JP5155476B1 - 魚類加工品の製造方法、加熱装置および加熱処理方法 - Google Patents

魚類加工品の製造方法、加熱装置および加熱処理方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高温高圧加熱によるレトルト臭のない美味しい魚類加工品をエネルギー効率の良く製造する方法を提供する。
【解決手段】魚類加工品の製造方法であって、骨を有する魚類を加熱釜50で加熱する工程を含む。加熱釜50は湯気発生装置10に接続されており、湯気発生装置10は熱交換器90から構成されている。熱交換器90の蒸気経路92には、ボイラー94からの高圧蒸気が導入され、熱交換器90の液体経路91の上端91aは、湯気供給管12を通じて、加熱釜50の内部55に配置された湯気噴出部52に接続され、熱交換器90の液体経路91の下端91bは、連通管14を通して加熱釜50に接続されている。
【選択図】図1

Description

本発明は、魚類加工食品の製造方法、加熱装置および加熱処理方法に関する。特に、魚の骨を柔らかくした魚類加工品の製造方法およびそれを製造するための加熱装置に関する。
魚の骨は食べる際に邪魔になるため、骨まで柔らかくすることが求められている。サバやアジ、サンマなど煮魚に適した魚を骨まで柔らかくする加工方法は、これまで長時間煮る方法や加圧鍋によって煮る方法がある。また、近年、自然環境保護のため、魚類食品における骨やヒレ、頭などの廃棄部分の低減が求められている。例えば、佃煮などのように長時間煮込むことによって、骨まで食べられる製品は、廃棄物が少なく、また、骨に含まれるカルシウムなどを摂取できる点で好ましい。しかしながら、煮込み工程を含む調理法では、一般に味が濃く、煮込んだ魚類特有の味となっており、調味料の味が主体となったりする。
特許文献1は、骨まで柔らかくなる魚類加工品の製造方法を提案している。具体的には、特許文献1では、生又は前処理した魚類を減圧下で水蒸気に直接接触させて加熱する減圧加熱工程と、減圧加熱工程の後の魚類を加圧下で水蒸気に直接接触させて加熱する加圧加熱工程とを備える魚類加工品の製造方法を開示している。また、特許文献2では、生魚を短時間煮沸した後、密閉容器に調味料とともに封入し、密閉容器ごと加熱して煮魚加工品を製造する方法が開示されている。
国際公開W02006/025102号公報 特開2001−37447号公報
特許文献1に開示された技術によれば、蒸気供給装置からなる加熱手段に加えて、真空吸引装置からなる減圧化手段、加圧した空気を導入可能な加圧手段、そして、液体窒素噴出手段からなる冷却手段が必要となる。これらの手段によって、減圧加熱工程、加圧加熱工程、除圧工程、減圧乾燥工程、および冷却工程(冷凍工程)を実行するのであるが、これらの工程を実行するのは、エネルギー損失が大きいという欠点がある。すなわち、まず、真空吸引装置を使って減圧工程を行うことは大きなエネルギーが必要であることに加えて、その減圧を加圧にし、再び減圧にするものであるので、特に大きなエネルギー損失が発生する。
また、特許文献2に開示された技術は、骨まで柔らかくできるかどうか明確でないが、密閉容器がレトルトパウチの場合、封入状態で加熱することで、高温高圧による魚・タンパク質変性による臭み(いわゆる一般的なレトルト臭)や、レトルトパウチのにおいが食品に付きやすく、風味を損なうおそれがある。
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、高温高圧加熱によるレトルト臭のない美味しい魚類加工品をエネルギー効率の良く製造する方法および加熱装置を提供することにある。
本発明に係る魚類加工品の製造方法は、骨を有する魚類を加熱釜で加熱する工程を含み、前記加熱釜は、湯気を発生させる湯気発生装置に接続されており、前記湯気発生装置は、互いに独立する液体経路および蒸気経路を有し、前記液体経路を流動する液体と前記蒸気経路を流動する加熱用蒸気との間で熱交換が行われる熱交換器から構成されており、前記熱交換器の前記蒸気経路には、ボイラーからの高圧蒸気が導入され、前記熱交換器の前記液体経路の上端は、湯気供給配管を通じて、前記加熱釜の内部に配置された湯気噴出部に接続されており、前記熱交換器の前記液体経路の下端は、連通管を通して前記加熱釜に接続されている。
ある好適な実施形態では、前記加熱釜で加熱する工程においては、前記熱交換器と前記加熱釜との間で前記湯気を循環させることによって前記加熱釜の内部が加圧状態になる。
ある好適な実施形態では、前記加熱釜で加熱する工程において、前記魚類の骨が軟化状態になる。
ある好適な実施形態では、前記加熱釜で加熱する工程の後、前記加熱釜で加熱された前記魚類を混練する工程と、前記混練された魚類を、高温蒸気焼成機で焼成する工程とをさらに含む。
ある好適な実施形態では、前記魚類を混練する工程においては、前記加熱された魚類に調味料が添加され、前記高温蒸気焼成機で焼成する工程においては、前記混練された魚類は薄くのばされて焼成される。なお、前記混練された魚類は、薄くのばさない形状(例えば、団子状、ブロック状の形状)で焼成してもよい。
ある好適な実施形態において、前記高温蒸気焼成機は、湯気を発生させる第2湯気発生装置と、前記湯気を加熱して過熱蒸気を生成する加熱装置と、前記過熱蒸気によって前記混練された魚類が焼成される焼成室とを備え、前記焼成室の内部には、前記過熱蒸気を噴出する噴出しパイプが配置されている。
ある好適な実施形態において、前記高温蒸気焼成機は、さらに、前記焼成室の内部を通過するベルトコンベアを備え、前記焼成室は、前記ベルトコンベアの入口と出口の部分が開口した開放空間になっており、前記噴出しパイプの噴出し口は、前記ベルトコンベアの上方に位置している。
本発明に係る湯気を用いた加熱装置は、被加熱物が内部に配置される加熱釜と、湯気を発生させる湯気発生装置とを備え、前記加熱釜は、前記湯気発生装置に接続されており、前記湯気発生装置は、互いに独立する液体経路および蒸気経路を有し、前記液体経路を流動する液体と前記蒸気経路を流動する加熱用蒸気との間で熱交換が行われる熱交換器から構成されており、前記熱交換器の前記蒸気経路には、ボイラーからの高圧蒸気が導入され、前記熱交換器の前記液体経路の上端は、湯気供給配管を通じて、前記加熱釜の内部に配置された湯気噴出部に接続されており、前記熱交換器の前記液体経路の下端は、連通管を通して前記加熱釜に接続されている。
ある好適な実施形態において、前記加熱装置は、前記熱交換器と前記加熱釜との間で前記湯気を循環させることによって前記加熱釜の内部が加圧状態になる。
ある好適な実施形態において、前記加熱釜の内部の下部には、液体が蓄えられ、前記加熱釜における前記液体の水位と、前記熱交換器における前記液体経路の前記液体の水位とは互いに一致している。
ある好適な実施形態において、前記加熱釜は、円筒形状の本体部を有しており、前記加熱釜の前記本体部における前方開口部および後方開口部のそれぞれに開閉可能な扉が設けられている。
ある好適な実施形態において、前記湯気発生装置で発生した前記湯気は、絶対圧力0.12MPaA以下(すなわち、ゲージ圧力0.0187MPaG以下)の微圧力を有する飽和水蒸気である。
ある好適な実施形態において、前記被加熱物は、魚類である。
本発明に係る湯気を用いた加熱処理方法は、熱交換器から構成された湯気発生装置で湯気を発生させる工程と、前記湯気を加熱釜に導入する工程と、前記加熱釜の内部の底に存在する液体を前記熱交換器に導入する工程とを含む。
本発明に係る魚類加工品の製造方法は、骨を有する魚類を加熱釜で加熱する工程を含む。そして、加熱する工程においては、湯気発生装置を構成する熱交換器の液体経路の上端と下端とをそれぞれ配管を通じて加熱釜に接続し、熱交換器と加熱釜との間で湯気を循環させることによって加熱釜の内部を加圧状態にすることができる。したがって、熱交換器と加熱釜との間で湯気を循環させながら連続して加熱釜に導入することにより、加熱釜に配置された魚類を徐々に加圧しながら加熱することが可能となり、その結果、当該加熱する工程において、魚類の骨を軟化状態にすることができる。
