つぎに、この発明の実施の形態を説明すると、車両の動力源から車輪に至る動力伝達経路に設けられている変速機の制御に用いられる。つまり、動力源のトルクが変速機の入力回転部材に伝達され、出力回転部材のトルクが、車輪に伝達されるように構成されている。ここで、動力源としては、熱エネルギを運動エネルギに変換する動力装置である内燃機関を用いることが可能である。さらに、内燃機関としては、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、LPGエンジン、メタノールエンジンなどを用いることができる。また動力源としては電動機を用いることも可能である。電動機は電気エネルギを運動エネルギに変換する動力装置である。また、電動機は直流電動機または交流電動機のいずれでもよい。また、電動機としては、発電機能を兼備した発電・電動機を用いることも可能である。さらには、内燃機関および電動機の両方を動力源として用いるハイブリッド車の変速機にも適用できる。さらにまた、動力源として、油圧モータ、フライホイールシステムを有する車両にも、この発明を適用可能である。すなわち、動力の発生原理が異なる複数種類の動力源を有するハイブリッド車にも、この発明を適用可能である。
また、変速機の入力回転部材と出力回転部材との間に複数の動力伝達経路が並列に設けられており、この「複数の動力伝達経路」は、数として複数系統が設けられているという意味であり、複数の動力伝達経路同士の一部が共用化されている構成でもよい。更に、複数の動力伝達経路は、2以上であれば3系統でも4系統でもよい。つまり、入力回転部材と出力回転部材との間で動力伝達をおこなうために、各動力伝達経路が設けられている。さらに、各動力伝達経路では、入力回転部材と出力回転部材との間における変速比がそれぞれ異なる。変速比とは、入力回転部材の回転数を出力側回転部材の回転数で除した値である。なお、変速比は、回転数の比ではなく回転速度の比でも判断できる。また、この発明において、第1のクラッチおよび第2のクラッチは、動力源と各動力伝達経路とを選択的に連結・遮断するものであり、伝達トルクもしくはトルク容量を制御することができる。すなわち、第1のクラッチと第2のクラッチとの切替により、動力伝達経路の切り換えがおこなわれる。また、第1のクラッチおよび第2のクラッチという区別は、クラッチが2個に限定されるという意味ではなく、選択されている変速比に対応する動力伝達経路の上流側に配置されているクラッチが第1のクラッチとなり、選択されていない変速比に対応する動力伝達経路の上流側に配置されているクラッチが第2のクラッチとなる。したがって、動力伝達経路が3系統以上設けられており、クラッチが3個以上設けられていれば、1個のクラッチが第1のクラッチとなり、その他の1個以上のクラッチが第2のクラッチとなり得る。そして、クラッチとしては、電磁クラッチ、摩擦クラッチなどを用いることが可能である。また、摩擦クラッチとしては、湿式クラッチ、乾式クラッチなどを用いることができる。また、電磁クラッチとしては、パウダクラッチを用いることができる。
さらに、変速機は、入力回転数と出力回転数との間の変速比を段階的に(不連続に)変更できる有段変速機であり、具体的には、遊星歯車式変速機、選択歯車式変速機などを用いることができる。遊星歯車式変速機は、遊星歯車機構およびクラッチやブレーキなどを有する公知の構造のものである。選択歯車式変速機には、摺動噛み合い式、常時噛み合い式、等速噛み合い式などの変速機が含まれる。さらに、変速機として、巻き掛け伝動装置を有する変速機を用いることが可能である。巻き掛け伝動装置、すなわち、スプロケットおよびチェーンを用いることが可能である。この場合、スプロケットの半径比を異ならせることにより、各伝動装置の変速比を異ならせることが可能である。これらの変速機において、変速比を制御する変速制御機構は、回転要素同士を連結する機能をも有している。そして、変速制御機構としては、摩擦クラッチ、電磁クラッチ、噛み合いクラッチなどを用いることができる。さらに、変速制御機構には、クラッチの他にブレーキも含まれる。すなわち、回転要素の回転・停止を制御する構成も、変速比制御機構に含まれる。このブレーキとしては、摩擦ブレーキ、電磁ブレーキなどを用いることが可能である。摩擦ブレーキとしては、湿式ブレーキ、乾式ブレーキのいずれを用いてもよい。また、摩擦ブレーキとしては、単板ブレーキ、多板ブレーキ、バンドブレーキなどを用いることが可能である。
さらに、変速機で設定可能な変速比は、各動力伝達経路の数以上、つまり、2つの変速段(変速比)以上あればよい。2つの変速段は、共に前進段でもよいし、前進段と後進段とに分かれていてもよい。また、この発明においては、クラッチおよび変速制御機構の伝達トルクを制御するアクチュエータが設けられており、そのアクチュエータが電子制御装置の制御信号により制御されるように構成されている。そして、電子制御装置に信号を入力する各種のセンサやスイッチ自体の機能、およびこれらの信号が正常であることを前提としており、アクチュエータの機能が正常であるか否かを、電子制御装置に入力される信号、および予め記憶されているデータやマップにより判断するように構成されている。
さらに、クラッチや変速制御機構が電磁クラッチや電磁ブレーキである場合は、アクチュエータとしてはソレノイドを用いることが可能である。クラッチや変速制御機構が、摩擦クラッチまたは噛み合いクラッチまたは摩擦ブレーキである場合は、油圧制御装置をアクチュエータとして用いることが可能である。この油圧制御装置は、油圧回路、油圧回路に設けられたソレノイドバルブ、回路に接続された油圧室、油圧室の油圧に応じて動作するピストン、ピストンを戻すためのリターンスプリングなどにより構成することができる。また、この発明においては、「第2のクラッチの伝達トルクを高める指令を発生する」ように構成されている。具体的には、第2のクラッチの伝達トルクを高める条件が成立して、伝達トルクを高めるために設けられているアクチュエータに対して、電子制御装置から出力される制御信号、例えば、ソレノイドの通電電流値などを制御する信号が出力される。これに対して、「クラッチの伝達トルクを実際に制御する機能」をも有する。これは、「指令を発生する」という機能の対極に位置する機能であり、具体的には、制御信号に基づくアクチュエータの動作自体もしくは機能である。
そして、この発明においては、「クラッチの伝達トルクを実際に制御する機能が正常である」ことを判断できる。例えば、指令(制御信号)に応じた伝達トルク値、伝達トルクの制御応答性、より具体的には、油圧室の油圧、電流値、ピストンの動作などが、予め定められた誤差等の範囲内にある場合に、機能が正常であると判断することができる。この発明では、「クラッチの伝達トルクを実際に制御する機能が正常であるか否か」を、回転部材同士の回転数に基づいて、間接的に判断する。さらに、伝達トルクがしきい値よりも低い場合、あるいは、伝達トルクがしきい値よりも高い場合に、「クラッチの伝達トルクを実際に制御する機能が正常ではない(異常・故障)」と判断することも可能である。そして、ソレノイドのプランジャの動作不良、油圧室の圧油漏れ、ピストンの動作不良などが発生していた場合は、回転部材の回転数として表れるため、「クラッチの伝達トルクを実際に制御する機能が正常ではない(異常・故障)」と判断される。ここで、「機能が正常ではない」とは、機能を全く発揮できない場合と、機能を発揮できるがその機能が低下している場合とが含まれる。
