以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について説明する。先ず、図1には、本発明の第一の実施形態としての自動車用エンジンマウント10が示されている。このエンジンマウント10は、第一の取付部材としての第一の取付金具12と第二の取付部材としての第二の取付金具14が本体ゴム弾性体16によって弾性的に連結された構造とされている。第一の取付金具12が図示しない自動車のパワーユニット側に取り付けられる一方、第二の取付金具14が図示しない自動車のボデー側に取り付けられることにより、パワーユニットがボデーに対して防振支持されるようになっている。
なお、図1では、自動車に装着する前のエンジンマウント10の単体での状態が示されているが、本実施形態では、装着状態において、パワーユニットの分担支持荷重がマウント軸方向(図1中、上下)に入力される。従って、マウント装着状態下では、本体ゴム弾性体16の弾性変形に基づき第一の取付金具12と第二の取付金具14が軸方向で互いに接近する方向に変位する。また、かかる装着状態下、防振すべき主たる振動は、略マウント軸方向に入力されることとなる。以下の説明において、特に断りのない限り、上下方向は、マウント軸方向となる図1中の上下方向をいう。
より詳細には、第一の取付金具12は、本体ゴムインナ金具18とダイヤフラムインナ金具20を含んで構成されていると共に、第二の取付金具14は、本体ゴムアウタ筒金具22とダイヤフラムアウタ筒金具24を含んで構成されている。また、本体ゴム弾性体16に本体ゴムインナ金具18と本体ゴムアウタ筒金具22が加硫接着されて、第一の一体加硫成形品26が構成されていると共に、可撓性膜としてのダイヤフラム28に対してダイヤフラムインナ金具20とダイヤフラムアウタ筒金具24が加硫接着されて、第二の一体加硫成形品30が構成されている。
本体ゴムインナ金具18は、下方に向かって凸となる略円錐台形状を有している。また、本体ゴムインナ金具18の略中央部分には、軸方向(図1中、上下)に所定の深さで延びる螺子穴32が設けられている。
本体ゴムアウタ筒金具22は、大径の略円筒形状を有しており、下端部には径方向外方に広がるフランジ状部34が一体形成されていると共に、上端部には下方に行くに従って円錐状に径寸法が次第に小さくなるテーパ状部36が一体形成されている。それによって、本体ゴムアウタ筒金具22の外周面には、径方向外方に開口して周方向に延びる周溝38が形成されている。なお、周溝38は、周上の一箇所に本体ゴム弾性体16と一体形成された図示しない仕切ゴムが充填されることによって、その周上の一部が仕切ゴムで仕切られて、周方向に一周弱の長さで延びている。
さらに、本体ゴムアウタ筒金具22の上方に離隔して、本体ゴムインナ金具18が略同一中心軸上に配置されていることによって、本体ゴムインナ金具18におけるテーパ形状の外周面と本体ゴムアウタ筒金具22におけるテーパ状部36の内周面が互いに離隔して対向位置せしめられている。そして、これら本体ゴムインナ金具18と本体ゴムアウタ筒金具22の間に本体ゴム弾性体16が配設されている。
本体ゴム弾性体16は、全体として大径の略円錐台形状を有しており、その小径側端面には本体ゴムインナ金具18が差し込まれた状態で略同一中心軸上に配されて加硫接着されていると共に、その大径側端部外周面に対して本体ゴムアウタ筒金具22のテーパ状部36が重ね合わされて加硫接着されている。これにより、本体ゴム弾性体16が、本体ゴムインナ金具18と本体ゴムアウタ筒金具22を備えた第一の一体加硫成形品26として形成されている。また、本体ゴム弾性体16の大径側端面には、下方に開口するすり鉢形状の凹所40が形成されており、その結果、第一の取付金具12と第二の取付金具14の間に荷重が入力されて本体ゴム弾性体16が弾性変形せしめられた際に、本体ゴム弾性体16の引張応力が軽減されるようになっている。
さらに、本体ゴムアウタ筒金具22の内周面には、本体ゴム弾性体16と一体形成されたシールゴム層42が略全体に亘って被着形成されており、フランジ状部34の下面にまで延び出している。なお、本体ゴムアウタ筒金具22のテーパ状部36に本体ゴム弾性体16の大径側端部外周面が加硫接着されていることにより、本体ゴム弾性体16には、軸方向(図1中、上下)の圧縮荷重に対して安定した線形に近いばね特性が発揮されるようになっている。
