JP2008200924A - 積層フィルム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 樹脂Aからなる層(A層)と樹脂Bからなる層(B層)を少なくとも有する積層数が30以上の積層フィルムであって、波長850〜1000nmの近赤外線帯域の平均反射率が60%以上であり、かつ酸化タングステン化合物を0.01g/m2以上10g/m2以下含んでなることを特徴とする積層フィルムである。
【選択図】なし
Description
特に、本発明では、A層がポリエチレンテレフタレートを主成分とする層であり、B層がシクロヘキサンジカルボン酸およびスピログリコールを共重合したポリエステルであることが好ましい。この場合、さらに近赤外線のカット効率が向上するものである。また、層間密着性に優れるとともに、強度・耐熱性・耐薬品性等にも優れたものとなる。
本発明の積層フィルムは、酸化タングステン化合物を0.01g/m2以上10g/m2以下含んでなければならない。ここで酸化タングステン化合物とは、例えば、カリウム酸化タングステン、ルビジウム酸化タングステン、セシウム酸化タングステン、タリウム酸化タングステンのいずれか1種以上から選ばれるものであることが好ましい。特に、セシウム酸化タングステンであると、赤外線のカット率が高く、可視光線の吸収が少ないために、より好ましい。また、本発明の積層フィルム中の酸化タングステン化合物の含有量は、0.1g/m2以上5g/m2以下であることが好ましい。より好ましい態様の場合、さらに可視光線の吸収が適度なものとなり、色づきがほとんどなくなるものである。なお、酸化タングステン化合物の量は、特定サイズのフィルム中の酸化タングステン化合物の量を求めた後、1m2あたりに換算して求めた。
本発明の積層フィルムでは、1000〜1200nmにおける平均吸収率が50%以上であることが好ましい。本発明の光学フィルターでは近赤外線を反射することを特徴とするものであるが、プラズマディスプレイの用途において問題となるリモコン誤動作を防ぐため、一般のリモコンの赤外線通信波長である850〜1000nmだけでなく、特殊な赤外線通信に用いられる1100nm付近の波長をカットすることも要求されることがある。本発明の光学フィルターでは、反射により1200nm付近までカットすることは可能であるが、広い角度範囲内で赤外線をカットすることが求められるため、高波長側については赤外線が透過してしまう問題がある。これを解決するためには、近赤外線反射帯域をより高波長側に拡大すると、高次の反射による可視光での着色が起きるため好ましくないため、少なくとも1000〜1200nmにおける平均吸収率が50%以上であることが好ましいものである。これにより、可視部での吸収は最小限に抑制されながら、広い角度範囲内で赤外線をカットすることが可能となるものである。
本発明の積層フィルムでは、紫外線吸収剤を含んでなることも好ましい。ここで紫外線吸収剤としては、例えばサリチル酸系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シアノアクリレート系化合物、およびベンゾオキサジノン系化合物、環状イミノエステル系化合物などを好ましく例示することができるが、380nmと390nmでの紫外線遮蔽性、色調などの点及び本発明の好ましい樹脂であるポリエステルへの分散性向上の効果発現度合いの点からベンゾオキサジノン系化合物が最も好ましい。これらの化合物は1種単独であるいは2種以上一緒に併用することができる。またHALSや酸化防止剤等の安定剤を併用することもでき、特にリン系の酸化防止剤を併用することが好ましい。
2種類の熱可塑性樹脂AおよびBをペレットなどの形態で用意する。ここで、樹脂Aまたは/および樹脂Bに酸化タングステン化合物を含有せしめたものを用いても良い。ペレットは、必要に応じて、事前乾燥を熱風中あるいは真空下で行い、押出機に供給される。押出機内において、融点以上に加熱溶融された樹脂は、ギヤポンプ等で樹脂の押出量を均一化され、フィルター等を介して異物や変性した樹脂などを取り除く。
Q:時間あたりのスタティックミキサーを通過する総吐出量(Kg/h)
L:スタティックミキサー1段分の長さ(mm)
A:スタティックミキサーの流路断面積(mm2) 。
これらの反射特性を満足するためには、積層数が700以上であることが好ましいが、上記の方法では、フィードブロックの精度とスタティックミキサーの形状を最適化しても、積層精度が不足するために、積層数を700以上にすることは困難であった。そこで、鋭意検討の結果、このような積層数が700以上必要な場合にも対応する積層装置として、加工精度0.01mm以下で製作した10以上400以下の微細スリットを有する部材を少なくとも別個に2個以上含むフィードブロックを使用することが好ましい。
2×(na・da+nb・db)=λ 式1
na:A層の面内平均屈折率
nb:B層の面内平均屈折率
da:A層の層厚み(nm)
db:B層の層厚み(nm)
λ:主反射波長(1次反射波長)
