JP4922997B2 - 流体封入式防振装置 - Google Patents

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本発明は、内部に封入された非圧縮性流体の流動作用に基づいて防振効果を得るようにされた流体封入式防振装置に係り、特に入力振動に応じて防振特性を切り換えることが出来る流体封入式防振装置に関するものである。
従来から、振動伝達系を構成する部材間に介装されて、それら振動伝達系を構成する部材を相互に防振連結乃至は防振支持せしめる防振装置が知られている。また、内部に非圧縮性流体を封入された受圧室と平衡室を有すると共に、それら受圧室と平衡室を相互に連通するオリフィス通路を備えて、振動入力時にオリフィス通路を通じて両室間を流動せしめられる流体の共振作用等に基づいた防振効果を発揮するようにされた流体封入式防振装置が提案されており、例えば、自動車のエンジンマウントやメンバマウント,サブフレームマウント等への適用が検討されている。
ところで、流体封入式防振装置では、オリフィス通路が予めチューニングされた周波数域の振動入力に対して優れた防振効果が発揮される一方、チューニング周波数を外れた周波数域の振動入力に対して目的とする防振効果を有効に得ることが難しいという問題があった。特に、オリフィス通路のチューニング周波数よりも高周波数の振動が入力されると、オリフィス通路が反共振的な作用によって実質的に遮断されて、著しい高動ばね化により防振性能が大幅に低下するという問題を内包していた。
このような問題を解決する一つの手段として、例えば、特許文献1(特開平10−267072号公報)等では、オリフィス通路よりも高周波数域にチューニングされた流体流路を設けると共に、流体流路を往復作動する可動弁体によって連通状態と遮断状態に切り換えて、入力振動の周波数に応じて防振特性を切り換えるようにした切換型の流体封入式防振装置が提案されている。
このような切換型の流体封入式防振装置においては、可動弁体を駆動させるアクチュエータとして、特許文献1に示されているように、磁力や電磁力を利用した電磁式アクチュエータ等が一般的に採用されている。しかしながら、電磁式のアクチュエータを用いた切換型の流体封入式防振装置では、可動弁体を切換作動位置に保持するための保持力を得るために、通電状態を維持する必要があり、消費電力の増大や発熱による耐久性の低下等が問題となり易い。
そこで、本発明者らは、先の出願において、電動モータの回転駆動力をカム機構やねじ機構からなる運動変換機構によって軸方向の往復駆動力に変換すると共に、軸方向駆動力を可動弁体に伝達して可動弁体を往復作動せしめることにより、流体流路を連通状態と遮断状態に切り換えて、防振特性を切り換えるようにした流体封入式防振装置を提案している。
このようなカム機構やねじ機構からなる運動変換機構を備えたアクチュエータでは、部材間の係合作用や当接作用によって可動弁体に対する保持力を極めて効果的に得ることが出来ることから、可動弁体が目的とする切換作動位置に安定して保持することが可能であると共に、保持力を得るために通電を維持したり、特別な付勢手段を設ける必要もない。
一方、かかるアクチュエータでは、可動弁体に対して極めて大きな保持力が及ぼされることに起因して新たな問題が生じるおそれがある。即ち、可動弁体が所定の位置に大きな保持力で位置決め保持されるようになっていることから、衝撃的な大荷重が入力されて、受圧室に著しく大きな圧力変動が惹起された場合においても、可動弁体の受動的な変位による液圧吸収作用が発揮され得ず、入力荷重がアクチュエータに対して直接的に伝達されて、アクチュエータが損傷する可能性があったのである。しかも、受圧室に著しい負圧が及ぼされた場合には、キャビテーション現象に起因する異音や振動が問題となるおそれもあった。
特開平10−267072号公報
ここにおいて、本発明は、上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、安定した切換作動によって広い周波数域の振動に対して優れた防振効果を得ることが出来ると共に、衝撃的な大荷重の入力に際して荷重の作用によるアクチュエータの損傷やキャビテーション異音の発生を防止することが出来る、改良された構造の流体封入式防振装置を提供することにある。
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意な組み合わせで採用可能である。また、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに限定されることなく、明細書全体および図面に記載されたもの、或いはそれらの記載から当業者が把握することの出来る発明思想に基づいて認識されるものであることが理解されるべきである。
すなわち、本発明は、第一の取付部材と第二の取付部材が本体ゴム弾性体で連結されていると共に、本体ゴム弾性体で壁部の一部が構成されて非圧縮性流体が封入された受圧室と、可撓性膜で壁部の一部が構成されて非圧縮性流体が封入された平衡室が形成されており、それら受圧室と平衡室が流体流路によって相互に連通されている一方、可撓性膜を挟んで平衡室と反対側に配設されて往復作動によって可撓性膜を流体流路の開口部に対して当接および離隔せしめることにより流体流路を連通状態と遮断状態に切り換える可動弁体が設けられていると共に、可動弁体の駆動用の電動モータが設けられて、電動モータの回転駆動力がカム機構又はねじ機構からなる運動変換機構を介して可動弁体に対して往復駆動力として伝達されて可動弁体が往復作動せしめられるようにした流体封入式防振装置において、可撓性膜において可動弁体によって流体流路の開口部に押し付けられる部分には、流体流路の開口部側に向かって突出する環状の弾性リップが一体形成されており、可動弁体の往復作動によって弾性リップが流体流路の開口周縁部に対して当接および離隔せしめられるようになっていると共に、当接状態下で弾性リップの内周側には周壁部が弾性リップで構成されて流体流路を通じて受圧室に連通された作用領域が形成されるようになっており、作用領域に対して受圧室の液圧が及ぼされることにより弾性リップが弾性変形せしめられて、弾性リップと流体流路の開口周縁部との間に作用領域と平衡室を連通せしめる連通路が形成されるようになっていることを特徴とする。
このような本発明に従う構造の流体封入式防振装置においては、流体流路の開口周縁部に対する弾性リップの当接状態下、受圧室に対して過大な圧力変動が及ぼされると、受圧室の圧力変動が作用領域に伝達されて、作用領域の周壁部を構成する弾性リップに対して、可動弁体の往復作動方向に略直交する方向に圧力が及ぼされるようになっている。
