以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
先ず、図1〜図3には、本発明に従う構造とされた流体封入式防振装置の第一の実施形態として、自動車用エンジンマウント10が示されている。エンジンマウント10は、第一の取付部材としての第一の取付金具12と、第二の取付部材としての第二の取付金具14を、本体ゴム弾性体16によって相互に連結した構造を有している。そして、第一の取付金具12が図示しないパワーユニット側に取り付けられると共に、第二の取付金具14が図示しない車両ボデー側に取り付けられることにより、パワーユニットと車両ボデーがエンジンマウント10によって防振連結されるようになっている。
より詳細には、第一の取付金具12は、小径の略円形ブロック形状を有しており、上部が軸方向上方に向かって次第に縮径するテーパ形状とされていると共に、下部が軸方向下方に向かって次第に縮径するテーパ形状とされている。また、第一の取付金具12の軸方向中間部分には、全周に亘って外周側に突出するフランジ部18が一体形成されている。更に、第一の取付金具12の径方向中央部には、中心軸上を延びて上端面に開口するボルト穴20が形成されており、ボルト穴20に螺着される図示しない取付ボルトによって、第一の取付金具12がパワーユニット側に固定されるようになっている。
また、第二の取付金具14は、薄肉大径の略円筒形状を有しており、その上部には軸方向上方に向かって次第に大径となるテーパ筒部22が設けられている。また、第二の取付金具14の下端部には、軸方向外側に向かって広がる段差の外周縁部から下方に向かって突出する筒状のかしめ片24が一体形成されている。更に、第二の取付金具14の軸方向下方には、ブラケット26が配設されて、かしめ片24で固定されている。このブラケット26は、略有底円筒形状を有していると共に、軸方向上側の開口周縁部に外周側に向かって突出するフランジ状の支持片30が一体形成されており、支持片30がかしめ片24で支持されることにより、ブラケット26が第二の取付金具14に固定されている。更に、ブラケット26には、複数の取付脚部32が外周面に取り付けられており、取付脚部32がボルト等によって車両ボデー側に固定されることにより、第二の取付金具14がブラケット26を介して車両ボデーに固定されるようになっている。
それら第一の取付金具12と第二の取付金具14は、同一中心軸上に配置されており、第一の取付金具12が第二の取付金具14の上側開口部よりも上方に離隔配置されている。そして、第一の取付金具12と第二の取付金具14の間には、本体ゴム弾性体16が介装されて、それら第一の取付金具12と第二の取付金具14が弾性的に連結されている。本体ゴム弾性体16は、略円錐台形状を有しており、その小径側端部に第一の取付金具12が下部を埋め込まれた状態で加硫接着されていると共に、大径側端部外周面に第二の取付金具14のテーパ筒部22が重ね合わされて加硫接着されている。また、本体ゴム弾性体16の大径側である下側の端部には、下端面に開口する逆向きすり鉢状の大径凹所34が形成されている。また、大径凹所34の開口周縁部には、薄肉の円筒形状を有するシールゴム層36が本体ゴム弾性体16と一体形成されており、軸方向下方に向かって延び出して、第二の取付金具14の内周面に加硫接着されている。また、本体ゴム弾性体16の上端部には、環状のストッパゴム38が一体形成されて、第一の取付金具12のフランジ部18の外周面および上面を覆うように固着されている。なお、本実施形態では、本体ゴム弾性体16が、第一の取付金具12と第二の取付金具14を備えた一体加硫成形品として形成されている。
また、第二の取付金具14の下端部には、可撓性膜としてのダイヤフラム40が配設されている。ダイヤフラム40は、略円板形状を有する薄肉のゴム膜であって、軸方向に充分な弛みを有している。また、ダイヤフラム40の外周縁部には、環状の固着ゴム42が一体形成されており、固着ゴム42に対して環状の固定金具44が加硫接着されている。そして、固定金具44が第二の取付金具14の下側開口部に挿し入れられて、かしめ片24で固定されることにより、ダイヤフラム40が第二の取付金具14の下側開口部に配設されている。なお、ダイヤフラム40は、固定金具44を備えた一体加硫成形品として形成されている。
かくの如きダイヤフラム40の装着下、第二の取付金具14の上側開口部が本体ゴム弾性体16によって閉塞されていると共に、第二の取付金具14の下側開口部がダイヤフラム40によって閉塞されている。これらにより、第二の取付金具14の内周側には、非圧縮性流体を封入された流体室46が形成されている。なお、流体室46に封入される非圧縮性流体は、特に限定されるものではないが、水やアルキレングリコール、ポリアルキレングリコール、シリコーン油やそれらの混合液等が好適に採用される。また、後述する流体の流動作用に基づく防振効果を有利に得るためには、0.1Pa・s以下の低粘性流体を採用することが望ましい。
また、流体室46には、仕切部材48が配設されている。仕切部材48は、全体として厚肉の略円板形状を有しており、第二の取付金具14によって支持されている。更に、仕切部材48は、外側オリフィス部材としての第一のオリフィス形成部材50と内側オリフィス部材としての第二のオリフィス形成部材52を含んで構成されている。
第一のオリフィス形成部材50は、全体として逆向きの略有底円筒形状とされて、その周壁部が円筒形状の筒状部とされている。本実施形態では、第一のオリフィス形成部材50における筒状部の軸方向中間部分において内周面に段差が形成されており、後述する平衡室70の容積が有利に確保されるようになっている。また、第一のオリフィス形成部材50の筒状部には、軸方向に傾斜しながら周方向に一周程度の長さで延びる螺旋状の周溝58が、外周面に開口するように形成されている。
また、第一のオリフィス形成部材50の径方向中央部分には、上底壁部から下方に向かって突出する小径円筒形状の支持筒部54が一体形成されている。更に、支持筒部54には、筒状の案内スリーブ56が挿し込まれて固定されている。この案内スリーブ56は、自己潤滑性を有する合成樹脂で形成されたり、グリースを塗布されることにより、内周面の摩擦係数が充分に小さくされている。
さらに、第一のオリフィス形成部材50の上底壁部には、周方向に離隔する複数の透孔60が、支持筒部54よりも外周側を軸方向に貫通して形成されている。また、本実施形態において、それら複数の透孔60には、それぞれ流量制限手段としての第一の可動ゴム膜62が配設されている。この第一の可動ゴム膜62は、透孔60に対応する平面形状を有する板状のゴム弾性体であって、その外周面が全周に亘って第一のオリフィス形成部材50に加硫接着されている。これにより、透孔60は、それぞれ第一の可動ゴム膜62によって閉塞されている。
第二のオリフィス形成部材52は、小径の略有底円筒形状を有しており、周壁部が底壁部よりも厚肉とされている。また、第二のオリフィス形成部材52の径方向中央部には、底壁部から上方に向かって突出する略円柱形状のガイド突部としての案内突部64が一体形成されている。この案内突部64は、第一のオリフィス形成部材50に固定される案内スリーブ56の内径と略等しい外径を有している。また、第二のオリフィス形成部材52には、軸方向に傾斜しながら周方向に延びる螺旋状とされたオリフィス形成用窓としてのオリフィス形成用溝66が、外周面に開口するように形成されている。なお、本実施形態では、オリフィス形成用溝66が周方向に一周程度の長さで形成されている。
そして、第一のオリフィス形成部材50における筒状部の中央孔に対して、第二のオリフィス形成部材52が嵌め入れられて、軸方向で相対変位可能に配置されることにより、仕切部材48が構成されている。また、本実施形態では、第一のオリフィス形成部材50に装着された案内スリーブ56に対して、第二のオリフィス形成部材52に一体形成された案内突部64が挿し入れられることにより、第二のオリフィス形成部材52の上側に軸方向ガイド手段が設けられている。これにより、案内スリーブ56の内周面と案内突部64の外周面との摺接を利用して、第一のオリフィス形成部材50と第二のオリフィス形成部材52の軸方向への相対変位が許容されていると共に、軸直角方向への相対変位が制限されて相対的に位置決めされている。
かくの如き構造とされた仕切部材48は、第一のオリフィス形成部材50が第二の取付金具14の軸方向中間部分に嵌め込まれて外周面を支持されることにより、第二の取付金具14によって支持されている。そして、仕切部材48は、流体室46内で軸直角方向に広がるように配設されており、流体室46が仕切部材48を挟んだ軸方向両側に二分されている。即ち、仕切部材48を挟んで軸方向上側には、壁部の一部を本体ゴム弾性体16で構成されて、振動入力時に内圧変動を及ぼされる受圧室68が形成されている。一方、仕切部材48を挟んで軸方向下側には、壁部の一部をダイヤフラム40で構成されて、ダイヤフラム40の可撓性によって容積変化を容易に許容される平衡室70が形成されている。なお、受圧室68と平衡室70には、流体室46に封入された非圧縮性流体が封入されている。
また、第一のオリフィス形成部材50の外周面が、シールゴム層36を介して第二の取付金具14の内周面に重ね合わされることにより、周溝58の外周側開口部が第二の取付金具14によって流体密に覆蓋されている。また、周溝58の長さ方向一方の端部が連通孔72を通じて受圧室68に接続されていると共に、他方の端部が連通孔74を通じて平衡室70に接続されている。これらによって、周方向に所定の長さで延びて、受圧室68と平衡室70を相互に連通する流体通路としての第一のオリフィス通路76が、周溝58を利用して形成されている。なお、第一のオリフィス通路76は、受圧室68と平衡室70の壁ばね剛性を考慮しつつ、通路断面積(A)と通路長(L)の比(A/L)を調節することによって、エンジンシェイクに相当する低周波数にチューニングされている。また、第一のオリフィス通路76は、常時連通状態に保持されている。
また、第二のオリフィス形成部材52の外周面が、第一のオリフィス形成部材50の内周面に重ね合わされることにより、オリフィス形成用溝66の外周側開口部の少なくとも一部が、第一のオリフィス形成部材50によって覆蓋されている。更に、オリフィス形成用溝66の周方向一方の端部が、第二のオリフィス形成部材52の上端面に開口する連通孔78を通じて受圧室68に連通されていると共に、オリフィス形成用溝66の周上の一部が、第一のオリフィス形成部材50を下側に外れて位置することで、平衡室70に連通されるようになっている。これらによって、受圧室68と平衡室70を相互に連通するオリフィス通路としての第二のオリフィス通路80が、オリフィス形成用溝66を利用して形成されている。なお、第二のオリフィス通路80は、第一のオリフィス通路76よりも高周波数にチューニングされており、本実施形態では、アイドリング振動やロックアップこもり音に相当する中乃至高周波数にチューニングされている。
さらに、本実施形態では、第二のオリフィス通路80を通じての流体流路上に第一の可動ゴム膜62が配置されている。即ち、第一の可動ゴム膜62が第二のオリフィス形成部材52よりも受圧室68側において軸直角方向に広がるように配置されており、第二のオリフィス通路80の受圧室68側開口部(連通孔78)が第一の可動ゴム膜62によって覆蓋されている。これにより、第一の可動ゴム膜62の弾性変形が許容された状態において、第一の可動ゴム膜62の液圧伝達作用に基づいて第二のオリフィス通路80を通じての流体流動が生ぜしめられるようになっている。一方、第一の可動ゴム膜62の弾性変形が阻止された拘束状態において、第二のオリフィス通路80の受圧室68側開口部が遮断されて、第二のオリフィス通路80を通じての流体流動が規制されるようになっている。要するに、第二のオリフィス通路80は、第一の可動ゴム膜62によって、連通状態と遮断状態を切り替えられるようになっている。
また、第二のオリフィス形成部材52には、駆動部材82が取り付けられている。駆動部材82は、小径の略円柱形状を有しており、軸方向上方に突出する連結ボルト84が一体的に設けられている。また、駆動部材82の軸方向中間部分には、外周側に突出する環状の固着フランジ86が一体形成されている。そして、連結ボルト84が第二のオリフィス形成部材52の径方向中央部に形成されたねじ穴88に螺着されることにより、駆動部材82が第二のオリフィス形成部材52に固定されて、下面に重ね合わされている。
また、駆動部材82は、ダイヤフラム40の径方向中央部を軸方向貫通するように配置されている。即ち、ダイヤフラム40の径方向中央部に円形の貫通孔が形成されており、その開口周縁部が駆動部材82の固着フランジ86に加硫接着されている。これにより、駆動部材82は、軸方向上部が流体室46内の第二のオリフィス形成部材52に固定されていると共に、軸方向下部が流体室46の外部に露出せしめられている。
また、駆動部材82には、アクチュエータ90が取り付けられている。アクチュエータ90は、ダイヤフラム40を挟んで平衡室70の下方に配置されて、ステッピングモータ(パルスモータ)の回転駆動力を運動変換機構によって軸方向での往復駆動力に変換して出力するようになっており、ステッピングモータ,運動変換機構,歯車列等を含んで構成されている。また、それらステッピングモータ,運動変換機構,歯車列等を収容するハウジング92がブラケット26によって支持されることにより、ブラケット26を介して第二の取付金具14に固定されている。
また、アクチュエータ90は、出力軸94を有している。出力軸94は、マウント中心軸上を延びる小径の略ロッド形状を有しており、上端部が駆動部材82に固定されて駆動軸を構成している。また、図中では必ずしも明らかとなっていないが、出力軸94の下端部には、ステッピングモータの回転駆動力を軸方向での往復駆動力に変換する螺子機構やカム機構等の運動変換機構が設けられている。そして、運動変換機構や適当な歯車列を介してステッピングモータの駆動力が往復駆動力として出力軸94に伝達されるようになっている。
そして、ステッピングモータの駆動力によって、出力軸94が軸方向に往復変位可能とされており、出力軸94に固定された駆動部材82が軸方向に変位せしめられるようになっている。更に、駆動部材82に固定された第二のオリフィス形成部材52が、ステッピングモータの駆動力によって軸方向に変位せしめられるようになっており、ステッピングモータにおける駆動軸の回転量が制御されることによって、第二のオリフィス形成部材52の第一のオリフィス形成部材50に対する軸方向での相対位置が制御されるようになっている。なお、駆動部材82と出力軸94によって本実施形態の駆動軸が形成されている。
そこにおいて、第一のオリフィス形成部材50に対する第二のオリフィス形成部材52の軸方向での相対位置を変化せしめられることにより、第二のオリフィス形成部材52に形成されたオリフィス形成用溝66の第一のオリフィス形成部材50による覆蓋部位が、オリフィス形成用溝66の長さ方向に変化せしめられるようになっている。これにより、第二のオリフィス通路80の通路断面積(A)を一定に保持しながら、第二のオリフィス通路80の通路長(L)が変化せしめられるようになっており、通路断面積と通路長の比(A/L)によって設定される第二のオリフィス通路80のチューニング周波数が、ステッピングモータの制御によって変更設定可能とされている。
このような構造とされた自動車用エンジンマウントの車両装着下、エンジンシェイクに相当する低周波大振幅振動が入力されると、受圧室68と平衡室70の相対的な圧力変動に基づいて、第一のオリフィス通路76を通じての流体流動が生ぜしめられる。そして、第一のオリフィス通路76を通じて流動する流体の共振作用等の流動作用に基づいて、目的とする防振効果(高減衰効果)が発揮されるようになっている。
かかる低周波大振幅振動の入力時には、図1に示されているように、第二のオリフィス形成部材52が変位方向で上端に位置せしめられる。これにより、オリフィス形成用溝66の外周側開口部の全体が第一のオリフィス形成部材50によって覆われて、第二のオリフィス通路80の平衡室70への開口部が遮断されるようになっている。その結果、第二のオリフィス通路80を通じての流体流動によって受圧室68の内圧が逃がされるのを防止して、第一のオリフィス通路76を通じて流動せしめられる流体の量を効率的に確保することが出来る。なお、上記の説明からも明らかなように、本実施形態では、蓋部が、第一のオリフィス形成部材50の周壁部(筒状部)を利用して形成されている。
一方、アイドリング振動に相当する中乃至高周波数の振動入力時には、第二のオリフィス形成部材52が軸方向下方に移動せしめられて、オリフィス形成用溝66の外周側開口部の一部が第一のオリフィス形成部材50を下側に外れて位置せしめられる。これにより、第二のオリフィス通路80の平衡室70側の開口部が連通状態に切り替えられて、受圧室68と平衡室70が第二のオリフィス通路80によって連通される。そして、第二のオリフィス通路80を通じての流体流動が生ぜしめられて、流体の流動作用に基づく防振効果が発揮されるようになっている。特に、エンジンマウント10では、第二のオリフィス通路80の壁部が第一のオリフィス形成部材50と第二のオリフィス形成部材52によって形成されており、第二のオリフィス通路80がトンネル状の通路とされている。それ故、流体の流動時にも、第二のオリフィス通路80の通路形状が安定して維持されて、目的とする防振効果を有効に且つ効率的に得ることが出来る。なお、中乃至高周波数の振動入力時には、第一のオリフィス通路76が反共振的な作用によって遮断されることから、第二のオリフィス通路80を通じての流体流動量が有利に確保されるようになっている。
さらに、本実施形態では、安定走行時にロックアップによるトルク変動に基づいて生じる中乃至高周波振動(ロックアップこもり音)に対しても、有効な防振効果を得ることが出来る。即ち、本実施形態では、第二のオリフィス通路80の受圧室68側開口部を覆うように第一の可動ゴム膜62が配設されている。これにより、第二のオリフィス通路80の平衡室70側開口部が連通状態に保持された状態下、エンジンシェイクに相当する低周波大振幅振動が入力されると、第一の可動ゴム膜62の流量制限作用に基づいて第二のオリフィス通路80が実質的な遮断状態とされる。それ故、図2,図3に示された第二のオリフィス通路80の平衡室70側開口部の連通状態においても、低周波大振幅振動に対する第一のオリフィス通路76による防振効果を有効に得ることが出来る。そこにおいて、自動車の走行状態において、第二のオリフィス通路80の平衡室70側開口部を連通状態に保持することにより、ロックアップこもり音に相当する中乃至高周波振動に対して、第二のオリフィス通路80における流体の流動作用に基づいた防振効果が有効に発揮されて、走行状態においてより優れた防振特性を実現することが出来る。なお、第二のオリフィス通路80のチューニング周波数が、第一のオリフィス通路76のチューニング周波数に対してより高周波側に変化するに従って、第一のオリフィス通路76による防振効果がより有利に発揮されることから、比較的に高周波数の振動であるロックアップこもり音に対する防振効果を有効に得ながら、エンジンシェイクに対する防振効果も充分に得ることが出来る。
また、入力振動の周波数の変化に応じて、第一のオリフィス形成部材50と第二のオリフィス形成部材52との軸方向での相対位置を変化させることにより、第二のオリフィス通路80のチューニング周波数を連続的又は段階的に変更設定することが出来る。例えば、中周波数の振動入力時には、図2に示されているように、第二のオリフィス形成部材52を変位方向の中間に位置させて、第二のオリフィス通路80を連通状態に切り替えると共に、第二のオリフィス通路80の通路長を長く設定することにより、第二のオリフィス通路80のチューニング周波数を中周波数に設定することが出来る。一方、高周波数の振動入力時には、図3に示されているように、第二のオリフィス形成部材52を変位方向の下端に位置させて、第二のオリフィス通路80を連通状態に切り替えると共に、第二のオリフィス通路80の通路長を短く設定することにより、第二のオリフィス通路80のチューニング周波数を高周波数に設定することが出来る。このようにして、第二のオリフィス通路80のチューニング周波数を調節することにより、中周波数から高周波数までの広い周波数域に亘って有効な防振効果を得ることが出来る。なお、本実施形態では、ステッピングモータにおける駆動軸の回転量を調節することにより、第二のオリフィス通路80の通路長は、図2に示された最長状態から図3に示された最短状態までの範囲で適当に調節することが出来て、第二のオリフィス通路80のチューニング周波数を多段階に変更設定することが可能となっている。
また、エンジンマウント10では、第一のオリフィス通路76を形成する周溝58が、周方向に延びるように形成されている。それ故、第一のオリフィス通路76の通路長を有利に確保することが出来て、第一のオリフィス通路76を大きな自由度で低周波数にチューニングすることが可能となる。しかも、本実施形態では、第一のオリフィス通路76が大径とされた第一のオリフィス形成部材50の外周縁部を延びるように形成されている。それ故、充分に長い通路長の第一のオリフィス通路76をスペース効率良く形成することが出来る。
さらに、エンジンマウント10では、第二のオリフィス通路80を形成するオリフィス形成用溝66が、周方向に螺旋状に延びるように形成されている。それ故、第二のオリフィス通路80の通路長を有利に確保することが出来て、第二のオリフィス通路80のチューニング周波数をより広い周波数域に変更設定することが可能となる。
また、低周波数にチューニングされる第一のオリフィス通路76を、大径の第一のオリフィス形成部材50に形成すると共に、中乃至高周波数にチューニングされて、比較的に通路長が短くなる第二のオリフィス通路80を、小径の第二のオリフィス形成部材52に形成することにより、それら第一,第二のオリフィス通路76,80を、充分なチューニング自由度を確保しつつ、スペース効率良く形成することが出来る。それ故、ダブルオリフィス構造で、且つ、第二のオリフィス通路80のチューニング周波数を可変とされた高性能なエンジンマウント10を、装置の大型化を要することなくコンパクトに実現することが出来る。
また、第一のオリフィス形成部材50が第二の取付金具14に固定されていると共に、第二のオリフィス形成部材52がアクチュエータ90によって往復駆動されるようになっている。それ故、第一のオリフィス形成部材50が駆動する場合に比べて、第一のオリフィス通路76が短絡するのを回避することが出来る。しかも、比較的に小径且つ軽量とされた第二のオリフィス形成部材52を駆動させることで、必要とされるアクチュエータ90の駆動力を抑えることが出来て、発熱や消費電力の低減を実現出来る。
また、第一のオリフィス形成部材50と第二のオリフィス形成部材52を軸直角方向で相対的に位置決めして、それら第一,第二のオリフィス形成部材50,52の軸方向への相対変位を案内する案内機構が、支持筒部54と、案内スリーブ56と、案内突部64とによって構成された軸受け構造によって実現されている。それ故、第一,第二のオリフィス形成部材50,52の案内機構が第一のオリフィス形成部材50の内周面と第二のオリフィス形成部材52の外周面とによって構成されている場合に比べて、引っ掛かりによる作動不良や損傷を防ぐことが出来る。
なお、図4には、自動車用エンジンマウント10の制御方法の一例が、フローチャートと簡易なグラフ等によって示されている。以下、かかる制御方法について、図4に基づいて説明する。
先ず、ステップ(以下、Sとする)1において、電源を投入する電源投入処理を実行する。この電源投入処理は、例えば、自動車のイグニッションスイッチをONにすることにより実行される。
次に、電源投入信号をステッピングモータに入力することにより、S2において、ステッピングモータの駆動軸を回転させて、第二のオリフィス形成部材52を原点位置に復帰させる原点位置復帰処理を実行する。本実施形態において、原点位置は、第二のオリフィス通路80の平衡室70側開口部が遮断された図1に示された第二のオリフィス形成部材52の位置を言い、第二のオリフィス形成部材52を原点位置に保持するステッピングモータの駆動ステップ数がy0 となっている。かかる原点位置復帰処理により、第二のオリフィス通路80が遮断された図1の如きシェイクモードに切り替えられて、エンジン始動時の低周波大振幅振動に対して、第一のオリフィス通路76による防振効果が有利に発揮される。なお、駆動ステップとは、ステッピングモータに対する1パルスの入力によって生じる所定角度の駆動軸の回転を言い、駆動ステップ数とは、ステッピングモータへの入力パルス数と実質的に同義である。
次に、S3において、ステッピングモータにおける駆動軸の現在の駆動ステップ数:yi を記憶する。
次に、S4において、エンジン回転数:x
i+1 に対応するステッピングモータの駆動ステップ数:y
i+1 を、下記の数1に示された演算式によって算出する。なお、数1中、x
i+1 は特定の時点:i+1での一分間のエンジン回転数、nはエンジンの形式(気筒数)に応じて定まる次数、a,bは自動車の車両特性に応じて定まる定数である。
そして、S5において、エンジン回転数に応じた駆動軸の必要ステップ数:Δy
i を、y
i とy
i+1 に基づいて、下記の数2に示された演算式により算出する。
