JP5251256B2 - 湿式回転クラッチの引き摺りトルク低減制御装置 - Google Patents
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Description
特に、当該変速機の伝動系に挿入されて動力の断接を司る湿式回転クラッチが、解放中にもかかわらずクラッチディスク間に存在する潤滑油の粘性を介して発生する引き摺りトルクを低減するための装置に関するものである。
これがため上記のクラッチとしては、制御のし易さもあって湿式回転クラッチを用いることが多い。
この自動変速式マニュアルトランスミッションは、湿式回転クラッチを解放した状態で、同期噛合機構(シンクロメッシュ機構)を中立位置から変速段実現位置へ作動させて行う噛合動作により、実現変速段の切り替えや、中立状態から前発進変速段または後発進変速段の実現が可能となるようにしたものである。
湿式回転クラッチを締結している場合、これを介してエンジンにより同期噛合機構の入力側回転メンバが回転されており、結果として同期噛合機構が、この入力側回転メンバを、車輪と共に回転する同期噛合機構の出力側回転メンバに対し回転同期させることができず、
これら入出力側回転メンバの相対回転に起因し、同期噛合機構を中立位置から変速段実現位置へ作動させて噛合動作させることができないためである。
これら入出力側回転メンバの相対回転が無いことに起因し、同期噛合機構が中立位置から変速段実現位置へ作動して噛合動作を行い得ることとなる。
そのため湿式回転クラッチには、トランスミッションの潤滑油を供給して上記の冷却や摩耗防止を行うのが常套である。
この引き摺りトルクは、湿式回転クラッチが解放状態であるのに、エンジンから同期噛合機構の入力側回転メンバへ引き摺りトルク分のトルクを伝達し、この入力側回転メンバを回転させることになり、
結果として同期噛合機構が、この入力側回転メンバを、車輪と共に回転する同期噛合機構の出力側回転メンバに対し回転同期させることを困難にし、同期噛合機構を中立位置から変速段実現位置へ作動させて噛合動作させることが困難になり、変速に悪影響が及んだり、変速が困難になるという問題があった。
エンジンおよび変速機入力軸間に介在され、潤滑油の供給により冷却および摩耗防止される湿式回転クラッチと、
該湿式回転クラッチおよび変速機出力軸間に介在され、所望の変速段を実現するための同期噛合機構とを具え、
前記湿式回転クラッチを解放させた状態で、前記同期噛合機構を中立位置から変速段実現位置へ向け作動させて噛合動作させることにより、前記所望の変速段を実現し得るようにした変速機に用いられ、
前記湿式回転クラッチの引き摺りトルクを低減するための装置において、
前記同期噛合機構の噛合動作が開始される以前において、前記湿式回転クラッチの入力側回転数を、該クラッチ入力側回転数に応じた遠心力で該湿式回転クラッチ内の残存潤滑油が、前記同期噛合機構の噛合動作に支障を来すことのない油量となるまで排除されるべく上昇させるよう構成したことを特徴とするものである。
同期噛合機構の噛合動作が開始される以前において、湿式回転クラッチの入力側回転数を、該クラッチ入力側回転数に応じた遠心力で該湿式回転クラッチ内の残存潤滑油が、前記同期噛合機構の噛合動作に支障を来すことのない油量となるまで排除されるよう上昇させるため、
同期噛合機構の噛合動作が開始されるときには、解放状態である湿式回転クラッチのクラッチディスク間に介在している残存潤滑油を、クラッチ入力側回転数の上昇に伴う大きな遠心力により、同期噛合機構の噛合動作に支障を来すことのない油量となるまでクラッチから確実に、且つ、速やかに排除することができる。
湿式回転クラッチがクラッチディスク間における残存潤滑油を介した引き摺りトルクを発生することがなくなり、
これによる問題、つまり、引き摺りトルクにより同期噛合機構が回転同期作用を行い得難くて、変速に悪影響が及んだり、変速が困難になるという前記の問題を解消することができる。
図1は、本発明の一実施例になる湿式回転クラッチの引き摺りトルク低減制御装置を具えた変速機としてのツインクラッチ式マニュアルトランスミッションを示す骨子図である。
ツインクラッチ式マニュアルトランスミッションの出力軸6は、図示せざるプロペラシャフトやディファレンシャルギヤ装置を介して左右駆動車輪に結合する。
7は、クラッチハウジング3に連なる変速機ケースを示し、このクラッチハウジング3内には上記奇数変速段用自動湿式回転クラッチC1および偶数変速段用自動湿式回転クラッチC2の他に、これらクラッチC1,C2およびエンジンクランクシャフト2間を緩衝下に駆動結合するトーショナルダンパ8、および、このトーショナルダンパ8を介して常時エンジン駆動されるオイルポンプ9を内蔵させる。
なお奇数変速段クラッチC1および偶数変速段クラッチC2はそれぞれ、常態で解放しているノーマルオープン型クラッチとする。
オイルポンプ9からの作動油は更に、図1に矢αで示すごとく、第1入力軸4に穿った油路を経由し偶数変速段クラッチC2および奇数変速段クラッチC1に、偶数変速段クラッチC2の内周部より潤滑油として供給し、
これにより偶数変速段クラッチC2および奇数変速段クラッチC1を、特に締結過渡期の発熱や摩耗に対処すべく、冷却すると共に摩耗防止する。
前記のごとく奇数変速段クラッチC1および偶数変速段クラッチC2を介してトーショナルダンパ8からのエンジン回転を選択的に入力される第1入力軸4および第2入力軸5のうち第2入力軸5は中空とする。
かかる中空の第2入力軸5を第1入力軸4上に嵌合し、内側の第1入力軸4および外側の第2入力軸5を相互に同心状態で相対回転自在とする。
第1入力軸4を第2入力軸5の後端から突出させ、この突出した第1入力軸4の後端部4aに同軸に突き合わせて前記の変速機出力軸6を相対回転可能に設け、この出力軸6を変速機ケース7の後端から突出させる。
第1入力軸4、第2入力軸5、および出力軸6に平行に配してカウンターシャフト10を設け、これを変速機ケース7内に回転自在に支持する。
ここでカウンターギヤ11は、そのピッチ円直径を出力歯車12のピッチ円直径よりも小さくし、これらカウンターギヤ11および出力歯車12により減速歯車組を構成する。
第1速歯車組G1および後退歯車組GRは、第2入力軸5の後端と変速機ケース中間壁7aとの間に位置させるが、後退歯車組GRを変速機ケース中間壁7aの直近に位置させる。
第3速歯車組G3は、変速機ケース中間壁7aを挟んで第1速歯車組G1および後退歯車組GRの反対側に配置するが、変速機ケース中間壁7aの直近に、つまり、第1入力軸4(後端部4a)の最後部に位置させる。
後退歯車組GRは、第1入力軸4の後端部4aに一体成形した後退入力歯車15と、カウンターシャフト10上に回転自在に設けた後退出力歯車16と、これら歯車15,16に噛合して当該歯車15,16間を逆転下に駆動結合するリバースアイドラギヤ17とで構成し、
リバースアイドラギヤ17を、変速機ケース中間壁7aに植設したリバースアイドラ軸18により回転自在に支持する。
第3速歯車組G3は、第1入力軸4の後端部4aに回転自在に設けた第3速入力歯車19と、カウンターシャフト10に駆動結合して設けた第3速出力歯車20とを相互に噛合させて構成する。
つまり、カップリングスリーブ21aを図示の中立位置から右行させてクラッチギヤ21bに噛合させるとき、第1速出力歯車14がカウンターシャフト10に駆動結合されて後述するごとく第1速を実現することが可能である。
また、カップリングスリーブ21aを図示の中立位置から逆に左行させてクラッチギヤ21cに噛合させるとき、後退出力歯車16がカウンターシャフト10に駆動結合されて後述するごとく後退を実現することが可能である。
つまり、カップリングスリーブ22aを図示の中立位置から右行させてクラッチギヤ22bに噛合させるとき、第3速入力歯車19が第1入力軸4に駆動結合されて後述するごとく第3速を実現することが可能である。
また、カップリングスリーブ22aを図示の中立位置から逆に左行させてクラッチギヤ22cに噛合させるとき、第1入力軸4(その後端部4a)が出力歯車12(出力軸6)に直結されて後述するごとく第5速を実現することが可能である。
第6速歯車組G6は変速機ケース7の前壁7bに沿うよう第2入力軸5の前端に配置し、第4速歯車組G4は第2入力軸5の後端に配置し、第2速歯車組G2は第2入力軸5の両端間中央部に配置する。
第2速歯車組G2は、第2入力軸5の外周に一体成形した第2速入力歯車25と、カウンターシャフト10上に回転自在に設けた第2速出力歯車26とを相互に噛合させて構成する。
