塩化エチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭素系溶媒が用いられる。特に使用するアルコール化合物を反応剤兼溶媒として用いることが廃棄物削減の面から好ましい。
当該反応の反応温度は、通常20℃以上、200℃以下、好ましくは50℃以上、150℃以下である。20℃未満だと、反応時間がかかりすぎ、200℃を超えて加熱すると、不純物が多くなり目的化合物の純度が低下し、共に好ましくない。
当該反応における反応時間は、反応温度によって異なるが、通常1時間から20時間程度である。より好ましくは2時間から15時間である。
反応終了後、必要に応じて未反応原料・溶媒及び触媒を中和・洗浄・減圧留去・濾過等の操作を単独あるいは複数組み合わせる方法で除去する。生成物が固体の場合は反応途中に結晶が析出するので、濾過によって固液分離を行い、必要に応じてアルコールやヘキサン等の貧溶媒から再結晶させる。あるいはそのままドライアップして結晶を得ることができる。生成物が液体の場合は、そのままドライアップし、必要に応じて蒸留等の精製を行ってエステル基を有する9,10-ビス(シクロアルキル置換アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物を得ることができる。
次に反応式-4で示される、一般式(5)で表される9,10-ビス(ヒドロキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物と一般式(7)で表されるハロゲン化アルキル化合物を塩基存在下あるいは非存在下で反応させて一般式(1)で表されるエステル基を有する9,10-ビス(シクロアルキル置換アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物を製造する方法について説明する。
反応式-4において、原料となる一般式(7)で表されるハロゲン化アルキル化合物の具体例としては、塩化シクロプロピル、塩化シクロブチル、塩化シクロペンチル、塩化シクロヘキシル、塩化シクロヘプチル、塩化シクロオクチル、塩化ノルボルニル、塩化アダマンチル、塩化4-n-ドデシルシクロヘキシル、塩化デカヒドロナフチル、塩化シクロヘキシルメチル、塩化シクロヘキシルエチル、臭化シクロプロピル、臭化シクロブチル、臭化シクロペンチル、臭化シクロヘキシル、臭化シクロヘプチル、臭化シクロオクチル、臭化ノルボルニル、臭化アダマンチル、臭化4-n-ドデシルシクロヘキシル、臭化デカヒドロナフチル、臭化シクロヘキシルメチル、臭化シクロヘキシルエチル、ヨウ化シクロプロピル、ヨウ化シクロブチル、ヨウ化シクロペンチル、ヨウ化シクロヘキシル、ヨウ化シクロヘプチル、ヨウ化シクロオクチル、ヨウ化ノルボルニル、ヨウ化アダマンチル、ヨウ化4-n-ドデシルシクロヘキシル、ヨウ化デカヒドロナフチル、ヨウ化シクロヘキシルメチル、ヨウ化シクロヘキシルエチル等が挙げられる。
上記挙げた具体例の中でも、塩化物、臭化物が入手容易性、反応性の点で好ましく、特に、臭化物が好ましい。
反応式-4において一般式(7)で表されるハロゲン化アルキル化合物の使用量としては、一般式(5)で表される9,10-ビス(ヒドロキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物に対して、好ましくは2モル倍以上、10モル倍未満、より好ましくは、3モル倍以上、5モル倍未満である。2モル倍未満であると、反応が完結せず、また、10モル倍以上だと副反応が起こり、収率及び純度が低下するので好ましくない。
反応式-4において使用される塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、リチウムヘキサメチルジシラジド、リチウムジイソプロピルアミド、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリヘキシルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、シクロヘキシルアミン、ジメチルアニリン、ピリジン、4,4-ジメチルアミノピリジン、ピペリジン、γ-ピコリン、ルチジン等が挙げられる。
塩基性化合物の添加量としては、一般式(5)で表される9,10-ビス(ヒドロキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物に対して、好ましくは0.5モル倍以上、10モル倍未満、より好ましくは、1モル倍以上、5モル倍未満である。0.5モル倍未満であると、反応が完結せず、また、10モル倍以上だと副反応が起こり収率及び純度が低下するので好ましくない。
当該反応は溶媒中もしくは無溶媒で行う。用いられる溶媒としては使用するアルコール化合物と反応しなければ特に種類を選ばず、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族溶媒、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒、塩化メチレン、二塩化エチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭素系溶媒が用いられる。
当該反応の反応温度は、通常0℃以上、200℃以下、好ましくは20℃以上、100℃以下である。0℃未満だと、反応時間がかかりすぎ、200℃を超えて加熱すると、不純物が多くなり目的化合物の純度が低下し、共に好ましくない。
当該反応における反応時間は、反応温度によって異なるが、通常1時間から20時間程度である。より好ましくは2時間から15時間である。
反応終了後、必要に応じて未反応原料・溶媒及び触媒を中和・洗浄・減圧留去・濾過等の操作を単独あるいは複数組み合わせる方法で除去する。生成物が固体の場合は反応途中に結晶が析出するので、濾過によって固液分離を行い、必要に応じてアルコールやヘキサン等の貧溶媒から再結晶させる。あるいはそのままドライアップして結晶を得ることができる。生成物が液体の場合は、そのままドライアップし、必要に応じて蒸留等の精製を行ってエステル基を有する9,10-ビス(シクロアルキル置換アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物を得ることができる。
次に反応式-5で示される、一般式(5)で表される9,10-ビス(ヒドロキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物と一般式(8)で表されるグリシジルエーテル化合物を塩基存在下あるいは非存在下で反応させて一般式(1)で表されるエステル基を有する9,10-ビス(シクロアルキル置換アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物を製造する方法について説明する。
反応式-5において、原料となる一般式(8)で表されるグリシジルエーテル化合物の具体例としては、シクロプロピルグリシジルエーテル、シクロブチルグリシジルエーテル、シクロペンチルグリシジルエーテル、シクロヘキシルグリシジルエーテル、シクロヘプチルグリシジルエーテル、シクロオクチルグリシジルエーテル、ノルボルニルグリシジルエーテル、アダマンチルグリシジルエーテル、4-n-ドデシルシクロヘキシルグリシジルエーテル、シクロヘキシルメチルグリシジルエーテル、シクロヘキシルエチルグリシジルエーテル等が挙げられる。
反応式-5において一般式(8)で表されるグリシジルエーテル化合物の使用量としては、一般式(5)で表される9,10-ビス(ヒドロキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物に対して、好ましくは2モル倍以上、10モル倍未満、より好ましくは、3モル倍以上、5モル倍未満である。2モル倍未満であると、反応が完結せず、また、10モル倍以上だと副反応が起こり、収率及び純度が低下するので好ましくない。
反応式-5において使用される塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、リチウムヘキサメチルジシラジド、リチウムジイソプロピルアミド、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリヘキシルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、シクロヘキシルアミン、ジメチルアニリン、ピリジン、4,4-ジメチルアミノピリジン、ピペリジン、γ-ピコリン、ルチジン等が挙げられる。
