JP2006226380A - ツインクラッチ式変速機の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 複数の変速用クラッチおよび複数の切り替えクラッチの制御により変速制御を実行する場合に、遅れを抑制できる変速機の変速制御装置を提供する。
【解決手段】 第1の回転部材および第2の回転部材と第3の回転部材との間に設けられた複数の変速用歯車対と、第1の回転部材および第2の回転部材との間に別々に設けた2つの動力伝達経路切り替えクラッチと、複数の変速用歯車対に別個に設けた複数の変速用クラッチとを有し、複数の変速用クラッチの断続を切り替えるとともに、2つの動力伝達経路切り替えクラッチの係合・解放を切り換えることにより、変速制御をおこなう変速機の制御装置において、2つの動力伝達経路切り替えクラッチの制御により動力伝達を遮断する第1の変速制御と、2つの動力伝達経路切り替えクラッチの制御により動力伝達を継続する第2の変速制御とを切り替える切替手段(ステップS1ないしステップS20)を有する。
【選択図】 図1
【解決手段】 第1の回転部材および第2の回転部材と第3の回転部材との間に設けられた複数の変速用歯車対と、第1の回転部材および第2の回転部材との間に別々に設けた2つの動力伝達経路切り替えクラッチと、複数の変速用歯車対に別個に設けた複数の変速用クラッチとを有し、複数の変速用クラッチの断続を切り替えるとともに、2つの動力伝達経路切り替えクラッチの係合・解放を切り換えることにより、変速制御をおこなう変速機の制御装置において、2つの動力伝達経路切り替えクラッチの制御により動力伝達を遮断する第1の変速制御と、2つの動力伝達経路切り替えクラッチの制御により動力伝達を継続する第2の変速制御とを切り替える切替手段(ステップS1ないしステップS20)を有する。
【選択図】 図1
Description
この発明は、複数のクラッチの係合・解放を切り換えることにより、変速機の変速を実行するように構成されたツインクラッチ式変速機の制御装置に関するものである。
従来、車両には原動機が搭載されており、その原動機の動力が、動力伝達装置を経由して車輪に伝達されるように構成されている。動力伝達装置の入力回転速度と出力回転速度との比である変速比を制御する変速機としては、変速比を段階的もしくは不連続に変更することの可能な有段変速機と、変速比を無段階もしくは連続的に変更することの可能な無段変速機とが知られている。このうち、有段変速機の一例が、特許文献1に記載されている。
この特許文献1においては、エンジンから差動歯車装置に至る経路に変速機が設けられている。エンジンのクランクシャフトと同心状に2本の入力軸が設けられているとともに、2本の入力軸と並行に2本の出力軸が設けられている。2本の出力軸にはそれぞれ出力歯車が設けられており、各出力歯車が差動歯車装置のリングギヤに噛合されている。また、クランクシャフトと2本の入力軸とを選択的に係合・解放する2つの入力クラッチが設けられている。また、第1の入力軸および第1の出力軸には、相互に噛合する変速ギヤ対が設けられているとともに、第1の出力軸には、第1の出力軸と変速ギヤ対との動力伝達を断続する噛合クラッチが設けられている。さらに第2の入力軸および第2の出力軸にも、相互に噛合する変速ギヤ対が設けられているとともに、第2の出力軸には、第2の出力軸と変速ギヤ対との動力伝達を断続する噛合クラッチが設けられている。
そして、所定の変速段を成立させる場合は、その変速段の変速ギヤ対に対応する噛合クラッチが係合され、かつ、その変速段の変速ギヤ対が連結された入力軸と、クランクシャフトとを接続するように、いずれか一方の入力クラッチが係合される。また、この特許文献1に記載されている変速機においては、クラッチツークラッチ変速をおこなうことが可能であるとされている。すなわち、前変速段に関する入力クラッチを解放し、かつ、後変速段に関する入力クラッチの係合トルクを徐々に上昇させることにより、大きな駆動トルクの変動を防止しながら、駆動力の伝達が中断しないように変速がおこなわれるものとされている。なお、この特許文献1の他に、複数のクラッチを係合・解放することにより、変速が実行される変速機の制御装置の一例が、特許文献2および特許文献3に記載されている。
特開2004−28115号公報
特開平10−76870号公報
特開平9−229176号公報
しかしながら、上記の特許文献1に記載されている変速機の変速制御装置において、クラッチツークラッチ変速を実行する場合に、駆動力の伝達が中断されないように変速が制御されるため、変速判断が成立してから変速を終了するまでの所要時間が長くなり、変速制御の遅延を招く恐れがあった。
この発明は上記事情を背景としてなされたものであって、複数の変速用クラッチの係合・解放、および複数の動力伝達経路切り替えクラッチの係合・解放をおこなって変速制御を実行する場合に、変速制御の遅れを抑制することの可能なツインクラッチ式変速機の変速制御装置を提供することを目的としている。
上記目的を達成するため請求項1の発明は、第1の動力伝達部材と第2の動力伝達部材との間の動力伝達経路に相対回転可能に配置された第1の回転部材ないし第3の回転部材と、前記第1の回転部材ないし第3の回転部材にそれぞれ設けられた歯車と、前記第3の回転部材に設けられた歯車に対して、前記第1の回転部材に設けられた歯車および前記第2の回転部材に設けられた歯車が噛合されて形成された複数の変速用歯車対と、前記第1の動力伝達部材または前記第2の動力伝達部材の一方に対して前記第1の回転部材および前記第2の回転部材を並列に接続し、かつ、その動力伝達状態を別々に制御可能な2つの動力伝達経路切り替えクラッチと、複数の変速用歯車対にそれぞれ対応して設けられ、かつ、動力伝達を断続する複数の変速用クラッチとを有し、変速機の変速比を現在の変速比から他の変速比に変更する変速条件が成立した場合は、複数の変速用クラッチの断続を切り替えるとともに、2つの動力伝達経路切り替えクラッチの係合・解放を切り換えることにより、現在の変速比から他の変速比に変更する変速制御をおこなうツインクラッチ式変速機の制御装置において、前記変速制御をおこなう場合に、2つの動力伝達経路切り替えクラッチの制御により動力伝達を遮断する第1の変速制御と、2つの動力伝達経路切り替えクラッチの制御により動力伝達を継続する第2の変速制御とを、前記変速機を有する駆動装置の運転状態に基づいて選択的に切り替える切替手段を備えていることを特徴とするものである。
請求項2の発明は、請求項1の構成に加えて、前記切替手段により選択される第1の変速制御には、現在の変速比に対応する動力伝達経路切り替えクラッチのトルク容量を所定値以下まで低下させて動力伝達を遮断した後、現在の変速比を設定している変速用クラッチを解放させるとともに、前記原動機の出力を前記他の変速比に対応させる制御を実行し、さらに、他の変速比に対応する動力伝達経路切り替えクラッチの係合を完了させる手段が含まれており、前記切替手段により選択される第2の変速制御には、現在の変速比に対応する動力伝達経路切り替えクラッチのトルク容量が所定値を越える値に制御されている間に、他の変速比に対応する動力伝達用切り替えクラッチの係合を完了させ、ついで、他の変速比を設定する変速用クラッチのトルク容量を高めた後、現在の変速比に対応する動力伝達経路切り替えクラッチのトルク容量を所定値以下に低下させ、さらに、前記第1の回転部材および前記第2の回転部材を並列に接続した一方の動力伝達部材の出力を前記他の変速比に対応させる制御を実行し、かつ、現在の変速比を設定している変速用クラッチのトルク容量を低下させる手段が含まれていることを特徴とするものである。
請求項3の発明は、請求項1または2の構成に加えて、前記駆動装置が車両であり、前記駆動装置の運転状態には、前記車両が走行する道路の状況、または前記車両における加速要求の有無、または前記車両における制動要求の有無のうち、少なくとも1つの条件が含まれることを特徴とするものである。
請求項4の発明は、請求項3の構成に加えて、前記一方の動力伝達部材に接続される駆動力源が設けられており、前記切替手段は、前記変速制御が前記変速機の変速比を大きくするダウンシフトの場合、および、前記車両が登坂路または降坂路を走行する場合に、前記第2の変速制御を選択し、前記車両が平坦路を走行する場合に、前記第1の変速制御を選択する手段を含むことを特徴とするものである。
請求項5の発明は、請求項1ないし4のいずれかの構成に加えて、前記2つの動力伝達経路切り替えクラッチおよび複数の変速用クラッチのトルク容量が、油圧アクチュエータにより制御されるように構成されているとともに、前記切替手段は、前記油圧アクチュエータの作動油温が所定温度以下であり、かつ、前記第1の変速制御を実行する場合は、他の変速比に対応する変速用クラッチのトルク容量を高めるとともに、現在の変速比に対応する動力伝達用クラッチのトルク容量を所定値以下に低下させ、ついで、前記第1の回転部材および前記第2の回転部材を並列に接続した一方の動力伝達部材の出力を他の変速比に対応させて制御し、その後、他の変速比に対応する動力伝達経路切り替えクラッチのトルク容量を増加させる手段と、前記油圧アクチュエータの作動油温が所定温度を越えており、かつ、前記第1の変速制御を実行する場合は、他の変速比に対応する変速用クラッチのトルク容量を高めるとともに、現在の変速比に対応する動力伝達用クラッチのトルク容量を所定値以下に低下させ、かつ、現在の変速比に対応する変速用クラッチのトルク容量を低下させ、その後、前記第1の回転部材および前記第2の回転部材を並列に接続した一方の動力伝達部材の出力を他の変速比に対応させて制御し、かつ、他の変速比に対応する動力伝達経路切り替えクラッチのトルク容量を増加させる手段とを含むことを特徴とするものである。
請求項1の発明によれば、変速条件が成立すると、現在の変速比を設定している変速用クラッチが解放され、かつ、現在の変速比で動力伝達を制御する動力伝達経路切り替えクラッチが解放されるとともに、他の変速比を設定する変速用クラッチが係合され、かつ、他の変速比で動力伝達を制御する動力伝達経路切り替えクラッチが係合されて、現在の変速比から他の変速比に変更される。また、現在の変速比を他の変速比に変更する変速制御をおこなう過程で、動力伝達を遮断する第1の変速制御と、動力伝達を継続する第2の変速制御とを、駆動装置の運転状態に基づいて選択的に切り替えることが可能である。そして、第1の変速制御が選択された場合は、動力伝達が遮断されている間に、一方の動力伝達部材の出力を、変速後の変速比に対応させて制御することが可能であり、その一方の動力伝達部材の出力変動が、他方の動力伝達部材の出力に影響を及ぼすことを抑制できる。したがって、変速条件が成立してから、変速が終了するまでの時間を可及的に短くすることが可能である。