上述した特許文献1では真空吸引装置を使って減圧工程を行う必要があり、そして、その減圧を加圧にして再び減圧にする工程を行う必要があるが、本発明では、そのような減圧工程などを行う必要がないので、特許文献1と比較して、大きなエネルギー損失を抑制することができる。また、湯気を循環させることで加熱釜の内部を加圧状態にできるという新規の手法を見いだしたことにより、加圧加熱工程においても、加圧用の空気を導入する必要がなく、効率的な加圧可能な加熱釜にて加熱する工程を実行することが可能である。また、加熱する工程ではボイラー蒸気は加熱釜に入らないので、加熱釜の中にボイラー臭がすることもない。さらに、特許文献2では、食品にレトルトパウチのにおいが付きやすく、風味を損なうおそれがあるが、本発明では、レトルトパウチのにおいがつくこともない。
魚類の骨を軟化状態にしたもの(魚肉)を混練して、高温蒸気焼成機で焼成することにより、魚類における骨を廃棄することなく利用することが可能である。骨を取り除いた魚類食品と、骨まで食べられる魚類食品とで、カルシウム成分を比較すると約10倍の差がある。したがって、本発明により製造される魚類加工品は、廃棄物を減らすことができるため原料コスト減になるとともに、環境にも優しく、そして、カルシウム摂取の点からは健康にも良い。加えて、混練した魚類を高温蒸気焼成機で焼成することにより、美味しさがさらに増す。バーナーの焼成と比較すると、高温蒸気焼成機で焼成(例えば、300℃またはそれ以上)では、無酸素状態での焼成となるので、魚の脂成分が酸化しないので脂臭さがない。さらには、高温蒸気焼成機での焼成では、魚の温度上昇が早い、調味料が気体蒸気の粒子と絡んで魚の身に浸透しやすく旨味が増すという効果も得られる。
また、本発明の加熱釜で加熱する工程においては、前記魚類の骨が軟化状態になる。ここで、従来技術の加圧釜では、魚類の身と骨の違和感が残るが、本発明の加熱釜による加圧・加熱においては熱効率が良いととに、魚類の身と骨との違和感がないという利点がある。加えて、本発明においては、前記加熱装置は、前記熱交換器と前記加熱釜との間で前記湯気を循環させることによって前記加熱釜の内部が加圧状態になる。ここで、最高温度・圧力に到達するまではゆっくりとした上昇カーブになる。そして、一般的なレトルト釜のように設定した到達温度よりも高い蒸気を投入することを避けることができ、より美味しい魚類加工品を製造する上で有利に働く。
本発明の実施形態に係る加熱装置100の構成を示す模式図である。 本発明の実施形態に係る熱交換器90の構成を示す模式図である。 本発明の実施形態に係る魚類加工品の製造システム200の構成を示す図である。 本発明の実施形態に係る加熱釜50の内部構造を模式的に示す図である。 本発明の実施形態に係る湯気発生装置80(熱交換器90)の構成を示す図である。 本発明の実施形態に係る湯気発生装置10(熱交換器90)および加熱釜50の構成を示す図である。 加熱釜50による加熱後の焼き魚(焼きアジ)を示す図面代用写真である。 加熱後の焼き魚をニーダーで混練している様子を示す図面代用写真である。 混練した魚類を薄くのばしたものを高温蒸気焼成機70で焼成した様子を示す図面代用写真である。 焼成した魚肉を冷凍真空パックしたものを示す図面代用写真である。 本発明の実施形態に係る加熱装置100の構成を示す模式図である。
食品製造における加熱工程は、おいしい、良い製品をつくる上において最も重要なポイントである。通常は、バーナーによる加熱、温水による加熱、油による加熱が主によく使用され、それに比べると、スチーム加熱は、バーナー、温水等の加熱と比べて総熱量が少ないなどの関係から、実際にはあまり利用されていない。本願発明者は、バーナーによる加熱、温水等の加熱に代えて、スチーム加熱の可能性を鋭意探究した結果、過熱蒸気(過熱水蒸気)を用いた加熱方法に辿り着き、その開発を進めた。
本願発明者は、微圧蒸気(湯気)を加熱して過熱蒸気として、その過熱蒸気を食品に当てて加熱を行う手法を開発し、そしてそれを特願2007−522303号明細書に開示した。本願発明者が開発した技術(特願2007−522303号明細書に開示の技術)は素晴らしいものであり、しかも、微圧蒸気を用いて大気圧で動作できる点が大きな利点であった。一方で、加熱処理方法によっては、大気圧での加熱ではなく、加圧状態での加熱を行いたい場合もある。特に、骨を柔らかくして骨まで食べられる魚類加工品は、加圧状態での水蒸気の加熱を行って製造することが好ましい。
魚の骨を柔らかくして骨まで食べられる魚類加工品は、主に、レトルト製法で製品化されているが、美味しさの点からポピュラーにはなっていないのが実情である。これは、レトルト製法で使用されるレトルト釜には、設定圧力・設定温度以上の圧力・温度を有するボイラー蒸気による加熱が行われ、そして、そのようなレトルト釜を使用すると、加熱後にレトルト臭(魚のタンパク変性した臭い)や、ボイラー配管の臭いが製品についてしまうとともに、色の変色(茶色くくすんだ色)が起こり、美味しさと見栄えの点で問題があった。
特許文献1に開示された手法では、加圧加熱する際に、加圧するための空気(圧縮空気)を導入するが、本願発明者の検討によると、加熱釜の中に空気が存在していると、空気は断熱性をもっているので、加熱釜の中における加熱効率が低下するとともに、加熱釜内の熱伝導にムラが生じ、すなわち、加熱ムラが生じそれが製品の味などに影響を与えてしまう。一方、特願2007−522303号明細書に開示した湯気(微圧飽和蒸気)または過熱蒸気の加熱の技術を用いると、空気の断熱性の問題を回避した加熱を実行することができるものの、加圧状態での蒸気加熱を行うことについては、技術的な飛躍が必要であった。
本願発明者は、湯気(微圧飽和蒸気)を用いた蒸気加熱の手法において、簡便に、加熱釜内において加圧状態を生じさせることに成功し、本発明に至った。以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面においては、説明の簡潔化のため、実質的に同一の機能を有する構成要素を同一の参照符号で示す。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。
図1は、本発明の実施形態に係る加熱装置100の構成を示す模式図である。本実施形態の加熱装置100は、湯気(微圧飽和蒸気)を用いて被加熱物を加熱する装置(蒸気加熱装置)であり、特に、被加熱物が食品である場合には、蒸気式の食品加熱装置である。本実施形態では、被加熱物は、魚類、特に、骨を有する魚を使用する。
本実施形態の加熱釜50は、被加熱物(例えば、魚類など)が内部55に配置される加熱釜50と、湯気15を発生させる湯気発生装置10とから構成されている。加熱釜50は、配管(12、14)を介して湯気発生装置10に接続されている。
本実施形態の湯気発生装置10は、熱交換器90から構成されている。熱交換器90は、互いに独立する液体経路91および蒸気経路92を有しており、液体経路91を流動する液体(ここでは、水)と蒸気経路92を流動する加熱用蒸気(ここでは、スチーム蒸気)との間で熱交換が行われる。
熱交換器90の蒸気経路92には、ボイラー94からの加熱用蒸気(ボイラー蒸気、または、高圧蒸気)が導入される。具体的には、ボイラー94からの高圧蒸気は、矢印36に示すように、ボイラー配管22を介して、熱交換器90の蒸気経路92に導入される。熱交換器90の内部において、蒸気経路92を通る加熱用蒸気の熱は、液体経路91に存在する液体に移動して、ここで熱交換が行われる。そして、熱交換器90の内部において、非接触で、加熱用蒸気(熱媒体)と液体(熱交換媒体)とが交差する際に熱交換が実行されて、湯が沸き、そして、湯気(微圧飽和蒸気)15が発生する。熱交換器90において熱交換が終わった加熱用蒸気は、矢印37のように、排気スチーム配管24を通って排気される。
本実施形態の熱交換器90は、図2に示すように、外殻体93の中に複数の液体経路91が配置されて形成されている。本実施形態では、外殻体93は、略円筒状の形状をしており、液体経路91は、伝熱管から構成されている。液体経路91を構成する伝熱管は、熱媒体(スチーム)の熱を管内の熱交換対象体(ここでは、水)に伝える材質から形成されており、例えば、金属管(例えば、ステンレス)からなる。液体経路(伝熱管)91は、円筒形状の長手方向(軸心方向)に延びている。本実施形態では、軸心方向に沿って、周方向に間隔をあけて並列に配置されている。そして、液体経路(伝熱管)91同士の間が、熱媒体(スチーム)16が通過する蒸気経路92となる。また、熱交換器90の液体経路91の上端91aからは、湯気15が発生して移動していく。