塩基性化合物の添加量としては、一般式(5)で表される9,10-ビス(ヒドロキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物に対して、好ましくは0.5モル倍以上、10モル倍未満、より好ましくは、1モル倍以上、5モル倍未満である。0.5モル倍未満であると、反応が完結せず、また、10モル倍以上だと副反応が起こり収率及び純度が低下するので好ましくない。
当該反応は溶媒中もしくは無溶媒で行う。用いられる溶媒としては使用するグリシジルエーテル化合物と反応しなければ特に種類を選ばず、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族溶媒、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒、塩化メチレン、二塩化エチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭素系溶媒が用いられる。
当該反応の反応温度は、通常0℃以上、200℃以下、好ましくは20℃以上、100℃以下である。0℃未満だと、反応時間がかかりすぎ、200℃を超えて加熱すると、不純物が多くなり目的化合物の純度が低下し、共に好ましくない。
当該反応における反応時間は、反応温度によって異なるが、通常1時間から20時間程度である。より好ましくは2時間から15時間である。
反応終了後、必要に応じて未反応原料・溶媒及び触媒を中和・洗浄・減圧留去・濾過等の操作を単独あるいは複数組み合わせる方法で除去する。生成物が固体の場合は反応途中に結晶が析出するので、濾過によって固液分離を行い、必要に応じてアルコールやヘキサン等の貧溶媒から再結晶させる。あるいはそのままドライアップして結晶を得ることができる。生成物が液体の場合は、そのままドライアップし、必要に応じて蒸留等の精製を行ってエステル基を有する9,10-ビス(シクロアルキル置換アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物を得ることができる。
(一段階製造法-2)
次に、9,10-アントラキノン化合物を出発原料として、本発明のエステル基を有する9,10-ビス(シクロアルキル置換アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物を一段階製造法で合成する方法について説明する。本発明の一般式(1)で表されるエステル基を有する9,10-ビス(シクロアルキル置換アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物は、一般式(9)で表される9,10-アントラキノン化合物を下記の反応式-6に従い還元し、9,10-ジヒドロキシアントラセン化合物に還元した後に、塩基性化合物存在下、あるいは非存在下で対応する一般式(3)で表されるエステル化合物と反応させることにより得ることができる。9,10-アントラキノン化合物を還元することにより、一般式(2)で表される9,10-ジヒドロキシアントラセン化合物を生成することができる。当該反応において、9,10-ジヒドロキシアントラセン化合物を単離した後、次反応を行ってもよいが、9,10-ジヒドロキシアントラセン化合物を取り出すことなく、連続して次反応を行ってもよい(ワンポット反応)。
反応式-6において、Aは炭素数1から20のアルキレン基を表し、該アルキレン基はアルキル基によって分岐していてもよい。Rは炭素数3から20のシクロアルキル基又は炭素数4から20のシクロアルキルアルキル基を表し、該シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基はアルキル基、ヒドロキシ基によって置換されていてもよい。X、Yは同一であっても異なってもよく、水素原子、炭素数1から8のアルキル基又はハロゲン原子を表す。
反応式-6において、原料として用いられる一般式(9)で表される9,10-アントラキノン化合物は工業的に製造されているものもあり、その合成及び入手容易である。
当該反応において、原料となる9,10-アントラキノン化合物の具体的な例としては、9,10-アントラキノン、2-メチル-9,10-アントラキノン、2-エチル-9,10-アントラキノン、2-t-ペンチル-9,10-アントラキノン、2,6-ジメチル-9,10-アントラキノン、2-クロロ-9,10-アントラキノン、2-ブロモ-9,10-アントラキノン等が挙げられる。
9,10-アントラキノン化合物を還元して9,10-ジヒドロキシアントラセン化合物とする方法としては、9,10-アントラキノン化合物を溶媒中又は水溶液中で還元剤を用いて還元する方法が知られている。還元剤として、例えば、ハイドロサルファイト、二酸化チオ尿素、糖類、Sn-Hg、Zn-Cu、Zn、SnCl2・2H2Oなどの金属類、水素化アルミニウムリチウム、水素化ホウ素ナトリウム等の金属ヒドリド化合物、ヒドラジン等を例示することができる。また、パラジウム等の水素化触媒の存在下分子状水素(水素ガス)により、9,10-アントラキノン化合物を溶媒又はアルカリ水溶液中で接触水素化することにより9,10-ジヒドロキシアントラセン化合物を製造する方法が知られている。更に、1,4-ジヒドロ-9,10-ジヒドロキシアントラセン化合物のアルカリ塩溶液を還元剤として9,10-アントラキノン化合物を還元し、9,10-ジヒドロキシアントラセン化合物を製造する方法が知られている。この場合はアルカリ塩水溶液として得られる。
還元工程に用いられる溶媒は、還元剤に対して安定な溶媒であれば特に限定されないが、例えば、還元剤としてナトリウムハイドロサルファイトを用いた場合、水、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶媒、トリエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、ベンゾニトリル等のニトリル系溶媒等を例示することができ、これらは1種単独で、また2種以上を混合して用いることができる。水溶液系では、還元剤にもよるが水酸化ナトリウム水溶液中で行うことが好ましい。
また、9,10-アントラキノン化合物の還元は、不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。不活性ガス雰囲気下とは、例えば、反応溶媒を窒素ガス等の不活性ガスでバブリングして脱酸素してから用いる、反応を不活性ガス気流下で行う、または、不活性ガス置換した反応容器中で行う等の状態を意味する。
還元剤の使用量は、用いる還元剤によっても異なるが、9,10-アントラキノン化合物1モルに対して、2電子を供与することができる量であれば特に制限されないが、ナトリウムハイドロサルファイトを用いた場合を例にあげると、反応の効率等を考慮して、9,10-アントラキノン化合物1モルに対して、2~10モル用いるのが好ましく、2~5モル用いるのがさらに好ましい。還元剤を過剰に用いるとさらに還元が進みアントロンが生成するので、好ましくない。
当該還元反応により得られた9,10-ジヒドロキシアントラセン化合物は、単離してから次の反応に用いることもできるが、還元剤の種類や用いた溶媒にもよるが、9,10-ジヒドロキシアントラセン化合物を単離することなく、次工程のエステル化合物との反応に進むことができる。
そして、還元反応によって得られた一般式(2)で表される9,10-ジヒドロキシアントラセン化合物と一般式(3)で表されるエステル化合物を反応させることにより、本発明のエステル基を有する9,10-ビス(シクロアルキル置換アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物を得ることができるが、当該反応において用いられる、一般式(3)で表されるエステル化合物及びその反応条件等は、一段階製造法-1で開示した化合物及びその反応条件と同じである。
(二段階製造法-2)
