JP2009052590A - 流体封入式エンジンマウント - Google Patents

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Akio Saeki
明雄 佐伯
Yuichi Ogawa
雄一 小川
Atsushi Muramatsu
篤 村松
Hironori Koyama
裕教 小山
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Abstract

【課題】マウントの小型化が有利に図られ得ることに加え、弁体の安定した変位に基づき第二のオリフィス通路の遮断状態と連通状態が高度に制御されると共に、弁体が変位する際に部材同士の打ち当たりに起因する問題となる打音の発生も有利に抑えられる、新規な構造の流体封入式エンジンマウントを提供する。
【解決手段】弁体84を一方の変位側に向けて付勢する付勢スプリング94を設けてソレノイド58への通電により弁体84を付勢スプリング94による付勢力に抗して他方の変位側に向けて変位させるソレノイドアクチュエータ54,84を構成し、更に、弁体84が他方の変位側において当接するストッパ96を仕切部材30に設けると共に、付勢スプリング94として非線形ばね特性のコイルスプリングを採用して、弁体84に及ぼされる付勢力が弁体84の他方の変位側で非線形に大きくなるようにした。
【選択図】図1

Description

本発明は、パワーユニットを車両ボデーに対して防振支持させるエンジンマウントに係り、特に内部に封入された流体の流動作用に基づいて防振効果が発揮される流体封入式エンジンマウントに関するものである。
従来から、パワーユニットと車両ボデーの間に装着されて両者を防振連結乃至は防振支持せしめるエンジンマウントの一種として、第一の取付部材と第二の取付部材を本体ゴム弾性体で相互に連結して、壁部の一部が本体ゴム弾性体で構成された受圧室と、壁部の一部が変形容易な可撓性膜で構成された平衡室を形成し、それら受圧室と平衡室に非圧縮性流体を封入すると共に、両室を相互に連通せしめるオリフィス通路を設けた構造の流体封入式エンジンマウントが知られている。このような流体封入式エンジンマウントでは、オリフィス通路を通じて流動せしめられる流体の共振作用等の流動作用を利用して防振効果が得られることから、例えば自動車用エンジンマウント等への適用が検討されている。
ところで、上述の流体封入式エンジンマウントにおいては、走行状態等に応じて、異なる周波数域の振動が入力されることから、複数の異なる周波数域の振動に対して、何れも有効な防振効果が発揮されることが望ましい。しかし、オリフィス通路を通じて流動せしめられる流体の流動作用に基づく防振効果が有効に発揮されるのは、オリフィス通路が予めチューニングされた比較的に狭い周波数域に限られるという問題があった。
そこで、かかる問題を解決するために、例えば特許文献1(特開昭59−151637号公報)には、受圧室と平衡室を仕切る仕切部材に第一のオリフィス通路と第二のオリフィス通路をそれぞれ形成して、第二のオリフィス通路を第一のオリフィス通路よりも高周波数域にチューニングすると共に、コイルスプリングとソレノイドアクチュエータで作動せしめられる弁体でそれら第一及び第二のオリフィス通路を切り換えるようにした流体封入式エンジンマウントが提案されている。このようなエンジンマウントによれば、ソレノイドへの通電を走行状態等に応じて制御することにより、複数の周波数域の振動に対する防振効果が得られる。
しかしながら、特許文献1に記載のエンジンマウントでは、ソレノイドアクチュエータがマウント本体の外に設けられており、ソレノイドが収容配置されたハウジングが第二の取付部材の外周面上で外方に大きく突出してしまってマウント全体の大型化が避けられない問題があった。
しかも、弁体の確実な開閉作動を実現すべくコイルスプリングの特性とソレノイドアクチュエータの出力を大きくすると、弁体の開閉作動時の打音や衝撃が大きくなってしまうという問題もあった。
なお、かかる弁体の当接打音に対処するために、例えば、当接面間に緩衝ゴムを設けることも考えられる。
しかしながら、弁体乃至は強磁性部材の可動領域にストッパゴムを設けると、可動領域が制限されることに伴い、弁体の変位許容量が制限され易くなって、目的とする第二のオリフィス通路の遮断状態および連通状態が安定して実現され難くなるおそれがあった。しかも、一般に、ゴムの耐久性は、金属材や合成樹脂材等に比して低いことから、打音防止効果が長期に亘って有効に発揮され難くなる問題を内在していた。
特開昭59−151637号公報
ここにおいて、本発明は、上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、マウントの小型化が有利に図られ得ることに加え、弁体の安定した変位に基づき第二のオリフィス通路の遮断状態と連通状態が高度に制御されて、優れた防振効果が得られると共に、弁体が変位する際に部材同士の打ち当たりに起因する問題となる打音の発生も有利に抑えられる、新規な構造の流体封入式エンジンマウントを提供することにある。
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意な組み合わせで採用可能である。また、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに限定されることなく、明細書全体および図面に記載されたもの、或いはそれらの記載から当業者が把握することの出来る発明思想に基づいて認識されるものであることが理解されるべきである。
すなわち、本発明の特徴とするところは、パワーユニットと車両ボデーの一方に取り付けられる第一の取付部材と、パワーユニットと車両ボデーの他方に取り付けられる第二の取付部材とを本体ゴム弾性体で連結して、第二の取付部材で支持された仕切部材を挟んだ両側に、壁部の一部が本体ゴム弾性体で構成された受圧室と壁部の一部が可撓性膜で構成された平衡室を形成して、それら受圧室と平衡室に非圧縮性流体を封入すると共に、受圧室と平衡室を相互に連通せしめる第一のオリフィス通路と第二のオリフィス通路を仕切部材にそれぞれ形成して、第一のオリフィス通路よりも第二のオリフィス通路を高周波数域にチューニングする一方、第二のオリフィス通路を連通状態と遮断状態に切り換える弁体と、弁体を駆動するソレノイドアクチュエータを設けた流体封入式エンジンマウントにおいて、弁体を強磁性材で形成して第二のオリフィス通路を通じての流体流路上に弁体を変位可能に配設すると共に、弁体を一方の変位側に向けて付勢する付勢スプリングを設ける一方、弁体の周りにソレノイドを配設してソレノイドへの通電により弁体を付勢スプリングによる付勢力に抗して他方の変位側に向けて変位させるソレノイドアクチュエータを構成し、更に、弁体が他方の変位側において当接するストッパを仕切部材に設けると共に、付勢スプリングとして非線形ばね特性のコイルスプリングを採用して、弁体に及ぼされる付勢力が弁体の他方の変位側で非線形に大きくなるようにした流体封入式エンジンマウントにある。