かかる演算によって算出された必要ステップ数:Δyi を、S6において、駆動パルスとしてステッピングモータに発信する。これにより、ステッピングモータの駆動軸が、必要なステップ数:Δyi だけ回転駆動されて、駆動部材82が軸方向に所定量だけ変位せしめられることにより、第二のオリフィス通路80の通路長が、エンジンの回転数に応じて変化せしめられる。その結果、第二のオリフィス通路80のチューニング周波数が、エンジン回転数に応じたアイドリング振動の周波数変化に対応して変更設定されて、第二のオリフィス通路80による防振効果が効率的に発揮されるようになっている。
また、S8において、iに1を加えた後、S9において、自動車の走行状態と停止状態を判定する。即ち、自動車のエンジンコントロールユニット(ECU)から出力される状態信号が、アイドル状態信号と走行状態信号の何れであるかを判定する。そして、状態信号がアイドル状態信号の場合には、S3以降の処理を繰り返して実行する。これにより、第二のオリフィス通路80が連通状態に保持されて、停車時に問題となるアイドリング振動等に対して、第二のオリフィス通路80による防振効果を有効に得ることが出来る。なお、状態信号は、特に限定されるものではないが、例えば、互いに電圧の異なる信号が、図4中のグラフに示されているように、アイドル状態信号(高電圧)と走行状態信号(低電圧)とされていても良い。
一方、S8において、走行状態信号が入力された場合には、S9において、原点位置復帰処理を実行する。これにより、第二のオリフィス通路80が遮断状態とされて、低速走行時に問題となるエンジンシェイク等に対して、第一のオリフィス通路76による防振効果が有効に発揮される。
さらに、S10において、ロックアップの判定をする。即ち、ECUから入力される状態信号が、走行状態信号とロックアップ信号の何れであるかを判定する。そして、入力信号が走行状態信号の場合には、S8以降の処理を繰り返して実行する。これにより、走行状態における第一のオリフィス通路76による防振効果と、停車状態における第二のオリフィス通路80による防振効果とを、何れも有効に得ることが出来る。なお、図4中のグラフに示されているように、本実施形態では、ロックアップ信号が高電圧の信号とされている。
一方、S10においてロックアップ信号が入力されると、S11において、ステッピングモータにおける駆動軸の現在のステップ数:yi を記憶する。
次に、S12において、エンジン回転数:xi+1 に応じたステッピングモータにおける駆動軸のステップ数:yi+1 を、数1に示された演算式によって算出する。
そして、S13において、エンジン回転数に応じた駆動軸の必要ステップ数:Δyi を、それらyi とyi+1 に基づいて、数2に示された演算式により算出する。
かかる演算によって算出された必要ステップ数:Δyi を、S14において、駆動パルスとしてステッピングモータに発信する。これにより、ステッピングモータの駆動軸が、必要なステップ数:Δyi だけ回転駆動されて、第二のオリフィス形成部材52が軸方向に所定量だけ変位せしめられることにより、第二のオリフィス通路80の通路長がエンジンの回転数に応じて変化せしめられる。その結果、第二のオリフィス通路80のチューニング周波数が、エンジン回転数に応じたロックアップこもり音の周波数変化に対応して変更設定されて、第二のオリフィス通路80による防振効果が効率的に発揮されるようになっている。
また、S15において、iに1を加えた後、S10以降の処理を繰り返す。これにより、ロックアップ状態下において、エンジンマウント10の防振特性が、入力振動の周波数変化に応じて連続的に制御されて、広い周波数の振動に対して有効な防振効果を得ることが出来ると共に、低速走行への移行によるロックアップの解除に対応することが出来る。
以上の如き制御方法を採用することにより、位置センサによる第二のオリフィス形成部材52の軸方向位置検出を要することなく、第二のオリフィス形成部材52の軸方向位置を高精度に制御して、連続的に変更設定することが可能となる。
また、図5には、本実施形態に従う構造とされたエンジンマウント10の防振特性を示すグラフが示されている。なお、図5中において、太線が動ばね定数を示すと共に、細線が減衰を示す。また、実線が第二のオリフィス通路80を最も低周波側にチューニングした状態(図2)、一点鎖線が第二のオリフィス通路80を中間の周波数にチューニングした状態、二点鎖線が第二のオリフィス通路80を最も高周波側にチューニングした状態(図3)を示す。
これによれば、エンジンマウント10では、第二のオリフィス通路80の通路長が最長に設定された状態で、アイドリング振動に相当する周波数域での低動ばね効果が有効に発揮されると共に、第二のオリフィス通路80の通路長が最短に設定された状態で、ロックアップこもり音に相当する周波数域での低動ばね効果が有効に発揮されることが示されている。それ故、アイドリング振動に相当する周波数からロックアップこもり音に相当する周波数の広い周波数域に亘って低動ばね効果が発揮され得る。また、アイドリング振動に相当する周波数からロックアップこもり音に相当する周波数に亘って、第二のオリフィス通路80を通じての流体流動による減衰が発揮されることも示されており、ラフアイドリング等に対する高減衰効果も広い周波数域に亘って発揮され得る。このように、本実施形態に従う構造とされたエンジンマウント10において、中乃至高周波数の広い周波数域に亘って有効な防振効果が発揮されることが、図5の特性図からも明らかである。
次に、図6には、本発明に従う構造とされた流体封入式防振装置の第二の実施形態として、自動車用エンジンマウント96が示されている。このエンジンマウント96は、仕切部材98を備えている。なお、以下の説明において、前記第一の実施形態と同一の部材および部位については、図中に同一の符号を付すことにより説明を省略する。
より詳細には、仕切部材98は、前記第一の実施形態に示された仕切部材48に比べて、第一の可動ゴム膜62が省略された構造となっている。これにより、透孔60が常時開口せしめられており、第二のオリフィス通路80の受圧室68側開口部が受圧室68に対して常時連通されている。
かくの如き構造とされたエンジンマウント96では、図6に示されているように、走行時において第二のオリフィス通路80の平衡室70側開口部が第一のオリフィス形成部材50によって覆蓋されて遮断される。これにより、エンジンシェイク等の低周波大振幅振動に対して、第一のオリフィス通路76による防振効果(高減衰効果)が発揮されるようになっている。
一方、停車時には、第二のオリフィス形成部材52が第一のオリフィス形成部材50に対して軸方向下方に変位されることにより、第二のオリフィス通路80の平衡室70側開口部が平衡室70に接続されて、第二のオリフィス通路80を通じて受圧室68と平衡室70の間で流体流動が生ぜしめられる。これにより、アイドリング振動に相当する中乃至高周波数振動に対して、第二のオリフィス通路80による防振効果(低動ばね効果)が発揮されるようになっている。
そこにおいて、自動車の停止時には、前記第一の実施形態と同様に、第二のオリフィス通路80の通路長が制御されて、防振特性が入力振動に対応して調節されるようになっている。これにより、中乃至高周波数の広い周波数域に亘って、第二のオリフィス通路80による防振効果が効率的に発揮されるようになっている。
また、エンジンマウント96では、走行状態において第二のオリフィス通路80が遮断状態に保持されることから、アクチュエータ90の制御がより簡単となる。
次に、図7には、本発明に従う構造とされた流体封入式防振装置の第三の実施形態として、自動車用エンジンマウント100が示されている。エンジンマウント100は、仕切部材102を備えている。
より詳細には、仕切部材102は、全体として厚肉の略円板形状を有しており、外側オリフィス部材としての第一のオリフィス形成部材104と、第一のオリフィス形成部材104に嵌め込まれる内側オリフィス部材としての第二のオリフィス形成部材106と、第一のオリフィス形成部材104に重ね合わされる蓋金具108とを、含んで構成されている。
第一のオリフィス形成部材104は、厚肉大径の略円筒形状を有しており、その内周面に形成された段差を挟んで軸方向上側が下側よりも厚肉とされている。要するに、本実施形態における第一のオリフィス形成部材104は、前記第一の実施形態における第一のオリフィス形成部材50に対して上底壁部および支持筒部54を省略された構造となっている。
第二のオリフィス形成部材106は、略有底円筒形状であって、前記第一の実施形態における第二のオリフィス形成部材52に対して径方向中央の案内突部64を省略された構造となっている。
そして、第二のオリフィス形成部材106は、第一のオリフィス形成部材104の中央孔に嵌め込まれている。そして、第二のオリフィス形成部材106がアクチュエータ90によって軸方向に往復駆動されることにより、第二のオリフィス通路80の通路長が変更設定されるようになっている。なお、本実施形態では、第一のオリフィス形成部材104の内周面と第二のオリフィス形成部材106の外周面とによって、第一のオリフィス形成部材104と第二のオリフィス形成部材106が相対的に軸方向へ案内されるようになっている。
また、第一のオリフィス形成部材104には、蓋金具108が重ね合わされている。蓋金具108は、薄肉の略円環板形状を有しており、第一のオリフィス形成部材104に対して軸方向上側から重ね合わされている。また、蓋金具108と第一のオリフィス形成部材104の重ね合わせ面間には、内周側に開口する凹溝が形成されている。なお、蓋金具108には、第一のオリフィス形成部材104における連通孔72と対応する位置に切欠きが形成されており、第一のオリフィス通路76が該切欠きを通じて受圧室68に連通されている。
また、第一のオリフィス形成部材104の上側開口部を覆うように流量制限手段としての第一の可動ゴム膜110が配設されている。第一の可動ゴム膜110は、略円板形状を有するゴム弾性体で形成されており、第一のオリフィス形成部材104と蓋金具108の間で外周縁部を全周に亘って挟持されることにより、第一のオリフィス形成部材104に取り付けられている。更に、第一の可動ゴム膜110は、第二のオリフィス形成部材106よりも軸方向上側に配置されており、第二のオリフィス通路80の受圧室68側の開口部を覆うように配設されている。
このような構造とされたエンジンマウント100においても、低周波数の振動入力に対する第一のオリフィス通路76による防振効果と、中乃至高周波数の振動入力に対する第二のオリフィス通路80による防振効果とを、何れも有効に得ることが出来る。また、前記第一の実施形態に係るエンジンマウント10と同様に、第二のオリフィス通路80を通じての流体流動量が、第一の可動ゴム膜110によって制限されていることにより、走行状態下において第二のオリフィス通路80を連通させて、ロックアップこもり音に相当する中乃至高周波振動に対する防振効果を得ることも出来る。
次に、図8には、本発明に従う構造とされた流体封入式防振装置の第四の実施形態として、自動車用エンジンマウント112が示されている。このエンジンマウント112は、仕切部材114を有しており、仕切部材114が、外側オリフィス部材としての第一のオリフィス形成部材116と、内側オリフィス部材としての第二のオリフィス形成部材118とを含んで構成されている。
第一のオリフィス形成部材116は、厚肉大径の略円板形状を有しており、内周面に段差を有していると共に、外周面に開口する周溝58が形成されている。この第一のオリフィス形成部材116は、第二の取付金具14の内周側に嵌め込まれて、第二の取付金具14によって支持されている。
一方、第二のオリフィス形成部材118は、略円筒形状の通路形成部120を有しており、外周部分には周方向に延びるオリフィス形成用溝66が形成されている。また、第二のオリフィス形成部材118には、支持部122が一体形成されている。この支持部122は、略お椀型とされて、通路形成部120の内周縁部から下方に突出しており、通路形成部120の中央孔の下側開口部を覆うように形成されている。また、支持部122の底部には、軸方向に貫通する小径の貫通孔が形成されており、アクチュエータ90の出力軸94に取り付けられた駆動部材82が、該貫通孔に挿通された連結金具124によって支持部122に固定されることにより、第二のオリフィス形成部材118がアクチュエータ90によって軸方向に往復駆動されるようになっている。なお、連結金具124は、特に限定されるものではないが、例えば、リベットやねじ、或いは駆動部材82に対して固着される段付き形状の金具等が採用される。
また、第二のオリフィス形成部材118における通路形成部120には、液圧吸収手段としての第二の可動ゴム膜126が取り付けられている。第二の可動ゴム膜126は、略円板形状を有しており、外周面には環状の嵌着金具128が加硫接着されている。そして、嵌着金具128が第二のオリフィス形成部材118における通路形成部120の内周縁部上端に圧入されることにより、第二の可動ゴム膜126が第二のオリフィス形成部材118に固定されている。これにより、第二のオリフィス形成部材118の中央孔が、第二の可動ゴム膜126によって閉塞されている。なお、このことからも明らかなように、第二の可動ゴム膜126は、第二のオリフィス通路80を通じての流体流路上を外れた内周側に配置されている。
また、第二のオリフィス形成部材118における支持部122には、板厚方向に貫通する一対のスリット130,130が形成されている。そして、支持部122と第二の可動ゴム膜126の対向間の領域が、このスリット130を通じて平衡室70に連通されている。これにより、第二の可動ゴム膜126には、その一方の面に受圧室68の圧力が及ぼされていると共に、その他方の面にスリット130を通じて平衡室70の圧力が及ぼされている。これらによって、第二の可動ゴム膜126の弾性変形を利用して、受圧室68の内圧変動を平衡室70に伝達して吸収する液圧吸収手段が構成されている。
このような構造とされたエンジンマウント112では、前記第二の実施形態と同様に、走行時には、第一のオリフィス通路76による防振効果が有効に発揮されると共に、停車時には、第二のオリフィス通路80による防振効果が有効に発揮されるようになっている。
そこにおいて、本実施形態では、第二の可動ゴム膜126が配設されていることにより、第二のオリフィス通路80のチューニング周波数と同等又はそれ以上の周波数の振動に対して、有効な防振効果が発揮されるようになっている。
すなわち、自動車の走行時には、ロックアップこもり音に相当する中周波数の振動入力や走行こもり音に相当する高周波数の振動入力に対して、第二の可動ゴム膜126の微小な弾性変形に基づく液圧吸収作用が発揮されるようになっている。これにより、著しい高動ばね化による防振性能の低下を防いで、目的とする防振効果が発揮されるようになっている。
一方、自動車の停車時には、第二のオリフィス通路80を通じての流体流動に基づく防振効果に加えて、第二の可動ゴム膜126の液圧吸収作用に基づく防振効果が発揮されて、アイドリング振動に対するより優れた防振性能を実現することが可能となる。
また、図9に示された本発明の第五の実施形態としての自動車用エンジンマウント132のように、前記第三の実施形態に示された第一の可動ゴム膜110と、前記第四の実施形態に示された第二の可動ゴム膜126を、何れも備えた構造を採用することも出来る。
これによれば、走行時において、第一のオリフィス通路76の流体流動作用に基づく防振効果と、第二のオリフィス通路80の流体流動作用に基づく防振効果と、第二の可動ゴム膜126の液圧吸収作用に基づく防振効果とを、何れも有効に得ることが出来ることから、走行状態における防振性能の更なる向上を実現することが可能となる。
次に、図10には、本発明に従う構造とされた流体封入式防振装置の第六の実施形態として、自動車用エンジンマウント134が示されている。このエンジンマウント134は、全体として前記第二の実施形態に示されたエンジンマウント96と同様の構造を有していると共に、外側オリフィス部材として第一のオリフィス形成部材136を備えている。
第一のオリフィス形成部材136は、前記第一,第二の実施形態における第一のオリフィス形成部材50に対して、第二のオリフィス形成部材52の連通孔78に対応する部位の透孔60が省略されており、当該部位に蓋部としての遮断壁138が設けられている。この遮断壁138は、第二のオリフィス形成部材52の連通孔78に対して軸方向の投影において重なるように配置されており、第二のオリフィス形成部材52が軸方向上端に位置せしめられた状態において、第二のオリフィス形成部材52における周壁部の上端面に重ね合わされて、連通孔78を遮断するようになっている。
このような構造とされたエンジンマウント134においては、第二のオリフィス通路80の平衡室70側開口部を遮断された図10に示されたシェイクモードにおいて、第二のオリフィス通路80の受圧室68側開口部が遮断壁138によって閉塞されるようになっている。それ故、第二のオリフィス通路80の遮断状態がより確実に実現されて、第一,第二のオリフィス形成部材136,52の隙間を通じて第二のオリフィス通路80が短絡することによって、受圧室68の液圧が平衡室70に逃がされるのを防ぐことが出来る。従って、第一のオリフィス通路76を通じての流体流動量を効率的に確保することが出来て、エンジンシェイク等に対する第一のオリフィス通路76の流体流動作用に基づく防振効果をより有利に得ることが出来る。
また、図11,図12には、本発明に係る流体封入式防振装置の第七の実施形態として、自動車用エンジンマウント140が示されている。エンジンマウント140は、第一の取付部材としての第一の取付金具142と第二の取付部材としての第二の取付金具144を本体ゴム弾性体146で連結した構造を有している。そして、第一の取付金具142が図示しないパワーユニット側に取り付けられると共に、第二の取付金具144が図示しない車両ボデー側に取り付けられることで、パワーユニットが車両ボデーに防振支持されるようになっている。なお、以下の説明において、上下方向とは、特に説明がない限り、エンジンマウント140の軸方向である図11中の上下方向を言うものとする。
より詳細には、第一の取付金具142は、略円形ブロック形状を有しており、上端面の中央には、上方に向かって突出する取付ボルト148が固設されている。この取付ボルト148によって、第一の取付金具142がパワーユニットに固定されるようになっている。
一方、第二の取付金具144は、全体として大径の略円筒形状とされており、その上端部分は、次第に拡開するテーパ筒部150とされている。また、第二の取付金具144には、ブラケット152が外嵌固定されている。ブラケット152は、略カップ状とされた取付部154の外周面に複数の取付脚部156が溶着された構造とされている。そして、取付部154が第二の取付金具144に対して外挿状態で圧入されることにより、ブラケット152が第二の取付金具144に取り付けられている。このブラケット152の各取付脚部156に形成された取付孔に挿通される図示しない固定ボルトにより、ブラケット152ひいては第二の取付金具144が車両ボデーに固定されるようになっている。
また、これら第一の取付金具142と第二の取付金具144は、本体ゴム弾性体146によって連結されている。本体ゴム弾性体146は略円錐台形状とされており、その小径側端部に対して第一の取付金具142が所定深さで埋められた状態で加硫接着されている一方、第二の取付金具144のテーパ筒部150が、本体ゴム弾性体146の大径側端部外周面に加硫接着されている。更に、本体ゴム弾性体146の大径側端面には、逆すり鉢状の大径凹所158が形成されている。更にまた、第二の取付金具144の内周面を覆う薄肉のシールゴム層160が、本体ゴム弾性体146の外周縁部から下方に延び出して一体形成されている。
また、第二の取付金具144の下側開口部は、可撓性膜としてのダイヤフラム162で蓋されている。ダイヤフラム162は、軸方向に弛みをもつ薄肉円環板形状のゴム膜であって、その径方向中央部分には略円板形状の固着プレート164が配設されており、ダイヤフラム162の内周縁部が固着プレート164の外周縁部に対して全周に亘って加硫接着されている。更に、ダイヤフラム162の外周縁部には、環状の固定金具166が加硫接着されており、固定金具166が第二の取付金具144の下端部に対して内挿状態で固定されることにより、第二の取付金具144の下側開口部がダイヤフラム162によって流体密に閉塞されている。これにより、第二の取付金具144内には、本体ゴム弾性体146とダイヤフラム162の軸方向間に、外部空間に対して密閉されて非圧縮性流体が封入された流体室168が形成されている。なお、封入流体としては、水やアルキレングリコール等の低粘性流体が好適に採用される。
また、流体室168には、厚肉の略円板形状を有する仕切部材170が軸直角方向に広がるように配設されている。そして、流体室168が仕切部材170を挟んで軸方向に二分されており、仕切部材170を挟んだ上側には、壁部の一部が本体ゴム弾性体146で構成されて、振動入力時に圧力変動が及ぼされる受圧室172が形成されていると共に、仕切部材170を挟んだ下側には、壁部の一部がダイヤフラム162で構成されて、容積可変とされた平衡室174が形成されている。
さらに、仕切部材170は、外側オリフィス部材としての第一のオリフィス形成部材176と、内側オリフィス部材としての第二のオリフィス形成部材178を含んで構成されている。
第一のオリフィス形成部材176は、図11〜図14に示されているように、厚肉大径の略円筒形状を有しており、金属材や合成樹脂材等で形成された硬質の部材とされている。また、第一のオリフィス形成部材176には、外周面に開口して周方向に半周程度の所定長さで延びるオリフィス形成用溝180が形成されている。更に、オリフィス形成用溝180の一方の端部には、軸方向上方に向かって延びる連通孔182が形成されている。そして、第一のオリフィス形成部材176は、第二の取付金具144に縮径加工が施されることにより、第二の取付金具144の内周側に固定支持されている。
さらに、第一のオリフィス形成部材176の外周面が第二の取付金具144の内周面に重ね合わされて支持されることにより、第一のオリフィス形成部材176に形成されたオリフィス形成用溝180の外周側の開口部が流体密に蓋されている。これにより、第一のオリフィス形成部材176の外周縁部を周方向に延びるトンネル状の流路が形成されている。このトンネル状通路の一方の端部が連通孔182を通じて受圧室172に連通されると共に、他方の端部が後述する連通用スリット234と連通窓238を通じて平衡室174に連通されることにより、受圧室172と平衡室174を相互に連通するオリフィス通路184がオリフィス形成用溝180を利用して形成されている。
また、第一のオリフィス形成部材176には、第二のオリフィス形成部材178が内挿状態で嵌め込まれている。第二のオリフィス形成部材178は、図11,図12,図15,図16に示されているように、インナ筒状部186を有している。インナ筒状部186は、第一のオリフィス形成部材176の内径に対応する外径を有する略円筒形状を呈しており、軸方向に直線的に延びている。また、インナ筒状部186の軸方向中間部分には、軸直角方向に広がるように隔壁部188が一体形成されており、隔壁部188によってインナ筒状部186の中央孔が閉塞されて上下に隔てられている。更に、隔壁部188の径方向中央部には、下方に向かって突出する小径円柱形状の連結部190が一体形成されている。
そして、図17に示されているように、第二のオリフィス形成部材178は、第一のオリフィス形成部材176に対して内挿配置されており、筒状とされた第一のオリフィス形成部材176の内周側(中央孔)が、第二のオリフィス形成部材178によって上下に二分されている。これにより、第一のオリフィス形成部材176と第二のオリフィス形成部材178によって、流体室168を上下に仕切る本実施形態の仕切部材170が構成されている。また、第二のオリフィス形成部材178は、第一のオリフィス形成部材176に対して軸方向への相対変位を許容された状態で嵌め込まれている。なお、第二のオリフィス形成部材178におけるインナ筒状部186の内周側で隔壁部188よりも上方の領域によって、受圧室172の一部が構成されていると共に、第二のオリフィス形成部材178におけるインナ筒状部186と連結部190の径方向間の領域によって、平衡室174の一部が構成されている。
また、第二のオリフィス形成部材178における連結部190には、図11に示されているように、駆動軸としての出力軸192が固定されて下方に延び出しており、ダイヤフラム162を貫通して流体室168の外部に突出せしめられている。更に、出力軸192は、下端部がアクチュエータ194に取り付けられている。アクチュエータ194は、ダイヤフラム162の下方に配設されており、略有底円筒形状のケース196と略円板形状の蓋板198で構成されたハウジング200を備えている。
また、ハウジング200には、電気モータ202が収容されている。電気モータ202は、従来から公知の構造であって、回転軸204が外部に設けられた電源装置206からの通電によって中心軸回りで回転駆動されるようになっている。また、本実施形態では、電気モータ202と電源装置206を繋ぐ回路上に制御装置208が設けられており、電気モータ202の回転軸204が中心軸回りで所定の回転量ずつ回転せしめられるようになっている。また、電気モータ202の回転軸204には、外周面に螺子状の傾斜歯筋を有するウォーム210が取り付けられている。