次に、9,10-アントラキノン化合物を出発原料として、本発明のエステル基を有する9,10-ビス(シクロアルキル置換アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物を二段階製造法で合成する方法について説明する。本発明の一般式(1)で表されるエステル基を有する9,10-ビス(シクロアルキル置換アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物は、一般式(9)で表される9,10-アントラキノン化合物を下記の反応式-7に従い還元し、9,10-ジヒドロキシアントラセン化合物に還元した後に、まず、塩基性化合物存在下、あるいは非存在下で対応する一般式(4)で表されるカルボン酸と反応させて中間体である一般式(5)で表される9,10-ビス(ヒドロキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物を合成した後、二段階製造法-1と同様に一般式(5)で表される9,10-ビス(ヒドロキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物と一般式(6)で表されるアルコール化合物、一般式(7)で表されるハロゲン化アルキル化合物又は一般式(8)で表されるグリシジルエーテル化合物と反応させることにより得ることにより、一般式(1)で表されるエステル基を有する9,10-ビス(シクロアルキル置換アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物を得ることができる。当該反応において、9,10-ジヒドロキシアントラセン化合物を単離した後、次反応を行ってもよいが、9,10-ジヒドロキシアントラセン化合物を取り出すことなく、連続して次反応を行ってもよい。
反応式-7において、Aは炭素数1から20のアルキレン基を表し、該アルキレン基はアルキル基によって分岐していてもよい。X、Yは同一であっても異なってもよく、水素原子、炭素数1から8のアルキル基又はハロゲン原子を表す。Zは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す。
反応式-7において、原料として用いられる一般式(9)で表される9,10-アントラキノン化合物は工業的に製造されているものもあり、その合成及び入手容易である。
当該反応において、原料となる9,10-アントラキノン化合物の具体的な例としては、9,10-アントラキノン、2-メチル-9,10-アントラキノン、2-エチル-9,10-アントラキノン、2-t-ペンチル-9,10-アントラキノン、2,6-ジメチル-9,10-アントラキノン、2-クロロ-9,10-アントラキノン、2-ブロモ-9,10-アントラキノン等が挙げられる。
9,10-アントラキノン化合物を還元して9,10-ジヒドロキシアントラセン化合物とする方法としては、一段階製造方法-2における還元方法及び条件と同じ方法を用いることができる。更に、二段階製造法においても、当該還元反応により得られた9,10-ジヒドロキシアントラセン化合物は、単離してから次の反応に用いることもできるが、還元剤の種類や用いた溶媒にもよるが、9,10-ジヒドロキシアントラセン化合物を単離することなく、次工程の反応に進むことができる。
そして、還元反応によって得られた一般式(2)で表される9,10-ジヒドロキシアントラセン化合物は、塩基性化合物存在下あるいは非存在下で対応する一般式(4)で表されるカルボン酸と反応させて中間体である一般式(5)で表される9,10-ビス(ヒドロキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物を合成するが、その時に用いられる一般式(4)で表されるカルボン酸及びその反応条件は、二段階製造法-1で開示した化合物及びその反応条件と同じである。また、9,10-ビス(ヒドロキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物を合成した後に、一般式(6)で表されるアルコール化合物、一般式(7)で表されるハロゲン化アルキル化合物又は一般式(8)で表されるグリシジルエーテル化合物と反応させることにより一般式(1)で表されるエステル基を有する9,10-ビス(シクロアルキル置換アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物を得るが、用いられる一般式(6)で表されるアルコール化合物、一般式(7)で表されるハロゲン化アルキル化合物又は一般式(8)で表されるグリシジルエーテル化合物及びその反応条件等は、一段階製造法-1で開示した化合物及びその反応条件と同じである。
(光重合増感剤)
本発明の一般式(1)で表されるエステル基を有する9,10-ビス(シクロアルキル置換アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物は、特定の波長の光により励起され、その励起エネルギーを光重合開始剤に受け渡す光重合増感剤として作用する。その効果により、光重合開始剤の活性が十分でない長波長の光によっても、光重合を効率よく開始することが可能となる。当該光重合増感剤と光重合開始剤は光重合化合物と混合して光重合性組成物とすることができる。当該光重合性組成物は、例えば中心波長が405nmの紫外LED光というような長波長の光の照射によっても、容易に光硬化させることができる。
本発明の一般式(1)で表されるエステル基を有する9,10-ビス(シクロアルキル置換アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物は、その構造の中にアルキレン基を介したエステル基を有しているため、光重合性組成物やその硬化物との親和性が高く、光重合性組成物やその硬化物中においてマイグレーションあるいはブルーミングの程度がきわめて低いという特徴を有する。また、シクロアルキル基を有することにより、種々のモノマーに対する溶解度が向上するため、種々のモノマーに高濃度で溶解可能であり、適用範囲が広がるという利点を持っている。特に、シクロヘキシル基である場合が溶解性が高く好ましい。
また、本発明の一般式(1)で表されるエステル基を有する9,10-ビス(シクロアルキル置換アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物におけるエステル基は、アルキレン基であるAを介してアントラセン環に結合しているため、Aを介さない化合物に比べ、紫外線の吸収波長がより長波長側にあるという特徴がある。そのため、Aを介さない化合物において増感作用が弱い場合においても有効に用いることができる。
更に、本発明の一般式(1)で表されるエステル基を有する9,10-ビス(シクロアルキル置換アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物におけるAが炭素数1のメチレン基である化合物は、Aが炭素数2以上の9,10-ビス(シクロアルキル置換アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物に比べ、ラジカル重合において、その増感能が高いという特徴がある。この効果は、一般にアントラセン化合物はラジカル重合阻害があり、その阻害は9,10位に酸素原子がつくことにより緩和されるが、本発明の一般式(1)で表されるエステル基を有する9,10-ビス(シクロアルキル置換アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物においてAがメチレン基の化合物は、アントラセン環とエステル基の立体的な位置関係から来ると思われるが、特に、その阻害が弱くなり、ラジカル重合増感剤としての活性が高いものと思われる。
(光重合開始剤)
本発明で用いる光重合開始剤としては、オニウム塩、ベンジルメチルケタール系、α-ヒドロキシアルキルフェノン系重合開始剤、オキシムエステル系光重合開始剤、α-アミノアセトフェノン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤、ビイミダゾール系重合開始剤、トリアジン系重合開始剤、チオキサントン系重合開始剤等を用いることができる。
オニウム塩としては通常ヨードニウム塩またはスルホニウム塩が用いられる。ヨードニウム塩としては、4-イソブチルフェニル-4’-メチルフェニルヨードニウムヘキサフルオロフォスフェート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサメトキシアンチモネート、4-イソプロピルフェニル-4’-メチルフェニルヨードニウムテトラキスペンタメトキシフェニルボレート、4-イソプロピルフェニル-4’-メチルフェニルヨードニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート等が挙げられ、例えばビー・エー・エス・エフ社製イルガキュア250(イルガキュアはビー・エー・エス・エフ社の登録商標)、ローディア社製ロードシル2074(ロードシルはローディア社の登録商標)、サンアプロ社製のIK-1等を用いることができる。一方、スルホニウム塩としてはS,S,S’,S’-テトラフェニル-S,S’-(4、4’-チオジフェニル)ジスルホニウムビスヘキサメトキシフォスフェート、ジフェニル-4-フェニルチオフェニルスルホニウムヘキサメトキシフォスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサメトキシフォスフェート等が挙げられ、例えばダイセル社製CPI-100P、CPI101P、CPI-200K、ビー・エー・エス・エフ社製イルガキュア270、ダウ・ケミカル社製UVI6992等を用いることができる。これらの光重合開始剤は単独で用いても2種以上併用しても構わない。
