JP2006234164A - 歯車式変速機の制御装置および制御方法 - Google Patents

歯車式変速機の制御装置および制御方法 Download PDF

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辰哉 越智
Toshimichi Minowa
利通 箕輪
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岡田  隆
Hiroshi Sakamoto
博史 坂本
Yoshiyuki Yoshida
義幸 吉田
Tetsuo Matsumura
哲生 松村
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Abstract

【課題】摩擦クラッチの冷却流量増加にともなう運転性悪化を回避することが可能な歯車式変速機の制御装置および制御方法を提供することにある。
【解決手段】第1の流量算出手段11は、摩擦クラッチ3A,3Bの冷却作用を優先した冷却流量を算出する。第2の流量算出手段10は、摩擦クラッチ3A,3Bの引き摺り抑制を優先した冷却流量を算出する。流量算出切り替え手段12は、第1の流量算出手段11と第2の流量算出手段10とを切り替える。冷却流量調整手段9は、第1若しくは第2の流量算出手段11,10の出力に基づいて冷却流量を調整する。
【選択図】図1

Description

本発明は、歯車式変速機の制御装置および制御方法に係り、特に、少なくとも1つ以上の摩擦クラッチを備えた歯車式変速機に用いるに好適な歯車式変速機の制御装置および制御方法に関する。
近年、自動車の低燃費の観点から歯車式変速機を自動化した変速機が開発されている。この変速機は、例えば、平行2軸に設けられた軸上に遊転可能な複数の歯車列と同期装置を有する噛合いクラッチとを備え、この噛合いクラッチをアクチュエータにより自動的に切り替えて変速動作を行う自動変速機である(例えば特許文献1参照)。このように、高い機械効率の噛合いクラッチを用いたシンプルな構造であるため、燃費向上に貢献できる。
これらの変速機では、狭く近接するトランスミッションケース内部で動作する摩擦クラッチおよび複雑なギア機構は、発進または変速動作において滑り状態により円滑なトルクを伝達するため多量の熱が発生する。熱の蓄積は、クラッチ機構自体の本質によって悪化するものである。特に、これらのクラッチを2つ嵌め込んでいるツインクラッチ変速機では、多量の熱が発生するため、その冷却方法が大きな課題となる。
そこで、クラッチユニットの冷却方法としては、例えば、係合・解放のクラッチ毎に変速時のエンジントルクおよび回転数差に基づいてクラッチの発生熱量を算出し、現在供給している冷却流量による冷却効果を加味したうえで、クラッチの温度上昇を予測し、クラッチの冷却に必要な流量を改めて算出し、効率的な必要冷却流量を係合または解放のクラッチ毎に供給することにより、過剰な流量供給による効率低下を抑制するものが知られている(例えば特許文献2参照)。
特開平8−320054号公報 特開2004−144304号公報
しかしながら、上述の方式では、クラッチが高温状態で冷却流量を多大に供給している状況において、例えばエンジンを停止、あるいは始動する際に、次のような問題点が生ずる。
すなわち、摩擦クラッチの発生熱量が大きい場合、クラッチの冷却流量が多大に供給されている。そのため、エンジン停止時には、クラッチにおける引き摺りが増加し、その引き摺りが負荷として作用するため、エンジン回転数が初期状態から低下し、車体との共振周波数域領域を通過する時間が長くなる。その結果、車体の振動が発生して運転性が悪化するという問題が生じる。
また、摩擦クラッチの発生熱量が大きい場合、クラッチの冷却流量が多大に供給されている。そのため、エンジン始動時においては、クラッチにおける引き摺りが増加し、その引き摺りが負荷として作用するため、エンジン回転数がアイドル回転数相当に上昇するまでの所要時間が長期化する。つまり、始動性が悪化するという問題点が生じる。
このようなエンジン停止・始動時における運転性悪化という問題点は、近年普及しているアイドルストップシステムにおいてより顕在化する。アイドルストップシステムとは、燃費向上の観点から近年普及しているシステムであり、車両が赤信号あるいは渋滞などで停車した場合等に、エンジンを自動的に停止させ、その後所定の条件が成立したとき(例えば、運転者がブレーキペダルから足を離してアクセルペダルを踏み込むまでの操作が行われたとき)に、再びエンジンを自動的に始動させる公知の技術である。このように、運転者の意図とは無関係に自動的にエンジンを停止、始動させるため、違和感の無い動作や運転性が重要視される。
本発明の目的は、摩擦クラッチの冷却流量増加にともなう運転性悪化を回避することが可能な歯車式変速機の制御装置および制御方法を提供することにある。
(1)上記目的を達成するために、本発明は、エンジンに連結された歯車式変速機における少なくとも1つ以上の摩擦クラッチの係合・解放により変速比を変更し、前記摩擦クラッチの冷却または潤滑を促すための冷却液の流量を調整する冷却流量調整手段により前記摩擦クラッチに供給する冷却流量を変化させる歯車式変速機の制御装置であって、前記摩擦クラッチの冷却作用を優先した冷却流量を算出する第1の流量算出手段と、前記摩擦クラッチの引き摺り抑制を優先した冷却流量を算出する第2の流量算出手段と、前記第1の流量算出手段と前記第2の流量算出手段とを切り替える流量算出切り替え手段とを備え、前記冷却流量調整手段は、前記第1もしくは第2の流量算出手段の出力に基づいて冷却流量を調整するようにしたものである。
かかる構成により、摩擦クラッチの冷却流量増加にともなう運転性悪化を回避し得るものとなる。
(2)上記(1)において、好ましくは、前記第1の流量算出手段は、前記摩擦クラッチの発生熱量などの温度パラメータに基づいて、上記冷却流量を算出するようにしたものである。
(3)上記(1)において、好ましくは、前記流量算出切り替え手段は、前記エンジンの停止要求指令時に前記第2の流量算出手段に切り替えるようにしたものである。
(4)上記(1)において、好ましくは、前記流量算出切り替え手段は、前記エンジンの始動要求指令時に前記第2の流量算出手段に切り替えるようにしたものである。
(5)上記(1)において、好ましくは、前記流量算出切り替え手段は、前記歯車式変速機の変速要求指令時に前記第2の流量算出手段に切り替えるようにしたものである。
(6)上記(1)において、好ましくは、前記歯車式変速機は、2つの摩擦クラッチを備えたツインクラッチシステムであり、前記流量算出切り替え手段は、前記歯車式変速機のシフト動作に先行して前記第1流量制御手段から前記第2の流量算出手段に切り替えるようにしたものである。
(7)また、上記目的を達成するために、本発明は、1つ以上の摩擦クラッチを有する歯車式変速機に対して、前記摩擦クラッチの係合・解放により変速比を変更する歯車式変速機の制御装置であって、前記摩擦クラッチの冷却作用を優先した冷却流量を算出する第1の流量算出手段と、前記第1の流量算出手段が算出する流量に比べて少ない冷却流量を算出する第2の流量算出手段と、前記第1の流量算出手段若しくは前記第2の流量算出手段が算出した冷却流量に基づいて、前記摩擦クラッチに供給する冷却流量を変化させる冷却流量調整手段とを備えるようにしたものである。
かかる構成により、摩擦クラッチの冷却流量増加にともなう運転性悪化を回避し得るものとなる。
(10)さらに、上記目的を達成するために、本発明は、1つ以上の摩擦クラッチを有する歯車式変速機に対して、前記摩擦クラッチの係合・解放により変速比を変更する歯車式変速機の制御装置であって、前記摩擦クラッチの冷却作用を優先した第1の冷却流量から、前記摩擦クラッチの引き摺り抑制を優先した第2の冷却流量に切り替えて、前記摩擦クラッチに供給する冷却流量を変化させる制御手段を備えるようにしたものである。
かかる構成により、摩擦クラッチの冷却流量増加にともなう運転性悪化を回避し得るものとなる。
