JP2024055292A - 積層フィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】 本発明は、成型による破れや色抜けが発生しにくく、高温負荷がかかる条件での成型にも好適に用いることができる、金属調の加飾に好適な積層フィルムを提供することを課題とする。【解決手段】 異なる3種類以上の熱可塑性樹脂層を有し、前記3種類以上の熱可塑性樹脂層で形成される規則配列を連続して3つ以上有し、波長400nm~800nmにおける平均反射率が35%以上100%以下であり、かつ、主配向軸方向および主配向軸直交方向に100℃で30%延伸したときの、波長400nm~800nmにおける平均反射率変化ΔR1が0.1%以上20%以下であることを特徴とする、積層フィルム。【選択図】なし

Description

本発明は、成型による破れや色抜けが発生しにくく、高温負荷がかかる条件での成型に好適に用いることができる、金属調の加飾に好適な積層フィルムに関する。
特定波長帯域の光線を遮蔽・抽出可能な光制御フィルムは、光や熱線などの環境因子から製品の内部環境や構成成分の劣化を防止する目的や、特定波長帯域の光線のみを抽出して所望の色調に発色させる目的で、多岐の分野にわたり実用化されている。代表例として、建材や自動車用途では室内温度上昇を抑制するための赤外線カットフィルム等が利用されており、工業材料用途では紫外線レーザー表面加工時の過剰な紫外線を吸収するための紫外線カットフィルム等が利用されている。また、電子機器分野ではディスプレイ光源から発せられる眼に有害な青色光線を遮蔽するブルーライトカットフィルムや、拡散・喪失するバックライトの光を再帰反射させることができる輝度向上フィルム等が利用されており、自動車内装材やモバイル筐体用途では金属調を付与するための可視光全域を反射する金属調フィルム等が利用されている。
従来、金属調フィルムとしては、例えば、樹脂フィルムの一面に蒸着、もしくはスパッタリングなどの方法で薄い金属層を被着成型したものが知られており、主に装飾用途等に用いられている。しかしながら、このような金属調フィルムは、成型性が不足する場合があり、また、成型時に金属層の剥離やクラックなどが発生しやすいという問題もあった。
これらの問題に対する対策がなされた金属調フィルムとして、干渉反射を利用した積層フィルムが提案されている。例えば、2種類の屈折率の異なる層(A層、B層)を交互に積層する(AB)m構成(mは繰り返し単位数を表す自然数)の積層フィルム(例えば、特許文献1~3)や、屈折率の異なる3種類の層(A層、B層、C層)を規則的に積層し、より広い反射率のフィルムを得る(ABC)m構成(mは繰り返し単位数を表す自然数)の積層フィルム(例えば、特許文献4)等が提案されている。
特表平8-503312号公報 特開2018-001488号公報 特開2010-184493号公報 特開平4-313704号公報
特許文献1~3が開示する(AB)m構成(mは繰り返し単位数を表す自然数)の積層フィルムのように、屈折率が互いに異なる2種類の熱可塑性樹脂を規則的に積層して可視光領域の光を反射することにより金属調を得るタイプの積層フィルムは、熱可塑性樹脂が2種類であるため熱可塑性樹脂間の屈折率差が小さく、成型により積層フィルムが薄膜化した場合に反射率が低下して金属調を維持することができない場合がある。また、このような積層フィルムにおいて、成型後も金属調を維持するために屈折率差の大きい樹脂を使用すると、層間剥離による色抜けや破れが発生し、成型加工が困難な場合がある。
また、特許文献4が開示する(ABC)m構成(mは繰り返し単位数を表す自然数)の積層フィルムは、主に赤外線カットフィルムとしての使用が想定されており、成型性に劣る。そのため、均一に成型できず色ムラが発生することや、成型時に層間剥離が発生することにより、所望の成型加工を行うことが困難な場合があった。
本発明は上記の欠点を解消し、成型による破れや色抜けが発生しにくく、高温負荷がかかる条件での成型に好適に用いることができる、金属調の加飾に好適な積層フィルムを提供することを目的とする。
上記課題を解決するための本発明は、以下の構成を有する。
(1) 異なる3種類以上の熱可塑性樹脂層を有し、前記3種類以上の熱可塑性樹脂層で形成される規則配列を連続して3つ以上有し、波長400nm~800nmにおける平均反射率が35%以上100%以下であり、かつ、主配向軸方向および主配向軸直交方向に100℃で30%延伸したときの、波長400nm~800nmにおける平均反射率変化ΔR1が0.1%以上20%以下であることを特徴とする、積層フィルム。
(2) 異なる3種類以上の熱可塑性樹脂層を有し、前記3種類以上の熱可塑性樹脂層で形成される規則配列を連続して3つ以上有し、彩度C*が0.1以上20以下であり、かつ、主配向軸方向および主配向軸直交方向に100℃で30%延伸したときの、彩度変化ΔC*が0.1%以上15%以下であることを特徴とする、積層フィルム。
なお、以下(1)の態様の積層フィルム、(2)の態様の積層フィルムを、それぞれ本発明の第1の積層フィルム、本発明の第2の積層フィルムということがある。また、両方を総称して本発明の積層フィルムということがある。
なお、本発明の積層フィルムは以下の態様とすることもでき、また、以下に示す通り加飾フィルム、成型体とすることもできる。
[1] 異なる3種類以上の熱可塑性樹脂層を有し、前記3種類以上の熱可塑性樹脂層で形成される規則配列を連続して3つ以上有し、波長400nm~800nmにおける平均反射率が35%以上100%以下であり、かつ、主配向軸方向および主配向軸直交方向に100℃で30%延伸したときの、波長400nm~800nmにおける平均反射率変化ΔR1が0.1%以上20%以下であることを特徴とする、積層フィルム。
[2] 異なる3種類以上の熱可塑性樹脂層を有し、前記3種類以上の熱可塑性樹脂層で形成される規則配列を連続して3つ以上有し、彩度C*が0.1以上20以下であり、かつ、主配向軸方向および主配向軸直交方向に100℃で30%延伸したときの、彩度変化ΔC*が0.1%以上15%以下であることを特徴とする、積層フィルム。
[3] JIS K 5600-5-6:1999に規定されたクロスカット法に基づく付着性試験での升目の剥離率が10%以下であることを特徴とする、[1]または[2]に記載の積層フィルム。
[4] 前記異なる3種類以上の熱可塑性樹脂層のうち、少なくとも1種類が結晶性を示す熱可塑性樹脂層であることを特徴とする、[1]~[3]のいずれかに記載の積層フィルム。
[5] 前記結晶性を示す熱可塑性樹脂層の少なくとも1種類が、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートを主成分とすることを特徴とする、[4]に記載の積層フィルム。
[6] 前記規則配列を構成する熱可塑性樹脂層が3種類であることを特徴とする、[1]~[5]のいずれかに記載の積層フィルム。
[7] 前記規則配列を構成する3種類の熱可塑性樹脂層が、結晶性/非晶性/非晶性の熱可塑性樹脂層の組み合わせであることを特徴とする、[6]に記載の積層フィルム。
[8] 前記非晶性の熱可塑性樹脂層の少なくとも1種が、アクリル、脂環式構造を有するポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミドのいずれかを主成分とすることを特徴とする、[7]に記載の積層フィルム。
[9] 波長400nm~800nmにおける平均反射率が35%以上100%以下であり、かつ、主配向軸方向および主配向軸直交方向に100℃で50%延伸したときの、波長400nm~800nmにおける平均反射率変化ΔR2が0.1%以上20%以下であることを特徴とする、[1]~[8]のいずれかに記載の積層フィルム。
[10] 波長300~2600nmの範囲において、反射率が100nm以上にわたって連続して20%以上を示す最も広い反射帯域Πの反射帯域幅をλ[nm]、当該反射帯域での平均反射率R[%]、フィルム厚みをt[μm]としたとき、(λ・R)/tが820以上1400以下を示すことを特徴とする、[1]~[9]のいずれかに記載の積層フィルム。
[11] 彩度C*が0.1以上20以下であり、主配向軸方向および主配向軸直交方向に100℃で30%延伸したときの、彩度変化ΔC*が0.1%以上15%以下であることを特徴とする、[1]又は[3]~[10]のいずれかに記載の積層フィルム。
[12] [1]~[11]のいずれかに記載の積層フィルムを用いてなる、加飾フィルム。
[13] [12]に記載の加飾フィルムを用いてなる、成型体。
本発明では、成型による破れや色抜けが発生しにくく、高温負荷がかかる条件での成型に好適に用いることができる、金属調の加飾に好適な積層フィルムを提供することができる。
本発明の一実施態様に係る積層フィルムの反射分光スペクトルのうち、波長帯域Πと反射帯域幅λ、平均反射率を示す模式図である。 本発明の一実施態様(図1の態様とは別の態様)に係る積層フィルムの反射分光スペクトルのうち、波長帯域Πと反射帯域幅λ、平均反射率を示す模式図である。 本発明の一実施態様(図1、2の態様とは別の態様)に係る積層フィルムの反射分光スペクトルのうち、波長帯域Πと反射帯域幅λ、平均反射率を示す模式図である。 本発明の一実施態様(図1~3の態様とは別の態様)に係る積層フィルムの反射分光スペクトルのうち、波長帯域Πと反射帯域幅λ、平均反射率を示す模式図である。
以下、本発明の積層フィルムについて詳細に説明する。
本発明の第1の積層フィルムは、異なる3種類以上の熱可塑性樹脂層を有し、前記3種類以上の熱可塑性樹脂層で形成される規則配列を連続して3つ以上有し、波長400nm~800nmにおける平均反射率が35%以上100%以下であり、かつ、主配向軸方向および主配向軸直交方向に100℃で30%延伸したときの、波長400nm~800nmにおける平均反射率変化ΔR1が0.1%以上20%以下であることを特徴とする、積層フィルムである。
