JP4899913B2 - 積層フィルムおよび携帯電話用成型加飾フィルム - Google Patents

積層フィルムおよび携帯電話用成型加飾フィルム Download PDF

Info

Publication number
JP4899913B2
JP4899913B2 JP2007035855A JP2007035855A JP4899913B2 JP 4899913 B2 JP4899913 B2 JP 4899913B2 JP 2007035855 A JP2007035855 A JP 2007035855A JP 2007035855 A JP2007035855 A JP 2007035855A JP 4899913 B2 JP4899913 B2 JP 4899913B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
layer
resin
film
layers
thickness
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2007035855A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2008200861A (ja
JP2008200861A5 (ja
Inventor
俊行 水野
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toray Industries Inc
Original Assignee
Toray Industries Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toray Industries Inc filed Critical Toray Industries Inc
Priority to JP2007035855A priority Critical patent/JP4899913B2/ja
Publication of JP2008200861A publication Critical patent/JP2008200861A/ja
Publication of JP2008200861A5 publication Critical patent/JP2008200861A5/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4899913B2 publication Critical patent/JP4899913B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Laminated Bodies (AREA)

Description

本発明は、少なくとも2種類の樹脂からなる層を積層した構造を有し、自由に反射帯域を選択できる積層フィルムに関するものであり、さらに詳しくは、屋外で使用されるときの紫外線に対する耐光性に対し優れた携帯電話用成型加飾フィルムに関するものである。
自動車関係の装飾部品をはじめとして各種家電機器、建築部材などの製品(部品)において、意匠性を高めるために木目調、布目調、金属調などさまざまに加飾したものが用いられているが、最近では高輝度の金属調の外観が求められるようになってきている。
各種成形部品へ金属調を付与する手法としては、もっとも一般的に用いられる手法は塗装である。塗装はさまざまな意匠や機能を製品に付与できる反面、有機溶剤などを使用することが多く、環境に与える影響が大きい。また、塗膜の影響でリサイクルが容易にできないこともあり、昨今の環境問題の高まりのなかで塗装工程の存在が問題視されている。
金属調を付与する別の手法として、メッキや蒸着などがある。メッキや蒸着の場合も、金属層のためにリサイクルが困難であったりする問題があるが、特にメッキの場合には重金属による環境への影響が大きいため、その代替えが強く求められている。さらに、メッキや蒸着などの場合、その金属層のために電磁波シールド性が発生するため、自動車や携帯電話などの加飾材料として用いると、電波障害を生じたりする場合があり問題になりつつある。
一方、熱可塑性樹脂を多層に積層したフィルムは、種々提案されており、例えば、耐引裂性に優れた多層に積層したフィルムをガラス表面に貼りつけることにより、ガラスの破損および飛散を大幅に防止できるものとして利用されている(たとえば特許文献1〜3参照)。
また、屈折率の異なる樹脂層を交互に多層に積層することより、選択的に特定の波長を反射するフィルム(たとえば特許文献4〜6参照)等が存在する。これらの中で選択的に特定の波長を反射するフィルムは、特定の光を透過あるいは反射するフィルターとして作用し、液晶ディスプレイなどのバックライト用のフィルムとして利用されている。
この選択的に特定の波長の光を反射するフィルムは、反射帯域を可視光線とすることにより、金属調とすることが可能である。しかしながら、従来の選択的に特定の波長の光を反射する積層フィルムは成形性が不十分であった。このため、真空成形、真空圧空成形、プラグアシスト真空圧空成形、インモールド成形、インサート成形、絞り成形などの成形を行っても、所望の形状とすることが難しかった。また、成形により延伸された部分は薄くなるため、色変化が生じ、金属調を損なうという問題があった。また、延伸された部分が非常に層間剥離しやすくなるという問題もあった。さらに、従来のフィルムは、反射特性が不適であるために、着色して見えるという問題もあった。
さらに、これら金属調フィルムは構成体全てが樹脂で構成されるため、屋外での使用や強い蛍光灯の光の環境下においては、紫外線による樹脂の劣化により、長期の使用後の性能劣化や着色が避けられなかった。この問題を改善するために、紫外線吸収剤を樹脂に添加することも可能であるが、その場合は添加した紫外線吸収剤自体による着色が顕著になり、加飾材料としての使用は著しく限定されたものとなってしまっていた。すなわち、従来技術は、以下の要件をすべて満たすものではなかった。
1)電磁波を透過する金属調の材料
2)成形加工が可能であり、成形加工後も色変化がなく、かつ層間剥離が生じにくい材料
3)初期の着色性が優れ、長期耐光性を有す
4)色づきのない、自然な金属調の外観を有する材料
特開平6-190995号公報(第2頁) 特開平6-190997号公報(第2頁) 特開平10-76620号公報(第2頁) 特開平3-41401号公報(第2頁) 特開平4-295804号公報(第2頁) 特表平9-506837号公報(第2頁)
本発明は、上記した従来技術の問題点に鑑み、電磁波を透過し、高輝度でかつ自然な金属調となりながら、初期の着色がなく、耐光性や成形性に優れ、成形後も層間剥離がなく金属調を維持するフィルムを提供することを課題とする。
また、環境負荷が小さく、リサイクル性にも優れ、電磁波障害を起こさない成形体を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明の反射フィルムは、少なくとも2種類の可塑性樹脂層が厚み方向に交互に30層以上積層された積層フィルムであって、波長400〜1000nmにおける反射率が30%以上、150℃における引張試験においてフィルム長手方向および幅方向の100%伸度時の引張応力が3MPa以上90MPa以下、層対厚み10nm以上220nm未満の層の数が層対厚み220nm以上320nm以下の層の数より多く、積層フィルム中にマロン酸エステル系化合物または蓚酸アニリド系化合物から選ばれた紫外線吸収剤を少なくとも1種以上含有し、該紫外線吸収剤の含有量が、フィルムの総重量に対し0.1〜10重量%であることを特徴とする。
本発明の積層フィルムは、高輝度でかつ自然な金属調となりながら、成形性に優れ、成形後も層間剥離がなく金属調を維持するものである。
また、波長帯域400nm〜1000nmの平均の透過率が4%以上55%以下とすることにより、金属調の色合いの調整が容易となる。
また、積層フィルムの動摩擦係数が0.5以下とすることにより、真空成形、真空圧空成形、プラグアシスト真空圧空成形、インモールド成形、インサート成形などでの成形性をさらに向上することも可能である
また、樹脂Aと樹脂BのSP値の差の絶対値を1.0以下とすることにより、さらに成形後の層間剥離をおきにくくすることが可能である。
また、本発明の積層フィルムを含んでなる成形体は、リサイクル性にも優れ、電磁波障害を起こさないものであり、さらに初期の着色性が優れ、長期間にわたって劣化による色づきを抑制することが出来る。
上記目的を達成するため本発明の積層フィルムは、樹脂Aからなる層(A層)と樹脂Bからなる層(B層)を交互にそれぞれ30層以上積層した構造を含んでなり、波長帯域400nm〜1000nmの相対反射率が30%以上であり、150℃における引張試験において、フィルム長手方向および幅方向の100%伸度時の引張応力が3MPa以上90MPa以下であり、かつ層対厚み10nm以上220nm未満の層の数が、層対厚み220nm以上320nm以下の層の数より多くなければならない。このようなフィルムは、高輝度でかつ自然な金属調となりながら、成形性に優れ、成形後も層間剥離がなく金属調を維持するものである。また、本発明の積層フィルムは、ポリマーから構成されるため、電磁波を透過する金属調のフィルムとなる。ここで、電磁波とは、赤外線の一部と、周波数が3Hz〜3THzのものを言う。
本発明における樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれでもよく、ホモ樹脂であってもよく、共重合または2種類以上のブレンドであってもよい。より好ましくは、成形性が良好であるため、熱可塑性樹脂である。また、各樹脂中には、各種添加剤、例えば、酸化防止剤、帯電防止剤、結晶核剤、無機粒子、有機粒子、減粘剤、熱安定剤、滑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、屈折率調整のためのドープ剤などが添加されていてもよい。
熱可塑性樹脂の例としては、ポリエチレン・ポリプロピレン・ポリスチレン・ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン樹脂、脂環族ポリオレフィン樹脂、ナイロン6・ナイロン66などのポリアミド樹脂、アラミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート・ポリブチレンテレフタレート・ポリプロピレンテレフタレート・ポリブチルサクシネート・ポリエチレン−2,6−ナフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、4フッ化エチレン樹脂・3フッ化エチレン樹脂・3フッ化塩化エチレン樹脂・4フッ化エチレン−6フッ化プロピレン共重合体・フッ化ビニリデン樹脂などのフッ素樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリグリコール酸樹脂、ポリ乳酸樹脂、などを用いることができる。この中で、強度・耐熱性・透明性の観点から、特にポリエステルであることがより好ましい。