オニウム塩として、ヨードニウム塩だけではなく、スルホニウム塩に対しても、本発明のエステル基を有する9,10-ビス(シクロアルキル置換アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物は、光重合増感効果を持つことも特徴の一つである。
また、本発明の一般式(1)で表されるエステル基を有する9,10-ビス(シクロアルキル置換アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物は、ベンジルメチルケタール系、α-ヒドロキシアルキルフェノン系重合開始剤、ビイミダゾール系重合開始剤等の長波長に吸収を持たないラジカル重合開始剤に対しても優れた光重合増感効果を有している。更に、長波長域に吸収を持つアシルホスフィンオキサイド系等の重合開始剤を用いた重合反応においても、その重合速度を増加する効果、あるいは得られる重合物の物性を改善する効果を有している。
ベンジルメチルケタール系重合開始剤としては、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(商品名「イルガキュア651」ビー・エー・エス・エフ社製)等が挙げられ、α-ヒドロキシアルキルフェノン系重合開始剤としては2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン(商品名「ダロキュア1173」ビー・エー・エス・エフ社製)、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名「イルガキュア184」ビー・エー・エス・エフ社製)、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン(商品名「イルガキュア2959」ビー・エー・エス・エフ社製)、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-1-オン(商品名「イルガキュア127」ビー・エー・エス・エフ社製)が挙げられる。
特に、ベンジルメチルケタール系重合開始剤である2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(商品名「イルガキュア651」ビー・エー・エス・エフ社製)、α-ヒドロキシアルキルフェノン系重合開始剤である2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン(商品名「ダロキュア1173」ビー・エー・エス・エフ社製)、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名「イルガキュア184」ビー・エー・エス・エフ社製)が好ましい。
また、アセトフェノン系重合開始剤であるアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-エトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-メトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-イソプロポキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-イソブトキシ-2-フェニルアセトフェノン、ベンジル系重合開始剤であるベンジル、4,4’-ジメトキシベンジル、アントラキノン系重合開始剤である2-エチルアントラキノン、2-t-ブチルアントラキノン、2-フェノキシアントラキノン、2-(フェニルチオ)アントラキノン、2-(ヒドロキシエチルチオ)アントラキノン等も用いることができる。
ビイミダゾール系重合開始剤としては、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジ(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2-(o-フルオロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(p-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体等が挙げられる。
α-アミノケトン系重合開始剤としては、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン(商品名「イルガキュア907」ビー・エー・エス・エフ社製)、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4‘-モルフォリノブチロフェノン(商品名「イルガキュア369」ビー・エー・エス・エフ社製)、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルフォリノ-4-イル-フェニル)ブタンー1-オン(商品名「イルガキュア379」ビー・エー・エス・エフ社製)等が挙げられる。
アシルホスフィンオキサイド系重合開始剤としては2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキサイド(商品名「イルガキュアTPO」ビー・エー・エス・エフ社製)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(商品名「イルガキュア819」ビー・エー・エス・エフ社製)等が挙げられる。
オキシムエステル系重合開始剤としては1,2-オクタンジオン、1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-、2-(о-ベンゾイルオキシム)(商品名「イルガキュアOXE01」ビー・エー・エス・エフ社製)、エタノン、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-、1-(о-アセチルオキシム)(商品名「イルガキュアOXE02」ビー・エー・エス・エフ社製)、[8-[[(アセチルオキシ)イミノ][2-(2,2,3,3-テトラフルオロプロポキシ)フェニル]メチル]-11-(2-エチルヘキシル)-11H-ベンゾ[a]カルバゾール-5-イル]-,(2,4,6-トリメチルフェニル)(商品名「イルガキュアOXE03」ビー・エー・エス・エフ社製)等が挙げられる。
トリアジン系重合開始剤としては2-(3,4-メチレンジオキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン等が挙げられる。
チオキサントン系重合開始剤としては、2,4-ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン等が挙げられる。
本発明で用いることができる、オニウム塩系集合開始剤、ベンジルメチルケタール系重合開始剤、α-ヒドロキシアルキルフェノン系重合開始剤、オキシムエステル系光重合開始剤、α-アミノアセトフェノン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤、ビイミダゾール系重合開始剤、トリアジン系重合開始剤、チオキサントン系重合開始剤は、それぞれ単独で用いることもできるが、用途等に合わせて、複数種類を合わせて用いることもできる。
本発明の一般式(1)で表されるエステル基を有する9,10-ビス(シクロアルキル置換アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物を含有する光重合増感剤の光重合開始剤に対する使用量は、特に限定されないが、光重合開始剤に対して通常5重量%以上、100重量%以下の範囲、好ましくは10重量%以上、50重量%以下の範囲である。光重合増感剤の使用量が5重量%未満では光重合性化合物を光重合させるのに時間がかかりすぎてしまい、一方、100重量%を超えて使用しても添加に見合う効果は得られない。
(光重合開始剤組成物)