ダイヤフラムインナ金具20は、小径の略円板形状を有している。また、ダイヤフラムインナ金具20の略中央には、挿通孔44が軸方向に貫設されている。更に、ダイヤフラムインナ金具20における挿通孔44を外れた位置には、上方に突出する取付板部46が一体形成されていると共に、その取付板部46の中央部分には、取付孔48が貫設されている。
さらに、ダイヤフラムインナ金具20の下方に離隔して、ダイヤフラムアウタ筒金具24が略同一中心軸上に配置されている。ダイヤフラムアウタ筒金具24は、薄肉の略大径円筒形状を有しており、その上方の開口部には、フランジ状部50が一体形成されている。フランジ状部50には、径方向一方向で対向位置せしめられた一対の取付ボルト52,52が上方に向かって突設されている。また、ダイヤフラムアウタ筒金具24の下方開口部には、径方向外方に向かって広がる円環形状の段差部54が一体形成されており、更に、段差部54の外周縁部には、下方に突出する略円環状のかしめ部56が一体形成されている。
ダイヤフラム28は、変形容易な薄肉のゴム弾性膜からなり、略円環形状を呈している。ダイヤフラム28の内周縁部が、ダイヤフラムインナ金具20の外周縁部に加硫接着されていると共に、ダイヤフラム28の外周縁部が、ダイヤフラムアウタ筒金具24の上方の開口縁部乃至はフランジ状部50の内周縁部に加硫接着されている。これによって、ダイヤフラム28が、ダイヤフラムインナ金具20とダイヤフラムアウタ筒金具24を備えた第二の一体加硫成形品30として形成されている。なお、ダイヤフラムアウタ筒金具24の内周面には、略全体に亘ってダイヤフラム28と一体形成されたシールゴム層58が被着形成されており、このシールゴム層58が、ダイヤフラムアウタ筒金具24の段差部54の下面にまで延び出して形成されている。
この第二の一体加硫成形品30が、第一の一体加硫成形品26に対して上方から被せられて、ダイヤフラムインナ金具20の下面と本体ゴムインナ金具18の上面が軸方向に重ね合わせられていると共に、ダイヤフラムインナ金具20の挿通孔44と本体ゴムインナ金具18の螺子穴32が相互に位置合わせされて、固定ボルト60が、挿通孔44を通して螺子穴32に螺着固定されている。また、本体ゴムアウタ筒金具22がダイヤフラムアウタ筒金具24に圧入されて、本体ゴムアウタ筒金具22のテーパ状部36の外周縁部(面)とダイヤフラムアウタ筒金具24の内周面が、径方向にシールゴム層58を介して密着状に重ね合わせられている。更に、本体ゴムアウタ筒金具22のフランジ状部34とダイヤフラムアウタ筒金具24の段差部54が、軸方向にシールゴム層58を介して密着状に重ね合わせられている。これにより、第一の取付金具12と第二の取付金具14が、それぞれ構成されて、マウントの中心軸を略同心状に囲むようにして配置されていると共に、第二の取付金具14が、筒状を呈しており、その軸方向一方(図1中、上)の開口部が、本体ゴム弾性体16やダイヤフラム28によって流体密に閉塞されている。
なお、図面上に明示されていないが、門形のストッパ金具が、本体ゴム弾性体16やダイヤフラム28の外方を跨ぐように配されて、その両端基端部が、それぞれダイヤフラムアウタ筒金具24のフランジ状部50に設けられた取付ボルト52,52に固定されている。このストッパ金具は、第一の取付金具12に固定された図示しないブラケットの外方に離隔位置せしめられ、該ブラケットに対する当接によって第一の取付金具12と第二の取付金具14のリバウンド方向の相対変位量を制限するようになっている。
第二の取付金具14の軸方向他方(図1中、下)の開口部には、加振部材としての加振板62が配されている。加振板62は、小径の略円板形状を有しており、金属材や合成樹脂材等の硬質材を用いて形成されている。また、加振板62の中央部分には、下方に延びる駆動軸64が一体形成されており、この駆動軸64の先端部分に雄ねじ部が形成されている。また、加振板62の外周縁部には、周方向の全周に亘って連続して延びる円筒形状の環状突出部65が、上方に向かって突設されている。更に、環状突出部65の径方向外方には、離隔して略同一中心軸上に支持金具66が配置されている。支持金具66は、大径の略円筒形状を呈しており、上下の端部に、径方向外方に拡がる略円環形状の上鍔状部68と下鍔状部70が、それぞれ一体形成されている。上鍔状部68の外径寸法が、下鍔状部70の外径寸法よりも大きくされている。
これら加振板62の環状突出部65と支持金具66の間には、連結ゴム弾性体としての支持ゴム弾性体72が配設されている。支持ゴム弾性体72は、略円環形状を有していると共に、弾性変形可能な所定の厚さ寸法のゴム膜からなり、その内周面が環状突出部65の外周面に加硫接着されていると共に、その外周面が支持金具66の内周面に加硫接着されている。即ち、支持ゴム弾性体72が、加振板62と支持金具66を備えた第三の一体加硫成形品74として形成されている。
支持金具66の外周面には、支持ゴム弾性体72と一体形成された環状のシールゴム76が被着形成されている。シールゴム76の外径寸法が、略全体に亘って支持金具66の下鍔状部70の外径寸法よりも僅かに大きくされている。また、シールゴム76の上端部が径方向外方に延びて上鍔状部68の下面に被着形成されている。更に、シールゴム76の下端部が下鍔状部70の下面に回されて被着形成されている。なお、シールゴム76の外周面には、必要に応じて1又は2以上のシールリップが一体形成される。また、加振板62の環状突出部65の上端部分には、支持ゴム弾性体72と一体形成された、円環形状の緩衝ゴム77が設けられている。
このような第三の一体加硫成形品74が、第二の取付金具14の下方開口部(かしめ部56)に嵌め込まれて、支持金具66の上鍔状部68が本体ゴムアウタ筒金具22のフランジ状部34にシールゴム層42を介して重ね合わされている。そして、ダイヤフラムアウタ筒金具24のかしめ部56にかしめ加工が施されていることによって、第三の一体加硫成形品74が第二の取付金具14に固定されている。これにより、第二の取付金具14の軸方向他方(図1中、下)の開口部が、加振板62および支持ゴム弾性体72を含んでなる第三の一体加硫成形品74で流体密に覆蓋されている。また、加振板62が、支持ゴム弾性体72を介して第二の取付金具14に弾性的に支持されている。
本体ゴム弾性体16と支持ゴム弾性体72の軸方向対向面間には、壁部の一部が本体ゴム弾性体16で構成されて、第一の取付金具12と第二の取付金具14の間への振動入力による本体ゴム弾性体16の弾性変形に基づいて圧力変動が惹起される主液室78が形成されている。主液室78には、非圧縮性流体が封入されている。
本体ゴムアウタ筒金具22がダイヤフラムアウタ筒金具24にシールゴム層58を介して流体密に固着されていることによって、本体ゴム弾性体16とダイヤフラム28の間には、壁部の一部がダイヤフラム28で構成されて、該ダイヤフラム28の弾性変形に基づいて容積変化が容易に許容される平衡室80が形成されている。平衡室80には、主液室78と同一の非圧縮性流体が封入されている。
また、本体ゴムアウタ筒金具22の周溝38がシールゴム層58を介してダイヤフラムアウタ筒金具24で流体密に覆蓋されていることによって、主液室78の径方向外方において周方向に所定の長さ(例えば一周弱の長さ)で延びるオリフィス通路82が形成されている。オリフィス通路82の一方の端部が本体ゴムアウタ筒金具22のテーパ状部36と本体ゴム弾性体16に貫設された図示しない連通孔を通じて平衡室80に接続されていると共に、オリフィス通路82の他方の端部が、本体ゴムアウタ筒金具22の周壁部に貫設された図示しない連通孔を通じて主液室78に接続されている。これにより、主液室78と平衡室80がオリフィス通路82を通じて相互に連通されている。
なお、主液室78や平衡室80に封入される非圧縮性流体としては、例えば水やアルキレングリコール,ポリアルキレングリコール,シリコーン油等が採用可能であり、特にオリフィス通路82を通じて流動せしめられる流体の共振作用等の流動作用に基づく防振効果を自動車用のエンジンマウント10に要求される振動周波数域で効率的に得るために、0.1Pa・s以下の低粘性流体が好適に採用される。また、特に限定されるものでないが、本実施形態では、オリフィス通路82を流動せしめられる流体の共振周波数が、該流体の共振作用に基づいてエンジンシェイク等に相当する10Hz前後の低周波数域の振動に対して有効な防振効果(高減衰効果)が発揮されるようにチューニングされている。オリフィス通路82のチューニングは、例えば、主液室78や平衡室80の各壁ばね剛性、即ちそれら流体室を単位容積だけ変化させるのに必要な圧力変化量に対応する本体ゴム弾性体16やダイヤフラム28の各弾性変形量に基づく特性値を考慮しつつ、オリフィス通路82の通路長さと通路断面積を調節することによって行うことが可能であり、一般に、オリフィス通路82を通じて伝達される圧力変動の位相が変化して略共振状態となる周波数を、当該オリフィス通路82のチューニング周波数として把握することが出来る。
加振板62を挟んで主液室78と反対側には、電磁式アクチュエータとしての電磁式加振器84が配設されている。電磁式加振器84は、略カップ形状のハウジング86内にコイル88が収容状態で固定的に組み付けられていると共に、コイル88の周りに、それぞれ環状の強磁性材からなる上下のヨーク部材90, 92が組み付けられて磁路が形成されている。また、上ヨーク部材90の中央には、軸方向に延びる中心孔としての筒状内周面94が形成されていると共に、該筒状内周面94には、ガイドスリーブ96が弾性的に位置決めされて装着されている。そして、アーマチャとしての強磁性材からなる滑動子98が、ガイドスリーブ96内を軸方向に滑動可能に組み付けられている。
滑動子98は、全体として略円筒形状を有しており、外周面においてガイドスリーブ96に摺動可能とされて、上下のヨーク部材90,92間に形成された磁気ギャップの領域に配設されており、コイル88に通電することにより磁力が及ぼされて、ガイドスリーブ96で案内されつつ、軸方向に駆動されるようになっている。また、滑動子98の内周面には、環状の係合突部100が径方向内方に向かって突設されている。
略有底円筒形状を呈するハウジング86は、その底部に下ヨーク部材92を固定的に収容配置していると共に、その開口部分が上ヨーク部材90の上端部よりも上方に所定長さで延びている。ハウジング86の開口部分には、フランジ状部102が一体的に形成されている。また、ハウジング86の径方向外方には、ベースブラケット104が配設されている。ベースブラケット104は、その内径寸法がハウジング86の外径寸法よりも大きな大径の略円筒形状とされていると共に、軸方向中間部分から下方にかけて次第に径寸法が大きくなる逆テーパ状部を備えている。ベースブラケット104の軸方向両端部には、上下のフランジ状部106,108が一体形成されている。
ハウジング86が、ダイヤフラムアウタ筒金具24のかしめ部56に嵌め込まれて、ハウジング86のフランジ状部102が、支持金具66の上鍔状部68に被着されたシールゴム76を介して上鍔状部68に重ね合わせられていると共に、支持金具66に固着された環状のシールゴム76がハウジング86に圧入されている。
支持金具66の下鍔状部70が、その下端面に被着されたシールゴム76を介して上ヨーク部材90の上端部に密着状に重ね合わされている。それによって、ハウジング86の内側における支持ゴム弾性体72と上ヨーク部材90の間には、外部空間に対して流体密に閉塞された空気室としての密閉室110が形成されている。
ベースブラケット104がハウジング86に外挿されていると共に、ベースブラケット104の上フランジ状部106が、ダイヤフラムアウタ筒金具24のかしめ部56に嵌め込まれて、ハウジング86のフランジ状部102に重ね合わせられている。そして、かしめ部56にかしめ加工が施されていることによって、ハウジング86およびベースブラケット104が、滑動子98の中心軸がマウント中心軸(第一及び第二の取付金具12,14の中心軸)に略一致するようにして第二の取付金具14に固定されている。これにより、電磁式加振器84が、第二の取付金具14に固定されている。
加振板62の駆動軸64が、電磁式加振器84の中心軸(滑動子98の中心軸)上で上方から差し入れられて、滑動子98の係合突部100に挿通されている。この駆動軸64にコイルスプリング112が外挿されて、加振板62と係合突部100の対向面間に跨って配設されていると共に、駆動軸64の先端の雄ねじ部に対して位置決めナット114が螺着されている。そして、位置決めナット114が、駆動軸64にねじ込まれて、係合突部100を介して加振板62との間でコイルスプリング112を圧縮せしめていることによって、滑動子98が、駆動軸64に対して軸方向に位置決め固定されている。また、コイルスプリング112の両端には、カラー部材116が冠着されており、コイルスプリング112と他部材との擦れによる摩擦を軽減している。而して、駆動軸64と滑動子98が、コイルスプリング112への付勢力で軸方向において連結されていることによって、コイル88への通電で滑動子98に作用せしめられる駆動力が、駆動軸64を介して加振板62に及ぼされるようになっている。
ハウジング86の底壁中央には、開口部118が貫設されて、滑動子98の中心孔に導かれている。開口部118を通じて滑動子98の中心孔に六角レンチ等の工具を差し入れて、位置決めナット114乃至は位置決めナット114の中央に締め込まれたロックボルト120を操作することにより、滑動子98の駆動軸64に対する位置を外部から調節することが出来るようになっている。要するに、位置決めナット114の駆動軸64へのねじ込み量を調節することによって、第二の取付金具14に対して支持ゴム弾性体72で弾性的に位置決め支持された加振板62に対して滑動子98の取り付け位置を変更設定することが出来るのであり、それによって、滑動子98のヨーク部材90,92に対する磁力作用対向面間の距離を調節することが出来るようになっている。
なお、位置決めナット114の外周縁部と滑動子98の対向面間には、僅かな間隙が形成されており、滑動子98が、駆動軸64に対して軸直角方向の滑り変位が許容される状態で位置決めナット114と重ね合わされて当接状態に保持されている。これにより、各部材の製造上の寸法誤差や組み付け時の位置決め誤差等に起因する駆動軸64と滑動子98との相対的な位置ずれを有利に吸収することが出来て、滑動子98をコイル88に対して軸直角方向にも安定して位置決めすることが出来る。また、電磁式加振器84の作動時における一時的な軸ずれも有利に吸収されることとなって、安定した作動特性を得ることが出来るようになっている。
位置決めナット114やロックボルト120の先端部分が収容配置されている下ヨーク部材92の中心孔122の開口部には、周方向に連続して延びる複数条の溝部が軸方向に連設されてなる取付口124が設けられており、この取付口124に対して蓋部材126が配設されている。蓋部材126は、硬質の表面にゴム層128が被着形成された略平板形状とされて、取付口124に嵌め入れられていると共に、取付口124の端部に弾性を利用して係合された略平面視C字状の板ばね130に支持されることによって、取付口124に着脱可能に取り付けられている。これにより、必要に応じて、取付口124から蓋部材126を取り外して、前述の如き位置決めナット114の駆動軸64へのねじ込み量を調節することが出来るようになっていると共に、取付口124に蓋部材126が取り付けられていることで、下ヨーク部材92の中心孔122が、ゴム層128を介した蓋部材126で流体密に覆蓋されている。また、ゴム層128が加振板62の駆動軸64の先端面に対して軸方向に所定距離を隔てて対向位置せしめられていることによって、駆動軸64が蓋部材126に当接する際に、駆動軸64と蓋部材126の間に設けられたゴム層128の弾性変形作用に基づいて、当接に起因する打音が軽減されるようになっている。
加振板62や支持ゴム弾性体72を含んでなる第三の一体加硫成形品74の上方には、隔壁部材132が配設されている。隔壁部材132は、図2にも示されているように、金属材や合成樹脂材等の硬質材を用いて形成されていると共に、薄肉の円板形状を呈した部材にあって、その径方向中間部分に下方から上方に向かって次第に径寸法が小さくなるテーパ状部が設けられていることによって、全体として円形の略ハット形状を呈している。
隔壁部材132のテーパ状部の径方向内側における円板形状の中央部分には、円形状の透孔134が、該中央部分の略全体に亘って広がるようにして板厚方向(図1中、上下)に貫設されている。透孔134には、弾性変位部材としてのゴム弾性膜136が設けられている。
ゴム弾性膜136は、弾性変形可能な円板形状のゴム弾性材からなり、その外周縁部が透孔134の内周縁部に固着されていることによって、透孔134を覆蓋するようにして隔壁部材132に固定されている。本実施形態では、ゴム弾性膜136の透孔134への固着が、ゴム弾性膜136と隔壁部材132の一体加硫成形に伴いゴム弾性膜136が隔壁部材132に加硫接着されていることにより実現されているが、例えば隔壁部材132と別体形成されたゴム弾性膜136の外周面に嵌着溝を設けて、嵌着溝に透孔134の内周縁部を嵌め込むことにより実現されるようにしても良い。
また、ゴム弾性膜136の外周部分に上下に開口する環状の肉抜き溝138,138が設けられていることで、当該部分の厚さ寸法が小さくされてばね剛性が低くされている。これにより、ゴム弾性膜136の外周部分の応力集中が軽減されていることに加えて、ゴム弾性膜136の肉抜き溝138,138の径方向内側に位置する中央部分の透孔134内における変形乃至は変位の許容度が、大きく確保されている。
さらに、ゴム弾性膜136の中央部分には、通孔140の複数が貫設されている。本実施形態では、通孔140がゴム弾性膜136の厚さ方向(図1中、上下)に略一定の円形断面で貫通していると共に、8つの通孔140が、ゴム弾性膜136の中央と肉抜き溝138の間の径方向中間部分において、周方向に略等間隔に配置されている。
このような隔壁部材132の外周縁部が、第三の一体加硫成形品74における支持金具66の上鍔状部68に重ね合わせられて、上鍔状部68と本体ゴムアウタ筒金具22の下端部乃至はフランジ状部34との間でシールゴム層42を介して挟持されていることにより、隔壁部材132が第二の取付金具14に固定的に支持されている。また、加振板62の環状突出部65の先端部分と隔壁部材132の透孔134の周縁部乃至はゴム弾性膜136の外周縁部が、環状突出部65に被着形成された緩衝ゴム77を介して軸方向に対向位置せしめられている。緩衝ゴム77とゴム弾性膜136乃至は隔壁部材132の当接状態は、要求される防振特性や製作性等に応じて設定変更されるものであって、特に限定されるものでなく、それらが離隔していても良いし、或いは緩衝ゴム77が、ゴム弾性膜136乃至は隔壁部材132に当接して、ゴム弾性膜136乃至は隔壁部材132と環状突出部65の間で軸方向に圧縮変形していても良い。
これにより、隔壁部材132が、本体ゴム弾性体16と支持ゴム弾性体72の対向面間において軸直角方向(図1中、左右)に広がるように配設されており、主液室78を二分せしめている。隔壁部材132を挟んだ一方(図1中、上)の側である本体ゴム弾性体16側には、壁部の一部が本体ゴム弾性体16で構成された受圧室142が形成されていると共に、隔壁部材132を挟んだ他方(図1中、下)の側である支持ゴム弾性体72側には、壁部の一部が支持ゴム弾性体72および加振板62で構成された加振室144が形成されている。受圧室142と加振室144は、ゴム弾性膜136に形成された複数の通孔140を通じて相互に連通せしめられている。
特に本実施形態では、通孔140を通じて流動せしめられる流体の共振周波数が、例えば20〜40Hzのアイドリング振動等の高周波小振幅振動の周波成分よりも低周波数域にチューニングされている。かかるチューニングは、例えば、オリフィス通路82のチューニングと同様に、主液室78や平衡室80の各壁ばね剛性等を考慮しつつ、通孔140の長さと断面積を調節することによって行うことが可能である。
上述の説明からも明らかなように、本実施形態では、受圧室142と加振室144を仕切る仕切部材が、隔壁部材132やゴム弾性膜136を含んで構成されていると共に、それら両室142,144を相互に連通するフィルタオリフィスが、通孔140の複数を含んで構成されている。
このような構造とされた自動車用エンジンマウント10においては、第一の取付金具12が、取付板部46の取付孔48に挿通される図示しない固定ボルトによってパワーユニット側の取付部材に固定されると共に、第二の取付金具14に固定されたベースブラケット104の下フランジ状部108が、図示しない固定ボルトを介して自動車ボデー側の取付部材に固定されることにより、パワーユニットと自動車ボデーの間に装着されて、パワーユニットをボデーに対して防振支持せしめるようになっている。そして、かかる装着状態下、第一の取付金具12と第二の取付金具14の間に振動が入力されると、本体ゴム弾性体16の弾性変形によって主液室78と平衡室80の間に惹起される圧力差に基づいてオリフィス通路82を通じて流体流動が生ぜしめられることとなり、該流体の共振作用等の流動作用に基づいて受動的な防振効果が発揮され得る。
また、例えば、パワーユニットのエンジン点火信号を参照信号とすると共に、車両ボデー等の防振すべき部材の振動検出信号をエラー信号として適応制御乃至はフィードバック制御を行うこと等によって、コイル88への通電を制御し、駆動軸64を軸方向に加振駆動せしめる。その結果、例えばエンジンシェイク等の低周波振動が入力された際に、受圧室142および加振室144からなる主液室78と平衡室80の間に圧力変動が有効に惹起せしめられるように加振板62を駆動制御せしめることによって、オリフィス通路82の流体流動量が効率良く確保されて、オリフィス通路82を通じての流体の共振作用等の流動作用に基づく防振効果が一層有利に発揮され得るのである。
また、例えばアイドリング振動等の高周波小振幅振動が入力された際に、該振動に対応した駆動力を加振板62に作用せしめて、加振室144に生ぜしめられる圧力変動を通孔140を通じて受圧室142に及ぼすことによって、主液室78の内圧が制御されることとなり、当該高周波振動に対して積極的乃至は能動的な防振効果が有効に発揮され得る。
特に、通孔140を通じて流動せしめられる流体の共振周波数が、アイドリング振動等の周波数域よりも低周波数域にチューニングされていることで、加振室144において電磁式加振器84を用いた加振板62の加振駆動等により生じる圧力変動の高周波成分が、通孔140のフィルタ作用に基づき、受圧室142に及ぼされないようになっている。即ち、加振室144に生ぜしめられる圧力変動が、その高次成分を除いた状態で受圧室142に作用せしめられることにより、防振すべきアイドリング振動の周波数や波形に高精度に対応した圧力変動が受圧室142に及ぼされることとなる。それ故、目的とする防振効果が安定して得られる。
ところで、第一の取付金具12と第二の取付金具14の間にアイドリング振動等の周波数域よりも更に高周波数域の例えば、80〜100Hz前後の走行こもり音等の高周波微振幅振動が入力されると、通孔140を通じての流体の流動抵抗が大きくなって、通孔140が実質的に閉塞状態となり、受圧室142の高動ばね化が問題となる可能性がある。
そこにおいて、受圧室142と加振室144を仕切る仕切部材の一部がゴム弾性膜136で構成されているため、通孔140が閉塞した状態で、受圧室142と加振室144の間に相対的な圧力差が生じると、その圧力差に基づいてゴム弾性膜136が弾性変形する。即ち、ゴム弾性膜136の変形乃至は変位に基づき受圧室142の圧力変動が吸収される。
特に本実施形態では、圧力変動を吸収する弾性変位部材がゴム弾性膜136で構成されていることによって、ゴム弾性膜136の弾性変形作用を利用して、微振幅振動を効率良く吸収することが出来る。また、ゴム弾性膜136の固有振動数を問題となる高周波数域の振動にチューニングすることも可能であり、それによって、ゴム弾性膜136の共振現象を利用して、圧力吸収効果をより一層向上させることも可能となる。
さらに、本実施形態では、ゴム弾性膜136の中央のまわりに複数の通孔140が設けられて、それらが周方向に略等間隔に設けられている。加えて、通孔140が加振板62の上方において加振板62の外周縁部よりも内側に位置せしめられていると共に、ゴム弾性膜136と加振板62が同心軸上に位置せしめられていることによって、加振板62の加振駆動に伴う圧力作用がゴム弾性膜136の中央部分に集められやすくなっている。その結果、ゴム弾性膜136が、その中央部分を中心として、板厚方向に大きく変位乃至は変形しやすくなり、安定した液圧吸収効果が得られる。
それ故、本実施形態に係る自動車用エンジンマウント10においては、能動的な防振性能に関しては、ゴム弾性膜136の通孔140による問題となる加振室144の制御圧力の除去作用が有効に発揮され得ると共に、通孔140のチューニング周波数よりも高周波数域の振動に対しても、ゴム弾性膜136の弾性変形によって、受圧室142の圧力変動量の増大に起因する防振性能の著しい低下が回避されて、優れた防振性能が発揮され得るのである。
また、本実施形態では、緩衝ゴム77が被着された環状突出部65と隔壁部材132の透孔134の周縁部乃至はゴム弾性膜136の外周縁部が軸方向に対向位置せしめられている。これにより、軸方向の荷重が入力されて、環状突出部65と隔壁部材132が互いに当接する際に、緩衝ゴム77乃至はゴム弾性膜136の外周縁部を介して当接することによる緩衝的な制限作用に基づいて、当接に起因する衝撃や異音の発生が抑えられることから、耐久性能や静粛性が有利に向上され得る。
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、これらはあくまでも例示であり、これら実施形態における具体的な記載によって、本発明は、何等限定されるものでなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様で実施可能であり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
例えば、ゴム弾性膜136、透孔134、通孔140における形状や大きさ、構造、位置、数等の形態は、例示の如き形態に限定されるものでない。
また、受圧室142および加振室144を含んでなる主液室78や平衡室80、オリフィス通路82等の形状や大きさ、構造、数等も、例示の如きものに限定されるものでない。
前記実施形態では、本体ゴム弾性体16を挟んで主液室78と平衡室80が形成されていると共に、エンジンシェイク等の低周波数域にチューニングされたオリフィス通路82を通じて、主液室78と平衡室80が相互に連通せしめられていたが、例えばエンジンシェイク等の低周波振動を防振せしめる必要がない場合やエンジンシェイク等が他のオリフィス通路のチューニングで対応される場合等に、オリフィス通路82や平衡室80は必須の構成要件でない。
また、オリフィス通路82や通孔140の具体的構造や寸法等は何等限定されるものでなく、要求される防振特性に応じてチューニングされる。
また、例えば、採用される電磁式加振器84には、例示の如きものに限定されるものでなく、具体的には、例えば固定子側に永久磁石を配設すると共に、可動子側を強磁性材からなる可動部材で構成することにより、コイルへの通電によって生ぜしめられる磁界によって固定子側のN極とS極を交互に増減させて、可動部材を往復駆動せしめるようにした構造のもの(原理は、例えば特開2003−339145号公報等に開示されて公知のものであるから、ここでは詳細な説明を省略する)の他、特開2000−213586号公報や特開2001−1765号公報等に開示された従来から公知の各種の電磁式アクチュエータが、何れも採用可能である。
また、本発明は、例示の如きエンジンマウントの他、能動的な防振装置に対して広く適用可能であり、例えばFF型自動車用エンジンマウント等として採用されている円筒型のエンジンマウントにおいても、流体封入式能動型防振装置として実現する場合に適用可能であり、或いは例示の如きパワーユニットとボデー間等の二つの部材間に介装される防振連結体乃至は防振支持体の他、制振すべき振動対象物に対して取り付けられる制振器としても、同様に利用することが可能である。具体的には、かかる流体封入式の能動型制振器は、例えば前記実施形態に示されたエンジンマウントを、その第二の取付金具をブラケットにより制振対象物に対して固定する一方、第一の取付金具に対して、その取付板部に適当な質量のマス部材を装着することにより、能動的な制振装置を実現することが出来る。
加えて、本発明は、自動車用のボデーマウントやメンバマウント等、或いは自動車以外の各種装置におけるマウントや制振器などの防振装置に対して、同様に適用可能である。
10:自動車用エンジンマウント、12:第一の取付金具、14:第二の取付金具、16:本体ゴム弾性体、62:加振板、84:電磁式加振器、132:仕切部材、136:ゴム弾性膜、140:通孔、142:受圧室、144:加振室