また、ウォーム210には、外周面にウォーム210と対応する歯筋を形成されたウォームホイール212が噛合されている。更に、ウォームホイール212の下方には、外周面に対して軸方向に延びる歯筋を形成された第一の平歯車214が同一中心軸上で一体的に形成されている。これらウォームホイール212と第一の平歯車214は、ケース196に取り付けられた支軸216によって上下方向に延びる中心軸回りで回転可能に支持されている。
また、第一の平歯車214には、外周面に第一の平歯車214と対応する歯筋を形成された第二の平歯車218が噛合されている。更に、第二の平歯車218の上方には、主動側カム部材220が同一中心軸上で一体的に形成されている。主動側カム部材220は、略円板形状を有する硬質の部材であって、その上面が周方向に波状をもって延びる主動側カム面222とされている。これら第二の平歯車218と主動側カム部材220は、ケース196に取り付けられた回転駆動軸224によって上下方向に延びる中心軸回りで回転可能に支持されている。
さらに、主動側カム部材220には、従動側カム部材226が軸方向に重ね合わされている。従動側カム部材226は、略円板形状を有する硬質の部材であって、その下面が主動側カム面222に対応する波状とされた従動側カム面228となっている。また、従動側カム部材226の上端面には、出力軸192が固設されてマウント中心軸上で上方に向かって突出せしめられている。この出力軸192は、上部が下部よりも小径の略段付ロッド形状を有しており、蓋板198の中央部分を貫通してハウジング200外に突出せしめられている。なお、図中において必ずしも明らかではないが、本実施形態では、出力軸192とハウジング200の間に、出力軸192の軸方向の駆動を許容しつつ、中心軸回りでの回転を阻止する回転阻止機構が設けられており、出力軸192と一体的に形成された従動側カム部材226の中心軸回りでの回転が阻止されている。
更にまた、ハウジング200を構成する蓋板198の内周縁部が、従動側カム部材226に対して軸方向で対向位置せしめられていると共に、それら蓋板198と従動側カム部材226の対向面間にコイルスプリング230が配設されている。そして、コイルスプリング230の付勢力が、主動側カム部材220の主動側カム面222と従動側カム部材226の従動側カム面228との間に、両カム面222,228の重ね合わせ方向に及ぼされている。これにより、出力軸192の回転駆動軸224に対する軸方向の相対変位をコイルスプリング230の付勢力に抗して許容しつつ、主動側カム部材220と従動側カム部材226の重ね合わせ状態が保持されるようになっている。
かかるアクチュエータ194は、ダイヤフラム162とブラケット152の軸方向間に配設されており、ハウジング200がブラケット152に固定されている。また、ハウジング200外に突出せしめられた出力軸192の上部(小径部)が、ダイヤフラム162の固着プレート164に貫通形成された挿通孔232に挿通固定されており、出力軸192が、固着プレート164を介してダイヤフラム162に固着されて、ダイヤフラム162を挟んだ上下両側に突出せしめられている。更に、出力軸192と固着プレート164の間が流体密にシールされており、固着プレート164の挿通孔232を通じて封入された非圧縮性流体の外部への漏出が防止されている。なお、固着プレート164の挿通孔232のシールは、例えば、出力軸192の段差と固着プレート164の内周縁部との軸方向対向面間にOリングを配設したり、出力軸192と固着プレート164を一体形成したり、出力軸192と固着プレート164を溶接によって固定することで実現出来る。本実施形態では、出力軸192と固着プレート164が相互に溶着されており、駆動軸がそれら出力軸192と固着プレート164によって構成されている。
さらに、固着プレート164よりも上方に突出せしめられた出力軸192の上端部は、仕切部材170を構成する第二のオリフィス形成部材178の連結部190に対して固定されており、出力軸192に及ぼされる軸方向での往復作動が第二のオリフィス形成部材178に伝達されるようになっている。
すなわち、電気モータ202に通電されることで回転軸204に及ぼされる回転駆動力が、ウォーム210,ウォームホイール212,第一の平歯車214,第二の平歯車218で構成された歯車列によって主動側カム部材220に伝達される。そして、主動側カム部材220に伝達された中心軸回りでの回転作動が、カム面222,228の作用によって軸方向での往復作動に変換されて、従動側カム部材226に伝達される。これにより、従動側カム部材226に固設された出力軸192に対して軸方向の往復駆動力が及ぼされて、出力軸192の上端部に固定された第二のオリフィス形成部材178が軸方向に往復作動せしめられるようになっている。上記からも明らかなように、電気モータ202の回転駆動力が、主動側カム部材220と従動側カム部材226の間で軸方向の往復駆動力に変換されるようになっており、それら主動側カム部材220と従動側カム部材226によって運動変換機構としてのカム機構が構成されている。
ここにおいて、オリフィス通路184の一方の端部が、連通孔182を通じて受圧室172に連通されていると共に、オリフィス通路184の他方の端部が、連通用スリット234とオリフィス接続用窓としての連通窓238との交点を通じて平衡室174に連通されている。
連通用スリット234は、第一のオリフィス形成部材176に形成されたオリフィス形成用溝180の内周側壁部を径方向に貫通するように螺旋状に形成されて、第一のオリフィス形成部材176の内周面に開口せしめられている。このような連通用スリット234が周方向に延びて設けられていることにより、オリフィス形成用溝180が周方向の略全長に亘って第一のオリフィス形成部材176の中央孔に対して連通されている。また、本実施形態では、連通用スリット234の周上における複数箇所に補強桟236が設けられており、第一のオリフィス形成部材176における連通用スリット234を挟んだ上下両側が、それら補強桟236によって一体的に連結されている。なお、本実施形態では、オリフィス形成用溝180と連通用スリット234によって、オリフィス形成用窓が構成されている。
一方、連通窓238は、第二のオリフィス形成部材178のインナ筒状部186を径方向に貫通するように形成されて、第二のオリフィス形成部材178の外周面に開口せしめられている。また、連通窓238は、第二のオリフィス形成部材178のインナ筒状部186において隔壁部188よりも下方に形成されており、連通窓238が平衡室174の一部を構成するインナ筒状部186と連結部190の径方向間の領域に連通されている。更に、本実施形態における第二のオリフィス形成部材178では、連通窓238の周上に複数の連結桟240が設けられており、インナ筒状部186における連通窓238を挟んだ両側が、それら連結桟240によって周上の複数箇所で一体的に連結されている。
また、本実施形態では、連通用スリット234が、軸方向にオリフィス形成用溝180と同じ角度で傾斜しながら周方向に略半周に亘って延びる略螺旋状となっていると共に、連通窓238が軸方向に傾斜することなく周方向に全周に亘って延びる環状となっている。これらによって、連通用スリット234と連通窓238は、軸方向で相対的に傾斜して周方向に延びている。
そして、第二のオリフィス形成部材178が、第一のオリフィス形成部材176の中央孔に対して、軸方向での相対変位を許容された状態で嵌め込まれることにより、第一のオリフィス形成部材176の連通用スリット234と、第二のオリフィス形成部材178の連通窓238が、周上の一部において相互に交差せしめられている。これにより、連通用スリット234と連通窓238の交点においてオリフィス通路184の平衡室174側の開口部が形成されて、受圧室172と平衡室174がオリフィス通路184によって相互に連通されている。特に、本実施形態では、連通用スリット234において連通窓238との交点を外れた部分が、インナ筒状部186によって覆われて閉塞されるようになっており、連通孔182と上記交点との間にオリフィス通路184が形成されるようになっている。
なお、本実施形態では、第一のオリフィス形成部材176の内周面と第二のオリフィス形成部材178の外周面が、僅かな隙間をもって軸直角方向に重ね合わされている。これにより、第二のオリフィス形成部材178の第一のオリフィス形成部材176に対する軸直角方向への相対変位を制限しつつ、軸方向への相対変位を案内する、軸方向ガイド手段が構成されている。
そこにおいて、オリフィス通路184は、その通路長が可変とされており、通路断面積(A)と通路長(L)の比(A/L)によって設定されるチューニング周波数を、入力振動の周波数に応じて調節することが可能となっている。即ち、第二のオリフィス形成部材178がアクチュエータ194によって軸方向に駆動変位せしめられると、螺旋状とされた連通用スリット234と周方向に延びる連通窓238の交差位置が、オリフィス形成用溝180の長さ方向に変化せしめられる。これにより、それら連通用スリット234と連通窓238の協働で形成されるオリフィス通路184の平衡室174側開口部の位置が周方向に変化せしめられて、オリフィス通路184の通路長(L)が変更されるようになっている。その結果、オリフィス通路184のチューニング周波数が変更設定されて、異なる周波数の振動に対してそれぞれ有効な防振効果を得ることが出来るようになっている。
このようなオリフィス通路184のチューニング変更の例として、オリフィス通路184をエンジンシェイクに相当する数Hz程度の低周波数にチューニングした状態が、図18に示されていると共に、オリフィス通路184をアイドリング振動に相当する20Hz〜40Hz程度の中周波数にチューニングした状態が、図19に示されている。
即ち、図11に示されているように第二のオリフィス形成部材178が下端に位置せしめられた状態では、図18に示されているように、連通用スリット234と連通窓238の交点が、オリフィス通路184の受圧室172側の端部に対して周方向で遠い位置に設定される。そして、オリフィス通路184が周方向に半周程度の長い通路長で形成されることにより、オリフィス通路184の通路断面積と通路長の比の値が小さくなって、オリフィス通路184が低周波数にチューニングされるようになっている。
一方、図12に示されているように第二のオリフィス形成部材178が上端に位置せしめられた状態では、図19に示されているように、連通用スリット234と連通窓238の交点が、オリフィス通路184の受圧室172側の端部に対して周方向で近い位置に設定される。そして、オリフィス通路184が極めて短い通路長で形成されることにより、オリフィス通路184の通路断面積と通路長の比の値が大きくなって、オリフィス通路184が中周波数にチューニングされるようになっている。
また、図には示されていないが、第二のオリフィス形成部材178を往復作動方向の中間に位置させることで、オリフィス通路184のチューニング周波数を、エンジンシェイクに相当する低周波数と、アイドリング振動に相当する中周波数の中間に設定することも可能である。
なお、オリフィス通路184のチューニング変更は、制御装置208による電気モータ202の制御によって、予め設定された複数の異なる周波数に段階的にチューニングされるようになっていても良いし、入力振動の周波数に応じて連続的に変更設定されるようになっていても良い。段階的な制御によれば、例えば接点式のセルフスイッチ等の簡単な制御装置を採用したり、制御装置を内蔵したステッピングモータを電気モータとして採用することによって、簡単な構造と少ない部品点数でオリフィス通路184のチューニングの調節を実現することが出来る。一方、連続的な制御によれば、入力振動の周波数に応じてオリフィス通路184のチューニング周波数を高精度に設定することが出来て、より優れた防振性能の実現が可能となる。また、本実施形態では、オリフィス通路184のチューニング周波数が、エンジンの回転数に応じて制御装置208で制御されるようになっている。
このような構造とされた自動車用エンジンマウント140の車両装着下、エンジンシェイクに相当する低周波数の振動が入力された場合には、電気モータ202の作動によって第二のオリフィス形成部材178が作動方向の下端に変位せしめられる。これにより、オリフィス通路184の通路長が長く設定されて、オリフィス通路184のチューニング周波数がエンジンシェイクに相当する低周波に変更設定される。それ故、オリフィス通路184を通じての流体流動によって入力振動に対する有効な防振効果(高減衰効果)を得ることが出来る。
一方、アイドリング振動に相当する中周波数の振動が入力された場合には、電気モータ202の作動によって第二のオリフィス形成部材178が作動方向の上端に変位せしめられる。これにより、オリフィス通路184の通路長が短く設定されて、オリフィス通路184のチューニング周波数がアイドリング振動に相当する中周波数に変更設定される。それ故、オリフィス通路184を通じての流体流動に基づいて目的とする防振効果(低動ばね効果)を得ることが出来る。
また一方、エンジンシェイクの周波数とアイドリング振動の周波数との中間の周波数域(中周波数)の振動入力に際しては、第二のオリフィス形成部材178を作動方向の中間に変位させることによって、入力振動に応じた防振効果を得ることが出来る。
以上のように、本実施形態に従う構造のエンジンマウント140では、オリフィス通路184の通路長が可変とされており、オリフィス通路184のチューニング周波数が入力振動に応じて変更可能となっている。それ故、走行状態等によって変化する入力振動の周波数に応じてオリフィス通路184のチューニングを変更することで、より広い周波数或いは異なる複数の周波数の振動に対して有効な防振効果を得ることが出来る。
また、流体室168の外部に設けられたアクチュエータ194から第二のオリフィス形成部材178に駆動力を伝達する出力軸192が、軸方向に往復作動されるようになっている。それ故、ダイヤフラム162において出力軸192が貫通せしめられた部分のシールを、容易に且つ高い信頼性で実現することが出来る。従って、流体室168に封入された非圧縮性流体が出力軸192の挿通部分から漏れるのを防いで、エンジンマウント140の信頼性や耐久性の向上を図ることが出来ると共に、出力軸192の挿通部分におけるシールを簡単な構造で実現することが出来る。
また、本実施形態では、第一のオリフィス形成部材176が、連通用スリット234の周上に設けられた複数の補強桟236によって補強されており、第一のオリフィス形成部材176の耐久性の向上が図られている。一方、連通窓238の周上には、複数の連結桟240が設けられており、第二のオリフィス形成部材178における連通窓238を挟んだ両側部分が連結桟240によって相互に連結されて一体となっていると共に、第二のオリフィス形成部材178が連結桟240によって補強されて耐久性の向上が実現されている。
また、図20には、本発明の第八の実施形態としての自動車用エンジンマウント242が示されている。このエンジンマウント242は、第一の取付部材としての第一の取付金具244と第二の取付部材としての第二の取付金具246を本体ゴム弾性体146で連結した構造を有している。
より詳細には、第一の取付金具244は、逆向きの略円錐台形状を有する固着部248と、固着部248の上端縁部において外周側に向かって突出するフランジ部250と、固着部248の上端部から上方に向かって突出する略円錐台形状の取付部252が、一体形成された構造となっている。更に、第一の取付金具244は、中心軸上を延びるボルト穴254に対して図示しない取付ボルトが螺着されることにより、パワーユニットに取り付けられるようになっている。
一方、第二の取付金具246は、第一の取付金具244と同様の剛性材で形成されており、全体として大径の略円筒形状を有している。更に、第二の取付金具246の上端部が次第に拡開するテーパ筒部256とされていると共に、下端部には段差部258を挟んで筒状のかしめ片260が一体形成されている。また、第二の取付金具246の下端部には、略有底円筒形状のブラケット262の開口周縁部がかしめ片260でかしめ固定されており、ブラケット262の外周面に固定された複数の取付脚部156が図示しない車両ボデーに取り付けられることで、第二の取付金具246がブラケット262を介して車両ボデーに取り付けられるようになっている。
これら第一の取付金具244と第二の取付金具246は、同一中心軸上で上下に離隔配置されて、本体ゴム弾性体146によって相互に連結されている。これにより、第二の取付金具246の上側開口部が本体ゴム弾性体146によって流体密に閉塞されている。
また、第二の取付金具246の下側開口部は、ダイヤフラム162によって蓋されている。ダイヤフラム162は、軸方向に充分な弛みを与えられた薄肉略円環板形状のゴム膜であって、その内周縁部が全周に亘ってジョイント筒部材264に加硫接着されている。ジョイント筒部材264は、逆向きの略有底円筒形状を有する部材であって、内周面の軸方向中間部分に全周に亘って延びる湾曲面が形成されていると共に、軸方向中間部分において外周側に突出するフランジ状の固着フランジ266が一体形成されている。そして、ジョイント筒部材264の外周面に対してダイヤフラム162の内周面が重ね合わされて、固着フランジ266を含む部分に加硫接着されることにより、ジョイント筒部材264がダイヤフラム162の径方向中央部分に固着されている。
一方、ダイヤフラム162の外周縁部は、全周に亘って環状の固定金具268に加硫接着されている。そして、固定金具268が第二の取付金具246の下端部に対して挿し入れられてかしめ片260でかしめ固定されることにより、ダイヤフラム162が第二の取付金具246の下端部に取り付けられている。これにより、第二の取付金具246の下側開口部がダイヤフラム162によって流体密に閉塞されており、第二の取付金具246の内周側において本体ゴム弾性体146とダイヤフラム162の軸方向対向面間には、非圧縮性流体を封入された流体室168が形成されている。
また、流体室168には、仕切部材270が配設されている。仕切部材270は、厚肉の略円板形状を有しており、流体室168内で軸直角方向に広がるように配設されて、第二の取付金具246によって支持されている。これにより、流体室168が仕切部材270を挟んで上下に二分されて、仕切部材270を挟んだ両側に受圧室172と平衡室174が形成されている。
さらに、仕切部材270は、外側オリフィス部材としての第一のオリフィス形成部材272と内側オリフィス部材としての第二のオリフィス形成部材274を含んで構成されている。
第一のオリフィス形成部材272は、全体として逆向きの略有底筒体形状であって、PPS等の合成樹脂やアルミニウム合金等の金属で形成されている。また、第一のオリフィス形成部材272には、外周面に開口するオリフィス形成用溝180と、オリフィス形成用溝180の内周壁部を径方向に貫通して第一のオリフィス形成部材272の内周面に開口する連通用スリット234が形成されており、それらによってオリフィス形成用窓が構成されている。また、第一のオリフィス形成部材272の径方向中央部分には、上底壁部を貫通する支持孔276が形成されており、支持孔276の開口縁部から下方に向かって筒状の支持筒部278が突出せしめられている。また、支持孔276には、筒状の案内スリーブ280が嵌め付けられている。この案内スリーブ280は、自己潤滑性樹脂で形成されたり、グリースを塗布されること等によって、内周面の摩擦係数が小さく抑えられている。
そして、第一のオリフィス形成部材272は、第二の取付金具246の内周側に嵌め入れられて、第二の取付金具246によって支持されている。更に、第一のオリフィス形成部材272の外周面が、第二の取付金具246の内周面に対してシールゴム層160を介して密着せしめられることにより、オリフィス形成用溝180を利用して螺旋状に延びるトンネル状の流路が形成されている。このトンネル状流路の一方の端部が、連通孔182を通じて受圧室172に連通されると共に、他方の端部が、連通用スリット234と連通窓238の交点を通じて平衡室174に連通されることで、オリフィス通路184が形成されている。
また、第一のオリフィス形成部材272の内周側には、第二のオリフィス形成部材274が挿し入れられている。第二のオリフィス形成部材274は、略円板形状の隔壁部282と、隔壁部282の外周縁部から下方に向かって突出するインナ筒状部284を一体的に備えた逆向きの略有底円筒形状を有しており、POM等の合成樹脂やアルミニウム合金等の金属で形成されている。また、隔壁部282は、それぞれ平板形状とされた外周部分と内周部分を径方向中間部分に設けられたテーパ形状の傾斜部286によって連結した構造とされており、傾斜部286を挟んで内周部分が外周部分よりも下方に位置せしめられた段付き板形状とされている。更に、隔壁部282の内周部分には、軸方向上方に向かって突出する小径円柱形状の案内突部288が一体形成されている。なお、第二のオリフィス形成部材274は、特に限定されるものではないが、後述する軸方向への変位をスムーズに実現するために、表面の摩擦係数を小さく設定されていることが望ましい。
この第二のオリフィス形成部材274は、第一のオリフィス形成部材272の内周側に挿し入れられている。そして、第二のオリフィス形成部材274が第一のオリフィス形成部材272の内周側に挿し入れられた状態で、第一のオリフィス形成部材272の下端面には、略円環板形状を呈する蓋金具290が取り付けられている。この蓋金具290は、径方向中間部分に設けられた段差を挟んで内周側が外周側よりも下方に位置せしめられていると共に、内径が第一のオリフィス形成部材272の内径よりも小さくなっており、段差を挟んだ内周側が第一のオリフィス形成部材272の下側開口部上に突出せしめられている。これにより、第二のオリフィス形成部材274の下端位置が、第二のオリフィス形成部材274のインナ筒状部284の下端面と、蓋金具290の内周縁部上面との当接によって規定されていると共に、第二のオリフィス形成部材274の第一のオリフィス形成部材272からの脱落が防止されている。なお、本実施形態では、第一のオリフィス形成部材272の内周面と第二のオリフィス形成部材274の外周面が、充分に小さな隙間を隔てて径方向に対向せしめられており、該隙間を通じた流体流動が実質的に防止されている。そして、第一のオリフィス形成部材272の内周側の領域は、第二のオリフィス形成部材274を挟んで上下に二分されている。
また、第二のオリフィス形成部材274の案内突部288が、第一のオリフィス形成部材272の案内スリーブ280に対して挿し込まれて、軸方向に滑動可能に支持されている。これにより、第二のオリフィス形成部材274の第一のオリフィス形成部材272に対する軸直角方向への相対変位を制限すると共に、第二のオリフィス形成部材274の第一のオリフィス形成部材272に対する軸方向への相対変位を案内する軸方向ガイド手段が構成されている。なお、本実施形態では、第一のオリフィス形成部材272の内周面と、第二のオリフィス形成部材274におけるインナ筒状部284の外周面が、僅かな隙間をもって重ね合わされており、第一のオリフィス形成部材272の内周面と第二のオリフィス形成部材274の外周面によっても、軸直角方向での位置決め作用と、軸方向への案内作用が発揮されるようになっている。
また、第二のオリフィス形成部材274は、ダイヤフラム162の径方向中央に固着されたジョイント筒部材264に固定されている。即ち、ジョイント筒部材264から上方に向かって突出する連結ボルト292が、第二のオリフィス形成部材274の案内突部288に螺着されることにより、ジョイント筒部材264と第二のオリフィス形成部材274が略同一中心軸上で固定されている。
一方、ジョイント筒部材264は、アクチュエータ294に連結されている。アクチュエータ294は、第二の取付金具246に固定されたブラケット262によって支持されており、ダイヤフラム162を挟んで流体室168と反対側(下方)に配設されている。より詳細には、アクチュエータ294は、ハウジング296に収容される電気モータ202と、電気モータ202の回転駆動によって軸方向に変位せしめられる従動部材である駆動軸としての駆動部材298とを含んで構成されている。
電気モータ202は、固定子の多相巻線に順次パルスを加えて、その1パルスごとに回転子(回転軸204)が一定角度だけ回転するパルスモータであって、バッテリ等の電源装置206からの通電を制御装置208によって制御することにより、回転量を制御可能となっている。なお、本実施形態では、エンジンコントロールユニット等からエンジン回転数等の信号が制御装置208に入力されて、かかる入力信号に基づいて制御装置208による電気モータ202の回転量制御が行われるようになっている。
また、電気モータ202の回転軸204には、雄ねじ部材241が固定されている。雄ねじ部材241は、略円柱形状を有しており、軸方向の全長に亘って外周面にねじ山が刻設されている。