このような本発明に従う構造とされた流体封入式エンジンマウントにおいては、弁体が、強磁性部材を用いて形成されて、その周りに配されるソレノイドの通電により生ぜしめられる磁界の作用に基づいて一方向に吸引変位せしめられる、ソレノイドバルブ構造とされている。これら可動子としての弁体とソレノイドからなるソレノイドアクチュエータが仕切部材に設けられていることから、ソレノイドアクチュエータを収容配置するハウジングが既存の仕切部材で実現されて、マウント全体がコンパクトになる。
また、本構造では、弁体が、ソレノイドへの通電によりコイルスプリングの付勢力に抗して一方から他方に向けて変位せしめられて、ストッパに当接することにより、弁体の他方の変位端が規定される。これにより、第二のオリフィス通路の連通状態または遮断状態が安定して維持される。
本発明に係る流体封入式エンジンマウントでは、弁体を一方の変位側に向けて付勢するコイルスプリングに非線形なばね特性が付与されていることから、弁体が一方の変位位置(ソレノイドに通電されない状態での位置)から他方の変位側に変位せしめられる際に、変位量が小さい状態ではコイルスプリングの反発付勢力が小さくされる。それ故、ソレノイドアクチュエータにおいて出力が小さい初期のストローク位置でも小さな電力で弁体を駆動させることが可能となり、消費電力の低減とソレノイドアクチュエータの小型化が図られる。
しかも、他方の変位側でコイルスプリングの付勢力が大きくされることに基づいて、ソレノイドアクチュエータにおいて出力が大きくなる他方の変位側での弁体の加速度的な変位が抑えられることから、弁体がストッパに対して衝撃的に大きく打ち当たることが抑えられて、問題となる打音が有利に防止されるのである。
なお、コイルスプリングに非線形なばね特性を付与する手段としては、例えば、スプリングの断面形状を変化させたり、スプリングが中心軸回りに一回転した部分において長手方向で隣り合う部分間の離隔距離(スプリングのピッチ)を不等間隔にしたり、或いは後述のように、コイルスプリングとしてテーパコイルばねを用いること等が、好適に採用される。
また、本発明に係る流体封入式エンジンマウントでは、弁体が有底円筒形状を有していると共に、コイルスプリングの一方の端部を弁体の内側に収容配置した構造が、採用されても良い。このような構造によれば、コイルスプリングが弁体に安定して支持せしめられることに加え、例えば、弁体に対する軸直角方向の位置決め作用も期待でき、弁体の周壁部の仕切部材の内壁部による干渉を抑えることも出来て、弁体の駆動変位が一層安定する。
また、本発明に係る流体封入式エンジンマウントでは、コイルスプリングがテーパコイルばねであり、その大径側の端部が弁体の内側に収容配置されて、弁体の周壁部によってテーパコイルばねが軸直角方向に位置決めされている構造が、採用されても良い。このような構造によれば、テーパ作用により、非線形なばね特性をコイルスプリングに対して比較的に容易に付することが出来る。
また、本発明に係る流体封入式エンジンマウントでは、仕切部材には、第二のオリフィス通路を通じての流体流路上において弁体が収容配置される弁収容領域を設けて、弁収容領域に開口形成した流体流動用の連通孔を弁体によって閉塞せしめることにより第二のオリフィス通路を遮断状態とすると共に、ソレノイドへの通電によって弁体を弁収容領域の壁部から離隔せしめて連通孔を開口することにより第二のオリフィス通路を連通状態とした構造が、採用されても良い。弁収容領域や連通孔の形状や大きさ、位置等を適当に設計することにより、第二のオリフィス通路を通じての流体流路の通路断面積や長さ等を大きな自由度でチューニングできる。例えば、第二のオリフィス通路を弁収容領域の周壁面に開口形成するようにしても良い。
また、本発明に係る流体封入式エンジンマウントでは、弁収容領域において弁体の一方の変位側に位置する壁部に弁座を設けて、弁座に連通孔を形成しており、弁体を弁座に重ね合わせることで、弁体の一方の変位端を規定すると共に、連通孔を弁体により閉塞せしめて第二のオリフィス通路を遮断状態とする構造が、採用されても良い。このような構造によれば、コイルスプリングによる付勢力が弁体の一方の変位側の弁座に安定して及ぼされることとなり、この弁座に弁体が重ね合わせられて、連通孔が閉塞されることによって第二のオリフィス通路が遮断されるようになっていることから、弁体を第二のオリフィス通路の遮断状態に位置せしめてかかる位置に保持する態様が一層有利に実現され得る。
また、本発明に係る流体封入式エンジンマウントでは、弁収容領域において第二のオリフィス通路の受圧室側から平衡室側に向けて弁体がコイルスプリングで付勢されている一方、コイルスプリングによる付勢方向側の変位側で弁体が弁収容領域の壁部に当接して連通孔が閉塞されると共に、受圧室と平衡室の圧力が弁体の変位方向の各一方の面に及ぼされるようになっており、振動入力時に受圧室に発生する負圧によって弁体が付勢手段による付勢力に抗して連通孔が連通状態とされるようになっている構造が、採用されても良い。このような構造によれば、衝撃的な乃至は大荷重の振動が入力されて、受圧室に過大な負圧が生ぜしめられた際に、負圧の作用で弁体が変位せしめられて第二のオリフィス通路の流体流路の一部を構成する連通孔が連通状態となって、受圧室と平衡室が連通孔を通じて短絡せしめられる。これにより、受圧室の過負圧状態が解消されて、かかる過負圧状態が保持されることに起因するキャビテーション気泡の発生に伴う異音の発生が有利に抑えられる。
すなわち、本構造に係る流体封入式エンジンマウントにおいては、弁体として、受圧室と平衡室の相対的な圧力が変位方向の各一方の面に及ぼされる構造のものが採用されていることによって、弁体の他に、受圧室の過負圧状態下で受圧室と平衡室を短絡せしめる短絡機構を特別に設ける必要もない。それによって、本構造では、例えば、米国特許第6921067号明細書に示されるように、受圧室と平衡室の圧力が弁体の変位方向の各一方の面に及ぼされ難い構造の弁体が採用されていることによって、弁体に短絡機能が備わっていない従来構造の流体封入式エンジンマウントに比して、部品点数の増加を抑えつつ、防振効果の向上が図られ得るのである。