そこにおいて、本発明では、可動弁体を往復作動させるアクチュエータが、カム機構やねじ機構からなる運動変換機構を備えており、可動弁体を往復作動方向で所定の位置に位置決め保持する位置制御型のアクチュエータとされている。それ故、圧力の作用によって弾性リップが弾性変形されることにより、弾性リップと流体流路の開口周縁部との間に隙間(連通路)が形成されて、連通路を通じて作用領域と平衡室が相互に連通されるようになっている。更に、作用領域は、流体流路を通じて受圧室に連通されており、流体流路と作用領域と連通路を通じて受圧室と平衡室が短絡状態で相互に連通されるようになっている。
これにより、受圧室と平衡室の間で相対的に過大な圧力変動が生じた場合には、受圧室の液圧が、流体流路と作用領域と連通路によって形成された短絡流路を通じて平衡室に逃がされて低減されるようになっている。それ故、受圧室の過大な正圧が伝達されることによるアクチュエータの損傷が防止されて、耐久性の向上が図られる。一方、受圧室の過大な負圧に起因するキャビテーション現象による異音や振動の発生が防止されて、静粛性や防振性能の向上が実現される。
また、本発明に係る流体封入式防振装置においては、作用領域に対して受圧室の正圧が及ぼされることにより弾性リップが外周側に向かって変形せしめられて連通路が形成されるようになっていても良い。
このように、衝撃的な大荷重の入力によって受圧室に及ぼされた正圧が、流体流路を通じて作用領域に伝達されて、連通路が形成されるようになっていることにより、流体流路を遮断する閉作動位置に可動弁体を保持するように切換作動されたアクチュエータに対して、受圧室の過大な正圧が流体流路を通じて及ぼされることに起因する、アクチュエータの損傷が防止される。
なお、例えば、弾性リップが突出先端側に行くに従って次第に外周側に傾斜するテーパ形状とされて、作用領域に正圧が及ぼされた場合に弾性リップが変形し易い構造とされていることにより、受圧室の正圧がより迅速に低減乃至は解消されて、アクチュエータの損傷防止がより効果的に実現され得る。
一方、本発明に係る流体封入式防振装置においては、作用領域に対して受圧室の負圧が及ぼされることにより弾性リップが内周側に向かって変形せしめられて連通路が形成されるようになっていても良い。
このように、衝撃的な大荷重の入力によって受圧室に及ぼされた負圧が、流体流路を通じて作用領域に伝達されて、連通路が形成されるようになっていることにより、可動弁体を流体流路を遮断する閉作動位置に保持するようにアクチュエータが切換作動された状態下、受圧室の過大な負圧が速やかに低減乃至は解消されるようになっている。これにより、受圧室の著しい圧力低下に起因して発生する異音や振動を防ぐことが出来る。
なお、例えば、弾性リップが突出先端側に行くに従って次第に内周側に傾斜するテーパ形状とされて、作用領域に負圧が及ぼされた場合に弾性リップが変形し易い構造とされていることにより、受圧室の負圧がより迅速に低減乃至は解消されて、キャビテーションに起因する異音や振動の発生がより効果的に防止され得る。しかも、受圧室に正圧が及ぼされた場合には、受圧室の圧力変動を効率的に確保されて、目的とする防振性能が効果的に発揮され得る。
また、本発明に係る流体封入式防振装置においては、弾性リップの弾性主軸が可動弁体の往復作動方向に延びていることが望ましい。
このような構造によれば、流体流路の開口周縁部に対する弾性リップの当接に際して、弾性リップが全周に亘って略一様な変形を生じて、弾性リップに及ぼされる圧力による弾性リップの安定した押付けや耐久性の向上を図ることが出来る。
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
先ず、図1には、本発明に係る流体封入式防振装置の第一の実施形態として、自動車用のエンジンマウント10が示されている。エンジンマウント10は、第一の取付部材としての第一の取付金具12と、第二の取付部材としての第二の取付金具14を、本体ゴム弾性体16で相互に連結した構造を有している。そして、第一の取付金具12が図示しないパワーユニット側に取り付けられると共に、第二の取付金具14が図示しない車両ボデー側に取り付けられることで、パワーユニットが車両ボデーに防振支持されるようになっている。なお、以下の説明において、上下方向とは、特に説明がない限り、エンジンマウント10の軸方向である図1中の上下方向を言うものとする。
より詳細には、第一の取付金具12は、全体として逆向きの略円錐台形状を有しており、大径側の上端面の中央には、中心軸上で上方に突出する取付ボルト18が固設されている。この取付ボルト18によって、第一の取付金具12がパワーユニットに固定されるようになっている。
一方、第二の取付金具14は、全体として大径の略円筒形状とされており、その上端部分は、次第に拡開するテーパ筒部20とされている。一方、第二の取付金具14の下端近くには、外周側に広がる円環板状の段差部22が形成されており、更に、この段差部22の外周縁部から下方に向かって延び出す円筒形状のかしめ部24が一体形成されている。そして、このかしめ部24に対して、ブラケット26がかしめ固定されている。ブラケット26は、筒形取付部28の外周面に複数の固定脚部30が溶着された構造とされている。筒形取付部28の上側開口周縁部にフランジ状部32が一体形成されており、筒形取付部28が第二の取付金具14の下側から同一中心軸上に重ね合わされて、かかるフランジ状部32が第二の取付金具14に対してかしめ部24でかしめ固定されている。このブラケット26の各固定脚部30に形成された取付孔に挿通される図示しない固定ボルトにより、ブラケット26ひいては第二の取付金具14が車両ボデーに固定されるようになっている。
また、これら第一の取付金具12と第二の取付金具14は、本体ゴム弾性体16によって連結されている。本体ゴム弾性体16は略円錐台形状とされており、その小径側端部に対して第一の取付金具12が所定深さで埋められた状態で加硫接着されている一方、第二の取付金具14のテーパ筒部20が、本体ゴム弾性体16の大径側端部外周面に加硫接着されている。また、本体ゴム弾性体16の大径側端面には、逆すり鉢状の大径凹所34が形成されている。更にまた、第二の取付金具14の内周面を覆う薄肉のシールゴム層36が、本体ゴム弾性体16の外周縁部から延び出して一体形成されている。
さらに、第二の取付金具14には、仕切部材38と、可撓性膜としてのダイヤフラム40とが組み付けられている。仕切部材38は、全体として円形ブロック形状を有しており、第二の取付金具14の下側開口から嵌め入れられて第二の取付金具14の軸方向中間部分に嵌着固定されている。一方、ダイヤフラム40は、薄肉の略円板形状を有するゴム弾性膜で形成されており、第二の取付金具14の下側開口部に組み付けられてその開口部を蓋している。これにより、第二の取付金具14内には、外部空間に対して密閉されて非圧縮性流体が封入された流体封入領域42が形成されていると共に、この流体封入領域42が仕切部材38で仕切られることにより、受圧室44と平衡室46が形成されている。なお、封入流体としては、水やアルキレングリコール等の低粘性流体が好適に採用される。
