JP4016343B2 - 防振用アクチュエータおよびそれを用いた能動型防振装置 - Google Patents

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Description

本発明は、防振対象部材に装着されることにより能動的な防振効果を発揮し得る能動型防振装置に用いられる防振用アクチュエータと、それを用いた能動型防振装置に係り、特に自動車のエンジンマウントやボデーマウント,制振器などの防振装置において好適に採用される防振用アクチュエータおよびそれを用いた能動型防振装置に関するものである。
例えば自動車のボデー等のように振動低減が重要視される防振対象部材において振動を低減するために、従来では、一般に、ショックアブソーバやゴム弾性体等の減衰効果を利用した振動減衰手段や、コイルスプリングやゴム弾性体等のばね効果を利用した振動絶縁手段の如き防振装置が採用されているが、これらの防振装置は何れも受動的な防振作用を発揮するものであるために、例えば防振すべき振動の周波数等の特性が変化する場合やより高度な防振効果が要求される場合等においては、充分な防振効果を得ることが難しいという問題があった。そこで、近年では、防振対象部材や防振装置に加振力を及ぼすことにより、防振すべき振動を積極的乃至は相殺的に低減せしめるようにした能動型防振装置が開発され、検討されている。例えば、特許文献1や特許文献2に記載のものが、それである。
ところで、このような能動型防振装置では、加振力を発生するアクチュエータが必要であり、かかるアクチュエータにおいては、発生加振力に関して周波数や位相の高度の制御性が要求される。そこで、能動型防振装置に採用される防振用アクチュエータとしては、コイルへの通電を制御することによりアーマチャに及ぼされる駆動力を利用するようにした電磁式のアクチュエータが好適に採用される。
より具体的には、かかる防振用アクチュエータとしては、特許文献1,2にも示されているように、一般に、カップ形状のハウジングにおいて中心軸上に延びる案内孔を設けると共に、ハウジングの開口部側に出力部材を離隔配置せしめて出力部材をハウジングに対して支持ゴム弾性体で連結する一方、出力部材に設けたガイドロッドを案内孔に挿入せしめて、ハウジングと出力部材の一方にコイル部材を設けると共に、ハウジングと出力部材の他方に強磁性体及び/又は永久磁石からなるアーマチャを設けることにより、コイル部材への通電によってアーマチャから出力部材に加振力を及ぼして、ガイドロッドの案内孔による案内作用に基づいてハウジングの中心軸方向に出力部材を加振変位せしめるようにした構造の防振用アクチュエータが、好適に採用される。
ところで、このような構造とされた防振用アクチュエータにおいて、出力部材をハウジングに対して弾性支持する支持ゴム弾性体には、高い耐久性が必要とされるが、支持ゴム弾性体には加硫成形後のゴム収縮による残留歪が発生している。かかる残留歪を取り除くために、支持ゴム弾性体に対して絞り加工がなされることが好ましいのであるが、支持ゴム弾性体の外周縁部には径方向に延び出す環状金具が加硫接着されていることから、絞り加工を行なうことが困難であった。また、環状金具の軸直方向の寸法を絞り加工によって変化せしめることは、組み付けの際の位置決め精度の点や、流体密性の確保の点からも問題であった。そのために、支持ゴム弾性体に絞り加工を施して、加硫成形後のゴム収縮による残留歪を十分に取り除くことは困難であり、かかる残留歪が支持ゴム弾性体の耐久性の低下を招いていたのである。
特開平9−89040号公報 特開2001−1765号公報
ここにおいて、本発明は上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、出力部材をハウジングに対して弾性支持する支持ゴム弾性体の耐久性を高め得る、改良された構造の防振用アクチュエータを提供することにある。
また、本発明は、そのような防振用アクチュエータを用いて構成された、改良された構造を有する能動型防振装置として、能動型防振用マウントおよび能動型防振用制振器を提供することも目的とする。
以下、前述の如き課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。また、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに限定されることなく、明細書全体および図面の記載、或いはそれらの記載から当業者が把握することの出来る発明思想に基づいて認識されるものであることが理解されるべきである。
(防振用アクチュエータに関する本発明の態様1)
すなわち、防振用アクチュエータに関する本発明の第1の態様は、略カップ形状のハウジングを備えた電磁式アクチュエータにおける該ハウジングの開口部側に出力部材が離隔配置されていると共に、該出力部材が該ハウジングに対して支持ゴム弾性体を介して弾性支持されており、該電磁式アクチュエータによる駆動力が該出力部材に及ぼされて該出力部材が該ハウジングの軸方向に加振せしめられるようになっている防振用アクチュエータにおいて、円筒形状の連結筒部を備えた筒状連結金具が前記出力部材の外周側に離隔配置されており、該連結筒部の内周面に前記支持ゴム弾性体の外周縁部が接着せしめられて該出力部材と該筒状連結金具が該支持ゴム弾性体で弾性連結されていると共に、該連結筒部の縮径によって該支持ゴム弾性体に予圧縮が及ぼされている一方、前記ハウジングの開口部に対してかしめ固定されるかしめ固定部を外周縁部に備えると共に中央部分に連結用孔を備えた金属製で円環形状の環状固定部材において、該環状固定部材の該連結用孔に該筒状連結金具の該連結筒部が直接に嵌め込まれて圧入固定されていると共に、該筒状連結金具が該連結筒部の少なくとも軸方向一方の端部で該環状固定部材に対して軸方向に重ね合わせられて、かかる軸方向の重ね合わせ部位にシールゴム層が介在せしめられることにより軸方向シール部が形成されていることを、特徴とする。
本態様に従う構造とされた防振用アクチュエータにおいては、支持ゴム弾性体の外周縁部に接着される筒状連結金具が円筒形状の連結筒部を備えていることによって、絞り加工を施すことが可能とされており、加硫成形後の残留歪が取り除かれた支持ゴム弾性体を用いることが出来て、耐久性を向上せしめることが出来る。更に、絞り加工によって筒状連結金具の径寸法が変化せしめられるが、筒状連結金具と環状固定部材は軸方向でシールされていることから、筒状連結金具の径寸法の変化の影響を受けることなく、高度なシール性を維持することが可能となる。