熱交換器90から構成された湯気発生装置10は、図1に示すように、湯気供給管12を通じて、加熱釜50の内部55に配置された湯気噴出部52に接続されている。したがって、熱交換器90の液体経路91の上端91aから生じた湯気15は、湯気供給管12を通って移動し(矢印31)、続いて、加熱釜50の内部55に導入され(矢印32)、湯気噴出部52から噴出して加熱釜50の内部55に放出される(矢印53)。
また、熱交換器の液体経路91の下端91bは、連通管14を通して加熱釜50に接続されている。したがって、加熱釜50の底部に位置する液体(湯気が凝縮したものを含む)は、矢印33に示すように、連通管14に移動することができる。そして、続いて、熱交換器90の液体経路91から湯気が発生して、熱交換器90内の液体経路91の水位が低下するのにあわせて、それを補うように、矢印34に示すように、連通管14内の液体は熱交換器90の液体経路91の下端91bの方に移動する。
なお、本実施形態の加熱装置100においては、熱交換器の液体経路91、湯気供給管12、加熱釜50、連通管14を一周して密閉構造になっている。したがって、加熱釜50の底部に位置する液体(例えば、水)を導入しておくと、パスカルの原理により、連通管14を介して、加熱釜50の内部の水位と、熱交換器の液体経路91内の水位とを一致させることが可能である。
上述したように、本実施形態の加熱装置100では、ボイラー94からのボイラー蒸気(加熱用の加圧蒸気)16をそのまま加熱釜50の内部55に導入するのではなく、湯気発生装置10からの湯気15を加熱釜50の内部55に導入する。湯気発生装置10からは、微圧力(例えば、絶対圧力0.12MPaA以下(すなわち、ゲージ圧力0.0187MPaG以下)、一例で、0.11MPaAの湯気(飽和水蒸気)15が生成し、湯気は微圧力であるがゆえ、湯気供給管12をゆっくりと移動して、加熱釜50の内部55に導入される。ここでの「湯気」は、ボイラー蒸気のような高圧蒸気ではなく、微圧蒸気のことを意味する。換言すると、本実施形態の「湯気」は、高温高圧のスチーム蒸気と異なり、微圧力の蒸気(例えば、0.12MPaA以下の蒸気)である。なお、ここでの「湯気」は微圧力の蒸気であることを特徴としており、湯から立ち上る蒸気(水蒸気)であればよく、その蒸気が小さな水滴となって白く煙になるような状態であることまで限定されるものではない。すなわち、湯気は、白い煙のような状態であってもよいし、透明の状態であってもよい。また、例示として、0.11MPaAの蒸気を示しているが、その圧力を越える湯気(またはそれを下回る湯気)を使用しても構わない。例えば、湯気発生装置10から、0.13MPaA以下(一例では0.105〜0.12MPaA)の湯気(微圧蒸気)を用いることが可能である。
まず前提として、加熱釜において高温で高圧の加熱環境を実現しようとすれば、圧力の高い気体(蒸気、空気)を加熱釜に導入して、高温で高圧の条件を設定することが技術的な常識である。そして、高圧であればあるほど高温の加熱環境を実現することが容易となる。そのような大前提の中、本願発明者は、微圧蒸気である湯気15を、加熱釜50に連続して導入することにより、加熱釜50の内部55の環境を加圧状態にするものである。すなわち、当業界の技術常識とは異なる方向で、加熱釜50の加圧条件を構築するものである。
本実施形態の加熱装置100においては、0.11MPaA(=0.1kg/cm2G)前後の湯気15を連続して導入することにより、加熱釜50の内部55を、例えば、Maxで0.25MPaA(一例では、0.15MPaA、0.2MPaA、0.25MPaAの設定)にすることができる。そして、連通管14を介して熱交換器90の液体経路91には液体が自動的に供給されるので、熱交換器90の熱交換によって連続して湯気15を加熱釜50に導入することができる。すなわち、本実施形態の加熱釜50で加熱する工程においては、熱交換器90と加熱釜50との間で湯気15を循環させることによって(より正確には、湯気15と連通管14内の液体とを循環させることによって)、加熱釜50の内部55を加圧状態にすることが可能である。なお、一例では、150℃のボイラー蒸気(乾き度95%)を用いて、熱交換器90(言い換えると、蒸気間接加熱方式の湯気発生装置10)にて湯気(クリーンスチーム)15を発生させて、その湯気15によって加熱釜50の内部を加圧状態にする。そして、加熱釜50の内部は、例えば、0.20MPaA(≒1.0kg/cm2G)にすることができる。
本実施形態の加熱装置100における加熱釜50において、加熱温度110〜120℃、0.15MPaA〜0.2MPaAで、1時間前後の蒸気加熱(湯気15の加熱)を行ったところ、冷凍の生魚(例えば、冷凍アジ、冷凍サバ)の状態から、骨が軟化した加熱状態の魚(アジ、サバ)を製造することができた。なお、加熱温度および加熱時間(または圧力)は、これらに限定されるものではなく、適宜好適なものを選択することができる。例えば、条件によっては、1時間よりも短い加熱時間で骨を軟化させることも可能である。
加熱釜50を用いた加熱処理で得られた骨が軟化した加熱状態の魚(アジ、サバ)は、レトルト製法で製品化された骨も食べられる魚と比較して味がよく、また、魚類の身と骨との間の違和感がないものにすることができる。これは、本実施形態の製造方法では加熱釜にボイラー蒸気が使われておらず、加熱後にレトルト臭(魚のタンパク変性した臭い)や、ボイラー配管の臭いがつかないことに起因していると思われる。また、ボイラー蒸気(150℃程度、または、130℃〜150℃)を加熱釜に直接導入すると、加熱釜の内部の昇温において部分的にムラが生じる可能性が高いとともに、加圧空気の導入の影響も受ける。一方、本実施形態の加熱処理方法によれば、熱交換器90を用いて湯気生成を循環させながら行うことができ、そして、その湯気15の導入にて加圧と昇温を徐々に行うことによって、本実施形態の加熱釜50内の温度上昇と、魚の温度上昇とを揃えながら加熱させることができる(ただし、魚の芯温は遅れて上昇する)。その結果、安定した魚の温度上昇による効果、加熱釜50内の均一な加熱環境(加熱ムラの低下)の効果、ボイラー蒸気を使用しないクリーン蒸気(湯気)による効果、低空気状態での加熱環境(空気の少ないことによる熱伝導率の良さ)の効果、蒸籠の内部状態に類似した高濃度水蒸気環境における魚の身の乾燥防止および骨の身の軟化促進などの効果を得ることができる。
次に、図3を参照しながら、本実施形態の加熱装置100を含む魚類加工品の製造装置(製造システム)200および魚類加工品の製造方法について説明する。また、図4は、本実施形態の加熱装置100における加熱釜50の内部構造の一例を模式的に示している。
図3に示した魚類加工品の製造システム200は、上述した加熱釜50を含む加熱装置100と、加熱釜50で加熱された魚類を混練する混練機(ニーダー)60と、混練された魚類を焼成する高温蒸気焼成機70とから構成されている。
図3に示した加熱釜50は、円筒形状(または略円筒形状)の本体部51を有している。また、この例の加熱釜50では、本体部51の前方開口部および後方開口部のそれぞれに開閉可能な扉57A、57Bが設けられている。したがって、図3に示した加熱釜50では、矢印41のように前方開口部側の扉57Aを開けて魚類を入れて加熱工程を行い、加熱工程後には、矢印42に示すように、後方開口部側の扉57Bを開けて加熱された魚類を取り出すことができる。このように前後に開閉可能な扉(57A、57B)を有する構造の加熱釜50にすると、製造ラインの作業効率を向上させることができる。もちろん、加熱釜50の開閉可能な扉を一つにして(例えば、扉57A)、そこから魚類を出し入れするようにしても構わない。
図4は、本実施形態の加熱釜50の内部構造の一例を示している。図4に示すように、加熱釜50の内部55には、湯気供給管12に接続された湯気導入管54が配置され、そして、その湯気導入管54に湯気噴出部52が接続されている。湯気噴出部52には、噴出孔56が複数形成されており、この噴出孔56から湯気が加熱釜50の内部55に噴出される。そして、この噴出された湯気によって、加熱釜50の内部の温度と圧力が上昇していく。
