JP4158108B2 - 空気圧切換型の流体封入式エンジンマウント - Google Patents

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本発明は、自動車においてパワーユニットを車両ボデーに対して防振支持せしめるエンジンマウントに係り、特に内部に封入された非圧縮性流体の流動作用を利用してエンジンシェイクやアイドリング振動などの複数の乃至は広い周波数域の振動に対して有効な防振効果を発揮し得る、流体封入式のエンジンマウントに関するものである。
従来から、自動車用のエンジンマウントの一種として、パワーユニットと車両ボデーの各一方に取り付けられる第一の取付部材と第二の取付部材を本体ゴム弾性体で連結せしめて、該本体ゴム弾性体で壁部の一部が構成された受圧室と、可撓性膜で壁部の一部が構成された平衡室を形成し、それら受圧室と平衡室に非圧縮性流体を封入すると共に、それら受圧室と平衡室を相互に連通するオリフィス通路を設けた流体封入式のエンジンマウントが知られている。
ところで、自動車用のエンジンマウントにおいては、自動車の走行状態等に応じて防振すべき振動の周波数等が異なる。ところが、オリフィス通路を流動せしめられる流体の共振作用に基づいて発揮される防振効果は、予めオリフィス通路がチューニングされた比較的狭い周波数域に限られる。そこで、本出願人は、先に、特許文献1(特開平8−270718号公報)において、互いに異なる周波数域にチューニングした第一及び第二のオリフィス通路を設けると共に、高い周波数域にチューニングした方(第二)のオリフィス通路を連通状態と遮断状態に切り換える開閉弁を設けて、防振すべき振動に応じて二つのオリフィス通路を選択的に機能せしめてマウント防振特性を切り換えるようにしたエンジンマウントを提案した。
しかしながら、近年では一層高度な防振性能が要求されるようになってきていることから、かかる特許文献1に記載のエンジンマウントでも、要求される防振性能を未だ十分に実現できない場合がある。その一つの要求特性が、走行時に問題となる走行こもり音等の高周波振動に対する防振性能である。別のもう一つの要求特性が、走行時に問題となるエンジンシェイク等の低周波振動に対する防振性能である。更に、後者の低周波振動に関しては、段差乗り越え等に際して問題となる低周波大振幅振動と、通常走行時に問題となる低周波小振幅振動との、二種類の振動に対する防振性能が要求される。
そこで、先ず、前者(高周波振動に対する防振性能)の要求特性に対処するために、高周波数域で問題となる振動が一般に小振幅であることに着目し、例えば、本出願人の先願に係る特許文献2(特開2001−200884号公報)に記載されているように、受圧室と平衡室を仕切る隔壁部分に薄肉ゴム膜からなる可動膜を配設して、二つのオリフィス通路のチューニング周波数を超えた高周波数域の振動入力時における受圧室の圧力変動を該可動膜の弾性変形で吸収せしめて低動ばね化を図ることが考えられる。
ところが、このような可動膜を採用すると、低周波数域の小振幅振動の入力時にまで、受圧室の圧力変動が可動膜で吸収されてしまうおそれがあり、それによって、低周波数域にチューニングされた第一のオリフィス通路を通じての流体流動量が十分に確保され難くなり、低周波小振幅振動に対して十分な減衰作用が発揮され難くなってしまうという問題がある。また、薄肉のゴム膜からなる可動膜は、その弾性変形量を制限することが難しいことから、中周波中振幅のアイドリング振動の入力時にも、該可動膜の弾性変形によって受圧室の圧力変動が吸収されてしまって、中周波数域にチューニングされた第二のオリフィス通路を通じての流体流動量が十分に確保され難くなり、アイドリング振動に対する防振性能も低下してしまうという問題があった。
なお、ゴム膜からなる可動膜に代えて、例えば特許文献3(実開平2−25749)に記載されているように、受圧室と平衡室を仕切る隔壁部分に硬質の可動板を微小距離だけ変位可能に配設することも考えられるが、硬質の可動板では、その微小変位を許容するために外周側に微小隙間を設ける必要があり、この微小隙間を通じて受圧室から平衡室への圧力の漏れが発生し易い。そのために、ゴム膜と同様、低周波小振幅振動や中周波中振幅の振動入力時における受圧室の圧力変動が漏れてしまって、第一及び第二のオリフィス通路を通じての流体流動量が十分に確保され難くなり、エンジンシェイクの低振幅成分やアイドリング振動に対する防振性能が低下してしまうという問題があるのである。
特開平8−270718号公報 特開2001−200884号公報 実開平2−025749号公報
ここにおいて、本発明は上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、自動車のエンジンマウントにおいて要求される次の4種類の振動に対して、何れも、高度な防振性能を実現せしめ得る、従来にない新規な構造の流体封入式エンジンマウントを提供することにある。
(1)段差乗越え時に発生するエンジンシェイク等に相当する低周波大振幅振動に対する高減衰特性に基づく優れた防振性能
(2)通常走行時に発生するエンジンシェイク等に相当する低周波小振幅振動に対する高減衰特性に基づく優れた防振性能
(3)走行時に発生する走行こもり音等に相当する高周波微小振幅振動に対する低動ばね特性に基づく優れた防振性能
(4)停車時に発生するアイドリング振動等に相当する中周波中振幅振動に対する低動ばね特性に基づく優れた防振性能
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。また、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに限定されることなく、明細書全体および図面に記載されたもの、或いはそれらの記載から当業者が把握することの出来る発明思想に基づいて認識されるものであることが理解されるべきである。