第4速歯車組G4は、第2入力軸5の外周に一体成形した第4速入力歯車27と、カウンターシャフト10上に回転自在に設けた第4速出力歯車28とを相互に噛合させて構成する。
つまり、カップリングスリーブ29aを図示の中立位置から右行させてクラッチギヤ29bに噛合させるとき、第6速出力歯車24がカウンターシャフト10に駆動結合されて後述するごとく第6速を実現することが可能である。
つまり、カップリングスリーブ30aを図示の中立位置から右行させてクラッチギヤ30bに噛合させるとき、第2速出力歯車26がカウンターシャフト10に駆動結合されて後述するごとく第2速を実現することが可能である。
また、カップリングスリーブ30aを図示の中立位置から逆に左行させてクラッチギヤ30cに噛合させるとき、第4速出力歯車28がカウンターシャフト10に駆動結合されて後述するごとく第4速を実現することが可能である。
動力伝達を希望しない中立(N)レンジや駐車(P)レンジのような非走行レンジにおいては、ノーマルオープン型クラッチ(自動湿式回転クラッチ)C1,C2の双方を非制御状態にして解放し、また、同期噛合機構21,22,29,30のカップリングスリーブ21a,22a,29a,30aを全て図示の中立位置にして、ツインクラッチ式マニュアルトランスミッションを動力伝達が行われない中立状態にする。
オイルポンプ9からの作動油を媒体として以下のごとくに同期噛合機構21,22,29,30のカップリングスリーブ21a,22a,29a,30a、および湿式回転クラッチC1,C2を制御することにより各々の前進変速段や、後退変速段を実現することができる。
湿式回転クラッチC1,C2には、非走行レンジおよび走行レンジの双方において、オイルポンプ9からの作動油を矢αで示すごとく潤滑油として供給し、これにより湿式回転クラッチC1,C2を、特に締結過渡期における発熱や摩耗に対処すべく冷却すると共に摩耗防止する。
更に、同期噛合機構30のカップリングスリーブ30aを図示の中立位置から右行させることにより同期噛合機構30は、回転同期作用下に歯車26をカウンターシャフト10に駆動結合し、これにより偶数変速段グループ中において第2速へのプリシフトを行わせる(以下、当該プリシフト用に行う同期噛合機構30の第2速への噛合動作も、同期噛合機構のDセレクト用噛合動作Aと言う)。
このため、上記した第1速へのプリシフトおよび第2速へのプリシフトを行わせても、エンジン1の回転が第1速伝動ギヤ列や第2速伝動ギヤ列を経て出力軸6に伝達されることはなく、停車状態を維持することができる。
これによりクラッチC1からのエンジン回転が第1入力軸4、第1速歯車組G1、カウンターシャフト10、および出力歯車組11,12を経て出力軸6より軸線方向に出力され、第1速での動力伝達を行うことができる。
なお当該発進時は、それ用にクラッチC1の締結進行(スリップ締結)制御を行って発進ショックのない滑らかな前発進を行わせること、勿論である。
非走行レンジから前進走行レンジへのセレクト操作時に前記のごとくに行われた第2速へのプリシフトと相まって、第1速伝動ギヤ列から第2速伝動ギヤ列への切り替え、つまり第1速から第2速へのアップシフトを行わせる。
これにより、クラッチC2からのエンジン回転が第2入力軸5、第2速歯車組G2、カウンターシャフト10、および出力歯車組11,12を経て出力軸6より軸線方向に出力されるようになり、第2速での動力伝達を行うことができる。
つまり、先ず同期噛合機構21のカップリングスリーブ21aを中立位置に戻すことにより同期噛合機構21は、歯車14をカウンターシャフト10から切り離す外脱動作を行い、これにより奇数変速段グループ中において行った前記第1速プリシフトを解除し、
更に、同期噛合機構22のカップリングスリーブ22aを中立位置から右行させることにより同期噛合機構22は、回転同期作用下に歯車19を第1入力軸4に駆動結合する噛合動作を行い、これにより同じ奇数変速段グループ中において第3速へのプリシフトを行わせることにより(以下、当該プリシフト用に行う同期噛合機構22の噛合動作を、同期噛合機構の変速用噛合動作Bと言う)、当該1→3プリシフトを遂行する。
第2速が実現されている間に前記のごとくに行われた1→3プリシフトと相まって、第2速伝動ギヤ列から第3速伝動ギヤ列への切り替え、つまり第2速から第3速へのアップシフトを行わせる。
これにより、クラッチC1からのエンジン回転が第1入力軸4、第3速歯車組G3、カウンターシャフト10、および出力歯車組11,12を経て出力軸6より軸線方向に出力されるようになり、第3速での動力伝達を行うことができる。
つまり、先ず同期噛合機構30のカップリングスリーブ30aを中立位置に戻すことにより同期噛合機構30は、歯車26をカウンターシャフト10から切り離す外脱動作を行い、これにより偶数変速段グループ中において行った前記第2速プリシフトを解除し、
更に、同期噛合機構30のカップリングスリーブ30aを中立位置から左行させることにより同期噛合機構30は、回転同期作用下に歯車28をカウンターシャフト10に駆動結合する噛合動作を行い、これにより同じ偶数変速段グループ中において第4速へのプリシフトを行わせることによって(以下、当該プリシフト用に行う同期噛合機構30の噛合動作を、同期噛合機構の変速用噛合動作Bと言う)、当該2→4プリシフトを遂行する。
第3速が実現されている間に前記のごとくに行われた2→4プリシフトと相まって、第3速伝動ギヤ列から第4速伝動ギヤ列への切り替え、つまり第3速から第4速へのアップシフトを行わせる。
これにより、クラッチC2からのエンジン回転が第2入力軸5、第4速歯車組G4、カウンターシャフト10、および出力歯車組11,12を経て出力軸6より軸線方向に出力されるようになり、第4速での動力伝達を行うことができる。
つまり、先ず同期噛合機構22のカップリングスリーブ22aを中立位置に戻すことにより同期噛合機構22は、歯車19を第1入力軸4から切り離す外脱動作を行い、これにより奇数変速段グループ中において行った前記第3速プリシフトを解除し、
更に、同期噛合機構22のカップリングスリーブ22aを中立位置から左行させることにより同期噛合機構22は、回転同期作用下に第1入力軸4を出力軸6に直結する噛合動作を行い、これにより同じ奇数変速段グループ中において第5速へのプリシフトを行わせることによって(以下、当該プリシフト用に行う同期噛合機構22の噛合動作を、同期噛合機構の変速用噛合動作Bと言う)、当該3→5プリシフトを遂行する。
第4速が実現されている間に前記のごとくに行われた3→5プリシフトと相まって、第4速伝動ギヤ列から第5速伝動ギヤ列への切り替え、つまり第4速から第5速へのアップシフトを行わせる。
これによりクラッチC1からのエンジン回転が第1入力軸4、およびカップリングスリーブ29aを経て出力軸6より軸線方向に出力されるようになり、第5速(変速比1:1)での動力伝達を行うことができる。
つまり、先ず同期噛合機構30のカップリングスリーブ30aを中立位置に戻すことにより同期噛合機構30は、歯車28をカウンターシャフト10から切り離す外脱動作を行い、これにより偶数変速段グループ中において行った前記第4速プリシフトを解除し、
更に、同期噛合機構29のカップリングスリーブ29aを中立位置から右行させることにより同期噛合機構29は、回転同期作用下に歯車24をカウンターシャフト10に駆動結合する噛合動作を行い、これにより同じ偶数変速段グループ中において第6速へのプリシフトを行わせることによって(以下、当該プリシフト用に行う同期噛合機構29の噛合動作を、同期噛合機構の変速用噛合動作Bと言う)、当該4→6プリシフトを遂行する。
第5速が実現されている間に前記のごとくに行われた4→6プリシフトと相まって、第5速伝動ギヤ列から第6速伝動ギヤ列への切り替え、つまり第5速から第6速へのアップシフトを行わせる。
これにより、クラッチC2からのエンジン回転が第2入力軸5、第6速歯車組G6、カウンターシャフト10、および出力歯車組11,12を経て出力軸6より軸線方向に出力されるようになり、第6速での動力伝達を行うことができる。
そして、車速が第2速から第1速へのダウンシフトを行うべき低車速になったとき、クラッチC2を解放すると共にクラッチC1を締結することにより(クラッチの掛け替えスリップ制御により)第1速へのダウンシフトを行わせる。
かかる第1速での走行中、さらに減速が進んで車速が停車直前車速になったところで、湿式回転クラッチC1を解放することにより停車を可能とする。
