本発明は、LED(Light Emitting Diode)の光を効率的に取り出すためのLED用反射体に関するものである。
LEDとは、半導体のpn接合に順バイアスを印可した際に注入された少数キャリアの再結合によって発光(自然発光)する素子である。発光材料は、化合物半導体であり、市販されているものは、主にIII−IV族のGaAlAs:赤色、AlInGaP:黄色、AlInGaP:橙色、InGaN:緑色、InGaN:青色などがある。また、白色LEDには、光の3原色であるR(赤)、G(緑)、B(青)の各色のチップを備えたマルチ・チップ型と青色あるいは紫外光を放射するLEDを励起用光源として用いて、蛍光体を励起するワン・チップ型が知られている。一般に、後者は、エポキシ樹脂のような透明樹脂にYAGのような黄色の蛍光体を分散した蛍光体含有樹脂でLEDをモールド形成し、LEDの紫外領域の発光を有効に黄色に変換し、元の青色との混色により白色光を得ている。これは、デバイスそのものが白色光を放射し、電流をコントロールするだけで、制御は比較的簡単で安価な白色光を得ることができるため、現在の白色LEDの主流となっている。
LEDは、消費電力が小さく、長寿命、省スペース、温度安定性の利点を有しており、現在、携帯電話やPDA、デジタルカメラ、ビデオカメラ、看板・標識照明、車載照明、信号灯、非常灯などへの応用が進んでいる。
また近年、青色LEDが開発されて光の3原色であるR(赤)、G(緑)、B(青)のLEDが出揃ったことにより、白色LEDが実現し、従来の白熱電球、蛍光灯等に置き換わる次世代の省エネルギー照明光源として、LEDの用途が急速に広まりつつある。
LEDは、素子一つ一つを見れば、指向性が強く、低駆動電流、省スペースという特徴を有する反面、その素子のサイズは数mm角程度と小さいため、例えば照明装置として所望の輝度を得るためには非常に多くの素子が必要となっている。そのために、装置として全体的にみると結局、放熱による素子の発光効率の低下、さらには消費電力が大きいなどの問題を有し、いかにLEDの数を少なくして高輝度化を得るかが課題となっている。
かかる課題に対して、光を損失なく有効利用するために、例えば、発光素子を収納するパッケージとして、そのキャビティー内の側面を金属層でメッキしたものが開示されている(例えば特許文献1参照。)。しかしながら、金属メッキ層は熱伝導率が高く、長時間利用すると温度上昇し、封止樹脂を劣化させたり、金属メッキ工程による高コスト化、金属層の酸化や硫化、さらには反射率の低下を招くメッキ層のクラックや材料特有の光吸収などの問題が生じていた。例えば、銀は反射率は高いが酸化されやすく、酸化に強い金、真鍮合金などは、波長650nm以下からブロード状に吸収があるため光損失が高く、また、クロム、ニッケル、アルミなどは可視光領域である400〜700nmを一様に反射するが、反射率が低くいという問題があった。
尚、下記非特許文献1,2には、後述する多層膜の反射の原理が記載されている。
特開2002−232017号公報
「波動光学」(岩波書店)(1971)第206〜236頁
「光学薄膜」(日刊工業社)(1989)第200〜209頁
本発明は、従来の金属メッキ層に替わり、成形性に優れたLED用反射体を提供することを目的とする。
すなわち本発明は、ポリエチレンテレフタレートを含んでなる層とシクロヘキサンジメタノール、またはスピログリコールとシクロヘキサンジカルボン酸とを共重合した共重合ポリエチレンテレフタレートを含んでなる層が厚み方向に交互に401層以上積層され、最小層厚み/最大層厚みの比で表される傾斜度合いが0.3〜0.7である傾斜構造を含むLED用反射体であって、波長250〜2600nmの範囲内において最大反射率が60%以上である反射面を有し、波長460nm〜640nmを通じて、反射面の反射率が50%以上であり、長手方向および幅方向の降伏点応力が70MPa以上、110MPa以下であり、長手方向および幅方向の破断点応力が95MPa以上、250MPa以下であり、少なくとも一方の表面の平均粗さRaが30nm以下であり、当該表面における突起の最大高さRmaxが2000nm以下であるLED用反射体である。
また本発明は、本発明のLED用反射体を含んで構成されたことを特徴とするLEDパッケージである。
また本発明は、本発明のLED用反射体を含んで構成されたことを特徴とするLED照明装置である。
また本発明は、本発明のLED用反射体を含んで構成されたことを特徴とするLED表示装置である。
本発明により、従来のLEDのパッケージなどに用いられる光反射層としての金属メッキ層に比べ温度上昇、酸化、硫化することなく、低コストで成形性に優れた高輝度のLEDを提供することができる。
以下に、本発明の詳細を説明する。
本発明のLED用反射体は、少なくとも2種類の熱可塑性樹脂が厚み方向に交互に積層した構造を有することが重要である。かかる積層構造とすることにより、反射率を制御することができる。例えば、3種類の熱可塑性樹脂A、B及びCからなる場合には、ランダムな層構成でもよいが、反射率を高くする観点から、A(BC)nA、A(BAC)nA(nは自然数)などの規則的な配列で積層されていることが好ましい。また、製造コスト、光学設計上の簡便さの観点からは、2種類の熱可塑性樹脂が、A(BA)nの様に交互に積層された構造を採用することが好ましい。また、最表層のみ異なる特性を付与する場合は、C・A(BA)n・CとなるC層を付与した積層構造とすることも好ましい。例えば、易滑性を付与する場合は、C層のみ粒子を添加することができる。
積層構造による反射率の制御は、干渉反射の原理を利用したものである。干渉反射とは、異なる媒質、すなわち屈折率が異なる薄い層を多数重ね、その境の面の反射光が互いに干渉し、強め合う現象である。例えば、2種の熱可塑性樹脂A,Bを交互に多数重ねた多層膜について、膜の表面に対し垂直に光を入射したとき、積層の界面では、次の条件を満たす波長λ(nm)の光が反射する。
2・(nA・dA+nB・dB)=nλ ・・・(1)式
ここで、
nA:熱可塑性樹脂Aの屈折率
nB:熱可塑性樹脂Bの屈折率
dA(nm):熱可塑性樹脂Aの層の厚み
dB(nm):熱可塑性樹脂Bの層の厚み
n:反射の次数を表す自然数
である。従って反射波長λは、熱可塑性樹脂A,Bの選択や層厚みの調整により、任意に設定することができる。
積層構造を構成する各層の層厚みは、各層を構成する熱可塑性樹脂の屈折率に応じて設定すると良い。例えば、後述するような例示における、積層構造を形成する熱可塑性樹脂の屈折率はおよそ1.4〜1.7の範囲にあり、この場合各層の厚みは、30〜650nmの範囲の値に設定することが好ましい。
また後述するような広帯域な反射体を得る積層構成としては、例えば、所望の波長領域にわたり、上記式に従い反射波長λに対応する層厚みdA、dB等を、それぞれ単調増加もしくは単調減少と連続的に変化する分布とするとよい。厚み方向の厚みの傾斜構造としては例えば、等差数列、等比数列の関係を採用することができる。
積層のパターンとしては例えば、反射帯域が狭い特性を示す厚み方向の樹脂Aの層厚みと樹脂Bの層厚みが一定で周期構造を作るものと、反射帯域が広い特性を示す樹脂Aの層厚みと樹脂Bの層厚みが一定の割合いで変化する傾斜構造を作るものとがある。
また積層数としては、反射率の向上の実効を得る観点から400層以上とすることが重要である。
積層構造を形成する熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ乳酸、ポリ(4−メチルペンテン−1)、環状ポリオレフィン、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ナイロン6、11、12、66などのポリアミド、ポリスチレン、ポリカーボーネート、ポリエステル、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルイミドなどを用いることができる。これらは、ホモポリマーでも共重合ポリマーであってもよい。
これらのうち透明性などの点で、環状ポリオレフィン、ポリ(4−メチルペンテン−1)、ポリカーボーネート、ポリエステル、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン等が好ましく、耐熱性、寸法安定性、コスト面からは特にポリエステルが好ましい。
ポリエステルは、芳香族ジカルボン酸または脂肪族ジカルボン酸とジオールとを主たる構成成分とする単量体からの重合により得られる。
芳香族ジカルボン酸としては例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4′−ジフェニルジカルボン酸、4,4′−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4′−ジフェニルスルホンジカルボン酸等を挙げることができる。脂肪族ジカルボン酸としては例えば、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸等を挙げることができる。中でも好ましくはテレフタル酸と2,6−ナフタレンジカルボン酸を挙げることができる。酸成分は1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、さらにヒドロキシ安息香酸等のオキシ酸等を一部共重合してもよい。
また、ジオール成分としては例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン等を挙げることができる。中でもエチレングリコールを好ましく採用できる。ジオール成分は1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
特にポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレートおよびその重合体、ポリエチレンナフタレートおよびその共重合体、ポリブチレンテレフタレートおよびその共重合体、ポリブチレンナフタレートおよびその共重合体、さらにはポリヘキサメチレンテレフタレートおよびその共重合体、ポリヘキサメチレンナフタレートおよびその共重合体等を挙げることができ、特にポリエチレンテレフタレートとその共重合体が好ましい。
また、少なくとも2種類の熱可塑性樹脂の組み合わせとしては、成形性及び高反射率を達成する観点から、ポリエチレンテレフタレートを含んでなる層とシクロヘキサンジメタノール、またはスピログリコールとシクロヘキサンジカルボン酸を共重合したポリエステルを含んでなる層とで構成される。その共重合量は、シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、シクロヘキサンジカルボン酸は、5 〜 30mol%が好ましく、効果的に樹脂の屈折率を下げる観点から、スピログリコールおよびシクロヘキサンジカルボン酸を共重合したポリエステルであることも最も好ましい。
また、積層構造を形成する熱可塑性樹脂の光線透過率としては、70%以上のものを採用することが好ましい。