また、より大きな荷重に耐え得るためには、環状固定部材のみを厚肉化することで対応することが可能であり、出力部材と連結される筒状連結金具の形状を変化することなく、簡易に対荷重強度を向上することが出来るのである。なお、環状固定部材の材質としては、鋳物、樹脂等を採用することも可能である。
(防振用アクチュエータに関する本発明の態様2)
防振用アクチュエータに関する本発明の第2の態様は、前記態様1に係る防振用アクチュエータにおいて、前記筒状連結金具における前記連結筒部の軸方向一方の開口端部から外周側に広がるフランジ状部が一体形成されており、該連結筒部の軸方向他方の開口端部から前記環状固定部材における前記連結用孔に内挿されて組み付けられている一方、該環状固定部材における該連結用孔の軸方向一方の開口周縁部が該フランジ状部に対して軸方向で重ね合わせられており、かかる軸方向の重ね合わせ面間で前記シールゴム層が挟圧されることによって前記軸方向シール部が形成されていることを、特徴とする。
本態様に従う構造とされた防振用アクチュエータにおいては、筒状連結金具に形成されたフランジ状部に環状固定部材が重ね合わされていることから、フランジ状部によってシールゴム層を安定して挟圧することが出来る。また、筒状連結金具と環状固定部材が広い面積をもって重ね合わせられることから、これらの重ね合わせ状態が安定して維持される。なお、フランジ状部は、連結筒部の軸方向上方、下方の何れに形成されていても良い。
また、本態様における好ましい態様として、環状固定部材における連結用孔の軸方向一方の開口端部にも外周側に広がる環状当接部を一体形成して、環状当接部が筒状連結金具のフランジ状部に対して軸方向で重ね合わせられていると共に、それら環状当接部とフランジ状部の重ね合わせ面間でシールゴム層が挟圧されることにより軸方向シール部を形成した構造が例示される。このような態様によれば、シールゴム層に対する挟圧面積を有利に確保することが出来て、より高度なシール性を実現することが出来る。なお、このような態様においても、フランジ状部及び環状当接部は筒状連結金具及び環状固定部材における軸方向上下端部の何れに形成されていても良い。
(防振用アクチュエータに関する本発明の態様3)
防振用アクチュエータに関する本発明の第3の態様は、前記態様1又は2に係る防振用アクチュエータにおいて、前記筒状連結金具における前記連結筒部の軸方向一方の開口端部から外周側に広がるフランジ状部が一体形成されており、該連結筒部の軸方向他方の開口端縁部側から前記環状固定部材における前記連結用孔に内挿されて組み付けられていると共に、該連結筒部の軸方向他方の開口端部が外周側にかしめ加工されて外周側に突出する環状かしめ部が一体形成されて、該筒状連結金具における該フランジ状部と該環状かしめ部の間で該環状固定部材の内周縁部が軸方向で挟固定されており、該環状固定部材の内周縁部の軸方向両端部に対する該フランジ状部と該環状かしめ部の少なくとも一方の軸方向重ね合わせ面間で前記シールゴム層が挟圧されることによって前記軸方向シール部が形成されていることを、特徴とする。
本態様に従う構造とされた防振用アクチュエータにおいては、環状固定部材が軸方向上下から挟持固定されることによって、筒状連結金具と環状固定部材の重ね合わせ状態がより強固に維持されることとなる。そして、これらの重ね合わせ状態が強固に維持されることによって、シールゴム層の挟圧状態も強固に維持されて、高度なシール性を得ることが出来る。なお、本態様においても、筒状連結金具におけるフランジ状部と環状かしめ部は、軸方向上下の何れに形成しても良い。
また、本態様においても、前述のように、環状固定部材における連結用孔の軸方向一方の開口端部にも外周側に広がる環状当接部を一体形成して、筒状連結金具のフランジ状部乃至は環状かしめ部とそれぞれ重ね合わせることも可能である。このような態様によれば、筒状連結金具及び環状固定部材の軸方向上下両端面がともに広い面積をもって重ね合わされて、互いの部材がより安定して組み付けられる。
(防振用アクチュエータに関する本発明の態様4)
防振用アクチュエータに関する本発明の第4の態様は、前記態様1乃至3の何れかに係る防振用アクチュエータにおいて、前記シールゴム層が、前記支持ゴム弾性体と一体成形されていることを、特徴とする。本態様に従う構造とされた防振用アクチュエータにおいては、シールゴム層としての部材を別途用意する必要も無くなり、本発明に従う構造とされた防振用アクチュエータを容易に得ることが出来る。
(防振用アクチュエータに関する本発明の態様5)
防振用アクチュエータに関する本発明の第5の態様は、前記態様1乃至4の何れかに係る防振用アクチュエータにおいて、前記環状固定部材の前記ハウジングとの対向面間に、該環状固定部材と該ハウジングとの間を流体密にシールする封止ゴムが被着形成されていると共に、前記シールゴム層が該封止ゴムと一体形成されていることを、特徴とする。本態様に従う構造とされた防振用アクチュエータにおいては、環状固定部材とハウジング内部とのシール性を確保しつつ、環状固定部材と筒状連結金具とのシール性を得ることが出来る。また、環状固定部材とハウジングとの間にシールゴム層が介在せしめられることによって、環状固定部材に及ぼされる振動のハウジングへの伝達を軽減することが出来る。
(防振用アクチュエータに関する本発明の態様6)
防振用アクチュエータに関する本発明の第6の態様は、前記態様1乃至5の何れかに係る防振用アクチュエータにおいて、前記環状固定部材として、円環板形状を有すると共に内周縁部に円筒形状の嵌着筒部が一体形成された環状固定金具を採用して、該嵌着筒部の内孔によって前記連結用孔を形成したことを、特徴とする。本態様に従う構造とされた防振用アクチュエータにおいては、円環板形状を有する環状固定金具を用いたことによって、部材の軽量化が図られる。
(防振用アクチュエータに関する本発明の態様7)
防振用アクチュエータに関する本発明の第7の態様は、前記態様1乃至6の何れかに係る防振用アクチュエータにおいて、前記連結筒部が絞り加工されることにより、前記支持ゴム弾性体に予圧縮が及ぼされていることを、特徴とする。本態様に従う構造とされた防振用アクチュエータにおいては、連結筒部に絞り加工が施されることによって、支持ゴム弾性体の成形時の残留歪が取り除かれて、支持ゴム弾性体の耐久性を向上し得る。そして、連結筒部に絞り加工が施されて、筒状連結金具の径寸法が変化した場合でも、筒状連結金具と環状固定部材は軸方向でシールされていることから、かかる径寸法の変化が有効に吸収されて、シール性を維持することが出来る。
(能動形防振用マウントに関する本発明)