さらに、この発明は、入力回転部材および出力回転部材の回転軸線が、車両の前後方向または車両の幅方向のいずれの向きで配置されている車両においても実行可能である。また、この発明は、出力回転部材のトルクが、前輪または後輪のいずれに伝達される構成の二輪駆動車にも適用可能である。また、この発明は、出力回転部材のトルクが、動力分配装置(トランスファ)により、前輪および後輪に分配される構成の四輪駆動車にも適用可能である。さらにまた、この発明において、入力回転部材および出力回転部材および動力伝達経路に設けられた回転部材は、動力源から出力されたトルクを車輪に伝達するものであり、中空軸、中実軸、ギヤ、回転メンバ、コネクティングドラム、遊星歯車機構のキャリヤなどで構成することが可能であり、入力回転部材と出力回転部材とが、動力の伝達方向に直列に配置されている。
上記のような発明の実施の形態を具体化した実施例を、図面に基づいて説明する。図2には、この発明の一実施例である車両Veのドライブトレーンおよび制御系統の一例が、模式的に示されている。まず、車両Veには駆動力源もしくは原動機としてのエンジン1が設けられており、エンジン1と車輪2との間に形成された動力伝達経路に変速機3が設けられている。この変速機3は、入力回転数と出力回転数との比である変速比を段階的、つまり不連続に切り替え可能な有段変速機である。この変速機3は、有段変速機の一種である等速噛み合い式変速機であり、第1クラッチ出力軸4および第2クラッチ出力軸5および第1変速機出力軸6および第2変速機出力軸7を有している。第2クラッチ出力軸5は円筒状に構成されており、第2クラッチ出力軸5の内部に第1クラッチ出力軸4が配置されている。また、第1クラッチ出力軸4と第2クラッチ出力軸5とが同軸上に配置され、第1クラッチ出力軸4と第2クラッチ出力軸5とが相対回転可能となるように構成されている。さらに、第1クラッチ出力軸4および第2クラッチ出力軸5に対して、第1変速機出力軸6が平行に配置されているとともに、第1変速機出力軸6と第2変速機出力軸7とが平行に配置されている。
また、変速機3は、前進段を設定するために、第1速用歯車対8ないし第6速用歯車対13を有している。まず、第1速用歯車対8は、第1速ドライブギヤ14と、第1速ドライブギヤ14に噛合された第1速ドリブンギヤ15とにより構成されている。第1速ドライブギヤ14は第1クラッチ出力軸4に設けられており、第1速ドライブギヤ14と第1クラッチ出力軸4とが一体回転するように構成されている。これに対して、第1速ドリブンギヤ15は第1変速機出力軸6に設けられており、第1速ドリブンギヤ15と第1変速機出力軸6とが相対回転可能となるように構成されている。つぎに、第2速用歯車対9は、第2速ドライブギヤ16と、第2速ドライブギヤ16に噛合された第2速ドリブンギヤ17とにより構成されている。第2速ドライブギヤ16は第2クラッチ出力軸5に設けられており、第2速ドライブギヤ16と第2クラッチ出力軸5とが一体回転するように構成されている。これに対して、第2速ドリブンギヤ17は第1変速機出力軸6に設けられており、第2速ドリブンギヤ17と第1変速機出力軸6とが相対回転可能となるように構成されている。
さらに、第3速用歯車対10は、第3速ドライブギヤ18と、第3速ドライブギヤ18に噛合された第3速ドリブンギヤ19とにより構成されている。第3速ドライブギヤ18は第1クラッチ出力軸4に設けられており、第3速ドライブギヤ18と第1クラッチ出力軸4とが相対回転可能となるように構成されている。これに対して、第3速ドリブンギヤ19は第1変速機出力軸6に設けられており、第3速ドリブンギヤ19と第1変速機出力軸6とが一体回転するように構成されている。さらに、第4速用歯車対11は、第4速ドライブギヤ20と、第4速ドライブギヤ20に噛合された第4速ドリブンギヤ21とにより構成されている。第4速ドライブギヤ20は第2クラッチ出力軸5に設けられており、第4速ドライブギヤ20と第2クラッチ出力軸5とが相対回転可能となるように構成されている。これに対して、第4速ドリブンギヤ21は第1変速機出力軸6に設けられており、第4速ドリブンギヤ21と第1変速機出力軸6とが一体回転するように構成されている。
さらに、第5速用歯車対12は、第5速ドライブギヤ22と、第5速ドライブギヤ22に噛合された第5速ドリブンギヤ23とにより構成されている。第5速ドライブギヤ22は第1クラッチ出力軸4に設けられており、第5速ドライブギヤ22と第1クラッチ出力軸4とが相対回転可能となるように構成されている。これに対して、第5速ドリブンギヤ23は第1変速機出力軸6に設けられており、第5速ドリブンギヤ23と第1変速機出力軸6とが一体回転するように構成されている。さらに、第6速用歯車対13は、第6速ドライブギヤ24と、第6速ドライブギヤ24に噛合された第6速ドリブンギヤ25とにより構成されている。第6速ドライブギヤ24は第2クラッチ出力軸5に設けられており、第6速ドライブギヤ24と第2クラッチ出力軸5とが相対回転可能となるように構成されている。これに対して、第6速ドリブンギヤ25は第1変速機出力軸6に設けられており、第6速ドリブンギヤ25と第1変速機出力軸6とが一体回転するように構成されている。さらに、変速機3は、後進段を設定するための後進用歯車対26を有している。後進用歯車対26は、後進ドライブギヤ27および後進ドリブンギヤ28と、後進ドライブギヤ27および後進ドリブンギヤ28に噛合された後進アイドラギヤ29とにより構成されている。後進ドライブギヤ27は第2クラッチ出力軸5に設けられており、後進ドライブギヤ27と第2クラッチ出力軸5とが一体回転するように構成されている。これに対して、後進ドリブンギヤ28は第1変速機出力軸6に設けられており、後進ドリブンギヤ28と第1変速機出力軸6とが相対回転可能となるように構成されている。
そして、各変速用歯車対に対応して複数の変速制御機構が設けられている。この変速制御機構は、変速用歯車対を構成する各ギヤと、各軸との間における動力伝達状態(伝達トルク)を制御する装置である。この実施例においては、変速制御機構として変速制御用クラッチが設けられており、変速制御用クラッチは同期装置(シンクロメッシュ機構)を有する。まず、第1速用歯車対8に対応する第1クラッチ30は、第1変速機出力軸6に設けられている。第1クラッチ30は、第1変速機出力軸6と一体回転し、かつ、第1変速機出力軸6の軸線方向に動作可能なスリーブ31と、第1速ドリブンギヤ15と一体回転するアウターギヤ32と、スリーブ31と一体回転し、かつ、スリーブ31とともに軸線方向に動作可能なシンクロナイザーリング(図示せず)およびシンクロナイザーキー(図示せず)とを有している。スリーブ31にはインナーギヤ(図示せず)が形成されており、スリーブ31が軸線方向に動作することにより、アウターギヤ32と、スリーブ31のインナーギヤとの係合・解放がおこなわれるように構成されている。このアウターギヤ32と、スリーブ31のインナーギヤとが係合された場合は、第1クラッチ出力軸4と第1変速機出力軸6との間で、第1速用歯車対8を経由させて動力伝達をおこなうことが可能となる。これに対して、スリーブ31が軸線方向で中立位置に動作されて、スリーブ31のインナーギヤと、アウターギヤ32とが解放された場合は、第1クラッチ出力軸4と第1変速機出力軸6との間で、第1速用歯車対8を経由させて動力伝達をおこなうことが不可能となる。