本発明の第2の積層フィルムは、異なる3種類以上の熱可塑性樹脂層を有し、前記3種類以上の熱可塑性樹脂層で形成される規則配列を連続して3つ以上有し、彩度C*が0.1以上20以下であり、かつ、主配向軸方向および主配向軸直交方向に100℃で30%延伸したときの、彩度変化ΔC*が0.1%以上15%以下であることを特徴とする、積層フィルムである。
本発明の積層フィルムは、異なる3種類以上の熱可塑性樹脂層を有する。本発明の積層フィルムにおいて、熱可塑性樹脂層が「異なる」とは、(1)組成が異なる、(2)示差走査熱量測定(DSC)において、ガラス転移温度や融点が異なる、(3)透過型電子顕微鏡観察(TEM)で断面観察したときの染色後の画像において、各層の輝度が異なる、のいずれかに該当する場合を指す。
「組成が異なる」とは、以下に示す「組成が同じである」と見なす条件に該当しないことをいう。「組成が同じ」であるとは、各熱可塑性樹脂層を構成する熱可塑性樹脂の化学構造の規則配列が95mol%以上共通している場合、若しくは各熱可塑性樹脂層の構成成分を比較したときに95質量%の成分が共通する場合をいう。
例えば、前者について、ポリエチレンテレフタレートであれば、エチレングリコール単位とテレフタル酸単位がエステル結合により結合した構成単位(エチレンテレフタレート単位)を主たる構成単位として有するが、ホモポリエチレンテレフタレートからなる層とイソフタル酸を10mol%共重合させたポリエチレンテレフタレートからなる層のように、層を構成する樹脂がポリエチレンテレフタレートという共通の化学構造を有しながら共重合成分量が5mol%を超える場合は両者の組成が異なるものとみなす。また、後者について、ホモポリエチレンテレフタレートのみからなる層とホモポリエチレンテレフタレートを90質量%含み残りの10質量%が他の成分である層のように、同じ構成成分を主成分としつつも5質量%の成分が互いに異なる場合も、両者の組成が異なるものとみなす。
各熱可塑性樹脂層の具体的な組成/化学構造の規則配列構造は、後述の測定方法の層構成に記載の方法に従い各熱可塑性樹脂層の層厚みを把握した後、当該熱可塑性樹脂層を切削して取り出す、あるいは、当該層を削り最表層に出すことで、赤外分光法(FT-IR法やナノIR法)、ガスクロマトグラフ/飛行時間型質量分析計(GC-MS)、核磁気共鳴装置(NMR)、を利用して、特定することが出来る。なお、ここで主成分とは層中の全構成成分を100質量%としたときに、50質量%を超えて100質量%以下含まれる成分をいい、以下主成分については同様に解釈することができる。
一方で、積層フィルムを構成する熱可塑性樹脂層を抽出できる上で、上記方法による組成の同定が困難であれば、示差走査熱量測定(DSC)において、積層フィルムを構成する熱可塑性樹脂層が、異なる融点および/またはガラス転移点温度を示すことで「異なる」ことを判断する。なお、本発明において、異なる融点、異なるガラス転移温度を示すとは、融点、ガラス転移温度が0.1℃以上、好ましくは2℃以上異なっていることをいう。なお、後述の測定方法における示差走査熱量測定(DSC)の項に記載の25℃以上300℃以下の測定温度範囲において、熱可塑性樹脂がガラス転移温度および融点を示さない場合があるが、一方の熱可塑性樹脂層がガラス転移温度あるいは融点を示し、もう一方の熱可塑性樹脂層が示さない場合は、温度差として算出はできないが、熱可塑性樹脂は異なるものとして解釈してもよい。なお、DSCの測定はJIS-K-7122(1987年)に従って実施することができ、その詳細は後述する(DSCで測定する他のパラメータも同様。)。
さらに、上記2通りの方法での特定が困難であれば、(3)透過型電子顕微鏡観察(TEM)で断面観察したときの染色後の画像において、各層の輝度が異なることをもって、「組成が異なる」と判断してもよい。各層の輝度が異なるとは、透過型電子顕微鏡観察において観察される断面画像で各層間の輝度差による層界面が確認できる場合、若しくは後述(実施例)の「層界面(輝度差)」に記載の方法により、隣接する2層の輝度の平均値の差が、隣接する熱可塑性樹脂層の輝度の標準偏差のいずれよりも大きいことを確認できた場合を指す。本発明における輝度差は、電子線の散乱、結晶回折などに起因して生じることから、熱可塑性樹脂層を構成する熱可塑性樹脂の組成が前述の基準に従って異なる場合、各熱可塑性樹脂の種類や共重合量に応じて結晶性や電子密度状態が異なることとなる。そのため、染色状態が異なることにより、積層フィルムの断面画像において各層を輝度差のある層構造として視認することが可能となる。すなわち、隣接する層の輝度が異なるということは、隣接する熱可塑性樹脂層の「組成が異なる」と判断できる。
本発明の積層フィルムの各熱可塑性樹脂層を形成するために用いられる代表的な熱可塑性樹脂を以下に示すが、本発明で用いることができる熱可塑性樹脂は下記に記載したものに限定されない。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(1-ブテン)、ポリ(4-メチルペンテン)、ポリイソブチレン,ポリイソプレン、ポリブタジエン,ポリビニルシクロヘキサン、ポリスチレン,ポリ(α-メチルスチレン)、ポリ(p-メチルスチレン)、ポリノルボルネン、ポリシクロペンテンなどに代表されるポリオレフィン樹脂、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66などに代表されるポリアミド樹脂、エチレン/プロピレンコポリマー、エチレン/ビニルシクロヘキサンコポリマー、エチレン/ビニルシクロヘキセンコポリマー、エチレン/アルキルアクリレートコポリマー、エチレン/アクリルメタクリレートコポリマー、エチレン/ノルボルネンコポリマー、エチレン/酢酸ビニルコポリマー,プロピレン/ブタジエンコポリマー、イソブチレン/イソプレンコポリマー、塩化ビニル/酢酸ビニルコポリマーなどに代表されるビニルモノマーのコポリマー樹脂、ポリアクリレート、ポリイソブチルメタクリレート、ポリメタクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリアクリルアミド,ポリアクリロニトリルなどに代表されるアクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート,ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレートなどに代表されるポリエステル樹脂、ポリエチレンオキシド,ポリプロピレンオキシド、ポリアクリレングリコールに代表されるポリエーテル樹脂、エチルセルロース、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ニトロセルロースに代表されるセルロースエステル樹脂、ポリ乳酸,ポリブチルサクシネートなどに代表される生分解性ポリマー、その他、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリアセタール、ポリグルコール酸、ポリカーボネート、ポリケトン、ポリエーテルスルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリシロキサン、4フッ化エチレン樹脂、3フッ化エチレン樹脂、3フッ化塩化エチレン樹脂、4フッ化エチレン-6フッ化プロピレン共重合体、ポリフッ化ビニリデンなどを用いることができる。
これらの熱可塑性樹脂は1種類単独で利用しても、2種類以上のポリマーブレンドあるいはポリマーアロイとして利用してもよい。ブレンドやアロイを実施することで、1種類の熱可塑性樹脂からは得られない物理的・化学的性質を得ることができる他、化学構造の大きく異なる熱可塑性樹脂層の間にこのようなポリマーブレンド・ポリマーアロイを含む層を配置することで、成型用のフィルムに求められる特性の一つである層間密着性を向上させることができる。これらの中でも、強度、耐熱性、透明性、積層性にかかるレオロジー特性の観点から、熱可塑性樹脂層を形成する熱可塑性樹脂は、特にポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂から選択されることが好ましい。
本発明の積層フィルムは、3種類以上の熱可塑性樹脂層で形成される規則配列を連続して3つ以上有していることが重要である。また、製造工程の煩雑化を抑えつつ所望の反射特性を実現する観点から、規則配列を構成する熱可塑性樹脂層の種類が3種類であることが好ましい。以下、異なる熱可塑性樹脂層が3種類である場合、各層をA層、B層、C層と表現する。規則配列としては、例えば、(ABC)m、(ABCB)m、(ACBC)m、(BACA)m、(ABABC)m、(ACACB)m、(BCBCA)m、(ABCBCB)m、(ACBCBC)m、(BACACA)m、(BCACAC)m、(CABABA)m、(CBABAB)m(mは繰り返し単位数を表す自然数)などを挙げることができる。
中でも、異なる熱可塑性樹脂層の界面での剥離を軽減するためには、界面を形成する隣り合う熱可塑性樹脂層の組み合わせの種類が少ないことが好ましい。具体的には、3種類の異なる熱可塑性樹脂から形成される界面は、A-B界面、B-C界面、C-A界面の3種類が挙げられるが、前記規則配列の中で、(ABCB)m、(ABCBCB)m、(CBABAB)mはA-B界面およびB-C界面の2種類、(ACBC)m、(ACBCBC)m、(BCACAC)mはA-C界面およびB-C界面の2種類、(BACA)m、(BACACA)m、(BCACAC)mはA-B界面およびA-C界面の2種類しか存在しない。そのため、積層フィルムの層間剥離レスを実現するための熱可塑性樹脂層の組み合わせを検討するにあたり、このような態様ではA層、B層、C層のある一つの層と他の2層の層間密着性のみを考慮すればよい。そのため、上記のような態様とすることは、層間密着性の高い積層フィルムをより容易に形成しやすくなる点で好ましい。
さらに、層間密着性を高めるためには、隣接する熱可塑性樹脂層の相溶性パラメータの差が小さいことが好ましい。ここで述べるところの相溶性パラメータとは、熱可塑性樹脂固有のエネルギーに関するパラメータであり、これらの数値が近いものほど、樹脂同士が混ざりやすいことを表す指標である。
本発明の積層フィルムにおいて、高い層間密着性を得るために、界面を形成する隣接する熱可塑性樹脂層の溶解性パラメータ(SP値)の絶対値の差は1.5以下であることが好ましい。隣接する熱可塑性樹脂層同士の熱可塑性樹脂の相溶性が良好であることで、積層状態での層間剥離が生じにくくなる。
相溶性パラメータは、Hansen、Hoy、およびFedors等の計算法によって推算することができるが、有機高分子材料として好適に用いることができる熱可塑性樹脂の相溶性パラメータは、分子鎖の繰り返し構造単位に基づき計算が可能なFedorsの計算法を用いる。この方法を用いることにより、共重合成分由来の構造単位を含む熱可塑性樹脂の相溶性パラメータは、各構造単位の比率に従って簡便に比率計算することができる。Fedorsの計算法では、置換基の種類や数に依存する分子の凝集エネルギー密度およびモル分子体積が相溶性パラメータを決定させており、式(1)に従い相溶性パラメータδが推算される。ここで、Ecoh(cal/mol)は凝集エネルギーを、Vはモル分子体積(cm/mol)を表す。
Figure 2024055292000001
本発明において相溶性パラメータは、Fedorの式に基づいて計算した推算値の小数第2位を四捨五入した数値とする。なお、代表的な熱可塑性樹脂の相溶性パラメータとしては、酢酸セルロース:11.0、セルロース:15.6、ポリアクリロニトリル:14.8、ポリアミド:13.6、ポリイソブチレン:7.7、ポリエチレン:8.0、ポリエチレンテレフタレート:10.7、ポリ塩化ビニル:10.1、ポリ酢酸ビニル:9.5、ポリカーボネート:9.9、ポリスチレン:9.4、ポリビニルアルコール:12.6、ポリフェニレンサルファイド:12.5、ポリブタジエン:8.3、ポリプロピレン:8.1、ポリメタクリル酸メチル:9.3などが挙げられる。
熱可塑性樹脂層が複数の熱可塑性樹脂を含む場合、各熱可塑性樹脂単体の相溶性パラメータの値を有機高分子材料の含有比率と掛け合わせて合計した数値を、該熱可塑性樹脂層の相溶性パラメータとする。例えば、ポリエチレンテレフタレート(相溶性パラメータ:10.7)とポリメタクリル酸メチル(相溶性パラメータ:9.3)が50:50の比率で含有されている場合は、両相溶性パラメータの中間値にあたる10.0が当該層の相溶性パラメータとなる。
一般的に2つの熱可塑性樹脂層の相溶性パラメータの差を小さくする方法としては、2つの熱可塑性樹脂層における主成分である熱可塑性樹脂の骨格構造を共通のものとする方法が挙げられる。例えば、隣接する熱可塑性樹脂層の相溶性パラメータの差を抑えるには、これらの熱可塑性樹脂層の主成分を互いに共通の骨格構造を有する熱可塑性樹脂とした上で、共重合成分やアロイ/ブレンドの種類を変える態様することで、2つの熱可塑性樹脂層の相溶性パラメータの差を小さくすることができる。隣接する2つの熱可塑性樹脂層が互いに共通する化学構造を有することで、隣接する熱可塑性樹脂同士の強い分子間力が働き、高分子の界面拡散が起こり層界面を構成する厚み領域が増えることで、密着性を高める効果を奏する。
本発明の積層フィルムの最表層は、両表層とも同じ熱可塑性樹脂層が配されることが好ましい。両表層が同じ熱可塑性樹脂を主成分とする層で構成されることで、後述する製造方法において、ロール延伸時にロールと接触する熱可塑性樹脂層が1種類となる。そのため、両最表層に配される熱可塑性樹脂層を構成する熱可塑性樹脂の熱特性に合わせて、当該熱可塑性樹脂を主成分とする単膜フィルムを製膜する場合と同様の製膜工程で、積層フィルムを得ることが可能となる。
さらに、最表層に位置する熱可塑性樹脂層を構成する熱可塑性樹脂は、結晶性の熱可塑性樹脂を主成分とする層であることが好ましい。最表層に位置する熱可塑性樹脂層が結晶性樹脂を主成分とすることにより、例えば後述の製造方法で二軸延伸積層フィルムを製造する場合に、ロールやクリップなどの製造設備への粘着による製膜不良や表面状態の悪化が軽減され、また、延伸時に応力が立つことでより均一延伸が可能となり、フィルム面内でより均一な物性・光学特性を実現しやすくなる。結晶性の判断は、当該熱可塑性樹脂層を切削して抽出し、示差走査熱量分析(DSC)装置を用いて、融解エンタルピーの有無を確認することで判断できる。
本発明の積層フィルムは、後述の光学特性を満足することが重要であるが、積層フィルムが干渉による反射の効果を示すためには、熱可塑性樹脂層の屈折率差を高めることが好ましい。ここでいう屈折率差とは、主配向軸方向の屈折率と主配向軸直交方向の屈折率の平均値(面内屈折率)の差を指す。高屈折率を示す熱可塑性樹脂層を構成する熱可塑性樹脂は、延伸工程により屈折率を高めることが可能な結晶性の熱可塑性樹脂を主成分とすることが好ましい。前記の製膜性も考慮すると、特に、積層フィルムの最表層に位置する熱可塑性樹脂層を構成する熱可塑性樹脂が、結晶性の熱可塑性樹脂を主成分とすることが最も好ましい。一方、熱可塑性樹脂層の屈折率を低くするには、当該層を構成する熱可塑性樹脂を非晶性とする場合が多く、前記の製膜性の観点でも不利となる。
以下、便宜のため、結晶性を示す熱可塑性樹脂層が、積層フィルムを構成する熱可塑性樹脂層の中に含まれる場合は、少なくともA層は結晶性を示す熱可塑性樹脂層であることを前提として記述する。この場合、前記3種類の熱可塑性樹脂層を有する好ましい規則配列の積層フィルムの中では、(ABCB)mA、(ABCBCB)mA(mは繰り返し単位数を表す自然数)、が好ましい規則配列構成となる。さらに、後加工においての成型性と前記の製膜性、および積層フィルムの好ましい金属調を呈する反射効果の全てを満足することを考慮すると、前記A層は結晶性の熱可塑性樹脂を主成分とし、B層およびC層は種類の異なる非晶性の熱可塑性樹脂を主成分とすることがより好ましい。すなわち、規則配列を構成する3種類の熱可塑性樹脂層が、結晶性/非晶性/非晶性の熱可塑性樹脂層の組み合わせであることがより好ましい。
ここで述べるところの結晶性、半結晶性、非晶性は、いずれも示差走査熱量分析(DSC)装置を用いて判断することができる。結晶性の熱可塑性樹脂層を構成する熱可塑性樹脂は、ガラス転移温度、吸熱ピークである結晶化エンタルピー、発熱ピークである融解エンタルピーの3点を示すことが特徴である。結晶性の熱可塑性樹脂の種類によっては、ガラス転移温度が後述する測定範囲に入らない場合もあるため、ここでは融解エンタルピーの大きさから結晶性の程度を判断する。より具体的には、本発明の積層フィルムにおいては、結晶性は融解エンタルピーが10J/g以上を示す場合と定義し、融解エンタルピーが0.1J/g以上10J/g未満を示す場合は半結晶性と定義する。非晶性はこれらの定義をいずれも充足しない場合と定義する。なお、融解エンタルピーの測定は示差走査熱量分析(DSC)により行うことが可能であり、その測定方法の詳細は後述する。
ここで述べる結晶性/非晶性/非晶性の組み合わせとすることにより、製膜性が良好でありながら、好ましい反射効果を維持し、成型加工時の延伸や加熱にも耐えうる積層フィルムを得る点で有利となる。例えば、反射特性を高めるために屈折率差の大きい、骨格構造が全く異なる熱可塑性樹脂層を積層した場合においても、間に配される非晶性の熱可塑性樹脂層(相対的に2番目に融解エンタルピーが高い層)が、分子鎖の絡み合いや界面での官能基同士の反応を導き、層間剥離が起こりにくい積層フィルムとすることができる。間に配される非晶性の熱可塑性樹脂層は、例えば、狙いの非晶性を示す熱可塑性樹脂を押出機より溶融押出して積層して形成することができる。また、別の方法として、より結晶性の高い熱可塑性樹脂を押出し、横延伸工程における熱処理により結晶相を融解することで、目的とする非晶性を示す熱可塑性樹脂層を形成する方法を用いることもできる。
特に後者の場合、結晶性の熱可塑性樹脂層としては、間に配される非晶性の熱可塑性樹脂層よりも融点を高くする必要がある。このような結晶性の熱可塑性樹脂層に用いる熱可塑性樹脂としては、押出性、延伸性、汎用性に加え、積層フィルムの高反射率化にあたり重要な結晶化したときの熱可塑性樹脂層の屈折率の大きさ、積層精度に係る溶融粘度挙動の観点から、前記した好ましいポリエステル樹脂のうち、ポリオール成分としてメチレン鎖の少ないポリエチレンテレフタレートおよびその共重合体、ポリエチレンナフタレートおよびその共重合体から選択されることが特に好ましい。上記観点から、結晶性/非晶性/非晶性の組み合わせとする方法として、上記の何れの方法を採用するとしても、結晶性を示す熱可塑性樹脂層の主成分である熱可塑性樹脂が、ポリエチレンテレフタレートもしくはポリエチレンナフタレートである態様が特に好ましい。
本発明の積層フィルムは、非晶性を示す熱可塑性樹脂層のうち、どちらか片方の熱可塑性樹脂層が、アクリルまたは脂環式構造を有するポリエステルのいずれかを主成分とすることが好ましい。本発明の積層フィルムにおいて好ましく使用できる非晶性の熱可塑性樹脂としては、反射率を高めるために前記ポリエステル樹脂との屈折率差が大きく、また、良好な積層性を示す積層フィルムとするために前記ポリエステル樹脂と同じような溶融粘度特性を示す熱可塑性樹脂であることが好ましい。上記観点から、前記した熱可塑性樹脂の中では、アクリル樹脂、脂環式構造を示すポリエステル樹脂の中から選択されることが好ましい。