受圧室44は、壁部の一部が本体ゴム弾性体16で構成されており、第一の取付金具12と第二の取付金具14の間への略軸方向の振動入力に際して圧力変動が惹起される。平衡室46は、壁部の一部がダイヤフラム40で構成されており、容積変化が容易に許容されるようになっている。
また、これら受圧室44と平衡室46の間には、両室44,46を相互に連通する第一のオリフィス通路48と第二のオリフィス通路50が形成されている。本実施形態では、仕切部材38の外周面を周方向で略螺旋状に延びるように形成された周溝52が、第二の取付金具14で覆蓋されることによって第一のオリフィス通路48が形成されている。また、仕切部材38の中心軸上を貫通して延びる直線孔54によって第二のオリフィス通路50が形成されている。第一のオリフィス通路48よりも第二のオリフィス通路50の方が、通路断面積(A)と通路長さ(L)との比(A/L)の値が大きくされて高周波数域にチューニングされている。特に本実施形態では、第一のオリフィス通路48がエンジンシェイクに相当する略10Hz程度にチューニングされていると共に、第二のオリフィス通路50がアイドリング振動に相当する20〜40Hz程度にチューニングされている。
ところで、平衡室46を画成する上記ダイヤフラム40は、径方向の中間部分に十分な弛みが与えられて、軸方向への拡縮変形、特に中央部分の軸方向上下への変位が容易に許容されるようになっている。このダイヤフラム40の外周縁部には、略円環板形状の固定金具56が加硫接着されており、この固定金具56が、第二の取付金具14の段差部22に重ね合わされてかしめ部24でかしめ固定されることにより、ダイヤフラム40の外周縁部が第二の取付金具14の下側開口周縁部に対して固着されて、第二の取付金具14の下側開口がダイヤフラム40で流体密に閉塞されている。また、本実施形態におけるダイヤフラム40は、径方向中央部分が比較的に厚肉で略円板形状を呈する中央当接部58とされている。なお、本実施形態では、中央当接部58の直径が、第二のオリフィス通路50の直径よりも大径とされている。
また、ダイヤフラム40を挟んで平衡室46と反対側には、可動弁体としての弁部材60が配設されている。更に、この弁部材60を駆動するアクチュエータ62が、ダイヤフラム40を挟んで平衡室46の外側でブラケット26の筒形取付部28に収容状態で組み付けられている。
本実施形態において弁部材60は、略円板形状を有しており、合成樹脂や金属等で形成された硬質部材とされている。また、弁部材60は、第二のオリフィス通路50の平衡室46側開口部よりも大きな直径で形成されている。
一方、アクチュエータ62は、略カップ形状のケース金具66と、ケース金具66の開口部を閉塞するように固定された略円環板形状の中間蓋板68で構成されたハウジング70を有している。なお、図1において、アクチュエータ62は、見易さのために、ハウジング70と後述するベアリング部材94およびコイルスプリング110が、何れも断面図として図示されていると共に、他の部分が何れも側面図として図示されている。
また、ハウジング70内には、電動モータ78が配設されており、外部からの通電によって回転駆動される電動モータ78の回転軸80が軸直角方向に延びている。なお、電動モータ78としては、他励直流電動機等の各種公知のモータ(電動機)を採用することが出来ることから、ここでは内部構造等の詳細については省略する。また、電動モータ78の回転軸80に対してウォームギヤ82が固定されていると共に、ウォームギヤ82にウォームホイール84が噛合されて、ハウジング70で支持された支軸86に対して外挿状態で取り付けられている。更に、ウォームホイール84の下側には第一のギヤ88が一体形成されており、第一のギヤ88に第二のギヤ90が噛合されていると共に、第二のギヤ90が主動部材としての回転駆動軸92に外挿固定されている。回転駆動軸92は、ベアリング部材94によってハウジング70に対して中心軸回りで回転可能に支持されており、本実施形態では、マウント中心軸上を延びている。以上によって、電動モータ78に外部の電源装置96から通電されると、電動モータ78の回転駆動力が歯車列を介して回転駆動軸92に伝達されて、回転駆動軸92が中心軸回りで回転駆動されるようになっている。
また、回転駆動軸92の上端には、主動側カム部材98が固設されている。主動側カム部材98は、略円板形状であって、その上端面が周方向に波状をもって延びる主動側カム面100とされている。また、主動側カム部材98に対して、従動側カム部材102が軸方向に重ね合わされて配設されている。従動側カム部材102は、主動側カム部材98と同径の略円板形状であって、その下端面が主動側カム面100に対応した波状を有する従動側カム面104とされている。更に、従動側カム部材102から軸方向上向きに延び出す従動部材としての弁体駆動軸106が設けられており、弁体駆動軸106が、中間蓋板68の径方向中央部分に貫通形成された中央孔に挿通されて、ハウジング70から外部(上方)に突出せしめられている。
また、ハウジング70外に突出した弁体駆動軸106の先端部には、弁部材60が固着されている。換言すれば、弁部材60の中心軸上で下方に向かって突出するようにして弁体駆動軸106が固設されている。また、本実施形態では、弁部材60とハウジング70の間に回転制限機構が設けられており、弁部材60および弁体駆動軸106,従動側カム部材102の軸方向への変位が許容されると共に、係合作用等によって弁部材60および弁体駆動軸106,従動側カム部材102のハウジング70に対する回転が阻止されるようになっている。
さらに、ハウジング70における中間蓋板68の内周縁部が、従動側カム部材102に対して軸方向で対向位置せしめられていると共に、それら中間蓋板68と従動側カム部材102の対向面間にコイルスプリング110が配設されている。そして、コイルスプリング110の付勢力が、主動側カム部材98の主動側カム面100と従動側カム部材102の従動側カム面104との間に、両カム面100,104の重ね合わせ方向に及ぼされている。これにより、弁体駆動軸106の回転駆動軸92に対する軸方向の相対変位をコイルスプリング110の付勢力に抗して許容しつつ、主動側カム部材98と従動側カム部材102の重ね合わせ状態が保持されるようになっている。即ち、電動モータ78に通電されて主動側カム部材98が回転作動されると、従動側カム部材102の回転が回転制限機構によって阻止されていることから、カム面100,104の作用によって、主動側カム部材98の回転作動が、従動側カム部材102の往復作動に変換されるようになっている。もって、本実施形態における運動変換機構が、主動側カム部材98と従動側カム部材102によって構成されている。