本発明のLED用反射体は、色むらなどを解消する観点や多方向に光を均一に反射させたい用途に用いる場合は光拡散層を設けてなることが好ましい。光拡散層の具体的態様としては例えば、アクリル樹脂等をバインダーあるいはマトリックス樹脂として、ポリエステルフィルムの基板上に球状シリカ、架橋ポリスチレンビーズ、架橋ポリメタクリル酸メチルビーズ等を配置あるいは含有させたものを挙げることができる。平均粒径は、拡散性付与の観点から1μm以上であることが好ましい。拡散効率の観点から、より好ましくは5μm以上である。
本発明のLED用反射体は、最外層あるいは前記積層構造と光拡散層との間に、他の部材あるいはエポキシ、シリコーン等の封止樹脂との接着性を高めるためのプライマー層を設けてなることが好ましい。
プライマー層は、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂の少なくとも1種から選ばれた樹脂を含んでなるものが好ましい。またこれらの樹脂は、それぞれ単独で用いてもよく、複数種類を組み合わせて用いてもよい。
プライマー層の構成成分として用いるウレタン樹脂としては、アニオン性基を有する、水溶性あるいは水分散性のものであればよく、その主要構成成分としては、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物を共重合して得られるものである。
ウレタン樹脂に用いるポリオール化合物としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレン・プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、テトラメチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリカプロラクトン、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリテトラメチレンアジペート、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン、アクリル系ポリオールなどを挙げることができる。
また、ウレタン樹脂に用いるポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンの付加物、ヘキサメチレンジイソシアネートとトリメチロールエタンの付加物などを挙げることができる。
ウレタン樹脂中のアニオン性基は水への親和性の向上に資するものであり、例えば、スルホン酸基、カルボン酸基、硫酸半エステル基およびこれらのアンモニウム塩、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩を挙げることができる。特に好ましくは、スルホン酸塩基である。
アニオン性基のウレタン樹脂に対する含有量としては、0.5〜15重量%が好ましい。
ポリウレタン樹脂に対するアニオン性基の含有量としては、0.05〜8重量%が好ましい。0.05重量%以上とすることで、ウレタン樹脂の水分散性向上の実効を得ることができ、8重量%以下とすることで、樹脂の耐水性の劣化や、樹脂層同士が固着するブロッキング現象の発生を抑えることができる。
ウレタン樹脂は、上記成分の他に、鎖長延長剤あるいは架橋剤などを含んでなることも好ましい。鎖延長剤あるいは架橋剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、エチレンジアミン、ジエチレントリアミンなどを用いることができる。
ウレタン樹脂の分子量としては、数平均分子量で300〜20000が好ましい。
プライマー層の構成成分として用いるアクリル樹脂に関し、当該アクリル樹脂を構成するモノマー成分としては、例えば、
アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート(アルキル基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、ラウリル基、ステアリル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、フェニルエチル基などが挙げられる。)、
2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートなどのヒドロキシ基含有モノマー、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N,N−ジメチロールアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−メトキシメチルメタクリルアミド、N−フェニルアクリルアミドなどのアミド基含有モノマー、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレートなどのアミノ基含有モノマー、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどのエポキシ基含有モノマー、アクリル酸、メタクリル酸またはそれらの塩(リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩などが挙げられる)などのカルボキシル基またはその塩を含有するモノマーなどを用いることができる。これらは1種を単独で重合して用いてもよいし、2種以上を共重合して用いてもよい。
特に、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、アクリル酸から選ばれる重合成分を含むものが好ましい。
また、アクリル樹脂のプライマー層としての効果を阻害しない範囲で、他種のモノマーを共重合してもよい。共重合しうる他種のモノマーとしては、例えば、アリルグリシジルエーテルなどのエポキシ基含有モノマー、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸およびそれらの塩などのスルホン酸基またはその塩を含有するモノマー、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸およびそれらの塩などのカルボキシル基またはその塩を含有するモノマー、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物を含有するモノマー、ビニルイソシアネート、アリルイソシアネート、スチレン、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルトリスアルコキシシラン、アルキルマレイン酸モノエステル、アルキルフマール酸モノエステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アルキルイタコン酸モノエステル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、塩化ビニルなどを用いることができる。
尚、スルホン酸基やカルボキシル基との塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩などを挙げることができる。
また、アクリル樹脂は、ポリエステル、ウレタン、エポキシなどで変性した、ブロック共重合体、グラフト共重合体などの変性アクリル共重合体であってもよい。
ポリエステル樹脂は、プライマー層を構成する樹脂の中でも接着性の点で好ましい。
該ポリエステル樹脂を構成する酸成分としては、芳香族、脂肪族、脂環族のジカルボン酸や3価以上の多価カルボン酸を使用することができる。
芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、フタル酸、2,5−ジメチルテレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,2−ビスフェノキシエタン−p,p’−ジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸などを用いることができる。プライマー層の強度や耐熱性の点から、これらの芳香族ジカルボン酸が、全ジカルボン酸成分の30mol%以上を占めていることが好ましく、より好ましくは35mol%以上、さらに好ましくは40mol%以上である。
また、脂肪族および脂環族のジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸など、およびそれらのエステル形成性誘導体を用いることができる。
プライマー層の構成成分として用いられるポリエステル樹脂のグリコール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、2,4−ジメチル−2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、4,4’−チオジフェノール、ビスフェノールA、4,4’−メチレンジフェノール、4,4’−(2−ノルボルニリデン)ジフェノール、4,4’−ジヒドロキシビフェノール、o−,m−,およびp−ジヒドロキシベンゼン、4,4’−イソプロピリデンフェノール、4,4’−イソプロピリデンビンジオール、シクロペンタン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオールなどを用いることができる。
プライマー層の構成成分として用いられるポリエステル樹脂は、水系液にして塗液として用いるのが好ましく、この場合には、ポリエステル樹脂の水溶化あるいは水分散化を容易にするため、カルボン酸基、カルボン酸塩基、スルホン酸基あるいはスルホン酸塩基を含む化合物を共重合することが好ましい。
カルボン酸基あるいはカルボン酸塩基を含む化合物としては、例えば、トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸、4−メチルシクロヘキセン−1,2,3−トリカルボン酸、トリメシン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−ペンタンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフルフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフルフリル)−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸、エチレングリコールビストリメリテート、2,2’,3,3’−ジフェニルテトラカルボン酸、チオフェン−2,3,4,5−テトラカルボン酸、エチレンテトラカルボン酸など、あるいはこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩等を挙げることができる。