アクリル樹脂はそれ自身が屈折率1.49を示す非晶性樹脂であり、脂環式構造を示すポリエステル樹脂は共重合タイプとすることで、屈折率1.52~1.55を示す非晶性樹脂となる。このような屈折率を有する非晶性の熱可塑性樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂層を積層することにより、規則配列内で屈折率差を最大で0.25~0.30程度まで広げることができ、従来の交互積層技術では界面剥離により積層出来ず実現出来なかった高反射率を示す積層フィルムが実現できる。なお、ここでいう屈折率とは、ナトリウムD線(波長589nm)を光源とし、マウント液をヨウ化メチレンとして、25℃にてアッベ屈折計を用いて測定した際の屈折率を指す。このとき、樹脂をプレス加工するなどでシート状に成形した上で測定することができる。
本発明の積層フィルムの非晶性を示す熱可塑性樹脂層の主成分として好ましく用いることができる非晶性の脂環式構造を示すポリエステル樹脂としては、脂環式構造として、シクロヘキサンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、イソソルベート、スピログリコール、などの構造を共重合したポリエステル樹脂等が挙げられる。
また、ガラス転移温度が高いため延伸性や製膜性の観点で好ましい樹脂としては挙げていないが、非晶性を示す熱可塑性樹脂層の主成分として非晶性のポリアミド樹脂を用いることもできる。非晶性のポリアミド樹脂としては、例えば、ポリアミドPA12/MACMI(PA12/3,3-ジメチル-4,4-ジアミノシクロヘキシルメタン、イソフタル酸)、PA12/MACMT(PA12/3,3-ジメチル-4,4-ジアミノシクロヘキシルメタン、テレフタル酸)、PA MACM 12(3,3-ジメチル-4,4-ジアミノシクロヘキシルメタン、デカンジカルボン酸又はラウロラクタム)、PA MC 12(PA12、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン)、PA6I/6T、PA6I/6T/MACMIなどを用いることが出来る。
層間密着性を高める好ましい樹脂設計の一つの態様として、前述したように、隣接する熱可塑性樹脂層の一方の主成分である熱可塑性樹脂に、他方の熱可塑性樹脂層の主成分である熱可塑性樹脂が含む構成単位を共重合する態様が挙げられる。また、別の態様として、隣接する熱可塑性樹脂層の一方の主成分である熱可塑性樹脂に、他方の熱可塑性樹脂層の主成分である熱可塑性樹脂をアロイ、あるいはブレンドする手法が挙げられる。これらの手法が最もよく利用され、簡便な手法であるが、層を主に構成する熱可塑性樹脂内に異なる基本骨格を有する成分が共存する形となるため、当該成分を島(ドメイン)とする海島構造が形成されることがある。また、異なる基本骨格を有する成分の分散混合状態によっては、海島構造のドメインが大きくなり白濁度(ヘイズ)が上昇して積層フィルムの透明性を損なう場合がある。
異なる骨格構造を有する熱可塑性樹脂同士の分散度を高めるためには、二軸以上のスクリューを備える混錬押出機を用い、添加剤混錬時の吐出量に対するスクリュー回転数の比率を上げる、もしくは、スクリューの混錬に係るセグメントのアレンジメントをよりスクリュー同士が深く噛み合う形に変更し、混錬度を高めることが好ましい。もしくは、熱可塑性樹脂の相溶性を高めるような、共通骨格を有する添加剤を含ませることが好ましい。
隣接する熱可塑性樹脂層の層間密着性を高める樹脂設計の他の態様として、片側の熱可塑性樹脂層に、隣接する熱可塑性樹脂層と同じ基本骨格を有する未反応成分を有する反応性添加剤を予め反応させ、両層に共通骨格の成分を含有させ相溶性を高める方法が挙げられる。具体的には、片側の層を構成する熱可塑性樹脂に含まれる未反応末端基、もしくは、片側の層内に予め添加した添加剤に含まれる末端基と、反応性添加剤とを反応させ、隣接する層との同じ基本骨格構造を持つ成分を付与し、相溶性を高める方法である。このような反応を実現するための官能基としては、例えば、片側の層にカルボキシル基末端が含まれる場合は、反応性添加剤としてフェノール基,エポキシ基やアミノ基などカルボシキル基と反応性の高い末端基を含む添加剤を添加することで、また、片側の層がアルコキシシリル基末端を含む場合は、反応性添加剤として無機フィラーや金属成分を含む添加剤を添加することで実現できる。
さらに、層間密着性を高める樹脂設計の別の態様として、隣接する片側の熱可塑性樹脂層に、もう片側の熱可塑性樹脂層内に含まれる未反応官能基成分と反応する未反応官能基を含ませる処方が挙げられる。この方法では、積層工程で個別の押出機から供給された熱可塑性樹脂が積層装置内での積層工程中に反応するため、前者の方法のように各層を構成する熱可塑性樹脂のレオロジー挙動を積層工程前に変化させることがないため、積層乱れを抑えつつ密着性を高めることができるため好ましい。このような反応を実現する官能基の組み合わせとしては、前記した官能基の組み合わせを利用することができる。
積層フィルムが異なる4種類の熱可塑性樹脂層(A層、B層、C層、D層)を有する場合、例えば、(ABCD)m、(ABDC)m、(ACBD)m、(ABCDCB)m、(ABDCDB)m、(ACBDBC)m、(ACDBDC)m、(ADBCBD)m、(ADCBCD)m、(BACDCA)m、(BADCDA)m、(BCADAC)m、(BCDADC)m、(BDACAD)m、(BDCACD)m、(CABDBA)m、(CADBDA)m、(CBADAB)m、(CBDADB)m、(CDABAD)m、(CDBABD)m、(DABCBA)m、(DACBCA)m、(DBACAB)m、(DBCACB)m、(DCABAC)m、(DCBABC)m(mは繰り返し単位数を表す自然数)などの規則配列を有する積層フィルムとすることができる。
積層フィルムが屈折率の異なる4種類の熱可塑性樹脂層を有する場合においても、層間密着性を付与するために、隣接する熱可塑性樹脂層で形成される界面の種類は少なく、また、隣接する熱可塑性樹脂層の屈折率差は小さいことが好ましい。そのため、前記規則配列の中では、(ABCDCB)m、(DCBABC)m(mは繰り返し単位数を表す自然数)の規則配列が好ましい。さらに、A層~D層の順に融解エンタルピーが高い(換言すれば結晶性が高い)と仮定すれば、前述のように、最表層に配される熱可塑性樹脂層が結晶性の熱可塑性樹脂で形成されていることが製膜性の観点で好ましいことを考慮すると、(ABCDCB)m(mは繰り返し単位数を表す自然数)の規則配列を有することがより好ましい。
規則配列に用いられる熱可塑性樹脂からなる層の種類および規則配列の並びについては、前記に限定されるものではないが、層の種類が増えることで同時押出するための押出機数が増えるほか、界面の種類が増えて界面密着性を付与するための樹脂設計が複雑となり、レオロジー挙動の異なる熱可塑性樹脂を同じ温度で積層するために積層乱れが起こりやすくなる。さらに、樹脂層を合流する積層工程も煩雑になることから、5種類以上とすることは現実的ではない。
本発明の積層フィルムのフィルム設計と光学性能の関係としては、類似する厚みの規則配列が複数存在することで高反射率化、その規則配列の厚みに傾斜を付与することで広反射帯域が実現できる。規則配列に含まれる屈折率が異なる熱可塑性樹脂層の種類が多いことで、より高度な光学設計が可能となるが、骨格の異なる熱可塑性樹脂の種類が増える。そのため、積層装置が複雑になるほか、レオロジー挙動の異なる樹脂を複数種積層することになり、積層乱れが発生しやすく製膜の難易度が高くなる。よって、規則配列を構成する熱可塑性樹脂層の種類はなるべく少ないことが好ましく、具体的には、積層フィルムを形成する熱可塑性樹脂層の種類は4種類以下、より好ましくは3種類であることが、積層工程が煩雑になることなく、本発明で重要な広反射帯域・高反射をなるべく低積層数で実現できるため好ましい。
本発明における、一定の規則配列を有する積層フィルムは、規則配列を構成する複数の熱可塑性樹脂を、熱可塑性樹脂の種類と同数以上の押出機を用いて異なる流路からそれぞれ送り出し、公知の積層装置であるマルチマニホールドタイプのフィードブロックやスタティックミキサー等を用いて積層体を形成することができる。特に、光学用途に用いる場合には、厚みの制御が非常に重要となるため、本発明の積層構成を高精度に効率よく得るには、微細スリットを有するフィードブロックを用いる方法が好ましい。スリットタイプのフィードブロックを用いて積層体を形成する場合、各層の厚みおよびその分布は、スリットの長さや幅を変化させて圧力損失を傾斜させることにより達成可能となる。ここでスリットの長さとは、スリット板内で各熱可塑性樹脂層を一定の規則配列となるように流すための流路を形成する櫛歯部の長さのことである。
本発明の積層フィルムにおいて、積層フィルムの規則配列を構成する熱可塑性樹脂層は、組成が異なることにより結晶性や電子状態が異なるため、屈折率も異なる。屈折率が異なるとは、具体的には、3種以上のそれぞれの樹脂層の屈折率が0.01以上異なることを指す。この定義に倣うと、例えば「異なる3種類の熱可塑性樹脂層を有する」とは、3種類の熱可塑性樹脂層が存在し、そのうち2種類を選んで屈折率値を比較したときに、いずれも0.01以上の差がある態様と解釈することもできる。各熱可塑性樹脂層の屈折率が異なることにより、各層間の屈折率の差と層厚みとの関係より特定の波長の光を反射させることが出来る光学理論に基づく光干渉反射を発現可能となる。
具体的には、界面を挟んで隣接する各熱可塑性樹脂層の層厚みをd、d(X,Y=A,B,C・・・)、および、隣接する層の屈折率差をΔn=|n-n|とした場合に、式(2)に従い反射光線波長(λ)が、また、隣接する層の屈折率差Δnに基づく式(3)に従い反射率(R)が概ね決定される(θ、θは積層フィルムの面直方向から見て当該層への入射角、隣接する層へと入射する際の入射角を指す。kは、任意の自然数である。)。ここで、隣接する層に同一の屈折率を有する熱可塑性樹脂を利用する場合、特に面直方向に入射した光に対しては、反射率を表す式(3)の分子が0となるため、界面における干渉反射が発生しないことを意味する。
Figure 2024055292000002
Figure 2024055292000003
本発明の積層フィルムは、異なる3種類以上の熱可塑性樹脂層が一定の規則配列を連続して3つ以上有していることにより、干渉反射を発生させやすくなり、積層フィルムの反射率を高めることができるが、上記観点から、一定の規則配列を形成する層数はより好ましくは100層以上であり、さらに好ましくは300層以上である。一定の規則配列を構成する層数は多ければ多いほど干渉反射を強くすることができるが、製造装置の大型化に伴う製造コストの増加、積層工程の複雑化に伴う積層乱れ・積層比率の幅方向傾斜による積層フィルム幅方向均一性の悪化、フィルム厚みが厚くなることでのハンドリング性の悪化などが生じる場合があることから、合計900層以下であることが現実的である。
本発明の積層フィルムにおいて、広反射帯域は、式(2)に従い、積層フィルムの層厚みに連続的に傾斜をつけた態様とすることで達成できる。その上で、積層数を増やすことで反射波長帯域を拡大することや反射率を高くすることができる。このとき、本発明の積層フィルムの波長帯域Πを可視光線全域とすることで、従来よりも低積層数・薄膜で、密着性良好な金属調フィルムを得ることが出来る。特に、自動車や家電、電子機器用途では、インサート成型やインモールド成型を行うことで、成型体に金属調の光学性能を付与することができるが、従来の積層フィルムでは、成型による局所的な伸びにより、積層フィルムの厚みが変化した場合に、薄膜化により波長帯域がシフトして金属調が損なわれる課題があった。本発明の積層フィルムで可視光領域に加え、さらに長波長領域に反射帯域を有する広帯域反射可能な積層フィルムを実現することで、成型後にフィルムが伸びた場合でも、金属調を保持しやすくなる。
本発明の積層フィルムは、金属調を呈す好ましい反射率を達成するために、高い屈折率を示す層と低い屈折率を示す層の屈折率差を高める目的で、骨格構造の異なる熱可塑性樹脂を積層する場合がある。しかし、一般的には、骨格構造が異なり、相溶性パラメータの差が大きい樹脂同士を積層する場合、層間密着性に乏しく、剥離が発生する。従来の公知例においても、高い反射率を示すために骨格構造の異なる熱可塑性樹脂の組み合わせた記述・実施例や、得られる積層フィルムの光学特性について記載した内容が多く見受けられるが、このような積層フィルムは光学特性を満足するものの、層間剥離が発生して実用化が困難な場合が多い。
本発明の第1の積層フィルムは、成型前に加えて、成型後も金属調の好ましい反射率を維持する観点から、波長400nm~800nmにおける平均反射率が35%以上100%以下であり、かつ、フィルムの主配向軸方向および主配向軸直交方向に100℃で30%延伸したときの、波長400nm~800nmにおける平均反射率変化ΔR1が0.1%以上20%以下であることが重要である。
ここで述べるところの平均反射率とは、後述の測定方法における「反射分光スペクトル測定」に従い、サンプリングピッチを1nmとして測定したときの、波長400nmから800nmまでの反射率を平均して得られた値である。フィルムの主配向軸方向とは、フィルム面内において最大の屈折率を有する方向をいう。また、フィルムにおける最大の屈折率の方向は、位相差測定装置(複屈折測定装置)などにより遅相軸方向を決定することで求められる。
また、上記観点から、本発明の第1、第2の積層フィルムは、波長400nm~800nmにおける平均反射率が35%以上100%以下であり、かつ、主配向軸方向および主配向軸直交方向に100℃で50%延伸したときの、波長400nm~800nmにおける平均反射率変化ΔR2が0.1%以上20%以下であることが好ましい。
波長400nm~800nmにおける平均反射率が35%以上100%以下であることは、積層フィルムが可視光を反射し、金属調の好ましい色調を呈することを表す。上記波長帯域における平均反射率が50%以上100%以下であれば、金属調の光沢感がより強く発現するため、意匠性を高める点で好ましい。一方、上記波長帯域における平均反射率が35%を下回ると十分な反射効果が得られず、金属調の好ましい色調が発現しない場合や、色ムラなどの望ましくない色調変化が生じる場合がある。ここで述べるところの平均反射率とは、後述の測定方法における「反射分光スペクトル測定」に従い、サンプリングピッチを1nmとして測定したときの、波長400nmから800nmまでの反射率を平均して得られる値を用いる。
部材の成型には真空成型、圧空成型、真空圧空成型、プレス成型、プラグアシスト成型といった加熱成型方法が挙げられるが、何れの成型法も赤外線ヒーターなどによる予熱工程でフィルムの温度を高い状態とした後に成型される工程を有する。フィルムの主配向軸方向および主配向軸直交方向に100℃で30%延伸することは、このような成型時における積層フィルムの加熱や伸びを模している。すなわち、フィルムの主配向軸方向および主配向軸直交方向に100℃で30%延伸したときの、波長400nm~800nmにおける平均反射率変化ΔR1が0.1%以上20%以下であることは、本発明の積層フィルムが成型時の延伸や加熱にも耐え、成型延伸後にも金属調の好ましい色調や光沢感を維持できることを表す。
また、フィルムの主配向軸方向および主配向軸直交方向に100℃で50%延伸することは、深絞り成型等のより高い成型性が求められる加工でのフィルムの加熱や伸びを模している。すなわち、フィルムの主配向軸方向および主配向軸直交方向に100℃で50%延伸したときの、波長400nm~800nmにおける平均反射率変化ΔR2が0.1%以上20%以下であることは、本発明の積層フィルムが深絞り成型等の高い成型性が求められる加工においても、破れや追従不足を抑えて高い成型性と光学性能を備えていることを表す。
平均反射率変化ΔR1、ΔR2は、共に小さい程、成型前後での色調変化が少ないことを表す。そのため、値が小さいほど好ましく、いずれも0.1%以上15%以下であるとより好ましい。平均反射率変化ΔR1、ΔR2が20%以上であると、成型前後での反射率差が大き過ぎるため、積層フィルムの色調が変化してしまうことや、積層フィルムに色抜けや色ムラが生じる可能性があり、成型用途に使用した場合に不利となる場合がある。
本発明において、波長400nm~800nmにおける平均反射率を上記の好ましい範囲とする方法としては、層数や層構成、各層の成分を調整する方法が挙げられる。より具体的には、規則配列の数を増やして目的の波長帯域を反射する層数を増やすこと、層厚み分布の傾斜を緩やかにする(傾斜度を小さくする)こと、A層とC層の主成分となる熱可塑性樹脂の組み合わせを面内屈折率差が高くなるように選定すること等が挙げられる。
ここでいう傾斜度とは、各熱可塑性樹脂層の層厚み分布のうち単調増加を示す部分の最大層厚みと最小層厚みの比(最大層厚み/最小層厚み)をいう。なお、複数の熱可塑性樹脂層が単調増加の層厚み分布を有する場合は、傾斜度としては各熱可塑性樹脂層の平均値を採用する。
ΔR1、ΔR2を上記の好ましい範囲とする方法としては、波長400nm~800nmにおける平均反射率を上記の好ましい範囲とする方法の他、延伸倍率や吐出量を調整し、延伸後でもA層とC層の好ましい屈折率差が維持できるよう、B層に対するA層の積層比(A/B)やB層に対するC層の積層比(C/B)を共に0.5以下とならないように積層して、かつ、各熱可塑性樹脂層における、前述の溶解性パラメータ(SP値)の最大差を2.0以下とする方法等が挙げられる。また、成型性を良好とする観点では、成型時に過延伸とならないよう未延伸フィルムを用いる方法、成型時の配向結晶化を抑制するように共重合成分を含む樹脂を一部の熱可塑性樹脂層に使用する方法等もある。
上記の共重合成分としては、例えば、アジピン酸、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAエチレンオキサイド、スピログリコール、イソフタル酸、イソソルビド、シクロヘキサンジカルボン酸、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール2000、m-ポリエチレングリコール1000、m-ポリエチレングリコール2000、m-ポリエチレングリコール4000、m-ポリプロピレングリコール2000、ビスフェニルエチレングリコールフルオレン(BPEF)、フマル酸、アセトキシ安息香酸等を用いることができる。係る共重合成分を含有させることで、成型時の積層フィルムの配向結晶化が抑制されるため、積層フィルムの延伸性を高くすることができる。
熱可塑性樹脂層の主成分としてポリエチレンテレフタレートを用いた場合は、前記共重合成分の中でも、特にスピログリコールが好ましい。スピログリコールは共重合した際にポリエチレンテレフタレートとのガラス転移温度差が小さいため、成型時に過延伸となりにくく、かつ、層間剥離も発生しにくい。また、ポリエチレングリコールを共重合した場合、親水性の上昇に伴い層間密着性が高まるほか、ガラス転移温度を効果的に下げることができ、共延伸性が高まる。また、本発明の積層フィルムにおいては、前述の態様とすることで層間密着性が良好であるため、3種類以上の熱可塑性樹脂層の内、1種類を成型時の配向結晶化を抑制する設計とすれば、他種の熱可塑性樹脂層も追従して延伸性が良好となる。
本発明の第2の積層フィルムは、成型前に加えて、成型後も金属調の好ましい反射率を維持する観点から、彩度C*が0.1以上20以下であり、かつ、主配向軸方向および主配向軸直交方向に100℃で30%延伸したときの、彩度変化ΔC*が0.1%以上15%以下であることが重要である。さらに望ましくは、彩度C*が0.1以上15以下であり、かつ、主配向軸方向および主配向軸直交方向に100℃で30%延伸したときの、彩度変化ΔC*が0.1%以上10%以下である。なお、上記要件は本発明の第1の積層フィルムも充足することが好ましい。