また、雄ねじ部材241には、従動部材としての駆動部材298が螺嵌されている。駆動部材298は、上部が軸方向に延びる略ロッド形状を有していると共に、下部が逆向きの略有底円筒形状を有しており、下部の内周面には、雄ねじ部材241に螺刻された雄ねじに対応する雌ねじが螺刻されている。更に、駆動部材298とハウジング296の間には、駆動部材298のハウジング296に対する相対回転を防止する回転制限機構が設けられている。本実施形態では、駆動部材298の外周面に図示しない二面幅が設けられており、ハウジング296の上底壁部に形成された駆動部材298の挿通孔が、駆動部材298の二面幅に対応する形状とされている。これにより、駆動部材298がハウジング296によって係止されて、駆動部材298の中心軸回りでの回転が防止されるようになっている。そして、電気モータ202に通電されて回転軸204及び雄ねじ部材241が回転せしめられることにより、駆動部材298がねじ機構によって軸方向に上下動せしめられるようになっている。
また、駆動部材298の上端部分は、軸方向に延びる略ロッド形状となっており、上端縁部がボール状の球状連結部300とされている。そして、球状連結部300が、ダイヤフラム162に固着されたジョイント筒部材264に対して内挿されて、ジョイント筒部材264の内周面に形成された湾曲面で当接支持されることにより、ジョイント筒部材264と駆動部材298が連結されている。これにより、アクチュエータ294の回転駆動力が、ねじ機構によって軸方向の往復駆動力に変換されて駆動部材298に及ぼされ、該往復駆動力が、駆動部材298に連結されたジョイント筒部材264を介して、第二のオリフィス形成部材274に伝達されるようになっている。
さらに、球状連結部300の外周面がジョイント筒部材264の湾曲面によって案内されることにより、駆動部材298とジョイント筒部材264が相対的に傾動可能とされている。これにより、アクチュエータ294の駆動力を第二のオリフィス形成部材274に伝達する経路上において、屈曲可能な部位が形成されている。なお、上述の説明からも明らかなように、本実施形態では、駆動部材298とジョイント筒部材264によってボールジョイントが構成されている。
このような本実施形態に従う構造のエンジンマウント242においては、第二のオリフィス形成部材274が第一のオリフィス形成部材272に対して軸方向に相対変位されることにより、オリフィス通路184の通路長が変化せしめられるようになっている。そして、オリフィス通路184の通路長を入力振動の周波数に応じて制御することで、周波数が異なる複数種類の振動に対して、何れも有効な防振効果が発揮されるようになっている。
また、第二のオリフィス形成部材274とアクチュエータ294の駆動部材298が、ジョイント筒部材264と球状連結部300で構成されたボールジョイントを介して連結されている。それ故、部品の製造時や組付け時の誤差による第二のオリフィス形成部材274と駆動部材298の軸直角方向でのずれがボールジョイントで吸収されて、アクチュエータ294の組付け不良を防ぐことが出来る。
しかも、アクチュエータ294の駆動部材298を第二のオリフィス形成部材274に連結するジョイント筒部材264に対して、ダイヤフラム162の内周面が全周に亘って加硫接着されていることから、平衡室174の密閉性を高度に維持しつつ、第二のオリフィス形成部材274の変位駆動を実現することが出来る。
また、第二のオリフィス形成部材274においてインナ筒状部284が隔壁部282から下方に向かってのみ突出せしめられており、上下両側に突出せしめられた前記第七の実施形態に比べて、軸方向のサイズが小型化されている。しかも、隔壁部282は、径方向中央部分が外周部分に比して凹んだ形状となっており、第一のオリフィス形成部材272に突設された支持筒部278が隔壁部282の凹み部分に入り込むことで、支持筒部278を設けることによる軸方向寸法の大型化が回避されている。
また、第一のオリフィス形成部材272に設けられた案内スリーブ280に対して、第二のオリフィス形成部材274に一体形成された案内突部288が挿し入れられることにより、軸方向ガイド手段が構成されている。これにより、第二のオリフィス形成部材274を第一のオリフィス形成部材272に対して軸方向に小さな摩擦抵抗でスムーズに相対変位せしめることが出来て、小さな駆動力で相対変位を実現出来ると共に、電気モータ202の発熱等を抑えることが可能となる。特に、第一のオリフィス形成部材272の内周面と第二のオリフィス形成部材274の外周面のみによって軸方向ガイド手段を構成する場合に比して、連通用スリット234や連通窓238による引っ掛かりを回避出来ることから、より効果的なガイド機能を実現することが出来る。
また、第一のオリフィス形成部材272の内周側の領域が、第二のオリフィス形成部材274によって上下に二分されており、第二のオリフィス形成部材274を挟んだ上下の領域間においてオリフィス通路184以外の流路を通じての流体流動が防止されている。それ故、受圧室172と平衡室174の相対的な圧力差に基づいて、オリフィス通路184の通路形状に応じた流体流動が高精度に生ぜしめられるようになっており、目的とする防振効果を効率良く発揮させることが出来る。
次に、図21には、本発明に係る流体封入式防振装置の第九の実施形態として、自動車用エンジンマウント302が示されている。即ち、エンジンマウント302は、仕切部材304を備えている。仕切部材304は、外側オリフィス部材としての第一のオリフィス形成部材272と、内側オリフィス部材としての第二のオリフィス形成部材306を有している。
より詳細には、第二のオリフィス形成部材306は、前記第八の実施形態に示された第二のオリフィス形成部材274においてインナ筒状部284を省略した構造となっている。即ち、第二のオリフィス形成部材306は、軸直角方向に広がる略円板形状の中央部分と、同じく軸直角方向に広がる略円環板形状の外周部分が、テーパ状部で連結された構造を有しており、全体として板形状となっている。また、本実施形態において、第二のオリフィス形成部材306の隔壁部282の外周縁部には、上方に向かって突出する環状のガイド部308が一体形成されている。なお、このガイド部308の突出高さは、連通用スリット234の開口高さよりも大きく設定されて、外周面で連通用スリット234を遮断可能とされていても良いし、連通用スリット234の開口高さよりも小さく設定されて、連通用スリット234を遮断し得ないようになっていても良い。
この第二のオリフィス形成部材306は、第一のオリフィス形成部材272の内周側に対して嵌め入れられて、仕切部材304を構成している。そして、第二のオリフィス形成部材306の外周面が、第一のオリフィス形成部材272の内周面に重ね合わされており、連通用スリット234の周上の一部が、第二のオリフィス形成部材306の外周面で覆われている。これにより、第二のオリフィス形成部材306を挟んだ上側にオリフィス通路184の受圧室172側開口部が形成されていると共に、下側にオリフィス通路184の平衡室174側開口部が形成されている。
このような構造の仕切部材304を有するエンジンマウント302においても、オリフィス通路184の通路長が可変とされており、オリフィス通路184のチューニング周波数を入力振動の周波数に応じて制御することで、より広い周波数の振動に対して有効な防振効果を得ることが出来るようになっている。
すなわち、本実施形態では、連通用スリット234において隔壁部282よりも軸方向下側に位置する部分によって、オリフィス通路184の平衡室174側の開口部が形成されている。更に、第一のオリフィス形成部材272のオリフィス形成用溝180が、軸方向に傾斜して周方向に延びる螺旋状とされていると共に、第二のオリフィス形成部材306の外周縁部の下面が、軸方向に傾斜することなく周方向に延びる略水平面とされている。これらによって、第二のオリフィス形成部材306が第一のオリフィス形成部材272に対して軸方向に相対変位せしめられると、オリフィス通路184の平衡室174側の開口部が周方向に移動せしめられるようになっている。その結果、オリフィス通路184の受圧室172側開口部と平衡室174側開口部の間の流体流路長が可変とされて、オリフィス通路184のチューニング周波数が入力振動の周波数に応じて制御可能とされている。
また、本実施形態では、第二のオリフィス形成部材306が全体として略板形状となっており、第二のオリフィス形成部材306の外周縁部における軸方向寸法を小さくすることが出来る。それ故、仕切部材304の軸方向でのサイズを小さくして、エンジンマウント302全体の小型化及び軽量化を実現することが出来る。
また、図22には、本発明に係る流体封入式防振装置の第十の実施形態としてのエンジンマウントを構成する仕切部材310が示されている。なお、図22〜図27において、図示が省略されている部分については、前記第七の実施形態と実質的に同一とする。
すなわち、仕切部材310は、外側オリフィス部材としての第一のオリフィス形成部材312と、内側オリフィス部材としての第二のオリフィス形成部材314によって構成されている。第一のオリフィス形成部材312は、厚肉の略円筒形状であって、図23にも示されているように、外周面に開口して軸方向に非傾斜で周方向に延びるオリフィス形成用溝316が、軸方向中間部分において略半周に亘って形成されている。このオリフィス形成用溝316の外周側の開口部が第二の取付金具144で蓋されることにより、受圧室172と平衡室174を連通するオリフィス通路318が形成されている。一方、第二のオリフィス形成部材314は、図24に示されているように、インナ筒状部186と隔壁部188と連結部190を一体的に備えた構造とされている。
また、第一のオリフィス形成部材312に対して連通用スリット320が形成されていると共に、第二のオリフィス形成部材314に対してオリフィス接続用窓としての連通窓322が形成されている。そこにおいて、本実施形態では、連通用スリット320が軸方向で傾斜せずに周方向に延びていると共に、連通窓322が軸方向に所定の角度で傾斜して周方向に延びる螺旋状とされており、連通用スリット320と連通窓322が軸方向に相対的に傾斜して周方向に延びるように形成されている。そして、連通用スリット320と連通窓322は、周上の一部において交差しており、連通用スリット320と連通窓322の交点においてオリフィス通路318の平衡室174側の開口部が形成されている。なお、本実施形態では、オリフィス形成用溝316と連通用スリット320によって、オリフィス形成用窓が構成されている。
また、連通用スリット320と連通窓322が相対的に傾斜していることで、連通用スリット320と連通窓322の交点の位置が、第一のオリフィス形成部材312と第二のオリフィス形成部材314の軸方向への相対変位によって、オリフィス形成用溝316の長さ方向に変化するようになっており、オリフィス通路318の長さを変化させることでオリフィス通路318のチューニングを変更可能となっている。
このように、周方向環状の連通用スリット320と螺旋状の連通窓322を備える仕切部材310を含んで構成されたエンジンマウントにおいても、第二のオリフィス形成部材314を軸方向に往復変位させてオリフィス通路318のチューニング周波数を調節することが出来て、より広い周波数域の振動に対して有効な防振効果を得ることが出来る。
また、図25には、本発明に係る流体封入式防振装置の第十一の実施形態としてのエンジンマウントを構成する仕切部材324が示されている。即ち、仕切部材324は、第一のオリフィス形成部材176と、内側オリフィス部材としての第二のオリフィス形成部材326によって構成されている。第二のオリフィス形成部材326は、インナ筒状部186と隔壁部188と連結部190を一体的に備えた構造とされている。また、第二のオリフィス形成部材326には、インナ筒状部186を径方向に貫通して連通用スリット234に対応する半周程度の長さで延びる連通窓322が形成されている。
そこにおいて、図25に示されているように、連通用スリット234と連通窓322の両方が軸方向に傾斜して周方向に延びる螺旋状とされていると共に、連通用スリット234の傾斜方向と連通窓322の傾斜方向が互いに逆向きとなっている。これにより、連通用スリット234と連通窓322が、軸方向で相対的に傾斜して周方向に延びて、周上の一部で交差せしめられている。そして、連通用スリット234と連通窓322の交点においてオリフィス通路184が平衡室174に接続されている。
また、連通用スリット234と連通窓322が相対的に傾斜していることで、連通用スリット234と連通窓322の交点の位置が、第一のオリフィス形成部材176と第二のオリフィス形成部材326の軸方向への相対変位によって、オリフィス形成用溝180の長さ方向に変化するようになっており、オリフィス通路184の長さを変化させることでオリフィス通路184のチューニングを変更可能となっている。
このように、螺旋状の連通用スリット234と螺旋状の連通窓322を備える仕切部材324を含んで構成されたエンジンマウントにおいても、第二のオリフィス形成部材326を軸方向に往復駆動変位させることで、オリフィス通路184のチューニング周波数を調節することが可能であり、より広い周波数域の振動に対して有効な防振効果を得ることが出来る。
さらに、それら連通用スリット234と連通窓322が逆向き傾斜の螺旋状とされていることにより、連通用スリット234と連通窓322の軸方向の相対的な傾斜角を大きく設定することが出来る。それ故、第一,第二のオリフィス形成部材176,326の軸方向での相対変位量に対する連通用スリット234と連通窓322の交点位置の変化を小さく設定して、オリフィス通路184のチューニングの変更を高精度に行うことが出来る。
また、図26には、本発明に係る流体封入式防振装置の第十二の実施形態としてのエンジンマウントを構成する仕切部材328が示されている。仕切部材328は、外側オリフィス部材としての第一のオリフィス形成部材330と、第二のオリフィス形成部材178を含んで構成されている。また、第一のオリフィス形成部材330には、内周面に開口して周方向に延びるオリフィス形成用溝332が形成されており、オリフィス形成用溝332の内周側開口部を第二のオリフィス形成部材178で覆蓋することで受圧室172と平衡室174を連通するオリフィス通路334が形成されている。更に、第二のオリフィス形成部材178においてオリフィス形成用溝332に対して軸方向で相対的に傾斜して周方向に延びる連通窓238が形成されて、オリフィス形成用溝332の内周側開口部と連通窓238の交点を通じてオリフィス通路334が平衡室174に連通されており、第二のオリフィス形成部材178の軸方向変位によってオリフィス通路334の通路長が変更されるようになっている。このように、オリフィス通路の具体的な構造は特に限定されるものではない。
また、図27には、本発明に係る流体封入式防振装置の第十三の実施形態としてのエンジンマウントを構成する仕切部材の第二のオリフィス形成部材336が示されている。第二のオリフィス形成部材336は、インナ筒状部186と連結部190の径方向間に跨って延びる複数のスポーク状部338を有しており、スポーク状部338によってインナ筒状部186と連結部190が連結されることで、連通窓238を挟んだ軸方向両側が連結されている。このように、第二のオリフィス形成部材における連通窓を挟んだ軸方向両側が、複数の連結桟で連結されていることは必須ではない。
また、図28には、本発明に係る流体封入式防振装置の第十四の実施形態として、自動車用エンジンマウント340が示されている。エンジンマウント340は、第一の取付部材としての第一の取付金具342と第二の取付部材としての第二の取付金具344を本体ゴム弾性体346で連結した構造を有している。そして、第一の取付金具342が図示しないパワーユニット側に取り付けられると共に、第二の取付金具344が図示しない車両ボデー側に取り付けられることで、パワーユニットが車両ボデーに防振支持されるようになっている。なお、以下の説明において、上下方向とは、特に説明がない限り、エンジンマウント340の軸方向である図28中の上下方向を言うものとする。
より詳細には、第一の取付金具342は、略円形ブロック形状を有しており、上端面の中央には、上方に向かって突出する取付ボルト348が固設されている。この取付ボルト348によって、第一の取付金具342がパワーユニットに固定されるようになっている。
一方、第二の取付金具344は、全体として大径の略円筒形状とされており、その上端部分は、次第に拡開するテーパ筒部350とされている。また、第二の取付金具344には、ブラケット352が外嵌固定されている。ブラケット352は、略カップ状とされた取付部354の外周面に複数の取付脚部356が溶着された構造とされている。そして、取付部354が第二の取付金具344に対して外挿状態で圧入されることにより、ブラケット352が第二の取付金具344に取り付けられている。このブラケット352の各取付脚部356に形成された取付孔に挿通される図示しない固定ボルトにより、ブラケット352ひいては第二の取付金具344が車両ボデーに固定されるようになっている。
また、これら第一の取付金具342と第二の取付金具344は、本体ゴム弾性体346によって連結されている。本体ゴム弾性体346は略円錐台形状とされており、その小径側端部に対して第一の取付金具342が所定深さで埋められた状態で加硫接着されている一方、第二の取付金具344のテーパ筒部350が、本体ゴム弾性体346の大径側端部外周面に加硫接着されている。更に、本体ゴム弾性体346の大径側端面には、逆すり鉢状の大径凹所358が形成されている。更にまた、第二の取付金具344の内周面を覆う薄肉のシールゴム層360が、本体ゴム弾性体346の外周縁部から下方に延び出して一体形成されている。
また、第二の取付金具344の下側開口部は、可撓性膜としてのダイヤフラム362で蓋されている。ダイヤフラム362は、軸方向に弛みをもつ薄肉略円環板形状のゴム膜であって、その径方向中央部分には略円板形状の固着プレート364が配設されており、ダイヤフラム362の内周縁部が固着プレート364の外周縁部に対して全周に亘って加硫接着されている。更に、ダイヤフラム362の外周縁部には、環状の固定金具366が加硫接着されており、固定金具366が第二の取付金具344の下端部に対して内挿状態で固定されることにより、第二の取付金具344の下側開口部がダイヤフラム362によって流体密に閉塞されている。これにより、第二の取付金具344内には、本体ゴム弾性体346とダイヤフラム362の軸方向間に、外部空間に対して密閉されて非圧縮性流体が封入された流体室368が形成されている。なお、封入流体としては、水やアルキレングリコール等の低粘性流体が好適に採用される。
また、流体室368には、厚肉の略円板形状を有する仕切部材370が軸直角方向に広がるように配設されている。そして、流体室368が仕切部材370を挟んで軸方向に二分されており、仕切部材370を挟んだ上側には、壁部の一部が本体ゴム弾性体346で構成されて、振動入力時に圧力変動が及ぼされる受圧室372が形成されていると共に、仕切部材370を挟んだ下側には、壁部の一部がダイヤフラム362で構成されて、容積可変とされた平衡室374が形成されている。
さらに、仕切部材370は、図28,図29に示されているように、外側オリフィス部材としての第一のオリフィス形成部材376と、内側オリフィス部材としての第二のオリフィス形成部材378とを含んで構成されている。
第一のオリフィス形成部材376は、略円筒形状であって、金属や合成樹脂等で形成された硬質の部材とされており、第二の取付金具344の内周側に嵌着固定されている。また、図30,図31に示されているように、第一のオリフィス形成部材376の軸方向上部には、外周面に開口して周方向に一周弱の所定長さで延びる周溝380が形成されている。この周溝380の両端部には、軸方向に延びる連通孔382,384が形成されており、周溝380の両端部が、それら連通孔382,384を通じて受圧室372と平衡室374に連通されている。更に、第一のオリフィス形成部材376の軸方向中間部分には、外周面に開口して周方向に半周程度の長さで延びるオリフィス形成用溝386が形成されている。このオリフィス形成用溝386は、一方の端部が軸方向上方に延びる連通孔388を通じて受圧室372に連通されている。また、オリフィス形成用溝386は、周溝380と同じ深さで周溝380よりも軸方向寸法が大きくなっており、溝の断面積が大きく設定されている。なお、図30に示されているように、連通孔382,384と連通孔388は、周上の異なる位置にそれぞれ独立して形成されている。
そして、第一のオリフィス形成部材376は、第二の取付金具344に縮径加工が施されることにより、第二の取付金具344の内周側に固定支持されている。更に、第一のオリフィス形成部材376の外周面が第二の取付金具344の内周面に重ね合わされて支持されることにより、第一のオリフィス形成部材376に形成された周溝380の外周側の開口部が流体密に蓋されている。これにより、第一のオリフィス形成部材376の外周縁部を周方向に延びて受圧室372と平衡室374を相互に連通する流体通路としての第一のオリフィス通路390が形成されている。この第一のオリフィス通路390は、本実施形態において、受圧室372と平衡室374を常時連通するように形成されている。なお、本実施形態では、第一のオリフィス通路390が、エンジンシェイクに相当する低周波数にチューニングされており、アイドリング振動に相当する中周波数にチューニングされた後述する第二のオリフィス通路392のチューニング周波数よりも低周波数に設定されている。
また、オリフィス形成用溝386の外周側の開口部も第二の取付金具344によって流体密に蓋されている。これにより、第一のオリフィス形成部材376の外周縁部には、軸方向に傾斜することなく周方向に延びるトンネル状の流路が、第一のオリフィス通路390に対して独立して形成されている。この流路は、一方の端部が連通孔388を通じて受圧室372に接続されていると共に、他方の端部が後述する連通用スリット436と連通窓438の交点を通じて平衡室374に接続されるようになっており、受圧室372と平衡室374を相互に連通するオリフィス通路としての第二のオリフィス通路392が、オリフィス形成用溝386を利用して形成されている。なお、第二のオリフィス通路392は、アイドリング振動に相当する20Hz〜40Hz程度の中周波数にチューニングされている。
また、第一のオリフィス形成部材376には、第二のオリフィス形成部材378が内挿状態で嵌め込まれている。第二のオリフィス形成部材378は、図28に示されているように、インナ筒状部394を有している。インナ筒状部394は、第一のオリフィス形成部材376の内径に対応する外径を有する略円筒形状を呈しており、軸方向に直線的に延びている。また、インナ筒状部394の軸方向中間部分には、軸直角方向に広がるように隔壁部396が一体形成されており、隔壁部396によってインナ筒状部394の中央孔が閉塞されて上下に隔てられている。更に、隔壁部396の径方向中央部には、下方に向かって突出する小径円柱形状の連結部398が一体形成されている。
また、第二のオリフィス形成部材378には、液圧吸収手段としての第二の可動ゴム膜400が配設されている。第二の可動ゴム膜400は、隔壁部396の径方向中間部分に形成された貫通孔を蓋するように軸直角方向に広がっており、一方の面に受圧室372の圧力が及ぼされると共に、他方の面に平衡室374の圧力が及ぼされるようになっている。なお、貫通孔は、図29に示されているように、径方向に延びるスポーク状部402を挟んで周上に複数形成されており、各貫通孔を閉塞するように配設された軸方向視で略扇形を呈する複数のゴム膜によって第二の可動ゴム膜400が構成されている。
そして、図28に示されているように、第二のオリフィス形成部材378は、第一のオリフィス形成部材376に対して内挿配置されており、筒状とされた第一のオリフィス形成部材376の内周側(中央孔)が、第二のオリフィス形成部材378のインナ筒状部394及び隔壁部396によって上下に二分されている。これにより、第一のオリフィス形成部材376と第二のオリフィス形成部材378の協働によって、流体室368を上下に仕切る本実施形態の仕切部材370が構成されている。また、第二のオリフィス形成部材378は、第一のオリフィス形成部材376に対して軸方向への相対変位を許容された状態で嵌め込まれている。なお、第二のオリフィス形成部材378におけるインナ筒状部394の内周側で隔壁部396よりも上方の領域によって、受圧室372の一部が構成されていると共に、第二のオリフィス形成部材378におけるインナ筒状部394と連結部398の径方向間の領域によって、平衡室374の一部が構成されている。
また、図28に示されているように、第二のオリフィス形成部材378の連結部398には、下方に向かって延び出す駆動軸としての出力軸404が固設されている。この出力軸404は、上部が下部よりも小径の略段付ロッド形状を有しており、蓋板408の中央部分を貫通してハウジング410外に突出せしめられている。更に、出力軸404の下端部が、アクチュエータ406に取り付けられている。アクチュエータ406は、ダイヤフラム362の下方に配設されており、ブラケット352の取付部354と、取付部354の開口部を軸方向中間部分において蓋するように嵌め付けられた略円環板形状の蓋板408からなるハウジング410を有している。また、蓋板408の内周縁部には、軸方向上方に向かって突出する略円筒形状の案内筒部412が一体形成されている。この案内筒部412の径方向一方向で対向する部分には、内周面に開口して軸方向に延びる一対の係合溝414,414が形成されて、案内筒部412の内周面および上端面に開口せしめられている。