請求項2の発明によれば、請求項1の発明と同様の効果を得られる他に、第1の変速制御が選択された場合は、現在の変速比に対応する動力伝達経路切り替えクラッチのトルク容量を所定値以下まで低下させて動力伝達を遮断し、現在の変速比を設定している変速用クラッチを解放させた状態で、一方の動力伝達部材の出力を他の変速比に対応させる制御を実行するため、一方の動力伝達部材の出力変動が、他方の動力伝達部材の出力に影響を及ぼすことを、一層確実に抑制することができる。
また、第2の変速制御が選択された場合は、現在の変速比に対応する動力伝達経路切り替えクラッチのトルク容量が所定値を越える値に制御されている間に、他の変速比に相当する動力伝達経路切り替えクラッチのトルク容量を高め、かつ、他の変速比を設定する変速用クラッチのトルク容量を増加させた後、現在の変速比に対応する動力伝達経路切り替えクラッチのトルク容量を所定値以下に低下させる。さらに、一方の動力伝達部材の出力を、他の変速比に対応させる制御を実行し、かつ、現在の変速比を設定している変速用クラッチのトルク容量を低下させることが可能である。このように、他の変速比に対応する動力伝達用切り替えクラッチのトルク容量を増加させる以前の段階で、現在の変速比に対応する動力伝達用切り替えクラッチのトルク容量が、所定値を越える値に制御されているため、変速制御途中における動力伝達を確実に継続できる。
請求項3の発明によれば、請求項1または2の発明と同様の効果を得られる他に、車両の走行する道路の状況、または車両に対する加速要求の有無、または車両に対する制動要求の有無のうち、少なくとも1つの条件に基づいて、第1の変速制御および第2の変速制御が選択的に切り替えられる。したがって、車両の具体的な状況に応じて変速制御を選択することができる。
請求項4の発明によれば、請求項3の発明と同様の効果を得られる他に、変速機の変速比を大きくするダウンシフトの場合、および、車両が登坂路または降坂路を走行する場合に第2の変速制御を選択し、車両が平坦路を走行する場合に第1の変速制御を選択することが可能である。したがって、車両の登坂時に駆動力を確保することが可能であり、車両の降坂時には、駆動力源による制動力を確保することが可能であるとともに、平坦路を車両が走行する場合は、第1の変速制御が選択されて動力伝達が遮断されても支障はない。
請求項5の発明によれば、請求項1ないし4のいずれかの発明と同様の効果を得られる他に、油圧アクチュエータの作動油温が所定温度以下であり、かつ、第1の変速制御を実行する場合は、他の変速比を設定する変速用クラッチのトルク容量を高めるとともに、現在の変速比に対応する動力伝達用クラッチのトルク容量を所定値以下に低下させ、ついで、一方の動力伝達部材の出力を他の変速比に対応させて制御し、その後、他の変速比に対応する動力伝達経路切り替えクラッチのトルク容量を増加させることが可能である。
これに対して、油圧アクチュエータの作動油温が所定温度を越えており、かつ、第1の変速制御を実行する場合は、他の変速比に対応する変速用クラッチのトルク容量が高められ、かつ、現在の変速比に対応する動力伝達用クラッチのトルク容量が所定値以下に低下される。また、現在の変速比に対応する変速用クラッチのトルク容量が低下される。その後、一方の動力伝達部材の出力を他の変速比に対応させて制御し、かつ、他の変速比に対応する動力伝達経路切り替えクラッチのトルク容量が増加される。例えば、現在の変速比を設定する変速用クラッチのトルク容量を低下させた後、一方の動力伝達部材の回転数を、他の変速比に対応させて上昇させる制御を実行し、かつ、他の変速比を設定する変速用クラッチのトルク容量を増加させることが可能である。
このように、第1の変速制御を実行する場合は、先に、他の変速比に対応する変速用クラッチのトルク容量が高められているため、他の変速比に対応する動力伝達経路切り替えクラッチのトルク容量が所定値まで増加された時点で、動力伝達の遮断が解消される。つまり、動力伝達の遮断が開始されてから終了するまでの時間を可及的に短くすることができる。
つぎに、この発明を具体例に基づいて説明する。図2には、この発明の一実施例である車両Veのドライブトレーンおよび制御系統の一例が、模式的に示されている。まず、車両Veには駆動力源としてのエンジン1が設けられており、エンジン1と車輪2との間に形成された動力伝達経路に変速機3が設けられている。この変速機3は、第1クラッチ出力軸4および第2クラッチ出力軸5および第1変速機出力軸6および第2変速機出力軸7を有している。第2クラッチ出力軸5は円筒状に構成されており、第2クラッチ出力軸5の内部に第1クラッチ出力軸4が配置されている。また、第1クラッチ出力軸4と第2クラッチ出力軸5とが同軸上に配置され、第1クラッチ出力軸4と第2クラッチ出力軸5とが相対回転可能となるように構成されている。さらに、第1クラッチ出力軸4および第2クラッチ出力軸5に対して、第1変速機出力軸6が平行に配置されているとともに、第1変速機出力軸6と第2変速機出力軸7とが平行に配置されている。
また、変速機3は、前進段を設定するために、第1速用歯車対8ないし第6速用歯車対13を有している。まず、第1速用歯車対8は、第1速ドライブギヤ14と、第1速ドライブギヤ14に噛合された第1速ドリブンギヤ15とにより構成されている。第1速ドライブギヤ14は第1クラッチ出力軸4に設けられており、第1速ドライブギヤ14と第1クラッチ出力軸4とが一体回転するように構成されている。これに対して、第1速ドリブンギヤ15は第1変速機出力軸6に設けられており、第1速ドリブンギヤ15と第1変速機出力軸6とが相対回転可能となるように構成されている。
つぎに、第2速用歯車対9は、第2速ドライブギヤ16と、第2速ドライブギヤ16に噛合された第2速ドリブンギヤ17とにより構成されている。第2速ドライブギヤ16は第2クラッチ出力軸5に設けられており、第2速ドライブギヤ16と第2クラッチ出力軸5とが一体回転するように構成されている。これに対して、第2速ドリブンギヤ17は第1変速機出力軸6に設けられており、第2速ドリブンギヤ17と第1変速機出力軸6とが相対回転可能となるように構成されている。
さらに、第3速用歯車対10は、第3速ドライブギヤ18と、第3速ドライブギヤ18に噛合された第3速ドリブンギヤ19とにより構成されている。第3速ドライブギヤ18は第1クラッチ出力軸4に設けられており、第3速ドライブギヤ18と第1クラッチ出力軸4とが相対回転可能となるように構成されている。これに対して、第3速ドリブンギヤ19は第1変速機出力軸6に設けられており、第3速ドリブンギヤ19と第1変速機出力軸6とが一体回転するように構成されている。
さらに、第4速用歯車対11は、第4速ドライブギヤ20と、第4速ドライブギヤ20に噛合された第4速ドリブンギヤ21とにより構成されている。第4速ドライブギヤ20は第2クラッチ出力軸5に設けられており、第4速ドライブギヤ20と第2クラッチ出力軸5とが相対回転可能となるように構成されている。これに対して、第4速ドリブンギヤ21は第1変速機出力軸6に設けられており、第4速ドリブンギヤ21と第1変速機出力軸6とが一体回転するように構成されている。
さらに、第5速用歯車対12は、第5速ドライブギヤ22と、第5速ドライブギヤ22に噛合された第5速ドリブンギヤ23とにより構成されている。第5速ドライブギヤ22は第1クラッチ出力軸4に設けられており、第5速ドライブギヤ22と第1クラッチ出力軸4とが相対回転可能となるように構成されている。これに対して、第5速ドリブンギヤ23は第1変速機出力軸6に設けられており、第5速ドリブンギヤ23と第1変速機出力軸6とが一体回転するように構成されている。
さらに、第6速用歯車対13は、第6速ドライブギヤ24と、第6速ドライブギヤ24に噛合された第6速ドリブンギヤ25とにより構成されている。第6速ドライブギヤ24は第2クラッチ出力軸5に設けられており、第6速ドライブギヤ24と第2クラッチ出力軸5とが相対回転可能となるように構成されている。これに対して、第6速ドリブンギヤ25は第1変速機出力軸6に設けられており、第6速ドリブンギヤ25と第1変速機出力軸6とが一体回転するように構成されている。
さらに、変速機3は、後進段を設定するための後進用歯車対26を有している。後進用歯車対26は、後進ドライブギヤ27および後進ドリブンギヤ28と、後進ドライブギヤ28および後進ドリブンギヤ28に噛合された後進アイドラギヤ29とにより構成されている。後進ドライブギヤ27は第2クラッチ出力軸5に設けられており、後進ドライブギヤ27と第2クラッチ出力軸5とが一体回転するように構成されている。これに対して、後進ドリブンギヤ28は第1変速機出力軸6に設けられており、後進ドリブンギヤ28と第1変速機出力軸6とが相対回転可能となるように構成されている。
そして、各変速用歯車対に対応して複数の変速用クラッチが設けられている。この変速用クラッチは、変速用歯車対を構成する各ギヤと、各軸との間における動力伝達状態を制御する装置である。この実施例においては、変速用クラッチとして同期装置(シンクロメッシュ機構)を用いた場合を説明する。まず、第1速用歯車対8に対応する第1クラッチ30は、第1変速機出力軸6に設けられている。第1クラッチ30は、第1変速機出力軸6と一体回転し、かつ、第1変速機出力軸6の軸線方向に動作可能なスリーブ31と、第1速ドリブンギヤ15と一体回転するアウターギヤ32と、スリーブ31と一体回転し、かつ、スリーブ31とともに軸線方向に動作可能なシンクロナイザーリング(図示せず)およびシンクロナイザーキー(図示せず)とを有している。スリーブ31にはインナーギヤ(図示せず)が形成されており、スリーブ31が軸線方向に動作することにより、アウターギヤ32と、スリーブ31のインナーギヤとの係合・解放がおこなわれるように構成されている。このアウターギヤ32と、スリーブ31のインナーギヤとが係合された場合は、第1クラッチ出力軸4と第1変速機出力軸6との間で、第1速用歯車対8を経由させて動力伝達をおこなうことが可能となる。これに対して、スリーブ31が軸線方向で中立位置に動作されて、スリーブ31のインナーギヤと、アウターギヤ32とが解放された場合は、第1クラッチ出力軸4と第1変速機出力軸6との間で、第1速用歯車対8を経由させて動力伝達をおこなうことが不可能となる。