そして、この従動側カム部材102の往復作動が弁体駆動軸106に伝達されて、弁体駆動軸106に連結された弁部材60に往復駆動力が及ぼされることにより、弁部材60が仕切部材38に対して接近方向および離隔方向に作動されるようになっている。これによって、弁部材60が上方に作動されると、ダイヤフラム40が弁部材60によって押し上げられて、仕切部材38における第二のオリフィス通路50の開口部に押し付けられることにより、第二のオリフィス通路50が遮断されるようになっている。一方、弁部材60が下方に作動されると、ダイヤフラム40の仕切部材38における第二のオリフィス通路50の開口部からの離隔が許容されて、第二のオリフィス通路50が連通されるようになっている。以上によって、第二のオリフィス通路50の連通状態と遮断状態の切換えが実現されるようになっている。なお、このことからも明らかなように、本実施形態における流体流路は、第二のオリフィス通路50で構成されている。また、本実施形態では、運動変換機構で変換された往復駆動力を弁部材60に伝達する出力軸が、弁体駆動軸106によって構成されている。
さらに、かくの如き切換作動を自動車の走行状態に応じて制御する駆動回路としての制御装置112が、ハウジング70内に収容されて組み付けられている。この制御装置112は、電動モータ78と電源装置96を電気的に接続する回路上に配設されており、本実施形態では、電動モータ78への通電を制御することで電動モータ78の回転軸80を所定の回転角、具体的には、周方向に延びるサイン波状の波面とされた主動側カム面100および従動側カム面104の例えば1/2周期に相当する回転角ずつ一方向に回転或いは往復回転させるようになっている。なお、電動モータ78への通電と非通電を切り換える制御装置112は、接点制御機構等の従来から公知のものを採用することが出来るため、ここでは説明を省略する。
なお、アクチュエータ62は、ケース金具66の開口周縁部に一体形成された取付フランジ114が、ダイヤフラム40の固定金具56とブラケット26のフランジ状部32の間に挟み込まれて、第二の取付金具14のかしめ部24でかしめ固定されることにより、第二の取付金具14に支持されてダイヤフラム40とブラケット26の対向面間に配設されている。
ここにおいて、ダイヤフラム40の中央当接部58には、弾性リップとしての弁状リップ116が設けられている。弁状リップ116は、略一定の断面形状で周方向に連続して延びる略円環形状を有しており、中央当接部58と一体形成されて軸方向上方に向かって突出されている。また、本実施形態における弁状リップ116は、突出先端面が円弧状の湾曲面とされており、突出先端側に行くに従って次第に径方向で狭幅となっている。なお、本実施形態においては、弁状リップ116が、マウント10の中心軸方向に対して傾斜することなく上向きに突出されている。
また、弁状リップ116は、少なくともその基端部分の外径が、弁部材60の外径と略同じとされていることが望ましく、より好適には、弁部材60の外径よりも小径とされている。更に、弁状リップ116は、第二のオリフィス通路50の平衡室46側の開口部よりも大径とされており、軸方向の投影において第二のオリフィス通路50の平衡室46側の開口部の外周側を取り囲むように配置されている。そして、アクチュエータ62によって弁部材60が軸方向に作動されて、ダイヤフラム40の中央当接部58が第二のオリフィス通路50の平衡室46側開口部に接近することにより、弁状リップ116の突出先端部分が、仕切部材38における第二のオリフィス通路50の平衡室46側の開口周縁部に対して、全周に亘って押し付けられるようになっている。
また、弁状リップ116が第二のオリフィス通路50の開口周縁部に押し付けられた状態下で、弁状リップ116の内周側には、作用領域としての中間領域118が形成されている。この中間領域118は、ダイヤフラム40の中央当接部58と仕切部材38の対向面間に形成される、弁状リップ116を周壁部とする領域であって、第二のオリフィス通路50を通じて受圧室44に連通されている。これにより、中間領域118には受圧室44の液圧が及ぼされるようになっており、中間領域118の周壁部を構成する弁状リップ116には、その外周面に対して平衡室46の液圧が及ぼされるようになっていると共に、内周面に対して中間領域118を介して受圧室44の液圧が及ぼされるようになっている。
そして、弁状リップ116の仕切部材38に対する当接状態下で、受圧室44に大きな圧力変動が及ぼされることにより、弁状リップ116が弾性変形せしめられるようになっている。即ち、受圧室44に圧力変動が惹起されると、受圧室44の液圧が中間領域118に伝達されて、弁状リップ116の内周面に及ぼされるようになっている。そして、弁状リップ116の内外周面に及ぼされる液圧の差に基づいて、図3,4に示されているように、弁状リップ116が外周側或いは内周側に弾性変形せしめられるようになっている。
ここにおいて、弁部材60を切換作動されることで弁状リップ116を仕切部材38に押し付けるアクチュエータ62は、カム機構で構成された運動変換機構によって、弁部材60を所定の切換位置(上死点又は下死点)まで駆動変位せしめた後、弁部材60に対してカム面の当接作用に基づく大きな保持力を及ぼして、弁部材60を位置決め保持する位置制御型のアクチュエータとされている。
それ故、図3,4に示されているように、弁状リップ116が外周側或いは内周側に向かって弾性変形して、その軸方向の高さ寸法が小さくなると、弁状リップ116の突出先端と仕切部材38の下面との間に連通路としての隙間120が形成されるようになっている。かかる隙間120が形成されることにより、弁状リップ116の内周側に形成された中間領域118が、隙間120を通じて平衡室46に連通されて、受圧室44と平衡室46が、第二のオリフィス通路50と中間領域118と隙間120によって形成された短絡通路を通じて、短絡状態で相互に連通されるようになっている。
より詳細には、エンジンマウント10において第一の取付金具12と第二の取付金具14の間に衝撃的な大荷重が入力されて、受圧室44に対して過大な正圧が及ぼされると、図3に示されているように、弁状リップ116が先端側に行くに従って次第に拡径するテーパ形状となるように外周側に向かって変形せしめられる。これにより、弁状リップ116の突出先端面と仕切部材38の下面との間に隙間120が形成されて、中間領域118が平衡室46に連通されるようになっている。その結果、受圧室44の液圧が、第二のオリフィス通路50と中間領域118と隙間120とを通じて平衡室46に逃がされて、受圧室44に作用する正圧が緩和乃至は解消されるようになっている。
一方、受圧室44に対して過大な負圧が及ぼされると、図4に示されているように、弁状リップ116が先端側に行くに従って次第に縮径するテーパ形状となるように変形せしめられる。これにより、弁状リップ116の突出先端面と仕切部材38の下面との間に隙間120が形成されて、中間領域118が平衡室46に連通されるようになっている。その結果、受圧室44の液圧が、第二のオリフィス通路50と中間領域118と隙間120とを通じて平衡室46に逃がされて、受圧室44に作用する負圧が緩和乃至は解消されるようになっている。