また、スルホン酸基あるいはスルホン酸塩基を含む化合物としては、例えば、スルホテレフタル酸、5−スルホイソフタル酸、4−スルホイソフタル酸、4−スルホナフタレン−2,7−ジカルボン酸、スルホ−p−キシリレングリコール、2−スルホ−1,4−ビス(ヒドロキシエトキシ)ベンゼンなど、あるいはこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩を用いることができる。
プライマー層に用いられる好ましいポリエステル樹脂としては、酸成分としてテレフタル酸、イソフタル酸、セバシン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、グリコール成分としてエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコールから選ばれる共重合体などが挙げられる。プライマー層に耐水性が必要とされる場合は、5−ナトリウムスルホイソフタル酸の代わりに、トリメリット酸をその共重合成分とした共重合体なども好適に用いることができる。
また、プライマー層に用いるポリエステル樹脂は、アクリル、ウレタン、エポキシなどで変性した、ブロック共重合体、グラフト共重合体などの変性ポリエステル共重合体であってもよい。
本発明にかかるプライマー層に用いられるポリエステル樹脂の固有粘度は、接着性の点で0.3dl/g以上であることが好ましく、より好ましくは0.35dl/g以上、さらに好ましくは0.4dl/g以上である。
また、ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、樹脂の安定性や水分散性を得る上で130℃以下とすることが好ましく、より好ましくは80℃以下である。一方、耐熱接着性を保ち、樹脂層同士が固着するブロッキング現象の発生を防ぐ上で、0℃以上とすることが好ましい。
プライマー層の構成としては、単一層であっても複数層からなるものであってもよい。
プライマー層の厚みとしては、0.001〜1μmが好ましく、好ましくは0.005〜0.3μm、更に好ましくは0.01〜0.1μm、更に好ましくは0.02〜0.07μmである。0.001μm以上とすることで接着性向上の実効を得ることができ、1μm以下とすることで耐熱性の低下を抑えることができる。
本発明のLED用反射体は、LEDから発光する紫外線あるいは外光の紫外線による劣化を防ぐ観点から、紫外線吸収剤を含有していることが好ましい。紫外線吸収剤は耐候剤や蛍光増白剤などと呼ばれることもある。紫外線吸収剤は、有機系と無機系とに大別されるが、後者に相当するTiO2やZnOの微粉末は、ナノレベルの平均粒径を有するもの以外は、主に紫外線散乱剤に分別される。
有機系紫外線吸収剤は化合物構造の分類からは、パラアミノ安息香酸系、桂皮酸系、サリチル酸系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系などを挙げることができる。その具体例としては、例えば、(PABA系)パラアミノ安息香酸、パラアミノ安息香酸グリシル、パラジメチルアミノ安息香酸イソアミル、2-エチルヘキシル-4-ジメチルアミノ安息香酸、パラアミノ安息香酸エチル (桂皮酸系)パラメトキシ桂皮酸2-エトキシエチル、パラメトキシ桂皮酸エチルヘキシル、桂皮酸ジイソプロピルエチル、桂皮酸ジイソプロピルメチル、ジパラメトキシ桂皮酸オクタン酸グリセリル、メトキシ桂皮酸イソプロピル、メトキシ桂皮酸パライソプロピル-D,L-桂皮酸イソプロピルエステル混合物、パラメトキシ桂皮酸カリウム (サルチル酸系)サリチル酸ジプロピレングリコールサリチル酸、サリチル酸2-エチルヘキシル、サリチル酸3,3,5-トリメチル-シクロヘキシルなどを挙げることができる。
本発明においては、特に紫外線を吸収し、熱エネルギーに変換する塗料用の代表的UV吸収剤として知られるベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系及びトリアジン系であることが好ましい。 ベンゾフェノン系としては、例えば、4-メトキシ-2-ヒドロキシベンゾフェノン、4-メトキシ-2-ヒドロキシベンゾフェノン-5-スルホン酸、4-メトキシ-2-ヒドロキシベンゾフェノン-5-スルホン酸(トリハイドレイト)、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4'-ジメトキシ2,2'-ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4'-ジメトキシ-2,2'-ジヒドロキシ-5,5'-ジスルホン酸ベンゾフェノンジナトリウム、2,2'-4,4'-テトラヒドロキシベンゾフェノン、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸ナトリウム、オクタベンゾン、 2-ヒドロキシ-4-m-オクトキシ-ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン などが挙げられる。また、ベンゾトリアゾール系としては、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-p-クレゾール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール、2-[5-クロロ(2H)-ベンゾトリアゾール-2-イル]-4-メチル-6-(tert-ブチル)フェノール、2,4-ジ-tert-ブチル-6-(5-クロロベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-tert-ペンチルフェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール、2,2'-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール]、2(2'-ヒドロキシ-3'-tert-ブチル-5'-メチルフェニル)5クロロベンゾトリアゾール 、 2(2'-ヒドロキシ-3'5-ジ-tert-ブチル-フェニル)5クロロベンゾトリアゾール 、2(2'-ヒドロキシ-5'-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-オクチルフェニル)-ベンゾトリアゾ−ルなどが挙げられる。さらに、トリアジン系としては、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(ヘキシル)オキシ]-フェノール、2-[4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-5-(オクチルオキシ)フェノ−ル、1,6-ヘキサンジアミン,N,N'-ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)、ポリマーズモルホリン-2,4,6-トリクロロ-1,3,5-トリアジンなどが挙げられるが、これらに限定されない。上記した成分は、2種以上を混合して使用することもできる。
本発明のLED用反射体において、紫外線吸収剤は、反射率を制御する積層構造の樹脂中に含まれていてもよいし、光拡散層やプライマー層の中に含まれていてもよい。
本発明のLED用反射体に紫外線吸収剤を含有させる手段としては例えば、樹脂中に紫外線吸収剤を分散させても良いし、フイルム表面にコーターを用いて高濃度で付着させるなどの方法を採用しても良い。好ましくはポリエステル中に分散させて使用される。
また、本発明のLED用反射体は、酸化防止剤、耐熱安定剤、易滑剤、顔料、染料、耐電防止剤、充填剤、核剤などの添加剤を、その反射特性を低下させない程度に含有していることも好ましい。特に易滑剤は、すべり性を付与する点で好ましい。易滑剤は、有機系と無機系とに大別でき、無機系としては、酸化珪素、炭酸カルシウム、酸化チタン、アルミナ、ジルコニア、珪酸アルミニウム、マイカ、クレー、タルク、硫酸バリウム等を、有機系としては、ポリイミド系樹脂、オレフィンもしくは変性オレフィン系樹脂、架橋もしくは無架橋ポリスチレン系樹脂、架橋もしくは無架橋アクリル系樹脂、フッ素系樹脂、シリコン系樹脂等の樹脂、またステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、フマール酸アミド等の各種アミド化合物を挙げることができる。
また易滑剤の形状としては、凝集粒子、真球状粒子、数珠状粒子、コンペイト状粒子、鱗片状粒子などの不活性粒子を採用することができる。
不活性粒子等の易滑剤は、少なくとも最外層に含まれていることが好ましい。
また、不活性粒子の粒子径としては、0.6〜5μmの粒径範囲に属する粒子と0.1〜0.5μmの粒径範囲に属する粒子とが、本発明のLED用反射体の最外層において混在していることが好ましい。
また、本発明のLED用反射体の最外層における、0.6〜5μmの粒径範囲に属する粒子の算術平均粒子径をr1(μm)としたとき、最外層の厚みt(μm)との比t/r1が5以下であることが好ましく、より好ましくは、2以下である。5以下とすることによって、反射体の最外層内において粒子による表面突起を効率良く発現させることが出来、ひいては易滑性を付与できる。ただし、易滑剤の含有量としては、光の拡散を抑えるよう、2重量%以下とすることが好ましく、より好ましくは0.3重量%以下、さらに好ましくは0.1重量%以下である。
本発明のLED用反射体の厚みとしては、成形加工性付与の点、及び光学波長レベルの各層厚みと総積層数の兼ね合いから、5μm〜200μmが好ましい。より好ましくは、30μm〜150μmの範囲が好ましい。
本発明のLED用反射体は、LEDの高輝度化を達成する観点から、波長250nm〜2600nmにおける最大反射率が60%以上である反射面を有することが重要である。LEDの発光波長は、可視光に存在することから、より好ましくは、350nm〜1200nmにおける最大反射率が60%以上である。更に好ましくは、使用するLEDの発光波長±20nmの波長範囲内における最大反射率が60%以上である。LEDから得られる輝度は、LEDの発光波長分布と反射体の反射率の分光分布との関係に依存するからである。ここで発光波長とは、LEDから発せられる光強度の波長分布において、発色に関わる極大値を有する波長のことである。白色LEDのように極大値が2つ以上存在する場合は、極大値を示す波長範囲毎に反射体の反射率が60%以上であることが好ましいが、白色LEDの550nm近傍の発光波長については、発光分布が広いため発光波長±50nmの波長範囲内における最大反射率が60%以上であることが好ましい。
また、異なる発光波長を有するLEDが複数個用いられる場合は、少なくとも1つの発光波長±20nmの波長範囲内における最大反射率が60%以上である反射面を有することが好ましい。