前記第2速用歯車対9に対応する第2クラッチは、第1変速機出力軸6に設けられている。第2クラッチ33は、第1変速機出力軸6と一体回転し、かつ、第1変速機出力軸6の軸線方向に動作可能なスリーブ34と、第2速ドリブンギヤ17と一体回転するアウターギヤ35と、スリーブ34と一体回転し、かつ、スリーブ34とともに軸線方向に動作可能なシンクロナイザーリング(図示せず)およびシンクロナイザーキー(図示せず)とを有している。スリーブ34にはインナーギヤ(図示せず)が形成されており、スリーブ34が軸線方向に動作することにより、アウターギヤ35とインナーギヤとの係合・解放がおこなわれるように構成されている。このアウターギヤ35と、スリーブ34のインナーギヤとが係合された場合は、第2クラッチ出力軸5と第1変速機出力軸6との間で、第2速用歯車対9を経由させて動力伝達をおこなうことが可能となる。これに対して、アウターギヤ35と、スリーブ34のインナーギヤとが解放された場合は、第2クラッチ出力軸5と第1変速機出力軸6との間で、第2速用歯車対9を経由させて動力伝達をおこなうことが不可能となる。
また、この第2クラッチ33は後進用歯車対26に対応するクラッチとしての機能を兼備している。すなわち、後進用ドリブンギヤ28と一体回転するアウターギヤ36が設けられており、アウターギヤ36に対応するシンクロナイザーリング(図示せず)が設けられている。そして、スリーブ34が軸線方向に動作することにより、アウターギヤ36とスリーブ34のインナーギヤとの係合・解放がおこなわれるように構成されている。このアウターギヤ36とスリーブ34のインナーギヤとが係合された場合は、第2クラッチ出力軸5と第1変速機出力軸6との間で、後進用歯車対26を経由させて動力伝達をおこなうことが可能となる。これに対して、アウターギヤ36とスリーブ34のインナーギヤとが解放された場合は、第2クラッチ出力軸5と第1変速機出力軸6との間で、後進用歯車対26を経由させて動力伝達をおこなうことが不可能となる。なお、スリーブ34を軸線方向で中立位置に移動させると、スリーブ34のインナーギヤを、2つのアウターギヤ35,36から共に解放させることは可能であるが、スリーブ34のインナーギヤが軸線方向のいずれの位置にある場合でも、2つのアウターギヤ35,36のいずれか一方にのみ噛合する。
前記第3速用歯車対10に対応する第3クラッチ37は、第1クラッチ出力軸4に設けられている。第3クラッチ37は、第1クラッチ出力軸4と一体回転し、かつ、第1クラッチ出力軸4の軸線方向に動作可能なスリーブ38と、第3速ドライブギヤ18と一体回転するアウターギヤ39と、スリーブ38と一体回転し、かつ、スリーブ38とともに軸線方向に動作可能なシンクロナイザーリング(図示せず)およびシンクロナイザーキー(図示せず)とを有している。スリーブ38にはインナーギヤ(図示せず)が形成されており、スリーブ38が軸線方向に動作することにより、アウターギヤ39とスリーブ38のインナーギヤとの係合・解放がおこなわれるように構成されている。このアウターギヤ38とスリーブ38のインナーギヤとが係合された場合は、第1クラッチ出力軸4と第1変速機出力軸6との間で、第3速用歯車対10を経由させて動力伝達をおこなうことが可能となる。これに対して、アウターギヤ39とスリーブ38のインナーギヤとが解放された場合は、第1クラッチ出力軸4と第1変速機出力軸6との間で、第3速用歯車対10を経由させて動力伝達をおこなうことが不可能となる。
また、この第3クラッチ37は第5速用歯車対12に対応するクラッチとしての機能を兼備している。すなわち、第5速ドライブギヤ22と一体回転するアウターギヤ40が設けられており、アウターギヤ40に対応するシンクロナイザーリング(図示せず)が設けられている。そして、スリーブ38が軸線方向に動作することにより、アウターギヤ40とスリーブ38のインナーギヤとの係合・解放がおこなわれるように構成されている。このアウターギヤ40とスリーブ38のインナーギヤとが係合された場合は、第1クラッチ出力軸4と第1変速機出力軸6との間で、第5速用歯車対12を経由させて動力伝達をおこなうことが可能となる。これに対して、アウターギヤ40とスリーブ38のインナーギヤとが解放された場合は、第1クラッチ出力軸4と第1変速機出力軸6との間で、第5速用歯車対12を経由させて動力伝達をおこなうことが不可能となる。なお、スリーブ38を軸線方向で中立位置に移動させると、スリーブ38のインナーギヤを、2つのアウターギヤ39,40から共に解放させることは可能であるが、スリーブ38のインナーギヤが軸線方向のいずれの位置にある場合でも、2つのアウターギヤ38,39のいずれか一方にのみ噛合する。
前記第4速用歯車対11に対応する第4クラッチ41は、第2クラッチ出力軸5に設けられている。第4クラッチ41は、第2クラッチ出力軸5と一体回転し、かつ、第2クラッチ出力軸5の軸線方向に動作可能なスリーブ42と、第4速ドライブギヤ20と一体回転するアウターギヤ43と、スリーブ42と一体回転し、かつ、スリーブ42とともに軸線方向に動作可能なシンクロナイザーリング(図示せず)およびシンクロナイザーキー(図示せず)とを有している。スリーブ42にはインナーギヤ(図示せず)が形成されており、スリーブ42が軸線方向に動作することにより、アウターギヤ43とスリーブ42のインナーギヤとの係合・解放がおこなわれるように構成されている。このアウターギヤ43とスリーブのインナーギヤとが係合された場合は、第2クラッチ出力軸5と第1変速機出力軸6との間で、第4速用歯車対11を経由させて動力伝達をおこなうことが可能となる。これに対して、アウターギヤ43とスリーブ42のインナーギヤとが解放された場合は、第2クラッチ出力軸5と第1変速機出力軸6との間で、第4速用歯車対11を経由させて動力伝達をおこなうことが不可能となる。
また、この第4クラッチ41は第6速用歯車対13に対応するクラッチとしての機能を兼備している。すなわち、第6速ドライブギヤ24と一体回転するアウターギヤ44が設けられており、アウターギヤ44に対応するシンクロナイザーリング(図示せず)が設けられている。そして、スリーブ42が軸線方向に動作することにより、アウターギヤ44とスリーブ42のインナーギヤとの係合・解放がおこなわれるように構成されている。このアウターギヤ44とスリーブ42のインナーギヤとが係合された場合は、第2クラッチ出力軸5と第1変速機出力軸6との間で、第6速用歯車対13を経由させて動力伝達をおこなうことが可能となる。これに対して、アウターギヤ44とスリーブ42のインナーギヤとが解放された場合は、第2クラッチ出力軸5と第1変速機出力軸6との間で、第6速用歯車対13を経由させて動力伝達をおこなうことが不可能となる。なお、スリーブ42を軸線方向で中立位置に動作させると、スリーブ42のインナーギヤを、2つのアウターギヤ44から共に解放させることは可能であるが、スリーブ42のインナーギヤが軸線方向のいずれの位置にある場合でも、2つのアウターギヤ43,44のいずれか一方にのみ噛合する。
一方、前記第1変速機出力軸6と一体回転するドライブギヤ45と、前記第2変速機出力軸7と一体回転するドリブンギヤ46とが噛合されている。さらに、変速機3は、エンジン1に接続される入力軸47を有している。また、第1クラッチ出力軸4と入力軸47との間における動力伝達状態を制御する第1切り替えクラッチC1と、第2クラッチ出力軸5と入力軸47との間における動力伝達状態を制御する第2切り替えクラッチC2とが設けられている。この第1切り替えクラッチC1および第2切り替えクラッチC2としては、例えば、摩擦式クラッチ、より具体的には湿式クラッチを用いていることが可能である。つまり、第1切り替えクラッチC1および第2切り替えクラッチC2を構成するプレートやディスクが、潤滑油により潤滑および冷却される。この第1切り替えクラッチC1第2切り替えクラッチC2は、別々に係合圧もしくはトルク容量を制御可能に構成された、いわゆるデュアルクラッチ(言い換えれば、ツインクラッチ)である。
一方、前記エンジン1には内燃機関および外燃機関が含まれるが、この実施例では、内燃機関を用いている場合について説明する。内燃機関としては、例えば、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、LPGエンジン、メタノールエンジンなどを用いることが可能である。この実施例では、エンジン1としてガソリンエンジンが用いられている場合について説明する。このエンジン1は、電子スロットルバルブ、燃料噴射量制御装置、点火時期制御装置などを有する公知のものである。さらに、車両Veにはブレーキ装置(図示せず)が設けられている。このブレーキ装置は、乗員により操作されるブレーキペダル、および車輪2に設けられたホイールシリンダなどにより構成されている。そして、ブレーキペダルの操作に応じてホイールシリンダの油圧が制御されて、車輪2に対する制動力が調整される。
つぎに、車両Veの制御系統について説明すると、第1切り替えクラッチC1および第2切り替えクラッチC2および第1クラッチ30ないし第4クラッチ41を、それぞれ別々に制御することの可能なアクチュエータが設けられている。この実施例では、アクチュエータとして油圧アクチュエータ48が用いられている。つまり、第1切り替えクラッチC1および第2切り替えクラッチC2および第1クラッチ30ないし第4クラッチは、いずれも油圧制御式のクラッチであり、各クラッチに対応して油圧室(図示せず)が形成されているととともに、各油圧室の油圧が油圧アクチュエータ48により制御されるように構成されている。つまり、第1切り替えクラッチC1および第2切り替えクラッチC2の係合圧は、油圧アクチュエータ48により制御される。この油圧アクチュエータ48は、油圧回路およびソレノイドバルブなどを有する公知の構造を有している。
また、車両Veの全体を制御する総合電子制御装置49が設けられているとともに、エンジン1を制御するエンジン用電子制御装置50が設けられている。さらに、変速機3を制御するために乗員が操作するシフト操作装置51が設けられているとともに、変速機3における変速状態を表示するシフト状態表示装置52が設けられている。シフト操作装置51は、乗員が手で操作する構造のものまたは足で操作する構造のもののいずれでもよい。シフト操作装置51の操作により、前進段(ドライブポジション)、後進段(リバースポジション)、ニュートラルポジション、パーキングポジションなどを選択的に切り替え可能である。さらに、シフト状態表示装置52は、ランプ点灯、音声表示、ディスプレイ表示などの少なくとも1つの表示システムにより、変速機3の変速状態を出力する構成となっている。また、潤滑油および油圧アクチュエータ48の作動油の温度を検出する油温センサ520および各クラッチの軸線方向におけるスリーブの位置を検知するスリーブ位置センサ53が設けられている。
