以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
先ず、図1には、本発明に係る流体封入式防振装置の第一の実施形態として、自動車用のエンジンマウント10が示されている。エンジンマウント10は、第一の取付部材としての第一の取付金具14と第二の取付部材としての第二の取付金具16を本体ゴム弾性体18で相互に連結した構造を有している。そして、第一の取付金具14が図示しないパワーユニット側に取り付けられると共に、第二の取付金具16が図示しない車両ボデー側に取り付けられることで、パワーユニットが車両ボデーに防振支持されるようになっている。なお、以下の説明において、上下方向とは、特に説明がない限り、エンジンマウント10の軸方向である図1中の上下方向を言うものとする。
より詳細には、第一の取付金具14は、鉄やアルミニウム合金等の金属材で形成された高剛性の部材であって、全体として略円形ブロック形状を有しており、上端部分が略一定の円形断面を有する円柱形状を有していると共に、下端部が下方に行くに従って次第に小径となる逆向きの略円錐台形状を有している。また、第一の取付金具14の径方向中央部分には、上方に向かって突出する取付ボルト20が一体形成されている。
一方、第二の取付金具16は、全体として薄肉大径の略円筒形状を呈しており、第一の取付金具14と同じ材料で形成されている。また、第二の取付金具16の上端部分は、上方に行くに従って次第に拡開するテーパ形状とされており、その上端縁部には、フランジ状部22が一体形成されている。更に、第二の取付金具16の下端部に対して外周側に向かって広がる段差部24が形成されていると共に、該段差部24の外周縁部には、下方に向かって延び出す円筒形状のかしめ片26が一体形成されている。
また、第一の取付金具14と第二の取付金具16が同一中心軸上に配置されて、第一の取付金具14が第二の取付金具16の一方の開口部側に離隔して位置せしめられていると共に、それら第一の取付金具14と第二の取付金具16の間には本体ゴム弾性体18が介装されている。本体ゴム弾性体18は、厚肉の略円錐台形状を有しており、逆向きの略すり鉢状を有して大径側端面に開口する大径凹所28を備えている。そして、本体ゴム弾性体18の小径側端部に第一の取付金具14が埋設されて加硫接着されていると共に、大径側端部の外周面に第二の取付金具16の上端部分の内周面が重ね合わされて加硫接着されている。これにより、第一の取付金具14と第二の取付金具16が本体ゴム弾性体18によって弾性連結されている。なお、本実施形態では、本体ゴム弾性体18が第一の取付金具14と第二の取付金具16を備えた一体加硫成形品として形成されている。
さらに、本体ゴム弾性体18に形成された大径凹所28の開口周縁部から下方に向かって延び出すようにシールゴム層30が形成されている。シールゴム層30は、薄肉大径の略円筒形状を有するゴム弾性体で形成されており、第二の取付金具16の軸方向中間部分から段差部24に亘る領域の内周面を略全面に亘って覆うように被着形成されている。
また、本体ゴム弾性体18の一体加硫成形品には、可撓性膜としてのダイヤフラム32が取り付けられている。ダイヤフラム32は、薄肉の略円板形状を有するゴム弾性体で形成されており、径方向の中間部分に軸方向で十分な弛みが与えられている。また、ダイヤフラム32の径方向中央部分は、外周部分と比較して厚肉とされた円形の中央当接部34とされている。
さらに、ダイヤフラム32の中央当接部34には、環状当接リップ35が一体形成されている。環状当接リップ35は、中央当接部34から上方に向かって突出する突条であって、略一定の断面形状で周方向に連続的に延びるリング状となっている。また、本実施形態では、環状当接リップ35が略半円形の断面形状を有しており、その断面形状が突出先端側に行くに従って次第に狭幅となっている。
更にまた、ダイヤフラム32において薄肉とされた外周部分の内周縁部が、中央当接部34の外周縁部から下方に向かって円環段差形状をもって延び出している。これにより、ダイヤフラム32の径方向中央部分が中央当接部34を上底壁部として下方に向かって開口する逆向きの略皿形状とされており、その外周部分を構成する円環段差形状の部分によって位置決め部36が形成されている。
また、ダイヤフラム32の外周縁部には、環状の固定金具38が加硫接着されている。固定金具38は、略円環板形状を有する固着部40の外周縁部に対して上方に突出するかしめ部42を一体形成した構造を有しており、固着部40の内周部分に対してダイヤフラム32の外周縁部が加硫接着されていると共に、固着部40の外周部分の上面およびかしめ部42の内周面には、ダイヤフラム32と一体形成されたシール部44が固着されている。なお、本実施形態では、ダイヤフラム32が固定金具38を備えた一体加硫成形品として形成されている。
このような固定金具38を備えたダイヤフラム32は、固定金具38のかしめ部42が、第二の取付金具16のかしめ片26に対して内挿されて、第二の取付金具16の段差部24に対して下方から重ね合わされることにより、本体ゴム弾性体18の一体加硫成形品に対して位置決めされている。そして、固定金具38が、後述するブラケット金具76およびケース金具86と共に、かしめ片26によってかしめ固定されることにより、ダイヤフラム32が第二の取付金具16に対して取り付けられている。
このようなダイヤフラム32の第二の取付金具16への取付下、第二の取付金具16の内周側における本体ゴム弾性体18とダイヤフラム32の軸方向対向面間には、外部から密閉された流体封入領域46が形成されており、内部に非圧縮性流体が封入されている。なお、流体封入領域46に封入される非圧縮性流体は、特に限定されるものではないが、例えば、アルキレングリコール,ポリアルキレングリコール,シリコーン油やそれらの混合液が好適に採用される。また、後述する流体の流動作用に基づく防振効果を有効に得るために、粘度が0.1Pa・s以下の低粘性流体を採用することが望ましい。
また、流体封入領域46には、仕切部材48が収容配置されている。仕切部材48は、全体として厚肉の略円板形状を有しており、本実施形態では、仕切部材本体50と蓋板金具52を含んで構成されている。
仕切部材本体50は、厚肉の略円板形状を有しており、本実施形態では硬質の合成樹脂で形成されている。また、仕切部材本体50の径方向中央部分には、下方に向かって開口する浅底円形の中央凹所54が形成されている。更に、仕切部材本体50の外周縁部には、螺旋状に延びる周溝56が形成されている。周溝56は、周方向に二周弱の所定長さで延びる凹溝であって、仕切部材本体50の外周面に開口して延びている。また、周溝56は、その断面が長さ方向両端部分において大きくなっている。更に、周溝56において上下二段に重なる部分では、上段に位置する部分が仕切部材本体50の外周面に加えて上面にも開口せしめられた切欠き状となっている。また、周溝56の下段側の周方向端部には、下側の壁部を貫通する下側連通窓58が形成されている。
また、仕切部材本体50には、分岐凹溝60が形成されている。分岐凹溝60は、仕切部材本体50の上面に開口する溝形状とされており、仕切部材本体50の径方向中央部から径方向中間部分に亘って径方向で直線的に延びている。更に、仕切部材本体50には、中央連通路62が形成されている。中央連通路62は、分岐凹溝60の径方向中央部側の端部と位置合わせされて、該端部において仕切部材本体50を軸方向に貫通するように形成された円形孔であって、略一定の断面形状をもって軸方向で直線的に延びている。
一方、蓋板金具52は、薄肉大径の略円板形状を有しており、本実施形態では、鉄やアルミニウム合金等の金属で形成されている。また、蓋板金具52の径方向中間部分には、板厚方向で貫通する円形の連通孔64が形成されている。この連通孔64は、後述する仕切部材本体50と蓋板金具52の組付下において仕切部材本体50に形成された分岐凹溝60の径方向中間部分側の端部と対応する位置に形成されている。更に、蓋板金具52の外周縁部には、周上の一部において板厚方向に貫通する上側連通窓66が形成されている。
そして、それら仕切部材本体50と蓋板金具52が、同一中心軸上に配置されて軸方向で組み合わせられることにより、仕切部材48が構成されるようになっている。なお、仕切部材本体50と蓋板金具52を組み合せる手段は、特に限定されるものではないが、例えば、蓋板金具52に複数の係止孔を形成すると共に、仕切部材本体50には係止孔と対応する位置において上方に向かって突出する係止突起を形成して、該係止突起を該係止孔に挿通せしめると共に、係止突起の突出先端部を加熱等の手段によって変形せしめることで蓋板金具52を仕切部材本体50に対して係止固定する構造や、蓋板金具52に周方向に所定の長さで延びる係止孔を形成すると共に、仕切部材本体50には係止爪を形成して、係止爪を係止孔に対して挿通せしめると共に、蓋板金具52と仕切部材本体50を中心軸回りで相対的に回転せしめて係止爪を係止孔に対して係合させることにより、仕切部材本体50と蓋板金具52を固定する構造等が好適に採用される。
また、仕切部材本体50の外周縁部に形成された周溝56において、上段側に位置する切欠き状部分の軸方向上側開口部が、蓋板金具52の外周縁部によって覆われており、該切欠き状部分が仕切部材本体50と蓋板金具52の協働によって溝形状となっている。更に、仕切部材本体50に形成された周溝56の上段側の周方向端部と、蓋板金具52に形成された上側連通窓66が相互に位置合わせされており、周溝56の周方向一方の端部が上側連通窓66を通じて外部に連通されている。なお、周溝56の周方向他方の端部は、下側連通窓58を通じて外部に連通されている。
また、仕切部材本体50に形成された分岐凹溝60の上側開口部が、蓋板金具52によって覆蓋されており、分岐凹溝60を利用して径方向に延びるトンネル状の通路が形成されている。更に、分岐凹溝60の径方向外側の端部に対して、蓋板金具52に形成された連通孔64が位置合わせされており、分岐凹溝60を利用して形成されたトンネル状通路の径方向外側の端部が連通孔64を通じて外部に連通されている。なお、該トンネル状通路の径方向中央側の端部は、仕切部材本体50に形成された中央連通路62を通じて外部に連通されている。