この例の加熱釜50の下部には、載置板58が配置されている。載置板58の上に、例えば、複数の冷凍の魚(冷凍アジ)が詰め込まれたセイロ(金属またはプラスチック製のセイロ、不図示)が載せられる。セイロは、載置板58の上に複数枚を積層することが可能である。あるいは、平行して複数のセイロを載置板58の上に載せることもできる。なお、載置板58を設けずに、パレットを加熱釜50の下部に置ける構造にしても構わない。また、載置板58の下方には、連通管14の接続部となる開口部(不図示)が存在している。
図4に示した構造において、湯気噴出部52は2本にしているが、それに限らず、1本でも、3本またはそれ以上の本数のものを配置してもよい。例えば、加熱釜50の上段(上方部)に複数本(一例では2本)、加熱釜50の中段または下段に複数本(一例では2本)配置する構成にしてもよい。また、加熱釜50の内部に温度センサー(温度計)を配置したり、冷却装置(例えば、冷水(水道水)を噴霧する水供給装置など)を配置しても構わない。
本実施形態で加熱処理される魚類は、特に限定されないが、単価の安い小魚を利用すれば付加価値を高めることができる。骨を有する魚類の場合、本実施形態の加熱処理を施すと、骨まで食べられる焼き魚になる。なお、本実施形態の加熱処理によれば、骨だけでなく、頭やヒレなども食せるようになる。本実施形態で加熱処理される魚類は、例えば、サバ、アジ、サンマ、イワシなどの青背の魚を挙げることができる。これらの魚は、表皮と身肉との間に厚い脂肪層が存在し得る魚である。また、ヒラメ、カレイ、タチウオ、ブリ、ニシンなどのようなもの(白身魚を含む)を用いることも可能である。なお、本実施形態の技術によれば、加熱釜50の加熱によって魚類の身と骨とを違和感ない状態にすることができるが、ヒレ(及び/又は頭)が存在すると、ヒレによって違和感のなさが阻害されてしまうことがあるので、ヒレ(及び/又は頭)を取り除くことも好ましい。
これらの魚類は、一匹丸ごとのもの、内臓や頭など一部が除去されているもの、部分にわけられているものの何れも使用することができる。また、頭やヒレ、背骨、小骨など骨が付いたままのものを好適に使用することができる。なお、市場では骨を除去した魚類が販売されているが、魚類の骨を完全に取ることはコストがかかる作業であり、資源利用性やゴミの問題などを考慮すると、本実施形態の加熱処理方法または製造方法を用いて魚の骨を柔らかくして食べられるようにできることは、技術的な価値が高いものである。
また、本実施形態で用いられる魚類は、生のままでもよいし、前処理が施されたものであってもよい。本実施形態において「生の魚類」とは、未だ加熱処理されていない魚類を含み、例えば、加熱処理を経ないで冷蔵、冷凍、あるいはパーシャルフリージングされた状態の魚類も含む。なお、冷凍前の魚類、解凍した魚類は保存・保管の問題があるので、冷凍した魚類を、冷凍状態のまま、本実施形態の加熱釜50に投入して、冷却した魚類から、骨まで食べられる魚類にできることの技術的意義も大きいものである。
さらに、本実施形態で用いられる魚類は、前処理が施された魚類とは、加熱処理を除き、生の魚類に施される種々の公知の処理が施された魚類である。すなわち、前処理は、生の魚類に施される各種調理方法または各種加工方法およびその一部を含む。例えば、油、エキス、スープ、塩、味噌、醤油等に漬ける含浸処理、乾燥・脱水処理、発酵処理、塩、コショウ、小麦粉、片栗粉、米粉、ゴマ、けし、青のり、他種々の食材よりなる粉、フレーク等の付着処理、他の食材等をフィリングとして付与する処理、表皮に焼き色や切れ目を付与する処理などを挙げることができる。また、これらのうち2種以上を組み合わせたものも含む。なお、本明細書において、加熱処理とは、熱によって魚類中のタンパク質を変質させる処理を意味する。
本実施形態では、冷凍状態の魚類(例えば、冷凍アジ)をパレット内に詰め込み、図1における矢印41に示すように、そのパレットを加熱釜50に入れた後、本実施形態の加熱装置100の加熱釜50の加熱を1時間ほど実行して骨を軟化させる。次いで、矢印42に示すように、扉57Bの方から加熱後のパレットを取り出して、混練機(ニーダ)60に加熱した魚類を投入する。この混練機60で、骨を軟化させた魚類の骨を含めて魚肉と混練して、魚のミンチにする。混練機60の混練工程中(または、混練前、混練後)において、ミンチに調味料(例えば、植物油、アミノ酸、塩など)を入れて混合する。なお、上述の前処理で説明したような処理をこの段階で施しても構わない。
次に、混練後にフレーク状になった魚類(魚類加工品)を高温蒸気焼成機70で焼成する。図3に示した高温蒸気焼成機70は、蒸気(水蒸気)を加熱して過熱蒸気を生成し、その過熱蒸気によって被加熱物(混練後の魚類)65を焼成する装置である。過熱蒸気は、水蒸気を定圧で100℃を超える温度に加熱した蒸気である。この過熱水蒸気(または過熱蒸気)は、水蒸気や高圧高温水蒸気と異なり、食品の加熱に好適な遠赤外線の放射性を持った熱放射性気体で、その雰囲気中では酸素が遮断されて酸化を防止することができる等の利点を有している。そして、過熱水蒸気を用いることにより、肉、魚等を味良く焼成等することができることが知られている。
過熱蒸気を用いる高温蒸気焼成機は、典型的には、高温高圧のボイラー蒸気を大火力のバーナー(または高出力の電磁加熱装置)を備えた燃焼装置で過熱蒸気を生成して、その過熱蒸気を使うものであるが、そのようなものはエネルギー効率が良くない。本実施形態の高温蒸気焼成機70は、湯気(微圧蒸気)を加熱装置(例えば、電熱ヒータ)で加熱して過熱蒸気を生成し、その過熱蒸気を被加熱物(混練後の魚類)65に吹き付けて、混練した魚類65を焼成する装置である。
さらに具体的に、図3に示した高温蒸気焼成機70の説明をすると次の通りである。高温蒸気焼成機70は、湯気61を発生させる湯気発生装置80と、湯気61を加熱して過熱蒸気62(又は75)を生成する加熱装置72とを備えている。生成した過熱蒸気62は、混練された魚類65が焼成される焼成室77に導入される。焼成室77の内部には、過熱蒸気75を噴出する噴出しパイプ74が配置されている。
本実施形態の加熱装置72は例えば電熱ヒータであり、図3に示した例では、直列して複数の加熱装置72a、72bが接続されている。なお、加熱装置72は、1つでも構わないし、3つ以上直列に接続してもよい。また、加熱装置72を直列でなく並列で配置して、湯気61から過熱蒸気62・75を生成することも可能である。湯気61を発生させる湯気発生装置80は、湯気供給配管81を介して加熱装置72(72a)に接続されている。加熱装置72(第1加熱部72a)は、蒸気配管82を介して、加熱装置72(第2加熱部72b)に接続されている。第2加熱部72bには、噴出しパイプ74が接続されており、噴出しパイプ74の先端には、過熱蒸気75の噴出し口76が位置している。
本実施形態の高温蒸気焼成機70は、焼成室77の内部を通過するベルトコンベア85を備えている。焼成室77は、ベルトコンベア85の入口と出口の部分が開口した開放空間になっており、噴出しパイプ74の噴出し口76は、ベルトコンベア85の上方に位置している。焼成室77は、例えば、ステンレスから構成されている。また、本実施形態では、噴出しパイプ74、蒸気配管82、湯気供給配管81もステンレスから構成されている。
本実施形態では、混練機60で混練された魚類(6)は、矢印43に示すようにベルトコンベア85の上に載置される。そして、ベルトコンベア85が矢印44のように進行して、混練された魚類65は、焼成室77内において過熱蒸気75によって焼成される。その後、ベルトコンベア85の移動(45)に沿って、焼成された魚類65は焼成室77を出て、焼成した製品(魚類加工品)として下流に流れていく。図示した例では、混練された魚類は、金属製(例えば、ステンレス製)の網の上に薄くのばして載せ、その薄くの
ばした魚類65を載せた網をベルトコンベア85に載せて、当該魚類65を過熱蒸気75で焼成する。
本実施形態の製造方法では、加熱釜50で加熱した魚類(骨まで柔らかい魚類)を混練することにより、骨・頭・ヒレなどを廃棄することなく、それらも含めて食せるようにすることができる。また、混練時に調味料を加えることにより、それ以降の工程(焼成工程)で味の調整などを行うことを省略することができ、魚類加工品の製造する際の作業の流れがよい。また、混練した魚類を薄くのばして(例えば、厚さ1cm〜5cm程度)、ベルトコンベア85に載せることにより、過熱蒸気の焼成を効率良く行うことができる(薄いことから、熱を通しやすく、焼きが均一になる)。なお、薄くのばさずに、団子状や、ブロック状にして焼成しても構わない。
