JP2009150451A - 流体封入式防振装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】過大な振動入力時における異音や振動の発生防止が、高い信頼性をもって実現され得る、新規な構造の液圧吸収機構を備えた流体封入式防振装置を提供する。
【解決手段】仕切部材32,52の収容空所60を通じて受圧室42と平衡室44を連通させることによって短絡流路を構成すると共に、収容空所60の平衡室44への開口部分56に対して可動弁体62を接近及び離隔変位可能とする一方、開口部分56を強磁性材で形成すると共に、可動弁体62の収容空所60の開口部分56に当接せしめられる当接部66を弾性磁石で形成して、当接部66が収容空所60の開口部分56に対して磁力吸着されることにより開口部分56が遮断される一方、可動弁体62に及ぼされる受圧室42と平衡室44の圧力差で当接部66の磁力吸着が解除されるようにした。
【選択図】図1
【解決手段】仕切部材32,52の収容空所60を通じて受圧室42と平衡室44を連通させることによって短絡流路を構成すると共に、収容空所60の平衡室44への開口部分56に対して可動弁体62を接近及び離隔変位可能とする一方、開口部分56を強磁性材で形成すると共に、可動弁体62の収容空所60の開口部分56に当接せしめられる当接部66を弾性磁石で形成して、当接部66が収容空所60の開口部分56に対して磁力吸着されることにより開口部分56が遮断される一方、可動弁体62に及ぼされる受圧室42と平衡室44の圧力差で当接部66の磁力吸着が解除されるようにした。
【選択図】図1
Description
本発明は、内部の流体室に封入された非圧縮性流体の流動作用に基づき防振効果を得るようにした流体封入式防振装置に係り、特に、流体室のキャビテーションを防止する短絡機構を備えた流体封入式防振装置に関するものである。
従来から、振動伝達系を構成する部材間に介装される防振連結体や防振支持体等の防振装置の一種として、流体封入式防振装置が知られている。流体封入式防振装置の構造においては、例えば、第一の取付部材と第二の取付部材が本体ゴム弾性体で連結されて、第二の取付部材の内側に仕切部材が配設されている。更に、仕切部材を挟んだ両側に、壁部の一部が本体ゴム弾性体で構成されて非圧縮性流体が封入された受圧室と、壁部の一部が変形容易な可撓性膜で構成されて非圧縮性流体が封入された平衡室が形成されており、それら両室がオリフィス通路を通じて相互に連通せしめられている。このような構造によれば、振動入力に伴い受圧室と平衡室の間に相対的な圧力変動が生じて、オリフィス通路を通じて流動せしめられる流体の共振作用等の流動作用に基づき防振効果が得られる。かくの如き流体封入式防振装置では、例えば、自動車用のエンジンマウントやボデーマウント、デフマウントの他、サスペンションメンバマウント等への適用が検討されている。
ところで、上述の流体封入式防振装置において、第一の取付部材と第二の取付部材の間に過大な振動が入力されると、衝撃的な異音や振動が発せられることがある。この発生原因は、主として、受圧室にキャビテーション気泡が生ぜしめられることによるものと考えられる。即ち、第一及び第二の取付部材の間の大振幅振動の入力に伴い受圧室が過大な負圧状態になると、受圧室の流体中に溶存していた空気が液相分離をし、キャビテーション気泡を形成する。そして、気泡の崩壊に伴う水撃圧が第一の取付部材や第二の取付部材に伝播して、自動車ボデー等の振動伝達系を構成する部材に伝達されることによって、前述の如き問題となる異音や振動が生ぜしめられるものと考えられる。
そこで、このような問題に対処するために、例えば特許文献1(特公平07−107416号公報)には、仕切部材に設けた可動ゴム膜に切れ込み等を入れておき、受圧室の負圧状態で、可動ゴム膜の変形による切れ込み部分の開口に基づきスリットを発現せしめて、このスリットを通じて受圧室と平衡室を短絡せしめる構造が開示されている。これにより、受圧室の過負圧状態が解消されて、キャビテーション気泡の発生が抑えられることから、問題となる異音や振動の防止が図られる。
ところが、特許文献1に係る流体封入式防振装置においては、可動ゴム膜に切れ込みが設けられていることで、切れ込み部を開口せしめる必要がない過大な正圧等が受圧室に生じた際にも、可動ゴム膜が弾性変形して、切れ込み部が開口せしめられる可能性があった。そのため、防振すべきオリフィス通路のチューニング周波数域の振動入力時にも、受圧室と平衡室が短絡して、オリフィス通路を通じての流体流動量が充分に確保され難くなり、目的とするオリフィス効果が安定して得られ難い問題を内在していた。しかも、可動ゴム膜が繰り返し弾性変形することで、切れ込み部の端部の亀裂が伸長して、可動ゴム膜の耐久性が問題となり易い可能性があった。
これらの問題を解決するべく、本出願人は、先の出願である特許文献2(特開2003−148548号公報)において、オリフィス通路を短絡させる短絡通路を形成すると共に、弁部材をゴム弾性体で構成して、短絡通路の受圧側の開口部分に重ね合わせて短絡通路を遮断せしめる一方、受圧室と平衡室の圧力差で弁部材を弾性変形させて、遮断解除された短絡通路を通じて受圧室と平衡室を短絡せしめる構造を開示した。
しかしながら、本発明者が更なる検討を加えたところ、特許文献2に係る流体封入式防振装置では、ゴム弾性体からなる弁部材が繰り返し変形や経時変化することで、弁部材の特性が比較的に変化し易いことから、弁部材における初期形状から目的とする形状への変形量や初期形状に復元する変形量が十分に確保され難くなる場合があった。その結果、目的とする弁部材の開閉作動が安定して実現され難くなって、問題となる異音や振動の抑制効果が得られ難くなる可能性があったのである。
ここにおいて、本発明は、上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、過大な振動入力時における異音や振動の発生防止が、高い信頼性をもって実現され得る、新規な構造の流体封入式防振装置を提供することにある。
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意な組み合わせで採用可能である。また、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに限定されることなく、明細書全体および図面に記載されたもの、或いはそれらの記載から当業者が把握することの出来る発明思想に基づいて認識されるものであることが理解されるべきである。
