以下、図面を参照しつつ、本発明の実施例について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返さない。
図1を参照して、本発明の実施例に係る制御装置を搭載した車両について説明する。この車両は、FF(Front engine Front drive)車両である。なお、FF以外の車両であってもよい。
車両は、エンジン1000と、自動変速機2000と、自動変速機2000の一部を構成するプラネタリギヤユニット3000と、自動変速機2000の一部を構成する油圧回路4000と、ディファレンシャルギヤ5000と、ドライブシャフト6000と、車輪7000と、ECU(Electronic Control Unit)8000とを含む。本発明に係る自動変速機の制御装置は、ECU8000により実現される。ECU8000は、メモリ8300を含む。
エンジン1000は、インジェクタ(図示せず)から噴射された燃料と空気との混合気を、シリンダの燃焼室内で燃焼させる内燃機関である。燃焼によりシリンダ内のピストンが押し下げられて、クランクシャフトが回転させられる。
自動変速機2000は、トルクコンバータ3200を介してエンジン1000に連結される。自動変速機2000は、車両の走行状態に応じた変速段を自動的に形成する。自動変速機2000は、形成された変速段に対応する所定の変速比によって、クランクシャフトの回転数を変速する。なお、自動変速機2000は、有段式の自動変速機であってもよいし、変速比を連続的に変更する無段式の自動変速機であってもよい。
自動変速機2000の出力ギヤは、ディファレンシャルギヤ5000と噛合っている。ディファレンシャルギヤ5000にはドライブシャフト6000がスプライン嵌合などによって連結される。ドライブシャフト6000を介して、駆動輪である左右の車輪7000に動力が伝達される。
ECU8000には、車輪速センサ8002と、シフトレバー8004のポジションスイッチ8006と、アクセルペダル8008のアクセルポジションセンサ8010と、ブレーキペダル8012のストロークセンサ8014と、電子スロットル8016のスロットルポジションセンサ8018と、エンジン回転数センサ8020と、入力軸回転数センサ8022と、出力軸回転数センサ8024とがハーネスなどを介在させて接続されている。
車輪速センサ8002は、車輪7000の回転数を検出し、検出結果を示す信号をECU8000に送信する。ECU8000は、受信した車輪7000の回転数に基づいて車両の速度を算出する。
シフトレバー8004の位置は、ポジションスイッチ8006により検出され、検出結果を示す信号がECU8000に送信される。シフトレバー8004の位置に対応して、自動変速機2000の変速段が自動で形成される。また、運転者の操作に応じて、運転者が任意の変速段を選択できるマニュアルシフトモードを選択できるように構成してもよい。
アクセルポジションセンサ8010は、アクセルペダル8008の踏み込み量を検出し、検出結果を示す信号をECU8000に送信する。ストロークセンサ8014は、ブレーキペダル8012の踏み込み量を検出し、検出結果を示す信号をECU8000に送信する。
スロットルポジションセンサ8018は、アクチュエータにより開度が調整される電子スロットル8016のスロットルバルブの開度(以下、スロットル開度とも記載する)を検出し、検出結果を示す信号をECU8000に送信する。電子スロットル8016により、エンジン1000に吸入される空気量(エンジン1000の出力)が調整される。
エンジン回転数センサ8020は、エンジン1000の出力軸(クランクシャフト)の回転数を検出し、検出結果を示す信号をECU8000に送信する。入力軸回転数センサ8022は、自動変速機2000の入力軸回転数(以下、タービン回転数ともいう)NTを検出し、検出結果を示す信号をECU8000に送信する。出力軸回転数センサ8024は、自動変速機2000の出力軸回転数NOを検出し、検出結果を示す信号をECU8000に送信する。なお、エンジン1000の出力軸は、トルクコンバータ3200の入力軸に接続され、トルクコンバータ3200の出力軸は、自動変速機2000の入力軸に接続されるため、エンジン1000の出力軸の回転数は、トルクコンバータ3200の入力軸の回転数と同じ回転数となる。また、自動変速機2000の入力軸回転数は、トルクコンバータ3200の出力軸の回転数と同じ回転数である。