本実施形態の高温蒸気焼成機70では、微圧蒸気である湯気が加熱装置(電熱ヒータ)72内をゆっくり漂うので、早い速度で移動する高圧蒸気と比較して、電熱ヒータ72で効率良く加熱することができ、大気圧で高温(例えば300℃以上)の過熱蒸気75を生成させることができる。そして、その高温の過熱蒸気75を、高温のまま直下のベルトコンベア85上の魚類(被加熱物)65に吹き付けることができる。本実施形態の加熱装置72は、例えば電熱ヒータであり、加熱装置72内では、動作時に実質的に大気圧と同じ内部圧力(例えば、1.2気圧以下の内部圧力)で加熱が実行される。
図3に示した湯気発生装置80は、湯気を発生させる装置であれば特に限定されないが、図2に示した熱交換器90から構成されたものを使用することがエネルギー効率・連続使用の観点から好ましい。なお、湯気発生装置80で発生した湯気の温度が例えば95℃〜110℃程度とすると、電熱ヒータ72(72a、72b)で加熱されて、150℃以上、好ましくは180℃以上(あるいは、300℃〜600℃またはそれ以上)の過熱蒸気(スーパーヒートベイパー)になる。本実施形態の電熱ヒータ72は、例えば、数キロワット程度の電熱ヒータ(例えば、プラグヒータ、フランジヒータなど)である。
また、湯気61は飽和蒸気(飽和水蒸気)であるので、焼成室77に導入される過熱蒸気は、高温でありながらも、水分を多く含む気体である。したがって、湯気(飽和蒸気)を加熱して生成された過熱蒸気で食品を加熱すると、食品から必要以上に水分が取り出されてしまってパサパサになることを抑制することができる。この点、湯気を加熱して高温にした過熱蒸気と、高温高圧のスチーム蒸気を加熱して高温にした過熱蒸気(スチーム蒸からの過熱蒸気)とは異なり、焼成された魚類加工品の性質(味、乾燥具合)も異なったものになる。
さらに、過熱蒸気は、次のような利点を有している。まず、過熱蒸気の伝熱は、対流伝熱の他に、放射伝熱が加わるため、熱効率が非常に高いという特長を有している。魚や肉の焼き上がりは、直火・ガスと同様以上であり、さらに、水蒸気なので対流伝達も早く、空気に比べて約10倍以上も対流伝達が早い。また、過熱蒸気は低温の物質に触れると凝縮し、その時に物質に熱を与えて温度(芯温)を上げるという水蒸気本来の性質と、加熱空気のように物質を加熱する性質を持っているので、短時間で焼成ができる。加えて、製品の芯温を短時間で上昇させるので、被加熱物(魚類)の表面と内部との焼きムラを低減させることができる。
さらには、過熱蒸気中は無酸素状態(あるいは、大気圧の酸素濃度よりも低い状態)なので、油脂の酸化・ビタミンの破壊などを抑制することができ、製品の保存を向上させることもできる。また、食品の退色防止にも役に立つ。そして、水は蒸発する時に油分を抱え込む性質があり、この性質は、脱油効果として利用することができる。
このような特性を有する過熱蒸気による調理は、食材の水分を取り過ぎず表面の硬化を防ぎ(例えば、歩留まり85%以上)、素材の旨味を引き出すことができる。そして、この過熱蒸気の焼成は、骨を軟化させた魚類加工品の焼成において特に適している。具体的には、過熱蒸気の焼成は、骨を軟化させた魚類加工品の美味しさをさらに増し、身質も柔らかく仕上げることができる。その理由としては、低酸素状態(焼成室77内にろうそくの火を入れると火が消えるくらいに実質的に無酸素状態にすることも可能である)での焼成で魚類の油脂成分が酸化しないので、油臭さがないことが挙げられる。また、魚の温度の上昇温度が早いために良好な焼成が実現されているとともに、混練時の調味料が気体蒸気の粒子と絡んで魚類の身に浸透しやすく旨味が増すことも挙げられる。さらに、焼成室77の内部は、過熱蒸気の存在に起因して遠赤外線が発生しており、それによっても加熱の効果を高めている。加えて、過熱蒸気の押ボタンスイッチ温度が300℃〜350℃またはそれ以上の場合、魚類の油脂の沸点200℃を遙かにオーバーする温度で加熱することができ、そのことも美味しさの原因の一つとなっている。
また、本実施形態の高温蒸気焼成機70は、例えば300℃〜400℃またはそれ以上(例えば、550℃)の過熱蒸気を発生させることができるのにもかかわらず、実質的に1気圧の内部圧力で動作を行っている。具体的には、せいぜい1.2気圧またはそれ以下の内部圧力で動作をしている。なお、ボイラーを用いて、300℃〜400℃またはそれ以上の高温加熱を行おうとすれば、当然、数気圧以上の動作圧力が要求されることになる。
高温蒸気焼成機70が実質的に1気圧での動作を行うことができるのは、微圧蒸気である湯気を加熱して、高温の過熱蒸気を発生することができるからによる。技術常識に従えば、高温の気体を発生させるには高圧が必須となるが、例えば高温高圧のボイラー蒸気を加熱する場合、ボイラー蒸気の流速が速いために実際には上手く加熱することが難しいか、加熱することができるとしても膨大なエネルギーを要し非効率となる。一方、本実施形態の構成では、上述したように、微圧蒸気である湯気は配管経路をゆっくり漂うので、その間、電熱ヒータで加熱することができ、大気圧で高温(例えば300℃以上)の過熱蒸気を生成させることができる。
本実施形態の高温蒸気焼成機70では、開放型の焼成室77であっても、過熱蒸気の温度を300℃〜400℃(典型的な一例は、400℃±10℃)、あるいは300℃〜550℃(典型的な一例は、450℃±10℃)に設定すれば、例えば、未解凍の冷凍魚(冷凍サバなど)を数分で、解凍だけでなく焼き工程も完了させることができるレベルにすることができる。したがって、すでに加熱して混練した魚類65を焼成する場合、過熱蒸気75によって良好に焼成することができる。
なお、噴出しパイプ74から噴出させる過熱蒸気75の温度は、180℃以上であることが好ましい。これは、湯気(飽和蒸気)を加熱してなる過熱蒸気は、180℃前後でその性質が変化し、食材などの加熱処理に適したものになるからである。さらに説明すると、飽和蒸気を加熱した過熱蒸気は、非常に軽く、囲われた空間内の隅々まで充満しやすく、その体積膨張率が高く、含有酸素量も少なく、熱伝達速度も速くなるという特長を有しており、このような過熱蒸気を用いて食材を加熱した場合には、食材の表層部を焦がすことができ、外層部に浸透して、食材の内部温度を上げ、表層部の水分のみを最も多く蒸発させることができるので、表面がこんがりとして内部がジューシーな焼き上がりを実現することができる。過熱蒸気は、わずかな熱量の変化で急速に温度変化するという性質を持っているので、120℃程度の比較的不安定な過熱蒸気よりも、180℃以上の過熱蒸気を発生させて、焼成室77の内部に導入することが、食品の加熱処理においては好ましい。
図3に示した例では、噴出しパイプ74を焼成室77の上方から挿入した例を示したが、それに限らない。例えば、噴出しパイプ74を焼成室77の側方(左または右、あるいは両方)から導入して、噴出しパイプ74の噴出し口76をベルトコンベア85の上方に位置するようにしても構わない。噴出しパイプ74の本数も配置も特に限定されず、焼成の条件に応じて適宜好適なものを採用したらよい。また、噴出しパイプ74およびその噴出し口76を、ベルトコンベア85の上方と下方に配置して、両面焼きの構成にすることも可能である。また、噴出しパイプ74と、最後の加熱装置(電熱ヒータ)72との距離を小さくしておけば、過熱蒸気の温度の低下を抑えながら、魚類(食品)65に過熱蒸気75を吹き付けることができる。
図3に示した湯気発生装置80は、一定の量の水(または液体)を加熱装置(例えば、ボイラー、電熱ヒータ、高周波加熱装置など)で加熱して、そこで湯気を発生させる方式を採用することができる。さらに好ましい形態としては、湯気発生装置80において安定して湯気(微圧蒸気)を発生させるには、湯気発生装置80内の水位(液面)を一定に揃えておくことが、制御し易くて好ましい。そのような湯気発生装置80を図5に示す。
