JP4020087B2 - 防振用アクチュエータおよびそれを用いた能動型防振装置 - Google Patents

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Description

本発明は、防振対象部材に装着されることにより能動的な防振効果を発揮し得る能動型防振装置に用いられる防振用アクチュエータと、それを用いた能動型防振装置に係り、特に自動車のエンジンマウントやボデーマウント,制振器などの防振装置において好適に採用される防振用アクチュエータおよびそれを用いた能動型防振装置に関するものである。
例えば自動車のボデー等のように振動低減が重要視される防振対象部材において振動を低減するために、従来では、一般に、ショックアブソーバやゴム弾性体等の減衰効果を利用した振動減衰手段や、コイルスプリングやゴム弾性体等のばね効果を利用した振動絶縁手段の如き防振装置が採用されているが、これらの防振装置は何れも受動的な防振作用を発揮するものであるために、例えば防振すべき振動の周波数等の特性が変化する場合やより高度な防振効果が要求される場合等においては、充分な防振効果を得ることが難しいという問題があった。そこで、近年では、防振対象部材や防振装置に加振力を及ぼすことにより、防振すべき振動を積極的乃至は相殺的に低減せしめるようにした能動型防振装置が開発され、検討されている。例えば、特許文献1や特許文献2に記載のものが、それである。
このような能動型防振装置では、加振力を発生するアクチュエータが必要であり、かかるアクチュエータにおいては、発生加振力に関して周波数や位相の高度の制御性が要求される。そこで、能動型防振装置に採用される防振用アクチュエータとしては、コイルへの通電を制御することによりアーマチャに及ぼされる駆動力を利用するようにした電磁式のアクチュエータが好適に採用される。
より具体的には、かかる防振用アクチュエータとしては、特許文献1、2にも示されているように、例えば、カップ形状のハウジングにおいて中心軸上に延びる案内孔を設けると共に、ハウジングの開口部側に出力部材を離隔配置せしめて出力部材をハウジングに対して支持ゴム弾性体で連結する一方、ハウジングと出力部材の一方にコイル部材を設けると共に、ハウジングと出力部材の他方に強磁性体及び/又は永久磁石からなるアーマチャを設けることにより、コイル部材への通電によってアーマチャから出力部材に加振力を及ぼして、案内孔の案内作用によってハウジングの中心軸方向に出力部材を加振変位せしめるようにした構造の防振用アクチュエータが、好適に採用される。このような能動型防振装置では、防振すべき振動の大きさに応じて発生加振力を調節する必要があり、優れた防振性能を得るためには、防振用アクチュエータの発生加振力が高精度に安定して制御可能であることが必要とされる。
ところで、電磁式のアクチュエータにおいては、コイル部材への通電によってアーマチャに及ぼされる駆動力が、コイル部材とアーマチャの軸方向における相対位置によって大きく変化し易い。そのために、発生加振力を効率的に得ると共に、発生加振力を高精度に制御するために、アーマチャのコイル部材に対する相対位置を高い精度で設定することが必要となる。
ところが、防振用アクチュエータにおいては、各部材の製造上の寸法誤差や、組付時の位置決め誤差に起因して、コイル部材の組付位置を高精度に設定することが難しい。それに加えて、アーマチャと連結されて駆動力が及ぼされる出力部材は、その変位を許容するために、一般にゴム弾性体によって支持されていることから、ゴム弾性体の加硫成形時の収縮量のばらつきや、ゴム弾性体を固定する際の組付位置のばらつき等に起因して、出力部材の組付位置についても、高精度に設定することが困難であり、かかる出力部材に連結するアーマチャの取付位置についても、高精度に設定することが困難となる。
そのために、コイル部材とアーマチャとの相対位置に大きなばらつきが発生し易い。このような防振用アクチュエータにおいては、コイル部材とアーマチャとの軸方向の相対位置の僅かなずれが、アクチュエータの動作特性に大きな影響を与えることとなり、かかる相対位置にばらつきが発生する場合には、アクチュエータの動作特性を不安定にするおそれがあった。そして、アクチュエータの出力特性が不安定となる結果、防振装置の発生加振力が防振すべき振動と高精度に対応しなくなって、目的とする防振効果を安定して得ることが出来なくなるという問題があった。
このような問題に対処するために、特許文献1に示されている能動型防振装置においては、アーマチャを出力部材に螺着することによって、アーマチャの締付量に応じて、コイル部材とアーマチャとの軸方向相対位置を調節可能とされている。また、特許文献2に示されている能動型防振装置においては、アーマチャに挿通したインナロッドに締付ナットを螺着することによって、コイル部材とアーマチャとの軸方向相対位置が調節可能とされている。
しかしながら、アーマチャが挿通されている案内孔の径寸法は小さく、出力部材に対してアーマチャやインナロッドを螺着する作業は非常に面倒なものであり、時間も要することから、工業生産に適しているとは言い難かった。また、出力部材に対してアーマチャやインナロッドを螺着する構造では、アクチュエータの継続的作動に伴って緩みやガタツキが発生して、アーマチャに生ぜしめられる駆動力の出力部材への伝達効率が低下するおそれがあった。
また、部材の寸法誤差や位置決め誤差は、コイル部材とアーマチャとの軸直角方向の相対位置にも大きなばらつきを発生することとなる。このような軸直角方向の相対位置のばらつきは、コイル部材とアーマチャとの組付け作業を困難にすると共に、アクチュエータの動作特性を不安定にすることとなり、更にはアーマチャのコイル部材に対する滑動部位においてこじり力等の荷重作用が及ぼされて、アクチュエータの作動や耐久性を阻害したり、擦れによって異音が発生する等の問題もあった。
特開平9−49541号公報 特開2001−1765号公報
ここにおいて、本発明は上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、コイルへの通電によって加振力が作用せしめられるアーマチャに対して出力部材を連結し、アーマチャに生ぜしめられる駆動力を出力部材に伝達して加振するようにした防振用アクチュエータにおいて、出力部材とアーマチャとを容易に且つ高精度に連結して、目的とする出力特性を効率的に且つ安定して得ることの出来る、改良された構造の防振用アクチュエータを提供することにある。
また、本発明は、そのような防振用アクチュエータを用いて構成された、改良された構造を有する能動型防振装置として、能動型防振用マウントおよび能動型防振用制振器を提供することも目的とする。
以下、前述の如き課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。また、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに限定されることなく、明細書全体および図面の記載、或いはそれらの記載から当業者が把握することの出来る発明思想に基づいて認識されるものであることが理解されるべきである。