但し、本発明の反射体の反射波長は干渉反射の原理から、光の入射角度に応じて変化する。すなわち、光の入射角度が深くなれば、反射波長は低波長側へシフトする。そのため、反射帯域が狭い設計となっている本発明の反射体の場合は、例えば、入射角度10°での反射波長がLED素子の発光波長の±20nmの波長範囲内に最大反射率を有していても、実際に利用されるLED素子からの光の入射角度が45°であれば、本発明の反射体を透過してしまう可能性がある。本発明の効果を発揮するためには、LEDの放射光の入射角において、発光波長±20nmの波長範囲内における最大反射率が60%以上である反射面を有するように設計されていることが好ましい。
発光波長について、例えば、青色LEDにおいて、日亜化学製NSPB510S−WTの発光波長は470nmであり、一方、同じく、日亜化学製NSPF50S−WTの発光波長は468nmである。緑色LEDにおいて、豊田合成製E1L53−3Gの発光波長は538nm、日亜化学製NSPGF50S−GTの発光波長は529nmである。黄色LEDにおいて、ローム製SLI570−YTの発光波長は、591nmである。赤色LEDにおいて、ローム製SLI−570UTの発光波長は、630nmである。さらに、白色LEDにおいて、日亜化学製NSPWF50BS◆a0Sの発光波長は、466nmと552nmであり、NSPWF50BS(b2S)の発光波長は、462nmと552nmである。また、豊田合成製E1L53−AW−◆a0の発光波長は474nmと570nmである。特に、これらに限定されることはない。
反射体の反射波長とLEDの発光波長を所定の範囲内に合わせるには、(1)式で示したように反射体を構成する樹脂の種類(屈折率)や層厚み、さらには、光の入射角を調整することで達成される。反射体の製造プロセス制御因子として調整し易い観点から、厚みを変化させることが好ましい。
ここでいう反射率とは、分光光度計による測定において、標準板として酸化アルミニウムを用いたときの各波長毎の反射率を100%となるように校正した相対反射率のことである。また最大反射率とは、上記した所定の波長範囲内における反射率の最大値を言う。反射面の前記波長範囲内における最大反射率が60%未満であると、光損失が大きいためLED用反射体として不適当である。反射面の前記波長範囲内における最大反射率としては、好ましくは75%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは95%以上、さらに好ましくは100%以上である。
また、本発明の反射体をLEDの色補正を行うために利用する場合は、不必要な発光波長の光を減光させる観点から、本発明の反射体の反射率が60%未満である発光波長があってもよい。目的に応じて、反射率は種々調整することが好ましい。
本発明のLED用反射体は、使用するLEDの発光波長の周辺部の波長帯域のみに高反射率特性を示す狭帯域な反射体であってもよいし、また、複数の発光波長を包含する波長帯域にわたり連続的に高反射率特性を示す広帯域(広い反射帯域)な反射体であってもよい。
また、LEDの色の制限を受けず、また反射体への光の入射角の影響を受けにくいといった汎用性の点からは、本発明のLED用反射体は、波長460〜640nmを通じて、反射面の反射率が50%以上であることが好ましい。当該波長範囲を通じての反射率として好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上である。その帯域を通じて反射率50%以上を満たす反射帯域としては、好ましくは400〜700nm、より好ましくは350〜850nmである。広い反射帯域を実現するには、反射体の層厚み分布を傾斜構造とすることである。最小層厚み/最大層厚みの比で表される傾斜度合いは、0.3〜0.7である。熱可塑性樹脂Aと熱可塑性樹脂Bとを交互に30層以上積層する場合の両樹脂間の面内屈折率差は、0.1以上であることが好ましい。面内屈折率は、熱可塑性樹脂A,B、それぞれの単独樹脂で本発明の反射体を得る製造方法と同様にして熱可塑性樹脂シートを得、当該シートをJIS K7142(1996)A法に従って測定することで求めることが出来る。なお、面内屈折率とは、フィルム製造方向である長手方向と巾方向の屈折率の平均値のことである。
本発明のLED用反射体は、光を効率的に利用する観点から、反射面の、45°の正反射における分光立体角反射率が200以上であることが好ましい。ここで分光立体角反射率は、JIS Z 8722(2000)で定義される。すなわち、測定対象の試料と標準板としての硫酸バリウム板に対して、同一条件で光を照射したときの、同一方向の同一立体角内に反射する両者の分光反射光線束の比で表される。また、45°の正反射における反射とは、反射面の法線方向を軸にして、入射角45°の光に対する反射角45°の光の反射のことである。当該分光立体角反射率を200以上とすることで、反射体における拡散反射、吸収、透過などの損失を防ぎ、効率良くLEDからの反射光を得ることができる。すなわちLEDの高輝度化に資する。当該分光立体角反射率として、より好ましくは400以上、さらに好ましくは600以上である。
尚、LED用反射体が前述の様に光拡散層を設けてなる場合には、分光立体角反射率の測定においては光拡散層を除いて評価するものとする。
本発明のLED用反射体は、長手方向の厚みの標準偏差が0.5以下であることが好ましい。厚みの標準偏差を0.5以下とすることで、色ムラや輝度ムラが生じるのを防ぐことができる。厚みの標準偏差としてより好ましくは0.2以下である。当該均一性は、製膜条件を適宜調整することにより達成される。例えば、ドラフト比(=(ダイのリップ間隙)/(キャストドラム上のフイルム厚み))を1〜20とし、縦延伸の倍率を2.8倍以上、延伸温度を100°以下とし、横延伸の倍率を3.4倍以上とし、熱処理温度を200℃以上とするとよい。より好ましくは、230℃以上である。
本発明のLED用反射体は、様々なLED 素子を含む成形体と一体化し易くなる観点から、長手方向および幅方向の降伏点応力が110MPa以下であり、長手方向および幅方向の破断点応力が250MPa以下であることが必要である。当該範囲とすることで、例えば、フィルムインサート(インモールド) 成形、真空および/または圧空成形性が良いため、LED 用反射体としての機能を保持したまま種々の成形体と一体化することが可能である。ここで長手方向とは、製膜工程におけるフィルムの走行方向であり、また幅方向とは、長手方向の垂直方向である。降伏点応力を70MPa以上、110MPa以下、破断点応力を250MPa以下とすることにより、金型形状への追従性が良く、成形時にしわなどが発生するのを防ぐことができる。より好ましくは、降伏点応力が90MPa以下、破断点応力が95MPa以上、200MPa以下である。破断点応力については、150MPa以下が最も好ましい。また、ヤング率は、4.5GPa以下が好ましく、より好ましくは4GPa以下である。これらの機械的特性は例えば、ポリエチレンテレフタレートと組み合わせて積層する熱可塑性樹脂側の降伏点応力、破断点応力がポリエチレンテレフタレートよりも小さいものを採用し、延伸倍率・延伸温度・熱処理温度などの製膜条件を適宜調整することによって達成することができる。例えば、延伸倍率を長手方向は5倍以下より好ましくは3.6倍以下、幅方向は5倍以下、より好ましくは4.4倍以下とし、共重合成分の軟化点以上、ポリエチレンテレフタレートの融点以下である熱処理温度200℃〜240℃間で行うとよい。共重合成分は、成形性の観点から非晶性であることが好ましい。また、ホモポリエチレンテレフタレート/共重合ポリエチレンテレフタレートの総量の比を2以下にすることが好ましく、より好ましくは1以下である。さらに好ましくは、0.9以下である。総量の比は、ホモポリエチレンテレフタレートを押し出す押出機Aと共重合ポリエチレンテレフタレートを押し出す押出機Bの吐出量の比を調整することで決定される。
本発明のLED用反射体は、フイルムとしての巻き特性、および、その加工プレス成形時の金型との適度な滑り性、正反射性を特に必要とするミラー的な役割を担う用途では、フィルム形状を有し、その少なくとも一方の表面の平均粗さRaが30nm以下であり、当該表面における突起の最大高さRmaxが2000nm以下である。より好ましくは、平均粗さRaが20nm以下、最大高さRmaxが1500nm以下である。ここで、Raは、粗さ曲線からその中心の方向に測定長さL部分をとり、この抜き取りの中心線をX軸、縦軸をYとし、粗さ曲線をY=f(x)で表したとき、下記(2)式で与えられる中心線平均粗さである。
Ra=1/L∫L 0|f(x)|dx・・・(2)式
本発明のLED用反射体は、LEDの製造工程において封止樹脂として用いられるエポキシ系、シリコーン系などの樹脂がモールド成形される時に、接触による熱を受けたり、成形後にもパッケージとしての使用においてLEDの放射熱を受けるため、成形不良、熱による反射性能の低下・外観の劣化等を防ぐ観点から、150℃、30分間の熱処理による最大反射率の変化率が20%以下であることが好ましく、より好ましくは15%以下である。また、150℃、30分間の熱処理による長手方向及び幅方向の熱収縮率が3%以下であることが好ましく、より好ましくは2%以下である。これらの耐熱特性を得るには、LED用反射体とする積層フィルムの製膜工程において、弛緩熱処理と徐冷とを組み合わせて施すとよい。例えば、処理温度230℃以上、弛緩率2〜10%で弛緩熱処理を施し、次いで、160℃〜100℃の温度で徐冷するとよい。
次に、本発明のLED用反射体を製造する方法について、積層構造を形成する樹脂としてポリエチレンテレフタレート等のポリエステルを熱可塑性樹脂として用いた例を中心に説明する。
ポリエステルは、芳香族ジカルボン酸または脂肪族ジカルボン酸とジオールとを主たる構成成分とする単量体からの重合により得られる。
光拡散層の形成方法としては、球状シリカなどをバインダー樹脂と混合し、プライマー層上に直接、コーターなどを用いて塗膜してもよいし、予めアクリル、ポリカーボーネートなどの透明樹脂基板上に球状シリカを高濃度で塗膜した拡散板をプライマー層の上に貼り合わせてもよい。
プライマー層を形成する好ましい樹脂の一つであるアニオン性基を有するウレタン樹脂を製造する方法としては、例えば、ポリオール、ポリイソシアネート、鎖延長剤などとアニオン性基を有する化合物とを混合して、ウレタン樹脂の重合とアニオン性基の付加とを同一工程にて行うる方法や、予め生成したウレタン樹脂のイソシアネート基にアニオン性基を有する化合物を反応させて固定する方法や、予め生成したウレタン樹脂の活性水素を有する基に特定の化合物を反応させる方法などを挙げることができる。
また、プライマー層を形成する好ましい樹脂の他の一つであるアクリル樹脂は、水に溶解、乳化、あるいは懸濁し、水系アクリル樹脂液として用いることが、環境保全や塗布時の防爆性の点で好ましい。水系アクリル樹脂は、親水性基を有するモノマー(アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、ビニルスルホン酸およびその塩など)との共重合や、反応性乳化剤や界面活性剤を用いた乳化重合、懸濁重合、ソープフリー重合などの方法によって作製することができる。
