JP5251256B2 - 湿式回転クラッチの引き摺りトルク低減制御装置 - Google Patents

湿式回転クラッチの引き摺りトルク低減制御装置 Download PDF

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Description

本発明は、マニュアルトランスミッションを自動変速可能に構成した自動変速式マニュアルトランスミッションを含む自動変速機などの変速機に関し、
特に、当該変速機の伝動系に挿入されて動力の断接を司る湿式回転クラッチが、解放中にもかかわらずクラッチディスク間に存在する潤滑油の粘性を介して発生する引き摺りトルクを低減するための装置に関するものである。
マニュアルトランスミッションの自動変速化を実現するためには、エンジンおよびトランスミッション間を適宜遮断可能にすべく設けたクラッチを自動的に解放・締結制御し得るようにする必要があり、
これがため上記のクラッチとしては、制御のし易さもあって湿式回転クラッチを用いることが多い。
かように湿式回転クラッチを伝動系に具えた自動変速式マニュアルトランスミッションとしては従来、例えば特許文献1に記載のごときものが知られている。
この自動変速式マニュアルトランスミッションは、湿式回転クラッチを解放した状態で、同期噛合機構(シンクロメッシュ機構)を中立位置から変速段実現位置へ作動させて行う噛合動作により、実現変速段の切り替えや、中立状態から前発進変速段または後発進変速段の実現が可能となるようにしたものである。
なお、湿式回転クラッチを解放した状態で同期噛合機構を作動させる理由は、
湿式回転クラッチを締結している場合、これを介してエンジンにより同期噛合機構の入力側回転メンバが回転されており、結果として同期噛合機構が、この入力側回転メンバを、車輪と共に回転する同期噛合機構の出力側回転メンバに対し回転同期させることができず、
これら入出力側回転メンバの相対回転に起因し、同期噛合機構を中立位置から変速段実現位置へ作動させて噛合動作させることができないためである。
これに対し湿式回転クラッチを解放している場合、同期噛合機構の入力側回転メンバがエンジンから切り離され、同期噛合機構が、この入力側回転メンバを、車輪と共に回転する同期噛合機構の出力側回転メンバに対し回転同期させることができ、
これら入出力側回転メンバの相対回転が無いことに起因し、同期噛合機構が中立位置から変速段実現位置へ作動して噛合動作を行い得ることとなる。
特開2007−092814号公報
ところで湿式回転クラッチは、特にその締結過渡期においてスリップにより発生する摩擦熱でクラッチが過熱状態になるのを防止すべく冷却したり、締結過渡期においてクラッチディスクが摩耗するのを防止する必要があり、
そのため湿式回転クラッチには、トランスミッションの潤滑油を供給して上記の冷却や摩耗防止を行うのが常套である。
しかし、かかる冷却や摩耗防止用に湿式回転クラッチへ潤滑油を供給する場合、湿式回転クラッチが、解放中にもかかわらずクラッチディスク間に存在する潤滑油の粘性を介して引き摺りトルクを発生する。
この引き摺りトルクは、湿式回転クラッチが解放状態であるのに、エンジンから同期噛合機構の入力側回転メンバへ引き摺りトルク分のトルクを伝達し、この入力側回転メンバを回転させることになり、
結果として同期噛合機構が、この入力側回転メンバを、車輪と共に回転する同期噛合機構の出力側回転メンバに対し回転同期させることを困難にし、同期噛合機構を中立位置から変速段実現位置へ作動させて噛合動作させることが困難になり、変速に悪影響が及んだり、変速が困難になるという問題があった。
本発明は、湿式回転クラッチのクラッチディスク間に介在している潤滑油が、クラッチから確実に、且つ、速やかに排除されるような対策を施して、上記の問題を解消し得るようにした湿式回転クラッチの引き摺りトルク低減を提案することを目的とする。
この目的のため、本発明による湿式回転クラッチの引き摺りトルク低減制御装置は、請求項1に記載したごとく、
エンジンおよび変速機入力軸間に介在され、潤滑油の供給により冷却および摩耗防止される湿式回転クラッチと、
該湿式回転クラッチおよび変速機出力軸間に介在され、所望の変速段を実現するための同期噛合機構とを具え、
前記湿式回転クラッチを解放させた状態で、前記同期噛合機構を中立位置から変速段実現位置へ向け作動させて噛合動作させることにより、前記所望の変速段を実現し得るようにした変速機に用いられ、
前記湿式回転クラッチの引き摺りトルクを低減するための装置において、
前記同期噛合機構の噛合動作が開始される以前において、前記湿式回転クラッチの入力側回転数を、該クラッチ入力側回転数に応じた遠心力で該湿式回転クラッチ内の残存潤滑油が、前記同期噛合機構の噛合動作に支障を来すことのない油量となるまで排除されるべく上昇させるよう構成したことを特徴とするものである。
上記した本発明による湿式回転クラッチの引き摺りトルク低減制御装置にあっては、
同期噛合機構の噛合動作が開始される以前において、湿式回転クラッチの入力側回転数を、該クラッチ入力側回転数に応じた遠心力で該湿式回転クラッチ内の残存潤滑油が、前記同期噛合機構の噛合動作に支障を来すことのない油量となるまで排除されるよう上昇させるため、
同期噛合機構の噛合動作が開始されるときには、解放状態である湿式回転クラッチのクラッチディスク間に介在している残存潤滑油を、クラッチ入力側回転数の上昇に伴う大きな遠心力により、同期噛合機構の噛合動作に支障を来すことのない油量となるまでクラッチから確実に、且つ、速やかに排除することができる。
かように、同期噛合機構の噛合動作が開始される以前において湿式回転クラッチ内の残存潤滑油を、同期噛合機構の噛合動作に支障を来すことのない油量となるまで確実に、且つ、速やかに排除し得ることにより、
湿式回転クラッチがクラッチディスク間における残存潤滑油を介した引き摺りトルクを発生することがなくなり、
これによる問題、つまり、引き摺りトルクにより同期噛合機構が回転同期作用を行い得難くて、変速に悪影響が及んだり、変速が困難になるという前記の問題を解消することができる。

以下、本発明の実施の形態を、図面に示す実施例に基づき詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例になる湿式回転クラッチの引き摺りトルク低減制御装置を具えた変速機としてのツインクラッチ式マニュアルトランスミッションを示す骨子図である。
エンジン1の出力軸(クランクシャフト2)を、クラッチハウジング3内における奇数変速段(第1速、第3速、第5速、後退)用の自動湿式回転クラッチC1、および、偶数変速段(第2速、第4速、第6速)用の自動湿式回転クラッチC2を介して、ツインクラッチ式マニュアルトランスミッション内における奇数変速段(第1速、第3速、第5速、後退)用の第1入力軸4、および、ツインクラッチ式マニュアルトランスミッション内における偶数変速段(第2速、第4速、第6速)用の第2入力軸5に結合する。
ツインクラッチ式マニュアルトランスミッションの出力軸6は、図示せざるプロペラシャフトやディファレンシャルギヤ装置を介して左右駆動車輪に結合する。
以下、図1に基づきツインクラッチ式マニュアルトランスミッションを詳述する。
7は、クラッチハウジング3に連なる変速機ケースを示し、このクラッチハウジング3内には上記奇数変速段用自動湿式回転クラッチC1および偶数変速段用自動湿式回転クラッチC2の他に、これらクラッチC1,C2およびエンジンクランクシャフト2間を緩衝下に駆動結合するトーショナルダンパ8、および、このトーショナルダンパ8を介して常時エンジン駆動されるオイルポンプ9を内蔵させる。
なお奇数変速段クラッチC1および偶数変速段クラッチC2はそれぞれ、常態で解放しているノーマルオープン型クラッチとする。
ツインクラッチ式マニュアルトランスミッションは、オイルポンプ9からの作動油を媒体として、後述するクラッチC1,C2の締結・解放制御を含む変速段実現制御(自動変速)を実行する。
オイルポンプ9からの作動油は更に、図1に矢αで示すごとく、第1入力軸4に穿った油路を経由し偶数変速段クラッチC2および奇数変速段クラッチC1に、偶数変速段クラッチC2の内周部より潤滑油として供給し、
これにより偶数変速段クラッチC2および奇数変速段クラッチC1を、特に締結過渡期の発熱や摩耗に対処すべく、冷却すると共に摩耗防止する。
変速機ケース7内には以下の歯車変速機構を収納する。
前記のごとく奇数変速段クラッチC1および偶数変速段クラッチC2を介してトーショナルダンパ8からのエンジン回転を選択的に入力される第1入力軸4および第2入力軸5のうち第2入力軸5は中空とする。
かかる中空の第2入力軸5を第1入力軸4上に嵌合し、内側の第1入力軸4および外側の第2入力軸5を相互に同心状態で相対回転自在とする。
上記のごとく相互に回転自在に嵌合した第1入力軸4および第2入力軸5のエンジン側前端をクラッチC1,C2に結合する。
第1入力軸4を第2入力軸5の後端から突出させ、この突出した第1入力軸4の後端部4aに同軸に突き合わせて前記の変速機出力軸6を相対回転可能に設け、この出力軸6を変速機ケース7の後端から突出させる。
第1入力軸4、第2入力軸5、および出力軸6に平行に配してカウンターシャフト10を設け、これを変速機ケース7内に回転自在に支持する。
カウンターシャフト10の後端にはカウンターギヤ11を一体回転可能に設け、これと同じ軸直角面内に配して出力軸6に出力歯車12を設け、これらカウンターギヤ11および出力歯車12を相互に噛合させてカウンターシャフト10を出力軸6に駆動結合する。
ここでカウンターギヤ11は、そのピッチ円直径を出力歯車12のピッチ円直径よりも小さくし、これらカウンターギヤ11および出力歯車12により減速歯車組を構成する。
第1入力軸4の後端部4aとカウンターシャフト10との間に奇数変速段(第1速、第3速)グループの歯車組G1,G3、および後退変速段の歯車組GRを設け、これらをエンジン1に近いフロント側から、第1速歯車組G1、後退歯車組GR、および第3速歯車組G3の順に配置する。
第1速歯車組G1および後退歯車組GRは、第2入力軸5の後端と変速機ケース中間壁7aとの間に位置させるが、後退歯車組GRを変速機ケース中間壁7aの直近に位置させる。
第3速歯車組G3は、変速機ケース中間壁7aを挟んで第1速歯車組G1および後退歯車組GRの反対側に配置するが、変速機ケース中間壁7aの直近に、つまり、第1入力軸4(後端部4a)の最後部に位置させる。
第1速歯車組G1は、第1入力軸4の後端部4aに一体成形した第1速入力歯車13と、カウンターシャフト10上に回転自在に設けた第1速出力歯車14とを相互に噛合させて構成する。
後退歯車組GRは、第1入力軸4の後端部4aに一体成形した後退入力歯車15と、カウンターシャフト10上に回転自在に設けた後退出力歯車16と、これら歯車15,16に噛合して当該歯車15,16間を逆転下に駆動結合するリバースアイドラギヤ17とで構成し、
リバースアイドラギヤ17を、変速機ケース中間壁7aに植設したリバースアイドラ軸18により回転自在に支持する。
第3速歯車組G3は、第1入力軸4の後端部4aに回転自在に設けた第3速入力歯車19と、カウンターシャフト10に駆動結合して設けた第3速出力歯車20とを相互に噛合させて構成する。
カウンターシャフト10には更に、第1速出力歯車14および後退出力歯車16間に配して1速−後退用同期噛合機構(シンクロメッシュ機構)21を設け、この同期噛合機構21は、そのカップリングスリーブ21aを軸線方向へシフトさせることで以下のように機能するものとする。
つまり、カップリングスリーブ21aを図示の中立位置から右行させてクラッチギヤ21bに噛合させるとき、第1速出力歯車14がカウンターシャフト10に駆動結合されて後述するごとく第1速を実現することが可能である。
また、カップリングスリーブ21aを図示の中立位置から逆に左行させてクラッチギヤ21cに噛合させるとき、後退出力歯車16がカウンターシャフト10に駆動結合されて後述するごとく後退を実現することが可能である。
第1入力軸4の後端部4aには更に、第3速入力歯車19および出力歯車12間に配して3速−5速用同期噛合機構(シンクロメッシュ機構)22を設け、この同期噛合機構22は、そのカップリングスリーブ22aを軸線方向へシフトさせることで以下のように機能するものとする。
つまり、カップリングスリーブ22aを図示の中立位置から右行させてクラッチギヤ22bに噛合させるとき、第3速入力歯車19が第1入力軸4に駆動結合されて後述するごとく第3速を実現することが可能である。
また、カップリングスリーブ22aを図示の中立位置から逆に左行させてクラッチギヤ22cに噛合させるとき、第1入力軸4(その後端部4a)が出力歯車12(出力軸6)に直結されて後述するごとく第5速を実現することが可能である。
中空の第2入力軸5とカウンターシャフト10との間には、偶数変速段(第2速、第4速、第6速)グループの歯車組、つまり、エンジンに近いフロント側から順次、第6速歯車組G6、第2速歯車組G2、および第4速歯車組G4を配して設ける。
第6速歯車組G6は変速機ケース7の前壁7bに沿うよう第2入力軸5の前端に配置し、第4速歯車組G4は第2入力軸5の後端に配置し、第2速歯車組G2は第2入力軸5の両端間中央部に配置する。
第6速歯車組G6は、第2入力軸5の外周に一体成形した第6速入力歯車23と、カウンターシャフト10上に回転自在に設けた第6速出力歯車24とを相互に噛合させて構成する。
第2速歯車組G2は、第2入力軸5の外周に一体成形した第2速入力歯車25と、カウンターシャフト10上に回転自在に設けた第2速出力歯車26とを相互に噛合させて構成する。
第4速歯車組G4は、第2入力軸5の外周に一体成形した第4速入力歯車27と、カウンターシャフト10上に回転自在に設けた第4速出力歯車28とを相互に噛合させて構成する。
カウンターシャフト10には更に、第6速出力歯車24および第2速出力歯車24間に配して6速専用の同期噛合機構(シンクロメッシュ機構)29を設け、この同期噛合機構29は、そのカップリングスリーブ29aを軸線方向へシフトさせることにより以下のごとくに機能するものとする。