(防振用アクチュエータに関する本発明の態様1)
すなわち、防振用アクチュエータに関する本発明の第1の態様は、略カップ形状のハウジングにコイル部材を組み込むと共に、該コイル部材への通電によって駆動力が及ぼされるアーマチャを該ハウジングの軸方向に変位可能に配設する一方、該ハウジングの開口部側に出力部材を離隔配置せしめて該出力部材を該ハウジングに対して支持ゴム弾性体を介して弾性支持せしめると共に、該出力部材を該アーマチャに連結することにより、該コイル部材への通電によって該アーマチャから該出力部材に加振力を及ぼして、該出力部材を該ハウジングの軸方向に加振変位せしめるようにした防振用アクチュエータにおいて、前記アーマチャに軸方向の貫通孔を設けると共に前記出力部材にインナロッドを突設して該インナロッドを該アーマチャの該貫通孔に挿通して、該インナロッドの該アーマチャからの突出部分をかしめ被着部とする一方、かしめ固定部を備えた係止部材を該インナロッドの突出部分に外挿せしめて、該かしめ固定部を該インナロッドの該かしめ被着部に対してかしめ固定することによって該係止部材を該インナロッドの突出部分に固着すると共に、該アーマチャに対して該インナロッドからの抜け出し方向に付勢力を及ぼす付勢手段を設けて、該インナロッドに対してかしめ固定された該係止部材に対して該アーマチャを該付勢手段の付勢力で抜け出し方向に押し付けて該アーマチャを該インナロッドに対して軸方向で位置決めし、且つ該アーマチャを該インナロッドに対して軸直角方向に隙間をもたせて外挿せしめて該アーマチャにおける該インナロッドの突出側端面に対して軸直角方向の滑り変位が許容される状態で該係止部材を重ね合わせたことを、特徴とする。
本態様に従う構造とされた防振用アクチュエータにおいては、出力部材から突設されるインナロッドに対して係止部材をかしめ固定することによって、螺着等に比して緩みやガタツキの発生も抑えられており、インナロッドと係止部材を強固に連結することが出来て、目的とする作動特性を安定して得ることが出来る。
更に、インナロッドがアーマチャに対する軸直角方向の滑り変位を許容された形で配設されており、各部材の寸法誤差や組付上の位置のバラツキ等の重畳によって出力部材とアーマチャの間に相対的な位置ずれが比較的に大きく発生した場合でも、これらの相対的な位置ずれがインナロッドとアーマチャとの滑り変位によって吸収されることで、インナロッドとアーマチャの相対的な傾きを抑えつつ容易に組付けを行なうことが出来る。また、インナロッドとアーマチャの相対的な傾きを抑えて組付けることが出来ることによって、アーマチャの加振力をインナロッドに安定して効率的に及ぼすことが可能となり、以て出力部材を安定して効率的に加振せしめることが可能となる。
(防振用アクチュエータに関する本発明の態様2)
防振用アクチュエータに関する本発明の第2の態様は、前記態様1に係る防振用アクチュエータにおいて、前記インナロッドの前記かしめ被着部の外周面が、凹凸形状とされていると共に、該かしめ被着部に対して前記係止部材の前記かしめ固定部がかしめ固定されていることを、特徴とする。本態様に従う構造とされた防振用アクチュエータにおいては、かしめ固定されるかしめ被着部が凹凸形状とされていることによって、インナロッドに対して係止部材をより強固に連結することが出来る。
(防振用アクチュエータに関する本発明の態様3)
防振用アクチュエータに関する本発明の第3の態様は、前記態様1又は2に係る防振用アクチュエータにおいて、前記インナロッドの前記アーマチャから突出した前記かしめ被着部に雄ねじが形成されている一方、前記係止部材に雌ねじが形成されており、該インナロッドに対して、該係止部材が螺着されていることを、特徴とする。本態様に従う構造とされた防振用アクチュエータにおいては、係止部材がインナロッドに対して螺着されることから、係止部材のねじ込み量を調節することによって、アーマチャの軸方向の高精度な位置決めを行なうことが出来る。そして、かしめ固定によって強固に締結することで、係止部材の緩み等の発生も抑えられているのである。また、かしめ被着部にねじ溝が形成されることによって、係止部材をより強固にかしめ固定することが出来る。
(防振用アクチュエータに関する本発明の態様4)
防振用アクチュエータに関する本発明の第4の態様は、前記態様1乃至3の何れかに係る防振用アクチュエータにおいて、前記ハウジングの底壁の中央部分に作業用孔を設けて、前記アーマチャに挿通した前記インナロッドに対して前記係止部材をかしめ固定する固定作業を、該作業用孔を通じて外部から行うことが出来るようにすると共に、該作業用孔を覆蓋する蓋部材を設けたことを、特徴とする。
本態様に従う構造とされた防振用アクチュエータにおいては、作業用孔を積極的に利用して、例えばアーマチャのインナロッドへの押し込み量の調節を容易に行なうことが出来るのであり、しかも、作業用孔を蓋部材によって覆蓋することが出来ることから、塵や埃が作業用孔を通じてアーマチャの滑動部位に入り込んで、アクチュエータの作動が阻害されるようなこともないのである。なお、蓋部材の具体的な形状や作業用孔への取付構造については何等限定されるものではなく、例えば蓋部材にシールゴム層を形成して、作業用孔を流体密にシールすること等も可能である。
(能動形防振用マウントに関する本発明)
能動形防振用マウントに関する本発明は、相互に連結されることにより振動伝達系を構成する一方の部材に取り付けられる第一の取付部材と他方の部材に取り付けられる第二の取付部材を本体ゴム弾性体で連結する一方、該本体ゴム弾性体によって壁部の一部が構成されて非圧縮性流体が封入された受圧室を形成すると共に、該受圧室の壁部の別の一部を加振部材で構成し、該加振部材に加振力を及ぼすアクチュエータを設けて、該アクチュエータで該加振部材を加振駆動することにより該受圧室の圧力を能動的に制御するようにした能動型防振用マウントにおいて、前記アクチュエータとして上述の如き防振用アクチュエータに関する本発明の態様1乃至4の何れかの態様に係る防振用アクチュエータを用い、該防振用アクチュエータにおける前記ハウジングを前記第二の取付部材に固定する一方、前記出力部材によって前記加振部材を構成したことを、特徴とする。このような本発明に従えば、例えば自動車用エンジンマウント等に好適に採用され得る能動型防振用マウントが有利に実現され得る。
(能動形防振用制振器に関する本発明)
能動形防振用制振器に関する本発明は、防振対象部材に装着されることにより、該防振対象部材に加振力を及ぼして能動的な制振作用を発揮する能動型防振用制振器であって、前記防振用アクチュエータに関する本発明の態様1乃至4の何れかの態様に係る防振用アクチュエータを用い、該防振用アクチュエータにおける前記ハウジングと前記出力部材の一方において前記防振対象部材に固定するための取付部を設けると共に、それらハウジングと出力部材の他方にマス部を設けたことを、特徴とする。このような本発明に従えば、例えば自動車のボデー用制振器等に好適に採用され得る能動型防振用制振器が有利に実現され得る。