この仕切部材48は、流体封入領域46内に配設されて、第二の取付金具16によって支持されている。即ち、ダイヤフラム32の第二の取付金具16への装着前に、仕切部材48が第二の取付金具16に内挿されて、仕切部材48の上端面の外周縁部が本体ゴム弾性体18の下端面に当接せしめられることにより軸方向で位置決めされると共に、第二の取付金具16に対して八方絞り等の縮径加工が施されることによって、仕切部材48の外周面が第二の取付金具16の内周面に対してシールゴム層30を介して密着せしめられる。更に、ダイヤフラム32に固着された固定金具38が、その内周縁部が仕切部材48の外周縁部に対してシール部44を介して下方から当接された状態で、第二の取付金具16に対してかしめ固定される。以上によって、仕切部材48が第二の取付金具16で支持されて、流体封入領域46内に位置決め固定されている。
また、仕切部材48が流体封入領域46内において軸直角方向に広がるように配設されることにより、流体封入領域46が仕切部材48を挟んだ両側に二分されており、仕切部材48を挟んだ上側には、壁部の一部が本体ゴム弾性体18で構成されて、内圧変動が惹起される受圧室68が形成されていると共に、仕切部材48を挟んだ下側には、壁部の一部がダイヤフラム32で構成されて、容積変化が許容される平衡室70が形成されている。なお、それら受圧室68と平衡室70には、流体封入領域46に封入された非圧縮性流体が封入されている。
さらに、仕切部材48の外周面が第二の取付金具16に対して流体密に重ね合わされていることにより、仕切部材48の外周縁部に形成された周溝56の開口部が全周に亘って流体密に覆蓋されている。更に、周溝56の周方向一方の端部が、上側連通窓66を通じて受圧室68に連通されていると共に、他方の端部が下側連通窓58を通じて平衡室70に連通されている。これによって、周方向に所定の長さで延びて受圧室68と平衡室70を相互に連通せしめる低周波オリフィス通路としての第一のオリフィス通路72が、周溝56を利用して形成されている。
更にまた、仕切部材本体50に形成された分岐凹溝60(上記トンネル状通路)および中央連通路62と、蓋板金具52に形成された連通孔64によって、受圧室68と平衡室70が、第一のオリフィス通路72よりも短い通路長さと大きな通路断面積をもって相互に連通されている。これにより、第一のオリフィス通路72よりも高周波数の振動にチューニングされて、受圧室68と平衡室70を相互に連通する高周波オリフィス通路としての第二のオリフィス通路74が形成されている。なお、第二のオリフィス通路74の平衡室70側の開口部(中央連通路62の下端開口部)に対して軸方向の投影において重なるようにダイヤフラム32の中央当接部34が位置せしめられている。
また、第二の取付金具16には、ブラケット金具76が取り付けられている。ブラケット金具76は、略有底円筒形状を有しており、開口周縁部にフランジ部78を有している。また、ブラケット金具76の底壁部には径方向中央部分に円形の貫通孔が形成されている。更に、ブラケット金具76の外周面には、周上の複数箇所に取付脚部80が固着されている。なお、取付脚部80の下端部には、ボルト孔82が形成されており、ボルト孔82に挿通される図示しないボルトによってブラケット金具76が車両ボデーに取り付けられるようになっている。
このような構造のブラケット金具76は、フランジ部78が、ダイヤフラム32の固定金具38に重ね合わされて、第二の取付金具16のかしめ片26によってかしめ固定されることにより、第二の取付金具16に対して取り付けられて、第二の取付金具16の下側に配置されている。
また、ダイヤフラム32とブラケット金具76の軸方向間には、アクチュエータ84が配設されており、アクチュエータ84はケース金具86を含んで構成されている。ケース金具86は、薄肉大径の有底円筒形状を呈しており、底壁部の径方向中央部分には、上方に開口する凹所状の嵌着窪み部88が形成されている。なお、本実施形態では、嵌着窪み部88の径方向中央部分に板厚方向で貫通する挿通孔90が形成されている。
また、嵌着窪み部88には、環状のボールベアリング91が嵌め付けられている。ボールベアリング91は、アンギュラ玉軸受け等が好適に用いられ、かかるボールベアリング91によって、ケース金具86に対して後述する支軸部116が相対回転可能に組み付けられている。
また、ケース金具86によって電動モータ92が支持されている。電動モータ92は、既存の電動機であって、回転軸94を有している。そして、外部に設けられた電源装置96からの通電によって、回転軸94に回転力が作用せしめられて、回転軸94が中心軸回りで一方向に回転駆動せしめられるようになっている。また、電動モータ92は、ケース金具86の底壁部上に固定された支持台98によって支持されており、回転軸94がマウント中心軸に対して直交する方向に延びるように配設されている。なお、図1において、アクチュエータは、見易さのために、ケース金具86およびボールベアリング91とそれぞれ後述するカバー金具130,保持ばね132が、何れも断面図として図示されていると共に、他の部分が何れも側面図として図示されている。また、電動モータ92としては、他励直流電動機等の各種公知のモータ(電動機)を採用することが出来ることから、ここでは内部構造等の詳細については省略する。
また、電動モータ92と電源装置96を電気的に接続する回路上には、制御装置102が設けられている。この制御装置102によって、電動モータ92への通電が制御されて回転軸94が所定の回転角ずつ一方向に回転するように制御されている。なお、電動モータ92への通電と非通電を切り換える制御装置102は、従来から公知のものを採用することが出来るため、ここでは説明を省略する。
また、電動モータ92の回転軸94には、ウォームギヤ104が取り付けられている。ウォームギヤ104は、外周面にねじ状の歯筋を有する歯車であって、電動モータ92の回転軸94が中心軸上を延びるように挿し入れられて固着されている。そして、回転軸94の回転駆動に伴ってウォームギヤ104が回転せしめられるようになっている。
また、ウォームギヤ104には、ウォームホイール106が噛合されている。ウォームホイール106は、外周面にウォームギヤ104の歯筋と対応する歯筋を有する円板形状の歯車であって、ウォームギヤ104の回転によって回転軸94と直交する方向に延びる軸(後述する第一の支軸108)回りで回転せしめられるようになっている。また、ウォームホイール106の径方向中央部分には、第一の支軸108が挿通されている。そして、ウォームホイール106は、第一の支軸108を中心として回転を許容された状態で第一の支軸108によって支持されている。なお、第一の支軸108は、略一定の小径円形断面をもって直線的に延びるロッド状を有しており、その下端部がケース金具86の底壁部に固定されて、電動モータ92の回転軸94と直交する方向である軸方向上下に延びている。
また、ウォームホイール106の下方には、第一のギヤ110が配設されている。この第一のギヤ110は、外周面において軸方向に延びる多数条の歯筋を有する一般的な歯車であって、径方向の中心に第一の支軸108が挿通されており、第一の支軸108を中心とする回転を許容された状態で第一の支軸108によって支持されている。また、第一のギヤ110は、ウォームホイール106と一体的に回転せしめられるようになっており、本実施形態では、ウォームホイール106と一体形成されて、ウォームホイール106から下方に突出するように第一のギヤ110が形成されている。なお、第一のギヤ110は、ウォームホイール106とは別体で形成されて、ウォームホイール106の下面に固着されていても良い。
また、第一のギヤ110には、第二のギヤ112が噛合されている。第二のギヤ112は、第一のギヤ110に比して大径とされた円板形状の歯車であって、第一のギヤ110に対応する歯筋を外周面に有している。
さらに、第二のギヤ112の径方向中央部分には貫通孔が形成されており、該貫通孔にカム支軸114が挿通固着されている。カム支軸114は、支軸部116と下側カム部118を含んで構成されている。支軸部116は、小径の略円柱形状を有しており、その上端部が第二のギヤ112の径方向中央に形成された貫通孔に挿通されている。また、支軸部116の下端部は、ケース金具86の嵌着窪み部88に嵌め付けられたボールベアリング91に挿通固定されており、支軸部116がケース金具86によって中心軸回りで回転可能に支持されている。
また、下側カム部118は、支軸部116よりも大径の略有底円筒形状を有しており、その周壁部の上端面が波状面とされて、周壁部の高さが周方向で変化せしめられている。更に、下側カム部118は、支軸部116と同一中心軸上で支軸部116の上方に配置されて、底壁部が支軸部116の上端部に対して固定されている。これにより、支軸部116と下側カム部118によってカム支軸114が構成されている。
そして、カム支軸114は、支軸部116が第二のギヤ112の貫通孔に対して上方から挿入されて固定されると共に、下側カム部118の下端面が第二のギヤ112の上面に対して上方から重ね合わされて固定される。これにより、カム支軸114が第二のギヤ112に対して固定されて、第二のギヤ112の回転駆動に伴って中心軸回りで回転せしめられるようになっている。
また、下側カム部118の上方には、駆動軸としての駆動部材120が配設されている。駆動部材120は、全体として軸方向上下に延びるロッド状であって、一体形成された上側カム部122と連結軸部124を有している。上側カム部122は、逆向きの略有底円筒形状を有しており、周壁部の下端面が下側カム部118の上端面に対応する波状面とされている。そして、下側カム部118の上端面と上側カム部122の下端面が軸方向で重ね合わされることによって、運動変換機構としてのカム機構が、それら上下のカム部122,118で構成されている。
また、上側カム部122の径方向中央部分には、上方に向かって延びる連結軸部124が形成されている。連結軸部124は、小径のロッド形状であって、軸方向で直線的に延びている。更に、本実施形態において、連結軸部124は、軸方向での変位が許容されていると共に、中心軸回りでの回転が制限されている。即ち、例えば、連結軸部124の周上の一部に対して軸方向に延びる溝部を形成して、該溝部に対して後述するカバー金具130から突出する図示しない係止突起を挿し入れることにより、係止突起が溝部に沿って移動することで連結軸部124の軸方向での変位が許容されていると共に、係止突起と溝部の内壁面との当接によって連結軸部124の中心軸回りでの回転が防止されている。