ECU8000は、車輪速センサ8002、ポジションスイッチ8006、アクセルポジションセンサ8010、ストロークセンサ8014、スロットルポジションセンサ8018、エンジン回転数センサ8020、入力軸回転数センサ8022、出力軸回転数センサ8024などから送られてきた信号、ROM(Read Only Memory)等を含むメモリ8300に記憶されたマップおよびプログラムに基づいて、車両が所望の走行状態となるように、機器類を制御する。
本実施例において、ECU8000は、シフトレバー8004がD(ドライブ)ポジションに位置することにより、自動変速機2000のシフトレンジにD(ドライブ)レンジが選択された場合、1速〜6速段のうちのいずれかの変速段が形成されるように、自動変速機2000を制御する。1速〜6速段のうちのいずれかの変速段が形成されることにより、自動変速機2000は車輪7000に駆動力を伝達し得る。
シフトレバー8004がN(ニュートラル)ポジションであることにより、自動変速機2000のシフトレンジにN(ニュートラル)レンジが選択された場合、ニュートラル状態(動力伝達遮断状態)になるように、自動変速機2000が制御される。
図2に示すように、エンジン1000には、吸気システム152と、排気システム154とが設けられる。
エンジン1000は、シリンダブロック124と、シリンダブロック124に気筒数に対応した数だけ形成される気筒162と、気筒162内を摺動可能に設けられるピストン128と、一方端がピストン128に接続されるピストンロッド122と、ピストンロッド122の他方端に接続されるクランクシャフト130と、クランクシャフト130を回転自在に支持するクランクケース132と、エンジン1000の回転数(以下、エンジン回転数と記載する)を検出するエンジン回転数センサ8020と、吸気システム152から流通する空気を気筒162内に導入する吸気ポート158と、吸気ポート158と気筒162との接続部に設けられる吸気バルブ172と、エンジン1000に対して燃料を供給する燃料供給装置126と、気筒162から排出される排気ガスを排気システム154に流通する排気ポート160と、排気ポート160と気筒162との接続部に設けられる排気バルブ174と、気筒162の頂部に設けられる点火プラグ176とを含む。
クランクシャフト130は、各気筒のピストン128に接続されるピストンロッド122の他方端のそれぞれにクランク機構を介在して接続される。各気筒内の燃焼により作用するピストン128への力はクランク機構によりクランクシャフト130の回転方向の力に変換される。
吸気バルブ172は、クランクシャフト130の回転に連動して作動し、吸気ポート158と気筒162とを遮断したり連通したりする。排気バルブ174は、クランクシャフト130の回転に連動して作動し、排気ポート160と気筒162とを遮断したり連通したりする。
水温センサ106は、エンジン1000の内部を流通する冷却水の温度(以下、冷却水温Twと記載する)を検出する。水温センサ106は、検出された冷却水温Twを示す信号をECU8000に送信する。
燃料供給装置126は、ECU8000から受信する制御信号に基づいて気筒162内に直接燃料を噴射する。なお、エンジン1000は、燃料を気筒内に直接噴射する燃料供給装置が設けられたエンジンであってもよいし、燃料を吸気通路内に噴射(ポート噴射)する燃料供給装置が設けられたエンジンであってもよい。
あるいは、エンジン1000は、たとえば、気筒162内に燃料を直接噴射する燃料供給装置126に加えて、吸気ポート158に燃料を噴射するポートインジェクタを搭載するエンジンであってもよい。また、エンジン1000は、ガソリンおよびアルコールのうちの少なくともいずれか一方を含む燃料により作動するエンジンであればよい。
また、ECU8000は、車両の走行状態についての予め定められたフューエルカット制御の実行条件を満足するとフューエルカット制御を実行する。すなわち、ECU8000は、フューエルカット制御の実行条件が成立すると、燃料の供給を停止するように燃料供給装置126を制御する。