すなわち、本発明の特徴とするところは、第一の取付部材と第二の取付部材を本体ゴム弾性体で連結すると共に、第二の取付部材で仕切部材を支持せしめて、本体ゴム弾性体で壁部の一部が構成されて非圧縮性流体が封入された受圧室と、壁部の一部が可撓性膜で構成されて非圧縮性流体が封入された平衡室を、仕切部材を挟んだ両側に形成すると共に、それら受圧室と平衡室を連通するオリフィス通路を形成した流体封入式防振装置において、仕切部材に収容空所を設け、収容空所を通じて受圧室と平衡室を連通させることによって短絡流路を構成すると共に、収容空所に可動弁体を収容して収容空所の平衡室への開口部分に対して可動弁体を接近及び離隔方向に変位可能とする一方、仕切部材における収容空所の平衡室への開口部分を強磁性材で形成すると共に、可動弁体において少なくとも平衡室への開口部分に当接せしめられる当接部を弾性磁石で形成して、当接部が収容空所の平衡室への開口部分に対して磁力吸着されることにより収容空所の平衡室への開口部分が遮断されて短絡流路が遮断状態とされる一方、可動弁体に及ぼされる受圧室と平衡室の圧力差で当接部の磁力吸着が解除されることにより短絡流路を通じての流体流動が許容されるようにした流体封入式防振装置にある。
このような本発明に従う構造とされた流体封入式防振装置においては、可動弁体の当接部が仕切部材における収容空所の平衡室側の開口部分に磁力吸着されることで、短絡流路が閉塞保持される。これにより、オリフィス通路のチューニング周波数域の振動入力時に、受圧室の短絡流路からの圧力漏れが抑えられて、オリフィス通路を通じての流体流動量が十分に確保されることとなり、流体の共振作用等の流動作用に基づく防振効果であるオリフィス効果が有効に発揮され得る。
一方、衝撃荷重等の振動入力時には、過大な負圧が受圧室に生じた際の受圧室と平衡室の圧力差に基づいて、可動弁体の当接部が収容空所の平衡室側の開口部分から離隔することで、受圧室と平衡室を短絡させる。それによって、受圧室の過大負圧が回避されることとなり、キャビテーションによる異音や振動の発生が防止される。
ここで、可動弁体における収容空所の平衡室側の開口部分への当接部には、弾性磁石が採用されていることによって、フェライトやアルニコ等の金属材だけからなる磁石に比して、可動弁体の軽量化が図られ得ると共に、可動弁体の仕切部材に対する当接打音の軽減効果が得られる。なお、本発明における弾性磁石は、弾性および磁性を備えた部材であり、例えば、ゴム材料や合成樹脂材料に強磁性材料を混合することにより、弾性および強磁性を備えたゴムマグネットやプラスチックマグネット等で構成される。
しかも、可動弁体が収容空所に配置されることで、可動弁体の開閉作動が安定することに加え、可動弁体の収容空所を利用して短絡流路が構成されていることから、仕切部材の構造が簡単とされ、且つコンパクト化が達成され得る。
また、可動弁体の当接部が収容空所の平衡室側の開口部分から離隔して、短絡流路を通じて受圧室と平衡室を短絡せしめて、受圧室の過負圧状態が解消された後には、強磁性材からなる開口部分と弾性磁石からなる当接部の磁界の作用で、当接部が開口部分に速やかに当接せしめられて短絡流路が遮断状態とされ、しかも、当接状態が安定して維持せしめられることに基づき、短絡流路の遮断状態が確実となる。
それ故、本構造の流体封入式防振装置に従えば、目的とする弁体の開閉作動が安定して実現されて、問題となる異音や振動が、高い信頼性をもって防止され得るのである。
また、本発明に係る流体封入式防振装置では、収容空所における平衡室への開口部分の内面が、平衡室側への開口部に向かって次第に小径化するテーパ面とされていると共に、収容空所における平衡室への開口部分の内面に当接せしめられる可動弁体の当接部も対応するテーパ面形状とされている構造が、採用されても良い。このような構造によれば、可動弁体の当接部が収容空所における平衡室の開口部分に重ね合わされた際に、テーパ作用によって、可動弁体の中心軸と収容空所の中心軸とが同一線上に位置せしめられるセンタリング機能がはたらき、その結果、可動弁体の開閉作動を一層安定化させることも出来る。また、当接部と開口部分との当接面がテーパ形状とされていることに基づき、当接面積が大きく確保されることから、当接状態の更なる安定化が図られ得る。
また、本発明に係る流体封入式防振装置では、収容空所における平衡室への開口部分に対して可動弁体を当接させる方向の付勢力を可動弁体に及ぼす付勢手段を設けた構造が、採用されても良い。このような構造によれば、可動弁体の当接部の磁力調節と付勢手段による付勢力の調節とが協働して、目的とする弁作動のチューニング性能が向上され得る。具体的に、例えば、可動弁体の当接部を、付勢力を利用して、一層大きな力で収容空所の平衡室側の開口部分に当接させたり、或いは当接部が開口部分から離隔する変位量を付勢力で小さくしたり、当接部が開口部分から離隔した状態から再び開口部分に当接した状態に返戻する速度を大きくしたりすることも可能である。その結果、短絡流路の遮断状態を一層安定にすることも出来る。
また、本発明に係る流体封入式防振装置では、可動弁体の全体が弾性磁石で構成されている一方、仕切部材において収容空所の受圧室側の壁部が非磁性材で形成されている構造が、採用されても良い。このような構造によれば、可動弁体と収容空所の受圧室側の壁部との間に磁力作用が生ぜしめられることが回避されて、可動弁体と収容空所の平衡室側の開口部分との所期の磁力作用が安定して得られることから、弁体の開閉作動の更なる安定化が図られ得る。
また、本発明に係る流体封入式防振装置では、可動弁体の外周面とそれに対向する収容空所の内周面との少なくとも一方には、第一の凹溝が形成されている構造が、採用されても良い。このような構造によれば、可動弁体の外周面と収容空所の内周面の対向面間の隙間が第一の凹溝で大きくされることとなり、それによって、受圧室と平衡室の短絡効果が効率良く得られる。また、このように短絡効果が十分に得られることから、可動弁体の外周面と収容空所の内周面の対向面間における第一の凹溝が形成されていない部分においては、かかる対向面間距離を小さくすることも出来、それによって、収容空所における可動弁体の傾動や偏心等が抑えられて、可動弁体の開閉作動がより安定する。