本発明の一般式(1)で表されるエステル基を有する9,10-ビス(シクロアルキル置換アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物を含有する光重合増感剤は、直接、光重合性化合物に添加することもできるが、あらかじめ光重合開始剤と配合することにより光重合開始剤組成物を調製した後、光重合性化合物に添加することもできる。すなわち、本発明の光重合開始剤組成物は、少なくとも、一般式(1)で表されるエステル基を有する9,10-ビス(シクロアルキル置換アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物を含有する光重合増感剤と光重合開始剤を含有する組成物である。
(光重合性組成物)
さらに該光重合開始剤組成物と光重合性化合物を配合することにより、光重合性組成物を調製することもできる。本発明の光重合性組成物は、本発明のエステル基を有する9,10-ビス(シクロアルキル置換アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物を含有する光重合増感剤と光重合開始剤を含有する光重合開始剤組成物と、光ラジカル重合性化合物又は光カチオン重合性化合物とを含有する組成物である。本発明のエステル基を有する9,10-ビス(シクロアルキル置換アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物を含有する光重合増感剤と光重合開始剤は、別々に光ラジカル重合性化合物又は光カチオン重合性化合物に添加され、光ラジカル重合性化合物又は光カチオン重合性化合物中で、結果として光重合開始剤組成物を形成してもよい。更に、光ラジカル重合性化合物と光カチオン重合性化合物の両方を含むハイブリッド組成物としてもよい。
光ラジカル重合性化合物としては、例えば、スチレン、酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等の二重結合を有する有機化合物を用いることができる。これらのラジカル重合性化合物のうち、フィルム形成能等の面から、アクリル酸エステルやメタクリル酸エステル(以下、両者をあわせて(メタ)アクリル酸エステルという)が好ましい。(メタ)アクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、アクリル酸イソボルニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリシクロ[5,2,1,02,6]デカンジメタノールジアクリレート、イソボニルメタクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリブタジエンアクリレート、ポリオールアクリレート、ポリエーテルアクリレート、シリコーン樹脂アクリレート、イミドアクリレート等が挙げられる。これらの光ラジカル重合性化合物は、一種でも二種以上の混合物であっても良い。
光カチオン重合性化合物としては、エポキシ化合物、オキセタン化合物、ビニルエーテル等が挙げられる。エポキシ化合物として一般的なものは、脂環式エポキシ化合物、エポキシ変性シリコーン、芳香族のグリシジルエーテル等が挙げられる。脂環式エポキシ化合物としては、3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ダイセル社製、商品名:セロキサイド2021P、セロキサイドはダイセル社の登録商標)、(3,3’,4,4’-ジエポキシ)ビシクロヘキシル(ダイセル社製、商品名:セロキサイド8010)、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシル)アジペート等が挙げられる。エポキシ変性シリコーンとしては、東芝GEシリコーン製UV-9300等が挙げられる。芳香族グリシジル化合物としては、2,2’-ビス(4-グリシジルオキシフェニル)プロパン等が挙げられる。オキセタン化合物としては、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン(オキセタンアルコール)(東亜合成社製、商品名:OXT-101)、2-エチルヘキシルオキセタン(東亜合成社製、商品名:OXT-212)、キシリレンビスオキセタン(東亜合成社製、商品名:OXT-121)、3-エチル-3{[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]メチル}オキセタン(東亜合成社製、商品名:OXT-221)等が挙げられる。ビニルエーテルとしては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル等が挙げられる。これらの光カチオン重合性化合物は、一種でも二種以上の混合物であっても良い。
光重合性化合物として光ラジカル重合化合物のみを用いても良いし、光ラジカル重合性化合物と光カチオン重合性化合物両者を混合して用いても良い。
本発明の光重合増感剤は、光ラジカル重合及び光カチオン重合の両方において増感剤として作用することができるため、適当な光重合開始剤を選ぶことにより、光ラジカル重合性化合物と光カチオン重合性化合物の両方を含有する光重合性組成物も効果的に重合させることができる。
光カチオン重合性化合物と光ラジカル重合性化合物の混合比について特に限定はなく、該組成物を光重合、硬化して得られる塗膜や成型物の物性に応じ適宜選択される。通常は光カチオン重合性化合物と光ラジカル重合性化合物の重量比が1対99~99対1、好ましくは20対80~80対20の範囲でその組成比を決定する。
光カチオン重合性化合物、光ラジカル重合性化合物はそれぞれ1種類ずつ用いても良いし、それぞれ2種以上を組み合わせて用いても良い。これらの光重合性化合物を2種以上用いる場合においても、上記の光カチオン重合性化合物と光ラジカル重合性化合物の混合比はそれぞれの光重合性化合物の合計量の比として考える。
本発明の光重合性組成物に用いる光重合開始剤は上述の光ラジカル開始剤もしくは光カチオン開始剤を用いることができる。通常、光重合性化合物として光ラジカル重合性化合物を用いる場合は光ラジカル重合開始剤を用いる。さらに、光重合性化合物として光ラジカル重合性化合物と光カチオン重合性化合物を併用するような場合は光重合開始剤として光ラジカル重合開始剤、もしくは光カチオン重合開始剤単独で用いても良いし両者を混合して用いてもかまわない。
特に、光カチオン重合開始剤の中には光照射によりカチオン開始活性種とラジカル開始活性種を発生するものもあり、このような開始剤を用いる場合はそれのみで光カチオン重合性化合物及び光ラジカル重合性化合物の両方の光重合を開始することも可能である。
更に、本発明の光重合性組成物には、アクリル樹脂、スチレン樹脂、エポキシ樹脂などのバインダーポリマーが含まれていてもよい。また、アルカリ可溶性樹脂が含まれていてもよい。
そして更に、顔料及び/又は染料を含んでいてもよい。また、顔料を含む場合はその分散剤を含んでもよい。
顔料としては、無機顔料及び有機顔料のいずれも使用することができる。無機顔料としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、酸化鉄、酸化チタンを使用することができる。 有機顔料としては、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、アゾレーキ、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料等の多環式顔料、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート等)、染色レーキ(塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキ)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料が挙げられる。これらの顔料は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
染料としては、特に限定されることなく、酸性染料、直接染料、反応性染料、及び塩基性染料が使用可能である。染料は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、顔料と染料を併用してもよい。