前記第2速用歯車対9に対応する第2クラッチ33は、第1変速機出力軸6に設けられている。第2クラッチ33は、第1変速機出力軸6と一体回転し、かつ、第1変速機出力軸6の軸線方向に動作可能なスリーブ34と、第2速ドリブンギヤ17と一体回転するアウターギヤ35と、スリーブ34と一体回転し、かつ、スリーブ34とともに軸線方向に動作可能なシンクロナイザーリング(図示せず)およびシンクロナイザーキー(図示せず)とを有している。スリーブ34にはインナーギヤ(図示せず)が形成されており、スリーブ34が軸線方向に動作することにより、アウターギヤ35とインナーギヤとの係合・解放がおこなわれるように構成されている。このアウターギヤ35と、スリーブ34のインナーギヤとが係合された場合は、第2クラッチ出力軸5と第1変速機出力軸6との間で、第2速用歯車対9を経由させて動力伝達をおこなうことが可能となる。これに対して、アウターギヤ35と、スリーブ34のインナーギヤとが解放された場合は、第2クラッチ出力軸5と第1変速機出力軸6との間で、第2速用歯車対9を経由させて動力伝達をおこなうことが不可能となる。
また、この第2クラッチ33は後進用歯車対26に対応するクラッチとしての機能を兼備している。すなわち、後進ドリブンギヤ28と一体回転するアウターギヤ36が設けられており、アウターギヤ36に対応するシンクロナイザーリング(図示せず)が設けられている。そして、スリーブ34が軸線方向に動作することにより、アウターギヤ36とスリーブ34のインナーギヤとの係合・解放がおこなわれるように構成されている。このアウターギヤ36とスリーブ34のインナーギヤとが係合された場合は、第2クラッチ出力軸5と第1変速機出力軸6との間で、後進用歯車対26を経由させて動力伝達をおこなうことが可能となる。これに対して、アウターギヤ36とスリーブ34のインナーギヤとが解放された場合は、第2クラッチ出力軸5と第1変速機出力軸6との間で、後進用歯車対26を経由させて動力伝達をおこなうことが不可能となる。なお、スリーブ34を軸線方向で中立位置に移動させると、スリーブ34のインナーギヤを、2つのアウターギヤ35,36から共に解放させることは可能であるが、スリーブ34のインナーギヤが軸線方向のいずれの位置にある場合でも、2つのアウターギヤ35,36のいずれか一方にのみ噛合する。
前記第3速用歯車対10に対応する第3クラッチ37は、第1クラッチ出力軸4に設けられている。第3クラッチ37は、第1クラッチ出力軸4と一体回転し、かつ、第1クラッチ出力軸4の軸線方向に動作可能なスリーブ38と、第3速ドライブギヤ18と一体回転するアウターギヤ39と、スリーブ38と一体回転し、かつ、スリーブ38とともに軸線方向に動作可能なシンクロナイザーリング(図示せず)およびシンクロナイザーキー(図示せず)とを有している。スリーブ38にはインナーギヤ(図示せず)が形成されており、スリーブ38が軸線方向に動作することにより、アウターギヤ39とスリーブ38のインナーギヤとの係合・解放がおこなわれるように構成されている。このアウターギヤ39とスリーブ38のインナーギヤとが係合された場合は、第1クラッチ出力軸4と第1変速機出力軸6との間で、第3速用歯車対10を経由させて動力伝達をおこなうことが可能となる。これに対して、アウターギヤ39とスリーブ38のインナーギヤとが解放された場合は、第1クラッチ出力軸4と第1変速機出力軸6との間で、第3速用歯車対10を経由させて動力伝達をおこなうことが不可能となる。
また、この第3クラッチ37は第5速用歯車対12に対応するクラッチとしての機能を兼備している。すなわち、第5速ドライブギヤ22と一体回転するアウターギヤ40が設けられており、アウターギヤ40に対応するシンクロナイザーリング(図示せず)が設けられている。そして、スリーブ38が軸線方向に動作することにより、アウターギヤ40とスリーブ38のインナーギヤとの係合・解放がおこなわれるように構成されている。このアウターギヤ40とスリーブ38のインナーギヤとが係合された場合は、第1クラッチ出力軸4と第1変速機出力軸6との間で、第5速用歯車対12を経由させて動力伝達をおこなうことが可能となる。これに対して、アウターギヤ40とスリーブ38のインナーギヤとが解放された場合は、第1クラッチ出力軸4と第1変速機出力軸6との間で、第5速用歯車対12を経由させて動力伝達をおこなうことが不可能となる。なお、スリーブ38を軸線方向で中立位置に移動させると、スリーブ38のインナーギヤを、2つのアウターギヤ39,40から共に解放させることは可能であるが、スリーブ38のインナーギヤが軸線方向のいずれの位置にある場合でも、2つのアウターギヤ38,39のいずれか一方にのみ噛合する。
前記第4速用歯車対11に対応する第4クラッチ41は、第2クラッチ出力軸5に設けられている。第4クラッチ41は、第2クラッチ出力軸5と一体回転し、かつ、第2クラッチ出力軸5の軸線方向に動作可能なスリーブ42と、第4速ドライブギヤ20と一体回転するアウターギヤ43と、スリーブ42と一体回転し、かつ、スリーブ42とともに軸線方向に動作可能なシンクロナイザーリング(図示せず)およびシンクロナイザーキー(図示せず)とを有している。スリーブ42にはインナーギヤ(図示せず)が形成されており、スリーブ42が軸線方向に動作することにより、アウターギヤ43とスリーブ42のインナーギヤとの係合・解放がおこなわれるように構成されている。このアウターギヤ43とスリーブ42のインナーギヤとが係合された場合は、第2クラッチ出力軸5と第1変速機出力軸6との間で、第4速用歯車対11を経由させて動力伝達をおこなうことが可能となる。これに対して、アウターギヤ43とスリーブ42のインナーギヤとが解放された場合は、第2クラッチ出力軸5と第1変速機出力軸6との間で、第4速用歯車対11を経由させて動力伝達をおこなうことが不可能となる。
また、この第4クラッチ41は第6速用歯車対13に対応するクラッチとしての機能を兼備している。すなわち、第6速ドライブギヤ24と一体回転するアウターギヤ44が設けられており、アウターギヤ44に対応するシンクロナイザーリング(図示せず)が設けられている。そして、スリーブ42が軸線方向に動作することにより、アウターギヤ44とスリーブ42のインナーギヤとの係合・解放がおこなわれるように構成されている。このアウターギヤ44とスリーブ42のインナーギヤとが係合された場合は、第2クラッチ出力軸5と第1変速機出力軸6との間で、第6速用歯車対13を経由させて動力伝達をおこなうことが可能となる。これに対して、アウターギヤ44とスリーブ42のインナーギヤとが解放された場合は、第2クラッチ出力軸5と第1変速機出力軸6との間で、第6速用歯車対13を経由させて動力伝達をおこなうことが不可能となる。なお、スリーブ42を軸線方向で中立位置に動作させると、スリーブ42のインナーギヤを、2つのアウターギヤ43,44から共に解放させることは可能であるが、スリーブ42のインナーギヤが軸線方向のいずれの位置にある場合でも、2つのアウターギヤ43,44のいずれか一方にのみ噛合する。
一方、前記第1変速機出力軸6と一体回転するドライブギヤ45と、前記第2変速機出力軸7と一体回転するドリブンギヤ46とが噛合されている。さらに、変速機3は、エンジン1に接続される入力軸47を有している。また、第1クラッチ出力軸4と入力軸47との間における伝達トルクを制御する第1切り替えクラッチC1と、第2クラッチ出力軸5と入力軸47との間における伝達トルクを制御する第2切り替えクラッチC2とが設けられている。この第1切り替えクラッチC1および第2切り替えクラッチC2としては、例えば、摩擦クラッチ、より具体的には湿式クラッチを用いることが可能である。つまり、第1切り替えクラッチC1および第2切り替えクラッチC2を構成するプレートやディスクが、潤滑油により潤滑および冷却される。この第1切り替えクラッチC1および第2切り替えクラッチC2は、別々に伝達トルクもしくは係合圧を制御可能に構成された、いわゆるデュアルクラッチ(言い換えれば、ツインクラッチ)である。そして、第1切り替えクラッチC1および第2切り替えクラッチC2の伝達トルクを高めると、第1クラッチ出力軸4と第2クラッチ出力軸5とがトルク伝達可能に連結される。さらに、第1クラッチ出力軸4と第2クラッチ出力軸5とをトルク伝達可能に連結・解放する装置として、連結クラッチ60が設けられている。この連結クラッチ60としては、摩擦クラッチ、電磁クラッチ、噛み合いクラッチなどを用いることが可能である。この実施例では、連結クラッチ60として、油圧制御式の噛み合いクラッチが用いられている場合について説明する。なお、いずれのクラッチにおいても、油圧室の油圧が上昇すると、そのクラッチが係合されて伝達トルクが高められ、油圧室の油圧が低下すると、そのクラッチが解放されて伝達トルクが低下するように構成されている。
一方、前記エンジン1には内燃機関および外燃機関が含まれるが、この実施例では、内燃機関を用いている場合について説明する。内燃機関としては、例えば、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、LPGエンジン、メタノールエンジンなどを用いることが可能である。この実施例では、エンジン1としてガソリンエンジンが用いられている場合について説明する。このエンジン1は、電子スロットルバルブ、燃料噴射量制御装置、点火時期制御装置などを有する公知のものである。
つぎに、車両Veの制御系統について説明すると、第1切り替えクラッチC1、第2切り替えクラッチC2、第1クラッチ30ないし第4クラッチ41、連結クラッチ60を、それぞれ別々に制御することの可能なアクチュエータが設けられている。この実施例では、アクチュエータとして油圧アクチュエータ48が用いられている。つまり、第1切り替えクラッチC1および第2切り替えクラッチC2、第1クラッチ30ないし第4クラッチ41、連結クラッチ60は、いずれも油圧制御式のクラッチであり、各クラッチの伝達トルクを制御する油圧サーボ機構(図示せず)が設けられている。この油圧サーボ機構は、油圧室、シリンダ、ピストン等を有する公知のものであり、各油圧室の油圧が油圧アクチュエータ48により制御されるように構成されている。そして、各油圧サーボ機構の油圧室の油圧が、油圧アクチュエータ48により制御されるように構成されている。この油圧アクチュエータ48は、油圧回路およびソレノイドバルブなどを有する公知の構造を有している。
また、車両Veの全体を制御する総合電子制御装置49が設けられているとともに、エンジン1を制御するエンジン用電子制御装置50が設けられている。さらに、変速機3を制御するために乗員が操作するシフト操作装置51が設けられているとともに、変速機3における変速状態を表示するシフト状態表示装置52が設けられている。シフト操作装置51は、乗員が手で操作する構造のものまたは足で操作する構造のもののいずれでもよい。シフト操作装置51の操作により、前進段(ドライブレンジ)、後進段(リバースレンジ)、ニュートラルレンジ、パーキングレンジなどを選択的に切り替え可能である。さらに、シフト状態表示装置52は、ランプ点灯、音声表示、ディスプレイ表示などの少なくとも1つの表示システムにより、変速機3の変速状態を出力する構成となっている。また、潤滑油および油圧アクチュエータ48の作動油の温度を検出する油温センサ520および各クラッチの軸線方向におけるスリーブの位置を検知するスリーブ位置センサ53が設けられている。
前記エンジン用電子制御装置には、各種のセンサやスイッチの信号が入力される。このエンジン用電子制御装置には、例えば、エンジン回転速度、吸入空気量、吸入空気温度、アクセル開度、スロットル開度、冷却水温などの信号が入力される。エンジン用電子制御装置からは、エンジン1の電子スロットルバルブの開度、吸入空気量、点火時期、燃料噴射量などを制御する信号が出力される。
前記総合電子制御装置49には、各種のセンサやスイッチの信号が入力される。総合電子制御装置49には、例えば、第1クラッチ出力軸4の回転速度センサ55、第2クラッチ出力軸5の回転速度センサ56、第2変速機出力軸7の回転速度センサ57、潤滑油および作動油の温度、ブレーキペダルの操作状態、ナビゲーションシステムで得られる道路状況、シフト操作装置51の操作状態、道路勾配センサ、加速度センサなどの信号が入力される。総合電子制御装置49からは、油圧アクチュエータ48を制御する信号、シフト状態表示装置52を制御する信号などが出力される。なお、エンジン用電子制御装置50と総合電子制御装置49との間で相互に信号の授受がおこなわれる。また、この実施例において、各種の回転部材の回転速度は、各種の回転部材の回転数と等価のパラメータである。
つぎに、変速機3の制御について説明する。変速機3で前進段の第1速を設定する場合は、第1クラッチ30のスリーブ31の動作により、第1クラッチ30のスリーブ31のインナーギヤとアウターギヤ32とが係合されるとともに、第1切り替えクラッチC1が係合されるとともに、第2クラッチ33ないし第4クラッチ41のスリーブが全て中立位置に制御され、かつ、第2切り替えクラッチC2が解放される。このような制御により、入力軸47と第2変速機出力軸7との間で、第1切り替えクラッチC1および第1速用歯車対8を経由して動力伝達をおこなうことが可能になるとともに、入力軸47と第2変速機出力軸7との間における変速比が、第1速用歯車対8を構成する第1速ドライブギヤ14と第1速ドリブンギヤ15との歯数比に応じた値となる。すなわち、変速機3の変速段として第1速が設定される。
また、変速機3で前進段の第2速を設定する場合は、第2クラッチ33のスリーブ34の動作により、スリーブ34のインナーギヤとアウターギヤ35とが係合されるとともに、第2切り替えクラッチC2が係合されるとともに、第1クラッチ30および第3クラッチ37および第4クラッチ41のスリーブが全て中立位置に制御され、かつ、第1切り替えクラッチC1が解放される。このような制御により、入力軸47と第2変速機出力軸7との間で、第2切り替えクラッチC2および第2速用歯車対9を経由して動力伝達をおこなうことが可能になるとともに、入力軸47と第2変速機出力軸7との間における変速比が、第2速用歯車対9を構成する第2速ドライブギヤ16と第2速ドリブンギヤ17との歯数比に応じた値となる。すなわち、変速機3の変速段として第2速が設定される。
また、変速機3で前進段の第3速を設定する場合は、第3クラッチ37のスリーブ38の動作により、スリーブ38のインナーギヤとアウターギヤ39とが係合されるとともに、第1切り替えクラッチC1が係合されるとともに、第1クラッチ30および第2クラッチ33および第4クラッチ41のスリーブが全て中立位置に制御され、かつ、第2切り替えクラッチC2が解放される。このような制御により、入力軸47と第2変速機出力軸7との間で、第1切り替えクラッチC1および第3速用歯車対10を経由して動力伝達をおこなうことが可能になるとともに、入力軸47と第2変速機出力軸7との間における変速比が、第3速用歯車対10を構成する第3速ドライブギヤ18と第3速ドリブンギヤ19との歯数比に応じた値となる。すなわち、変速機3の変速段として第3速が設定される。
さらに、変速機3で前進段の第4速を設定する場合は、第4クラッチ41のスリーブ42の動作により、スリーブ42のインナーギヤとアウターギヤ43とが係合されるとともに、第2切り替えクラッチC2が係合されるとともに、第1クラッチ30および第2クラッチ33および第3クラッチ37のスリーブが全て中立位置に制御され、かつ、第1切り替えクラッチC1が解放される。このような制御により、入力軸47と第2変速機出力軸7との間で、第2切り替えクラッチC2および第4速用歯車対11を経由して動力伝達をおこなうことが可能になるとともに、入力軸47と第2変速機出力軸7との間における変速比が、第4速用歯車対11を構成する第4速ドライブギヤ20と第4速ドリブンギヤ21との歯数比に応じた値となる。すなわち、変速機3の変速段として第4速が設定される。
さらに、変速機3で前進段の第5速を設定する場合は、第3クラッチ37のスリーブ38の動作により、スリーブ38のインナーギヤとアウターギヤ40とが係合されるとともに、第1切り替えクラッチC1が係合されるとともに、第1クラッチ30および第2クラッチ33および第4クラッチ41のスリーブが全て中立位置に制御され、かつ、第2切り替えクラッチC2が解放される。このような制御により、入力軸47と第2変速機出力軸7との間で、第1切り替えクラッチC1および第5速用歯車対12を経由して動力伝達をおこなうことが可能になるとともに、入力軸47と第2変速機出力軸7との間における変速比が、第5速用歯車対12を構成する第5速ドライブギヤ22と第5速ドリブンギヤ23との歯数比に応じた値となる。すなわち、変速機3の変速段として第5速が設定される。
さらに、変速機3で前進段の第6速を設定する場合は、第4クラッチ41のスリーブ42の動作により、スリーブ42のインナーギヤとアウターギヤ44とが係合されるとともに、第2切り替えクラッチC2が係合されるとともに、第1クラッチ30および第2クラッチ33および第3クラッチ37のスリーブが全て中立位置に制御され、かつ、第1切り替えクラッチC1が解放される。このような制御により、入力軸47と第2変速機出力軸7との間で、第2切り替えクラッチC2および第6速用歯車対13を経由して動力伝達をおこなうことが可能になるとともに、入力軸47と第2変速機出力軸7との間における変速比が、第6速用歯車対13を構成する第6速ドライブギヤ24と第6速ドリブンギヤ25との歯数比に応じた値となる。すなわち、変速機3の変速段として第6速が設定される。このように、変速機3は、前進段において第1速ないし第6速を選択的に切り替えることが可能である。つまり、変速機3は、変速比を段階的に、または不連続に切り替えることの可能な有段変速機である。
一方、シフト操作装置51の操作により、後進段(リバースレンジ)が選択された場合は、第2クラッチ33のスリーブ34の動作により、スリーブ34のインナーギヤとアウターギヤ36とが係合されるとともに、第2切り替えクラッチC2が係合されるとともに、第1クラッチ30および第3クラッチ37および第4クラッチ41のスリーブが全て中立位置に制御され、かつ、第1切り替えクラッチC1が解放される。このような制御により、入力軸47と第2変速機出力軸7との間で、第2切り替えクラッチC2および後進用歯車対26を経由して動力伝達をおこなうことが可能になるとともに、入力軸47と第2変速機出力軸7との間における変速比が、後進用歯車対26を構成する後進ドライブギヤ27と後進アイドラギヤ29と後進ドリブンギヤ28との歯数比に応じた値となる。すなわち、変速機3で後進段が設定される。なお、前進段が設定された場合と、後進段が設定された場合とでは、第2変速機出力軸7の回転方向が逆となる。
前進段または後進段が選択された場合は、上記のように入力軸47と第2変速機出力軸7とが動力伝達可能に接続されるため、エンジン1が運転され、かつ、アクセルペダルが踏み込まれた場合、つまり、パワーオンの状態では、エンジントルクが変速機3を経由して車輪2に伝達されて、駆動力が発生する。これに対して、車両Veの惰力走行時、つまり、アクセルペダルが踏まれていないパワーオフの状態では、車両Veの運動エネルギに対応するトルクが、車輪2から変速機3を経由してエンジン1に伝達され、エンジンブレーキ力が生じる。
さらに、シフト操作装置51により、パーキングレンジまたはニュートラルポジジョンが選択された場合は、第1切り替えクラッチC1および第2切り替えクラッチC2が共に解放される。このような制御により、入力軸47と第2変速機出力軸7との間で動力伝達をおこなうことが不可能となる。そして、現在設定されている変速段から他の変速段(目標変速段)に切り替える場合は、現在の変速段を設定しているクラッチのスリーブを動作させて、現在の変速段に対応するアウターギヤと、スリーブのインナーギヤとを解放するとともに、目標変速段に対応するクラッチのスリーブを動作させて、目標変速段を設定するアウターギヤと、スリーブのインナーギヤとを係合させる制御が実行される。また、現在の変速段から目標変速段に切り替える場合に、第1切り替えクラッチC1および第2切り替えクラッチC2の係合・解放状態を切り替える必要がある場合は、その切り替え制御が実行される。
この実施例において、前進段では、変速段を示す数字が小さいほど、変速機3における変速比が大きくなる。ここで、変速機3の変速比とは、入力軸47の回転速度を第2変速機出力軸7の回転速度で除した値である。この実施例において、現在の変速段における変速比よりも、目標変速段における変速比の方が大きくなる変速制御がダウンシフトである。また、現在の変速段における変速比よりも、目標変速段における変速比の方が小さくなる変速制御がアップシフトである。そして、変速機3は、直近の変速段同士で変速を実行する場合に、第1切り替えクラッチC1のトルク容量、および第2切り替えクラッチC2のトルク容量が制御されるように構成された、いわゆるデュアル・クラッチ式の変速機3である。つまり、変速機3の変速段を変更する場合は、第1切り替えクラッチC1および第2切り替えクラッチC2の係合・解放を並行して実行する、いわゆるクラッチ・ツウ・クラッチ変速となる。
また、第1切り替えクラッチC1または第2切り替えクラッチC2の一方を係合し、他方を解放しているとともに、いずれかの変速用歯車対のクラッチを係合していずれかの変速段が現在設定されている場合において、解放されている切り替えクラッチに対応し、かつ、次の変速段を設定する予定の変速用歯車対のクラッチを係合させておく待機制御を実行可能である。この待機制御を、プレシフト制御と称する。例えば、第1切り替えクラッチC1が係合され、かつ、第2切り替えクラッチC2が解放され、第1クラッチ30が係合され、その他のクラッチが全て解放されて第1速が設定されている場合に、第1速から第2速にアップシフトをおこなうことを想定して、予め第2速用の第2クラッチ33のスリーブ34を、インナーギヤ35に係合させておくことができる。このプレシフト制御は、第1クラッチ出力軸4からトルクが伝達される変速用歯車対の変速段と、第2クラッチ出力軸5からトルクが伝達される変速用歯車対の変速段との間であれば、他の変速段同士の間でもおこなえる。なお、次に設定する可能性がある変速段の変速用歯車対のインナーギヤと、スリーブとの係合を解除(解放)することを、プレシフト制御の解除という。さらに、いずれかの変速段を設定するために、一方の切り替えクラッチが係合されている場合に、他方の切り替えクラッチが完全に解放されることなく、スリップする状態に制御することも可能である。この切り替えクラッチのスリップ状態では、伝達トルクが低いため駆動力には影響しない。さらに、プレシフト制御を実行する場合、アップシフトのための待機制御またはダウンシフトのための待機制御のいずれも可能である。
なお、この実施例においては、変速機3の変速段を切り替えるにあたり、自動変速制御とマニュアル変速制御とを選択可能である。マニュアル変速制御とは、乗員がシフト操作装置51をマニュアル操作することにより、第1速ないし第6速の変速段を選択的に切り替える制御である。また、自動変速制御とは、シフト操作装置51で前進段が選択されている場合に、車両Veの走行状態、例えば、車速およびアクセル開度および総合電子制御装置49に記憶されている変速マップに基づいて、変速判断をおこない、第1速ないし第6速の変速段を選択的に切り替える制御である。この場合、変速マップには、現在の変速段から他の変速段にアップシフトする場合の基準となるアップシフト線、および、現在の変速段から他の変速段にダウンシフトする場合の基準となるダウンシフト線が設けられている。
つぎに、図2に示された車両で実行可能な制御例を、図1のフローチャートに基づいて説明する。図1の制御は、変速機3に設けられている各種のクラッチの伝達トルクを制御する機能を判断するためのフローチャートである。まず、車両Veの走行中に、かつ、前進段が選択されている場合に、変速機3の変速段を切り替える制御を実行中であるか否かが判断される(ステップS1)。このステップS1で肯定的に判断された場合は、この制御ルーチンを終了する。これに対して、ステップS1で否定的に判断された場合は、前述の「プレシフト制御」が解除されているか否かが判断される(ステップS2)。このステップS2で否定的に判断された場合は、この制御ルーチンを終了する。そして、ステップS2で肯定的に判断された場合は、現在の変速段を設定する場合に係合される方の切り替えクラッチ以外の切り替えクラッチを、完全解放ではなくスリップさせる指令が出力され、その切り替えクラッチのスリップ量が、所定値(許可スリップ量定数)NSLPFL以上であるか否かが判断される(ステップS3)。
このステップS3は、総合電子制御装置49から出力される制御信号に対して、切り替えクラッチの伝達トルクを実際に制御する機能、具体的には、スリップ量を制御する機能を判断している。所定値NSLPFLは、油圧アクチュエータ48の油温等をパラメータとして予め実験的に求めてマップ化されて、総合電子制御装置49に記憶されている。このステップS3の判断で判断されるスリップ量は、切り替えクラッチにより係合・解放される回転要素同士の回転数差、つまり、エンジン回転数Neと、第1クラッチ出力軸4または第2クラッチ出力軸5の回転数との差で表される。このステップS3で否定的に判断された場合、つまり、エンジン回転数と、第1クラッチ出力軸4または第2クラッチ出力軸5の回転数との差が少ない場合は、スリップされるべき切り替えクラッチの引き摺り大であり、その切り替えクラッチの伝達トルクを制御する機能が正常でないと判定し、この制御ルーチンを終了する。なお、この制御例においては、切り替えクラッチのスリップ量を判断する場合に、エンジン回転数の代わりに入力軸47の回転数を用いることも可能である。
これに対して、ステップS3で肯定的に判断された場合は、スリップされる切り替えクラッチのスリップ量は適切であることになり、ついで、現在の変速段を設定する場合にスリップされる方の切り替えクラッチのスリップ量が、所定値(クラッチ解放不能判定スリップ量定数)NSLPFH未満であるか否かが判断される(ステップS4)。このステップS4は、変速制御用の第1クラッチ30ないし第4クラッチ41の伝達トルクを実際に低下させる機能が正常であるか否かを、予備的に判断している。すなわち、プレシフト制御が実行されている間は、第2変速機出力軸7と、スリップされる切り替えクラッチに接続されているクラッチ出力軸とがトルク伝達可能に連結されており、スリップされる切り替えクラッチに接続されているクラッチ出力軸は、次の変速段の変速比に対応する回転数で回転している。そして、プレシフト制御の解除後も、所定時間はそのクラッチ出力軸は回転しているため、クラッチ出力軸の回転が、切り替えクラッチの伝達トルクによるものであるか否かを判断している。
ここで、所定値NSLPFHは、油圧アクチュエータ48の油温等をパラメータとして予め実験的に求めてマップ化されて、総合電子制御装置49に記憶されている。なお、所定値NSLPFHは所定値NSLPFLよりも大きい(多い)。このステップS4で肯定的に判断された場合は、変速制御用の第1クラッチ30ないし第4クラッチ41の伝達トルクを実際に低下させる機能は正常であることになる。そこで、このステップS4で肯定的に判断された場合は、スリップされている切り替えクラッチのスリップ量の変化率が所定値(スリップ量の変化率の安定化を判定するための定数)DNSLPFLS未満である状態が、所定時間連続して成立しているか否かが判断される(ステップS5)。このステップS5は、スリップされている切り替えクラッチに接続されたクラッチ出力軸の回転数の変化が安定したか否かを判断するものであり、所定値DNSLPFLSは、車両Veの加速度等をパラメータとして予め実験的に求めてマップ化されて、総合電子制御装置49に記憶されている。
前記ステップS5で否定的に判断された場合は、切り替えクラッチの伝達トルクを高める機能を正確に判断できないため、この制御ルーチンを終了する。これに対して、ステップS5で肯定的に判断された場合は、切り替えクラッチの伝達トルクを高める機能を正確に判断できる状況にある。そこで、ステップS5で肯定的に判断された場合は、スリップされている切り替えクラッチの油圧室の油圧を高める制御を実行する(ステップS6)。このステップS6についで、油圧室の油圧が所定圧(許可油圧定数)PC2FL以上であるか否かが判断される(ステップS7)。このステップS7は、切り替えクラッチの伝達トルクを実際に高める機能が正常であるか否かを判断する前提条件を判断している。ここで、所定圧PC2FLは、切り替えクラッチの引き摺りによる伝達トルクよりも高い伝達トルクを発生させることのできる油圧に相当するものであり、予め油圧アクチュエータ48の油温等のパラメータから、実験的に求めた値をマップ化して総合電子制御装置49に記憶されている。