能動形防振用マウントに関する本発明は、相互に連結されることにより振動伝達系を構成する一方の部材に取り付けられる第一の取付部材と他方の部材に取り付けられる第二の取付部材を本体ゴム弾性体で連結する一方、該本体ゴム弾性体によって壁部の一部が構成されて非圧縮性流体が封入された受圧室を形成すると共に、該受圧室の壁部の別の一部を加振部材で構成し、該加振部材に加振力を及ぼすアクチュエータを設けて、該アクチュエータで該加振部材を加振駆動することにより該受圧室の圧力を能動的に制御するようにした能動型防振用マウントにおいて、前記アクチュエータとして上述の如き防振用アクチュエータに関する本発明の態様1乃至7の何れかの態様に係る防振用アクチュエータを用い、該防振用アクチュエータにおける前記ハウジングを前記第二の取付部材に固定する一方、前記出力部材によって前記加振部材を構成したことを、特徴とする。このような本発明に従えば、例えば自動車用エンジンマウント等に好適に採用され得る能動型防振用マウントが有利に実現され得る。
(能動形防振用制振器に関する本発明)
能動形防振用制振器に関する本発明は、防振対象部材に装着されることにより、該防振対象部材に加振力を及ぼして能動的な制振作用を発揮する能動型防振用制振器であって、前記防振用アクチュエータに関する本発明の態様1乃至7の何れかの態様に係る防振用アクチュエータを用い、該防振用アクチュエータにおける前記ハウジングと前記出力部材の一方において前記防振対象部材に固定するための取付部を設ける一方、それらハウジングと出力部材の他方にマス部を設けたことを、特徴とする。このような本発明に従えば、例えば自動車のボデー用制振器等に好適に採用され得る能動型防振用制振器が有利に実現され得る。
上述の説明から明らかなように、本発明に従う構造とされた防振用アクチュエータにおいては、予圧縮が及ぼされた支持ゴム弾性体を介して出力部材と弾性連結される筒状連結金具と、ハウジングに対してかしめ固定される環状固定部材を軸方向で重ね合わせて、かかる重ね合わせ部位にシールゴム層を介在せしめて軸方向にシールすることによって、高度なシール性を維持しつつ、防振用アクチュエータの耐久性を向上することが出来るのである。
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
先ず、図1には、能動型防振用マウントに関する本発明の第一の実施形態としての自動車用エンジンマウント10が示されている。このエンジンマウント10は、第一の取付部材としての第一の取付金具12と第二の取付部材としての第二の取付金具14が本体ゴム弾性体16によって弾性的に連結された構造とされており、第一の取付金具12が図示しない自動車のパワーユニットに取り付けられる一方、第二の取付金具14が図示しない自動車のボデーに取り付けられることにより、パワーユニットをボデーに対して防振支持するようになっている。また、そのような装着状態下、第一の取付金具12と第二の取付金具14の間には、パワーユニットの分担荷重と、防振すべき主たる振動が、何れも、エンジンマウント10の略軸方向(図1中、上下方向)に入力されるようになっている。なお、以下の説明中、上下方向とは、原則として、図1中の上下方向を言うものとする。
より詳細には、第一の取付金具12は、本体ゴムインナ金具18とダイヤフラムインナ金具20によって構成されていると共に、第二の取付金具14は、本体ゴムアウタ筒金具22とダイヤフラムアウタ筒金具24によって構成されている。そして、本体ゴム弾性体16に対して本体ゴムインナ金具18と本体ゴムアウタ筒金具22が加硫接着されて第一の一体加硫成形品28とされている一方、ダイヤフラムインナ金具20とダイヤフラムアウタ筒金具24が、可撓性膜としてのダイヤフラム30に対して加硫接着されて第二の一体加硫成形品32とされており、これら第一及び第二の一体加硫成形品28,32が相互に組み合わされている。
ここにおいて、第一の一体加硫成形品28を構成する本体ゴムインナ金具18は、逆向きの略円錐台形状を有している。また、本体ゴムインナ金具18の上端面(大径側端面)には、嵌合凹部34が形成されていると共に、該嵌合凹部34の底面に開口するねじ穴38が設けられている。
更にまた、本体ゴムアウタ筒金具22は、略大径円筒形状を有する筒壁部40を備えており、この筒壁部40の軸方向下端部には径方向外方に向かって広がるフランジ状部42が一体形成されている一方、筒壁部40の軸方向上端部分は、軸方向上方に行くに従って次第に拡開するテーパ筒状部44とされている。これによって、本体ゴムアウタ筒金具22の外周側には、外周面に開口して周方向に一周弱の長さで延びる周溝45が形成されている。そして、本体ゴムアウタ筒金具22の上方に離隔して、本体ゴムインナ金具18が略同一中心軸上で離隔配置されており、本体ゴムインナ金具18における逆テーパ形状の外周面と本体ゴムアウタ筒金具22におけるテーパ筒状部44の内周面が相互に離隔して対向位置せしめられており、これら本体ゴムインナ金具18と本体ゴムアウタ筒金具22との対向面間が、本体ゴム弾性体16によって弾性的に連結されている。
かかる本体ゴム弾性体16は、全体として大径の円錐台形状を有しており、その中央部分には、本体ゴムインナ金具18が同軸的に配されて加硫接着されていると共に、その大径側端部外周面に対して本体ゴムアウタ筒金具22のテーパ筒状部44が重ね合わせられて加硫接着されている。これによって、本体ゴム弾性体16が、上述の如き本体ゴムインナ金具18および本体ゴムアウタ筒金具22を備えた第一の一体加硫成形品28として形成されている。
また一方、第二の一体加硫成形品32を構成するダイヤフラムインナ金具20は、厚肉の円板形状を有している。また、ダイヤフラムインナ金具20の下面には、嵌合凸部46が形成されていると共に、該嵌合凸部46の形成部位を貫通して挿通孔52が形成されている。更にダイヤフラムインナ金具20には、上方に突出して取付板部58が一体形成されており、取付板部58の中央部分にはボルト挿通孔59が設けられている。
また、ダイヤフラムアウタ筒金具24は、薄肉大径の円筒形状を有しており、その軸方向上側の開口部には、径方向外方に向かって広がる取付用板部62が一体形成されている。なお、取付用板部62には、複数の挿通孔が形成されており、それらの挿通孔に対してそれぞれ固定ボルト64が圧入されて植設されている。更にまた、ダイヤフラムアウタ筒金具24の軸方向下側の開口部には、径方向外方に向かって広がる円環板形状のフランジ状部66が一体形成されており、更に、フランジ状部66の外周縁部には、軸方向下方に向かって突出する円環状のかしめ筒部68が一体形成されている。