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。先ず、図1には、本発明の流体封入式エンジンマウントに係る一実施形態としての自動車用エンジンマウント10が示されている。このエンジンマウント10は、第一の取付部材としての第一の取付金具12と、第二の取付部材としての第二の取付金具14が、本体ゴム弾性体16で連結された構造とされている。そして、第一の取付金具12が図示しない自動車のパワーユニット側の取付部材に取り付けられると共に、第二の取付金具14が図示しない自動車のボデー側の取付部材に取り付けられる。これにより、パワーユニットが車両ボデーに対してエンジンマウント10を介して弾性的に支持されるようになっている。
なお、図1では、自動車に装着する前のエンジンマウント10の単体での状態が示されているが、自動車へのマウント装着状態では、パワーユニットの吊り下げによるパワーユニットの分担支持荷重がマウント軸方向(図1中、上下)に入力されることにより、第一の取付金具12と第二の取付金具14がマウント軸方向で相互に接近する方向に変位して、本体ゴム弾性体16が弾性変形する。また、かかる装着状態下、防振すべき主たる振動は、略マウント軸方向に入力されることとなる。以下の説明中、特に断りのない限り、上下方向は、マウント軸方向となる図1中の上下方向をいう。
より詳細には、第一の取付金具12は、裁頭円錐台形状乃至は円柱形状を呈している。また、第一の取付金具12の中央部分には、上端面に開口する螺子穴18を備えており、図示しないパワーユニット側の部材が固定ボルトを介して螺子穴18に螺着固定されることにより、第一の取付金具12が、パワーユニットに固定的に取り付けられるようになっている。
また、第二の取付金具14は、大径の略円筒形状とされており、特に、軸方向中間部分から上部にかけての部位には、径寸法が次第に大きくなる逆テーパが付されている。更に、第二の取付金具14の上端部には、軸直角方向外方に延び出す円環形状の外フランジ状部20が形成されていると共に、第二の取付金具14の下端部には、軸直角方向内方に延び出す内フランジ状部22が形成されている。この第二の取付金具14には、図示しないブラケット金具が固定されるようになっており、ブラケット金具が図示しない車両ボデー側の部材に固定されることで、第二の取付金具14が車両ボデーに対して固定的に取り付けられるようになっている。
これら第一の取付金具12と第二の取付金具14が、相互に同一中心軸上に配設されると共に、第一の取付金具12が第二の取付金具14の外フランジ状部20側の開口端面と軸方向に所定距離を隔てて対向位置せしめられている。第一の取付金具12と第二の取付金具14の間には、本体ゴム弾性体16が介装されている。
本体ゴム弾性体16は、全体として略裁頭円錐台形状を呈する厚肉のゴム弾性体であって、その下端中央部分には、軸方向下方に向かって開口する逆すり鉢形状の大径凹所24が形成されている。そして、本体ゴム弾性体16の上端部に対して第一の取付金具12の軸方向中間部から下端部に至る部分が埋め込まれるように加硫接着されていると共に、本体ゴム弾性体16の下端部の外周面に対して第二の取付金具14のテーパ部分の内周面が重ね合わされて加硫接着されている。これにより、本体ゴム弾性体16が第一の取付金具12と第二の取付金具14を一体的に備えた一体加硫成形品として形成されていると共に、第二の取付金具14の一方(図1中、上)の開口部が本体ゴム弾性体16によって流体密に閉塞されている。また、第二の取付金具14における軸方向中間部分から下端部分にかけての内周面には、本体ゴム弾性体16と一体形成された薄肉のシールゴム層26が全体に亘って被着形成されている。なお、本体ゴム弾性体16における大径凹所24の開口端面の外周縁部がシールゴム層26の内周面よりも軸直角方向内側に位置せしめられていることによって、本体ゴム弾性体16とシールゴム層26の境界部分には、円環形状の段差部28が形成されている。
また、第二の取付金具14の軸方向下側の開口部分には、仕切部材30が組み付けられている。仕切部材30は、全体として略円形ブロック形状を呈しており、仕切部材本体32のと上板金具34を含んで構成されている。なお、仕切部材30は、磁化されない材料で形成されていることが望ましい。
仕切部材本体32は、略円形ブロック形状を呈しており、本実施形態では、硬質の合成樹脂材で形成されている。また、仕切部材本体32の軸方向の略中央部分の外周面には、互いに軸方向に離隔してそれぞれ周方向に連続して延びる第一の係止溝36と第二の係止溝38が形成されている。
さらに、仕切部材本体32の外周面には、周溝40が開口形成されている。周溝40は、仕切部材本体32における第一及び第二の係止溝36,38を軸方向に跨いだ両側で、それぞれ周方向に所定の長さで延びる一対の溝部を備えており、一対の溝部の各周上の一箇所で、仕切部材本体32をトンネル上に延びる図示しない接続穴で相互に接続された形態を有している。また、周溝40の周方向一方の端部となる、上側の溝部における接続穴と反対側の端部には、仕切部材本体32の上端面を貫通して連通窓44が形成されている。
また、仕切部材本体32の中央部分には、下端面に開口する浅底円形状の下側凹所42が形成されている。更に、周溝40の周方向他方の端部となる、下側の溝部における接続穴と反対側の端部には、仕切部材本体32において下側凹所42の周壁部を構成する部位を貫通して連通窓46が形成されている。即ち、周溝40と下側凹所42は、連通窓46を通じて相互に接続されている。
さらに、仕切部材本体32の下側凹所42よりも上方の中央部分には、中央凹所48が形成されている。中央凹所48は、下側凹所42に比して小形の円形断面で軸方向に連続して延びており、仕切部材本体32の上端面に開口している。
これにより、仕切部材本体32の中央部分において、中央凹所48の底面と下側凹所42の底面の間の部分が、薄肉の円板形状を呈しており、この円板形状の部分によって、本実施形態に係る弁座50が形成されている。弁座50の中央部分には、連通孔52が貫設されている。
仕切部材本体32における中央凹所48の周壁部の周りには、ソレノイドとしてのコイル部材54が埋設されている。コイル部材54は、ヨーク56とコイル58を含んで構成されている。ヨーク56は、鉄等の強磁性体からなる複数の部材を組み合わせて、径方向内側に向かって矩形凹状に開口する断面で周方向の全周に亘って連続して延びる筒状とされている。そして、コイル58がヨーク56の内側に巻回された形態で配設されていることにより、略円筒形状を呈するコイル部材54が構成されている。
このようなコイル部材54は、中央凹所48と同軸的に配置されており、中央凹所48を全周に亘って取り囲むように仕切部材本体32の内部に埋設されている。なお、本実施形態では、コイル部材54が、例えば、仕切部材本体32が射出成形等の手段で形成される際に金型に予めセットされる等して、仕切部材本体32の成形時に内部に埋め込まれている。