図5に示した湯気発生装置80は、液体97が蓄えられる貯水タンク96と、貯水タンク96から供給される液体97を加熱することによって湯気93を発生させる湯気発生部(熱交換器)90とから構成されている。貯水タンク96と湯気発生部90とは連通管95を通して接続されている。ここで、連通管95を通して接続されていることにより、大気圧を利用して(パスカルの原理により)、貯水タンク96における液体97の水位WL1と、湯気発生部90における液体97の水位WL2とは互いに一致する。
さらに説明すると、図示した湯気発生部90は、図2に示したような熱交換器であり、互いに独立する液体経路91および蒸気経路92を有している。この熱交換器(湯気発生部)90では、液体経路91を流動する液体と蒸気経路92を流動する加熱用蒸気との間で熱交換が行われる。熱交換器90の蒸気経路92には、ボイラー94からの高圧蒸気(ボイラー蒸気)が導入される。一方、熱交換器90の液体経路91は、連通管95を通して開放貯水タンク96に接続されている。開放貯水タンク96は、水位を示す水位表示器(例えば、浮き球)96aが設けられている。また、開放貯水タンク96には、液体(水)を供給するための配管(例えば、水道管)98が接続されている。上述したように、貯水タンク96と液体経路91とは連通管95によって接続されているので、貯水タンク96の水位(WL1)と液体経路91の水位(WL2)が一致している。したがって、本実施形態の構成によれば、大気圧を利用して簡便に水位(液面レベル)WL2の制御を行うことが可能となる。
また、図1に示した構成において、本実施形態の加熱装置100における湯気発生装置10を構成する熱交換器90が図5に示すような構造を有する場合、湯気発生装置10は、図6に示すような構造となり得る。ここでは、加熱釜50に存在する液体(水)の水位(WL1)と、熱交換器90の液体経路91内の水位(WL2)とを一致させることができ、湯気発生装置10において安定して湯気(微圧蒸気)を発生させることができ、制御を容易にする。なお、ここでも連通管14を用いたパスカルの原理によって、両者の水位(WL1、WL2)は一致するが、大気圧ではなく、加熱釜50、熱交換器90を含む密閉空間内の圧力によって両者の水位(WL1、WL2)は一致するものである。
図3に示した魚類加工品の製造システム200によって製造された魚類加工品(骨まで食べられる魚類加工品)は、焼成後において冷却され(自然冷却または強制冷却)、容器内に詰められて包装される。その後、必要に応じて、その製品(魚類加工品)は凍結保存(例えば、真空パックでの凍結保存)されて輸送・販売されることになる。実際に、本実施形態の魚類加工品を食する時には、冷凍されたものを解凍して(例えば、自然解凍または電子レンジ解凍して)、食べればよい。
本実施形態の魚類加工品の利用用途としては、おにぎりの具材、サンドイッチの具、魚混ぜご飯、サラダのトッピング、パスタ等の具材として幅広い用途で使用することができる。魚類の骨を食することにより、カルシウムの取得が骨なしのものと比較して、10倍摂取することができ、健康食品としても最適である。さらに、魚を丸ごと骨まで処理したラウンド魚として製品を提供することも可能であるし、骨を軟化させて原体を保ったIQF(Individual Quick Frozen(個別急速冷凍))として、その後煮魚調味を施して食することも可能である。あるいは、切り身を天ぷらの形態で提供することもできる。なお、天ぷらは、油に漬けて揚げるのではなく、表面に油を塗って過熱蒸気を用いた高温蒸気焼成機70によって作ることが可能である。また、焼き魚・煮魚などの形状を残した形で魚類加工品を提供することができる。魚類の形状を残して魚類加工品にする場合には、混練機60の混練工程を行わずに、加熱装置100の加熱釜50による加熱工程だけ(あるいは、それに加えて高温蒸気焼成機70の焼成工程)で構わない。
本発明の実施形態の魚類加工品の製造方法は、骨を有する魚類を加熱釜50で加熱する工程を実行する。さらには、本実施形態では、加熱釜50で加熱された魚類を混練する工程と、混練された魚類を、高温蒸気焼成機70で焼成する工程を実行する。加熱する工程においては、湯気発生装置10を構成する熱交換器90の液体経路91の上端91aと下端91bとをそれぞれ配管(12、14)を通じて加熱釜50に接続し、熱交換器90と加熱釜50との間で湯気15を循環させることによって加熱釜50の内部を加圧状態にすることができる。したがって、熱交換器90と加熱釜50との間で湯気を循環させながら連続して加熱釜50に導入することにより、加熱釜50に配置された魚類を徐々に加圧しながら加熱することが可能となり、その結果、当該加熱する工程において、魚類の骨を軟化状態にすることができる。
本実施形態の加熱装置100では、特許文献1のように減圧工程を行う必要がないので、大きなエネルギー損失を抑制することができる。また、加圧加熱工程においても、加圧用の空気を導入する必要がなく、効率的に加圧可能な加熱釜にて加熱する工程を実行することが可能である。また、加熱する工程では高温高圧のボイラー蒸気は加熱釜に入らないので、加熱釜の中にボイラー臭がすることもなく、レトルトパウチのにおいがつくこともないという利点がある。
そして、魚類の骨を軟化状態にしたもの(魚肉)を混練して、高温蒸気焼成機70で焼成することにより、魚類における骨やヒレ、頭などを廃棄することなく利用することが可能である。上述したように、骨を取り除いた魚類食品と、骨まで食べられる魚類食品とで、カルシウム成分を比較すると約10倍の差がある。したがって、本実施形態の手法によれば、廃棄物を減らすことができるため原料コスト減になるとともに、環境にも優しく、そして、カルシウム摂取の点からは健康にも良い。加えて、混練した魚類を高温蒸気焼成機70で焼成することにより、美味しさがさらに増す。バーナーの焼成と比較すると、高温蒸気焼成機で焼成(例えば、300℃またはそれ以上)では、無酸素状態での焼成となるので、魚の脂成分が酸化しないので脂臭さがない。さらには、高温蒸気焼成機での焼成では、魚の温度上昇が早い、調味料が気体蒸気の粒子と絡んで魚の身に浸透しやすく旨味が増すという効果も得られる。
また、加熱装置100の湯気の元となる液体としては、水だけでなく、他のものを用いることもでき、例えば、調味料を添加した液体から生じる湯気(蒸気)を用いて、それにて、加熱釜50内の食材を調理することも可能である。
なお、加熱装置100における加熱釜50の加熱処理は、骨を有する魚類の加熱に適しているが、そのような魚類とともに、骨のない水産加工品(及び/又は食品)に対して実行することも当然できるものである。さらには、簡便な加圧加熱の処理方法としては、魚類に限らず、広く食品全般に使用することができるものであり、本実施形態の加熱装置100(または加熱釜50)の適用用途は広いものである。
図7から図10は、魚類(アジ)を用いた本実施形態の魚類加工品を説明するための図面代用写真である。
図7は、本実施形態の加熱装置100における加熱釜50で加熱された直後の魚類の様子を示している。この時点で、魚類の骨は軟化しており、骨まで食することができる。魚類の形を利用した魚類加工品の場合、この状態で製品(骨まで食べられる魚)を提供することができる。
図8は、混練機(ニーダ)60によって混練した様子を示している。加熱釜50の加熱によって骨(頭なども)が軟化しているため、混練機60によって、全体がフレーク状の魚類材料にすることができる。
図9は、高温蒸気焼成機70の焼成機77を通過して焼成された後の魚類加工品の様子を示している。全体的に均一に焼成が行われ、焼きムラが少なく、表面には美味しそうに焼けた色も表れている。冷凍保存するのでなければ、この時点で、商品として食することができる。
図10は、焼成後の魚類加工品をパック(容器)に詰めて包装(真空パック)したものである。この状態で冷凍保存すれば、骨まで食べられる魚類加工品を簡便に輸送・販売することができる。そして、使用する場合、このパックから取り出して、適宜必要な用途に用いることができる。
本実施形態の製品(魚類加工品)の一般評価としてモニタリングを実施したところ、10人中10人が絶品評価であり、この製品の美味しさも証明された。
また、本実施形態の加熱装置100は、加圧状態で加熱することができるので、レトルト殺菌装置として使用することが可能である。なお、本実施形態の加熱装置100をレトルト殺菌装置として使用した場合には、加熱炉50内の部分温度(右、左)のバラツキが極めて少ないため、食品(レトルト食品)の芯温のバラツキも極めて少なく、そして、炉内温度の上昇にあわせて滑らかに芯温が上昇していくので、非常に適切な加熱処理を行うことができ、それによって、通常のレトルト食品と比べて、美味しい食品加工(加熱処理)を達成することができる。