本発明で言うポリエステルとしては、ジカルボン酸成分骨格とジオール成分骨格との重縮合体であるホモポリエステルや共重合ポリエステルのことをいう。ここで、ホモポリエステルとしては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンジフェニルレートなどが代表的なものである。特にポリエチレンテレフタレートは、安価であるため、非常に多岐にわたる用途に用いることができ好ましい。
また、本発明における共重合ポリエステルとは、次にあげるジカルボン酸骨格を有する成分とジオール骨格を有する成分とより選ばれる少なくとも3つ以上の成分からなる重縮合体のことと定義される。ジカルボン酸骨格を有する成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、シクロヘキサンジカルボン酸とそれらのエステル誘導体などが挙げられる。グリコール骨格を有する成分としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタジオール、ジエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2−ビス(4’−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、イソソルベート、1,4−シクロヘキサンジメタノール、スピログリコールなどが挙げられる。
また、本発明で言うA層とB層については、A層の面内平均屈折率はB層の面内平均屈折率より相対的に高いものである。また、A層の面内平均屈折率とB層の面内平均屈折率の差が、0.03以上であることが好ましい。より好ましくは0.05以上であり、さらに好ましくは0.1以上である。屈折率差が0.03より小さい場合には、十分な反射率が得られず、好ましくないものである。また、A層の面内平均屈折率と厚み方向屈折率の差が0.03以上であり、B層の面内平均屈折率と厚み方向屈折率差が0.03以下であると、入射角が大きくなっても、反射ピークの反射率低下が起きないため、より好ましい。
本発明における樹脂Aと樹脂Bの好ましい組み合わせとしては、樹脂Aと樹脂BのSP値の差の絶対値が、1.0以下であることが第一に好ましい。SP値の差の絶対値が1.0以下であると層間剥離が生じにくくなる。より好ましくは、樹脂Aからなる層と樹脂Aと同一の基本骨格を含む樹脂Bからなる層を有していることが好ましい。ここで基本骨格とは、樹脂を構成する繰り返し単位のことであり、例えば、一方の樹脂がポリエチレンテレフタレートの場合は、エチレンテレフタレートが基本骨格である。また別の例としては、一方の樹脂がポリエチレンの場合、エチレンが基本骨格である。樹脂Aと樹脂Bが同一の基本骨格を含む樹脂であると、さらに層間での剥離が生じにくくなるものである。
樹脂Aと樹脂Bの好ましい組み合わせとしては、第二としては、樹脂Aと樹脂Bのガラス転移温度差が20℃以下であることが好ましい。ガラス転移温度差が20℃より大きい場合には積層フィルムを製膜する際の厚み均一性が不良となり、金属光沢の外観不良となる。また、積層フィルムを成形する際にも、過延伸が発生するなどの問題が生じやすいためである。
また、本発明の積層フィルムでは、樹脂Aがポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートであり、樹脂Bがスピログリコールを含んでなるポリエステルであることが好ましい。スピログリコールを含んでなるポリエステルとは、スピログリコールを共重合したコポリエステル、またはホモポリエステル、またはそれらをブレンドしたポリエステルのことを言う。スピログリコールを含んでなるポリエステルは、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートとのガラス転移温度差が小さいため、成形時に過延伸になりにくく、かつ層間剥離もしにくいために好ましい。より好ましくは、樹脂Aがポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートであり、樹脂Bがスピログリコールおよびシクロヘキサンジカルボン酸を含んでなるポリエステルであることが好ましい。樹脂Bがスピログリコールおよびシクロヘキサンジカルボン酸を含んでなるポリエステルであると、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートとの面内屈折率差が大きくなるため、高い反射率が得られやすくなる。また、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートとのガラス転移温度差が小さく、接着性にも優れるため、成形時に過延伸になりにくく、かつ層間剥離もしにくい。
また、本発明の積層フィルムでは、樹脂Aがポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートであり、樹脂Bがシクロヘキサンジメタノールを含んでなるポリエステルであることが好ましい。シクロヘキサンジメタノールを含んでなるポリエステルとは、シクロヘキサンジメタノールを共重合したコポリエステル、またはホモポリエステル、またはそれらをブレンドしたポリエステルのことを言う。シクロヘキサンジメタノールを含んでなるポリエステルは、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートとのガラス転移温度差が小さいため、成形時に過延伸になることがなりにくく、かつ層間剥離もしにくいために好ましい。より好ましくは、樹脂Bがシクロヘキサンジメタノールの共重合量が15mol%以上60mol%以下であるエチレンテレフタレート重縮合体である。このようにすることにより、高い反射性能を有しながら、特に加熱や経時による光学的特性の変化が小さく、層間での剥離も生じにくくなる。シクロヘキサンジメタノールの共重合量が15mol%以上60mol%以下であるエチレンテレフタレート重縮合体は、ポリエチレンテレフタレートと非常に強く接着する。また、そのシクロヘキサンジメタノール基は幾何異性体としてシス体あるいはトランス体があり、また配座異性体としてイス型あるいはボート型もあるので、ポリエチレンテレフタレートと共延伸しても配向結晶化しにくく、高反射率で、熱履歴による光学特性の変化もさらに少なく、製膜時のやぶれも生じにくいものである。
本発明の樹脂Aからなる層(A層)と樹脂Bからなる層(B層)を交互に積層した構造を含むとは、A層とB層を厚み方向に交互に積層した構造を有している部分が存在することと定義される。すなわち、本発明のフィルム中のA層とB層の厚み方向における配置の序列がランダムな状態ではないことが好ましく、A層とB層以外の第3の層以上についてはその配置の序列については特に限定されるものではない。また、A層、B層、樹脂CからなるC層を有する場合には、A(BCA)n、A(BCBA)n、A(BABCBA)nなどの規則的順列で積層されることがより好ましい。ここでnは繰り返しの単位数であり、例えばA(BCA)nにおいてn=3の場合、厚み方向にABCABCABCAの順列で積層されているものを表す。
また、本発明では樹脂Aからなる層(A層)と樹脂Bからなる層(B層)を交互にそれぞれ30層以上含まなければならない。より好ましくは、200層以上である。さらに、好ましくはA層とB層の総積層数が600層以上である。A層とB層をそれぞれ30層以上積層した構造を含まないと、十分な反射率が得られなくなり、輝度の高い金属調の外観とはならない。また、樹脂Aからなる層(A層)と樹脂Bからなる層(B層)を交互にそれぞれ200層以上含まれていると、波長帯域400nm〜1000nmの相対反射率を40%以上とすることが容易となる。また、A層とB層の総積層数が600層以上であると、波長帯域400nm〜1000nmの相対反射率を60%以上とすることが容易となり、非常に輝度の高い金属調の外観を有することが容易となる。また、積層数の上限値としては特に限定するものではないが、装置の大型化や層数が多くなりすぎることによる積層精度の低下に伴う波長選択性の低下を考慮すると、1500層以下であることが好ましい。
本発明の積層フィルムでは、波長帯域400nm〜1000nmの相対反射率が30%以上でなければならない。すなわち、本発明の相対反射率の測定法によって求められる400nm〜1000nmの波長において相対反射率が30%以上でなければならない。波長帯域400nm〜1000nmの相対反射率が30%以上であると、輝度の高い金属調のフィルムとすることが可能となる。また、成形後も金属調を維持し、視野角によっても色の変化がほとんど起きないものとなる。これは、可視光より高波長側(700nm以上)も相対反射率が30%以上であるためで、例え延伸によってフィルム厚みが薄くなったり、視野角によって反射帯域が低波長側にシフトしても、可視光領域の相対反射率は30%以上を維持できるためである。より好ましくは、波長帯域400nm〜1000nmの相対反射率が40%以上でなければならない。さらに好ましくは、波長帯域400nm〜1000nmの相対反射率が80%以上でなければならない。相対反射率があがるほど、より高い輝度の金属調とすることが可能となる。また、波長帯域400nm〜1200nmの相対反射率が30%以上であるのもより好ましい。この場合、より高い絞り比で成形しても、色づきなどが起こりにくく、金属調を維持することができる。
本発明の積層フィルムは、150℃における引張試験において、フィルム長手方向および幅方向の100%伸度時の引張応力が3MPa以上90MPa以下でなければならない。このような場合、成形性に優れたものとなり、真空成形、真空圧空成形、プラグアシスト真空圧空成形、インモールド成形、インサート成形、冷間成形、プレス成形、絞り成形などの各種成形において、任意の形状に成形することが容易となる。より好ましくは、150℃における引張試験において、フィルム長手方向および幅方向の100%伸度時の引張応力が3MPa以上50MPa以下である。このような場合、より高い絞り比でも成形可能となる。150℃における引張試験において、フィルム長手方向および幅方向の100%伸度時の引張応力が3MPa以上90MPa以下とするためには、樹脂Aが結晶性樹脂であり、樹脂Bがシクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、ネオペンチルグリコールなどの嵩高い基を有する非晶性樹脂であることが好ましい。このような場合、二軸延伸後においても樹脂Bはほとんど配向および結晶化していないため、引張応力が低くなるものである。また、各樹脂の融点以上でA層とB層からなる積層体を形成し冷却固化せしめるまでの時間が3分以上であることも好ましい。これは、A層とB層の界面に形成される混在層が厚くなるために、引張応力が低くなったものと推察している。さらに、層厚みが20nm以下の層が含まれているのも好ましい。層厚みが20nm以下になると、延伸してもさらに配向や結晶化が進みにくくなるために、引張応力も低下するものである。