つまり、カップリングスリーブ29aを図示の中立位置から右行させてクラッチギヤ29bに噛合させるとき、第6速出力歯車24がカウンターシャフト10に駆動結合されて後述するごとく第6速を実現することが可能である。
またカウンターシャフト10には、第2速出力歯車26および第4速出力歯車28間に配して2速−4速用同期噛合機構(シンクロメッシュ機構)30を設け、この同期噛合機構30は、そのカップリングスリーブ30aを軸線方向へシフトさせることにより以下のごとくに機能するものとする。
つまり、カップリングスリーブ30aを図示の中立位置から右行させてクラッチギヤ30bに噛合させるとき、第2速出力歯車26がカウンターシャフト10に駆動結合されて後述するごとく第2速を実現することが可能である。
また、カップリングスリーブ30aを図示の中立位置から逆に左行させてクラッチギヤ30cに噛合させるとき、第4速出力歯車28がカウンターシャフト10に駆動結合されて後述するごとく第4速を実現することが可能である。
上記の構成になるツインクラッチ式マニュアルトランスミッションの変速作用を次に説明する。
動力伝達を希望しない中立(N)レンジや駐車(P)レンジのような非走行レンジにおいては、ノーマルオープン型クラッチ(自動湿式回転クラッチ)C1,C2の双方を非制御状態にして解放し、また、同期噛合機構21,22,29,30のカップリングスリーブ21a,22a,29a,30aを全て図示の中立位置にして、ツインクラッチ式マニュアルトランスミッションを動力伝達が行われない中立状態にする。
前進動力伝達を希望するDレンジや、後退動力伝達を希望するRレンジのような走行レンジにおいては、
オイルポンプ9からの作動油を媒体として以下のごとくに同期噛合機構21,22,29,30のカップリングスリーブ21a,22a,29a,30a、および湿式回転クラッチC1,C2を制御することにより各々の前進変速段や、後退変速段を実現することができる。
なお、自動湿式回転クラッチC1,C2は、発進変速段である第1速および後退変速段への投入を司るときのショック対策用に行うスリップ締結のためや、また変速中におけるクラッチの掛け替え制御用に行うスリップ締結のために、冷却や摩耗防止を要求されることから、
湿式回転クラッチC1,C2には、非走行レンジおよび走行レンジの双方において、オイルポンプ9からの作動油を矢αで示すごとく潤滑油として供給し、これにより湿式回転クラッチC1,C2を、特に締結過渡期における発熱や摩耗に対処すべく冷却すると共に摩耗防止する。
運転者が中立(N)レンジや駐車(P)レンジのような非走行レンジからDレンジのような前進走行レンジにした場合、非走行レンジにおいて上記のごとく解放にされていた湿式回転クラッチC1,C2を相変わらず解放状態のままに保ち、この状態で、図2(a)における「変速段=1速」の欄に示すような1速プリシフトおよび2速プリシフトをそれぞれ、以下に説明するように行う。
つまり、先ず同期噛合機構21のカップリングスリーブ21aを図示の中立位置から右行させることにより同期噛合機構21は、回転同期作用下に歯車14をカウンターシャフト10に駆動結合する噛合動作を行い、これにより奇数変速段グループ中において第1速へのプリシフトを行わせ(以下、当該プリシフト用に行う同期噛合機構21の第1速への噛合動作を、同期噛合機構のDセレクト用噛合動作Aと言う)、
更に、同期噛合機構30のカップリングスリーブ30aを図示の中立位置から右行させることにより同期噛合機構30は、回転同期作用下に歯車26をカウンターシャフト10に駆動結合し、これにより偶数変速段グループ中において第2速へのプリシフトを行わせる(以下、当該プリシフト用に行う同期噛合機構30の第2速への噛合動作も、同期噛合機構のDセレクト用噛合動作Aと言う)。
しかし、上記のごとく中立(N)レンジや駐車(P)レンジのような非走行レンジからDレンジのような前進走行レンジへのセレクト操作を行っても、運転者がアクセルペダルを踏み込む等の発進操作を行わない間は、湿式回転クラッチC1,C2を相変わらず上記解放状態に保つ。
このため、上記した第1速へのプリシフトおよび第2速へのプリシフトを行わせても、エンジン1の回転が第1速伝動ギヤ列や第2速伝動ギヤ列を経て出力軸6に伝達されることはなく、停車状態を維持することができる。
この状態において運転者がアクセルペダルを踏み込む等の発進操作を行うとき、図2(a)における「変速段=1速」の欄に○印を付して示すように、上記のごとく解放状態だった自動湿式回転クラッチC1,C2のうち、前進走行レンジでの発進変速段に相当する第1速に関連した自動湿式回転クラッチC1を締結させる。
これによりクラッチC1からのエンジン回転が第1入力軸4、第1速歯車組G1、カウンターシャフト10、および出力歯車組11,12を経て出力軸6より軸線方向に出力され、第1速での動力伝達を行うことができる。
なお当該発進時は、それ用にクラッチC1の締結進行(スリップ締結)制御を行って発進ショックのない滑らかな前発進を行わせること、勿論である。
第1速から第2速へのアップシフトに際しては、図2(a)における「変速段=1速」の欄から「変速段=2速」の欄への矢印により示すごとく、締結状態のクラッチC1を解放すると共に解放状態のクラッチC2を締結することにより(クラッチの掛け替えスリップ制御により)、
非走行レンジから前進走行レンジへのセレクト操作時に前記のごとくに行われた第2速へのプリシフトと相まって、第1速伝動ギヤ列から第2速伝動ギヤ列への切り替え、つまり第1速から第2速へのアップシフトを行わせる。
これにより、クラッチC2からのエンジン回転が第2入力軸5、第2速歯車組G2、カウンターシャフト10、および出力歯車組11,12を経て出力軸6より軸線方向に出力されるようになり、第2速での動力伝達を行うことができる。
なお、上記のごとく第2速が実現されている間に、クラッチC1が解放されている状態のもとで、図2(a)中「変速段=2速」の欄および「変速段=3速」の欄に示すような1→3プリシフトを、以下に説明するように行う。
つまり、先ず同期噛合機構21のカップリングスリーブ21aを中立位置に戻すことにより同期噛合機構21は、歯車14をカウンターシャフト10から切り離す外脱動作を行い、これにより奇数変速段グループ中において行った前記第1速プリシフトを解除し、
更に、同期噛合機構22のカップリングスリーブ22aを中立位置から右行させることにより同期噛合機構22は、回転同期作用下に歯車19を第1入力軸4に駆動結合する噛合動作を行い、これにより同じ奇数変速段グループ中において第3速へのプリシフトを行わせることにより(以下、当該プリシフト用に行う同期噛合機構22の噛合動作を、同期噛合機構の変速用噛合動作Bと言う)、当該1→3プリシフトを遂行する。
第2速から第3速へのアップシフトに際しては、図2(a)における「変速段=2速」の欄から「変速段=3速」の欄への矢印により示すごとく、締結状態のクラッチC2を解放すると共に解放状態のクラッチC1を締結することにより(クラッチの掛け替えスリップ制御により)、
第2速が実現されている間に前記のごとくに行われた1→3プリシフトと相まって、第2速伝動ギヤ列から第3速伝動ギヤ列への切り替え、つまり第2速から第3速へのアップシフトを行わせる。
これにより、クラッチC1からのエンジン回転が第1入力軸4、第3速歯車組G3、カウンターシャフト10、および出力歯車組11,12を経て出力軸6より軸線方向に出力されるようになり、第3速での動力伝達を行うことができる。
なお、上記のごとく第3速が実現されている間に、クラッチC2が解放されている状態のもとで、図2(a)中「変速段=3速」の欄および「変速段=4速」の欄に示すような2→4プリシフトを、以下に説明するように行う。
つまり、先ず同期噛合機構30のカップリングスリーブ30aを中立位置に戻すことにより同期噛合機構30は、歯車26をカウンターシャフト10から切り離す外脱動作を行い、これにより偶数変速段グループ中において行った前記第2速プリシフトを解除し、
更に、同期噛合機構30のカップリングスリーブ30aを中立位置から左行させることにより同期噛合機構30は、回転同期作用下に歯車28をカウンターシャフト10に駆動結合する噛合動作を行い、これにより同じ偶数変速段グループ中において第4速へのプリシフトを行わせることによって(以下、当該プリシフト用に行う同期噛合機構30の噛合動作を、同期噛合機構の変速用噛合動作Bと言う)、当該2→4プリシフトを遂行する。
第3速から第4速へのアップシフトに際しては、図2(a)における「変速段=3速」の欄から「変速段=4速」の欄への矢印により示すごとく、締結状態のクラッチC1を解放すると共に解放状態のクラッチC2を締結することにより(クラッチの掛け替えスリップ制御により)、
第3速が実現されている間に前記のごとくに行われた2→4プリシフトと相まって、第3速伝動ギヤ列から第4速伝動ギヤ列への切り替え、つまり第3速から第4速へのアップシフトを行わせる。
これにより、クラッチC2からのエンジン回転が第2入力軸5、第4速歯車組G4、カウンターシャフト10、および出力歯車組11,12を経て出力軸6より軸線方向に出力されるようになり、第4速での動力伝達を行うことができる。
なお、上記のごとく第4速が実現されている間に、クラッチC1が解放されている状態のもとで、図2(a)中「変速段=4速」の欄および「変速段=5速」の欄に示すような3→5プリシフトを、以下に説明するように行う。
つまり、先ず同期噛合機構22のカップリングスリーブ22aを中立位置に戻すことにより同期噛合機構22は、歯車19を第1入力軸4から切り離す外脱動作を行い、これにより奇数変速段グループ中において行った前記第3速プリシフトを解除し、
更に、同期噛合機構22のカップリングスリーブ22aを中立位置から左行させることにより同期噛合機構22は、回転同期作用下に第1入力軸4を出力軸6に直結する噛合動作を行い、これにより同じ奇数変速段グループ中において第5速へのプリシフトを行わせることによって(以下、当該プリシフト用に行う同期噛合機構22の噛合動作を、同期噛合機構の変速用噛合動作Bと言う)、当該3→5プリシフトを遂行する。
第4速から第5速へのアップシフトに際しては、図2(a)における「変速段=4速」の欄から「変速段=5速」の欄への矢印により示すごとく、締結状態のクラッチC2を解放すると共に解放状態のクラッチC1を締結することにより(クラッチの掛け替えスリップ制御により)、
第4速が実現されている間に前記のごとくに行われた3→5プリシフトと相まって、第4速伝動ギヤ列から第5速伝動ギヤ列への切り替え、つまり第4速から第5速へのアップシフトを行わせる。
これによりクラッチC1からのエンジン回転が第1入力軸4、およびカップリングスリーブ29aを経て出力軸6より軸線方向に出力されるようになり、第5速(変速比1:1)での動力伝達を行うことができる。
なお、上記のごとく第5速が実現されている間に、クラッチC2が解放されている状態のもとで、図2(a)中「変速段=5速」の欄および「変速段=6速」の欄に示すような4→6プリシフトを、以下に説明するように行う。
つまり、先ず同期噛合機構30のカップリングスリーブ30aを中立位置に戻すことにより同期噛合機構30は、歯車28をカウンターシャフト10から切り離す外脱動作を行い、これにより偶数変速段グループ中において行った前記第4速プリシフトを解除し、
更に、同期噛合機構29のカップリングスリーブ29aを中立位置から右行させることにより同期噛合機構29は、回転同期作用下に歯車24をカウンターシャフト10に駆動結合する噛合動作を行い、これにより同じ偶数変速段グループ中において第6速へのプリシフトを行わせることによって(以下、当該プリシフト用に行う同期噛合機構29の噛合動作を、同期噛合機構の変速用噛合動作Bと言う)、当該4→6プリシフトを遂行する。
第5速から第6速へのアップシフトに際しては、図2(a)における「変速段=5速」の欄から「変速段=6速」の欄への矢印により示すごとく、締結状態のクラッチC1を解放すると共に解放状態のクラッチC2を締結することにより(クラッチの掛け替えスリップ制御により)
第5速が実現されている間に前記のごとくに行われた4→6プリシフトと相まって、第5速伝動ギヤ列から第6速伝動ギヤ列への切り替え、つまり第5速から第6速へのアップシフトを行わせる。
これにより、クラッチC2からのエンジン回転が第2入力軸5、第6速歯車組G6、カウンターシャフト10、および出力歯車組11,12を経て出力軸6より軸線方向に出力されるようになり、第6速での動力伝達を行うことができる。
上記のごとく第6速が実現されている間は、第4速が実現されている間に前記のごとくに行われた3→5プリシフトの状態を保って、図2(a)中「変速段=6速」の欄に示すごとく5速プリシフト状態を維持する。
なお、第6速から順次第1速へとダウンシフトさせるに際しても、上記アップシフトと逆の制御を順次行うことにより、図2(b)に示すごとき前述したと逆方向のプリシフトおよびクラッチC1,C2の締結・解放制御を介して所定の順次ダウンシフトを行わせることができる。
かかる順次ダウンシフトの進行により最終的に車両を停車させるに際しては、第2速が実現されている間に、図2(b) における「変速段=2速」の欄および「変速段=1速」の欄に示すような、奇数変速段グループ中での第3速から第1速(Dレンジでの前発進変速段)へのプリシフトを行わせる(以下、当該プリシフト用に行う同期噛合機構21の第1速への噛合動作を、同期噛合機構の停車用噛合動作Cと言う)。
そして、車速が第2速から第1速へのダウンシフトを行うべき低車速になったとき、クラッチC2を解放すると共にクラッチC1を締結することにより(クラッチの掛け替えスリップ制御により)第1速へのダウンシフトを行わせる。
かかる第1速での走行中、さらに減速が進んで車速が停車直前車速になったところで、湿式回転クラッチC1を解放することにより停車を可能とする。
その後、Dレンジ(前進走行レンジ)から、中立(N)レンジや駐車(P)レンジのような非走行レンジに切り替えるとき、上記クラッチC1,C2の解放に加え、同期噛合機構21,22,29,30のカップリングスリーブ21a,22a,29a,30aを全て中立位置にして、ツインクラッチ式マニュアルトランスミッションを、動力伝達が行われない中立状態にする。