前記エンジン用電子制御装置には、各種のセンサやスイッチの信号が入力される。このエンジン1用電子制御装置には、例えば、エンジン1回転速度、吸入空気量、吸入空気温度、アクセル開度、スロットル開度、冷却水温、エンジン吹き上げ禁止スイッチ54などの信号が入力される。エンジン吹き上げ禁止スイッチ54は、シフト操作装置52に設けたり、シフト操作装置52とは別にインストルメントパネルなどに設けることが可能である。エンジン用電子制御装置からは、エンジン1の電子スロットルバルブの開度、吸入空気量、点火時期、燃料噴射量などを制御する信号が出力される。
前記総合電子制御装置49には、各種のセンサやスイッチの信号が入力される。総合電子制御装置49には、例えば、第1クラッチ出力軸4の回転速度センサ55、第2クラッチ出力軸5の回転速度センサ56、第2変速機出力軸7の回転速度センサ57、潤滑油および作動油の温度、ブレーキペダルの操作状態、ナビゲーションシステムで得られる道路状況、シフト操作装置51の操作状態、道路勾配センサ、加速度センサなどの信号が入力される。総合電子制御装置49からは、油圧アクチュエータ48を制御する信号、シフト状態表示装置52を制御する信号などが出力される。なお、エンジン用電子制御装置50と総合電子制御装置49との間で相互に信号の授受がおこなわれる。また、この実施例において、各種の回転部材の回転速度は、各種の回転部材の回転数と等価のパラメータである。
つぎに、変速機3の制御について説明する。変速機3で前進段の第1速を設定する場合は、第1クラッチ30のスリーブの動作により、第1クラッチ30のスリーブのインナーギヤとアウターギヤ32とが係合されるとともに、第1切り替えクラッチC1が係合されるとともに、第2クラッチ33ないし第4クラッチ41のスリーブが全て中立位置に制御され、かつ、第2切り替えクラッチC2が解放される。このような制御により、入力軸47と第2変速機出力軸7との間で、第1切り替えクラッチC1および第1速用歯車対8を経由して動力伝達をおこなうことが可能になるとともに、入力軸47と第2変速機出力軸7との間における変速比が、第1速用歯車対8を構成する第1速ドライブギヤ14と第1速ドリブンギヤ15との歯数比に応じた値となる。すなわち、変速機3の変速段として第1速が設定される。
また、変速機3で前進段の第2速を設定する場合は、第2クラッチ33のスリーブ34の動作により、スリーブ34のインナーギヤとアウターギヤ35とが係合されるとともに、第2切り替えクラッチC2が係合されるとともに、第1クラッチ30および第3クラッチ37および第4クラッチ41のスリーブが全て中立位置に制御され、かつ、第1切り替えクラッチC1が解放される。このような制御により、入力軸47と第2変速機出力軸7との間で、第2切り替えクラッチC2および第2速用歯車対9を経由して動力伝達をおこなうことが可能になるとともに、入力軸47と第2変速機出力軸7との間における変速比が、第2速用歯車対9を構成する第2速ドライブギヤ16と第2速ドリブンギヤ17との歯数比に応じた値となる。すなわち、変速機3の変速段として第2速が設定される。
また、変速機3で前進段の第3速を設定する場合は、第3クラッチ37のスリーブ38の動作により、スリーブ38のインナーギヤとアウターギヤ39とが係合されるとともに、第1切り替えクラッチC1が係合されるとともに、第1クラッチ30および第2クラッチ33および第4クラッチ41のスリーブが全て中立位置に制御され、かつ、第2切り替えクラッチC2が解放される。このような制御により、入力軸47と第2変速機出力軸7との間で、第1切り替えクラッチC1および第3速用歯車対10を経由して動力伝達をおこなうことが可能になるとともに、入力軸47と第2変速機出力軸7との間における変速比が、第3速用歯車対10を構成する第3速ドライブギヤ18と第3速ドリブンギヤ19との歯数比に応じた値となる。すなわち、変速機3の変速段として第3速が設定される。
さらに、変速機3で前進段の第4速を設定する場合は、第4クラッチ41のスリーブ42の動作により、スリーブ42のインナーギヤとアウターギヤ43とが係合されるとともに、第2切り替えクラッチC2が係合されるとともに、第1クラッチ30および第2クラッチ33および第3クラッチ37のスリーブが全て中立位置に制御され、かつ、第1切り替えクラッチC1が解放される。このような制御により、入力軸47と第2変速機出力軸7との間で、第2切り替えクラッチC2および第4速用歯車対11を経由して動力伝達をおこなうことが可能になるとともに、入力軸47と第2変速機出力軸7との間における変速比が、第4速用歯車対11を構成する第4速ドライブギヤ20と第4速ドリブンギヤ21との歯数比に応じた値となる。すなわち、変速機3の変速段として第4速が設定される。
さらに、変速機3で前進段の第5速を設定する場合は、第3クラッチ37のスリーブ38の動作により、スリーブ38のインナーギヤとアウターギヤ40とが係合されるとともに、第1切り替えクラッチC1が係合されるとともに、第1クラッチ30および第2クラッチ33および第4クラッチ41のスリーブが全て中立位置に制御され、かつ、第2切り替えクラッチC2が解放される。このような制御により、入力軸47と第2変速機出力軸7との間で、第1切り替えクラッチC1および第5速用歯車対12を経由して動力伝達をおこなうことが可能になるとともに、入力軸47と第2変速機出力軸7との間における変速比が、第5速用歯車対12を構成する第5速ドライブギヤ22と第5速ドリブンギヤ23との歯数比に応じた値となる。すなわち、変速機3の変速段として第5速が設定される。
さらに、変速機3で前進段の第6速を設定する場合は、第4クラッチ41のスリーブ42の動作により、スリーブ42のインナーギヤとアウターギヤ44とが係合されるとともに、第2切り替えクラッチC2が係合されるとともに、第1クラッチ30および第2クラッチ33および第3クラッチ37のスリーブが全て中立位置に制御され、かつ、第1切り替えクラッチC1が解放される。このような制御により、入力軸47と第2変速機出力軸7との間で、第2切り替えクラッチC2および第6速用歯車対13を経由して動力伝達をおこなうことが可能になるとともに、入力軸47と第2変速機出力軸7との間における変速比が、第6速用歯車対13を構成する第6速ドライブギヤ24と第6速ドリブンギヤ25との歯数比に応じた値となる。すなわち、変速機3の変速段として第6速が設定される。このように、変速機3は、前進段において第1速ないし第6速を選択的に切り替えることが可能である。つまり、変速機3は、変速比を段階的に、または不連続に切り替えることの可能な有段変速機である。
一方、シフト操作装置51の操作により、後進段(リバースポジション)が選択された場合は、第2クラッチ33のスリーブ34の動作により、スリーブ34のインナーギヤとアウターギヤ36とが係合されるとともに、第2切り替えクラッチC2が係合されるとともに、第1クラッチ30および第3クラッチ37および第4クラッチ41のスリーブが全て中立位置に制御され、かつ、第1切り替えクラッチC1が解放される。このような制御により、入力軸47と第2変速機出力軸7との間で、第2切り替えクラッチC2および後進用歯車対26を経由して動力伝達をおこなうことが可能になるとともに、入力軸47と第2変速機出力軸7との間における変速比が、後進用歯車対26を構成する後進用ドライブギヤ27とアイドラギヤ29と後進用ドリブンギヤ28との歯数比に応じた値となる。すなわち、変速機3で後進段が設定される。なお、前進段が設定された場合と、後進段が設定された場合とでは、第2変速機出力軸7の回転方向が逆となる。
前進段または後進段が選択された場合は、上記のように入力軸47と第2変速機出力軸7とが動力伝達可能に接続されるため、エンジン1が運転され、かつ、アクセルペダルが踏み込まれた場合、つまり、パワーオンの状態では、エンジントルクが変速機3を経由して車輪2に伝達されて、駆動力が発生する。これに対して、車両Veの惰力走行時、つまり、アクセルペダルが踏まれていないパワーオフの状態では、車両Veの運動エネルギに対応するトルクが、車輪2から変速機3を経由してエンジン1に伝達され、エンジンブレーキ力が生じる。
さらに、シフト操作装置51により、パーキングポジションまたはニュートラルポジジョンが選択された場合は、第1切り替えクラッチC1および第2切り替えクラッチC2が共に解放される。このような制御により、入力軸47と第2変速機出力軸7との間で動力伝達をおこなうことが不可能となる。そして、現在設定されている変速段から他の変速段(目標変速段)に切り替える場合は、現在の変速段を設定しているクラッチのスリーブを動作させて、現在の変速段に対応するアウターギヤと、スリーブのインナーギヤとを解放するとともに、目標変速段に対応するクラッチのスリーブを動作させて、目標変速段を設定するアウターギヤと、スリーブのインナーギヤとを係合させる制御が実行される。また、現在の変速段から目標変速段に切り替える場合に、第1切り替えクラッチC1および第2切り替えクラッチC2の係合・解放状態を切り替える必要がある場合は、その切り替え制御が実行される。
この実施例において、前進段では、変速段を示す数字が小さいほど、変速機3における変速比が大きくなる。ここで、変速機3の変速比とは、入力軸4の回転速度を第2変速機出力軸7の回転速度で除した値である。この実施例において、現在の変速段における変速比よりも、目標変速段における変速比の方が大きくなる変速制御がダウンシフトである。また、現在の変速段における変速比よりも、目標変速段における変速比の方が大きくなる変速制御がアップシフトである。そして、変速機3は、変速比を切り替える場合に、第1切り替えクラッチC1のトルク容量、および第2切り替えクラッチC2のトルク容量が制御されるように構成された、いわゆるデュアル・クラッチ式の変速機3である。つまり、変速機3の変速段を変更する場合は、第1切り替えクラッチC1および第2切り替えクラッチC2の係合・解放を並行して実行する、いわゆるクラッチ・ツウ・クラッチ変速となる。