フューエルカット制御の実行条件は、車両が減速中であって、かつ、エンジン1000の回転数が予め定められた回転数以上であるという条件を含む。また、フューエルカット制御の実行条件は、車両の速度についての条件と、冷却水温についての条件とをさらに含むようにしてもよい。
なお、本実施例においては、さらに、フューエルカット制御の実行条件として、上記した条件のほかに、自動変速機2000の制御システムからの要求があるという条件を含む。
具体的には、フューエルカット制御の実行条件は、自動変速機2000からエンジン1000に対して駆動部品の保護を目的としたトルクダウンが要求されるという条件と、自動変速機2000においてアップシフト変速が開始されるという条件とのうちの少なくともいずれか一方の条件を含む。トルクダウンの要求あるいはアップシフトの変速の開始時にフューエルカット制御を実行することにより、エンジン1000の回転数を速やかに低下させることができ、駆動部品の保護あるいは変速時間の短縮が図られる。
駆動部品とは、エンジン1000から車輪7000との間の動力伝達経路上の部品であって、自動変速機2000のほかドライブシャフト6000、ディファレンシャルギヤ5000あるいはプロペラシャフト等を含む。
また、ECU8000は、フューエルカット制御を実行した後に、フューエルカット制御からの復帰条件が成立した場合に、フューエルカット制御から復帰して、燃料供給装置126による燃料の供給を再開する。復帰条件は、上述したフューエルカット制御の実行条件が不成立になるという条件である。
吸気システム152は、吸気ポート158に接続される吸気管110と、吸気管110の途中に設けられるエアクリーナ118と、吸気管110の途中であって、エアクリーナ118と吸気ポート158との間の位置に設けられるスロットルバルブ112と、スロットルバルブ112を作動するスロットルモータ114と、スロットルバルブ112の開度を検出するスロットルポジションセンサ8018と、吸気管110の途中であって、エアクリーナ118およびスロットルバルブ112の間の位置に設けられる吸気温度センサ104と、吸気管110の途中であって、スロットルバルブ112および吸気ポート158の間に設けられるサージタンク148と、吸入空気量を検出するエアフローメータ190とを含む。吸気ポート158と吸気管110とにより「吸気通路」が形成される。
また、吸気温度センサ104は、吸気温度を検出する。吸気温度センサ104は、検出した吸気温度を示す信号をECU8000に送信する。エアフローメータ190は、吸入空気量を検出する。エアフローメータ190は、検出した吸入空気量を示す信号をECU8000に送信する。なお、ECU8000は、吸気管110内の負圧の度合を検出するバキュームセンサから受信する信号に基づいて吸入空気量を推定するようにしてもよい。
排気システム154は、排気ポート160に接続される第1の排気管108と、第1の排気管108の途中に設けられる三元触媒120と、第1の排気管108の途中であって、三元触媒120よりも排気ポート160側の位置に設けられる空燃比センサ200と、第1の排気管108に連結される第2の排気管164と、第1の排気管108の途中であって、三元触媒120よりも第2の排気管164側の位置に設けられる酸素センサ102と、第2の排気管164の途中に設けられる三元触媒166とを含む。排気ポート160と第1の排気管108と第2の排気管164とにより「排気通路」が形成される。
空燃比センサ200は、三元触媒120よりも排気ポート160側の排気ガス中の酸素濃度を検出する。空燃比センサ200は、検出された排気ガス中の酸素濃度を示す信号をECU8000に送信する。具体的には、空燃比センサ200は、酸素濃度に対して線形に変化する出力電圧信号をECU8000に出力する。ECU8000は、空燃比センサ200から受信した出力電圧信号に基づいて空燃比を算出する。
酸素センサ102は、三元触媒120よりも第2の排気管164側の排気ガス中の酸素濃度を検出する。酸素センサ102は、検出された排気ガス中の酸素濃度を示す信号をECU8000に送信する。具体的には、酸素センサ102は、酸素濃度に対して理論空燃比の前後で出力電圧の程度を大きく変化する出力電圧信号をECU8000に出力する。ECU8000は、酸素センサ102から受信した出力電圧信号に基づいて空燃比が理論空燃比に対してリッチ側の空燃比であるかリーン側の空燃比であるかを判定する。なお、酸素センサ102に代えて空燃比センサを用いるようにしてもよい。