さらに、連結軸部124の上端部には、可動弁体としての弁部材128が取り付けられている。この弁部材128は、略円板形状であって、連結軸部124と同一中心軸上に配設されている。なお、本実施形態では、弁部材128が上側カム部122および連結軸部124とは別体とされており、後述するカバー金具130のケース金具86へ装着後において、弁部材128が、円形孔を通じてカバー金具130よりも上方に突出する連結軸部124の上端面に重ね合わされて、接着やねじ止め等の手段によって連結軸部124に対して固定されている。
また、本実施形態では、ケース金具86の開口部を覆うようにカバー金具130が配設されている。カバー金具130は、全体として薄肉の逆向き皿形状を呈しており、外周部分が径方向外側に行くに従って次第に下傾するテーパ形状となっていると共に、径方向中央部分が逆向きの略有底円筒形状となっており、上底壁部の径方向中央部分に小径の円形孔が貫通形成されている。更に、カバー金具130の外周縁部には、下方に向かって延びる筒状の圧入部が一体形成されている。そして、カバー金具130は、ケース金具86に対して圧入固定されており、径方向中央に形成された円形孔に対して連結軸部124が挿通されている。これによって、カバー金具130のケース金具86への装着下、アクチュエータ84の駆動機構がケース金具86とカバー金具130の対向面間に収容配置されていると共に、連結軸部124の一部と弁部材128がカバー金具130よりも上方に突出せしめられている。
また、上側カム部122とカバー金具130の間には、保持ばね132が配設されている。保持ばね132は、一般的な弦巻ばねであって、連結軸部124に外挿されており、上端部が支持金具を介してカバー金具130に当接せしめられていると共に、下端部が上側カム部122の上底壁部に当接せしめられている。これにより、保持ばね132の付勢力が上側カム部122を軸方向で下向きに付勢するように作用せしめられており、上側カム部122の下端面が下側カム部118の上端面に対して押し付けられている。
かくの如き構造とされたアクチュエータ84では、電動モータ92に外部の電源装置96から通電されると、回転軸94が中心軸回りで回転駆動せしめられる。また、回転軸94に固定されたウォームギヤ104が回転軸94と共に回転せしめられて、ウォームギヤ104に噛合されたウォームホイール106が第一の支軸108回りで回転せしめられる。更に、ウォームホイール106と一体形成された第一のギヤ110が第一の支軸108を中心として回転せしめられることにより、第一のギヤ110と噛合された第二のギヤ112が回転せしめられて、第二のギヤ112に固定されたカム支軸114が中心軸回りで回転せしめられる。
そして、カム支軸114の回転によって、下側カム部118が回転を防止された上側カム部122に対して相対的に回転せしめられると、上下のカム部122,118の重ね合わせ面の波形状を利用して回転運動を直線的な往復運動に変換する運動変換作用が発揮されて、上側カム部122が下側カム部118の回転に伴って上下方向に往復駆動せしめられる。これによって、上側カム部122と一体形成された連結軸部124が上下方向に駆動せしめられると共に、連結軸部124に固定された弁部材128が上下方向で往復駆動せしめられるようになっている。
なお、本実施形態では、連結軸部124の中心軸回りでの回転が防止されることにより、連結軸部124に対して固定された上側カム部122の回転が防止されて、カム機構による運動変換作用が発揮されるようになっているが、例えば、上側カム部122とケース金具86やカバー金具130との間に上側カム部122の中心軸回りでの回転を防止する回転制限機構を設けて、上側カム部122の回転を直接制限するようにしても良い。
かくの如き構造とされたアクチュエータ84は、ダイヤフラム32とブラケット金具76の軸方向対向間のスペースに配設される。即ち、アクチュエータ84のケース金具86の開口周縁部に一体形成された取付フランジ134が、ダイヤフラム32の固定金具38とブラケット金具76のフランジ部78の間に挟み込まれると共に、第二の取付金具16のかしめ片26でかしめ固定されることにより、ケース金具86が第二の取付金具16によって支持されている。
また、アクチュエータ84の装着下、弁部材128がダイヤフラム32を挟んで平衡室70と反対側に配置されており、ダイヤフラム32の中央当接部34に対して下方から非接着で重ね合わされている。特に本実施形態では、ダイヤフラム32において中央当接部34の外周縁部から下方に向かって延び出す位置決め部36が形成されており、円環段差形状とされた位置決め部36の内周側に弁部材128が挿し入れられて、弁部材128が中央当接部34に対して下方から重ね合わせられている。このように弁部材128の外周側を取り囲むように環状の位置決め部36が形成されていることにより、弁部材128と位置決め部36の当接によって、ダイヤフラム32と弁部材128の軸直角方向での相対変位が制限されるようになっており、位置決め部36によって本実施形態における位置決め手段が構成されている。
そして、弁部材128の往復作動に伴って、中央当接部34が軸方向上下に変位せしめられるようになっている。これにより、中央当接部34が、仕切部材48の下面に開口する第二のオリフィス通路74の平衡室70側の開口部に対して、接近方向と離隔方向に変位せしめられるようになっており、第二のオリフィス通路74の連通と遮断が中央当接部34の押付けと解除によって切り換えられるようになっている。なお、このことからも明らかなように、第二のオリフィス通路74によって本実施形態における流体流路が構成されている。
ここにおいて、仕切部材本体50には、外周連通路136が形成されている。外周連通路136は、中央連通路62よりも大径の円形孔であって、第二のオリフィス通路74の長さ方向中間部分において蓋板金具52に形成された連通孔64に対応する位置、換言すれば、分岐凹溝60の外周側の端部に形成されている。これにより、蓋板金具52に形成された連通孔64と、仕切部材本体50に形成された分岐凹溝60の端部および外周連通路136とによって、受圧室68と平衡室70を短絡状態で相互に連通する短絡通路としてのリリーフ通路138が形成されている。要するに、本実施形態においては、リリーフ通路138が、第二のオリフィス通路74の長さ方向中間部分から分岐して平衡室70に開口するように形成されており、リリーフ通路138の受圧室68側の端部が第二のオリフィス通路74の受圧室68側端部によって構成されている。
なお、図2にモデル的に示されているように、リリーフ通路138の通路断面積:S1 は、第一のオリフィス通路72の通路断面積:S2 および第二のオリフィス通路74の通路断面積:S3 よりも大きくなっている。また、図1からも分かるように、リリーフ通路138の通路長さが、第一,第二のオリフィス通路72,74の通路長さよりも短くなっている。これらにより、リリーフ通路138は、第一,第二のオリフィス通路72,74よりも小さな流体流動抵抗で、受圧室68と平衡室70を相互に連通するように形成されている。
さらに、仕切部材本体50の平衡室70側の端面には、リリーフ弁としての圧抜弁140が固定されている。圧抜弁140は、金属製の板ばね142と、板ばね142に固定されたシールゴム144を含んで構成されている。板ばね142は、薄肉のばね鋼で形成されており、図3に示されているように、周方向に所定の長さで延びている。
また、板ばね142の長手方向(仕切部材48の周方向)一方の端部には、シールゴム144が取り付けられている。シールゴム144は、薄肉の略円板形状を有する当接部146と、当接部146の径方向中央部分から下方に向かって突出する嵌着部148を一体的に備えた構造となっている。また、本実施形態では、当接部146の径方向中間部分にテーパ部が形成されており、該テーパ部を挟んで径方向中央部分が外周部分よりも厚肉となっている。そして、当接部146が板ばね142の上面に対して重ね合わされると共に、嵌着部148が板ばね142の長手方向一方の端部に貫通形成された嵌着孔に対して嵌入されることにより、シールゴム144が板ばね142の長手方向一方の端部に対して固定されている。
また、板ばね142の長手方向他方の端部には、板厚方向に貫通する図示しない取付用孔が形成されている。該取付用孔には、仕切部材本体50の中央凹所54の上底壁面から下方に向かって突出する固定用突起150が挿通されるようになっており、固定用突起150の取付用孔への挿通後、固定用突起150の突出先端が拡径するように変形せしめられることにより、板ばね142の長手方向他方の端部が仕切部材本体50に対して固定されている。これにより、圧抜弁140が仕切部材本体50に対して取り付けられている。このようにして、板ばね142は、長手方向他方の端部が仕切部材本体50の下面に重ね合わされた態様で片持ち状に支持されており、外力の作用によって板ばね142が板厚方向に弾性変形せしめられることにより、板ばね142の長手方向一方の端部が、長手方向他方の端部を支点として軸方向に変位可能となっている。
さらに、シールゴム144の当接部146が、板ばね142の長手方向一方の端部に対して重ね合わされており、シールゴム144が板ばね142と仕切部材本体50の間に挟み込まれてそのテーパ部においてリリーフ通路138の開口周縁部に押し付けられている。これにより、圧抜弁140は、当接部146の厚さだけ板ばね142が板厚方向に変形せしめられた状態で仕切部材本体50に対して取り付けられており、かかる初期変形に基づいて発揮される板ばね142の付勢力によって、板ばね142においてシールゴム144を取り付けられた側の端部が、仕切部材本体50側に向かって(軸方向上向きに)常時付勢されて、仕切部材48の平衡室70側の端面に押し付けられている。