(11)また、上記目的を達成するために、本発明は、エンジンと、少なくとも1つ以上の摩擦クラッチの係合・解放により変速比が変更される歯車式変速機と、前記摩擦クラッチの冷却または潤滑を促すための冷却流量を調整する冷却流量調整手段とを有し、所定の条件に基づいて前記エンジンを自動的に運転状態と停止状態とで相互に変更することが可能な車両の制御装置において、前記冷却流量を判定する流量判定手段と、前記冷却流量判定手段の判定結果に基づいて、冷却流量が少ない場合には、前記エンジンの自動停止を禁止する制御手段を備えるようにしたものである。
かかる構成により、摩擦クラッチの冷却流量増加にともなう運転性悪化を回避し得るものとなる。
(12)また、上記目的を達成するために、本発明は、エンジンに連結された歯車式変速機における少なくとも1つ以上の摩擦クラッチの係合・解放により変速比を変更し、前記摩擦クラッチの冷却または潤滑を促すための冷却液の流量を調整して前記摩擦クラッチに供給する冷却流量を変化させる歯車式変速機の制御方法であって、前記摩擦クラッチの冷却作用を優先した第1の冷却流量から、前記摩擦クラッチの引き摺り抑制を優先した第2の冷却流量に切り替えて、前記摩擦クラッチに供給する冷却流量を変化させるようにしたものである。
かかる方法により、摩擦クラッチの冷却流量増加にともなう運転性悪化を回避し得るものとなる。
本発明によれば、摩擦クラッチの冷却流量増加にともなう運転性悪化を回避することができる。
以下、図1〜図5を用いて、本発明の第1の実施形態による歯車式変速機の制御装置および制御方法について説明する。
最初に、図1を用いて、本実施形態による摩擦クラッチを用いた歯車式変速機の制御装置の要部構成について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態による摩擦クラッチを用いた歯車式変速機の制御装置の要部構成を示すブロック図である。
車両の動力源であるエンジン1としては、ガソリンエンジン,ディーゼルエンジン,またはLPGエンジンなどの内燃機関が用いられる。エンジン1の動力伝達経路には、歯車式変速機2が配置されている。歯車式変速機2は、第1クラッチ3Aおよび第2クラッチ3Bと、それぞれのクラッチに連結した第1入力軸5Aおよび第2入力軸5Bと、これらの軸に配設された歯車列7とで構成される。なお、歯車式変速機2の詳細については、図3を用いて後述する。
第1クラッチ3Aおよび第2クラッチ3Bは、発進や変速などの頻繁な係合・解放動作の繰り返しにより、多大な熱量が発生する。そこで、本実施形態では、冷却流量調整手段9により、クラッチ保護のための冷却液をクラッチ3Aおよびクラッチ3Bに供給し、発熱を抑制する。冷却流量調整手段9は、図2にて後述するポンプや油圧制御弁などにより構成されている。冷却流量調整手段9は、冷却液を所定流量に調整し、第1クラッチ3Aおよび第2クラッチ3Bに供給する。
ここで、クラッチへの過剰な流量供給は、クラッチの冷却作用と共に引きずり増大による効率低下などの悪影響を及ぼす。
そこで、制御装置100は、各種センサからの入力信号(エンジン回転数NE,第1クラッチ入力軸回転数NI_1,第2クラッチ入力軸回転数NI_2,変速機出力軸回転数NO,油圧スイッチ信号Pb,冷却液の油温TPLB,アクセル開度APS等))に基づいて、各クラッチにおける冷却または潤滑に適正な流量を算出し、冷却流量調整手段9への電気的な制御信号を出力する。
制御装置100は各クラッチに供給する流量を演算するための、第1及び第2の流量算出手段10,11を備えている。第1の流量算出手段10は、クラッチにおける冷却作用を優先させて多量の流量を供給する際に必要な流量を算出する。その一例として、第1クラッチ3Aまたは第2クラッチ3Bにおける発生熱量などの温度パラメータに基づいて、冷却に必要な流量を算出する。一方、第2の流量算出手段11は、クラッチにおける引きずり抑制を優先し、クラッチの発生熱量などの温度パラメータとは無関係に、少量の流量を算出するものである。これら2つの算出結果は、流量算出切り替え手段12により、車両の運転条件に応じていずれか一方の算出結果が選択されて、冷却流量調整手段9への電気的な制御信号が出力される。
このように、制御装置100の主要部を構成して、運転条件に応じてクラッチに供給する冷却流量算出手段を切り替えることにより、クラッチの冷却流量増加にともなう運転性悪化を回避することが可能となる。
次に、図2を用いて、本実施形態による摩擦クラッチの冷却流量の供給系統について説明する。
図2は、本発明の第1実施形態による摩擦クラッチの冷却流量の供給系統を示す系統図である。なお、図1と同一符号は、同一部分を示している。
ポンプ14は、モータ13により駆動され、オイルパンに溜まった冷却液(冷却油)がストレーナ15を介して吸い上げて昇圧される。昇圧された冷却液は、アキュムレータ16により一時的に畜圧され、畜圧された油圧Pbは油圧センサ18により検出される。図1に示した制御装置100は、油圧センサ18の出力が所定範囲内になるように、モータ13の駆動・非駆動状態を切り替える。
また、アキュムレータ16には、オイルクーラ19が直列に配設されている。オイルクーラ19は、図示していないエンジンルーム内のラジエータと一体化された冷媒内に冷却液を循環することにより、冷却液を冷却するものである。以上のような構成要素がクラッチ冷却系統の油圧源として作用する。
さらに、メイン油路20は2系統に分岐しており、それぞれの油路に流量制御弁21,22が配設されている。これらの流量制御弁21,22は、制御ユニット100からの電気的な制御信号によって弁内部のリニアソレノイドを駆動し油路の開口面積を変化させることで、出力流量を変化するものである。以上の構成より、冷却流量調整手段9が構成されている。
流量制御弁21および流量制御弁22によって流量調整された冷却液は、油路23および油路24を経由して、上記第1クラッチ3Aおよび第2クラッチ3Bへそれぞれ供給される。また、オイルパンには、温度センサ25が取り付けている。温度センサ25によって検出された油温TPLBは、制御装置100において冷却流量を算出するパラメータとして用いるだけでなく、これらの冷却流量の供給系統が正常に動作しているか否かの判定に用いることもできる。
なお、上述の摩擦クラッチの冷却流量の供給系統を構成する各要素は、本発明の概念を限定するものではなく、油圧源としてエンジン出力軸に連結し、エンジン駆動により油圧を生成する機械式のポンプとしても良い。また、オイルクーラの設置場所や温度センサの配置場所を限定するものではなく、クラッチの冷却機能や温度検出機能が満足できる任意の場所に配置することができる。
次に、図3を用いて、本実施形態による歯車式変速機2の構成について説明する。
図3は、本発明の第1の実施形態による歯車式変速機の構成を表す概略図である。なお、図1と同一符号は、同一部分を示している。
図3に示した歯車式変速機は、いわゆるツインクラッチ変速機であり、第1入力軸5Aとエンジン出力軸4との断接を行う第1クラッチ3Aと、第2入力軸5Bとエンジン出力軸4との断接を行う第2クラッチ3Bから構成されている。
第1入力軸5A上には、1速,3速及び5速用の駆動側歯車31,33,35と、リバース用の駆動側歯車R1が配置されている。1速用駆動側歯車31及びリバース用駆動側歯車R1は、第1入力軸5Aと一体となって回転するように配置され、それ以外の3速及び5速用の駆動側歯車33,35は、第1入力軸5A上を遊転可能に配置されている。第1入力軸5と同軸の外周側には、第2入力軸5Bが設けられている。
第2入力軸5B上には、2速,4速及び6速用の駆動側歯車32,34,36が配置されている。6速用駆動側歯車36は第2入力軸5Bと一体となって回転するように配置され、それ以外の2速及び4速用の駆動側歯車32,34は、第2入力軸5B上を遊転可能に配置されている。
また、第1及び第2入力軸5A、5Bと平行に、出力軸26及び副軸27が設けられている。出力軸26上には、1速から6速までの被動側歯車41,42,43,44,45,46と、リバース用第3歯車R3が配置されている。2速,3速,4速,5速用被動側歯車42,43,44,45及びリバース用第3歯車R3は、出力軸26と一体となって回転するように配置され、1速及び6速用被動側歯車41,46は、出力軸26上を遊転可能に配置されている。また、副軸27には、第2リバース用歯車R2が設けられている。この第2リバース用歯車R2は、副軸27上を遊転可能に配置されている。