これにより図2(a),(b)の「変速段=後退」の欄に示すような奇数変速段グループ内での後退変速段(後発進変速段)へのプリシフトを行わせる(以下、当該プリシフト用に行う同期噛合機構21の後退変速段への噛合動作を、同期噛合機構のRセレクト用噛合動作Aと言う)。
このため、上記した後退変速段へのプリシフトを行わせても、エンジン1の回転が後退伝動ギヤ列を経て出力軸6に伝達されることはなく、停車状態を維持することができる。
これによりクラッチC1からのエンジン回転が第1入力軸4、後退歯車組GR、カウンターシャフト10、および出力歯車組11,12を経て出力軸6より軸線方向に出力されるようになり、
この際、後退歯車組GRにより回転方向を逆にされることから、後退変速段での動力伝達を行うことができる。
なお当該発進時は、それ用にクラッチC1の締結進行(スリップ締結)制御を行って発進ショックのない滑らかな後発進を行わせること、勿論である。
湿式回転クラッチC1,C2の冷却および摩耗防止という目的に照らして、湿式回転クラッチC1,C2への潤滑油供給量については、以下の要求がある。
DレンジやRレンジのような走行レンジにおいて湿式回転クラッチC1,C2がスリップ状態である場合は、クラッチの発熱量が大きく、且つ、摩耗が激しくなることから、これらクラッチC1,C2への潤滑油供給量を多くする必要がある。
ただし、走行レンジにおいて湿式回転クラッチC1,C2を解放させた状態で行う同期噛合機構の噛合動作中は、クラッチC1,C2へ上記の少量であっても潤滑油を供給していると、クラッチC1,C2が引き摺りトルクを発生して、同期噛合機構の噛合動作が困難または不能となり、変速に支障を来すことから、クラッチC1,C2へ潤滑油供給量を零にするのが良い。
従って、同期噛合機構の噛合動作中は湿式回転クラッチがスリップして発熱を生ずることがなく、この間は湿式回転クラッチへの潤滑油供給量を零にしても、クラッチの発熱や摩耗が問題になることはない。
また、非走行レンジにおいても前記したところから明らかなように、湿式回転クラッチが発熱を伴うスリップを生ずることがなく、湿式回転クラッチへの潤滑油供給量を零にしても、クラッチの発熱や摩耗が問題になることはない。
この残存潤滑油がクラッチディスク間から完全に排除されるまでには、湿式回転クラッチの回転によって該残存潤滑油に作用する遠心力に応じた潤滑油排除時間が必要であり、以下のような懸念がある。
かかる走行中は湿式回転クラッチの回転数が高くて上記の残存潤滑油に作用する遠心力も大きく、従って、湿式回転クラッチへの潤滑油供給量を零にしてクラッチディスク間への潤滑油供給がなされなくなったら、速やかにクラッチディスク間の残存潤滑油が径方向外方へ飛散、排除され、クラッチの引き摺りトルクに関する問題を生ずることがない。
このため、湿式回転クラッチへの潤滑油供給量を零にしてクラッチディスク間への潤滑油供給がなされなくなったとしても、その後における潤滑油排除時間が長くなり、クラッチディスク間への潤滑油供給がなされなくなった後も相当時間、クラッチディスク間に潤滑油が残存する。
この間、湿式回転クラッチはこの残存潤滑油を介して引き摺りトルクを発生し、同期噛合機構の噛合動作を困難または不能にして、変速に支障を来すという問題を生ずる。
先ずステップS101においては、現在の選択レンジに係わるレンジ信号と、車速VSPに係わる車速信号と、アクセル開度APOに係わるアクセル開度信号とを読み込む。
ステップS102およびステップS117においてはそれぞれ、現在の選択レンジが前進走行レンジ(前進自動変速用のDレンジや、エンジンブレーキ用のLレンジなど)か、後退走行レンジ(Rレンジ)か否かをチェックする。
ステップS117で後退走行レンジ選択中と判別するときは、制御をステップS118に進めて後退走行レンジ用の変速制御およびクラッチ潤滑油量決定ループに移行する。
ステップS102で前進走行レンジ選択中でないと判定し、且つ、ステップS117で後退走行レンジ選択中でもないと判定するとき、つまり非走行レンジ(駐車用のPレンジや、停車用のNレンジ)と判定するときは、制御をステップS127に進めて非走行レンジ用の変速制御およびクラッチ潤滑油量決定ループに移行する。
次のステップS128において、クラッチC1,C2が共に解放状態であるため冷却も摩耗防止も不要であるから、クラッチC1,C2への潤滑油α(図1参照)の供給量を零にする。
なお当該ループには、プリシフトの処理ステップが存在しないことから、全ての同期噛合機構は中立位置に保たれ、非走行レンジでの停車状態を得ることができる。
非走行レンジから前進走行レンジへのセレクト操作直後であれば、ステップS104において、当該セレクト操作直後に行うべき前記した奇数変速段グループの1速へのプリシフト(同期噛合機構21の噛合動作)および偶数変速段グループの2速へのプリシフト(同期噛合機構30の噛合動作)を実行する。
なお、本明細書における「プリシフト(同期噛合機構の噛合動作)」は、全てその指令信号でなくて、実際の動作自身を指すものとする。
ステップS103で非走行レンジから前進走行レンジへのセレクト操作直後でないと判定する場合は、ステップS105において、図2(a),(b)につき前述した走行中に行うべき予定マップに基づくプリシフト(対応する同期噛合機構の噛合動作および外脱動作)を実行する。
このステップS115に制御が進むパターンとしては、ステップS103において判定した、非走行レンジから前進走行レンジへのセレクト操作直後か否かの判定結果に応じ、
ステップS104およびステップS106を経由してステップS115に至る第1パターンと、
ステップS105およびステップS106を経由してステップS115に至る第2パターンがある。
後者の第2パターンは、上記セレクト操作直後でないときにステップS105で実行される、図2(a),(b)に基づく走行中のプリシフトが未完であり(ステップS106)、クラッチC1,C2のうち、現在の実現変速段に対応する一方のクラッチC1(C2)が解放された状態であり、他方のクラッチC2(C1)が締結された状態である。
次のステップS116においては、解放状態のクラッチC1またはC2が潤滑油を介した引き摺りトルクを発生してプリシフト(同期噛合機構の噛合動作)を困難にすることのないよう、クラッチC1,C2への潤滑油供給量を零にする(場合によっては、必ずしも零にするのではなく、少なくするだけでもよい)。
ステップS107で発進要求操作がないと判定し、且つ、ステップS110で変速要求もないと判定するとき、つまり、クラッチC1,C2の何れも発熱や摩耗に関する問題を生ずることのない非スリップ状態であると判定するとき、制御をステップS113に進める。
ステップS104→ステップS106→ステップS107→ステップS110を経由してステップS113に至る第1パターンと、
ステップS105→ステップS106→ステップS107→ステップS110を経由してステップS113に至る第2パターンがある。
クラッチC1,C2の何れも発熱や摩耗に関する問題を生ずることのない非スリップ状態である。
クラッチC1,C2の何れも発熱や摩耗に関する問題を生ずることのない非スリップ状態である。
ここで、上記のごとくクラッチC1,C2が何れも発熱や摩耗に関する問題を生ずることのない非スリップ状態であるのに、これらクラッチC1,C2への潤滑油供給量を零ではなく少量にした理由は、以下のためである。
つまり、クラッチC1,C2への潤滑油供給量を零にしておくと、潤滑油供給指令から実際にクラッチC1,C2へ潤滑油が供給され始めるまでの応答遅れが大きくなり、今後頻繁に発生するであろうと予測されるクラッチC1,C2のスリップ制御時に要求される高応答な潤滑油供給に応えることができないためである。
上記のごとくステップS114でクラッチC1,C2へ潤滑油を少量だけ供給し続けることにより、潤滑油供給指令から実際にクラッチC1,C2へ潤滑油が供給され始めるまでの応答遅れが小さくなり、特に走行中に要求される頻繁で高応答な潤滑油供給にも十分応えることができる。
ステップS108において、この発進要求に応えるべく発進クラッチC1を徐々に締結させ、次のステップS109において、発進クラッチC1のスリップ締結に伴う発熱と摩耗の対策用にクラッチC1,C2への潤滑油供給量を多くする。
従って、ここにおける潤滑油供給量の多量は、上記発進クラッチC1のスリップ締結に伴う発熱と摩耗の対策を行い得る量であって、同期噛合機構の噛合動作に支障を来さない潤滑油量よりも多い量とする。
ステップS111において、当該変速のためのアップシフトまたはダウンシフト用に締結状態のクラッチC1(C2)を解放しつつ、解放状態のクラッチC2,(C1)を締結させて行う、クラッチC1,C2の掛け替えスリップ制御により、現在の実現変速段から上記目標変速段への変速を行う。