このような構造とされたエンジンマウント10の自動車への装着状態においては、第一のオリフィス通路48がチューニングされた低周波数の振動入力に際して、図2に示されているように、弁部材60を上端の閉作動位置に位置せしめるようにアクチュエータ62が作動されるようになっている。これにより、第二のオリフィス通路50の平衡室46側の開口部が、ダイヤフラム40の中央当接部58によって閉塞されて、第二のオリフィス通路50が遮断状態に切り替えられるようになっており、第一のオリフィス通路48を通じての流体流動量が有利に確保されて、流体の流動作用に基づく防振効果(高減衰効果)が効率的に発揮されるようになっている。
なお、本実施形態では、第二のオリフィス通路50の平衡室46側の開口部を取り囲むように弁状リップ116が仕切部材38に対して当接されて、中央当接部58による第二のオリフィス通路50の遮断が、緩衝的に実現されるようになっている。これにより、アクチュエータ62を構成する部品の寸法誤差等によって弁部材60の上死点にばらつきが生じる場合にも、中央当接部58ひいては弁部材60が適当な押付力で仕切部材38に対して押し付けられる。しかも、弁状リップ116を形成されたダイヤフラム40の中央部分が厚肉の中央当接部58となっており、弁状リップ116の仕切部材38への押付けによって、ダイヤフラム40における液漏れ等の不具合が防止されている。更に、弁状リップ116の断面形状が突出先端側に行くに従って次第に狭幅となっており、当接圧の急激な増大が効果的に防止されている。
一方、第二のオリフィス通路50がチューニングされた高周波数の振動入力に際して、弁部材60を下端の開作動位置に位置せしめるようにアクチュエータ62が作動されるようになっている。これにより、図1に示されているように、中央当接部58が第二のオリフィス通路50の平衡室46側の開口部から離隔せしめられて、第二のオリフィス通路50が連通状態に切り替えられるようになっている。その結果、第二のオリフィス通路50を通じて両室44,46間での流体流動が生ぜしめられて、流体の流動作用に基づく防振効果(低動ばね効果)が発揮されるようになっている。
本実施形態では、弁部材60が、各カム面100,104の当接作用によって、軸方向で高精度に位置決め保持されるようになっており、第二のオリフィス通路50の連通状態と遮断状態の切換えを高精度に実現することが出来る。しかも、かかる位置決め保持に際して機械的な作用(カム面の当接作用)を利用することにより、弁部材60を位置決め保持する保持力を非通電で得ることが出来る。従って、アクチュエータ62において通電による電力消費や発熱を抑えることが出来る。
ここにおいて、自動車の走行時に、エンジンマウント10に対して衝撃的な大荷重が入力されて、受圧室44に著しい正圧が及ぼされると、受圧室44の正圧が中間領域118に伝達されて弁状リップ116に及ぼされることにより、隙間120が形成されるようになっている。そして、隙間120を通じて受圧室44の液圧が平衡室46に逃がされて、受圧室44の正圧が可及的速やかに低減乃至は解消されるようになっている。これにより、受圧室44に及ぼされた過大な正圧が、第二のオリフィス通路50の開口部を覆蓋する弁部材60を介してアクチュエータ62に伝達されて、アクチュエータ62が故障するのを防ぐことが出来る。
一方、自動車の走行時に受圧室44に対して著しい負圧が及ぼされると、受圧室44の負圧が中間領域118に伝達されて弁状リップ116に及ぼされることにより、隙間120が形成されるようになっている。そして、隙間120を通じての流体流動により、受圧室44の負圧が低減乃至は解消されるようになっている。これにより、受圧室44の圧力が局所的に著しく低下して、受圧室44にキャビテーションと解される気泡が生じるのを防ぐことが出来る。それ故、該気泡の崩壊に際して発生する衝撃波が水撃圧として乗室に伝達されることにより、体感し得る程度の異音や振動が発生するのを防ぐことが出来る。
なお、本実施形態では、弁状リップ116が軸方向に突出する環状乃至は筒状とされており、第二のオリフィス通路50の開口周縁部に対する弁状リップ116の当接下において、弁状リップ116が、受圧室44に及ぼされる圧力に応じて、外周側又は内周側に選択的に変形せしめられるようになっている。それ故、受圧室44に対して過大な正圧と負圧の何れが及ぼされた場合にも、弁状リップ116の弾性変形によって隙間120が形成されて、液圧の低減効果が有効に発揮される。
さらに、弁状リップ116の仕切部材38に対する当接に際して、弁状リップ116が軸方向に圧縮変形されるようになっている。これにより、弁状リップ116の仕切部材38への当接に際して、弁状リップ116に対して剪断方向の力が及ぼされるのを防いで、弁状リップ116の押付力や耐久性の向上が図られ得る。更にまた、弁状リップ116の弾性主軸が軸方向に延びていることにより、仕切部材38への当接による応力がダイヤフラム40や弁状リップ116に対して周上で部分的に作用するのを防ぐことが出来る。これにより、ダイヤフラム40が部分的に弁部材60に押し付けられることによる偏磨耗等の問題を防ぐことが出来る一方、弁状リップ116の仕切部材38への当接に際して、弁状リップ116が全周に亘って略一様に変形されて、耐久性の向上や切換作動の安定化等を実現出来る。
また、弁状リップ116が略軸方向に突出していることにより、中間領域118の液圧が弁状リップ116に対して略軸直角方向に及ぼされて、弁状リップ116が液圧の作用によって剪断方向に弾性変形されるようになっている。それ故、弁状リップ116が比較的容易に弾性変形されて、受圧室44の過剰な内圧変動が速やかに且つ高精度に低減乃至は解消され得る。
次に、図5には、本発明に係る流体封入式防振装置の第二の実施形態として、自動車用のエンジンマウントの要部が示されている。なお、以下の説明において、前記実施形態と実質的に同一の部材乃至部位については、同一の符号を付すことにより、説明を省略する。また、図5乃至図8においては、エンジンマウントの要部のみが示されているが、図示されていない部分については、前記第一の実施形態に示されたエンジンマウント10と同一の構造となっている。
すなわち、本実施形態に従う構造のエンジンマウントにおいては、ダイヤフラム40の中央当接部58に対して、弾性リップとしての弁状リップ122が一体形成されている。弁状リップ122は、周方向で連続的に延びる環状とされており、中央当接部58の径方向中間部分から上方に向かって突出されている。また、弁状リップ122は、突出先端側に行くに従って次第に径方向で狭幅となる断面形状を有している。
ここにおいて、本実施形態では、弁状リップ122が、図5に示されているように、突出先端側に行くに従って次第に拡開するテーパ形状を有している。なお、本実施形態では、弁状リップ122が、仕切部材38から離隔した非当接状態においても、軸方向上側に行くに従って次第に拡径するテーパ形状とされている。