かくの如き圧抜弁140の仕切部材48に対する装着によって、仕切部材48に形成されたリリーフ通路138の平衡室70側の開口部が、圧抜弁140の一部で覆われており、外荷重が作用しない静置状態においてリリーフ通路138が遮断状態に保持されている。特に本実施形態では、板ばね142の弾性力によって圧抜弁140がリリーフ通路138の平衡室70側の開口部に押し付けられていると共に、圧抜弁140を構成する板ばね142においてリリーフ通路138の平衡室70側の開口部に押し付けられる当接面に対して、シールゴム144が固着されており、板ばね142がシールゴム144を介してリリーフ通路138の開口部に間接的に当接するようになっている。これらにより、リリーフ通路138の開口部が流体密に密閉されて、リリーフ通路138の遮断状態が有利に実現されている。更に、本実施形態では、シールゴム144のテーパ部がリリーフ通路138の開口周縁部の角部に押し付けられて、周方向に連続して線状に当接することにより、リリーフ通路138の遮断がより優れた流体密性をもって実現されるようになっている。
このような構造とされたエンジンマウント10の自動車への装着状態においては、第一のオリフィス通路72がチューニングされた低周波数の振動入力に際して、図4に示されているように、弁部材128を上端の閉作動位置に位置せしめるようにアクチュエータ84が作動されるようになっている。これにより、第二のオリフィス通路74の平衡室70側の開口部がダイヤフラム32の中央当接部34によって閉塞されて第二のオリフィス通路74が遮断状態に切り替えられるようになっており、第一のオリフィス通路72を通じての流体流動量を有利に確保して、流体の流動作用に基づく防振効果(高減衰効果)が効率的に発揮されるようになっている。
一方、第二のオリフィス通路74がチューニングされた高周波数の振動入力に際して、弁部材128を下端の開作動位置に位置せしめるようにアクチュエータ84が作動されるようになっている。これにより、図1に示されているように、中央当接部34が第二のオリフィス通路74の平衡室70側の開口部から離隔せしめられて、第二のオリフィス通路74が連通状態に切り替えられるようになっている。その結果、第二のオリフィス通路74を通じて両室68,70間での流体流動が生ぜしめられて、流体の流動作用に基づく防振効果(低動ばね効果)が発揮されるようになっている。
なお、本実施形態では、第二のオリフィス通路74の平衡室70側の開口部を取り囲むように環状当接リップ35が仕切部材48に対して当接されるようになっており、中央当接部34による第二のオリフィス通路74の遮断が、緩衝的に実現されるようになっている。これにより、アクチュエータ84を構成する部品の寸法誤差等によって弁部材128の上死点にばらつきが生じる場合にも、中央当接部34延いては弁部材128を適当な押付力で仕切部材48に対して当接せしめることが出来る。しかも、環状当接リップ35を形成されたダイヤフラム32の中央部分が、厚肉の中央当接部34となっており、環状当接リップ35が仕切部材48に対して繰返し押し付けられることによっても、ダイヤフラム32の損傷を防ぐことが出来る。更に、環状当接リップ35の断面形状が突出先端側に行くに従って次第に狭幅となっており、当接圧の急激な増大を効果的に防ぐことが出来る。
また、アクチュエータ84において弁部材128が上下カム部122,118の各カム面の当接作用によって、軸方向で高精度に位置決め保持されるようになっており、第二のオリフィス通路74の連通状態と遮断状態の切換えを高精度に実現することが出来る。しかも、かかる位置決め保持に際して機械的な作用(カム面の当接作用)を利用することにより、弁部材128を位置決め保持する保持力を非通電で得ることが出来る。従って、アクチュエータ84において、高精度な作動を実現することが出来ると共に通電による電力消費や発熱を抑えることが出来る。
ここにおいて、自動車の走行時に、段差の乗越え等によってエンジンマウント10に対して衝撃的な大荷重が入力されて、受圧室68に過大な正圧が及ぼされると、受圧室68の正圧が、リリーフ通路138を介して圧抜弁140のシールゴム144を固着された部分に及ぼされる。このように受圧室68の液圧が作用することによって、圧抜弁140を構成する板ばね142が板厚方向で湾曲するように弾性変形せしめられて、図4に示されているように、圧抜弁140がリリーフ通路138の平衡室70側の開口部から離隔せしめられる。そして、圧抜弁140のシールゴム144とリリーフ通路138の開口周縁部との間に隙間151が形成されて、リリーフ通路138が隙間151を通じて平衡室70に開口せしめられることにより、受圧室68と平衡室70がリリーフ通路138を通じて相互に連通されるようになっている。
これにより、受圧室68の正圧がリリーフ通路138を通じて平衡室70に逃されて可及的速やかに解消されるようになっており、走行状態下において第二のオリフィス通路74を遮断状態に保持するアクチュエータ84に対して、第二のオリフィス通路74を通じて受圧室68の正圧が及ぼされて、アクチュエータ84が損傷するのを防ぐことが出来る。特に、カム機構の機械的な保持作用(カム面の当接作用)に基づいて弁部材128の位置が強固に保持されるアクチュエータ84を採用した場合において、受圧室68の液圧が吸収されることなく直接的にアクチュエータ84に伝達されるのを防いで、アクチュエータ84の故障等の不具合を回避することが出来る。
特に本実施形態では、リリーフ通路138の通路断面積が第二のオリフィス通路74の通路断面積よりも大きくなっていると共に、リリーフ通路138の通路長が第二のオリフィス通路74の通路長よりも短くなっている。これにより、第二のオリフィス通路74よりも実質的な通路断面積が小さく、且つ通路長が長い第一のオリフィス通路72に比して、リリーフ通路138の流体流動抵抗が小さく抑えられており、圧抜弁140が開作動せしめられてリリーフ通路138が連通状態とされることによって、受圧室68と平衡室70がリリーフ通路138を通じて短絡状態で相互に連通されるようになっている。従って、第一のオリフィス通路72を通じての流体流動よりも速やかに受圧室68の正圧が平衡室70に逃されて解消されるようになっている。
さらに、リリーフ通路138が、第二のオリフィス通路74の一部を共用する態様で形成されていることから、リリーフ通路138を仕切部材48に対してスペース効率良く形成することが出来て、受圧室68の圧抜機構を備えたエンジンマウント10をコンパクトに実現することが出来る。
また、板ばね142を仕切部材48の平衡室70側の端面に重ね合わせるように取り付けた構造となっていることから、極めて簡単な構造で受圧室68の圧抜機構を実現することが出来る。更に、板ばね142の取付けを極めて容易に行うことが出来て、エンジンマウント10が優れた生産性をもって実現される。
次に、図5には、本発明に係る流体封入式防振装置の第二の実施形態として、自動車用のエンジンマウント152が示されている。エンジンマウント152は、マウント本体154を有しており、マウント本体154は、更に第一の取付部材としての第一の取付金具156と第二の取付部材としての第二の取付金具158を本体ゴム弾性体160で相互に連結した構造を有している。そして、第一の取付金具156が図示しないパワーユニット側に取り付けられると共に、第二の取付金具158が図示しない車両ボデー側に取り付けられることで、パワーユニットが車両ボデーに防振支持されるようになっている。なお、以下の説明において、上下方向とは、特に説明がない限り、エンジンマウント152の軸方向である図5中の上下方向を言うものとする。
より詳細には、第一の取付金具156は、鉄やアルミニウム合金等で形成されたブロック状の部材であって、本実施形態では、上部が段付きの円形ブロック形状とされていると共に、下部が上方に行くに従って次第に大径となるテーパ形状とされている。また、第一の取付金具156の上端部には、上方に向かって突出する取付ボルト162が一体的に設けられている。
一方、第二の取付金具158は、薄肉大径の略円筒形状を有しており、第一の取付金具156と同様に鉄やアルミニウム合金等で形成された高剛性の部材とされている。また、第二の取付金具158の上端部に内フランジ状の段差部164が設けられていると共に、段差部164の内周側端部には、上方に向かって次第に拡開して延びるテーパ状部166が一体形成されている。更に、テーパ状部166の上端には軸直角方向で広がるフランジ状部168が一体形成されている。
それら第一の取付金具156と第二の取付金具158は、第一の取付金具156が、第二の取付金具158のフランジ状部168を設けられた側の開口部側に離隔するように、同一中心軸上に配置される。そして、第一の取付金具156と第二の取付金具158の間に本体ゴム弾性体160が介装せしめられて、第一の取付金具156と第二の取付金具158が本体ゴム弾性体160で相互に連結されている。
本体ゴム弾性体160は、厚肉の略円錐台形状を有するゴム弾性体で形成されており、大径側の端部には、端面に開口する半球形状乃至はすり鉢形状の大径凹所170が形成されている。そして、本体ゴム弾性体160の小径側端部には、第一の取付金具156が下端部を挿し込まれて加硫接着されていると共に、本体ゴム弾性体160の大径側端部外周面には、第二の取付金具158のテーパ状部166を含む上端部分が重ね合わされて加硫接着されている。これにより、第一の取付金具156と第二の取付金具158が本体ゴム弾性体160で弾性連結されていると共に、第二の取付金具158の一方の開口部が本体ゴム弾性体160で流体密に閉塞されている。以上により、本実施形態における本体ゴム弾性体160は、第一の取付金具156と第二の取付金具158を一体的に備えた一体加硫成形品として形成されている。
さらに、本体ゴム弾性体160の大径側端部の外周縁部には、軸方向下方に向かって薄肉大径の筒状を有するシールゴム層172が一体形成されている。このシールゴム層172は、第二の取付金具158の内周面に被着形成されており、第二の取付金具158の段差部164よりも下側部分の内周面が、シールゴム層172によって被覆されている。なお、大径凹所170の開口周縁部において、シールゴム層172よりも内周側には、略軸直角方向に広がる環状の段差面174が形成されている。
また、第二の取付金具158の他方の開口部分には、可撓性膜としてのダイヤフラム176が配設されている。ダイヤフラム176は、薄肉大径の略円板形状を呈するゴム膜であって、外周部分に軸方向で充分な弛みを有している。また、ダイヤフラム176の径方向中央部分は、外周部分に比して厚肉の円板形状とされた中央当接部178とされている。