従って、ここにおける潤滑油供給量の多量も、上記クラッチC1,C2の掛け替え時スリップ制御に伴う発熱と摩耗の対策を行い得る量であって、同期噛合機構の噛合動作に支障を来さない潤滑油量よりも多い量とする。
ステップS119においては、ステップS118で開始されたプリシフトが完了したか否かをチェックし、プリシフトが完了していなければ、制御をステップS125に進める。
このステップS125に進むパターンは、上記後退走行レンジへのセレクト操作に呼応してステップS118で実行される後退変速段へのプリシフトが未完であり(ステップS119)、伝動系路が確立されていないため、クラッチC1,C2を共に解放させた状態である。
次のステップS126においては、解放状態のクラッチC1が潤滑油を介した引き摺りトルクを発生して後退変速段へのプリシフト(同期噛合機構21の噛合動作)を困難にすることのないよう、クラッチC1,C2への潤滑油供給量を零にする(場合によっては、必ずしも零にする必要はなく、少なくするだけでもよい)。
ステップS120で発進要求操作がないと判定するとき、つまり、クラッチC1,C2の何れも発熱や摩耗に関する問題を生ずることのない非スリップ状態であると判定するとき、制御をステップS123に進める。
上記後退走行レンジへのセレクト操作に呼応してステップS118で実行される後退変速段へのプリシフトは完了しているが(ステップS119)、未だ発進要求がなくて(ステップS120)、ブレーキ操作による停車が維持されていることから、クラッチC1,C2を共に解放させた状態(ただし発進クラッチC1は発進応答の観点から、締結容量を持ち始める直前のプリチャージ状態)であり、
従ってクラッチC1,C2はいずれも、発熱や摩耗に関する問題を生ずることのない非スリップ状態である。
次のステップS124において、クラッチC1,C2への潤滑油供給量を少量にする。
ここで、上記のごとくクラッチC1,C2が何れも発熱や摩耗に関する問題を生ずることのない非スリップ状態であるのに、これらクラッチC1,C2への潤滑油供給量を零ではなく少量にした理由は、以下のためである。
つまり、クラッチC1,C2への潤滑油供給量を零にしておくと、潤滑油供給指令から実際にクラッチC1,C2へ潤滑油が供給され始めるまでの応答遅れが大きくなり、今後の発進に際して発生するクラッチC1のスリップ締結時に要求される高応答な潤滑油供給に応えることができないためである。
上記のごとくステップS124でクラッチC1,C2へ潤滑油を少量だけ供給し続けることにより、
潤滑油供給指令から実際にクラッチC1,C2へ潤滑油が供給され始めるまでの応答遅れが小さくなり、発進時に要求される高応答なクラッチC1,C2への潤滑油の供給に十分応えることができる。
ステップS121において、この発進要求に応えるべく発進クラッチC1を徐々に締結させ、次のステップS122において、発進クラッチC1のスリップ締結に伴う発熱と摩耗の対策用にクラッチC1,C2への潤滑油供給量を多くする。
従って、ここにおける潤滑油供給量の多量は、上記発進クラッチC1のスリップ締結に伴う発熱と摩耗の対策を行い得る量であって、同期噛合機構の噛合動作に支障を来さない潤滑油量よりも多い量とする。
前発進時や(ステップS107、ステップS108)、変速時や(ステップS110、ステップS111)、後発進時は(ステップS120、ステップS121)、
クラッチC1,C2が発熱と摩耗を生ずるスリップ状態であることから、これら発熱と摩耗の対策用にクラッチC1,C2への潤滑油供給量を多くすることとしたため(ステップS109、ステップS112、ステップS122)、
クラッチC1,C2がスリップ状態に起因して高温になったり、摩耗し易くなるのを防止することができる。
クラッチC1,C2が問題となる発熱や摩耗を生ずるスリップ状態でないものの、今後の発進時や変速時におけるクラッチC1,C2のスリップ締結に鑑み、クラッチC1,C2への潤滑油供給量を零とせず、潤滑油を少量だけ供給し続けることとしたため(ステップS114、ステップS124)、
発進や変速でクラッチC1,C2をスリップ締結させ始めたときに、これらクラッチC1,C2への潤滑油供給を高応答に開始させ得て、クラッチの発熱対策や摩耗対策を確実なものにすることができる。
クラッチC1,C2が潤滑油を介し引き摺りトルクを発生するのを緩和、若しくは防止することができ、この引き摺りトルクにより上記のプリシフトが困難になるのを緩和、若しくは防止することができる。
非走行レンジで、クラッチC1,C2に無駄に潤滑油が供給される愚を避けることができて、エネルギー損失を軽減することができる。
つまり、変速中はステップS111で行うクラッチC1,C2の掛け替えスリップ制御によりこれらクラッチが多量の熱を発生しており、変速終了と同時にクラッチ潤滑油供給量を少量にするのでは(ステップS114)、発熱によるクラッチ温度上昇が若干の時間遅れをもつこととも相まって、クラッチC1,C2が一時的に高温になることがある。
この問題解決のためには、ステップS110で変速要求なしと判定した後も、所定時間中はステップS112を実行してクラッチ潤滑油供給量を多量のままに維持し、その後にステップS114を実行してクラッチ潤滑油供給量を少量に減ずるようにするのがよい。
以下の理由から、クラッチC1,C2が潤滑油を介し引き摺りトルクを発生するのを確実には緩和することができず、この引き摺りトルクで上記のプリシフトが困難になることがある。
この残存潤滑油がクラッチディスク間から完全に排除されるまでには、クラッチC1,C2の回転によって残存潤滑油に作用する遠心力に応じた潤滑油排除時間が必要である。
ステップS103→ステップS105→ステップS106→ステップS115を経てステップS116に至ったときの潤滑油供給量零制御は、同期噛合機構の変速用噛合動作(プリシフト)を妨げるクラッチ引き摺りトルクが発生しなくなるようにするためのものであって、車両の走行中に行われる。
かかる走行中は、湿式回転クラッチC1,C2の回転数が高くて上記の残存潤滑油に作用する遠心力も大きく、湿式回転クラッチC1,C2への潤滑油供給量を零にしてクラッチディスク間への潤滑油供給がなされなくなった後、速やかにクラッチディスク間の残存潤滑油が径方向外方へ排除され、ステップS116での潤滑油供給量零制御のみでクラッチの引き摺りトルクに関する問題を解消することができる。
前進走行レンジまたは後退走行レンジへのセレクト操作時に行われる同期噛合機構のD,Rセレクト用噛合動作(プリシフト)を妨げるクラッチ引き摺りトルクが発生しなくなるようにするためのもので、従って停車中の、しかもアクセルペダルが釈放されている間に行われる。
かように停車中で、アクセルペダルが釈放状態されている間は、湿式回転クラッチC1,C2の回転数がエンジンアイドリング回転数相当の低い回転数であって、上記のクラッチ残存潤滑油に作用する遠心力も小さい。
この間、湿式回転クラッチC1,C2はこの残存潤滑油を介して引き摺りトルクを発生し、同期噛合機構の噛合動作(D,Rセレクト時プリシフト)を困難または不能にして、変速に支障を来すという問題を生ずる。
図4に示す制御プログラムに沿って図5〜12のタイムチャートにより示すごとくに上昇制御する。
先ずステップS201において、ツインクラッチ式マニュアルトランスミッションの潤滑油温度(ATF温度)と、現在の選択レンジに係わるレンジ信号と、エンジン駆動補機(空調機用コンプレッサーや、ウォーターポンプや、ジェネレータなど)の作動信号と、エンジン冷却水温信号とを読み込む。
次のステップS202においては、一般的に行われていると同様の要領で、エンジン駆動補機の作動状態やエンジン冷却水温などを加味しつつ、基本となるエンジンアイドリング回転数の初期値Neidle0を設定する。
この設定温度は、クラッチC1,C2が同期噛合機構の噛合動作に支障を来すような引き摺りトルクを発生させることのない潤滑油粘度となる高い潤滑油温度域の下限温度に対応させる。
よって、ステップS204で潤滑油温度が設定温度未満の低温であると判定するときは、クラッチC1,C2が同期噛合機構の噛合動作に支障を来すような引き摺りトルクを発生する潤滑油温度であることを意味する。
また、ステップS204で潤滑油温度が、同期噛合機構の噛合動作に支障を来すようなクラッチ引き摺りトルクを発生しない高温であると判定するときも、クラッチ残存潤滑油の飛散を促すエンジンアイドリング回転数上昇制御が不要であるから、制御を順次ステップS210、ステップS211、ステップS209に進める。
