JP5085367B2 - 流体封入式防振装置 - Google Patents

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Description

振動伝達系を構成する部材間に介装されて、それら部材を相互に防振連結乃至は防振支持せしめる防振装置であって、内部に封入された流体の流動作用に基づく防振効果を利用する流体封入式防振装置に係り、特に、電動モータの回転駆動力を利用して可動弁体を往復駆動させることで、防振特性を切り換えることが可能とされた流体封入式防振装置に関するものである。
従来から、防振連結すべき部材間に介装されて、それら防振対象部材を相互に防振連結乃至は防振支持する防振装置の一種として、内部に封入された流体の流動作用を利用して優れた防振効果を得ることが出来る流体封入式防振装置が一般的に知られており、自動車のエンジンマウントやメンバマウント等として採用されている。
ところで、流体封入式防振装置においては、オリフィス通路がチューニングされた周波数の振動に対して優れた防振効果が発揮されるが、チューニング周波数よりも高周波数の振動に対しては、有効な防振効果を得ることが難しいという問題があった。そこで、このような問題を解決するための一つの手段として、オリフィス通路を連通状態と遮断状態に切り換える可動弁体を設けて、該可動弁体を開閉作動せしめることで、防振特性を切換え可能とした流体封入式防振装置も提案されている。なお、特許文献1(特開平10−267072号公報)には、切換型流体封入式防振装置の一例が示されている。
このような切換型の流体封入式防振装置では、可動弁体を駆動させるアクチュエータとして、特許文献1に示されているような磁力や電磁力を利用したものがある。しかし、このような電磁式の切換型防振装置では、可動弁体を切換位置に保持するための保持力を得るために、コイルへの通電を維持する必要があること等から、本発明者らは、先の出願において、電動モータの回転駆動力をカム機構やねじ機構からなる運動変換機構によって軸方向の往復駆動力に変換して、軸方向の駆動力を可動弁体に伝達することで可動弁体を作動せしめて防振特性を切り換える構造を、提案している。
ところが、このような機械的な手段による切換構造を備えた流体封入式防振装置においては、軸方向の往復駆動力を及ぼされる駆動軸が、可動弁体に対して剛結されていることから、可動弁体の閉状態(オリフィス通路を遮断する状態)で衝撃的な大荷重が入力されると、過大な圧力が可動弁体を介して駆動軸を含むアクチュエータに及ぼされて、アクチュエータ(駆動軸)が損傷するおそれがあった。
なお、極寒時において封入流体が凍結した場合には、可動弁体の閉鎖状態からアクチュエータを駆動させて可動弁体をオリフィス通路の開口部から離隔する開方向に駆動させようとすると、封入流体の固体化や可動弁体の当接面への固着によって、可動弁体が拘束されていることに起因して、極めて大きな抵抗力が発生する。この抵抗力に抗して無理にアクチュエータを駆動させると、電動モータの焼付きや駆動軸の破断等を生じてアクチュエータが破損してしまうおそれがあった。
特開平10−267072号公報
ここにおいて、本発明は、上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、可動弁体の閉状態において衝撃的な大荷重が入力された際に、過大な圧力の作用による駆動軸及び運動変換機構、更には電動モータを含むアクチュエータの破損を防ぐことが出来る、新規な構造の流体封入式防振装置を提供することにある。
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意な組み合わせで採用可能である。また、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに限定されることなく、明細書全体および図面に記載されたもの、或いはそれらの記載から当業者が把握することの出来る発明思想に基づいて認識されるものであることが理解されるべきである。
すなわち、本発明は、第一の取付部材と第二の取付部材を本体ゴム弾性体で連結すると共に、該本体ゴム弾性体で壁部の一部が構成されて非圧縮性流体が封入された受圧室と、可撓性膜で壁部の一部が構成されて非圧縮性流体が封入された平衡室を形成して、それら受圧室と平衡室を流体流路によって相互に連通する一方、往復作動によって該流体流路を連通状態と遮断状態に切り換える可動弁体を設けると共に、該可動弁体の駆動用の電動モータを設けて、該電動モータの回転駆動力をカム機構又はねじ機構からなる運動変換機構を介して該可動弁体にして往復駆動力として伝達させて該可動弁体を作動せしめるようにした流体封入式防振装置において、前記流体流路の前記平衡室側への開口部に対して当接および離隔方向で直線的に往復変位せしめられて、該流体流路の開口部に対する当接状態で該流体流路を遮断すると共に該流体流路の開口部に対する離隔状態で該流体流路を連通させる前記可動弁体を採用する一方、前記電動モータの回転駆動力が前記運動変換機構を介して軸方向の駆動力として及ぼされる駆動軸を設けて、該駆動軸により該可動弁体を該流体流路の開口部に対する当接及び離隔方向に往復変位させると共に、該可動弁体に該駆動軸の軸方向で該流体流路の開口部への当接方向に付勢力を及ぼす第一のコイルスプリングを、該運動変換機構から該可動弁体に至る駆動力の伝達経路上に配設して、該第一のコイルスプリングによって該可動弁体を軸方向で弾性的に支持せしめたことを、特徴とする。
このような本発明に従う構造とされた流体封入式防振装置においては、可動弁体を軸方向で流体流路の開口部への当接側に向かって付勢する第一のコイルスプリングが設けられており、可動弁体が第一のコイルスプリングによって軸方向で弾性的に支持されている。このように可動弁体が第一のコイルスプリングによって軸方向で弾性的に支持されていることにより、可動弁体が流体流路の開口部に当接した閉作動下、可動弁体に対して軸方向で衝撃的な荷重が及ぼされた場合には、該荷重の作用によって第一のコイルスプリングが軸方向に圧縮変形せしめられて、可動弁体に作用した荷重を緩衝的に支持するようになっている。それ故、可動弁体に及ぼされた大荷重が駆動軸に伝達されるのを抑えて、駆動軸や運動変換機構、更には電動モータ等が、過大な荷重の作用によって破損するのを防ぐことが出来る。
なお、可動弁体が第一のコイルスプリングによって軸方向で弾性的に支持されるとは、第一のコイルスプリングが可動弁体に対して軸方向で直接に当接せしめられて支持される場合だけをいうものではなく、例えば、可動弁体と連結された駆動軸が、第一のコイルスプリングで軸方向に当接支持されることによって、可動弁体が駆動軸を介して間接的に第一のコイルスプリングで弾性支持されている場合等も含む。
また、本発明に係る流体封入式防振装置においては、前記駆動軸と前記可動弁体との接続部位に軸方向に付勢力を及ぼす前記第一のコイルスプリングを介装させて、該第一のコイルスプリングを介して、該駆動軸による軸方向駆動力を該可動弁体に及ぼすようにしても良い。
このように駆動軸と可動弁体との接続部位に第一のコイルスプリングが介装されることにより、可動弁体が第一のコイルスプリングによって直接的に軸方向で弾性支持される。それ故、閉作動状態において軸方向の衝撃的な大荷重が可動弁体に及ぼされた場合には、第一のコイルスプリングの弾性変形による緩衝効果が有効に発揮されて、駆動軸への圧力の伝達を効果的に防ぐことが出来る。
さらに、例えば、封入された非圧縮性流体の凍結下においては、平衡室の容積変化が凍結した非圧縮性流体で阻止されていることにより、可動弁体の流体流路の開口部に対する当接側への駆動変位が阻止される。かくの如き状態で、駆動軸に対して軸方向で流体流路の開口部に接近する方向の駆動力が及ぼされると、可動弁体および駆動軸、更には電動モータの回転軸に大きな負荷が作用して、それら可動弁体や駆動軸,電動モータが損傷するおそれがある。そこにおいて、駆動軸と可動弁体との接続部位に軸方向に付勢力を及ぼす第一のコイルスプリングを介装させて、可動弁体を駆動軸に対して第一のコイルスプリングを介して弾性的に連結することにより、駆動軸に及ぼされた軸方向の駆動力を、第一のコイルスプリングの軸方向での弾性変形によって緩衝して、該駆動力の可動弁体への伝達を抑えることが出来る。それ故、負荷の作用による可動弁体や駆動軸,電動モータの損傷を効果的に防ぐことが可能となる。
更にまた、駆動軸に伝達された軸方向駆動力が、第一のコイルスプリングを介して可動弁体に及ぼされるようになっていることから、第一のコイルスプリングの軸方向での弾性変形を利用して、製造時や組付け時の誤差を吸収させることが出来る。即ち、流体流路の開口部に対する可動弁体の当接に際して、安定して所定の当接状態を実現することが出来ると共に、過大な当接力の作用によって可動弁体や駆動軸,電動モータ等に大きな負荷が加わるのを回避することが出来る。
また、本発明に係る流体封入式防振装置においては、前記流体流路の開口部に対して前記可動弁体を離隔方向に駆動する駆動力が前記駆動軸から該可動弁体に及ぼされるに際して圧縮変形力が作用せしめられる第二のコイルスプリングを配設しても良い。
このような第二のコイルスプリングを配設することにより、例えば、封入された非圧縮性流体の凍結等に起因して可動弁体が流体流路の開口部に固着した状態下、駆動軸に流体流路の開口部から離隔する方向の駆動力が及ぼされた場合には、該駆動力の作用によって第二のコイルスプリングが圧縮変形せしめられて、該駆動力の可動弁体への伝達が抑えられるようになっている。これにより、軸方向駆動力の作用によって、可動弁体が流体流路の開口部から無理に引き剥がされて損傷するのを防ぐことが出来る。また、可動弁体が流体流路の開口部に対して強固に固着されている場合に、電動モータに負荷が及ぼされて焼付き等の故障の原因となるのを回避することが出来る。
また、本発明に係る流体封入式防振装置においては、前記受圧室と前記平衡室が前記第二の取付部材によって支持された仕切部材を隔てた両側に形成されていると共に、前記流体流路が該仕切部材に形成された第一のオリフィス通路と該仕切部材に形成された該第一のオリフィス通路よりも高周波数にチューニングされた第二のオリフィス通路を含んで構成されており、該第二のオリフィス通路が前記可動弁体によって連通状態と遮断状態に切換え可能とされていることが望ましい。
このような構造においては、第一のオリフィス通路よりも高周波数にチューニングされた第二のオリフィス通路を可動弁体によって連通状態と遮断状態に切り換えることにより、第二のオリフィス通路の遮断状態下、第一のオリフィス通路を通じての流体流動による防振効果を有効に発揮させつつ、第二のオリフィス通路の連通状態下、第二のオリフィス通路を通じての流体流動による防振効果を有効に発揮させることが出来る。従って、異なる周波数の振動に対して何れも目的とする優れた防振効果を得ることが出来る。
さらに、本発明に係る流体封入式防振装置において、好適には、前記仕切部材の中央部分に前記第二のオリフィス通路の前記平衡室側の開口部が形成されており、該第二のオリフィス通路の該平衡室側の開口部に対して前記可動弁体により前記可撓性膜を当接および離隔させることによって該第二のオリフィス通路を遮断状態と連通状態に切り換えるようになっている。
このような本態様の流体封入式防振装置においては、第二のオリフィス通路の遮断状態が、第二のオリフィス通路の平衡室側の開口部に対する可撓性膜の当接によって実現されるようになっている。それ故、仕切部材に対する当接音が緩和されて、高度な静粛性を実現することが出来る。更に、第二のオリフィス通路の遮断に可撓性膜を利用することによって、第二のオリフィス通路の平衡室側の開口部が、より有利に密閉されて、第二のオリフィス通路を通じての液圧の逃げをより効果的に防ぐことが出来る。それ故、第一のオリフィス通路を通じて流動する流体の共振作用に基づいた防振効果が、より効率的に発揮される。
なお、本態様において、可動弁体が可撓性膜と一体的に構成されていても良いし、可撓性膜とは別体とされた可動弁体が、可撓性膜を挟んで仕切部材とは反対側に配設されていても良い。
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
先ず、図1には、本発明に係る流体封入式防振装置の第一の実施形態として、自動車用のエンジンマウント10が示されている。エンジンマウント10は、マウント本体11を有しており、マウント本体11は、更に第一の取付部材としての第一の取付金具12と第二の取付部材としての第二の取付金具14を本体ゴム弾性体16で相互に連結した構造を有している。そして、第一の取付金具12が図示しないパワーユニット側に取り付けられると共に、第二の取付金具14が図示しない車両ボデー側に取り付けられることで、パワーユニットが車両ボデーに防振支持されるようになっている。なお、以下の説明において、上下方向とは、特に説明がない限り、エンジンマウント10の軸方向である図1中の上下方向を言うものとする。
より詳細には、第一の取付金具12は、鉄やアルミニウム合金等で形成されたブロック状の部材であって、本実施形態では、上部が段付きの円形ブロック形状とされていると共に、下部が上方に行くに従って次第に大径となるテーパ形状とされている。また、第一の取付金具12の上端部には、上方に向かって突出する取付ボルト18が一体的に設けられている。
一方、第二の取付金具14は、薄肉大径の略円筒形状を有しており、第一の取付金具12と同様に鉄やアルミニウム合金等で形成された高剛性の部材とされている。また、第二の取付金具14の上端部に内フランジ状の段差部20が設けられていると共に、段差部20の内周側端部には、上方に向かって次第に拡開して延びるテーパ状部22が一体形成されている。更に、テーパ状部22の上端には軸直角方向で広がるフランジ状部24が一体形成されている。
それら第一の取付金具12と第二の取付金具14は、第一の取付金具12が、第二の取付金具14のフランジ状部24を設けられた側の開口部側に離隔するように、同一中心軸上に配置される。そして、第一の取付金具12と第二の取付金具14の間に本体ゴム弾性体16が介装せしめられて、第一の取付金具12と第二の取付金具14が本体ゴム弾性体16で相互に連結されている。
本体ゴム弾性体16は、厚肉の略円錐台形状を有するゴム弾性体で形成されており、大径側の端部には、端面に開口する半球形状乃至はすり鉢形状の大径凹所26が形成されている。そして、本体ゴム弾性体16の小径側端部には、第一の取付金具12が下端部を挿し込まれて加硫接着されていると共に、本体ゴム弾性体16の大径側端部外周面には、第二の取付金具14のテーパ状部22を含む上端部分が重ね合わされて加硫接着されている。これにより、第一の取付金具12と第二の取付金具14が本体ゴム弾性体16で弾性連結されていると共に、第二の取付金具14の一方の開口部が本体ゴム弾性体16で流体密に閉塞されている。以上により、本実施形態における本体ゴム弾性体16は、第一の取付金具12と第二の取付金具14を一体的に備えた一体加硫成形品として形成されている。
さらに、本体ゴム弾性体16の大径側端部の外周縁部には、軸方向下方に向かって薄肉大径の筒状を有するシールゴム層28が一体形成されている。このシールゴム層28は、第二の取付金具14の内周面に被着形成されており、第二の取付金具14の段差部20よりも下側部分の内周面が、シールゴム層28によって被覆されている。なお、大径凹所26の開口周縁部において、シールゴム層28よりも内周側には、略軸直角方向に広がる環状の段差面30が形成されている。
また、第二の取付金具14の他方の開口部分には、可撓性膜としてのダイヤフラム32が配設されている。ダイヤフラム32は、薄肉大径の略円板形状を呈するゴム膜であって、外周部分に軸方向で充分な弛みを有している。また、ダイヤフラム32の中央部分は、外周部分に比して厚肉の円板形状とされた中央当接部34とされている。更に、ダイヤフラム32の外周縁部には、円環形状の固着部36が一体形成されている。
また、ダイヤフラム32に設けられた固着部36には、固定金具38が加硫接着されている。固定金具38は、鉄等で形成された高剛性の部材であって、大径の略円環形状を有しており、固着部36に埋設状態で固着せしめられている。以上のように、本実施形態におけるダイヤフラム32は、固定金具38を一体的に備えた一体加硫成形品として形成されている。
そして、ダイヤフラム32の一体加硫成形品は、第一の取付金具12と第二の取付金具14を備えた本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品に取り付けられる。即ち、第二の取付金具14の本体ゴム弾性体16とは反対側の開口部からダイヤフラム32を挿し入れた後に、第二の取付金具14に対して縮径加工を施すことにより、固定金具38を第二の取付金具14の開口部分に嵌着固定させる。これにより、ダイヤフラム32が第二の取付金具14の他方の開口部分を流体密に覆蓋するように取り付けられる。
かかるダイヤフラム32の第二の取付金具14への組付け下、第二の取付金具14の内周側には、本体ゴム弾性体16とダイヤフラム32の軸方向対向面間に、外部から隔離されて非圧縮性流体が封入された流体封入領域40が形成されている。なお、流体封入領域40に封入される非圧縮性流体は、特に限定されるものではないが、例えば、アルキレングリコール,ポリアルキレングリコール,シリコーン油やそれらの混合液が好適に採用される。また、後述する流体の流動作用に基づく防振効果を有効に得るために、粘度が0.1Pa・s以下の低粘性流体を採用することが望ましい。
また、流体封入領域40には、仕切部材42が収容配置されており、第二の取付金具14で支持されている。仕切部材42は、仕切部材本体44と蓋板金具46を含んで構成されている。仕切部材本体44は、厚肉の略円板形状を有しており、硬質の合成樹脂やアルミニウム合金等の金属で形成されている。また、仕切部材本体44の径方向中央部分には、下方に向かって開口する円形の中央凹所48が形成されている。更に、仕切部材本体44の径方向中央部分には、上方に向かって突出する小径の中央突起49が一体形成されている。
また、仕切部材本体44の外周縁部には、第一の周溝50が形成されている。第一の周溝50は、仕切部材本体44の外周面に開口せしめられており、仕切部材本体44の外周縁部を周方向に一周弱の所定長さで連続して延びている。更に、仕切部材本体44の径方向中間部分には、凹溝52が形成されている。凹溝52は、仕切部材本体44の上端面に開口せしめられており、中央凹所48と第一の周溝50の径方向間を周方向に一周弱の所定長さで連続して延びている。なお、この凹溝52は、一方の端部が軸直角方向に延びる連通路54を通じて中央凹所48に連通されている。
一方、蓋板金具46は、略円板形状を有する金属製の部材とされている。また、本実施形態の蓋板金具46は、外周部分が段差を介して中央部分よりも軸方向上方に位置せしめられている。更に、蓋板金具46の中央部分には、円形の貫通孔56が形成されている。貫通孔56は、仕切部材本体44に形成された中央突起49の形状に対応する小径の孔とされている。
そして、それら仕切部材本体44と蓋板金具46が相互に組み合わされることにより、本実施形態における仕切部材42が構成されている。即ち、仕切部材本体44の上端面に対して蓋板金具46が重ね合わされると共に、仕切部材本体44に突設された中央突起49を蓋板金具46に貫通形成された貫通孔56に対して嵌め込むことにより、蓋板金具46が仕切部材本体44に対して固定されて、仕切部材42が構成される。
かかる仕切部材42においては、仕切部材本体44と蓋板金具46が、径方向中央部分で相互に密着せしめられて重ね合わされていると共に、外周部分で軸方向に所定距離を隔てて位置せしめられている。そして、仕切部材本体44と蓋板金具46が相互に離隔せしめられた外周部分には、それら仕切部材本体44と蓋板金具46の対向面間を周方向に延びる第二の周溝58が形成されている。この第二の周溝58は、図中において必ずしも明らかではないが、周方向に一周弱の所定長さで連続的に延びている。なお、第二の周溝58の周方向端部間には、仕切部材本体44と一体形成された図示しない隔壁が設けられて、第二の周溝58を周方向で一周に満たない長さに仕切っている。
また、仕切部材本体44と蓋板金具46の組付け下において、第一の周溝50の一方の端部と第二の周溝58の一方の端部が、第一の周溝50の一方の端部において仕切部材本体44の上端面に開口する接続窓60を通じて相互に接続されている。これにより、第一の周溝50と第二の周溝58によって周方向に二周弱の所定長さで延びる螺旋状の周溝62が形成されている。
このように仕切部材本体44と蓋板金具46で構成された仕切部材42は、流体封入領域40内に収容配置される。即ち、ダイヤフラム32の第二の取付金具14への取付け前に、仕切部材42が、第二の取付金具14に対して、本体ゴム弾性体16を加硫接着された側と反対側の開口部から嵌め入れられる。その後、ダイヤフラム32が同開口部から第二の取付金具14に嵌め入れられて、第二の取付金具14に八方絞り等の縮径加工が施されることにより、仕切部材42とダイヤフラム32が第二の取付金具14に対して嵌着固定される。
かかる仕切部材42とダイヤフラム32の配設下において、仕切部材42の上端面の外周部分が本体ゴム弾性体16の段差面30に圧接されると共に、仕切部材42の下端面の外周部分が固着部36を介して固定金具38に圧接されて、それぞれ流体密にシールされている。更に、仕切部材42の外周面が、シールゴム層28を介して第二の取付金具14に対して流体密に重ね合わされている。これらにより、流体封入領域40が仕切部材42を挟んで軸方向で上下に二分されており、仕切部材42を挟んだ一方の側には、壁部の一部が本体ゴム弾性体16で構成されて、本体ゴム弾性体16の弾性変形によって圧力変動が惹起せしめられる受圧室64が形成されていると共に、仕切部材42を挟んだ他方の側には、壁部の一部がダイヤフラム32で構成されて、ダイヤフラム32の弾性変形によって容積変形が許容される平衡室66が形成されている。なお、それら受圧室64と平衡室66には、流体封入領域40に封入された非圧縮性流体がそれぞれ封入されている。
また、仕切部材42の外周縁部に形成された周溝62の外周側開口部が、第二の取付金具14によって流体密に閉塞されている。また、周溝62の一方の端部が蓋板金具46に形成された図示しない連通窓を通じて受圧室64に連通されていると共に、周溝62の他方の端部が仕切部材本体44に形成された連通窓68を通じて平衡室66に連通されている。これらにより、周方向に所定の長さで延びて、受圧室64と平衡室66を相互に連通する流体流路としての第一のオリフィス通路70が、仕切部材42の周溝62を利用して形成されている。本実施形態において第一のオリフィス通路70は、流体の共振作用に基づく防振効果(高減衰効果)が、エンジンシェイク等に相当する10Hz前後の低周波数域の振動に対して有効に発揮されるようにチューニングされている。
さらに、仕切部材42に形成された凹溝52の開口部が蓋板金具46によって覆蓋されており、凹溝52の一方の端部が蓋板金具46に形成された図示しない連通窓を通じて受圧室64に連通されていると共に、凹溝52の他方の端部が中央凹所48を通じて平衡室66に連通されている。これにより、周方向に所定の長さで延びて、受圧室64と平衡室66を相互に連通する流体流路としての第二のオリフィス通路72が、仕切部材42の凹溝52と中央凹所48を利用して形成されている。本実施形態において第二のオリフィス通路72は、流体の共振作用に基づく防振効果(低動ばね効果)が、アイドリング振動等に相当する20〜40Hz前後の中乃至高周波数域の振動に対して有効に発揮されるようにチューニングされている。
なお、オリフィス通路70,72のチューニングは、例えば、受圧室64や平衡室66の各壁ばね剛性、即ちそれら各室64,66を単位容積だけ変化させるのに必要な圧力変化量に対応する本体ゴム弾性体16やダイヤフラム32等の各弾性変形量に基づく特性値を考慮しつつ、オリフィス通路70,72の通路長さと通路断面積を調節することによって行うことが可能であり、一般に、オリフィス通路70,72を通じて伝達される圧力変動の位相が変化して略共振状態となる周波数を、当該オリフィス通路70,72のチューニング周波数として把握することが出来る。
かくの如き構造を有する本実施形態に係るマウント本体11は、ブラケット金具74に組み付けられている。ブラケット金具74は、鉄等で形成された高剛性の部材であって、マウント本体11が嵌め入れられる嵌着部76を有している。嵌着部76は、全体として有底円筒形状を有しており、上端部にフランジ部78を有している。また、嵌着部76の外周面には、環状の脚部80が圧入や溶接等によって固定されている。この脚部80には、周上の複数箇所において図示しないボルト孔が貫通形成されており、ボルト孔に挿通される同じく図示しない固定用ボルトによって脚部80が車両ボデーに螺着固定されるようになっている。
そして、マウント本体11が、ブラケット金具74の嵌着部76に対して上側開口部から嵌め入れられて、第二の取付金具14が嵌着部76に圧入固定されることにより、マウント本体11がブラケット金具74に嵌着固定されている。なお、本実施形態では、第二の取付金具14の上端に設けられたフランジ状部24が、嵌着部76の上端に設けられたフランジ部78に対して上方から当接せしめられることにより、第二の取付金具14と嵌着部76が相対的に位置決めされるようになっている。
ここにおいて、ブラケット金具74には、アクチュエータ82が取り付けられている。アクチュエータ82は、マウント本体11の下方に配置されて、嵌着部76の底壁部に重ね合わされている。より詳細には、アクチュエータ82は電動モータ84を有している。
電動モータ84は、既存の電動機であって、回転軸86を有している。そして、外部に設けられた電源装置88からの通電によって、回転軸86に回転力が作用せしめられて、回転軸86が中心軸回りで回転駆動せしめられるようになっている。特に本実施形態では、回転軸86の回転方向が電動モータ84への通電方向に応じて変化せしめられるようになっている。なお、電動モータ84としては、他励直流電動機等の各種公知のモータ(電動機)を採用することが出来る。
また、電動モータ84の回転軸86には、螺子部としての雄ねじ部材90が取り付けられている。雄ねじ部材90は、外周面にねじ山が形成された略円柱形状の部材であって、中心軸上を延びるように回転軸86が挿し入れられて固着されている。そして、回転軸86の回転駆動に伴って雄ねじ部材90が回転せしめられるようになっている。
また、電動モータ84と電源装置88を電気的に接続する回路上には、制御装置92が設けられている。制御装置92は、例えば自動車の走行状態等を検出するセンサ(例えば、公知の速度センサ等)と、該センサの検出結果に応じて電動モータ84への通電方向を変化させる機械的な接点制御装置を含んで構成されている。この制御装置92によって、電動モータ84における回転軸86の回転方向が走行状態に応じて変化せしめられるようになっている。また、回転軸86の回転角や電動モータ84への通電時間等を検出して、その検出結果に応じて電動モータ84への通電を制御装置92で制御することにより、所定の回転量で回転軸86の回転が停止されるようになっている。なお、電動モータ84への通電方向や通電状態と非通電状態を切り換える制御装置92は、従来から公知の速度センサ等の各種センサと接点制御装置を組み合わせること等により実現することが可能であることから、ここでは説明を省略する。
また、電動モータ84は、支持部材94に取り付けられている。支持部材94は、厚肉の円環形状を有しており、本実施形態では、硬質の合成樹脂で形成されている。更に、支持部材94の上端部に外周側に向かって広がる当接部96が設けられていると共に、当接部96の外周縁部が上方に向かって突出せしめられている。
さらに、支持部材94の内周縁部には、保持筒部98が形成されている。保持筒部98は、略円筒形状であって、支持部材94の内周縁部から上方に向かって延び出している。また、保持筒部98は、その径方向一方向において対向する部分において内周面および上端面に開口する一対の係合切欠部100,100が形成されている。この係合切欠部100は、軸方向に所定の長さで延びる溝状とされており、本実施形態では周方向両側面が相互に平行に広がっている。
そして、電動モータ84の回転軸86が支持部材94の中央孔の中心線上で延びるように、電動モータ84が支持部材94の中央孔に嵌め入れられて固定されている。これにより、保持筒部98の内周側に離隔して回転軸86が位置せしめられている。
また、回転軸86の先端部分には、駆動軸としての駆動部材102が被せ付けられている。駆動部材102は、逆向きの略有底円筒形状を有しており、本実施形態では、硬質の合成樹脂で形成することにより軽量化が図られている。また、駆動部材102の上端部には、外周縁部を全周に亘って延びる支持段部104が形成されており、支持段部104を挟んだ上側が下側よりも小径となっている。
さらに、駆動部材102の下端部には、径方向一方向で対向する部分から外周側に向かって突出する一対の係合突起106,106が形成されている。係合突起106は、略ブロック状の突起であって、周方向の両端面が相互に平行となっている。また、係合突起106の周方向での幅寸法が、保持筒部98に形成された係合切欠部100の周方向での幅寸法と略等しくなっていると共に、係合突起106の軸方向寸法が係合切欠部100の軸方向寸法よりも充分に小さくなっている。なお、係合突起は、例えば、周方向で係合切欠部100よりも小さくても良いし、軸方向で係合切欠部100よりも大きくても良い。
更にまた、駆動部材102には、螺接部としての雌ねじ部108が設けられている。雌ねじ部108は、逆向きの略円筒形状を呈する駆動部材102の周壁部を利用して形成されており、その内周面には全長に亘ってねじ山が刻設されている。また、雌ねじ部108を構成するねじ山は、回転軸86に取り付けられた雄ねじ部材90の外周面に形成されたねじ山に対応する構造とされている。
そして、このような雌ねじ部108を有する駆動部材102は、電動モータ84の回転軸86に対して取り付けられる。即ち、回転軸86に対して駆動部材102が上方から被せられて、駆動部材102の周壁部が回転軸86の外周側に離隔して回転軸86を取り囲むように位置せしめられる。なお、本実施形態では、電動モータ84の回転軸86が後述する駆動部材102の往復作動方向に延びるようにして設けられている。
さらに、回転軸86に取り付けられた雄ねじ部材90が駆動部材102の周壁部の内周側に挿し入れられて、雄ねじ部材90の外周面に形成されたねじ山と駆動部材102の内周面に形成された雌ねじ部108のねじ山が掛合せしめられている。換言すれば、回転軸86に取り付けられた雄ねじ部材90が、駆動部材102の雌ねじ部108に対して下方開口から螺入されている。これにより、駆動部材102が回転軸86に対して組み付けられていると共に、それら回転軸86と駆動部材102の連結部分において、雄ねじ部材90と雌ねじ部108で構成された運動変換機構としてのねじ機構が設けられている。
また、電動モータ84の回転軸86が保持筒部98の内周側に位置せしめられていることにより、駆動部材102が保持筒部98に対して挿し入れられる。そこにおいて、駆動部材102の下端部に一体形成された係合突起106が、保持筒部98に形成された係合切欠部100に対して周方向で位置合わせされており、各係合突起106が各係合切欠部100に嵌め込まれている。そして、係合突起106と係合切欠部100の周方向での係合作用によって、駆動部材102が保持筒部98に対して周方向で係止されて相対的に回転不能とされている。かくの如き駆動部材102と保持筒部98の係止によって、本実施形態における駆動部材102の回転制限機構が構成されている。
また、駆動部材102の上方には、所定距離を隔てて可動弁体としての弁部材110が配設されている。弁部材110は、略円板形状を有しており、硬質の合成樹脂材で形成されている。更に、本実施形態における弁部材110は、駆動部材102よりも大径とされていると共に、第二のオリフィス通路72の平衡室66側の開口部である中央凹所48よりも大径とされている。更にまた、本実施形態では、弁部材110の外周面が円弧状の湾曲面で構成されている。また、弁部材110には、径方向中央部分において下方に開口する浅底円形の嵌着凹所112が形成されている。この嵌着凹所112は、駆動部材102の支持段部104より下側部分の外径と略同じ直径で形成されている。
そこにおいて、軸方向に離隔して対向位置せしめられた駆動部材102と弁部材110の間には、第一のコイルスプリングとしてのコイルスプリング114が配設されている。このコイルスプリング114は、一方の端部が、小径とされた駆動部材102の上端部に対して外挿されて支持段部104に当接せしめられていると共に、他方の端部が、弁部材110に形成された嵌着凹所112に嵌め込まれて嵌着凹所112の上底壁部に当接せしめられている。そして、コイルスプリング114は、駆動部材102と弁部材110の接続部位において、それら駆動部材102と弁部材110の対向方向が軸方向となるように配設されており、弁部材110を駆動部材102に対して軸方向で弾性支持せしめている。更に、コイルスプリング114の配設下、駆動部材102と弁部材110の対向方向である軸方向でコイルスプリング114の付勢力が作用せしめられるようになっている。
なお、本実施形態において、コイルスプリング114の付勢力は、駆動部材102と弁部材110が相対的に離隔する軸方向に及ぼされており、後述するアクチュエータ82の装着状態において、コイルスプリング114の付勢力が、弁部材110に対して、仕切部材42に接近する側となる軸方向上方に向かって及ぼされている。
かくの如き構造とされたアクチュエータ82では、通電によって電動モータ84で発生する回転駆動力が、雄ねじ部材90と雌ねじ部108で構成された螺子構造によって往復駆動力に変換されて、駆動部材102に伝達されるようになっている。そして、電動モータ84における回転軸86の回転方向を制御することにより、駆動部材102および弁部材110を軸方向で所定の位置に駆動変位せしめることが出来るようになっている。以下に、駆動部材102の軸方向での往復作動について説明する。
先ず、電動モータ84の回転軸86に装着された雄ねじ部材90が、駆動部材102に形成された雌ねじ部108の下端部、即ち、駆動部材102の周壁部における下端開口部に位置せしめられている場合には、駆動部材102が変位駆動方向の上端に位置せしめられる。なお、このように駆動部材102が駆動方向の上端に位置せしめられた状態においても、係合突起106は係合切欠部100内に位置せしめられて、それらによる係合作用が発揮されるようになっている。
次に、電動モータ84に対して電源装置88から通電されて、回転軸86が周方向一方の側に回転せしめられると、雄ねじ部材90が雌ねじ部108に対して相対回転せしめられて、雄ねじ部材90が雌ねじ部108に対して捻じ込まれる。これにより、雌ねじ部108が形成された駆動部材102は、雄ねじ部材90が取り付けられた回転軸86延いては電動モータ84に対して軸方向で下方に相対変位せしめられて、往復作動方向の下端まで移動せしめられる。なお、本実施形態では、駆動部材102が軸方向で変位駆動せしめられて作動方向端部に位置せしめられると、電動モータ84への通電が停止されるようになっており、駆動部材102が駆動方向の端部において静止状態に保持されるようになっている。
また、駆動部材102の軸方向下方への変位駆動によって、駆動部材102に外挿されたコイルスプリング114が、駆動部材102と共に下方へ変位せしめられる。これにより、コイルスプリング114によって弁部材110に及ぼされていた軸方向での弾性支持力が解除されて、弁部材110が重力の作用によって駆動部材102の変位に合わせて軸方向下方に変位せしめられるようになっている。
なお、本実施形態では、駆動部材102の回転が係合突起106と係合切欠部100の係止によって阻止されていることにより、回転軸86の回転駆動力が雄ねじ部材90と雌ねじ部108の間における摩擦等で伝達されることによって駆動部材102が回転するのを防いで、駆動部材102の軸方向での駆動変位を効率的に実現出来るようになっている。
また次に、制御装置92の制御によって、電動モータ84に対して電源装置88から通電されて、回転軸86が周方向で他方の側に回転せしめられると、雄ねじ部材90が雌ねじ部108に対して相対回転せしめられて、雄ねじ部材90が雌ねじ部108に対して抜ける方向に捻られる。これにより、雌ねじ部108が形成された駆動部材102は、雄ねじ部材90が取り付けられた回転軸86延いては電動モータ84に対して軸方向で上方に相対変位せしめられて、往復作動方向の上端まで移動せしめられるようになっている。なお、本実施形態では、電動モータ84に対して電流が逆向きに通電されることにより、回転軸86が逆回転されるようになっている。また、駆動部材102が往復作動方向の上端に移動せしめられると、電動モータ84への通電が停止されるようになっており、駆動部材102が往復作動方向の上端で保持されるようになっている。
また、駆動部材102が軸方向上方に向かって変位駆動せしめられると、駆動部材102と弁部材110の軸方向間に介装されたコイルスプリング114に対して、軸方向の圧縮変形力が及ぼされる。そこにおいて、アクチュエータ82の通常の作動状態下で、コイルスプリング114に対して電動モータ84の回転駆動力に基づく圧縮変形力が作用した場合に、コイルスプリング114の軸方向での弾性変形が問題とならない程度に小さく抑えられるようになっている。これにより、駆動部材102に対して軸方向上向きの駆動力が及ぼされた場合には、駆動部材102に及ぼされた軸方向の駆動力がコイルスプリング114を介して効率的に弁部材110に伝達されて、弁部材110が駆動部材102の変位に応じて軸方向上方に変位せしめられるようになっている。
以上のように、電動モータ84で発生した回転駆動力が、回転軸86と駆動部材102の連結部分に設けられたねじ機構によって軸方向での直線的な駆動力に変換されて、駆動部材102に伝達されるようになっている。そして、電動モータ84への通電方向を切換制御することにより、駆動部材102が軸方向上下に往復作動せしめられるようになっており、駆動部材102の駆動変位に伴って弁部材110が軸方向で上下に往復駆動されるようになっている。また、駆動部材102が往復作動方向で端部に位置せしめられると、電動モータ84への通電が停止されるようになっており、往復作動せしめられる駆動部材102が軸方向端部において保持されるようになっている。
また、アクチュエータ82は、ブラケット金具74の嵌着部76に対して嵌め入れられて、嵌着部76の底壁部上に載置された状態で固定される。かかるブラケット金具74への装着状態において、マウント本体11がブラケット金具74に対して組み付けられることにより、本実施形態に係るエンジンマウント10が構成されている。
また、エンジンマウント10において、アクチュエータ82は、マウント本体11の下方に位置せしめられており、弁部材110がダイヤフラム32の中央当接部34に対して、軸方向で所定距離を隔てて、或いは、重ね合わされた当接状態で下方に位置せしめられている。換言すれば、アクチュエータ82は、ダイヤフラム32を挟んで仕切部材42と反対側に位置せしめられており、アクチュエータ82の弁部材110が、ダイヤフラム32の中央当接部34を挟んで第二のオリフィス通路72の平衡室66側の開口部(中央凹所48)に軸方向で対向するように位置せしめられている。
また、電動モータ84の非通電下において、弁部材110に対して軸方向に及ぼされるコイルスプリング114の付勢力が、弁部材110を第二のオリフィス通路72の平衡室66側の開口部に押し付ける方向で作用せしめられている。更に、コイルスプリング114を介して駆動部材102に弾性連結された弁部材110は、アクチュエータ82のマウント本体11およびブラケット金具74への装着下、駆動部材102と電動モータ84とブラケット金具74を介して第二の取付金具14によって弾性支持されている。更にまた、アクチュエータ82の装着下、弁部材110を第二のオリフィス通路72の開口部に対する接近方向に駆動せしめる駆動力が、駆動部材102から弁部材110に及ぼされるに際して、コイルスプリング114には、該駆動力が圧縮変形力として作用せしめられるようになっている。
そして、アクチュエータ82の作動状態下、弁部材110が軸方向で往復変位せしめられて、弁部材110が第二のオリフィス通路72の平衡室66側の開口部に対して接近方向と離隔方向で直線的に往復変位せしめられるようになっている。更に、弁部材110が、軸方向での往復変位によってダイヤフラム32の中央当接部34に対して当接或いは離隔せしめられて、中央当接部34が弁部材110の軸方向での往復作動に応じて上下に変位せしめられるようになっている。これにより、ダイヤフラム32の中央当接部34は、弁部材110の往復変位によって、仕切部材42の中央凹所48に対して当接および離隔せしめられるようになっており、中央凹所48で構成された第二のオリフィス通路72の平衡室66側の開口部が、弁部材110の往復変位によって、中央当接部34を介して連通状態と遮断状態に切換え可能となっている。
すなわち、弁部材110が往復作動方向で上端に位置せしめられると、中央当接部34が弁部材110によって押圧されて、仕切部材42の下面に押し付けられる。これにより、中央凹所48の開口部が中央当接部34を介して弁部材110で閉塞されるようになっている。なお、本実施形態では、弁部材110の外径が、中央凹所48の開口部の直径よりも大きくなっており、中央凹所48の閉塞状態がより有利に実現されるようになっている。
一方、弁部材110が往復作動方向で下端に位置せしめられると、ダイヤフラム32の中央当接部34の弁部材110による拘束状態が解除されて、中央当接部34が、平衡室66に封入された非圧縮性流体の液圧や重力の作用によって、仕切部材42の下方に離隔せしめられる。これによって、第二のオリフィス通路72の平衡室66側の端部である中央凹所48が、平衡室66に連通されるようになっている。
以上により、弁部材110の往復作動によって、第二のオリフィス通路72の平衡室66側の開口部である中央凹所48の開口部を、開口状態と閉塞状態に切り換えることが出来るようになっており、第二のオリフィス通路72の連通状態と遮断状態が弁部材110によって切り換えられるようになっている。なお、本実施形態では、弁部材110とダイヤフラム32が非接着で重ね合わされており、相互に離隔可能とされている。
このような構造とされた自動車用エンジンマウント10が自動車に装着されて、走行時に問題となるエンジンシェイク等の低周波数域の振動が入力されると、受圧室64に比較的に大きな圧力変動が生ぜしめられる。そして、受圧室64と平衡室66の間に生ぜしめられる相対的な圧力変動の差により第一のオリフィス通路70を通じての流体の流動量が効果的に確保されて、該流体の共振作用等の流動作用に基づいて、エンジンシェイク等の低周波数域の振動に対して有効な防振効果(高減衰効果)が発揮されるのである。
その際、弁部材110は、往復作動方向の上端に位置せしめられており、ダイヤフラム32の中央当接部34を介して第二のオリフィス通路72の平衡室66側開口部に押し付けられている。これにより、第二のオリフィス通路72の平衡室66側の開口部が流体密に閉塞せしめられて、第二のオリフィス通路72が遮断状態となっている。従って、第二のオリフィス通路72を通じて受圧室64と平衡室66の間で流体が流動して受圧室64内の液圧が平衡室66に逃されるのを防いで、第一のオリフィス通路70を通じての流体流動を効率的に生ぜしめ、流体の流動作用に基づく防振効果を効果的に得ることが出来る。
なお、本実施形態では、弁部材110が、駆動部材102に対してコイルスプリング114を介して軸方向で当接せしめられており、コイルスプリング114の付勢力によって、第二のオリフィス通路72の平衡室66側の開口部に対して弾性的に押し付けられている。それ故、第二のオリフィス通路72の平衡室66側の開口部が隙間を生じることなく閉塞されて、第二のオリフィス通路72の遮断状態が有利に実現されるようになっている。
また、停車時に問題となるアイドリング振動や走行時に問題となる低速こもり音等の中乃至高周波数域の振動の入力では、受圧室64に対して小さな振幅の圧力変動が惹起されることとなる。かかる振動の入力時には、電動モータ84への通電制御により、回転軸86が周方向一方向に回転作動せしめられて、弁部材110が軸方向下方に駆動変位せしめられるようになっている。
これにより、第二のオリフィス通路72の平衡室66側の開口部が連通状態に切り換えられて、第二のオリフィス通路72によって受圧室64と平衡室66が相互に連通される。そして、受圧室64と平衡室66の間に生ぜしめられる相対的な圧力変動の差により第二のオリフィス通路72を通じての流体の流動量が効果的に確保されて、該流体の共振作用等の流動作用に基づいて、アイドリング時振動等の中乃至高周波数域の振動に対して有効な防振効果(低動ばね効果)が発揮されるのである。
要するに、本実施形態に係るエンジンマウント10においては、弁部材110の往復作動によって、第二のオリフィス通路72が連通と遮断に制御されて、防振特性が切り換えられるようになっている。なお、図1においては、分かり易さのために、駆動部材102および弁部材110の往復作動のストロークが誇張されて示されている。それに伴って、雄ねじ部材90および雌ねじ部108の形状、具体的には、例えば、それらねじ部90,108におけるねじ山の傾斜やサイズ等も誇張して図示されている。
また、弁部材110が往復作動方向の上端に位置せしめられた電動モータ84への非通電下において、第一の取付金具12と第二の取付金具14の間に衝撃的な大荷重が入力されると、平衡室66に大きな容積変化が生じて、弁部材110に対して大きな圧力が及ぼされる。
そこにおいて、本実施形態に従う構造のエンジンマウント10では、弁部材110が、電動モータ84によって往復駆動せしめられる駆動部材102とは別体とされて、駆動部材102に対してコイルスプリング114を介して弾性的に連結されている。これによって、駆動部材102の軸方向での変位がねじ機構の摩擦抵抗等によって阻止された電動モータ84への非通電下においても、弁部材110の軸方向下方への変位が、コイルスプリング114の圧縮変形によって許容されるようになっている。それ故、平衡室66の容積変化によって弁部材110に入力される圧力が、駆動部材102に対して直接的に伝達されるのを防ぐことが出来て、駆動部材102や雄ねじ部材90および雌ねじ部108で構成されるねじ機構、更には回転軸86を含む電動モータ84が、過大な応力の作用によって破損するのを防ぐことが出来る。
また、極寒時において、封入された非圧縮性流体がシャーベット状に凍結した場合には、平衡室66の容積変化が阻止されて、弁部材110の上方への変位が制限される。このような封入流体の凍結下において、駆動部材102が上方に変位せしめられた場合には、駆動部材102と弁部材110の接近方向での相対変位がコイルスプリング114の圧縮変形によって吸収されて、実質的に拘束された弁部材110に対して過大な軸方向力が作用するのを防ぐことが出来る。それ故、駆動部材102,弁部材110,更にはねじ機構が応力の作用によって破損したり、電動モータ84が焼き付く等して故障するのを防ぐことが出来る。
さらに、ダイヤフラム32が凍結等によって仕切部材42に固着せしめられた状態で、電動モータ84に通電されて駆動部材102が下方に変位せしめられた場合には、弁部材110がダイヤフラム32に対して非接着で重ね合わされていることにより、弁部材110がダイヤフラム32から離隔せしめられるようになっており、ダイヤフラム32に駆動力が伝達されるのを防ぐことが出来る。それ故、駆動力がダイヤフラム32に及ぼされることによって、仕切部材42に固着しているダイヤフラム32が無理に引き剥がされて損傷するのを回避することが出来る。
また、本実施形態に係る自動車用エンジンマウント10では、電動モータ84への通電を制御する制御装置92を設けると共に、駆動部材102と回転軸86の連結部分において回転軸86の回転駆動力を駆動部材102の軸方向駆動力に変換するねじ機構を採用することにより、駆動部材102に取り付けられた弁部材110が、回転軸86を回転駆動させる一般的な電動モータ84によって軸方向両側に向かって駆動変位せしめられるようになっている。従って、比較的に簡単な構造の電動モータ84を用いて、弁部材110を軸方向で上下に往復変位せしめることが出来て、防振特性の切換え制御を実現することが可能となる。
また、電動モータ84への非通電下においては、雄ねじ部材90と雌ねじ部108の間の摩擦力やねじ山の係合等によって、駆動部材102が往復作動方向で位置決めされた非作動状態に保持されて、駆動部材102に取り付けられた弁部材110が、所定の位置に保持されるようになっている。このようなねじ部90,108間での係合や摩擦による保持作用によって、電動モータ84への非通電時において弁部材110の軸方向位置を保持せしめることが出来て、切り換えられた防振特性を安定して維持することが出来る。
特に弁部材110が往復作動方向の上端に位置せしめられている場合において、有効な保持力を非通電で容易に得られる構造となっていることから、第二のオリフィス通路72の実質的な遮断状態を確実に維持することが出来て、エンジンシェイク等に相当する低周波数振動の入力時に、目的とする防振性能を実現することが出来る。
しかも、ねじ部90,108間での摩擦や係合を利用して駆動部材102ひいては弁部材110に保持力を及ぼす構造とされたエンジンマウント10では、連続的な通電状態の維持によって第二のオリフィス通路72の遮断状態を維持する場合に比べて、受圧室64内の圧力が第二のオリフィス通路72を通じて弁部材110に及ぼされた場合にも、弁部材110が該圧力に抗して目的とする切換え状態に安定して維持されて、第二のオリフィス通路72の実質的な遮断状態がより確実に実現される。
さらに、電動モータ84への通電を要することなく弁部材110に保持力を及ぼすことが出来るため、切り換えられた防振特性を保持する際に消費される電力を抑えることが出来ると共に、通電状態の連続的な維持による発熱を抑えて、熱による耐久性の低下を防ぐことが出来る。
また、駆動部材102の中央穴を利用して形成された雌ねじ部108に対して、回転軸86に固定された雄ねじ部材90が螺嵌されることによって、駆動部材102が回転軸86に取り付けられていることから、駆動部材102と回転軸86の相対的な傾斜や軸方向での抜け等を防ぐことが出来る。従って、駆動部材102の安定した作動を実現して、防振特性の切換えを高精度に且つ安定して行うことが出来る。
また、例えば、リニアモータ等を採用して弁部材110の駆動方向でのストロークを制御する場合に比べて、電動モータ84への供給電圧のぶれに対する弁部材110の駆動変位量の変化が小さく抑えられることから、防振特性の切換えをより高精度に実現することが出来る。
また、本実施形態では、弁部材110の外周面が円弧状の湾曲面とされていることにより、ダイヤフラム32に対して弁部材110による押圧力が及ぼされる際に、押圧力が局所的に集中して作用するのを防ぐことが出来て、ダイヤフラム32の耐久性を向上せしめることが出来る。
また、図2には、本発明に係る流体封入式防振装置の第二の実施形態として、自動車用のエンジンマウント116が示されている。なお、以下の説明において、前記第一の実施形態と本質的に同一の部材乃至部位については、同一の符号を付すことによって説明を省略する。
すなわち、本実施形態に従う構造とされたエンジンマウント116は、アクチュエータ118を有している。アクチュエータ118は、更に、電動モータ84の回転軸86に取り付けられる駆動部材120を備えている。駆動部材120は、全体として逆向きの略有底円筒形状を有しており、内周面に雌ねじを刻設された筒状の雌ねじ部108を含んで形成されている。また、駆動部材120の軸方向中間部分には、支持段部104が形成されており、該支持段部104を挟んだ上側部分が下側部分よりも小径となっている。更に、駆動部材120の上端部には、外周側に広がる支持フランジ122が一体形成されており、該支持フランジ122の下面と支持段部104の上面が軸方向で対向せしめられている。
また、駆動部材120の上端部分を取り囲むように可動弁体としての弁部材124が配設されている。弁部材124は、全体として逆向きの略有底円筒形状を有しており、駆動部材120の上方および外周側を囲むように配置されている。また、弁部材124の下側開口部分には、ばね支持金具126が固設されている。ばね支持金具126は、筒状の固定部とその軸方向中央部分から内周側に突出する支持部を一体的に有しており、該固定部が弁部材124の開口部付近において弁部材124の内周面に固着されていると共に、該支持部が径方向内方に向かって突出せしめられている。
さらに、駆動部材120と弁部材124は、第一のコイルスプリング128と第二のコイルスプリング130によって弾性的に連結されている。より詳細には、第一のコイルスプリング128は、上方に行くに従って次第に大径となるテーパ形状の円筒ばねであって、その下端部が駆動部材120の支持段部104に当接せしめられると共に、上端部が弁部材124に固定されたばね支持金具126に当接せしめられて、駆動部材120と弁部材124の間に介装されている。そして、駆動部材120が弁部材124に対して軸方向で接近する方向(軸方向上向き)に駆動変位せしめられることによって、第一のコイルスプリング128が軸方向で圧縮変形せしめられるようになっている。
また、第二のコイルスプリング130は、上方に行くに従って次第に小径となるテーパ形状の円筒ばねであって、その上端部が駆動部材120の支持フランジ122に当接せしめられると共に、下端部がばね支持金具126の上面に当接せしめられて、駆動部材120と弁部材124の間に介装されている。そして、駆動部材120が弁部材124に対して軸方向で離隔する方向(軸方向下向き)に駆動変位せしめられることによって、第二のコイルスプリング130が軸方向で圧縮変形せしめられるようになっている。このように第一,第二のコイルスプリング128,130を介することによって、駆動部材120が弁部材124に対して軸方向での相対変位を許容された状態で弾性的に連結支持されている。
そして、弁部材124をコイルスプリング128,130で弾性連結された駆動部材120は、前記第一の実施形態と同様に、電動モータ84の回転軸86に取り付けられており、電動モータ84の回転駆動力がねじ機構によって往復駆動力に変換されて駆動部材120に及ぼされるようになっている。更に、駆動部材120に及ぼされる往復駆動力が、コイルスプリング128,130を介して弁部材124に伝達されるようになっており、駆動部材120の往復駆動に伴って弁部材124が往復駆動せしめられるようになっている。
かくの如き構造を有するアクチュエータ118は、前記第一の実施形態と同様に、マウント本体11の下方に配置されて、弁部材124がダイヤフラム32の中央当接部34に対して下方から当接せしめられている。これにより、弁部材124の上下方向への駆動によって、ダイヤフラム32の中央当接部34が上下に変位せしめられるようになっており、弁部材124の上端位置において中央当接部34が第二のオリフィス通路72の平衡室66側の開口部に押し付けられて、第二のオリフィス通路72が遮断されるようになっていると共に、弁部材124の下端位置において中央当接部34が第二のオリフィス通路72の平衡室66側の開口部から離隔せしめられて、第二のオリフィス通路72が連通されるようになっている。なお、本実施形態において、弁部材124は、ダイヤフラム32の中央当接部34に固着されていても良い。
このような本実施形態に係るエンジンマウント116においても、弁部材124の閉位置(上端位置)での保持状態下、衝撃的な大荷重が入力された場合には、第一のコイルスプリング128が圧縮変形せしめられることによって、弁部材124が駆動部材120に対して独立して下方に変位可能となっている。そして、荷重入力による平衡室66の容積変化によって弁部材124に及ぼされる圧力が、第一のコイルスプリング128の弾性変形によって吸収されて、駆動部材120に対して緩衝的に伝達されるようになっている。これにより、駆動部材120と、駆動部材120に取り付けられる電動モータ84、更には、それら駆動部材120と電動モータ84の連結部分に設けられるねじ機構に対して、過大な圧力が作用するのを回避して、それらの損傷を防ぐことが出来る。
さらに、封入された非圧縮性流体の凍結下において、駆動部材120に軸方向上向きの駆動力が及ぼされた場合には、第一のコイルスプリング128が圧縮変形せしめられることによって、駆動部材120が弁部材124に対して独立して上方に相対変位せしめられるようになっている。これにより、駆動部材120に及ぼされる軸方向の駆動力が、弁部材124に対して直接に作用するのを防いで、軸方向上方に向かっての変位を拘束された弁部材124が駆動力の作用によって破損するのを防止することが出来る。
更にまた、封入液の凍結等によって、ダイヤフラム32の中央当接部34が第二のオリフィス通路72の開口周縁部に固着している状態下、駆動部材120に軸方向下向きの駆動力が及ぼされた場合には、第二のコイルスプリング130が圧縮変形せしめられることによって、駆動部材120が弁部材124に対して独立して下方に相対変位せしめられるようになっている。これにより、駆動部材120に及ぼされる軸方向の駆動力が、ダイヤフラム32の中央当接部34に固着された弁部材124に対して直接に作用するのを防いで、仕切部材42に固着されたダイヤフラム32が駆動力の作用によって破損するのを回避することが出来る。
また、本実施形態に従う構造のエンジンマウント116では、第一,第二のコイルスプリング128,130として円錐形のものが採用されており、コイルスプリング128,130による付勢力が、駆動部材120と弁部材124の間で軸方向だけでなく軸直角方向にも作用せしめられるようになっている。これにより、第一,第二のコイルスプリング128,130の付勢力を利用して、駆動部材120と弁部材124が軸直角方向で相対的に位置決めされるようになっている。
また、図3には、本発明に係る流体封入式防振装置の第三の実施形態として、自動車用のエンジンマウント132が示されている。エンジンマウント132は、第一の取付部材としての第一の取付金具134と第二の取付部材としての第二の取付金具136を本体ゴム弾性体138で相互に連結した構造を有している。
より詳細には、第一の取付金具134は、鉄やアルミニウム合金等の金属材で形成された高剛性の部材であって、全体として略円形ブロック形状を有しており、上端部分が略一定の円形断面を有する円柱形状を有していると共に、下端部が下方に行くに従って次第に小径となる逆向きの略円錐台形状を有している。また、第一の取付金具134の径方向中央部分には、上方に向かって突出する取付ボルト140が一体形成されている。
一方、第二の取付金具136は、全体として薄肉大径の略円筒形状を呈しており、第一の取付金具134と同じ材料で形成されている。また、第二の取付金具136の上端部分は、上方に行くに従って次第に拡開するテーパ形状とされており、その上端縁部には、フランジ状部142が一体形成されている。更に、第二の取付金具136の下端部に対して外周側に向かって広がる段差部144が形成されていると共に、該段差部144の外周縁部には、下方に向かって延び出す円筒形状のかしめ片146が一体形成されている。
また、第一の取付金具134と第二の取付金具136が同一中心軸上で相互に離隔するように配置されていると共に、それら第一の取付金具134と第二の取付金具136の間には本体ゴム弾性体138が介装されている。本体ゴム弾性体138は、厚肉の略円錐台形状を有しており、逆向きの略すり鉢状を有して大径側端面に開口する大径凹所148を備えている。そして、本体ゴム弾性体138の小径側端部に第一の取付金具134が埋設されて加硫接着されていると共に、大径側端部の外周面に第二の取付金具136の上端部分の内周面が重ね合わされて加硫接着されている。これにより、第一の取付金具134と第二の取付金具136が本体ゴム弾性体138によって弾性連結されている。なお、本実施形態では、本体ゴム弾性体138が第一の取付金具134と第二の取付金具136を備えた一体加硫成形品として形成されている。
さらに、本体ゴム弾性体138に形成された大径凹所148の開口周縁部から下方に向かって延び出すようにシールゴム層150が形成されている。シールゴム層150は、薄肉大径の略円筒形状を有するゴム弾性体で形成されており、第二の取付金具136の軸方向中間部分から段差部144に亘る領域の内周面を略全面に亘って覆うように被着形成されている。
また、本体ゴム弾性体138の一体加硫成形品には、可撓性膜としてのダイヤフラム152が取り付けられている。ダイヤフラム152は、薄肉の略円板形状を有するゴム弾性体で形成されており、径方向の中間部分に軸方向で十分な弛みが与えられている。また、ダイヤフラム152の径方向中央部分は、比較的に厚肉とされた円形の中央当接部154とされており、その上端面から上方に突出するように環状のシールリップ156が一体形成されている。
さらに、ダイヤフラム152の外周縁部には、環状の固定金具158が加硫接着されている。固定金具158は、略円環板形状を有する固着部160の外周縁部に対して上方に突出するかしめ部162を一体形成した構造を有しており、固着部160の内周部分に対してダイヤフラム152の外周縁部が加硫接着されていると共に、固着部160の外周部分の上面およびかしめ部162の内周面には、ダイヤフラム152と一体形成されたシール部164が固着されている。なお、本実施形態では、ダイヤフラム152が固定金具158を備えた一体加硫成形品として形成されている。
このような固定金具158を備えたダイヤフラム152は、固定金具158のかしめ部162が、第二の取付金具136のかしめ片146に対して内挿されて、第二の取付金具136の段差部144に対して下方から重ね合わされることにより、本体ゴム弾性体138の一体加硫成形品に対して位置決めされている。そして、固定金具158が、後述するブラケット金具188およびケース金具198と共に、かしめ片146によってかしめ固定されることにより、ダイヤフラム152が第二の取付金具136に対して取り付けられている。
このようなダイヤフラム152の第二の取付金具136への取付下、第二の取付金具136の内周側における本体ゴム弾性体138とダイヤフラム152の軸方向対向面間には、外部から密閉された流体封入領域166が形成されており、内部に非圧縮性流体が封入されている。なお、封入される非圧縮性流体は、前記第一の実施形態と同様であることから、説明を省略する。
また、流体封入領域166には、仕切部材168が収容配置されている。仕切部材168は、厚肉の略円板形状を有しており、下端部には下面に開口する中央凹所170が形成されている。また、仕切部材168の外周縁部には、螺旋状を為して周方向に所定の長さで延びる周溝172が形成されて、外周面に開口せしめられていると共に、仕切部材168の中央部分には、軸方向で直線的に延びる円形の連通路174が貫通形成されている。
この仕切部材168は、流体封入領域166内に配設されて、第二の取付金具136によって支持されている。即ち、ダイヤフラム152の第二の取付金具136への装着前に、仕切部材168が第二の取付金具136に内挿されて、仕切部材168の上端面の外周縁部が本体ゴム弾性体138の下端面に当接せしめられることにより軸方向で位置決めされると共に、第二の取付金具136に対して八方絞り等の縮径加工が施されることによって、仕切部材168の外周面が第二の取付金具136の内周面に対してシールゴム層150を介して密着せしめられる。更に、ダイヤフラム152に固着された固定金具158が、その内周縁部が仕切部材168の外周縁部に対して下方から重ね合わされた状態で、第二の取付金具136に対してかしめ固定される。以上によって、仕切部材168が第二の取付金具136で支持されて、流体封入領域166内に位置決め固定されている。
また、仕切部材168が流体封入領域166内において軸直角方向に広がるように配設されることにより、流体封入領域166が仕切部材168を挟んだ両側に二分されており、仕切部材168を挟んだ上側には、壁部の一部が本体ゴム弾性体138で構成されて、内圧変動が惹起される受圧室176が形成されていると共に、仕切部材168を挟んだ下側には、壁部の一部がダイヤフラム152で構成されて、容積変化が許容される平衡室178が形成されている。なお、それら受圧室176と平衡室178には、流体封入領域166に封入された非圧縮性流体が封入されている。
さらに、仕切部材168の外周面が第二の取付金具136に対して流体密に重ね合わされていることにより、仕切部材168の外周縁部に形成された周溝172の開口部が全周に亘って流体密に覆蓋されている。更に、周溝172の周方向一方の端部が、連通窓180を通じて受圧室176に連通されていると共に、他方の端部が連通窓182を通じて平衡室178に連通されている。これによって、周方向に所定の長さで延びて受圧室176と平衡室178を相互に連通せしめる第一のオリフィス通路184が、周溝172を利用して形成されている。
更にまた、仕切部材168の径方向中央部分を軸方向に貫通する連通路174によって、受圧室176と平衡室178が、第一のオリフィス通路184よりも短い通路長さと大きな通路断面積をもって相互に連通されている。これにより、第一のオリフィス通路184よりも高周波数の振動にチューニングされた第二のオリフィス通路186が、連通路174を利用して形成されている。なお、第一のオリフィス通路184と第二のオリフィス通路186によって本実施形態の流体流路が構成されている。
また、第二の取付金具136には、ブラケット金具188が取り付けられている。ブラケット金具188は、略有底円筒形状を有しており、開口周縁部にフランジ部190を有している。また、ブラケット金具188の底壁部には径方向中央部分に円形の貫通孔が形成されている。更に、ブラケット金具188の外周面には、周上の複数箇所に取付脚部192が固着されている。なお、取付脚部192の下端部には、ボルト孔194が形成されており、ボルト孔194に挿通される図示しないボルトによってブラケット金具188が車両ボデーに取り付けられるようになっている。
このような構造のブラケット金具188は、フランジ部190が、ダイヤフラム152の固定金具158に重ね合わされて、第二の取付金具136のかしめ片146によってかしめ固定されることにより、第二の取付金具136に対して取り付けられて、下側に配置されている。
また、ダイヤフラム152とブラケット金具188の軸方向間には、アクチュエータ196が配設されている。アクチュエータ196は、有底円筒形状のケース金具198を有しており、該ケース金具198の底壁部に固定された支持台200によって電動モータ84が支持されている。電動モータ84は、既存の電動機であって、本実施形態では、回転軸86が軸直角方向に延びるように支持台200に対して固定されている。なお、図3および後述する図4において、アクチュエータは、見やすさのために、ケース金具とそれぞれ後述するカバー金具と保持ばねと第一のコイルスプリングが、何れも断面図として表示されていると共に、他の部分が何れも側面図として表示されている。
また、電動モータ84と電源装置88を電気的に接続する回路上には、制御装置92が設けられている。この制御装置92によって、電動モータ84への通電が制御されて回転軸86が所定の回転角ずつ回転するように制御されている。なお、電動モータ84への通電と非通電を切り換える制御装置92は、従来から公知のものを採用することが出来るため、ここでは説明を省略する。
また、電動モータ84の回転軸86には、ウォームギヤ202が取り付けられている。ウォームギヤ202は、外周面にねじ状の歯筋を有する歯車であって、電動モータ84の回転軸86が中心軸上を延びるように挿し入れられて固着されている。そして、回転軸86の回転駆動に伴ってウォームギヤ202が回転せしめられるようになっている。
また、ウォームギヤ202には、ウォームホイール204が噛合されている。ウォームホイール204は、外周面にウォームギヤ202の歯筋と対応する歯筋を有する円板形状の歯車であって、ウォームギヤ202の回転によってウォームギヤ202と直交する軸回りで回転せしめられるようになっている。また、ウォームホイール204の径方向中央部分には、第一の支軸206が挿通されている。そして、ウォームホイール204は、第一の支軸206を中心として回転を許容された状態で第一の支軸206によって支持されている。なお、第一の支軸206は、略一定の小径円形断面をもって直線的に延びるロッド状を有しており、その下端部がケース金具198の底壁部に固定されて、電動モータ84の回転軸86と直交する方向である軸方向上下に延びている。
また、ウォームホイール204の下方には、第一のギヤ208が配設されている。この第一のギヤ208は、外周面において軸方向に延びる多数条の歯筋を有する一般的な歯車であって、径方向の中心に第一の支軸206が挿通されており、第一の支軸206を中心とする回転を許容された状態で第一の支軸206によって支持されている。また、第一のギヤ208は、ウォームホイール204と一体的に回転せしめられるようになっており、本実施形態では、ウォームホイール204と一体形成されて、ウォームホイール204から下方に突出するように第一のギヤ208が形成されている。なお、第一のギヤ208は、ウォームホイール204とは別体で形成されて、ウォームホイール204の下面に固着されていても良い。
また、第一のギヤ208には、第二のギヤ210が噛合されている。第二のギヤ210は、第一のギヤ208に比して大径とされた円板形状の歯車であって、第一のギヤ208に対応する歯筋を外周面に有している。
さらに、第二のギヤ210の径方向中央部分には、貫通孔が形成されており、外嵌通孔にカム支軸212が挿通固着されている。カム支軸212は、小径の略円柱形状とされて、第二のギヤ210の貫通孔に挿通される支軸部214を有していると共に、支軸部214の上側に一体形成されて、支軸部214よりも大径の略有底円筒形状を有する下側カム部216を備えている。下側カム部216は、周壁部の上端面が波状面とされており、周壁部の高さが周方向で変化せしめられている。そして、カム支軸212は、支軸部214が第二のギヤ210に固定されることにより、第二のギヤ210の回転駆動に伴って中心軸回りで回転せしめられるようになっている。
また、下側カム部216の上方には、駆動軸としての駆動部材218が配設されている。駆動部材218は、全体として軸方向上下に延びるロッド状であって、一体形成された上側カム部220と連結軸部222を有している。上側カム部220は、逆向きの略有底円筒形状を有しており、周壁部の下端面が下側カム部216の上端面に対応する波状面とされている。そして、下側カム部216の上端面と上側カム部220の下端面が軸方向で重ね合わされることによって、運動変換機構としてのカム機構が、それら上下のカム部220,216で構成されている。
また、上側カム部220の径方向中央部分には、上方に向かって延びる連結軸部222が形成されている。連結軸部222は、小径のロッド形状であって、軸方向で直線的に延びている。更に、連結軸部222の上端部には、可動弁体としての弁部材224が形成されている。この弁部材224は、略円板形状であって、連結軸部222と同一中心軸上に配設されている。なお、本実施形態では、弁部材224が上側カム部220および連結軸部222とは別体とされており、後述するカバー金具226のケース金具198へ装着後において、弁部材224が、円形孔を通じてカバー金具226よりも上方に突出する連結軸部222の上端面に重ね合わされて、接着やねじ止め等の手段によって連結軸部222に対して固定されている。
また、本実施形態では、ケース金具198の開口部を覆うようにカバー金具226が配設されている。カバー金具226は、全体として薄肉の逆向き皿形状を呈しており、外周部分が径方向外側に行くに従って次第に下傾するテーパ形状となっていると共に、径方向中央部分が逆向きの略有底円筒形状となっており、上底壁部の径方向中央部分に小径の円形孔が貫通形成されている。更に、カバー金具226の外周縁部には、下方に向かって延びる筒状の圧入部が一体形成されている。そして、カバー金具226は、ケース金具198に対して圧入固定されており、径方向中央に形成された円形孔に対して連結軸部222が挿通されている。これによって、カバー金具226のケース金具198への装着下、アクチュエータ196の駆動機構がケース金具198とカバー金具226の対向面間に収容配置されていると共に、連結軸部222の一部と弁部材224がカバー金具226よりも上方に突出せしめられている。
また、上側カム部220とカバー金具226の間には、保持ばね228が配設されている。保持ばね228は、一般的な弦巻ばねであって、連結軸部222に外挿されており、上端部が支持金具を介してカバー金具226に当接せしめられていると共に、下端部が上側カム部220の上底壁部に当接せしめられている。これにより、保持ばね228の付勢力が上側カム部220を軸方向に付勢するように作用せしめられており、上側カム部220の下端面が下側カム部216の上端面に対して押し付けられている。
ここにおいて、第二のギヤ210の下方には、第一のコイルスプリングとしてのコイルスプリング230が配設されている。コイルスプリング230は、線材を螺旋状に巻いた円筒形状の一般的な弦巻ばねであって、ケース金具198の底壁部と第二のギヤ210の対向面間に配設されている。また、コイルスプリング230は、その上端部がカム支軸212の支軸部214に外挿されていると共に、下端部がケース金具198の底壁部に対して、位置決め用の凹凸によって径方向で位置決めされた状態で当接している。かくの如きコイルスプリング230の配設下、弁部材224に対して駆動部材218を介して連結されたカム支軸212が、コイルスプリング230を介してケース金具198に弾性的に支持されている。換言すれば、駆動部材218およびカム支軸212に対して軸方向で連結された弁部材224が、コイルスプリング230を介してケース金具198に弾性支持されている。なお、コイルスプリング230は、保持ばね228に比してばね定数が大きくなっており、本実施形態では、保持ばね228よりも直径が大きい線材を使用することでばね定数を大きく設定している。
かくの如き構造とされたアクチュエータ196では、電動モータ84に外部の電源装置88から通電されると、回転軸86が中心軸回りで回転駆動せしめられる。また、回転軸86に固定されたウォームギヤ202が回転軸86と共に回転せしめられて、ウォームギヤ202に噛合されたウォームホイール204が第一の支軸206回りで回転せしめられる。更に、ウォームホイール204と一体形成された第一のギヤ208が第一の支軸206を中心として回転せしめられることにより、第一のギヤ208と噛合された第二のギヤ210が回転せしめられて、第二のギヤ210に固定されたカム支軸212が中心軸回りで回転せしめられる。
そして、カム支軸212の回転によって、下側カム部216が上側カム部220に対して相対的に回転せしめられると、上下のカム部220,216の重ね合わせ面の波形状を利用して回転運動を直線的な往復運動に変換する運動変換作用が発揮されて、上側カム部220が、下側カム部216の回転に伴って上下方向に往復駆動せしめられる。これによって、上側カム部220と一体形成された連結軸部222が上下方向に駆動せしめられると共に、連結軸部222に固定された弁部材224が上下方向で往復駆動せしめられるようになっている。なお、カム支軸212を弾性的に支持するコイルスプリング230が、上下のカム部220,216を当接状態に保持する保持ばね228よりも硬いばね特性を有していることにより、カム機構によって回転駆動力が往復駆動力に変換されるに際して、カム支軸212が下方に変位せしめられることなく支持されて、駆動力が弁部材224に対して効率的に伝達されるようになっている。
かくの如き構造とされたアクチュエータ196は、ダイヤフラム152とブラケット金具188の軸方向対向間のスペースに配設される。即ち、アクチュエータ196のケース金具198の開口周縁部に一体形成された取付フランジ232が、ダイヤフラム152の固定金具158とブラケット金具188のフランジ部190の間に挟み込まれると共に、第二の取付金具136のかしめ片146でかしめ固定されることにより、ケース金具198が第二の取付金具136によって支持されている。なお、ケース金具198が第二の取付金具136に固定されることにより、弁部材224がコイルスプリング230を介して第二の取付金具136で弾性支持されている。
また、アクチュエータ196の装着下、弁部材224がダイヤフラム152の中央当接部154に対して下方から非接着で重ね合わされている。そして、弁部材224の往復作動に伴って、中央当接部154が軸方向上下に変位せしめられるようになっている。これにより、中央当接部154が、仕切部材168の下面に開口する第二のオリフィス通路186の平衡室178側の開口部に対して、接近方向と離隔方向に変位せしめられるようになっており、第二のオリフィス通路186の連通と遮断が中央当接部154によって切り換えられるようになっている。
このようなアクチュエータ196を備えたエンジンマウント132では、第一のオリフィス通路184がチューニングされた低周波数の振動入力に際して、弁部材224が上端の閉作動位置に位置せしめられるようにアクチュエータ196を作動せしめて、第二のオリフィス通路186の平衡室178側の開口部をダイヤフラム152の中央当接部154によって閉塞せしめることで第二のオリフィス通路186を遮断することにより、第一のオリフィス通路184を通じての流体流動量を有利に確保して、流体の流動作用に基づく高減衰効果が効率的に発揮されるようになっている。一方、第二のオリフィス通路186がチューニングされた高周波数の振動入力に際して、弁部材224が下端の開作動位置に位置せしめられるようにアクチュエータ196を作動せしめて、中央当接部154を第二のオリフィス通路186の平衡室178側の開口部から離隔せしめることで第二のオリフィス通路186を連通せしめることにより、第二のオリフィス通路186を通じての流体流動が惹起されて、流体の流動作用に基づく低動ばね効果が発揮されるようになっている。
このような本実施形態に従う構造のエンジンマウント132において、弁部材224が上端(閉作動位置)又は下端(開作動位置)に位置せしめられた状態下、軸方向で下向きに衝撃的な大荷重が入力されると、ダイヤフラム152を介して弁部材224に圧力が及ぼされる。そして、弁部材224に及ぼされた圧力は、カム機構を介して駆動部材218からカム支軸212に伝達される。そこにおいて、カム支軸212は、その下方に配設されたコイルスプリング230によって弾性的に支持されており、カム支軸212に伝達された圧力がコイルスプリング230の圧縮変形によって吸収されるようになっている。それ故、入力荷重の圧力が作用することによって、弁部材224や駆動部材218、カム支軸212等が損傷するのを防ぐことが出来る。
しかも、カム支軸212に固定された第二のギヤ210と、第二のギヤ210に噛合せしめられる第一のギヤ208は、何れも軸方向に直線的に延びる歯筋を有しており、それら第一のギヤ208と第二のギヤ210が軸方向で相対変位可能となっている。それ故、大荷重の入力によってコイルスプリング230が圧縮変形せしめられてカム支軸212が下方に変位すると、第一のギヤ208と第二のギヤ210が軸方向に相対変位せしめられて、第二のギヤ210から第一のギヤ208への圧力の伝達が回避されるようになっている。これによって、第一のギヤ208およびウォームホイール204とウォームギヤ202と電動モータ84に対して、入力荷重による圧力が作用するのを防ぐことが出来て、圧力の作用に起因するそれらの破損を回避することが出来る。
なお、弁部材224が軸方向の中間部分に位置せしめられた状態下においては、下側カム部216の上端面と上側カム部220の下端面によって構成されたカム面が、相互に傾斜部分において当接せしめられている。これにより、軸方向で下方に向かって衝撃的な大荷重が入力されると、カム面において発揮される案内作用に基づいて、下側カム部216と上側カム部220が相対的に中心軸回りで回転せしめられて、駆動部材218および弁部材224が下端位置まで変位せしめられるようになっている。それ故、弁部材224に及ぼされた圧力が、駆動部材218の変位によって吸収されて、駆動部材218やカム支軸212,電動モータ84等の破損を防ぐことが出来る。
また、本実施形態においては、運動変換機構であるカム機構が、非接着で上下に重ね合わされた下側カム部216と上側カム部220によって構成されている。封入された非圧縮性流体の凍結等によってダイヤフラム152の中央当接部154が仕切部材168に固着された状態下、カム支軸212が駆動部材218を下方に駆動変位せしめる周方向位置に回転せしめられると、下側カム部216が上側カム部220に対して軸方向下方に離隔せしめられて、それら上下のカム部220,216の当接状態が解除されるようになっている。それ故、弁部材224が拘束された状態で電動モータ84に通電されることによって、電動モータ84に焼付き等の損傷が生じるのを防ぐことが出来る。
また、図4には、本発明に係る流体封入式防振装置の第四の実施形態として、自動車用のエンジンマウント234が示されている。このエンジンマウント234は、アクチュエータ236を備えている。なお、本実施形態に示されているエンジンマウント234は、前記第三の実施形態に示されたエンジンマウント234に対してアクチュエータ236が異なる構造となっており、他の部分は略同一の構造とされていることから、図中に同一の符号を付すことによってここでは説明を省略する。また、アクチュエータ236の説明においても、前記第三の実施形態と実質的に同一の部材乃至部位については同一の符号を付すことで説明を省略する場合がある。
アクチュエータ236は、電動モータ84を備えている。電動モータ84は、略有底円筒形状とされたケース金具198に固定された支持台200上に載置されて固定されている。また、電動モータ84は、回転軸86が軸直角方向に延びるように設置されている。
また、電動モータ84の回転軸86には、ウォームギヤ202が取り付けられている。更に、ウォームギヤ202には、ウォームホイール204が噛合せしめられている。このウォームホイール204の径方向中心には、軸方向に延びる第一の支軸206が挿通せしめられており、ウォームホイール204が第一の支軸206を中心として回転可能に支持されている。また、ウォームホイール204の下方には、第一のギヤ208が設けられており、第一の支軸206を中心としてウォームホイール204と一体的に回転可能となっている。また、第一のギヤ208には、第二のギヤ210が噛合せしめられている。第二のギヤ210は、カム支軸212の支軸部214に外挿されて固着されている。更に、カム支軸212は、支軸部214の上方に一体形成された下側カム部216を有している。なお、本実施形態におけるカム支軸212は、中心軸回りでの回転を許容された状態でケース金具198に取り付けられて支持されている。
また、カム支軸212の上方には、駆動軸としての駆動部材238が配設されている。駆動部材238は、下側カム部216に重ね合わされる上側カム部220と、上側カム部220の上底壁部から上方に向かって延び出す連結軸部222を備えている。更に、連結軸部222の上端部には、出力部材240が配設されている。出力部材240は、略円板形状であって、径方向中央部分には、上方に向かって突出する円形の下側突部242が形成されている。そして、出力部材240は、連結軸部222と同一中心軸上に配置されて、連結軸部222の上端面に重ね合わされて固定されている。なお、前記第三の実施形態と同様に、ケース金具198に対してカバー金具226が装着されており、連結軸部222がカバー金具226の貫通孔に挿通されて、連結軸部222の傾動が抑えられていると共に、カバー金具226と上側カム部220の軸方向間に保持ばね228が介装されて、上側カム部220に対して軸方向下向きの付勢力が及ぼされている。
また、出力部材240の上方には、可動弁体としての弁部材244が軸方向および径方向で所定距離を隔てて配設されている。弁部材244は、出力部材240と略対応する円板形状を有しており、径方向中央部分には、下方に向かって突出する円形の上側突部246が形成されている。この弁部材244は、出力部材240と同一の中心軸上に配設されており、出力部材240に対して軸方向に対向せしめられている。
そこにおいて、出力部材240と弁部材244の間には、第一のコイルスプリングとしてのコイルスプリング248が配設されている。コイルスプリング248は、保持ばね228よりも高いばね定数を有する一般的な弦巻ばねであって、下端部が出力部材240の上面に当接せしめられて下側突部242に外挿されていると共に、上端部が弁部材244の下面に当接せしめられて上側突部246に外挿されている。このようなコイルスプリング248が出力部材240と弁部材244の対向面間に介装されることにより、弁部材244が出力部材240を含む駆動軸によって弾性的に支持されている。
そして、アクチュエータ236は、電動モータ84に通電されることによって回転軸86に及ぼされる回転駆動力が歯車列を介してカム支軸212に伝達されると共に、該回転駆動力が、下側カム部216と上側カム部220で構成されたカム機構において軸方向の往復駆動力に変換されて、出力部材240に伝達される。出力部材240に伝達された往復駆動力は、コイルスプリング248を介して弁部材244に伝達されるようになっており、電動モータ84への通電を制御することによって弁部材244が上下方向に駆動変位されるようになっている。
かくの如き構造とされたアクチュエータ236は、前記第三の実施形態に示されたアクチュエータ236と同様に、ダイヤフラム152の下側に配設されており、アクチュエータ236の組付け下、弁部材244がダイヤフラム152の中央当接部154に対して下方から重ね合わされて当接せしめられている。そして、電動モータ84への通電による弁部材244の駆動変位に際して、中央当接部154が弁部材244によって軸方向に変位せしめられて、第二のオリフィス通路186の平衡室178側の開口部に対して接近方向と離隔方向に変位せしめられるようになっている。
このような本実施形態に従う構造のエンジンマウント234においては、弁部材244の駆動に伴う中央当接部154の変位によって、第二のオリフィス通路186の平衡室178側の開口部が開口状態と閉塞状態に切り換えられるようになっている。これにより、第一のオリフィス通路184を通じた流体流動によって発揮される低周波数振動に対する防振効果と、第二のオリフィス通路186を通じた流体流動によって発揮される高周波数振動に対する防振効果が、何れも効果的に発揮される。
また、弁部材244が上端の閉作動位置又は下端の開作動位置に位置せしめられた状態下、第一の取付金具134と第二の取付金具136の間に衝撃的な大荷重が入力されると、弁部材244に対して軸方向下向きの圧力が及ぼされる。そこにおいて、本実施形態では、弁部材244が出力部材240を含む駆動部材238に対して、コイルスプリング248を介して弾性的に連結されていることにより、弁部材244に及ぼされた圧力が、コイルスプリング248の圧縮変形によって吸収されるようになっており、駆動部材238への直接的な作用が抑えられるようになっている。それ故、圧力の作用によって駆動部材238や運動変換機構(上下のカム部220,216),カム支軸212等が破損するのを防ぐことが出来る。
さらに、コイルスプリング248のばね定数が適当に設定されていることにより、アクチュエータ236の作動に際して、駆動部材238に及ぼされる軸方向の駆動力がコイルスプリング248の圧縮変形で吸収されるのを抑えて、目的とする弁部材244の駆動変位を高精度に実現することが出来る。それ故、弁部材244の駆動変位による第二のオリフィス通路186の連通状態と遮断状態の切換えを、精度良く行うことが可能となる。
以上、本発明の幾つかの実施形態について説明してきたが、これらはあくまでも例示であって、本発明は、かかる実施形態における具体的な記載によって、何等、限定的に解釈されるものではない。
例えば、前記第一乃至第四の実施形態においては、運動変換機構として、カム機構を採用した構造とねじ機構を採用した構造が示されているが、他にも、ウォームギヤにおいてウォームホイール側を板形状とした機構や、ラック−ピニオン機構等、回転駆動力を軸方向の往復駆動力に変換する機構を採用することが出来る。
また、前記第三,第四の実施形態において、カム機構が、下側カム部と上側カム部の重ね合わせによって構成された面カムとなっているが、例えば、上下方向に所定の振幅を有する波状をもって周方向で連続して延びる凹溝を従動体(駆動軸)に形成すると共に、該凹溝に挿し込まれるピンを電動モータの回転軸に取り付けて、ピンと凹溝の係合作用によって電動モータが発生する回転駆動力を従動体に対して軸方向駆動力として伝達するようにした溝カム構造を採用することも出来る。
また、前記第一,第二の実施形態において、電動モータの回転軸が直接に運動変換機構に取り付けられた構造が示されていると共に、前記第三,第四の実施形態において、電動モータの回転軸が歯車列を介して運動変換機構に取り付けられた構造が示されているが、このような電動モータの回転駆動力を運動変換機構に伝達する経路は、あくまでも例示であって、歯車列の具体的な構造等は、要求される性能等に応じて適当に設定される。
また、前記第一乃至第四の実施形態では、何れも、第二のオリフィス通路の平衡室側開口部がダイヤフラムの中央当接部によって連通状態と閉塞状態に切り換えられるようになっているが、第二のオリフィス通路の連通状態と遮断状態がダイヤフラムを利用して切り換えられるようになっている必要はない。具体的には、例えば、弁部材が第二のオリフィス通路の平衡室側の開口部に対して直接に当接せしめられることで第二のオリフィス通路が遮断状態に切り換えられるようになっていても良い。更に、弁部材がダイヤフラムの中央当接部に対して加硫接着された一体構造となっていても良い。
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更,修正,改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
本発明の第一の実施形態に係るエンジンマウントを示す断面図。 本発明の第二の実施形態に係るエンジンマウントを示す断面図。 本発明の第三の実施形態に係るエンジンマウントを示す断面図。 本発明の第四の実施形態に係るエンジンマウントを示す断面図。
符号の説明
10,116,132,234:エンジンマウント,12,134:第一の取付金具,14,236:第二の取付金具,16,138:本体ゴム弾性体,32,152:ダイヤフラム,34,154:中央当接部,42,168:仕切部材,64,176:受圧室,66,178:平衡室,70,184:第一のオリフィス通路,72,186:第二のオリフィス通路,82,118,196,236:アクチュエータ,84:電動モータ,90:雄ねじ部材,102,218,238:駆動部材,108:雌ねじ部,110,124,224,244:弁部材,114,128,230,248:第一のコイルスプリング,130:第二のコイルスプリング,216:下側カム部,220:上側カム部

Claims (5)

  1. 第一の取付部材と第二の取付部材を本体ゴム弾性体で連結すると共に、該本体ゴム弾性体で壁部の一部が構成されて非圧縮性流体が封入された受圧室と、可撓性膜で壁部の一部が構成されて非圧縮性流体が封入された平衡室を形成して、それら受圧室と平衡室を流体流路によって相互に連通する一方、往復作動によって該流体流路を連通状態と遮断状態に切り換える可動弁体を設けると共に、該可動弁体の駆動用の電動モータを設けて、該電動モータの回転駆動力をカム機構又はねじ機構からなる運動変換機構を介して該可動弁体にして往復駆動力として伝達させて該可動弁体を作動せしめるようにした流体封入式防振装置において、
    前記流体流路の前記平衡室側への開口部に対して当接および離隔方向で直線的に往復変位せしめられて、該流体流路の開口部に対する当接状態で該流体流路を遮断すると共に該流体流路の開口部に対する離隔状態で該流体流路を連通させる前記可動弁体を採用する一方、前記電動モータの回転駆動力が前記運動変換機構を介して軸方向の駆動力として及ぼされる駆動軸を設けて、該駆動軸により該可動弁体を該流体流路の開口部に対する当接及び離隔方向に往復変位させると共に、該可動弁体に該駆動軸の軸方向で該流体流路の開口部への当接方向に付勢力を及ぼす第一のコイルスプリングを、該運動変換機構から該可動弁体に至る駆動力の伝達経路上に配設して、該第一のコイルスプリングによって該可動弁体を軸方向で弾性的に支持せしめたことを特徴とする流体封入式防振装置。
  2. 前記駆動軸と前記可動弁体との接続部位に軸方向に付勢力を及ぼす前記第一のコイルスプリングを介装させて、該第一のコイルスプリングを介して、該駆動軸による軸方向駆動力を該可動弁体に及ぼすようにした請求項1に記載の流体封入式防振装置。
  3. 前記流体流路の開口部に対して前記可動弁体を離隔方向に駆動する駆動力が前記駆動軸から該可動弁体に及ぼされるに際して圧縮変形力が作用せしめられる第二のコイルスプリングを配設した請求項1又は2に記載の流体封入式防振装置。
  4. 前記受圧室と前記平衡室が前記第二の取付部材によって支持された仕切部材を隔てた両側に形成されていると共に、前記流体流路が該仕切部材に形成された第一のオリフィス通路と該仕切部材に形成された該第一のオリフィス通路よりも高周波数にチューニングされた第二のオリフィス通路を含んで構成されており、該第二のオリフィス通路が前記可動弁体によって連通状態と遮断状態に切換え可能とされている請求項1乃至3の何れか一項に記載の流体封入式防振装置。
  5. 前記仕切部材の中央部分に前記第二のオリフィス通路の前記平衡室側の開口部が形成されており、該第二のオリフィス通路の該平衡室側の開口部に対して前記可動弁体により前記可撓性膜を当接および離隔させることによって該第二のオリフィス通路を遮断状態と連通状態に切り換えるようになっている請求項4に記載の流体封入式防振装置。
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