このような本実施形態に係るエンジンマウントでは、弁状リップ122がテーパ形状であることから、中間領域118に正圧が及ぼされた場合に、弁状リップ122が容易に弾性変形せしめられて、図6に示されているように、弁状リップ122と仕切部材38の間に隙間120が形成されるようになっている。そして、隙間120を通じて受圧室44と平衡室46の間で流体が流動せしめられることにより、受圧室44の正圧が平衡室46に逃がされて緩和乃至は解消されるようになっている。なお、弁状リップ122が圧力の作用によって容易に変形される理由としては、弁状リップ122が予め軸方向に対して傾斜した断面を有するテーパ形状とされていることにより、弁状リップ122に対して外周側への外力が及ぼされると、弁状リップ122と仕切部材38の当接状態が速やかに解除されて、弁状リップ122と仕切部材38の間で作用する摩擦抵抗が小さく抑えられること等が考えられる。
これにより、受圧室44の過大な正圧がアクチュエータ62に伝達されて、アクチュエータ62が故障するのを効果的に防ぐことが出来る。また、弁状リップ122と仕切部材38の間で作用する摩擦抵抗が抑えられることから、弁状リップ122の弾性変形に際して、スティックスリップによる異音を抑えることが出来る。
次に、図7には、本発明に係る流体封入式防振装置の第三の実施形態として、自動車用のエンジンマウントの要部が示されている。即ち、本実施形態に従う構造のエンジンマウントにおいては、ダイヤフラム40の中央当接部58に対して弾性リップとしての弁状リップ124が一体形成されている。弁状リップ124は、周方向で連続的に延びる環状とされており、中央当接部58の径方向中間部分から上方に向かって突出されている。また、弁状リップ124は、突出先端側に行くに従って次第に径方向で狭幅となる断面形状を有している。
ここにおいて、本実施形態では、弁状リップ124が、図7に示されているように、突出先端側に行くに従って次第に収縮するテーパ形状を有している。なお、本実施形態において、弁状リップ124は、仕切部材38から離隔した非当接状態において、予め所定のテーパ形状とされている。
このような本実施形態に係るエンジンマウントでは、弁状リップ124がテーパ形状とされており、中間領域118に負圧が及ぼされた場合に、液圧の作用によって弁状リップ124が容易に弾性変形されて、図8に示されているように、弁状リップ124と仕切部材38の間に隙間120が形成されるようになっている。そして、隙間120を通じて受圧室44と平衡室46の間で流体が流動せしめられることにより、受圧室44の負圧が平衡室46に逃がされて緩和乃至は解消されるようになっている。
これにより、受圧室44の負圧に起因するキャビテーション現象が効果的に防止されて、キャビテーション気泡の消失に際して発生する異音や振動が抑えられる。しかも、弁状リップ124が突出先端側に行くに従って次第に収縮するテーパ形状とされていることにより、受圧室44に正圧が及ぼされた場合には、弁状リップ124が仕切部材38の下面により強く押し付けられて、弁状リップ124の弾性変形が制限される。それ故、第二のオリフィス通路50が遮断状態に効果的に保持されて、第一のオリフィス通路48の防振効果が有効に発揮される。
次に、図9には、本発明に係る流体封入式防振装置の第四の実施形態として、自動車用のエンジンマウント126が示されている。エンジンマウント126は、マウント本体128にブラケット130が取り付けられた構造とされており、マウント本体128は、更に第一の取付部材としての第一の取付金具132と第二の取付部材としての第二の取付金具134が本体ゴム弾性体136で相互に連結された構造を有している。そして、第一の取付金具132が図示しないパワーユニット側に取り付けられると共に、第二の取付金具134が図示しない車両ボデー側に取り付けられることで、パワーユニットが車両ボデーに防振支持されるようになっている。
より詳細には、第一の取付金具132は、全体として略円形ブロック形状を有しており、上端面の中央には、中心軸上で上方に突出する取付ボルト18が固設されている。この取付ボルト18によって、第一の取付金具132がパワーユニットに固定されるようになっている。
一方、第二の取付金具134は、全体として大径の略円筒形状とされており、ブラケット130が外嵌固定されている。ブラケット130は、略有底円筒形状の取付部138の外周面に環状の固定脚部140が圧入固定された構造とされている。このブラケット130の固定脚部140に形成された取付孔に挿通される図示しない固定ボルトにより、ブラケット130ひいては第二の取付金具134が車両ボデーに固定されるようになっている。
また、これら第一の取付金具132と第二の取付金具134は、本体ゴム弾性体136によって連結されている。本体ゴム弾性体136は略円錐台形状とされており、その小径側端部に対して第一の取付金具132が所定深さで埋められた状態で加硫接着されている一方、第二の取付金具134の上端部が、本体ゴム弾性体136の大径側端部外周面に加硫接着されている。
さらに、第二の取付金具134には、仕切部材142と、可撓性膜としてのダイヤフラム144とが組み付けられている。仕切部材142は、円形ブロック形状の仕切部材本体と、略円板形状の蓋金具が、軸方向に重ね合わされた構造となっており、第二の取付金具134の下側開口から嵌め入れられて第二の取付金具134の軸方向中間部分に嵌着固定されている。一方、ダイヤフラム144は、薄肉で軸方向に弛みをもった略円板形状のゴム弾性膜で形成されており、外周縁部に固着された環状の固定金具146が第二の取付金具134の下側開口部に固定されることで、第二の取付金具134に対して組み付けられて、その開口部を蓋している。これにより、第二の取付金具134内に流体封入領域42が形成されていると共に、この流体封入領域42が仕切部材142で仕切られて、壁部の一部が本体ゴム弾性体136で構成された受圧室44と、壁部の一部がダイヤフラム144で構成された平衡室46が形成されている。
また、これら受圧室44と平衡室46の間には、両室44,46を相互に連通する第一のオリフィス通路148と第二のオリフィス通路150が形成されている。本実施形態では、第一のオリフィス通路148が仕切部材142の外周縁部を周方向で略螺旋状に延びるように形成されていると共に、第二のオリフィス通路150が仕切部材142の内周部分を周方向に延びるように形成されている。更に、第二のオリフィス通路150が仕切部材142の径方向中央部分において平衡室46に連通されている。なお、第一,第二のオリフィス通路148,150のチューニングは、前記第一の実施形態の第一,第二のオリフィス通路48,50と同様である。
また、ダイヤフラム144を挟んで平衡室46と反対側には、可動弁体としての弁部材152が配設されている。更に、この弁部材152を駆動するアクチュエータ154が、ダイヤフラム144を挟んで平衡室46の外側でブラケット130の取付部138に収容状態で組み付けられている。