すなわち、本発明の特徴とするところは、(a)パワーユニット側部材と車両ボデー側部材の一方に取り付けられる第一の取付部材と、(b)それらパワーユニッ側部材と車両ボデー側部材の他方に取り付けられる第二の取付部材と、(c)前記第一の取付部材と前記第二の取付部材を弾性的に連結する本体ゴム弾性体と、(d)該本体ゴム弾性体によって壁部の一部が構成されて非圧縮性流体が封入された受圧室と、(e)壁部の一部が可撓性膜で構成されて容積変化が許容される平衡室と、(f)前記受圧室と前記平衡室を相互に連通せしめる、エンジンシェイクに略相当する低周波数域にチューニングされた第一のオリフィス通路と、(g)前記受圧室と前記平衡室を相互に連通せしめる、アイドリング振動に略相当する中周波数域にチューニングされた第二のオリフィス通路と、(h)該第二のオリフィス通路を連通/遮断する弁手段と、(i)外部から及ぼされる空気圧で作動せしめられて前記弁手段を駆動する空気圧式アクチュエータと、(j)中央部分が硬質の中央可動板部とされていると共に、外周部分が変形容易な外周可動ゴム膜部とされており、該中央可動板部および該外周可動ゴム膜部における所定量の変位乃至は変形が許容されるように配設されて、前記受圧室の壁部の別の一部を構成する可動仕切部材と、(k)該可動仕切部材を挟んで前記受圧室と反対側に形成された、外部から空気圧を調節することの出来る作用空気室とを、有すると共に、前記可動仕切部材における前記中央可動板部に硬質の拘束プレートを配設し、該拘束プレートの外周縁部に対して前記外周可動ゴム膜部を接着せしめて、前記可動仕切部材における前記拘束プレートが配設された前記中央可動板部の外周部分の複数箇所において板厚方向の両側に突出する弾性当接突部を形成し、前記第二の取付部材又は該第二の取付部材によって支持せしめた変位規制部材に対して該弾性当接突部を離隔して対向位置せしめて、該弾性当接突部の該変位規制部材への当接によって該中央可動板部の変位量を緩衝的に制限する変位量制限手段を設けると共に、前記中央可動板部の外周部分の複数箇所において前記弾性当接突部と一体的に形成されて該弾性当接突部より大きな突出高さで板厚方向の両側に突出する当接支持部を設けて、該当接支持部を前記変位規制部材に対して当接状態として該当接支持部によって該中央可動板部の前記拘束プレートを弾性的に支持せしめた空気圧切換型の流体封入式エンジンマウントにある。
このような本発明に従う構造とされた流体封入式エンジンマウントにおいては、入力される防振すべき振動の周波数や振幅の相違に応じて次のような防振特性が発揮されることとなり、それによって、それら各種の異なる振動に対して、何れも、有効な防振効果が発揮されるのである。
(1)段差乗越え時に発生するエンジンシェイク等に相当する低周波大振幅振動に対しては、中央可動板部と外周可動ゴム膜部からなる可動仕切部材の変位乃至は変形による液圧吸収が追従し得ずに受圧室には有効な圧力変動が惹起され得ることとなる。これにより、受圧室と平衡室の間に相対的な圧力変動が有効に生ぜしめられる。それ故、第二のオリフィス通路を弁手段で遮断状態に維持すれば、第一のオリフィス通路を通じての流体流動量が有利に確保され得て、該第一のオリフィス通路を流動せしめられる流体の共振作用に基づく高減衰効果が発揮され、優れた防振性能が実現され得ることとなる。
(2)通常走行時に発生するエンジンシェイク等に相当する低周波小振幅振動に対しては、可動仕切部材による受圧室の圧力吸収が懸念されるが、中央可動板部の外周側における流体密性が外周可動ゴム膜部によって確保されていることと、中央可動板部が硬質とされて可動仕切部材の変形量が抑えられるようになっていることから、受圧室には未だ十分に有効な圧力変動が惹起されることとなる。それ故、上述の低周波大振幅振動の場合と同様に、第二のオリフィス通路を弁手段で遮断状態に維持すれば、第一のオリフィス通路を通じての流体流動量が有利に確保され得て、該第一のオリフィス通路を流動せしめられる流体の共振作用に基づく高減衰効果が発揮され、優れた防振性能が実現され得ることとなる。
(3)走行時に発生する走行こもり音等に相当する高周波微小振幅振動に対しては、受圧室の圧力変動が非常に小さいことから、可動仕切部材の変位乃至は変形によって受圧室の圧力変動が有効に吸収乃至は軽減され得る。特に、可動仕切部材の中央可動板部は、中央部分に形成されて有効面積を有利に確保することが出来ると共に、その外周縁部を流体密に支持せしめる外周可動ゴム膜部が変形容易とされていることから、受圧室における高周波数域の圧力変動に対して有利に追従変位し得て、受圧室の圧力変動を抑えることが出来るのである。それ故、高周波数域の振動入力時には、第一及び第二のオリフィス通路が実質的に閉塞状態となった状態下においても、受圧室の著しい圧力変動が可動仕切部材によって回避され得て、低動ばね特性に基づく有効な振動絶縁作用により優れた防振性能が発揮され得ることとなる。
(4)停車時に発生するアイドリング振動等に相当する中周波中振幅振動に対しては、空気圧式アクチュエータを作動せしめて第二のオリフィス通路を連通状態とすると共に、作用空気室に外部から空気圧(負圧または正圧)を及ぼして中央可動板部と外周可動ゴム膜部に対してそれぞれ拘束力を及ぼすようにする。これにより、可動仕切部材による圧力吸収が防止されて受圧室に有効な圧力変動が惹起されることとなり、受圧室と平衡室の間で第二のオリフィス通路を通じて流動せしめられる流体流動量が有利に確保され得て、かかる流体の共振作用に基づいて優れた防振性能が発揮されるのである。なお、第一のオリフィス通路も連通状態にあるが、そのチューニング周波数を超えた周波数域となる中周波の入力振動に対しては、流動流体の反共振的な作用により実質的に閉塞状態となる。