顔料を分散させる分散剤としては、特に限定されないが、例えば、高分子分散剤などの顔料分散液が挙げられる。その具体例として、ポリオキシアルキレンポリアルキレンポリアミン、ビニル系ポリマー及びコポリマー、アクリル系ポリマー及びコポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、アミノ系ポリマー、含珪素ポリマー、含硫黄ポリマー、含フッ素ポリマー、及びエポキシ樹脂のうち一種以上を主成分とするものが挙げられる。
本発明の光重合性組成物において、光重合開始剤組成物の使用量は、光重合性組成物に対して0.005重量%以上、10重量%以下の範囲、好ましくは0.025重量%以上、5重量%以下である。0.005重量%未満だと光重合性組成物を光重合させるのに時間がかかってしまい、一方、10重量%を超えて添加すると光重合させて得られる光硬化物の硬度が低下し、硬化物の物性を悪化させるため好ましくない。
なお、本発明の光重合性組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、上記以外に、希釈剤、有機又は無機の充填剤、レベリング剤、界面活性剤、消泡剤、増粘剤、難燃剤、表面改質剤、浸透促進剤、保湿剤、定着剤、防黴剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、キレート剤、pH調整剤、安定剤、滑剤、可塑剤等の各種樹脂添加剤を配合してもよい。
(重合方法)
本発明の光重合性組成物に光を照射して重合することにより、光硬化物を得ることができる。光重合性組成物に光を照射し重合させ光硬化させる場合、当該光重合性組成物をフィルム状に成形して光硬化させることもできるし、塊状に成形して光硬化させることもできる。UVインクとして液滴を基材に塗布した状態で重合させることもできる。フィルム状に成形して光硬化させる場合は、液状の当該光重合性組成物を例えばポリエステルフィルムなどの基材にバーコーターなどを用いて膜厚5~300ミクロンになるように塗布する。一方、スピンコーティング法やスクリーン印刷法により、さらに薄い膜厚あるいは厚い膜厚にして塗布することもできる。
このようにして調製した光重合性組成物からなる塗膜に、300nmから500nmの波長範囲を含むエネルギー線(紫外線)を1~1000mW/cm2程度の強さで光照射することにより、光硬化物を得ることができる。用いる光源としては、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ガリウムドープドランプ、ブラックライト、405nm紫外線LED、395nm紫外線LED、385nm紫外線LED、365nm紫外線LED、半導体レーザ、青色LED、白色LED、フュージョン社製のDバルブ、Vバルブ等が挙げられる。また、太陽光等の自然光を使用することもできる。特に、405nm紫外線LED、395nm紫外線LED、385nm紫外線LED、375nm紫外線LED、365nm紫外線LEDのような波長が365nm~405nmというような長波長域の波長範囲を含む光でも増感作用を有することが特徴であり、中心波長が365nm、375nm、385nm、395nm、405nmの紫外LED又は半導体レーザが照射源として好ましい。
(光DSC測定)
本発明において、光重合性組成物の光照射下における光重合速度を定量的に評価する手法として、光DSC測定法を用いることができる。この手法によれば、試料に光を直接的に照射しながら、硬化に伴う発熱量を連続的にかつ簡便に測定することができる。光DSC測定装置にセットされた試料に光照射をすると光の硬化反応が始まり発熱が観測される。光硬化前は水平であったDSC曲線のベースラインが発熱側にシフトし、反応が終了すると元のベースラインの位置に戻る。このDSC曲線のピークの大きさから、発熱量を求めることができる。すなわち光重合性組成物に光を照射し、1mgあたりの発熱量を測定、比較することによって、重合の進行状況を評価することができる。
(組成物の耐マイグレーション性の判定)
本発明の光重合性組成物に含まれる光重合増感剤がフィルム等に移行(マイグレーション)するかどうかを判定する方法としては、光重合増感剤を含む光重合性組成物を薄いフィルム状物に塗布したものを作成し、その上にポリエチレンフィルムを被せて一定温度(26℃)で一定期間保管し、その後ポリエチレンフィルムを剥がし、光重合増感剤がポリエチレンフィルムに移行しているかを調べ、耐マイグレーション性を判定した。剥がしたポリエチレンフィルムは、アセトンで表面の組成物を洗った後乾燥し、当該ポリエチレンフィルムのUVスペクトルを測定し、光重合増感剤に起因する吸収強度の増大を調べることにより耐マイグレーション性を測定した。なお、当該測定には、紫外・可視分光光度計(島津製作所製、型式:UV2600)を用いた。比較例の化合物である9,10-ジブトキシアントラセンと量的な比較するために、得られた吸光度を9,10-ジブトキシアントラセンの吸光度の値に換算した。換算に当たっては、紫外・可視分光光度計により本発明の化合物及び9,10-ジブトキシアントラセンの260nmにおける吸光度を測定し、その吸光度の値とモル濃度からそれぞれのモル吸光係数を計算し、その比をもちいて換算した。
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、例示を目的として提示をしたものである。すなわち、以下の実施例は、網羅的であったり、記載した形態そのままに本発明を制限したりすることを意図したものではない。よって、本発明は、その趣旨を超えない限り、以下の記載例に限定されるものではない。また、特記しない限り、すべての部および百分率は重量基準である。
本発明の化合物の同定は下記の機器を用いて行った。
赤外線(IR)分光光度計:Thermo社製、型式is50 FT-IR
核磁気共鳴装置(NMR):日本電子社製、型式ECS-400
融点:ゲレンキャンプ社製の融点測定装置、型式MFB-595(JIS K0064に準拠)
(合成例1)9,10-ジヒドロキシアントラセンの合成
攪拌機、温度計付きの50mlの四つ口フラスコに、窒素雰囲気下で、9,10-アントラキノンを1.0g(4.8ミリモル)、溶媒の酢酸を10g、亜鉛粉末を0.6g(9.6ミリモル)加え、室温で3.5時間撹拌した。亜鉛粉末を濾過で取り除き、濾液に水を加えると結晶が析出した。析出した結晶を吸引濾過後、乾燥することにより収量0.7g(粗収率70mol%)の黄緑色の結晶を得た。
(1)IR(cm-1):3291、1676、1618、1388、1326、1137、1050、755、692、624、545.
(2)1H-NMR(400MHz,DMSO-d6):δ=7.382-7.450(m,4H),8.318-8.335(m,4H)、9.404-9.424(m,2H).
(合成実施例1)9,10-ビス(シクロヘキシルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンの合成
攪拌機、温度計付きの300mlの四つ口フラスコに、窒素雰囲気下で、ブロモ酢酸32.4g(234ミリモル)、シクロヘキシルアルコール46.8g(467ミリモル)、溶媒のо-キシレン75.0g、触媒の硫酸1.5g(15ミリモル)を加えた。反応系の温度を140~150℃に保ち、共沸する水を除去しながら2時間攪拌した。室温まで冷却後、炭酸水素ナトリウム水溶液で中和し、水層を除いた。そこに触媒のテトラブチルアンモニウムブロマイドの50%水溶液を2.8g(4.4ミリモル)を加え、反応系の温度を35~40℃に保ちながら9,10-ジヒドロキシアントラセンのジナトリウム塩の18.7wt%水溶液100g(アントラキノンとして90ミリモル)を1時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに1時間撹拌し、55~60℃まで昇温して1時間攪拌した。室温まで冷却後、吸引濾過によりアントラキノンを取り除き、分液し水洗を2回実施し、濃縮を行った。濃縮液にメタノールを加えて晶析を行い、析出結晶を吸引濾過、乾燥することにより、収量25.5g(粗収率54mol%)の薄黄色の結晶を得た。
(1)融点:122-124℃
(2)IR(cm-1):2930,2857,1745,1677,1621,1453,1438,1399,1369,1360,1206,1168,1086,1035,1006,954,922,891,813,715,693,672,659,608,585,455.
(3)1H-NMR(400MHz,CDCl3):δ=1.239-1.596(m,12H),1.754-1.786(m,4H),1.939-1.961(m,4H),4.760(s,4H),4.985-5.050(m,2H),7.501-7.526(m,4H),8.372-8.398(m,4H).