また、本発明に係る流体封入式防振装置では、可動弁体には、収容空所における平衡室への開口部分への当接状態で、平衡室への開口部分に対して隙間をもって入り込む中央突部が設けられている構造が、採用されても良い。このような構造によれば、可動弁体の収容空所における傾きや偏心等が一層効果的に抑えられることとなり、弁体の変位の安定性向上が図られ得る。
また、本発明に係る流体封入式防振装置では、仕切部材には、収容空所を受圧室に連通させる開口部分と平衡室に連通させる開口部分が収容空所を挟んで対向位置せしめられた受圧室側の壁部に形成されていると共に、可動弁体には、収容空所の受圧室側の壁部への対向面上に開口して外周面まで延びる第二の凹溝が形成されている構造が、採用されても良い。このような構造によれば、収容空所において可動弁体の当接部の配設スペースを十分に確保しつつ、可動弁体と収容空所の受圧室側の壁部との対向面間の隙間が第二の凹溝で大きくされる。それ故、可動弁体の安定した作動と受圧室と平衡室の短絡効果の向上が両立して達成され得る。
また、本発明に係る流体封入式防振装置では、可動弁体において、収容空所における受圧室側の壁部に対する対向部分が着磁されていない非磁極部とされている構造が、採用されても良い。このような構造によれば、例えば、可動弁体が収容空所で傾動乃至は反転する方向に変位した際にも、可動弁体の受圧室側の壁部に対向していた部分が収容空所の平衡室側の開口部分に磁力吸着せしめられることが回避される。それ故、弁体の変位の安定性向上が図られ得る。
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について説明する。先ず、図1には、本発明の流体封入式防振装置に係る第一の実施形態としての自動車用エンジンマウント10が示されている。自動車用エンジンマウント10では、第一の取付部材としての第一の取付金具12と第二の取付部材としての第二の取付金具14が本体ゴム弾性体16によって弾性的に連結されている。第一の取付金具12がパワーユニット側に取り付けられると共に、第二の取付金具14が車両ボデー側に取り付けられることにより、パワーユニットが車両ボデーに対して防振支持されるようになっている。
なお、図1では、自動車に装着する前の自動車用エンジンマウント10の単体での状態が示されているが、本実施形態では、装着状態において、パワーユニットの分担支持荷重がマウント軸方向(図1中、上下)に入力される。従って、マウント装着状態下では、本体ゴム弾性体16の弾性変形に基づき第一の取付金具12と第二の取付金具14が軸方向で互いに接近する方向に変位する。また、かかる装着状態下、防振すべき主たる振動は、略マウント軸方向に入力されることとなる。以下の説明において、特に断りのない限り、上下方向は、マウント軸方向となる図1中の上下方向をいう。
より詳細には、第一の取付金具12が、略円柱形状乃至は円錐台形状を呈していると共に、その中央部分には上端面に開口する螺子穴18が設けられている。第一の取付金具12は、螺子穴18を介して図示しないパワーユニット側の取付部材に螺着固定されるようになっている。
一方、第二の取付金具14が、大径の略円筒形状を有しており、その軸方向一方の開口部側(図1中、上)には、かかる開口部から軸方向内方に向かって径寸法が次第に小さくなるテーパ状部20が形成されている。また、第二の取付金具14の軸方向他方の開口端部には、内フランジ状の係止部22が形成されている。更に、第二の取付金具14の外周側には、大径円筒形状のブラケット金具24がかしめ固定されており、ブラケット金具24が図示しない車両ボデーにボルトや溶接等で固定されることによって、第二の取付金具14が車両ボデーに固定されるようになっている。
このような第二の取付金具14のテーパ状部22を備えた開口部側に第一の取付金具12が離隔配置されて、両金具12,14の中心軸が略同一線上に位置せしめられている。これら第一の取付金具12と第二の取付金具14の間には、本体ゴム弾性体16が配されている。
本体ゴム弾性体16は、略円錐台形状を有しており、その大径側端面には、下方に開口する逆すり鉢形状乃至は半球形状の大径凹所26が設けられている。本体ゴム弾性体16の小径側端面には、第一の取付金具12の軸方向中間部分から下端部にかけての略全体が埋設された状態で加硫接着されている。本体ゴム弾性体16の大径側端部外周面には、第二の取付金具14のテーパ状部20の内周面が加硫接着されている。
また、本体ゴム弾性体16と一体形成された薄肉のシールゴム層28が、第二の取付金具14のテーパ状部20の小径側端部から係止部22にかけての内周面の略全体に亘って被着形成されている。更にまた、第二の取付金具14の軸方向中間部分に位置する本体ゴム弾性体16とシールゴム層28の境界部分、換言すると本体ゴム弾性体16の大径凹所26の開口周縁部には、シールゴム層28よりも軸直角方向内方に延び出して周方向に延びる段部30が、本体ゴム弾性体16により構成されている。
すなわち、本体ゴム弾性体16は、第一の取付金具12と第二の取付金具14を備えた一体加硫成形品として形成されており、それによって、第一の取付金具12と第二の取付金具14が、本体ゴム弾性体16で相互に弾性的に連結されていると共に、第二の取付金具14の一方の開口部が本体ゴム弾性体16によって流体密に閉塞されている。
また、第二の取付金具14には、仕切部材本体32と、可撓性膜としてのダイヤフラム34が、他方の開口部側から内挿された形態で配設されている。仕切部材本体32は、略円形ブロック状を呈していると共に、特に本実施形態では、非磁性で、硬質の材料を用いて形成されており、例えばポリプロピレン等の合成樹脂材料が好適に用いられる。また、仕切部材本体32の径方向中間部分から外周部分にかけて、径方向外方に開口する凹状断面で周方向に所定の長さ(本実施形態では一周弱)で延びる周溝36が形成されている。周溝36の周方向一方の端部が、仕切部材本体32の上部に貫通形成された図示しない連通窓を通じて仕切部材本体32の上端面に開口していると共に、周溝36の周方向他方の端部が、仕切部材本体32の下部に貫通形成された連通窓38を通じて仕切部材本体32の下端面に開口している。