さらに、本発明に従う構造とされた流体封入式エンジンマウントにおいては、変位量制限手段を設けることにより、低周波大振幅振動は勿論、低周波小振幅振動の入力時における受圧室の圧力変動が可動仕切部材によって吸収されてしまうことを一層効果的に抑えることが可能となる。そして、第一のオリフィス通路を流動せしめられる流体の流動量の増大を図って、かかる流体の共振作用に基づく減衰効果の更なる向上と、それに伴う低周波振動に対する防振性能の更なる向上が図られ得る。更に、中央可動板部の支持ばね特性を、弾性当接突部の変位規制部材に対する当接によって調節することが可能となることから、中央可動板部の固有振動数を調節して走行こもり音等に相当する高周波の振動周波数域にあわせることにより、かかる中央可動板部の共振作用を利用して、高周波数域における受圧室の圧力吸収に基づく防振性能の更なる向上を図ることも可能となる。なお、弾性当接突部が当接せしめられる変位規制部材は、例えば、第二の取付部材によって固定的に支持されることによって有利に構成され得、具体的には、第二の取付部材によって固定的に支持されて受圧室と平衡室を仕切る隔壁を構成する仕切部材を利用すること等によって、変位規制部材が有利に構成され得る。
また、拘束プレートを採用することにより、中央可動板部における不必要な変形に起因する低〜中周波数域の振動入力時における受圧室の圧力変動の吸収が一層確実に抑えられ得ることとなり、それによって、第一のオリフィス通路や第二のオリフィス通路を通じて流動せしめられる流体の共振作用に基づく目的とする防振効果がより効果的に安定して発揮され得るのである。なお、拘束プレートとしては、硬質の合成樹脂材料や金属などからなる薄肉の板材が好適に採用される。また、中央可動板部は、かかる拘束プレートだけで構成し、その外周縁部に外周可動ゴム膜部を接着することによって構成することも可能であり、或いは、例えば、中央可動板部の実質的に全体に亘って広がるゴム弾性膜の中央部分に拘束プレートを接着せしめて、該ゴム弾性膜の中央部分に中央可動板部を形成すると共に、該ゴム弾性膜の外周縁部によって外周可動ゴム膜部を形成するようにしても良い。
また、本発明において、好ましくは、前記空気圧式アクチュエータにおいて、外部から略大気圧が及ぼされることによって前記第二のオリフィス通路が遮断状態となるように前記弁手段が駆動せしめられる一方、外部から負圧が及ぼされることによって該第二のオリフィス通路が連通状態となるように該弁手段が駆動せしめられるようにされる。
このような空気圧式アクチュエータと弁手段の構成を採用することにより、特に自動車において内燃機関の吸気系から容易に得ることの出来る負圧を巧く利用することも可能となる。特に、かかる負圧は、アイドリング状態で負圧側に大きくなることから、大きな負圧を利用してアイドリング状態下で弁手段を駆動して第二のオリフィス通路を連通状態とすることが出来る。
また、本発明において、好ましくは、前記作用空気室および前記空気圧式アクチュエータに対して、自動車の停車状態下では負圧を及ぼす一方、自動車の走行状態下では略大気圧を及ぼすことにより、それら作用空気室と空気圧式アクチュエータに及ぼす空気圧を相互に連動的に制御する空気圧制御手段を設けたことを、特徴とする。
このような空気圧制御手段を採用することにより、作用空気室と空気圧式アクチュエータに対する空気圧の給排を、簡単な制御態様で容易に実現することが可能となる。また、前述の如く、自動車の内燃機関に生ぜしめられる負圧を一層巧く利用することも可能となる。
また、本発明において、好ましくは、前記第一の取付部材と前記第二の取付部材の間に及ぼされる入力振動が±0.05mm以下の微小振幅振動の場合には前記受圧室に惹起される圧力変動を実質的に吸収し得るが、該第一の取付部材と該第二の取付部材の間に及ぼされる入力振動が±0.1mm前後の小振幅振動や±1.0mm以上の大振幅振動の場合には該受圧室に惹起される圧力変動を実質的に吸収し得ないように、前記可動仕切部材における変位乃至は変形の特性が設定される。
このような本態様においては、車種等によって相違するものの、一般に多くの自動車において問題となる、(1)10Hz前後の低周波数域で、±1.0mm前後の大振幅の振動として作用せしめられる、段差乗り越え等に起因するエンジンシェイク等の低周波大振幅振動と、(2)10Hz前後の低周波数域で、±0.1mm前後の小振幅振動として作用せしめられる、通常走行時に問題となるエンジンシェイク等の低周波小振幅振動とに、対するそれぞれ高減衰作用による優れた防振性能と共に、(3)50Hzから数百Hzの高周波数域で、±0.05mm以下の微小振幅振動として作用せしめられる、走行時に問題となるこもり音等の高周波振動に対する低動ばね作用による優れた防振性能が、何れも、より有効に実現可能となる。
上述の説明から明らかなように、本発明に従う構造とされた空気圧切換型の流体封入式エンジンマウントにおいては、第一及び第二のオリフィス通路と可動仕切部材を、防振すべき振動の周波数や振幅に応じてそれぞれ効率的に機能せしめて、(1)段差乗り越え等に伴うエンジンシェイク等に相当する低周波大振幅振動と、(2)通常走行時におけるエンジンシェイク等に相当する低周波小振幅振動と、(3)走行時におけるこもり音等に相当する高周波微小振幅振動と、(4)停車時におけるアイドリング振動等に相当する中周波中振幅振動とに対して、何れも、有効な防振効果を得ることが出来るのである。
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