上述の説明から明らかなように、本発明に従う構造とされた防振用アクチュエータにおいては、出力部材から突設されたインナロッドに対して、アーマチャを支持する係止部材をかしめ固定によって装着することによって、出力部材とアーマチャを容易且つ強固に連結することが可能となる。これにより、係止部材をインナロッドに対して螺着のみによって連結するのに比して、緩みやガタツキの発生が抑えられて、目的とする作動特性を安定して得ることが出来る。
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
先ず、図1には、能動型防振用マウントに関する本発明の第一の実施形態としての自動車用エンジンマウント10が示されている。このエンジンマウント10は、第一の取付部材としての第一の取付金具12と第二の取付部材としての第二の取付金具14が本体ゴム弾性体16によって弾性的に連結された構造とされており、第一の取付金具12が図示しない自動車のパワーユニットに取り付けられる一方、第二の取付金具14が図示しない自動車のボデーに取り付けられることにより、パワーユニットをボデーに対して防振支持するようになっている。また、そのような装着状態下、第一の取付金具12と第二の取付金具14の間には、パワーユニットの分担荷重と、防振すべき主たる振動が、何れも、エンジンマウント10の略軸方向(図1中、上下方向)に入力されるようになっている。なお、以下の説明中、上下方向とは、原則として、図1中の上下方向を言うものとする。
より詳細には、第一の取付金具12は、本体ゴムインナ金具18とダイヤフラムインナ金具20によって構成されていると共に、第二の取付金具14は、本体ゴムアウタ筒金具22とダイヤフラムアウタ筒金具24によって構成されている。そして、本体ゴム弾性体16に対して本体ゴムインナ金具18と本体ゴムアウタ筒金具22が加硫接着されて第一の一体加硫成形品28とされている一方、ダイヤフラムインナ金具20とダイヤフラムアウタ筒金具24が、可撓性膜としてのダイヤフラム30に対して加硫接着されて第二の一体加硫成形品32とされており、これら第一及び第二の一体加硫成形品28,32が相互に組み合わされている。
ここにおいて、第一の一体加硫成形品28を構成する本体ゴムインナ金具18は、逆向きの略円錐台形状を有している。また、本体ゴムインナ金具18の上端面(大径側端面)には、嵌合凹部34が形成されていると共に、該嵌合凹部34の底面に開口するねじ穴36が設けられている。
更にまた、本体ゴムアウタ筒金具22は、略大径円筒形状を有する筒壁部38を備えており、この筒壁部38の軸方向下端部には径方向外方に向かって広がるフランジ状部40が一体形成されている一方、筒壁部38の軸方向上端部分は、軸方向上方に行くに従って次第に拡開するテーパ筒状部42とされている。これによって、本体ゴムアウタ筒金具22の外周側には、外周面に開口して周方向に一周弱の長さで延びる周溝45が形成されている。そして、本体ゴムアウタ筒金具22の上方に離隔して、本体ゴムインナ金具18が略同一中心軸上で離隔配置されており、本体ゴムインナ金具18における逆テーパ形状の外周面と本体ゴムアウタ筒金具22におけるテーパ筒状部42の内周面が相互に離隔して対向位置せしめられており、これら本体ゴムインナ金具18と本体ゴムアウタ筒金具22との対向面間が、本体ゴム弾性体16によって弾性的に連結されている。
かかる本体ゴム弾性体16は、全体として大径の円錐台形状を有しており、その中央部分には、本体ゴムインナ金具18が同軸的に配されて加硫接着されていると共に、その大径側端部外周面に対して本体ゴムアウタ筒金具22のテーパ筒状部42が重ね合わせられて加硫接着されている。これによって、本体ゴム弾性体16が、上述の如き本体ゴムインナ金具18および本体ゴムアウタ筒金具22を備えた第一の一体加硫成形品28として形成されている。
また一方、第二の一体加硫成形品32を構成するダイヤフラムインナ金具20は、厚肉の円板形状を有している。また、ダイヤフラムインナ金具20の下面には、嵌合凸部46が形成されていると共に、該嵌合凸部46の形成部位を貫通して挿通孔52が形成されている。更にダイヤフラムインナ金具20には、上方に突出して取付板部54が一体形成されており、取付板部54の中央部分にはボルト挿通孔56が設けられている。
また、ダイヤフラムアウタ筒金具24は、薄肉大径の円筒形状を有しており、その軸方向上側の開口部には、径方向外方に向かって広がる取付用板部58が一体形成されている。なお、取付用板部58には、複数の挿通孔が形成されており、それらの挿通孔に対してそれぞれ固定ボルト60が圧入されて植設されている。更にまた、ダイヤフラムアウタ筒金具24の軸方向下側の開口部には、径方向外方に向かって広がる円環板形状のフランジ状部62が一体形成されており、更に、フランジ状部62の外周縁部には、軸方向下方に向かって突出する円環状のかしめ片64が一体形成されている。
そして、ダイヤフラムアウタ筒金具24の軸方向上方に離隔して、ダイヤフラムインナ金具20が、略同一中心軸上に配設されており、それらダイヤフラムインナ金具20とダイヤフラムアウタ筒金具24が、ダイヤフラム30によって連結されている。
ダイヤフラム30は、薄肉のゴム膜によって形成されており、容易に弾性変形が許容されるように大きな弛みを持った湾曲断面形状をもって周方向に延びる略円環形状を有している。そして、ダイヤフラム30の内周縁部が、ダイヤフラムインナ金具20の外周縁部に対して加硫接着されていると共に、ダイヤフラム30の外周縁部が、ダイヤフラムアウタ筒金具24の軸方向上側の開口部に加硫接着されている。これにより、ダイヤフラム30は、ダイヤフラムインナ金具20およびダイヤフラムアウタ筒金具24を備えた第二の一体加硫成形品32として形成されている。
而して、かかる第二の一体加硫成形品32が、前述の第一の一体加硫成形品28に対して上方から重ね合わせられて組み付けられており、ダイヤフラムインナ金具20が本体ゴムインナ金具18に固着されていると共に、ダイヤフラムアウタ筒金具24が本体ゴムアウタ筒金具22に固着されており、更にダイヤフラム30が、本体ゴム弾性体16の外方に離隔して、本体ゴム弾性体16の外周面を全体に亘って覆うようにして配設されている。
すなわち、ダイヤフラムインナ金具20が本体ゴムインナ金具18の上面に直接に重ね合わされて、ダイヤフラムインナ金具20の嵌合凸部46が本体ゴムインナ金具18の嵌合凹部34に嵌め込まれることによって、ダイヤフラムインナ金具20と本体ゴムインナ金具18が同一中心軸上に位置合わせされている。また、特に本実施形態では、嵌合凸部46と嵌合凹部34の各外周面に切欠状に形成された係合外周面62と係合内周面68の係合作用によって、ダイヤフラムインナ金具20と本体ゴムインナ金具18が周方向でも相互に位置決めされており、ダイヤフラムインナ金具20の挿通孔52と本体ゴムインナ金具18のねじ穴36が位置合わせされている。
そして、図1に示されているように、本体ゴムインナ金具18とダイヤフラムインナ金具20を重ね合わせた状態下で、連結ボルト70が、ダイヤフラムインナ金具20の挿通孔52を通じて本体ゴムインナ金具18のねじ穴36に螺着されている。而して、これら本体ゴムインナ金具18とダイヤフラムインナ金具20が連結ボルト70で連結固定されることにより、第一の取付金具12が構成されている。
