JP5286470B2 - 多獲性小型魚類加工品及びその製造方法 - Google Patents

多獲性小型魚類加工品及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、多獲性小型魚類加工品及びその製造方法に関する。
魚介類加工品のひとつである煮干しは、魚類を「煮て干した」ものであり、魚種とサイズ(魚体の大きさ)で分けられている。原料魚には様々な魚類が使用されるが、カタクチイワシ、マイワシ、ウルメイワシ、アジなどに代表され、かつては、魚種としてはマイワシが主流であったが、漁獲変動があり、マイワシは50〜80年周期で大豊漁の後、漁獲量が激減する傾向があり、現在では漁獲量が安定しているカタクチイワシが主流となってきている。また、煮干しのサイズはチリメン(20mm以下)、カエリ(20〜50mm)、小羽(40〜70mm)、中羽(60〜90mm)、大羽(80mm以上)に分けられる。
このような煮干しの製造法では、イワシ等の原料魚を真水、海水または食塩水中で煮熟するのが一般的であるが、食塩が入った方が身がしまって綺麗に仕上がる傾向がある。煮熟後に水分含量18%以下に天日干し乾燥または除湿乾燥機等を使用して乾燥を行う方法が知られている(非特許文献1参照)。
また、煮干に近い魚類加工品に焼干しがある。焼干しは、魚類を「焼いて乾燥」したものであり、イワシやとびうおが有名である。焼干しは、煮干しであれば湯の中に流出してしまう可溶性固形分の流出がなく、また、焼くことにより香ばしい香りを付与できる点などで煮干しとは異なった品質的特徴があるが、その反面、火で焼くという工程があるため、大量生産には不向きである(非特許文献1参照)。
さらに、特許文献1には、過熱蒸気を利用した煮干し及びその製造法が提案されている。
特開2006−262827号公報
煮干しニボシの履歴書・煮干しの科学堀口辰司・田辺伸著
従来の煮干しの製造方法においては、旨みの主成分であるイノシン酸等の可溶性固形分(エキス分)の流出が起こり、イワシ本来の旨味成分が減少し、また、一度に大量の原料魚肉が処理されるため、魚体の接触等により身割れや彎曲・皮剥げなど外観が損なわれ、また、熱水中で処理されるため低沸点化合物が多く残存し、酸化が促進されるため特有の不快な香りが生じ、さらには、煮熟槽による加熱工程がバッチ式であるために、原料魚肉を投入した時に水温が低下し昇温までに時間を要し、加熱終了時間の見極めに経験的な勘を必要とするため、安定的な品質を維持することが難しいなどの問題点があった。
一方、過熱蒸気を利用した焼干しの製造方法においては、熱の伝達率が低いために蛋白変性に時間がかかったり、蛋白変性が完全に行なわれない場合が起こり得る。
例えば、魚体サイズが比較的小さい、例えばチリメンやカエリの場合と、魚体サイズが比較的大きい、例えば中羽や大羽の場合とでは、蛋白変性が完全に行なわれるのに時間差があるため、連続した一様な処理では処理した原料魚体に、蛋白変性し過ぎて魚体が崩れてしまったもの、十分に蛋白変性したもの、蛋白変性が不十分なものなどが生じ、煮干しの製造にばらつきが生じ、製品の歩留まりが悪くなる問題がある。
また加熱と乾燥が同時に進行するために、ふっくらとした外観に乏しく、製品価値を低下させ得る恐れがある。
そこで、本発明は、このような従来技術に伴う問題点を解決して、外観、形状が綺麗でありしかも風味及び香味が良好である多獲性小型魚類加工品及びその製造方法を提供することを目的としている。
上記の目的を達成するために、本発明による多獲性小型魚類加工品は、80〜100℃の熱水で多獲性小型魚類を煮熟して、部分的に蛋白変性を行なった後、170〜250℃の過熱蒸気を用いて、多獲性小型魚類を連続的に蛋白変性と予備乾燥を行い、次いで、本乾燥を行うことにより、外観、形状が綺麗でありしかも風味及び香味が良好であることを特徴としている。