これらにより、不要なエンジンアイドリング回転数上昇制御が行われて、燃費が悪化するのを回避することができる。
ステップS211においては、エンジンアイドリング回転数上昇量ΔNeを0にする。
ステップS209においては、ステップS202で設定した基本となるエンジンアイドリング回転数の初期値Neidle0に、ステップS211で設定したエンジンアイドリング回転数上昇量ΔNe=0を加算して得られた値を目標アイドリング回転数Neidleと定める。
よってこの場合、目標アイドリング回転数Neidleが初期値Neidle0と同じ回転数にされ、クラッチ残存潤滑油飛散用のエンジンアイドリング回転数上昇制御が実行されない。
このステップS205においては、クラッチ残存潤滑油を飛散させるのに必要なエンジンアイドリング回転数上昇時間Toを設定する。
このエンジンアイドリング回転数上昇時間Toは、潤滑油温度が低いほど長くして、如何なる低温(高粘度)のもとでも確実にクラッチ残存潤滑油を飛散させ得るような時間にする。
ステップS207においては、このタイマTの計測時間(エンジンアイドリング回転数上昇制御継続時間)が、ステップS205で設定したエンジンアイドリング回転数上昇時間To未満であるか否かを、つまり、エンジンアイドリング回転数上昇制御が開始されてからエンジンアイドリング回転数上昇時間Toが経過する前か否かをチェックする。
このエンジンアイドリング回転数上昇量ΔNeは、潤滑油温度が低いほど大きくして、如何なる低温(高粘度)のもとでも速やかにクラッチ残存潤滑油を飛散させ得るような回転数上昇量にする。
なお、このエンジンアイドリング回転数上昇量ΔNeと、上記のエンジンアイドリング回転数上昇時間Toとの積が、クラッチ残存潤滑油を飛散させるエネルギーであり、エンジンアイドリング回転数上昇量ΔNeおよびエンジンアイドリング回転数上昇時間Toの一方を小さくし、他方を大きくしても、クラッチ残存潤滑油は所定の速度で確実に飛散させることができる。
これにより、クラッチ残存潤滑油飛散用のエンジンアイドリング回転数上昇制御を実行する。
ステップS211を経てステップS209に至るループに切り替わり、上記のクラッチ残存潤滑油飛散用のエンジンアイドリング回転数上昇制御を終了させる。
潤滑油の供給を停止されたクラッチC1,C2の残存潤滑油を、停車状態でのエンジンアイドリング運転中といえども、大きな遠心力により確実、且つ、速やかに飛散させることができる。
従って、クラッチC1,C2が残存潤滑油を介した引き摺りトルクを発生することがなく、前進走行レンジや後退走行レンジへのセレクトに伴う同期噛合機構のプリシフト用噛合動作が、クラッチ引き摺りトルクにより困難、若しくは不能になるという問題を解消することができる。
上記の作用効果を、如何なる潤滑油温度のもとでも確実に、また、必要最小限のアイドリング回転数上昇制御で効率的に達成することができる。
図4の制御プログラムが開始されるイグニッションスイッチのON時や、非走行レンジが選択された(ステップS203)時に、当該エンジンアイドリング回転数上昇制御を開始させることとしたため、
エンジンアイドリング回転数上昇制御の開始判定を新たに行う面倒を伴うことなく、前記の作用効果を安価に達成することができる。
このエンジンアイドリング回転数上昇制御が無駄に行われて燃費が悪化するのを回避することができる。
非走行レンジから走行レンジへのレンジ切り替えに伴う発進クラッチC1の締結が、エンジンアイドリング回転数上昇状態のまま行われることがなくなり、このエンジンアイドリング回転数上昇状態で発進クラッチC1が締結された場合に生ずるクラッチ締結ショックや、急発進を回避することができる。
図4につき前述した通りエンジンアイドリング回転数上昇制御を終了させるほかに、図3のステップS116およびステップS126でのクラッチ潤滑油供給量零制御も行わせないようにして、
無用な潤滑油供給量零制御でクラッチの潤滑不良が発生することのないようにすることができる。
図4のエンジンアイドリング回転数上昇制御は、図3の潤滑油供給量低下制御(詳しくは、ステップS116およびステップS126での潤滑油供給量零制御)なしに単独で行っても、前記したクラッチ引き摺りトルク低減効果を達成することができる。
ただしこの場合、エンジンアイドリング回転数上昇制御を、同期噛合機構が回転同期を終了するまで継続する必要があることは言うまでもない。
潤滑油温度が、クラッチ引き摺りトルクを発生させる低温であり、運転者がイグニッションスイッチOFF後、短時間で瞬時t1に再度イグニッションスイッチをONさせ、その後の瞬時t3に非走行レンジ(Pレンジを例示したが、Nレンジなども含む)から走行レンジ(Dレンジを例示したが、Lレンジなども含む)へのセレクト操作を行ったことで、対応する同期噛合機構が中立位置から1速位置へ作動して予定のプリシフト用の噛合動作を行う場合のシーンに相当する。
なお、瞬時t3までの間、およびその後も、運転者がアクセルペダルを釈放状態にしているものとする。
クラッチ潤滑油供給量の指令値が零にされ(ステップS116)、アイドリング回転数上昇量ΔNeが潤滑油温度に応じたΔNe1(例えば200rpm)に設定され(ステップS208)、アイドリング回転数上昇時間Toが潤滑油温度に応じたT1(例えば2秒)に設定される(ステップS205)。
よってエンジンは、イグニッションスイッチON瞬時t1より目標アイドリング回転数Neidle=Neidle0+ΔNe1の回転上昇下でアイドリング運転され、
このアイドリング回転数上昇制御は、イグニッションスイッチON瞬時t1からアイドリング回転数上昇時間To=T1が経過する瞬時t2まで行われ、その後エンジンは、ΔNe=0(ステップS211)により通常通りの基本となる初期値Neidle0でアイドリング運転される。
イグニッションスイッチON瞬時t1から瞬時t2までの間は、上記のアイドリング回転数上昇制御による大きな遠心力を受けて潤滑油が速やかに飛散されるため、上記のクラッチ潤滑油供給量零制御と相まって、クラッチ残存潤滑油量は、本実施例(シーン1)の実線で示すごとくに急速に減少する。
しかしアイドリング回転数上昇制御終了時t2には、クラッチ残存潤滑油量は低下目標残存油量(同期噛合機構のプリシフト用噛合動作に支障を来すようなクラッチ引き摺りトルクを発生することのないクラッチ残存潤滑油量)となる。
クラッチ残存潤滑油量を低下目標残存油量へ減少させることができ、同期噛合機構のプリシフト用噛合動作に支障を来すようなクラッチ引き摺りトルクが発生するのを防止することができる。
このため、非走行レンジ(Pレンジ)から走行レンジ(Dレンジ)へのセレクト操作に呼応して瞬時t3に同期噛合機構が中立位置から1速位置へ作動して予定のプリシフト用の噛合動作を行おうとするに際し、
クラッチ残存潤滑油量が未だ低下目標残存油量まで減少しておらず、クラッチ引き摺りトルクが発生して、上記同期噛合機構のプリシフト用噛合動作を困難にしたり、不能にするという懸念がある。
本実施例によれば、アイドリング回転数上昇制御により上記した通り、かかる懸念を確実に払拭することができる。
この場合は、本実施例のようなアイドリング回転数上昇制御が不要であるから、当該アイドリング回転数上昇制御を行わないようにして、無駄なアイドリング回転数上昇制御による燃費の悪化を回避することも可能である。
それ以外の条件は、図5の本実施例(シーン1)と同じで、運転者がイグニッションスイッチOFF後、短時間で瞬時t1に再度イグニッションスイッチをONさせ、その後の瞬時t3'に非走行レンジ(Pレンジ)から走行レンジ(Dレンジ)へのセレクト操作を行ったことで、対応する同期噛合機構が中立位置から1速位置へ作動して予定のプリシフト用の噛合動作を行うものとする。
なお、瞬時t3'までの間、およびその後も、運転者がアクセルペダルを釈放状態にしていることも、図5の本実施例(シーン1)と同じである。
イグニッションスイッチがONされる瞬時t1にエンジンが始動されるが、その目標アイドリング回転数Neidleは本実施例(シーン2)の実線で示すごとく、通常通りの基本となる初期値Neidle0に潤滑油温度対応のアイドリング回転数上昇量ΔNe=ΔNe1を加算した回転数にされる。
このアイドリング回転数上昇制御は、イグニッションスイッチON瞬時t1からアイドリング回転数上昇時間To=T1'が経過する瞬時t2'まで行われ、
その後エンジンは、通常通りの基本となる初期値Neidle0でアイドリング運転される。
イグニッションスイッチON瞬時t1から瞬時t2'までの間は、上記のアイドリング回転数上昇制御による大きな遠心力を受けて潤滑油が速やかに飛散されるため、上記のクラッチ潤滑油供給量零制御と相まって、クラッチ残存潤滑油量は、本実施例(シーン2)の実線で示すごとくに急速に減少する。
瞬時t2'からクラッチ残存潤滑油量は、本実施例(シーン2)の実線で示すごとく、通常の低いアイドリング回転数初期値Neidle0に応じた小さな遠心力により、瞬時t2'までよりもゆっくりと減少する。
しかし、アイドリング回転数上昇制御終了時t2'には低下目標残存油量(同期噛合機構のプリシフト用噛合動作に支障を来すようなクラッチ引き摺りトルクを発生することのないクラッチ残存潤滑油量)となる。
クラッチ残存潤滑油量を低下目標残存油量へ減少させることができ、同期噛合機構のプリシフト用噛合動作に支障を来すようなクラッチ引き摺りトルクが発生するのを防止することができる。
このため、非走行レンジ(Pレンジ)から走行レンジ(Dレンジ)へのセレクト操作に呼応して瞬時t3'に同期噛合機構が中立位置から1速位置へ作動して予定のプリシフト用の噛合動作を行おうとするに際し、
クラッチ残存潤滑油量が未だ低下目標残存油量まで減少しておらず、クラッチ引き摺りトルクが発生して、上記同期噛合機構のプリシフト用噛合動作を困難にしたり、不能にするという懸念がある。
本実施例によれば、本実施例(シーン2)のようにアイドリング回転数上昇時間Toを極低温に応じた長いT1'にするため、上記したところから明らかなようにかかる懸念を確実に払拭することができる。
それ以外の条件は、図5の本実施例(シーン1)と同じで、運転者がイグニッションスイッチOFF後、短時間で瞬時t1に再度イグニッションスイッチをONさせ、その後の瞬時t3"に非走行レンジ(Pレンジ)から走行レンジ(Dレンジ)へのセレクト操作を行ったことで、対応する同期噛合機構が中立位置から1速位置へ作動して予定のプリシフト用の噛合動作を行うものとする。
なお、瞬時t3"までの間、およびその後も、運転者がアクセルペダルを釈放状態にしていることも、図5の本実施例(シーン1)と同じである。
イグニッションスイッチがONされる瞬時t1にエンジンが始動されるが、その目標アイドリング回転数Neidleは本実施例(シーン3)の実線で示すごとく、通常通りの基本となる初期値Neidle0に潤滑油温度対応のアイドリング回転数上昇量ΔNe=ΔNe2を加算した回転数にされる。
このアイドリング回転数上昇制御は、イグニッションスイッチON瞬時t1からアイドリング回転数上昇時間To=T1が経過する瞬時t2まで行われ、
その後エンジンは、通常通りの基本となる初期値Neidle0でアイドリング運転される。
イグニッションスイッチON瞬時t1から瞬時t2までの間は、上記のアイドリング回転数上昇制御による大きな遠心力を受けて潤滑油が速やかに飛散されるため、上記のクラッチ潤滑油供給量零制御と相まって、クラッチ残存潤滑油量は、本実施例(シーン3)の実線で示すごとくに急速に減少する。
瞬時t2からクラッチ残存潤滑油量は、本実施例(シーン3)の実線で示すごとく、通常の低いアイドリング回転数初期値Neidle0に応じた小さな遠心力により、瞬時t2までよりもゆっくりと減少する。
しかしアイドリング回転数上昇制御終了時t2には、クラッチ残存潤滑油量は低下目標残存油量(同期噛合機構のプリシフト用噛合動作に支障を来すようなクラッチ引き摺りトルクを発生することのないクラッチ残存潤滑油量)となる。
クラッチ残存潤滑油量を低下目標残存油量へ減少させることができ、同期噛合機構のプリシフト用噛合動作に支障を来すようなクラッチ引き摺りトルクが発生するのを防止することができる。
従って瞬時t1からのクラッチ残存潤滑油量の低下速度が、図7に本実施例(シーン1)の破線で示すように遅いし、瞬時t2からアイドリング回転数上昇制御の終了でクラッチ残存潤滑油量の低下速度が更に遅くなるため、瞬時t3"よりも後の瞬時t4"でないと低下目標残存油量にならない。
クラッチ残存潤滑油量が未だ低下目標残存油量まで減少しておらず、クラッチ引き摺りトルクが発生して、上記同期噛合機構のプリシフト用噛合動作を困難にしたり、不能にするという懸念がある。
本実施例によれば、本実施例(シーン3)のようにアイドリング回転数上昇量ΔNeを極低温に応じた大きなΔNe2にするため、上記したところから明らかなようにかかる懸念を確実に払拭することができる。
そして、上記の面積が潤滑油温度に応じたものであれば、アイドリング回転数上昇量ΔNeおよびアイドリング回転数上昇時間Toの組み合わせは如何なるものであってもよく、ハードウェアの設計に応じて任意に決定することができる。
イグニッションスイッチON瞬時t1に開始されたアイドリング回転数上昇制御が未だ行われているアイドリング回転数上昇制御時間To=T1中(瞬時t1からアイドリング回転数上昇制御時間To=T1が経過するときの瞬時t6よりも前)に非走行レンジ(Pレンジ)から走行レンジ(Dレンジ)へのセレクト操作が行われた場合の動作を示す。
イグニッションスイッチがONされる瞬時t1に始動されるエンジンの目標アイドリング回転数Neidleは、通常通りの基本となる初期値Neidle0に潤滑油温度対応のアイドリング回転数上昇量ΔNe=ΔNe1を加算した回転数にされる。
しかし本実施例(シーン4)においては、アイドリング回転数上昇制御時間To=T1中の瞬時t5に非走行レンジ(Pレンジ)から走行レンジ(Dレンジ)へのセレクト操作が行わたことで、このセレクト操作瞬時t5に目標アイドリング回転数Neidleが実線で示すごとく本来の初期値Neidle0にされ(ステップS203、ステップS211、ステップS209)、アイドリング回転数上昇制御を終了する。
これにより、実エンジン回転数はセレクト操作瞬時t5以降、本実施例(シーン4)の二点鎖線で示すごとく、エンジン特性固有の応答遅れをもって低下する。
イグニッションスイッチON瞬時t1から瞬時t5までの間は、上記のアイドリング回転数上昇制御による大きな遠心力を受けて潤滑油が速やかに飛散されるため、上記のクラッチ潤滑油供給量零制御と相まって、クラッチ残存潤滑油量は、本実施例(シーン4)の実線で示すごとくに急速に減少する。
瞬時t5からクラッチ残存潤滑油量は、本実施例(シーン4)の実線で示すごとく、二点鎖線により示す実エンジン回転数の低下に呼応した小さな遠心力により、瞬時t5までよりもゆっくりと減少する。
かようにクラッチ残存潤滑油量が低下目標残存油量へと低下すると(瞬時t7)、瞬時t5のセレクト操作に対応したプリシフト用の同期噛合機構の噛合動作が可能になり、瞬時t7に同期噛合機構は中立位置から1速位置への作動による噛合動作を行うことができる。
かかる同期噛合機構の中立位置から1速位置への作動による噛合動作(プリシフト)が完了した瞬時t7に、クラッチ潤滑油供給量の指令値は少量にセットされる(ステップS106、ステップS107、ステップS110、ステップS113、ステップS114)。
この発進を可能にすべく発進用の湿式回転クラッチC1が、ショック対策用の所定の時間変化勾配でスリップ締結制御されながら締結力を漸増され、瞬時t9に完全締結状態になる。
かかる湿式回転クラッチC1のスリップ締結進行中(t8〜t9)、クラッチC1の発熱量が多いことから、クラッチ潤滑油供給量の指令値を多量にセットする(ステップS106、ステップS107、ステップS108、ステップS109)。
湿式回転クラッチC1が完全締結状態になる瞬時t9以降は、クラッチ潤滑油供給量の指令値を少量にセットされる(ステップS106、ステップS107、ステップS110、ステップS113、ステップS114)。
実エンジン回転数がセレクト操作瞬時t5以降、本実施例(シーン4)の二点鎖線で示すごとく、エンジン特性固有の応答遅れをもって低下するといえども、瞬時t8の発進操作に呼応した発進用湿式回転クラッチC1のスリップ締結開始前には実エンジン回転数を初期値Neidle0に戻しておくことができ、発進用湿式回転クラッチC1の締結ショックや、急発進を防止することができる。
実エンジン回転数の低下が、図8に本実施例(シーン1)の破線で示すごとくに大きく遅れ、発進操作に呼応した発進用湿式回転クラッチC1のスリップ締結開始瞬時t8に未だ実エンジン回転数が初期値Neidle0よりも相当に高くて、発進用湿式回転クラッチC1の締結ショックや、急発進を生ずる。
図8の実線で示す本実施例(シーン4)の制御によれば、かかるクラッチC1の締結ショックや急発進に関する問題を回避することができる。
瞬時t1に走行レンジ(Dレンジ)から非走行レンジ(Pレンジ)へのセレクト操作を行ったことにより、対応する同期噛合機構が1速位置から中立位置へ作動して予定のプリシフト用の外脱動作を行う場合の作用を示し、また、