また、プライマー層を形成する好ましい樹脂の他の一つであるポリエステル樹脂を製造する方法としては例えば、ジカルボン酸成分とグリコール成分とを直接エステル化反応させてもよいし、第一段階としてエステル交換反応させた後に第二段階として重縮合反応させてもよい。この際の反応触媒としては例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、マンガン、コバルト、亜鉛、アンチモン、ゲルマニウム、チタン等の化合物を用いることができる。
また、カルボン酸を、末端および/または側鎖に多く有するポリエステル樹脂が好ましく用いられるが、これらを得る方法としては、たとえば特開昭54−46294号公報、特開昭60−209073号公報、特開昭62−240318号公報、特開昭53−26828号公報、特開昭53−26829号公報、特開昭53−98336号公報、特開昭56−116718号公報、特開昭61−124684号公報、特開昭62−240318号公報などに記載の3価以上の多価カルボン酸を共重合する方法で製造することができる。
積層構成を形成する方法としては、例えば、(AB)n・Aの積層フィルムの場合、A層を形成する樹脂A用の押出機とB層を形成する樹脂B用の押出機との2台を用いてそれぞれのポリマーを供給し、これらのポリマーを、マルチマニホールドダイやフィードブロック、さらにスクエアミキサーやスタティックミキサーを用いて積層させ、T型口金等を用いてシート状に溶融押出し、その後、キャスティングドラム上で冷却固化して未延伸フィルムとして得ることができる。スクエアミキサーとは、ポリマー流路を断面積が四角状の流路に2分割し、さらに、分岐されたポリマーを、再度、上下に積層されるように合わさる合流部を備えた公知の筒体である。この工程を繰り返すことにより、何層もの積層体を得ることができる。例えば、2種の樹脂でA/B/A3層の積層体が、1度の分岐・合流を行うと5層の積層体になる。このような場合、積層数は、(初期の層数−1)×2のn乗+1で表現できる。但し、nは、1度の分岐・合流をn回、繰り返すことを意味する。例えば、201層膜を2回(2段とも言う)、スクエアミキサーに通過させると、801層の積層体となる。分岐・合流は、層の破壊に繋がるため、出来るだけ少ない方が良い。好ましくは2回以下である。より好ましくは、1回以下である。また、スクエアミキサーの分配比は、通常、1:1の等しい断面積をもつ流路で等分配で分岐されるため、同じ積層体が周期的に形成される。初期の積層体の構造が傾斜構造であるならば、分配比を非等分配とすることで、スクエアミキサー通過後の積層体も連続した傾斜構造を維持することができる。初期の傾斜構造は、フィードブロックの内部のスリットの間隙や長さを調整することにより、各層の圧力損失を傾斜させることにより達成される。
本発明においては、その高い積層精度を実現する観点から、内部にスリット板を有したフィードブロックを用いることが好ましい。層数が多くなると、スリット数が増加するために1枚当たりのスリット板が大型化する。本発明では、300層以上の積層を達成するために、スリット板を並列に複数個配列して用いることが好ましい。また、多層流が通過するポリマーー管の内壁による流動抵抗により、層構造を破壊させない観点から、第3の押出機から押し出された熱可塑性樹脂層Cをピノールを用いて多層積層流と3層複合合流し、最表層に2μm以上の厚膜層を形成することが好ましい。
さらに、この未延伸フィルムを樹脂組成物のガラス転移点(Tg)以上の温度で延伸してもよい。パッケージに貼り合わせる加工性付与及び耐熱性の観点からは、少なくとも一方向に延伸されていることが好ましく、特に、2軸延伸されていることが好ましい。2軸延伸する方法としては、長手方向に延伸した後に幅方向に延伸してもよいし、幅方向に延伸した後に長手方向に延伸してもよいし、長手方向の延伸と、幅方向の延伸とを複数回組み合わせて行なってもよい。また、長手方向と幅方向とに同時に延伸を施してもよい。延伸温度及び延伸倍率の例としては、通常のポリエステルフィルムの場合、延伸温度は80℃以上130℃以下が好ましく、延伸倍率は2倍以上7倍以下が好ましい。
延伸に次いで、フィルムを熱処理するとよい。この熱処理は、延伸温度より高く、融点より低い温度で行うとよい。通常のポリエステルの場合、130℃ないし250℃の範囲で行うのが好ましいが、熱収縮率を抑える観点からは200℃乃至240℃の範囲で行うのがより好ましい。
さらに、フィルムの熱寸法安定性を付与するために2〜10%程度の弛緩熱処理を施すことも好ましい。
本発明のLED用反射体にプライマー層を設ける方法としては、延伸フィルムである反射体の製造工程中に塗布し、基材である反射体と共に延伸する方法が好適である。例えば、長手方向に一軸延伸されたポリエステルフィルムに連続的に塗液を塗布するとよい。塗布されたフィルムは、段階的に加熱されたゾーンを通過しつつ乾燥され、幅方向に延伸される。さらに、連続的に150〜240℃の加熱ゾーンに導かれ2種の熱可塑性樹脂の内、ポリエチレンテレフタレート層が結晶配向を完了させる。この場合に用いられる塗布液は、環境汚染、防爆性の点で水系のものが好ましい。本発明においては、塗液を塗布する前に、基材フィルムの表面(上記例の場合では、一軸延伸フィルム)にコロナ放電処理などを施し、該基材フィルム表面の濡れ張力を、好ましくは47mN/m以上、より好ましくは50mN/m以上とするのが、プライマー層の基材フィルムとの接着性を向上させる観点から好ましい。基材フィルム上への塗布の方法は、各種の塗布方法、例えば、リバースコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、バーコード法、マイヤーバーコード法、ダイコート法、スプレーコートなどを用いることができる。
本発明のLED用反射体は、LED素子から発せられる光を有効に取り出せる場所であれば、LED素子1つ、または、その集合体を収納するパッケージのキャビティー内外のどこに設置されていてもよい。通常、一つのLEDは、発光部、電極、発光部をモールドする樹脂、さらには、これらを収納する有機もしくはセラミックのパッケージで構成されている。LEDのパッケージの形態としては、砲弾型やリードフレーム型などがある。例えば、リードフレーム型のパッケージの場合は、LEDを納めている凹型のキャビティー内面に貼り合わされて用いられることが好ましい。従来の照明光源に用いられていたハロゲンランプは、近赤外線を放つため、放射された側の材料は温度上昇しやすく、周辺材料に樹脂を用いることは困難であった。そのため、本発明である反射体は、金属以上の高い輝度を達成するにも拘わらず、不向きであった。しかしながら、光源がLEDである場合は、近赤外線の発光もなく、ハロゲンランプに比べても駆動電流系の発熱も僅かであることから本発明の反射体は好適である。このような観点から、成形性に優れた本発明のLED用反射体を含んで構成されるLCDバックライト、車載用室内灯、カメラ付き携帯電話などのフラッシュ、一般照明用途などのLED照明装置であることが好ましい。また、LED用反射体を含んで構成されるビルボード向け大型フルカラー大画面、携帯電話のボタンの点灯色などのLED表示装置であることも好ましい。
以下、本発明のLED用反射体を実施例を用いて説明する。
[物性の測定方法ならびに効果の評価方法]
特性値の評価方法ならびに効果の評価方法は次の通りである。
(1)積層厚み、積層数、積層構造
フィルムの層構成は、ミクロトームを用いて断面を切り出したサンプルについて、電子顕微鏡観察により求めた。すなわち、透過型電子顕微鏡H−7100FA型((株)日立製作所製)を用い、フィルムの断面を10000〜40000倍に拡大観察し、断面写真を撮影、層構成および各層厚みを測定した。尚、場合によっては、コントラストを高く得るために、公知のRuO4やOsO4などを使用した染色技術を用いても良い。
各層の厚みは、約4万倍のA4サイズのTEM写真画像を、CanonScanD123Uを用いて画像サイズ720dpiで取り込んだ。画像をビットマップファイル(BMP)もしくは、圧縮画像ファイル(JPEG)でパーソナルコンピューターに保存し、次に、画像処理ソフト Image-Pro Plus ver.4(販売元 プラネトロン(株))を用いて、このファイルを開き、画像解析を行った。画像解析処理は、垂直シックプロファイルモードで、厚み方向位置と幅方向の2本のライン間で挟まれた領域の平均明るさとの関係を、数値データとして読み取った。表計算ソフト(Excel2000)を用いて、位置(nm)と明るさのデータに対してサンプリングステップ6(間引き6)でデータ採用した後に、3点移動平均の数値処理を施した。さらに、この得られた周期的に明るさが変化するデータを微分し、VBAプログラムにより、その微分曲線の極大値と極小値を読み込み、隣り合うこれらの間隔を1層の層厚みとして層厚みを算出した。この操作を写真毎に行い、全ての層の層厚みを算出した。
(2)反射率
日立製作所製 分光光度計(U−3410 Spectrophotomater)にφ60積分球130−0632((株)日立製作所)および10°傾斜スペーサーを取り付け反射率を測定した。バンドパスは2nm/servoとし、ゲインは3と設定し、250nm〜2600nmの範囲を120nm/min.の走査速度で測定した。また、反射率を基準化するため、標準反射板として装置付属の酸化アルミニウム板を用いた。最大反射率は、反射スペクトルの最大値であり、その最大反射率を示す波長を反射波長とした。測定時に測定面の裏面からの反射をなくすために、測定個所をマジックインキで黒塗りした。
(3)変角分光反射スペクトル
サンプルのフィルムを幅方向5cm×長手方向12cmに切り出し、測定する面と反対側の面を黒のマジックインキで塗りつぶした。次に、変角分光測色システムGCMS−3B(村上色彩技術研究所(株))を用いて測定波長380nm〜720nm、測定波長間隔10nm刻み、正反射モードで入射・受光角(検出角)が45°の反射光における変角分光分布の測定を行った。完全拡散反射体である標準板として、装置付属の硫酸バリウム板を用いた。この時の各波長での分光立体角反射率のうち、その最大値を示す値を評価値として採用した。
(4)加熱試験後の最大反射率の変化率
反射率を測定したサンプルを、金枠に貼り付けて150℃の雰囲気に保たれた熱風オーブン中に入れ、無加重の状態でフィルムを30分間放置した後、室温に取り出した。このサンプルについて、反射率測定位置が同一となるようにしながら上記(2)の方法で反射率を測定した。熱処理前の最大反射率と熱処理後の最大反射率を測定し、その差を変化率として求めた。
(5)熱収縮率
フィルム中央部からフィルム長手方向(MD方向:Machine Direction)およびフィルム幅方向(TD方向:Transevers Direction)から、それぞれ、幅10mm、長さ150mmにサンプリングし、サンプルに約100mm間隔の標線をマークした後、万能投影機を用いて正確にこの標線の間隔を測定した。次に、フィルムサンプルを長さ方向に吊し、3gの荷重を長さ方向に加えて、150℃の雰囲気に保たれた熱風オーブン中で30分間加熱した。この加熱後の標線の間隔を測定し、フィルムの収縮量を原寸法に対する割合として百分率で表した。