なお、本実施形態のレトルト食品は、加圧加熱殺菌を行う食品を意味し、レトルトパウチ包装の食品の他、缶詰、瓶詰めの食品も包含するものとする。また、レトルト食品の内容物としては、魚、肉、野菜、根菜、果物、その他、レトルト製法に適した食物全般を挙げることができる。また、本実施形態のレトルト食品は、人間用の食品に限らず、ペット用の食品、または、アニマルレトルトフードであってもよい。また、レトルト食品を作る際のレトルト殺菌(加圧加熱)は、加熱殺菌処理するものに限らず、レトルト殺菌(加圧加熱)にて食品を軟化処理する目的でも用いられる。さらに、代表的なレトルト食品としては、例えば、カレー(レトルトカレー)、シチュー、スープ、粥(かゆ)、パスタソース、丼物の具、米飯(レトルト米飯)、ハンバーグ、ミートボールなどを挙げることできる。
また、レトルト処理(レトルト殺菌)は、原則として、容器内部の食品中央部において120℃で4分間、またはそれと同等の熱がかかる状態に加圧加熱して殺菌するものである(なお、内容物によっては温度・時間は調整され得る)。そして、この処理によって、芽胞菌の死滅を行うことができ、そして、一般的な食中毒細菌の中で最も耐熱性の高いボツリヌス菌を殺菌できるとされている。食品業界内では、殺菌効力を表す数値はF値(120℃1分で、F値=1)で、通常、F値が5〜10程度の殺菌を行う。
本実施形態の加熱装置100においては、湯気発生装置10(熱交換器90)から、例えば0.11MPaAまたは0.12MPaAの湯気15を連続して導入することにより、加熱釜50の内部55を、例えば、0.15MPaA〜0.25MPaA(一例では、0.15MPaA(111℃)、0.20MPaA(120℃)、0.30MPaA(133℃)の設定)にすることができる。上述したように、加熱釜50を微圧の蒸気で、それよりも高い圧力に加圧することができるポイントは、パスカルの原理を利用していることにある。さらに説明すると、熱交換器90から発生する蒸気(湯気)が微圧であっても、風船やタイヤのような密閉空間に連続して気体を供給することにより、その密閉空間を加圧状態にすることができ、かつ、その圧力が全体で同期することで徐々に昇圧し、結果として、導入する蒸気(湯気)よりも高い圧力を達成させることができる。すなわち、密閉構造においてはパスカルの原理が働いているので、微圧の湯気の導入で加熱釜50の内部圧力が少し高くなると、それと同じ圧力が熱交換器90にも生じ、その結果、微圧の湯気を徐々に導入していくと、熱交換器90の内部の圧力も、加熱釜50(および液体容器20)の内部の圧力とともに上昇していく。そして、結果として、熱交換器90から生じる湯気の圧力が約0.15MPaA程度以下(例えば、1気圧を越えて0.15MPaAくらいまで)であっても、加熱釜50の内部圧力をそれよりも高い加圧状態にすることができる。
また、本実施形態の加熱装置100は、上述した魚または魚加工品、レトルト食品に限らず、他の食品の加工にも用いることができる。そのような食品としては、冷凍食品(冷凍魚、冷凍肉、冷凍野菜など)、冷蔵食品、調味食品、乾燥食品、その他、蒸し工程に適した食品全般を挙げることができる。また、本実施形態の加熱装置100を用いて加熱処理されるものとしては、炊飯、野菜、根菜、魚(上述したものを含めて種々の魚類)、肉(ハムなどの加工食品も含む)、パン、茶、コーヒー、佃煮などを挙げることができる。さらに、本実施形態の構成において、液面WL(WL1、WL2)の位置を変更すれば、熱水によるボイル工程(煮る、茹でる)を実行することも可能である。
なお、本実施形態の加熱装置100は、図11に示すような構造にすることも可能である。図11に示した構成では、加熱釜50の上部に空気抜け弁25が設けられている。本実施形態の空気抜け弁25は、加熱釜50の内部の加圧を保持しながら空気(及び/又は内部蒸気)を適切に排出できる弁(エアベント)のものであればその構造・種類は特に問わないが、例えば、装置(釜)内の空気を抜くための空気抜け弁25としては、自動式のもの(自動エアベント)が好ましく、例えば、蒸気配管・装置の空気抜き用エアベント(サーモスタティック・スチームトラップの技術が使用された空気抜け弁など)を使用することができる。なお、手動にて空気(及び/又は内部蒸気)を排気できる装置を設けても構わない。本実施形態では、加熱釜50の内部55をより積極的に高精度に制御する上で、電磁式の逃がしバルブを設けて、内部圧力を調整できるようにすることもできる。また、図11に示した例では、加熱釜50の最頂部に空気抜け弁25を設けているが、必ずしも最も高い位置でなく、上部であれば特に問題ない。
図11に示した構造において空気抜け弁25(この例では複数個)を加熱釜50の上部に設けると、次のような効果を得ることができる。加熱釜50の内部55の空気を外部に出す空気抜け弁25を加熱釜50の上部に設けた構成において、湯気噴出部52を加熱釜50の内部55に配置すると、水蒸気からなる湯気53は空気よりも比重が重いので、湯気53の導入当初は、湯気53は、加熱釜50の内部55の下部に移動する。そして、その湯気53の導入の反動によって、加熱釜50の内部55に当初存在していた空気は、加熱釜50の例えば上部に設けられた空気抜け弁から抜けていく。次いで、湯気53が導入されていくに従って、湯気53は、湯気濃度としてみると相対的に加熱釜50の下部の方から上部の方へと充填されていき、湯気53の導入に伴って加熱釜50内の空気は空気抜け弁から抜けていく。加熱釜50内から空気が自然に抜けていくことにより、真空ポンプを使用しなくても、加熱釜50を実質的に無酸素状態(または、大気圧の酸素濃度よりも低い状態)にすることができる。空気は断熱材としての働きをするため、釜内に空気が存在していると、加熱釜50の内部における加熱ムラ、すなわち、不均一な温度分布が生じるが、本実施形態の構成では、空気を抜くことにより、良好な均一な温度分布を達成して、加熱ムラを防止することができる。なお、加熱釜50に真空ポンプ(減圧ポンプ)を接続して空気を取り除く場合、真空ポンプの使用は、設備コストがかかるだけでなく、ランニングコストが非常に多くかかるものであり、それゆえに、加熱処理コスト(または食品の製造コスト)が大幅に上昇してしまう。
なお、ボイラー蒸気(130℃〜150℃程度)を加熱釜に直接導入する場合には、加熱釜50内の空気を排除したくても、加熱釜50に導入された高温高圧のボイラー蒸気が、加熱釜50の内部をかなり早いスピードで移動しており、加熱釜50の内部を開けるために電磁弁で開放することは危険が伴うとともに、そのような開放を行ったとしても、空気だけを選択して排除することは困難であり、空気とボイラー蒸気の両方が加熱釜50の外部にでることになる。また、空気の体積膨張によって内部圧力が一気に高くなるので、ボイラー蒸気が入りにくいという問題もある。さらに、仮に加熱釜50に空気抜け弁を設けたとしても、ボイラー蒸気は加熱釜50内部を高速で拡散しながら移動して空気と混じるために、ボイラー蒸気の導入時に空気だけが優先して排除されるようにならない。それゆえに、ボイラー蒸気を加熱釜に直接導入する方式では、適切な加熱制御を確保するために、ボイラー蒸気の導入前に、真空ポンプによって空気を抜く作業をする必要がある。真空ポンプを用いるのには設備コストおよびエネルギーコストが必要であり、また、真空ポンプで真空にして、ボイラー蒸気で加圧して、さらに、取り出すときには常圧に戻して、そして次の加熱ではまた真空ポンプで真空にする、との工程を繰り返すのは、非常にエネルギーロスが大きい。この点、本実施形態の構成では、そのようなエネルギー効率の悪さを解消することができる。なお、本実施形態の加熱釜50に取り付けられる空気抜け弁25は、加熱釜50の内外の圧力差によって自然に空気を排除できる構造のものである場合には、自然と空気が抜けていくので便利である。
また、図11では、加熱釜50の上部(特に、頭頂部)には、安全弁61も設けられている。安全弁61は、密閉した容器において、内圧が上がった状態で加熱した場合において内圧が上がりすぎた場合に容器が破損するのを防止する弁であり、これにより、容器の内圧が上がり過ぎないようにできる。本実施形態の加熱装置100では、微圧蒸気の湯気53を使用するので、加熱釜50が破損する程に内圧が上がる危険性は極めて低いが、安全のために安全弁61(この例では複数個)を設けている。