瞬時t3に非走行レンジ(Pレンジ)から走行レンジ(Dレンジ)へのセレクト操作を行ったことにより、対応する同期噛合機構が中立位置から1速位置へ作動して予定のプリシフト用の噛合動作を行う場合の作用を示す。
よって、走行レンジ(Dレンジ)から非走行レンジ(Pレンジ)へのセレクト操作瞬時t1にエンジンの目標アイドリング回転数Neidleは、通常通りの基本となる初期値Neidle0に潤滑油温度対応のアイドリング回転数上昇量ΔNe=ΔNe1を加算した回転数にされる(ステップS209)。
このアイドリング回転数上昇制御は、上記のセレクト操作瞬時t1からアイドリング回転数上昇時間To=T1が経過する瞬時t2まで行われ、
その後エンジンは、ΔNe=0(ステップS211)により通常通りの基本となる初期値Neidle0でアイドリング運転される。
しかして当該クラッチ残存潤滑油量は、瞬時t1から瞬時t2までの間、上記のアイドリング回転数上昇制御による大きな遠心力を受けて潤滑油が速やかに飛散されるため、上記のクラッチ潤滑油供給量零制御と相まって、本実施例(シーン5)の実線により示すごとくに急速に減少する。
瞬時t2からクラッチ残存潤滑油量は、本実施例(シーン5)の実線により示すごとく、通常の低いアイドリング回転数初期値Neidle0に応じた小さな遠心力により、瞬時t2までよりもゆっくりと減少する。
しかしアイドリング回転数上昇制御終了時t2には、クラッチ残存潤滑油量は低下目標残存油量(同期噛合機構のプリシフト用噛合動作に支障を来すようなクラッチ引き摺りトルクを発生することのないクラッチ残存潤滑油量)となる。
クラッチ残存潤滑油量を低下目標残存油量へ減少させることができ、同期噛合機構のプリシフト用噛合動作に支障を来すようなクラッチ引き摺りトルクが発生するのを防止することができる。
このため、非走行レンジ(Pレンジ)から走行レンジ(Dレンジ)へのセレクト操作に呼応し、瞬時t3に同期噛合機構が中立位置から1速位置へ作動して予定のプリシフト用の噛合動作を行おうとするに際し、
クラッチ残存潤滑油量が未だ低下目標残存油量まで減少しておらず、クラッチ引き摺りトルクが発生して、上記同期噛合機構のプリシフト用噛合動作を困難にしたり、不能にするという懸念がある。
本実施例によれば、アイドリング回転数上昇制御により上記した通り、かかる懸念を確実に払拭することができる。
t1〜t3時間が長い場合は、非走行レンジ(Pレンジ)→走行レンジ(Dレンジ)セレクト操作瞬時t3前にクラッチ残存潤滑油が、上昇制御しない通常のアイドリング回転数Neidle0による小さな遠心力でもほとんど飛散され得て、前記の潤滑油供給量零制御と相まってクラッチ引き摺りトルクを発生することがない。
この場合は、本実施例のようなアイドリング回転数上昇制御が不要であるから、当該アイドリング回転数上昇制御を行わないようにして、無駄なアイドリング回転数上昇制御による燃費の悪化を回避することも可能である。
それ以外の条件は、図9の本実施例(シーン5)と同じで、エンジンをアイドリング運転させたまま、ブレーキの作動により停車している間の、
瞬時t1に走行レンジ(Dレンジ)から非走行レンジ(Pレンジ)へのセレクト操作を行ったことにより、対応する同期噛合機構が1速位置から中立位置へ作動して予定のプリシフト用の外脱動作を行い、また、
瞬時t3'に非走行レンジ(Pレンジ)から走行レンジ(Dレンジ)へのセレクト操作を行ったことにより、対応する同期噛合機構が中立位置から1速位置へ作動して予定のプリシフト用の噛合動作を行うものとする。
このアイドリング回転数上昇制御は、上記のセレクト操作瞬時t1からアイドリング回転数上昇時間To=T1'が経過する瞬時t2'まで行われ、
その後エンジンは通常通りの基本となる初期値Neidle0でアイドリング運転される。
瞬時t2'からクラッチ残存潤滑油量は、本実施例(シーン6)の実線により示すごとく、通常の低いアイドリング回転数初期値Neidle0に応じた小さな遠心力により、瞬時t2'までよりもゆっくりと減少する。
しかしアイドリング回転数上昇制御終了時t2'には、クラッチ残存潤滑油量は低下目標残存油量となる。
クラッチ残存潤滑油量を低下目標残存油量へ減少させることができ、同期噛合機構のプリシフト用噛合動作に支障を来すようなクラッチ引き摺りトルクが発生するのを防止することができる。
目標アイドリング回転数Neidleが図10に本実施例(シーン5)の破線で示すごとく、早い瞬時t2に通常の低いアイドリング回転数Neidle0に低下してしまい、この早い瞬時t2からクラッチ残存潤滑油量は図10に本実施例(シーン5)の破線で示すごとくゆっくりと減少し、瞬時t3'よりも後の瞬時t4'でないと低下目標残存油量にならない。
クラッチ残存潤滑油量が未だ低下目標残存油量まで減少しておらず、クラッチ引き摺りトルクが発生して、上記同期噛合機構のプリシフト用噛合動作を困難にしたり、不能にするという懸念がある。
本実施例によれば、本実施例(シーン6)のようにアイドリング回転数上昇時間Toを極低温に応じた長いT1'にするため、上記したところから明らかなようにかかる懸念を確実に払拭することができる。
それ以外の条件は、図9の本実施例(シーン5)と同じで、エンジンをアイドリング運転させたまま、ブレーキの作動により停車している間において、
瞬時t1に走行レンジ(Dレンジ)から非走行レンジ(Pレンジ)へのセレクト操作を行ったことにより、対応する同期噛合機構が1速位置から中立位置へ作動して予定のプリシフト用の外脱動作を行い、また、
瞬時t3"に非走行レンジ(Pレンジ)から走行レンジ(Dレンジ)へのセレクト操作を行ったことにより、対応する同期噛合機構が中立位置から1速位置へ作動して予定のプリシフト用の噛合動作を行うものとする。
このアイドリング回転数上昇制御は、上記のセレクト操作瞬時t1からアイドリング回転数上昇時間To=T1が経過する瞬時t2まで行われ、
その後エンジンは通常通りの基本となる初期値Neidle0でアイドリング運転される。
瞬時t2からクラッチ残存潤滑油量は、本実施例(シーン7)の実線により示すごとく、通常の低いアイドリング回転数初期値Neidle0に応じた小さな遠心力により、瞬時t2までよりもゆっくりと減少する。
しかしアイドリング回転数上昇制御終了時t2には、クラッチ残存潤滑油量は低下目標残存油量となる。
クラッチ残存潤滑油量を低下目標残存油量へ減少させることができ、同期噛合機構のプリシフト用噛合動作に支障を来すようなクラッチ引き摺りトルクが発生するのを防止することができる。
従って瞬時t1からのクラッチ残存潤滑油量の低下速度が、図11に本実施例(シーン5)の破線で示すように遅いし、瞬時t2からアイドリング回転数上昇制御の終了でクラッチ残存潤滑油量の低下速度が更に遅くなるため、瞬時t3"よりも後の瞬時t4"でないと低下目標残存油量にならない。
クラッチ残存潤滑油量が未だ低下目標残存油量まで減少しておらず、クラッチ引き摺りトルクが発生して、上記同期噛合機構のプリシフト用噛合動作を困難にしたり、不能にするという懸念がある。
本実施例によれば、本実施例(シーン7)のようにアイドリング回転数上昇量ΔNeを極低温に応じた大きなΔNe2にするため、上記したところから明らかなようにかかる懸念を確実に払拭することができる。
そして、上記の面積が潤滑油温度に応じたものであれば、アイドリング回転数上昇量ΔNeおよびアイドリング回転数上昇時間Toの組み合わせは如何なるものであってもよく、ハードウェアの設計に応じて任意に決定することができる。
潤滑油温度が図9に示した本実施例(シーン5)の場合と同じ低温であり、また、
図9に示した本実施例(シーン5)の場合と同じくエンジンをアイドリング運転させたまま、ブレーキの作動により停車している間において、瞬時t1に走行レンジ(Dレンジ)から非走行レンジ(Pレンジ)へのセレクト操作を行ったことで、対応する同期噛合機構が1速位置から中立位置へ作動して予定のプリシフト用の外脱動作を行い、
上記のセレクト操作時t1に開始されたアイドリング回転数上昇制御が行われているアイドリング回転数上昇制御時間To=T1中(瞬時t1からアイドリング回転数上昇制御時間To=T1が経過したときの瞬時t6よりも前)に非走行レンジ(Pレンジ)から走行レンジ(Dレンジ)へのセレクト操作が行われた場合の動作を示す。
上記のセレクト操作瞬時t1に始動されるエンジンの目標アイドリング回転数Neidleは、通常通りの基本となる初期値Neidle0に潤滑油温度対応のアイドリング回転数上昇量ΔNe=ΔNe1を加算した回転数にされる。