また、本発明の積層フィルムは、層対厚み10nm以上220nm未満の層の数が、層対厚み220nm以上320nm以下の層の数より多くなければならない。このようにすることにより、ほとんど色づきのない金属調とすることが可能となる。ここで、層対厚みとは、隣接する樹脂Aからなる層(A層)と樹脂Bからなる層(B層)のそれぞれの層厚みを足した厚みである。また、層対厚みは、A層のみについて一方の表面から数えたm番目のA層と、B層のみについて同表面から数えたm番目のB層の層厚みを足したものでなければならない。ここでmは整数を表している。例えば、一方の表面から反対側の表面にA1層/B1層/A2層/B2層/A3層/B3層・・・・の順番で並んでいた際、A1層とB1層が1番目の層対であり、A2層とB2層が2番目の層対であり、A3層とB3層が3番目の層対となる。層対厚み10nm以上220nm未満の層の数が、層厚み220nm以上320nm以下の層の数と同数または少ないと、波長帯域400nm〜1100nmの反射帯域において低波長側ほど反射率が低下するため、赤味をおびた外観となるので好ましくない。これは、低波長側の反射を起こす層対の密度が薄くなるために起こるものである。従って、積層フィルムを構成する層の層対厚みの序列としては、単調に等差数列的に層対厚みが増加もしくは減少するのではなく、上記条件を満たしながら等比数列的に層対厚みが増加もしくは減少することが好ましい。より好ましくは、層対厚み120nm以上220nm未満の層の数が、層対厚み220nm以上320nm以下の層の数の1.05倍以上2.5倍以下であることがこのましい。この場合、まったく色づきのない金属調とすることが可能である。
また、本発明の積層フィルムでは、フィルム中にマロン酸エステル系化合物または蓚酸アニリド系化合物から選ばれた紫外線吸収剤を含有することが必要である。本発明の多層フィルムは加飾フィルムという用途上、外観の色合いや明るさが大変重要視される。これは、塗料の種類が何万色も用意されていることからも分かるように、色や明るさの微妙な違いが、使用者に与える印象を大きく変えてしまうためであり、加飾フィルムの生命線であると言える。一方、加飾フィルムとしての機能上、本フィルムは製品の表層に張り合わせて使用されることが多く、常時外部からの光に晒されることになる。一般に高分子化合物は多数の吸収波長を持っており、特に紫外領域の短波長領域の光を吸収すると、分子が破壊されてラジカルが形成され、経時で着色するという特性を持っているが、本フィルムでは、この経時着色がフィルムの外見の色合いという重要な機能を著しく損ねてしまう。紫外線による経時の色合い変化を防止するためには、紫外線吸収剤を添加すれば、色合いの変化は大きく抑制することが可能である。しかしながら、一般に使用されるベンゾフェノン系やベンゾトリアゾール系、トリアジン系などの紫外線吸収剤では、それ自身が近紫外の可視光を吸収してしまうために、添加されたフィルムは黄色に着色してしまうことが避けられない。本発明の積層フィルムでは、構造の原理上、可視領域の任意の波長域の反射率を調節することが可能であるため、たとえ、フィルム自体が特定の可視光域に吸収を持ってしまう場合でも、それ以外の帯域の反射率を下げて、吸収帯域の反射率と合わせることで、色合いは補正できる。しかしながら、そのため全体の反射率が落ちてしまい、全体として暗い印象のフィルムとなり、明度の高いフィルムは得られない。上記のような理由から、従来は、加飾用途の積層フィルムの色設計には大きな制約があった。
本発明に含有させるマロン酸エステル系化合物または蓚酸アニリド系化合物から選ばれた紫外線吸収剤はベンゼン核のオルソ位がヒドロキシル基で置換されていないため、可視光領域に近接した350nm付近の長波長部に吸収ピークを有さず、一般的に使用されるベンゾフェノン系やベンゾトリアゾール系、トリアジン系などの紫外線吸収剤では避けられない黄味着色が極めて少ない。紫外線吸収剤のフィルム中の含有量は0.1〜10重量%であることが好ましい。より好ましくは0.5〜5重量%、更には1〜5重量%であることが最も好ましい。紫外線吸収剤の含有量が0.1重量%未満の場合は、耐光性が不十分となり、長時間使用している間にフィルムが劣化して着色するために、商品価値がなくなる問題がある。一方、10重量%を超える場合には、成形時の熱分解が顕著になり、フィルムの生産性および機械的性能が著しく低下するために使用できない。また、ベンゼン核のオルソ位がヒドロキシル基で置換されていない構造を有する紫外線吸収剤には、マロン酸エステル系や蓚酸アニリド系があるが、中でもマロン酸エステル系は耐熱性にも優れるため特に好ましい。例えばマロン酸エステル系紫外線吸収剤としては、テトラエチル−2,2'−(1,4−フェニレン−ジメチリデン)−ビスマロネート、マロン酸[(4−メトキシフェニル)−メチレン]−ジメチルエステル、(p−メトキシベンジリデン)マロン酸ジメチルエステルがあり、また蓚酸アニリド系紫外線吸収剤は蓚酸とアニリンとの反応生成物から誘導された化合物であり、例えばN-(2-エトキシ-5-t- ブチルフェニル)蓚酸ジアミド、N-(2- エチルフェニル)-N'-(2-エトキシフェニル)蓚酸ジアミドなどを挙げることができる。
本発明の積層フィルムでは、波長帯域400nm〜1000nmの平均の透過率が4%以上55%以下であることが好ましい。波長帯域400nm〜1000nmの平均の透過率が4%以上55%以下であると、高輝度でかつ黒味のある金属調とすることが可能となる。輝度を高めるためには反射率が高い方が好ましいが、一般的に金属調の加飾として好まれるのは「黒味がある」ものであり、このためには可視光線の光を完全に反射するのではなく一部吸収することが好ましい。従って、反射率が高すぎるために透過率が4%より小さい場合には、ほとんど吸収させることができないため、鏡のようにはなるものの金属の質感を完全には表現できなくなるものである。より好ましくは波長帯域400nm〜1000nmの平均の透過率が20%以上55%以下である。このような時、もっとも金属の質感を表現することが可能となる。
本発明の積層フィルムの少なくとも片面の動摩擦係数は0.5以下であることが好ましい。積層フィルムの動摩擦係数が0.5以下である場合、成型に用いる金型との滑りが良くなるために、さらに成形性が向上する。
本発明の積層フィルムでは、1.2倍以上2倍以下の延伸加工された部位における波長帯域400nm〜700nmの相対反射率が30%以上であることが好ましい。1.2倍以上2倍以下の延伸加工された部位における波長帯域400nm〜700nmの相対反射率が30%以上であると、成形後も色づきなく金属調を維持することができる。
さらに本発明の積層フィルムでは、少なくとも片面に3μm以上のポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートを主成分とする層を有することが好ましい。より好ましくは、5μm以上のポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートを主成分とする層を有する。また、両面に3μm以上のポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートを主成分とする層を有するとさらに好ましい。3μm以上のポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートからなる層がない場合には、表面に傷が入った場合などに、傷が非常に見えやすくなるため好ましくない。
また、本発明の積層フィルム中には、紫外線吸収剤以外に、各種添加剤、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、易滑剤、顔料、染料、耐電防止剤、充填剤、核剤などが、その特性を低下させない程度に添加されていても良い。特に易滑剤は、滑り性を付与する観点から添加することが好ましい。易滑剤としては、有機、無機滑材に大別ができる。その形状としては、凝集粒子、真球状粒子、数珠状粒子、コンペイト状粒子、鱗片状粒子などの形状粒子を使うことができる。また、その材質としては、無機系としては、酸化珪素、炭酸カルシウム、酸化チタン、アルミナ、ジルコニア、珪酸アルミニウム、マイカ、クレー、タルク、硫酸バリウム等を、有機系としては、ポリイミド系樹脂、オレフィンあるいは変性オレフィン系樹脂、架橋ないし無架橋ポリスチレン系樹脂、架橋ないし無架橋アクリル樹脂、フッ素系樹脂、シリコン系樹脂等の樹脂、また有機滑材としてステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、フマール酸アミドなどの各種アミド化合物を挙げることができる。また、これら易滑剤は、積層構造の最表層のみに添加することで、ヘイズが上がらず、コスト面でも有利であり、より好ましい。
また、本発明の積層フィルムでは、その表面に易接着層、易滑層、ハードコート層、帯電防止層、耐摩耗性層、反射防止層、色補正層、紫外線吸収層、印刷層、金属層、透明導電層、ガスバリア層、ホログラム層、剥離層、粘着層、エンボス層、接着層などの機能性層を形成してもよい。
本発明の成形体としては、上記積層フィルムを含んでなければならない。本発明の積層フィルム以外に、ハードコート層、エンボス層、耐候層(UVカット層)、着色層、接着層、基材樹脂層などのいずれかを含んでなることも好ましい。このよう成形体は、オールポリマーから構成することが可能であり、金属や重金属などを含まないため、環境負荷が小さく、リサイクル性にも優れ、電磁波障害を起こさないものである。本発明の成形体では、特に着色層を有することが好ましい。本発明の積層フィルムでは、可視光線の一部が透過する場合があるため、着色層を設けることにより、成形体の色目を調整することが可能となる。また、真空成形、真空圧空成形、プラグアシスト真空圧空成形、インモールド成形、インサート成形、冷間成形、プレス成形、絞り成形などの各種成型法が適用できるため、低コストで成形体を得ることが可能である。このような成形体は、携帯電話、電話、パソコン、オーディオ機器、家電機器、無線通信機器、車載部品、建築材料、ゲーム機、アミューズメント機器、包装容器などに好ましく用いることができる。特に、本発明の成形体は、携帯電話、電話、パソコン、オーディオ機器、家電機器、無線通信機器、車載部品、ゲーム機などの無線で情報通信を行う機能を有する機器(無線情報通信機器)の装飾部品として用いることが好ましい。本発明の成形体は、金属調の外観を有しながら、電磁波透過性に優れるので、従来の金属調装飾材料のように電磁波障害を引き起こさないものである。このため、本発明の成形体を情報通信機器の装飾部品として用いると、機器の小型化や薄型化が可能となったり、情報通信機器内部の回路設計の自由度が増すものである。
また本発明の積層フィルムはハーフミラーとしても利用可能である。ハーフミラーとは、ある条件では鏡のようにふるまい、別の条件では透明体のようにふるまうものである。鏡のようにふるまうためには、透過光を極力少なくなるように、光を調整する。本発明の積層フィルムを、ハーフミラーとして用いる際は、積層フィルムの波長帯域400nm〜1000nmの相対反射率が30%以上70%以下であることが好ましい。また、本発明の積層フィルムを透明樹脂と一体成形して用いることも好ましい。さらに、本発明の積層フィルムの少なくとも片面の一部に光を遮蔽する層を設けることにより、ミラーとなる部分と、ハーフミラーとなる部分を同時に形成することも可能である。すなわち、光を遮蔽する層を設けた部分は、絶えず光の透過が生じないため、鏡のようになる。一方、光を遮蔽する層を設けなかった部分は、ハーフミラーとなるものである。ここで、光を遮蔽する層としては、黒色層を印刷などにより形成する方法が簡便である。このようなハーフミラーは、携帯電話、電話、パソコン、オーディオ機器、家電機器、無線通信機器、車載部品、建築材料、ゲーム機、アミューズメント機器、包装容器などに好ましく用いることができる。