なお、この実施例においては、変速機3の変速段を切り替えるにあたり、自動変速制御とマニュアル変速制御とを選択可能である。マニュアル変速制御とは、乗員がシフト操作装置51をマニュアル操作することにより、第1速ないし第6速の変速段を選択的に切り替える制御である。また、自動変速制御とは、シフト操作装置51で前進段が選択されている場合に、車両Veの走行状態、例えば、車速およびアクセル開度および総合電子制御装置49に記憶されている変速マップに基づいて、変速判断をおこない、第1速ないし第6速の変速段を選択的に切り替える制御である。この場合、変速マップには、現在の変速段から他の変速段にアップシフトする場合の基準となるアップシフト線、および、現在の変速段から他の変速段にダウンシフトする場合の基準となるダウンシフト線が設けられている。
つぎに、変速機3の変速段を、現在の変速段から他の変速段である目標変速段に切り替える場合に実行可能な制御例を、図1のフローチャートに基づいて説明する。まず、総合電子制御装置49およびエンジン用電子制御装置50において、各種の入力信号が処理され(ステップS1)、ダウンシフト条件が成立したか否かが判断される(ステップS2)。このステップS2で否定的に判断された場合は、リターンされる。これに対して、ステップS2で肯定的に判断された場合は、目標変速段、つまり、変速要求ギヤへの同期を開始し、かつ、必要に応じて第1切り替えクラッチC1および第2切り替えクラッチC2の係合・解放を制御する(ステップS3)。
このステップS3の処理を具体的に説明する。なお、ここでは、第3速から第2速にダウンシフトする場合について説明する。前述したように、現在の変速段が第3速である場合は、第3クラッチ37のスリーブ38のインナーギヤと、アウターギヤ39とが係合されるとともに、第1切り替えクラッチC1が係合されている。また、第1クラッチ30および第2クラッチ33および第4クラッチ41のスリーブが全て中立位置に制御され、かつ、第2切り替えクラッチC2が解放されている。
そして、第3速から第2速にダウンシフトする場合は、第1切り替えクラッチC1を解放させ、かつ、第3クラッチ37のスリーブ38のインナーギヤと、アウターギヤ39とを解放させ、かつ、スリーブ38を中立位置に動作させるとともに、第2切り替えクラッチC2を係合させ、かつ、第2クラッチ33のスリーブ34を動作させて、スリーブ34のインナーギヤと、アウターギヤ35とを係合させる制御を実行する必要がある。そこで、この実施例では、ダウンシフト条件が成立した時点で、第2クラッチ33のスリーブ34を動作させて、第2速ドリブンギヤ17の回転速度を、第1変速機出力軸6の回転速度に近づける制御を開始するとともに、第1切り替えクラッチC1のトルク容量を低下させる制御を開始し、かつ、第2切り替えクラッチC2のトルク容量を上昇させる制御を開始する。なお、このステップS3の時点では、第2クラッチ33のスリーブ34のインナーギヤと、アウターギヤ35とは噛み合わされない。
上記のステップS3についで、入力軸47と第2変速機出力軸7との間で、動力伝達が遮断された状態(ニュートラル状態)で変速を実行することが許可されているか否かが判断される(ステップS4)。このステップS4で否定的に判断された場合は、ステップS5に進み、ステップS4で肯定的に判断された場合は、ステップS9に進む。このステップS4の判断は、車両Veにおける運転状態によりおこなうことが可能である。このステップS4の判断に用いられる各種のサブルーチン例を、図3ないし図9に基づいて説明する。図3のサブルーチンでは、車両Veが登坂中または降坂中であるか否かが判断され(ステップS30)、このステップS30で肯定的に判断された場合は、ステップS5に進む。つまり、車両Veが登坂中である場合は、動力伝達の遮断による駆動力の低下を抑制するために、ステップS5に進む。また、車両Veが降坂中である場合は、動力伝達の遮断によるエンジンブレーキ力の低下を抑制するために、ステップS5に進む。これに対して、ステップS30で否定的に判断された場合は、車両Veが平坦路を走行していることになり、動力遮断により駆動力が低下したり、エンジンブレーキ力が低下した場合でも、差し支えないと考えられるため、ステップS9に進む。なお、ステップS30の判断は、ナビゲーションシステムで検知される道路状況、勾配センサの検知信号などによりおこなうことが可能である。
図4のサブルーチンにおいては、パワーオフ、つまり、アクセル開度が全閉であるか否かが判断される(ステップS31)。パワーオン状態であると、このステップS31で否定的に判断されるとともに、動力遮断による駆動力の低下を抑制するために、ステップS5に進む。これに対して、ステップS31で肯定的に判断された場合は、動力遮断による駆動力の低下が許容されているものとして取り扱い、ステップS9に進む。
図5のサブルーチンにおいては、パワーオフであるか否かが判断され(ステップS32)、ステップS32で否定的に判断された場合は、動力遮断による駆動力の低下を抑制するために、ステップS5に進む。これに対して、ステップS32で肯定的に判断された場合は、動力遮断による駆動力の低下が許容されていると考えられる。そこで、ステップS32で肯定的に判断された場合は、車両Veが降坂中であるか否かが判断される(ステップS33)。このステップS33で肯定的に判断された場合は、動力伝達の遮断によるエンジン1ブレーキ力の低下を抑制するために、ステップS5に進む。これに対して、ステップS33で否定的に判断された場合は、動力遮断によりエンジン1ブレーキ力が低下しても差し支えないと考えられるため、ステップS9に進む。
図6のサブルーチンにおいては、ブレーキスイッチがオン(ブレーキペダルが踏まれている)されているか否かが判断される(ステップS34)。このステップS34で否定的に判断された場合は、動力遮断によりエンジンブレーキ力が低下することを抑制するため、ステップS5に進む。これに対して、ステップS34で肯定的に判断された場合は、ブレーキ装置により制動力を確保することが可能であるため、動力遮断によりエンジンブレーキ力が低下しても差し支えないと判断し、ステップS9に進む。
図7のサブルーチンにおいては、ブレーキスイッチがオンされているか否かが判断される(ステップS35)。このステップS35で否定的に判断された場合は、動力遮断によりエンジンブレーキ力が低下することを抑制するため、ステップS5に進む。これに対して、ステップS35で肯定的に判断された場合は、ブレーキ装置により制動力を確保することが可能であるため、動力遮断によりエンジンブレーキ力が低下しても差し支えないことになる。そこで、更に、車両Veが降坂中であるか否かを判断し(ステップS36)、ステップS36で肯定的に判断された場合は、ブレーキ装置で生じる制動力を、エンジンブレーキ力によりアシストするために、ステップS5に進む。これに対して、ステップS36で否定的に判断された場合は、ブレーキ装置で生じる制動力で充分であり、エンジンブレーキ力を発生させる必要はないと考えられるため、ステップS9に進む。
図8のサブルーチンにおいては、エンジン吹き上げ禁止スイッチ54がオンされているか否かが判断される。エンジン1の吹き上げとは、エンジン回転数が所定回転数以上に上昇することを意味する。このステップS37で肯定的に判断された場合は、「動力遮断によりエンジン負荷が低下して、エンジン回転数が上昇すること」を防ぐためにステップS5に進む。ステップS37で否定的に判断された場合は、エンジン回転数が上昇することが許容されていると考えられるため、ステップS9に進む。
さらに、図9のサブルーチンにおいては、変速機3のダウンシフトが、自動変速制御である場合に実行可能なルーチンである。まず、ダウンシフト条件が成立した時点の車速が、変速マップに設けられているダウンシフト線よりも高車速であるか否かが判断される(ステップS38)。図2に示す車両Veにおいては、自動変速制御が選択されている場合において、車両Veが登坂または降坂走行する際に、上記の変速マップとは異なる条件に基づいて、変速機3の変速比を制御することが可能になっている。具体的には、アクセル開度、実加速度、基準加速度などに基づいて、登坂・降坂を判定し、ダウンシフトさせたり、アップシフトを禁止する制御、いわゆる登降坂制御を実行可能である。この登降坂制御においては、変速マップに設けられているダウンシフト線よりも高車速でダウンシフトが実行される。したがって、ステップS38で肯定的に判断されるということは、登降坂制御の実行中であると考えられる。そこで、ステップS38で肯定的に判断された場合は、動力遮断により駆動力が低下したり、エンジンブレーキ力が低下したりすることを抑制するため、ステップS5に進む。これに対して、ステップS38で否定的に判断された場合は、動力遮断により駆動力が低下したり、エンジンブレーキ力が低下したりしてもよいと判断し、ステップS9に進む。
上記のようなサブルーチン例を用いてステップS5に進んだ場合は、第1切り替えクラッチC1のトルク容量が所定値以上の値に保持される。このため、パワーオンである場合は、第2変速機出力軸7から出力されるトルクの低下が抑制され、駆動力の低下を抑制できる。一方、パワーオフ(惰力走行)である場合は、車両Veの運動エネルギに基づいて、入力軸47に伝達されるトルクの低下が抑制され、エンジンブレーキ力を確保することができる。また、ステップS5においては、変速要求ギヤ同期が完了したか否かが判断される。つまり、第2速ドリブンギヤ17の回転速度と、第1変速機出力軸6の回転速度との差が、所定値よりも小さくなったか否かが判断される。このステップS5で否定的に判断された場合は、ステップS5の判断が肯定されるまで、そのステップS5の判断が繰り返される。そして、ステップS5で肯定的に判断された場合は、変速要求ギヤを実際に噛み合わせる制御が実行される(ステップS6)。すなわち、第2クラッチ33のスリーブ34のインナーギヤと、アウターギヤ35とが係合される。
また、ステップS6についで、クラッチ・ツウ・クラッチ変速が実行される(ステップS7)。すなわち、第1切り替えクラッチC1のトルク容量が更に低下されるとともに、第2切り替えクラッチC2のトルク容量を増加させる制御が実行される。この第2切り替えクラッチC2のトルク容量の増加によりエンジン回転数が上昇する。また、ステップS7においては、電子スロットルバルブを制御して、エンジントルクを第2速に対応する値に近づける制御も実行される。つまり、第2切り替えクラッチC2のトルク容量の制御と、電子スロットルバルブの制御との協調により、エンジン出力が制御される。