彩度C*は、色の三属性の1つで、色の鮮やかさの尺度であり、彩度C*が20より大きいと色づきがあるために金属調の意匠性が劣り、色彩的にも違和感が生じる。主配向軸方向および主配向軸直交方向に100℃で30%延伸したときの彩度変化ΔC*(以下、単に彩度変化ΔC*ということがある。)が15%以上であると、延伸による彩度C*の変化が大きいため、積層フィルムに色ムラや色抜け、望まない色調変化等の不具合が生じる場合がある。
彩度C*や彩度変化ΔC*を上記の好ましい範囲とする方法としては、高反射率・広反射帯域なフィルム設計とすることが挙げられる。具体的には、異なる3種類の熱可塑性樹脂層で構成された規則配列を有し、規則配列内のB層に対するA層の積層比(A/B)を0.50以上とし、かつB層に対するC層の積層比(C/B)を0.90以上とし、かつ波長400nm~800nmにおける平均反射率が35%以上になるよう設計する方法が挙げられる。もしくは、波長400nm~800nmにおける平均反射率が35%以上であり、かつ、波長400nm~800nmにおける反射率の平均値をR[%]、反射率の偏差をσ[%]としたとき、σ/Rの百分率が10.0%以下となるよう設計する方法なども挙げられる。その他、層数や層構成、各層の成分を調整する方法も挙げられる。より具体的には、規則配列の数を増やして可視光反射帯域を反射する層数を増やすこと、前述した(ABCB)mの規則配列(括弧内の層配列、mは繰り返し単位数を表す自然数)を有する好ましい積層構成とすること、熱可塑性樹脂層のいずれかの層に非晶性の熱可塑性樹脂を使用すること、前記B層に異なる性質(結晶性と非晶性)の樹脂を混合させないこと等も挙げられる。
彩度C*や彩度変化ΔC*を上記の好ましい範囲とする、さらに別の方法として、波長400nm~800nmにおける平均反射率を10%未満とし、かつ、波長900nm~1200nmにおける平均反射率を70%以上とする方法も挙げられる。このような光学性能は、異なる3種類の熱可塑性樹脂層で構成された規則配列を有し、その層厚み分布が両最表層と中間層を除いて、片側の最表面から中間層に向かって層厚みが単調増加し、中間層からもう一方の片側へ単調減少する層厚み分布とすることで達成できる。
本発明の積層フィルムは、波長300nm~2600nmの範囲において、反射率が100nm以上にわたって連続して20%以上を示す最も広い反射帯域Πの反射帯域幅をλ[nm]、当該反射帯域での平均反射率R[%]、フィルム厚みをt[μm]としたとき(λ・R)/tが820以上1400以下であることが好ましい。ここでは、実施例で後述する反射率・反射分光スペクトル測定にて、分光光度計を用いて1nmピッチで測定して得られる反射分光スペクトルに、10点平均処理を施して得られる分光スペクトルを用いて判断する。詳説は後述するが、分光光度計による測定において295nm~2605nmの反射率データを取得し、連続する10点のデータを平均処理することで、300nm~2600nmの反射スペクトルデータを得ることができる。
反射率が100nm以上にわたって連続して20%以上を示す最も広い反射帯域Πについて、図1~4を用いて説明する。なお、図1~4において、符号1~4は順に、反射分光スペクトル、反射帯域Π、反射帯域幅λ、平均反射率Rをそれぞれ示し、符号1の反射分光スペクトルは10点平均処理を施して得られる分光スペクトルである。波長帯域Πとは、図1、2に示す通り、前記の平均処理を施した分光スペクトルに対し、300nm以上2600nm以下の波長帯域において、100nm以上にわたり連続して反射率が20%以上を示す波長帯域が複数存在する場合、最も長波長側に位置する波長帯域を指す。図2には、図1と異なる反射帯域形状での平均反射率を図示している。また、図3に示す通り、反射波長帯域において、反射率が20%未満を示す領域が一部でも含まれる場合には、その領域を境界として、連続して100nmにわたって反射率が20%以上を示す長波長側の波長帯域をΠと定義する。また、図4に示す通り、2600nmを超えて反射率が20%以上を示す波長帯域が長波長側に存在する場合には、300nm以上2600nm以下の波長帯域内に含まれる部分において、100nm以上にわたり20%以上の反射率を示す場合に、当該波長帯域をΠと定める。
波長帯域Πにおける反射帯域幅をλ[nm]、当該反射帯域での平均反射率R[%]で示される、λ・Rは、図1~4に記載の斜線領域の面積で表される。実質、この領域の面積が積層フィルムの広帯域・高反射率の性能を表すが、本発明の積層フィルムの場合、同じ積層工程を経て作製した積層フィルムであっても、積層フィルムの厚みに応じて波長帯域がシフトする。そのため、より正確に本発明の積層フィルムの特徴である「成型後の薄膜であっても金属調を呈する高反射率・広反射帯域の効果」を表すには、領域面積λ・Rを厚みtで割り返すことが効果的である。このような処置により、積層フィルムの厚みによる波長帯域幅変化の影響を打ち消し、積層フィルムの構成に基づいた高反射率・広反射帯域の効果を表すことができる。
領域の面積は、例えば、波長帯域が800nm以上1200nm以下の帯域を一律90%反射する積層フィルムの場合、単純計算で面積(λ・R)は(1200-800)nm×90%の36000を示すが、積層フィルムを半分の厚みにすると、波長帯域は400nm以上600nm以下となるため、(600-400)nm×90%の18000となり、同じ積層構造の積層フィルムであっても面積が変化する。そのため、広反射帯域・高反射率化の効果について、積層フィルム構成だけでなく厚みも反映される。そこで、前者のフィルム厚みをtμm、後者を半分の厚みt/2μm、で割り返すと、いずれも(λ・R)/t=18000/tとなり、異なる波長帯域を反射する積層フィルム同士であっても、積層フィルムの厚みに依存せず、積層フィルムの構成に基づく広反射帯域・高反射率化の効果を比較することが可能となる。
(λ・R)/tが820以上1400以下であることは、従来技術、特に2種類の熱可塑性樹脂層を交互に積層する(AB)m(mは繰り返し単位数を表す自然数)の積層フィルムでは達成できない、低積層数(薄膜)でありながら、高反射率かつ広帯域反射を兼備した積層フィルムであることを表す。(λ・R)/tが820以上を示すことは、一定の高反射・高反射帯域を得るための積層フィルムでありながら厚みあるいは積層数が小さいことを表しており、製造装置の大型化を抑えることや、深絞り成型等のより成型性が求められる用途にも適した積層フィルムが得られることを示す。さらに、積層フィルム厚みが小さいことで、後加工時のハンドリング性などの加工性も向上する。一方で、(λ・R)/tが1400以下であることは、高反射率・広反射帯域の実現を、層間密着性や積層フィルムの厚みを考慮して、従来の交互積層技術よりも少ない層数で達成することを意味する。少ない層数で高反射率・広反射帯域を実現するには、熱可塑性樹脂層の屈折率差を高める必要があり、そのために骨格構造が全く異なる熱可塑性樹脂からなる熱可塑性樹脂層を積層することが不可欠となる。そのため、積層フィルムとしたときの層間密着性が劣る場合がある。上記観点から、(λ・R)/tのより好ましい範囲は、950以上1200以下である。
これらの関係を満たすためには、層数や層構成、各層の成分を調整する方法が挙げられる。より具体的には、最大屈折率差が大きくなるような樹脂の組み合わせとすること、規則配列の数を増やして可視光反射帯域を反射する層数を増やすこと、前述した(ABCB)mの規則配列(括弧内の層配列、mは繰り返し単位数を表す自然数)を有する好ましい積層構成とすること、前記B層に異なる性質(結晶性と非晶性)の樹脂を混合させないこと等が挙げられる。
本発明の積層フィルムは、本来満たすべきフィルムの特性を悪化させない程度に、光吸収剤(紫外線吸収剤、染料、顔料、熱線吸収剤)、酸化防止剤、光安定剤、消光剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、有機系易滑剤、有機又は無機の微粒子、充填剤、帯電防止剤、核剤、難燃剤などを、含有していてもよい。特に、熱可塑性樹脂によってはエネルギーの強い紫外線を吸収して劣化が促進される場合があることから、反応競合させて光劣化を抑制する目的で紫外線吸収剤を含むことが好ましい。さらに、光吸収剤自身は樹脂押出工程において熱・酸素による影響を受けた劣化、および、紫外線および酸素との反応による光劣化の影響を受ける場合がある。そのため、前者に対しては酸化防止剤を、後者に対しては光安定剤や消光剤を、共に添加剤として、劣化の可能性がある熱可塑性樹脂層に添加することが好ましい。
本発明の積層フィルムは、JIS K 5600-5-6:1999に規定されたクロスカット法に基づく付着性試験での升目の剥離率が10%以下であることが好ましい。なお、以下「JIS K 5600-5-6:1999に規定されたクロスカット法に基づく付着性試験」を剥離試験、「JIS K 5600-5-6:1999に規定されたクロスカット法に基づく付着性試験での升目の剥離率」を単に剥離率ということがある。積層フィルムの剥離は、各熱可塑性樹脂内部で破断が起きて剥離する凝集/材料破壊、熱可塑性樹脂層間の界面で剥離する界面破壊の両方によって生じると考えられるが、クロスカット試験ではその両方に起因する剥離を捉えることができる。いずれの剥離も、積層フィルムを長時間にわたり使用する場合には発生してはならない現象である。クロスカット試験において剥離率が10%未満であることは、積層フィルムとして長期信頼性を備えていることを示し、言い換えれば成型等の後加工においても層間剥離が発生しにくいことを示す。
10%を超える剥離率を示す場合は、長期使用において積層フィルム界面からの破壊が発生し、例えば、加工工程において、ロールでのフィルム搬送中に界面で剥離による浮きが生じることや、断裁工程において断面部分でクラックが生じることで、積層フィルムとは異なる位置に設けた保護フィルム剥離時の剥離強度に負けて積層フィルム界面で剥離が生じることがある。また、繰り返し行われる折り曲げ工程が行われるような用途においては、界面での浮きが生じることで、積層フィルム由来の物性・光学特性が失われる問題が発生する。上記観点から、剥離率はより好ましくは、3%以下であり、最も好ましくは0%である。また、剥離率の下限は理論上0%となる。