(6)降伏点応力、破断点応力
降伏点応力、破断点応力はインストロンタイプの引張試験機(オリエンテック(株)製フィルム強伸度自動測定装置“テンシロンAMF/RTA−100”)を用いて、25℃、65%RHの環境下にてJIS−K7127に準拠して測定した。フィルム長手方向(MD方向:Machine Direction)およびフィルム幅方向(TD方向:Transevers Direction)それぞれについて、幅10mmの試料フィルムを、試長間100mm、引張り速度200mm/分の条件で引張り、フィルム長手方向および幅方向の降伏点応力・破断点応力を求めた。なお、n数は5回とし、その平均値を採用した。
(7)表面粗さ
フィルム幅方向の中央部から、長手方向4.0cm×幅方向3.5cmの寸法に切り出したものをサンプルとし、表面粗さ(中心線平均粗さRa及び最大高さRmax)は、小坂研究所製の3次元粗さ計SE−3AKを用いて測定した。Y軸ピッチ間隔10μm、X軸走査距離2mm、走査速度0.1mm/sの条件で測定した。
(8)フィルムの厚みの標準偏差
アンリツ株式会社製フィルムシックネステスタ「KG601A」および電子マイクロメータ「K306C」を用い、フィルムの長手方向に30mm幅、3m長にサンプリングしたフィルムを、0.1sのサンプリング刻み、フィルム走査速度1.5m/minで連続的に厚みを測定した。このフィルム長さ2m内で得られた厚みデータを標本点とし、統計処理により、その標準偏差を求めた。
(9)輝度測定
反射鏡として本発明のLED用反射体を用いて、コスシステム(株)製白色LED(発光波長463nmと553nm)ライトボックス(KFV−70W)を用いて、ライトボックスに対して45°傾斜させてLED用反射体を配置した。模式図を図1に示す。側面が黒い壁で覆われた面状のLED発光部からの光が反射体に当たり、その反射した光をTOPCON製LUMINANCE METER BM-gを用いて反射体中心部の輝度を暗室で測定した。評価基準は、LEDの反射層として用いられている金メッキ層(ここでは野村メッキ(株)製の長さ10mm×幅6mm×高さ0.5mmの本金メッキのテストピース)の輝度との比較により行った。
輝度が10%以上増加:A
輝度が10%未満増加:B
輝度が低下 :C
但し、輝度の変化率は、測定位置、光源強度などに依存するため、比較対象の金メッキの輝度が3000cd/m2になる測定位置と光源強度を調整・固定して、同一測定条件でサンプルの輝度測定を行った。
なお、実施例10〜12及び比較例2,3,5,6における反射帯域が狭い積層フィルムについては、それぞれの入射角度10°での反射波長に対応した赤、青、緑色のLEDのいずれかを選んだ。赤色LEDは、東芝(株)製TLRH180P(発光波長645nm)、青色LEDは、日亜化学(株)製NSPB510S、緑色LEDは、豊田合成(株)製E1L53-3Gを用いた。創造科学有限会社製TL499A昇圧回路部品セットを用いて、それぞれ、6個のLEDを配列させ模式図2の測定系を組み、テストを行った。
(10)成形性テスト
真空成形装置SANWA KOGYO PLAVAC TYPE FB-7を用いて、成形温度150℃で、サンプルに深さ15mm、直径50mmの円柱状のカップを押し当て、さらにカップ内の空気を一瞬で抜き取って真空にした。このとき、試料の成形性を以下の基準で判断した。
成形性良好 ○:十分にカップ形状に追従して変形しているもの
成形性普通 △:角部が十分に成形されていないもの
成形性不良 ×:カップ形状に追従して変形しないもの。
(11)プライマー層の接着性評価
反射体の測定面(プライマー層がある場合は、この面)をコロナ処理し、接着剤を介して被着材(東レ製厚み50μmタイプS10)を貼り、60℃で2日間のエージング後に、耐熱(80℃、144時間)・耐湿試験(60℃、95%、144時間)を実施。その後、巾25mm×長さ100mmにサンプルを切り出し、JIS規格K6854に準拠したT剥離試験を行った。なお、接着剤は、東洋モートン製接着剤(ポリエステル系接着剤)AD503/CAT10/酢エチ=15/1/20、接着剤固形成分は約3.5g/m2 を用いた。以下の基準にて、接着性を評価した。
接着性良好 ○: 耐湿・耐熱試験前後の剥離強度の向上が20%以上
接着性良好 △: 耐湿・耐熱試験前後の剥離強度の向上が20%未満
なお、剥離強度の算出方法は、剥離し始めの20mm未満(荷重の立ちあがる部分)は除き、荷重がほぼ一定になった20〜140mmの荷重の平均値をサンプル幅25mmで除した値を剥離強度[単位N/mm]とした。
(12)表面温度測定
白色LEDライトボックスを約1時間点灯させた前後の反射体の温度上昇をアンリツ(株)製、デジタルサーフェイスサ−モメーター(HLL−60 TypeE)を用いて測定した。
[実施例1]
(第1の熱可塑性樹脂組成物)
ポリエチレンテレフタレートに平均粒径1.2μmの凝集シリカを0.04重量%添加して、第1の熱可塑性樹脂組成物とした。
(第2の熱可塑性樹脂組成物)
シクロヘキサンジメタノールを30mol%共重合した共重合ポリエチレンテレフタレート(CHDM共重合PET)に、トリアジン系UV吸収剤である2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(ヘキシル)オキシ]-フェノールを2重量%添加して、第2の熱可塑性樹脂組成物とした。
(キャスティング)
上記の両熱可塑性樹脂組成物のチップを、それぞれ乾燥した後、別個の押出機に供給した。
両熱可塑性樹脂組成物を、それぞれの押出機にて280℃で溶融させ、ギアポンプにて吐出比が第1の熱可塑性樹脂組成物/第2の熱可塑性樹脂組成物=1/1になるように計量しながら、メッシュ状の金網フィルタを通過させ、801層のフィードブロック(傾斜度合い0.6設計)にて厚み方向に交互に積層された積層体とした。積層の内訳としては、第1の熱可塑性樹脂組成物を401層と、第2の熱可塑性樹脂組成物を400層とからなる801層とし、最表層に第1の熱可塑性樹脂組成物を配した。
当該積層体をTダイに供給し、ドラフト比5でシート状に成形した後、ワイヤーでの静電印可電圧をかけながら、表面温度25℃に保たれたキャスティングドラム上で急冷固化し未延伸フィルムを得た。この時、静電印可時に電圧変動させることなく7.5kV一定とした。
(延伸・熱処理)
この未延伸フィルムに対して、先ず長手方向に延伸温度90℃、延伸倍率3.4倍で延伸を行い、引き続き、テンターに導き、フィルムの両端部をクリップで把持しながら幅方向に延伸温度100℃、延伸倍率4.0倍で延伸した。引き続き、230℃で熱処理を施した。
得られた積層フィルムの厚みは69μmであった。また、各層の厚みは、第1の熱可塑性樹脂組成物からなる層と第2の熱可塑性樹脂組成物からなる層とのそれぞれが、片側の面から反対側の面にかけて、112nmから60nmまで漸次的に単調減少する傾向であることを、TEMによる断面観察から確認した。以降の実施例・比較例において、漸次的に単調減少する傾向の積層構成を「傾斜構造」と呼び、傾斜構造を有する実施例・比較例においては、厚みの大きい側の面を反射特性の測定面とする。また、波長460〜640nmを通じて、反射率が80%以上であった。また、最大反射率は103%であり、その反射波長は615nmであった。表1に物性の評価結果を示す。使用によっても温度上昇、酸化/硫化することなく、成形性が良く、低コストで、輝度ムラの少ない非常に優れた高輝度白色LED用反射体であることが確認できた。
[実施例2]
(第1の熱可塑性樹脂組成物・第2の熱可塑性樹脂組成物)
実施例1と同様のものを用いた。
(キャスティング)
フィードブロックを201層のものに変更し、さらにスクエアミキサーを用いてポリマー流路の2度の分離・合流を繰り返して801層の積層構成とした。なお、201層フィードブロック(傾斜度合い0.91設計)は、実施例1と同様に、傾斜構造を実現するものを用い、また、スクエアーミキサーは、1段目の樹脂の分配比が0.91、2段目の分配比が0.83の非等分配のスクエアミキサーを用いて、801層に渡り傾斜構造を実現するものを用いた。それ以外は実施例1と同様にして、未延伸フィルムを得た。
(延伸・熱処理)
この未延伸フィルムを用い、実施例1と同様にして、延伸・熱処理を施した。
得られた積層フィルムの厚みは70μmであった。得られた各層の厚みは、実施例1と同様にして、110nm〜50nmと単調に層厚みが変化するものであった。また、波長460〜640nmを通じて、反射率が65%以上であった。また、最大反射率は95%であり、その反射波長は570nmであった。表1に物性の評価結果を示す。使用によっても温度上昇、酸化/硫化することなく、成形性が良く、低コストで輝度ムラのない非常に優れた高輝度白色LED用反射体であることが確認できた。
[実施例3]
(第1の熱可塑性樹脂組成物・第2の熱可塑性樹脂組成物)
実施例1と同様のものを用いた。
(キャスティング)
実施例1で用いたのと同様の801層のフィードブロックに、さらにスクエアミキサーを用いてポリマーの流路の1度の分離・合流(分配比0.91)を経て1601層の積層構成とした。それ以外は実施例1と同様にして、未延伸フィルムを得た。
(延伸・熱処理)
この未延伸フィルムを用い、実施例1と同様にして、延伸・熱処理を施した。
得られた積層フィルムの厚みは120μmであった。また、波長460〜640nmを通じて、反射率が90%以上であった。また、最大反射率は110%であり、その反射波長は555nmであった。表1に物性の評価結果を示す。金属光沢がある実施例3の積層フィルムは、使用によっても温度上昇、酸化/硫化することなく、白色LEDライトボックス1時間点灯後の金メッキ層の表面温度と比べて、3℃低かった。また、成形性が良く、低コストで輝度ムラのない非常に優れた高輝度白色LED用反射体であることが確認できた。
[実施例4]
(第1の熱可塑性樹脂組成物・第2の熱可塑性樹脂組成物)
実施例1と同様のものを用いた。
(キャスティング)
フィードブロックを401層に変更して401層の積層構成とした。また、吐出比が第1の熱可塑性樹脂組成物/第2の熱可塑性樹脂組成物=2/1となるようにした。それ以外は実施例1と同様にして、未延伸フィルムを得た。なお、401層のフィードブロックの傾斜度合いは0.7設計とした。積層の内訳としては、第1の熱可塑性樹脂組成物を201層と、第2の熱可塑性樹脂組成物を200層とからなる401層とし、最表層に第1の熱可塑性樹脂組成物を配した。
(延伸・熱処理)
この未延伸フィルムを用い、実施例1と同様にして、延伸・熱処理を施した。
得られた積層フィルムの厚みは34μmであった。また、波長460〜640nmを通じて、反射率が50%以上であった。また、最大反射率は74%であり、その反射波長は590nmであった。表1に物性の評価結果を示す。使用によっても温度上昇、酸化/硫化することなく、低コストで従来以上の高輝度白色LED用反射体であることが確認できた。