また、ハウジング410には、電気モータ416が収容されている。電気モータ416は、固定子の多相巻線に順次パルスを加えて、その1パルスごとに回転子(回転軸418)が一定角度だけ回転するパルスモータであって、バッテリ等の電源装置420から電気モータ416に加えられる駆動パルスを制御回路422によって制御することにより、回転軸418の回転量を制御可能となっている。特に本実施形態では、走行/停止判定手段としての速度センサ424によって、走行状態であるか停車状態であるかを判断する状態信号が制御回路422に入力されると共に、回転数測定手段としてのエンジンコントロールユニット426によって、自動車のエンジン回転数情報が制御回路422に入力されるようになっている。そして、入力信号に応じて制御回路422が電気モータ416への通電の有無や通電時間(回転軸418の回転量)を制御するようになっている。
また、電気モータ416は、ハウジング410の径方向中央部分に配置されており、回転軸418が蓋板408の中央孔を通じて上方に突出せしめられている。更に、回転軸418には、雄ねじ部材428が同一中心軸上で外挿固定されており、雄ねじ部材428が回転軸418と一体的に回転作動されるようになっている。この雄ねじ部材428には、その外周面にねじ山が形成されている。
また、雄ねじ部材428には、駆動部材430が取り付けられている。駆動部材430は、全体として逆向きの略有底円筒形状を有しており、周壁部の内周面に対して雄ねじ部材428に対応するねじ山が形成されている。そして、駆動部材430は、雄ねじ部材428を取り付けられた回転軸418に対して取り付けられており、雄ねじ部材428と駆動部材430が螺合されている。
また、駆動部材430の上面に出力軸404が固設されることにより中心軸上を延びる駆動軸が構成されており、固着プレート364を貫通して仕切部材370の第二のオリフィス形成部材378に固定されている。即ち、ハウジング410外に突出せしめられた出力軸404の上部(小径部)が、ダイヤフラム362の固着プレート364に貫通形成された挿通孔432に挿通固定されており、出力軸404が、固着プレート364を介してダイヤフラム362に固着されて、ダイヤフラム362を挟んだ上下両側に突出せしめられている。更に、出力軸404と固着プレート364の間が流体密にシールされており、固着プレート364の挿通孔432を通じた非圧縮性流体の外部への漏出が防止されている。なお、固着プレート364における挿通孔432のシールは、例えば、出力軸404の段差と固着プレート364の内周縁部との軸方向対向面間にOリングを配設したり、出力軸404と固着プレート364を一体形成したり、出力軸404と固着プレート364を溶接によって固定することで実現出来る。本実施形態では、出力軸404と固着プレート364が相互に溶着されており、駆動軸がそれら出力軸404と固着プレート364によって構成されている。
さらに、駆動部材430の下端部には、径方向一方向で外方に向かって突出する一対の係合突起434,434が形成されており、各係合突起434が案内筒部412の係合溝414に差し込まれている。これにより、係合溝414と係合突起434の周方向での当接によって、駆動部材430の中心軸回りでの回転が阻止されていると共に、係合溝414に沿った係合突起434の変位によって、駆動部材430の軸方向への駆動変位が許容されている。以上のように、係合溝414と係合突起434によって本実施形態における回転阻止機構が実現されている。
そして、外部の電源装置420から電気モータ416に対して通電されて、回転軸418が回転駆動されることによって、駆動部材430が軸方向に往復駆動されるようになっている。即ち、雄ねじ部材428と駆動部材430が螺合されていると共に、係合溝414と係合突起434で構成された回転阻止機構が設けられていることにより、回転軸418に固定された雄ねじ部材428が回転駆動されると、回転軸418の回転方向に応じて駆動部材430が雄ねじ部材428に対して軸方向に相対変位せしめられるようになっている。このように、本実施形態では、雄ねじ部材428と駆動部材430で構成された螺子機構によって、電気モータ416の回転駆動力を軸方向の往復駆動力に変換する運動変換機構が構成されている。
さらに、駆動部材430に及ぼされた軸方向の駆動力は、駆動部材430に固設された出力軸404を介して第二のオリフィス形成部材378に伝達されるようになっており、第二のオリフィス形成部材378が軸方向に往復駆動されるようになっている。なお、本実施形態では、ダイヤフラム362の内周縁部に加硫接着された固着プレート364に対して、駆動部材430が貫通状態で固定されており、ダイヤフラム362の変形によって駆動部材430の軸方向への駆動変位が許容されるようになっている。
ここにおいて、第二のオリフィス通路392の一方の端部が、連通孔382を通じて受圧室372に連通されていると共に、第二のオリフィス通路392の他方の端部が、連通用スリット436とオリフィス接続用窓としての連通窓438との交点を通じて平衡室374に連通されている。
連通用スリット436は、第一のオリフィス形成部材376に形成されたオリフィス形成用溝386の内周側壁部を径方向に貫通するように略螺旋状に形成されて、第一のオリフィス形成部材376の内周面に開口せしめられている。このような連通用スリット436が周方向に延びて設けられていることにより、オリフィス形成用溝386が周方向の略全長に亘って第一のオリフィス形成部材376の中央孔に対して連通されている。また、本実施形態では、連通用スリット436の周上に補強桟440が設けられており、第一のオリフィス形成部材376における連通用スリット436を挟んだ上下両側が、補強桟440によって一体的に連結されている。なお、本実施形態では、オリフィス形成用溝386と連通用スリット436によってオリフィス形成用窓が構成されている。
一方、連通窓438は、第二のオリフィス形成部材378のインナ筒状部394を径方向に貫通するように略環状に形成されて、第二のオリフィス形成部材378の外周面に開口せしめられている。また、連通窓438は、第二のオリフィス形成部材378のインナ筒状部394において隔壁部396よりも下方に形成されており、連通窓438が平衡室374の一部を構成するインナ筒状部394と連結部398の径方向間の領域に連通されている。更に、本実施形態における第二のオリフィス形成部材378では、連通窓438の周上に複数の連結桟442が設けられており、インナ筒状部394における連通窓438を挟んだ両側が、それら連結桟442によって周上の複数箇所で一体的に連結されている。
また、本実施形態では、連通用スリット436が、軸方向に傾斜しながら周方向に略半周に亘って延びる略螺旋状となっていると共に、連通窓438が軸方向に傾斜することなく周方向に全周に亘って延びる環状となっている。これらによって、連通用スリット436と連通窓438は、軸方向で相対的に傾斜して周方向に延びている。なお、本実施形態において、連通用スリット436は、軸方向の寸法がオリフィス形成用溝386よりも小さくなっており、周方向一方の端部がオリフィス形成用溝386の上端に位置せしめられていると共に、周方向他方の端部がオリフィス形成用溝386の下端に位置せしめられていることにより、軸方向に傾斜して周方向に延びている。
そして、第二のオリフィス形成部材378が、第一のオリフィス形成部材376の中央孔に対して、軸方向での相対変位を許容された状態で嵌め込まれることにより、第一のオリフィス形成部材376の連通用スリット436と、第二のオリフィス形成部材378の連通窓438が、周上の一部において相互に交差せしめられている。これにより、連通用スリット436と連通窓438の交点において第二のオリフィス通路392の平衡室374側の開口部が形成されて、受圧室372と平衡室374が第二のオリフィス通路392によって相互に連通されている。特に、本実施形態では、連通用スリット436において連通窓438との交点を外れた部分が、インナ筒状部394によって覆われて閉塞されるようになっており、連通孔382と上記交点との間に第二のオリフィス通路392の流路が形成されるようになっている。
なお、本実施形態では、第一のオリフィス形成部材376の内周面と第二のオリフィス形成部材378の外周面が、僅かな隙間をもって軸直角方向に重ね合わされている。これにより、第二のオリフィス形成部材378の第一のオリフィス形成部材376に対する軸直角方向への相対変位を制限しつつ、軸方向への相対変位を案内する、軸方向ガイド手段が構成されている。
そこにおいて、第二のオリフィス通路392は、その通路長が可変とされており、通路断面積(A)と通路長(L)の比(A/L)によって設定されるチューニング周波数を、入力振動の周波数に応じて調節することが可能となっている。即ち、第二のオリフィス形成部材378がアクチュエータ406によって軸方向に駆動変位せしめられると、螺旋状とされた連通用スリット436と周方向に延びる連通窓438の交差位置が、オリフィス形成用溝386の長さ方向に変化せしめられる。これにより、それら連通用スリット436と連通窓438の協働で形成される第二のオリフィス通路392の平衡室374側開口部の位置が周方向に変化せしめられて、第二のオリフィス通路392の通路長(L)が変更されるようになっている。その結果、第二のオリフィス通路392のチューニング周波数が変更設定されて、異なる周波数の振動に対してそれぞれ有効な防振効果を得ることが出来るようになっている。
また、本実施形態では、第二のオリフィス形成部材378が作動方向の上端乃至中間に位置せしめられることにより、連通用スリット436と連通窓438が周上の一部で交差せしめられるようになっていると共に、図28に示されているように、第二のオリフィス形成部材378が作動方向の下端に位置せしめられることにより、連通窓438が連通用スリット436の下端よりも下方に位置せしめられて、連通用スリット436と連通窓438の交差が解除されるようになっている。これにより、第二のオリフィス通路392の連通状態と遮断状態が選択的に切換可能となっている。
このような本実施形態に従う構造のエンジンマウント340には、車両への装着下、自動車の走行状態やエンジンの回転数等に応じて周波数の異なる複数種類の振動が選択的に或いは複合的に入力されるようになっている。そして、自動車の走行状態と停止状態を速度センサ424によって判断すると共に、自動車のエンジン回転数をエンジンコントロールユニット426によって測定し、それらの情報に基づいて第二のオリフィス形成部材378の軸方向位置を制御することにより、入力振動に応じた防振効果が効率的に発揮されるようになっている。
すなわち、速度センサ424によって自動車が走行状態であると判断された場合には、制御回路422によって電気モータ416が制御されて、第二のオリフィス形成部材378が下端に駆動変位せしめられる。これにより、連通用スリット436と連通窓438が軸方向で離隔した非交差状態に保持されて、第二のオリフィス通路392が遮断されるようになっている。その結果、第一のオリフィス通路390を通じての流体流動が効率的に生ぜしめられて、走行時に問題となるエンジンシェイクに相当する低周波数振動に対して、目的とする防振効果(高減衰効果)が発揮されるようになっている。
一方、速度センサ424によって自動車が停止状態であると判断された場合には、制御回路422によって電気モータ416が制御されて、第二のオリフィス形成部材378が軸方向の上端から中間の所定位置に駆動変位せしめられることにより、第二のオリフィス通路392が連通状態に切り替えられる。そこにおいて、第二のオリフィス形成部材378の軸方向位置を、エンジンコントロールユニット426によって測定されたエンジン回転数の情報に基づいて制御することにより、第二のオリフィス通路392の通路長がエンジン回転数に応じて調節されるようになっている。そして、流路断面積を維持しつつ通路長を変化させることで、第二のオリフィス通路392のチューニング周波数が、エンジン回転数に応じて変化する入力振動の周波数に調節されるようになっている。
より具体的には、エンジンの始動時やエアーコンディショナの起動等によってエンジン回転数が高回転となっている場合には、第二のオリフィス形成部材378が上端側に駆動変位せしめられて、第二のオリフィス通路392の通路長が短く設定される。これにより、エンジンの高回転時に入力される比較的に高周波数のアイドリング振動に対して、防振効果が効率的に発揮されるようになっている。一方、上記の如き特別な高回転状態を除く定格回転時には、第二のオリフィス形成部材378が軸方向の中間に位置せしめられて、第二のオリフィス通路392の通路長が比較的に長く設定される。これにより、比較的に低周波数のアイドリング振動に対して、防振効果が効率的に発揮されるようになっている。
なお、上記の如き制御においては、第二のオリフィス形成部材378が軸方向で任意の位置に変位保持されるようになっており、第二のオリフィス通路392のチューニング周波数が連続的に調節可能となっていても良い。一方、第二のオリフィス形成部材378が軸方向で段階的に複数の位置に変位保持されるようになっており、第二のオリフィス通路392のチューニング周波数が段階的に調節可能となっていても良い。なお、第二のオリフィス通路392のチューニングを段階的に調節する場合には、エンジンコントロールユニット426によってエンジンの回転数を段階的測定値として測定しても良い。
さらに、本実施形態では、第一のオリフィス通路390が常時連通状態に保持される構造となっていると共に、第一のオリフィス通路390のチューニング周波数が、第二のオリフィス通路392のチューニング周波数よりも低周波数に設定されている。それ故、第二のオリフィス通路392が連通状態に切り替えられるアイドリング振動の入力時には、第一のオリフィス通路390が反共振作用によって目詰まりを生じて、実質的な遮断状態となるようになっている。その結果、第二のオリフィス通路392を通じての流体流動が効率的に生ぜしめられて、目的とする防振効果を有効に得ることが出来る。しかも、第一のオリフィス通路390を遮断するための機構を特別に設ける必要がなく、簡単な構造によってオリフィス通路390,392の切替えを実現することが出来る。
また、走行こもり音等に相当するアイドリング振動よりも更に高周波数の振動が入力された場合には、第二のオリフィス形成部材378の隔壁部396に設けられた第二の可動ゴム膜400が微小変形せしめられて、第二の可動ゴム膜400の液圧吸収作用に基づく防振効果(低動ばね効果)が発揮されるようになっている。
以上のように、本実施形態では、低周波数にチューニングされた第一のオリフィス通路390と、中周波数域の広い範囲に亘って防振効果を発揮する第二のオリフィス通路392と、高周波数にチューニングされた第二の可動ゴム膜400とによって、より広い周波数域の入力振動に対して有効な防振効果が発揮されるようになっている。
また、図32には、本発明の第十五の実施形態としての自動車用エンジンマウント444が示されている。このエンジンマウント444は、第一の取付部材としての第一の取付金具446と第二の取付部材としての第二の取付金具448を本体ゴム弾性体346で連結した構造を有している。なお、以下の説明において、前記実施形態と実質的に同一の部材および部位については、同一の符号を付すことで説明を省略する。
より詳細には、第一の取付金具446は、逆向きの略円錐台形状を有する固着部450と、固着部450の上端縁部において外周側に向かって突出するフランジ部452と、固着部450の上端部から上方に向かって突出する略円錐台形状の取付部454が、一体形成された構造となっている。更に、第一の取付金具446は、中心軸上を延びるボルト穴456に対して図示しない取付ボルトが螺着されることにより、パワーユニットに取り付けられるようになっている。
一方、第二の取付金具448は、第一の取付金具446と同様の剛性材で形成されており、全体として大径の略円筒形状を有している。更に、第二の取付金具448の上端部が次第に拡開するテーパ筒部458とされていると共に、下端部には段差部460を挟んで筒状のかしめ片462が一体形成されている。また、第二の取付金具448の下端部には、略有底円筒形状とされたブラケット464の開口周縁部がかしめ片462でかしめ固定されており、ブラケット464の外周面に固定された複数の取付脚部356が図示しない車両ボデーに取り付けられることで、第二の取付金具448がブラケット464を介して車両ボデーに取り付けられるようになっている。
これら第一の取付金具446と第二の取付金具448は、同一中心軸上で上下に離隔配置されて、本体ゴム弾性体346によって相互に連結されている。これにより、第二の取付金具448の上側開口部が本体ゴム弾性体346によって流体密に閉塞されている。
また、第二の取付金具448の下側開口部は、ダイヤフラム362によって蓋されている。ダイヤフラム362は、軸方向に充分な弛みを与えられた薄肉略円環板形状のゴム膜であって、その内周縁部が全周に亘ってジョイント筒部材466に加硫接着されている。ジョイント筒部材466は、逆向きの略有底円筒形状を有する部材であって、内周面の軸方向中間部分に全周に亘って延びる湾曲面が形成されていると共に、軸方向中間部分において外周側に突出するフランジ状の固着フランジ468が一体形成されている。そして、ジョイント筒部材466の外周面に対してダイヤフラム362の内周面が重ね合わされて、固着フランジ468を含む部分に加硫接着されることにより、ジョイント筒部材466がダイヤフラム362の径方向中央部分に固着されている。
一方、ダイヤフラム362の外周縁部は、全周に亘って環状の固定金具470に加硫接着されている。そして、固定金具470が第二の取付金具448の下端部に対して挿し入れられてかしめ片462でかしめ固定されることにより、ダイヤフラム362が第二の取付金具448の下端部に取り付けられている。これにより、第二の取付金具448の下側開口部がダイヤフラム362によって流体密に閉塞されており、第二の取付金具448の内周側において本体ゴム弾性体346とダイヤフラム362の軸方向対向面間には、非圧縮性流体を封入された流体室368が形成されている。
また、流体室368には、仕切部材472が配設されている。仕切部材472は、厚肉の略円板形状を有しており、流体室368内で軸直角方向に広がるように配設されて、第二の取付金具448によって支持されている。これにより、流体室368が仕切部材472を挟んで上下に二分されて、仕切部材472を挟んだ両側に受圧室372と平衡室374が形成されている。
さらに、仕切部材472は、外側オリフィス部材としての第一のオリフィス形成部材474と内側オリフィス部材としての第二のオリフィス形成部材476を含んで構成されている。
第一のオリフィス形成部材474は、全体として逆向きの略有底筒体形状であって、PPS等の合成樹脂やアルミニウム合金等の金属で形成されている。また、第一のオリフィス形成部材474には、外周面に開口して周方向環状とされた周溝478が形成されている。また、周溝478の下方には、外周面に開口して傾斜しながら周方向に延びる螺旋状のオリフィス形成用溝480が形成されている。更に、オリフィス形成用溝480の内周側壁部には、径方向に貫通して第一のオリフィス形成部材474の内周面に開口する螺旋状の連通用スリット482が形成されており、オリフィス形成用溝480と連通用スリット482によってオリフィス形成用窓が構成されている。また、第一のオリフィス形成部材474の径方向中央部分には、上底壁部を貫通する支持孔484が形成されており、支持孔484の開口縁部から下方に向かって筒状の支持筒部486が突出せしめられている。また、支持孔484には、筒状の案内スリーブ488が嵌め付けられている。この案内スリーブ488は、自己潤滑性樹脂で形成されたり、グリースを塗布されること等によって、内周面の摩擦係数が小さく抑えられている。
そして、第一のオリフィス形成部材474は、第二の取付金具448の内周側に嵌め入れられて、第二の取付金具448によって支持されている。更に、第一のオリフィス形成部材474の外周面が、第二の取付金具448の内周面に対してシールゴム層360を介して密着せしめられることにより、周溝478を利用して第一のオリフィス通路390が形成されていると共に、オリフィス形成用溝480を利用して第二のオリフィス通路392が形成されている。なお、本実施形態では、周溝478の一方の端部と、オリフィス形成用溝480の一方の端部が、何れも連通孔490を通じて受圧室372に連通されており、第一のオリフィス通路390と第二のオリフィス通路392の受圧室372側端部が、共通の流路で形成されている。
また、第一のオリフィス形成部材474の内周側には、第二のオリフィス形成部材476が挿し入れられている。第二のオリフィス形成部材476は、略円板形状の隔壁部492と、隔壁部492の外周縁部から下方に向かって突出するインナ筒状部494を一体的に備えた逆向きの略有底円筒形状を有しており、POM等の合成樹脂やアルミニウム合金等の金属で形成されている。また、隔壁部492は、径方向中間部分がテーパ形状の傾斜部496とされており、傾斜部496を挟んで内周部分が外周部分よりも下方に位置せしめられている。更に、インナ筒状部494には、周方向環状に延びてインナ筒状部494を径方向に貫通する連通窓438が形成されている。更にまた、隔壁部492の内周部分には、軸方向上方に向かって突出する小径円柱形状の案内突部498が一体形成されている。なお、第二のオリフィス形成部材476は、特に限定されるものではないが、後述する軸方向への変位をスムーズに実現するために、表面の摩擦係数を小さく設定されていることが望ましい。
この第二のオリフィス形成部材476は、第一のオリフィス形成部材474の内周側に挿し入れられている。そして、第二のオリフィス形成部材476が第一のオリフィス形成部材474の内周側に挿し入れられた状態で、第一のオリフィス形成部材474の下端面には、略円環板形状を呈する蓋金具500が取り付けられている。この蓋金具500は、径方向中間部分に設けられた段差を挟んで内周側が外周側よりも下方に位置せしめられていると共に、内径が第一のオリフィス形成部材474の内径よりも小さくなっており、段差を挟んだ内周側が第一のオリフィス形成部材474の下側開口部上に突出せしめられている。これにより、第二のオリフィス形成部材476の下端位置が、第二のオリフィス形成部材476のインナ筒状部494の下端面と、蓋金具500の内周縁部上面との当接によって規定されていると共に、第二のオリフィス形成部材476の第一のオリフィス形成部材474からの脱落が防止されている。なお、本実施形態では、第一のオリフィス形成部材474の内周面と第二のオリフィス形成部材476の外周面が、充分に小さな隙間を隔てて径方向に対向せしめられており、該隙間を通じた流体流動が実質的に防止されている。そして、第一のオリフィス形成部材474の内周側の領域は、第二のオリフィス形成部材476を挟んで上下に二分されている。
また、第二のオリフィス形成部材476の案内突部498が、第一のオリフィス形成部材474の案内スリーブ488に対して挿し込まれて、軸方向に滑動可能に支持されている。これにより、第二のオリフィス形成部材476の第一のオリフィス形成部材474に対する軸直角方向への相対変位を制限すると共に、第二のオリフィス形成部材476の第一のオリフィス形成部材474に対する軸方向への相対変位を案内する軸方向ガイド手段が構成されている。なお、本実施形態では、第一のオリフィス形成部材474の内周面と、第二のオリフィス形成部材476におけるインナ筒状部494の外周面が、僅かな隙間をもって重ね合わされており、第一のオリフィス形成部材474の内周面と第二のオリフィス形成部材476の外周面によっても、軸直角方向での位置決め作用と、軸方向への案内作用が発揮されるようになっている。
また、第二のオリフィス形成部材476は、ダイヤフラム362の径方向中央に固着されたジョイント筒部材466に固定されている。即ち、ジョイント筒部材466から上方に向かって突出する連結ボルト502が、第二のオリフィス形成部材476の案内突部498に螺着されることにより、ジョイント筒部材466と第二のオリフィス形成部材476が略同一中心軸上で固定されている。
一方、ジョイント筒部材466は、アクチュエータ504に連結されている。アクチュエータ504は、第二の取付金具448に固定されたブラケット464によって支持されており、ダイヤフラム362を挟んで流体室368と反対側(下方)に配設されている。より詳細には、アクチュエータ504は、ハウジング506に収容される電気モータ416と、電気モータ416の回転駆動によって軸方向に変位せしめられる従動部材である駆動軸としての駆動部材508とを含んで構成されている。
電気モータ416は、前記第十四の実施形態と同様のステップモータであって、バッテリ等の電源装置420からの通電を、制御回路422によって、速度センサ424およびエンジンコントロールユニット426からの情報に従って制御することにより、回転量を制御可能となっている。また、電気モータ416の回転軸418には、雄ねじ部材428が固定されている。雄ねじ部材428は、略円柱形状を有しており、軸方向の全長に亘って外周面にねじ山が刻設されている。