第1入力軸5A上には、3−5速同期装置110が設けられている。また、第2入力軸5B上には、2−4速同期装置120が設けられている。また、出力軸26上には、1−6速同期装置130が設けられている。また、副軸27上には、リバース同期装置140が設けられている。
ここで、上述の第1クラッチ3A、第2クラッチ3Bおよび複数の同期装置110,120,130は、制御装置100によって自動的に制御される。制御装置100には、センサ群としてエンジン回転数センサ51と、アクセル開度センサ52と、第1入力軸回転数センサ53と、第2入力軸回転数センサ54と、出力軸回転数センサ55と、ブレーキスイッチ56と、前記油圧センサ18と、前記冷却油温センサ25などのセンサまたはスイッチの信号が入力される。制御装置100は、これらの入力信号に基づいて、前記第1クラッチ3A,第2クラッチ3B,3−5速同期装置110,2−4速同期装置120,1−6速同期装置130及びリバース同期装置140を動作させて、自動変速を実現する。
制御装置100から出力される電気的な制御信号は、油圧制御装置30に入力される。油圧制御装置30には複数の比例ソレノイドが設置されており、制御信号に応じた油圧力または流量を発生する。第1クラッチ3Aおよび第2クラッチ3Bは、油圧制御装置30に設置された圧力制御弁の油圧力を変化することにより、その係合・解放動作が自動的に制御される。また、油圧制御装置30に設置された流量制御弁の流量を変化することにより、第1クラッチ3Aおよび第2クラッチ3Bに供給する冷却液の流量が自動的に制御される。さらに、油圧制御装置30に設置された圧力制御弁の油圧力を変化させ、シフトアクチュエータ40の各シリンダに作用する油圧のバランスを制御することにより、上記同期装置110、120,130,140が、それぞれの軸上を図中左右にスライドする。これにより、駆動側歯車もしくは被動側歯車と各軸を係合し、変速指令に応じたトルク伝達経路を選択する。
ここで、本実施形態の歯車式変速機は、上述のように、ソレノイドやシリンダなど油圧アクチュエータにより変速機の構成要素を駆動するものであるが、これをモータなどの電気式のアクチュエータを用いて構成しても良い。または、第1クラッチ3Aおよび第2クラッチ3Bは油圧式アクチュエータとし、同期装置110,120,130は電気式アクチュエータといった駆動方式を組み合わせるような構成としても良い。
次に、各変速状態における動力の伝達経路を説明する。なお、変速時以外の走行時には、基本的に第1クラッチ3Aと第2クラッチ3Bの両方が締結されており、どちらか一方のクラッチを介してトルクの伝達を行うものとする。
(ニュートラル状態)
第1クラッチ3A及び第2クラッチ3Bが共に解放状態、または、係合状態であったとしても、全ての同期装置が中立位置にあるときは、ニュートラル状態となる。
(1速状態)
第1クラッチ3Aを介して、1−6速同期装置130を右側に駆動する。エンジントルクは、第1クラッチ3A→第1入力軸5A→第1駆動側歯車31→出力軸26上の第1被動側歯車41→図示していない最終減速歯車へと伝達される。
(2速状態)
第2クラッチ3Bを介して、2−4速同期装置120を左側に駆動する。エンジントルクは、第2クラッチ3B→第2入力軸5B→第2駆動側歯車32→出力軸26上の第2被動側歯車42→図示していない最終減速歯車へと伝達される。
(3速状態)
第1クラッチ3Aを介して、3−5速同期装置110を左側に駆動する。エンジントルクは、第1クラッチ3A→第1入力軸5A→第3駆動側歯車33→出力軸23上の第3被動側歯車43→図示していない最終減速歯車へと伝達される。
(4速状態)
第2クラッチ3Bを介して、2−4速同期装置120を右側に駆動する。エンジントルクは、第2クラッチ3B→第2入力軸5B→第4駆動側歯車34→出力軸26上の第4被動側歯車44→図示していない最終減速歯車へと伝達される。
(5速状態)
第1クラッチ3Aを介して、3−5速同期装置110を右側に駆動する。エンジントルクは、第1クラッチ3A→第1入力軸5A→第5駆動側歯車35→出力軸26上の第5被動側歯車45→図示していない最終減速歯車へと伝達される。
(6速状態)
第2クラッチ3Bを介して、1−6速同期装置230を左側に駆動する。エンジントルクは、第2クラッチ3B→第2入力軸5B→第6駆動側歯車36→出力軸26上の第6被動側歯車46→図示していない最終減速歯車へと伝達される。
(リバース状態)
第1クラッチ3Aを介して、リバース同期装置140を左側に駆動する。エンジントルクは、第1クラッチ3A→第1入力軸5A→第1リバース用歯車R1→第2リバース用歯車R2→出力軸26上の第3リバース用歯車R3→図示していない最終減速歯車へと伝達される。
次に、実際の変速動作について説明する。第1クラッチ3Aおよび第2クラッチ3Bは、各同期装置110,120,130によって種々の歯車列のアクチュエータに対して協調して係合・解放され、選択的にエンジントルクを出力軸26に伝達する。
一例として、車両の静止状態から発進させる場合、歯車式変速機2の最も低いギア比,即ち、第1速ギア比で係合することになる。したがって、1−6速同期装置130が中立位置から右側に駆動されて第1被動側歯車41を出力軸26に結合させ、第1クラッチ3Aは第1速歯車列を介してエンジン1から出力軸26にトルクを伝達するよう係合される。次に、車両速度が上昇し、制御装置100は、2速へのアップシフトを必要とする条件になったと判定すると、まず2−4速同期装置120が中立位置から左側に駆動され、第2駆動側歯車32を第2入力軸5Bに結合させる。次いで、第1クラッチ3Aが離脱されるにつれて第2クラッチ3Bが係合され、トルク遮断が無い変速が行われる。
このような第1クラッチ3Aおよび第2クラッチ3Bのクラッチ架け替えは、歯車式変速機2の変速毎に行われるものである。よって、変速前の状態において非動作状態のクラッチ(ここでは係合側のクラッチ)が係合されると、加えられる負荷によって、トルクの急増がクラッチを介して伝達され、これに伴ってクラッチに生ずる滑りから熱が発生する。係合側のクラッチの温度は、適正な冷却が行われないとクラッチ・プレートまたは摩擦材料を損傷するおそれの所定温度にまで上昇する。加えて、熱の蓄積は、適正に消散しない場合、歯車式変速機2全体の温度を著しく上昇させるので、前述の損傷を実際に発生させる原因ともなり得る。同時に、係合側のクラッチの温度が急上昇している間、解放側のクラッチはトルクの伝達を停止する。負荷が減少すると、解放されたクラッチは熱の発生が減少するため、その冷却の必要性が無くなる。
したがって、クラッチの冷却作用と過剰な流量供給による引きずり増大とを両立させるためには、クラッチ毎の発熱状態や熱負荷に応じて冷却流量を供給する必要がある。また、流量増大によって運転性が悪化する特異な状況においては、冷却流量を一時的に減少させて運転性悪化を回避する必要がある。
次に、図4を用いて、本実施形態による制御装置100の動作について説明する。
図4は、本発明の第1の実施形態による制御装置の動作の主要部を示すフローチャートである。
ステップS11およびステップS12において、流量算出切り替え手段12は、エンジンが停止した状態からの始動要求、またはエンジンが駆動状態からの停止要求が発生しているか否かの判定を行う。ここで、始動または停止のいずれかの要求が発生している場合はステップS14へ進み、そうでない場合はステップS13へ進む。
始動時,停止時のいずれでもない場合には、ステップS13において、第1の流量算出手段11は、冷却作用を優先して各クラッチの発生熱量など温度パラメータに応じた冷却流量を算出し積極的に冷却作用を促す。
一方、始動時若しくは停止時の場合には、ステップS14において、第2の流量算出手段10は、引きずり抑制を優先してクラッチの発生熱量や温度パラメータとは無関係に、引きずりによる悪影響を及ぼさないよう少量(流量0を含む)の冷却流量を算出して一連の動作が終了する。