後退走行を希望して非走行レンジからRレンジに切り替えた場合においては、同期噛合機構21のカップリングスリーブ21aを中立位置から左行させることにより同期噛合機構21は、回転同期作用下に歯車16をカウンターシャフト10に駆動結合する噛合動作を行い、
これにより図2(a),(b)の「変速段=後退」の欄に示すような奇数変速段グループ内での後退変速段(後発進変速段)へのプリシフトを行わせる(以下、当該プリシフト用に行う同期噛合機構21の後退変速段への噛合動作を、同期噛合機構のRセレクト用噛合動作Aと言う)。
中立(N)レンジや駐車(P)レンジのような非走行レンジからRレンジのような後退走行レンジにしても、運転者がアクセルペダルを踏み込む等の発進操作を行わない間は、上記した後退変速段(後発進変速段)へのプリシフトを行わせても、湿式回転クラッチC1,C2を、非走行レンジが選択されている時と同じく解放状態に保つ。
このため、上記した後退変速段へのプリシフトを行わせても、エンジン1の回転が後退伝動ギヤ列を経て出力軸6に伝達されることはなく、停車状態を維持することができる。
この状態において運転者がアクセルペダルを踏み込む等の発進操作を行うとき、図2(a),(b)における「変速段=後退」の欄に○印を付して示すように、上記のごとく解放状態だった自動湿式回転クラッチC1,C2のうち、後退走行レンジでの発進変速段に相当する後退変速段に関連した自動湿式回転クラッチC1を締結させる。
これによりクラッチC1からのエンジン回転が第1入力軸4、後退歯車組GR、カウンターシャフト10、および出力歯車組11,12を経て出力軸6より軸線方向に出力されるようになり、
この際、後退歯車組GRにより回転方向を逆にされることから、後退変速段での動力伝達を行うことができる。
なお当該発進時は、それ用にクラッチC1の締結進行(スリップ締結)制御を行って発進ショックのない滑らかな後発進を行わせること、勿論である。
以下、図1に矢αで示す潤滑油による湿式回転クラッチC1,C2の冷却、および摩耗防止について考察する。
湿式回転クラッチC1,C2の冷却および摩耗防止という目的に照らして、湿式回転クラッチC1,C2への潤滑油供給量については、以下の要求がある。
DレンジやRレンジのような走行レンジにおいて湿式回転クラッチC1,C2がスリップ状態である場合は、クラッチの発熱量が大きく、且つ、摩耗が激しくなることから、これらクラッチC1,C2への潤滑油供給量を多くする必要がある。
同じ走行レンジでも湿式回転クラッチC1,C2がスリップ状態でない場合は、クラッチの発熱および摩耗がないことから、これらクラッチC1,C2へ潤滑油を供給しないでもよいが、今後のクラッチC1,C2の頻繁なスリップ状態を予測して、また、当該スリップ時において要求される高応答な潤滑油供給に鑑み少量の潤滑油を供給し続けるのが良い。
ただし、走行レンジにおいて湿式回転クラッチC1,C2を解放させた状態で行う同期噛合機構の噛合動作中は、クラッチC1,C2へ上記の少量であっても潤滑油を供給していると、クラッチC1,C2が引き摺りトルクを発生して、同期噛合機構の噛合動作が困難または不能となり、変速に支障を来すことから、クラッチC1,C2へ潤滑油供給量を零にするのが良い。
ちなみに、ツインクラッチ式マニュアルトランスミッションにあっては、同期噛合機構が噛合動作を完了した状態でないと湿式回転クラッチの締結・解放・スリップ制御による発進および変速が行われ得ず、これら同期噛合機構の噛合動作と湿式回転クラッチの発熱を伴うスリップとが同時に実行されることはない。
従って、同期噛合機構の噛合動作中は湿式回転クラッチがスリップして発熱を生ずることがなく、この間は湿式回転クラッチへの潤滑油供給量を零にしても、クラッチの発熱や摩耗が問題になることはない。
また、非走行レンジにおいても前記したところから明らかなように、湿式回転クラッチが発熱を伴うスリップを生ずることがなく、湿式回転クラッチへの潤滑油供給量を零にしても、クラッチの発熱や摩耗が問題になることはない。
しかし、湿式回転クラッチへの潤滑油供給量を零にしてクラッチディスク間への潤滑油供給がなされなくなったとしても、クラッチディスク間には潤滑油が残存しており、
この残存潤滑油がクラッチディスク間から完全に排除されるまでには、湿式回転クラッチの回転によって該残存潤滑油に作用する遠心力に応じた潤滑油排除時間が必要であり、以下のような懸念がある。
つまり、前記した同期噛合機構のD,Rセレクト用噛合動作A、変速用噛合動作B、および停車用噛合動作Cのうち、同期噛合機構の変速用噛合動作Bおよび停車用噛合動作Cはそれぞれ、車両の走行中に行われる。
かかる走行中は湿式回転クラッチの回転数が高くて上記の残存潤滑油に作用する遠心力も大きく、従って、湿式回転クラッチへの潤滑油供給量を零にしてクラッチディスク間への潤滑油供給がなされなくなったら、速やかにクラッチディスク間の残存潤滑油が径方向外方へ飛散、排除され、クラッチの引き摺りトルクに関する問題を生ずることがない。
しかし、同期噛合機構のD,Rセレクト用噛合動作Aは、停車中でアクセルペダルを釈放している間に行われることから、湿式回転クラッチの回転数がエンジンアイドリング回転数相当の低い回転数であって、上記の残存潤滑油に作用する遠心力も小さい。
このため、湿式回転クラッチへの潤滑油供給量を零にしてクラッチディスク間への潤滑油供給がなされなくなったとしても、その後における潤滑油排除時間が長くなり、クラッチディスク間への潤滑油供給がなされなくなった後も相当時間、クラッチディスク間に潤滑油が残存する。
この間、湿式回転クラッチはこの残存潤滑油を介して引き摺りトルクを発生し、同期噛合機構の噛合動作を困難または不能にして、変速に支障を来すという問題を生ずる。
この問題を解消するため、また上記諸々の実情に鑑み本実施例においては、図1に矢αで示す潤滑油の供給を受けて冷却され、摩耗防止される湿式回転クラッチC1,C2の引き摺りトルク低減制御を、図3,4に示す制御プログラムに沿って図5〜12のタイムチャートにより示すごとくに行うものとする。
図3は、前記のプリシフトおよび湿式回転クラッチC1,C2の締結(ON)・解放(OFF)による変速制御と、これらクラッチC1,C2への潤滑油供給量制御とに係わる制御プログラムで、イグニッションスイッチのON時に開始される。
先ずステップS101においては、現在の選択レンジに係わるレンジ信号と、車速VSPに係わる車速信号と、アクセル開度APOに係わるアクセル開度信号とを読み込む。
ステップS102およびステップS117においてはそれぞれ、現在の選択レンジが前進走行レンジ(前進自動変速用のDレンジや、エンジンブレーキ用のLレンジなど)か、後退走行レンジ(Rレンジ)か否かをチェックする。
ステップS102で前進走行レンジ選択中と判別するときは、制御をステップS103に進めて前進走行レンジ用の変速制御およびクラッチ潤滑油量決定ループに移行する。
ステップS117で後退走行レンジ選択中と判別するときは、制御をステップS118に進めて後退走行レンジ用の変速制御およびクラッチ潤滑油量決定ループに移行する。
ステップS102で前進走行レンジ選択中でないと判定し、且つ、ステップS117で後退走行レンジ選択中でもないと判定するとき、つまり非走行レンジ(駐車用のPレンジや、停車用のNレンジ)と判定するときは、制御をステップS127に進めて非走行レンジ用の変速制御およびクラッチ潤滑油量決定ループに移行する。
非走行レンジ選択中でステップS127が選択されたときは、このステップS127において、非走行レンジ故に前記したとおりクラッチC1,C2を共に解放状態となし、
次のステップS128において、クラッチC1,C2が共に解放状態であるため冷却も摩耗防止も不要であるから、クラッチC1,C2への潤滑油α(図1参照)の供給量を零にする。
なお当該ループには、プリシフトの処理ステップが存在しないことから、全ての同期噛合機構は中立位置に保たれ、非走行レンジでの停車状態を得ることができる。
ステップS102で前進走行レンジ選択中と判別したときは、先ずステップS103において、この前進走行レンジへの切り替えが行われた直後か否かを、つまり、非走行レンジから前進走行レンジへのセレクト操作がなされた直後か否かをチェックする。
非走行レンジから前進走行レンジへのセレクト操作直後であれば、ステップS104において、当該セレクト操作直後に行うべき前記した奇数変速段グループの1速へのプリシフト(同期噛合機構21の噛合動作)および偶数変速段グループの2速へのプリシフト(同期噛合機構30の噛合動作)を実行する。
なお、本明細書における「プリシフト(同期噛合機構の噛合動作)」は、全てその指令信号でなくて、実際の動作自身を指すものとする。
ステップS103で非走行レンジから前進走行レンジへのセレクト操作直後でないと判定する場合は、ステップS105において、図2(a),(b)につき前述した走行中に行うべき予定マップに基づくプリシフト(対応する同期噛合機構の噛合動作および外脱動作)を実行する。
ステップS106においては、ステップS104またはステップS105で開始されたプリシフトが完了したか否かをチェックし、プリシフトが完了していなければ、制御をステップS115に進める。
このステップS115に制御が進むパターンとしては、ステップS103において判定した、非走行レンジから前進走行レンジへのセレクト操作直後か否かの判定結果に応じ、
ステップS104およびステップS106を経由してステップS115に至る第1パターンと、
ステップS105およびステップS106を経由してステップS115に至る第2パターンがある。
前者の第1パターンは、上記のセレクト操作に呼応してステップS104で実行される1速プリシフトおよび2速プリシフトが未完であり(ステップS106)、伝動系路が確立されていないため、クラッチC1,C2を共に解放させた状態である。
後者の第2パターンは、上記セレクト操作直後でないときにステップS105で実行される、図2(a),(b)に基づく走行中のプリシフトが未完であり(ステップS106)、クラッチC1,C2のうち、現在の実現変速段に対応する一方のクラッチC1(C2)が解放された状態であり、他方のクラッチC2(C1)が締結された状態である。
ステップS115においては、クラッチC1,C2を上記したごとき前回の状態と同じ状態に保つことによりプリシフトを更に進行させる。
次のステップS116においては、解放状態のクラッチC1またはC2が潤滑油を介した引き摺りトルクを発生してプリシフト(同期噛合機構の噛合動作)を困難にすることのないよう、クラッチC1,C2への潤滑油供給量を零にする(場合によっては、必ずしも零にするのではなく、少なくするだけでもよい)。
ステップS106でプリシフト完了と判定するときは、ステップS107において、アクセル開度APOから発進要求操作があったか否かを、またステップS110において、現在の運転状態(アクセル開度APOおよび車速VSP)に好適な目標変速段と、今の実現変速段とが異なるか否かにより、変速要求があるか否かをチェックする。
ステップS107で発進要求操作がないと判定し、且つ、ステップS110で変速要求もないと判定するとき、つまり、クラッチC1,C2の何れも発熱や摩耗に関する問題を生ずることのない非スリップ状態であると判定するとき、制御をステップS113に進める。
このステップS113に制御が進むパターンとしては、ステップS103において判定した、非走行レンジから前進走行レンジへのセレクト操作直後か否かの判定結果に応じ、
ステップS104→ステップS106→ステップS107→ステップS110を経由してステップS113に至る第1パターンと、
ステップS105→ステップS106→ステップS107→ステップS110を経由してステップS113に至る第2パターンがある。
前者の第1パターンは、上記のセレクト操作に呼応してステップS104で実行される1速プリシフトおよび2速プリシフトは完了しているが(ステップS106)、未だ発進要求がなくて(ステップS107)、ブレーキ操作による停車が維持されていることから、クラッチC1,C2を共に解放させた状態(ただし発進クラッチC1は発進応答の観点から、締結容量を持ち始める直前のプリチャージ状態)であり、
クラッチC1,C2の何れも発熱や摩耗に関する問題を生ずることのない非スリップ状態である。
後者の第2パターンは、上記セレクト操作直後でないときステップS105で実行されるべき、図2(a),(b)に基づく走行中のプリシフトは完了しているが(ステップS106)、未だ変速要求がなくて(ステップS110)、クラッチC1,C2のうち、現在の実現変速段に応じた一方のクラッチC1(C2)が解放された状態であり、他方のクラッチC2(C1)が締結された状態であり、
クラッチC1,C2の何れも発熱や摩耗に関する問題を生ずることのない非スリップ状態である。
ステップS113においては、発進要求も変速要求もないことに呼応してクラッチC1,C2を上記したごとき前回の状態と同じ状態に保ち、次のステップS114において、クラッチC1,C2への潤滑油供給量を少量にする。
ここで、上記のごとくクラッチC1,C2が何れも発熱や摩耗に関する問題を生ずることのない非スリップ状態であるのに、これらクラッチC1,C2への潤滑油供給量を零ではなく少量にした理由は、以下のためである。
つまり、クラッチC1,C2への潤滑油供給量を零にしておくと、潤滑油供給指令から実際にクラッチC1,C2へ潤滑油が供給され始めるまでの応答遅れが大きくなり、今後頻繁に発生するであろうと予測されるクラッチC1,C2のスリップ制御時に要求される高応答な潤滑油供給に応えることができないためである。
従って、上記潤滑油供給量の少量は、上記の要求を満足させる量であって、同期噛合機構の噛合動作に支障を来さない潤滑油量よりも多い量とする。
上記のごとくステップS114でクラッチC1,C2へ潤滑油を少量だけ供給し続けることにより、潤滑油供給指令から実際にクラッチC1,C2へ潤滑油が供給され始めるまでの応答遅れが小さくなり、特に走行中に要求される頻繁で高応答な潤滑油供給にも十分応えることができる。
ステップS106でプリシフト完了と判定した後、ステップS107で発進要求操作があったと判定するとき、
ステップS108において、この発進要求に応えるべく発進クラッチC1を徐々に締結させ、次のステップS109において、発進クラッチC1のスリップ締結に伴う発熱と摩耗の対策用にクラッチC1,C2への潤滑油供給量を多くする。