しかし本実施例(シーン8)においては、アイドリング回転数上昇制御時間To=T1中の瞬時t5に非走行レンジ(Pレンジ)から走行レンジ(Dレンジ)へのセレクト操作が行わたことで、このセレクト操作瞬時t5に目標アイドリング回転数Neidleが実線で示すごとく本来の初期値Neidle0にされ(ステップS203、ステップS211、ステップS209)、アイドリング回転数上昇制御を終了する。
これにより、実エンジン回転数はセレクト操作瞬時t5以降、本実施例(シーン8)の二点鎖線で示すごとく、エンジン特性固有の応答遅れをもって低下する。
瞬時t5からクラッチ残存潤滑油量は、本実施例(シーン8)の実線で示すごとく、二点鎖線により示す実エンジン回転数の低下に呼応した小さな遠心力により、瞬時t5までよりもゆっくりと減少する。
かようにクラッチ残存潤滑油量が低下目標残存油量へと低下すると(瞬時t7)、瞬時t5のセレクト操作に対応したプリシフト用の同期噛合機構の噛合動作が可能になり、瞬時t7に同期噛合機構は中立位置から1速位置への作動により噛合動作を行うことができる。
かかる同期噛合機構の中立位置から1速位置への作動による噛合動作(プリシフト)が完了した瞬時t7に、クラッチ潤滑油供給量の指令値は少量にセットされる(ステップS106、ステップS107、ステップS110、ステップS113、ステップS114)。
かかる湿式回転クラッチC1のスリップ締結進行中(t8〜t9)、クラッチC1の発熱量が多いことから、クラッチ潤滑油供給量の指令値を多量にセットする(ステップS106、ステップS107、ステップS108、ステップS109)。
湿式回転クラッチC1が完全締結状態になる瞬時t9以降は、クラッチ潤滑油供給量の指令値を少量にセットされる(ステップS106、ステップS107、ステップS110、ステップS113、ステップS114)。
実エンジン回転数がセレクト操作瞬時t5以降、本実施例(シーン8)の二点鎖線で示すごとく、エンジン特性固有の応答遅れをもって低下するといえども、瞬時t8の発進操作に呼応した発進用湿式回転クラッチC1のスリップ締結開始前には実エンジン回転数を初期値Neidle0に戻しておくことができ、発進用湿式回転クラッチC1の締結ショックや急発進を防止することができる。
実エンジン回転数の低下が、図12に本実施例(シーン5)の破線で示すごとくに大きく遅れ、発進操作に呼応した発進用湿式回転クラッチC1のスリップ締結開始瞬時t8に未だ実エンジン回転数が初期値Neidle0よりも相当に高くて、発進用湿式回転クラッチC1の締結ショックや、急発進を生ずる。
図12の実線で示す本実施例(シーン8)の制御によれば、かかるクラッチC1の締結ショックや急発進に関する問題を回避することができる。
実際はセレクト操作に対し、同期噛合機構のプリシフト用噛合動作は或る応答遅れをもって行われる。
同期噛合機構がプリシフト用噛合動作を開始する前にクラッチへの潤滑油供給が開始されることになり、クラッチ引き摺りトルクの発生によって同期噛合機構のプリシフト用噛合動作が困難になったり、不能になる懸念がある。
これにより、同期噛合機構がプリシフト用噛合動作を開始する前にクラッチへ潤滑油が供給され始めることがなくなり、同期噛合機構のプリシフト用噛合動作が困難になったり、不能になるという上記の懸念を払拭することができる。
前記作用効果を一層確実にするためには、クラッチ残存潤滑油量が低下目標残存油量よりも若干少なくなるようにアイドリング回転数上昇時間Toを定めるのがよいのは言うまでもない。
走行レンジが後退走行レンジ(Rレンジ)である場合も、動作は前進走行レンジ(Dレンジ)の場合と同様である。
2 クランクシャフト
C1 奇数変速段クラッチ(湿式回転クラッチ)
C2 偶数変速段クラッチ(湿式回転クラッチ)
3 クラッチハウジング
4 第1入力軸
5 第2入力軸
6 出力軸
7 変速機ケース
8 トーショナルダンパ
9 オイルポンプ
10 カウンターシャフト
11 カウンターギヤ
12 出力歯車
G1 第1速歯車組
G2 第2速歯車組
G3 第3速歯車組
G4 第4速歯車組
G6 第6速歯車組
GR 後退歯車組
21 1速−後退用同期噛合機構
22 3速−5速用同期噛合機構
29 6速用同期噛合機構
30 2速−4速用同期噛合機構
Claims (11)
- エンジンおよび変速機入力軸間に介在され、潤滑油の供給により冷却および摩耗防止される湿式回転クラッチと、
該湿式回転クラッチおよび変速機出力軸間に介在され、所望の変速段を実現するための同期噛合機構とを具え、
前記湿式回転クラッチを解放させた状態で、前記同期噛合機構を中立位置から変速段実現位置へ向け作動させて噛合動作させることにより、前記所望の変速段を実現し得るようにした変速機に用いられ、
前記湿式回転クラッチの引き摺りトルクを低減するための装置において、
前記同期噛合機構の噛合動作が開始される以前において、前記湿式回転クラッチの入力側回転数を、該クラッチ入力側回転数に応じた遠心力で該湿式回転クラッチ内の残存潤滑油が、前記同期噛合機構の噛合動作に支障を来すことのない油量となるまで排除されるべく上昇させるよう構成したことを特徴とする湿式回転クラッチの引き摺りトルク低減制御装置。
- 前記変速機は、非走行レンジが選択された時から、前記同期噛合機構が噛合動作を完了するまでの間、前記湿式回転クラッチへの潤滑油供給量を、前記同期噛合機構の噛合動作に支障を来さない所定量以下にするものである、請求項1に記載の湿式回転クラッチの引き摺りトルク低減制御装置において、
前記非走行レンジが選択されている間であって、前記同期噛合機構が噛合動作を開始する前の所定時間中に、前記湿式回転クラッチの入力側回転数上昇制御を行うよう構成したことを特徴とする湿式回転クラッチの引き摺りトルク低減制御装置。 - 請求項1または2に記載の湿式回転クラッチの引き摺りトルク低減制御装置において、
前記湿式回転クラッチの入力側回転数上昇制御を、非走行レンジが選択された時に開始させるよう構成したことを特徴とする湿式回転クラッチの引き摺りトルク低減制御装置。 - 請求項1または2に記載の湿式回転クラッチの引き摺りトルク低減制御装置において、
前記湿式回転クラッチの入力側回転数上昇制御を、エンジンイグニッションスイッチのON時に開始させるよう構成したことを特徴とする湿式回転クラッチの引き摺りトルク低減制御装置。 - 請求項2〜4のいずれか1項に記載の湿式回転クラッチの引き摺りトルク低減制御装置において、
前記湿式回転クラッチへの潤滑油供給量の低下は、該潤滑油供給量を0にするものであることを特徴とする湿式回転クラッチの引き摺りトルク低減制御装置。 - 請求項2〜5のいずれか1項に記載の湿式回転クラッチの引き摺りトルク低減制御装置において、
前記湿式回転クラッチの入力側回転数上昇制御を行う所定時間は、前記クラッチ潤滑油が低温であるほど長い時間であることを特徴とする湿式回転クラッチの引き摺りトルク低減制御装置。 - 請求項2〜6のいずれか1項に記載の湿式回転クラッチの引き摺りトルク低減制御装置において、
前記所定時間が経過する前に非走行レンジから走行レンジへのレンジ切り替え操作がなされた場合は、前記湿式回転クラッチの入力側回転数上昇制御を終了させるよう構成したことを特徴とする湿式回転クラッチの引き摺りトルク低減制御装置。 - 請求項1〜7のいずれか1項に記載の湿式回転クラッチの引き摺りトルク低減制御装置において、
前記湿式回転クラッチの入力側回転数上昇制御における回転数上昇幅を、前記クラッチ潤滑油が低温であるほど大きくしたことを特徴とする湿式回転クラッチの引き摺りトルク低減制御装置。 - 請求項1〜8のいずれか1項に記載の湿式回転クラッチの引き摺りトルク低減制御装置において、
前記クラッチ潤滑油が設定温度以上である場合、前記湿式回転クラッチの入力側回転数上昇制御を行わないよう構成したことを特徴とする湿式回転クラッチの引き摺りトルク低減制御装置。 - 請求項2〜9のいずれか1項に記載の湿式回転クラッチの引き摺りトルク低減制御装置において、
前記クラッチ潤滑油が設定温度以上である場合、湿式回転クラッチへの潤滑油供給量を所定量以下にする前記クラッチ潤滑油量低下制御を行わないよう構成したことを特徴とする湿式回転クラッチの引き摺りトルク低減制御装置。 - 請求項9または10に記載の湿式回転クラッチの引き摺りトルク低減制御装置において、
前記設定温度は、湿式回転クラッチの引き摺りトルクが、前記同期噛合機構の噛合動作に支障を来さす大きさにならない高温域の下限値であることを特徴とする湿式回転クラッチの引き摺りトルク低減制御装置。
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