また、ダイヤフラム176において薄肉とされた外周部分の内周縁部が、中央当接部178の外周縁部から下方に延び出す円環段差形状とされている。そして、ダイヤフラム176の径方向中央部分が、上底壁部を中央当接部178で構成された逆向き略皿形状とされており、該中央部分の外周部分によって環状の位置決め部180が形成されている。更に、ダイヤフラム176の外周縁部には、円環形状の固着部182が一体形成されている。
また、ダイヤフラム176に設けられた固着部182には、固定金具184が加硫接着されている。固定金具184は、鉄等で形成された高剛性の部材であって、大径の略円環形状を有しており、固着部182に埋設状態で固着せしめられている。以上のように、本実施形態におけるダイヤフラム176は、固定金具184を一体的に備えた一体加硫成形品として形成されている。
そして、ダイヤフラム176の一体加硫成形品は、第一の取付金具156と第二の取付金具158を備えた本体ゴム弾性体160の一体加硫成形品に取り付けられる。即ち、第二の取付金具158の本体ゴム弾性体160とは反対側の開口部からダイヤフラム176を挿し入れた後に、第二の取付金具158に対して縮径加工を施すことにより、固定金具184を第二の取付金具158の開口部分に嵌着固定させる。これにより、ダイヤフラム176が第二の取付金具158の他方の開口部分を流体密に覆蓋するように取り付けられる。
かかるダイヤフラム176の第二の取付金具158への組付け下、第二の取付金具158の内周側には、本体ゴム弾性体160とダイヤフラム176の軸方向対向面間に、外部から隔離されて非圧縮性流体が封入された流体封入領域186が形成されている。なお、封入される非圧縮性流体は、前記第一の実施形態と同様であることから、説明を省略する。
また、流体封入領域186には、仕切部材188が収容配置されており、第二の取付金具158で支持されている。仕切部材188は、仕切部材本体190と蓋板金具192を含んで構成されている。仕切部材本体190は、厚肉の略円板形状を有しており、硬質の合成樹脂やアルミニウム合金等の金属で形成されている。また、仕切部材本体190の径方向中央部分には、下方に向かって開口する円形の中央凹所194が形成されている。更に、仕切部材本体190の径方向中央部分には、上方に向かって突出する小径の中央突起196が一体形成されている。
また、仕切部材本体190の外周縁部には、第一の周溝198が形成されている。第一の周溝198は、仕切部材本体190の外周面に開口せしめられており、仕切部材本体190の外周縁部を周方向に一周弱の所定長さで連続して延びている。更に、仕切部材本体190の径方向中間部分には、凹溝200が形成されている。凹溝200は、仕切部材本体190の上端面に開口せしめられており、中央凹所194と第一の周溝198の径方向間を周方向に一周弱の所定長さで連続して延びている。なお、この凹溝200は、一方の端部が軸直角方向に延びる連通路202を通じて中央凹所194に連通されている。
一方、蓋板金具192は、略円板形状を有する金属製の部材とされている。また、本実施形態の蓋板金具192は、外周部分が段差を介して中央部分よりも軸方向上方に位置せしめられている。更に、蓋板金具192の中央部分には、円形の貫通孔204が形成されている。貫通孔204は、仕切部材本体190に形成された中央突起196の形状に対応する小径の孔とされている。
そして、それら仕切部材本体190と蓋板金具192が相互に組み合わされることにより、本実施形態における仕切部材188が構成されている。即ち、仕切部材本体190の上端面に対して蓋板金具192が重ね合わされると共に、仕切部材本体190に突設された中央突起196を蓋板金具192に貫通形成された貫通孔204に対して嵌め込むことにより、蓋板金具192が仕切部材本体190に対して固定されて、仕切部材188が構成される。
かかる仕切部材188においては、仕切部材本体190と蓋板金具192が、径方向中央部分で相互に密着せしめられて重ね合わされていると共に、外周部分で軸方向に所定距離を隔てて位置せしめられている。そして、仕切部材本体190と蓋板金具192が相互に離隔せしめられた外周部分には、それら仕切部材本体190と蓋板金具192の対向面間を周方向に延びる第二の周溝206が形成されている。この第二の周溝206は、図中において必ずしも明らかではないが、周方向に一周弱の所定長さで連続的に延びている。なお、第二の周溝206の周方向端部間には、仕切部材本体190と一体形成された図示しない隔壁が設けられて、第二の周溝206を周方向で一周に満たない長さに仕切っている。
また、仕切部材本体190と蓋板金具192の組付け下において、第一の周溝198の一方の端部と第二の周溝206の一方の端部が、第一の周溝198の一方の端部において仕切部材本体190の上端面に開口する接続窓208を通じて相互に接続されている。これにより、第一の周溝198と第二の周溝206によって周方向に二周弱の所定長さで延びる螺旋状の周溝210が形成されている。
このように仕切部材本体190と蓋板金具192で構成された仕切部材188は、流体封入領域186内に収容配置される。即ち、ダイヤフラム176の第二の取付金具158への取付け前に、仕切部材188が、第二の取付金具158に対して、本体ゴム弾性体160を加硫接着された側と反対側の開口部から嵌め入れられる。その後、ダイヤフラム176が同開口部から第二の取付金具158に嵌め入れられて、第二の取付金具158に八方絞り等の縮径加工が施されることにより、仕切部材188とダイヤフラム176が第二の取付金具158に対して嵌着固定される。
かかる仕切部材188とダイヤフラム176の配設下において、仕切部材188の上端面の外周部分が本体ゴム弾性体160の段差面174に圧接されると共に、仕切部材188の下端面の外周部分が固着部182を介して固定金具184に圧接されて、それぞれ流体密にシールされている。更に、仕切部材188の外周面が、シールゴム層172を介して第二の取付金具158に対して流体密に重ね合わされている。これらにより、流体封入領域186が仕切部材188を挟んで軸方向で上下に二分されており、仕切部材188を挟んだ一方の側には、壁部の一部が本体ゴム弾性体160で構成されて、本体ゴム弾性体160の弾性変形によって圧力変動が惹起せしめられる受圧室212が形成されていると共に、仕切部材188を挟んだ他方の側には、壁部の一部がダイヤフラム176で構成されて、ダイヤフラム176の弾性変形によって容積変形が許容される平衡室214が形成されている。なお、それら受圧室212と平衡室214には、流体封入領域186に封入された非圧縮性流体がそれぞれ封入されている。
また、仕切部材188の外周縁部に形成された周溝210の外周側開口部が、第二の取付金具158によって流体密に閉塞されている。また、周溝210の一方の端部が蓋板金具192に形成された図示しない連通窓を通じて受圧室212に連通されていると共に、周溝210の他方の端部が仕切部材本体190に形成された連通窓216を通じて平衡室214に連通されている。これらにより、周方向に所定の長さで延びて、受圧室212と平衡室214を相互に連通する第一のオリフィス通路218が、仕切部材188の周溝210を利用して形成されている。本実施形態において第一のオリフィス通路218は、流体の共振作用に基づく防振効果(高減衰効果)が、エンジンシェイク等に相当する10Hz前後の低周波数域の振動に対して有効に発揮されるようにチューニングされている。
さらに、仕切部材188に形成された凹溝200の開口部が蓋板金具192によって覆蓋されており、凹溝200の一方の端部が蓋板金具192に形成された図示しない連通窓を通じて受圧室212に連通されていると共に、凹溝200の他方の端部が中央凹所194を通じて平衡室214に連通されている。これにより、周方向に所定の長さで延びて、受圧室212と平衡室214を相互に連通する流体流路としての第二のオリフィス通路220が、仕切部材188の凹溝200と中央凹所194を利用して形成されている。本実施形態において第二のオリフィス通路220は、流体の共振作用に基づく防振効果(低動ばね効果)が、アイドリング振動等に相当する20〜40Hz前後の中乃至高周波数域の振動に対して有効に発揮されるようにチューニングされている。
なお、オリフィス通路218,220のチューニングは、例えば、受圧室212や平衡室214の各壁ばね剛性、即ちそれら各室212,214を単位容積だけ変化させるのに必要な圧力変化量に対応する本体ゴム弾性体160やダイヤフラム176等の各弾性変形量に基づく特性値を考慮しつつ、オリフィス通路218,220の通路長さと通路断面積を調節することによって行うことが可能であり、一般に、オリフィス通路218,220を通じて伝達される圧力変動の位相が変化して略共振状態となる周波数を、当該オリフィス通路218,220のチューニング周波数として把握することが出来る。
かくの如き構造を有する本実施形態に係るマウント本体154は、ブラケット金具222に組み付けられている。ブラケット金具222は、鉄等で形成された高剛性の部材であって、マウント本体154が嵌め入れられる嵌着部224を有している。嵌着部224は、全体として有底円筒形状を有しており、上端部にフランジ部226を有している。また、嵌着部224の外周面には、環状の脚部228が圧入や溶接等によって固定されている。この脚部228には、周上の複数箇所において図示しないボルト孔が貫通形成されており、ボルト孔に挿通される同じく図示しない固定用ボルトによって脚部228が車両ボデーに螺着固定されるようになっている。
そして、マウント本体154が、ブラケット金具222の嵌着部224に対して上側開口部から嵌め入れられて、第二の取付金具158が嵌着部224に圧入固定されることにより、マウント本体154がブラケット金具222に嵌着固定されている。なお、本実施形態では、第二の取付金具158の上端に設けられたフランジ状部168が、嵌着部224の上端に設けられたフランジ部226に対して上方から当接せしめられることにより、第二の取付金具158と嵌着部224が相対的に位置決めされるようになっている。
ここにおいて、ブラケット金具222には、アクチュエータ230が取り付けられている。アクチュエータ230は、マウント本体154の下方に配置されて、嵌着部224の底壁部に重ね合わされている。より詳細には、アクチュエータ230は電動モータ232を有している。