また、雄ねじ部材428には、従動部材としての駆動部材508が螺嵌されている。駆動部材508は、上部が軸方向に延びる略ロッド形状を有していると共に、下部が逆向きの略有底円筒形状を有しており、下部の内周面には、雄ねじ部材428に螺刻された雄ねじに対応する雌ねじが螺刻されている。更に、駆動部材508とハウジング506の間には、駆動部材508のハウジング506に対する相対回転を防止する回転制限機構が設けられている。本実施形態では、駆動部材508の外周面に図示しない二面幅が設けられており、ハウジング506の上底壁部に形成された駆動部材508の挿通孔が、駆動部材508の二面幅に対応する形状とされている。これにより、駆動部材508がハウジング506によって係止されて、駆動部材508の中心軸回りでの回転が防止されるようになっている。そして、電気モータ416に通電されて回転軸418及び雄ねじ部材428が回転せしめられることにより、駆動部材508がねじ機構によって軸方向に上下動せしめられるようになっている。
また、駆動部材508の上端部分は、軸方向に延びる略ロッド形状となっており、上端縁部がボール状の球状連結部510とされている。そして、球状連結部510が、ダイヤフラム362に固着されたジョイント筒部材466に対して内挿されて、ジョイント筒部材466の内周面に形成された湾曲面で当接支持されることにより、ジョイント筒部材466と駆動部材508が連結されている。これにより、アクチュエータ504の回転駆動力が、ねじ機構によって軸方向の往復駆動力に変換されて駆動部材508に及ぼされ、該往復駆動力が、駆動部材508に連結されたジョイント筒部材466を介して、第二のオリフィス形成部材476に伝達されるようになっている。
さらに、球状連結部510の外周面がジョイント筒部材466の湾曲面によって案内されることにより、駆動部材508とジョイント筒部材466が相対的に傾動可能とされている。これにより、アクチュエータ504の駆動力を第二のオリフィス形成部材476に伝達する経路上において、屈曲可能な部位が形成されている。なお、上述の説明からも明らかなように、本実施形態では、駆動部材508とジョイント筒部材466によってボールジョイントが構成されている。
このような本実施形態に従う構造のエンジンマウント444においては、第二のオリフィス形成部材476が第一のオリフィス形成部材474に対して軸方向に相対変位されることにより、第二のオリフィス通路392の連通状態と遮断状態が切り替えられるようになっていると共に、第二のオリフィス通路392の通路長が変化せしめられるようになっている。
すなわち、自動車の走行時には、第二のオリフィス形成部材476が軸方向の上端に位置せしめられて、連通用スリット482と連通窓438の交差状態が解除されることにより、第二のオリフィス通路392が遮断されて、第一のオリフィス通路390を通じての流体流動が生ぜしめられる。一方、自動車の停止時には、第二のオリフィス形成部材476がエンジン回転数に応じて軸方向の中間から下端の所定位置に位置せしめられて、第二のオリフィス通路392の通路長が入力振動に応じて制御されるようになっている。これにより、入力振動の周波数に応じて第二のオリフィス通路392のチューニング周波数が調節されるようになっている。以上のように、前記第十四の実施形態と同様に、第二のオリフィス通路392の通路長を入力振動の周波数に応じて制御することで、周波数が異なる複数種類の振動に対して、何れも有効な防振効果が発揮されるようになっている。
また、第二のオリフィス形成部材476とアクチュエータ504の駆動部材508が、ジョイント筒部材466と球状連結部510で構成されたボールジョイントを介して連結されている。それ故、部品の製造時や組付け時の誤差による第二のオリフィス形成部材476と駆動部材508の軸直角方向でのずれがボールジョイントで吸収されて、アクチュエータ504の組付け不良を防ぐことが出来る。
しかも、アクチュエータ504の駆動部材508を第二のオリフィス形成部材476に連結するジョイント筒部材466に対して、ダイヤフラム362の内周面が全周に亘って加硫接着されていることから、平衡室374の密閉性を高度に維持しつつ、第二のオリフィス形成部材476の変位駆動を実現することが出来る。
また、第二のオリフィス形成部材476においてインナ筒状部494が隔壁部492から下方に向かってのみ突出せしめられており、上下両側に突出せしめられた前記第十四の実施形態に比べて、軸方向のサイズが小型化されている。しかも、隔壁部492は、径方向中央部分が外周部分に比して凹んだ形状となっており、第一のオリフィス形成部材474に突設された支持筒部486が隔壁部492の凹み部分に入り込むことで、支持筒部486を設けることによる仕切部材472の軸方向寸法での大型化が回避されている。
また、第一のオリフィス形成部材474に設けられた案内スリーブ488に対して、第二のオリフィス形成部材476に一体形成された案内突部498が挿し入れられることにより、軸方向ガイド手段が構成されている。これにより、第二のオリフィス形成部材476を第一のオリフィス形成部材474に対して軸方向に小さな摩擦抵抗でスムーズに相対変位せしめることが出来て、小さな駆動力で相対変位を実現出来ると共に、電気モータ416の発熱等を抑えることが可能となる。特に、第一のオリフィス形成部材474の内周面と第二のオリフィス形成部材476の外周面のみによって軸方向ガイド手段を構成する場合に比して、連通用スリット482や連通窓438による引っ掛かりを回避出来ることから、より効果的なガイド機能を実現することが出来る。
また、第一のオリフィス形成部材474の内周側の領域が、第二のオリフィス形成部材476によって上下に二分されており、第二のオリフィス形成部材476を挟んだ上下の領域間において第一,第二のオリフィス通路390,392以外の流路を通じての流体流動が防止されている。それ故、受圧室372と平衡室374の相対的な圧力差に基づいて、第一,第二のオリフィス通路390,392の通路形状に応じた流体流動が高精度に生ぜしめられるようになっており、目的とする防振効果を効率良く発揮させることが出来る。
次に、図33には、本発明の第十六の実施形態としての自動車用エンジンマウント512が示されている。即ち、エンジンマウント512は、仕切部材514を備えている。仕切部材514は、第一のオリフィス形成部材474と、内側オリフィス部材としての第二のオリフィス形成部材516を有している。
より詳細には、第二のオリフィス形成部材516は、前記第十五の実施形態に示された第二のオリフィス形成部材476においてインナ筒状部494を省略した構造となっている。即ち、第二のオリフィス形成部材516は、軸直角方向に広がる略円板形状の中央部分と、同じく軸直角方向に広がる略円環板形状の外周部分が、テーパ状部で連結された構造を有しており、全体として板形状となっている。また、本実施形態において、第二のオリフィス形成部材516の隔壁部492の外周縁部には、上方に向かって突出する環状のガイド部518が一体形成されている。なお、このガイド部518の突出高さは、連通用スリット482の開口高さよりも大きく設定されて、外周面で連通用スリット482を遮断可能とされていても良いし、連通用スリット482の開口高さよりも小さく設定されて、連通用スリット482を遮断し得ないようになっていても良い。
この第二のオリフィス形成部材516は、第一のオリフィス形成部材474の内周側に対して嵌め入れられて、仕切部材514を構成している。そして、第二のオリフィス形成部材516の外周面が、第一のオリフィス形成部材474の内周面に重ね合わされており、連通用スリット482の周上の一部が、第二のオリフィス形成部材516の外周面で覆われている。これにより、第二のオリフィス形成部材516を挟んだ上側に第二のオリフィス通路392の受圧室372側開口部が形成されていると共に、下側に第二のオリフィス通路392の平衡室374側開口部が形成されている。
このような構造の仕切部材514を有するエンジンマウント512においても、第二のオリフィス通路392が連通状態と遮断状態に切替え可能とされていると共に、第二のオリフィス通路392の通路長が可変とされている。そして、第二のオリフィス通路392のチューニング周波数を入力振動の周波数に応じて制御することで、より広い周波数の振動に対して有効な防振効果を得ることが出来るようになっている。
すなわち、本実施形態では、第二のオリフィス形成部材516が駆動方向の上端から中間に位置せしめられることにより、隔壁部492の外周部分よりも軸方向下側において連通用スリット482が平衡室374に連通されて、第二のオリフィス通路392が連通状態とされるようになっている。一方、第二のオリフィス形成部材516が駆動方向の下端に位置せしめられることにより、連通用スリット482が平衡室374に対して非連通とされて、第二のオリフィス通路392が遮断状態とされるようになっている。
より詳細には、第二のオリフィス形成部材516が軸方向の上端から中間の所定位置に位置せしめられると、連通用スリット482において隔壁部492よりも軸方向下側に位置する部分によって、第二のオリフィス通路392の平衡室374側開口部が形成されて、第二のオリフィス通路392が連通状態とされるようになっている。更に、第一のオリフィス形成部材474のオリフィス形成用溝480が、軸方向に傾斜して周方向に延びる螺旋状とされていると共に、第二のオリフィス形成部材516の外周縁部の下面が、軸方向に傾斜することなく周方向に延びる略水平面とされている。これらによって、第二のオリフィス形成部材516が第一のオリフィス形成部材474に対して軸方向に相対変位せしめられると、第二のオリフィス通路392の平衡室374側の開口部が周方向に移動せしめられるようになっている。その結果、第二のオリフィス通路392の受圧室372側開口部と平衡室374側開口部の間の流体流路長が可変とされて、第二のオリフィス通路392のチューニング周波数が入力振動の周波数に応じて制御可能とされている。なお、第二のオリフィス通路392の連通状態下におけるチューニング周波数の制御は、前記実施形態と同様であることから、ここでは説明を省略する。
一方、本実施形態では、ガイド部518を備えた第二のオリフィス形成部材516の外周縁部の軸方向高さが、連通用スリット482の内周側開口部分の軸方向高さよりも大きくなっている。それ故、第二のオリフィス形成部材516が下端に位置せしめられることで、連通用スリット482の下端開口部が第二のオリフィス形成部材516によって覆われるようになっている。しかも、蓋金具500の内周縁部が第一のオリフィス形成部材474の内周面よりも径方向内側に突出しており、第二のオリフィス形成部材516が下端に変位せしめられることで、第二のオリフィス形成部材516の外周縁部下面と蓋金具500の内周縁部上面が当接せしめられるようになっている。これらによって、第二のオリフィス形成部材516を下端に位置せしめることで、連通用スリット482の平衡室374への開口部と、蓋金具500の中央孔が何れも閉塞されて、第二のオリフィス通路392の平衡室374側開口部が遮断されるようになっている。
また、本実施形態では、第二のオリフィス形成部材516が全体として略板形状となっており、第二のオリフィス形成部材516の外周縁部における軸方向寸法を小さくすることが出来る。それ故、仕切部材514の軸方向でのサイズを小さくして、エンジンマウント512全体の小型化及び軽量化を実現することが出来る。
また、図34には、本発明に係る流体封入式防振装置の第十七の実施形態として、自動車用エンジンマウント520が示されている。エンジンマウント520は、仕切部材522を有しており、仕切部材522が、更に外側オリフィス部材としての第一のオリフィス形成部材524と、第二のオリフィス形成部材516を有している。
第一のオリフィス形成部材524は、全体として逆向きの略有底円筒形状を有しており、上底壁部には、軸方向で貫通する複数の連通孔526が形成されている。連通孔526は、軸方向視で略扇形を呈しており、周方向に隣り合う連通孔526の間には径方向に延びるスポーク528が形成されている。更に、スポーク528は、第一のオリフィス形成部材524の径方向中央部に設けられた小径筒状の支持筒部486から放射状に延びるように一体形成されており、第一のオリフィス形成部材524における外周部分(筒状部)と内周部分(支持筒部486)がスポーク528で連結されている。更にまた、支持筒部486には、筒状の案内スリーブ488が挿し入れられて固定されている。
また、第一のオリフィス形成部材524には、外周面に開口して周方向に延びるオリフィス形成用溝480が形成されている。更に、第一のオリフィス形成部材524には、外周面に開口して周方向に延びる周溝478がオリフィス形成用溝480と独立して形成されている。このオリフィス形成用溝480の内周側の壁部には、第一のオリフィス形成部材524の内周面に開口する連通用スリット482が形成されている。なお、オリフィス形成用溝480および連通用スリット482は、軸方向に傾斜して周方向に延びる螺旋状となっている。
そして、第一のオリフィス形成部材524の内周側に対して、第二のオリフィス形成部材516が嵌め入れられていると共に、第二のオリフィス形成部材516の案内突部498が案内スリーブ488に差し込まれている。更に、第一のオリフィス形成部材524の下面に対して蓋金具530が重ね合わされて固定されることにより、第二のオリフィス形成部材516の下方への脱落が防止されている。蓋金具530は、略円平板形状を有しており、径方向中央部分に形成された小径の円形孔に対してジョイント筒部材466が挿し入れられている。なお、ジョイント筒部材466が蓋金具530に対して軸方向に滑動可能に取り付けられている。更に、ジョイント筒部材466の外周面と蓋金具530の内周面との隙間がきわめて小さくなっており、該隙間を通じての流体流動が防振特性に影響しない程度に小さく抑えられている。
このような構造とされた仕切部材522は、受圧室372と平衡室374を隔てるように配設されている。そして、周溝478の一方の端部が連通孔532を通じて受圧室372に連通されていると共に、他方の端部が図示しない連通孔を通じて平衡室374に連通されている。これにより、受圧室372と平衡室374を相互に連通する第一のオリフィス通路390が、周溝478を利用して形成されている。一方、オリフィス形成用溝480は、一方の端部が連通用スリット482を通じて受圧室372に連通されるようになっていると共に、他方の端部が連通孔534を通じて平衡室374に連通されている。これにより、受圧室372と平衡室374を相互に連通する第二のオリフィス通路392が、オリフィス形成用溝480を利用して形成されている。なお、本実施形態では、第一のオリフィス通路390と第二のオリフィス通路392が、互いに独立した流路で形成されている。
そこにおいて、第二のオリフィス形成部材516が第一のオリフィス形成部材524に対して軸方向に相対変位せしめられることにより、連通用スリット482において第二のオリフィス形成部材516の外周面で覆われる部分が周方向に変化するようになっている。これにより、第二のオリフィス通路392の連通状態と遮断状態が切り替えられるようになっていると共に、第二のオリフィス通路392の連通状態において通路長を変更設定可能となっている。
すなわち、本実施形態では、第二のオリフィス形成部材516が上端に位置せしめられると、第二のオリフィス形成部材516の隔壁部492の外周部分が、連通用スリット482の上端部よりも上方に位置せしめられて、連通用スリット482が受圧室372に対して非連通状態とされる。これにより、第二のオリフィス通路392が遮断されるようになっている。
一方、第二のオリフィス形成部材516が軸方向の中間から下端に位置せしめられることで、連通用スリット482が連通孔526を通じて受圧室372に連通されて、受圧室372と平衡室374が第二のオリフィス通路392によって連通されるようになっている。そこにおいて、第二のオリフィス形成部材516の軸方向位置を制御することにより、第二のオリフィス通路392の流路長が制御されて、第二のオリフィス通路392のチューニング周波数を入力振動の周波数に応じて変更設定することが出来る。
このように、第二のオリフィス形成部材516によって、第二のオリフィス通路392の受圧室372側開口部の開口位置や連通/遮断の切替えを制御することによっても、本発明に従う構造の流体封入式防振装置を実現することが出来る。
また、図35には、本発明の第十八の実施形態としての自動車用エンジンマウント536が示されている。エンジンマウント536は、可撓性膜としてのダイヤフラム538を含んで構成されている。ダイヤフラム538は、軸方向に充分な弛みを有する略円板形状の薄肉ゴム膜であって、径方向中央部分には、比較的に厚肉とされた円板形状の押圧部540が一体形成されている。そして、ダイヤフラム538の外周縁部に加硫接着された固定金具470が本体ゴム弾性体346の一体加硫成形品を構成する第二の取付金具448の下端部にかしめ固定されている。これにより、第二の取付金具448の内周側には、本体ゴム弾性体346とダイヤフラム538の軸方向対向面間に流体室368が形成されている。
また、流体室368には、仕切部材542が配設されている。仕切部材542は、全体として厚肉の略円板形状を有しており、その両側に受圧室372と平衡室374が形成されている。また、仕切部材542は、第一のオリフィス形成部材474と第二のオリフィス形成部材516を含んで構成されている。
そこにおいて、第一のオリフィス形成部材474の上底壁部と、第二のオリフィス形成部材516の隔壁部492との間には、付勢手段としてのコイルスプリング544が介装されている。コイルスプリング544は、第一,第二のオリフィス形成部材474,516の軸方向間に配設されており、予め軸方向に充分に大きく圧縮変形された状態で配設されている。これにより、コイルスプリング544の付勢力が、第二のオリフィス形成部材516に対して下向きに常時及ぼされており、第二のオリフィス形成部材516の下面が、ダイヤフラム538における押圧部540の上面に対して押し付けられている。
また、ダイヤフラム538には、アクチュエータ546の一部を構成する駆動軸としての駆動部材548が下方から当接せしめられている。駆動部材548は、下部が逆向きの有底筒体状とされて、内周面に雄ねじ部材428の雄ねじに対応する雌ねじが螺刻されていると共に、上部がロッド状とされて、上端部に円板形状の出力部550が設けられている。そして、駆動部材548の出力部550がダイヤフラム538における押圧部540の下面に軸方向で押し付けられることより、出力部550と第二のオリフィス形成部材516がダイヤフラム538を介して非接着で間接的に当接せしめられている。そこにおいて、第二のオリフィス形成部材516がコイルスプリング544によって下方に向かって常時付勢されている。それ故、駆動部材548と第二のオリフィス形成部材516は、軸直角方向で相対変位および相対位置のずれを許容されていると共に、軸方向では実質的に連結されており、アクチュエータ546の軸方向駆動力が、駆動部材548およびダイヤフラム538を介して、第二のオリフィス形成部材516に伝達されるようになっている。なお、出力部550は、押圧部540に対して、接着や嵌合等の手段で固定されていても良い。
ここにおいて、本実施形態に係るエンジンマウント536では、第二のオリフィス通路392の連通状態と遮断状態が切替え可能となっていると共に、第二のオリフィス通路392の連通状態下、第二のオリフィス通路392の流路長を制御することによって、入力振動の周波数に応じた第二のオリフィス通路392のチューニングの調節が可能となっている。
また、本実施形態に従う構造では、アクチュエータ546の駆動部材548と第二のオリフィス形成部材516が、コイルスプリング544の付勢力によって、非接着で軸方向に接続されている。それ故、部品の寸法誤差や組付け誤差等によって、アクチュエータ546の駆動部材548の中心軸と、第二のオリフィス形成部材516の中心軸が、軸直角方向にずれている場合にも、誤差を吸収して軸方向の実質的な連結状態を実現することが出来る。
さらに、本実施形態では、アクチュエータ546の駆動部材548が、第二のオリフィス形成部材516に対して、ダイヤフラム538を介して間接的に当接されており、駆動部材548と第二のオリフィス形成部材516が、ダイヤフラム538を貫通することなく駆動力を伝達可能とされている。これにより、流体室368(平衡室374)の流体密性がより確実に確保されて、信頼性や耐久性に優れたエンジンマウントを実現することが出来る。
しかも、第二のオリフィス形成部材516と駆動部材548が互いに固定されることなく当接せしめられていることから、第二のオリフィス形成部材516は、受圧室372が平衡室374に対して相対的に著しい負圧状態になると、コイルスプリング544の付勢力に抗して上方に変位せしめられるようになっている。即ち、第二のオリフィス通路392が遮断される自動車の走行状態下、受圧室372に過剰な負圧が及ぼされると、第二のオリフィス形成部材516の上面に作用する受圧室372の液圧と下面に作用する平衡室374の液圧の差によって、第二のオリフィス形成部材516がコイルスプリング544の付勢力に抗して上方に変位せしめられるようになっている。これにより、受圧室372と平衡室374が、第一のオリフィス通路390よりも流動抵抗の小さい第二のオリフィス通路392を通じて相互に連通せしめられて、受圧室372の負圧が速やかに解消されるようになっている。従って、受圧室372の負圧に起因するキャビテーション異音を防止することが出来る。
また、図36には、本発明に係る流体封入式防振装置の第十九の実施形態としてのエンジンマウントを構成する仕切部材552が示されている。なお、図36〜図40において、図示が省略されている部分については、前記第十四の実施形態と実質的に同一とする。
すなわち、仕切部材552は、外側オリフィス部材としての第一のオリフィス形成部材554と、内側オリフィス部材としての第二のオリフィス形成部材556によって構成されている。第一のオリフィス形成部材554は、厚肉の略円筒形状であって、図37にも示されているように、外周面に開口して軸方向に非傾斜で周方向に延びるオリフィス形成用溝558が、軸方向中間部分において略半周に亘って形成されている。このオリフィス形成用溝558の外周側の開口部が第二の取付金具344で蓋されることにより、受圧室372と平衡室374を連通する第二のオリフィス通路392が形成されている。一方、第二のオリフィス形成部材556は、図38に示されているように、インナ筒状部394と隔壁部396と連結部398を一体的に備えた構造とされている。
また、第一のオリフィス形成部材554に対して連通用スリット560が形成されていると共に、第二のオリフィス形成部材556に対してオリフィス接続用窓としての連通窓562が形成されている。そこにおいて、本実施形態では、連通用スリット560が軸方向で傾斜せずに周方向に延びていると共に、連通窓562が軸方向に所定の角度で傾斜して周方向に延びる螺旋状とされており、連通用スリット560と連通窓562が軸方向に相対的に傾斜して周方向に延びるように形成されている。そして、連通用スリット560と連通窓562は、周上の一部において交差しており、連通用スリット560と連通窓562の交点において第二のオリフィス通路392の平衡室374側の開口部が形成されている。なお、オリフィス形成用溝558と連通用スリット560によって、オリフィス形成用窓が構成されている。
また、連通用スリット560と連通窓562が相対的に傾斜していることで、連通用スリット560と連通窓562の交点の位置が、第一のオリフィス形成部材554と第二のオリフィス形成部材556の軸方向への相対変位によって、オリフィス形成用溝558の長さ方向に変化するようになっており、第二のオリフィス通路392の長さを変化させることで第二のオリフィス通路392のチューニングを変更可能となっている。
このように、周方向環状の連通用スリット560と螺旋状の連通窓562を備える仕切部材552を含んで構成されたエンジンマウントにおいても、第二のオリフィス形成部材556を軸方向に往復変位させて第二のオリフィス通路392のチューニング周波数を調節することが出来て、より広い周波数域の振動に対して有効な防振効果を得ることが出来る。
また、図39には、本発明に係る流体封入式防振装置の第二十の実施形態としてのエンジンマウントを構成する仕切部材564が示されている。即ち、仕切部材564は、第一のオリフィス形成部材376と、内側オリフィス部材としての第二のオリフィス形成部材566によって構成されている。第二のオリフィス形成部材566は、インナ筒状部394と隔壁部396と連結部398を一体的に備えた構造とされている。また、第二のオリフィス形成部材566には、インナ筒状部394を径方向に貫通して連通用スリット436に対応する半周程度の長さで延びる連通窓562が形成されている。
そこにおいて、図39に示されているように、連通用スリット436と連通窓562の両方が軸方向に傾斜して周方向に延びる螺旋状とされていると共に、連通用スリット436の傾斜方向と連通窓562の傾斜方向が互いに逆向きとなっている。これにより、連通用スリット436と連通窓562が、軸方向で相対的に傾斜して周方向に延びて、周上の一部で交差せしめられている。そして、連通用スリット436と連通窓562の交点において第二のオリフィス通路392が平衡室374に接続されている。