[参考例5]
(第1の熱可塑性樹脂組成物)
ポリエチレンテレフタレートに平均粒径1.2μmの凝集シリカを0.2重量%添加して、第1の熱可塑性樹脂組成物とした。
(第2の熱可塑性樹脂組成物)
実施例1と同様のものを用いた。
(キャスティング・延伸・熱処理)
上記の樹脂組成物を用い、実施例1と同様にして、キャスティングし、延伸・熱処理を施した。
得られた積層フィルムの厚みは69μmであった。また。波長460〜640nmを通じて、反射率が60%以上であった。また、最大反射率は83%であり、その反射波長は602nmであった。表1に物性の評価結果を示す。使用によっても温度上昇、酸化/硫化することなく、成形性が良く、適度な光拡散性があり、低コストで従来以上の高輝度白色LED用反射体であることが確認できた。
[参考例4]
(第1の熱可塑性樹脂組成物)
実施例1と同様のものを用いた。
(第2の熱可塑性樹脂組成物)
PET/I(テレフタレート成分80mol%/イソフタレート成分20mol%)の共重合体に、トリアジン系UV吸収剤である2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(ヘキシル)オキシ]-フェノールを2重量%添加して、第2の熱可塑性樹脂組成物とした。
(キャスティング・延伸・熱処理)
上記の樹脂組成物を用い、実施例1と同様にして、キャスティングし、延伸・熱処理を施した。
得られた積層フィルムの厚みは69μmであった。また、波長460〜640nmを通じて、反射率が80%以上であった。また、最大反射率は99%であり、その反射波長は619nmであった。表1に物性の評価結果を示す。使用によっても温度上昇、酸化/硫化することなく、成形性が良く、低コストで輝度ムラのない非常に優れた高輝度白色LED用反射体であることが確認できた。
[比較例7]
(第1の熱可塑性樹脂組成物・第2 の熱可塑性樹脂組成物)
実施例1と同様のものを用いた。
(キャスティング)
実施例1と同様にしてキャスティングした。
(延伸・熱処理)
長手方向の延伸において延伸温度を115℃に変更した以外は実施例1と同様にして、延伸・熱処理を施した。
得られた積層フィルムの厚みは69μmであった。また、波長460〜640nmを通じて、反射率が60%以上であった。また、最大反射率は79%であり、その反射波長は590nmであった。表1に物性の評価結果を示す。若干の成形ムラと若干の輝度ムラが見られたものの、使用によっても温度上昇、酸化/硫化することなく、低コストで従来以上の高輝度白色LED用反射体であることが確認できた。
[実施例8]
(第1の熱可塑性樹脂組成物)
粒子添加されていないポリエチレンテレフタレートを第1の熱可塑性樹脂組成物とした。
(第2の熱可塑性樹脂組成物)
スピログリコール20mol%とシクロヘキサンジカルボン酸を30mol%共重合した共重合ポリエチレンテレフタレート(SPG共重合PET)に、トリアジン系UV吸収剤である2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(ヘキシル)オキシ]-フェノールを2重量%添加して、第2の熱可塑性樹脂組成物とした。
(第3の熱可塑性樹脂組成物)
ポリエチレンテレフタレートに平均粒径1.2μmの凝集シリカを0.02重量%添加して、第3の熱可塑性樹脂組成物とした。
(キャスティング)
上記の第1、2、3の熱可塑性樹脂組成物のチップを、それぞれ乾燥した後、別個の押出機に供給した。
第1,2,3の熱可塑性樹脂組成物を、それぞれの押出機にて280℃で溶融させ、ギアポンプにて吐出比が第1の熱可塑性樹脂組成物/第2の熱可塑性樹脂組成物=0.9/1になるように計量しながら、メッシュ状の金網フィルタを通過させ、3枚のスリット板からなる801層のフィードブロック(傾斜度合い0.33設計)にて厚み方向に交互に積層し、次いで第3の熱可塑性樹脂組成物が最表層側になるように3層複合ピノールを用いて合流することにより積層体を得た。積層の内訳としては、第1の熱可塑性樹脂組成物を401層と、第2の熱可塑性樹脂組成物を400層とからなる801層とし、さらに、最表層に第3の熱可塑性樹脂組成物を配した。すなわち、803層の積層体とした。
当該積層体をTダイに供給し、ドラフト比2でシート状に成形した後、ワイヤーでの静電印可電圧をかけながら、表面温度25℃に保たれたキャスティングドラム上で急冷固化し未延伸フィルムを得た。この時、静電印可時に電圧変動させることなく7.5kV一定とした。
(延伸・熱処理)
この未延伸フィルムに対して、先ず長手方向に延伸温度95℃、延伸倍率3.4倍で延伸を行い、引き続き、コロナ処理を施し、#8のメタバーで酢酸ビニル・アクリル系樹脂を含有した水系塗剤をコーティングし、プライマー層を付与した。塗剤の調合比を下記する。
プラスコート RY−2(互応化学工業) 0.003重量部
ニカゾール RX−7013ED(日本カーバイド) 100重量部
ニカラック NW12LF(三和ケミカル) 25重量部
キャタロイド SI−80P(触媒化成) 5重量部
次いで、テンターに導き、フィルムの両端部をクリップで把持しながら幅方向に延伸温度105℃、延伸倍率4.0倍で延伸した。引き続き、235℃で熱処理を施した。
得られた積層フィルムの厚みは93μmであった。また、各層の厚みは、第1の熱可塑性樹脂組成物からなる層と第2の熱可塑性樹脂組成物からなる層とのそれぞれが、片側の面から反対側の面にかけて、162nmから55nmまで漸次的に単調減少する傾斜構造であることを、TEMによる断面観察から確認した。第3の熱可塑性樹脂組成物である最表層の厚みは、4.5μmであった。コーティング層は、0.1μmであった。また、波長400〜850nmを通じて、反射率が85%以上であった。また、最大反射率は105%であり、その反射波長は543nmであった。表1に物性の評価結果を示す。視野角に依存して、色変化もすることない、金属以上の光沢感がある反射体であった。使用によっても温度上昇、酸化/硫化することなく、成形性が良く、低コストで、輝度ムラの少ない非常に優れた高輝度白色LED用反射体であることが確認できた。
[実施例9]
(第1の熱可塑性樹脂組成物)
粒子添加されていないポリエチレンテレフタレートを第1の熱可塑性樹脂組成物とした。
(第2の熱可塑性樹脂組成物)
スピログリコール20mol%とシクロヘキサンジカルボン酸を30mol%共重合した共重合ポリエチレンテレフタレート(SPG共重合PET)に、トリアジン系UV吸収剤である2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(ヘキシル)オキシ]-フェノールを2重量%添加して、第2の熱可塑性樹脂組成物とした。
(第3の熱可塑性樹脂組成物)
粒子添加をしていないポリエチレンテレフタレートを第3の熱可塑性樹脂組成物とした。
(キャスティング)
上記の第1、2、3の熱可塑性樹脂組成物のチップを、それぞれ乾燥した後、別個の押出機に供給した。第1、2、3の熱可塑性樹脂組成物を、それぞれの押出機にて280℃で溶融させ、ギアポンプにて吐出比が第1の熱可塑性樹脂組成物/第2の熱可塑性樹脂組成物=0.6/1となるように実施例8を変更した。
(塗剤)
さらに、ポリエステル系樹脂を含有したプライマー層を実施例8と同様にして塗布した。塗剤の調合比を下記に示す。
プラスコート RY−2(互応化学工業) 0.003重量部
ペスレジン TR620K(高松油脂) 100重量部
ニカラック NW12LF(三和ケミカル) 5重量部
スフェリカ 140(触媒化成) 1重量部
上記変更内容以外、実施例8と同様にして、厚み95μmの積層体を得た。また、各層の厚みは、第1の熱可塑性樹脂組成物からなる層と第2の熱可塑性樹脂組成物からなる層とのそれぞれが、片側の面から反対側の面にかけて、172nmから55nmまで漸次的に単調減少する傾斜構造であることを、TEMによる断面観察から確認した。第3の熱可塑性樹脂組成物である最表層の厚みは、4.0μmであった。コーティング層は、0.07μmであった。また、波長400〜850nmを通じて、反射率が80%以上であった。また、最大反射率は108%であり、その反射波長は620nmであった。表1に物性の評価結果を示す。視野角に依存して、色変化もすることない、金属以上の光沢感がある反射体であった。使用によっても温度上昇、酸化/硫化することなく、非常に成形性が良く、低コストで、輝度ムラの少ない非常に優れた高輝度白色LED用反射体であることが確認できた。
[参考例1]
(第1の熱可塑性樹脂組成物・第2の熱可塑性樹脂組成物)
実施例1と同様のものを用いた。
(キャスティング)
上記の両熱可塑性樹脂組成物のチップを、それぞれ乾燥した後、別個の押出機に供給した。
両熱可塑性樹脂組成物を、それぞれの押出機にて280℃で溶融させ、ギアポンプにて吐出比が第1の熱可塑性樹脂組成物/第2の熱可塑性樹脂組成物=2/1になるように計量しながら、メッシュ状の金網フィルタを通過させ、201層のフィードブロックにて厚み方向に交互に、それぞれの層厚みが一定に積層された積層体とした。積層の内訳としては、第1の熱可塑性樹脂組成物を101層と、第2の熱可塑性樹脂組成物を100層とからなる201層とし、最表層に第1の熱可塑性樹脂組成物を配した。
当該積層体をTダイに供給し、ドラフト比25でシート状に成形した後、ワイヤーでの静電印可電圧をかけながら、表面温度25℃に保たれたキャスティングドラム上で急冷固化し未延伸フィルムを得た。この時、静電印可時に電圧変動させることなく7.5kV一定とした。
(延伸・熱処理)
この未延伸フィルムを用い、実施例1と同様にして、延伸・熱処理を施した。
得られた積層フィルムの厚みは19μmであった。また、反射帯域が狭いタイプのものであり、反射波長642nmに最大反射率109%のピークを有していた。表1に物性の評価結果を示す。使用によっても温度上昇、酸化/硫化することなく、低コストで非常に優れた高輝度赤色LED用反射体であることが確認できた。
[参考例2]
(第1の熱可塑性樹脂組成物)
ポリエチレンテレフタレートに平均粒径1.2μmの凝集シリカを0.08重量%添加して、第1の熱可塑性樹脂組成物とした。
(第2の熱可塑性樹脂組成物)
スピログリコール10mol%とシクロヘキサンジカルボン酸を20mol%共重合した共重合ポリエチレンテレフタレート(SPG共重合PET)を第2の熱可塑性樹脂組成物とした。
(キャスティング)
参考例1と同様にしてキャスティングし、未延伸フィルムを得た。
(延伸・熱処理)
この未延伸フィルムに対して、先ず長手方向に延伸温度95℃、延伸倍率3.3倍で延伸を行い、引き続き、テンターに導き、フィルムの両端部をクリップで把持しながら幅方向に延伸温度100℃、延伸倍率4.2倍で延伸した。引き続き、230℃で熱処理を施した。
得られた積層フィルムの厚みは17.5μmであった。また、反射帯域が狭いタイプのものであり、反射波長545nmに最大反射率115%のピークを有していた。表1に物性の評価結果を示す。使用によっても温度上昇、酸化/硫化することなく、低コストで従来以上の緑色高輝度LED用反射体であることが確認できた。