従って、ここにおける潤滑油供給量の多量は、上記発進クラッチC1のスリップ締結に伴う発熱と摩耗の対策を行い得る量であって、同期噛合機構の噛合動作に支障を来さない潤滑油量よりも多い量とする。
ステップS110において、現在の運転状態に好適な目標変速段と、今の実現変速段とが異なり、目標変速段への変速要求があると判定するとき、
ステップS111において、当該変速のためのアップシフトまたはダウンシフト用に締結状態のクラッチC1(C2)を解放しつつ、解放状態のクラッチC2,(C1)を締結させて行う、クラッチC1,C2の掛け替えスリップ制御により、現在の実現変速段から上記目標変速段への変速を行う。
次のステップS112においては、クラッチC1,C2の掛け替え時スリップ制御に伴う発熱と摩耗の対策用にクラッチC1,C2への潤滑油供給量を多くする。
従って、ここにおける潤滑油供給量の多量も、上記クラッチC1,C2の掛け替え時スリップ制御に伴う発熱と摩耗の対策を行い得る量であって、同期噛合機構の噛合動作に支障を来さない潤滑油量よりも多い量とする。
ステップS117で後退走行レンジ選択中と判別したときは、先ずステップS118において、当該後退走行レンジにしたときに行うべき前記した奇数変速段グループ内における後退変速段へのプリシフト(同期噛合機構21の噛合動作)を実行する。
ステップS119においては、ステップS118で開始されたプリシフトが完了したか否かをチェックし、プリシフトが完了していなければ、制御をステップS125に進める。
このステップS125に進むパターンは、上記後退走行レンジへのセレクト操作に呼応してステップS118で実行される後退変速段へのプリシフトが未完であり(ステップS119)、伝動系路が確立されていないため、クラッチC1,C2を共に解放させた状態である。
ステップS125においては、クラッチC1,C2を上記したごとき前回の状態と同じ解放状態に保つことによりプリシフトを更に進行させる。
次のステップS126においては、解放状態のクラッチC1が潤滑油を介した引き摺りトルクを発生して後退変速段へのプリシフト(同期噛合機構21の噛合動作)を困難にすることのないよう、クラッチC1,C2への潤滑油供給量を零にする(場合によっては、必ずしも零にする必要はなく、少なくするだけでもよい)。
ステップS119でプリシフト完了と判定するときは、ステップS120において、アクセル開度APOから発進要求操作があったか否かをチェックする。
ステップS120で発進要求操作がないと判定するとき、つまり、クラッチC1,C2の何れも発熱や摩耗に関する問題を生ずることのない非スリップ状態であると判定するとき、制御をステップS123に進める。
このステップS123に制御が進むパターンでは、
上記後退走行レンジへのセレクト操作に呼応してステップS118で実行される後退変速段へのプリシフトは完了しているが(ステップS119)、未だ発進要求がなくて(ステップS120)、ブレーキ操作による停車が維持されていることから、クラッチC1,C2を共に解放させた状態(ただし発進クラッチC1は発進応答の観点から、締結容量を持ち始める直前のプリチャージ状態)であり、
従ってクラッチC1,C2はいずれも、発熱や摩耗に関する問題を生ずることのない非スリップ状態である。
ステップS123においては、発進要求がないことに呼応してクラッチC1,C2を上記したごとき前回の状態と同じ状態に保ち、
次のステップS124において、クラッチC1,C2への潤滑油供給量を少量にする。
ここで、上記のごとくクラッチC1,C2が何れも発熱や摩耗に関する問題を生ずることのない非スリップ状態であるのに、これらクラッチC1,C2への潤滑油供給量を零ではなく少量にした理由は、以下のためである。
つまり、クラッチC1,C2への潤滑油供給量を零にしておくと、潤滑油供給指令から実際にクラッチC1,C2へ潤滑油が供給され始めるまでの応答遅れが大きくなり、今後の発進に際して発生するクラッチC1のスリップ締結時に要求される高応答な潤滑油供給に応えることができないためである。
従って、上記潤滑油供給量の少量は、上記の要求を満足させる量であって、同期噛合機構の噛合動作に支障を来さない潤滑油量よりも多い量とする。
上記のごとくステップS124でクラッチC1,C2へ潤滑油を少量だけ供給し続けることにより、
潤滑油供給指令から実際にクラッチC1,C2へ潤滑油が供給され始めるまでの応答遅れが小さくなり、発進時に要求される高応答なクラッチC1,C2への潤滑油の供給に十分応えることができる。
ステップS119でプリシフト完了と判定した後、ステップS120で発進要求操作があったと判定するとき、
ステップS121において、この発進要求に応えるべく発進クラッチC1を徐々に締結させ、次のステップS122において、発進クラッチC1のスリップ締結に伴う発熱と摩耗の対策用にクラッチC1,C2への潤滑油供給量を多くする。
従って、ここにおける潤滑油供給量の多量は、上記発進クラッチC1のスリップ締結に伴う発熱と摩耗の対策を行い得る量であって、同期噛合機構の噛合動作に支障を来さない潤滑油量よりも多い量とする。
以上の説明から明らかなように、図3のクラッチ潤滑油供給量制御によれば、
前発進時や(ステップS107、ステップS108)、変速時や(ステップS110、ステップS111)、後発進時は(ステップS120、ステップS121)、
クラッチC1,C2が発熱と摩耗を生ずるスリップ状態であることから、これら発熱と摩耗の対策用にクラッチC1,C2への潤滑油供給量を多くすることとしたため(ステップS109、ステップS112、ステップS122)、
クラッチC1,C2がスリップ状態に起因して高温になったり、摩耗し易くなるのを防止することができる。
また、プリシフトが完了した後の前発進待機状態(ステップS106、ステップS107、ステップS110、ステップS113)および後発進待機状態(ステップS119、ステップS120、ステップS123)や、実現変速段での走行中は(ステップS106、ステップS107、ステップS110、ステップS113)、
クラッチC1,C2が問題となる発熱や摩耗を生ずるスリップ状態でないものの、今後の発進時や変速時におけるクラッチC1,C2のスリップ締結に鑑み、クラッチC1,C2への潤滑油供給量を零とせず、潤滑油を少量だけ供給し続けることとしたため(ステップS114、ステップS124)、
発進や変速でクラッチC1,C2をスリップ締結させ始めたときに、これらクラッチC1,C2への潤滑油供給を高応答に開始させ得て、クラッチの発熱対策や摩耗対策を確実なものにすることができる。
更にプリシフトが、完了前の実行中である間は(ステップS106、ステップS115、ステップS119、ステップS125)、クラッチC1,C2への潤滑油供給量を零にするから(ステップS116、ステップS126)、
クラッチC1,C2が潤滑油を介し引き摺りトルクを発生するのを緩和、若しくは防止することができ、この引き摺りトルクにより上記のプリシフトが困難になるのを緩和、若しくは防止することができる。
なお非走行レンジでは(ステップS102、ステップS117、ステップS127)、クラッチC1,C2が解放状態でこれらへの潤滑油供給が不要である事実に鑑み、これらクラッチC1,C2への潤滑油供給量を零にしたため(ステップS128)、
非走行レンジで、クラッチC1,C2に無駄に潤滑油が供給される愚を避けることができて、エネルギー損失を軽減することができる。
ところで本実施例のように、ステップS110で変速要求ありと判定する間、ステップS112でクラッチ潤滑油供給量を多くしているが、ステップS110で変速要求なしと判定すると、直ちにステップS114でクラッチ潤滑油供給量を少量に減ずる場合、以下の懸念がある。
つまり、変速中はステップS111で行うクラッチC1,C2の掛け替えスリップ制御によりこれらクラッチが多量の熱を発生しており、変速終了と同時にクラッチ潤滑油供給量を少量にするのでは(ステップS114)、発熱によるクラッチ温度上昇が若干の時間遅れをもつこととも相まって、クラッチC1,C2が一時的に高温になることがある。
この問題解決のためには、ステップS110で変速要求なしと判定した後も、所定時間中はステップS112を実行してクラッチ潤滑油供給量を多量のままに維持し、その後にステップS114を実行してクラッチ潤滑油供給量を少量に減ずるようにするのがよい。
なお図3のクラッチ潤滑油供給量制御のように、プリシフトが完了するまでは(ステップS106、ステップS115、ステップS119、ステップS125)、クラッチC1,C2への潤滑油供給量を零にしても(ステップS116、ステップS126)、
以下の理由から、クラッチC1,C2が潤滑油を介し引き摺りトルクを発生するのを確実には緩和することができず、この引き摺りトルクで上記のプリシフトが困難になることがある。
つまり、ステップS116およびステップS126で上記のごとくクラッチC1,C2への潤滑油供給量を零にしてクラッチディスク間への潤滑油供給がなされなくなっても、クラッチディスク間には潤滑油が残存しており、
この残存潤滑油がクラッチディスク間から完全に排除されるまでには、クラッチC1,C2の回転によって残存潤滑油に作用する遠心力に応じた潤滑油排除時間が必要である。
この潤滑油排除時間について、以下に考察する。
ステップS103→ステップS105→ステップS106→ステップS115を経てステップS116に至ったときの潤滑油供給量零制御は、同期噛合機構の変速用噛合動作(プリシフト)を妨げるクラッチ引き摺りトルクが発生しなくなるようにするためのものであって、車両の走行中に行われる。
かかる走行中は、湿式回転クラッチC1,C2の回転数が高くて上記の残存潤滑油に作用する遠心力も大きく、湿式回転クラッチC1,C2への潤滑油供給量を零にしてクラッチディスク間への潤滑油供給がなされなくなった後、速やかにクラッチディスク間の残存潤滑油が径方向外方へ排除され、ステップS116での潤滑油供給量零制御のみでクラッチの引き摺りトルクに関する問題を解消することができる。
しかし、ステップS103→ステップS104→ステップS106→ステップS115を経てステップS116に至ったときの潤滑油供給量零制御や、ステップS117→ステップS118→ステップS119→ステップS125を経てステップS126に至ったときの潤滑油供給量零制御は、
前進走行レンジまたは後退走行レンジへのセレクト操作時に行われる同期噛合機構のD,Rセレクト用噛合動作(プリシフト)を妨げるクラッチ引き摺りトルクが発生しなくなるようにするためのもので、従って停車中の、しかもアクセルペダルが釈放されている間に行われる。
かように停車中で、アクセルペダルが釈放状態されている間は、湿式回転クラッチC1,C2の回転数がエンジンアイドリング回転数相当の低い回転数であって、上記のクラッチ残存潤滑油に作用する遠心力も小さい。
このため、湿式回転クラッチC1,C2への潤滑油供給量を零にしてクラッチディスク間への潤滑油供給がなされなくなった後の潤滑油排除時間が長くなり、クラッチディスク間への潤滑油供給がなされなくなった後も、相当時間クラッチディスク間に潤滑油が残存することになる。
この間、湿式回転クラッチC1,C2はこの残存潤滑油を介して引き摺りトルクを発生し、同期噛合機構の噛合動作(D,Rセレクト時プリシフト)を困難または不能にして、変速に支障を来すという問題を生ずる。
この問題を解消するため本実施例においては、湿式回転クラッチC1,C2の入力側回転数であるエンジンのエンジンアイドリング回転数を、
図4に示す制御プログラムに沿って図5〜12のタイムチャートにより示すごとくに上昇制御する。
図4の制御プログラムは、イグニッションスイッチのON時に開始され、
先ずステップS201において、ツインクラッチ式マニュアルトランスミッションの潤滑油温度(ATF温度)と、現在の選択レンジに係わるレンジ信号と、エンジン駆動補機(空調機用コンプレッサーや、ウォーターポンプや、ジェネレータなど)の作動信号と、エンジン冷却水温信号とを読み込む。
次のステップS202においては、一般的に行われていると同様の要領で、エンジン駆動補機の作動状態やエンジン冷却水温などを加味しつつ、基本となるエンジンアイドリング回転数の初期値Neidle0を設定する。
ステップS203においては、現在の選択レンジが非走行レンジか否(走行レンジ)かをチェックし、ステップS204においては、潤滑油温度が設定温度未満の低温か否かをチェックする。
この設定温度は、クラッチC1,C2が同期噛合機構の噛合動作に支障を来すような引き摺りトルクを発生させることのない潤滑油粘度となる高い潤滑油温度域の下限温度に対応させる。
よって、ステップS204で潤滑油温度が設定温度未満の低温であると判定するときは、クラッチC1,C2が同期噛合機構の噛合動作に支障を来すような引き摺りトルクを発生する潤滑油温度であることを意味する。
ステップS203で現在の選択レンジが走行レンジであると判定するときは、クラッチ残存潤滑油の飛散を促すエンジンアイドリング回転数上昇制御が不要であるから、制御を順次ステップS210、ステップS211、ステップS209に進める。
また、ステップS204で潤滑油温度が、同期噛合機構の噛合動作に支障を来すようなクラッチ引き摺りトルクを発生しない高温であると判定するときも、クラッチ残存潤滑油の飛散を促すエンジンアイドリング回転数上昇制御が不要であるから、制御を順次ステップS210、ステップS211、ステップS209に進める。
これらにより、不要なエンジンアイドリング回転数上昇制御が行われて、燃費が悪化するのを回避することができる。
ステップS210においては、エンジンアイドリング回転数上昇制御を開始してからの経過時間を計測するタイマTを0にリセットする。
ステップS211においては、エンジンアイドリング回転数上昇量ΔNeを0にする。
ステップS209においては、ステップS202で設定した基本となるエンジンアイドリング回転数の初期値Neidle0に、ステップS211で設定したエンジンアイドリング回転数上昇量ΔNe=0を加算して得られた値を目標アイドリング回転数Neidleと定める。