エンジン1000が作動すると吸気管110に空気が吸入される。吸気管110に吸入された空気は、エアクリーナ118を経由して吸気ポート158に向けて流通する。吸気ポート158に流通する空気の流量は、スロットルバルブ112の開度に応じて制限される。
吸気ポート158から気筒162内に流通した空気は、燃料供給装置126から噴射された燃料と混合される。吸気バルブ172および排気バルブ174が閉じられた上で、燃料と空気とが混合された混合気は、ピストン128が上死点に到達する前後で点火プラグ176が混合気を点火することにより燃焼する。燃焼が生じると燃焼圧によりピストン128が下死点側へと押し下げられる。ピストン128の上死点と下死点との間における直線運動は、クランク機構によりクランクシャフト130の回転運動に変換され、エンジン1000において動力が生じる。
気筒162内の混合気の燃焼により生じる排気ガスは、排気ポート160から第1の排気管108に流通して、三元触媒120に流入する。流入した排気ガス中に含まれる窒素酸化物(NOx)は、三元触媒120において、還元される。また、流入した排気ガス中に含まれるHCまたはCOは、三元触媒120において酸化される。なお、本実施例において、三元触媒120は、NOxの還元とHCおよびCOの酸化とを行なう触媒であるとして説明するが、その他の排出物を還元または酸化により浄化するものであってもよい。
このような構成を有する車両において、フューエルカット制御の実行時においては、スロットルバルブ112を閉じる制御を行なうようにすると、吸気された空気が燃焼せずに排気通路に流れることを抑制して、三元触媒120が高温状態かつリーン状態にならないようにすることができる。
しかしながら、このような制御を行なうとフューエルカット制御からの復帰時にエンジン1000の出力上昇の応答性が悪化する場合がある。
これは、フューエルカット制御から復帰する条件が成立したときに閉じたスロットルバルブ112の開度を通常のスロットルバルブ112の開度になるまで増加させる制御が行なわれるため、エンジン1000の出力上昇に遅れが生じるためである。
そこで、本実施の形態においては、ECU8000が、フューエルカット制御が実行されているときに、吸気管110から気筒162に供給される空気の流量が、三元触媒120の温度に対応した流量になるようにスロットルバルブ112の開度を制御し、スロットルバルブ112の開度の制御とともに、フューエルカット制御を実行する点に特徴を有する。
なお、本実施の形態においては、スロットルバルブ112の開度をスロットルモータを用いて変更して吸気管110から気筒162に供給される流量を調整するものとして説明するが、特にこれに限定されるものではなく、たとえば、吸気バルブのリフト量をアクチュエータ等を用いて変更して吸気管110から気筒162に供給される流量を調整するものであってもよい。
図3に、本実施の形態に係る車両の制御装置であるECU8000の機能ブロック図を示す。ECU8000は、自動変速機制御部8100と、エンジン制御部8200とを含む。
自動変速機制御部8100は、スロットル開度要求部8102と、点火時期要求部8104と、フューエルカット要求部8106とを含む。
スロットル開度要求部8102は、自動変速機2000からエンジン1000に対するスロットルバルブ112の開度の要求量を算出して、算出されたスロットルバルブ112の開度の要求量をエンジン制御部8200に送る。
スロットル開度要求部8102は、自動変速機2000の変速状態に応じてスロットルバルブ112の開度の要求量を算出する。また、スロットル開度要求部8102は、フューエルカット要求部8106によってフューエルカット制御の実行が要求される場合には、後述する触媒温度取得部8210によって取得された三元触媒120の温度と図4に示すマップとに基づいてスロットルバルブ112の開度を算出する。
たとえば、スロットル開度要求部8102は、フューエルカット要求部8106によってエンジン1000に対してフューエルカット制御の実行が要求される場合であって、かつ、触媒温度取得部8210によって取得された三元触媒120の温度が温度Taである場合は、図4に示すマップから開度TH(0)を算出する。