[参考例3]
(熱可塑性樹脂組成物1・熱可塑性樹脂組成物2)
参考例2と同様のものを用いた。
(熱可塑性樹脂組成物3)
ポリエチレンテレフタレートに平均粒径1.2μmの凝集シリカを0.04重量%添加して、第3の熱可塑性樹脂組成物とした。
(キャスティング)
吐出比が第1の熱可塑性樹脂組成物/第2の熱可塑性樹脂組成物=1/1になるようにし、第3の熱可塑性樹脂組成物が最表層側になるように3層複合ピノールを用いて合流すること以外は、参考例2と同様にして未延伸フィルムを製造した。
(延伸・熱処理)
この未延伸フィルムに対して、先ず長手方向に延伸温度95℃、延伸倍率3.4倍で延伸を行い、引き続き、コロナ処理を施し、#6のメタバーで酢酸ビニル・アクリル系樹脂を含有した水系塗剤をコーティングし、プライマー層を付与した。塗剤の調合比を下記する。
プラスコート RY−2(互応化学工業) 0.003重量部
ニカゾール RX−7013ED(日本カーバイド) 100重量部
ニカラック NW12LF(三和ケミカル) 25重量部
キャタロイド SI−80P(触媒化成) 5重量部
次いで、テンターに導き、フィルムの両端部をクリップで把持しながら幅方向に延伸温度105℃、延伸倍率4.0倍で延伸した。引き続き、230℃で熱処理を施した。
得られた積層フィルムの厚みは27μmであった。最表層の厚みは、6μmであった。また、反射帯域が狭いタイプのものであり、反射波長470nmに最大反射率106%のピークを有していた。表1に物性の評価結果を示す。厚みが薄いわりには成形性も良く、使用によっても温度上昇、酸化/硫化することなく、低コストで従来以上の高輝度青色LED用反射体であることが確認できた。
[実施例13]
実施例3の積層フィルムの反射面側に粘着剤を介して透過率88%、濁度92%の100μmの拡散板を貼り合わせて、積層フィルムを作製した。
この拡散層を貼り合わせた積層フィルムの輝度は、金メッキに粘着剤を介して拡散板を貼り合わせたものよりも高いことが確認できた。さらに、白色LEDライトボックス1時間点灯後の表面温度も、金メッキに粘着剤を介して拡散板を貼り合わせたものと比べ4℃低かった。
[実施例14]
実施例9の積層フィルムの反射面側に、希釈剤にメチルエチルケトンを用いて硬質成分(日本化薬製DPHA)、軟質成分(東亞合成M350)、熱架橋剤(日本サイテック製サイメル303)、粒子(積水化学製MBX6)を攪拌して調合した塗剤をメタバーで表面に塗布した後、200℃で乾燥固化し、拡散層を設けた反射体を作製した。なお、粒子濃度は、塗剤の固形成分に対して濃度が2重量%となるように調合した
反射体の輝度は、金メッキに粘着剤を介して拡散板を貼り合わせたものよりも高いことが確認できた。さらに、白色LEDライトボックス1時間点灯後の表面温度も、金メッキに粘着剤を介して拡散層を形成したものと比べ2℃低かった。
[比較例1]
(第1の熱可塑性樹脂組成物・第2の熱可塑性樹脂組成物)
実施例1と同様のものを用いた。
(キャスティング)
フィードブロックを201層のものに変更し、さらにスクエアミキサーを用いてポリマー流路の3度の分離・合流を繰り返して1601層の積層構成とした。それ以外は実施例1と同様にして、未延伸フィルムを得た。
(延伸・熱処理)
この未延伸フィルムを用い、実施例1と同様にして、延伸・熱処理を施した。
得られた積層フィルムの厚みは110μmであった。また、波長460〜640nmにおいて、反射率が30%を下回る波長領域もあった。また、最大反射率は47%であり、その反射波長は550nmであった。表1に物性の評価結果を示す。白色LED用反射体として、従来の金属メッキの輝度を下まわるものであった。
[比較例2]
(第1の熱可塑性樹脂組成物)
ポリエチレンテレフタレートに平均粒径1.2μmの凝集シリカを0.02重量%添加して、第1の熱可塑性樹脂組成物とした。
(第2の熱可塑性樹脂組成物)
PET/I(テレフタレート成分80mol%/イソフタレート成分20mol%)の共重合体を用い、第2の熱可塑性樹脂組成物とした。
(キャスティング)
上記の両熱可塑性樹脂組成物のチップを、それぞれ乾燥した後、別個の押出機に供給した。
両熱可塑性樹脂組成物を、それぞれの押出機にて280℃で溶融させ、ギアポンプにて吐出比が第1の熱可塑性樹脂組成物/第2の熱可塑性樹脂組成物=2/1になるように計量しながら、メッシュ状の金網フィルタを通過させ、51層のフィードブロックに合流させ、さらに、等配分のスクエアミキサーを用いてポリマー流路の2度の分岐・合流を繰り返し、積層体とした。積層の内訳としては、第1の熱可塑性樹脂組成物を101層と、第2の熱可塑性樹脂を100層とからなる201層とし、最表層に第1の熱可塑性樹脂を配した。
当該積層体をフィッシュテール形状のダイに供給し、ドラフト20でシート状に成形した後、ワイヤーでの静電印可電圧をかけながら、表面温度25℃に保たれたキャスティングドラム上で急冷固化し未延伸フィルムを得た。この時、静電印可時に電圧変動させることなく7.5kV一定とした。
(延伸・熱処理)
この未延伸フィルムを用い、実施例1と同様にして、延伸・熱処理を施した。
得られた積層フィルムの厚みは10μmであった。また、反射帯域が狭いタイプのものであり、反射波長480nmに最大反射率58%のピークを有していた。表1に物性の評価結果を示す。成形性に関しては、しわが多く見られた。青色LED用反射体として、従来の金属メッキの輝度と同等以下であった。
[比較例3]
(第1の熱可塑性樹脂組成物)
ポリエチレンテレフタレートに平均粒径2μmの合成炭酸カルシウムを0.08重量%添加して、第1の熱可塑性樹脂組成物とした。
(第2の熱可塑性樹脂組成物)
PET/I(テレフタレート成分90mol%/イソフタレート成分10mol%)の共重合PETを第2の熱可塑性樹脂組成物とした。
(キャスティング)
上記の両熱可塑性樹脂組成物のチップを、それぞれ乾燥した後、別個の押出機に供給した。
両熱可塑性樹脂組成物を、それぞれの押出機にて280℃で溶融させ、ギアポンプにて吐出比が第1の熱可塑性樹脂組成物/第2の熱可塑性樹脂組成物=3/1になるように計量しながら、メッシュ状の金網フィルタを通過させ、201層のフィードブロックにて厚み方向に交互に積層された積層体とした。積層の内訳としては、第1の熱可塑性樹脂組成物を101層と、第2の熱可塑性樹脂組成物を100層とからなる201層とし、最表層に第1の熱可塑性樹脂組成物を配した。
当該積層体をTダイに供給し、ドラフト比25でシート状に成形した後、ワイヤーでの静電印可電圧をかけながら、表面温度25℃に保たれたキャスティングドラム上で急冷固化し未延伸フィルムを得た。この時、静電印可時に電圧変動させることなく7.5kV一定とした。
(延伸・熱処理)
この未延伸フィルムを用い、延伸後の熱処理の温度を220℃にした以外は実施例1と同様にして、延伸・熱処理を施した。
得られた積層フィルムの厚みは17μmであった。また、反射帯域が狭いタイプのものであり、反射波長501nmに最大反射率28%のピークを有していた。表1に物性の評価結果を示す。成形性が極めて悪く、また緑色LED用反射体として、従来の金属メッキの輝度を下回るものであった。
[比較例4]
(第1の熱可塑性樹脂組成物・第2の熱可塑性樹脂組成物)
実施例1と同様のものを用いた。
(キャスティング)
フィードブロックを401層に変更して401層の積層構成とした。また、吐出比が第1の熱可塑性樹脂組成物/第2の熱可塑性樹脂組成物=3/1となるようにした。それ以外は実施例1と同様にして、未延伸フィルムを得た。
(延伸・熱処理)
この未延伸フィルムを用い、実施例1と同様にして、延伸・熱処理を施した。
得られた積層フィルムの厚みは40μmであった。また、波長460〜640nmを通じて、反射率が40%以上であった。また、最大反射率は61%であり、その反射波長は575nmであった。表1に物性の評価結果を示す。成形性が悪く、従来の金属メッキの輝度を下回るものであった。
[比較例5]
(第1の熱可塑性樹脂組成物・第2の熱可塑性樹脂組成物)
実施例1と同様のものを用いた。
(キャスティング)
上記の両熱可塑性樹脂組成物のチップを、それぞれ乾燥した後、別個の押出機に供給した。
両熱可塑性樹脂組成物を、それぞれの押出機にて280℃で溶融させ、ギアポンプにて吐出比が第1の熱可塑性樹脂組成物/第2の熱可塑性樹脂組成物=2/1になるように計量しながら、メッシュ状の金網フィルタを通過させ、201層のフィードブロックにて厚み方向に交互に、それぞれの層厚みが一定に積層された積層体とした。積層の内訳としては、第1の熱可塑性樹脂組成物を101層と、第2の熱可塑性樹脂組成物を100層とからなる201層とし、最表層に第1の熱可塑性樹脂組成物を配した。
当該積層体をTダイに供給し、ドラフト比25でシート状に成形した後、ワイヤーでの静電印可電圧をかけながら、表面温度25℃に保たれたキャスティングドラム上で急冷固化し未延伸フィルムを得た。この時、静電印可時に電圧変動させることなく7.5kV一定とした。
(延伸・熱処理)
この未延伸フィルムを用い、実施例1と同様にして、延伸・熱処理を施した。
得られた積層フィルムの厚みは9μmであった。また、反射帯域が狭いタイプのものであり、反射波長472nmに最大反射率86%のピークを有していた。表1に物性の評価結果を示す。使用によっても温度上昇、酸化/硫化することなく、低コストで従来以上の高輝度青色LED用反射体であるが、成形においてシワが確認された。
[比較例6]
(第1の熱可塑性樹脂組成物・第2の熱可塑性樹脂組成物)
実施例1と同様のものを用いた。
(キャスティング)
比較例5と同様にしてキャスティングし、未延伸フィルムを得た。
(延伸・熱処理)
この未延伸フィルムに対して、先ず長手方向に延伸温度95℃、延伸倍率2.5倍で延伸を行い、引き続き、テンターに導き、フィルムの両端部をクリップで把持しながら幅方向に延伸温度100℃、延伸倍率4.5倍で延伸した。引き続き、220℃で熱処理を施した。
得られた積層フィルムの厚みは17μmであった。また、反射帯域が狭いタイプのものであり、反射波長551nmに最大反射率94%のピークを有していた。表1に物性の評価結果を示す。有彩色での使用において若干の色ムラが見られたものの、使用によっても温度上昇、酸化/硫化することなく、従来以上の緑色高輝度LED用反射体であることが確認できたが、成形においてシワが見られた。
本発明は、LED用反射体に関するものである。さらに詳しくは、車載用ランプ、交通信号機、ディスプレー、プロジェクタースクリーン、プロジェクター内部のダイクロイックミラー、液晶バックライト、センサ用光源等、ビルボード向け大型画面、カメラ付き携帯電話のフラッシュ、など様々な分野の表示装置、照明装置に用いられるLEDからの光を効率的に利用し、輝度を向上させる好適なLED用反射体に関するものである。
輝度測定方法の模式図
輝度測定方法の模式図
符号の説明
1:面状LED光源
2:反射体
3:光の進行方向
4:検出方向
5:検出角
6:入射角
7:反射体との法線方向
8:筒状LED光源