よってこの場合、目標アイドリング回転数Neidleが初期値Neidle0と同じ回転数にされ、クラッチ残存潤滑油飛散用のエンジンアイドリング回転数上昇制御が実行されない。
ステップS203で現在の選択レンジが非走行レンジであると判定し、且つ、ステップS204で潤滑油温度が、同期噛合機構の噛合動作に支障を来すようなクラッチ引き摺りトルクを発生させる低温であると判定するときは、クラッチ残存潤滑油の飛散を促すエンジンアイドリング回転数上昇制御が必要であるから、制御をステップS205に進める。
このステップS205においては、クラッチ残存潤滑油を飛散させるのに必要なエンジンアイドリング回転数上昇時間Toを設定する。
このエンジンアイドリング回転数上昇時間Toは、潤滑油温度が低いほど長くして、如何なる低温(高粘度)のもとでも確実にクラッチ残存潤滑油を飛散させ得るような時間にする。
次のステップS206においては、このステップが選択された時からの経過時間を計測するタイマTを歩進(インクリメント)させ、このタイマTにより、エンジンアイドリング回転数上昇制御が開始されてからのエンジンアイドリング回転数上昇制御継続時間をモニタし得るようになす。
ステップS207においては、このタイマTの計測時間(エンジンアイドリング回転数上昇制御継続時間)が、ステップS205で設定したエンジンアイドリング回転数上昇時間To未満であるか否かを、つまり、エンジンアイドリング回転数上昇制御が開始されてからエンジンアイドリング回転数上昇時間Toが経過する前か否かをチェックする。
当初は当然T<Toであるから、制御はステップS208に進み、このステップにおいて、クラッチ残存潤滑油を飛散させるのに必要なエンジンアイドリング回転数上昇量ΔNeを、潤滑油温度に応じて設定する。
このエンジンアイドリング回転数上昇量ΔNeは、潤滑油温度が低いほど大きくして、如何なる低温(高粘度)のもとでも速やかにクラッチ残存潤滑油を飛散させ得るような回転数上昇量にする。
なお、このエンジンアイドリング回転数上昇量ΔNeと、上記のエンジンアイドリング回転数上昇時間Toとの積が、クラッチ残存潤滑油を飛散させるエネルギーであり、エンジンアイドリング回転数上昇量ΔNeおよびエンジンアイドリング回転数上昇時間Toの一方を小さくし、他方を大きくしても、クラッチ残存潤滑油は所定の速度で確実に飛散させることができる。
次いで制御をステップS209に進めるが、この場合ステップS209においては、ステップS202で設定した基本となるエンジンアイドリング回転数の初期値Neidle0に、ステップS208で設定した潤滑油温度対応のエンジンアイドリング回転数上昇量ΔNeを加算して得られた(Neidle0+ΔNe)を目標アイドリング回転数Neidleと定め、
これにより、クラッチ残存潤滑油飛散用のエンジンアイドリング回転数上昇制御を実行する。
ステップS207でタイマTの計測時間(エンジンアイドリング回転数上昇制御継続時間)がエンジンアイドリング回転数上昇時間Toを示すに至ったと判定するとき、つまり、上記のエンジンアイドリング回転数上昇制御が開始されてからエンジンアイドリング回転数上昇時間Toが経過したとき、
ステップS211を経てステップS209に至るループに切り替わり、上記のクラッチ残存潤滑油飛散用のエンジンアイドリング回転数上昇制御を終了させる。
図4のエンジンアイドリング回転数上昇制御によれば、前進走行レンジや後退走行レンジへのセレクトに伴う同期噛合機構のプリシフト用噛合動作が開始される以前において、また非走行レンジが選択された時から、エンジンアイドリング回転数上昇時間To中の間、エンジンアイドリング回転数を初期値Neidle0よりもΔNeだけ高い値に上昇させるため、
潤滑油の供給を停止されたクラッチC1,C2の残存潤滑油を、停車状態でのエンジンアイドリング運転中といえども、大きな遠心力により確実、且つ、速やかに飛散させることができる。
従って、クラッチC1,C2が残存潤滑油を介した引き摺りトルクを発生することがなく、前進走行レンジや後退走行レンジへのセレクトに伴う同期噛合機構のプリシフト用噛合動作が、クラッチ引き摺りトルクにより困難、若しくは不能になるという問題を解消することができる。
更に、エンジンアイドリング回転数上昇時間Toを潤滑油温度が低温であるほど長くし、エンジンアイドリング回転数上昇量ΔNeを潤滑油温度が低温であるほど大きくしたため、
上記の作用効果を、如何なる潤滑油温度のもとでも確実に、また、必要最小限のアイドリング回転数上昇制御で効率的に達成することができる。
また、上記クラッチ残存潤滑油の飛散を促すエンジンアイドリング回転数上昇制御を、前進走行レンジや後退走行レンジへのセレクトに伴う同期噛合機構のプリシフト用噛合動作以前に行うに際し、
図4の制御プログラムが開始されるイグニッションスイッチのON時や、非走行レンジが選択された(ステップS203)時に、当該エンジンアイドリング回転数上昇制御を開始させることとしたため、
エンジンアイドリング回転数上昇制御の開始判定を新たに行う面倒を伴うことなく、前記の作用効果を安価に達成することができる。
更に潤滑油温度が、同期噛合機構の噛合動作に支障を来すようなクラッチ引き摺りトルクを発生することのない高温域であるときは、クラッチ残存潤滑油の飛散を促すエンジンアイドリング回転数上昇制御を行わないこととしたため、
このエンジンアイドリング回転数上昇制御が無駄に行われて燃費が悪化するのを回避することができる。
また、エンジンアイドリング回転数上昇制御中でも、非走行レンジから走行レンジへの切り替えが行われた場合は、ステップS203が制御をステップS210に進めてエンジンアイドリング回転数上昇制御を終了させることとしたため、
非走行レンジから走行レンジへのレンジ切り替えに伴う発進クラッチC1の締結が、エンジンアイドリング回転数上昇状態のまま行われることがなくなり、このエンジンアイドリング回転数上昇状態で発進クラッチC1が締結された場合に生ずるクラッチ締結ショックや、急発進を回避することができる。
ところで図3の潤滑油供給量制御では説明しなかったが、図4のステップS204で潤滑油温度が設定温度以上の高温であると判定するとき、つまり、クラッチC1,C2が同期噛合機構の噛合動作に支障を来すような引き摺りトルクを発生しない潤滑油温度であるとき、
図4につき前述した通りエンジンアイドリング回転数上昇制御を終了させるほかに、図3のステップS116およびステップS126でのクラッチ潤滑油供給量零制御も行わせないようにして、
無用な潤滑油供給量零制御でクラッチの潤滑不良が発生することのないようにすることができる。
なお上記した実施例においては、図4のエンジンアイドリング回転数上昇制御を、図3の潤滑油供給量制御(詳しくは、ステップS116およびステップS126での潤滑油供給量零制御)と組み合わせて用いることとしたが、
図4のエンジンアイドリング回転数上昇制御は、図3の潤滑油供給量低下制御(詳しくは、ステップS116およびステップS126での潤滑油供給量零制御)なしに単独で行っても、前記したクラッチ引き摺りトルク低減効果を達成することができる。
ただしこの場合、エンジンアイドリング回転数上昇制御を、同期噛合機構が回転同期を終了するまで継続する必要があることは言うまでもない。
図3の潤滑油供給量低下制御、および、図4のエンジンアイドリング回転数上昇制御を、クラッチ引き摺りトルク低減制御が必要なシーン1〜8ごとの動作タイムチャートを示す図5〜12に基づき以下に詳述する。
図5は、本実施例(シーン1)の動作タイムチャートで、ここでのシーン1は、
潤滑油温度が、クラッチ引き摺りトルクを発生させる低温であり、運転者がイグニッションスイッチOFF後、短時間で瞬時t1に再度イグニッションスイッチをONさせ、その後の瞬時t3に非走行レンジ(Pレンジを例示したが、Nレンジなども含む)から走行レンジ(Dレンジを例示したが、Lレンジなども含む)へのセレクト操作を行ったことで、対応する同期噛合機構が中立位置から1速位置へ作動して予定のプリシフト用の噛合動作を行う場合のシーンに相当する。
なお、瞬時t3までの間、およびその後も、運転者がアクセルペダルを釈放状態にしているものとする。
イグニッションスイッチがONされる瞬時t1に図3,4の制御プログラムが開始されることで、
クラッチ潤滑油供給量の指令値が零にされ(ステップS116)、アイドリング回転数上昇量ΔNeが潤滑油温度に応じたΔNe1(例えば200rpm)に設定され(ステップS208)、アイドリング回転数上昇時間Toが潤滑油温度に応じたT1(例えば2秒)に設定される(ステップS205)。
イグニッションスイッチがONされる瞬時t1にエンジンが始動されるが、その目標アイドリング回転数Neidleは、通常通りの基本となる初期値Neidle0に潤滑油温度対応のアイドリング回転数上昇量ΔNe=ΔNe1を加算した回転数にされる(ステップS209)。
よってエンジンは、イグニッションスイッチON瞬時t1より目標アイドリング回転数Neidle=Neidle0+ΔNe1の回転上昇下でアイドリング運転され、
このアイドリング回転数上昇制御は、イグニッションスイッチON瞬時t1からアイドリング回転数上昇時間To=T1が経過する瞬時t2まで行われ、その後エンジンは、ΔNe=0(ステップS211)により通常通りの基本となる初期値Neidle0でアイドリング運転される。
ここで、クラッチC1,C2のクラッチディスク間に残存する潤滑油量について考察するに、この残存潤滑油量は、イグニッションスイッチON瞬時t1までは残存潤滑油が重力により滴下するため、図示のごとく徐々に減少する。
イグニッションスイッチON瞬時t1から瞬時t2までの間は、上記のアイドリング回転数上昇制御による大きな遠心力を受けて潤滑油が速やかに飛散されるため、上記のクラッチ潤滑油供給量零制御と相まって、クラッチ残存潤滑油量は、本実施例(シーン1)の実線で示すごとくに急速に減少する。
瞬時t2からクラッチ残存潤滑油量は、本実施例(シーン1)の実線で示すごとく、通常の低いアイドリング回転数初期値Neidle0に応じた小さな遠心力により、瞬時t2までよりもゆっくりと減少する。
しかしアイドリング回転数上昇制御終了時t2には、クラッチ残存潤滑油量は低下目標残存油量(同期噛合機構のプリシフト用噛合動作に支障を来すようなクラッチ引き摺りトルクを発生することのないクラッチ残存潤滑油量)となる。
つまり、非走行レンジ(Pレンジ)から走行レンジ(Dレンジ)へのセレクト操作に呼応し、対応する同期噛合機構が中立位置から1速位置へ作動して予定のプリシフト用の噛合動作を開始する瞬時t3以前に、
クラッチ残存潤滑油量を低下目標残存油量へ減少させることができ、同期噛合機構のプリシフト用噛合動作に支障を来すようなクラッチ引き摺りトルクが発生するのを防止することができる。
ところで、本実施例のようなアイドリング回転数上昇制御を行わない場合は、クラッチ残存潤滑油が通常の低いアイドリング回転数初期値Neidle0に応じた小さな遠心力を受けるだけであるため、クラッチ残存潤滑油量は破線で示すごとく瞬時t1からゆっくりと減少し、瞬時t3よりも後の瞬時t4でないと低下目標残存油量にならない。
このため、非走行レンジ(Pレンジ)から走行レンジ(Dレンジ)へのセレクト操作に呼応して瞬時t3に同期噛合機構が中立位置から1速位置へ作動して予定のプリシフト用の噛合動作を行おうとするに際し、
クラッチ残存潤滑油量が未だ低下目標残存油量まで減少しておらず、クラッチ引き摺りトルクが発生して、上記同期噛合機構のプリシフト用噛合動作を困難にしたり、不能にするという懸念がある。
本実施例によれば、アイドリング回転数上昇制御により上記した通り、かかる懸念を確実に払拭することができる。
なお図5は、イグニッションスイッチOFF後、短時間で瞬時t1に再度イグニッションスイッチをONさせた場合の動作であるが、長時間イグニッションスイッチOFF状態を保った後にイグニッションスイッチをONさせる場合は、イグニッションスイッチをONする前にクラッチ残存潤滑油が重力により全て滴下しており、前記の潤滑油供給量零制御と相まってクラッチ引き摺りトルクを発生することがない。
この場合は、本実施例のようなアイドリング回転数上昇制御が不要であるから、当該アイドリング回転数上昇制御を行わないようにして、無駄なアイドリング回転数上昇制御による燃費の悪化を回避することも可能である。
図6は、本実施例(シーン2)の動作タイムチャートで、図5に示した本実施例(シーン1)の場合よりも潤滑油温度が一層低温(極低温)であるときの動作を示す。
それ以外の条件は、図5の本実施例(シーン1)と同じで、運転者がイグニッションスイッチOFF後、短時間で瞬時t1に再度イグニッションスイッチをONさせ、その後の瞬時t3'に非走行レンジ(Pレンジ)から走行レンジ(Dレンジ)へのセレクト操作を行ったことで、対応する同期噛合機構が中立位置から1速位置へ作動して予定のプリシフト用の噛合動作を行うものとする。
なお、瞬時t3'までの間、およびその後も、運転者がアクセルペダルを釈放状態にしていることも、図5の本実施例(シーン1)と同じである。
イグニッションスイッチがONされる瞬時t1に、クラッチ潤滑油供給量の指令値が零にされ、アイドリング回転数上昇量ΔNeが潤滑油温度に応じたΔNe1に設定され(ここではΔNe1を図5の場合と同じ値にする)、アイドリング回転数上昇時間Toが潤滑油温度に応じたT1'(例えば5秒)に設定される(極低温に呼応して図5のT1よりも長くする)。
イグニッションスイッチがONされる瞬時t1にエンジンが始動されるが、その目標アイドリング回転数Neidleは本実施例(シーン2)の実線で示すごとく、通常通りの基本となる初期値Neidle0に潤滑油温度対応のアイドリング回転数上昇量ΔNe=ΔNe1を加算した回転数にされる。
よってエンジンは、イグニッションスイッチON瞬時t1より目標アイドリング回転数Neidle=Neidle0+ΔNe1の回転上昇下でアイドリング運転され、
このアイドリング回転数上昇制御は、イグニッションスイッチON瞬時t1からアイドリング回転数上昇時間To=T1'が経過する瞬時t2'まで行われ、
その後エンジンは、通常通りの基本となる初期値Neidle0でアイドリング運転される。
クラッチC1,C2のクラッチディスク間に残存するクラッチ残存潤滑油量は、イグニッションスイッチON瞬時t1までは残存潤滑油が重力により滴下するため、図示のごとく徐々に減少する。