先ず、図1には、本発明の一実施形態としての自動車用防振マウント10が示されている。この防振マウント10は、第一の取付部材としての第一の取付金具12と第二の取付部材としての第二の取付金具14が、本体ゴム弾性体16によって弾性的に連結された構造とされており、第一の取付金具12がパワーユニット側に取り付けられる一方、第二の取付金具14がブラケット18を介して自動車のボデー側に取り付けられることにより、パワーユニットをボデーに対して防振支持せしめるようになっている。なお、以下の説明において、上下方向は、原則として、図1における上下方向をいう。
より詳細には、第一の取付金具12は、略逆円錐台形のブロック形状を有している。また、その大径側端面には、軸方向上方に突出するようにして取付ボルト20が一体形成されている。
一方、第二の取付金具14は、全体として大径の略円筒形状を有している。また、第二の取付金具14は、その軸方向上側端部にくびれ部22を備えている。このくびれ部22は、径方向内方に凹んで周方向の全周に延びており、かかるくびれ部22によって、第二の取付金具14の軸方向上側開口部分が上方に向かって次第に拡開する逆テーパ形状されている。
このような構造とされた第二の取付金具14には、その上部開口側に離隔して、第一の取付金具12が略同一中心軸上に配設されている。そして、これら第一の取付金具12と第二の取付金具14の間に本体ゴム弾性体16が配設されており、この本体ゴム弾性体16によって第一の取付金具12と第二の取付金具14が弾性的に連結されている。
本体ゴム弾性体16は、全体として円錐台形状を有しており、第一の取付金具12が小径側端面から差し込まれるようにして本体ゴム弾性体16に加硫接着されている。また、本体ゴム弾性体16の大径側端部外周面には、第二の取付金具14の軸方向上側の開口部分が重ね合わされて加硫接着されている。これにより、第一の取付金具12におけるテーパ状の外周面と第二の取付金具14のくびれ部22における逆テーパ状の内周面とが互いに対向位置せしめられて、かかる対向面間に本体ゴム弾性体16が介在せしめられている。なお、本実施形態では、本体ゴム弾性体16が、第一の取付金具12と第二の取付金具14を備えた一体加硫成形品とされている。
また、このように第二の取付金具14の開口部が本体ゴム弾性体16の外周面に加硫接着されることにより、第二の取付金具14の軸方向上側の開口部が本体ゴム弾性体16によって流体密に閉塞されている。なお、本体ゴム弾性体16の大径側端面には、すり鉢状の大径凹所24が形成されて、第二の取付金具14内に開口せしめられている。
更にまた、第二の取付金具14の内周面には、シールゴム層26が被着形成されている。このシールゴム層26は、本体ゴム弾性体16と一体形成されており、かかるシールゴム層26によって第二の取付金具14の内周面が略全面に亘って覆われている。
さらに、第二の取付金具14には、その軸方向下方の開口部から、仕切部材28と、可撓性膜としてのゴムダイヤフラム30が、順次に嵌め込まれて、第二の取付金具14に対して嵌着固定されている。なお、ゴムダイヤフラム30の外周縁部には、円筒形状の固定筒金具32が加硫接着されており、この固定筒金具32が第二の取付金具14の下端開口部に嵌着固定されることによって、第二の取付金具14の下端開口が流体密に覆蓋されている。
これにより、仕切部材28の軸方向上側には、壁部の一部が本体ゴム弾性体16で構成された受圧室34が形成されている一方、仕切部材28の軸方向下側には、壁部の一部がゴムダイヤフラム30で構成された平衡室36が形成されている。また、これら受圧室34および平衡室36は、外部空間に対して流体密に仕切られており、それぞれ、水やアルキレングリコール,ポリアルキレングリコール,シリコーン油等の非圧縮性流体が封入されている。
そして、受圧室34においては、振動入力時に本体ゴム弾性体16の弾性変形に基づいて積極的な圧力変動が生ぜしめられるようになっている。一方、平衡室36は、ゴムダイヤフラム30の変形が容易に許容されて容積可変とされることにより、圧力変動が速やかに吸収されるようになっている。
ここにおいて、仕切部材28は、図2〜4に示されている如き、厚肉の略円板形状を有する仕切ブロック38を備えている。かかる仕切ブロック38には、その上端面と下端面の各中央部分において、上側中央凹所40と下側中央凹所42が、それぞれ略円形の凹陥形状をもって形成されている。
また、仕切ブロック38には、外周面に開口して周方向に屈曲等して延びる周方向凹溝44が形成されており、この周方向凹溝44の両端部が軸方向各一方の面に開口せしめられている。更にまた、仕切ブロック38には、外周面に開口して軸方向に所定長さで直線的に延びる軸方向凹溝46が形成されており、この軸方向凹溝46の上端部が周方向凹溝44の一端部を利用して仕切部材28の上面に開口している一方、その下端部がトンネル状で径方向に延びる連通孔48を通じて下側中央凹所42に接続されている。
更にまた、仕切ブロック38の上側中央凹所40は、深さ方向中間部分に段差面50が設けられて、底部側の小径凹部52と開口側の大径凹部54からなる段付円形凹所とされている。また、段差面50には、幅方向の中間部分を周方向の全周に亘って連続して延びる溝状の環状凹所56が形成されていると共に、かかる環状凹所56が、内周壁部の適数箇所に形成された連通溝58によって、小径凹部52に接続されている。更に、小径凹部52の周壁には、仕切ブロック38を径方向に貫通して延びる空気通路60が形成されている。そして、この空気通路60の内方端部が小径凹部52に連通せしめられている一方、空気通路60の外側端部が仕切ブロック38の外周面に突設されたポート部62において外部に開口せしめられている。
そして、かかる大径凹部54に対して、可動仕切部材64が組み付けられていると共に、可動仕切部材64の上方から、蓋板金具66が仕切ブロック38の上面に重ね合わされて組み付けられている。
可動仕切部材64は、図5,6にも単品図が示されているように、円形の略薄板形状のゴム弾性板68を有しており、ゴム弾性板68の外周面に対して円形の嵌着金具70が加硫接着されている。そして、この嵌着金具70が仕切ブロック38の大径凹部54に対して圧入されることにより、上側中央凹所40の開口が可動仕切部材64によって流体密に覆蓋されており、以て、可動仕切部材64の上方に受圧室34が形成されている一方、可動仕切部材64の下方には、密閉状態の作用空気室72が形成されている。
また、ゴム弾性板68は、仕切ブロック38における段差面50の略内周縁部上に位置せしめられる部分において、周方向に連続して若しくは不連続に延びる環状の弾性突部74が一体形成されている。また、かかる弾性突部74における周上の適数箇所(本実施形態では、4箇所)には、更に大きく上下両面に突出する略台地形状の当接支持部76が一体形成されている。なお、本実施形態では、ゴム弾性板68における上下両方の弾性突部74,74の突出先端面間の寸法が、嵌着金具70の軸方向寸法よりも僅かに小さく設定されていると共に、上下両方の当接支持部76,76の突出先端面間の寸法が、嵌着金具70の軸方向寸法と同じか僅かに大きく設定されている。
更にまた、可動仕切部材64には、ゴム弾性板68の中央部分に対して金属や合成樹脂からなる硬質の拘束プレート78が埋設状態で固着されている。特に本実施形態では、拘束プレート78が、図7に示されているように、中央部分が僅かに凹んだ略浅皿形状とされており、薄肉ながら変形剛性の向上が図られている。また、拘束プレート78は、仕切ブロック38の上側中央凹所40の内径寸法よりも大きな外形寸法を有しており、拘束プレート78の外周縁部が、段差面50にまで延び出している。
なお、拘束プレート78の外周縁部には、上下の当接支持部76,76に対応する複数箇所に、それぞれ切欠80が設けられており、当接支持部76,76の形成部位を逃げるようにして拘束プレート78がゴム弾性板68に被着されている。また、拘束プレート78の中心には、円形孔82が貫設されてゴム弾性板68が充填されており、ゴム弾性板68に対する固着強度の向上が図られている。
さらに、ゴム弾性板68の外周部分は、弾性突部74と嵌着金具70との間に位置する部分が薄肉とされている。これにより、外周可動ゴム膜部84が、所定幅で周方向に延びる円環板形状をもって形成されている。そして、この外周可動ゴム膜部84が、仕切ブロック38の段差面50に形成された環状凹所56の開口部上に位置せしめられている。
一方、蓋板金具66は、図8にも示されているように、全体として薄肉の略円板形状を有しており、径方向中間部分に僅かな段差部86が形成されて、外周縁部に対して中央部分が下方に突出せしめられている。そして、蓋板金具66は、仕切ブロック38の上面に重ね合わされて、段差部86が、仕切ブロック38の上側中央凹所40の開口部に嵌め込まれることにより、径方向に位置決めされて組み付けられている。
また、蓋板金具66には、中央部分に円形の中央透孔88が貫設されていると共に、該中央透孔88の回りには、所定幅で周方向に延びる複数の外周透孔90が貫設されている。そして、蓋板金具66が仕切ブロック38に組み付けられた際、中央透孔88を通じて、拘束プレート78で補強されたゴム弾性板68の中央可動板部92が受圧室34に臨むようになっていると共に、外周透孔90を通じて、外周可動ゴム膜部84が受圧室34に臨むようになっている。
更にまた、蓋板金具66の外周縁部には、周上の一箇所に切欠窓94が設けられており、この切欠窓94が仕切ブロック38に設けられた周方向凹溝44と軸方向凹溝46の共通する上側開口部に位置合わせされている。なお、切欠窓94と凹溝44,46の上側開口部を相互に位置合わせするために、仕切ブロック38の上端面には周上の適当の部位に位置決め突起96が突設されていると共に、蓋板金具66の対応する部位に位置決め穴98が形成されており、それら位置決め突起96と位置決め穴98の係合作用で周方向の位置決めが実現されるようになっている。
而して、上述の如きゴム弾性板68および蓋板金具66の仕切ブロック38への組付状態下、ゴム弾性板68の各当接支持部76は、図9に示されているように、各先端面が、仕切ブロック38の段差面50または蓋板金具66の下面に対して当接されており、必要に応じて適当に圧縮されている。また、弾性突部74は、図10に示されているように、仕切ブロック38の段差面50または蓋板金具66の下面に対して僅かな隙間をもって位置せしめられている。そして、ゴム弾性板68に対して受圧室34の圧力変動が及ぼされた際には、ゴム弾性板68の上下面に及ぼされる受圧室34と作用空気室72の圧力差に基づいて、ゴム弾性板68の変位乃至は変形が生ぜしめられるようになっている。
ここにおいて、ゴム弾性板68における中央可動板部92は、埋設固着せしめられた拘束プレート78によってその変形が規制されており、主として当接支持部76,76の弾性変形に基づいて許容される変位が生ぜしめられるようになっている。一方、外周可動ゴム膜部84は、薄肉とされて弾性変形が容易に許容されるようになっており、変形による変位が生ぜしめられるようになっている。なお、中央可動板部92の背後の空間と外周可動ゴム膜部84の背後の空間が、連通溝58によって連通状態に安定して維持されており、実質的に単一の空気室として作用するようになっている。
また、仕切ブロック38の外周面に形成された周方向凹溝44および軸方向凹溝46の開口部は、何れも、第二の取付金具14で流体密に覆蓋されている。そして、周方向凹溝44が覆蓋されることにより、受圧室34と平衡室36を相互に連通する第一のオリフィス通路100が、常時、連通せしめられた状態で形成されている。また、軸方向凹溝46が覆蓋されることにより、仕切ブロック38の連通孔48から下側中央凹所42を通じて平衡室36に開口せしめられて、該平衡室36を受圧室34に連通せしめる第二のオリフィス通路102が形成されている。
特に本実施形態では、第一のオリフィス通路100に比して、第二のオリフィス通路102が、略同じ通路断面積と短い通路長さで形成されている。これにより、第一のオリフィス通路100よりも第二のオリフィス通路102の方が高周波数域にチューニングされている。具体的には、第一のオリフィス通路100を流動せしめられる流体の共振作用に基づき、エンジンシェイク等の10Hz前後の低周波数域の振動に対して高減衰特性が発揮されるようにチューニングされていると共に、第二のオリフィス通路102を流動せしめられる流体の共振作用に基づき、アイドリング振動等の20〜40Hz程度の中周波数域の振動に対して低動ばね効果が発揮されるようにチューニングされている。
そして、上述のように、第一の取付金具12と第二の取付金具14を有する本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品に対して仕切部材28とゴムダイヤフラム30を組み付けて構成されたマウント本体には、更に、ブラケット18が組み付けられている。かかるブラケット18は、全体として大径で深底の略有底円筒形状を有しており、第二の取付金具14に対して外嵌固定されている。また、ブラケット18の下部外周面には、外方に延びる複数本の脚部103が溶着されており、これら各脚部103が自動車用ボデーにボルト固定されることにより、第二の取付金具14が、ブラケット18を介して、自動車用ボデーに取り付けられるようになっている。
また、ブラケット18は、第二の取付金具14に対して十分に深底とされており、第二の取付金具14が嵌着固定された状態下、ブラケット18の底部には十分な大きさの内部空所104が形成されている。そして、この内部空所104によって、ゴムダイヤフラム30の膨出変形が十分に大きく許容されるようになっている。
さらに、ブラケット18の底部には、空気圧式アクチュエータ106が装備されている。この空気圧式アクチュエータ106は、ブラケット18の底部をベースハウジング108に利用しており、かかるベースハウジング108に対して、弁手段としての出力部材110がブラケット18の内部に位置するようにして組み付けられている。
かかる出力部材110は、全体として略ハット形状を有する仕切ゴム112を備えており、該仕切ゴム112の中央部分が逆カップ形状の出力部114とされていると共に、その外周部分が、該出力部114の下端開口周縁部から斜め下方に広がるテーパ付き鍔状の弾性周壁部116とされている。また、出力部114には、金属や合成樹脂で形成された硬質の補強部材118が埋設固着されている一方、弾性周壁部116の外周縁部には、環状の圧入金具120が加硫接着されている。
そして、圧入金具120がブラケット18の底部周壁に対して圧入固定されることにより、仕切ゴム112の外周縁部がブラケット18で形成されたベースハウジング108の底面に対して流体密に当接されている。これにより、出力部材110の開口がベースハウジング108の底壁部で覆蓋されて内部に調圧空気室122が形成された空気圧式アクチュエータ106が構成されている。
なお、特に本実施形態では、圧縮コイルスプリング124が収容されて組み付けられていることにより、出力部114とベースハウジング124の間に離隔方向の付勢力が常時及ぼされるようになっている。また、ベースハウジング108の底部中央を貫通してエアポート126が設けられている。そして、このエアポート126を通じて、外部から、調圧空気室122の圧力を制御することが出来るようになっている。
すなわち、防振マウント10の装着状態下において、このエアポート126に対して外部の空気圧管路128が接続されており、かかる空気圧管路128を通じて切換弁130が接続されている。そして、切換弁130の切換作動に従って、調圧空気室122に大気中と負圧源132が選択的に接続されるようになっている。
そして、調圧空気室122が大気中に接続された状態下では、弾性周壁部116の弾性と、圧縮コイルスプリング124の弾性が出力部114に作用することにより、出力部114が上方に弾性的に突出せしめられて、ゴムダイヤフラム30を上方に付勢せしめて、仕切部材28の中央下面に対して押し付けた状態に保持されるようになっている。 ここにおいて、出力部114の外形は、仕切部材28の中央下面に形成された下側中央凹所42の開口径よりも大きなものとされていることから、ゴムダイヤフラム30の中央部を下側中央凹所42の開口部に押し付けて、実質的に流体密に覆蓋することとなり、これによって、下側中央凹所42を通じて平衡室36に開口せしめられる第二のオリフィス通路102を遮断するようになっている。
一方、調圧空気室122が負圧源132に接続された状態下では、弾性周壁部116の弾性と圧縮コイルスプリング124の弾性に抗して、作用室内に及ぼされる負圧と外部大気圧との圧力差に基づいて出力部114が調圧空気室122の内方に吸引され、軸方向下方に変位せしめられることとなる。それ故、ゴムダイヤフラム30が下側中央凹所42の開口部から離隔せしめられて、第二のオリフィス通路102が開口、連通状態とされる。
さらに、このような空気圧制御系を構成する切換弁130を、空気圧管路128を通じてポート部62にも接続することによって、調圧空気室122に及ぼされている圧力と略同じ圧力が、作用空気室72にも同時に及ぼされるようになっている。
そして、作用空気室72に大気圧を及ぼすことで、上側中央凹所40において中央可動板部92の弾性変位が容易に許容されると共に、外周可動ゴム膜部84の弾性変形が容易に許容されるようになっている。一方,作用空気室72に負圧を及ぼした場合、中央可動板部92と外周可動ゴム膜部84の何れも、作用空気室72内に向けて吸引されて空気圧で拘束状態に保持されるようになっている
ここにおいて、本実施形態では、切換弁130が制御装置134により、自動車の走行状態と、停車状態によって切り換えられるようになっている。すなわち、走行状態下では、作用空気室72および調圧空気室122が大気中に接続される。一方、停車状態下では、作用空気室72および調圧空気室122が負圧源132に接続されるようになっている。なお、かかる制御装置134としては、例えば、速度センサー等によって、切換弁130を構成する電磁ソレノイドに駆動制御信号を出力することによって有利に構成される
従って、上述の如き構造とされたエンジンマウントでは、その走行時の段差の乗り越え等において入力される低周波大振幅振動に対して、中央可動板部92と外周可動ゴム膜部84からなる可動仕切部材64の変位乃至は変形による液圧吸収が追従し得ずに受圧室34には有効な圧力変動が惹起され得ることとなる。これにより、受圧室34と平衡室36の間に相対的な圧力変動が有効に生ぜしめられる。それ故、第二のオリフィス通路102を弁手段で遮断状態に維持すれば、第一のオリフィス通路100を通じての流体流動量が有利に確保され得て、該第一のオリフィス通路100を流動せしめられる流体の共振作用に基づく高減衰効果が発揮され、優れた防振性能が実現され得ることとなる。
また、その通常走行状態下において入力される低周波小振幅振動に対しては、上述の低周波大振幅振動の場合と同様に、第二のオリフィス通路102を弁手段で遮断状態に維持すれば、第一のオリフィス通路100を通じての流体流動量が有利に確保され得て、該第一のオリフィス通路100を流動せしめられる流体の共振作用に基づく高減衰効果が発揮され、優れた防振性能が実現され得ることとなる。なお、可動仕切部材64による受圧室34の圧力吸収が懸念されるが、中央可動板部92の外周側における流体密性が外周可動ゴム膜部84によって確保されていることと、中央可動板部92が硬質とされて可動仕切部材64の変形量が抑えられるようになっていることから、受圧室34には未だ十分に有効な圧力変動が惹起されることとなる。
さらに、走行時に入力される高周波微振幅振動に対しては、受圧室34の圧力変動が非常に小さいことから、可動仕切部材64の変位乃至は変形によって受圧室34の圧力変動が有効に吸収乃至は軽減され得る。特に、可動仕切部材64の中央可動板部92は、中央部分に形成されて有効面積を有利に確保することが出来ると共に、その外周縁部を流体密に支持せしめる外周可動ゴム膜部84が変形容易とされていることから、受圧室34における高周波数域の圧力変動に対して有利に追従変位し得て、受圧室34の圧力変動を抑えることが出来るのである。それ故、高周波数域の振動入力時には、第一及び第二のオリフィス通路102が実質的に閉塞状態となった状態下においても、受圧室34の著しい圧力変動が可動仕切部材64によって回避され得て、低動ばね特性に基づく有効な振動絶縁作用により優れた防振性能が発揮され得ることとなる。
さらにまた、停車状態下において発生するアイドリング振動等に相当する中周波中振幅振動に対しては、空気圧管路128を通じて作用空気室72に負圧を及ぼすことによって、第二のオリフィス通路102を連通状態にすると同時に、可動仕切部材64を吸引拘束してその変位乃至は変形を抑制する。これによって、可動仕切部材64による圧力吸収が防止されて、受圧室34の圧力変動が有効に惹起されることとなり、第二のオリフィス通路102を通じて流動せしめられる流体の流動量を有利に確保できて、かかる流体の共振作用に基づく防振効果が効果的に発揮されるのである。なお、第一のオリフィス通路100も連通状態にあるが、チューニング周波数を超えた周波数の入力振動に対しては、流動流体の反共振的作用により実質的に閉塞状態となる。
また、本実施形態では、可動仕切部材64に弾性当接突部としての弾性突部74および当接支持部76を突出形成することによって、可動仕切部材64の変位量を制限して、低周波小振幅振動の入力時の可動仕切部材64による圧力吸収を一層効果的に抑えることができる。
また、本実施形態の防振マウントでは、出力部材110を第二のオリフィス通路102と接続した下側中央凹所42の開口部に向けて軸方向上向きに付勢することにより、作用空気室72が略大気圧とされた状態下で空気圧式アクチュエータ106の出力部材110がゴムダイヤフラム30を介して下側中央凹所42を遮断状態に保持せしめられていることから、空気圧式アクチュエータ106の作動に自動車において容易に得ることのできる負圧を巧く利用することができるのである。
また、本実施形態の防振マウントでは、作用空気室72及び空気圧式アクチュエータ106に対して、自動車の停車時には負圧を及ぼす一方、自動車の走行時には略大気圧を及ぼすことにより、作用空気室72と空気圧式アクチュエータ106に及ぼす空気圧を相互に連続的に制御する空気圧制御装置を設けている。これによって、作用空気室72と空気圧式アクチュエータ106に対する空気圧の給排を、簡単な制御態様で容易に実現することが可能となる。
また、本実施形態の防振マウントでは、可動仕切部材64の中央可動板部92に拘束プレート78が埋設状態で固設されていることから、中央可動板部92における不必要な変形に起因する低〜中周波数域の振動入力時における受圧室34の圧力変動の吸収が一層確実に抑えられ得ることとなり、第一のオリフィス通路100や第二のオリフィス通路102における流体流動による防振効果が効果的に発揮される。
以上、本発明の一実施形態について詳述してきたが、これはあくまでも例示であって、本発明は、かかる実施形態における具体的な記載によって、何等、限定的に解釈されるものではない。
また、前記実施形態では、空気圧式アクチュエータ106を作用空気室72が略大気圧とされている場合に、下側中央凹所42の開口部に押圧するための付勢手段として圧縮コイルスプリング124を用いていたが、付勢手段は、前記実施形態のものに限定されるものではない。具体的には、例えば、仕切ゴム弾性体54の弾性だけを利用して、当接状態に保持せしめることも可能であり、或いは、圧縮コイルスプリング124に代えて板バネ等を用いることも可能である。
加えて、前記実施形態では、本発明を自動車用のエンジンマウントに適用したものの具体例を示したが、その他、本発明は、自動車以外のエンジンマウント装置に対しても、有利に適用され得るものであることは勿論である。
本発明の一実施形態としての防振マウントを示す縦断面図であって、図2におけるI−I断面に相当する図である。 図1に示された防振マウントを構成する仕切ブロックを示す平面図である。 図2に示された仕切ブロックの底面図である。 図2に示された仕切ブロックを示す斜視図である。 図1に示された防振マウントを構成する可動仕切部材を示す平面図である。 図5に示された可動仕切部材の底面図である。 図1に示された防振マウントを構成する拘束プレートを示す平面図である。 図1に示された防振マウントを構成する蓋板金具を示す平面図である。 図1に示された防振マウントにおける当接支持部を拡大して示す縦断面図である。 図1に示された防振マウントにおける弾性突部を拡大して示す縦断面図である。
符号の説明
10 防振マウント
12 第一の取付金具
14 第二の取付金具
16 本体ゴム弾性体
30 ゴムダイヤフラム
34 受圧室
36 平衡室
64 可動仕切部材
72 作用空気室
84 外周可動ゴム膜部
92 中央可動板部
100 第一のオリフィス通路
102 第二のオリフィス通路
106 空気圧式アクチュエータ
114 出力部

Claims (5)

  1. パワーユニット側部材と車両ボデー側部材の一方に取り付けられる第一の取付部材と、
    それらパワーユニット側部材と車両ボデー側部材の他方に取り付けられる第二の取付部材と、
    前記第一の取付部材と前記第二の取付部材を弾性的に連結する本体ゴム弾性体と、
    該本体ゴム弾性体によって壁部の一部が構成されて非圧縮性流体が封入された受圧室と、
    壁部の一部が可撓性膜で構成されて容積変化が許容される平衡室と、
    前記受圧室と前記平衡室を相互に連通せしめる、エンジンシェイクに略相当する低周波数域にチューニングされた第一のオリフィス通路と、
    前記受圧室と前記平衡室を相互に連通せしめる、アイドリング振動に略相当する中周波数域にチューニングされた第二のオリフィス通路と、
    該第二のオリフィス通路を連通/遮断する弁手段と、
    外部から及ぼされる空気圧で作動せしめられて前記弁手段を駆動する空気圧式アクチュエータと、
    中央部分が硬質の中央可動板部とされていると共に、外周部分が変形容易な外周可動ゴム膜部とされており、該中央可動板部および該外周可動ゴム膜部における変位乃至は変形が許容されるように配設されて、前記受圧室の壁部の別の一部を構成する可動仕切部材と、
    該可動仕切部材を挟んで前記受圧室と反対側に形成された、外部から空気圧を調節することの出来る作用空気室と
    を、有すると共に、
    前記可動仕切部材における前記中央可動板部に硬質の拘束プレートを配設し、該拘束プレートの外周縁部に対して前記外周可動ゴム膜部を接着せしめて、
    前記可動仕切部材における前記拘束プレートが配設された前記中央可動板部の外周部分の複数箇所において板厚方向の両側に突出する弾性当接突部を形成し、前記第二の取付部材又は該第二の取付部材によって支持せしめた変位規制部材に対して該弾性当接突部を離隔して対向位置せしめて、該弾性当接突部の該変位規制部材への当接によって該中央可動板部の変位量を緩衝的に制限する変位量制限手段を設けると共に、
    前記中央可動板部の外周部分の複数箇所において前記弾性当接突部と一体的に形成されて該弾性当接突部より大きな突出高さで板厚方向の両側に突出する当接支持部を設けて、該当接支持部を前記変位規制部材に対して当接状態として該当接支持部によって該中央可動板部の前記拘束プレートを弾性的に支持せしめた
    ことを特徴とする空気圧切換型の流体封入式エンジンマウント。
  2. 前記可動仕切部材の前記中央可動板部において、前記拘束プレート上に前記弾性当接突部を形成する一方、該拘束プレートを外れた部分に前記当接支持部を形成した請求項1に記載の空気圧切換型の流体封入式エンジンマウント。
  3. 前記空気圧式アクチュエータにおいて、外部から略大気圧が及ぼされることによって前記第二のオリフィス通路が遮断状態となるように前記弁手段が駆動せしめられる一方、外部から負圧が及ぼされることによって該第二のオリフィス通路が連通状態となるように該弁手段が駆動せしめられるようになっている請求項1又は2に記載の空気圧切換型の流体封入式エンジンマウント。
  4. 前記作用空気室および前記空気圧式アクチュエータに対して、自動車の停車状態下では負圧を及ぼす一方、自動車の走行状態下では略大気圧を及ぼすことにより、それら作用空気室と空気圧式アクチュエータに及ぼす空気圧を相互に連動的に制御する空気圧制御手段を設けた請求項1乃至3の何れかに記載の空気圧切換型の流体封入式エンジンマウント。
  5. 前記第一の取付部材と前記第二の取付部材の間に及ぼされる入力振動が±0.05mm以下の微小振幅振動の場合には前記受圧室に惹起される圧力変動を実質的に吸収し得るが、該第一の取付部材と該第二の取付部材の間に及ぼされる入力振動が±0.1mm前後の小振幅振動や±1.0mm以上の大振幅振動の場合には該受圧室に惹起される圧力変動を実質的に吸収し得ないように、前記可動仕切部材における変位乃至は変形の特性が設定されている請求項1乃至の何れかに記載の空気圧切換型の流体封入式エンジンマウント。
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