このステップS7で否定的に判断された場合は、この制御ルーチンを終了する。このステップS7で否定的に判断される状況としては、油圧の油圧を上昇させる制御信号が出力されてからの経過時間が短く、未だ油圧が高まっていない場合と、油圧の油圧を上昇させる制御信号が出力されてから所定時間が経過しているにも拘わらず、油圧室の油圧が上昇しない場合とがある。後者の場合は、油圧室の油圧を高めるソレノイドバルブなどの電気系統フェール、もしくはソレノイドバルブの弁体動作不良等の理由により、切り替えクラッチの伝達トルクを実際に上昇させる機能が低下していると判定することも可能である。
一方、ステップS7で肯定的に判断された場合は、切り替えクラッチの油圧室の油圧を実際に高める機能は正常であることになる。そこで、ステップS7で肯定的に判断された場合は、切り替えクラッチのスリップ量が所定値(係合判定に用いるスリップ量の定数)NSLPFLE未満であるか否かが判断される(ステップS8)。このステップS8は、切り替えクラッチの伝達トルクが、目標とする伝達トルクまで高められたか否かを判断するものであり、所定値NSLPFLEは所定値NSLPFLよりも小さい(少ない)とともに、所定値NSLPFLEは車速等をパラメータとして実験的に求めた値としてマップ化されて総合電子制御装置49に記憶されている。このステップS8で肯定的に判断された場合は、スリップしている切り替えクラッチの伝達トルクを実際に高める機能が正常であること、例えば、油圧室の油圧上昇に対してピストンが正常に動作していると判定し(ステップS9)、この制御ルーチンを終了する。なお、ステップS9は正常と判断された場合は、切り替えクラッチをスリップ状態に戻す。
これに対して、ステップS8で否定的に判断された場合は、スリップしている切り替えクラッチの伝達トルクを実際に高める機能が故障していること、例えば、油圧室の油圧上昇に対してピストンが正常に動作していないと判定する(ステップS10)。このステップS10についで、伝達トルクを高める機能が低下している切り替えクラッチを経由してトルクが伝達される変速用歯車対に対応する変速段の使用を禁止し(ステップS11)、この制御ルーチンを終了する。例えば、第2切り替えクラッチC2の伝達トルクを高める機能が低下している場合は、前進段における第2速および第4速および第6速、および後進段の使用が禁止され、これらの変速段を設定するクラッチが全てニュートラル状態に制御される。
これに対して、第1切り替えクラッチC1の伝達トルクを高める機能が低下している場合は、第1速および第3速および第5速の変速段の使用が禁止される。また、ステップS11に進んだ場合は、車両Veの発進時も、故障と判断された切り替えクラッチの係合によりトルクが伝達される変速用歯車対を用いる変速段の使用は禁止する。さらに、選択が禁止されていない変速段同士の間で変速を実行する場合、エンジン1の電子スロットルバルブを閉じて切り替えクラッチを解放し、変速用クラッチの係合・解放を切り替え、ついで、電子スロットルバルブを開放する制御を実行する。
一方、ステップS4で否定的に判断されるということは、プレシフト制御で係合されていた変速用クラッチの影響により、未だ、スリップ量が大きいことになる。そこで、ステップS4で否定的に判断された場合は、プレシフト制御の解除後、所定時間が経過したか否かが判断される(ステップS12)。このステップS12は、ステップS4の処理と組み合わせて、変速用クラッチの伝達トルクを実際に低下させる機能を判断するものである。このステップS12で否定的に判断された場合は、この制御ルーチンを終了する。これに対して、ステップS12で肯定的に判断された場合は、変速用クラッチの伝達トルクを実際に低下させる機能が低下していると判断する(ステップS13)。このステップS13では、変速用クラッチの油圧室の油圧を制御するためのソレノイドバルブの電気系統の故障、油圧室の圧油を排出させるバルブの動作不良、変速用クラッチの同期機構のスリーブの解放不良などを判断可能である。そして、ステップS13からステップS11に進み、「機能が低下している変速用クラッチを用いて設定される前進段での変速段、または後進段を使用すること」が禁止される。
つぎに、図1の制御例に対応するタイムチャートの一例を、図3に基づいて説明する。この図3のタイムチャートは、第1速が選択されているとともに、第1速から第2速にアップシフトすることを想定したプレシフト制御が実行されている場合に相当する。まず、時刻t1以前では、第2切り替えクラッチC2の油圧指示値が最低となっているとともに、プレシフト制御が実行されている。このプレシフト制御の実行により、第2クラッチ出力軸5の回転数が、その時点の車速および第2速の変速比に相当する回転数となっている。一方、第1切り替えクラッチC1は係合されており、第1クラッチ出力軸4の回転数が、その時点の車速および第1速の変速比に相当する回転数となっている。ここで、第1クラッチ出力軸4の回転数は、第2クラッチ出力軸5の回転数よりも高い。
そして、時刻t1でプレシフト制御が解除、つまり、第2クラッチ33が解放されると、第2切り替えクラッチC2の伝達トルクにより、第2クラッチ出力軸5の回転数が上昇を開始する。その後、時刻t2で、第2クラッチ出力軸5の回転数が、所定値NSLPFHに対応する回転数と、第1クラッチ出力軸4の回転数との間であり、かつ、所定値NSLPFLに対応する回転数よりも高い回転数になると、第2切り替えクラッチC2のスリップ量安定判定が開始される。ここまでの経緯が、ステップS3,S4を経由してステップS5に進んだ場合に対応する。そして、時刻t2から、ステップS5で述べた所定時間が経過した時刻t3において、第2切り替えクラッチC2のスリップ量安定判定が終了する。つまり、ステップS5で肯定判断されている。この時刻t3から、ステップS6のように第2切り替えクラッチC2の油圧指示値が高められ、時刻t4で一旦油圧指示が低下され、以後、油圧指示値が略一定に制御される。そして、時刻t5で油圧指示値が高められて、ステップS7で肯定的に判断され、第2クラッチ出力軸5の回転数が一層上昇する。そして、時刻t6で、エンジン回転数Neと第2クラッチ出力軸5の回転数との差が小さくなると、ステップS8で肯定的に判断される。時刻t6以降、第2切り替えクラッチC2の油圧の指示値は元に戻されており、第2クラッチ出力軸回転数は、時刻t2から軸t3の間の回転数まで低下する。
これに対して、時刻t2以降、第2切り替えクラッチ油圧指示値が最低であるにも拘わらず、第2クラッチ出力軸5の回転数が、所定値NSLPFLに相当する回転数よりも高くなった場合は、図1のステップS3で否定的に判断されることとなる。また、時刻t5以降も、第2クラッチ出力軸5の回転数が上昇せず、かつ、所定値NSLPFLに対応する回転数よりも低い回転数にある場合(二点鎖線で示す)は、ステップS8からステップS10を経由してステップS11に進む。さらに、時刻t1から所定時間が経過して時刻t1−1になった時点において、第2クラッチ出力軸5の回転数が、所定値NSLPFHに相当する回転数以下である場合(破線で示す)は、図1のステップS4からステップS12を経由してステップS13に進む。なお、時刻t1以前から時刻t6以降に亘って、第1切り替えクラッチC1の油圧指示値は高い値で略一定に制御されている。