※なお、この式は隣接するA層とB層に関するものであるが、本発明では主反射波長λが広い帯域を有することが特徴であるため、層厚みdaとdbはある範囲を有することが好ましい。ここで、ある範囲とは、例えば、λ1〜λ2の帯域を高反射率とする設計の場合、樹脂Aと樹脂Bの吐出比をA/B=xとすると、下記式によって求められるda(1)〜da(2)、db(1)〜db(2)の範囲の厚み変化を含むことを言う。ここでは、樹脂Aと樹脂Bの比重は同一と仮定しているが、実際には同一でないことが多く、その点を考慮した設計をすべきである。
da(1)=λ1/(2×(na+na×(1/x)) db(1)=da(1)・x
da(2)=λ2/(2×(na+na×(1/x)) db(2)=db(2)・x
また、本発明の光学フィルターでは、可視部に高次の反射を有さないことが好ましいため、隣接するA層およびB層について下記式2を満たすことが好ましい。各々の面内平均屈折率および層厚みについては範囲40%以下の分布が生じていても許容できるものである。
本発明の特徴である850〜1000nmの近赤外線帯域の平均反射率が60%以上である積層フィルムを効率よく得るためには、隣接するA層およびB層について、式2を満たしつつ、積層フィルムの片面から反対面にむかうにつれ、A層およびB層の厚みが式hのλが850nmをほぼ満たす厚みから、λが1000nmをほぼ満たす厚みへ、かならずしも連続的である必要はないが徐々に厚くなる部分を含んでなることが好ましい。こうすることにより、ヘイズ法にて求められる全光線透過率が97%以上であり、かつヘイズが0.6%以下である積層フィルムを得ることが容易となる。
(物性値の評価法)
(1)積層数、積層比、積層厚み
フィルムの層構成は、ミクロトームを用いて断面を切り出したサンプルについて、電子顕微鏡観察により求めた。すなわち、透過型電子顕微鏡HU−12型((株)日立製作所製)を用い、フィルムの断面を3000〜40000倍に拡大観察し、断面写真を撮影、層構成および各層厚みを測定した。本発明の実施例では十分なコントラストが得られたため実施しなかったが、用いる樹脂の組み合わせによっては公知の染色技術を用いてコントラストを高めても良い。
日立製作所製 分光光度計(U−3410 Spectrophotomater)にφ60積分球130−0632((株)日立製作所)および10°傾斜スペーサーを取り付け反射率を測定した。なお、サンプルは長手方向が上下方向になるようにセットし、バンドパラメーターは2/servoとし、ゲインは3と設定し、187nm〜2600nmの範囲を120nm/min.の検出速度で測定した。また、反射率を基準化するため、標準反射板として付属のAl2O3を用いた。なお、平均反射率は、ある波長範囲内の各波長における反射率を平均化して算出した。なお、赤外線吸収層が存在する側とは反対側の面について、測定を行った。
JIS A5759(1998)に則り、可視光線透過率、日射透過率、日射反射率をそれぞれ測定した。測定は、日立製作所製 分光光度計(U−3410 Spectrophotomater)を用いて測定した。なお、日射反射率については、赤外線吸収層が存在する側とは反対側の面について、測定を行った。
オルトクロロフェノール中、25℃で測定した溶液粘度から、算出した。また、溶液粘度はオストワルド粘度計を用いて測定した。単位は[dl/g]で示した。なお、n数は3とし、その平均値を採用した。
スガ試験機製 HGM−2DPを用いて、JIS K7105(1981)に基づいて、全光線透過率、ヘイズ(内部)を測定した。サンプルは、1,2,3,4テトラヒドロナフタレンテトラリン中につけ、非光源側に粘着面がくるようにセッティングした。
酸化タングステン化合物の平均粒径は、電子顕微鏡観察により求めた。すなわち、透過型電子顕微鏡HU−12型((株)日立製作所製)を用い、酸化タングステン化合物粒子を40000倍に拡大観察し、25個の粒子の粒径を平均化して求めた。
1.積層フィルムの作製
2種類の樹脂として、樹脂Aと樹脂Bを準備した。樹脂Aとして、固有粘度0.65のポリエチレンテレフタレート(PET)を用いた。また、樹脂Bとしてシクロヘキサンジメタノールをエチレングリコールに対し30mol%共重合したポリエチレンテレフタレート(CHDM共重合PET)[イーストマン製 PETG6763]を用いた。また、紫外線吸収剤Aとして2,2’−(1,4−フェニレン)ビス (4H−3,1−ベンズオキサジン−4−オン)を用意し、これと樹脂Aをベント付き2軸押出機にて紫外線吸収剤Aが12重量%となる様にコンパウンド樹脂を用意した。これら樹脂Aとコンパウンド樹脂を紫外線吸収剤Aが樹脂Aに対して1wt%になるように調整し、150℃の温度で6時間乾燥した後、一軸押出機に供給した。また、樹脂Bについては、乾燥窒素雰囲気下で一昼夜、80℃の温度で乾燥した後、ベント付き2軸押出機に供給した。
2.コーティングフィルムの作製
塗液Xとして、住友金属鉱山製 YMF−01(セシウム酸化タングステン粒子Cs0.33WO3 平均粒径50nm)を準備した。
また、塗液Yは、新中村化学工業製 ウレタンアクリレートモノマーUA−5201 95wt%と、日本チバガイギー製 光開始剤イルガキュアー 184(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトンHCPK)5wt%とを混合した後、固形分が30wt%になるまでMEKで希釈して得た。