また、本発明による多獲性小型魚類加工品の製造方法は、80〜100℃の熱水で多獲性小型魚類を煮熟して、部分的に蛋白変性を行い、続いて170〜250℃の過熱蒸気を用いて、多獲性小型魚類を連続的に蛋白変性と予備乾燥を行い、その後、本乾燥を行うことを特徴としている。
ところで、一般に蛋白質によって凝固温度が異なり、熱変性を起こす温度は蛋白質によって異なると認められる。そして魚肉、牛肉などの一般的な蛋白質の加熱による凝固温度が80℃以上であることを考慮して本発明においては、原料魚肉を部分的に蛋白変性させる温度の下限を80℃と設定している。
また、過熱蒸気の加熱温度の下限については、既存の過熱蒸気発生装置は、通常160〜500℃で動作するものが多く、また乾き蒸気としての過熱水蒸気はほぼ170℃を境にして乾燥効果が顕著になることが認められ、この観点から本発明では、過熱蒸気の加熱温度の下限を170℃と設定している。
本発明の一実施形態によれば、使用する多獲性小型魚類の魚体サイズは50mm以下であり、熱水による煮熟は1分以内に設定され得る。
本発明の別の実施形態によれば、使用する多獲性小型魚類の魚体サイズは50mm以上であり、熱水による煮熟は3分以内に設定され得る。
本発明においては、多獲性小型魚類としては、一般的に煮干し用の原料魚として使用されているカタクチイワシ、マイワシ、ウルメイワシ、アジ、サバ、イカナゴを含む小型魚類を挙げることができる。
本発明による多獲性小型魚類加工品は、過熱蒸気を用いて処理する前に、熱水による煮熟処理を施しているので、最終製品は外観、形状の綺麗なものとなり、魚体表面付近の脂肪分を含む生臭み成分が溶出して過熱蒸気処理だけの場合より風味が良くなる。また、熱が効率的に伝達するために、原料魚体の殺菌効果が高く菌数の少ない製品を提供することができるようになる。さらに、煮熟後、無酸素環境下で加熱されるために、酸化が少なく、低沸点の不快な香気成分の飛散が期待でき、良好な香味となる。
本発明による多獲性小型魚類加工品の製造方法においては、熱水による煮熟処理で、原料魚体を部分的に蛋白変性させ、続いて過熱蒸気を用いて、連続的に蛋白変性と予備乾燥を行い、その後、本乾燥を行うので、魚体表面付近の脂肪分を含む生臭み成分が溶出して過熱蒸気処理だけの場合より風味が良くなり、また、煮熟後、無酸素環境下で加熱されるために、酸化が少なく、低沸点の不快な香気成分の飛散が期待でき、良好な香味となり、さらには、熱が効率的に伝達するために、原料魚体の殺菌効果が高く菌数の少ない製品を提供することができるようになる。
本発明による多獲性小型魚類加工品の製造方法において、使用する多獲性小型魚類の魚体サイズは50mm以下と、50mm以上とに仕分けし、熱水による煮熟時間をそれぞれ1分以内及び3分以内に設定した場合には、上述の効果に加えて、原料魚体を全体に均一蛋白変性させ、そして乾燥させることができ、その結果、魚体表面の皮剥げ、魚体の身崩れなしに外観、形状の綺麗な多獲性小型魚類加工品を歩留まり良く効率的に製造することができる。
以下本発明の実施の形態について説明する。
原料魚体としてカタクチイワシを使用し、魚体サイズを50mm以下と、50mm以上とに仕分けし、実際にはカエリイワシ(30〜50mm)と、中羽イワシ(60〜80mm)とを用意する。
用意したカエリイワシ及び中羽イワシは必要により高圧水により魚鱗を除去され、80〜100℃の熱水で短時間(3分以内)で煮熟して、部分的に蛋白変性を行う。この煮熟は、カエリイワシ及び中羽イワシのいずれの場合も2分以内が好ましい。この場合、原料魚体の表面付近での蛋白変性が満遍なく早く起こり、良好な加熱効率が得られる。このことは殺菌効果も高くなり、菌数を低減させることができる。また煮熟処理により熱湯中で原料魚体が洗浄されるために異物の付着が少なくなる。