ここで、エンジン始動要求およびエンジン停止要求は、運転者のキー操作と連動して発生するものだけでなく、アイドルストップシステムなど運転者の操作とは無関係に自動的にエンジン始動要求およびエンジン停止要求が発生するものであっても良い。
以上述べたように、制御装置100が制御することにより、クラッチの冷却流量増加にともなう、エンジン始動時またはエンジン停止時における運転性悪化を回避することが可能となる。
次に、図5を用いて、本実施形態による制御装置100の動作について説明する。
図5は、本発明の第1の実施形態による制御装置の動作を示すタイムチャートである。図5(A)は自動始動トリガ信号を示し、図5(B)は自動停止トリガ信号を示している。図5(C)は第1クラッチ冷却流量を示し、図5(D)はエンジン回転数を示している。
ここでは、アイドルストップ時のタイムチャートを示している。すなわち、時刻t0においてアイドルストップ条件が成立してエンジンを自動的に停止し、その後時刻t3において再始動条件が成立してエンジンを自動的に始動する際のタイムチャートを示している。なお、図5の破線の波形は、従来の制御方法による動作を示すものであり、実線の波形は本実施形態の制御方法による動作を示すものである。
自動停止トリガが発生する時刻t0以前の第1クラッチ冷却流量は、図5(C)に示すように、多大な流量QHが供給されており、第1の流量算出手段11において、第1クラッチ3Aの熱負荷などの温度パラメータに依存した流量算出が実行されている。
そして、時刻t0において自動停止トリガが発せられると、図5(C)に実線で示すように、第1クラッチ冷却流量をゼロに低下させる。つまり、第2の流量算出手段10により少量の冷却流量(流量0を含む)が算出され、供給される。したがって、エンジン停止過程におけるクラッチの引きずりが低減されるため、図5(D)に実線で示すように、エンジン回転数の急激な低下が抑制される。
エンジン停止時に、摩擦クラッチの発生熱量が大きい場合、図中破線で示すようにクラッチの冷却流量が多大に供給されているとすると、クラッチにおける引き摺りが増加しその引き摺りが負荷として作用する。その結果、図5(D)に破線で示すように、エンジン回転数は初期状態から低下するため、車体との共振周波数域領域ARを通過する時間T1が長くなる。そのため、車体の振動が発生して運転性が悪化する。
一方、本実施形態では、クラッチの引きずりが低減されるため、時刻t0においてエンジン停止トリガ信号が発せられると、図5(D)に実線で示すように、初期段階ではエンジン回転数を緩やかに低下し、図中ハッチングで示す車体との共振周波数域AR付近まで回転数が低下した後に、急激にエンジン回転数が低下するよう、エンジン制御装置が燃料量,点火時期およびスロットル開度を制御するようにできる。これによって、車体との共振周波数域領域ARを通過する時間T0を短くでき、車体の振動を低減して、運転性を向上できる。すなわち、エンジン停止時におけるエンジン回転数の急変に起因する車体の振動および共振周波数域通過に起因する車体の振動を抑制している。
次に、時刻t2においてエンジンが停止したことを判定すると、再び流量算出方法が切り替えられて、図5(C)に示すように、第1クラッチ冷却流量はもとの値QHまで上昇し、クラッチの冷却を促進するための流量が供給される。
次に、時刻t3において、図5(A)に示すように、自動始動トリガが発せられると、エンジン停止時と同様に、図5(C)に実線で示すように、第1クラッチ冷却流量をゼロに低下する。したがって、エンジン始動過程におけるクラッチの引きずりが低減されるため、図中実線で示すように始動トリガ発生からエンジンが完爆するまでの所要時間Tsを短くでき、速やかにエンジン回転数が上昇している。
従来の方式では、エンジン始動時に、摩擦の発生熱量が大きい場合、図5(C)に破線で示すように、クラッチの冷却流量が多大に供給される。よって、クラッチにおける引き摺りが増加し、その引き摺りが負荷として作用するため、エンジン回転数がアイドル回転数相当に上昇するまでの所要時間Ts’が長期化する。つまり、始動性が悪化することになる。
ここで、図5では停止トリガ信号または始動トリガ信号と同時に冷却流量を減少させるが、実際にクラッチに供給される流量には応答遅れがあるため、トリガ信号発生直後では引きずりが増加した状態が継続している可能性がある。そこで、トリガ信号発生から所定時間経過した後に、燃料噴射量,点火時期などのエンジン制御系、あるいはスタータを動作させて、実際にエンジンを停止または始動する動作を開始するような制御方法としても良い。
また、図5では第1クラッチ冷却流量を一時的にゼロまで低下させているが、引きずりによる悪影響が生じない所定値以下の流量を供給するような制御方法としても良い。
また、エンジン停止時またはエンジン始動時におけるエンジン回転数の時間変化からクラッチ引きずりによる負荷を間接的に算出し、この値が予め設定された所定値を下回ったときに、冷却流量算出方法を切り替えて一時的に流量を低下させるような制御方法としても良い。
以上説明したように、本実施形態によれば、クラッチの冷却流量増加にともなう、エンジン停止時またはエンジン始動時の運転性悪化を回避することが可能となる。
次に、図6〜図9を用いて、本発明の第2実施形態による歯車式変速機の制御装置および制御方法について説明する。
最初に、図6を用いて、本実施形態による歯車式変速機の構成について説明する。
図6は、本発明の第2の実施形態による歯車式変速機の構成を表す概略図である。
図6に示す歯車式変速機2Aは、アシストクラッチを用いた前進5速の変速機構であり、主な構成要素は既存の手動変速機をベースとして、摩擦クラッチを変速機内部に組み込むことにより、変速時におけるトルク遮断の無い変速性能を実現することが可能な歯車式変速機である。
入力軸5とエンジン出力軸4との断接は入力クラッチ3により行う。入力クラッチ3は、一般的な乾燥単板クラッチである。エンジン1で発生した動力は、クラッチカバー(図示せず)からプレッシャプレート(図示せず)に伝わり、スプリング(図示せず)の押し付け荷重により発生した摩擦力でクラッチディスク(図示せず)に伝わる。さらに、クラッチディスクの回転方向緩衝機構(図示せず)を介して、歯車式変速機2の入力軸5へと伝わる。
入力軸5上には、1速,2速,3速,4速および5速用の駆動側歯車31,32,33,34,35とリバース用の駆動側歯車R1が配置されており、駆動側歯車31,32,およびR1は入力軸5と一体となって回転し、駆動側歯車33,34および35は入力軸5上を遊転可能に配置されている。また、入力軸5と平行に出力軸26及び副軸27が設けられている。出力軸26上には、1速から5速までの被駆動側歯車41,42,43,44,45と、リバース用第3歯車R3が配置されている。被動側歯車43,44,45およびリバース用第3歯車R3は出力軸26と一体となって回転するように配置され、被動側歯車41,42は、出力軸26上を遊転可能に配置されている。また、副軸27には第2リバース用歯車R2が設けられている。第2リバース用歯車R2は、副軸27上を遊転可能に配置されている。入力軸5上には3−4速同期装置150が設けられており、出力軸26上には1−2速同期装置160が設けられている。また、副軸27上には、リバース同期装置140が設けられている。
このような手動変速機をベースとした変速機構の内部に、摩擦クラッチ60が組み込まれている。5速用駆動側歯車35にクラッチドラム60aが固着されており、複数の被駆動側プレートはクラッチドラム60aと一体的に回転する。入力軸5上にはクラッチハブ(図示せず)が固着されており、複数の駆動側プレートはクラッチハブと一体的に回転する。駆動側プレートおよび被駆動側プレートは、クラッチピストン(図示せず)を油圧などによって軸方向へ押し付けることで、プレート間に介在させている油のせん断力によりトルク伝達する公知の湿式多板クラッチである。この摩擦クラッチ60を係合することにより、第5変速段を形成することができる。