一方、ダイヤフラムアウタ筒金具24は本体ゴムアウタ筒金具22に対して軸方向上方から外挿されている。また、本体ゴムアウタ筒金具22は、その下端部において、フランジ状部40の外周縁部がダイヤフラムアウタ筒金具24のフランジ状部62に対して軸方向に重ね合わされていると共に、その上端部において、テーパ筒状部42の開口端縁部がダイヤフラムアウタ筒金具24の内周面に対して径方向で重ね合わされている。
そして、本体ゴムアウタ筒金具22のフランジ状部40の外周縁部に対して、ダイヤフラムアウタ筒金具24のかしめ片64がかしめ固定されることによって、本体ゴムアウタ筒金具22とダイヤフラムアウタ筒金具24が相互に固定されて組み付けられている。なお、これら本体ゴムアウタ筒金具22の上下両端部におけるダイヤフラムアウタ筒金具24との重ね合わせ部位には、それぞれ、本体ゴム弾性体16またはダイヤフラム30と一体成形されたシールゴムが介在されており、流体密にシールされている。これにより、本体ゴムアウタ筒金具22に形成された周溝45がダイヤフラムアウタ筒金具24で流体密に覆蓋されており、もって、本体ゴムアウタ筒金具22の筒壁部38とダイヤフラムアウタ筒金具24の径方向対向面間を周方向に所定長さで乃至は全周に亘って連続して延びる環状通路72が形成されている。
さらに、本体ゴムアウタ筒金具22の下側開口部には、仕切板金具74と支持部材76が組み付けられている。支持部材76は、略円環板形状の支持ゴム弾性体78に対して、その中央部分に出力部材としての加振板80が加硫接着されていると共に、その外周部分に環状保持金具82が加硫接着されており、それら加振板80と環状保持金具82が支持ゴム弾性体78で弾性的に連結されている。
加振板80は、円板形状を有しており、その外周縁部には上方に向かって突出する環状連結部84が一体形成されている。また、加振板80の中央部分には、下方に向かって延びるインナロッドとしての駆動軸86が一体形成されている。また、図2に示すように、駆動軸86の先端部分(図中、下端側)からやや上部は雄ねじ部88とされてねじ溝が刻設されていると共に、雄ねじ部88から更に先端部分には、溝加工やローレット加工等で表面に凹凸が施された締結部90が形成されている。本実施形態では、これら雄ねじ部88と締結部90によって、かしめ被着部92が形成されている。なお、添付する各図面においては、何れも、締結部90の溝形状を容易に理解できるように、軸方向ピッチを含む締結部90の溝の大きさを誇張して、実際よりも大きな縮尺(縮小比)で表示している。また、加振板80は、環状連結部84や駆動軸86を含んで、金属や合成樹脂等の硬質材で一体成形されている。
一方、環状保持金具82は、円筒形状を有する円筒状部94の上下開口部に対してそれぞれフランジ状に広がる取付板部96と位置決め突部92が一体形成されており、取付板部96の外周縁部には、更に下方に突出する円環状の圧入部100が一体形成されている。
そして、環状保持金具82の径方向内方に離隔して略同一中心軸上に加振板80が配設されており、これら環状保持金具82と加振板80の径方向対向面間に広がるようにして支持ゴム弾性体78が配設されている。また、かかる支持ゴム弾性体78は、その内外周縁部が加振板80の環状連結部84と環状保持金具82の円筒状部94の対向面に対してそれぞれ加硫接着されており、加振板80と環状保持金具82の間が支持ゴム弾性体78で流体密に閉塞されている。
一方、仕切板金具74は、薄肉の円板形状を有しており、その外径寸法が、環状保持金具82における取付板部96の径方向中間部分まで至る大きさとされている。また、仕切板金具74の中央部分は、略台地状に上方に突出せしめられていると共に、その中心軸上にオリフィス通孔102が貫設されている。更に、仕切板金具74の外周縁部近くに位置する周上には、複数の係止片104が、上方に向かって突設されている。
そして、仕切板金具74は、係止片104によって軸直方向に位置合わせされて、ダイヤフラムアウタ筒金具24の下側開口部において、そこに組み付けられた本体ゴムアウタ筒金具22のフランジ状部40に対して外周縁部が重ね合わされて組み付けられている。更に、ダイヤフラムアウタ筒金具24の下側開口部には、仕切板金具74の下方から支持部材76が組み付けられており、支持部材76における環状保持金具82の取付板部96が、本体ゴムアウタ筒金具22と仕切板金具74に重ね合わされて、それぞれの外周縁部がダイヤフラムアウタ筒金具24のかしめ片64によってかしめ固定されている。そして、これら第一の一体加硫成形品28、第二の一体加硫成形品32、仕切板金具74、及び支持部材76によって、マウント本体105が構成されている。
これにより、ダイヤフラムアウタ筒金具24の下側開口部が、支持部材76で流体密に覆蓋されており、もって、本体ゴム弾性体16と支持部材76の対向面間には、非圧縮性流体が封入された受圧室106が形成されている。この受圧室106は、壁部の一部が本体ゴム弾性体16で構成されており、第一の取付金具12と第二の取付金具14の間への振動入力時に本体ゴム弾性体16の弾性変形に基づいて振動が入力されて圧力変動が惹起されるようになっている。
また、受圧室106には、仕切板金具74が配設されており、受圧室106が、仕切板金具74を挟んで、本体ゴム弾性体16側の振動入力室108と、支持部材76側の加振室110に二分されていると共に、これら振動入力室108と加振室110がオリフィス通孔102で連通せしめられている。
更にまた、本体ゴム弾性体16とダイヤフラム30が、それぞれの内周縁部と外周縁部において第一の取付金具12と第二の取付金具14に固着されることにより、本体ゴム弾性体16とダイヤフラム30の対向面間には、非圧縮性流体が封入された平衡室112が形成されている。即ち、この平衡室112は、壁部の一部が変形容易なダイヤフラム30で構成されており、ダイヤフラム30の弾性変形に基づいて容易に容積変化が許容されるようになっている。なお、受圧室106や平衡室112に封入される非圧縮性流体としては、後述するオリフィス通路118を通じて流動せしめられる流体の共振作用に基づく防振効果を自動車用のエンジンマウント10に要求される振動周波数域で効率的に得るために、一般に、0.1Pa.s以下の低粘性流体が好適に採用される。
さらに、第二の取付金具14を利用して環状通路72が形成されており、この環状通路72の周方向一方の端部が連通孔114を通じて受圧室106に連通されていると共に、環状通路72の周方向他端部が本体ゴム弾性体16に形成された連通孔116を通じて平衡室112に連通されている。これにより、受圧室106と平衡室112を相互に連通せしめて両室114,116間での流体流動を許容するオリフィス通路118が、受圧室106の周囲に所定長さで形成されている。なお、オリフィス通路118は、振動入力時に受圧室106と平衡室112の間に惹起される圧力差に基づいて内部を流動せしめられる流体の共振作用に基づく防振効果が、例えばアイドリング振動等の特定の周波数域で有効に発揮されるように、その通路断面積や通路長さが適当に設定されてチューニングされている。
また一方、支持部材76を挟んで受圧室106と反対側には、防振用アクチュエータとしての電磁加振器120が配設されている。この電磁加振器120は、略カップ形状のハウジング122にコイル124が収容状態で固定的に組み付けられていると共に、コイル124の周りには、それぞれ環状の強磁性材からなるヨーク126,128が固定的に組み付けられて磁路が形成されている。また、磁路を形成するヨーク126の筒状内周面には、ガイドスリーブ130が弾性的に位置決めされて装着されており、アーマチャとしての強磁性材からなる滑動子132が、かかるガイドスリーブ130内を滑動可能に組み付けられている。
滑動子132は、磁路を形成するヨーク126,128間に形成された磁気ギャップの領域に配設されており、コイル124に通電することにより磁力が及ぼされて、ガイドスリーブ130で案内されつつ軸方向に駆動されるようになっている。また、滑動子132は、軸方向に貫通する貫通孔134を有する全体として略円筒形状を有しており、外周面においてガイドスリーブ130に摺動可能とされている一方、貫通孔134の軸方向上部には、係合突部136が内方に向かって突出形成されている。
そして、電磁加振器120は、ハウジング122の開口周縁部に形成されたフランジ部138が、支持部材76における環状保持金具82の取付板部96に重ね合わされて、環状保持金具82等と共に、かしめ片64で第二の取付金具14にかしめ固定されている。これにより、電磁加振器120は、その滑動子132の滑動中心軸が、第一及び第二の取付金具12,14の中心軸に略一致するように組み付けられている。
また、このように組み付けられた電磁加振器120には、その中心軸上で上方から加振板80の駆動軸86が差し入れられており、この駆動軸86が、滑動子132の貫通孔134に挿通されている。そして、駆動軸86の係合突部136に挿通された先端部分には、係止部材としての締結部材140が外挿固定されて、かかる締結部材140によって滑動子132が駆動軸86から抜け出し不能に支持されている。
より詳細には、締結部材140は、金属等の硬質材から形成されて、全体として略円筒形状を有している。そして、この締結部材140には、その軸方向上側部分に雌ねじ142が形成されていると共に、軸方向下方において薄肉に延び出すかしめ固定部としてのかしめ筒部144が形成されている。
一方、駆動軸86の先端部分には、前述の如き雄ねじ部88及び締結部90が形成されており、雄ねじ部88に対して締結部材140の雌ねじ142が螺着されると共に、締結部90に対して締結部材140のかしめ筒部144がかしめ固定されることによって締結部材140が駆動軸86に固着されるようになっている。
そして、締結部材140が、滑動子132を駆動軸86に対して抜け出し不能に支持している一方、駆動軸86には付勢手段としてのコイルスプリング146が外挿されて、加振板80と滑動子132の係合突部136の対向面間に跨って配設されている。即ち、締結部材140を駆動軸86に対してねじ込み、滑動子132の係合突部136を介して、加振板80との間でコイルスプリング146を圧縮せしめることにより、滑動子132はコイルスプリング146によって駆動ロッド86から抜け出し方向に付勢されると共に、締結部材140によって抜け出し不能に支持されている。これにより、滑動子132は駆動軸86に対して軸方向に固定的に位置決めされている。
なお、本実施形態においては、コイルスプリング146の両端には、カラー部材148が冠着されており、コイルスプリング146と他部材との擦れによる磨耗を軽減している。而して、滑動子132と駆動軸86は軸方向において実質的に固着状態で連結されて、コイル124への通電で滑動子132に作用せしめられる駆動力が駆動軸86に及ぼされるようになっている。
また、締結部材140には、滑動子132の係合突部136に重ね合わされる軸方向上端面において、径方向に連続して延びる凹溝150が形成されている。締結部材140が駆動軸86に取り付けられた状態下で、締結部材140と滑動子132の係合突部136との重ね合わせ面間には、凹溝150によって連通路が形成されており、この連通路を通じて、滑動子132の上下の空間が相互に連通状態に維持されて、密閉空間での空気ばねによる悪影響が回避されるようになっている。
ここにおいて、本実施形態においては、滑動子132の取付位置は、締結部材140の駆動軸86へのねじ込み量を調節することにより、軸方向に高精度に設定することが出来るのであり、それによって、滑動子132のヨーク128に対する磁力作用対向面間の距離を、最終的な組み付け状態下で微調節して設定することが可能となっている。更に、滑動子132の軸方向位置は、締結部材140のかしめ固定によって維持されることから、締結部材140のゆるみによる位置ずれも防止される。
なお、滑動子132の貫通孔134の内周面と駆動軸86との軸直角方向の対向面間、および締結部材140と滑動子132との軸直角方向の対向面間には、何れも所定の隙間が設けられている。特に本実施形態では、それら両隙間のうちで後者の隙間の方が小さくされて、そこに間隙:tが形成されるようになっている。これにより、滑動子132は、駆動軸86に対して軸直角方向でストローク量:2tだけの相対的な滑り変位が許容される状態で締結部材140と重ね合わされて当接状態に保持されている。また、各部材の製造上の寸法誤差や組み付け時の位置決め誤差等に起因する駆動軸86と滑動子132との相対的な位置ずれが有利に吸収され得て、滑動子132がコイル124に対して軸直角方向にも安定して位置決めされることとなり、目的とする作動特性が安定して発現され得る。なお、かかる軸直角方向の相対変位の許容量としては、t=0.2mm〜3mmの範囲が好適に採用される。
また、電磁加振器120のハウジング122の底壁部中央には、作業用孔としての透孔152が貫設されており、この透孔152を通じて、滑動子132に対向位置せしめられて磁力を及ぼすヨーク128が外部に露呈されている。ヨーク128の中央部分は、山形に厚肉とされて中央突部154とされており、この中央突部154が、ガイドスリーブ130に対して下方から入り込んでいる。
なお、ヨーク128は、ハウジング122と上側ヨーク126に対して磁気的に接続されており、それらハウジング122と上側ヨーク126と協働して、コイル124の周りに延びる環状の磁路を形成している。また、この磁路には、コイル124の中心孔内において、上側ヨーク126と下側ヨーク128の間に磁気ギャップが形成されており、この磁気ギャップに相当する位置にアーマチャである滑動子132が配設されている。かかる滑動子132は、上側ヨーク126に対してガイドスリーブ130を挟んだ内周側において、下側ヨーク128から上方に所定距離だけ離隔して位置せしめられている。
これにより、周方向に巻回されたコイル124に通電すると、磁気ギャップを形成する上下のヨーク126,128の対向面間に対峙する磁極が生ぜしめられるようになっている。そして、かかる磁気ギャップに配設された滑動子132に対して、磁気抵抗を最も小さくする方向への駆動力、即ち下側ヨーク126に向かう軸方向の駆動力が及ぼされるようになっているのである。
ここにおいて、滑動子132に及ぼされる磁力(駆動力)は、その大きさに対応したストローク分だけ加振板84に加振駆動力が及ぼされるものであることから、目的とする防振効果を得るためにかかる磁力を高精度に設定制御することが要求される。そのためには、磁気ギャップの大きさ、特に下側ヨーク126に対する滑動子132の相対的な離隔距離、換言すれば駆動ロッド134上での滑動子132の軸方向での固定位置を高精度に設定する必要がある。
ところが、かかる要求に対して、現実的には、支持ゴム弾性体の成形収縮だけでなく、電磁加振器120の組付上の誤差、更には電磁加振器120の防振装置本体に対する組付上の誤差などが重畳して、滑動子132と下側ヨーク126の対向面間距離を高精度に設定することは極めて難しい。それだけでなく、一度設定したとしても、その設定が経時的に変化してしまっては、要求される信頼性を満足させることができない。また、工業生産品であることから、優れた量産性と、簡単な組立作業性が要求されることは言うまでもない。
このような非常に困難な状況下、本実施形態のエンジンマウント10においては、以下の如くして、滑動子132と下側ヨーク126の対向面間距離を高精度に設定することが可能とされている。
すなわち、先ず、本実施形態のエンジンマウント10においては、下側ヨーク128の中央突部154に対して、中央を軸方向に貫通して延びる中心孔156が形成されている。かかる中心孔156の内径寸法は、駆動軸86に形成されたかしめ被着部92や締結部材140の外径寸法よりも十分に大きくされており、後述するかしめ加工の容易化が図られている。
そして、この中心孔156を通じて、電磁加振器120において滑動子132が配設されたコイル124内の空間が、ハウジング122の外部空間に開口せしめられている。特に、本実施形態では、コイル124内の空間において中心軸上で上方から差し入れられた駆動軸86が、かしめ被着部92の下端部分を下側ヨーク128の中心孔156に対して所定量だけ差し入れられている。即ち、ハウジング122の底側の中央に開口した下側ヨーク128の中心孔156から覗くと、開口部の近くに位置して、締結部材140が螺着された駆動軸86の先端部分が見えるような構造とされている。
なお、本実施形態では、下側ヨーク128の中央突部154の外周面が先細形状のテーパ面158とされている。また、滑動子132の下端面は、この下側ヨーク128のテーパ面158に対応して下方に向かって拡開する逆向きのテーパ面160とされている。そして、下側ヨーク128と滑動子132は、テーパ面158と逆テーパ面160において軸方向で対向位置せしめられている。即ち、これらのテーパ面158,160によって磁力が作用せしめられる磁気対向面が形成されており、滑動子132の移動方向である中心軸に対して傾斜した対向面とされていることにより、相互の対向面の面積が大きく設定されていると共に、軸方向での相対距離に対する磁気ギャップを挟んでの軸方向対向面間距離が見かけ上で大きくされて、軸方向の位置決め精度による影響が、形状的に軽減されるようになっている。
さらに、締結部材140の周囲には、全周に亘って、中心孔156内で、以下に説明するように、締結部材140の駆動軸86に対する位置決め調節の作業や、その固定の作業を行うのに必要とされる十分な作業領域が形成されている。
すなわち、前述の如くして非圧縮性流体が封入された受圧室106や平衡室112の形成されたマウント本体105を製造すると共に、それと別途に、コイル124や滑動子132等を組み込んだ電磁加振器120を製造した後、該電磁加振器120をマウント本体105に対して組み付けることによって、目的とするエンジンマウント10の全体を組み立てる。その後、このようにマウント本体105に対して最終的な状態に組み付けた電磁加振器120において、その底部に開口せしめられた中心孔156を通じて、例えばソケットレンチ等の適当な工具を電磁加振器120内部に差し入れて締結部材140を回転操作することにより、締結部材140の駆動軸86に対する軸方向の取付位置を調節する。これにより、下側ヨーク128に対する滑動子132の対向面間距離を、最終的に組み立てた状態で調節して高精度に設定することが出来るのである。このように最終段階で滑動子132の位置を調節設定することにより、支持ゴム弾性体78の成形収縮および各種部材の寸法誤差や組付誤差などに拘わらず、滑動子132と下側ヨーク128との相対的な位置を高精度に設定することが可能となる。
そして、その後、図3に示されているように、下側ヨーク128の中心孔156を通じてかしめジグ162を挿し入れて、締結部材140のかしめ筒部144に対してかしめ加工を施す。かかるかしめジグ162は、周方向で適当数に分割された複数の分割型からなる。かしめジグ162は全体として厚肉の円筒形状を協働形成するようになっており、その軸方向一方(図3,4中の下方)の先端部分164が、先細状に突出せしめられており、この先端部分164を下側ヨーク128の中心孔156から差し入れることが出来るようになっている。また、かかる先端部分の端面中央には、軸方向外方に開口する作用凹所166が形成されていると共に、この作用凹所166の開口部近くの内周面には、内方に突出するかしめ突部168が形成されている。
さらに、かしめジグ162の外周面上には、絞り中型170と絞り外型172が配設されている。絞り中型170は、公知の八方絞り型や十六方絞り型などと同様に周方向に多数に分割されたしぼり中型が採用可能であり、全体として円筒形状とされた内周面においてかしめジグ162の外周面に重ね合わされるようになっている。また、絞り中型170の外周面は、先細形状とされて絞り加圧用のテーパ面174が形成されている。一方、絞り外型172は、公知の絞り外型と略同様な構造とされており、中央部分に絞り孔176が形成されていると共に、この絞り孔176の内周面が、絞り中型170のテーパ面174に対応した逆テーパ面178とされている。
また、絞り外型172の絞り孔176の底部中央には、挿通孔180が形成されている。そして、絞り外型172の絞り孔176に、絞り中型170を嵌め入れると共に、絞り中型170の中空孔内にかしめジグ162をセットする。かしめジグ162の先端部分164を絞り中型170から軸方向下方に突出させると共に、絞り外型172の挿通孔180を通じて外部に突出させる。これら絞り型170,172を、前述の如く予めマウント本体105に組み付けた電磁加振器120に対して、そのハウジング122の底面から重ね合わせるようにしてセットする。これにより、絞り外型172の挿通孔180から突出させたかしめジグ162の先端部分164を、電磁加振器120の底面に開口した下側ヨーク128の中心孔156に差し入れる。そして、下側ヨーク128の中心孔156内に突出位置せしめられた駆動軸86のかしめ被着部92に対して、かしめジグ162の作用凹所166を外挿せしめる。
その後、絞り外型172を図示しないベースで支持固定せしめた状態下で、油圧機構等の加圧手段で駆動される加圧ラム182を上方から絞り中型170の上底面184に重ね合わせて押圧駆動する。これにより、絞り中型170を絞り外型172の絞り孔176に対して加圧押入れして絞り中型170を全体として縮径させて、絞り中型170に内挿されたかしめジグ162に対して全体として縮径作動を及ぼす。
その結果、図4に示されているように、かしめジグ162の先端部分164が、作用凹所166が縮径するように全体として変形せしめられて、作用凹所166の開口内周面に形成されたかしめ突部168が、締結部材140のかしめ筒部144に対して外周面から押圧せしめられる。これにより、かかるかしめ筒部144が縮径方向に塑性変形せしめられてかしめ加工が施される。特に本実施形態では、駆動軸86の外周面に締結部90が形成されていることから、締結部90とかしめ筒部144が機械的な係止作用で強固に固定される。
このように、締結部材140のねじ込み量を調節して滑動子132の軸方向の位置決めを行なった後に、締結部材140のかしめ筒部144を締結部90に対してかしめ固定することにより、締結部材140ひいては滑動子132を、高精度に且つ長期間に亘って強固に位置決め固定することが出来るのである。
なお、上述の如くして締結部材140を駆動軸86にかしめ固定した後、作業用孔として利用した下側ヨーク128の中心孔156は、覆蓋されている。
すなわち、かかる下側ヨーク128の中心孔156は、その開口部近くが拡径されて大径部186とされており、開口部の軸方向内方に位置して環状段差部としての段差面188が形成されている。また、大径部186の内周面には、周方向に連続して延びる環状の係止溝190が形成されている。そして、かかる大径部186には、蓋部材としての蓋板金具192が組み付けられている。
この蓋板金具192は、円板形状を有しており、一方の面には略全面に亘ってゴム層194が形成されて加硫接着されている。このゴム層194は、中央部分の緩衝ゴム部196と、該緩衝ゴム部196よりも僅かに厚肉とされた外周部分の環状シールゴム部198から形成されている。そして、蓋板金具192がヨーク128の大径部186に嵌め込まれていると共に、蓋板金具192の外側からC形止め輪200が大径部186に嵌め込まれて係止溝190に係止装着されている。
これにより、蓋板金具192の外面がC形止め輪200で押し付けられて、蓋板金具192の外周部分が、段差面188に対して、環状シールゴム部198を介して当接されており、以て、電磁加振器120のヨーク128に形成された中心孔156が、その開口部に形成された大径部186において流体密に覆蓋されている。また、蓋板金具192の中央部分は、加振板80の駆動軸86の先端面に対して軸方向下方に所定距離を隔てて対向位置せしめられている。これにより、第一の取付金具12と第二の取付金具14の間に大きな振動荷重が入力されて受圧室106に過大な圧力が惹起された場合等において、駆動軸86の先端が緩衝ゴム部196を介して蓋板金具192に当接することにより、加振板80の変位量が緩衝的に制限されるようになっている。
上述の如き構造とされたエンジンマウント10には、電磁加振器120に対して、更に筒形ブラケット202が外挿されている。筒形ブラケット202は、上端開口部にフランジ状部204を有しており、このフランジ状部204が、本体ゴムアウタ筒金具22のフランジ状部40や環状保持金具82の取付板部96,ハウジング122のフランジ部138と共に、ダイヤフラムアウタ筒金具24に対してかしめ片64でかしめ固定されている。また、筒形ブラケット202の下端開口部には取付板部206が形成されており、この取付板部206に対して複数の取付用孔(図示せず)が形成されている。
而して、エンジンマウント10は、図示されていないが、第一の取付金具12の取付板部54が、ボルト挿通孔56に挿通される固定ボルトでパワーユニットに取り付けられる一方、第二の取付金具14が、筒形ブラケット202を介して固定ボルトで自動車ボデーに取り付けられることにより、パワーユニットとボデーの間に装着されることとなる。そして、かかる装着状態下、第一の取付金具12と第二の取付金具14の間に振動が入力されると、本体ゴム弾性体16の弾性変形に伴って受圧室106と平衡室112の間に惹起される圧力差に基づいてオリフィス通路118を通じて流体流動が生ぜしめられて、かかる流体の共振作用等の流動作用に基づいて受動的な防振効果が発揮される。また、防振すべき振動に応じた周波数や位相でコイル124への通電を制御して電磁加振器120で加振板80を加振駆動せしめることにより、加振室110からオリフィス通孔102を通じて振動入力室108に圧力変動を及ぼし、振動入力室108の圧力変動を能動制御することにより入力振動に対して能動的な防振効果を得ることが出来る。
そこにおいて、本実施形態のエンジンマウント10では、加振板80から突設された駆動ロッド86に対して、電磁加振器120の滑動子132が、軸直角方向の滑り変位が可能に配設せしめられていることから、組み付けの際の寸法誤差による相対的な位置ずれや、アクチュエータ作動時における一時的な位置ずれが有利に吸収される。
すなわち、電磁加振器120の駆動時において、滑動子132から駆動軸86への駆動力の伝達方向は、加振動作によって交互に変化することから、比較的に大きな付勢力を持って係合突部136が締結部材140に押し付けられていても、駆動力の方向が変化する箇所において慣性力の作用で瞬間的に付勢力が低下する。その瞬間において支持ゴム弾性体78の弾性力を利用して、駆動軸86が相対的に滑り変位せしめられて、滑動子132との位置合わせが有利に行われ得るのである。
また、支持ゴム弾性体78の不規則な弾性変形等によって一時的に位置ずれが発生した場合や、駆動軸86の滑り変位によって位置ずれが解消されるまでの間は、滑動子132と締結部材140との間隙とコイルスプリング146の弾性変形によって、駆動軸86の傾きが許容されており、これによって、滑動子132とガイドスリーブ130との間でのこじり荷重の作用を軽減乃至は回避することが出来、滑動子132の作動の安定性と耐久性が有利に維持され得る。
更にまた、締結部材140は駆動軸86に対して、最終的なマウント組立工程で位置決め調節された後、更にかしめ固定されていることから、駆動軸86に対して高度な位置決め精度をもって強固に締結されており、締結部材140の緩みによる軸方向のずれも抑えられている。これにより、滑動子132のコイル124に対する軸方向位置も安定して維持されて、目的とする作動特性を安定して得ることが出来る。
そして、締結部材140は駆動軸86に対してかしめるだけで固定出来ることから、作業スペースとなる中心孔156のような狭い領域内においても、冶具を差し込むことによって締結部材140の組み付けを容易に行なうことが出来るのである。更に本実施形態においては、締結部材140が駆動軸86に対して螺着されていることから、締結部材140の駆動軸86へのねじ込み量を調節することによって、滑動子132の軸方向位置を高精度に設定した上で、かしめ筒部144によって強固にかしめ固定することが出来る。
以上、本発明の一実施形態について詳述してきたが、これはあくまでも例示であって、本発明は、かかる実施形態における具体的な記載によって、何等、限定的に解釈されるものではない。