塗液X/塗液Yを5重量部/3.1重量部の割合で混合した塗液を作製した。続いて、上記で作製した積層フィルムの片面に、この塗液を塗布し、70℃・30秒で熱風乾燥した後、UVにより硬化を行い、コーティングフィルムを得た。なお、各実施例ごとで塗膜厚みを変更した。得られた結果を表1に示す。
(実施例4〜6)
樹脂Bとして、シクロヘキサンジカルボン酸を25mol%、スピログリコールを20mol%共重合させたポリエチレンテレフタレート(固有粘度0.7)を用いた以外は、実施例1〜3と同様に積層フィルムを製膜し、その後、実施例1〜3と同様にコーティングを行った。なお、各実施例ごとで塗膜厚みを変更した。得られた結果を表1に示す。
(実施例7〜9)
マルチマニホールドにて、片面に住友金属鉱山製のセシウム酸化タングステン粒子(Cs0.33WO3 平均粒径50nm)をコンパウンドにより微分散させたシクロヘキサンジカルボン酸を25mol%、スピログリコールを20mol%共重合させたポリエチレンテレフタレート(固有粘度0.69)を積層した以外は、実施例4〜6と同様に製膜した。ただし、塗液X/塗液Yからなる塗液の塗布は行わなかった。なお、各実施例ごとでセシウム酸化タングステン粒子の量をを変更した。得られた結果を表1に示す。
(実施例10)
実施例8において、片面に住友金属鉱山製のセシウム酸化タングステン粒子(Cs0.33WO3 平均粒径50nm)をコンパウンドにより微分散させたポリエチレンテレフタレート(固有粘度0.65)を積層した以外は、実施例8と同様に製膜した。得られた結果を表1に示す。
(実施例11)
積層装置のスリット形状を変更し、両最表層の樹脂A層をのぞけば、樹脂A層は一方の表面から他方の表面に向かうにつれ、115nmから180nmまでほぼ一次関数的に増加し、樹脂B層は、一方の表面から他方の表面に向かうにつれ、126nmから190nmにほぼ一次関数的に増加するようした以外は、実施例5と同様に製膜した。得られたフィルムは、斜めから見ると赤っぽく光って見えた。
(比較例1)
積層装置を変更し、積層数を201層とした以外は、実施例2と同様に製膜した。得られた積層フィルムの厚みは、32μmであった。また、つづいて、実施例2と同様に塗液X/塗液Yからなる塗液をコーティングした。得られた結果を表1に示す。
(比較例2〜3)
コーティングフィルムの塗膜厚みを変更した以外は、実施例2と同様に製膜した。得られた結果を表1に示す。
(比較例4)
東レ製 ポリエチレンテレフタレート二軸延伸フィルム “ルミラー”T60(単層)に、実施例2と同様に塗液X/塗液Yからなる塗液をコーティングした。得られた結果を表1に示す。
(実施例12)
積層装置を変更し、積層数を601層とした以外は、実施例2と同様に製膜した。得られた積層フィルムの厚みは、96μmであった。また、つづいて、実施例2と同様に塗液X/塗液Yからなる塗液をコーティングした。得られた結果を表1に示す。
(実施例13)
積層装置を変更し、積層数を401層とした以外は、実施例2と同様に製膜した。得られた積層フィルムの厚みは、64μmであった。また、つづいて、実施例2と同様に塗液X/塗液Yからなる塗液をコーティングした。得られた結果を表1に示す。
2: 樹脂A供給部
3: スリット部
3a、3b: スリット
4: 樹脂B供給部
5: スリット部
6: 樹脂A供給部
7: スリット部
8: 樹脂B供給部
9: 側板
10: 積層装置 11: 導入口
12: 液溜部
18: 合流装置
Claims (7)
- 樹脂Aからなる層(A層)と樹脂Bからなる層(B層)を少なくとも有する積層数が30以上の積層フィルムであって、波長850〜1000nmの帯域の平均反射率が60%以上であり、かつ酸化タングステン化合物を0.01g/m2以上10g/m2以下含んでなることを特徴とする積層フィルム。
- 酸化タングステン化合物が、カリウム酸化タングステン、ルビジウム酸化タングステン、セシウム酸化タングステン、タリウム酸化タングステンの少なくとも1種以上から選ばれることを特徴とする請求項1に記載の積層フィルム。
- 酸化タングステン化合物が、平均粒径が5nm以上300nm以下の粒子であることを特徴とする請求項1または2に記載の積層フィルム。
- 波長810nmの反射率が15%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の積層フィルム。
- A層がポリエチレンテレフタレートを主成分とする層であり、B層が酸成分としてシクロヘキサンジカルボン酸、ジオール成分としてスピログリコールを共重合した成分を有するポリエステルであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の積層フィルム。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の積層フィルムを含んでなることを特徴とする熱線カットフィルム。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の積層フィルムを含んでなることを特徴するプラズマディスプレイ用フィルター。
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