そして、ダイヤフラムアウタ筒金具24の軸方向上方に離隔して、ダイヤフラムインナ金具20が、略同一中心軸上に配設されており、それらダイヤフラムインナ金具20とダイヤフラムアウタ筒金具24が、ダイヤフラム30によって連結されている。
ダイヤフラム30は、薄肉のゴム膜によって形成されており、容易に弾性変形が許容されるように大きな弛みを持った湾曲断面形状をもって周方向に延びる略円環形状を有している。そして、ダイヤフラム30の内周縁部が、ダイヤフラムインナ金具20の外周縁部に対して加硫接着されていると共に、ダイヤフラム30の外周縁部が、ダイヤフラムアウタ筒金具24の軸方向上側の開口部に加硫接着されている。これにより、ダイヤフラム30は、ダイヤフラムインナ金具20およびダイヤフラムアウタ筒金具24を備えた第二の一体加硫成形品32として形成されている。
而して、かかる第二の一体加硫成形品32が、前述の第一の一体加硫成形品28に対して上方から重ね合わせられて組み付けられており、ダイヤフラムインナ金具20が本体ゴムインナ金具18に固着されていると共に、ダイヤフラムアウタ筒金具24が本体ゴムアウタ筒金具22に固着されており、更にダイヤフラム30が、本体ゴム弾性体16の外方に離隔して、本体ゴム弾性体16の外周面を全体に亘って覆うようにして配設されている。
すなわち、ダイヤフラムインナ金具20が本体ゴムインナ金具18の上面に直接に重ね合わされて、ダイヤフラムインナ金具20の嵌合凸部46が本体ゴムインナ金具18の嵌合凹部34に嵌め込まれることによって、ダイヤフラムインナ金具20と本体ゴムインナ金具18が同一中心軸上に位置合わせされている。また、特に本実施形態では、嵌合凸部46と嵌合凹部34の各外周面に切欠状に形成された係合外周面50と係合内周面36の係合作用によって、ダイヤフラムインナ金具20と本体ゴムインナ金具18が周方向でも相互に位置決めされており、ダイヤフラムインナ金具20の挿通孔52と本体ゴムインナ金具18のねじ穴38が位置合わせされている。
そして、図1に示されているように、本体ゴムインナ金具18とダイヤフラムインナ金具20を重ね合わせた状態下で、連結ボルト70が、ダイヤフラムインナ金具20の挿通孔52を通じて本体ゴムインナ金具18のねじ穴38に螺着されている。而して、これら本体ゴムインナ金具18とダイヤフラムインナ金具20が連結ボルト70で連結固定されることにより、第一の取付金具12が構成されている。
一方、ダイヤフラムアウタ筒金具24は本体ゴムアウタ筒金具22に対して軸方向上方から外挿されている。また、本体ゴムアウタ筒金具22は、その下端部において、フランジ状部42の外周縁部がダイヤフラムアウタ筒金具24のフランジ状部66に対して軸方向に重ね合わされていると共に、その上端部において、テーパ筒状部44の開口端縁部がダイヤフラムアウタ筒金具24の内周面に対して径方向で重ね合わされている。
そして、本体ゴムアウタ筒金具22のフランジ状部42の外周縁部に対して、ダイヤフラムアウタ筒金具24のかしめ筒部68がかしめ固定されることによって、本体ゴムアウタ筒金具22とダイヤフラムアウタ筒金具24が相互に固定されて組み付けられている。なお、これら本体ゴムアウタ筒金具22の上下両端部におけるダイヤフラムアウタ筒金具24との重ね合わせ部位には、それぞれ、本体ゴム弾性体16またはダイヤフラム30と一体成形されたシールゴムが介在されており、流体密にシールされている。これにより、本体ゴムアウタ筒金具22に形成された周溝45がダイヤフラムアウタ筒金具24で流体密に覆蓋されており、もって、本体ゴムアウタ筒金具22の筒壁部40とダイヤフラムアウタ筒金具24の径方向対向面間を周方向に所定長さで乃至は全周に亘って連続して延びる環状通路72が形成されている。
さらに、本体ゴムアウタ筒金具22の下側開口部には、仕切板金具74と蓋部材76が組み付けられている。蓋部材76は、環状固定部材を構成する環状固定金具としての環状保持金具82に対して、出力部材としての加振板80を備えた支持部材89が嵌め入れられて構成されている。
より詳細には、支持部材89は、略円環板形状の支持ゴム弾性体78に対して、その中央部分に加振板80が加硫接着されていると共に、その外周部分に筒状連結金具としての連結筒金具88が加硫接着されており、それら加振板80と連結筒金具88が支持ゴム弾性体78で弾性的に連結されている。
支持部材89の中央部分に位置する加振板80は、円板形状を有しており、その外周縁部には上方に向かって突出する環状連結部84が一体形成されている。また、加振板80の中央部分には、下方に向かって延びる駆動軸86が一体形成されており、この駆動軸86の先端部分が雄ねじとされている。なお、加振板80は、環状連結部84や駆動軸86を含んで、金属や合成樹脂等の硬質材で一体成形されている。
一方、支持部材89の外周部分に位置する連結筒金具88は、図2に示すように、円筒形状を有する連結筒部108の下端縁部において外方に広がるフランジ状部としての当接部92が形成された逆カップ形状とされている。
そして、連結筒金具88の径方向内方に離隔して略同一中心軸上に加振板80が配設されており、これら連結筒金具88と加振板80の径方向対向面間に広がるようにして支持ゴム弾性体78が配設されている。また、かかる支持ゴム弾性体78は、その内外周縁部が加振板80の環状連結部84と連結筒金具88の連結筒部108の対向面に対してそれぞれ加硫接着されており、加振板80と連結筒金具88の間が支持ゴム弾性体78で流体密に閉塞されている。
さらに、支持ゴム弾性体78は、加振板80と連結筒金具88を有する一体加硫成形品として形成されており、その加硫成形後に予圧縮が加えられている。即ち、支持ゴム弾性体78の一体加硫成形品には、連結筒金具88に対して八方絞りや十六方絞りなどの適当なジグを用いた公知の絞り加工が施されて連結筒金具88が所定量だけ縮径されており、それによって、支持ゴム弾性体78に対して、成形に伴う残留歪の除去と径方向の所定量の予圧縮による耐久性の向上が施されている。
なお、支持ゴム弾性体78に対する予圧縮の量は、特に限定されるものでないが、好適には3〜14%の径方向縮径率で予圧縮が加えられることとなり、それによって、目的とする残留歪の除去とばね特性および耐久性の向上が、一層高度に実現可能となる。
また、加振板80の環状連結部84の付近には、環状連結部84を覆う形でストッパゴム98が形成されており、加振板80の仕切板金具74への接近方向の移動量が緩衝的に制限されると共に、当接時の衝撃や打ち当たり音が軽減されている。更に、本実施形態においては、支持ゴム弾性体78が連結筒金具88に貫設された貫通孔を通じて当接部92の上方に被着されることによって、シールゴム層109が支持ゴム弾性体78と一体形成されている。