本発明の回路搭載シートは、上記積層フィルムと、導電性パターン層とを少なくとも含んでなければならない。本発明の積層フィルムは、金属調の外観を有しながら、ポリマーから構成されるため、導電性のないものである。従って、導電性パターン層を形成しても、回路として問題なく機能するものである。ここで導電性パターン層とは、金属泊のエッチングや金属ペーストの印刷や蒸着・スパッタ膜のエッチングによって形成された微細パターンのことを言う。また、アンテナとして用いられる金属線や、金属蒸着膜も含まれる。導電性物質としては、銅、アルミ、銀などが好ましい。特に送受信特性としては銅がもっとも好ましい。一方、低コスト化の観点からは、印刷方式でかつ低温熱処理にて導電性パターンを形成できる、銀ペーストが好ましい。これら導電性パターン層は、アンテナや、回路としての機能を有する。
本発明の導電性パターン層は、本発明の積層フィルムの表面に直接形成されても良い。また、ポリイミドフィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、液晶フィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、脂環族ポリオレフィンフィルム、PETGフィルム、ABSフィルム、PVCフィルムなどの各種耐熱性フィルムの表面に導電性パターン層を設け、これと積層フィルムを接着剤や粘着剤などで貼り合わせる方法なども好ましい。
一方、本発明の回路搭載シートは、着色層を有していることが好ましい。着色層としては、樹脂コーティング層中や、粘着層中や、フィルム・シート中に、顔料や染料を分散し、着色したものを言う。その色としては、特に限定するものではなく、意匠性から種々選択が可能であるが、特に好ましくは黒色であると良い。この場合、積層フィルムによる反射色が強調されて見えるため意匠性がすぐれたものとなるばかりか、隠蔽性もますため、回路を隠すことが容易となる。
本発明の回路搭載シートを構成する該積層フィルムは、25〜80℃におけるtanδが0.02以下であることが好ましい。tanδが0.02以下であると、例えば導電性パターン層を直接該積層フィルムの表面上に形成する際にも、その加工工程での熱履歴により導電性パターンの精度が低下したり、著しく平面性を損なわれることがない。また、長時間回路が動作しても絶縁特性が低下しない優れた回路搭載シートとなる。
該積層フィルムの一方の表面側に着色層と導電性パターン層があり、もう一方の表面側に印刷層があることも好ましい。このような構成にすると、金属調の基材上に印刷によるデザインがはっきりと捉えられるようになる。
また、本発明の回路搭載シートを構成する該積層フィルムが立体形状を有することも好ましい。すなわち、本発明の好ましい積層フィルムは金属調の高い意匠性を有しながら、成形も可能であるため、複雑な形状を有する回路を作製することもできる。例えば、銅線アンテナコイルの挿入する型を、該積層フィルムに真空圧空成形などで形成すれば、アンテナコイルの位置決めが非常に簡単にできるようになる。また、この場合アンテナの部分が浮き出た金属調のデザインとすることができる。
本発明の回路搭載シートでは、該積層フィルムの飽和含水率が1.0%以下であることが好ましい。飽和含水率が1.0%より大きいと、非接触型ICカードなどとした際、受信特性に影響を与える場合があるためである。また、回路として使用する際も、飽和含水率が1.0%より大きいと、湿度膨張係数の影響により、回路間の間隔が変化し絶縁不良などが発生する場合がある。
本発明のICカード・ICラベルは、上記回路搭載シートを含んでなければならない。本発明の回路搭載シート以外に、ハードコート層、エンボス層、耐候層(UVカット層)、着色層、接着層などのいずれかを含んでなることも好ましい。このようなICカード・ラベルは、回路の基材がポリマーのみから構成され、金属や重金属などを含まないため、環境負荷が小さく、リサイクル性にも優れ、電磁波障害を起こさないものである。
本発明のICカード・ICラベルは、真空成形、真空圧空成形、プラグアシスト真空圧空成形、インモールド成形、インサート成形、冷間成形、プレス成形などの各種成型法が適用できるため、低コストで立体形状を形成するものとすることが可能である。本発明のICカード・ICラベルは、無線式ICカードや無線式ICラベルに好適であり、高級感のあるRFIDタグを提供できるものである。
次に、本発明の積層フィルムの好ましい製造方法を以下に説明する。
熱風中あるいは真空下で乾燥された2種類の樹脂Aのペレットおよび紫外線吸収剤と、樹脂Bのペレットを用意し、別々の押出機に供給される。なお、紫外線吸収剤は、あらかじめ樹脂Aにコンパウンドしておいたものを添加する方式でも構わない。押出機内において、融点以上に加熱溶融された樹脂は、ギヤポンプ等で樹脂の押出量を均一化され、フィルター等を介して異物や変性した樹脂などを取り除かれる。
これらの2台以上の押出機を用いて異なる流路から送り出された樹脂組成物AおよびBは、次に多層積層装置に送り込まれる。多層積層装置としては、マルチマニホールドダイやフィードブロックやスタティックミキサー等を用いることができる。また、これらを任意に組み合わせても良い。本発明の特徴である樹脂Aからなる層(A層)と樹脂Bからなる層(B層)を交互にそれぞれ30層以上積層した構造を含んでなり、かつ層対厚み10nm以上220nm未満の層の数が、層対厚み220nm以上320nm以下の層の数より多いことを達成するためには、多数の微細スリットを有する部材を少なくとも1個有するフィードブロックを用いることが好ましい。さらに、本発明の効果を効率よく得るためには、多数の微細スリットを有する部材を少なくとも別個に2個以上含むフィードブロック(図1〜図4)を用いることが好ましい。このようなフィードブロックを用いると、装置が極端に大型化することがないため、熱劣化による異物が少なく、積層数が極端に多い場合でも、高精度な積層が可能となる。また、幅方向の積層精度も従来技術に比較して格段に向上する。また、任意の層厚み構成を形成することも可能となる。このため、本発明の好ましい態様である以下の構成を達成することが容易になる。
a)樹脂Aからなる層(A層)と樹脂Bからなる層(B層)の総積層数が600層以上である。
b)波長帯域400nm〜1000nmの相対反射率が80%以上である。
c)層対厚み120nm以上220nm未満の層の数が、層厚み220nm以上320nm以下の層の数の1.05倍以上2.5倍以下である。
d)少なくとも片面に3μm以上のポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートを主成分とする層を有する。
ここで、多数の微細スリットを有する部材を少なくとも別個に2個以上含むフィードブロックについて詳しく以下に説明する。本発明のフィードブロックは、主に図1に示す「積層装置」と図4に示す「合流装置」からなる。図1の「積層装置」は、当該フィードブロックにおいて別個に供給される樹脂A,Bから積層を形成する部分である。図1において、部材1〜9がこの順に重ねられ、積層装置10を形成する。
図1の積層装置10は、樹脂導入部材2,4,6,8に由来して4つの樹脂導入口を有するが、例えば樹脂Aを樹脂導入部材2,6の導入口11から供給し、樹脂Bを樹脂導入部材4,8の導入口11から供給する。
すると、スリット部材3は、樹脂導入部材2から樹脂A、樹脂導入部材4から樹脂Bの供給を受け、スリット部材5は、樹脂導入部材6から樹脂A、樹脂導入部材4から樹脂Bの供給を受け、スリット部材7は、樹脂導入部材6から樹脂A、樹脂導入部材8から樹脂Bの供給を受けることになる。
ここで、各スリットに導入される樹脂の種類は、樹脂導入部材2,4,6,8における液溜部12の底面とスリット部材における各スリットの端部との位置関係により決定される。すなわち、図3に示すように、スリット部材における各スリットの頂部の稜線13は、スリット部材の厚み方向に対して傾斜を有する(図2(b),(c))。そして、樹脂導入部材2,4,6,8における液溜部12の底面の高さは、前記稜線13の上端部14と下端部15との間の高さに位置する。このことにより、前記稜線13が上がった側からは樹脂導入部材2,4,6,8の液溜部12から樹脂が導入されるが(図3中16)、前記稜線13が下がった側からはスリットが封鎖された状態となり樹脂は導入されない。かくして各スリットごとに樹脂AまたはBが選択的に導入されるので、積層構造を有する樹脂の流れがスリット部材3,5,7中に形成され、当該部材3,5,7の下方の流出口17より流出する。
スリットの形状としては、樹脂が導入される側のスリット面積と樹脂が導入されない側のスリット面積が同一ではないことが好ましい。このような構造とすると、樹脂が導入される側と樹脂が導入されない側での流量分布を低減できるため、幅方向の積層精度が向上する。さらには、(樹脂が導入されない側のスリット面積)/(樹脂が導入される側のスリット面積)が0.2以上0.9以下であることが好ましい。より好ましくは0.5以下である。また、フィードブロック内の圧力損失が1MPa以上となることが好ましい。また、スリット長(図1中Z方向スリット長さの内、長い方)を20mm以上とすることが好ましい。一方、スリットの間隙や長さを調整することにより、各層の厚みを制御することが可能である。
また、各スリットに対応したマニホールドを有していることも好ましい。マニホールドにより、スリット内部での幅方向(図1中Y方向)の流速分布が均一化するため、積層されたフィルムの幅方向の積層比率を均一化することができ、大面積のフィルムでも精度良く積層することが可能となり、反射ピークの反射率を精度良く制御することができる。
また、一つの液溜部から二つ以上のスリット部材へ樹脂を供給することがより好ましい。このようにすると、例えわずかにスリット内部で幅方向に流量分布が生じていたとしても、次に説明する合流装置にてさらに積層されるため、積層比率としてはトータルでは均一化されるため、高次の反射帯域のむらを低減することが可能となる。
図1に示すようにスリット部材3,5,7の下方の流出口17は、3つの樹脂流れの積層構造が並列となる位置関係で配置され、また、樹脂導入部材4,6によって互いに隔てられている(図4中19L,20L,21L)。そこで、図4に示すような合流装置18により、中L−L’からM−M’にかけてのような、流路の規制による配置の転換が行われ(図4中19M,20M,21M)、3者の樹脂流れの積層構造も直列となる。当該樹脂流れは図4中M−M’からN−N’にかけて拡幅され、図4中N−N’より下流にて合流する。
かくして、極薄の樹脂層の任意かつ高精度な積層が可能となる。この装置では、各層の厚みをスリットの形状(長さ、幅)で調整できるため、任意の層厚みを達成することが可能となったものである。一方、従来の装置では、300層以上の積層を達成するためには、スクエアーミキサーを併用することが一般的であったが、このような方法では積層流が相似形で変形・積層されるために、任意の層厚みを達成することが困難であった。このため、本願の特徴である層対厚み10nm以上220nm以下の層の数が、層対厚み220nm以上320nm以下の層の数より多い層構成を高精度でかつ効率よく形成することは不可能であった。