上記のステップS7についで、第3クラッチ37のスリーブ38が中立位置に制御され、かつ、第1切り替えクラッチC1のトルク容量が最低値まで低下され、かつ、第2切り替えクラッチC2のトルク容量が、第2速に対応するトルク容量に制御されるととともに、エンジントルクが第2速に対応する値に制御され(ステップS8)、リターンされる。このような制御により、エンジン回転速度が、車速および第2速の変速比に対応する値となり、第3速から第2速に切り替えるダウンシフト制御が終了する。
一方、前述のステップS4で肯定的に判断された場合は、油圧アクチュエータ48の作動油温が所定温度以下であるか否かが判断される(ステップS9)。このステップS9では、第1および第2切り替えクラッチC2の作動応答性、および第1クラッチ30ないし第4クラッチ41の作動応答性を、作動油温から判断している。すなわち、作動油温が低下することにともない、作動油の粘度が高まり、作動応答性、および第1クラッチ30ないし第4クラッチ41の作動応答性が低下する。このステップS9で否定的に判断されるということは、第1クラッチ30ないし第4クラッチ41の作動応答性が高いことになる。そこで、ステップS9で否定的に判断された場合は、第1切り替えクラッチC1のトルク容量を所定値以下まで低下させる(ステップS10)。このステップS10についで、変速前のギヤ噛み合わせを解除する制御が実行される(ステップS11)。すなわち、第3速を設定している第3クラッチ37のスリーブ38を中立位置に移動させる制御が実行される。
このステップS11についで、電子スロットルバルブなどを制御して、エンジン出力を、第2速に対応する値に近づける制御が実行される(ステップS12)。このステップS12についで、変速要求ギヤの同期が完了したか否かが判断される(ステップS13)。つまり、第2速ドリブンギヤ17の回転速度と、第1変速機出力軸6の回転速度との差が、所定値よりも小さくなったか否かが判断される。このステップS13で否定的に判断された場合はステップS12に戻り、ステップS13で肯定的に判断された場合は、変速要求ギヤを実際に噛み合わせる(ステップS14)。すなわち、第2クラッチ33のスリーブ34のインナーギヤと、アウターギヤ35とが係合される。このステップS14についで、第2速を設定する場合に係合するべき第2切り替えクラッチC2のトルク容量が高められ(ステップS20)、リターンされる。
一方、前記ステップS9で肯定的に判断された場合は、変速要求ギヤの同期が完了したか否かが判断される(ステップS15)。つまり、第2速ドリブンギヤ17の回転速度と、第1変速機出力軸6の回転速度との差が、所定値よりも小さくなったか否かが判断される。ステップS15で否定的に判断された場合は、ステップS15の判断が繰り返される。ステップS15で肯定的に判断された場合は、変速要求ギヤを噛み合わせる制御が実行される(ステップS16)。すなわち、第2クラッチ33のスリーブ33のインナーギヤと、アウターギヤ35とが係合される。
このステップS16についで、第1切り替えクラッチC1のトルク容量が所定値以下まで低下される(ステップS17)。このステップS17についで、変速前のギヤ噛み合わせを解除する制御が実行される(ステップS18)。すなわち、第3速を設定している第3クラッチ38のスリーブ39を中立位置に移動させる制御が実行される。このステップS18についで、電子スロットルバルブを制御して、エンジン出力を、第2速に対応する値に近づける制御が実行され(ステップS19)、かつ、ステップS20に進む。
つぎに、図1に示された制御例に対応するタイムチャートの一例を、図10に基づいて説明する。この図10は、パワーオフ状態でマニュアル変速制御(ダウンシフト)の実行条件が成立した場合のタイムチャート例である。また、この図10においては、回転部材の回転速度と等価のパラメータである回転数が示されている。なお、第1切り替えクラッチC1および第2切り替えクラッチC2として、湿式のクラッチが用いられているものとして説明する。まず、図1に示されたステップS4で否定的に判断されて、ステップS5ないしステップS8の処理を実行するルーチンのタイムチャート例を説明する。このタイムチャートにおいては、時刻t1でマニュアルダウンシフト条件が成立するものとする。この時刻t2以前においては、第3クラッチ37のスリーブ38のインナーギヤと、アウターギヤ39とが噛合され、かつ、第1切り替えクラッチC1のトルク容量が高トルク容量(完全係合)に制御されている。また、第2切り替えクラッチC2のトルク容量が最低容量(完全解放)に制御され、第2クラッチ33のスリーブ34が中立位置に停止されている。
このように、パワーオフ状態で車両Veが惰力走行し、その車両Veの運動エネルギが、第2変速機出力軸7に伝達されるとともに、第1切り替えクラッチC1が係合され、かつ、第3速が設定されている場合は、第2変速機出力軸7のトルクが、第3速用歯車対10および第1切り替えクラッチC1および入力軸47を経由してエンジン1に伝達され、エンジンブレーキ力が生じる。このように、惰力走行する車両Veの運動エネルギで第2変速機出力軸7が回転させられる場合において、第2変速機出力軸7のトルクが入力軸47を経由してエンジン1に伝達され、かつ、エンジンブレーキ力が生じる状態が、負(−)のトルクとして示されている。なお、エンジントルクが正(+)であるということは、エンジントルクが入力軸47に伝達されることを意味する。
ところで、時刻t1以前においては、エンジン回転数が略一定であり、第2クラッチ33のスリーブ34は中立位置にあり、かつ、第2切り替えクラッチC2が完全解放されているが、第2切り替えクラッチC2として、湿式クラッチが用いられている場合は、入力軸47のトルクが、潤滑油の粘性抵抗により第2切り替えクラッチC2を経由して第2クラッチ出力軸5に伝達される。このため、第2クラッチ出力軸5は、破線で示すようにエンジン回転数未満の回転数で回転する。
そして、時刻t1でマニュアルダウンシフト条件が成立すると、第2クラッチ33のスリーブ34が動作されて、第2速ドリブンギヤ17と第1変速機出力軸6との同期が開始される。また、時刻t1から第1切り替えクラッチC1のトルク容量が低下され、かつ、第2切り替えクラッチC2のトルク容量が上昇される。さらに、時刻t2以降は、第1切り替えクラッチC1のトルク容量は、実線で示すように所定値以上の値で略一定に制御されているとともに、第2切り替えクラッチC2のトルク容量は、時刻t1以降、略一定に制御される。上記のようにして、第2速ドリブンギヤ17と第1変速機出力軸6との同期が開始されると、第2クラッチ出力軸5の回転数が上昇を開始し、時刻t2と時刻t3との間で、第2クラッチ出力軸5の回転数の方がエンジン回転数よりも高くなる。これは、第3速用歯車対10の変速比よりも、第2速用歯車対9の変速比の方が大きいからである。
前記第1切り替えクラッチC1のトルク容量は、時刻t2以降も実線で示すように所定値以上に、かつ、略一定に制御されている。一方、時刻t5において、第2速ドリブンギヤ17と第1変速機出力軸6との同期が完了するとともに、第2クラッチ33のスリーブ34のインナーギヤをアウターギヤ35に噛合させる制御が開始され、時刻t6で、スリーブ34のインナーギヤとアウターギヤ35との噛合が完了する。なお、時刻t5で第2速ドリブンギヤ17と第1変速機出力軸6との同期が完了すると、第2クラッチ出力軸5の回転数は第2速に対応する回転数となる。
ところで、第2切り替えクラッチC2のトルク容量は、時刻t1から時刻t6までの間、略一定に制御されている。また、第1切り替えクラッチC1のトルク容量は、時刻t2以降から時刻t6までの間、所定値以上に、かつ、略一定に制御されている。そして、時刻t6で、スリーブ34のインナーギヤとアウターギヤ35との噛合が完了すると、第1切り替えクラッチC1のトルク容量を低下させる制御が開始され、かつ、第2切り替えクラッチC2のトルク容量を増加する制御が開始される。前述した時刻t1から時刻t6までの間は、第1切り替えクラッチC1のトルク容量が所定値以上に制御されており、第2変速機出力軸7と入力軸47との間における動力伝達が継続される。このため、時刻t1から時刻t6までの間、第2変速機出力軸7のトルクは、実線で示すように略一定となる。しかし、時刻t6で第1切り替えクラッチC1のトルク容量の低下が開始されるとともに、第2切り替えクラッチC2のトルク容量の増加が実線のように開始されると、第2変速機出力軸7から入力軸47に伝達されるトルクの容量が増加する。この例では、第2変速機出力軸7のトルクが負(−)の値として増加し始める。
そして、時刻t8において、第2切り替えクラッチC2のトルク容量が所定値以上に増加するとともに、エンジントルクを負(−)から正(+)に切り替える制御が実行される。このように、第2変速機出力軸7から入力軸47に伝達される負のトルクが増加し、かつ、エンジントルクを負から正に切り替える制御により、エンジン回転数が上昇を開始する。この時刻t8以降も、第1切り替えクラッチC1の容量の低下が継続されており、時刻t10で第1切り替えクラッチC1が完全解放される。なお、時刻t1以降も実線のように、第3クラッチ37のスリーブ38のインナーギヤと、アウターギヤ39とが係合されているが、時刻t10以降、第3クラッチ37のスリーブ38を中立位置に動作させる制御が開始される。上記の時刻t8から時刻t10までの間、第1クラッチ出力軸4の回転数は一点鎖線で示すように略一定となる。
そして、時刻t10で第1切り替えクラッチC1が完全に解放された後も、第1切り替えクラッチC1に付着する潤滑油の粘性抵抗により、入力軸47のトルクが第1クラッチ出力軸4に伝達されて、第1クラッチ出力軸4の回転数が上昇する。この第1クラッチ出力軸4の回転数はエンジン回転数未満となる。ついで、第2切り替えクラッチC2の係合が完了し、かつ、エンジントルクを負の値に戻す制御が実行され、時刻t11以降、エンジン回転数は第2速に対応する値に制御されている。以上のように、マニュアルダウンシフト条件が成立した場合も、時刻t2から時刻t8までの間、第1切り替えクラッチC1のトルク容量が所定値以上に制御されるため、第1変速機出力軸6と入力軸47との間における動力伝達が継続される。したがって、パワーオフ状態で惰力走行中に、変速機3の変速段を、第3速から第2速にダウンシフトする過程で、エンジンブレーキ力が変化、具体的には低下することを抑制できる。
つぎに、パワーオフ状態で車両Veが惰力走行し、かつ、マニュアルダウンシフト条件が成立し、かつ、ステップS4で肯定的に判断され、かつ、ステップS9で否定的に判断されるルーチンに対応するタイムチャートの一例を図10に基づいて説明する。この場合は、時刻t1でマニュアルダウンシフト条件が成立すると、第1切り替えクラッチC1のトルク容量が低下され、かつ、時刻t3で第1切り替えクラッチC1が完全に解放される。このため、第1切り替えクラッチC1のトルク容量が所定値未満に低下した時点以降、第2変速機出力軸7から入力軸47伝達される負のトルクは、破線で示すように零ニュートン・メートルに近づき、時刻t3以降、第2変速機出力軸7から入力軸47に伝達されるトルクは、零ニュートン・メートルとなっている。つまり、第2変速機出力軸7と入力軸47との間における動力伝達が遮断される。また、時刻t3から時刻t4の間に、第3クラッチ37のスリーブ38が、破線で示すように中立位置に停止されている。
ついで、時刻t4以降、電子スロットルバルブなどの制御により、エンジントルクが破線で示すように負から正に切り替えられて、エンジン回転数が破線で示すように上昇するとともに、第2クラッチ33のスリーブ34のインナーギヤとアウターギヤ35との噛み合いが完了する時刻t6以降、第2切り替えクラッチC2のトルク容量が破線で示すように増加され、かつ、エンジントルクを低下させる制御が実行される。ここで、第2切り替えクラッチC2のトルク容量の増加勾配は、実線で示す第2切り替えクラッチC2のトルク容量の増加勾配よりも急勾配である。このような制御により、時刻t6以降は、エンジン回転数が第2速に対応する値に制御されている。なお、第1切り替えクラッチC1が完全解放された後も、前述と同様の原理により、二点差線で示すように第1クラッチ出力軸4の回転速度が上昇するとともに、時刻t6以降、第1クラッチ出力軸4の回転数が破線で示すエンジン回転数よりも低い回転数で略一定に推移する。
そして、時刻t6以降は、第2変速機出力軸7から入力軸47に伝達される負のトルクが増加し、時刻t7以降、電子スロットルバルブなどの制御によりエンジントルクが低下されると、第2変速機出力軸7から入力軸47に伝達される負のトルクにより、エンジントルクが負に切り替わる。時刻t7以降は、第2の変速機出力軸7から入力軸47に伝達される負のトルクが、破線で示すように略一定となっているとともに、エンジントルクも破線で示すように、負の値で略一定となっている。その後、時刻t9で第2切り替えクラッチC2の完全係合が完了し、以後、第2切り替えクラッチC2のトルク容量が略一定に制御されている。このように、パワーオフ状態であり、かつ、マニュアルダウンシフト条件が成立して、ステップS9からステップS14を経由してステップS20に進むルーチンにおいては、時刻t3から時刻t6の間、第2変速機出力軸7と入力軸47との間における動力伝達が遮断される。このため、時刻t3から時刻t6の間に、エンジントルクが負から正に切り替わり、かつ、エンジントルクが正側で増加したとしても、その回転変動が第2変速機出力軸7に伝達されることを防止できる。したがって、パワーオフ状態でダウンシフトを実行した場合における車両Veの挙動変化、例えば、急激な加速を抑制できる。
つぎに、パワーオフ状態でマニュアルダウンシフト条件が成立し、かつ、ステップS4で肯定的に判断され、かつ、ステップS9で肯定的に判断された場合におけるタイムチャートの一例を、図11に基づいて説明する。この図11においては、時刻t21でマニュアルダウンシフト条件が成立するものとして説明する。時刻t21以前における各パラメータの経時変化および特性は、図10に示された各パラメータの経時変化および特性と同じである。図11のタイムチャートにおいては、時刻t21以降、第1切り替えクラッチC1のトルク容量が低下され、かつ、第2切り替えクラッチC2のトルク容量が増加されるとともに、第2クラッチ33のスリーブ34を動作させて、第2速ドリブンギヤ17の回転速度と、第1変速機出力軸6の回転速度とを近づける制御が開始される。その後、前述と同様の原理により、第2クラッチ出力軸5の回転数が上昇を開始するとともに、第2クラッチ出力軸5の回転数の方が、エンジン回転数よりも高くなる。
一方、時刻t21以降、第2切り替えクラッチC2のトルク容量は略一定に制御されているとともに、時刻t22以降、第1切り替えクラッチC1のトルク容量が所定値以上で略一定に制御され、時刻t24において、第2速ドリブンギヤ17と第1変速機出力軸6との同期が完了すると、第2クラッチ33のスリーブ34のインナーギヤとアウターギヤ35とを係合させる制御を開始する。
そして、時刻t25において、第2クラッチ33のスリーブ34のインナーギヤとアウターギヤ35との係合が完了すると、第1切り替えクラッチC1のトルク容量を低下させる制御が開始され、時刻t28で第1切り替えクラッチC1が完全に解放されている。また、時刻t26から、第3クラッチ37のスリーブ38を中立位置に移動させる制御が開始され、かつ、時刻t27から第2切り替えクラッチC2のトルク容量が増加されている。このような制御により、時刻t25以降は、第2変速機出力軸7から入力軸47に伝達されるトルクが零ニュートン・メートルに近づくように変化する。そして、第1切り替えクラッチC1のトルク容量が所定値未満まで低下する時刻t26から、第2切り替えクラッチC2のトルク容量が所定値以上に増加する時刻t28までの間は、第2変速機出力軸7から入力軸47に伝達されるトルクは、零ニュートン・メートルになる。すなわち、第2変速機出力軸7と入力軸47との間における動力伝達が遮断される。
そして、時刻t27から時刻t28の間は、電子スロットルバルブなどの制御によりエンジントルクを負から正に切り替える制御が実行される。このように、第2切り替えクラッチC2のトルク容量の増加制御と、エンジントルクの制御との協調により、時刻t27以降はエンジン回転数が上昇を開始する。なお、第1切り替えクラッチC1が解放されても、前述と同様の原理により、時刻t27以降も、第1クラッチ出力軸4の回転数が上昇する。ついで、時刻t28で第2切り替えクラッチC2のトルク容量が所定値以上に増加すると、第2変速機出力軸7から入力軸47に伝達されるトルクが、負側で増加するように推移する。なお、時刻t27から時刻t28に至る間に、エンジントルクが正側で所定値で略一定に制御され、時刻t28以降に、そのエンジントルクが正側で低下される。この時刻t27から時刻t28に至る間に、エンジン回転数が第2速に対応するエンジン回転数となり、時刻t29以降もエンジン回転数は略一定となっている。
また、時刻t29以降、エンジントルクが負側で増加するように制御され、その後、エンジントルクは負側の所定値で略一定に制御される。さらに、第2変速機出力軸7から入力軸47に伝達されるトルクは、時刻t29以降は、負側で略一定となり、時刻t30において、第2切り替えクラッチC2の完全係合が完了し、以後、第2切り替えクラッチC2のトルク容量が略一定に制御される。なお、図11の時刻t27から時刻t30の間における第2切り替えクラッチC2のトルク容量の増加勾配よりも、図10の時刻t6から時刻t9の間における第2切り替えクラッチC2のトルク容量の増加勾配の方が急となっている。
このように、図11のタイムチャートにおいても、時刻t26から時刻t28の間は、第2変速機出力軸7と入力軸47との間における動力伝達が遮断されており、その時刻t26から時刻t28の間にエンジントルクを負側から正側に切り替える制御が実行される。このため、時刻t26から時刻t28の間に、エンジントルクが負から正に切り替わり、かつ、エンジントルクが正側で増加したとしても、その回転変動が第2変速機出力軸7に伝達されることを防止できる。したがって、パワーオフ状態でダウンシフトする場合における車両Veの挙動変化、例えば、急激な加速を抑制できる。なお、第3速および第2速以外の変速段同士の間で、ダウンシフトを実行する場合に、図1の制御例を実行することも可能である。さらに、現在の変速段から、他の変速段にダウンシフトする場合に、ステップS4からステップS9に進むルーチンが選択されて、動力遮断をともなう変速制御を実行すると、動力伝達が遮断されている間に、エンジン出力を、変速後の変速比に対応させて制御することが可能であり、そのエンジン出力の変動が、第2変速機出力軸7の出力に影響を及ぼすことを抑制できる。したがって、ダウンシフトの開始から、ダウンシフトが終了するまでの時間を可及的に短くすることが可能である。
ここで、「ダウンシフトを開始してから、ダウンシフトが終了するまでの時間」の技術的概念を、図10のタイムチャートにより例示すると、「時刻t1から、エンジン出力を、変速後の変速比に対応した出力に制御される時刻t8までの時間」、「時刻t1から、第2変速機出力軸7のトルクが、ダウンシフトに対応するトルクとなり、かつ、第2切り替えクラッチC2の係合が完了するまでの時刻t11までの時間」などが挙げられる。また、「ダウンシフトを開始してから、ダウンシフトが終了するまでの時間」の技術的概念を、図11のタイムチャートにより例示すると、「時刻t21から、第2変速機出力軸7のトルクが、ダウンシフトに対応するトルクとなり、かつ、第2切り替えクラッチC2の係合が完了する時刻t30までの時間」が挙げられる。
また、図10においては、時刻t6で動力遮断が終了するのと同時に、エンジントルクを正側で零ニュートン・メートルに近づける制御が実行されるため、第2切り替えクラッチC2のトルク容量を急激に増加しても、エンジントルクの変化が第2変速機出力軸7に伝達されにくい。したがって、変速応答性が向上している。また、第1の切り替えクラッチC1の油圧を制御するバルブが設けられており、第1の切り替えクラッチC1の油圧を低下させる場合に、そのバルブのスプールがスティックするフェールが生じるとしても、エンジン回転数を上昇させる前に、第3クラッチ37が既に解放されているため、エンジントルクの変化が第2変速機出力軸7に伝達されることなく、変速を実行できる。さらに、図1のフローチャートのステップS9で肯定的に判断された場合および図11のタイムチャートにおいては、第2変速機出力軸7と入力軸47との間で動力伝達が遮断される前に、予め第2クラッチ33のスリーブ34のインナーギヤと、アウターギヤ35とが係合されている。このため、第2切り替えクラッチC2のトルク容量を所定値まで上昇高めた時点で動力遮断が解消される。したがって、作動油温が低く、第2クラッチ33の作動応答性が低下している場合でも、動力遮断が開始されてから終了するまで(時刻t26から時刻t28まで)の時間を可及的に短くすることが可能である。