次に、170〜250℃の過熱蒸気を用いて、多獲性小型魚類を連続的に蛋白変性と予備乾燥が行われる。この過熱蒸気処理により、原料魚体の内部の自己消化酵素が失活し、蛋白質が加熱変性する。この際に原料魚体は、80〜100℃の熱水で短時間煮熟されているので、原料魚体の表面付近に蛋白変性が起きており、最初から過熱蒸気で処理する場合より短時間で十分に蛋白変性及び予備乾燥が行われる。
本発明においては、熱水による短時間の煮熟処理が行われるために、エキス分(アミノ酸、イノシン酸及びペプチド)については、水溶性の旨味成分が煮熟中に多少溶出するが、魚体表面付近の脂肪分を含む生臭み成分が溶出して過熱蒸気処理だけの場合より風味が良くなる。また煮熟後、無酸素環境下で加熱されるために、酸化が少なく、低沸点の不快な香気成分の飛散が期待でき、良好な香味となる。
また、本発明においては、熱水による短時間の煮熟処理に続いて過熱蒸気で加熱することにより、最初から過熱蒸気で処理する場合より外観、形状がさらに綺麗に仕上がる。
こうして過熱蒸気処理した原料魚体は次に乾燥処理される。乾燥処理は、天日干し、或は除湿乾燥機等を使用し、多獲性小型魚類の水分含量が13%台以下になるまで行なわれる。
以下、本発明の実施例について具体的に説明する。
魚体サイズ30〜50mmのカタクチイワシ(カエリイワシ)を用いて8つのサンプルを用意し、水で洗浄した後、各サンプルをセイロ(底は開口5mm、内寸:385mm×485mm×40mm)に二層以上重ならないように並べ、煮熟釜(W:1000mm、L:800mm、D:1100mm)に入れ95±3℃の煮熟温度で煮熟時間をそれぞれ30秒、45秒、1分、1.5分、2分、3分、4分、5分に設定して煮熟処理した。
続いて、煮熟処理した各サンプルをセイロに入れたまま、温度200℃の過熱水蒸気を上下から噴出するプレートを備えた過熱蒸気処理装置を用いて網目コンベアに乗せて2分間過熱蒸気中を通過させた。これにより、酸化を防ぎながら加熱と乾燥とを同時に行った。処理時間は、過熱蒸気処理装置内を通過する網目コンベアの速度を調整することにより調整した。加熱処理後、セイロ入っている魚体は乾燥室に入れるための可動式ラックに差し込み、半日間の通風乾燥を行ない、翌日乾燥室から取り出して完成品とした。
また、対照区として同一ロットの原料魚を用いサンプルHを用意し、煮熟処理せずに過熱蒸気による加熱処理のみを20分間を行った。加熱処理後の魚体は乾燥室に入れるための可動式ラックに差し込み、半日間の通風乾燥を行ない、翌日乾燥室から取り出して完成品とした。
これらサンプルについて総エキス分、イノシン酸(IMP−Na)、遊離アミノ酸、塩分などについてカタクチイワシが持っている旨味成分や体内に保持している塩分が熱水煮熟の時間によって、どのように変化したかを表1に示す。
Figure 0005286470
総エキス分は、1分までの煮熟では減少が認められず、1.5分の煮熟では若干の減少が認められ、2分以上では明らかな減少が認められた。5分間の煮熟では、30秒の煮熟処理の場合に比較して17.3%のエキス分の流出があった。
良質な旨味を有するイノシン酸に関しても、総エキス分と同様に、1分までの煮熟では顕著な減少は認められず、1.5分からは減少が顕著となり、5分間の煮熟では、30秒の煮熟処理の場合に比較して20.9%の流出があった。
遊離アミノ酸の減少も同様に、1分までの煮熟では顕著な減少は認められず、1.5分からは徐々に減少が目立ち、5分間の煮熟では、25.1%の減少が認められた。
塩分に関しては、時間の経過との相関が一番明確であり、30秒の煮熟に対して45秒から減少が明確となり、5分間の煮熟では、36.2%の減少が認められた。
表1に示す分析結果から、魚体サイズ30〜50mmのカタクチイワシ(カエリイワシ)では、1分以内の煮熟であれば、旨味成分の流出を防ぎ、直後に過熱蒸気処理して加熱、乾燥を行なうことにより、姿及び形状が綺麗でしかも旨味に富んだ良質の煮干しを製造できることが分かる。しかも本発明に従って処理したサンプルA、B、Cは、煮熟処理と過熱蒸気による加熱処理とを合わせて3分以内であるのに対して対照サンプルHでは20分を要し、煮熟処理と過熱蒸気による加熱処理との処理時間を1/6以下にすることができた。