電動モータ232は、既存の電動機であって、回転軸234を有している。そして、外部に設けられた電源装置236からの通電によって、回転軸234に回転力が作用せしめられて、回転軸234が中心軸回りで回転駆動せしめられるようになっている。特に本実施形態では、回転軸234の回転方向が電動モータ232への通電方向に応じて変化せしめられるようになっている。なお、電動モータ232としては、他励直流電動機等の各種公知のモータ(電動機)を採用することが出来る。
また、電動モータ232の回転軸234には、螺子部としての雄ねじ部材238が取り付けられている。雄ねじ部材238は、外周面にねじ山が形成された略円柱形状の部材であって、中心軸上を延びるように回転軸234が挿し入れられて固着されている。そして、回転軸234の回転駆動に伴って雄ねじ部材238が回転せしめられるようになっている。
また、電動モータ232と電源装置236を電気的に接続する回路上には、制御装置240が設けられている。制御装置240は、例えば自動車の走行状態等を検出するセンサ(例えば、公知の速度センサ等)と、該センサの検出結果に応じて電動モータ232への通電方向を変化させる機械的な接点制御装置を含んで構成されている。この制御装置240によって、電動モータ232における回転軸234の回転方向が走行状態に応じて変化せしめられるようになっている。また、回転軸234の回転角や電動モータ232への通電時間等を検出して、その検出結果に応じて電動モータ232への通電を制御装置240で制御することにより、所定の回転量で回転軸234の回転が停止されるようになっている。なお、電動モータ232への通電方向や通電状態と非通電状態を切り換える制御装置240は、従来から公知の速度センサ等の各種センサと接点制御装置を組み合わせること等により実現することが可能であることから、ここでは説明を省略する。
また、電動モータ232は、支持部材242に取り付けられている。支持部材242は、厚肉の円環形状を有しており、本実施形態では、硬質の合成樹脂で形成されている。更に、支持部材242の上端部に外周側に向かって広がる当接部244が設けられていると共に、当接部244の外周縁部が上方に向かって突出せしめられている。
さらに、支持部材242の内周縁部には、保持筒部246が形成されている。保持筒部246は、略円筒形状であって、支持部材242の内周縁部から上方に向かって延び出している。また、保持筒部246は、その径方向一方向において対向する部分において内周面および上端面に開口する一対の係合切欠部248,248が形成されている。この係合切欠部248は、軸方向に所定の長さで延びる溝状とされており、本実施形態では周方向両側面が相互に平行に広がっている。
そして、電動モータ232の回転軸234が支持部材242の中央孔の中心線上で延びるように、電動モータ232が支持部材242の中央孔に嵌め入れられて固定されている。これにより、保持筒部246の内周側に離隔して回転軸234が位置せしめられている。
また、回転軸234の先端部分には、可動弁体としての弁部材250が被せ付けられている。弁部材250は、逆向きの略有底円筒形状を有しており、本実施形態では、硬質の合成樹脂で形成されている。更に、弁部材250の上端部には、外周側に向かって広がる押圧フランジ部252が一体形成されている。本実施形態における押圧フランジ部252は、外周縁部が縦断面において略半球形状を呈するように面取りされている。
さらに、弁部材250の下端部には、径方向一方向で対向する部分から外周側に向かって突出する一対の係合突起254,254が形成されている。係合突起254は、周方向に湾曲するブロック状の突起であって、周方向の両端面が相互に平行となっている。また、係合突起254の周方向での幅寸法が、保持筒部246に形成された係合切欠部248の周方向での幅寸法と略等しくなっていると共に、係合突起254の軸方向寸法が係合切欠部248の軸方向寸法よりも充分に小さくなっている。なお、係合突起は、例えば、周方向で係合切欠部248よりも小さくても良いし、軸方向で係合切欠部248よりも大きくても良い。
更にまた、弁部材250には、螺接部としての雌ねじ部256が設けられている。雌ねじ部256は、逆向きの略円筒形状を呈する弁部材250の周壁部を利用して形成されており、その内周面には全長に亘ってねじ山が刻設されている。また、雌ねじ部256を構成するねじ山は、回転軸234に取り付けられた雄ねじ部材238の外周面に形成されたねじ山に対応する構造とされている。
そして、このような雌ねじ部256を有する弁部材250は、電動モータ232の回転軸234に対して取り付けられる。即ち、回転軸234に対して弁部材250が上方から被せられて、弁部材250の周壁部が回転軸234の外周側に離隔して回転軸234を取り囲むように位置せしめられる。なお、本実施形態では、電動モータ232の回転軸234が後述する弁部材250の往復作動方向に延びるようにして設けられている。
さらに、回転軸234に取り付けられた雄ねじ部材238が弁部材250の周壁部の内周側に挿し入れられて、雄ねじ部材238の外周面に形成されたねじ山と雌ねじ部256の内周面に形成されたねじ山が螺合せしめられている。換言すれば、回転軸234に取り付けられた雄ねじ部材238が、弁部材250の雌ねじ部256に対して下方開口から螺入されている。これにより、弁部材250が回転軸234に対して組み付けられていると共に、それら回転軸234と弁部材250の連結部分において、雄ねじ部材238と雌ねじ部256で構成された運動変換機構としてのねじ機構が設けられている。
また、電動モータ232の回転軸234が保持筒部246の内周側に位置せしめられており、弁部材250が保持筒部246に対して挿し入れられるようになっている。そこにおいて、弁部材250の下端部に一体形成された係合突起254が、保持筒部246に形成された係合切欠部248に対して周方向で位置合わせされており、各係合突起254が各係合切欠部248に嵌め込まれている。そして、係合突起254と係合切欠部248の周方向での係合作用によって、弁部材250が保持筒部246に対して周方向で係止されて相対的に回転不能とされている。かくの如き弁部材250と保持筒部246の係止によって、本実施形態における弁部材250の回転制限機構が構成されている。
かくの如き構造とされたアクチュエータ230では、通電によって電動モータ232で発生する回転駆動力が、雄ねじ部材238と雌ねじ部256で構成された螺子構造によって往復駆動力に変換されて、弁部材250に伝達されるようになっている。そして、電動モータ232における回転軸234の回転方向を制御することにより、弁部材250を軸方向で所定の位置に駆動変位せしめることが出来るようになっている。以下に、弁部材250の軸方向での往復作動について説明する。
先ず、電動モータ232の回転軸234に装着された雄ねじ部材238が、弁部材250に形成された雌ねじ部256の下端部、即ち、弁部材250の周壁部における下端開口部に位置せしめられている場合には、弁部材250が変位駆動方向の上端に位置せしめられる。なお、このように弁部材250が駆動方向の上端に位置せしめられた状態においても、係合突起254は係合切欠部248内に位置せしめられて、それらの係合作用に基づく周方向での位置決め効果が発揮されるようになっている。
次に、電動モータ232に対して電源装置236から通電されて、回転軸234が周方向一方の側に回転せしめられると、雄ねじ部材238が雌ねじ部256に対して相対回転せしめられて、雄ねじ部材238が雌ねじ部256に対して捻じ込まれる。これにより、雌ねじ部256が形成された弁部材250は、雄ねじ部材238が取り付けられた回転軸234延いては電動モータ232に対して軸方向で下方に相対変位せしめられて、往復作動方向の下端まで移動せしめられる。
なお、本実施形態では、弁部材250が軸方向で変位駆動せしめられて作動方向端部に位置せしめられると、電動モータ232への通電が停止されるようになっており、弁部材250が駆動方向の端部において静止状態に保持されるようになっている。また、本実施形態では、弁部材250の回転が係合突起254と係合切欠部248の係止によって阻止されていることにより、回転軸234の回転駆動力が雄ねじ部材238と雌ねじ部256の間における摩擦等で伝達されることによって弁部材250が回転するのを防いで、弁部材250の軸方向での駆動変位を効率的に実現出来るようになっている。
また次に、制御装置240の制御によって、電動モータ232に対して電源装置236から通電されて、回転軸234が周方向で他方の側に回転せしめられると、雄ねじ部材238が雌ねじ部256に対して相対回転せしめられて、雄ねじ部材238が雌ねじ部256に対して抜ける方向に捻られる。これにより、雌ねじ部256が形成された弁部材250は、雄ねじ部材238が取り付けられた回転軸234延いては電動モータ232に対して軸方向で上方に相対変位せしめられて、往復作動方向の上端まで移動せしめられるようになっている。なお、本実施形態では、電動モータ232に対して電流が逆向きに通電されることにより、回転軸234が逆回転されるようになっている。また、弁部材250が往復作動方向の上端に移動せしめられると、電動モータ232への通電が停止されるようになっており、弁部材250が往復作動方向の上端で保持されるようになっている。
以上のように、電動モータ232で発生した回転駆動力が、回転軸234と弁部材250の連結部分に設けられたねじ機構によって軸方向での直線的な駆動力に変換されて、弁部材250に伝達されるようになっている。そして、電動モータ232への通電方向を切換制御することにより、弁部材250が軸方向上下に往復作動せしめられるようになっている。また、弁部材250が往復作動方向で端部に位置せしめられると、電動モータ232への通電が停止されるようになっており、弁部材250が軸方向の作動端においてねじ山の係合作用等に基づいて保持されるようになっている。
また、アクチュエータ230は、ブラケット金具222の嵌着部224に対して嵌め入れられて、嵌着部224の底壁部上に載置された状態で固定される。かかるブラケット金具222への装着状態において、マウント本体154がブラケット金具222に対して組み付けられることにより、本実施形態に係るエンジンマウント152が構成されている。