仕切部材本体32には、リード線60が設けられていて、リード線60の一方の端部が仕切部材本体32の内部においてコイル58に接続されていると共に、リード線60の他方の端部が仕切部材本体32の仕切部材本体の外周面から外部に延びて電源装置62に接続されている。これにより、電源装置62からリード線60を通じてコイル58に通電可能となっている。なお、電源装置62には、例えば、装着される自動車の電気系統の電源等が、好適に採用され得る。
仕切部材本体32の上面には、上板金具34が重ね合わされている。上板金具34は、薄肉の略円板形状を呈しており、例えば鋼板等の金属材料で形成された高剛性の部材とされている。上板金具34の外径が仕切部材本体32の外径と略等しくなっている。更に、上板金具34の略中央部分には、透孔64が厚さ方向(図1中、上下)に貫設されていると共に、上板金具34の外周部分には、切り欠き状の連通窓66が形成されている。ここで、透孔64は、仕切部材本体32の中央凹所48の開口端面の大きさに比して小さくされている。
このような上板金具34が、仕切部材本体32と同軸的に配されて、仕切部材本体32の上面に重ね合わせられていることにより、仕切部材30が構成されている。また、仕切部材本体32と上板金具34は、図示しない位置決め手段によって周方向に互いに位置決めされており、上板金具34の連通窓66が仕切部材本体32の周溝40の一方の端部に形成された連通窓44と軸方向で投影する位置に位置せしめられている。かかる位置決め手段としては、例えば仕切部材本体32の上端部と上板金具34の一方における周方向の所定の位置に突部を突設すると共に、それら他方における周方向の所定の位置に通孔を貫設して、突部を通孔に挿通することで仕切部材本体32と上板金具34の周方向の変位を規制する、係止機構が好適に採用される。
特に、仕切部材本体32と上板金具34の組み付けにおいて、仕切部材本体32の中央凹所48の開口部分が上板金具34の中央部分で覆蓋されていることによって、仕切部材30の中央部分には、軸方向に一定の円形断面で延びる弁収容領域68が構成されている。
弁収容領域68の軸方向一方(図1中、下)の端部には、弁座50が位置せしめられており、弁座50の中央にある連通孔52を通じて、弁収容領域68と下側凹所42が相互に連通せしめられている。
弁収容領域68における弁座50と軸方向で対向位置せしめられる軸方向他方(図1中、上)の端部には、中央に透孔64を備えた上板金具34の中央部分が位置せしめられており、かかる透孔64を通じて、弁収容領域68が上板金具34の上部外方に連通せしめられている。
この仕切部材30が第二の取付金具14の下側開口部から軸方向に差し入れられ、上板金具34の外周部分が第二の取付金具14の環状段差部28に重ね合わせられることによって、仕切部材30の第二の取付金具14に対する軸方向の挿入端が規定されている。また、第二の取付金具14に対して外方から八方絞り等の縮径加工が施されて、第二の取付金具14の軸方向中間部分から下端部にかけての筒状部分が、上板金具34および仕切部材本体32の上端部乃至は軸方向中間部分に至る部位に嵌着固定されていることに基づいて、仕切部材30が第二の取付金具14に固定されている。また、第二の取付金具14の縮径加工による変形に伴い、第二の取付金具14の軸方向下端部に設けられた内フランジ状部22が、仕切部材本体32の第一の係止溝36に対して係合せしめられていることにより、仕切部材30が第二の取付金具14に対して軸方向に位置決め固定されている。
仕切部材30の下方には、可撓性膜としてのダイヤフラム70が配設されている。ダイヤフラム70は、充分な弛みを有する薄肉のゴム膜で形成されており、略円形ドーム形状を呈している。また、ダイヤフラム70の外周縁部には、固定金具72が加硫接着されている。固定金具72は、薄肉の略円筒形状を呈しており、その上端部には径方向内方に延び出す内フランジ状部が74形成されている。また、固定金具72の軸方向下側の内周面乃至は下端縁部にダイヤフラム70の外周縁部が加硫接着されていると共に、固定金具72の軸方向中間部分乃至は上側の内周面にはダイヤフラム70と一体成形された薄肉のシールゴム層76が全面に亘って加硫接着されている。
固定金具72が仕切部材30の下端部から軸方向に外挿されると共に、固定金具72に縮径加工が施されて、固定金具72が仕切部材30の軸方向下側部分に嵌着固定されることによって、ダイヤフラム70が仕切部材30に対して固定的に組み付けられている。なお、固定金具72の仕切部材30に対する軸方向の挿入端は、ダイヤフラム70の外周部分が仕切部材本体32の下端部分の外周側に重ね合わせることによって規定されている。また、固定金具72の縮径加工による変形に伴い、固定金具72の上端部に形成された内フランジ状部74が、仕切部材本体32の第二の係止溝38に対して係合せしめられていることにより、ダイヤフラム70が、仕切部材30延いては第二の取付金具14に対して軸方向に位置決め固定されている。上述の説明からも明らかなように、本実施形態では、ダイヤフラム70が、仕切部材30を介して第二の取付金具14に固定的に支持せしめられていると共に、第二の取付金具14の下方の開口部が、仕切部材30およびダイヤフラム70によって流体密に閉塞されている。
このようにして仕切部材30とダイヤフラム70が第一及び第二の取付金具12,14を備えた本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品に組み付けられることにより、仕切部材30を挟んだ軸方向一方(図1中、上)の側において、本体ゴム弾性体16の大径凹所24が仕切部材30で閉塞された領域には、壁部の一部が本体ゴム弾性体16で構成されて振動入力時に圧力変動が生ぜしめられる受圧室78が形成されている。また、仕切部材30を挟んだ軸方向他方(図1中、下)の側において、固定金具72の開口が仕切部材30で閉塞された固定金具72の内側領域には、壁部の一部がダイヤフラム70で構成されて容積変化が容易に許容される平衡室80が形成されている。これら受圧室78と平衡室80には、非圧縮性流体が封入されている。封入される非圧縮性流体としては、例えば水やアルキレングリコール、ポリアルキレングリコール、シリコーン油等が採用されるが、特に流体の共振作用等の流動作用に基づく防振効果を有効に得るためには、0.1Pa・s以下の低粘性流体を採用することが望ましい。また、受圧室78や平衡室80への非圧縮性流体の封入は、例えば、第一及び第二の取付金具12,14を備えた本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品に対する仕切部材30やダイヤフラム70の組み付けを非圧縮性流体中で行うことによって、好適に実現される。更に好適には、仕切部材30とダイヤフラム70が、同時に非圧縮性流体中で本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品に組み付けられることにより、大径凹所24や固定金具72の内側等に空気が残留する問題が解消されて、残留空気に起因する受圧室78や平衡室80での気泡の発生が抑えられる。