なお、上記実施例では、主としてマニュアル変速制御を対象として説明しているが、図1の制御例は自動変速制御にも適用可能である。また、上記の実施例では、変速機3の変速比を大きくする変速であるダウンシフト制御が説明されているが、この請求項1の発明は、変速機3の変速比を小さくする変速であるアップシフト制御の場合にも適用可能である。また、図2に示すパワートレーンにおいては、第1切り替えクラッチC1および第2切り替えクラッチC2が入力軸47に対して並列に配置され、第2変速機出力軸7が車輪2に連結される構成となっているが、エンジントルクが、各歯車対を経由して第1切り替えクラッチC1および第2切り替えクラッチC2に伝達され、ついで、そのトルクが第2変速機出力軸7に伝達されるように構成されているパワートレーンにおいても、請求項1の発明を適用可能である。なお、原動機としてエンジン1に加えてモータ・ジェネレータを有する車両Veにも、この発明を適用可能である。
ここで、実施例で説明した構成と、この発明の構成との対応関係を説明すると、エンジン1および入力軸47が、この発明の第1の動力伝達部材に相当し、第2変速機出力軸7が、この発明の第2の動力伝達部材に相当し、第1クラッチ出力軸4が、この発明の第1の回転部材に相当し、第2クラッチ出力軸5が、この発明の第2の回転部材に相当し、第1変速機出力軸6が、この発明の第3の回転部材に相当し、第1速ドリブンギヤ15および第2速ドリブンギヤ17および第3速ドリブンギヤ19および第4速ドリブンギヤ21および第5速ドリブンギヤ23および第6速ドリブンギヤ25が、この発明の第3の回転部材に設けられた歯車に相当し、第1速ドライブギヤ14および第3速ドライブギヤ18および第5速ドライブギヤ22が、この発明の第1の回転部材に設けられた歯車に相当し、第2速ドライブギヤ16および第4速ドライブギヤ20および第6速ドライブギヤ24が、この発明の第2の回転部材に設けられた歯車に相当し、第1速用歯車対8ないし第6速用歯車対13が、この発明の複数の変速用歯車対に相当し、第1切り替えクラッチC1および第2切り替えクラッチC2が、この発明における2つの動力伝達経路切り替えクラッチに相当し、第1切り替えクラッチC1および第2切り替えクラッチC2のトルク容量および係合圧、第1切り替えクラッチC1および第2切り替えクラッチC2の係合・解放の切り替えなどが、この発明の「動力伝達経路切り替えクラッチの動力伝達状態」に相当し、第1クラッチ30ないし第4クラッチ41が、この発明の複数の変速用クラッチに相当し、車両Veが、この発明の駆動装置に相当し、エンジン1およびモータ・ジェネレータが、この発明の原動機に相当する。
また、この発明は、各動力伝達部材および各回転部材の回転軸線が、車両Veの前後方向または車両Veの幅方向のいずれの向きで配置されている車両Veにおいても実行可能である。また、この発明は、第2変速機出力軸7のトルクが、前輪または後輪のいずれに伝達される構成の二輪駆動車にも適用可能である。また、この発明は、第2変速機出力軸7のトルクが、動力分配装置(トランスファ)により、前輪および後輪に分配される構成の四輪駆動車にも適用可能である。またこの発明は、車両Ve以外の駆動装置、例えば、建設機械、工作機械などにも適用可能である。また、請求項1ないし請求項4の発明においては、各種のクラッチとして、摩擦式クラッチ、電磁式クラッチ、噛み合い式クラッチなどを用いることが可能である。電磁式クラッチの場合は、電磁力またはトルク容量が、この発明における動力伝達状態に相当する。また、請求項5の発明に用いられる各種のクラッチとしては、摩擦式クラッチ、例えば、湿式クラッチおよび乾式クラッチが挙げられる。
また、図1に示された機能的手段と、この発明の構成との対応関係を説明すると、ステップS4ないしステップS8の処理、およびステップS9ないしステップS20の処理が、この発明の切替手段に相当し、図1のステップS4で肯定的に判断されて、ステップS9ないしステップS20で実行される処理が、この発明の第1の変速制御に相当し、ステップS4で否定的に判断されで、ステップS5ないしステップS8で実行される処理が、この発明の第2の変速制御に相当し、エンジン回転数およびエンジントルクにより、この発明における「動力伝達部材の出力」が判断され、車両Veが登坂中であるか否かにより、この発明における加速要求の有無が判断され、パワーオフ状態であるか否かにより、この発明の加速要求の有無が判断され、ブレーキスイッチがオンされているか否か、または車両Veが降坂中であるか否かにより、この発明の制動要求の有無が判断され、図3ないし図9のサブルーチンで示された判断内容が、この発明における「駆動装置の運転状態」に相当し、図3のサブルーチンのステップS30で否定的に判断される場合が、この発明の「車両が平坦路を走行するとき」に相当する。
1…エンジン、 3…変速機、 4…第1クラッチ出力軸、 5…第2クラッチ出力軸、 6…第1変速機出力軸、 7…第2変速機出力軸、 8…第1速用歯車対、 9…第2速用歯車対、 10…第3速用歯車対、 11…第4速用歯車対、 12…第5速用歯車対、 13…第6速用歯車対、 14…第1速ドライブギヤ、 15…第1速ドリブンギヤ、 16…第2速ドライブギヤ、 17…第2速ドリブンギヤ、 18…第3速ドライブギヤ、 19…第3速ドリブンギヤ、 20…第4速ドライブギヤ、 21…第4速ドリブンギヤ、 22…第5速ドライブギヤ、 23…第5速ドリブンギヤ、 24…第6速ドライブギヤ、 25…第6速ドリブンギヤ、 30…第1クラッチ、 33…第2クラッチ、 37…第3クラッチ、 41…第4クラッチ、 47…入力軸、 48…油圧アクチュエータ、 C1…第1切り替えクラッチ、 C2…第2切り替えクラッチ、 Ve…車両。
Claims (5)
- 第1の動力伝達部材と第2の動力伝達部材との間の動力伝達経路に相対回転可能に配置された第1の回転部材ないし第3の回転部材と、前記第1の回転部材ないし第3の回転部材にそれぞれ設けられた歯車と、前記第3の回転部材に設けられた歯車に対して、前記第1の回転部材に設けられた歯車および前記第2の回転部材に設けられた歯車が噛合されて形成された複数の変速用歯車対と、前記第1の動力伝達部材または前記第2の動力伝達部材の一方に対して前記第1の回転部材および前記第2の回転部材を並列に接続し、かつ、その動力伝達状態を別々に制御可能な2つの動力伝達経路切り替えクラッチと、複数の変速用歯車対にそれぞれ対応して設けられ、かつ、動力伝達を断続する複数の変速用クラッチとを有し、
変速機の変速比を現在の変速比から他の変速比に変更する変速条件が成立した場合は、複数の変速用クラッチの断続を切り替えるとともに、2つの動力伝達経路切り替えクラッチの係合・解放を切り換えることにより、現在の変速比から他の変速比に変更する変速制御をおこなうツインクラッチ式変速機の制御装置において、
前記変速制御をおこなう場合に、2つの動力伝達経路切り替えクラッチの制御により動力伝達を遮断する第1の変速制御と、2つの動力伝達経路切り替えクラッチの制御により動力伝達を継続する第2の変速制御とを、前記変速機を有する駆動装置の運転状態に基づいて選択的に切り替える切替手段を備えていることを特徴とするツインクラッチ式変速機の制御装置。 - 前記切替手段により選択される第1の変速制御には、現在の変速比に対応する動力伝達経路切り替えクラッチのトルク容量を所定値以下まで低下させて動力伝達を遮断した後、現在の変速比を設定している変速用クラッチを解放させるとともに、前記原動機の出力を前記他の変速比に対応させる制御を実行し、さらに、他の変速比に対応する動力伝達経路切り替えクラッチの係合を完了させる手段が含まれており、
前記切替手段により選択される第2の変速制御には、現在の変速比に対応する動力伝達経路切り替えクラッチのトルク容量が所定値を越える値に制御されている間に、他の変速比に対応する動力伝達用切り替えクラッチの係合を完了させ、ついで、他の変速比を設定する変速用クラッチのトルク容量を高めた後、現在の変速比に対応する動力伝達経路切り替えクラッチのトルク容量を所定値以下に低下させ、さらに、前記第1の回転部材および前記第2の回転部材を並列に接続した一方の動力伝達部材の出力を前記他の変速比に対応させる制御を実行し、かつ、現在の変速比を設定している変速用クラッチのトルク容量を低下させる手段が含まれていることを特徴とする請求項1に記載のツインクラッチ式変速機の制御装置。 - 前記駆動装置が車両であり、前記駆動装置の運転状態には、前記車両が走行する道路の状況、または前記車両における加速要求の有無、または前記車両における制動要求の有無のうち、少なくとも1つの条件が含まれることを特徴とする請求項1または2に記載のツインクラッチ式変速機の制御装置。
- 前記一方の動力伝達部材に接続される駆動力源が設けられており、
前記切替手段は、前記変速制御が前記変速機の変速比を大きくするダウンシフトの場合、および、前記車両が登坂路または降坂路を走行する場合に、前記第2の変速制御を選択し、前記車両が平坦路を走行する場合に、前記第1の変速制御を選択する手段を含むことを特徴とする請求項3に記載のツインクラッチ式変速機の制御装置。 - 前記2つの動力伝達経路切り替えクラッチおよび複数の変速用クラッチのトルク容量が、油圧アクチュエータにより制御されるように構成されているとともに、
前記切替手段は、
前記油圧アクチュエータの作動油温が所定温度以下であり、かつ、前記第1の変速制御を実行する場合は、他の変速比に対応する変速用クラッチのトルク容量を高めるとともに、現在の変速比に対応する動力伝達用クラッチのトルク容量を所定値以下に低下させ、ついで、前記第1の回転部材および前記第2の回転部材を並列に接続した一方の動力伝達部材の出力を他の変速比に対応させて制御し、その後、他の変速比に対応する動力伝達経路切り替えクラッチのトルク容量を増加させる手段と、
前記油圧アクチュエータの作動油温が所定温度を越えており、かつ、前記第1の変速制御を実行する場合は、他の変速比に対応する変速用クラッチのトルク容量を高めるとともに、現在の変速比に対応する動力伝達用クラッチのトルク容量を所定値以下に低下させ、かつ、現在の変速比に対応する変速用クラッチのトルク容量を低下させ、その後、前記第1の回転部材および前記第2の回転部材を並列に接続した一方の動力伝達部材の出力を他の変速比に対応させて制御し、かつ、他の変速比に対応する動力伝達経路切り替えクラッチのトルク容量を増加させる手段と
を含むことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のツインクラッチ式変速機の制御装置。
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