一方、スロットル開度要求部8102は、触媒温度取得部8210によって取得された三元触媒120の温度が温度Taよりも大きい温度Tbである場合は、図4に示すマップから開とTH(0)よりも小さい開度TH(1)を算出する。
なお、図4に示すマップの縦軸は、三元触媒120の温度に対応するスロットルバルブ112の開度を示し、横軸は、三元触媒120の温度を示す。図4に示すマップは、三元触媒120の温度が温度Taである場合に設定されるスロットルバルブ112の開度TH(0)が、三元触媒120の温度が温度Taよりも大きい温度Tbである場合に設定されるスロットルバルブ112の開度TH(1)よりも大きくなるように予め設定され、メモリ8300に記憶される。なお、図4に示すマップにおいて、三元触媒120の温度とスロットルバルブ112の開度との関係が線形の関係を有しているが特に線形に限定されるものではなく、非線形の関係を有していてもよい。
また、スロットル開度要求部8102は、三元触媒120の温度に加えてエンジン回転数NEに基づいてスロットルバルブ112の開度を算出するようにしてもよい。たとえば、スロットル開度要求部8102は、図4に示すマップから三元触媒120の温度に対応するスロットルバルブ112の開度を算出し、算出された開度に対してエンジン回転数に基づく補正量を加算することによりスロットルバルブ112の開度を算出するようにしてもよい。たとえば、エンジン回転数NEが第1の回転数であるときの補正量は、第1の回転数よりも大きい第2の回転数であるときの補正量よりも大きくなるようにしてもよい。
さらに、スロットル開度要求部8102は、フューエルカット要求部8106によってフューエルカット制御の実行が要求される場合であっても、後述する触媒劣化検出部8212から三元触媒120が劣化した状態であることを示す情報を受けた場合は、三元触媒120の劣化が抑制される開度を要求量としてエンジン制御部8200に送る。
スロットル開度要求部8102は、たとえば、触媒劣化検出部8212から三元触媒120が劣化した状態であることを示す情報を受けた場合は、触媒劣化検出部8212から三元触媒120が劣化した状態であることを示す情報を受けなくなるまで、予め定められた時間が経過する毎にスロットルバルブ112の開度を段階的に減少させるようにしてもよいし、劣化が確実に抑制される開度(たとえば、全閉相当の開度)に速やかに減少させるようにしてもよい。
点火時期要求部8104は、自動変速機2000からエンジン1000に対する点火時期の要求量を自動変速機2000の変速状態に基づいて算出して、算出された点火時期の要求量をエンジン制御部8200に送る。
フューエルカット要求部8106は、自動変速機2000の変速状態に応じてエンジン1000に対してフューエルカットを要求する。たとえば、フューエルカット要求部8106は、自動変速機2000の制御システムからの要求があるというフューエルカット制御の実行条件が成立した場合に、エンジン制御部8200に対してフューエルカットを要求する。
また、フューエルカット要求部8106は、フューエルカット制御の実行条件が成立しない場合に、エンジン1000に対するフューエルカットの要求を停止する。たとえば、フューエルカット要求部8106は、駆動部品の保護を目的としたトルクダウンの要求が停止したり、アップシフトの変速が完了した場合に、エンジン1000に対するフューエルカットの要求を停止する。
エンジン制御部8200は、スロットル開度制御部8202と、点火時期制御部8204と、フューエルカット制御実行判定部8206と、燃料噴射制御部8208と、触媒温度取得部8210と、触媒劣化検出部8212とを含む。
スロットル開度制御部8202は、自動変速機制御部8100から受けるスロットルバルブ112の開度の要求量と、他の制御システムから受ける複数のスロットルバルブ112の開度の要求量とのうちのいずれか一つを選択し、スロットルバルブ112の開度が選択されたスロットルバルブ112の開度の要求量を満たすように電子スロットルを制御する。
スロットル開度制御部8202は、たとえば、複数のスロットルバルブ112の開度の要求量のうちの最小の値を選択するようにしてもよいし、予め定められた優先順位でスロットルバルブ112の開度の要求量を選択するようにしてもよいし、車両の状態に基づく優先順位でスロットルバルブ112の開度を選択するようにしてもよい。
スロットル開度制御部8202は、選択されたスロットルバルブ112の開度に対応するスロットル開度制御信号を生成し、電子スロットルに生成されたスロットル開度制御信号を送信する。
点火時期制御部8204は、自動変速機制御部8100から受ける点火時期の要求量と、他の制御システムから受ける複数の点火時期の要求量とのうちのいずれか一つを選択し、エンジン1000の点火時期が選択された点火時期の要求量を満たすようにエンジン1000の点火プラグによる点火時期を制御する。
点火時期制御部8204は、たとえば、複数の点火時期の要求量のうちの最も遅角側の値を選択するようにしてもよいし、予め定められた優先順位で点火時期を選択するようにしてもよいし、車両の状態に基づく優先順位で点火時期を選択するようにしてもよい。
点火時期制御部8204は、選択された点火時期に対応する点火時期制御信号を生成し、エンジン1000に生成された点火時期制御信号を送信する。
他の制御システムは、たとえば、運転者により設定された車両の速度を維持するためのスロットルバルブ112の開度あるいは点火時期を決定するクルーズコントロールシステムおよび車両の挙動を制御するためのスロットルバルブ112の開度あるいは点火時期を決定するVSC(Vehicle Stability Control)システム等である。
他の制御システムは、ECU8000により実行されてもよいし、他のECUで実行されてもよい。他の制御システムは、予め定められたマップ等に従って自動的にスロットルバルブ112の開度あるいは点火時期を決定する。
フューエルカット制御実行判定部8206は、自動変速機制御部8100からフューエルカット制御が要求されているか否かを判定する。フューエルカット制御実行判定部8206は、自動変速機制御部8100からフューエルカット制御の要求を受けた場合に、フューエルカット制御が要求されていると判定する。
また、フューエルカット制御実行判定部8206は、フューエルカット要求部8106からフューエルカット制御の要求が停止した場合に、フューエルカット制御が要求されていないと判定する。
なお、フューエルカット制御実行判定部8206は、たとえば、フューエルカット制御が要求されていると判定した場合に、実行判定フラグをオンするようにしてもよい。また、フューエルカット制御実行判定部8206は、たとえば、フューエルカット制御が要求されていないと判定した場合に、実行判定フラグをオフするようにしてもよい。
また、フューエルカット制御実行判定部8206は、自動変速機制御部8100からのフューエルカット制御が要求されていることに加えて、エンジン回転数NEが予め定められた回転数以上である場合に、実行判定フラグをオンするようにしてもよい。
燃料噴射制御部8208は、フューエルカット制御実行判定部8206にてフューエルカット制御が要求されていると判定された場合に、フューエルカット制御を実行する。
燃料噴射制御部8208は、燃料供給装置126による燃料の供給が停止するように燃料噴射制御信号を生成して、燃料供給装置126に生成された燃料噴射信号を送信する。なお、燃料噴射制御部8208は、たとえば、実行判定フラグがオンされると、フューエルカット制御を実行するようにしてもよい。
燃料噴射制御部8208は、フューエルカット要求部8106からのフューエルカット制御の要求が停止した場合に、フューエルカット制御からの復帰制御を実行する。このとき、燃料噴射制御部8208は、車両の走行状態(車両の速度、アクセル開度等)に応じた吸入空気量、点火時期および燃料噴射量となるようにエンジン1000を制御する。なお、燃料噴射制御部8208は、実行判定フラグがオンからオフになると、フューエルカット制御からの復帰制御を実行するようにしてもよい。
触媒温度取得部8210は、三元触媒120の温度を取得する。本実施の形態においては、触媒温度取得部8210は、エンジン1000の作動状態に基づいて三元触媒120の温度を推定する。なお、触媒温度取得部8210は、三元触媒120に設けられた温度センサ等の出力結果から直接的に三元触媒120の温度を取得するようにしてもよい。
触媒温度取得部8210は、エンジン1000の始動時の吸気温度または外気温度を初期値として、エンジン1000の負荷とマップ(たとえば、図5に示すマップ)とから三元触媒120の温度の増加分を算出し、前回算出された三元触媒120の温度に加算する。同様に、触媒温度取得部8210は、エンジン1000の負荷とマップ(図示せず)とから減少分を算出し、前回算出された三元触媒120の温度から減算する。図5に示すマップの縦軸は、三元触媒120の温度の増加分を示し、横軸は、エンジン1000の負荷(たとえば、吸入空気量および点火時期から算出される負荷)を示す。図5に示すように、エンジン1000に対する負荷が増加するほど三元触媒120の温度の増加分は増加していく。
触媒温度取得部8210は、取得された三元触媒120の温度をスロットル開度要求部8102に送る。
触媒劣化検出部8212は、三元触媒120の劣化状態を検出する。本実施の形態において、触媒劣化検出部8212は、たとえば、三元触媒120の酸素貯蔵能力に基づいて三元触媒120の劣化状態を検出する。三元触媒120の酸素貯蔵能力が高い場合と低い場合とで三元触媒120の前後の酸素濃度の変化の態様が異なる。そのため、触媒劣化検出部8212は、空燃比センサ200と酸素センサ102との検出結果に基づいて三元触媒120の酸素貯蔵能力を定量化し、定量化された酸素貯蔵能力に基づいて三元触媒120の劣化状態を検出することができる。
触媒劣化検出部8212は、空燃比センサ200と酸素センサ102との検出結果に基づいて三元触媒120の定量化された酸素貯蔵能力が予め定められた程度よりも低い場合に三元触媒120の劣化状態を検出する。一方、触媒劣化検出部8212は、空燃比センサ200と酸素センサ102との検出結果に基づいて三元触媒120の定量化された酸素貯蔵能力が予め定められた程度以上の場合に三元触媒120が劣化状態でないと検出する。なお、三元触媒120の劣化判定については、周知の技術を用いればよく、上述の酸素貯蔵能力に基づくものに限定されるものではない。
本実施の形態において、スロットル開度要求部8102と、点火時期要求部8104と、フューエルカット要求部8106とを含む自動変速機制御部8100、および、スロットル開度制御部8202と、点火時期制御部8204と、フューエルカット制御実行判定部8206と、燃料噴射制御部8208と、触媒温度取得部8210と、触媒劣化検出部8212とを含むエンジン制御部8200は、いずれもECU8000のCPUがメモリに記憶されたプログラムを実行することにより実現される、ソフトウェアとして機能するものとして説明するが、全部の構成あるいは一部の構成についてハードウェアにより実現されるようにしてもよい。なお、このようなプログラムは記憶媒体に記録されて車両に搭載される。
図6を参照して、本実施の形態に係る車両の制御装置であるECU8000で実行されるプログラムの制御構造について説明する。
ステップ(以下、ステップをSと記載する)100にて、ECU8000は、フューエルカット制御の実行条件が成立するか否かを判定する。フューエルカット制御の実行条件が成立すると(S100にてYES)、処理はS102に移される。もしそうでないと(S100にてNO)、処理はS100に戻される。
S102にて、ECU8000は、三元触媒120の温度を取得する。S104にて、ECU8000は、取得された三元触媒120の温度に基づいてスロットルバルブ112の開度を選択する。S106にて、ECU8000は、フューエルカット制御を実行する。
S108にて、ECU8000は、フューエルカット制御からの復帰条件が成立するか否かを判定する。フューエルカット制御からの復帰条件が成立した場合(S108にてYES)、処理はS110に移される。もしそうでないと(S108にてNO)、処理はS108に戻される。S110にて、ECU8000は、フューエルカット制御からの復帰制御を実行する。
以上のような構造およびフローチャートに基づく本実施の形態に係る車両の制御装置であるECU8000の動作について図7を参照して説明する。
たとえば、運転者がアクセルペダル8008を一定量だけ踏み込んだ状態で車両が加速している場合を想定する。
車両の速度の上昇とともにタービン回転数NTおよびエンジン回転数NEは増加していく。このとき、フューエルカット制御の実行条件が成立しないため(S100にてNO)、実行判定フラグはオフのままである。
アクセルペダル8008が一定量だけ踏み込まれた状態であるため、スロットルバルブ112の開度もエンジンの実出力トルクも一定の状態となる。
時間T(0)にて、車両の走行状態(たとえば、アクセル開度および車両の速度)に基づく変速線図上の位置がアップシフト線を横切るなどした場合に自動変速機2000のアップシフトが開始される。このとき、自動変速機制御部8100からエンジン制御部8200に対してフューエルカット制御が要求されるため、フューエルカット制御の実行条件が成立する(S100にてYES)。そのため、三元触媒120の温度が取得され(S102)、取得された三元触媒120の温度に基づいてスロットルバルブ112の開度が選択される(S104)。このとき、スロットルバルブ112の開度は、図7の破線に示すように全閉相当の開度0%までスロットルバルブ112が閉じられることはない。
変速中において、フューエルカット制御が実行されると(S106)、タービン回転数NTおよびエンジン回転数NEは、速やかに低下していく。そのため、変速時間の短縮が図られる。
時間T(1)にて、自動変速機2000のアップシフトが完了すると、自動変速機制御部8100からエンジン制御部8200に対するフューエルカット制御の要求が停止するため、復帰条件が成立することとなる(S108にてYES)。その結果、フューエルカット制御からの復帰制御が実行される(S110)。
このとき、復帰後のエンジン実出力トルク(図7の実線)は、スロットルバルブ112の開度を図7の破線に示すように全閉相当の開度まで閉じる場合の実出力トルク(図7の破線)よりも速やかに上昇する。そのため、実出力トルクの復帰時の応答性の向上が図られる。
なお、フューエルカット制御の実行中に、三元触媒120の劣化状態が検出された場合には、三元触媒120の劣化が抑制される開度が要求量とされる。
以上のようにして、本実施の形態に係る車両の制御装置によると、取得された三元触媒の温度に対応した流量になるようにスロットルバルブの開度を制御することにより、スロットルバルブを全閉相当の開度まで閉じることなく、フューエルカット制御を実行することができる。そのため、フューエルカット制御から復帰する条件が成立したときに、スロットルバルブを速やかに通常のスロットルバルブの開度になるまで増加させることができ、エンジンの出力上昇の遅れを改善することができる。その結果、三元触媒の劣化の抑制と復帰時の応答性の向上とを両立することができる。したがって、フューエルカット復帰に応答性良くエンジンの出力を上昇させる車両の制御装置および制御方法を提供することができる。
また、三元触媒の劣化状態が、三元触媒の温度に対応したスロットルバルブの開度の制御の実行を許容できない状態である場合に、三元触媒の劣化が抑制される開度になるようにスロットルバルブの開度を制御することにより、三元触媒の状態に応じて三元触媒の劣化の抑制と復帰時の応答性の向上とを両立することができる。
なお、本実施の形態においては、エンジン制御部8200において取得された三元触媒の温度を自動変速機制御部8100に送り、自動変速機制御部8100において三元触媒の温度に対応したスロットルバルブの開度を算出するとして説明したが、特にこのような構成に限定されるものではない。
たとえば、図8に示すように、触媒温度取得部8210において取得された三元触媒120の温度をスロットル開度制御部8202に送り、三元触媒120の温度を受けたスロットル開度制御部8202において、三元触媒の温度に対応したスロットルバルブ112の開度の要求量を算出し、自動変速機制御部8100から受けたスロットルバルブ1120の開度の要求量を含む複数のスロットルバルブ112の開度の要求量のうちいずれか一つを選択するようにしてもよい。スロットル開度制御部8202は、フューエルカット制御実行判定部において、フューエルカット制御の要求があると判定された場合に、三元触媒120の温度に対応したスロットルバルブ112の開度の要求量を選択する。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。