次に、本発明の特徴である波長帯域400nm〜1000nmの相対反射率が30%以上とするためには、各層の層厚みを、下記式1に基づいて少なくとも波長帯域400nm〜1000nmで反射が起こるように設計する必要がある。さらに、層対厚みが一方の表面から反対側の表面にむかうにつれ、120nmから320nmに徐々に厚くなる層構成を少なくとも含んでなることが好ましい。また、反射率についてはA層とB層の屈折率差と、A層とB層の層数にて制御する。
2×(na・da+nb・db)=λ 式1
na:A層の面内平均屈折率
nb:B層の面内平均屈折率
da:A層の層厚み(nm)
db:B層の層厚み(nm)
λ:主反射波長(1次反射波長)
また、本発明では、層対厚み10nm以上220nm未満の層の数が、層対厚み220nm以上320nm以下の層の数より多くなければならないが、そのためには層対厚みは一方の表面から反対側の表面にむかうにつれ、層対順に対し一次関数状に増加または減少するのではなく、220nm〜320nmでの層対厚みの変化よりも、220nm未満での層対厚みの変化が緩やかであることが好ましい。具体的に図5を用いて説明する。図5は、400nm〜1200nmの波長帯域を反射するように、層対順に対し層対厚みが118〜370nmに変化するように設計したいくつかの例をしめしたものである。この例では、Aのタイプが層対厚み10nm以上220nm未満の層の数が、層対厚み220nm以上320nm以下の層の数より多いため好ましい。一方、Bのタイプでは層対厚み10nm以上220nm未満の層の数が、層対厚み220nm以上320nm以下の層の数と同数であるため、色づきのある金属調となりやすいため好ましくない。また、Cのタイプでは層対厚み10nm以上220nm未満の層の数が、層対厚み220nm以上320nm以下の層の数より少ないために、さらに色づきがきつくなるため好ましくないものである。
最大層対厚みから最小層対厚みまで徐々に厚みが薄くなる層構成に設計することが好ましい。この際、わずかな積層むらについては許容される。
さて、このようにして所望の層構成に形成した溶融積層体は、次にダイにて目的の形状に成形された後、吐出される。そして、ダイから吐出された多層に積層されたシートは、キャスティングドラム等の冷却体上に押し出され、冷却固化され、キャスティングフィルムが得られる。この際、ワイヤー状、テープ状、針状あるいはナイフ状等の電極を用いて、静電気力によりキャスティングドラム等の冷却体に密着させ急冷固化させることが好ましい。また、スリット状、スポット状、面状の装置からエアーを吹き出してキャスティングドラム等の冷却体に密着させ急冷固化させたり、ニップロールにて冷却体に密着させ急冷固化させる方法も好ましい。
このようにして得られたキャスティングフィルムは、必要に応じて二軸延伸することが好ましい。二軸延伸とは、長手方向および幅方向に延伸することをいう。延伸は、逐次に二方向に延伸しても良いし、同時に二方向に延伸してもよい。また、さらに長手方向および/または幅方向に再延伸を行ってもよい。特に本発明では、面内の配向差を抑制できる点や、表面傷を抑制する観点から、同時二軸延伸を用いることが好ましい。
逐次二軸延伸の場合についてまず説明する。ここで、長手方向への延伸とは、フィルムに長手方向の分子配向を与えるための延伸を言い、通常は、ロールの周速差により施され、この延伸は1段階で行ってもよく、また、複数本のロール対を使用して多段階に行っても良い。延伸の倍率としては樹脂の種類により異なるが、通常、2〜15倍が好ましく、積層フィルムを構成する樹脂のいずれかにポリエチレンテレフタレートを用いた場合には、2〜7倍が特に好ましく用いられる。また、延伸温度としては積層フィルムを構成する樹脂のガラス転移温度〜ガラス転移温度+100℃が好ましい。
このようにして得られた一軸延伸されたフィルムに、必要に応じてコロナ処理やフレーム処理、プラズマ処理などの表面処理を施した後、易滑性、易接着性、帯電防止性などの機能をインラインコーティングにより付与してもよい。
また、幅方向の延伸とは、フィルムに幅方向の配向を与えるための延伸を言い、通常は、テンターを用いて、フィルムの両端をクリップで把持しながら搬送して、幅方向に延伸する。延伸の倍率としては樹脂の種類により異なるが、通常、2〜15倍が好ましく、積層フィルムを構成する樹脂のいずれかにポリエチレンテレフタレートを用いた場合には、2〜7倍が特に好ましく用いられる。また、延伸温度としては積層フィルムを構成する樹脂のガラス転移温度〜ガラス転移温度+120℃が好ましい。
こうして二軸延伸されたフィルムは、平面性、寸法安定性を付与するために、テンター内で延伸温度以上融点以下の熱処理を行うのが好ましい。このようにして熱処理された後、均一に徐冷後、室温まで冷やして巻き取られる。また、必要に応じて、熱処理から徐冷の際に弛緩処理などを併用してもよい。
同時二軸延伸の場合について次に説明する。同時二軸延伸の場合には、得られたキャストフィルムに、必要に応じてコロナ処理やフレーム処理、プラズマ処理などの表面処理を施した後、易滑性、易接着性、帯電防止性などの機能をインラインコーティングにより付与してもよい。
次に、キャストフィルムを、同時二軸テンターへ導き、フィルムの両端をクリップで把持しながら搬送して、長手方向と幅方向に同時および/または段階的に延伸する。同時二軸延伸機としては、パンタグラフ方式、スクリュー方式、駆動モーター方式、リニアモーター方式があるが、任意に延伸倍率を変更可能であり、任意の場所で弛緩処理を行うことができる駆動モーター方式もしくはリニアモーター方式が好ましい。延伸の倍率としては樹脂の種類により異なるが、通常、面積倍率として6〜50倍が好ましく、積層フィルムを構成する樹脂のいずれかにポリエチレンテレフタレートを用いた場合には、面積倍率として8〜30倍が特に好ましく用いられる。特に同時二軸延伸の場合には、面内の配向差を抑制するために、長手方向と幅方向の延伸倍率を同一とするとともに、延伸速度もほぼ等しくなるようにすることが好ましい。また、延伸温度としては積層フィルムを構成する樹脂のガラス転移温度〜ガラス転移温度+120℃が好ましい。
こうして二軸延伸されたフィルムは、平面性、寸法安定性を付与するために、引き続きテンター内で延伸温度以上融点以下の熱処理を行うのが好ましい。この熱処理の際に、幅方向での主配向軸の分布を抑制するため、熱処理ゾーンに入る直前および/あるいは直後に瞬時に長手方向に弛緩処理することが好ましい。このようにして熱処理された後、均一に徐冷後、室温まで冷やして巻き取られる。また、必要に応じて、熱処理から徐冷の際に長手方向および/あるいは幅方向に弛緩処理を行っても良い。熱処理ゾーンに入る直前および/あるいは直後に瞬時に長手方向に弛緩処理する。
本発明に使用した物性値の評価法を記載する。
(物性値の評価法)
(1)フィルム断面観察
フィルムの層構成は、ミクロトームを用いて断面を切り出したサンプルについて、電子顕微鏡観察により求めた。すなわち、透過型電子顕微鏡HU−12型((株)日立製作所製)を用い、フィルムの断面を40000倍に拡大観察し、断面写真を撮影、した。なお、本発明の実施例では十分なコントラストを得るため、RuOを使用して染色した。
(2)相対反射率
日立製作所製 分光光度計(U−3410 Spectrophotomater)にφ60積分球130−0632((株)日立製作所)および10°傾斜スペーサーを取り付け反射率を測定した。なお、バンドパラメーターは2/servoとし、ゲインは3と設定し、187nm〜2600nmの範囲を120nmmin.の検出速度で測定した。また、反射率を基準化するため、標準反射板として付属のAl板を用いた。対象となる波長範囲において整数の波長の反射率を求めた。
(3)固有粘度
オルトクロロフェノール中、25℃で測定した溶液粘度から、算出した。また、溶液粘度はオストワルド粘度計を用いて測定した。単位は[dl/g]で示した。なお、n数は3とし、その平均値を採用した。
(4)剥離試験
JIS K5600(2002年)に従って試験を行った。なお、フィルムを硬い素地とみなし、2mm間隔で25個の格子状パターンを切り込んだ。また、約75mmの長さに切ったテープを格子の部分に接着し、テープを60°に近い角度で0.5〜1.0秒の時間で引き剥がした。ここで、テープにはセキスイ製セロテープ(登録商標)No.252(幅18mm)を用いた。評価結果は、格子1つ分が完全に剥離した格子の数で表した。
(5)ガラス転移温度
示差熱量分析(DSC)を用い、JIS−K−7122(1987年)に従って測定・算出した。なお、まずはじめに1st Runで、25℃から290℃まで20℃/min.で昇温した後、290℃で5分間ホールドした後、25℃まで急冷した。またつづく2nd Runでは、25℃から290℃まで20℃/min.で昇温した。樹脂のガラス転移温度は2nd Runにおけるガラス転移温度を用いた。
装置:セイコー電子工業(株)製”ロボットDSC−RDC220”
データ解析”ディスクセッションSSC/5200”
サンプル質量:5mg
(6)積層数、層対厚み
透過型電子顕微鏡にて得たフィルム断面像(倍率4万倍の写真画像)を、スキャナー(Canon製CanonScanD123U)を用いて、画像サイズ720dpiで取り込んだ画像をビットマップファイル(BMP)で保存した。次に、画像処理ソフト Image-Pro Plus ver.4(MediaCybernetics社製)を用いて、このBMPファイルを開き、画像解析を行った。以下に代表的な画像処理条件を記す。まず、ローパスフィルタ(サイズ 7×7 強さ 10 回数 10)処理した後、垂直シックプロファイルモードで、位置と輝度の数値データとを得た。なお、位置は、予め空間較正でスケーリングしておいた。この位置と輝度のデータをMicrosoft社製EXCEL2000上で、サンプリングステップ6(間引き6)、さらに3点移動平均処理を行った。さらに、この得られた輝度を位置で微分し、その微分曲線の極大値と極小値を算出した。そして、隣り合う極大値−極大値または隣り合う極小値−極小値となる位置の間隔を層対厚みとし、全ての層対厚みを算出した。なお、この際、微分曲線のノイズを検出しないように、微分値に対して一定の閾値を設定し、層対厚みに対応する隣り合う極大値−極大値間距離または隣り合う極小値−極小値間距離を検出するように処理した。
(7)透過率
日立製作所製 分光光度計(U−3410 Spectrophotomater)に、付属の平行光線要セルを取り付け、透過率を測定した。なお、バンドパラメーターは2/servoとし、ゲインは3と設定し、187nm〜2600nmの範囲を120nmmin.の検出速度で測定した。
(8)摩擦係数
フィルム同士の摩擦係数は、ASTM−D−1894−63に準じ、動摩擦係数を新東科学(株)製表面性測定機HEIDON−14DRを用いて、サンプル移動速度200mm/min、荷重200g、接触面積63.5mm×63.5mmの条件で測定し、アナライジングレコーダTYPE:HEIDON3655E−99で記録し評価した。