また、連通用スリット436と連通窓562が相対的に傾斜していることで、連通用スリット436と連通窓562の交点の位置が、第一のオリフィス形成部材376と第二のオリフィス形成部材566の軸方向への相対変位によって、オリフィス形成用溝386の長さ方向に変化するようになっており、第二のオリフィス通路392の長さを変化させることで第二のオリフィス通路392のチューニングを変更可能となっている。
このように、螺旋状の連通用スリット436と螺旋状の連通窓562を備える仕切部材564を含んで構成されたエンジンマウントにおいても、第二のオリフィス形成部材566を軸方向に往復駆動変位させることで、第二のオリフィス通路392のチューニング周波数を調節することが可能であり、より広い周波数域の振動に対して有効な防振効果を得ることが出来る。
さらに、それら連通用スリット436と連通窓562が逆向き傾斜の螺旋状とされていることにより、連通用スリット436と連通窓562の軸方向の相対的な傾斜角を大きく設定することが出来る。それ故、第一,第二のオリフィス形成部材376,566の軸方向での相対変位量に対する連通用スリット436と連通窓562の交点位置の変化を小さく設定して、第二のオリフィス通路392のチューニングの変更を高精度に行うことが出来る。
また、図40には、本発明に係る流体封入式防振装置の第二十一の実施形態としてのエンジンマウントを構成する仕切部材568が示されている。仕切部材568は、外側オリフィス部材としての第一のオリフィス形成部材570と、第二のオリフィス形成部材378を含んで構成されている。そして、第一のオリフィス形成部材570において内周面に開口して周方向に延びるオリフィス形成用窓としてのオリフィス形成用溝572が形成されて、オリフィス形成用溝572の内周側開口部を第二のオリフィス形成部材378で覆蓋することで受圧室372と平衡室374を連通する第二のオリフィス通路392が形成されている。更に、第二のオリフィス形成部材378においてオリフィス形成用溝572に対して軸方向で相対的に傾斜して周方向に延びる連通窓438が形成されて、オリフィス形成用溝572の内周側開口部と連通窓438の交点を通じて第二のオリフィス通路392が平衡室374に連通されており、第二のオリフィス形成部材378の軸方向変位によって第二のオリフィス通路392の通路長が変更されるようになっている。このように、オリフィス通路の具体的な構造は特に限定されるものではない。
また、図41,図42には、本発明に係る流体封入式防振装置の第二十二の実施形態として、自動車用エンジンマウント574が示されている。エンジンマウント574は、第一の取付部材としての第一の取付金具576と第二の取付部材としての第二の取付金具578を本体ゴム弾性体580で連結した構造を有している。そして、第一の取付金具576が図示しないパワーユニット側に取り付けられると共に、第二の取付金具578が図示しない車両ボデー側に取り付けられることで、パワーユニットが車両ボデーに防振支持されるようになっている。なお、以下の説明において、上下方向とは、特に説明がない限り、エンジンマウント574の軸方向である図41中の上下方向を言うものとする。
より詳細には、第一の取付金具576は、略円形ブロック形状を有しており、上端面の中央には、上方に向かって突出する取付ボルト582が固設されている。この取付ボルト582によって、第一の取付金具576がパワーユニットに固定されるようになっている。
一方、第二の取付金具578は、全体として大径の略円筒形状とされており、その上端部分は、次第に拡開するテーパ筒部584とされている。また、第二の取付金具578には、ブラケット586が外嵌固定されている。ブラケット586は、略カップ状とされた取付部588の外周面に複数の取付脚部590が溶着された構造とされている。そして、取付部588が第二の取付金具578に対して外挿状態で圧入されることにより、ブラケット586が第二の取付金具578に取り付けられている。このブラケット586の各取付脚部590に形成された取付孔に挿通される図示しない固定ボルトにより、ブラケット586ひいては第二の取付金具578が車両ボデーに固定されるようになっている。
また、これら第一の取付金具576と第二の取付金具578は、本体ゴム弾性体580によって連結されている。本体ゴム弾性体580は略円錐台形状とされており、その小径側端部に対して第一の取付金具576が所定深さで埋められた状態で加硫接着されている一方、第二の取付金具578のテーパ筒部584が、本体ゴム弾性体580の大径側端部外周面に加硫接着されている。更に、本体ゴム弾性体580の大径側端面には、逆すり鉢状の大径凹所592が形成されている。更にまた、第二の取付金具578の内周面を覆う薄肉のシールゴム層594が、本体ゴム弾性体580の外周縁部から下方に延び出して一体形成されている。
また、第二の取付金具578の下側開口部は、可撓性膜としてのダイヤフラム596で蓋されている。ダイヤフラム596は、軸方向に弛みをもつ薄肉円環板形状のゴム膜であって、その径方向中央部分には略円板形状の固着プレート598が配設されており、ダイヤフラム596の内周縁部が固着プレート598の外周縁部に対して全周に亘って加硫接着されている。更に、ダイヤフラム596の外周縁部には、環状の固定金具600が加硫接着されており、固定金具600が第二の取付金具578の下端部に対して内挿状態で固定されることにより、第二の取付金具578の下側開口部がダイヤフラム596によって流体密に閉塞されている。これにより、第二の取付金具578内には、本体ゴム弾性体580とダイヤフラム596の軸方向間に、外部空間に対して密閉されて非圧縮性流体が封入された流体室602が形成されている。なお、封入流体としては、水やアルキレングリコール等の低粘性流体が好適に採用される。
また、流体室602には、厚肉の略円板形状を有する仕切部材604が軸直角方向に広がるように配設されており、仕切部材604が第二の取付金具578によって支持されている。そして、流体室602が仕切部材604を挟んで軸方向に二分されており、仕切部材604を挟んだ上側には、壁部の一部が本体ゴム弾性体580で構成されて、振動入力時に圧力変動が及ぼされる受圧室606が形成されていると共に、仕切部材604を挟んだ下側には、壁部の一部がダイヤフラム596で構成されて、容積可変とされた平衡室608が形成されている。
さらに、仕切部材604は、図41〜図43に示されているように、外側オリフィス部材としての第一のオリフィス形成部材610と、内側オリフィス部材としての第二のオリフィス形成部材612を含んで構成されている。
第一のオリフィス形成部材610は、図44〜図46に示されているように、厚肉大径の略円筒形状を有しており、金属材や合成樹脂材等で形成された硬質の部材とされている。また、第一のオリフィス形成部材610には、外周面に開口して周方向に所定長さで延びる周溝614が形成されている。更に、周溝614には、一方の端部に軸方向上方に向かって延びる連通孔616が形成されていると共に、他方の端部に軸方向下方に向かって延びる連通孔618が形成されており、連通孔616,618が第一のオリフィス形成部材610の軸方向両端面の各一方に開口している。
そして、第一のオリフィス形成部材610は、第二の取付金具578に縮径加工が施されることにより、第二の取付金具578の内周側に固定支持されている。これにより、第一のオリフィス形成部材610の外周面が第二の取付金具578の内周面に重ね合わされて支持されて、第一のオリフィス形成部材610に形成された周溝614の外周側の開口部が流体密に蓋されている。その結果、第一のオリフィス形成部材610の外周縁部を周方向に延びるトンネル状とされた流体通路としての第一のオリフィス通路620が周溝614によって形成されており、第一のオリフィス通路620によって受圧室606と平衡室608が相互に連通されている。なお、本実施形態では、通路断面積(A)と通路長(L)の比(A/L)で設定される第一のオリフィス通路620が、エンジンシェイクに相当する低周波数にチューニングされている。
また、第一のオリフィス形成部材610には、第二のオリフィス形成部材612が内挿状態で嵌め込まれている。第二のオリフィス形成部材612は、図47,図48に示されているように、略円筒形状を有するインナ筒状部622と、インナ筒状部622の軸方向中間部分においてインナ筒状部622の中央孔を閉塞するように軸直角方向に広がる略円板形状の隔壁部624と、隔壁部624の径方向中央部から下方に突出する略円柱形状の連結部626とを一体的に備えた構造とされている。
そして、図49に示されているように、第二のオリフィス形成部材612が第一のオリフィス形成部材610に対して内挿配置されることにより、流体室602を上下に仕切る仕切部材604が構成されている。また、第二のオリフィス形成部材612は、第一のオリフィス形成部材610に対して軸方向への相対変位を許容された状態で嵌め込まれている。なお、第一のオリフィス形成部材610におけるインナ筒状部622の内周側の領域が隔壁部624を挟んで上下に二分されており、隔壁部624よりも上側の領域が受圧室606の一部を構成している。
また、第二のオリフィス形成部材612における連結部626には、図41に示されているように、駆動軸としての出力軸628が固定されて下方に延び出している。更に、出力軸628は、下端部がアクチュエータ630に取り付けられている。アクチュエータ630は、ダイヤフラム596の下方に配設されており、略有底円筒形状のケース632と略円板形状の蓋板634で構成されたハウジング636を備えている。
また、ハウジング636には、電気モータ638が収容されている。電気モータ638は、従来から公知の構造であって、回転軸640が外部に設けられた電源装置642からの通電によって中心軸回りで回転駆動されるようになっている。また、本実施形態では、電気モータ638と電源装置642を繋ぐ回路上に制御装置644が設けられており、電気モータ638の回転軸640が中心軸回りで所定の回転量ずつ回転せしめられるようになっている。また、電気モータ638の回転軸640には、外周面に螺子状の傾斜歯筋を有するウォーム646が取り付けられている。
また、ウォーム646には、外周面にウォーム646と対応する歯筋を形成されたウォームホイール648が噛合されている。更に、ウォームホイール648の下方には、外周面に対して軸方向に延びる歯筋を形成された第一の平歯車650が同一中心軸上で一体的に形成されている。これらウォームホイール648と第一の平歯車650は、ケース632に取り付けられた支軸652によって上下方向に延びる中心軸回りで回転可能に支持されている。
また、第一の平歯車650には、外周面に第一の平歯車650と対応する歯筋を形成された第二の平歯車654が噛合されている。更に、第二の平歯車654の上方には、主動側カム部材656が同一中心軸上で一体的に形成されている。主動側カム部材656は、略円板形状を有する硬質の部材であって、その上面が周方向に波状をもって延びる主動側カム面658とされている。これら第二の平歯車654と主動側カム部材656は、ケース632に取り付けられた回転駆動軸660によって上下方向に延びる中心軸回りで回転可能に支持されている。
さらに、主動側カム部材656には、従動側カム部材662が軸方向に重ね合わされている。従動側カム部材662は、略円板形状を有する硬質の部材であって、その下面が主動側カム面658に対応する波状とされた従動側カム面664となっている。また、従動側カム部材662の上端面には、出力軸628が固設されてマウント中心軸上で上方に向かって突出せしめられている。この出力軸628は、上部が下部よりも小径の略段付ロッド形状を有しており、蓋板634の中央部分を貫通してハウジング636外に突出せしめられている。なお、図中において必ずしも明らかではないが、本実施形態では、出力軸628とハウジング636の間に、出力軸628の軸方向の駆動を許容しつつ、中心軸回りでの回転を阻止する回転阻止機構が設けられており、出力軸628と一体的に形成された従動側カム部材662の中心軸回りでの回転が阻止されている。
更にまた、ハウジング636を構成する蓋板634の内周縁部が、従動側カム部材662に対して軸方向で対向位置せしめられていると共に、それら蓋板634と従動側カム部材662の対向面間にコイルスプリング666が配設されている。そして、コイルスプリング666の付勢力が、主動側カム部材656の主動側カム面658と従動側カム部材662の従動側カム面664との間に、両カム面658,664の重ね合わせ方向に及ぼされている。これにより、出力軸628の回転駆動軸660に対する軸方向の相対変位をコイルスプリング666の付勢力に抗して許容しつつ、主動側カム部材656と従動側カム部材662の重ね合わせ状態が保持されるようになっている。
かかるアクチュエータ630は、ダイヤフラム596とブラケット586の軸方向間に配設されており、ハウジング636がブラケット586に固定されている。また、ハウジング636外に突出せしめられた出力軸628の上部(小径部)が、ダイヤフラム596の固着プレート598に貫通形成された挿通孔668に挿通固定されることによって、出力軸628がダイヤフラム596を貫通するように配設されていると共に、ダイヤフラム596が固着プレート598を介して出力軸628に固着されている。更に、出力軸628と固着プレート598の間が流体密にシールされており、固着プレート598の挿通孔668を通じて封入された非圧縮性流体の外部への漏出が防止されている。なお、固着プレート598の挿通孔668のシールは、例えば、出力軸628の段差と固着プレート598の内周縁部との軸方向対向面間にOリングを配設したり、出力軸628と固着プレート598を一体形成したり、出力軸628と固着プレート598を溶接によって固定したりすることで実現出来る。本実施形態では、出力軸628と固着プレート598が相互に溶着されており、駆動軸がそれら出力軸628と固着プレート598によって構成されている。
さらに、固着プレート598よりも上方に突出せしめられた出力軸628の上端部は、仕切部材604を構成する第二のオリフィス形成部材612の連結部626に対して固定されており、出力軸628に及ぼされる軸方向での往復作動が第二のオリフィス形成部材612に伝達されるようになっている。
すなわち、電気モータ638に通電されることで回転軸640に及ぼされる回転駆動力が、ウォーム646,ウォームホイール648,第一の平歯車650,第二の平歯車654で構成された歯車列によって主動側カム部材656に伝達される。そして、主動側カム部材656に伝達された中心軸回りでの回転作動が、カム面658,664の作用によって軸方向での往復作動に変換されて、従動側カム部材662に伝達される。これにより、従動側カム部材662に固設された出力軸628に対して軸方向の往復駆動力が及ぼされて、出力軸628の上端部に固定された第二のオリフィス形成部材612が軸方向に往復作動せしめられるようになっている。上記からも明らかなように、電気モータ638の回転駆動力が、主動側カム部材656と従動側カム部材662の間で軸方向の往復駆動力に変換されるようになっており、それら主動側カム部材656と従動側カム部材662によって運動変換機構としてのカム機構が構成されている。
ここにおいて、第二のオリフィス形成部材612には、流量制限手段としての第一の可動ゴム膜670が配設されている。第一の可動ゴム膜670は、略軸直角方向に広がる薄肉のゴム弾性体で形成されており、ダイヤフラム596よりも剛性が大きく設定されて変形を生じ難くなっている。なお、本実施形態において、第一の可動ゴム膜670は、周上の複数箇所において径方向に延びるスポーク状部672によって周方向に分割されており、軸方向視で扇形を呈する複数のゴム膜で構成されている。
そして、第一の可動ゴム膜670は、その外周面が第二のオリフィス形成部材612のインナ筒状部622に固着されていると共に、内周面が第二のオリフィス形成部材612の連結部626に固着されている。これにより、仕切部材604におけるインナ筒状部622と連結部626の径方向間の領域が、第一の可動ゴム膜670を挟んで上下に二分されており、第一の可動ゴム膜670を挟んだ下側に平衡室608が形成されていると共に、上側には壁部の一部を第一の可動ゴム膜670で構成された容積可変の中間室674が形成されている。なお、中間室674は、第一の可動ゴム膜670によって平衡室608から隔てられており、第一の可動ゴム膜670の一方の面に対して中間室674の圧力が及ぼされると共に、他方の面に対して平衡室608の圧力が及ぼされるようになっている。また、中間室674には、受圧室606および平衡室608と同様に非圧縮性流体が封入されている。
また、第一のオリフィス形成部材610には、周溝614の軸方向下方において外周面に開口して、周方向に半周程度の所定長さで延びるオリフィス形成用溝676が形成されている。更に、オリフィス形成用溝676の一方の端部には、軸方向上方に向かって延びる連通孔678が形成されており、第一のオリフィス形成部材610の上端面に開口している。また、オリフィス形成用溝676は、周溝614と同じ深さで周溝614よりも軸方向寸法が大きくなっており、溝の断面積が大きく設定されている。なお、図43に示されているように、連通孔616,618と連通孔678は、周上の異なる位置にそれぞれ独立して形成されている。
そして、オリフィス形成用溝676の外周側の開口部が第二の取付金具578によって覆蓋されることにより、周方向に所定の長さで延びるオリフィス通路としての第二のオリフィス通路680が形成されており、受圧室606と中間室674が第二のオリフィス通路680によって相互に連通されている。第二のオリフィス通路680は、第一のオリフィス通路620よりも高周波数にチューニングされており、本実施形態では、第二のオリフィス通路680のチューニング周波数が、アイドリング振動に相当する20Hz〜40Hz程度に設定されている。
さらに、この第二のオリフィス通路680は、一方の端部が連通孔678を通じて受圧室606に連通されていると共に、他方の端部が連通用スリット682と、オリフィス接続用窓としての連通窓684を通じて、中間室674に連通されている。
連通用スリット682は、第一のオリフィス形成部材610に形成されており、オリフィス形成用溝676の内周側壁部を径方向に貫通して略半周に亘って周方向に延びている。この連通用スリット682によって、オリフィス形成用溝676が周方向の全長に亘って第一のオリフィス形成部材610の中央孔に対して連通されており、第二のオリフィス通路680が連通用スリット682を通じて第一のオリフィス形成部材610の中央孔に連通されている。なお、本実施形態では、連通用スリット682の周上における複数箇所に補強桟686が設けられており、第一のオリフィス形成部材610の連通用スリット682を挟んだ上下両側が、それら補強桟686によって連結されている。また、オリフィス形成用溝676と連通用スリット682によって、オリフィス形成用窓が構成されている。
連通窓684は、第二のオリフィス形成部材612のインナ筒状部622を径方向に貫通するように形成されており、全周に亘って周方向に延びている。また、連通窓684は、第二のオリフィス形成部材612において隔壁部624よりも下方に形成されており、連通窓684が、インナ筒状部622の外周面に開口していると共に、インナ筒状部622と連結部626の径方向間の領域である中間室674に連通されている。なお、本実施形態では、連通窓684の周上の複数箇所において、第二のオリフィス形成部材612に対して複数の連結桟688が一体形成されており、インナ筒状部622における連通窓684を挟んだ上下両側の部分が、軸方向に延びる連結桟688によって一体的に連結されている。
また、本実施形態では、連通用スリット682が、軸方向に傾斜しながら周方向に略半周に亘って延びる略螺旋状となっていると共に、連通窓684が軸方向に傾斜することなく周方向に全周に亘って延びる環状となっている。これらによって、連通用スリット682と連通窓684は、軸方向で相対的に傾斜して周方向に延びている。なお、本実施形態では、連通用スリット682の受圧室606側の端部がオリフィス形成用溝676の軸方向上端に位置して形成されていると共に、中間室674側の端部がオリフィス形成用溝676の軸方向下端に位置して形成されていることにより、連通用スリット682が軸方向に傾斜しながら周方向に延びるように形成されている。
そして、第二のオリフィス形成部材612が、第一のオリフィス形成部材610の中央孔に対して、軸方向での相対変位を許容された状態で嵌め込まれることにより、第一のオリフィス形成部材610の連通用スリット682と、第二のオリフィス形成部材612の連通窓684が、周上の一部において相互に交差せしめられている。これにより、連通用スリット682と連通窓684の交点において第二のオリフィス通路680の端部が中間室674に接続されて、受圧室606と中間室674が第二のオリフィス通路680によって相互に連通されている。
そこにおいて、第二のオリフィス通路680は、その通路長が可変とされており、通路断面積(A)と通路長(L)の比(A/L)によって設定されるチューニング周波数を、入力振動の周波数に応じて調節することが可能となっている。即ち、第二のオリフィス形成部材612がアクチュエータ630によって軸方向に駆動変位せしめられると、螺旋状とされた連通用スリット682と周方向に延びる連通窓684の交差位置がオリフィス形成用溝676の長さ方向に変化せしめられて、第二のオリフィス通路680の通路長(L)が変更されるようになっている。これにより、第二のオリフィス通路680のチューニング周波数が変更設定されて、異なる周波数の振動に対してそれぞれ有効な防振効果を得ることが出来る。
本実施形態では、第二のオリフィス通路680がアイドリング振動に相当する20Hz〜40Hzにチューニングされており、第一のオリフィス形成部材610に対する第二のオリフィス形成部材612の軸方向の変位によって、第二のオリフィス通路680のチューニングがこの周波数の範囲で変更可能とされている。このようなチューニング変更の例として、図50には、20Hz程度の低周波数側にチューニングされた状態が示されていると共に、図51には、40Hz程度の高周波数側にチューニングされた状態が示されている。
すなわち、図41に示されているように、第二のオリフィス形成部材612が下端に位置せしめられた状態では、図50に示されているように、連通用スリット682と連通窓684の交点が、第二のオリフィス通路680の受圧室606側の端部に対して周方向で遠い位置に設定されて、第二のオリフィス通路680が周方向に半周程度の長い通路長で形成されるようになっている。これにより、第二のオリフィス通路680の通路断面積と通路長の比の値が小さくなって、第二のオリフィス通路680が低周波数側にチューニングされるようになっている。
一方、図42に示されているように、第二のオリフィス形成部材612が上端に位置せしめられた状態では、図51に示されているように、連通用スリット682と連通窓684の交点が、第二のオリフィス通路680の受圧室606側の端部に対して周方向で近い位置に設定されて、第二のオリフィス通路680が極めて短い通路長で形成されるようになっている。これにより、第二のオリフィス通路680の通路断面積と通路長の比の値が大きくなって、第二のオリフィス通路680が中周波数側にチューニングされるようになっている。
また、図には示されていないが、第二のオリフィス形成部材612を往復作動方向の中間に位置させることで、第二のオリフィス通路680のチューニング周波数を、20Hz〜40Hzの中間に設定することも可能である。
なお、第二のオリフィス通路680のチューニング変更は、制御装置644による電気モータ638の制御によって、予め設定された複数の異なる周波数に段階的にチューニングされるようになっていても良いし、入力振動の周波数に応じて連続的に変更設定されるようになっていても良い。段階的な制御によれば、例えば接点式のセルフスイッチ等の簡単な制御装置を採用したり、制御装置を内蔵したステッピングモータを電気モータとして採用することによって、簡単な構造と少ない部品点数で第二のオリフィス通路680のチューニングの調節を実現することが出来る。一方、連続的な制御によれば、入力振動の周波数に応じて第二のオリフィス通路680のチューニング周波数を高精度に設定することが出来て、より優れた防振性能の実現が可能となる。また、本実施形態では、第二のオリフィス通路680のチューニング周波数が、エンジンの回転数に応じて制御装置644で制御されるようになっている。
このような構造とされた自動車用エンジンマウント574の車両装着下、エンジンシェイクに相当する低周波数の振動が入力された場合には、エンジンシェイクに相当する低周波数にチューニングされた第一のオリフィス通路620を通じての流体流動によって、入力振動に対する有効な防振効果(高減衰効果)を得ることが出来る。