イグニッションスイッチON瞬時t1から瞬時t2'までの間は、上記のアイドリング回転数上昇制御による大きな遠心力を受けて潤滑油が速やかに飛散されるため、上記のクラッチ潤滑油供給量零制御と相まって、クラッチ残存潤滑油量は、本実施例(シーン2)の実線で示すごとくに急速に減少する。
瞬時t2'からクラッチ残存潤滑油量は、本実施例(シーン2)の実線で示すごとく、通常の低いアイドリング回転数初期値Neidle0に応じた小さな遠心力により、瞬時t2'までよりもゆっくりと減少する。
しかし、アイドリング回転数上昇制御終了時t2'には低下目標残存油量(同期噛合機構のプリシフト用噛合動作に支障を来すようなクラッチ引き摺りトルクを発生することのないクラッチ残存潤滑油量)となる。
つまり、非走行レンジ(Pレンジ)から走行レンジ(Dレンジ)へのセレクト操作に呼応し、対応する同期噛合機構が中立位置から1速位置へ作動して予定のプリシフト用の噛合動作を行う瞬時t3'以前に、
クラッチ残存潤滑油量を低下目標残存油量へ減少させることができ、同期噛合機構のプリシフト用噛合動作に支障を来すようなクラッチ引き摺りトルクが発生するのを防止することができる。
ところで、アイドリング回転数上昇時間Toを極低温にもかかわらず図5と同じT1にした場合は、目標アイドリング回転数Neidleが図6に本実施例(シーン1)の破線で示すごとく、早い瞬時t2に通常の低いアイドリング回転数Neidle0に低下してしまい、この早い瞬時t2からクラッチ残存潤滑油量は図6に本実施例(シーン1)の破線で示すごとくゆっくりと減少し、瞬時t3'よりも後の瞬時t4'でないと低下目標残存油量にならない。
このため、非走行レンジ(Pレンジ)から走行レンジ(Dレンジ)へのセレクト操作に呼応して瞬時t3'に同期噛合機構が中立位置から1速位置へ作動して予定のプリシフト用の噛合動作を行おうとするに際し、
クラッチ残存潤滑油量が未だ低下目標残存油量まで減少しておらず、クラッチ引き摺りトルクが発生して、上記同期噛合機構のプリシフト用噛合動作を困難にしたり、不能にするという懸念がある。
本実施例によれば、本実施例(シーン2)のようにアイドリング回転数上昇時間Toを極低温に応じた長いT1'にするため、上記したところから明らかなようにかかる懸念を確実に払拭することができる。
図7は、本実施例(シーン3)の動作タイムチャートで、図5に示した本実施例(シーン1)の場合よりも潤滑油温度が一層低温(極低温)であるときの動作を示す。
それ以外の条件は、図5の本実施例(シーン1)と同じで、運転者がイグニッションスイッチOFF後、短時間で瞬時t1に再度イグニッションスイッチをONさせ、その後の瞬時t3"に非走行レンジ(Pレンジ)から走行レンジ(Dレンジ)へのセレクト操作を行ったことで、対応する同期噛合機構が中立位置から1速位置へ作動して予定のプリシフト用の噛合動作を行うものとする。
なお、瞬時t3"までの間、およびその後も、運転者がアクセルペダルを釈放状態にしていることも、図5の本実施例(シーン1)と同じである。
イグニッションスイッチがONされる瞬時t1に、クラッチ潤滑油供給量の指令値が零にされ、アイドリング回転数上昇量ΔNeが本実施例(シーン3)の実線で示すごとく潤滑油温度に応じたΔNe2(例えば300rpm)に設定され(極低温に呼応して図5のΔNe1よりも多くする)、アイドリング回転数上昇時間Toが潤滑油温度に応じたT1に設定される(ここではT1を図5の場合と同じ値にする)。
イグニッションスイッチがONされる瞬時t1にエンジンが始動されるが、その目標アイドリング回転数Neidleは本実施例(シーン3)の実線で示すごとく、通常通りの基本となる初期値Neidle0に潤滑油温度対応のアイドリング回転数上昇量ΔNe=ΔNe2を加算した回転数にされる。
よってエンジンは、イグニッションスイッチON瞬時t1より目標アイドリング回転数Neidle=Neidle0+ΔNe2の回転上昇下でアイドリング運転され、
このアイドリング回転数上昇制御は、イグニッションスイッチON瞬時t1からアイドリング回転数上昇時間To=T1が経過する瞬時t2まで行われ、
その後エンジンは、通常通りの基本となる初期値Neidle0でアイドリング運転される。
クラッチC1,C2のクラッチディスク間に残存するクラッチ残存潤滑油量は、イグニッションスイッチON瞬時t1までは残存潤滑油が重力により滴下するため、図示のごとく徐々に減少する。
イグニッションスイッチON瞬時t1から瞬時t2までの間は、上記のアイドリング回転数上昇制御による大きな遠心力を受けて潤滑油が速やかに飛散されるため、上記のクラッチ潤滑油供給量零制御と相まって、クラッチ残存潤滑油量は、本実施例(シーン3)の実線で示すごとくに急速に減少する。
瞬時t2からクラッチ残存潤滑油量は、本実施例(シーン3)の実線で示すごとく、通常の低いアイドリング回転数初期値Neidle0に応じた小さな遠心力により、瞬時t2までよりもゆっくりと減少する。
しかしアイドリング回転数上昇制御終了時t2には、クラッチ残存潤滑油量は低下目標残存油量(同期噛合機構のプリシフト用噛合動作に支障を来すようなクラッチ引き摺りトルクを発生することのないクラッチ残存潤滑油量)となる。
つまり、非走行レンジ(Pレンジ)から走行レンジ(Dレンジ)へのセレクト操作に呼応し、対応する同期噛合機構が中立位置から1速位置へ作動して予定のプリシフト用の噛合動作を行う瞬時t3"以前に、
クラッチ残存潤滑油量を低下目標残存油量へ減少させることができ、同期噛合機構のプリシフト用噛合動作に支障を来すようなクラッチ引き摺りトルクが発生するのを防止することができる。
ところで、アイドリング回転数上昇量ΔNeを極低温にもかかわらず図5と同じΔNe1にした場合は、目標アイドリング回転数Neidleが図7に本実施例(シーン1)の破線で示すごとく、本来のアイドリング回転数Neidle0から僅かしか上昇されず、クラッチ残存潤滑油に作用する遠心力が不足する。
従って瞬時t1からのクラッチ残存潤滑油量の低下速度が、図7に本実施例(シーン1)の破線で示すように遅いし、瞬時t2からアイドリング回転数上昇制御の終了でクラッチ残存潤滑油量の低下速度が更に遅くなるため、瞬時t3"よりも後の瞬時t4"でないと低下目標残存油量にならない。
このため、非走行レンジ(Pレンジ)から走行レンジ(Dレンジ)へのセレクト操作に呼応し、瞬時t3"に同期噛合機構が中立位置から1速位置へ作動して予定のプリシフト用の噛合動作を行おうとするに際し、
クラッチ残存潤滑油量が未だ低下目標残存油量まで減少しておらず、クラッチ引き摺りトルクが発生して、上記同期噛合機構のプリシフト用噛合動作を困難にしたり、不能にするという懸念がある。
本実施例によれば、本実施例(シーン3)のようにアイドリング回転数上昇量ΔNeを極低温に応じた大きなΔNe2にするため、上記したところから明らかなようにかかる懸念を確実に払拭することができる。
ちなみに、図6の本実施例(シーン2)と、図7の本実施例(シーン3)とで、潤滑油温度が同じ極低温である場合、これら図6,7に網掛けして示した面積、つまり、上昇後のアイドリング回転数(Neidle0+ΔNe)とアイドリング回転数上昇時間Toとの積が同じになるようアイドリング回転数上昇量ΔNeおよびアイドリング回転数上昇時間Toを決定することで、上記した極低温時の引き摺りトルク低減作用を達成することができる。
そして、上記の面積が潤滑油温度に応じたものであれば、アイドリング回転数上昇量ΔNeおよびアイドリング回転数上昇時間Toの組み合わせは如何なるものであってもよく、ハードウェアの設計に応じて任意に決定することができる。
図8は、本実施例(シーン4)の動作タイムチャートで、潤滑油温度が図5に示した本実施例(シーン1)の場合と同じ低温であり、また、図5に示した本実施例(シーン1)の場合と同じく運転者がイグニッションスイッチOFF後、短時間で瞬時t1に再度イグニッションスイッチをONさせるも、
イグニッションスイッチON瞬時t1に開始されたアイドリング回転数上昇制御が未だ行われているアイドリング回転数上昇制御時間To=T1中(瞬時t1からアイドリング回転数上昇制御時間To=T1が経過するときの瞬時t6よりも前)に非走行レンジ(Pレンジ)から走行レンジ(Dレンジ)へのセレクト操作が行われた場合の動作を示す。
イグニッションスイッチがONされる瞬時t1に、クラッチ潤滑油供給量の指令値が零にされ、アイドリング回転数上昇量ΔNeが潤滑油温度に応じたΔNe1に設定され、アイドリング回転数上昇時間Toが潤滑油温度に応じたT1に設定される。
イグニッションスイッチがONされる瞬時t1に始動されるエンジンの目標アイドリング回転数Neidleは、通常通りの基本となる初期値Neidle0に潤滑油温度対応のアイドリング回転数上昇量ΔNe=ΔNe1を加算した回転数にされる。
よってエンジンは、イグニッションスイッチON瞬時t1より目標アイドリング回転数Neidle=Neidle0+ΔNe1の回転上昇下でアイドリング運転され、このアイドリング回転数上昇制御は本来なら、イグニッションスイッチON瞬時t1からアイドリング回転数上昇時間To=T1が経過する瞬時t6まで行われる。
しかし本実施例(シーン4)においては、アイドリング回転数上昇制御時間To=T1中の瞬時t5に非走行レンジ(Pレンジ)から走行レンジ(Dレンジ)へのセレクト操作が行わたことで、このセレクト操作瞬時t5に目標アイドリング回転数Neidleが実線で示すごとく本来の初期値Neidle0にされ(ステップS203、ステップS211、ステップS209)、アイドリング回転数上昇制御を終了する。
これにより、実エンジン回転数はセレクト操作瞬時t5以降、本実施例(シーン4)の二点鎖線で示すごとく、エンジン特性固有の応答遅れをもって低下する。
ここで、クラッチC1,C2のクラッチディスク間に残存する潤滑油量について考察するに、この残存潤滑油量は、イグニッションスイッチON瞬時t1までは残存潤滑油が重力により滴下するため、図示のごとく徐々に減少する。
イグニッションスイッチON瞬時t1から瞬時t5までの間は、上記のアイドリング回転数上昇制御による大きな遠心力を受けて潤滑油が速やかに飛散されるため、上記のクラッチ潤滑油供給量零制御と相まって、クラッチ残存潤滑油量は、本実施例(シーン4)の実線で示すごとくに急速に減少する。
瞬時t5からクラッチ残存潤滑油量は、本実施例(シーン4)の実線で示すごとく、二点鎖線により示す実エンジン回転数の低下に呼応した小さな遠心力により、瞬時t5までよりもゆっくりと減少する。
しかし、瞬時t5までのクラッチ残存潤滑油量の急速減少により比較的早い瞬時t7には、クラッチ残存潤滑油量は低下目標残存油量(同期噛合機構のプリシフト用噛合動作に支障を来すようなクラッチ引き摺りトルクを発生することのないクラッチ残存潤滑油量)となる。
かようにクラッチ残存潤滑油量が低下目標残存油量へと低下すると(瞬時t7)、瞬時t5のセレクト操作に対応したプリシフト用の同期噛合機構の噛合動作が可能になり、瞬時t7に同期噛合機構は中立位置から1速位置への作動による噛合動作を行うことができる。
かかる同期噛合機構の中立位置から1速位置への作動による噛合動作(プリシフト)が完了した瞬時t7に、クラッチ潤滑油供給量の指令値は少量にセットされる(ステップS106、ステップS107、ステップS110、ステップS113、ステップS114)。
非走行レンジ(Pレンジ)から走行レンジ(Dレンジ)へのセレクト操作瞬時t5の後、瞬時t8に運転者がアクセル開度APOの増大により発進操作を行うと、
この発進を可能にすべく発進用の湿式回転クラッチC1が、ショック対策用の所定の時間変化勾配でスリップ締結制御されながら締結力を漸増され、瞬時t9に完全締結状態になる。
かかる湿式回転クラッチC1のスリップ締結進行中(t8〜t9)、クラッチC1の発熱量が多いことから、クラッチ潤滑油供給量の指令値を多量にセットする(ステップS106、ステップS107、ステップS108、ステップS109)。
湿式回転クラッチC1が完全締結状態になる瞬時t9以降は、クラッチ潤滑油供給量の指令値を少量にセットされる(ステップS106、ステップS107、ステップS110、ステップS113、ステップS114)。
ところで、アイドリング回転数上昇制御時間To=T1中の瞬時t5に非走行レンジ(Pレンジ)から走行レンジ(Dレンジ)へのセレクト操作が行われた場合、このセレクト操作瞬時t5に目標アイドリング回転数Neidleを実線で示すごとく初期値Neidle0して、アイドリング回転数上昇制御を終了するため、
実エンジン回転数がセレクト操作瞬時t5以降、本実施例(シーン4)の二点鎖線で示すごとく、エンジン特性固有の応答遅れをもって低下するといえども、瞬時t8の発進操作に呼応した発進用湿式回転クラッチC1のスリップ締結開始前には実エンジン回転数を初期値Neidle0に戻しておくことができ、発進用湿式回転クラッチC1の締結ショックや、急発進を防止することができる。
しかし、アイドリング回転数上昇制御時間To=T1中の瞬時t5に非走行レンジ(Pレンジ)から走行レンジ(Dレンジ)へのセレクト操作が行われた場合も、図5のアイドリング回転数上昇制御をそのまま継続すると、
実エンジン回転数の低下が、図8に本実施例(シーン1)の破線で示すごとくに大きく遅れ、発進操作に呼応した発進用湿式回転クラッチC1のスリップ締結開始瞬時t8に未だ実エンジン回転数が初期値Neidle0よりも相当に高くて、発進用湿式回転クラッチC1の締結ショックや、急発進を生ずる。
図8の実線で示す本実施例(シーン4)の制御によれば、かかるクラッチC1の締結ショックや急発進に関する問題を回避することができる。
図9は、本実施例(シーン5)の動作タイムチャートを示し、潤滑油温度が図5に示した本実施例(シーン1)の場合と同じ低温であるが、エンジンをアイドリング運転させたまま、ブレーキの作動により停車している状態で、
瞬時t1に走行レンジ(Dレンジ)から非走行レンジ(Pレンジ)へのセレクト操作を行ったことにより、対応する同期噛合機構が1速位置から中立位置へ作動して予定のプリシフト用の外脱動作を行う場合の作用を示し、また、
瞬時t3に非走行レンジ(Pレンジ)から走行レンジ(Dレンジ)へのセレクト操作を行ったことにより、対応する同期噛合機構が中立位置から1速位置へ作動して予定のプリシフト用の噛合動作を行う場合の作用を示す。