仕切部材30が第二の取付金具14に組み付けられることに伴い、仕切部材30の上部外周面が、第二の取付金具14に被着されたシールゴム層26を介して第二の取付金具14の内周面に流体密に重ね合わされることによって、仕切部材30の周溝40の上側溝部が流体密に閉塞されている。更に、ダイヤフラム70の固定金具72が仕切部材30に組み付けられることに伴い、仕切部材30の下部外周面が、固定金具72に被着されたシールゴム層76を介して固定金具72の内周面に流体密に重ね合わされることによって、仕切部材30の周溝40の下側溝部が流体密に閉塞されている。これにより、第二の取付金具14の内周面や固定金具72の内周面、周溝40の壁面が協働して、仕切部材30の外周部分を周方向に所定の長さで延びる第一のオリフィス通路82が形成されている。第一のオリフィス通路82の一方の端部が、仕切部材本体32の連通窓44および上板金具34の連通窓66を通じて受圧室78に接続されていると共に、第一のオリフィス通路82の他方の端部が、仕切部材本体32の連通窓46を通じて平衡室80に接続されている。それによって、受圧室78と平衡室80が第一のオリフィス通路82を通じて相互に連通せしめられて、それら両室78,80間で、第一のオリフィス通路82を通じての流体流動が許容されるようになっている。
また、仕切部材30に設けられた弁収容領域68は、上板金具34の透孔64を通じて受圧室78に連通されていると共に、仕切部材本体32の連通孔52を通じ平衡室80に連通されており、その弁収容領域68には、受圧室78や平衡室80と同様に非圧縮性流体が封入されている。ここで、弁収容領域68には、弁体としての弁金具84が収容配置されている。
弁金具84は、鉄やケイ素鋼等の強磁性材料を用いて形成されていると共に、軸方向に延びる円筒形状の筒状部86と、筒状部86の下端部分を閉塞するようにして軸直角方向に広がる円板形状の弁板部88とを含んで構成され、全体として有底円筒形状を呈している。弁金具84の外径寸法が、弁収容領域68の横寸法となる中央凹所48の径寸法に比して僅かに小さくされている。弁金具84の高さ寸法が、弁収容領域68の縦寸法となる中央凹所48の高さ寸法に比して、所定の大きさだけ小さくされている。また、弁板部88における径方向中間部分には、周方向に所定距離を隔てて位置せしめられた小形の透孔からなる貫通孔90が貫設されている。
かかる弁金具84が弁収容領域68を構成する中央凹所48の開口部から軸方向に内挿され、弁金具84の筒状部86が弁収容領域68の周壁部に沿って延びるように配設されている。これにより、弁金具84が、弁収容領域68延いては弁収容領域68の周壁部の周りに設けられたコイル部材54と略同軸的に位置決め配置されている。なお、弁収容領域68の周壁部と弁金具84の筒状部86の間には、全周にわたって微小な隙間が形成されており、かかる隙間の存在によって弁金具84の軸方向変位等が好適に許容されるようになっているが、隙間を通じての流体流動はほとんど生ぜしめられないように、隙間の大きさ、即ち弁収容領域68の周壁部と筒状部86の間の離隔距離が設定されている。
また、弁金具84の筒状部86の開口端部が、上板金具34における透孔64の周りで弁収容領域68の壁部の一部を構成する部分と軸方向に対向位置せしめられていると共に、弁金具84の弁板部88が、仕切部材本体32において弁収容領域68の壁部の一部を構成する弁座50と軸方向に対向位置せしめられており、弁金具84の高さ寸法が弁収容領域68の高さ寸法に比して小さくされていることによって、弁金具84が弁収容領域68において軸方向に変位可能に収容配置されている。
特に、弁金具84の弁板部88に形成された貫通孔90と弁座50に形成された連通孔52が、弁金具84の弁収容領域68への配設状態下において、軸方向で互いに投影しない位置に配されている。
ここにおいて、受圧室78と平衡室80は、上板金具34の透孔64や弁収容領域68、弁金具84の貫通孔90、弁座50の連通孔52を通じて相互に連通せしめられており、本実施形態では、受圧室78と平衡室80を相互に連通する第二のオリフィス通路92が、それら透孔64、弁収容領域68、貫通孔90および連通孔52によって構成されている。
特に本実施形態では、第一のオリフィス通路82を通じて流動せしめられる流体の共振周波数が、例えば、該流体の共振作用に基づいてエンジンシェイク等に相当する10Hz前後の低周波数域の振動に対して有効な防振効果(高減衰効果)が発揮されるようにチューニングされている。一方、第二のオリフィス通路92を通じて流動せしめられる流体の共振周波数が、例えば該流体の共振作用に基づいてアイドリング振動や低速こもり音等に相当する20〜40Hz程度の中周波数域乃至は高周波数域の振動に対して有効な防振効果が得られるようにチューニングされている。即ち、第二のオリフィス通路92のチューニング周波数が、第一のオリフィス通路82のチューニング周波数に比して高周波数域に設定されている。これら第一のオリフィス通路82や第二のオリフィス通路92のチューニングは、例えば、受圧室78や平衡室80の各壁ばね剛性、即ちそれら各室78,80を単位容積だけ変化させるのに必要な圧力変化量に対応する本体ゴム弾性体16やダイヤフラム70等の各弾性変形量に基づく特性値を考慮しつつ、各オリフィス通路82,92の通路長さと通路断面積を調節することによって行うことが可能であり、一般に、オリフィス通路82,92を通じて伝達される圧力変動の位相が変化して略共振状態となる周波数を、それらオリフィス通路82,92のチューニング周波数として把握することが出来る。
また、弁収容領域68における上板金具34と弁金具84の軸方向間には、付勢手段(付勢スプリング)としてのコイルスプリング94が配設されている。コイルスプリング94の一方(図1中、下)の端部が、弁金具84に内挿されて、軸直角方向で筒状部86に重ね合わされていると共に、軸方向で弁金具84の弁板部88に重ね合わされている。即ち、コイルスプリング94が、弁金具84の筒状部86によって弁金具84と同一中心軸上に配されるように軸直角方向に位置決めされている。また、コイルスプリング94の他方(図1中、上)の端部が、上板金具34の透孔64の周りに重ね合わされており、本実施形態では、上板金具34と弁金具84の間で予圧縮された状態で配設されている。