本実施形態において弁部材152は、略円板形状の押圧板部156を有しており、合成樹脂や金属等で形成された硬質部材とされている。また、弁部材152の押圧板部156は、第二のオリフィス通路150の平衡室46側開口部よりも大きな直径で形成されている。
一方、アクチュエータ154は、ブラケット130の取付部138に組み付けられる電動モータ78を備えており、電源装置96からの通電によって回転駆動される電動モータ78の回転軸80が軸方向に延びている。また、電動モータ78は厚肉の略円環板形状を有する支持部材158の中央孔に嵌め込まれており、支持部材158が取付部138に嵌着固定されることにより、電動モータ78が取付部138の径方向中央部分に位置決め固定されている。更に、支持部材158の内周縁部には、略円筒形状の保持筒部160が形成されて、軸方向上方に突出せしめられている。更にまた、保持筒部160において径方向に対向する位置には、軸方向に直線的に一対の係合溝162,162が形成されており、内周面および上端面に開口されている。なお、回転軸80の外周側を取り囲むように、保持筒部160が形成されている。
また、電動モータ78と電源装置96を電気的に接続する回路上には、制御装置112が配設されており、制御装置112によって、電動モータ78の回転軸80の回転方向をコントロール出来るようになっている。なお、制御装置112の具体的な構造については、説明を省略する。
また、電動モータ78の回転軸80には、雄ねじ部材164が取り付けられている。雄ねじ部材164は、略円形ブロック状とされていると共に、軸方向の全長に亘って外周面にねじ山が形成されている。そして、雄ねじ部材164の中心軸上を延びるように形成された中央孔に対して回転軸80が挿通固定されている。
また、雄ねじ部材164を装着された回転軸80には、出力軸としての弁体駆動筒部166が取り付けられている。弁体駆動筒部166は、略円筒形状を有しており、略円板形状とされた押圧板部156の径方向中間部分から下方に向かって突出するように形成されている。なお、本実施形態では、可動弁体としての押圧板部156と、アクチュエータの出力軸としての弁体駆動筒部166が、一体形成されて弁部材152を構成している。
さらに、弁体駆動筒部166の内周面には、雄ねじ部材164と対応するねじ山が形成されており、弁体駆動筒部166が雄ねじ部材164に螺合されることにより、弁部材152が回転軸80に取り付けられていると共に、回転軸80と弁部材152の連結部分において、運動変換機構としてのねじ機構が設けられている。なお、図9においては、分かり易さのために、雄ねじ部材164および弁体駆動筒部166の形状、具体的には、例えば、雄ねじ部材164および弁体駆動筒部166におけるねじ山の傾斜やサイズ等が誇張して図示されている。
また、弁体駆動筒部166の下端縁部には、径方向一方向で外側に向かって突出する一対の係合突起168,168が形成されており、弁部材152の回転軸80への装着下、支持部材158の保持筒部160に形成された係合溝162,162に差し込まれている。これにより、弁体駆動筒部166ひいては弁部材152の中心軸回りでの回転が、係合突起168と係合溝162の周方向での当接によって阻止されており、本実施形態における回転制限機構が、係合突起168と係合溝162によって構成されている。そして、本実施形態では、電動モータ78に通電されて回転軸80の回転作動が雄ねじ部材164に伝達されることにより、回転軸80の回転方向に応じた軸方向の駆動力が弁体駆動筒部166に及ぼされて、弁部材152が軸方向に往復作動されるようになっている。
ここにおいて、ダイヤフラム144の中央当接部58には、弾性リップとしての弁状リップ116が一体形成されている。弁状リップ116は、前記第一の実施形態においても示されているように、略一定の断面形状で周方向に連続して延びる環状を有するゴム弾性体であって、中央当接部58から上方に向かって突出せしめられている。この弁状リップ116は、アクチュエータ154によって弁部材152が軸方向上端に駆動変位されることにより、第二のオリフィス通路150の開口周縁部に押し付けられるようになっている。これにより、第二のオリフィス通路150が遮断状態に切り換えられるようになっていると共に、中央当接部58と仕切部材142の間には、周壁部を弁状リップ116によって構成された作用領域としての中間領域118が形成されるようになっている。そして、第二のオリフィス通路150の遮断下、受圧室44に過大な液圧変動が及ぼされると、中間領域118に伝達された受圧室44の液圧が、中間領域118を介して弁状リップ116の内周面に及ぼされて、弁状リップ116が弾性変形せしめられるようになっている。
ここにおいて、アクチュエータ154が、弁部材152を所定の切換位置に保持する位置制御型アクチュエータとされていることから、弁部材152が、ねじ機構におけるねじ山の噛合等に基づく保持作用によって、弁状リップ116と仕切部材142の当接の有無に関らず、所定の閉作動位置(上死点)に強固に保持されるようになっている。
これにより、弁状リップ116の弾性変形によって、弁状リップ116と仕切部材142の間に連通路としての隙間120が形成されて、受圧室44と平衡室46が第二のオリフィス通路150と中間領域118と隙間120を通じて短絡状態で連通されるようになっており、受圧室44の圧力変動が低減されて、アクチュエータ154の損傷やキャビテーションに起因する異音や振動の発生を防ぐことが出来るようになっている。
このように、運動変換機構としてねじ機構を採用したアクチュエータ154を、弁部材152の駆動手段として備えたエンジンマウント126においても、受圧室44の過剰な液圧が低減乃至は解消されることによるアクチュエータ154の耐久性向上効果や、キャビテーション異音の低減効果が発揮される。
以上、本発明の幾つかの実施形態について説明してきたが、これらはあくまでも例示であって、本発明は、かかる実施形態における具体的な記載によって、何等、限定的に解釈されるものではない。
例えば、弾性リップは周方向で断面形状が変化していても良く、周方向で突出高さを変化させることにより、流体流路の開口周縁部に対する弾性リップの押付力を周方向で変化させることも出来る。これによれば、比較的に小さい圧力が及ぼされた場合には、押付力の小さい部分(換言すれば、突出高さが小さい部分)において、連通路が部分的に形成されて圧力の低減効果が発揮される一方、比較的に大きい圧力が及ぼされた場合には、押付力の大きい部分(換言すれば、突出高さが大きい部分)を含む全周に亘って連通路が形成されて、圧力低減効果がより効果的に発揮されて、必要以上の液圧の逃げを抑えることが可能となる。
さらに、弾性リップは、周方向に連続した環状であれば、必ずしも円環形状でなくても良く、異形のリング状等であっても良い。