(9)延伸加工
東洋精機製 フィルムストレッチャーを用いて、150℃の温度で、縦方向に1.2倍 横方向に1.2倍 同時二軸したフィルムを作成した。得られたフィルムについて、延伸前のフィルム厚みに対し、1/1.4〜1/1.6のフィルム厚みの部位について相対反射率を測定した。
(10)外観
目視にて判定し、着色のない金属調である場合を◎、わずかに着色している金属調である場合を○、着色していたり、角度によって色が付いたりする場合を×とした。
(11)光沢度
JIS−K7105(1981)に規定された方法に従って、スガ試験機製デジタル変角光沢度計UGV−5Dを用いて、60度の鏡面光沢度を測定した。なお、光沢度が高すぎるために、測定に際しては、すべて1/10に減光されるフィルターを挿入し、測定した。
(12)明度、色度、彩度
コニカミノルタ製 分光測色計CM−3600dを使用して、付属のゼロ構成ボックスで反射率のゼロ構成を行い、続いて付属の白色校正板を用いて100%校正を行った後、以下の条件でフィルムの明度L*および色度(a*、b*)を計測した。明度および色度の定義は、JIS Z8729(2004年)に準ずる。
モード:反射、SCI/SCE同時測定
測定径:8mm
サンプル:非測定側に黒インキを塗布
また、実施例の結果には彩度(C*)を記載した。彩度の定義は以下の通りである。彩度が0に近いほど、色づきのないものとなる。
C*=((a*)+(b*)1/2
彩度の計算に用いた色度(a*、b*)はSCIの値を用いた。
なお、彩度は5以下であることが、外観特性上必要である。
(13)成形性
真空成形装置SANWA KOGYO PLAVAC TYPE FB−7を用いてテストした。200℃に加熱した試料に、深さ15mm、直径50mmの円柱状のカップを押し当て、さらにカップ内の空気を一瞬で抜き取って真空にした。このとき試料がカップの形状に追従して変形するものは、成形性が高いと判断し、◎とした。また試料がカップに追従して変形するものの、角部分が十分に成形されないものを○とした。さらに試料がカップに追従せず、ほとんど変形しないものは成形性が低いと判断し、×とした。
(14)電磁波シールド性
(社)関西電子工業振興センターのKEC法にて、電磁波シールド性を測定した。測定条件は以下の通り。
測定装置
信号発生器:アンリツ製 MG3601A
スペクトラムアナライザー:アンリツ製 MS2601A
プレアンプ:アンリツ製 MH648A
測定法---KEC法(近傍電界、近傍磁界)
測定周波数---0.1〜1GHz
試料寸法---150mm×150mm
スペーサー---スチールウール(“ボンスター”)
サンプル測定:1つのサンプルについて3回測定を行い、その平均値を採用した。
評価結果については、800MHzにおける電界シールド性を減衰率(dB)で表した。なお、一般的に金属調加飾フィルムとして良く使用されるアルミ蒸着フィルムの減衰率は、46dBであった。
(15)色合いの経時変化、初期着色
(12)に記載の分光測色計を用いて測定したb*で黄味着色の度合いを測定し、紫外線吸収剤による初期着色を評価した。また経時変化については、岩崎電気製アイスーパーUVテスター(型番:SUV−W131)を用いてサンプルに紫外線を照射し、照射後のb*値を測定することで経時変化の評価を行った。UV照射量は波長365nmで100mW/cm2であり、UV照射時間は4時間とした。また、フィルムの商品価値として、b*値が5以下であることを、合格レベルとした。
(16)フィルムの生産性
溶融ポリマーをシート状に吐出するTダイのリップ先端の汚れにより、シートに発生するスジの状況により判断。24時間の製膜中にスジが発生した場合、×とした。
(実施例1)
1.ポリエステル1の合成
テレフタル酸ジメチルを67.6重量部、シス/トランス比率が72/28である1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチルを17.4重量部、エチレングリコールを54重量部、スピログリコールを20重量部、酢酸マンガン四水塩を0.04重量部、三酸化アンチモンを0.02重量部それぞれ計量し、エステル交換反応装置に仕込んだ。内容物を150℃で溶解させて撹拌した。次いで、撹拌しながら反応内容物の温度を235℃までゆっくり昇温しながらメタノールを留出させた。所定量のメタノールが留出したのち、トリメチルリン酸を0.02重量部含んだエチレングリコール溶液を添加した。トリメチルリン酸を添加した後10分間撹拌してエステル交換反応を終了した。その後エステル交換反応物を重合装置に移行した。
次いで重合装置内容物を撹拌しながら減圧および昇温し、エチレングリコールを留出させながら重合をおこなった。なお、減圧は90分かけて常圧から133Pa以下に減圧し、昇温は90分かけて235℃から285℃まで昇温した。重合装置の撹拌トルクが所定の値に達したら重合装置内を窒素ガスにて常圧へ戻し、重合装置下部のバルブを開けてガット状のポリマーを水槽へ吐出した。水槽で冷却されたポリエステルガットはカッターにてカッティングし、チップとし、ポリエステル1を得た。
得られたポリエステル1の固有粘度は0.72であった。このポリエステル1のジカルボン酸成分は、テレフタル酸が80mol%であり、シクロヘキサンジカルボン酸が20mol%であった。また、ポリエステル1のジオール成分は、エチレングリコールが85mol%であり、スピログリコールが15mol%であった。
2.ポリエステル2の合成
同様にテレフタル酸ジメチルを100重量部、エチレングリコールを64重量部用いる以外は前記と同様にしてポリエステル2(ポリエチレンテレフタレート)を重合した。得られたポリエステル2の固有粘度は0.65でありTgは80℃であった。
2種類の熱可塑性樹脂として、熱可塑性樹脂Aと熱可塑性樹脂Bを準備した。実施例1においては、樹脂Aとして、平均2次粒径が1μmの凝集シリカ粒子を0.04wt%、マロン酸エステル系の紫外線吸収剤(クラリアント・ジャパン社製 ”サンデュボアB−CAP”)を8.5wt%添加したポリエステル2(PET)を用いた。なお、この樹脂Aは結晶性樹脂であった。また樹脂Bとしてポリエステル1(PE/SPG・T/CHDC)を用いた。なお、この樹脂Bの固有粘度は非晶性樹脂であった。これら樹脂AおよびBは、それぞれ乾燥した後、別々の押出機に供給した。
樹脂AおよびBは、それぞれ、押出機にて280℃の溶融状態とし、ギヤポンプおよびフィルターを介した後、801層のフィードブロックにて合流させた。801層のフィードブロックとしては、図1および図4に示したような装置を用いた。なお、上記のフィードブロック中の積層装置は267個のスリットを有するスリット部材が3つからなるものであった。合流した樹脂AおよびBは、フィードブロック内にて各層の厚みが表面側から反対表面側に向かうにつれ徐々に厚くなるように変化させ、樹脂Aが401層、樹脂Bが400層からなる厚み方向に交互に積層された構造とした。ここで、各層対の厚みは図5のAのラインを目標とし、ここから各スリットを流れるポリマー流量を算出し、フィードブロック内の各微細スリットの形状を設計した。また、両表層部分は樹脂Aとなるようにし、かつ隣接するA層とB層の層厚みはほぼ同じになるようにスリット形状を設計した。この設計では、400nm〜1200nmに反射帯域が存在するものとなる。このようにして得られた計801層からなる積層体を、マルチマニホールドダイに供給、さらにその表層に別の押出機から供給した樹脂Aからなる層を形成し、シート状に成形した後、静電印加にて表面温度25℃に保たれたキャスティングドラム上で急冷固化した。なお、樹脂Aと樹脂Bが積層装置内で合流してからキャスティングドラム上で急冷固化されるまでの時間が約8分となるように流路形状および総吐出量を設定した。
得られたキャストフィルムを、75℃に設定したロール群で加熱した後、延伸区間長100mmの間で、フィルム両面からラジエーションヒーターにより急速加熱しながら、縦方向に3.0倍延伸し、その後一旦冷却した。つづいて、この一軸延伸フィルムの両面に空気中でコロナ放電処理を施し、基材フィルムの濡れ張力を55mN/mとし、その処理面に(ガラス転移温度が18℃のポリエステル樹脂)/(ガラス転移温度が82℃のポリエステル樹脂)/平均粒径100nmのシリカ粒子からなる積層形成膜塗液を塗布し、透明・易滑・易接着層を形成した。
この一軸延伸フィルムをテンターに導き、100℃の熱風で予熱後、110℃の温度で横方向に3.3倍延伸した。延伸したフィルムは、そのまま、テンター内で240℃の熱風にて熱処理を行い、続いて同温度にて幅方向に8%の弛緩処理を施し、その後、室温まで徐冷後、巻き取った。得られたフィルムの厚みは、100μmであった。得られた結果を表1に示す。
(実施例2)
実施例1における樹脂A中の紫外吸収剤の濃度を0.3wt%とし、その他の条件・装置については実施例1と同様とした。得られたフィルムの厚みは、100μmであった。得られた結果を表1に示す。
(実施例3)
実施例1における樹脂Bのかわりに、エチレングリコールに対しシクロヘキサンジメタノールを30mol%共重合したポリエチレンテレフタレート(PE/CHDM・PET)[イーストマン製 PETG6763]を用いた。なお、エチレングリコールに対しシクロヘキサンジメタノールを30mol%共重合したポリエチレンテレフタレート(PE/CHDM・T)は非晶性樹脂であった。また、樹脂A中の紫外線吸収剤を蓚酸アニリド系の化合物(クラリアント・ジャパン(株)社製 ”サンデュボアVSU”)に変更し、添加割合を7wt%とした。その他の条件・装置については実施例1と同様とした。得られたフィルムの厚みは、100μmであった。得られた結果を表1に示す。
(比較例1)
実施例1において、樹脂A中の紫外線吸収剤の添加量を0wt%とした。その他の条件・装置については実施例1と同様とした。得られたフィルムの厚みは、100μmであった。得られた結果を表1に示す。
(比較例2)
実施例1において、樹脂A中の紫外線吸収剤の添加量を12wt%とした。その他の条件・装置については実施例1と同様とした。得られたフィルムの厚みは、100μmであった。得られた結果を表1に示す。
(比較例3)
実施例2において、樹脂A中の紫外線吸収剤として一般的なトリアジン系の化合物(チバ・スペシャルティケミカルズ社製“CGX006”)に変更し、添加量を0.3wt%とした。その他の条件・装置については実施例2と同様とした。得られたフィルムの厚みは、100μmであった。得られた結果を表1に示す。
(比較例4)
比較例3において、フィードブロックの構造を修正し彩度が5以下になるように補正したものである。その他の条件・装置については実施例2と同様とした。得られたフィルムの厚みは、100μmであった。得られた結果を表1に示す。
(比較例5)
実施例1において、樹脂A中の紫外線吸収剤として、一般的なベンゾフェノン系の化合物(旭電化(株)製“アデカスタブLA−51”)に変更し、添加量は3wt%とした。その他の条件・装置については実施例2と同様とした。得られたフィルムの厚みは、100μmであった。得られた結果を表1に示す。
Figure 0004899913
Figure 0004899913