弁金具84がコイルスプリング94により軸方向下方に向かって付勢されて、弁座50に対して軸方向上方から押し当てられることにより、弁金具84の弁収容領域68における変位方向(本実施形態ではマウント軸方向)の一方(図1中、下)の変位端が規定されるようになっている。ここで、弁座50の連通孔52と弁金具84に形成された貫通孔90は、軸方向で互いに投影しない位置に、換言すると径方向で互いに異なる位置に設けられていることから、弁金具84の弁板部88が弁座50に重ね合わせられた状態下、連通孔52が弁金具84の貫通孔90よりも径方向内側の中央部分によって閉塞せしめられていると共に、貫通孔90が弁座50の連通孔52よりも径方向外側の径方向中間部分乃至は外周部分によって閉塞せしめられている。
従って、コイル58に通電せずに、コイルスプリング94の付勢力に基づき弁金具84の弁板部88が弁座50に重ね合わされた状態において、弁金具84の貫通孔90および弁座50の連通孔52の閉塞に伴い、弁収容領域68と平衡室80が弁座50と弁板部88によって流体密に仕切られており、第二のオリフィス通路92が遮断状態とされるようになっている。なお、第二のオリフィス通路92の遮断状態は、受圧室78と平衡室80の間で第二のオリフィス通路92を通じての流体流路による流体流動作用が有効に生ぜしめられない状態をいう。
一方、コイル58に対して電源装置62から通電されると、コイル部材54と強磁性材で形成された弁金具84の間に発生する磁力によって、弁金具84がコイルスプリング94による付勢力に抗して軸方向上方に吸引変位せしめられるようになっている。
かかる弁金具84の吸引変位によって、弁板部88が弁座50から軸方向上方に離隔せしめられることから、弁板部88の貫通孔90および弁座50の連通孔52が連通状態とされて、弁収容領域68と平衡室80が相互に連通せしめられる。その結果、第二のオリフィス通路92が連通状態とされて、受圧室78と平衡室80の間で第二のオリフィス通路92を通じての流体流路による流体流動作用が有効に生ぜしめられる状態になる。
要するに、コイル58への電力供給を制御することにより、弁金具84の弁板部88を弁座50に対して接近方向と離隔方向に変位せしめることが出来て、第二のオリフィス通路92の遮断状態と連通状態を切り換えることが可能となっている。
特に本実施形態では、コイル58への通電による磁界の作用で弁板部88が弁座50から離隔せしめられると、弁金具84の筒状部86の開口端部(上端部)が上板金具34に当接する位置にまで吸引変位せしめられるようになっており、更にかかる当接状態を維持するように、コイル58への電力供給を制御している。即ち、上板金具34において筒状部86の開口端部と当接する、コイルスプリング94の端部を支持する部位よりも径方向外方の部位が、ストッパ96として構成されており、筒状部86が仕切部材30のストッパ96に当接することで、弁金具84の弁収容領域68における変位方向の他方(図1中、上)の変位端が規定され、しかもかかる当接状態が維持されることで、第二のオリフィス通路92が連通状態に保持されるのである。
さらに、本実施形態では、受圧室78の圧力が、上板金具34の透孔64を通じて、弁金具84の変位方向の他方(図1中、上)に向かう、筒状部86の上端面(開口周縁面)や弁板部88の他方の面に及ぼされるようになっている一方、平衡室80の圧力が、仕切部材本体32の連通孔52を通じて、弁金具84の変位方向の一方(図1中、下)に向かう弁板部88の一方の面に及ぼされるようになっている。そして、コイル58に通電せずに、コイルスプリング94の付勢力に基づき弁板部88が弁座50に重ね合わされて、第二のオリフィス通路92を遮断せしめた状態において、衝撃的に大きな振動が入力されること等により受圧室78に大きな負圧が発生して、受圧室78と平衡室80の相対的な圧力差が大きくなると、前述の弁板部88の両面や筒状部86の上端面に受圧室78の過負圧作用が及ぼされることにより、弁金具84がコイルスプリング94による付勢力に抗して弁座50から離隔して、第二のオリフィス通路92を連通状態とするようになっている。要するに、コイル58の非通電状態下、受圧室78が過負圧状態になると、コイル58に通電せずとも、弁金具84が変位して、第二のオリフィス通路92が連通せしめられるのであり、それによって、受圧室78と平衡室80が第二のオリフィス通路92を通じて短絡せしめられて、受圧室78の過負圧状態が通常の圧力状態に移行するのである。
そこにおいて、本実施形態に係るコイルスプリング94には、非線形ばね特性が付与されており、弁金具84に及ぼされる付勢力が、弁金具84が弁座50に当接する一方の変位側よりも弁金具84がストッパ96に当接する他方の変位側で十分に大きくなるように設定されている。
具体的にコイルスプリング94に上述の如き非線形ばね特性を付与する手段として、本実施形態では、コイルスプリング94における弁金具84の筒状部86に内挿して支持せしめられる一方の端部から上板金具34に当接して支持せしめられる他方の端部に向かって、径寸法が小さくなるテーパ形状のテーパコイルばねが採用されている。
すなわち、かかる非線形ばね特性のコイルばねは、線形ばね特性を有するコイルばねと比べて、小荷重領域では軸方向の圧縮変形量に大差がないものの、大荷重領域では軸方向の圧縮変形量が小さくされている。それによって、弁金具84が弁座50に当接して第二のオリフィス通路92を遮断せしめる一方の変位側から、弁金具84がストッパ96に当接して第二のオリフィス通路92を連通状態に保持せしめる他方の変位側に向かって変位することに伴い、コイルスプリング94に及ぼされる軸方向荷重が次第に大きくなると、圧縮変形が、荷重−撓み特性が線形的な低ばね特性の領域から非線形的な高ばね特性の領域に生ぜしめられることとなり、弁金具84の他方の変位側においてコイルスプリング94に高ばね特性が付与せしめられるのである。
上述の如き構造とされた自動車用エンジンマウント10においては、自動車の走行時に、外部の電源装置62によるコイル58への通電を行わないことで、コイルスプリング94の付勢力で弁金具84が弁座50に当接する状態が維持せしめられて、第二のオリフィス通路92が遮断状態に維持されるようになっている。これにより、自動車の走行時に問題となるエンジンシェイクが入力されると、第二のオリフィス通路92を通じての圧力漏れが阻止されて、受圧室78と平衡室80の相対的な圧力差に基づいて第一のオリフィス通路82を通じての流体流動が有効に生ぜしめられることとなり、受圧室と平衡室90の間で流動せしめられる流体の共振作用等の流動作用に基づいて防振効果が有利に発揮される。
一方、自動車の停車時には、電源装置62によって外部からコイル58に給電されるようになっており、コイル58が磁場を形成することによって、弁金具84が磁力の作用により軸方向上方に向かって吸引変位されるようになっている。そして、図2にも示されているように、弁金具84の弁板部88が弁座50から軸方向上方に離隔せしめられると共に、弁金具84の筒状部86が仕切部材30のストッパ96に当接することにより、弁座50に形成された連通孔52や弁板部88に形成された貫通孔90が何れも連通せしめられた状態に保持されて、第二のオリフィス通路92の連通状態が保持されている。これにより、自動車の停車状態で、第一のオリフィス通路82のチューニング周波数よりも高周波数域において問題となるアイドリング振動当が入力された際に、第一のオリフィス通路82を通じての流体流動作用が実質的に生ぜしめられない一方、第二のオリフィス通路92を通じての流体流路による共振作用等の流動作用が有効に生ぜしめられて、かかる流動作用に基づき優れた防振効果が得られる。