走行レンジ(Dレンジ)から非走行レンジ(Pレンジ)へのセレクト操作瞬時t1に、同期噛合機構の上記外脱動作とともに湿式回転クラッチが解放され、これに呼応して湿式回転クラッチへの潤滑油供給量の指令値が零にされ(ステップS128)、アイドリング回転数上昇量ΔNeが潤滑油温度に応じたΔNe1に設定され(ステップS208)、アイドリング回転数上昇時間Toが潤滑油温度に応じたT1に設定される(ステップS205)。
よって、走行レンジ(Dレンジ)から非走行レンジ(Pレンジ)へのセレクト操作瞬時t1にエンジンの目標アイドリング回転数Neidleは、通常通りの基本となる初期値Neidle0に潤滑油温度対応のアイドリング回転数上昇量ΔNe=ΔNe1を加算した回転数にされる(ステップS209)。
これによりエンジンは、走行レンジ(Dレンジ)から非走行レンジ(Pレンジ)へのセレクト操作瞬時t1より目標アイドリング回転数Neidle=Neidle0+ΔNe1の回転上昇下でアイドリング運転され、
このアイドリング回転数上昇制御は、上記のセレクト操作瞬時t1からアイドリング回転数上昇時間To=T1が経過する瞬時t2まで行われ、
その後エンジンは、ΔNe=0(ステップS211)により通常通りの基本となる初期値Neidle0でアイドリング運転される。
一方で瞬時t1まではクラッチ潤滑油供給量の指令値が前記した理由により少量に設定され、クラッチに潤滑油が供給され続けていたため、瞬時t1にはクラッチ残存潤滑油量が存在する。
しかして当該クラッチ残存潤滑油量は、瞬時t1から瞬時t2までの間、上記のアイドリング回転数上昇制御による大きな遠心力を受けて潤滑油が速やかに飛散されるため、上記のクラッチ潤滑油供給量零制御と相まって、本実施例(シーン5)の実線により示すごとくに急速に減少する。
瞬時t2からクラッチ残存潤滑油量は、本実施例(シーン5)の実線により示すごとく、通常の低いアイドリング回転数初期値Neidle0に応じた小さな遠心力により、瞬時t2までよりもゆっくりと減少する。
しかしアイドリング回転数上昇制御終了時t2には、クラッチ残存潤滑油量は低下目標残存油量(同期噛合機構のプリシフト用噛合動作に支障を来すようなクラッチ引き摺りトルクを発生することのないクラッチ残存潤滑油量)となる。
従って、瞬時t3で行われる非走行レンジ(Pレンジ)から走行レンジ(Dレンジ)へのセレクト操作に呼応し、同期噛合機構が中立位置から1速位置へ作動して予定のプリシフト用の噛合動作を開始する以前に、
クラッチ残存潤滑油量を低下目標残存油量へ減少させることができ、同期噛合機構のプリシフト用噛合動作に支障を来すようなクラッチ引き摺りトルクが発生するのを防止することができる。
ところで、本実施例のようなアイドリング回転数上昇制御を行わない場合は、クラッチ残存潤滑油が通常の低いアイドリング回転数初期値Neidle0に応じた小さな遠心力を受けるだけであるため、クラッチ残存潤滑油量は破線で示すごとく瞬時t1からゆっくりと減少し、瞬時t3よりも後の瞬時t4でないと低下目標残存油量にならない。
このため、非走行レンジ(Pレンジ)から走行レンジ(Dレンジ)へのセレクト操作に呼応し、瞬時t3に同期噛合機構が中立位置から1速位置へ作動して予定のプリシフト用の噛合動作を行おうとするに際し、
クラッチ残存潤滑油量が未だ低下目標残存油量まで減少しておらず、クラッチ引き摺りトルクが発生して、上記同期噛合機構のプリシフト用噛合動作を困難にしたり、不能にするという懸念がある。
本実施例によれば、アイドリング回転数上昇制御により上記した通り、かかる懸念を確実に払拭することができる。
なお図9は、走行レンジ(Dレンジ)→非走行レンジ(Pレンジ)セレクト操作瞬時t1から、非走行レンジ(Pレンジ)→走行レンジ(Dレンジ)セレクト操作瞬時t3までの時間が短い場合の動作であるが、
t1〜t3時間が長い場合は、非走行レンジ(Pレンジ)→走行レンジ(Dレンジ)セレクト操作瞬時t3前にクラッチ残存潤滑油が、上昇制御しない通常のアイドリング回転数Neidle0による小さな遠心力でもほとんど飛散され得て、前記の潤滑油供給量零制御と相まってクラッチ引き摺りトルクを発生することがない。
この場合は、本実施例のようなアイドリング回転数上昇制御が不要であるから、当該アイドリング回転数上昇制御を行わないようにして、無駄なアイドリング回転数上昇制御による燃費の悪化を回避することも可能である。
図10は、本実施例(シーン6)の動作タイムチャートで、図9に示した本実施例(シーン5)の場合よりも潤滑油温度が一層低温(極低温)であるときの動作を示す。
それ以外の条件は、図9の本実施例(シーン5)と同じで、エンジンをアイドリング運転させたまま、ブレーキの作動により停車している間の、
瞬時t1に走行レンジ(Dレンジ)から非走行レンジ(Pレンジ)へのセレクト操作を行ったことにより、対応する同期噛合機構が1速位置から中立位置へ作動して予定のプリシフト用の外脱動作を行い、また、
瞬時t3'に非走行レンジ(Pレンジ)から走行レンジ(Dレンジ)へのセレクト操作を行ったことにより、対応する同期噛合機構が中立位置から1速位置へ作動して予定のプリシフト用の噛合動作を行うものとする。
走行レンジ(Dレンジ)から非走行レンジ(Pレンジ)へのセレクト操作瞬時t1に、同期噛合機構の上記外脱動作とともに湿式回転クラッチが解放され、これに呼応して湿式回転クラッチへの潤滑油供給量の指令値が零にされ、アイドリング回転数上昇量ΔNeが潤滑油温度に応じたΔNe1に設定され(ここではΔNe1を図9の場合と同じ値にする)、アイドリング回転数上昇時間Toが潤滑油温度に応じたT1'に設定される(極低温に呼応して図9のT1よりも長くする)。
これによりエンジンは、走行レンジ(Dレンジ)から非走行レンジ(Pレンジ)へのセレクト操作瞬時t1より目標アイドリング回転数Neidle=Neidle0+ΔNe1の回転上昇下でアイドリング運転され、
このアイドリング回転数上昇制御は、上記のセレクト操作瞬時t1からアイドリング回転数上昇時間To=T1'が経過する瞬時t2'まで行われ、
その後エンジンは通常通りの基本となる初期値Neidle0でアイドリング運転される。
よってクラッチ残存潤滑油量は、瞬時t1から瞬時t2'までの間、上記のアイドリング回転数上昇制御による大きな遠心力を受けて潤滑油が速やかに飛散されるため、上記のクラッチ潤滑油供給量零制御と相まって、本実施例(シーン6)の実線により示すごとくに急速に減少する。
瞬時t2'からクラッチ残存潤滑油量は、本実施例(シーン6)の実線により示すごとく、通常の低いアイドリング回転数初期値Neidle0に応じた小さな遠心力により、瞬時t2'までよりもゆっくりと減少する。
しかしアイドリング回転数上昇制御終了時t2'には、クラッチ残存潤滑油量は低下目標残存油量となる。
従って、瞬時t3'で行われる非走行レンジ(Pレンジ)から走行レンジ(Dレンジ)へのセレクト操作に呼応し、同期噛合機構が中立位置から1速位置へ作動して予定のプリシフト用の噛合動作を開始する以前に、
クラッチ残存潤滑油量を低下目標残存油量へ減少させることができ、同期噛合機構のプリシフト用噛合動作に支障を来すようなクラッチ引き摺りトルクが発生するのを防止することができる。
ところで、アイドリング回転数上昇時間Toを極低温にもかかわらず図9と同じT1にした場合は、
目標アイドリング回転数Neidleが図10に本実施例(シーン5)の破線で示すごとく、早い瞬時t2に通常の低いアイドリング回転数Neidle0に低下してしまい、この早い瞬時t2からクラッチ残存潤滑油量は図10に本実施例(シーン5)の破線で示すごとくゆっくりと減少し、瞬時t3'よりも後の瞬時t4'でないと低下目標残存油量にならない。
このため、非走行レンジ(Pレンジ)から走行レンジ(Dレンジ)へのセレクト操作に呼応し、瞬時t3'に同期噛合機構が中立位置から1速位置作動して予定のプリシフト用の噛合動作を行おうとするに際し、
クラッチ残存潤滑油量が未だ低下目標残存油量まで減少しておらず、クラッチ引き摺りトルクが発生して、上記同期噛合機構のプリシフト用噛合動作を困難にしたり、不能にするという懸念がある。
本実施例によれば、本実施例(シーン6)のようにアイドリング回転数上昇時間Toを極低温に応じた長いT1'にするため、上記したところから明らかなようにかかる懸念を確実に払拭することができる。
図11は、本実施例(シーン7)の動作タイムチャートで、図9に示した本実施例(シーン5)の場合よりも潤滑油温度が一層低温(極低温)であるときの動作を示す。
それ以外の条件は、図9の本実施例(シーン5)と同じで、エンジンをアイドリング運転させたまま、ブレーキの作動により停車している間において、
瞬時t1に走行レンジ(Dレンジ)から非走行レンジ(Pレンジ)へのセレクト操作を行ったことにより、対応する同期噛合機構が1速位置から中立位置へ作動して予定のプリシフト用の外脱動作を行い、また、
瞬時t3"に非走行レンジ(Pレンジ)から走行レンジ(Dレンジ)へのセレクト操作を行ったことにより、対応する同期噛合機構が中立位置から1速位置へ作動して予定のプリシフト用の噛合動作を行うものとする。
走行レンジ(Dレンジ)から非走行レンジ(Pレンジ)へのセレクト操作瞬時t1に、同期噛合機構の上記外脱動作とともに湿式回転クラッチが解放され、これに呼応して湿式回転クラッチへの潤滑油供給量の指令値が零にされ、アイドリング回転数上昇量ΔNeが本実施例(シーン7)の実線で示すごとく潤滑油温度に応じたΔNe2に設定され(極低温に呼応して図9のΔNe1よりも多くする)、アイドリング回転数上昇時間Toが潤滑油温度に応じたT1に設定される(ここではT1を図9の場合と同じ値にする)。
これによりエンジンは、走行レンジ(Dレンジ)から非走行レンジ(Pレンジ)へのセレクト操作瞬時t1より目標アイドリング回転数Neidle=Neidle0+ΔNe2の回転上昇下でアイドリング運転され、
このアイドリング回転数上昇制御は、上記のセレクト操作瞬時t1からアイドリング回転数上昇時間To=T1が経過する瞬時t2まで行われ、
その後エンジンは通常通りの基本となる初期値Neidle0でアイドリング運転される。
よってクラッチ残存潤滑油量は、瞬時t1から瞬時t2までの間、上記のアイドリング回転数上昇制御による大きな遠心力を受けて潤滑油が速やかに飛散されるため、上記のクラッチ潤滑油供給量零制御と相まって、本実施例(シーン7)の実線により示すごとくに急速に減少する。
瞬時t2からクラッチ残存潤滑油量は、本実施例(シーン7)の実線により示すごとく、通常の低いアイドリング回転数初期値Neidle0に応じた小さな遠心力により、瞬時t2までよりもゆっくりと減少する。
しかしアイドリング回転数上昇制御終了時t2には、クラッチ残存潤滑油量は低下目標残存油量となる。
従って、瞬時t3"で行われる非走行レンジ(Pレンジ)から走行レンジ(Dレンジ)へのセレクト操作に呼応し、同期噛合機構が中立位置から1速位置へ作動して予定のプリシフト用の噛合動作を行う以前に、
クラッチ残存潤滑油量を低下目標残存油量へ減少させることができ、同期噛合機構のプリシフト用噛合動作に支障を来すようなクラッチ引き摺りトルクが発生するのを防止することができる。
ところで、アイドリング回転数上昇量ΔNeを極低温にもかかわらず図9と同じΔNe1にした場合は、目標アイドリング回転数Neidleが図11に本実施例(シーン5)の破線で示すごとく、本来のアイドリング回転数Neidle0から僅かしか上昇されず、クラッチ残存潤滑油に作用する遠心力が不足する。
従って瞬時t1からのクラッチ残存潤滑油量の低下速度が、図11に本実施例(シーン5)の破線で示すように遅いし、瞬時t2からアイドリング回転数上昇制御の終了でクラッチ残存潤滑油量の低下速度が更に遅くなるため、瞬時t3"よりも後の瞬時t4"でないと低下目標残存油量にならない。
このため、非走行レンジ(Pレンジ)から走行レンジ(Dレンジ)へのセレクト操作に呼応し、瞬時t3"に同期噛合機構が中立位置から1速位置へ作動して予定のプリシフト用の噛合動作を行おうとするに際し、
クラッチ残存潤滑油量が未だ低下目標残存油量まで減少しておらず、クラッチ引き摺りトルクが発生して、上記同期噛合機構のプリシフト用噛合動作を困難にしたり、不能にするという懸念がある。
本実施例によれば、本実施例(シーン7)のようにアイドリング回転数上昇量ΔNeを極低温に応じた大きなΔNe2にするため、上記したところから明らかなようにかかる懸念を確実に払拭することができる。
ちなみに、図10の本実施例(シーン6)と、図11の本実施例(シーン7)とで、潤滑油温度が同じ極低温である場合、これら図10,11に網掛けして示した面積、つまり、上昇後のアイドリング回転数(Neidle0+ΔNe)とアイドリング回転数上昇時間Toとの積が同じになるようアイドリング回転数上昇量ΔNeおよびアイドリング回転数上昇時間Toを決定することで、上記した極低温時の引き摺りトルク低減作用を達成することができる。
そして、上記の面積が潤滑油温度に応じたものであれば、アイドリング回転数上昇量ΔNeおよびアイドリング回転数上昇時間Toの組み合わせは如何なるものであってもよく、ハードウェアの設計に応じて任意に決定することができる。
図12は、本実施例(シーン8)の動作タイムチャートで、
潤滑油温度が図9に示した本実施例(シーン5)の場合と同じ低温であり、また、
図9に示した本実施例(シーン5)の場合と同じくエンジンをアイドリング運転させたまま、ブレーキの作動により停車している間において、瞬時t1に走行レンジ(Dレンジ)から非走行レンジ(Pレンジ)へのセレクト操作を行ったことで、対応する同期噛合機構が1速位置から中立位置へ作動して予定のプリシフト用の外脱動作を行い、
上記のセレクト操作時t1に開始されたアイドリング回転数上昇制御が行われているアイドリング回転数上昇制御時間To=T1中(瞬時t1からアイドリング回転数上昇制御時間To=T1が経過したときの瞬時t6よりも前)に非走行レンジ(Pレンジ)から走行レンジ(Dレンジ)へのセレクト操作が行われた場合の動作を示す。
上記のセレクト操作瞬時t1に、クラッチ潤滑油供給量の指令値が零にされ、アイドリング回転数上昇量ΔNeが潤滑油温度に応じたΔNe1に設定され、アイドリング回転数上昇時間Toが潤滑油温度に応じたT1に設定される。