ダイヤフラム34は、変形容易な薄肉のゴム膜からなり、軸方向に弛んだ略円板形状を有している。ダイヤフラム34の外周縁部には、大径の略円筒形状を有する嵌着金具40の内周面が加硫接着されている。即ち、ダイヤフラム34は、嵌着金具40を備えた一体加硫成形品とされている。
これら仕切部材本体32と嵌着金具40が、第二の取付金具14の係止部22を備えた開口部側から軸方向内方に向かって順次に内挿されて、仕切部材本体32の外周側の上端部が本体ゴム弾性体16の段部30と軸方向で重ね合わされていると共に、仕切部材本体32の外周側の下端部と嵌着金具40の上端部が軸方向で相互に重ね合わされた形態で、係止部22よりも軸方向内方に位置せしめられている。
そして、第二の取付金具14に八方絞り等の縮径加工が施されていることにより、第二の取付金具14に固着されたシールゴム層28が、仕切部材本体32および嵌着金具40と第二の取付金具14の間で径方向に圧縮変形せしめられており、仕切部材本体32と嵌着金具40は、かかるシールゴム層28を介して第二の取付金具14に径方向で重ね合わされている。また、第二の取付金具14の係止部22の縮径変位に伴い、係止部22の内周面に被着されたシールゴム層28と本体ゴム弾性体16の段部30の間で、仕切部材本体32と嵌着金具40が軸方向に挟圧固定されている。
これにより、仕切部材本体32とダイヤフラム34の嵌着金具40が第二の取付金具14に嵌着固定されていると共に、第二の取付金具14の他方の開口部がダイヤフラム34で流体密に覆蓋されている。また、第二の取付金具14の内側における本体ゴム弾性体16とダイヤフラム34の軸方向対向面間が外部に対して流体密に仕切られていると共に、この軸方向対向面間の中間部分に仕切部材本体32が支持されて、該対向面間を二分している。
第二の取付金具14の内側における本体ゴム弾性体16とダイヤフラム34の軸方向対向面間において、仕切部材本体32を挟んだ一方(図1中、上)の側には、壁部の一部が本体ゴム弾性体16で構成されて、本体ゴム弾性体16の弾性変形に基づき圧力変動が生ぜしめられる受圧室42が形成されている。また、仕切部材本体32を挟んだ他方(図1中、下)の側には、壁部の一部がダイヤフラム34で構成されて、ダイヤフラム34の弾性変形に基づき容積変化が容易に許容される平衡室44が形成されている。これら受圧室42や平衡室44には、非圧縮性流体が封入されている。封入流体としては、例えば水やアルキレングリコール, ポリアルキレングリコール, シリコーン油等が採用されるが、特に流体の共振作用等の流動作用に基づく防振効果を有効に得るためには、0.1Pa・s以下の低粘性流体を採用することが望ましい。受圧室42や平衡室44への非圧縮性流体の封入は、例えば、第一及び第二の取付金具12,14を備えた本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品に対する仕切部材本体32やダイヤフラム34の一体加硫成形品の組み付けを非圧縮性流体中で行うことによって、好適に実現される。
また、仕切部材本体32の周溝36が第二の取付金具14で流体密に覆蓋されることにより、仕切部材本体32の外周部分を周方向に所定の長さで延びるオリフィス通路46が形成されている。オリフィス通路46の一方の端部が、仕切部材本体32の上部に貫設された図示しない連通窓を通じて受圧室42に接続されていると共に、オリフィス通路46の他方の端部が、仕切部材本体32の下部に貫設された連通窓38を通じて平衡室44に接続されている。これにより、受圧室42と平衡室44がオリフィス通路46を通じて相互に連通せしめられて、それら両室42,44間でオリフィス通路46を通じての流体流動が許容されるようになっている。オリフィス通路46を通じて流動せしめられる流体の共振周波数は、問題となる振動に対して有効な防振効果が発揮されるようにチューニングされている。具体的に、例えば、受圧室42や平衡室44の各壁ばね剛性、即ちそれら各室42,44を単位容積だけ変化させるのに必要な圧力変化量に対応する本体ゴム弾性体16やダイヤフラム34等の各弾性変形量に基づく特性値を考慮しつつ、オリフィス通路46の通路長さと通路断面積を調節することによって、オリフィス通路46をチューニングすることが可能である。
そこにおいて、仕切部材本体32におけるオリフィス通路46の形成部位よりも内側の中央部分には、中央凹所48が形成されている。中央凹所48は、仕切部材本体32における受圧室42側の端部付近から平衡室44側に向かって略一定の円形断面でマウント軸方向に延び、仕切部材本体32の平衡室44側の端面に開口している。中央凹所48の受圧室42側に位置せしめられた底部には、中央凹所48よりも小径の透孔50が貫設されており、中央凹所48と受圧室42が透孔50を通じて相互に連通せしめられている。
また、仕切部材本体32には、当接板部材52が設けられている。本実施形態に係る仕切部材は、これら仕切部材本体32と当接板部材52を含んで構成されている。当接板部材52は、仕切部材本体32と略同じ外径寸法の薄肉の円環板形状を有していると共に、鉄やニッケル、コバルト等の金属材からなる硬質の強磁性材を用いて形成されている。当接板部材52は、仕切部材本体32における平衡室44側の端面に対して軸方向で同心状に重ね合わされており、当接板部材52の外周部分が仕切部材本体32と嵌着金具40の間で軸方向に挟圧配置されていることにより、仕切部材本体32に固定的に重ね合わされている。また、当接板部材52において、仕切部材本体32のオリフィス通路46の平衡室44側端部に形成される連通窓38と軸方向で重ね合わされる部分には、連通窓54が形成されており、それら仕切部材本体32と当接板部材52の各連通窓38,54を通じて、オリフィス通路46が平衡室44に接続されている。
さらに、当接板部材52において仕切部材本体32の中央凹所48と軸方向で重ね合わされた径方向中央部分には、中央凹所48よりも小径の円形断面で軸方向に貫通する透孔56が形成されている。これにより、透孔56を備えた当接板部材52の径方向中央部分が、仕切部材本体32の中央凹所48の開口端部から全周に亘って内フランジ状に延び出した形態を有している。当接板部材52の仕切部材本体32への組み付け状態下、当接板部材52の一方の面の径方向中央部分が、中央凹所48および透孔50を介して受圧室42に晒されていると共に、当接板部材52の他方の面の略全体が平衡室44に晒されている。