特に本実施形態では、弁金具84とコイル部材54からなるソレノイドアクチュエータが仕切部材30に設けられていることから、ソレノイドアクチュエータを収容配置するハウジングを特別に新たに設ける必要がなくなり、それによって、部品点数の削減に基づき低コスト化が有利に図られ得ることに加え、マウント10のコンパクト化が有利に図られ得る。
また、本実施形態では、弁金具84が、コイル58の通電によりコイルスプリング94の付勢力に抗して第二のオリフィス通路92を遮断する一方の変位側から第二のオリフィス通路92を連通する他方の変位側に向けて変位せしめられて、ストッパ96に当接することにより、弁金具84の他方の変位端が規定される。それによって、第二のオリフィス通路92の遮断状態が安定して保持されることから、例えばストッパ96を設けずに弁金具を弁座から離隔せしめるだけで第二のオリフィス通路の連通状態を保持するようにした構造のエンジンマウントに比して、連通状態を保持するのに必要な電力の最小値が容易に設定されるのであって、使用コストの削減が有利に図られ得る。
ところで、上述の如くコイル部材54の通電による磁界の作用で、軸方向に吸引変位せしめられるソレノイド駆動式の弁金具84は、一般に、一方から他方に向かって吸引変位せしめられる変位側に近づくにつれて、磁界の作用が大きくなることにより、変位が大きくなる特性を有している。即ち、本実施形態では、弁金具84が弁座50から離隔してストッパ96に接近するにつれて、ソレノイドアクチュエータによる吸引変位力が大きくなるものと考えられる。
そこにおいて、本実施形態に係る自動車用エンジンマウント10では、弁金具84と仕切部材30の間に配されるコイルスプリング94に非線形なばね特性が付与されており、弁金具84の弁座50からストッパ96に向かう変位に抗して弁金具84に及ぼす付勢力が、ストッパ96に当接する側の変位側で大きくなるようにされている。
これにより、弁金具84がストッパ96に当接する際に、前述のソレノイドアクチュエータの特性による弁金具84の過大な変位がコイルスプリング94の高ばね特性の付勢力に基づき抑えられて、弁金具84がストッパ96に衝撃的に乃至は加速度的に大きく打ち当たることが抑えられる。
また、コイルスプリング94に非線形なばね特性が付与されて、弁金具84の他方の変位側で付勢力が大きくされていることにより、弁金具84の一方の変位側では、付勢力が他方の変位側に比して小さくされている。即ち、吸引変位力が他方の変位側に比して小さな一方の変位側では、コイルスプリング94による大きな付勢力で変位が大きく抑えられるおそれがないことから、弁金具84が一方から他方に向かって滑らかに変位することが可能となるのであり、それによって、第二のオリフィス通路92における連通状態と遮断状態の移行がスムーズに実現されるのである。
それ故、本実施形態に係る流体封入式エンジンマウント10においては、弁金具84のストッパ96への当接に伴う第二のオリフィス通路の遮断状態および連通状態の高精度化と、弁金具84がストッパ96に打ち当たる際に問題となる打音の発生防止が、両立して高度に達成され得るのである。
また、本実施形態では、有底円筒形状の弁金具84が採用されていることにより、一方の変位側で当接する部分(弁板部88)や他方の変位側で当接する部分(筒状部86)の構成、更にコイルスプリング94を内挿して支持せしめる構造がコンパクトに実現されて、構造が簡略とされると共に、マウント10のコンパクト化が有利に図られ得る。
さらに、本実施形態では、コイルスプリング94にテーパコイルばねが採用されていることによって、非線形ばね特性を付与せしめる構造が、比較的に容易となる。
しかも、本実施形態では、コイルスプリング94によって弁金具84に及ぼされる付勢力が適当に調節されており、大振幅振動の入力によって受圧室78に大きな負圧が生じた場合には、コイルスプリング94の付勢力に基づき弁座50に当接状態にある弁金具84が、負圧の作用によってコイルスプリング94の付勢力に抗して弁座50から離隔せしめられるようになっている。これにより、コイル58の通電により弁金具84を吸引変位せしめなくとも、第二のオリフィス通路92が連通状態とされて、第二のオリフィス通路92を通じての流体流動により受圧室78の圧力と平衡室80の圧力が速やかに平衡状態とされるようになっている。それ故、受圧室78の過大な負圧に起因すると考えられるキャビテーションによる異音や振動の発生が有利に抑えられる。
以上、本発明の一実施形態について詳述してきたが、かかる実施形態における具体的な記載によって、本発明は、何等限定されるものでなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様で実施可能であり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
例えば、弁金具84や仕切部材30、第一のオリフィス通路82、第二のオリフィス通路92、コイル部材54、コイルスプリング94等における形状や大きさ、構造、数、配置等の形態は、例示の如き形態に限定されるものではない。以下、図面を参照しつつ、前記実施形態と異なる形態の自動車用エンジンマウントについて説明することもあるが、前記実施形態と実質的に同一の構造とされた部材および部位については、図中に当該実施形態と同一の符号を付することにより、それらの詳細な説明を省略する。
すなわち、前記実施形態では、仕切部材30と一体形成された弁座50に連通孔52が貫設されて、弁板部88が弁座50に当接して、連通孔52が弁板部88で直接に覆蓋されることにより、第二のオリフィス通路92が連通状態とされるようになっていたが、例えば図3にも示されているように、仕切部材30の中央を軸方向に貫通する中央孔98の一方の開口部を上板金具34で覆蓋すると共に、他方の開口部を平板形状の弁座金具100で覆蓋することによって、弁収容領域68を構成し、更に弁収容領域68における弁座金具100の側において弁金具84の径方向外方に位置する隙間が、弁座金具100の外周部分を貫通して平衡室80に接続されることによって、弁収容領域68と平衡室80を接続する一又は二以上の連通孔102を形成して、弁金具84の弁体部88が弁座金具100の中央に当接された際に、弁金具84の筒状部86で連通孔102が閉塞されることによって、第二のオリフィス通路92の遮断状態が実現されるようにしても良い。