(光DSC測定)
本実施例において光DSC測定は下記のようにして行った。すなわち、DSC測定装置は日立ハイテク社製XDSC-7200を用い、それに光DSC測定用ユニットを装着し光を照射しながらDSC測定ができるよう設えた。光照射用の光源は林時計工業社製LA-410UVを用い、バンドパスフィルターで405nm光を取り出してサンプルに照射できるようにした。光の照度は50mW/cm2とした。光源の光はグラスファイバーを用いてサンプル上部まで導けるようにし、光照射開始と同時にDSC測定ができるよう光源のシャッターをトリガー制御できるようにした。光DSCの測定はサンプルを1mg程度測定用アルミパンの中に精秤し、DSC測定部に収めたのち光DSCユニットを装着した。その後測定部内を窒素雰囲気に保ち10分間静置して、測定を開始した。測定は通常光を照射しながら6分間継続した。一回目の測定後、サンプルはそのままで再度同条件で測定を行い、一回目の測定結果から二回目の測定結果を差し引いた値を該サンプルの測定結果とした。結果は特に断らない限り光照射後1分間におけるサンプル1mgあたりの総発熱量で比較した。測定条件によっては1分間で光反応が完結しない場合もあるが光照射初期の反応挙動を比較するために1分間の総発熱量で比較した。光照射に伴ってサンプル(光重合性組成物)の重合が生じた場合、重合に伴う反応熱が生ずるが光DSCではその反応熱を測定することができる。そのため、光DSCによって光照射による重合進行の状況が測定できることになる。本実施例では光照射後1分間の総発熱量を測定しているが、同一の重合性化合物を用いている限りにおいてはその値を比較した場合値が大きいほど重合が効率的に進行していると考えることができる。
このようにして、本発明のエステル基を有する9,10-ビス(シクロアルキル置換アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物を光カチオン重合増感剤とする光カチオン重合性組成物の光重合性能評価試験について以下に記載する。
(光硬化速度評価実施例1)
光カチオン重合性化合物として、3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ダイセル社製、商品名:セロキサイド2021P、セロキサイドはダイセル社の登録商標)100重量部に対して、光重合開始剤である4-イソブチルフェニル-4’-メチルフェニルヨードニウムヘキサフルオロフォスフェート(ビー・エー・エス・エフ社製、商品名イルガキュア250、「イルガキュア」はビー・エー・エス・エフ社の登録商標)2重量部、光カチオン重合増感剤として、合成実施例1で得られた9,10-ビス(シクロヘキシルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン1重量部を室温で混合し、光カチオン重合性組成物を調製した。この光重合性組成物について光DSC測定を行ったところ、光照射開始から5分間の総発熱量は256mJ/mgであった。
(光硬化速度評価実施例2)
光カチオン重合性化合物として、(3,3’,4,4’-ジエポキシ)ビシクロヘキシル(ダイセル社製、商品名:セロキサイド8010、セロキサイドはダイセル社の登録商標)100重量部に対して、光重合開始剤である4-イソブチルフェニル-4’-メチルフェニルヨードニウムヘキサフルオロフォスフェート(ビー・エー・エス・エフ社製、商品名イルガキュア250、「イルガキュア」はビー・エー・エス・エフ社の登録商標)2重量部、光カチオン重合増感剤として、合成実施例1で得られた9,10-ビス(シクロヘキシルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン1重量部を室温で混合し、光カチオン重合性組成物を調製した。この光重合性組成物について光DSC測定を行ったところ、光照射開始から5分間の総発熱量は411mJ/mgであった。
(光硬化速度評価比較例1)
光カチオン重合性化合物として3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ダイセル社製、商品名:セロキサイド2021P、セロキサイドはダイセル社の登録商標)100重量部に対して、光重合開始剤である(4-メチルフェニル)[4-(2-メチルプロピル)フェニル]ヨードニウム-ヘキサフルオロフォスフェート(ビー・エー・エス・エフ社製、商品名イルガキュア250、「イルガキュア」はビー・エー・エス・エフ社の登録商標)2重量部を室温で混合し、光カチオン重合性組成物を調製した。この光重合性組成物について光DSC測定を行ったところ、光照射開始から5分間の総発熱量は3mJ/mgであった。
(光硬化速度評価比較例2)
光硬化速度評価実施例1の9,10-ビス(シクロヘキシルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンの代わりに公知の光重合増感剤である9,10-ジブトキシアントラセンを使用すること以外は光硬化速度実施評価例1と同様に光DSC測定を行ったところ、光照射開始から5分間の総発熱量は230mJ/mgであった。
(光硬化速度評価比較例3)
光硬化速度評価実施例1の9,10-ビス(シクロヘキシルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンの代わりに公知の光重合増感剤である9,10-ビス(オクタノイルオキシ)アントラセンを使用すること以外は光硬化速度実施評価例1と同様に光DSC測定を行ったところ、光照射開始から5分間の総発熱量は234mJ/mgであった。
(光硬化速度評価比較例4)
光カチオン重合性化合物として(3,3’,4,4’-ジエポキシ)ビシクロヘキシル(ダイセル社製、商品名:セロキサイド8010)100重量部に対して、光重合開始剤である(4-メチルフェニル)[4-(2-メチルプロピル)フェニル]ヨードニウム-ヘキサフルオロフォスフェート(ビー・エー・エス・エフ社製、商品名イルガキュア250、「イルガキュア」はビー・エー・エス・エフ社の登録商標)2重量部を室温で混合し、光カチオン重合性組成物を調製した。この光重合性組成物について光DSC測定を行ったところ、光照射開始から5分間の総発熱量は2mJ/mgであった。
次に、本発明のエステル基を有する9,10-ビス(シクロアルキル置換アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物を光ラジカル重合増感剤とするラジカル重合性組成物の光重合性能評価試験について以下に記載する。
(光硬化速度評価実施例3)
光ラジカル重合性化合物として、トリメチロールプロパントリアクリレート100重量部に対して、光重合開始剤である1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(ビー・エー・エス・エフ社製、商品名イルガキュア184、「イルガキュア」はビー・エー・エス・エフ社の登録商標)2重量部、光ラジカル重合増感剤として、合成実施例1で得られた9,10-ビス(シクロヘキシルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン1重量部を室温で混合し、光ラジカル重合性組成物を調製した。この光重合性組成物について光DSC測定を行ったところ、光照射開始から5分間の総発熱量は354mJ/mgであった。
(光硬化速度評価比較例5)
光ラジカル重合性化合物として、トリメチロールプロパントリアクリレート100重量部に対して、光重合開始剤である1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン2重量部を室温で混合し、光ラジカル重合性組成物を調製した。この光重合性組成物について光DSC測定を行ったところ、光照射開始から5分間の総発熱量は166mJ/mgであった。
(光硬化速度評価比較例6)
光硬化速度評価実施例2の9,10-ビス(シクロヘキシルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンを公知の光重合増感剤である9,10-ジブトキシアントラセンを使用すること以外は光硬化速度評価実施例10と同様に光DSC測定を行ったところ、光照射開始から5分間の総発熱量は212mJ/mgであった。