一方、支持部材89が嵌め入れられる環状保持金具82は、円筒形状を有する嵌着筒部111の上下開口部に対してそれぞれフランジ状に広がる取付板部90と押圧部115が一体形成されており、取付板部90の外周縁部には、更に下方に突出する円環状のかしめ固定部としての圧入部94が一体形成されている。
そして、環状保持金具82の嵌着筒部111の連結用孔117に連結筒金具88が嵌め入れられることによって、環状保持金具82と支持部材89が連結されて、蓋部材76とされている。
また、仕切板金具74は、薄肉の円板形状を有しており、その外径寸法が、環状保持金具82における取付板部90の径方向中間部分まで至る大きさとされている。また、仕切板金具74の中央部分は、略台地状に上方に突出せしめられていると共に、その中心軸上にオリフィス通孔96が貫設されている。
そして、仕切板金具74は、ダイヤフラムアウタ筒金具24の下側開口部において、そこに組み付けられた本体ゴムアウタ筒金具22のフランジ状部42に対して外周縁部が重ね合わされて組み付けられている。更に、ダイヤフラムアウタ筒金具24の下側開口部には、仕切板金具74の下方から蓋部材76が組み付けられており、蓋部材76における環状保持金具82の取付板部90が、本体ゴムアウタ筒金具22と仕切板金具74に重ね合わされて、それぞれの外周縁部がダイヤフラムアウタ筒金具24のかしめ筒部68によってかしめ固定されている。
これにより、ダイヤフラムアウタ筒金具24の下側開口部が、蓋部材76で流体密に覆蓋されており、もって、本体ゴム弾性体16と蓋部材76の対向面間には、非圧縮性流体が封入された受圧室100が形成されている。この受圧室100は、壁部の一部が本体ゴム弾性体16で構成されており、第一の取付金具12と第二の取付金具14の間への振動入力時に本体ゴム弾性体16の弾性変形に基づいて振動が入力されて圧力変動が惹起されるようになっている。
また、受圧室100には、仕切板金具74が配設されており、受圧室100が、仕切板金具74を挟んで、本体ゴム弾性体16側の振動入力室102と、蓋部材76側の加振室104に二分されていると共に、これら振動入力室102と加振室104がオリフィス通孔96で連通せしめられている。
更にまた、本体ゴム弾性体16とダイヤフラム30が、それぞれの内周縁部と外周縁部において第一の取付金具12と第二の取付金具14に固着されることにより、本体ゴム弾性体16とダイヤフラム30の対向面間には、非圧縮性流体が封入された平衡室106が形成されている。即ち、この平衡室106は、壁部の一部が変形容易なダイヤフラム30で構成されており、ダイヤフラム30の弾性変形に基づいて容易に容積変化が許容されるようになっているのである。なお、受圧室100や平衡室106に封入される非圧縮性流体としては、後述するオリフィス通路112を通じて流動せしめられる流体の共振作用に基づく防振効果を自動車用のエンジンマウント10に要求される振動周波数域で効率的に得るために、一般に、0.1Pa.s以下の低粘性流体が好適に採用される。
さらに、受圧室100と上側に形成された平衡室106は、第二の取付金具14内に形成された環状通路72が、その周方向一方の端部に形成された連通孔110と、周方向他端部において本体ゴム弾性体16に形成された連通孔107を通じて接続されており、それによって、受圧室100と平衡室106を相互に連通せしめて両室100,106間での流体流動を許容するオリフィス通路112が所定長さで形成されている。なお、オリフィス通路112は、振動入力時に受圧室100と平衡室106の間に惹起される圧力差に基づいて内部を流動せしめられる流体の共振作用に基づく防振効果が、例えばアイドリング振動等の特定の周波数域で有効に発揮されるように、その通路断面積や通路長さが適当に設定されてチューニングされている。
また一方、蓋部材76を挟んで受圧室100と反対側には、電磁式アクチュエータとしての電磁加振器114が配設されている。この電磁加振器114は、略カップ形状のハウジング116にコイル118が収容状態で固定的に組み付けられていると共に、コイル118の周りには、それぞれ環状の強磁性体からなるヨーク120,122が固定的に組み付けられて磁路が形成されている。また、磁路を形成するヨーク120には中央を貫通する案内孔としての筒状内周面138が形成されており、かかる筒状内周面138には、ガイドスリーブ124が弾性的に位置決めされて装着されている。そして、アーマチャとしての強磁性体からなる滑動子126が、ガイドスリーブ124内を滑動可能に組み付けられている。
滑動子126は、磁路を形成するヨーク120,122間に形成された磁気ギャップの領域に配設されており、コイル118に通電することにより磁力が及ぼされて、ガイドスリーブ124で案内されつつ軸方向に駆動されるようになっている。また、滑動子126は、全体として略円筒形状を有しており、外周面においてガイドスリーブ124に摺動可能とされている一方、内周面には、環状の係合突部128が内方に向かって突出形成されている。
そして、電磁加振器114は、ハウジング116の開口周縁部に形成されたフランジ部130が、蓋部材76における環状保持金具82の取付板部90に重ね合わされて、環状保持金具82等と共に、かしめ筒部68で第二の取付金具14にかしめ固定されている。これにより、電磁加振器114は、その滑動子126の滑動中心軸が、第一及び第二の取付金具12,14の中心軸に略一致するように組み付けられている。
また、このように組み付けられた電磁加振器114には、その中心軸上で上方から加振板80の駆動軸86が差し入れられており、この駆動軸86が、滑動子126の係合突部128に挿通されている。更に、駆動軸86にはコイルスプリング132が外挿されて、加振板80と滑動子126の係合突部128の対向面間に跨がって配設されていると共に、駆動軸86の係合突部128に挿通された先端部分には位置決めナット134が螺着されている。そして、位置決めナット134を駆動軸86にねじ込み、滑動子126の係合突部128を介して、加振板80との間でコイルスプリング132を圧縮せしめることにより、駆動軸86に対して滑動子126が軸方向で固定的に位置決めされている。なお、本実施形態においては、コイルスプリング132の両端には、カラー部材150が冠着されて、コイルスプリング132と他部材との擦れによる磨耗を軽減している。而して、駆動軸86と滑動子126は、コイルスプリング132の付勢力で軸方向において実質的に固着状態で連結されて、コイル118への通電で滑動子126に作用せしめられる駆動力が駆動軸86に及ぼされるようになっている。また、このことから明らかなように、本実施形態では、滑動子126と駆動軸86を含んでガイドロッドが構成されている。
要するに、位置決めナット134の駆動軸86へのねじ込み量を調節することにより、第二の取付金具14に対して支持ゴム弾性体78で弾性的に位置決め支持された加振板80に対して滑動子126の取付位置を軸方向に変更設定することが出来るのであり、それによって、滑動子126のヨーク122に対する磁力作用対向面間の距離を微調節することが可能となっているのである。また、本実施形態では、位置決めナット134に対して軸方向下側からロックボルト136が締め込まれており、位置決めナット134のねじ穴内でロックボルト136が駆動軸86の先端に当接されていることによって、駆動軸86に対する位置決めナット134の締付位置がロックされるようになっている。
なお、位置決めナット134の外周縁部と滑動子126との対向面間には僅かな間隙が形成されており、滑動子126は駆動軸86に対して軸直角方向の滑り変位が許容される状態で位置決めナット134と重ね合わされて当接状態に保持されている。これにより、各部材の製造上の寸法誤差や組み付け時の位置決め誤差等に起因する駆動軸86と滑動子126との相対的な位置ずれを有利に吸収することが出来て、滑動子126をコイル118に対して軸直方向にも安定して位置決めすることが出来る。また、アクチュエータ作動時における一時的な軸ずれも有利に吸収されることとなって、安定した作動特性を得ることが出来るのである。なお、かかる軸直角方向の相対変位の許容量としては、0.2mm〜3mmの範囲が好適に採用される。
そして、電磁加振器114のハウジング116の底壁部中央には、透孔140が貫設されており、滑動子126に対向位置せしめられて磁力を及ぼすヨーク122が外部に露呈されていると共に、ヨーク122の中心孔142を通じて、滑動子126が配設された電磁加振器114の内部空間が、直接に外部に開口せしめられるようになっている。そして、この開口部を通じてヨーク122の中心孔142の開口部に六角レンチ等の工具を差し入れることにより、上述のロックボルト136や位置決めナット134を操作して、滑動子126の位置を外部から調節することが出来るようにされている。
また、図3に示すように、ヨーク122の中心孔142は、開口部近くが拡径されて大径部143とされており、開口部の軸方向内方に位置して環状段差部としての段差面144が形成されている。また、大径部143の内周面には、周方向に連続して延びる環状の係止溝146が形成されている。そして、かかる大径部143には、蓋板金具148が組み付けられている。
この蓋板金具148は、円板形状を有しており、一方の面には略全面に亘ってゴム層151が形成されて加硫接着されている。このゴム層151は、中央部分の当接ゴム部152と、該当接ゴム部152よりも僅かに厚肉とされた外周部分の環状シールゴム部154から形成されている。そして、蓋板金具148がヨーク122の大径部143に嵌め込まれていると共に、蓋板金具148の外側からC形止め輪155が大径部143に嵌め込まれて係止溝146に係止装着されている。
これにより、蓋板金具148の外面がC形止め輪155で押し付けられて、蓋板金具148の外周部分が、段差面144に対して、環状シールゴム部154を介して当接されており、以て、電磁加振器114のヨーク122に形成された中心孔142が、その開口部に形成された大径部143において流体密に覆蓋されている。また、蓋板金具148の中央部分は、加振板80の駆動軸86の先端に螺着された位置決めナット134の先端面に対して軸方向下方に所定距離を隔てて対向位置せしめられている。これにより、第一の取付金具12と第二の取付金具14の間に大きな振動荷重が入力されて振動作用室100に過大な圧力が惹起された場合等において、位置決めナット134が当接ゴム部152を介して蓋板金具148に当接することにより、加振板80の変位量が緩衝的に制限されるようになっている。
また、電磁加振器114には、更に筒形ブラケット156が外挿されて組み付けられている。筒形ブラケット156は、上端開口部にフランジ状部158を有しており、このフランジ状部158が、本体ゴムアウタ筒金具22のフランジ状部42や環状保持金具82の取付板部90,ハウジング116のフランジ部130と共に、ダイヤフラムアウタ筒金具24に対してかしめ筒部68でかしめ固定されている。また、筒形ブラケット156の下端開口部には取付板部160が形成されており、この取付板部160に対して複数の取付用孔(図示せず)が形成されている。
ところで、上述の如き構造とされたエンジンマウント10は、有利には、本体ゴム弾性体16からなる第一の一体加硫成形品28とダイヤフラム30からなる第二の一体加硫成形品32を組み合わせた組付体に対して、非圧縮性流体中において仕切板金具74と蓋部材76を組み付け、蓋部材76の圧入部94を第二の取付金具14のかしめ筒部68に圧入することにより第二の取付金具14の下側開口を閉塞せしめて受圧室100(振動入力室102および加振室104)と平衡室106を形成すると同時に、それら各室に非圧縮性流体を封入する。そこにおいて、圧入部94は、取付板部90の外周縁部から下方に向かって筒状に突設されていることから、かしめ筒部68に対する圧入面積が有利に確保され得る。そして、このようにして非圧縮性流体を充填した後に流体中から取り出し、大気中で、コイル118等を予め組み付けて別途に準備した電磁加振器114のハウジング116を蓋部材76の外側から組み付けて、該ハウジング116のフランジ部130を蓋部材76の取付板部90に重ね合わせ、更にその外側から筒形ブラケット156を外挿せしめて、そのフランジ状部158をハウジング116のフランジ部130に重ね合わせる。その後、第二の取付金具14のカシメ筒部68をかしめ加工することにより、フランジ状部66に重ね合わされた仕切板金具74、蓋部材76、電磁加振器114のハウジング116、筒形ブラケット156を、軸方向にまとめてかしめ固定することにより、目的とするエンジンマウント10を得る。
そこにおいて、蓋部材76における連結筒金具88の当接部92と、環状保持金具82の押圧部115が軸方向で重ね合わされて、当接部92上に形成されたシールゴム層109が、これら当接部92と押圧部115によって軸方向に挟圧されることにより、連結筒金具88と環状保持金具82の重ね合わせ部位において軸方向シール部が形成されている。なお、当接部92の上面に形成されたシールゴム層109は、当接部92の略中央部分に至る程度の寸法で形成されていることから、当接部92の外周縁部は環状保持金具82の押圧部115と直接に当接している。