上記のセレクト操作瞬時t1に始動されるエンジンの目標アイドリング回転数Neidleは、通常通りの基本となる初期値Neidle0に潤滑油温度対応のアイドリング回転数上昇量ΔNe=ΔNe1を加算した回転数にされる。
よってエンジンは、上記のセレクト操作瞬時t1より目標アイドリング回転数Neidle=Neidle0+ΔNe1の回転上昇下でアイドリング運転され、このアイドリング回転数上昇制御は本来なら、上記のセレクト操作瞬時t1からアイドリング回転数上昇時間To=T1が経過する瞬時t6まで行われる。
しかし本実施例(シーン8)においては、アイドリング回転数上昇制御時間To=T1中の瞬時t5に非走行レンジ(Pレンジ)から走行レンジ(Dレンジ)へのセレクト操作が行わたことで、このセレクト操作瞬時t5に目標アイドリング回転数Neidleが実線で示すごとく本来の初期値Neidle0にされ(ステップS203、ステップS211、ステップS209)、アイドリング回転数上昇制御を終了する。
これにより、実エンジン回転数はセレクト操作瞬時t5以降、本実施例(シーン8)の二点鎖線で示すごとく、エンジン特性固有の応答遅れをもって低下する。
一方でクラッチ残存潤滑油量は、上記のセレクト操作瞬時t1から瞬時t5までの間は、上記のアイドリング回転数上昇制御による大きな遠心力を受けて潤滑油が速やかに飛散されるため、上記のクラッチ潤滑油供給量零制御と相まって、本実施例(シーン8)の実線で示すごとくに急速に減少する。
瞬時t5からクラッチ残存潤滑油量は、本実施例(シーン8)の実線で示すごとく、二点鎖線により示す実エンジン回転数の低下に呼応した小さな遠心力により、瞬時t5までよりもゆっくりと減少する。
しかし、瞬時t5までのクラッチ残存潤滑油量の急速減少により比較的早い瞬時t7には、クラッチ残存潤滑油量は低下目標残存油量(同期噛合機構のプリシフト用噛合動作に支障を来すようなクラッチ引き摺りトルクを発生することのないクラッチ残存潤滑油量)となる。
かようにクラッチ残存潤滑油量が低下目標残存油量へと低下すると(瞬時t7)、瞬時t5のセレクト操作に対応したプリシフト用の同期噛合機構の噛合動作が可能になり、瞬時t7に同期噛合機構は中立位置から1速位置への作動により噛合動作を行うことができる。
かかる同期噛合機構の中立位置から1速位置への作動による噛合動作(プリシフト)が完了した瞬時t7に、クラッチ潤滑油供給量の指令値は少量にセットされる(ステップS106、ステップS107、ステップS110、ステップS113、ステップS114)。
非走行レンジ(Pレンジ)から走行レンジ(Dレンジ)へのセレクト操作瞬時t5の後、瞬時t8に運転者がアクセル開度APOの増大により発進操作を行うと、この発進を可能にすべく発進用の湿式回転クラッチC1がショック対策用の所定の時間変化勾配でスリップ締結制御されながら締結力を漸増され、瞬時t9に完全締結状態になる。
かかる湿式回転クラッチC1のスリップ締結進行中(t8〜t9)、クラッチC1の発熱量が多いことから、クラッチ潤滑油供給量の指令値を多量にセットする(ステップS106、ステップS107、ステップS108、ステップS109)。
湿式回転クラッチC1が完全締結状態になる瞬時t9以降は、クラッチ潤滑油供給量の指令値を少量にセットされる(ステップS106、ステップS107、ステップS110、ステップS113、ステップS114)。
ところで、アイドリング回転数上昇制御時間To=T1中の瞬時t5に非走行レンジ(Pレンジ)から走行レンジ(Dレンジ)へのセレクト操作が行われた場合、このセレクト操作瞬時t5に目標アイドリング回転数Neidleを実線で示すごとく初期値Neidle0して、アイドリング回転数上昇制御を終了するため、
実エンジン回転数がセレクト操作瞬時t5以降、本実施例(シーン8)の二点鎖線で示すごとく、エンジン特性固有の応答遅れをもって低下するといえども、瞬時t8の発進操作に呼応した発進用湿式回転クラッチC1のスリップ締結開始前には実エンジン回転数を初期値Neidle0に戻しておくことができ、発進用湿式回転クラッチC1の締結ショックや急発進を防止することができる。
しかし、アイドリング回転数上昇制御時間To=T1中の瞬時t5に非走行レンジ(Pレンジ)から走行レンジ(Dレンジ)へのセレクト操作が行われた場合も、図9のアイドリング回転数上昇制御をそのまま継続すると、
実エンジン回転数の低下が、図12に本実施例(シーン5)の破線で示すごとくに大きく遅れ、発進操作に呼応した発進用湿式回転クラッチC1のスリップ締結開始瞬時t8に未だ実エンジン回転数が初期値Neidle0よりも相当に高くて、発進用湿式回転クラッチC1の締結ショックや、急発進を生ずる。
図12の実線で示す本実施例(シーン8)の制御によれば、かかるクラッチC1の締結ショックや急発進に関する問題を回避することができる。
なお上記では何れのシーンにおいても便宜上、非走行レンジ(Pレンジ)から走行レンジ(Dレンジ)へのセレクト操作に呼応した同期噛合機構のプリシフト用噛合動作が当該セレクト操作に対し応答遅れ無しに実行されるものとして説明を展開してきたが、
実際はセレクト操作に対し、同期噛合機構のプリシフト用噛合動作は或る応答遅れをもって行われる。
このため、同期噛合機構のプリシフト用噛合動作に支障を来すクラッチ引き摺りトルクを防止するためのクラッチ潤滑油供給量零制御を、上記のセレクト操作瞬時までとすると、
同期噛合機構がプリシフト用噛合動作を開始する前にクラッチへの潤滑油供給が開始されることになり、クラッチ引き摺りトルクの発生によって同期噛合機構のプリシフト用噛合動作が困難になったり、不能になる懸念がある。
そこで本実施例においては、クラッチ潤滑油供給量零制御を、上記のセレクト操作瞬時までではなく、同期噛合機構がプリシフト用噛合動作を完了するまで継続させることとした。
これにより、同期噛合機構がプリシフト用噛合動作を開始する前にクラッチへ潤滑油が供給され始めることがなくなり、同期噛合機構のプリシフト用噛合動作が困難になったり、不能になるという上記の懸念を払拭することができる。
また上記では、アイドリング回転数上昇時間Toを、クラッチ残存潤滑油量が低下目標残存油量(同期噛合機構のプリシフト用噛合動作に支障を来すようなクラッチ引き摺りトルクを発生することのないクラッチ残存潤滑油量)となる時間としたが、
前記作用効果を一層確実にするためには、クラッチ残存潤滑油量が低下目標残存油量よりも若干少なくなるようにアイドリング回転数上昇時間Toを定めるのがよいのは言うまでもない。
なお図5〜12ではいずれも、走行レンジが前進走行レンジ(Dレンジ)である場合について説明したが、
走行レンジが後退走行レンジ(Rレンジ)である場合も、動作は前進走行レンジ(Dレンジ)の場合と同様である。
本発明の一実施例になる湿式回転クラッチの引き摺りトルク低減制御装置を具えたツインクラッチ式マニュアルトランスミッションを示す骨子図である。 図1に示すツインクラッチ式マニュアルトランスミッションにおけるクラッチの締結と実現変速段との関係、および、変速段の切り替えに伴って発生するプリシフトの種類を示す論理図で、 (a)は、アップシフト時の論理図、 (b)は、ダウンシフト時の論理図である。 図1に示すツインクラッチ式マニュアルトランスミッションの変速制御およびクラッチ潤滑油供給量制御に係わる制御プログラムを示すフローチャートである。 図1に示すツインクラッチ式マニュアルトランスミッションのクラッチ引き摺りトルク低減制御の要部であるエンジンアイドリング回転数制御に関した制御プログラムを示すフローチャートである。 図3および図4の制御プログラムを実行して遂行する湿式回転クラッチの引き摺りトルク低減作用を示すシーン1の動作タイムチャートである。 図3および図4の制御プログラムを実行して遂行する湿式回転クラッチの引き摺りトルク低減作用を示すシーン2の動作タイムチャートである。 図3および図4の制御プログラムを実行して遂行する湿式回転クラッチの引き摺りトルク低減作用を示すシーン3の動作タイムチャートである。 図3および図4の制御プログラムを実行して遂行する湿式回転クラッチの引き摺りトルク低減作用を示すシーン4の動作タイムチャートである。 図3および図4の制御プログラムを実行して遂行する湿式回転クラッチの引き摺りトルク低減作用を示すシーン5の動作タイムチャートである。 図3および図4の制御プログラムを実行して遂行する湿式回転クラッチの引き摺りトルク低減作用を示すシーン6の動作タイムチャートである。 図3および図4の制御プログラムを実行して遂行する湿式回転クラッチの引き摺りトルク低減作用を示すシーン7の動作タイムチャートである。 図3および図4の制御プログラムを実行して遂行する湿式回転クラッチの引き摺りトルク低減作用を示すシーン8の動作タイムチャートである。
符号の説明
1 エンジン
2 クランクシャフト
C1 奇数変速段クラッチ(湿式回転クラッチ)
C2 偶数変速段クラッチ(湿式回転クラッチ)
3 クラッチハウジング
4 第1入力軸
5 第2入力軸
6 出力軸
7 変速機ケース
8 トーショナルダンパ
9 オイルポンプ
10 カウンターシャフト
11 カウンターギヤ
12 出力歯車
G1 第1速歯車組
G2 第2速歯車組
G3 第3速歯車組
G4 第4速歯車組
G6 第6速歯車組
GR 後退歯車組
21 1速−後退用同期噛合機構
22 3速−5速用同期噛合機構
29 6速用同期噛合機構
30 2速−4速用同期噛合機構

Claims (11)

  1. エンジンおよび変速機入力軸間に介在され、潤滑油の供給により冷却および摩耗防止される湿式回転クラッチと、
    該湿式回転クラッチおよび変速機出力軸間に介在され、所望の変速段を実現するための同期噛合機構とを具え、
    前記湿式回転クラッチを解放させた状態で、前記同期噛合機構を中立位置から変速段実現位置へ向け作動させて噛合動作させることにより、前記所望の変速段を実現し得るようにした変速機に用いられ、
    前記湿式回転クラッチの引き摺りトルクを低減するための装置において、
    前記同期噛合機構の噛合動作が開始される以前において、前記湿式回転クラッチの入力側回転数を、該クラッチ入力側回転数に応じた遠心力で該湿式回転クラッチ内の残存潤滑油が、前記同期噛合機構の噛合動作に支障を来すことのない油量となるまで排除されるべく上昇させるよう構成したことを特徴とする湿式回転クラッチの引き摺りトルク低減制御装置。
  2. 前記変速機は、非走行レンジが選択された時から、前記同期噛合機構が噛合動作を完了するまでの間、前記湿式回転クラッチへの潤滑油供給量を、前記同期噛合機構の噛合動作に支障を来さない所定量以下にするものである、請求項1に記載の湿式回転クラッチの引き摺りトルク低減制御装置において、
    前記非走行レンジが選択されている間であって、前記同期噛合機構が噛合動作を開始する前の所定時間中に、前記湿式回転クラッチの入力側回転数上昇制御を行うよう構成したことを特徴とする湿式回転クラッチの引き摺りトルク低減制御装置。
  3. 請求項1または2に記載の湿式回転クラッチの引き摺りトルク低減制御装置において、
    前記湿式回転クラッチの入力側回転数上昇制御を、非走行レンジが選択された時に開始させるよう構成したことを特徴とする湿式回転クラッチの引き摺りトルク低減制御装置。
  4. 請求項1または2に記載の湿式回転クラッチの引き摺りトルク低減制御装置において、
    前記湿式回転クラッチの入力側回転数上昇制御を、エンジンイグニッションスイッチのON時に開始させるよう構成したことを特徴とする湿式回転クラッチの引き摺りトルク低減制御装置。
  5. 請求項2〜4のいずれか1項に記載の湿式回転クラッチの引き摺りトルク低減制御装置において、
    前記湿式回転クラッチへの潤滑油供給量の低下は、該潤滑油供給量を0にするものであることを特徴とする湿式回転クラッチの引き摺りトルク低減制御装置。
  6. 請求項2〜5のいずれか1項に記載の湿式回転クラッチの引き摺りトルク低減制御装置において、
    前記湿式回転クラッチの入力側回転数上昇制御を行う所定時間は、前記クラッチ潤滑油が低温であるほど長い時間であることを特徴とする湿式回転クラッチの引き摺りトルク低減制御装置。
  7. 請求項2〜6のいずれか1項に記載の湿式回転クラッチの引き摺りトルク低減制御装置において、
    前記所定時間が経過する前に非走行レンジから走行レンジへのレンジ切り替え操作がなされた場合は、前記湿式回転クラッチの入力側回転数上昇制御を終了させるよう構成したことを特徴とする湿式回転クラッチの引き摺りトルク低減制御装置。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の湿式回転クラッチの引き摺りトルク低減制御装置において、
    前記湿式回転クラッチの入力側回転数上昇制御における回転数上昇幅を、前記クラッチ潤滑油が低温であるほど大きくしたことを特徴とする湿式回転クラッチの引き摺りトルク低減制御装置。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の湿式回転クラッチの引き摺りトルク低減制御装置において、
    前記クラッチ潤滑油が設定温度以上である場合、前記湿式回転クラッチの入力側回転数上昇制御を行わないよう構成したことを特徴とする湿式回転クラッチの引き摺りトルク低減制御装置。
  10. 請求項2〜9のいずれか1項に記載の湿式回転クラッチの引き摺りトルク低減制御装置において、
    前記クラッチ潤滑油が設定温度以上である場合、湿式回転クラッチへの潤滑油供給量を所定量以下にする前記クラッチ潤滑油量低下制御を行わないよう構成したことを特徴とする湿式回転クラッチの引き摺りトルク低減制御装置。
  11. 請求項9または10に記載の湿式回転クラッチの引き摺りトルク低減制御装置において、
    前記設定温度は、湿式回転クラッチの引き摺りトルクが、前記同期噛合機構の噛合動作に支障を来さす大きさにならない高温域の下限値であることを特徴とする湿式回転クラッチの引き摺りトルク低減制御装置。
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