更にまた、前記第二又は第三の実施形態においては、弾性リップが略一定の方向に傾斜せしめられた構造が示されているが、例えば、周上で部分的に傾斜方向を逆向きとした部分が設けられた構造や、周上で部分的に軸方向に延び出す部分が設けられた構造等も採用され得る。これによれば、弾性リップが弾性変形を生じる圧力の閾値を周上で変化させて、多段階の圧力逃がしが実現される。
また、例えば、弾性リップの軸方向中間部分或いは基端部分において、外周面と内周面の少なくとも一方に周方向に延びる凹溝が形成されて、弾性リップの弾性が部分的に小さくされることにより、弾性リップが剪断方向に変形を生じ易い構造とされていても良い。
また、前記第一乃至第四の実施形態では、一つの弾性リップのみが形成されている構造が示されているが、例えば、径方向で離隔して複数状の弾性リップが形成されていても良く、これにより、通常の振動入力時において、流体流路の遮断がより効率的に実現され得る。
また、可動弁体は、必ずしも弾性リップよりも大径とされていなくても良く、例えば、可動弁体が弾性リップよりも小径とされていると共に、弾性リップよりも大径とされた硬質の補強プレートが、可撓性膜における流体流路の開口周縁部への当接部分に固着された構造等も採用することが出来る。
また、アクチュエータの具体的な構造は、前記第一乃至第四の実施形態に例示された構造によって限定的に解釈されるものではなく、特に歯車列の構成や、カム機構やねじ機構の構造等は、何等限定されるものではない。具体的には、例えば、前記第一の実施形態では、カム機構として主動側カム部材98の上端面と従動側カム部材102の下端面をカム面100,104とする所謂面カム構造が示されているが、カム機構としては、主動部材(主動側カム部材)に形成されて軸方向に波打ちつつ周方向に延びる凹溝に対して、従動部材(従動側カム部材)側から延びるピンを挿し入れて、主動部材の回転駆動によってピンが凹溝の波打ち形状に沿って移動せしめられることにより、従動部材が軸方向に駆動変位されるようにした所謂溝カム構造を採用することも出来る。
また、前記第一乃至第四の実施形態では、低周波オリフィス通路としての第一のオリフィス通路48と、高周波オリフィス通路としての第二のオリフィス通路50とを備えた所謂ダブルオリフィス構造のエンジンマウントが示されているが、例えば、微小変形や微小変位によって受圧室の液圧を平衡室に伝達する可動膜や可動板を仕切部材に設けることで液圧吸収機構が構成されて、該可動膜又は可動板によって発揮される液圧吸収作用に基づいて、自動車の走行こもり音等に相当する高周波オリフィス通路のチューニング周波数よりも高周波数の振動に対して、目的とする防振効果(低動ばね効果)が発揮されるようにすることも出来る。
また、前記第一乃至第四の実施形態では、本発明を自動車のエンジンマウントに適用した例が示されているが、本発明の適用範囲は、エンジンマウントに限定されるものではなく、ボデーマウントやサブフレームマウント等にも適用することが出来る。更に、本発明の適用範囲は、自動車用に限定されるものではなく、例えば列車用や自転車用、更には車両以外の用途に用いられる流体封入式防振装置に対しても適用可能である。
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更,修正,改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
本発明の第一の実施形態としてのエンジンマウントを示す縦断面図。 同エンジンマウントにおいて第二のオリフィス通路が遮断された状態を示す要部の縦断面図。 同エンジンマウントにおいて受圧室に過大な正圧が及ぼされた状態を示す要部拡大断面図。 同エンジンマウントにおいて受圧室に過大な負圧が及ぼされた状態を示す要部拡大断面図。 本発明の第二の実施形態としてのエンジンマウントの要部を示す縦断面図。 同エンジンマウントにおいて受圧室に過大な正圧が及ぼされた状態を示す要部拡大断面図。 本発明の第三の実施形態としてのエンジンマウントの要部を示す縦断面図。 同エンジンマウントにおいて受圧室に過大な負圧が及ぼされた状態を示す要部拡大断面図。 本発明の第四の実施形態としてのエンジンマウントを示す縦断面図。
符号の説明
10,126:エンジンマウント、12,132:第一の取付金具、14,134:第二の取付金具、16,136:本体ゴム弾性体、40,144:ダイヤフラム、38,142:仕切部材,44:受圧室、46:平衡室、48,148:第一のオリフィス通路、50,150:第二のオリフィス通路、62,154:アクチュエータ、80:電動モータ、98:主動側カム部材、102:従動側カム部材、60,152:弁部材、116,122,124:弁状リップ、118:中間領域、120:隙間、164:雄ねじ部材、166:弁体駆動筒部

Claims (4)

  1. 第一の取付部材と第二の取付部材が本体ゴム弾性体で連結されていると共に、該本体ゴム弾性体で壁部の一部が構成されて非圧縮性流体が封入された受圧室と、可撓性膜で壁部の一部が構成されて非圧縮性流体が封入された平衡室が形成されており、それら受圧室と平衡室が流体流路によって相互に連通されている一方、該可撓性膜を挟んで該平衡室と反対側に配設されて往復作動によって該可撓性膜を該流体流路の開口部に対して当接および離隔せしめることにより該流体流路を連通状態と遮断状態に切り換える可動弁体が設けられていると共に、該可動弁体の駆動用の電動モータが設けられて、該電動モータの回転駆動力がカム機構又はねじ機構からなる運動変換機構を介して該可動弁体に対して往復駆動力として伝達されて該可動弁体が往復作動されるようにした流体封入式防振装置において、
    前記可撓性膜において前記可動弁体によって前記流体流路の開口部に押し付けられる部分には、該流体流路の開口部側に向かって突出する環状の弾性リップが一体形成されており、該可動弁体の往復作動によって該弾性リップが該流体流路の開口周縁部に対して当接および離隔せしめられるようになっていると共に、当接状態下で該弾性リップの内周側には周壁部が該弾性リップで構成されて該流体流路を通じて前記受圧室に連通された作用領域が形成されるようになっており、該作用領域に対して該受圧室の液圧が及ぼされることにより該弾性リップが弾性変形せしめられて、該弾性リップと該流体流路の開口周縁部との間に該作用領域と前記平衡室を連通せしめる連通路が形成されるようになっていることを特徴とする流体封入式防振装置。
  2. 前記作用領域に対して前記受圧室の正圧が及ぼされることにより前記弾性リップが外周側に向かって変形せしめられて前記連通路が形成されるようになっている請求項1に記載の流体封入式防振装置。
  3. 前記作用領域に対して前記受圧室の負圧が及ぼされることにより前記弾性リップが内周側に向かって変形せしめられて前記連通路が形成されるようになっている請求項1又は2に記載の流体封入式防振装置。
  4. 前記弾性リップの弾性主軸が前記可動弁体の往復作動方向に延びている請求項1乃至3の何れか一項に記載の流体封入式防振装置。
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