クロスカット試験において剥離率を10%未満または上記の好ましい範囲とする方法としては、例えば、前述のように相溶パラメータの差を低くする等、層間密着性を高めるように樹脂設計・フィルム設計を調整する方法を用いることができる。
本発明の積層フィルムは、従来の積層フィルムよりも優れた可視光線反射特性を有することから、金属調や有色金属調を示すような加飾用途として好ましく使用することが出来る。すなわち、本発明の加飾フィルムは、本発明の積層フィルムを用いてなる。例えば、自動車用途では電気自動車の軽量化の流れが加速しており、これまで金属が使用されていた部位の樹脂化が進んでいることから、本発明の加飾フィルムを用いることで、フロントグリルやウインドウモール、エンブレムなどで成型樹脂と一体成型して金属調を付与することができる。また、高級感を出すためのパネル周辺の内装部材にも本発明の加飾フィルムを用いることができる。その他、家電や電子機器などの背面加飾、ハーフミラー調フィルムなどにも本発明の加飾フィルムを用いることが出来る。
使用方法としては、製品への後貼り、もしくは、成型体としてインモールド成型あるいはインサート成型を施して利用することができる。すなわち、本発明の成型体は、本発明の積層フィルム、又は本発明の加飾フィルムを用いてなる。
次に、本発明の積層フィルムの好ましい製造方法を以下に説明する。もちろん本発明は係る例に限定して解釈されるものではない。
積層フィルムの各熱可塑性樹脂層を構成する熱可塑性樹脂をペレットなどの形態で用意する。必要に応じてペレットを、熱風中あるいは真空下で乾燥した後、別々の押出機に供給する。添加剤を熱可塑性樹脂中に含有する場合は、本押出の過程で粉末・顆粒・液状の添加剤を混練分散してもよく、予め熱可塑性樹脂中に添加剤を分散させたマスターペレットを供給することもできる。押出機内において、融点以上に加熱溶融された各熱可塑性樹脂を、ギヤポンプ等で押出量を均一化しつつ押し出し、フィルター等を通して異物や変性した樹脂などを取り除く。これらの溶融熱可塑性樹脂を積層装置により所望の層構成に積層した後、ダイよりシート状に吐出させる。そして、ダイから吐出させた溶融シート状物を、キャスティングドラム等の冷却体上で冷却固し、キャストシートを得る。この際、ワイヤー状、テープ状、針状あるいはナイフ状等の電極を用いて、静電気力によりキャスティングドラム等の冷却体に密着させ急冷固化させることが好ましい。また、スリット状、スポット状、面状の装置からエアーを吹き出してキャスティングドラム等の冷却体に密着させ急冷固化させたり、ニップロールにて冷却体に密着させ急冷固化させたりする方法も好ましい。補助的に、キャスティングドラム面に液状の界面活性水や流動パラフィンなどの濡れ性のよい液体を塗布し、密着性を付与することもできる。
積層フィルムを構成する異なる3種類の熱可塑性樹脂層を形成する各熱可塑性樹脂は、3台以上の押出機を用いて異なる流路から送り出し、シート状で吐出される前に多層積層装置へ送り込まれる。多層積層装置としては、マルチマニホールドダイやフィードブロックやスタティックミキサー等を用いることができるが、特に、多層積層構造を効率よく得るためには、微細スリットを有するフィードブロックを用いることが好ましい。このようなフィードブロックを用いると、装置が極端に大型化することがないため、熱劣化による異物発生量が少なく、積層数が極端に多い場合でも、高精度な積層が可能となる。また、幅方向の積層精度も従来技術に比較して格段に向上する。また、この装置では、各層の厚みをスリットの形状(長さ、幅)で調整できるため、任意の層厚みを達成することが可能となる。このようにして所望の層構成に形成した溶融多層積層シートをダイへと導き、上述の通りキャストシートが得られる。
続いて、得られたキャストシートを、長手方向および幅方向に二軸延伸することが好ましい。延伸は、逐次に二軸延伸してもよいし、同時に二軸延伸してもよい。また、さらに長手方向および/または幅方向に再延伸を行ってもよい。ここで長手方向とは、フィルムの走行方向をいい、幅方向とは長手方向とフィルム面内で直交する方向をいう。
逐次二軸延伸の場合についてまず説明する。ここで、長手方向への延伸とは、シートに長手方向の分子配向を与えるための一軸延伸を指し、通常は、ロールの周速差により施され、1段階で行っても、複数本のロール対を使用して多段階に行ってもよい。延伸の倍率としては樹脂の種類により異なるが、通常、2.0~10倍が好ましく、例えば、本発明の積層フィルムに好ましく用いられる結晶性を示す熱可塑性樹脂層を形成する熱可塑性樹脂であるポリエチレンテレフタレートあるいはポリエチレンナフタレートを用いた場合には、2.0~7.0倍が特に好ましく用いられる。また、延伸温度としては積層フィルムを構成する熱可塑性樹脂層のうち最もガラス転移温度が高い熱可塑性樹脂層の、ガラス転移温度~ガラス転移温度+100℃の範囲内に設定することが好ましい。長手方向の延伸工程で強く配向させた場合には、フィルム幅方向のネックダウンが生じるため、十分なフィルム幅を得られない他、幅方向延伸後の長手方向および/または幅方向の厚みむらや透過スペクトルむらが大きくなる場合がある。
このようにして得られた一軸延伸された積層シートに、必要に応じてコロナ処理やフレーム処理、プラズマ処理などの表面処理を施した後、易滑性、易接着性、帯電防止性などの機能を付した易接着層をインラインコーティングにより付与する。インラインコーティングの工程において、易接着層は積層フィルムの片面に塗布してもよく、積層フィルムの両面に同時あるいは片面ずつ順に塗布してもよい。
続いて一軸延伸された積層シートに幅方向の延伸を施す。幅方向の延伸とは、シートに幅方向の配向を与えるための延伸をいい、通常は、テンターを用いて、シートの幅方向両端部をクリップで把持しながら搬送して行う。延伸の倍率としては樹脂の種類により異なるが、通常、2.0~10倍が好ましく、例えば、本発明の積層フィルムに好ましく用いられる結晶性の熱可塑性樹脂層を形成する熱可塑性樹脂であるポリエチレンテレフタレートあるいはポリエチレンナフタレートを用いた場合には、2.0~7.0倍が特に好ましく用いられる。また、延伸温度としては積層フィルムを構成する樹脂のうち最もガラス転移温度が高い樹脂の、ガラス転移温度~ガラス転移温度+120℃が好ましい。
こうして二軸延伸された積層フィルムは、テンター内で延伸温度以上、積層フィルムを構成する熱可塑性樹脂層のうち最も融点が高い熱可塑性樹脂層の融点以下の温度で熱処理を施され、均一に徐冷後、室温まで冷やして巻き取られる。また、必要に応じて、熱寸法安定性を付与するために熱処理から徐冷する際に、長手方向および/あるいは幅方向に弛緩処理などを併用してもよい。
続いて、同時二軸延伸の場合について説明する。同時二軸延伸の場合には、得られたキャストシートに、必要に応じてコロナ処理やフレーム処理、プラズマ処理などの表面処理を施した後、易滑性、易接着性、帯電防止性などの機能をインラインコーティングにより付与してもよい。インラインコーティングの工程において、易接着層は積層フィルムの片面に塗布してもよく、積層ユニットの両面に同時あるいは片面ずつ順に塗布してもよい。
次に、キャストシートを、同時二軸テンターへ導き、シートの幅方向両端部をクリップで把持しながら搬送して、長手方向と幅方向に同時および/または段階的に延伸する。同時二軸延伸機としては、パンタグラフ方式、スクリュー方式、駆動モーター方式、リニアモーター方式があるが、任意に延伸倍率を変更可能であり、任意の場所で弛緩処理を行うことができる駆動モーター方式もしくはリニアモーター方式が好ましい。延伸の倍率は樹脂の種類により異なるが、通常、面積倍率として6.0~50倍が好ましく、本発明の積層フィルムに好ましく用いられる結晶性の熱可塑性樹脂層を形成する熱可塑性樹脂であるポリエチレンテレフタレートあるいはポリエチレンナフタレートを用いた場合には、面積倍率として8~30倍が特に好ましく用いられる。延伸速度は同じ速度でもよく、異なる速度で長手方向と幅方向に延伸してもよい。また、延伸温度としては積層フィルムを構成する熱可塑性樹脂層のうち最もガラス転移温度が高い熱可塑性樹脂層の、ガラス転移温度~ガラス転移温度+120℃が好ましい。
こうして同時二軸延伸されたシートは、平面性、寸法安定性を付与するために、引き続きテンター内で延伸温度以上融点以下の熱処理を行うのが好ましい。この熱処理の際に、幅方向での主配向軸の分布を抑制するため、熱処理ゾーンに入る直前および/または直後に瞬時に長手方向に弛緩処理することが好ましい。このようにして熱処理された後、均一に徐冷後、室温まで冷やして巻き取られる。また、必要に応じて、熱処理から徐冷する際に長手方向および/あるいは幅方向に弛緩処理を行ってもよい。また、熱処理ゾーンに入る直前および/あるいは直後に瞬時に長手方向に弛緩処理をしてもよい。
以上のようにして得られた積層フィルムは、巻き取り装置を介して必要な幅にトリミングされ、巻き取り皺が付かないようにロールの状態で巻き取られる。なお、巻き取り時に巻姿改善のためにフィルムの両端部にエンボス処理を施してもよい。
本発明の積層フィルムの厚みは、特に限定されるものではないが、10μm以上100μm以下であることが好ましい。各種機能性フィルムの薄膜化傾向を加味すると、70μm以下であることが好ましく、より好ましくは50μm以下である。下限はないものの、ロール巻取り性を安定なものとし、破れなく製膜するためには、現実的には10μm以上の厚みであることが好ましい。
積層フィルムの厚み調整方法は特に限定されないが、搬送方向ならびに幅方向の延伸倍率を変動させずに厚みを調整することが好ましいことから、キャスティングドラムなどの冷却体の引き取り速度の増減で調整することが好ましい。このときに生じるフィルム幅収縮を抑制するために、ダイと前記冷却体の間隙も適宜調整することが好ましい。フィルム幅を一定と出来ない場合は、例えば、テンターにおけるクリップ間距離を調整することで幅方向の延伸倍率を一定とすることができる。