(光硬化速度評価比較例7)
光硬化速度評価実施例2の9,10-ビス(シクロヘキシルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンを公知の光重合増感剤である9,10-ビス(オクタノイルオキシ)アントラセンを使用すること以外は光硬化速度評価実施例10と同様に光DSC測定を行ったところ、光照射開始から5分間の総発熱量は298mJ/mgであった。
光硬化速度評価実施例1~3と光硬化速度評価比較例1~7の結果を表1にまとめた。
光硬化速度評価実施例1~3及び光硬化速度評価比較例1、4、5の結果を比較することにより明らかなように、光カチオン重合及び光ラジカル重合において本発明のエステル基を有する9,10-ビス(シクロアルキル置換アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物を光重合増感剤として添加することにより、総発熱量が増加しており、著しく重合反応を促進していることがわかる。すなわち、本発明のエステル基を有する9,10-ビス(シクロアルキル置換アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物は、光カチオン重合及び光ラジカル重合のいずれにおいても光重合増感効果を持つことが分かる。
更に、光硬化速度評価実施例1、3及び光硬化速度評価比較例2、3、6、7の結果を比較することにより明らかなように、光カチオン重合及び光ラジカル重合において本発明のエステル基を有する9,10-ビス(シクロアルキル置換アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物は、公知の光重合増感剤である9,10-ジブトキシアントラセン及び9,10-ビス(オクタノイルオキシ)アントラセンと同等もしくはそれ以上の光重合増感効果を持つことがわかる。すなわち、アントラセン骨格を持つ光重合増感剤は知られているが、本発明のエステル基を有する9,10-ビス(シクロアルキル置換アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物は、それらの公知の光重合増感剤よりも,光ラジカル重合、光カチオン重合のいずれにおいても優れた光重合増感剤であることがわかる。
(光カチオン重合における耐マイグレーション性の評価実施例)
(耐マイグレーション性評価実施例1)
エポキシ光カチオン重合性化合物として、3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ダイセル社製セロキサイド2021P)100部に対し、光重合増感剤として合成実施例1と同様の方法で合成した9,10-ビス(シクロヘキシルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン1部を混合し、調製した組成物をポリエステルフィルム上で膜厚が12ミクロンになるようにバーコーターを用いて塗布した。次いで、得られた塗布物上に低密度ポリエチレンフィルム(膜厚30ミクロン)を被せて、暗所で一日間保管したもの、七日間保管したものを、それぞれ保管後、ポリエチレンフィルムを剥がし、ポリエチレンフィルムをアセトンで洗い乾燥した後、フィルムのUVスペクトルを測定し、260nmの吸光度を測定した。得られた9,10-ビス(シクロヘキシルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンに起因する吸光度を9,10-ジブトキシアントラセン換算した。吸光度は、一日保管後0.013、七日保管後0,010であった。
(耐マイグレーション性評価比較例1)
光重合増感剤として、9,10-ビス(シクロヘキシルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンの代わりに公知の光重合増感剤である9,10-ジブトキシアントラセンを使用すること以外は耐マイグレーション性評価実施例1と同様に調製した。アセトン洗いしたポリエチレンフィルムの260nmの吸光度を測定した結果、9,10-ジブトキシアントラセンの吸光度は、一日保管後0.737、七日保管後0.843であった。
(光ラジカル重合における組成物の耐マイグレーション性の評価実施例)
(耐マイグレーション性評価実施例2)
光ラジカル重合性化合物として、トリメチロールプロパントリアクリレート100部、光ラジカル重合増感剤として、合成実施例1と同様の方法で合成した9,10-ビス(シクロヘキシルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン1部を混合し、調製した組成物をポリエステルフィルム上で膜厚が12ミクロンになるようにバーコーターを用いて塗布した。次いで、得られた塗布物上に低密度ポリエチレンフィルム(膜厚30ミクロン)を被せて、暗所で一日間保管したものと七日間保管したものを調製し、それぞれ保管後、被せたポリエチレンフィルムを剥がし、ポリエチレンフィルムをアセトンで洗い、乾燥した後、当該ポリエチレンフィルムのUVスペクトルを測定し、260nmの吸光度を測定した。得られた9,10-ビス(シクロヘキシルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンに起因する吸光度を9,10-ジブトキシアントラセン換算した。一日保管後0.051、七日保管後0.035であった。
(耐マイグレーション性評価比較例2)
9,10-ビス(シクロヘキシルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンの代わりに公知の光ラジカル増感剤である9,10-ジブトキシアントラセンを使用すること以外は耐マイグレーション性評価実施例10と同様にして試験した。アセトン洗いしたポリエチレンフィルムの260nmの吸光度を測定した結果、得られた9,10-ジブトキシアントラセンの吸光度は、一日保管後1.661、七日保管後1.741であった。
耐マイグレーション性評価実施例1、2と耐マイグレーション性評価比較例1、2の結果を表2にまとめた。
耐マイグレーション性評価実施例1と耐マイグレーション性評価比較例1を比較することにより明らかなように、光カチオン重合性組成物中において、公知の光カチオン重合増感剤である9,10-ジブトキシアントラセンは該光カチオン重合性組成物の上に被せたフィルムにかなりの程度移行しているのに対して、本願の9,10-ビス(シクロヘキシルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン化合物は、いずれの場合もその移行程度は極めて低く、耐マイグレーション性に優れているといえる。
一方、耐マイグレーション性評価実施例2と耐マイグレーション性評価比較例2を比較することにより明らかなように、光ラジカル重合性組成物中においても、公知の光ラジカル重合増感剤である9,10-ジブトキシアントラセンは、光ラジカル重合性組成物の上に被せたフィルムにかなりの程度移行しているのに対して、本願の9,10-ビス(シクロヘキシルオキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン化合物は、いずれの場合もその移行程度は極めて低く、耐マイグレーション性に優れているといえる。
以上の結果より、本発明のエステル基を有する9,10-ビス(シクロアルキル置換アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物は、光カチオン重合及び光ラジカル重合において、類似のアントラセン骨格を持つ公知の光重合増感剤である9,10-ジブトキシアントラセン化合物と比較して、同等以上の光重合増感能を有するだけでなく、極性のエステル基を持つ構造のため、耐マイグレーション性が高い優れた化合物であり、光重合増感剤として極めて有用な化合物であることがわかる。