また、エンジンマウント152において、アクチュエータ230は、マウント本体154の下方に位置せしめられており、弁部材250がダイヤフラム176の中央当接部178に対して、軸方向で所定距離を隔てて、或いは、重ね合わされた当接状態で下方に位置せしめられている。換言すれば、アクチュエータ230は、ダイヤフラム176を挟んで仕切部材188と反対側に位置せしめられており、アクチュエータ230の弁部材250が、ダイヤフラム176の中央当接部178を挟んで第二のオリフィス通路220の平衡室214側の開口部(中央凹所194)に軸方向で対向するように位置せしめられている。なお、本実施形態では、弁部材250とダイヤフラム176が非接着で重ね合わされており、相互に離隔可能とされている。
また、本実施形態では、ダイヤフラム176の径方向中央部分に形成された位置決め部180の内周側の領域に対して、弁部材250が下方から挿し入れられて配置されている。そして、位置決め部180と弁部材250の当接によって、ダイヤフラム176が弁部材250に対して軸直角方向で位置決めされており、本実施形態における位置決め手段が位置決め部180によって構成されている。
そして、アクチュエータ230の作動状態下、弁部材250が軸方向で往復変位せしめられて、弁部材250が第二のオリフィス通路220の平衡室214側の開口部に対して接近方向と離隔方向で直線的に往復変位せしめられるようになっている。更に、弁部材250が、軸方向での往復変位によってダイヤフラム176の中央当接部178に対して当接或いは離隔せしめられて、中央当接部178が弁部材250の軸方向での往復作動に応じて上下に変位せしめられるようになっている。これにより、ダイヤフラム176の中央当接部178は、弁部材250の往復変位によって、仕切部材188の中央凹所194に対して当接および離隔せしめられるようになっており、中央凹所194で構成された第二のオリフィス通路220の平衡室214側の開口部が、弁部材250の往復変位によって、中央当接部178を介して連通状態と遮断状態に切換え可能となっている。
すなわち、弁部材250が往復作動方向で上端に位置せしめられると、中央当接部178が弁部材250によって押圧されて、中央凹所194の開口部に対して押し付けられる。かかるアクチュエータ230の閉作動によって、第二のオリフィス通路220の平衡室214側の開口部である中央凹所194の開口部が、中央当接部178を介して弁部材250で閉塞されるようになっている。なお、本実施形態では、弁部材250の外径が、中央凹所194の開口部の直径よりも大きくなっており、中央当接部178が仕切部材188に対して安定して押し付けられて、中央凹所194の閉塞状態がより有利に実現されるようになっている。
一方、弁部材250が往復作動方向で下端に位置せしめられると、弁部材250かダイヤフラム176の中央当接部178に対して及ぼす拘束力が解除されて、中央当接部178が、平衡室214に封入された非圧縮性流体の液圧や重力の作用によって、仕切部材188から下方に離隔せしめられる。このようなアクチュエータ230の開作動によって、第二のオリフィス通路220の平衡室214側の開口部である中央凹所194の開口部が、平衡室214に連通されるようになっている。
以上により、弁部材250の往復作動によって、第二のオリフィス通路220の平衡室214側の開口部である中央凹所194の開口部を、開口状態と閉塞状態に切り換えることが出来るようになっており、第二のオリフィス通路220の連通状態と遮断状態が弁部材250によって切り換えられるようになっている。
ここにおいて、仕切部材本体190には、短絡用孔258が形成されている。短絡用孔258は、軸方向に直線的に延びる円形孔であって、凹溝200の周上の一部において凹溝200の底壁部を貫通するように形成されており、凹溝200が周上の一部において短絡用孔258を通じて平衡室214に連通されている。これにより、第二のオリフィス通路220の受圧室212側の端部と短絡用孔258を利用して、本実施形態における短絡通路としてのリリーフ通路260が形成されている。このリリーフ通路260は、第一,第二のオリフィス通路218,220よりも通路長が小さくなっていると共に、通路断面積がそれらオリフィス通路218,220に対して略同一乃至はより大きくなっており、リリーフ通路260の流体流動抵抗がそれら第一,第二のオリフィス通路218,220よりも小さく抑えられている。
また、リリーフ通路260の平衡室214側の開口部を覆うように圧抜弁262が配設されている。圧抜弁262は、ばね鋼で形成された板ばね264と該板ばね264に固着されたシールゴム144を含んで構成されている。板ばね264は、薄肉の長手板形状を有しており、長手方向中間部分が凹溝状に折り曲げられている。更に、板ばね264の長手方向一方の端部には、シールゴム144が固着されている。シールゴム144は、前記第一の実施形態と略同一の構造であることからここでは説明を省略する。一方、板ばね264の長手方向他方の端部には、板厚方向に貫通する円形の取付用孔268が形成されている。
そして、仕切部材本体190の外周部分において下方に向かって突出するように一体形成された取付用突起270が取付用孔268に挿通された後、取付用突起270の突出先端部分が拡径するように加工されることにより、板ばね264の長手方向他方の端部が仕切部材本体190に対して固定されて、板ばね264が仕切部材本体190によって片持ち状に支持されている。これにより、圧抜弁262が仕切部材188に対して取り付けられており、板ばね264の付勢力によってシールゴム144がリリーフ通路260の開口部に対して押し付けられている。
このような圧抜弁262の装着下、圧抜弁262においてシールゴム144が固着された端部には、一方の面(上面)に対してリリーフ通路260を通じて受圧室212の液圧が及ぼされていると共に、他方の面(下面)に対して平衡室214の液圧が及ぼされている。そして、衝撃的な荷重の入力等によって受圧室212に大きな正圧が及ぼされると、受圧室212と平衡室214の圧力差に基づいて板ばね264が弾性変形することによって、リリーフ通路260の平衡室214側の開口部を覆うように押し付けられたシールゴム144が、板ばね264の付勢力に抗してリリーフ通路260の該開口部から離隔せしめられて、リリーフ通路260が連通状態とされるようになっている。
以上のように、自動車の走行時における段差の乗越え等により衝撃的な大荷重が入力されて、受圧室212に対して大きな正圧が及ぼされた場合に、リリーフ通路260を通じて流体が両室212,214間を流動せしめられることにより、受圧室212の正圧が速やかに低減されて、過大な液圧が弁部材250に及ぼされることによるアクチュエータ230の故障を防ぐことが出来る。特に、ねじ機構によって弁部材250の軸方向位置を規定する構造のアクチュエータ230を採用して、ねじ山の係合作用等に基づいて弁部材250が所定の位置に強固に位置決め保持される場合にも、リリーフ通路260を通じて液圧が逃される構造となっていることから、アクチュエータ230の損傷を防ぐことが出来る。
また、板ばね264の長手方向一方の端部が、板ばね264の付勢力によって、シールゴム144を介してリリーフ通路260の開口部に対して押し付けられている。これにより、通常の振動入力に際してリリーフ通路260が遮断状態に保持されて、第一,第二のオリフィス通路218,220を通じての流体流動が効率的に惹起されるようになっている。特に本実施形態では、板ばね264の長手方向中間部分が屈曲していることにより、板ばね264の自由端側の端部に対して付勢力が効率的に及ぼされるようになっている。それ故、通常の振動入力時にリリーフ通路260が連通するのを防いで、第一,第二のオリフィス通路218,220を通じた流体流動によって発揮される防振効果を有効に得ることが出来る。
次に、図6には、本発明に従う構造とされた流体封入式防振装置の第三の実施形態として、エンジンマウント272が示されている。以下の説明において、前記第一,第二の実施形態と実質的に同一の部材乃至部位については、図中に同一の符号を付すことにより、説明を省略する。
図6に示されたエンジンマウント272を構成するアクチュエータ273においては、電動モータ232の回転軸234に対して駆動部材274が取り付けられている。駆動部材274は、全体として略有底円筒形状を有しており、回転軸234に固定された雄ねじ部材238のねじ山と対応するねじ山が内周面に対して刻設されることにより周壁部が雌ねじ部256を構成している。また、駆動部材274の下端部には、径方向外側に向かって突出する一対の係合突起254,254が径方向一方向で対向する位置に形成されている。更に、駆動部材274は、軸方向の中間部分に段部を有しており、段部を挟んだ軸方向上側部分が下側部分よりも小径となっている。更にまた、駆動部材274の上端縁部には、全周に亘って外周側に向かって広がる支持フランジ276が一体形成されている。
また、駆動部材274には、可動弁体としての弁部材278が装着されている。この弁部材278は、下方に向かって開口する逆向きの略有底円筒形状を有しており、薄肉の金属板をプレス加工すること等によって形成されている。そして、弁部材278は、駆動部材274に対して上方から被せられて、上底壁部が弁部材278の上面に対して非接着で重ね合わされている。更に、弁部材278は、その上底壁部がダイヤフラム176の中央当接部178に対して下方から重ね合わせられて固着されている。
さらに、弁部材278の下端部には、環状のばね支持金具280が取り付けられている。ばね支持金具280は、環状の固定部とその軸方向中央部分から内周側に突出する支持部を一体的に有しており、該固定部が弁部材278の開口部付近において弁部材278の内周面に固着されていると共に、該支持部が径方向内方に向かって突出せしめられている。
更にまた、駆動部材274とばね支持金具280の間には、コイルスプリング282が配設されている。コイルスプリング282は、軸方向上側に行くに従って次第に小径となるテーパ形状の円筒ばねであって、駆動部材274に対して外挿されている。そして、コイルスプリング282は、その上端部が駆動部材274の周壁部および支持フランジ276の下面に当接せしめられると共に、その下端部がばね支持金具280の固定部の内周面および支持部の上面に対して当接せしめられることにより、駆動部材274とばね支持金具280延いては弁部材278の間に介装されている。これにより、駆動部材274と弁部材278が、コイルスプリング282の付勢力によって、軸方向で相互に押し付けられる方向に付勢されている。