ここで、上述の入力クラッチ3,摩擦クラッチ60および複数の同期装置150,160は、制御装置100Aによって自動的に制御される。制御装置100Aから出力される電気的な制御信号は、油圧制御装置30に入力される。油圧制御装置30には複数の比例ソレノイドが設置されており、制御信号に応じた油圧力または流量を発生する。入力クラッチ3は、油圧制御装置30に設置された流量制御弁の流量を変化することにより、その係合・解放動作が自動的に制御される。また、摩擦クラッチ60は油圧制御装置30に設置された圧力制御弁の油圧力を変化することにより、その係合・解放動作が自動的に制御され、油圧制御装置30に設置された流量制御弁の流量を変化することにより、摩擦クラッチ60に供給する冷却液の流量を制御する。
さらに、油圧制御装置30に設置された圧力制御弁の油圧力を変化させ、シフトアクチュエータ40の各シリンダに作用する油圧力のバランスを制御することにより、同期装置140,150,160は、選択的にそれぞれの軸上を図中左右にスライドする。これにより、駆動側歯車もしくは被動側歯車と各軸とを係合し、変速指令に応じたトルク伝達経路を選択する。
制御装置100Aは、図1にて説明したように、第1及び第2の流量算出手段10,11と、流量算出切り替え手段12を備えている。
ここで、本実施形態の歯車式変速機は、ソレノイドやシリンダなど油圧アクチュエータにより変速機の構成要素を駆動するものであるが、これをモータなどの電気式のアクチュエータを用いて構成しても良い。または、摩擦クラッチ60は油圧式アクチュエータとし、入力クラッチ3と複数の同期装置は電気式アクチュエータとするといった駆動方式を組み合わせるような構成としても良い。
次に、実際の変速動作について説明する。一例として、車両の静止状態から発進させる場合、歯車式変速機2の最も低いギア比,即ち、第1速ギア比で係合することになる。
1−2速同期装置160が中立位置から左側に駆動されて第1被動側歯車41を出力軸26に係合させ、入力クラッチ3は第1速歯車列を介してエンジン1から出力軸26にトルクを伝達するよう係合される。次に、車両速度が上昇し、2速へのアップシフトを必要とする条件となったと制御装置100Aが判断すると、摩擦クラッチ60の係合力を増加していく。そして、エンジントルクと摩擦クラッチ60との係合力が平衡したとき、1−2速同期装置160が中立位置に駆動されて、エンジンのトルクは第5速歯車列を経由して出力軸26へと伝達される。次に、1−2速同期装置160が中立位置から右側に駆動されて第2駆動側歯車42を出力軸26に係合させて一連の変速動作が終了する。このようにして、トルク遮断が無い変速が実行される。
ここで、本実施形態の歯車式変速機においても、ツインクラッチ変速機と同様に摩擦クラッチ60を係合すると、加えられる負荷によって、トルクの急増が摩擦クラッチを介して伝達され、これに伴ってクラッチに生ずる滑りから熱が発生する。よって、摩擦クラッチ60に冷却流量を供給し発熱を抑制する必要がある。
次に、図7を用いて、本実施形態による歯車式変速機の制御装置100Aの制御動作について説明する。
図7は、本発明の第2実施形態による歯車式変速機の制御装置の制御動作を示すフローチャートである。
ステップS21において、制御装置100Aは、アクセル開度、出力軸回転数などのセンサ信号に基づいて変速種(たとえば1−2変速、4−3変速など)を決定する。
次に、ステップS22において、制御装置100Aの流量算出切り替え手段12は、アクセル開度などのセンサ信号や、出力軸回転数の時間変化などの演算結果に基づいて、出力軸からエンジンを逆駆動するパワーオフ状態の判定を行い、同時に同期装置の位置情報などに基づいて変速動作中の判定を行う。ここで、パワーオフ状態かつ変速中であると判定した場合はステップS24へ進み、そうでない場合はステップS23へ進む。
パワーオフ状態かつ変速中でない場合は、ステップS23において、第1の流量算出手段11は、冷却作用を優先し、摩擦クラッチ60の発生熱量などの温度パラメータに応じた冷却流量を算出し積極的に摩擦クラッチ60の冷却作用を促す。
一方、パワーオフ状態かつ変速中であると判定した場合は、ステップS24において、第2の流量算出手段10は、引きずり抑制を優先し、摩擦クラッチ60の発生熱量などの温度パラメータとは無関係に少量の冷却流量(流量0を含む)を算出し、一連の処理が終了する。
ここで、ステップS21における変速種決定は、制御装置100Aによって自動的に決定される変速種であっても良いし、運転席に設けられたレバーやスイッチなどの信号にしたがって決定される変速種であっても良い。
以上述べたように、制御装置100Aの制御することにより、クラッチの冷却流量増加にともなう、パワーオフ変速時の変速応答性悪化を回避することが可能となる。
ここで、図8を用いて、摩擦クラッチ60が高温状態で冷却流量を多大に供給している状況において、例えばパワーオフ状態での変速動作における問題点について説明する。
図8は、従来方式による4速から3速へのパワーオフ変速動作を示すタイムチャートである。図8(A)は摩擦クラッチの冷却流量を示し、図8(B)はエンジン回転数NE及び変速機の入力軸回転数NIを示し、図8(C)は入力クラッチトルクを示している。図8(D)は3−4速同期装置の位置を示し、図8(E)は前後加速度を示している。
ここで、パワーオフ変速とは、出力軸26からエンジン1を逆駆動する、いわゆるエンジンブレーキが作用している状況における変速である。上述のように、本実施形態の歯車式変速機2は摩擦クラッチ60によりトルク遮断の無い変速を実現することが可能であるが、パワーオフ変速の場合には図8に示すように入力クラッチ3を一時的に解放し、トルク遮断のある変速動作を実行した方が良好な変速フィーリングを実現することが知られている。
図8の時刻t0において、4速から3速へのパワーオフ変速要求が発せられると、図8(C)に示すように、まず入力クラッチ3のクラッチトルクを減少させて、結合していたクラッチを解放する。
そして、時刻t1において入力クラッチ3の解放状態を判定すると、図8(D)に示すように、3−4同期装置150を駆動し、4速位置から中立位置へと移動する。このとき、図8(A)に示すように、摩擦クラッチ60に多大な冷却流量QHが供給されているため、摩擦クラッチにおける引きずりが増大し、図8(B)に示すように、入力軸5の回転数NIは4速相当の回転数から5速相当の回転数に低下する。
次に。時刻t2において、図8(D)に示すように、3−4同期装置120を中立位置から3速位置へと移動し、図8(B)に示すように、入力軸回転数NIを上昇させて3速相当の回転数に同期させる。しかし、摩擦クラッチ60の引きずりが負荷として作用するため、回転同期に要する時間が長期化する。
そして、時刻t3において、図8(D)に示すように、3−4同期装置120が3速位置へ移動完了したことを判定すると、図8(C)に示すように、入力クラッチ3を再び係合することで、トルク遮断の状態から負方向の加速度が生じて一連の変速動作が終了する。つまり、冷却流量が多大に供給されていると、パワーオフ変速におけるトルク遮断の時間Tsftが長期化し、変速応答性が悪化するといった問題点が生じる。
次に、図9を用いて、本実施形態の制御装置100Aの動作について説明する。
図9は、本発明の第2の実施形態による制御装置による4速から3速へのパワーオフ変速動作を示すタイムチャートである。図9(A)〜図9(E)の縦軸は、図8(A)〜図8(E)と同様である。
時刻t0において、4速から3速へのパワーオフ変速要求が発せられると、図9(C)に示すように、まず入力クラッチ3のクラッチトルクを減少させて、係合していた入力クラッチ3を解放する。また同時に、図9(A)に示すように、摩擦クラッチ60に供給する冷却流量をゼロまで低下させる。
次に、時刻t1において、クラッチ3の解放状態を判定すると、図9(D)に示すように、3−4同期装置120を駆動し、4速位置から中立位置へと移動する。ここで、変速指令摩擦クラッチ60の冷却流量がゼロであり、摩擦クラッチにおける引きずりは減少しているため、図8(B)で示したような入力軸回転数NIの著しい低下は発生しない。
次に、時刻t2において、図9(D)に示すように、3−4同期装置120を中立位置から3速位置へと移動すると、図9(B)に示すように、入力軸回転数NIは速やかに上昇し、3速相当の回転数に同期するため、トルク遮断時間Tsftは長期化することはない。
そして、時刻t3において、3−4同期装置120が3速位置へ移動完了したことを判定すると、図9(C)に示すように、入力クラッチ3を再び係合するとともに、図9(A)に示すように、摩擦クラッチ冷却流量も再び上昇させてもとの流量を供給して摩擦クラッチの冷却作用を促す。したがって、トルク遮断の時間Tsftが長期化することはなく、変速応答性も悪化することはない。そして、時刻t4において、入力クラッチ3が完全に係合されて一連の変速動作が終了する。
以上述べたように、本実施形態によれば、クラッチの冷却流量増加にともなう、パワーオフ変速時の変速応答性悪化を回避することが可能となる。
なお、図9(A)では、摩擦クラッチ冷却流量を変速中に一時的にゼロまで低下させているが、引きずりによる悪影響が生じない所定値以下の流量を供給するような制御方法としても良い。
また、本実施形態で述べた制御方法は、上述の第1実施形態の歯車式変速機であるツインクラッチシステムにも適用可能である。ツインクラッチシステムにおいて、パワーオフ変速を実行する際に第1クラッチ3Aまたは第2クラッチ3Bに多量の冷却流量が供給されていると、クラッチにおける引きずりが増大するため、第1入力軸5Aまたは第2入力軸5Bの回転数はエンジン回転数に連れ回される。その結果、所定変速段を形成すべく同期装置を駆動するが、その同期動作が妨げられるため、トルク遮断時間が長期化し変速応答性が悪化する。したがって、ツインクラッチ変速機においても、同様にパワーオフ変速時にはクラッチへの冷却流量を一時的に低下することにより、変速応答性悪化を回避することが可能となる。
次に、図10〜図12を用いて、本発明の第3の実施形態による歯車式変速機の制御装置および制御方法について説明する。なお、歯車式変速機の構成は、図6に示したものと同様である。
最初に、図10を用いて、本実施形態の歯車式変速機の入力クラッチ3として用いる乾式単板クラッチのレリーズ荷重特性について説明する。
図10は、本発明の第3の実施形態による歯車式変速機の入力クラッチとして用いる乾式単板クラッチのレリーズ荷重特性を示す特性図である。
乾式単板クラッチは、ダイヤフラムスプリングとクラッチディスクスプリングとの荷重がバランスする位置(フル締結位置)にセットされている。クラッチへの操作力、つまりレリーズ荷重を増加していくと、レリーズベアリングが押し込まれて入力軸5上にスプラインで摺動可能に結合されているクラッチディスクへの押し付け荷重が減少していき、クラッチが解放状態となる。一方、クラッチへの操作力、つまりレリーズ荷重を減少させると、ダイヤフラムのばね反力によりレリーズベアリングの位置が押し戻されて、クラッチが締結状態となる。
乾式単板クラッチである入力クラッチ3は、このような特徴をもつため、クラッチの伝達トルク、すなわちディスクスプリングへの押し付け荷重を制御装置100Aにおいて自動的に制御する場合には、図10に示すように、レリーズベアリングの位置とディスクスプリングの押し付け荷重との相関関係(クラッチクッション特性)を予めデータとして格納しておき、レリーズベアリング位置をセンシングして位置制御する手法が知られている。また、クラッチごとの個体差や製造時の組み付け誤差、あるいはクラッチディスクの摩耗によって、クッション特性が変化する。したがって、図10に示すトルク伝達を開始する位置(ミート位置)を検出し、この変化履歴を更新することによりクッション特性を補正するミート位置学習が知られている。
しかし、本実施形態の歯車式変速機2に組み込まれた摩擦クラッチ60へ供給する冷却流量によって、入力クラッチ3のミート位置学習の結果に悪影響を及ぼすという問題点が生じる。以下、本実施形態によりこの問題点を解決する方法について述べる。
ここで、図11及び図12を用いて、本発明の第3の実施形態による歯車式変速機の制御装置100Aの制御動作について説明する。
図11は、本発明の第3の実施形態による歯車式変速機の制御装置の制御動作の主要部を示すフローチャートである。図12は、本発明の第3の実施形態による歯車式変速機の制御装置の制御動作の主要部を示すタイムチャートである。
図11のステップS31において、流量算出切り替え手段12は、ブレーキスイッチ,車両の停止状態,エンジン回転数,ギア位置などの情報に基づいて、クッション特性を補正するためのミート位置学習を実行する条件が成立しているか否かの判定を行う。ステップS31において、条件が成立している場合はステップS33へ進み、そうでない場合はステップS32へ進む。
ミート位置学習条件が成立していない場合には、ステップS32において、第1の流量算出手段11は、冷却作用を優先し、摩擦クラッチ60の発生熱量などの温度パラメータに応じた冷却流量を算出し積極的に冷却作用を促す。
一方、ミート位置学習条件が成立している場合には、ステップS24において、第2の流量算出手段10は、摩擦クラッチ60の引きずりによるミート位置学習への悪影響を防止するため、摩擦クラッチ60の発生熱量などの温度パラメータとは無関係に少量の冷却流量を算出し、一連の処理が終了する。
以上述べたように、制御装置100Aの制御により、摩擦クラッチの冷却流量増加にともなう、乾式単板クラッチのミート位置学習への悪影響を防止することが可能となる。
次に、図12を用いて、入力クラッチ3のミート位置学習動作について説明する。図12(A)は学習制御動作中フラグを示し、図12(B)は入力クラッチ冷却流量を示し、図12(C)は入力クラッチ位置を示している。図12(D)はミート位置学習値を示し、図12(E)はエンジン回転数NE及び変速機の入力軸回転数NIを示している。
時刻t0において、ブレーキスイッチ,車両の停止状態,エンジン回転数,ギア位置などの情報に基づいて、クッション特性を補正するためのミート位置学習を開始する条件が成立すると、図12(A)に示すように、学習制御動作中フラグがセットされる。
ミート位置学習では、歯車式変速機2の各同期装置を中立位置とし、図12(C)に示すように、入力クラッチ3を解放位置から緩やかに係合する。そして、トルク伝達を開始する位置にクラッチ位置が到達すると、入力軸回転数NIがアイドル状態のエンジン回転数NEに向かって急激に上昇する。つまり、入力軸回転数NIの上昇を検知して、入力クラッチ3のミート位置を検出し、クラッチのクッション特性を補正するものである。
ここで、図12(B)に破線で示す波形のように、入力クラッチ3への冷却流量が多大QHに供給されていると、引きずりが増大しているため、入力軸回転数の上昇に対する負荷として作用する。その結果、本来のミート位置よりも係合側の位置に到達しなければ入力軸回転数が上昇しない。その結果、ミート位置を誤学習することになり、変速や発進の際に良好な性能を実現することができない。 それに対して、図12(B)に実線の波形で示すように、学習制御中フラグがセットされている期間は、入力クラッチ3へ供給する冷却流量の算出方法を切り替え、一時的に冷却流量をゼロまで低下している。これにより、入力クラッチ3における引きずりが低減され、ミート位置を正確に検出し精度良くクッション特性が補正される。
以上述べたように、本実施形態によれば、クラッチの冷却流量増加にともなう、パワーオフ変速時の変速応答性悪化を抑制することが可能となる。
なお、ここで、図12ではミート位置学習中に入力クラッチ冷却流量を一時的にゼロまで低下させているが、引きずりによる悪影響が生じない所定値以下の流量を供給するような制御方法としても良い。
次に、図13及び図14を用いて、本発明の第4の実施形態による歯車式変速機の制御装置および制御方法について説明する。なお、歯車式変速機の構成は、図3に示したものと同様である。
図13は、本発明の第4の実施形態による歯車式変速機の制御装置の制御動作を示すフローチャートである。図14は、本発明の第4の実施形態による歯車式変速機の制御装置の制御動作の主要部を示すタイムチャートである。
図3に示したツインクラッチシステムでは、変速動作の前段階において非作動状態のクラッチに連結した同期装置を結合し、所定変速段を形成して変速動作の待機を行う「プリシフト制御」を行っている。プリシフト制御は、次の変速種を予想しギア切り替え動作を事前に終了させておくため、実際の変速動作ではクラッチの架け替えを実施するのみであり、変速動作の所要時間短縮が図ることができる。しかし、非作動クラッチへの冷却流量が過剰に供給されていると、クラッチの引き摺りによって同期装置の結合までの時間が長期化する、あるいは同期装置の結合が完了せず、プリシフト動作が終了しないといった課題が生じる。したがって、非作動状態にあるクラッチへの供給流量はプリシフト動作とを協調して制御する必要がある。ここで、上記プリシフトを含めたギア切り替えを行う制御動作と、上記冷却流量を減少させる制御とを同時に実行すると、冷却流量の指令値が変化してから、実際にクラッチに供給される冷却流量が減少するまでに、応答遅れが発生する。この応答遅れは、油温が低温時には顕著となり、この応答遅れによって、引き摺りが生じている状態で、ギア切り替えを実行してしまうため、ギア鳴き音が発生するといった課題がある。そこで、本実施形態では、実際のギア切り替えの動作に先行して、冷却流量を減少させるように構成している。
図13に示すフローチャートは、プリシフト制御における一連のギア切り替え動作と冷却流量制御との協調制御を示したフローチャートである。
まず、ステップS51では、制御装置100において演算した上述のプリシフト制御により決定したギア段を形成するためのギアを選択する。
次に、ステップS52において流量算出切り替え手段12は、上記ステップS51にて選択されたギアに連結するクラッチが解放状態か否かの判定を行う。ここで、当該クラッチが解放状態であると判定した場合はステップS53へ進み、そうでない場合はステップS54へ進む。
選択されたギアに連結するクラッチが解放状態でない場合には、ステップS53において、第1の流量算出手段11は、冷却作用を優先し、摩擦クラッチ60の発生熱量などの温度パラメータに応じた冷却流量を算出し、積極的に摩擦クラッチ60の冷却作用を促す。
一方、選択されたギアに連結するクラッチが締結状態の場合には、ステップS54において、第2の流量算出手段10は、引き摺り抑制を優先し、摩擦クラッチ60の発生熱量などの温度パラメータとは無関係に少量の冷却流量(流量0を含む)を算出する。
次に、ステップS55に進み冷却流量減少制御中である継続タイマをインクリメントする。
次に、ステップS56では、上記冷却流量減少タイマが予め設定した所定値を超過したか否かを判定する。
冷却流量減少タイマが所定値を超過した場合には、ステップS57おいて実際にクラッチに供給される冷却流量が十分に低下したと判断し、プリシフトギアを形成するためのギア切り替え動作を実行し、一連の処理フローが終了する。
以上述べたように、本実施形態によれば、冷却流量減少の応答遅れを考慮したギア切り替え動作を実行することにより、冷却流量がシフト動作へ及ぼす悪影響を抑制することができる。
次に、図14を用いて、ギア切り替え動作と冷却流量切り替え動作との協調制御について説明する。図14は、3速定常走行中に4速から2速へのプリシフト要求が発生したときの動作を示すタイムチャートである。
図14(A)はクラッチBの冷却流量を示し、図14(B)はプリシフト目標ギア位置を示し、図14(C)は2−4速同期装置位置を示している。図14(D)は3−5速同期装置位置を示し、図14(E)はエンジン回転数NE(≒入力軸Aの回転数NIA)及び入力軸Bの回転数NIBを示している。
時刻t0において、変速ギア位置は3速ギアが選択され、またプリシフト目標ギア位置は4速が選択されている。よって、クラッチAに連結した3−5速同期装置は3速噛合い位置となっており(図14(D))、一方クラッチBに連結した2−4速同期装置は4速噛合い位置となっている(図14(C))。また、クラッチAは締結状態であり、クラッチBは解放状態となっているため、図14(E)に示すように、入力軸Aの回転数NIAはエンジン回転数NEと同じ回転数であり、また入力軸Bの回転数は4速相当の回転数となっている。つまり、エンジンの動力はクラッチAから3速歯車を介して出力軸へと伝達されている3速定常走行状態である。
ここで、時刻t1において、次の変速種が4−2変速、つまり次の変速ギア位置が2速と予測すると、図14(B)に示すように、プリシフト目標ギア位置を4速から2速へと切り替える。さらに、図14(A)に示すようにクラッチB冷却流量を減少させる。
次に時刻t2において、クラッチB冷却流量を減少してから所定時間経過したことを判定すると、実際のギア切り替え動作が実行されるため、2−4速同期装置が、図14(C)に示すように、4速噛合い位置から中立位置へと解放され、図14(E)に示すように、入力軸回転数Bは低下していく。
次に、時刻t3において、2−4速同期装置は、2速ボーク位置付近で静止して、図14(E)に示すように、入力軸Bの回転数が2速相当の回転数に同期していく。
そして、時刻t4において、入力軸B回転数が2速相当の回転数に一致すると、2−4速同期装置は2速噛合い位置まで移動可能となり、プリシフト動作が終了する。これで、2速ギアへの変速準備が完了し、その後も3速定常走行を継続する。
ここで、時刻t2から時刻t4に示したギア切り替え動作中にクラッチBの冷却流量が多大に供給されている場合には、図14(E)に破線で示すように、クラッチBの引き摺りにより入力軸B回転数はエンジン回転数相当に維持されてしまう。その結果、2−4速同期装置は2速ボーク位置からストロークすることができず、プリシフト動作を完了することができない。
また、時刻t1にて冷却流量減少を開始した直後からギア切り替え動作を実行すると、実際の冷却流量が十分に低下していない状態で、ギア解放動作を実行するため、クラッチ引き摺りによるギア鳴き音が発生するなどの悪影響を及ぼしてしまう。
しかし、本実施形態では、図14(A)に示すように、冷却流量を減少してから実際のギア切り替え動作を開始するまでの待機時間を設定するように構成されている。
以上述べたように、冷却流量減少の応答遅れを考慮したギア切り替え動作を実行することにより、冷却流量がシフト動作へ及ぼす悪影響を抑制することができる。
次に、図15及び図16を用いて、本発明の第5の実施形態による歯車式変速機の制御装置および制御方法について説明する。
図15は、本発明の第5の実施形態によるアイドルストップシステムの構成を示すシステムブロック図である。図16は、本発明の第5の実施形態によるアイドルストップシステムの制御動作を示す論理図である。
一般に、アイドルストップシステムでは、各種センサからの入力信号に基づいて自動的にエンジンを停止あるいは再始動するか否かを判断し、スタータ信号,燃料量,点火時期およびスロットル開度を制御する。図15において、エンジンを制御するエンジン制御ユニット(ECU)200は、歯車式変速機2の制御装置100と双方向通信により接続されており、歯車式変速機の状態も考慮したうえで、アイドルストップの動作を実行する。
エンジン制御ユニット200は、図16に示す論理条件にしたがって、アイドルストップを許可しエンジンを自動的に停止する信号を出力するようにしている。従来のアイドルストップシステムでは、運転者のブレーキ操作や車速等のセンサ信号の条件に加えて、歯車式変速機の潤滑油の温度が低い状態のとき、アイドルストップを禁止していた。これは、潤滑油が低温の場合では潤滑油の粘度が高くなり、再始動後の発進性能が確保されないため、アイドルストップを禁止するものである。つまり、潤滑油が所定温度以上の場合にのみ、アイドルストップを許可していた。しかし、このような従来のアイドルストップの許可条件では、図1の例で説明したように、摩擦クラッチが発熱し冷却流量を多大に供給するような状況において、アイドルストップを許可することになる。したがって、アイドルストップ動作におけるエンジン停止時またはエンジン始動時の運転性悪化を回避することが不可能である。