また、前記実施形態では、弁金具84の弁板部88がコイルスプリング94の付勢力により仕切部材30の弁座50に当接して弁座50の連通孔52を覆蓋することにより、第二のオリフィス通路92を遮断状態とする一方、コイル58の通電により弁金具84が付勢力に抗してストッパ96に向かって吸引変位してストッパ96に当接することで、第二のオリフィス通路92の連通状態が維持されるようになっていたが、例えば図4にも示されているように、上板金具34の中央に透孔64を設けない代わりに、上板金具34の径方向中間部分乃至は外周部分と弁収容領域68の周壁部の間を連続して延びる一又は二以上の透孔104を形成し、弁板部を弁座金具に当接した状態で、透孔の受圧室と弁収容領域を接続する連通状態を確保することによって、第二のオリフィス通路を連通状態とする一方、コイル58の通電により弁金具84が付勢力に抗してストッパ96に向かって吸引変位してストッパ96に当接することに伴い、透孔104が弁金具の筒状部で閉塞されることによって、第二のオリフィス通路を遮断状態とすることも可能である。
また、例えば、本出願人が先に出願した特願2007−11253号の明細書および図面等にも示されているように、仕切部材の下側凹所の開口部を覆蓋するようにして弾性変形可能な可動ゴム膜を配設し、可動ゴム膜の固有振動数を、第二のオリフィス通路のチューニング周波数と同様に、自動車の問題となる中乃至高周波数域にチューニングすることによって、アイドリング振動の入力時に第二のオリフィス通路を通じての流体流動が、可動ゴム膜の共振作用によって有利に実現されるようにしても良い。
また、前記実施形態では、コイル58の周りに強磁性材で形成されたヨーク56が配されているが、ヨークは必ずしも必要ではなく、例えば、コイルが非磁性の合成樹脂材料で形成されたボビンに組み付けられた状態で仕切部材の内部に配設される等しても良い。
また、仕切部材30は、必ずしも外周面の一部が外部に露出されている必要はなく、例えば、筒状とされた第二の取付金具の内周側に圧入されることにより、第二の取付金具に組み付けられるようになっていても良い。
加えて、前記実施形態では、本発明を自動車用エンジンマウントに適用したものの具体例について説明したが、本発明は、自動車用ボデーマウントやデフマウント等の他、自動車以外の各種振動体の防振装置に対して、何れも、適用可能である。
本発明の一実施形態としての自動車用エンジンマウントの縦断面図。 同自動車用エンジンマウントの一作動状態の要部を示す縦断面図。 本発明の別の一具体例としての自動車用エンジンマウントの要部を示す縦断面図。 本発明のまた別の一具体例としての自動車用エンジンマウントの要部を示す縦断面図。
符号の説明
10:自動車用エンジンマウント、12:第一の取付金具、14:第二の取付金具、16:本体ゴム弾性体、30:仕切部材、52:連通孔、54:コイル部材、58:コイル、64:透孔、68:弁収容領域、76:透孔、70:ダイヤフラム、78:受圧室、80:平衡室、82:第一のオリフィス通路、84:弁金具、90:連通孔、92:第二のオリフィス通路、94:コイルスプリング、96:ストッパ

Claims (6)

  1. パワーユニットと車両ボデーの一方に取り付けられる第一の取付部材と、該パワーユニットと該車両ボデーの他方に取り付けられる第二の取付部材とを本体ゴム弾性体で連結して、該第二の取付部材で支持された仕切部材を挟んだ両側に、壁部の一部が該本体ゴム弾性体で構成された受圧室と壁部の一部が可撓性膜で構成された平衡室を形成して、それら受圧室と平衡室に非圧縮性流体を封入すると共に、該受圧室と該平衡室を相互に連通せしめる第一のオリフィス通路と第二のオリフィス通路を該仕切部材にそれぞれ形成して、該第一のオリフィス通路よりも該第二のオリフィス通路を高周波数域にチューニングする一方、該第二のオリフィス通路を連通状態と遮断状態に切り換える弁体と、該弁体を駆動するソレノイドアクチュエータを設けた流体封入式エンジンマウントにおいて、
    前記弁体を強磁性材で形成して前記第二のオリフィス通路を通じての流体流路上に該弁体を変位可能に配設すると共に、該弁体を一方の変位側に向けて付勢する付勢スプリングを設ける一方、該弁体の周りにソレノイドを配設して該ソレノイドへの通電により該弁体を該付勢スプリングによる付勢力に抗して他方の変位側に向けて変位させる前記ソレノイドアクチュエータを構成し、更に、該弁体が該他方の変位側において当接するストッパを前記仕切部材に設けると共に、該付勢スプリングとして非線形ばね特性のコイルスプリングを採用して、該弁体に及ぼされる付勢力が該弁体の該他方の変位側で非線形に大きくなるようにしたことを特徴とする流体封入式エンジンマウント。
  2. 前記弁体が有底円筒形状を有していると共に、前記コイルスプリングの一方の端部を該弁体の内側に収容配置した請求項1に記載の流体封入式エンジンマウント。
  3. 前記コイルスプリングがテーパコイルばねであり、その大径側の端部が前記弁体の内側に収容配置されて、該弁体の周壁部によって該テーパコイルばねが軸直角方向に位置決めされている請求項2に記載の流体封入式エンジンマウント。
  4. 前記仕切部材には、前記第二のオリフィス通路を通じての流体流路上において前記弁体が収容配置される弁収容領域を設けて、該弁収容領域に開口形成した流体流動用の連通孔を該弁体によって閉塞せしめることにより該第二のオリフィス通路を遮断状態とすると共に、前記ソレノイドへの通電によって該弁体を該弁収容領域の壁部から離隔せしめて該連通孔を開口することにより該第二のオリフィス通路を連通状態とした請求項1乃至3の何れか一項に記載の流体封入式エンジンマウント。
  5. 前記弁収容領域において前記弁体の前記一方の変位側に位置する壁部に弁座を設けて、該弁座に前記連通孔を形成しており、該弁体を該弁座に重ね合わせることで、該弁体の該一方の変位側を規定すると共に、該連通孔を該弁体により閉塞せしめて前記第二のオリフィス通路を遮断状態とする請求項4に記載の流体封入式エンジンマウント。
  6. 前記弁収容領域において前記第二のオリフィス通路の前記受圧室側から前記平衡室側に向けて前記弁体が前記コイルスプリングで付勢されている一方、該コイルスプリングによる付勢方向側の変位側で該弁体が該弁収容領域の壁部に当接して前記連通孔が閉塞されると共に、該受圧室と該平衡室の圧力が該弁体の変位方向の各一方の面に及ぼされるようになっており、振動入力時に該受圧室に発生する負圧によって該弁体が該付勢手段による付勢力に抗して変位して該連通孔が連通状態とされるようになっている請求項5に記載の流体封入式エンジンマウント。
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