特に本実施形態では、当接板部材52において、仕切部材本体32の中央凹所48の開口端部から内フランジ状に延び出して中央の透孔56に至る部位が、仕切部材本体32の中央凹所48側から平衡室44側に向かって次第に小径化するテーパ状部58とされている。それによって、当接板部材52の透孔56が仕切部材本体32から平衡室44側に突出位置せしめられている。
これら透孔56およびテーパ状部58を備えた当接板部材52の径方向中央部分と透孔50を備えた中央凹所48が協働して、本実施形態に係る収容空所60が形成されている。収容空所60は、仕切部材本体32の透孔50を通じて受圧室42に接続されていると共に、当接板部材52のテーパ状部58の内周面および透孔56を通じて平衡室44に接続されていることから、収容空所60の受圧室42側の壁部(仕切部材本体32の中央凹所48の底部)に形成される開口部分が仕切部材本体32の透孔50を含んで構成されていると共に、収容空所60の平衡室44側の壁部(当接板部材52)に形成される開口部分が、当接板部材52のテーパ状部58の内周面および透孔56を含んで構成されている。即ち、受圧室42と平衡室44を短絡せしめる短絡流路が、後述する可動弁体62の外周面と収容空所60の内周面の間の隙間や仕切部材本体32の透孔50、当接板部材52の透孔56を含んで構成される。
また、収容空所60には、可動弁体62が収容配置されている。可動弁体62は、図2〜4にも示されているように、全体として、軸方向に長手状に延びる円形ブロック状を呈しており、収容空所60の内径寸法に比して所定量だけ小さくされている。また、可動弁体62の軸方向一方の側(図1,2中、上)に略円柱形状の本体軸部64が配されていると共に、軸方向他方の側に略逆向き円錐形状の当接部66等が配されている。かかる可動弁体62は、仕切部材本体32の中央凹所48に対して本体軸部64の側から軸方向に内挿されて、当接板部材52の径方向中央部分で中央凹所48の開口部が覆われることにより、収容空所60に収容配置されている。特に収容状態下、可動弁体62の軸方向長さが、収容空所60の軸方向長さに比して小さくされていると共に、可動弁体62の本体軸部64の外周面が収容空所60の周壁部の内周面と径方向に比較的に小さな隙間を隔てて対向位置せしめられていることによって、可動弁体62が収容空所60の当接板部材52の透孔56に対して接近方向(図1中、下)および離隔方向(図1中、上)に変位可能とされている。
また、可動弁体62における逆向き円錐形状の当接部66においては、当接板部材52のテーパ状部58の内周面と軸方向で対向位置せしめられる面が、かかる内周面に対応したテーパ形状の当接面68とされており、可動弁体62と当接板部材52が軸方向で重ね合わされた状態下(図1参照。)、当接面68がテーパ状部58の内周面と密着状態で重ね合わされる。
さらに、当接部66の小径側先端部分には、小径の円柱形状の中央突部70が一体形成されており、当接面68のテーパ状部58の内周面への当接状態で、中央突部70が隙間をもって当接板部材52の透孔56に入り込むようになっている。
本実施形態では、本体軸部64や当接部66、中央突部70等の可動弁体62における各部位が、ゴム材料と強磁性材からなる磁性粉とを混合した成形材料を用いて、互いに一体形成されている。可動弁体62では、弾性に基づき収容空所60の壁部への打ち当たりに際して有効な緩衝作用が発揮される。
更にまた、可動弁体62の本体軸部64に4つの凹溝72が形成されている。凹溝72の軸直角方向(径方向)断面が本体軸部64の径方向中央部分から径方向外方に向かって次第に周方向の幅寸法が大きくなる略四半円状の扇形状とされており、本体軸部64の外周面に開口している。このことからも明らかなように、凹溝72が、収容空所60の内周面と対向位置せしめられた可動弁体62の外周面に開口する第一の凹溝として形成されている。
また、凹溝72は、本体軸部64において、収容空所60の受圧室42側の壁部である仕切部材本体32の中央凹所48の底部と、軸方向で対向位置せしめられた端面に開口して外周面まで延びる平面視扇形状を呈していると共に、かかる開口端面から本体軸部64における当接部66との接続部付近までを、かかる扇状断面で本体軸部64の軸方向に延びている。これにより、凹溝72が、収容空所60の受圧室42側の壁部への対向面上に開口して外周面まで延びる第二の凹溝として形成されている。要するに、本実施形態では、第一及び第二の凹溝が一つの凹溝72で共通して形成されている。
このような凹溝72が、本体軸部64の周方向に等間隔に4つ形成されていることによって、各凹溝72の周方向間に薄肉板状部が突設された形態を有しており、その結果、本体軸部64が全体として矢羽状を呈している。
ここで、可動弁体62の当接部66の当接面68にだけ図示しない電極を介して着磁されていることにより、当接部66が、ゴムマグネットからなる弾性磁石として構成されている。なお、弾性磁石には、かくの如きゴムマグネットの他、例えば、適当な弾性を有する合成樹脂材料と強磁性材からなる磁性粉とを混合形成したものに着磁してなるプラスチックマグネットが採用されても良い。また、本実施形態に係る弾性磁石では、ゴムマグネットとプラスチックマグネットを組み合わせて採用することも可能である。
これにより、当接部66が、磁界の作用で、強磁性材からなる当接板部材52と磁力吸着されるようになっており、可動弁体62の中央突部70が当接板部材52の透孔56に入り込まされると共に、当接部66の当接面68が透孔56の周りのテーパ状部58の内周面に対して全周に亘って重ね合わされると、透孔56が遮断されて短絡流路が遮断状態とされる。しかも当接部66と当接板部材52の磁力吸着作用に基づいて、短絡流路が遮断状態に維持されている(図1参照。)。特に本実施形態では、第一の取付金具12と第二の取付金具14の間に通常の大きさの振動乃至は荷重が入力された状態下、可動弁体62における当接部66の当接面68が当接板部材52のテーパ状部58の内周面に全周に亘って密着状態で当接されて、短絡流路の遮断状態が維持されるように、当接部66の磁力が設定されている。即ち、オリフィス通路46のチューニング周波数域の振動入力時において、短絡流路の遮断状態が維持されるようになっており、それによって、短絡流路を通じての受圧室42の圧力漏れが抑えられることから、オリフィス通路46を通じての流体の流動量が十分に確保されて、かかる流体の共振作用等の流動作用に基づく所期の防振効果が安定して得られる。