魚体サイズ60〜90mmのカタクチイワシ(中羽イワシ)の5つのサンプルを用意し、水で洗浄した後、各サンプルを実施例1の場合と同様にセイロに並べ、煮熟釜に入れ95±3℃の煮熟温度で煮熟時間をそれぞれ、1分、2分、3分、4分、5分に設定して煮熟処理した。
続いて、煮熟処理した各サンプルについてサンプル1は温度205℃で、サンプル2は温度210℃で、サンプル3は温度205℃で、サンプル4は温度200℃で、サンプル5は温度200℃でそれぞれ2分間、実施例1と同様に構成した過熱蒸気処理装置を用いて網目コンベアに乗せて過熱蒸気中を通過させた。これにより、酸化を防ぎながら加熱と乾燥とを同時に行った。加熱処理後の魚体はセイロに入れたまま乾燥室に入れるため可動式ラックに差し込み、半日間の通風乾燥を行ない、翌日乾燥室から取り出して完成品とした。
これらサンプルについて総エキス分、イノシン酸(IMP−Na)、遊離アミノ酸、塩分などについてカタクチイワシが持っている旨味成分や体内に保持している塩分が熱水煮熟の時間によって、どのように変化したかを表2に示す。
Figure 0005286470
総エキス分は、3分までの煮熟では減少が認められず、4分の煮熟では若干の減少が認められ、5分間の煮熟では、10.4%のエキス分の流出があった。
良質な旨味を有するイノシン酸に関しても、総エキス分と同様に、3分までの煮熟では顕著な減少は認められなかったが、4分の煮熟では、6.9%、5分の煮熟では、13.2%の流出があった。
遊離アミノ酸に関しては、総エキス分とは異なり、4分までの煮熟でも顕著な減少は認められず、5分の煮熟で10.7%の減少が認められた。
塩分に関しては、カエリイワシの場合と同様に時間の経過との相関が明確であり、煮熟と共に流出していることが認められた。
表2に示す分析結果から、魚体サイズ60〜90mmの中羽イワシでは、カエリイワシと異なり、3分までの煮熟であれば、総エキス分、イノシン酸(IMP−Na)、遊離アミノ酸などの旨味成分の流出は大きくなく、旨味も保持されており、直後に過熱蒸気処理して加熱、乾燥を行なうことにより、姿及び形状が綺麗でしかも旨味に富んだ良質の煮干しを製造できることが分かる。なおこの実施例の場合も、煮熟処理と過熱蒸気による加熱処理との処理時間を特許文献1に記載のものと比較して1/2以下にすることができた。
次に、本発明に従って製造した煮干しについて官能評価を行った。その結果を表3に示す。なお、この場合には実施例1と同様に原料魚体として魚体サイズ30〜50mmのカタクチイワシ(カエリイワシ)を用い、95±4℃の煮熟温度で煮熟時間30秒の煮熟処理及び温度190℃で2分間の過熱蒸気処理をして得たサンプルa、95±4℃の煮熟温度で煮熟時間30秒の煮熟処理及び温度210℃で2分間の過熱蒸気処理をして得たサンプルb、95±4℃の煮熟温度で煮熟時間1分の煮熟処理及び温度230℃で2分間の過熱蒸気処理をして得たサンプルc、及び煮熟処理せずに温度230℃で15分間の過熱蒸気処理をして得た対照サンプルdで8名のテスト者が行った官能検査結果である。
Figure 0005286470
官能評価結果では表3に示すように、本発明に従って製造した煮干しは食感としてサクサクしていて、食べる小魚としての品質は最適であるとの評価が得られた。平均4.5以上の点数であった。
魚体サイズ30±5mmのカタクチイワシ(カエリイワシ)を用いて5つのサンプルを用意し、水で洗浄した後、高さ17cm、幅28cm、奥行き28cmで3段式の網で作った棚を設けた容器を用い各棚にサンプルを載せて、容器がそのまま入る大型の寸胴の煮熟釜に入れ、94〜98℃の煮熟温度で煮熟時間をそれぞれ30秒、30秒、1分、2分、3分に設定して煮熟処理した。