このような構造を有するエンジンマウント272では、前記第二の実施形態に示されたリリーフ通路260を通じて液圧を逃す機構を採用することによるアクチュエータ273の耐久性向上に加えて、ダイヤフラム176の耐久性向上を図ることが可能である。即ち、流体封入領域186に封入された非圧縮性流体の凍結等によって中央当接部178が仕切部材188に固着してダイヤフラム176が拘束された状態下、電動モータ232に通電されて駆動部材274が開作動位置(往復作動方向下端)に駆動せしめられると、ダイヤフラム176に固着された弁部材278がコイルスプリング282の付勢力に抗して閉作動位置(往復作動方向上端)に保持される。これにより、ダイヤフラム176に対して弁部材278が固着されている構造を採用して、弁部材278とダイヤフラム176の相対的な位置のずれを防止しつつ、ダイヤフラム176に対して過大な外力が及ぼされるのを防いで、ダイヤフラム176の破損を防ぐことが出来るのである。
以上、本発明の幾つかの実施形態について説明してきたが、これらはあくまでも例示であって、本発明は、かかる実施形態における具体的な記載によって、何等、限定的に解釈されるものではない。
例えば、前記第一乃至第三の実施形態においては、リリーフ弁としての圧抜弁140,262が、金属製の板ばね142,264を含んで構成されており、通常の振動入力時には、板ばね142,264の付勢力を利用してリリーフ通路138,260が遮断されるようになっているが、リリーフ弁の構造は、それら前記第一乃至第三の実施形態に示されたものに限定されるものではない。
具体的には、例えば、図7に示された圧抜弁284をリリーフ弁として採用することも出来る。圧抜弁284は、上部材286と下部材288を含んで構成されている。上部材286は、略円板形状を有する硬質の合成樹脂材で形成されており、径方向中間部分において板厚方向に貫通する複数の連通孔290が形成されている。
また、下部材288は、硬質の合成樹脂で形成されており、略円板形状を有する当接部292と、当接部292の径方向中央部分から軸方向上方に向かって突出形成された連結部294とを、一体的に備えた構造となっている。更に、当接部292の上面には、シールゴム296が固着されている。シールゴム296は、略円環板形状を有しており、径方向中間部分にテーパ部が形成されることで外周部分が中央部分よりも薄肉となっている。
そして、上部材286と下部材288が軸方向で重ね合わされて、それら上部材286と下部材288が相互に接着されることで、本実施形態における圧抜弁284が形成されている。この圧抜弁284は、リリーフ通路138を構成する外周連通路136に挿し入れられて、外周連通路136の下端部において内周側に突出する内フランジ状の当接支持部298を軸方向に挟んだ両側に、上部材286と下部材288の当接部292とが位置せしめられるようになっている。
また、上部材286の外周縁部と当接支持部298の軸方向対向面間には、コイルスプリング300が配設されており、コイルスプリング300の付勢力によって圧抜弁284が軸方向上向きに付勢されている。そして、コイルスプリング300の付勢力によって、下部材288の当接部292がシールゴム296を介してリリーフ通路138の平衡室70側開口部に対して押し付けられており、リリーフ通路138が圧抜弁284によって遮断されている。特に本実施形態では、シールゴム296のテーパ部がリリーフ通路138の開口周縁部に対して全周に亘って連続的に線当りしている。
そこにおいて、自動車の段差乗越え等による大荷重入力に起因して、受圧室68に大きな正圧が及ぼされると、受圧室68と平衡室70の相対的な圧力差に基づいて、圧抜弁284がコイルスプリング300の付勢力に抗して平衡室70側(図7中の下側)に変位せしめられる。そして、当接部292が当接支持部298の下面から離隔することにより、リリーフ通路138が連通されるようになっている。なお、下部材288が当接支持部298から離隔することにより、上部材286に貫通形成された連通孔290を通じて流体が流動せしめられるようになっている。
一方、例えば、図8に示された圧抜弁302をリリーフ弁として採用することも出来る。圧抜弁302は、上部材304と下部材306を含んで構成されている。上部材304は、略円板形状を有しており、合成樹脂材料に強磁性材料を混合した磁性樹脂で形成されて軸方向に磁化されている。更に、上部材304の径方向中間部分には、板厚方向に貫通する複数の連通孔308が形成されている。
また、下部材306は、上部材304と同様の磁性樹脂材料で形成されており、略円板形状を有する当接部310と、当接部310の径方向中央部分から軸方向上方に向かって突出形成された連結部312とを、一体的に備えた構造となっていると共に、当接部310が軸方向に磁化されている。なお、下部材306を構成する当接部310の上側の磁極と、上部材304の下側の磁極が、同じ極性を有している。
そして、上部材304と下部材306が軸方向で重ね合わされて、それら上部材304と下部材306が相互に接着されることで、本実施形態における圧抜弁302が形成されている。この圧抜弁302は、リリーフ通路138を構成する外周連通路136に挿し入れられていると共に、外周連通路136の下端部に固着されて外周連通路136の内周側に突出する内フランジ状の当接支持部314を軸方向に挟んだ両側に、上部材304と下部材306の当接部310とが位置せしめられるようになっている。
当接支持部314は、図8中の上下両面に磁極を形成された永久磁石で形成されており、当接支持部314と上部材304との間に軸方向の反発力が作用すると共に、当接支持部314と下部材306の当接部310との間に軸方向の吸引力が作用するようになっている。これにより、圧抜弁302は、それら上部材304および下部材306と当接支持部314の間で作用する磁力によって、常時軸方向上向きに付勢されており、当接部310がリリーフ通路138の平衡室70側の開口部に押し付けられることで、リリーフ通路138が遮断状態に保持されるようになっている。
そこにおいて、自動車の段差乗越え等による大荷重入力に起因して、受圧室68に大きな正圧が及ぼされると、受圧室68と平衡室70の相対的な圧力差に基づいて、圧抜弁302が、上部材304および下部材306と当接支持部314の間で作用する磁力に抗して平衡室70側(図8中の下側)に変位せしめられる。そして、当接部310が当接支持部314の下面から離隔することにより、リリーフ通路138が連通されるようになっている。なお、下部材306が当接支持部314から離隔することにより、上部材304に貫通形成された連通孔308を通じて流体が流動せしめられるようになっている。
以上に例示したように、リリーフ弁自体の構造や形成材料が特に限定されるものではないと共に、リリーフ弁を付勢する付勢手段としては、前記第一乃至第三の実施形態に示された板ばねの弾性力を利用する構造の他に、コイルスプリングの弾性力や磁力を利用した構造等も採用可能であり、それらは何れも限定的に解釈されるものではない。
さらに、前記第一乃至第三の実施形態では、圧抜弁140,262に対してシールゴム144,266が固着された構造を示したが、シールゴムは、短絡通路の開口部側においてリリーフ弁が押し付けられる部分に固着されていても良い。
更にまた、前記第一乃至第三の実施形態では、圧抜弁140,262が仕切部材48,188の平衡室70,214側の端面に重ね合わせられるように配設されており、リリーフ通路138,260の平衡室70,214側の開口部に押し付けられることでリリーフ通路138,260が遮断されるようになっているが、リリーフ弁は、例えば、短絡通路の長さ方向中間部分や受圧室側の端部に設けられていても良い。
また、短絡通路の具体的な構造は、前記第一乃至第三の実施形態に示されたリリーフ通路138,260の構造に限定されるものではない。例えば、短絡通路は、必ずしも高周波オリフィス通路の一部を利用して形成されている必要はなく、高周波オリフィス通路とは独立して形成されていても良い。
また、アクチュエータの具体的な構造は、前記第一乃至第三の実施形態に例示された具体的な構造によって限定的に解釈されるものではなく、特に歯車列の構成や、カム支軸をケース金具に支持せしめる軸受けの構造等は、何等限定されるものではない。
また、前記第一乃至第三の実施形態では、低周波オリフィス通路としての第一のオリフィス通路72,218と、高周波オリフィス通路としての第二のオリフィス通路74,220を備えた構造が示されているが、例えば、微小変形や微小変位によって受圧室の液圧を平衡室に伝達する可動膜や可動板を仕切部材に設けることで液圧吸収機構を構成して、該可動膜又は可動板によって発揮される液圧吸収作用に基づいて、自動車の走行こもり音等に相当する高周波オリフィス通路よりも高周波数の振動に対して目的とする防振効果(低動ばね効果)が発揮されるようにすることも出来る。
また、前記第一乃至第三の実施形態では、本発明に係る流体封入式防振装置の一例として、自動車のエンジンマウントを示したが、本発明は、エンジンマウントに限定されることなく、ボデーマウントやサブフレームマウント等にも適用することが出来る。更に、本発明の適用範囲は、自動車用に限定されることなく、例えば列車用や自転車用、更には車両以外の用途に用いられる流体封入式防振装置に対しても適用可能である。
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更,修正,改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
10,152,272:エンジンマウント、14,156:第一の取付金具、16,158:第二の取付金具、18,160:本体ゴム弾性体、32,176:ダイヤフラム、48,188:仕切部材,68,212:受圧室、70,214:平衡室、72,218:第一のオリフィス通路、74,220:第二のオリフィス通路、84,230,273:アクチュエータ、92,232:電動モータ、118:下側カム部、122:上側カム部、128,250,278:弁部材、138,260:リリーフ通路、140,262,284,302:圧抜弁、142,264:板ばね、144,266,296:シールゴム、238:雄ねじ部材、256:雌ねじ部、300:コイルスプリング