一方、第一の取付金具12と第二の取付金具14の間に過大な振動乃至は荷重が入力されて、問題となる大きな負圧が受圧室42に発生する状態では、可動弁体62に負圧作用が及ぼされて、当接部66と当接板部材52の磁力吸着作用に抗して可動弁体62が受圧室42側に向かって変位をし、当接部66の当接面68が当接板部材52から離隔せしめられるように、当接部66の磁力が設定されている。当接部66が当接板部材52から離隔せしめられて、短絡流路の遮断状態が解除されると、受圧室42と平衡室44が、当接板部材52の透孔56や可動弁体62の外周面と収容空所60の内周面、仕切部材本体32の透孔50を含んでなる短絡流路を通じて連通せしめられた状態となり、両室42,44における短絡流路を通じての流体流動が許容されることとなる。
さらに、本実施形態では、図5にも示されているように、可動弁体62の受圧室42側の変位に伴い、可動弁体62の本体軸部64が仕切部材本体32の透孔50周りの壁部に重ね合わされることとなっても、内周縁部が透孔50よりも径方向内方に位置せしめられ、且つ外周縁部が透孔50よりも径方向外方に位置せしめられた凹溝72の複数を通じて、流体が短絡流路を流動せしめられるようになっている。
一般に、パワーユニットと車両ボデーの間に介装される自動車用エンジンマウントにおいては、自動車が段差乗り越えをしたり凹凸の大きな路面等を走行して、第一の取付金具12と第二の取付金具14の間に衝撃的な荷重が入力されると、本体ゴム弾性体16が急激に乃至は過大に弾性変形することに伴い、受圧室において問題となる異音の発生要因のキャビテーション気泡を生ぜしめる程に過大な負圧が発生する場合がある。
そこにおいて、本実施形態に従う構造とされた自動車用エンジンマウント10では、このキャビテーション気泡が発生する前の大きな負圧の段階で、可動弁体62に負圧が及ぼされると、当接板部材52の透孔56の周りに磁力吸着されている当接部66の磁力の設定に基づき、当接部66が当接板部材52から離隔して、短絡流路の遮断状態が解除される。それによって、受圧室42と平衡室44が短絡流路を通じて相互に連通せしめられる。また、受圧室42の負圧の大きさに応じて、可動弁体62の受圧室42側の変位に伴い本体軸部64が仕切部材本体32の透孔50の周りに重ね合わされた際には、受圧室42と平衡室44が、短絡流路と可動弁体62の凹溝72を通じて相互に連通せしめられる。その結果、受圧室42の圧力と平衡室44の圧力が平衡状態に向かい、受圧室42の過負圧状態が解消されることで、キャビテーション気泡の発生が抑えられて、問題となる異音や振動等が防止されるのである。
ここで、本実施形態に係る受圧室42と平衡室44を短絡せしめる短絡機構においては、可動弁体62の一部が弾性磁石からなる当接部66で構成されて、当接部66の当接面68が、当接板部材52の透孔56の周りに全周に亘って密着状に磁力吸着されることにより、短絡流路が遮断状態に維持される構造を呈している。
従って、当接部がフェライトやアルニコ等の金属材からなる磁石で形成される場合に比して、可動弁体62の軽量化が図られ得ることに加え、当接部66と当接板部材52の間に特別に緩衝材を配設する必要がないことから、当接部66と当接板部材52における当接打音の軽減効果が、少ない部品点数で得られる。しかも、当接部66が当接板部材52に対して直接に当接されることにより、磁石による吸着力が好適に得られて、短絡流路の遮断状態が、全周に亘って高い信頼性を確保し得る。
また、可動弁体62が収容空所60に配置されることで、可動弁体62の開閉作動が安定することに加え、可動弁体60の収容空所60を利用して短絡流路が構成されていることから、仕切部材本体32と当接板部材52からなる仕切部材の構造が簡単とされ、且つコンパクト化が達成され得る。
さらに、可動弁体62における当接部66の当接面68を当接板部材52のテーパ状部58の内周面に重ね合わせた際に、テーパ作用によって、可動弁体62の中心軸と当接板部材52の中心軸、延いてはマウント中心軸とが同一線上に位置せしめられるセンタリング機能がはたらき、その結果、可動弁体62の開閉作動を一層安定化させることも出来る。また、当接部66と当接板部材52との当接面がテーパ形状とされていることに基づき、当接面積が大きく確保されることから、当接状態の更なる安定化が図られ得る。
更にまた、当接面68のテーパ状部58の内周面への当接状態で、中央突部70が隙間をもって当接板部材52の透孔56に入り込むことから、可動弁体62の収容空所60における傾きや偏心等が一層効果的に抑えられることとなり、可動弁体62の変位の安定性向上が図られ得る。
また、可動弁体62の外周面と収容空所60の内周面の対向面間の隙間が複数の凹溝72で大きくされることとなり、それによって、受圧室42と平衡室44の短絡効果が効率良く得られる。従って、可動弁体62の外周面と収容空所60の内周面の対向面間における凹溝72が形成されていない部分においては、かかる対向面間距離を小さくすることも出来、それによって、収容空所60における可動弁体62の傾動や偏心等が抑えられて、可動弁体62の開閉作動がより安定する。
特に、4つの凹溝72が本体軸部64の周方向に等間隔に形成されて、可動弁体62の軸方向一方の側が矢羽形状(四立羽形状)とされていることにより、矢羽は公知の如く矢をまっすぐに、または旋回しつつ鋭く射当てるために付けるものであるから、かかる矢羽形状を可動弁体62に採用することによって、可動弁体62における軸方向の作動安定性の向上が図られ得る。
また、可動弁体62の当接部66が当接板部材52から離隔して、短絡流路を通じて受圧室42と平衡室44を短絡せしめて、受圧室42の過負圧状態が解消された後には、当接板部材52と当接部66の磁力吸着作用により、当接部66が当接板部材52に速やかに当接せしめられて短絡流路が遮断状態とされ、しかも、当接状態が安定して維持せしめられることに基づき、短絡流路の遮断状態が確実となる。
それ故、本実施形態に係る自動車用エンジンマウント10においては、目的とする可動弁体62の開閉作動が安定して実現されて、過大な振動入力時における異音や振動の発生防止が、高い信頼性をもって実現され得るのである。
なお、本発明に係る流体封入式防振装置の一実施形態としての自動車用エンジンマウントは、当然ながら、上述の第一の実施形態にのみ限定されるものでなく、各種の形態が採用される。以下に第一の実施形態と異なる形態の本発明に係る自動車用エンジンマウントについて説明するが、前記実施形態と実質的に同一の構造とされた部材および部位については、前記実施形態と同一の符号を付することにより、それらの詳細な説明を省略する。
すなわち、本発明の第二の実施形態としての自動車用エンジンマウントの要部が図6にも示されているように、仕切部材本体32における収容空所60の受圧室42側の壁部と本体軸部64の軸方向対向面間において付勢手段としてのコイルスプリング74を配設することにより、当接部66の当接面68を当接板部材52のテーパ状部58の内周面に当接させる方向の付勢力を及ぼすようにした可動弁体76が採用されている。これにより、例えば、可動弁体76の当接部66を、付勢力を利用して、一層大きな力で当接板部材52に当接させることも出来、それによって、短絡流路の遮断状態が一層確実になる。なお、コイルスプリング74の軸方向一方の端部が、本体軸部64の外周部分に突設された筒状乃至は突起状の装着突部78に内挿または外挿状態で配設されることによって、コイルスプリング74の可動弁体76に対する軸直角方向の位置決めが安定する。
また、コイルスプリング74が可動弁体76の本体軸部64と収容空所60の受圧室42側の壁部の軸方向対向面間に設けられていることから、可動弁体76が受圧室42側に大きく変位しても、本体軸部64と受圧室42側の壁部は互いに当接しないようになっている。それ故、第一の実施形態のような凹溝72を平衡室側突部60に特別に形成しなくとも、コイルスプリング74の隙間80等を利用して、受圧室42と平衡室44における透孔50と収容空所60を通じての流体流動が確保されることから、可動弁体76の金型構造が簡単になる。
また、第一の実施形態や第二の実施形態では、可動弁体62,76が円柱形状の本体軸部64と逆円錐形状の当接部66とが互いに一体形成された構造とされて、当接部66のテーパ形状の当接面68が当接板部材52のテーパ状部58の内周面に当接されるようになっている。ここで、例えば、図7に示される本発明の第三の実施形態のように、弾性磁石からなる円柱形状の可動弁体82を採用して、可動弁体82における軸方向一方の円形状の端面を当接面84とする一方、仕切部材本体86を強磁性部材で形成して、仕切部材本体86の収容空所60の平衡室44側の壁部を構成する中央凹所48における円形状の底部の中央に透孔56を貫設すると共に、透孔56周りの円環形状の端面に可動弁体82の当接面84を磁力吸着させることによって、短絡流路が遮断状態に維持されるようにしても良い。これにより、可動弁体82の金型構造が一層簡単になる。
なお、第一乃至第三の実施形態に係る可動弁体62,76,82では、当接板部材52に対する当接面68,84だけを着磁しているが、例えば可動弁体の全体を着磁する他、第三の実施形態における円柱形状の可動弁体において、収容空所の受圧室側の壁部と対向位置する面をS極とすると共に、可動弁体の当接面をN極としても良い。
さらに、本発明の第三の実施形態では、仕切部材本体86の上方に向かって開口する中央凹所48の開口部を、合成樹脂材等の非磁性材からなる蓋部材88で覆蓋することによって、収容空所60を構成すると共に、仕切部材本体86および蓋部材88からなる仕切部材において、収容空所60の受圧室42側の壁部を非磁性材で形成している。それによって、可動弁体82と収容空所60の受圧室42側の壁部との間に磁力作用が生ぜしめられることが回避されて、可動弁体82と収容空所60の平衡室44側の開口部分との所期の磁力作用が安定して得られることから、可動弁体82の開閉作動の安定化が図られ得る。
また、図8に示される本発明の第四の実施形態では、可動弁体90が、合成樹脂材料で形成された円柱形状の芯材92を備えていると共に、芯材92において収容空所60の平衡室44側の壁部と対向位置する表面にゴムマグネット94を固着した構造とされている。即ち、可動弁体90の当接部が、合成樹脂材料からなる芯材92の表面にゴムマグネット94が固着されることによって構成されていることから、芯材92の剛性に基づき十分な強度が確保されつつ、ゴムマグネット94によって必要な磁力確保と当接打音の軽減効果が達成され得る。
また、本発明に係る第四の実施形態では、蓋部材88が鉄系金属等の強磁性部材で構成されるとによって、収容空所60の壁部全体が強磁性材で構成されているが、可動弁体90において、収容空所60における受圧室42側の壁部等に対向する芯材92が着磁されていない非磁極部とされている。その結果、例えば、可動弁体90が収容空所60で傾動乃至は反転する方向に変位した際にも、可動弁体90の芯材92が収容空所60の周壁部や受圧室42側および平衡室44側の壁部に磁力吸着せしめられることが回避される。それ故、可動弁体90の作動安定の向上が図られ得る。
また、前記第一乃至は第四の実施形態においては、収容空所60を受圧室42側に連通せしめる透孔50が、収容空所60における可動弁体62,76,82,90と軸方向で対向位置せしめられた受圧室42側の壁部の中央部分に形成されていたが、例えば、図9に示される本発明の第五の実施形態のように、収容空所60を受圧室42側に連通させる透孔96を、可動弁体62と軸方向で対向位置せしめられた受圧室42側の壁部の中央部分の周りで一つ又は周方向に離隔して複数形成された小孔98にて構成しても良い。これにより、透孔50を含む短絡流路の形成スペースが大きくされて、受圧室42と平衡室44の短絡に基づくキャビテーション効果のチューニング自由度が向上される。
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、これら実施形態における具体的な記載によって、本発明は、何等限定されるものでなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様で実施可能であり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