以上のように、図1の制御例によれば、第2クラッチ出力軸5の入力側に設けられた第1切り替えクラッチC1の伝達トルクが実際に高められ、かつ、第1クラッチ出力軸4の入力側に設けられた第2切り替えクラッチC2の伝達トルクが低下されている(スリップしている)場合に、第2切り替えクラッチC2の伝達トルクを高める指令を発生させて、エンジン回転数と第2クラッチ出力軸5の回転数とを比較して、その比較結果に基づいて、第2切り替えクラッチC2の伝達トルクを実際に制御する機能が正常であるか否かを判断できる。したがって、第2クラッチ出力軸5に設けられた変速用歯車対のクラッチを係合させる変速段が選択される前に、第2切り替えクラッチC2の耐久性が低下する可能性の有無を判断できるとともに、第2切り替えクラッチC2の係合による変速ショック発生の可能性を判断できる。
また、エンジン回転数と、第2クラッチ出力軸5の回転数との差に基づいて、第2切り替えクラッチC2の伝達トルクを実際に制御する機能が正常であるか否かを判断することができ、その判断精度が向上する。さらに、第2切り替えクラッチC2の伝達トルクを高める指令(制御信号)が発生している場合、もしくは条件が成立しているにも拘わらず、油圧アクチュエータ48の機能が低下していて、第2切り替えクラッチC2の伝達トルクが実際には高められない場合は、第2切り替えクラッチC2の伝達トルクを実際に高める機能が正常ではないと判断することができる。さらに、第2切り替えクラッチC2の伝達トルクを実際に高める油圧アクチュエータ48の機能が正常ではないと判断された場合は、第2クラッチ33または第4クラッチ41の伝達トルクを高めて設定される変速段、つまり、前進段の第2速および第4速および第6速の選択、および後進段の選択が禁止される。したがって、第2切り替えクラッチC2および第2クラッチ33および第4クラッチ41の耐久性の低下を抑制できる。
さらに、第2切り替えクラッチC2の伝達トルクを高める指令が発生した場合に、第2クラッチ出力軸5の回転数に基づいて、第2クラッチ33および第4クラッチ41の伝達トルクを実際に低下させる油圧アクチュエータ48の機能が正常であるか否かを判断することができる。したがって、第2クラッチ33および第4クラッチ41の伝達トルクの耐久性の低下を一層確実に抑制できる。さらにまた、第2クラッチ33および第4クラッチ41の伝達トルクを実際に低下させる油圧アクチュエータ48の機能が正常ではないと判断された場合は、前進段の第2速および第4速および第6速、後進段の選択を禁止する。したがって、第2クラッチ33および第4クラッチ41の耐久性の低下を一層確実に抑制できる。なお、上記の説明では、主として第1切り替えクラッチC1が係合されている場合に、第2切り替えクラッチC2の伝達トルクを実際に制御する油圧アクチュエータ48の機能が正常であるか否かを判断する場合を取り挙げているが、図1の制御により、第2切り替えクラッチC2が係合されている場合に、第1切り替えクラッチC1の伝達トルクを実際に制御する油圧アクチュエータ48の機能が正常であるか否かを判断することも可能である。
つぎに、図1に示された制御により、第2切り替えクラッチC2の伝達トルクを高める機能が低下している場合に相当する他の制御例を、図4に基づいて説明する。まず、シフト操作装置51の操作により、後進段(リバースレンジ)が選択されたか否かが判断される(ステップS21)。このステップS21で否定的に判断された場合は、この制御ルーチンを終了する。これに対して、ステップS21で肯定的に判断された場合は、第2切り替えクラッチC2の伝達トルクを高める機能が低下しているか否かが判断される(ステップS22)。このステップS22の判断は前述と同様にしておこなわれる。このステップS22で否定的に判断された場合は、第2切り替えクラッチC2を係合させ、かつ、第1切り替えクラッチC1を解放させるとともに、第2クラッチ33のスリーブ34をアウターギヤ36に係合させて後進段を設定し(ステップS23)、この制御ルーチンを終了する。
一方、ステップS22で肯定的に判断された場合は、連結クラッチ60を係合させて、第1クラッチ出力軸4と第2クラッチ出力軸5とを一体回転するように連結し、かつ、第2クラッチ33のスリーブ34をアウターギヤ36に係合させて後進段を設定する(ステップS24)。このステップS24では、第1クラッチ30および第3クラッチ37および第4クラッチ41は全て解放される。このステップS24の処理により、エンジントルクが、第1切り替えクラッチC1および第1クラッチ出力軸4を経由して第2クラッチ出力軸5に伝達され、そのトルクが後進用歯車対26に伝達され(ステップS25)、この制御ルーチンを終了する。
この図4の制御例によれば、後進段が選択され、かつ、第2切り替えクラッチC2の伝達トルクを実際に高める油圧アクチュエータ48の機能が正常ではないと判断された場合は、連結クラッチ60の伝達トルクを実際に高めて、第1クラッチ出力軸4と第2クラッチ出力軸5とをトルク伝達可能に連結することにより、入力軸47のトルクを第2クラッチ出力軸5に伝達することが可能になる。したがって、第2切り替えクラッチC2の耐久性の低下を抑制でき、かつ、第2切り替えクラッチC2の伝達トルクを実際に制御することができない場合でも、第2クラッチ出力軸5にトルクを伝達して後進段を選択できる。
ここで、図1に示された機能的手段と、この発明の構成との対応関係を説明すると、ステップS3およびステップS6が、この発明の指令発生手段に相当し、ステップS3,S4,S7,S8が、この発明の機能判断手段に相当し、ステップS10,S11が、この発明の禁止手段に相当し、ステップS12,S13を経由してステップS11に進むルーチンが、この発明の第2の禁止手段に相当する。また、ステップS4からステップS12,S13に進むルーチンが、この発明の第2の機能判断手段に相当する。また、図4に示された機能的手段と、この発明の構成との対応関係を説明すると、ステップS22が、この発明の指令発生手段および機能判断手段に相当し、ステップS24が、この発明の連結クラッチ制御手段に相当する。
また、図2に示された構成と、この発明の構成との対応関係を説明すると、変速機3が、この発明の変速機に相当し、入力軸47およびエンジン1のクランクシャフトのうちの少なくとも一方が、この発明の入力回転部材に相当し、第2変速機出力軸7が、この発明の出力回転部材に相当し、第1クラッチ出力軸4および第2クラッチ出力軸5および第1変速機出力軸6、第1速用歯車対8および第2速用歯車対9および第3速用歯車対10および第4速用歯車対11および第5速用歯車対12および第6速用歯車対13により、この発明の複数の動力伝達経路および第1,第2の動力伝達経路が構成されている。さらに、第1切り替えクラッチC1および第2切り替えクラッチC2が、この発明におけるクラッチおよび第1,第2のクラッチに相当し、第1クラッチ30および第2クラッチ33および第3クラッチ37および第4クラッチ41が、この発明の変速制御機構に相当し、連結クラッチ60が、この発明の連結クラッチに相当する。
1…エンジン、 3…変速機、 4…第1クラッチ出力軸、 5…第2クラッチ出力軸、 6…第1変速機出力軸、 7…第2変速機出力軸、 8…第1速用歯車対、 9…第2速用歯車対、 10…第3速用歯車対、 11…第4速用歯車対、 12…第5速用歯車対、 13…第6速用歯車対、 30…第1クラッチ、 33…第2クラッチ、 37…第3クラッチ、 41…第4クラッチ、 47…入力軸、 48…油圧アクチュエータ、 49…総合電子制御装置、 60…連結クラッチ、 C1…第1切り替えクラッチ、 C2…第2切り替えクラッチ、 Ve…車両。