本発明は、少なくとも2種類の樹脂からなる層を積層した積層フィルムと、その積層フィルムからなる成形体に関するものである。更に詳しくは、金属調装飾材料として好適な積層フィルムに関するものである。
積層装置およびその構成部品 スリット部 スリット部と樹脂供給部とを連結した状態の断面図 合流装置 層構成プロファイル フィードブロック(積層装置)
符号の説明
1: 側板
2: 樹脂A供給部
3: スリット部
3a、3b: スリット
4: 樹脂B供給部
5: スリット部
6: 樹脂A供給部
7: スリット部
8: 樹脂B供給部
9: 側板
10: 積層装置 11: 導入口
12: 液溜部
18: 合流装置
22: 側板
23: 樹脂A供給部
24: スリット部
25: 樹脂B供給部
26: 側板
27: フィードブロック(積層装置)およびその構成部品

Claims (3)

  1. 少なくとも2種類の可塑性樹脂層が厚み方向に交互に30層以上積層された積層フィルムであって、波長400〜1000nmにおける反射率が30%以上、150℃における引張試験においてフィルム長手方向および幅方向の100%伸度時の引張応力が3MPa以上90MPa以下、層対厚み10nm以上220nm未満の層の数が層対厚み220nm以上320nm以下の層の数より多く、積層フィルム中にマロン酸エステル系化合物または蓚酸アニリド系化合物から選ばれた紫外線吸収剤を少なくとも1種以上含有し、該紫外線吸収剤の含有量が、フィルムの総重量に対し0.1〜10重量%であることを特徴とする積層フィルム。
  2. 前記紫外線吸収剤の含有量が、フィルムの総重量に対し1〜5重量%である請求項1に記載の積層フィルム。
  3. 請求項1または2に記載の積層フィルムを含んで構成される携帯電話用成型加飾フィルム。
JP2007035855A 2007-02-16 2007-02-16 積層フィルムおよび携帯電話用成型加飾フィルム Expired - Fee Related JP4899913B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007035855A JP4899913B2 (ja) 2007-02-16 2007-02-16 積層フィルムおよび携帯電話用成型加飾フィルム