さらに、図11に示した構造では、加熱釜50の下部には、排出配管27が接続されている。本実施形態の排出配管27は、加熱釜50の底部に溜まった液体(ドリップ水、蒸気が劣化した水、被加熱製品から生じた液体などを含む)を排出することができ、その排出配管27の開閉は、変動バルブ28aによって行うことができる。排出配管27は、液体を外部に排出するドレイン配管29に接続されている。また、本実施形態の排出配管27(および変動バルブ28)を用いて、加熱釜50の内部の気体(空気及び/又は蒸気)を外部に排出することも可能である。そして、排出配管27および変動バルブ28によって、加熱釜50の内部圧力を調整することができる。加えて、湯気の導入時に排出配管27を開放しておき、湯気の導入の流れにあわせて空気を排出させることもできる。
図11に示した構成では、加熱釜50の内部には、各種センサ(温度センサ、圧力センサなど)が配置されており、それらのセンサは、加熱装置100の運転を制御する制御装置(制御板)に接続されている。そして、この制御装置を用いて、加熱釜50の上部、下部または上下の両方に設置した電動比例式弁による内部圧力調整を実行するとともに、熱交換器90に取り入れるボイラー蒸気をコントロールして、加熱釜50の内部温度と内部圧力を調整することができる。なお、比例式弁(比例制御弁、または、電磁式比例制御弁)とは、オンオフの弁の開閉制御だけでなく、流体を比例的に制御することができるものであり、比例式弁(比例制御弁)への制御信号を変化させることで、流れる流体の流量を、 最大流量に対して0〜100%の範囲で連続的に制御することができるものである。
加えて、加熱釜50の底部(内部底面)の形状は、図1または図11に示すように平面の場合の他、一部に凹部を設けてその凹部に液体が溜まるような構成にしてもよい。また逆に、加熱釜50の底部(内部底面)に部材(凸部材、板状部材)を配置して、その部材の溝部に液体が溜まるような構成にすることができる。そして、その凹部(溝部)の部位に連通管14を接続すれば、凹部(溝部)に溜まった液体の液面WL2は、パスカルの法則により、熱交換器90の液面WL1と同じになる。
以上、本発明を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、勿論、種々の改変が可能である。例えば、上述した各図面の装置における特徴は、適宜好適な組み合わせを行うことができるとともに、各図に示された構造の装置だけを開示するものではない。例えば、図1または図11に示した構成において、湯気噴出部52を下部(または中央部)だけに設けることも可能である。また、図11に示した構成おいて、空気抜け弁26および排出配管27の何れか一方だけを設けることも可能である。また、湯気供給管12の一部に、図3に示した加熱装置72(例えば、電熱ヒータ)を設けて、湯気供給管12内を通過する湯気を加熱することも可能である。
本発明によれば、エネルギー効率の良い魚類加工品の製造方法および加熱装置を提供することができる。
10 湯気発生装置
12 湯気供給管
14 連通管
15 湯気
22 ボイラー配管
24 排気スチーム配管
25 空気抜け弁
26 安全弁
27 排出配管
28 変動バルブ
29 ドレイン配管
50 加熱釜
51 本体部
52 湯気噴出部
54 湯気導入管
55 加熱釜の内部
57 扉
56 噴出孔
58 載置板
60 混練機
61 湯気
62 過熱蒸気
65 被加熱物(混練後の魚類)
70 高温蒸気焼成機
72 加熱装置(電熱ヒータ)
74 噴出しパイプ
75 過熱蒸気
76 噴出し口
77 焼成室
80 湯気発生装置
81 湯気供給配管
82 蒸気配管
85 ベルトコンベア
90 熱交換器(湯気発生部)
91 液体経路
92 蒸気経路
93 外殻体
94 ボイラー
95 連通管
96 貯水タンク(開放貯水タンク)
97 液体
100 加熱装置
200 製造装置(製造システム)

Claims (13)

  1. 魚類加工品の製造方法であって、
    骨を有する魚類を加熱釜で加熱する工程を含み、
    前記加熱釜は、湯気を発生させる湯気発生装置に接続されており、
    前記湯気発生装置は、互いに独立する液体経路および蒸気経路を有し、前記液体経路を流動する液体と前記蒸気経路を流動する加熱用蒸気との間で熱交換が行われる熱交換器から構成されており、
    前記熱交換器の前記蒸気経路には、ボイラーからの高圧蒸気が導入され、
    前記熱交換器の前記液体経路の上端は、湯気供給配管を通じて、前記加熱釜の内部に配置された湯気噴出部に接続されており、
    前記熱交換器の前記液体経路の下端は、連通管を通して前記加熱釜に接続されている、魚類加工品の製造方法。
  2. 前記加熱釜で加熱する工程においては、前記熱交換器と前記加熱釜との間で前記湯気を循環させることによって前記加熱釜の内部が加圧状態になる、請求項1に記載の魚類加工品の製造方法。
  3. 前記加熱釜で加熱する工程において、前記魚類の骨が軟化状態になる、請求項1または2に記載の魚類加工品の製造方法。
  4. 前記加熱釜で加熱する工程の後、前記加熱釜で加熱された前記魚類を混練する工程と、前記混練された魚類を、高温蒸気焼成機で焼成する工程とをさらに含む、請求項1から3の何れか1つに記載の魚類加工品の製造方法。
  5. 前記魚類を混練する工程においては、前記加熱された魚類に調味料が添加され、
    前記高温蒸気焼成機で焼成する工程においては、前記混練された魚類は薄くのばされて焼成される、請求項4に記載の魚類加工品の製造方法。
  6. 前記高温蒸気焼成機は、
    湯気を発生させる第2湯気発生装置と、
    前記湯気を加熱して過熱蒸気を生成する加熱装置と、
    前記過熱蒸気によって前記混練された魚類が焼成される焼成室と
    を備え、
    前記焼成室の内部には、前記過熱蒸気を噴出する噴出しパイプが配置されている、請求項4または5に記載の魚類加工品の製造方法。
  7. 前記高温蒸気焼成機は、さらに、前記焼成室の内部を通過するベルトコンベアを備え、
    前記焼成室は、前記ベルトコンベアの入口と出口の部分が開口した開放空間になっており、
    前記噴出しパイプの噴出し口は、前記ベルトコンベアの上方に位置している、請求項6に記載の魚類加工品の製造方法。
  8. 湯気を用いた加熱装置であって、
    被加熱物が内部に配置される加熱釜と、
    湯気を発生させる湯気発生装置と
    を備え、
    前記加熱釜は、前記湯気発生装置に接続されており、
    前記湯気発生装置は、互いに独立する液体経路および蒸気経路を有し、前記液体経路を流動する液体と前記蒸気経路を流動する加熱用蒸気との間で熱交換が行われる熱交換器から構成されており、
    前記熱交換器の前記蒸気経路には、ボイラーからの高圧蒸気が導入され、
    前記熱交換器の前記液体経路の上端は、湯気供給配管を通じて、前記加熱釜の内部に配置された湯気噴出部に接続されており、
    前記熱交換器の前記液体経路の下端は、連通管を通して前記加熱釜に接続されている、加熱装置。
  9. 前記加熱装置は、前記熱交換器と前記加熱釜との間で前記湯気を循環させることによって前記加熱釜の内部が加圧状態になる、請求項8に記載の加熱装置。
  10. 前記加熱釜の内部の下部には、液体が蓄えられ、
    前記加熱釜における前記液体の水位と、前記熱交換器における前記液体経路の前記液体の水位とは互いに一致している、請求項8または9に記載の加熱装置。
  11. 前記加熱釜は、円筒形状の本体部を有しており、
    前記加熱釜の前記本体部における前方開口部および後方開口部のそれぞれに開閉可能な扉が設けられている、請求項8から10の何れか1つに記載の加熱装置。
  12. 前記湯気発生装置で発生した前記湯気は、0.12MPaA以下の微圧力を有する飽和水蒸気である、請求項8から1の何れか一つに記載の加熱装置。
  13. 前記被加熱物は、魚類である、請求項8から12の何れか1つに記載の加熱装置。
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