例えば、駆動軸86の締結部90に形成される凹凸は必ずしも必要なものではないし、具体的形状についても何等限定されるものではなく、当業者の判断において適宜に変更可能であって、周溝や網目、平目等のローレット加工に限らず、前記実施形態における雄ねじ88を駆動軸86の先端部分に至るまで形成する等しても良いし、より大きな軸方向ピッチを有する凹凸状の嵌合部を形成する等しても良い。更に、本実施形態においては、締結部90は、駆動軸86に一体形成されていたが、金属や樹脂等によって別体形成した凹凸部を備えた部材を加振板80や駆動軸86にリベットや圧入,溶着等で固着する等しても良い。
また、本実施形態においては、締結部材140には雌ねじ142が形成されており、駆動軸86の雄ねじ部88に対して螺着した後にかしめ筒部144によってかしめ固定を行なっていたが、かかる雌ねじ142や雄ねじ部88は必ずしも必要ではないのであって、締結部材140の内径寸法を駆動軸86の径寸法よりやや大きく設定して、締結部材140を駆動軸86に外挿した後にかしめ筒部144によるかしめ固定のみによって固着しても良い。このような態様によれば、締結部材140を駆動軸86に対してより容易に固着することが出来る。
加えて、本発明は、例示の如き形状の自動車用エンジンマウントに限らず、所謂筒形マウント等にも適用可能であるし、自動車用のボデーマウントやメンバマウント等、或いは自動車以外の各種装置におけるマウントや制振器などの防振装置や、そのような防振装置に用いられる防振用アクチュエータに対して、同様に適用可能である。
例えば、本発明を適用した能動型制振器としては、具体的には、第一の実施形態に示された電磁加振器120を、第一及び第二の一体加硫成形品28,32から独立して単体で用いて、そのハウジング122の開口部に支持部材76を組み付け、環状保持金具82における取付板部96をハウジング122のフランジ部138にかしめ固定することによって構成される。即ち、このようにして構成された制振器にあっては、加振板80を取付部として制振すべき振動部材に対して固定的に取り付けて、コイル124を含むハウジング122を、振動部材に対して支持ゴム弾性体78を介して弾性的に連結支持せしめることにより、コイル124を含むハウジング122を、コイル124への通電によって振動部材に対して能動加振されるマスとして作用せしめることが出来るのである。
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更,修正,改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
本発明の第一の実施形態としてのエンジンマウントを示す縦断面図である。 図1に示されたエンジンマウントにおける要部拡大図である。 本発明における係止部材のインナロッドへのかしめ固定を行なう実施例として、冶具を差し入れた状態を示す縦断面図である。 本発明における係止部材のインナロッドへのかしめ固定を行なう実施例として、係止部材をかしめた状態を示す縦断面図である。
符号の説明
10 エンジンマウント
12 第一の取付金具
14 第二の取付金具
16 本体ゴム弾性体
80 加振板
86 駆動軸
90 締結部
118 オリフィス通路
132 滑動子
136 係合突部
140 締結部材
144 かしめ筒部
146 コイルスプリング

Claims (6)

  1. 略カップ形状のハウジングにコイル部材を組み込むと共に、該コイル部材への通電によって駆動力が及ぼされるアーマチャを該ハウジングの軸方向に変位可能に配設する一方、該ハウジングの開口部側に出力部材を離隔配置せしめて該出力部材を該ハウジングに対して支持ゴム弾性体を介して弾性支持せしめると共に、該出力部材を該アーマチャに連結することにより、該コイル部材への通電によって該アーマチャから該出力部材に加振力を及ぼして、該出力部材を該ハウジングの軸方向に加振変位せしめるようにした防振用アクチュエータにおいて、
    前記アーマチャに軸方向の貫通孔を設けると共に前記出力部材にインナロッドを突設して該インナロッドを該アーマチャの該貫通孔に挿通して、該インナロッドの該アーマチャからの突出部分をかしめ被着部とする一方、かしめ固定部を備えた係止部材を該インナロッドの突出部分に外挿せしめて、該かしめ固定部を該インナロッドの該かしめ被着部に対してかしめ固定することによって該係止部材を該インナロッドの突出部分に固着すると共に、該アーマチャに対して該インナロッドからの抜け出し方向に付勢力を及ぼす付勢手段を設けて、該インナロッドに対してかしめ固定された該係止部材に対して該アーマチャを該付勢手段の付勢力で抜け出し方向に押し付けて該アーマチャを該インナロッドに対して軸方向で位置決めし、且つ該アーマチャを該インナロッドに対して軸直角方向に隙間をもたせて外挿せしめて該アーマチャにおける該インナロッドの突出側端面に対して軸直角方向の滑り変位が許容される状態で該係止部材を重ね合わせたことを特徴とする防振用アクチュエータ。
  2. 前記インナロッドの前記かしめ被着部の外周面が、凹凸形状とされていると共に、該かしめ被着部に対して前記係止部材の前記かしめ固定部がかしめ固定されている請求項1に記載の防振用アクチュエータ。
  3. 前記インナロッドの前記アーマチャから突出した前記かしめ被着部に雄ねじが形成されている一方、前記係止部材に雌ねじが形成されており、該インナロッドに対して、該係止部材が螺着されている請求項1又は2に記載の防振用アクチュエータ。
  4. 前記ハウジングの底壁の中央部分に作業用孔を設けて、前記アーマチャに挿通した前記インナロッドに対して前記係止部材をかしめ固定する固定作業を、該作業用孔を通じて外部から行うことが出来るようにすると共に、該作業用孔を覆蓋する蓋部材を設けた請求項1乃至3の何れかに記載の防振用アクチュエータ。
  5. 相互に連結されることにより振動伝達系を構成する一方の部材に取り付けられる第一の取付部材と他方の部材に取り付けられる第二の取付部材を本体ゴム弾性体で連結する一方、該本体ゴム弾性体によって壁部の一部が構成されて非圧縮性流体が封入された受圧室を形成すると共に、該受圧室の壁部の別の一部を加振部材で構成し、該加振部材に加振力を及ぼすアクチュエータを設けて、該アクチュエータで該加振部材を加振駆動することにより該受圧室の圧力を能動的に制御するようにした能動型防振用マウントにおいて、前記アクチュエータとして請求項1乃至4の何れかに記載の防振用アクチュエータを用い、該防振用アクチュエータにおける前記ハウジングを前記第二の取付部材に固定する一方、前記出力部材によって前記加振部材を構成したことを特徴とする能動型防振用マウント。
  6. 防振対象部材に装着されることにより、該防振対象部材に加振力を及ぼして能動的な制振作用を発揮する能動型防振用制振器であって、請求項1乃至4の何れかに記載の防振用アクチュエータを用い、該防振用アクチュエータにおける前記ハウジングと前記出力部材の一方において前記防振対象部材に固定するための取付部を設けると共に、それらハウジングと出力部材の他方にマス部を設けたことを特徴とする能動型防振用制振器。
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