さらに、環状保持金具82の取付板部90の下面には、封止ゴムとしての圧縮ゴム162が被着形成されている。圧縮ゴム162は、取付板部90とハウジング116のフランジ部130の間で軸方向に挟圧されている。これにより、ハウジング116のフランジ部130には、第二の取付金具14の段差部66とかしめ筒部68による軸方向のかしめ力が弾性的に及ぼされており、第二の取付金具14に対して弾性的に連結支持せしめられていることによって、第二の取付金具14や筒形ブラケット156に入力される振動の電磁加振器114への伝達が軽減されて耐久性の向上等が図られるようになっている。なお、大きな荷重が及ぼされる第二の取付金具14と筒形ブラケット156は、取付板部90(圧入部94)を介しての金属同士の直接的なかしめ固定によって強固に連結固定されている。
また、本実施形態においては、連結筒金具88の当接部92の下面にもシールゴム164が、支持ゴム弾性体78と一体的に被着形成されており、このシールゴム164がヨーク部材120の上面に圧接されていることにより、電磁加振器114の特に微小な隙間寸法をもって滑動変位せしめられる作動空間が、前述のヨーク122の中心孔142における蓋板金具148と環状シールゴム部154による封止構造と協働して、シールされるようになっている。
而して、上述の如き構造とされたエンジンマウント10は、図示されていないが、第一の取付金具12の取付板部58が、ボルト挿通孔59に挿通される固定ボルトでパワーユニットに取り付けられる一方、第二の取付金具14が、筒形ブラケット156を介して固定ボルトで自動車ボデーに取り付けられることにより、パワーユニットとボデーの間に装着されることとなる。そして、かかる装着状態下、第一の取付金具12と第二の取付金具14の間に振動が入力されると、本体ゴム弾性体16の弾性変形に伴って受圧室100と平衡室106の間に惹起される圧力差に基づいてオリフィス通路112を通じて流体流動が生ぜしめられて、かかる流体の共振作用等の流動作用に基づいて受動的な防振効果が発揮される。また、防振すべき振動に応じた周波数や位相でコイル118への通電を制御して電磁加振器114で加振板80を加振駆動せしめることにより、加振室104からオリフィス通孔96を通じて振動入力室102に圧力変動を及ぼし、振動入力室102の圧力変動を能動制御することにより入力振動に対して能動的な防振効果を得ることが出来るのである。
ここにおいて、本発明に従う構造とされたエンジンマウント10においては、連結筒金具88の縮径によって加硫成形後の残留歪が取り除かれて、耐久性が向上せしめられた支持ゴム弾性体78を用いたことによって、電磁加振器114の耐久性が向上せしめられている。そして、縮径によって連結筒金具88の径寸法が変化した場合でも、環状保持金具82との間は軸方向でシールされていることによって、かかる径寸法変化の影響を受けることなく、高度なシール性を維持することが可能となるのである。
以上、本発明の一実施形態について詳述してきたが、これはあくまでも例示であって、本発明は、かかる実施形態における具体的な記載によって、何等、限定的に解釈されるものではない。
例えば、連結筒金具88と環状保持金具82との連結態様や軸方向シール部の具体的態様については当業者の判断において適宜に各種の態様が採用可能であり、図4に示す第二の実施形態のように、支持ゴム弾性体78の外周に接着される連結筒金具88の下端縁部をフランジ状部としての当接部92とする一方で、上端の開口部が外周側にかしめ加工されて外周側に突出する環状かしめ部168として、かかる当接部92と環状かしめ部168によって環状保持金具82の嵌着筒部111を軸方向に挟持固定すると共に、取付板部90と環状かしめ部168の間にシールゴム170を介在せしめて軸方向シール部を形成するなどしても良い。なお、シールゴム170は、前述の圧縮ゴム162を取付板部90に貫設した通孔から突出せしめて圧縮ゴム162と一体形成することが出来る。このような態様によれば、連結筒金具88と環状保持金具82をより強固に連結することが出来る。なお、図4及び後述する図5に示す各実施形態において、第一の実施形態と同様な構造とされた部材および部位については、それぞれ、図中に、第一の実施形態と同一の符号を付することにより、それらの詳細な説明を省略する。
また、図5に示す第三の実施形態のように、支持ゴム弾性体78を、連結筒金具88の環状かしめ部168に回り込ませることによってシールゴム172を形成して、かかるシールゴム172を取付板部90と環状かしめ部168との間で挟圧することによって軸方向シール部を形成しても良い。このような態様によれば、仕切板金具74と連結筒金具88の間をゴム弾性体であるシールゴム172で封止することから、加振室104をより高度にシールすることが出来る。
なお、本発明は、例示の如き形状の自動車用エンジンマウントに限らず、所謂筒形マウント等にも適用可能であるし、自動車用のボデーマウントやメンバマウント等、或いは自動車以外の各種装置におけるマウントや制振器などの防振装置や、そのような防振装置に用いられる防振用アクチュエータに対して、同様に適用可能である。
例えば、本発明を適用した能動型制振器としては、具体的には、第一の実施形態に示された電磁加振器114を、第一及び第二の一体加硫成形品28,32から独立して単体で用いて、そのハウジング116の開口部に蓋部材76を組み付け、環状保持金具82における取付板部90をハウジング116のフランジ部130にかしめ固定することによって構成される。即ち、このようにして構成された制振器にあっては、加振板80を取付部として制振すべき振動部材に対して固定的に取り付けて、コイル118を含むハウジング116を、振動部材に対して支持ゴム弾性体78を介して弾性的に連結支持せしめることにより、コイル118を含むハウジング116を、コイル118への通電によって振動部材に対して能動加振されるマスとして作用せしめることが出来るのである。
また、前記実施形態では、何れも、環状固定部材として、嵌着筒部111を備えたプレス成形金具である環状保持金具82が採用されていたが、かかる環状固定部材として、アルミニウム合金等のダイキャスト成形金具を採用することも可能である。そこにおいて、例えば、環状固定部材を全体として厚肉円環板形状と為し、連結用孔の軸方向長さを確保できる程度の厚さ寸法を設定できれば、前記実施形態における嵌着筒部111のような筒部は、必ずしも設ける必要がない。