続いて、シャープ社製の「ヘルシオ」(商品名)を用い、予め設定温度(200℃〜230℃)に庫内温度を高めた後、煮熟処理した各サンプルの入った容器を庫内に入れ、サンプル1は0分間、サンプル2は5分間、サンプル3は4分間、サンプル4は7分間、サンプル5は6分間、加熱処理を行なった。
煮熟及び過熱蒸気による加熱処理後のサンプルは開口5mmの網の上に移し、60〜80℃の通風乾燥機を用いて乾燥し、完成品とした。
対照区として同一ロットの原料魚を用いサンプル6として煮熟処理を行なわず過熱蒸気による加熱処理をのみを15分間行なったものを用意した。加熱処理後の魚体は開口5mmの網の上に移し、60〜80℃の通風乾燥機を用いて乾燥し、完成品とした。
これらサンプルについて煮干しの製造における付加的価値について検証した結果を表4に示す。
Figure 0005286470
分析結果に基づくチェック項目は、「総エキス分」、「イノシン酸(IMP-Na)」、「グアニル酸(GMP-Na)」「遊離アミノ酸(Total-AA)」、「塩分」、等で、カタクチイワシが持っている「旨味成分」や体内に保持していた「塩分」が熱水煮熟の時間によって、どの程度流出したかを数値的に確認した。
総エキス分については、煮熟時間0分:24.2%、5分:17.1%と時間経過による差が認められた。処理量が少ない為、サンプルのバラツキと測定誤差があったと推察されるが、時間経過による流出量について相関があると想定できる。
イノシン酸量については、煮熟時間の長さにより、流出していることが想定されたが、煮熟0分・ヘルシオ15分処理については、熱量が充分でない為に蛋白質変性に時間が掛かり、その間に核酸分解酵素が作用してイノシン酸が分解されたのではないかと考えられる。
遊離アミノ酸に関しては、煮熟時間によって流出した事との相関関係が認められた。
煮熟時間による流出が一番明確に表れていたのは、塩分であった。5分間の煮熟によって67.4%の流出が確認された。
グアニル酸は、イワシに関しては含有量も少なく、大きなファクターではないと確認された。
煮熟をしないで、ヘルシオを用いて加熱処理をした場合は、煮干として干からびた状態になり
「外観」「形状」が好ましくなく、表面のシワやツヤのなさ、等、煮熟を併用した場合に比較して劣っており、煮熟をして、過熱蒸気による加熱を併用する事の有効性が確認された。
上記の分析結果を総括して、長時間の煮熟で旨味成分がイワシの魚体から熱水中に流出してしまうこと、短時間の煮熟の後、過熱蒸気による加熱処理を行うことにより、旨味成分の流出を防ぐことが出来ること、過熱蒸気による加熱処理だけでは、加熱による初期の蛋白質変性に時間が掛かり、魚肉中の酵素作用によって旨味成分が分解されてしまうこと、併せて同じ理由によって魚体の表面から乾燥しながら内部に熱が伝わることにより魚体表面の光沢やハリが失われて、品質的に価値が下がること等が確認された。
分析結果として、煮熟処理を行なわず過熱蒸気による加熱処理のみの場合には蛋白質変性に時間が掛かり、実用化する上で生産性に劣り、外観や形状、風味や香味の観点からも十分満足できるものでなかったが、本発明に従って短時間の煮熟の後、過熱蒸気による加熱処理を行うことによって、生産性を大幅に向上できしかも旨味成分の流出を防ぐことができると共に製品の外観、形状が綺麗に仕上がることが認められた。
表5には、実施例3の場合と同様な条件で用意したサンプルについて鮮度の変化と過熱蒸気による加熱処理による蛋白変性の有効性(旨味の流出防止)について測定した結果を示す。
Figure 0005286470
漁獲したイワシは海水氷中に保存し、鮮度低下を防いだ。時間経過毎の鮮度をKで測定した。
海水氷中に保存したイワシは時間の経過と共にIMPが減少し、K値も徐々に増加した。煮熟加熱の場合より煮熟処理及び過熱蒸気処理の併用した場合の方が乾燥効果が出ており、AWも下がっていることが認められた。
また過熱蒸気処理のみの場合より煮熟処理及び過熱蒸気処理の併用した場合の方が煮干しの外観、形状が良好であった。IMPの含有量は煮熟時間が短いほど高い結果が得られた。なお、過熱蒸気処理のみの場合には、品温上昇の遅さによると思われる核酸の分解が認められる。
魚体サイズ60〜80mmのキビナゴ(中羽)の12個のサンプルを用意し、水で洗浄した後、セイロ(内寸38.5cm×48.5cm×4.0cm、底面積1867cm)に入れ、煮熟釜すなわちプロパンガスによる直火型の煮釜(W:600×L:500×D:400mm)を用いて、各サンプルを温度計で確認しながら95±4℃の煮熟温度で煮熟時間をそれぞれ、30秒〜1分に設定して煮熟処理した。
続いて、煮熟処理した各サンプルをセイロに入れたまま、温度170〜230℃で、1分間〜6分間過熱蒸気による加熱処理を行なった。
過熱蒸気による加熱処理には、シャープ社のヘルシオ(商品名)を用い、熱水による短時間の煮熟と過熱蒸気による加熱処理による煮干製造の有効性を得た後、実機に近い小型の過熱蒸気による加熱処理装置を用いた実用レベルに近い状態で行った。使用した小型の過熱蒸気による加熱処理装置は、過熱水蒸気を上下から噴出するプレートを備えたオーブンを2槽持ち、網目コンベアでトンネル内部を通過する間に高温の過熱水蒸気を上下から吐出して、酸化を防ぎながら加熱と乾燥を同時に行なえるもので、入り口側のオーブンをNo.1、出口側のオーブンをNo.2とし、ネットコンベアを挟んで、上面から噴出する蒸気温度と下面から上部に噴出する蒸気温度を測定して、魚体に当たる過熱水蒸気温度を確認した。
試験では、上記のセイロにキビナゴを2層以上重ならないように(1.5Kg±0.2Kg)の重量を目安に入れて、煮熟後、直ぐに所定の温度に設定した加熱装置のネットコンベア上にセイロごと載せて所定の時間、加熱を行なった。加熱処理をした後、直ちに−20℃の冷凍庫で冷凍して、翌日凍結した加熱処理したキビナゴを通風乾燥機で、50±5℃で14時間乾燥して完成品とした。
これらサンプルについてイノシン酸、エキス分、塩分、脂肪分の測定を行った。その結果を表6に示す。
Figure 0005286470
分析結果は表6に示すように、魚体サイズによる差があると思われるが、過熱蒸気による加熱処理の条件としては210℃、2分間の処理で十分な蛋白変性効果が得られると認められる。
実施例4で製造した煮干しについて官能評価を行った。その結果、サンプル3、6、11は味、香りの質的な劣化は認められず、煮熟処理時間30秒、過熱蒸気による加熱処理2分で十分に蛋白変性できていることが推察された。食感もサクサクしており、食べる小魚としては良好な歯触りであった。

Claims (4)

  1. 80〜100℃の熱水で多獲性小型魚類を煮熟して、部分的に蛋白変性を行なった後、170〜250℃の過熱蒸気を用いて、多獲性小型魚類を連続的に蛋白変性と予備乾燥を行い、次いで、本乾燥を行うことにより、外観、形状が綺麗でありしかも風味及び香味が良好であることを特徴とする多獲性小型魚類加工品。
  2. 80〜100℃の熱水で多獲性小型魚類を煮熟して、部分的に蛋白変性を行い、続いて170〜250℃の過熱蒸気を用いて、多獲性小型魚類を連続的に蛋白変性と予備乾燥を行い、その後、本乾燥を行うことを特徴とする多獲性小型魚類加工品の製造方法。
  3. 多獲性小型魚類の魚体サイズが50mm以下であり、熱水による煮熟が1分以内であることを特徴とする請求項2に記載の多獲性小型魚類加工品の製造方法。
  4. 多獲性小型魚類の魚体サイズが50mm以上であり、熱水による煮熟が3分以内であることを特徴とする請求項2に記載の多獲性小型魚類加工品の製造方法。
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