例えば、可動弁体62,76,82,90や仕切部材本体32と当接板部材52乃至は蓋部材88からなる仕切部材等における形状や大きさ、構造、配置、数等の形態は例示の如きものに限定されない。
前記実施形態では、短絡流路が仕切部材の径方向中央部分に設けられて、マウント10の略中心軸上に設けられていたが、例えば仕切部材をマウントの中心軸に対して偏倚した位置に配設したり、短絡流路を仕切部材の径方向中央部分から外れた位置に形成することによって、短絡流路をマウント中心軸に対して偏倚した位置に設けることも可能である。
また、前記実施形態に係る自動車用エンジンマウントでは、単一オリフィス通路を設けた構造が採用されていたが、例えばオリフィス通路として、第一のオリフィス通路と、第一のオリフィス通路よりも高周波数域にチューニングされた第二のオリフィス通路とが設けられている構造が、採用されても良い。これにより、例えば、問題となり易い振動が低周波数域と中乃至は高周波数域に存在する場合に、第一のオリフィス通路や第二のオリフィス通路を通じて流動せしめられる各流体の共振周波数を、それぞれ低周波周域と高周波数域にチューニングすることによって、複数の振動に対して防振効果が有効に発揮され得る。
また、例えば、受圧室と平衡室の間に配される仕切部材等において、受圧室と平衡室の相対的な圧力差に基づき変位せしめられることによって圧力変動を調整する種々の可動板が設けられても良い。例えば、特開平01−93638号公報や特開2005−273684号公報等にも示されているように、仕切部材に形成された所定の収容領域に対して可動板を非接着に収容配置して、収容領域内で板厚方向に微小変位可能とすると共に、該収容領域に形成した通孔によって、受圧室の圧力を可動板の一方の面に及ぼすと共に平衡室の圧力を可動板の他方の面に及ぼすことにより、受圧室と平衡室の相対的な圧力差を収容領域内での可動板の微小変位に基づいて吸収させると共に、可動板の変位許容量以上の圧力吸収を阻止するようにした構造が採用され得る。或いは、例えば、特開平10−252807号公報や特開2000−186739号公報等にも示されているように、可動板の少なくとも外周部分を仕切ゴム弾性板で構成し、該仕切ゴム弾性板の外周縁部を仕切部材や第二の取付部材に固着することにより、受圧室と平衡室を流体密に仕切るように構成することで、該仕切ゴム弾性板の各一方の面に及ぼされる受圧室と平衡室の圧力差に基づく該仕切ゴム弾性板の弾性変位乃至は弾性変形に基づいて受圧室と平衡室の相対的な圧力差を吸収させると共に、仕切ゴム弾性板の弾性変形によって大きな圧力吸収を阻止するようにした構造なども、採用可能である。
加えて、前記実施形態では、本発明を自動車用エンジンマウントに適用したものの具体例について説明したが、本発明は、自動車用ボデーマウントやデフマウント、サスペンションメンバマウント等の他、自動車以外の各種振動体の防振装置に対して、何れも、適用可能である。
10:自動車用エンジンマウント、12:第一の取付金具、14:第二の取付金具、16:本体ゴム弾性体、32:仕切部材本体、34:ダイヤフラム、42:受圧室、44:平衡室、46:オリフィス通路、50:透孔、52:当接板部材、56:透孔、60:収容空所、62:可動弁体、66:当接部
Claims (8)
- 第一の取付部材と第二の取付部材を本体ゴム弾性体で連結すると共に、該第二の取付部材で仕切部材を支持せしめて、該本体ゴム弾性体で壁部の一部が構成されて非圧縮性流体が封入された受圧室と、壁部の一部が可撓性膜で構成されて非圧縮性流体が封入された平衡室を、該仕切部材を挟んだ両側に形成すると共に、それら受圧室と平衡室を連通するオリフィス通路を形成した流体封入式防振装置において、
前記仕切部材に収容空所を設け、該収容空所を通じて前記受圧室と前記平衡室を連通させることによって短絡流路を構成すると共に、該収容空所に可動弁体を収容して該収容空所の該平衡室への開口部分に対して該可動弁体を接近及び離隔方向に変位可能とする一方、該仕切部材における該収容空所の該平衡室への開口部分を強磁性材で形成すると共に、該可動弁体において少なくとも該平衡室への開口部分に当接せしめられる当接部を弾性磁石で形成して、該当接部が該収容空所の該平衡室への開口部分に対して磁力吸着されることにより該収容空所の該平衡室への開口部分が遮断されて該短絡流路が遮断状態とされる一方、該可動弁体に及ぼされる該受圧室と該平衡室の圧力差で該当接部の磁力吸着が解除されることにより該短絡流路を通じての流体流動が許容されるようにしたことを特徴とする流体封入式防振装置。 - 前記収容空所における前記平衡室への開口部分の内面が、該平衡室側への開口部に向かって次第に小径化するテーパ面とされていると共に、該収容空所における該平衡室への開口部分の内面に当接せしめられる前記可動弁体の前記当接部も対応するテーパ面形状とされている請求項1に記載の流体封入式防振装置。
- 前記収容空所における前記平衡室への開口部分に対して前記可動弁体を当接させる方向の付勢力を該可動弁体に及ぼす付勢手段を設けた請求項1又は2に記載の流体封入式防振装置。
- 前記可動弁体の全体が弾性磁石で構成されている一方、前記仕切部材において前記収容空所の前記受圧室側の壁部が非磁性材で形成されている請求項1乃至3の何れか一項に記載の流体封入式防振装置。
- 前記可動弁体の外周面とそれに対向する前記収容空所の内周面との少なくとも一方には、第一の凹溝が形成されている請求項1乃至4の何れか一項に記載の流体封入式防振装置。
- 前記可動弁体には、前記収容空所における前記平衡室への開口部分への当接状態で、該平衡室への開口部分に対して隙間をもって入り込む中央突部が設けられている請求項1乃至5の何れか一項に記載の流体封入式防振装置。
- 前記仕切部材には、前記収容空所を前記受圧室に連通させる開口部分と前記平衡室に連通させる開口部分が該収容空所を挟んで対向位置せしめられた前記受圧室側の壁部に形成されていると共に、前記可動弁体には、該収容空所の該受圧室側の壁部への対向面上に開口して外周面まで延びる第二の凹溝が形成されている請求項1乃至6の何れか一項に記載の流体封入式防振装置。
- 前記可動弁体において、前記収容空所における前記受圧室側の壁部に対する対向部分が着磁されていない非磁極部とされている請求項1乃至7の何れか一項に記載の流体封入式防振装置。
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