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更,修正,改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
本発明の第一の実施形態としてのエンジンマウントを示す縦断面図である。 図1に示されたエンジンマウントにおける蓋部材の外周部分を示す要部拡大図である。 図1に示されたエンジンマウントにおける蓋板金具を示す要部拡大図である。 本発明の第二の実施形態としての蓋部材の外周部分を示す要部拡大図である。 本発明の第三の実施形態としての蓋部材の外周部分を示す要部拡大図である。
符号の説明
10 エンジンマウント
12 第一の取付金具
14 第二の取付金具
16 本体ゴム弾性体
68 かしめ筒部
76 蓋部材
78 支持ゴム弾性体
80 加振板
82 環状保持金具
88 連結筒金具
89 支持部材
100 受圧室
102 振動入力室
104 加振室
106 平衡室
109 シールゴム層
116 ハウジング
162 圧縮ゴム
164 シールゴム

Claims (10)

  1. 略カップ形状のハウジングを備えた電磁式アクチュエータにおける該ハウジングの開口部側に出力部材が離隔配置されていると共に、該出力部材が該ハウジングに対して支持ゴム弾性体を介して弾性支持されており、該電磁式アクチュエータによる駆動力が該出力部材に及ぼされて該出力部材が該ハウジングの軸方向に加振せしめられるようになっている防振用アクチュエータにおいて、
    円筒形状の連結筒部を備えた筒状連結金具が前記出力部材の外周側に離隔配置されており、該連結筒部の内周面に前記支持ゴム弾性体の外周縁部が接着せしめられて該出力部材と該筒状連結金具が該支持ゴム弾性体で弾性連結されていると共に、該連結筒部の縮径によって該支持ゴム弾性体に予圧縮が及ぼされている一方、前記ハウジングの開口部に対してかしめ固定されるかしめ固定部を外周縁部に備えると共に中央部分に連結用孔を備えた金属製で円環形状の環状固定部材において、該環状固定部材の該連結用孔に該筒状連結金具の該連結筒部が直接に嵌め込まれて圧入固定されていると共に、該筒状連結金具が該連結筒部の少なくとも軸方向一方の端部で該環状固定部材に対して軸方向に重ね合わせられて、かかる軸方向の重ね合わせ部位にシールゴム層が介在せしめられることにより軸方向シール部が形成されていることを特徴とする防振用アクチュエータ。
  2. 前記筒状連結金具における前記連結筒部の軸方向一方の開口端部から外周側に広がるフランジ状部が一体形成されており、該連結筒部の軸方向他方の開口端部から前記環状固定部材における前記連結用孔に内挿されて組み付けられている一方、該環状固定部材における該連結用孔の軸方向一方の開口周縁部が該フランジ状部に対して軸方向で重ね合わせられており、かかる軸方向の重ね合わせ面間で前記シールゴム層が挟圧されることによって前記軸方向シール部が形成されている請求項1に記載の防振用アクチュエータ。
  3. 前記環状固定部材における前記連結用孔の軸方向一方の開口端部において外周側に広がる環状当接部を一体形成して、該環状当接部が前記筒状連結金具の前記フランジ状部に対して軸方向で重ね合わせられていると共に、それら環状当接部とフランジ状部の重ね合わせ面間で前記シールゴム層が挟圧されることにより前記軸方向シール部が形成されている請求項2に記載の防振用アクチュエータ。
  4. 前記筒状連結金具における前記連結筒部の軸方向一方の開口端部から外周側に広がるフランジ状部が一体形成されており、該連結筒部の軸方向他方の開口端縁部側から前記環状固定部材における前記連結用孔に内挿されて組み付けられていると共に、該連結筒部の軸方向他方の開口端部が外周側にかしめ加工されて外周側に突出する環状かしめ部が一体形成されて、該筒状連結金具における該フランジ状部と該環状かしめ部の間で該環状固定部材の内周縁部が軸方向で挟固定されており、該環状固定部材の内周縁部の軸方向両端部に対する該フランジ状部と該環状かしめ部の少なくとも一方の軸方向重ね合わせ面間で前記シールゴム層が挟圧されることによって前記軸方向シール部が形成されている請求項1乃至3の何れかに記載の防振用アクチュエータ。
  5. 前記シールゴム層が、前記支持ゴム弾性体と一体成形されている請求項1乃至の何れかに記載の防振用アクチュエータ。
  6. 前記環状固定部材の前記ハウジングとの対向面間に、該環状固定部材と該ハウジングとの間を流体密にシールする封止ゴムが被着形成されていると共に、前記シールゴム層が該封止ゴムと一体形成されている請求項1乃至の何れかに記載の防振用アクチュエータ。
  7. 前記環状固定部材として、円環板形状を有すると共に内周縁部に円筒形状の嵌着筒部が一体形成された環状固定金具を採用して、該嵌着筒部の内孔によって前記連結用孔を形成した請求項1乃至の何れかに記載の防振用アクチュエータ。
  8. 前記連結筒部が絞り加工されることにより、前記支持ゴム弾性体に予圧縮が及ぼされている請求項1乃至の何れかに記載の防振用アクチュエータ。
  9. 相互に連結されることにより振動伝達系を構成する一方の部材に取り付けられる第一の取付部材と他方の部材に取り付けられる第二の取付部材を本体ゴム弾性体で連結する一方、該本体ゴム弾性体によって壁部の一部が構成されて非圧縮性流体が封入された受圧室を形成すると共に、該受圧室の壁部の別の一部を加振部材で構成し、該加振部材に加振力を及ぼすアクチュエータを設けて、該アクチュエータで該加振部材を加振駆動することにより該受圧室の圧力を能動的に制御するようにした能動型防振用マウントにおいて、
    前記アクチュエータとして請求項1乃至の何れかに記載の防振用アクチュエータを用い、該防振用アクチュエータにおける前記ハウジングを前記第二の取付部材に固定する一方、前記出力部材によって前記加振部材を構成したことを特徴とする能動型防振用マウント。
  10. 防振対象部材に装着されることにより、該防振対象部材に加振力を及ぼして能動的な制振作用を発揮する能動型防振用制振器であって、
    請求項1乃至の何れかに記載の防振用アクチュエータを用い、該防振用アクチュエータにおける前記ハウジングと前記出力部材の一方において前記防振対象部材に固定するための取付部を設ける一方、それらハウジングと出力部材の他方にマス部を設けたことを特徴とする能動型防振用制振器。
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