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007035855A JP4899913B2 (ja) 2007-02-16 2007-02-16 積層フィルムおよび携帯電話用成型加飾フィルム

Publications (3)

Publication Number Publication Date
JP2008200861A JP2008200861A (ja) 2008-09-04
JP2008200861A5 JP2008200861A5 (ja) 2010-03-11
JP4899913B2 true JP4899913B2 (ja) 2012-03-21

Family

ID=39778854

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2007035855A Expired - Fee Related JP4899913B2 (ja) 2007-02-16 2007-02-16 積層フィルムおよび携帯電話用成型加飾フィルム

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4899913B2 (ja)

Families Citing this family (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP5401132B2 (ja) 2009-01-20 2014-01-29 信越ポリマー株式会社 電波透過性装飾部材およびその製造方法
JP5275856B2 (ja) * 2009-03-16 2013-08-28 株式会社東海理化電機製作所 装飾部材、レーダユニット、装飾部材製造方法
JP5346632B2 (ja) 2009-03-17 2013-11-20 信越ポリマー株式会社 電波透過性加飾フィルムおよびこれを用いた装飾部材
KR102013045B1 (ko) 2009-11-18 2019-08-21 쓰리엠 이노베이티브 프로퍼티즈 컴파니 다층 광학 필름
JP2012117815A (ja) 2010-11-29 2012-06-21 Casio Comput Co Ltd 電子機器および腕時計
US20150202847A1 (en) * 2014-01-17 2015-07-23 3M Innovative Properties Company Successively peelable coextruded polymer film with extended uv stability
JP6911517B2 (ja) * 2017-05-19 2021-07-28 東洋紡株式会社 積層加飾構成体
CN118090431B (zh) * 2024-04-23 2024-07-26 四川中科兴业高新材料有限公司 一种高性能聚芳硫醚类薄膜双向拉伸实验装置及实验方法

Family Cites Families (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH11262990A (ja) * 1998-03-18 1999-09-28 Toray Ind Inc 白色ポリエステルフィルム
JP4167088B2 (ja) * 2003-02-20 2008-10-15 帝人株式会社 二軸延伸多層積層ポリエステルフィルム
JP4529072B2 (ja) * 2003-09-02 2010-08-25 東洋紡績株式会社 成型用ポリエステルフィルム及びそれを成型してなる成形部材
JP2006289938A (ja) * 2005-03-18 2006-10-26 Mitsubishi Gas Chem Co Inc 光拡散性ポリカーボネート樹脂積層体およびその製造方法
JP5211433B2 (ja) * 2005-03-24 2013-06-12 東レ株式会社 Led用反射体

Also Published As

Publication number Publication date
JP2008200861A (ja) 2008-09-04

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5176319B2 (ja) 積層フィルムおよび成形体
JP5640380B2 (ja) 積層フィルムおよび成形体、反射体
JP4899913B2 (ja) 積層フィルムおよび携帯電話用成型加飾フィルム
KR20090109135A (ko) 적층 필름 및 성형체
JP2010050598A (ja) 電磁波透過性部材用金属光沢調装飾フィルムおよびそれを用いた電磁波透過性部材
JP2009164029A (ja) キーパッド部材用金属光沢調装飾フィルム
JP2015068996A (ja) 画面保護用基材フィルムおよびそれを用いた画面保護シート
JP4857795B2 (ja) 回路搭載シートおよびicカード、icラベル
JP2007271896A (ja) 着色フィルム
JP5169317B2 (ja) 成形体
JP2021143308A (ja) 熱可塑性樹脂フィルム
JP2007210142A (ja) 積層フィルムおよび成形体またはカード
JP2017149142A (ja) 成型用積層フィルム及びそれを用いた成型品
JP4957305B2 (ja) 樹脂シート
JP2024055292A (ja) 積層フィルム
JP2023144340A (ja) 積層フィルム
JP2008114587A (ja) 積層フィルム
JP2013208748A (ja) 積層フィルム
JP2012196901A (ja) 加飾成形体および加飾シート

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20100121

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20100121

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20110816

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20110830

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20111206

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20111219

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 4899913

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20150113

Year of fee payment: 3

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees