以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1には、本発明に従う構造とされた流体封入式防振装置の第1の実施形態として、自動車用のエンジンマウント10が示されている。エンジンマウント10は、第1の取付部材12と第2の取付部材14を本体ゴム弾性体16によって弾性連結した構造を有しており、第1の取付部材12が図示しないパワーユニットに取り付けられると共に、第2の取付部材14が外嵌されたアウタブラケット18を介して図示しない車両ボデーに取り付けられることにより、パワーユニットと車両ボデーを防振連結するようになっている。なお、以下の説明において、上下方向とは、原則として、図1中の上下方向をいう。
より詳細には、第1の取付部材12は、金属材料等で形成された高剛性の部材であって、上側が小径とされた略段付き円柱形状の本体部20と、本体部20の段部において外周側に突出するフランジ部22を、一体的に備えている。また、本体部20には、上面に開口して中心軸上を延びるねじ孔24が形成されており、ねじ孔24に対して植込みボルト26が螺着されている。
一方、第2の取付部材14は、薄肉大径の略円筒状で、下端部が径方向内側に向かって内フランジ状に突出した形状とされており、第1の取付部材12と同様の金属材料等で形成された高剛性の部材とされている。
そして、第1の取付部材12と第2の取付部材14は、径方向および軸方向に離隔して同一中心軸上に配置されており、本体ゴム弾性体16によって相互に弾性連結されている。本体ゴム弾性体16は、厚肉大径の略円錐台形状を呈しており、小径側端部に第1の取付部材12の本体部20が加硫接着されていると共に、大径側端部の外周面に第2の取付部材14の内周面が重ね合わされて加硫接着されている。
また、本体ゴム弾性体16には、ストッパゴム28が一体形成されている。ストッパゴム28は、本体ゴム弾性体16の小径側端部から延び出して第1の取付部材12のフランジ部22の外周面および上面を覆うように固着されており、フランジ部22の上面から上方に突出している。
また、本体ゴム弾性体16の大径側端面には、中央凹所30が開口している。中央凹所30は、逆向きの略すり鉢状乃至は略円柱状の凹所であって、下方に向かって開口している。
また、第2の取付部材14には、可撓性膜32が取り付けられている。可撓性膜32は、薄肉の略円板形状乃至は略ドーム形状を呈するゴム膜であって、上下方向に充分な弛みを有している。また、可撓性膜32の外周縁部には略円筒形状の固着部34が一体形成されており、固着部34が筒状嵌着金具36に加硫接着されている。筒状嵌着金具36は、段付きの略円筒形状とされており、下側に位置する小径部分の内周面に固着部34が加硫接着されていると共に、上側に位置する大径部分が第2の取付部材14に外挿されてから縮径加工されることにより、第2の取付部材14に嵌着されている。このように筒状嵌着金具36が第2の取付部材14に外嵌固定されることにより、可撓性膜32が第2の取付部材14に取り付けられて、第2の取付部材14の下側開口部が可撓性膜32によって閉塞されている。なお、筒状嵌着金具36の大径部分の内周面が薄肉のゴム弾性体で形成されたシールゴム層38で被覆されており、第2の取付部材14と筒状嵌着金具36がシールゴム層38を介して流体密に組み付けられている。
このように可撓性膜32が第2の取付部材14に取り付けられることにより、本体ゴム弾性体16と可撓性膜32の対向面間には、外部から密閉された流体封入領域40が形成されて、非圧縮性流体が封入されている。なお、流体封入領域40に封入される非圧縮性流体は、特に限定されるものではないが、例えば、水やアルキレングリコール、ポリアルキレングリコール、シリコーン油、或いはそれらの混合液等が好適に採用される。更に、後述する流体の流動作用に基づく防振効果をより効果的に発揮させるためには、0.1Pa・s以下の低粘性流体が望ましい。
また、流体封入領域40には、仕切部材42が配設されている。仕切部材42は、薄肉の略円板形状を呈する部材であって、中央部分には厚さ方向に貫通する複数の透孔44が形成されている。
そして、仕切部材42は、第2の取付部材14と筒状嵌着金具36の蹴上部分との軸方向対向面間に外周縁部が挟み込まれることにより、第2の取付部材14によって支持されて、流体封入領域40において軸直角方向に広がっている。このように仕切部材42が配設されることにより、流体封入領域40は、仕切部材42を挟んで上下に隔てられており、仕切部材42よりも上側に位置する部分が、壁部の一部を本体ゴム弾性体16で構成されて振動が入力される受圧室46とされている。
また、仕切部材42と可撓性膜32の軸方向間には、加振部材48が配設されている。加振部材48は、略円板形状を有する連結底部50と、連結底部50の外周縁部から上方に向かって突出する略円筒形状の補強筒部52とを一体的に備えており、全体として小径の略カップ形状乃至は有底円筒形状を呈している。また、加振部材48が鉄等の金属材料で形成されていると共に、連結底部50が薄肉の板状とされており、連結底部50が板ばねのように曲げ変形に対して充分な弾性を有している。
さらに、加振部材48には、かしめ孔54が形成されている。かしめ孔54は、連結底部50の径方向中央部分を上下(厚さ方向)に貫通する円形の孔であって、連結底部50の直径に比して充分に小径とされている。なお、かしめ孔54の孔断面形状は、円形に限定されるものではなく、多角形や長円形等であっても良い。また、かしめ孔54は、連結底部50の径方向中央を外れた位置に形成されることもあり得る。
また、加振部材48の外周側には、環状の支持部材56が配設されている。支持部材56は、周方向環状に延びる環状溝部58と、環状溝部58の外周壁部の上端から外側に突出する円環板形状の支持フランジ60とを、一体的に備えた構造とされている。また、支持部材56の環状溝部58の内径寸法が加振部材48の外径寸法よりも大きくされており、環状溝部58の内周壁部が加振部材48の周壁部に対して径方向外側に離隔して対向配置されている。
更にまた、加振部材48と支持部材56の間には、支持ゴム弾性体62が配設されている。支持ゴム弾性体62は、略円環板形状を有しており、内周側に向かって次第に厚肉となっている。そして、支持ゴム弾性体62の内周端部が加振部材48の補強筒部52に加硫接着されると共に、外周縁部が支持部材56における環状溝部58の内周壁部に加硫接着されることにより、それら加振部材48と支持部材56が支持ゴム弾性体62によって弾性連結されている。換言すれば、加振部材48の外周部分が支持ゴム弾性体62によって支持されており、支持ゴム弾性体62の弾性に基づいて加振部材48の外周部分が位置決めされている。なお、支持ゴム弾性体62の内周端部が加振部材48の周壁部の内外両面に固着されていると共に、支持ゴム弾性体62の外周端部が環状溝部58の内周壁部の内外両面に固着されている。また、支持ゴム弾性体62は、加振部材48と支持部材56を備えた一体加硫成形品として形成されている。
このようにして形成された支持ゴム弾性体62の一体加硫成形品は、支持部材56の支持フランジ60が仕切部材42と筒状嵌着金具36の蹴上部分との間に全周に亘って挟持されることにより、第2の取付部材14によって支持されている。これにより、加振部材48は、支持ゴム弾性体62を介して第2の取付部材14に支持されており、上下方向への変位を許容された状態で弾性的に配設されている。
また、仕切部材42と可撓性膜32の軸方向間に形成された流体封入領域40の下側部分が、支持ゴム弾性体62の一体加硫成形品を挟んで上下に分割されている。そして、可撓性膜32と支持ゴム弾性体62の一体加硫成形品との間には、壁部の一部が可撓性膜32で構成された平衡室64が形成されている。一方、仕切部材42と加振部材48および支持ゴム弾性体62との間には、壁部の一部が加振部材48で構成された中間室66が形成されている。なお、言うまでもないが、受圧室46,平衡室64,中間室66には、何れも非圧縮性流体が封入されている。また、本実施形態では、流体室が受圧室46と中間室66を含んで構成されている。
また、環状溝部58の上側開口部が仕切部材42によって覆蓋されて、トンネル状の流路が形成されていると共に、トンネル状の流路が周上の一部において支持ゴム弾性体62と一体形成された図示しない隔壁によって遮断されて、周方向に1周弱の所定長さで延びている。そして、このトンネル状の流路は、周方向一方の端部が上側連通孔68を通じて受圧室46に連通されていると共に、周方向他方の端部が下側連通孔70を通じて平衡室64に連通されている。これにより、受圧室46と平衡室64を相互に連通するオリフィス通路72が、環状溝部58を利用して形成されている。このオリフィス通路72は、エンジンシェイクに相当する10Hz程度の低周波数にチューニングされている。なお、環状溝部58の溝内面は、支持ゴム弾性体62と一体形成されたゴム弾性体が加硫接着されており、オリフィス通路72の通路断面積がゴム弾性体の形状によって調節されている。
また、受圧室46と中間室66は、仕切部材42に形成された複数の透孔44を通じて相互に連通されており、透孔44によってフィルタオリフィス74が構成されている。そして、フィルタオリフィス74を通じて中間室66の圧力が受圧室46に伝達されるようになっている。フィルタオリフィス74は、走行こもり音等に相当する120Hz程度の高周波数にチューニングされており、チューニング周波数がオリフィス通路72よりも高周波数に設定されている。
このような構造を有するマウント本体の下方には、アクチュエータとしての電磁式アクチュエータ76が配設されている。電磁式アクチュエータ76は、可撓性膜32よりも下方に配設されており、コイル82を備えた固定子78と、固定子78に対して軸方向上下に加振変位可能とされた可動子80とを、備えている。
固定子78は、円筒形状のコイル82の周囲にヨーク金具84が組み付けられた構造を有している。なお、コイル82とヨーク金具84の間には電気絶縁性の合成樹脂材料で形成された絶縁部材86が設けられており、コイル82の周囲が絶縁部材86によって覆われている。
ヨーク金具84は、強磁性を有する金属材料で形成されており、底壁中央に円形の貫通孔を有する有底円筒形状の外周ヨーク金具88と、略円環形状で外周ヨーク金具88の貫通孔に嵌め込まれた内周ヨーク金具90と、略円環板形状で外周ヨーク金具88の上側開口部に取り付けられる上ヨーク金具92とを、組み合わせて形成されている。また、内周ヨーク金具90の内周上端部と、上ヨーク金具92の内周下端部が、相互に離隔して磁気ギャップが形成されており、それらヨーク金具90,92の内周端部が、コイル82への通電によって磁極が形成される磁極部94,96とされている。なお、上ヨーク金具92の下端外周縁部に一体形成されたかしめ片が、外周ヨーク金具88の上端に設けられたフランジ状部にかしめ固定されることによって、上ヨーク金具92と外周ヨーク金具88が固定されており、本実施形態では、それら上ヨーク金具92および外周ヨーク金具88を含んだヨーク金具84によって、電磁式アクチュエータ76のハウジング金具が構成されている。
このような構造とされた固定子78は、上ヨーク金具92に筒状嵌着金具36の下端部が外挿されて、縮径かしめ固定されることにより連結固定されており、電磁式アクチュエータ76の固定子78が筒状嵌着金具36を介して第2の取付部材14によって支持されている。なお、筒状嵌着金具36と上ヨーク金具92の連結部分には、固着部34の下端部で構成されたシールゴムが挟み込まれており、筒状嵌着金具36と上ヨーク金具92の連結部分がシールされて、ダスト等の侵入が防止されている。
また、固定子78の中央部分には、可動子80が配設されている。可動子80は、強磁性体で形成された略円筒形状の部材であって、上端部分には内周側に突出する内フランジ部98が一体形成されている。この可動子80は、上ヨーク金具92の中央孔に挿入されていると共に、内周ヨーク金具90の内周端部と軸方向で対向して配置されている。そして、コイル82に通電されて内周ヨーク金具90の内周端部(磁極部94)に磁極が形成されると、磁力の作用に基づいて可動子80に内周ヨーク金具90側への引力が及ぼされて、可動子80が軸方向下方に変位されるようになっている。
さらに、可動子80には、出力軸100が取り付けられている。出力軸100は、全体として上下方向に延びる小径のロッド形状を呈しており、その中間部分に外周側に向かって突出する環状の固着フランジ102が一体形成されている。また、出力軸100における固着フランジ102を挟んだ軸方向上側部分が、固着フランジ102よりも小径の略円柱形状を呈する上側円柱部104とされていると共に、固着フランジ102を挟んだ軸方向下側部分が、上側円柱部104よりも小径の円形軸状で下端部の外周面に雄ねじが刻設された下側ロッド部106とされている。
そして、出力軸100は、下側ロッド部106が可動子80の中心孔に挿通されており、固着フランジ102と可動子80の上面との間にコイルスプリング108が介装されると共に、下側ロッド部106の下端部に係止ナット110が螺着されて内フランジ部98に下方から当接することにより、可動子80に対して弾性的に位置決めされて連結されている。なお、上記の説明からも明らかではあるが、出力軸100の固着フランジ102および上側円柱部104と可動子80は、軸方向離隔側への相対変位が係止ナット110によって規制されていると共に、軸方向接近側への相対変位がコイルスプリング108の変形によって許容されている。
また、可動子80から上方に延び出した出力軸100は、可撓性膜32の径方向中央部分を上下に貫通して配設されており、固着フランジ102に対して可撓性膜32の内周縁部が加硫接着されている。なお、可撓性膜32の内周縁部が全周に亘って固着フランジ102に加硫接着されていることによって、流体封入領域40の流体密性が確保されている。
さらに、可撓性膜32を貫通して上方に延び出した出力軸100の上端部分は、加振部材48に固定されている。より詳細には、出力軸100の上端には、小径略円柱形状のかしめ突起112が一体形成されて、中心軸上で上方に向かって突出している。このかしめ突起112は、加振部材48の連結底部50に形成されたかしめ孔54の直径に対して、同じか僅かに小さな直径を有していると共に、加振部材48の連結底部50の径方向中央部分の厚さ寸法よりも大きな突出高さ寸法で形成されている。そして、加振部材48と出力軸100が上下に重ね合わされて、出力軸100のかしめ突起112が加振部材48のかしめ孔54に挿通された後、加振部材48の連結底部50よりも上方に突出した上端部分を拡径変形されることにより、かしめ突起112の拡径部分(上端部分)がかしめ孔54の開口周縁部に係止されて、出力軸100が加振部材48に対して径方向中央の1点でかしめ固定されている。このように、本実施形態では、かしめ突起112とかしめ孔54の開口周縁部とのかしめ固定構造によって、加振部材48と出力軸100を連結するための連結手段が構成されている。
また、加振部材48と出力軸100の重ね合わせ面は、加振部材48の連結底部50の下面が外周側に行くに従って次第に下傾するテーパ下面114とされていると共に、出力軸100の上面が略軸直角方向に広がる軸直上面116とされている。テーパ下面114は、出力軸100の軸直上面116に対して相対的に傾斜するテーパ面とされていると共に、球冠凹状の湾曲面とされており、外周側に行くに従って軸直上面116に対する傾斜角度が大きくなっている。また、加振部材48の連結底部50が出力軸100の上側円柱部104よりも大径とされており、テーパ下面114が軸直上面116よりも大径とされている。なお、連結底部50は、上面が略軸直角方向に広がっており、内周側に行くに従って次第に薄肉とされている。
そして、加振部材48と出力軸100のかしめ固定に際して、加振部材48のテーパ下面114と軸直上面116が軸方向上下に重ね合わされる。そこにおいて、テーパ下面114が軸直角平面に対して傾斜する湾曲面とされて、軸直上面116に対して相対的に傾斜していることから、テーパ下面114と軸直上面116は、内周部分で上下に離隔しており、それらテーパ下面114と軸直上面116の内周部分の対向面間に微小な隙間が形成されている。一方、軸直上面116の外周縁部がテーパ下面114の径方向中間部分に当接して当接部118とされている。この当接部118は、全周に亘って連続的に延びる環状とされており、かしめ孔54およびかしめ突起112よりも外周側に設けられている。
さらに、加振部材48と出力軸100が重ね合わされた後、かしめ突起112がかしめ孔54の開口周縁部にかしめ固定されて、加振部材48の径方向中央部分に下向きの力が作用することにより、加振部材48の連結底部50において径方向中央部分と当接部118との径方向間に位置する部分が、弾性的に曲げ変形されている。これにより、加振部材48の連結底部50は、それ自体の弾性に基づいて、上面の内周縁部がかしめ突起112の拡径部分に押し当てられていると共に、下面(テーパ下面114)が出力軸100の軸直上面116の外周縁部に押し当てられている。
なお、加振部材48と出力軸100がかしめ固定されて、加振部材48と可動子80が出力軸100によって連結された状態で、コイル82に対して図示しない外部の電源から通電されて、可動子80に軸方向下向きの力が及ぼされると、可動子80に連結された出力軸100が下方に変位して、出力軸100の上端に固定された加振部材48が下方に変位する。その後、電源からコイル82への通電を停止すると、加振部材48の変位によって弾性変形させられた支持ゴム弾性体62の弾性に基づく復元力が作用して、加振部材48とそれに連結された出力軸100および可動子80が初期位置に復帰する。従って、電源からコイル82への通電がマップ制御やフィードバック制御等によって制御されることにより、加振部材48が電磁式アクチュエータ76によって上下に加振変位されて、中間室66に所定の加振力が及ぼされるようになっている。そして、中間室66に及ぼされた加振力は、フィルタオリフィス74を通じて受圧室46に伝達されて、受圧室46に入力されるアイドリング振動や走行こもり音等の振動が相殺されることにより、目的とする能動的な防振効果が発揮されるようになっている。
このような構造とされたエンジンマウント10では、加振部材48と出力軸100が1点でかしめ固定された構造において、かしめ固定部分を外周側に外れた位置に加振部材48と出力軸100が当接する当接部118が設けられている。これにより、加振部材48と出力軸100の周方向での相対回転に対する抗力(固定力)が、当接部118における加振部材48と出力軸100の摩擦抵抗等に基づいて、大きく確保される。従って、加振部材48と出力軸100が鍛造によって形成されて、それら加振部材48と出力軸100の重ね合わせ面が凹凸の少ない滑らかな面とされている場合にも、加振部材48と出力軸100が周方向で位置決めされて、相対回転が防止される。
しかも、当接部118は、出力軸100の上側円柱部104の外周縁部が加振部材48のテーパ下面114に当接することで設けられており、かしめ固定部分よりも外周側に大きく外れて位置している。それ故、加振部材48と出力軸100の相対回転がより効果的に防止されて、加振部材48と出力軸100の連結固定がより強固に実現される。
さらに、加振部材48と出力軸100のかしめ固定前の重ね合わせ状態において、加振部材48と出力軸100の重ね合わせ面(テーパ下面114と軸直上面116)は、当接部118において当接していると共に、当接部118よりも内周側において離隔している。そして、加振部材48と出力軸100が当接部118よりも内周側の1点でかしめ固定されると、加振部材48の内周部分にかしめによる下向き(出力軸100への密着方向)の外力が作用して、加振部材48の連結底部50におけるかしめ固定部分と当接部118の間に跨る部分に対して曲げモーメントが及ぼされる。これにより、加振部材48が当接部118において出力軸100に充分に押し付けられて、加振部材48と出力軸100のがたつきや相対回転が効果的に防止される。
また、加振部材48の連結底部50の外周縁部に補強筒部52が一体形成されており、連結底部50の剛性が高められて、連結底部50の形状安定性が高められている。それ故、加振部材48と出力軸100の連結部分において、かしめによる固定力が有効に発揮される。
また、加振部材48の連結底部50の下面がテーパ下面114とされていると共に、出力軸100の上側円柱部104の上面が軸直上面116とされており、それらテーパ下面114と軸直上面116が相対的に傾斜していると共に、軸直上面116がテーパ下面114よりも小径とされていることによって、加振部材48と出力軸100の当接部118が構成されている。従って、加振部材48と出力軸100をかしめ固定部分よりも外周側で当接させるために特別な突部を設ける必要はなく、簡単な構造の加振部材48および出力軸100によって当接部118を得て、目的とする固定力を得ることができる。
また、加振部材48と出力軸100が、出力軸100に一体形成されたかしめ突起112によってかしめ固定されることから、加振部材48と出力軸100を連結するためにねじや頭部付き圧入ピン等の特別な部品を要することなく、少ない部品点数でそれら加振部材48と出力軸100の連結固定が実現される。しかも、かしめ突起112が、かしめ孔54への挿通後に先端部分を拡径変形されることによって、かしめ突起112のかしめ孔54からの抜けに対する抗力が大きく得られて、加振部材48と出力軸100が強固に固定される。
図3には、本発明に従う構造とされた流体封入式能動型防振装置の第2の実施形態として、自動車用のエンジンマウントの要部が拡大されて示されている。なお、以下の説明において、第1の実施形態と実質的に同一の部材および部位については、図中に同一の符号を付すことによって説明を省略する。また、図中に示されていない部分については、第1の実施形態と同様である。
すなわち、本実施形態のエンジンマウントでは、加振部材48の連結底部50の下面が、略軸直角方向に広がる軸直下面120とされていると共に、出力軸100の上側円柱部104の上面が軸直角方向に対して傾斜して広がるテーパ上面122とされている。テーパ上面122は、外周側に行くに従って次第に上傾する傾斜面であって、略球冠凹状の湾曲面とされている。
そして、加振部材48と出力軸100が上下に重ね合わされることにより、内周部分において加振部材48の軸直下面120と出力軸100のテーパ上面122が隙間を有して上下に離隔していると共に、出力軸100のテーパ上面122の外周縁部が加振部材48の軸直下面120に当接して当接部118とされている。
さらに、加振部材48と出力軸100が上下に重ね合わされた状態で、かしめ突起112がかしめ孔54の開口周縁部にかしめ固定されて、加振部材48の連結底部50の径方向中央部分に下向きの力が及ぼされることにより、連結底部50における径方向中央部分と当接部118の間に跨る部分が弾性的に曲げ変形される。これにより、連結底部50の上面がかしめ突起112の拡径部分に押し当てられると共に、連結底部50の軸直下面120が出力軸100のテーパ上面122の外周縁部に押し当てられている。
このような第2の実施形態に従う構造のエンジンマウントにおいても、第1の実施形態のエンジンマウント10と同様に、加振部材48と出力軸100がかしめ固定部分よりも外周側の当接部118で当接されていることから、それら加振部材48と出力軸100の固定力がより大きく発揮されて、特に中心軸回りでの相対回転が防止される。
また、上記の如き加振部材48と出力軸100の位置決め作用は、互いに重ね合わされる連結底部50の下面と上側円柱部104の上面が、外周側に行くに従って次第に相対的に傾斜して、かしめ固定部分よりも外周側で当接していれば良い。従って、連結底部50の下面が軸直角方向に広がる軸直下面120とされていると共に、上側円柱部104の上面が軸直角方向に対して傾斜して広がるテーパ上面122とされていても、当接部118が設けられていれば、目的とする位置決め作用(回転方向での固定作用)を得ることができる。
なお、加振部材48の連結底部50の下面と、出力軸100の上側円柱部104の上面との両方が、軸直角方向で広がる平面に対して傾斜していても良い。具体的には、加振部材48の連結底部50の下面がテーパ下面114とされていると共に、出力軸100の上側円柱部104の上面がテーパ上面122とされて、テーパ上面122の外周縁部がテーパ下面114に当接して当接部118とされていても、前記第1,第2の実施形態と同様の効果が発揮される。
要するに、重ね合わされる加振部材48の下面と出力軸100の上面は、相対的に傾斜していて、かしめ固定部分よりも外周側で当接していれば、何れかが軸直角方向に対して傾斜していても良いし、両方が異なる傾斜角度で傾斜していても良い。
図4には、本発明に従う構造とされた流体封入式能動型防振装置の第3の実施形態として、自動車用のエンジンマウントの要部が拡大されて示されている。本実施形態のエンジンマウントでは、第1の実施形態と同様に、加振部材48の連結底部50の下面がテーパ下面114とされていると共に、出力軸100の上側円柱部104の上面が軸直上面116とされている。
また、加振部材48の連結底部50には、下方に向かって突出する当接突部130が一体形成されている。当接突部130は、略半円形断面で全周に亘って連続的に延びる環状の突条であって、かしめ突起112およびかしめ孔54を外周側に外れた位置で且つ出力軸100の軸直上面116と重ね合わされる位置に設けられている。
そして、加振部材48と出力軸100が上下に重ね合わされることによって、当接突部130が軸直上面116の外周部分に当接して当接部118とされている。なお、当接突部130を外れた部分において、テーパ下面114と軸直上面116は、隙間を有して上下に離隔している。
このような第3の実施形態に示されたエンジンマウントでは、加振部材48の連結底部50から下方に突出する当接突部130が設けられており、かしめ固定部分よりも外周側において当接突部130が出力軸100の軸直上面116に当接されている。これにより、第1,第2の実施形態と同様に、加振部材48と出力軸100の相対回転が、当接部118における摩擦等に基づいて防止されて、加振部材48と出力軸100が有効に位置決めされている。
また、当接突部130が設けられていることによって、加振部材48と出力軸100がより安定して当接されて、かしめ固定による周方向での位置決め作用が有効に発揮される。
図5には、本発明に従う構造とされた流体封入式能動型防振装置の第4の実施形態として、自動車用のエンジンマウントの要部が拡大されて示されている。本実施形態のエンジンマウントでは、第2の実施形態と同様に、加振部材48の連結底部50の下面が軸直下面120とされていると共に、出力軸100の上側円柱部104の上面がテーパ上面122とされている。
また、出力軸100の上側円柱部104には、上方に向かって突出する当接突部140が一体形成されている。当接突部140は、略半円形断面で全周に亘って連続的に延びる突条であって、かしめ突起112およびかしめ孔54を外周側に外れた位置に設けられている。本実施形態において、当接突部140は、かしめ突起112およびかしめ孔54に対して外周側に大きく離隔しており、テーパ上面122の外周部分に突出形成されている。
そして、加振部材48と出力軸100が上下に重ね合わされることによって、当接突部140が軸直下面120に当接して当接部118とされている。なお、当接突部140を外れた部分において、軸直下面120とテーパ上面122は、隙間を有して上下に離隔している。
このような第4の実施形態に従う構造とされたエンジンマウントにおいても、第3の実施形態と同様の効果が発揮される。要するに、当接突部は、加振部材48と出力軸100の重ね合わせ面の何れか又は両方から突出して、他方の面に当接していれば良い。
なお、当接突部130,140の少なくとも一方が設けられている場合には、加振部材48と出力軸100の重ね合わせ面は、何れも軸直角方向に広がる平面とされていても良い。即ち、加振部材48の連結底部50の下面が軸直下面120とされていると共に、出力軸100の上側円柱部104の上面が軸直上面116とされて、それら軸直下面120と軸直上面116の少なくとも一方に当接突部が設けられていても良い。
図6には、本発明に従う構造とされた流体封入式能動型防振装置の第5の実施形態として、自動車用のエンジンマウントの要部が拡大されて示されている。本実施形態のエンジンマウントでは、加振部材48と出力軸100の連結手段がねじ固定によって構成されている。
すなわち、出力軸100の上端部分には、中心軸上を延びて上面に開口するねじ孔150が形成されている。このねじ孔150は、加振部材48の連結底部50を貫通する挿通孔152と略同じ直径を有する円形孔であって、内周面にねじ山が形成されている。
そして、加振部材48のテーパ下面114と出力軸100の軸直上面116が重ね合わされて、加振部材48の挿通孔152と出力軸100のねじ孔150の開口部が位置決めされると共に、挿通孔152に上方から挿入されたねじ154がねじ孔150に螺着されることによって、加振部材48と出力軸100が径方向中央の1点で連結されている。
このように、加振部材48と出力軸100の連結手段は、かしめ固定に限定されるものではなく、ねじ154のねじ孔150への螺着による固定を利用することもできる。しかも、当接部118において発揮される摩擦力等に基づいて加振部材48と出力軸100の相対回転が抑えられて、ねじ154の弛みが防止されることから、加振部材48と出力軸100の安定した連結が実現される。
なお、ねじ154の代わりに頭部付き圧入ピンを採用して、圧入ピンを加振部材48の挿通孔152に上方から挿し入れて、出力軸100の上端面に開口する孔に圧入することで、加振部材48と出力軸100を連結することもできる。
また、本発明の第6の実施形態としてのエンジンマウントの要部(図7参照)に示されているように、出力軸100に突設された圧入突起160が、加振部材48の連結底部50に形成された圧入孔162に圧入されることによって、それら加振部材48と出力軸100を連結するための連結手段が構成されていても良い。具体的には、圧入突起160は、小径の柱形状とされて、その横断面形状が加振部材48の連結底部50を貫通する圧入孔162の孔断面形状と略同じとされており、出力軸100の中心軸上で上方に向かって突出している。そして、圧入突起160が圧入孔162に対して下方から圧入されることにより、加振部材48と出力軸100が径方向中央部分で相互に連結されている。
このように、出力軸100と一体の圧入突起160を採用すれば、ねじや頭部付きの圧入ピンを用いる場合に比して、部品点数を少なくして、構造の簡略化を図ることができる。また、圧入突起160の先端部分をかしめ加工(拡径加工)する必要がなく、加振部材48と出力軸100の連結が簡単な作業によって実現される。
なお、加振部材48の連結底部50から下方に突出するように圧入突起が設けられていると共に、出力軸100の上端面に開口するように圧入孔が設けられて、圧入突起を圧入孔に対して上方から圧入されることで加振部材48と出力軸100が連結されていても良い。
要するに、加振部材48と出力軸100の連結手段は、特に限定されるものではないが、部品点数を少なくするためには、加振部材48や出力軸100に一体的に設けられたかしめ固定構造や圧入固定構造であることが望ましく、更に抜けを防止して長期的に安定した連結を実現するためには、係止部分を有するかしめ構造が好適である。なお、第5,第6の実施形態に示されたねじ固定構造や圧入固定構造は、第1〜第4の実施形態に示された何れの構造においても、かしめ固定構造に代えて採用することが可能である。
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、前記実施形態では、当接部118が全周に亘って連続的に設けられていたが、当接部は周上で部分的に設けられていても良い。具体的には、例えば、第1,第2の実施形態の構造において、加振部材48と出力軸100の対向面の何れか一方が周方向に波状とされることによって、加振部材48と出力軸100が周上で部分的に当接していても良い。また、例えば、第3,第4の実施形態の構造において、当接突部が、周方向で1周に満たない長さの突条とされていたり、半球状の突起とされていることによって、加振部材48と出力軸100が周上で部分的に当接していても良い。なお、周方向で1周未満の長さを有する当接突部を採用する場合には、同一周上で複数の当接突部が形成されることによって、かしめ固定による加振部材48と出力軸100の当接に際して傾き等を防ぐこともできる。
また、加振部材の具体的な形状は特に限定されるものではなく、例えば、補強筒部52が省略されて連結底部50だけで構成されたような、略円板形状のものも採用され得る。更に、加振部材としては、例えば、特開2005−282821号公報等に開示された逆向きカップ形状(ハット形状)のもの等も採用可能である。
また、加振部材48は、必ずしも支持ゴム弾性体62によって第2の取付部材14と弾性連結されている必要はない。例えば、中間室66と平衡室64が硬質の第2の仕切部材によって仕切られていると共に、第2の仕切部材の径方向中央部分には上下に貫通する挿通孔が形成されており、その挿通孔に加振部材48が微小隙間をもって挿入されて、加振部材48が挿通孔内で上下に加振変位可能とされた構造も採用され得る。
また、第1,第2の実施形態では、加振部材48の連結底部50が出力軸100の上側円柱部104よりも大径とされて、上側円柱部104の外周縁部が連結底部50の径方向中間部分に当接されているが、例えば、連結底部が上側円柱部よりも小径とされて、連結底部の外周縁部が上側円柱部の径方向中間部分に当接されて、当接部が構成されていても良い。
また、前記実施形態では、当接部が、出力軸100の上側円柱部104の外周縁部のエッジが加振部材48の下面に当接されて設けられたり、略半円形断面を有する当接突部が加振部材48と出力軸100の対向面の一方に当接されて設けられており、当接部の径方向での幅寸法が極めて小さくされていた。しかしながら、当接部は、そのような線状のものに限定されず、径方向の幅寸法が確保されていても良い。これによれば、加振部材48と出力軸100の当接面積がより大きくなって、摩擦等に基づいた加振部材48と出力軸100の周方向での位置決め効果が、より有利に発揮され得る。
また、前記実施形態では、壁部の一部が可撓性膜32で構成された平衡室64が設けられており、受圧室46と平衡室64を連通するオリフィス通路72が形成されていたが、平衡室64はなくても良く、それに伴ってオリフィス通路72も必須ではない。従って、前記実施形態では、出力軸100が、可撓性膜32の内周縁部に固着されたダイヤフラムインナ金具としても機能しているが、必ずしも出力軸100に対して可撓性膜32が固着されている必要もない。
また、本発明は、必ずしも自動車用のエンジンマウントにのみ適用されるものではなく、例えば、自動車用のサブフレームマウントやボデーマウント、デフマウント等の他、自動車以外の各種振動体(例えば、自動二輪車や鉄道用車両、産業用車両等)の防振装置に対して、何れも適用可能である。