しかも、このようなエンジンシェイクに相当する振動入力に際して、第二のオリフィス通路680が実質的に遮断されるようになっている。即ち、中間室674の壁部の一部を構成する第一の可動ゴム膜670は、ダイヤフラム596に比べて剛性が大きく設定されて変形が制限されていることから、エンジンシェイクに相当する低周波大振幅振動が入力されると、第二のオリフィス通路680が目詰まり状態となって、実質的に遮断されるようになっている。これにより、第二のオリフィス通路680を通じての流体流動によって受圧室606の圧力変動が低減されるのを防ぐことが出来て、第一のオリフィス通路620を通じての流体流動を効率的に惹起させることが可能となっている。
一方、アイドリング振動に相当する中周波数の振動が入力された場合には、電気モータ638の作動によって第二のオリフィス形成部材612が第一のオリフィス形成部材610に対して軸方向に変位せしめられて、第二のオリフィス形成部材612に形成された連通窓684が第一のオリフィス形成部材610に形成された連通用スリット682に交差せしめられるようになっている。これにより、受圧室606と中間室674が第二のオリフィス通路680を通じて相互に連通されて、第二のオリフィス通路680を通じて流動せしめられる流体の共振作用等に基づく防振効果(低動ばね効果)が発揮されるようになっている。
しかも、本実施形態では、エンジンの始動時や暖気時,エアーコンディショナの使用時等で変化するエンジンの回転数等に応じて、入力されるアイドリング振動の周波数が変化することに着目して、エンジンの回転数に応じて第二のオリフィス通路680のチューニング周波数を変更することにより、第二のオリフィス通路680の防振効果を効率的に得ることが出来るようになっている。
すなわち、アイドリング振動の周波数域において比較的に低周波数の振動が入力された場合には、第二のオリフィス形成部材612を作動方向の上端に変位させて、第二のオリフィス通路680の通路長を長く設定する。これにより、第二のオリフィス通路680のチューニング周波数が20Hz程度の低周波数側に設定されるようになっている。一方、比較的に高周波数の振動が入力された場合には、第二のオリフィス形成部材612を作動方向の上端に変化させて、第二のオリフィス通路680の通路長を短く設定する。これにより、第二のオリフィス通路680のチューニング周波数が40Hz程度の高周波数側に設定されるようになっている。これらにより、第二のオリフィス通路680の防振効果が、より広い周波数のアイドリング振動に対して効果的に発揮されるようになっている。
なお、通常のアイドリング振動の入力時には、低周波数にチューニングされた第一のオリフィス通路620が、反共振作用によって目詰まり状態となって実質的に遮断されている。それ故、第二のオリフィス通路680の流体流動量が効率的に確保されて、目的とする防振効果を有効に得ることが出来る。一方、通常のアイドリング振動よりも低周波大振幅の振動であるラフアイドリング振動が入力されると、両端が受圧室606と平衡室608の各一方に常時連通された構造の第一のオリフィス通路620を通じて、両室606,608間で流体流動が惹起されて、第一のオリフィス通路620による防振効果が発揮されるようになっている。また、通常のアイドリング振動よりも振幅が大きいラフアイドリング振動が入力されると、中間室674の壁部の一部を構成する第一の可動ゴム膜670の変形が制限されて、第二のオリフィス通路680が実質的に遮断される。その結果、第一のオリフィス通路620を通じての流体流動が効率的に惹起されて、第一のオリフィス通路620の防振効果が有効に発揮される。
以上のように、本実施形態に従う構造のエンジンマウント574では、常時連通状態に保持された第一のオリフィス通路620によって、エンジンシェイクやラフアイドリング振動等の低周波振動に対する防振効果を発揮させることが出来ると共に、チューニング周波数を変更可能とされた第二のオリフィス通路680によって、アイドリング振動に対する優れた防振効果を得ることが可能となっている。
また、流体室602の外部に設けられたアクチュエータ630から第二のオリフィス形成部材612に駆動力を伝達する出力軸628が、軸方向に往復作動されるようになっている。それ故、ダイヤフラム596を貫通するように設けられた出力軸628を、ダイヤフラム596の固着プレート598に対して流体密にシールされた状態で固定することが出来る。従って、流体室602に封入された非圧縮性流体が出力軸628の挿通部分から漏れるのを防いで信頼性や耐久性の向上を図ることが出来ると共に、出力軸628の挿通部分におけるシールを簡単な構造で実現することが出来る。
また、本実施形態では、第一のオリフィス形成部材610が、連通用スリット682の周上に設けられた複数の補強桟686によって補強されており、第一のオリフィス形成部材610の耐久性の向上が図られている。一方、連通窓684の周上には、複数の連結桟688が設けられており、第二のオリフィス形成部材612における連通窓684を挟んだ両側部分が連結桟688によって相互に連結されていると共に、第二のオリフィス形成部材612が連結桟688によって補強されて耐久性の向上が実現されている。
次に、図52には、本発明に係る流体封入式防振装置の第二十三の実施形態として、自動車用エンジンマウント690が示されている。なお、以下の説明において、前記第二十二の実施形態と実質的に同一の部材および部位については、図中に同一の符号を付すことで説明を省略する。
すなわち、エンジンマウント690は、仕切部材692を備えている。仕切部材692は、流体室602を上下に二分するように配設されており、仕切部材692を挟んだ両側に受圧室606と平衡室608が形成されている。更に、仕切部材692は、図52,図53に示されているように、第一のオリフィス形成部材610と、内側オリフィス部材としての第二のオリフィス形成部材694とを含んで構成されている。
第二のオリフィス形成部材694は、インナ筒状部622と隔壁部624と連結部626とを一体的に備えた構造となっている。そして、第二のオリフィス形成部材694が、第二の取付金具578に支持された第一のオリフィス形成部材610に対して、軸方向での相対変位を許容された内挿状態で嵌め付けられて、仕切部材692が構成されている。
また、図52に示されているように、第二のオリフィス形成部材694の連結部626には、下方に向かって延び出す出力軸628が固設されている。更に、出力軸628の下端部が、アクチュエータ696に取り付けられている。
アクチュエータ696は、ブラケット586と、ブラケット586の開口部を軸方向中間部分において蓋するように嵌め付けられた略円環板形状の蓋板698からなるハウジング700を有している。また、蓋板698の内周縁部には、軸方向上方に向かって突出する略円筒形状の案内筒部702が一体形成されている。この案内筒部702の径方向一方向で対向する部分には、内周面に開口して軸方向に延びる一対の係合溝704,704が形成されて、案内筒部702の内周面および上端面に開口せしめられている。
また、ハウジング700には、電気モータ638が収容されている。電気モータ638は、ハウジング700の径方向中央部分に配置されており、回転軸640が蓋板698の中央孔を通じて上方に突出せしめられている。更に、回転軸640には、雄ねじ部材706が同一中心軸上で外挿固定されており、雄ねじ部材706が回転軸640と一体的に回転作動されるようになっている。この雄ねじ部材706には、その外周面にねじ山が形成されている。
また、雄ねじ部材706には、駆動部材708が取り付けられている。駆動部材708は、全体として逆向きの略有底円筒形状を有しており、周壁部の内周面に対して雄ねじ部材706に対応するねじ山が形成されている。また、中心軸上を上方に向かって突出する出力軸628が駆動部材708の上面に対して固設されることにより駆動軸が構成されており、固着プレート598を貫通して仕切部材692の第二のオリフィス形成部材694に固定されている。換言すれば、第二のオリフィス形成部材694が、出力軸628によって、アクチュエータ696の駆動部材708に連結されている。そして、駆動部材708は、雄ねじ部材706を取り付けられた回転軸640に対して取り付けられており、雄ねじ部材706と駆動部材708が螺合されている。
さらに、駆動部材708の下端部には、径方向一方向で外方に向かって突出する一対の係合突起710,710が形成されており、各係合突起710が案内筒部702の係合溝704に差し込まれている。これにより、係合溝704と係合突起710の周方向での当接によって、駆動部材708の中心軸回りでの回転が阻止されていると共に、係合溝704に沿った係合突起710の変位によって、駆動部材708の軸方向への駆動変位が許容されており、係合溝704と係合突起710で回転阻止機構が構成されている。
そして、外部の電源装置642から電気モータ638に対して通電されて、回転軸640が回転駆動されることによって、駆動部材708が軸方向に往復駆動されるようになっている。即ち、雄ねじ部材706と駆動部材708が螺合されていると共に、係合溝704と係合突起710で構成された回転阻止機構が設けられていることにより、回転軸640に固定された雄ねじ部材706が回転駆動されると、駆動部材708が、回転軸640の回転方向に応じて、雄ねじ部材706に対して軸方向に相対変位せしめられるようになっている。このように、本実施形態では、雄ねじ部材706と駆動部材708で構成された螺子機構によって、電気モータ638の回転駆動力を軸方向の往復駆動力に変換する運動変換機構が構成されている。
さらに、駆動部材708に及ぼされた軸方向の駆動力が、出力軸628を介して第二のオリフィス形成部材694に伝達されて、第二のオリフィス形成部材694が軸方向に往復駆動されるようになっている。これにより、第二のオリフィス形成部材694の変位駆動によって連通用スリット682と連通窓684の交点位置が周方向に変更されて第二のオリフィス通路680の通路長が変更されるようになっており、第二のオリフィス通路680のチューニングが調節可能となっている。
また、本実施形態では、図52に示されているように、第二のオリフィス形成部材694が作動方向の下端に変位せしめられた状態下、連通窓684が連通用スリット682の下端よりも下方に位置せしめられて、連通用スリット682と連通窓684の交差が解除されるようになっている。これにより、第二のオリフィス通路680の連通状態と遮断状態が選択的に切換可能となっている。その結果、第一のオリフィス通路620がチューニングされた周波数の振動入力に際して、第二のオリフィス通路680の流体流動が防がれて、第一のオリフィス通路620の防振効果をより効率的に発揮させることが出来る。
ここにおいて、本実施形態では、第二のオリフィス形成部材694の隔壁部624に対して、液圧吸収手段としての第二の可動ゴム膜712が配設されている。第二の可動ゴム膜712は、図52,図53に示されているように、略軸直角方向に広がるゴム弾性体で形成されており、本実施形態では、周上の複数箇所において径方向に延びるスポーク状部714で分割されて軸方向視で略扇形を呈する複数のゴム膜によって構成されている。また、第二の可動ゴム膜712は、第一の可動ゴム膜670よりも高い剛性を有しており、変形が生じ難くなっている。なお、本実施形態では、自動車の走行こもり音に相当する高周波小振幅振動の入力に際して、第二の可動ゴム膜712が共振状態で積極的に微小変形せしめられるようになっている。
このような構造のエンジンマウント690の車両への装着下、走行こもり音等に相当する高周波数の振動が入力された場合には、第二のオリフィス形成部材694の隔壁部624に設けられた第二の可動ゴム膜712が微小変形せしめられて、第二の可動ゴム膜712の液圧吸収作用に基づく防振効果(低動ばね効果)が発揮されるようになっている。その結果、本実施形態に係るエンジンマウント690によれば、低周波数にチューニングされた第一のオリフィス通路620と、中周波数域の広い範囲に亘って防振効果を発揮する第二のオリフィス通路680と、高周波数にチューニングされた第二の可動ゴム膜712とによって、より広い周波数域の入力振動に対して有効な防振効果を得ることが出来る。
また、図54には、本発明に係る流体封入式防振装置の第二十四の実施形態としてのエンジンマウントを構成する仕切部材716が示されている。なお、図54〜図60において、図示が省略されている部分については、前記第二十二の実施形態と基本的に同一とする。
すなわち、仕切部材716は、外側オリフィス部材としての第一のオリフィス形成部材718と、内側オリフィス部材としての第二のオリフィス形成部材720によって構成されている。図55に示されているように、第一のオリフィス形成部材718には、外周面に開口して軸方向に非傾斜で周方向に延びる周溝614とオリフィス形成用溝722が、軸方向中間部分において略半周に亘って形成されている。そして、周溝614およびオリフィス形成用溝722の外周側の開口部が第二の取付金具578で蓋されることにより、それぞれ周方向に所定の長さで延びる第一のオリフィス通路620とオリフィス通路としての第二のオリフィス通路724とが形成されている。一方、第二のオリフィス形成部材720は、インナ筒状部622と隔壁部624と連結部626を一体的に備えた構造とされている。なお、本実施形態では、隔壁部624がインナ筒状部622の上端に設けられている。
また、第一のオリフィス形成部材718に対して連通用スリット726が形成されていると共に、第二のオリフィス形成部材720に対してオリフィス接続用窓としての連通窓728が形成されている。そこにおいて、図55に示されているように、連通用スリット726が軸方向で傾斜せずに周方向に延びていると共に、図56に示されているように、連通窓728が軸方向に所定の角度で傾斜して周方向に延びる螺旋状とされていることにより、連通用スリット726と連通窓728が軸方向に相対的に傾斜して周方向に延びるように形成されている。なお、連通用スリット726は、オリフィス形成用溝722と略等しい軸方向の高さをもって形成されている。また、オリフィス形成用溝722と、その内周側に形成される連通用スリット726によって、オリフィス形成用窓が構成されている。
そして、連通用スリット726と連通窓728が相対的に傾斜して周方向に延びていることにより、それら連通用スリット726と連通窓728が周上の一部において交差しており、連通用スリット726と連通窓728の交点によって第二のオリフィス通路724の中間室674側の開口部が形成されている。更に、第二のオリフィス通路724は、第二のオリフィス形成部材720が第一のオリフィス形成部材718に対して軸方向に相対変位されることにより、通路長が可変となっている。これにより、第二のオリフィス通路724のチューニング周波数を変更設定することが可能となっている。
このように、周方向環状の連通用スリット726と螺旋状の連通窓728を備える仕切部材716を含んで構成されたエンジンマウントにおいても、第二のオリフィス形成部材720を軸方向に往復変位させて第二のオリフィス通路724のチューニング周波数を調節することが出来て、より広い周波数域の振動に対して有効な防振効果を得ることが出来る。
また、図57には、本発明に係る流体封入式防振装置の第二十五の実施形態としてのエンジンマウントを構成する仕切部材730が示されている。即ち、仕切部材730は、外側オリフィス部材としての第一のオリフィス形成部材732と、内側オリフィス部材としての第二のオリフィス形成部材734によって構成されている。図58に示されているように、第一のオリフィス形成部材732には、軸方向に非傾斜で周方向に延びる周溝614と、軸方向に所定の角度で傾斜して周方向に延びる螺旋状のオリフィス形成用溝736が、略半周に亘って外周面に開口するように形成されている。これら周溝614およびオリフィス形成用溝736の外周側の開口部が第二の取付金具578で蓋されることにより、それぞれ周方向に所定の長さで延びる第一のオリフィス通路620とオリフィス通路としての第二のオリフィス通路738とが形成されている。一方、第二のオリフィス形成部材734は、図59に示されているように、インナ筒状部622と隔壁部624と連結部626を一体的に備えた構造とされている。
また、第一のオリフィス形成部材732に対して連通用スリット740が形成されて、オリフィス形成用溝736と連通用スリット740との協働でオリフィス形成用窓が構成されていると共に、第二のオリフィス形成部材734に対して連通窓728が形成されている。そこにおいて、図57〜図59に示されているように、連通用スリット740と連通窓728の両方が、軸方向で傾斜して周方向に延びる螺旋状とされていると共に、連通用スリット740の傾斜方向と連通窓728の傾斜方向が、互いに逆向きとなっている。これにより、連通用スリット740と連通窓728が軸方向で相対的に傾斜して周方向に延びて、周上の一部で交差せしめられており、それら連通用スリット740と連通窓728の交点において第二のオリフィス通路738が中間室674に連通されている。
また、第一のオリフィス形成部材732と第二のオリフィス形成部材734の軸方向への相対変位によって、連通用スリット740と連通窓728の交点の位置が周方向に変化せしめられて、第二のオリフィス通路738の通路長が変更可能となっている。これにより、第二のオリフィス通路738のチューニング周波数を変更出来るようになっている。
このように、螺旋状の連通用スリット740と螺旋状の連通窓728を備える仕切部材730を含んで構成されたエンジンマウントにおいても、第二のオリフィス形成部材734を軸方向に往復駆動変位させることで、第二のオリフィス通路738のチューニング周波数を調節することが可能であり、より広い周波数域の振動に対して有効な防振効果を得ることが出来る。
さらに、それら連通用スリット740と連通窓728が逆向き傾斜の螺旋状とされていることにより、仕切部材730を軸方向で大型化させることなく、連通用スリット740と連通窓728の軸方向の相対的な傾斜角を大きく設定することが出来る。その結果、第一,第二のオリフィス形成部材732,734の軸方向での相対変位量に対する連通用スリット740と連通窓728の交点位置の変化を小さく設定して、第二のオリフィス通路738のチューニングの変更を高精度に行うことが可能となっている。
また、図60には、本発明に係る流体封入式防振装置の第二十六の実施形態としてのエンジンマウントを構成する仕切部材742が示されている。仕切部材742は、外側オリフィス部材としての第一のオリフィス形成部材744と、内側オリフィス部材としての第二のオリフィス形成部材612を含んで構成されている。また、第一のオリフィス形成部材744には、内周面に開口して周方向に延びるオリフィス形成用窓としてのオリフィス形成用溝746が形成されており、オリフィス形成用溝746の内周側開口部を第二のオリフィス形成部材612で覆蓋することによりトンネル状の通路が形成されている。そして、このトンネル状通路の一方の端部が連通孔678を通じて受圧室606に連通されていると共に、他方の端部が連通窓684を通じて中間室674に連通されていることで、受圧室606と中間室674を連通するオリフィス通路としての第二のオリフィス通路748が形成されている。更に、第二のオリフィス形成部材612には、オリフィス形成用溝746に対して軸方向で相対的に傾斜して周方向に延びる連通窓684が形成されており、オリフィス形成用溝746の内周側開口部と連通窓684の交点を通じて第二のオリフィス通路748が中間室674に連通されている。これにより、第二のオリフィス形成部材612の軸方向変位によって第二のオリフィス通路748の通路長が変更されるようになっている。以上からも明らかなように、第二のオリフィス通路の具体的な構造は、特に限定されるものではない。
以上、本発明の幾つかの実施形態について説明してきたが、これらはあくまでも例示であって、本発明は、かかる実施形態における具体的な記載によって、何等、限定的に解釈されるものではない。
例えば、オリフィス通路は、チューニング自由度を大きく取ることが出来る等の理由から、螺旋構造とされていることが望ましいが、オリフィス通路の構造は、必ずしもそのような螺旋構造に限定されるものではない。具体的には、例えば、オリフィス形成用窓を軸方向に直線的に延びる凹溝として、軸方向に延びる直線的なオリフィス通路を形成することも出来る。
また、受圧室と平衡室を連通する流路は、必ずしも流体通路とオリフィス通路だけで構成されていなくても良く、例えば、オリフィス通路を含む2本以上の流路が内側オリフィス部材と外側オリフィス部材の一方に形成されていても良い。具体的には、例えば、内側オリフィス部材に対してオリフィス形成用窓とは独立して外周面に開口する第二のオリフィス形成用窓を形成して、該第二のオリフィス形成用窓を外側オリフィス部材によって覆蓋することにより、更なる流路を形成することも出来る。特に、該流路の平衡室側端部の軸方向位置をオリフィス通路の平衡室側端部の軸方向位置に対してずらすことにより、該流路とオリフィス通路の何れか一方のみが連通された状態と、両方が連通された状態を、内側オリフィス部材の外側オリフィス部材に対する軸方向の相対変位によって切り替えて、防振特性が大きく変化するようになっていても良い。
さらに、例えば、流体通路を含む2本以上の流路を、外側オリフィス部材に形成しても良い。この場合には、各流路を周方向に延びるように形成することが望ましく、また、それら流路の連通状態と遮断状態を切り替える弁体等の切替機構を設けることが望ましい。
また、アクチュエータでは、パルスモータ(ステッピングモータ)の駆動力を利用した構造が示されているが、例えば、コイルへの通電によって発揮される磁力を駆動力として利用する電磁式アクチュエータや、負圧(正圧)を駆動力として利用する空気圧式アクチュエータ、制御装置によってフィードバック制御を可能とされた電気モータの回転駆動力を利用するアクチュエータ等、アクチュエータの構造は特に限定されない。
また、流量制限手段としては、例示した可動膜構造の他、例えば可動板構造を採用することも出来る。可動板構造は、例えば、ゴム弾性体で形成された可動ゴム板や硬質の合成樹脂で形成された硬質板等によって形成された可動板が、ハウジング内に形成された収容領域にフロート状態で収容配置された構造とされており、可動板の両面に及ぼされる液圧の差に基づいて微小変位せしめられるようになっている。そして、オリフィス通路を通じての流体流路上に可動板構造が設けられることにより、可動板の微小変位によってオリフィス通路が連通状態に切り替えられると共に、可動板がハウジングに当接して拘束されることによってオリフィス通路が遮断状態に切り替えられるようになっていても良い。
さらに、液圧吸収手段としては、可動ゴム膜による可動膜構造の他、例えば可動板構造を採用することも出来る。これによれば、可動板の微小変位によって発揮される液圧吸収作用に基づいて、高周波振動に対する防振効果を得ることが出来る。
また、オリフィス形成用窓とオリフィス接続用窓は、例えば、その両方が軸方向で傾斜して周方向に延びる螺旋状とされていると共に、それらの傾斜方向が互いに同じ向きとされており、更にそれらの傾斜角度が相対的に異なるように設定されていることにより、周上の一部でそれらオリフィス形成用窓とオリフィス接続用窓が相互に交差するようになっていても良い。
また、オリフィス通路の通路長は、オリフィス通路の平衡室への連通位置が周方向に変化することで変更されるようになっていても良いが、例えば、オリフィス形成用窓とオリフィス接続用窓によってオリフィス通路の受圧室側の開口部が構成されており、内外オリフィス部材の軸方向の相対変位によってそれらオリフィス形成用窓とオリフィス接続用窓の交点が移動することで、オリフィス通路の受圧室への連通位置が周方向に変化して、オリフィス通路の通路長が変化するようになっていても良い。
また、オリフィス通路(オリフィス形成用窓)および流体通路は、例えば、内側オリフィス部材に形成されていても良いし、内外のオリフィス部材の協働によって形成されていても良い。更に、オリフィス通路のチューニング周波数は、あくまでも例示であって、防振すべき振動の周波数に応じて適当に設定されるものである。
また、アクチュエータの構造は特に限定されるものではなく、例えば、コイルを含む固定子と、コイルへの通電によって固定子に対して軸方向に相対変位せしめられる可動子とを有する電磁式のアクチュエータや、作用空気室に及ぼされる空気圧に基づいて駆動力が発揮される空気圧式のアクチュエータ等を採用することも出来る。更に、カム式や螺子式のアクチュエータを採用する場合にも、その具体的な構造は特に限定されるものではなく、歯車列の構成等は適宜に変更され得る。
また、流体通路は、必ずしも常時連通状態に保持されていなくても良く、例えば、内側オリフィス部材が外側オリフィス部材に対して相対変位せしめられることで、流体通路の連通/遮断が切り替えられるようになっていても良い。これによれば、オリフィス通路のチューニング周波数に相当する中乃至高周波振動の入力時に、流体通路を通じての流体流動をより確実に防止して、オリフィス通路による防振効果を一層有利に発揮させることが出来る。
また、本発明の適用範囲はエンジンマウントに限定されるものではなく、ボデーマウントやメンバマウント,デフマウント,サスペンションブッシュ等にも適用することが出来る。更に、本発明の適用範囲は自動車用の流体封入式防振装置に限定されるものでもなく、例えば列車用や自動二輪車用,自転車用、更には車両以外の用途に用いられる流体封入式防振装置に対しても適用可能である。