そこで、本実施形態では、図16に示すように、エンジン制御ユニット200は、摩擦クラッチの熱負荷などの温度パラメータに基づいてクラッチの冷却液の流量を算出した結果を制御装置100から通信を介して受信し、予め設定した上限値QO_Hを下回っているときのみ、アイドルストップを許可する。すなわち、冷却流量を多大に供給している状況下においては、摩擦クラッチの冷却作用を優先させるために、アイドルストップを禁止する。
その他のアイドルストップ許可条件は、エンジンの冷却水温が所定温度TW_Cより高く所定温度TW_Hよりも低いこと、バッテリ電圧が所定電圧VB_Lより高いこと、ブレーキスイッチがオンしていること、アイドルスイッチがオンしていること、シフトレンジがリバースR位置以外であること、エンジン回転数が所定回転数NE_Hより低いこと、車速が0km/hであること、クラッチの冷却液の温度が所定温度TO_Lより高いことなどであり、これらの条件に加えて、クラッチの冷却液の流量が所定流量値QO_Hより低いことの全ての条件を満たすとき、アイドルストップを許可するようにしている。なお、アイドルストップの許可条件としては、これらの各条件に限られるものでなく、また、これらの条件の一部がなくてもよいものである。本実施形態の特徴としては、アイドルストップの許可条件に、クラッチの冷却液の流量が所定流量値QO_Hより低いことが入っていることにある。
本実施形態によれば、摩擦クラッチの冷却流量増加にともなう、アイドルストップ動作におけるエンジン停止時またはエンジン始動時の運転性悪化を回避することが可能となる。
本発明の第1の実施形態による摩擦クラッチを用いた歯車式変速機の制御装置の要部構成を示すブロック図である。 本発明の第1実施形態による摩擦クラッチの冷却流量の供給系統を示す系統図である。 本発明の第1の実施形態による歯車式変速機の構成を表す概略図である。 本発明の第1の実施形態による制御装置の動作の主要部を示すフローチャートである。 本発明の第1の実施形態による制御装置の動作を示すタイムチャートである。 本発明の第2の実施形態による歯車式変速機の構成を表す概略図である。 本発明の第2実施形態による歯車式変速機の制御装置の制御動作を示すフローチャートである。 従来方式による4速から3速へのパワーオフ変速動作を示すタイムチャートである。 本発明の第2の実施形態による制御装置による4速から3速へのパワーオフ変速動作を示すタイムチャートである。 本発明の第3の実施形態による歯車式変速機の入力クラッチとして用いる乾式単板クラッチのレリーズ荷重特性を示す特性図である。 本発明の第3の実施形態による歯車式変速機の制御装置の制御動作の主要部を示すフローチャートである。 本発明の第3の実施形態による歯車式変速機の制御装置の制御動作の主要部を示すタイムチャートである。 本発明の第4の実施形態による歯車式変速機の制御装置の制御動作を示すフローチャートである。 本発明の第4の実施形態による歯車式変速機の制御装置の制御動作の主要部を示すタイムチャートである。 本発明の第5の実施形態によるアイドルストップシステムの構成を示すシステムブロック図である。 本発明の第5の実施形態によるアイドルストップシステムの制御動作を示す論理図である。
符号の説明
1…エンジン
2…歯車式変速機
3A…第1クラッチ
3B…第2クラッチ
5A…第1入力軸
5B…第2入力軸
7…歯車列
9…冷却流量調整手段
10…第2の流量算出手段
11…第1の流量算出手段
12…流量算出切り替え手段
100…制御装置

Claims (11)

  1. エンジンに連結された歯車式変速機における少なくとも1つ以上の摩擦クラッチの係合・解放により変速比を変更し、前記摩擦クラッチの冷却または潤滑を促すための冷却液の流量を調整する冷却流量調整手段により前記摩擦クラッチに供給する冷却流量を変化させる歯車式変速機の制御装置であって、
    前記摩擦クラッチの冷却作用を優先した冷却流量を算出する第1の流量算出手段と、
    前記摩擦クラッチの引き摺り抑制を優先した冷却流量を算出する第2の流量算出手段と、
    前記第1の流量算出手段と前記第2の流量算出手段とを切り替える流量算出切り替え手段とを備え、
    前記冷却流量調整手段は、前記第1もしくは第2の流量算出手段の出力に基づいて冷却流量を調整することを特徴とする歯車式変速機の制御装置。
  2. 請求項1記載の歯車式変速機の制御装置において、
    前記第1の流量算出手段は、前記摩擦クラッチの発生熱量などの温度パラメータに基づいて、上記冷却流量を算出することを特徴とする歯車式変速機の制御装置。
  3. 請求項1記載の歯車式変速機の制御装置において、
    前記流量算出切り替え手段は、前記エンジンの停止要求指令時に前記第2の流量算出手段に切り替えることを特徴とする歯車式変速機の制御装置。
  4. 請求項1記載の歯車式変速機の制御装置において、
    前記流量算出切り替え手段は、前記エンジンの始動要求指令時に前記第2の流量算出手段に切り替えることを特徴とする歯車式変速機の制御装置。
  5. 請求項1記載の歯車式変速機の制御装置において、
    前記流量算出切り替え手段は、前記歯車式変速機の変速要求指令時に前記第2の流量算出手段に切り替えることを特徴とする歯車式変速機の制御装置。
  6. 請求項1記載の歯車式変速機の制御装置において、
    前記歯車式変速機は、2つの摩擦クラッチを備えたツインクラッチシステムであり、
    前記流量算出切り替え手段は、前記歯車式変速機のシフト動作に先行して前記第1流量制御手段から前記第2の流量算出手段に切り替えることを特徴とする歯車式変速機の制御装置。
  7. 1つ以上の摩擦クラッチを有する歯車式変速機に対して、前記摩擦クラッチの係合・解放により変速比を変更する歯車式変速機の制御装置であって、
    前記摩擦クラッチの冷却作用を優先した冷却流量を算出する第1の流量算出手段と、
    前記第1の流量算出手段が算出する流量に比べて少ない冷却流量を算出する第2の流量算出手段と、
    前記第1の流量算出手段若しくは前記第2の流量算出手段が算出した冷却流量に基づいて、前記摩擦クラッチに供給する冷却流量を変化させる冷却流量調整手段とを備えたことを特徴とする歯車式変速機の制御装置。
  8. 請求項7記載の歯車式変速機の制御装置において、
    前記第2の流量算出手段が算出する流量はゼロであることを特徴とする歯車式変速機の制御装置。
  9. 1つ以上の摩擦クラッチを有する歯車式変速機に対して、前記摩擦クラッチの係合・解放により変速比を変更する歯車式変速機の制御装置であって、
    前記摩擦クラッチの冷却作用を優先した第1の冷却流量から、前記摩擦クラッチの引き摺り抑制を優先した第2の冷却流量に切り替えて、前記摩擦クラッチに供給する冷却流量を変化させる制御手段を備えたことを特徴とする歯車式変速機の制御装置。
  10. エンジンと、少なくとも1つ以上の摩擦クラッチの係合・解放により変速比が変更される歯車式変速機と、前記摩擦クラッチの冷却または潤滑を促すための冷却流量を調整する冷却流量調整手段とを有し、
    所定の条件に基づいて前記エンジンを自動的に運転状態と停止状態とで相互に変更することが可能な車両の制御装置において、
    前記冷却流量を判定する流量判定手段と、
    前記冷却流量判定手段の判定結果に基づいて、冷却流量が少ない場合には、前記エンジンの自動停止を禁止する制御手段を備えたことを特徴とする車両の制御装置。
  11. エンジンに連結された歯車式変速機における少なくとも1つ以上の摩擦クラッチの係合・解放により変速比を変更し、前記摩擦クラッチの冷却または潤滑を促すための冷却液の流量を調整して前記摩擦クラッチに供給する冷却流量を変化させる歯車式変速機の制御方法であって、
    前記摩擦クラッチの冷却作用を優先した第1の冷却流量から、前記摩擦クラッチの引き摺り抑制を優先した第2の冷却流量に切り替えて、前記摩擦クラッチに供給する冷却流量を変化させることを特徴とする歯車式変速機の制御方法。
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