また、本発明の積層フィルムの最表面には、耐擦傷や寸法安定性、接着性・密着性などの機能を付加するために硬化型樹脂を主成分として構成されるハードコート層が積層されていてもよい。積層フィルムを製品へ実装するためにロールトゥロールで搬送した際に、ロールとフィルム間の擦れにより積層フィルム表面に傷発生を防止することができる。さらに、積層フィルム内の樹脂オリゴマー成分や、積層フィルムに添加することができる各種添加剤が、高温熱処理においてブリードアウトする可能性がある場合でも、ハードコート層を最表面に設けることで、架橋密度の高いハードコート層が析出抑制効果を示しうる。また、硬化性樹脂層を積層することで熱処理によるフィルムの寸法変化を抑えることもでき、熱収縮によるフィルム厚みの増加、それに伴う積層フィルムの透過スペクトルなどの光学特性の変化を抑制することができる。一方、光学的には、積層フィルム表面の結晶性を示す熱可塑性樹脂層の屈折率よりも低い屈折率を示す熱硬化性樹脂層を設けることで、空気界面との屈折率差が小さくなることで表面反射を抑え、積層フィルム全体の反射率を高めることができるため好ましい。
その他、ハードコート層以外に、機能性を示す層として、耐摩耗性層、反射防止層、色補正層、紫外線吸収層、粘着層、金属酸化物などを添加したガスバリア層、印刷層などを形成されていてもよい。これらの層は1層でも多層でもよく、また、1つの層に複数の機能を有していてもよい。
以下、実施例に沿って本発明について説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。各特性は、以下の手法により測定した。
(特性の測定方法および効果の評価方法)
本発明における各特性の測定方法、および効果の評価方法は次のとおりである。
(1)示差走査熱量測定(DSC)
(株)日立ハイテクノロジーズ社製の示差走査熱量計EXSTAR DSC6220を用いた。測定ならびに温度の読み取りは、JIS-K-7122(1987年)に従って実施した。具体的には、試料約5mgをアルミニウム製受皿上で、25℃から300℃まで10℃/分の速度で昇温させた際の、室温から昇温した際のベースラインと段差転移部分の変曲点での接線との交点をガラス転移温度Tg(℃)とし、結晶融解時のピークトップを融点とした。さらに、昇温後に液体窒素で急冷し、さらに同じ条件で昇温した際に最も高温側で確認される吸熱ピーク(融点)の面積をベースラインからの積分により求め、この吸熱ピーク(融点)面積を融解エンタルピーTm(J/g)とした。
(2)層構成
積層フィルムの層厚み分布は、ウルトラミクロトームを用いて薄片化したサンプルについて、透過型電子顕微鏡(TEM)観察により求めた。具体的には、透過型電子顕微鏡JEM-1400 Plus((株)日本電子製)を用い、加速電圧100kVの条件で積層フィルムの断面を観察し、断面像を取得することで、層構成(積層数、規則配列、層厚み分布)および各層厚みを測定した。なお、各層間の輝度差を大きく得るために、電子染色剤(RuOなど)を使用した染色技術を用いた。また、各層の厚みにあわせて、薄膜層厚みが100nm未満の場合は直接倍率4万倍、薄膜層厚みが100nm以上500nm未満である場合は直接倍率2万倍、500nm以上である場合は厚みに応じて1千倍~1万倍にて観察を実施し、層厚み分布を解析した。得られた画像の輝度差を基に、積層数、規則配列、各層の層厚み、層厚みの分布、層厚みに基づく積層比、傾斜度をそれぞれ判断した。なお、積層比については、最表層のA層を除く部分の規則配列に着目し、熱可塑性樹脂層B層を基準として他の熱可塑性樹脂層の積層比を算出した。(3)層界面(輝度差)のとおりに求めた各層厚みの層厚み分布のうち、層厚みが単調増加を示す部分で最も厚みの大きい層厚みを最大層厚みとし、最も薄い層厚みとして、傾斜度を求めた。
(3)層界面(輝度差)
(2)の透過型電子顕微鏡観察において得られた断面画像を圧縮画像ファイル(JPEG)形式に変換し、積層フィルムの厚み方向に沿って、ImagePro-10(販売元 伯東株式会社)を用いて、ラインプロファイルにより位置-輝度データを取得した。その後、表計算ソフト(マイクロソフト社“Excel”(登録商標) 2016)を用いて、位置と輝度の関係をプロットして得られたプロファイルに対し、5点移動平均処理を施した。平均処理は、連続する5点の測定位置に対して輝度の平均処理を施し、1点ずつ位置を変更して同じ計算を連続処理することで行い、平均処理した位置-輝度プロファイルを取得した。得られた平均処理済の位置-輝度プロファイルにおいて、傾きが正から負、あるいは負から正へ変化する変曲点で囲まれる位置を1つの層と判断した。当該手法で得られた各層に対し、続いて積層フィルムの平面方向(厚み方向に対して垂直な方向)に対して位置-輝度データを取得した。各層毎に得られた輝度の平均値と標準偏差を算出した後、隣接する2層の輝度の平均値の差が、隣接する熱可塑性樹脂層の輝度の標準偏差のいずれよりも大きい場合、これら隣接する2層は異なると判断した。また、当該変曲点間の位置の差(距離)を、各層の層厚みとして算出した。
(4)反射分光スペクトル測定
サンプルを積層フィルム幅方向中央部から4cm四方で切り出し、積層フィルムの片面に黒色ラッカースプレーを用いて背面黒処理を施した。背面黒処理では3回重ね塗りを行い、光を完全に透過しない状態とした。日立ハイテクサイエンス製の分光光度計U-4100を使用し、積分球背面の開口部には反射部材として、付属の酸化アルミニウム板を固定した。また、鏡面反射を用いる絶対反射率測定ユニットとして、付属の12°正反射付属装置(P/N134-0104)を積分球の直前に設置し、背面黒処理したサンプルの未処理側を本ユニット側に向けてしっかりと密着させて、波長295nmから2605nm範囲での反射分光スペクトルを連続的に測定した。測定にあたっては、スキャン速度を600nm/min、サンプリングピッチを1nmに設定した。得られた分光反射スペクトルをもとに、反射率が100nm以上にわたって連続して20%以上を示す最も広い反射帯域をΠとし、本波長帯域Πの反射帯域幅をλ、反射帯域の平均反射率をRとして読みとった。また、波長400~800nmにおける最大反射率、および平均反射率、波長900~1200nmにおける平均反射率も同様に得られた反射分光スペクトルから読み取った。なお、(9)に記載の方法に従い作製した延伸サンプル(1.3倍×1.3倍延伸サンプルおよび1.5倍×1.5延伸サンプル)についても同様に平均反射率を測定し、平均反射率変化ΔR1、ΔR2を下記式により算出した。
ΔR1=(延伸前の平均反射率R-1.3倍延伸サンプルの平均反射率R)/延伸前の平均反射率R×100(%)
ΔR2=(延伸前の平均反射率R-1.5倍延伸サンプルの平均反射率R)/延伸前の平均反射率R×100(%)。
(5)クロスカット剥離率
JIS K 5600-5-6(1999年)に規定の付着性(クロスカット)試験方法に従い評価した。COTEC社製の1mm間隔のクロスカットガイドCCJ-1を用い、NTカッターで20~30°の角度にて縦横各11本の直交する切りこみを入れ、100マスの升目を作製した。当該升目に、24mm幅のニチバン社製“セロテープ”(登録商標)を貼りつけ、約60°の角度でテープを素早く引き剥がし、完全に剥離した升目の数を読み取った。この作業を10回繰り返し、剥離した升目の数の平均値を求め、剥離率を算出した。
(6)彩度
コニカミノルタセンシング株式会社製の分光測色計CM-3600dを使用して、製品幅1mのフィルムについて、幅方向に10cmの間隔で各点における色度(a、b)を測定した。得られた色度から彩度をもとめ、彩度の最大値と最小値の差を彩度の範囲とした。
なお、測定の手順としては、分光測色計付属のゼロ構成ボックスで反射率のゼロ構成を行い、続いて付属の白色校正板を用いて100%校正を行った後、以下の条件でフィルムの色度(a、b)を計測した。
モード:反射、SCI/SCE同時測定
測定径:8mm
サンプル:非測定面側に黒インキを塗布
次に色度(a、b)から彩度C*を求めた。彩度の定義は以下の通りである。彩度が0に近いほど、色づきのないものとなる。
C*=((a+(b1/2
彩度の計算に用いた色度(a、b)は SCIの値を用いた。
なお、(9)に記載の方法により作製した面倍1.3倍延伸サンプルについても同様に彩度を測定し、彩度変化ΔC*は以下の通りに算出した値を用いた。
ΔC*=(1.3倍延伸サンプルの彩度C*-延伸前の彩度C*)/延伸前の彩度C*×100(%)。
(7)ヘイズ
スガ試験機(株)製 ヘイズメーター(HGM-2DP)を用いた。サンプルをフィルム幅方向中央部から10cm×10cmで切り出し、旧JIS-K-7105(1994)に準じて測定を行うことで全光線透過率ならびにヘイズ値を測定した。フィルム幅方向に対して等間隔で3点測定し、その平均値を測定結果とした。
(8)長期信頼性試験
エスペック(株)製 恒温恒湿機(LHL-114)を用いた。得られた積層フィルムから10cm四方のサンプルを切り出し、サンプルを普通紙2枚で挟んだ状態で恒温恒湿機に静置した。500時間静置処理後、(5)に記載のクロスカット剥離率や(7)に記載のヘイズ値変化(Δヘイズ)を評価し、下記の通りA~Dで判定した。
A:剥離率変化が1%以下、かつΔヘイズが0.1%以下であった。
B:Aに該当せず、剥離率変化が5%以下、かつΔヘイズが0.5%以下であった。
C:A、Bのいずれにも該当せず、剥離率変化が10%以下、かつΔヘイズが1.0%以下であった。
D:A~Cの何れにも該当しなかった。
以下、本発明の実施例で用いる熱可塑性樹脂、添加剤、及び水系塗材Xについて説明する。ここで述べるポリエステル樹脂の共重合成分量は、酸成分100mol%,ジオール成分100%に対する共重合量を表す。
(9)延伸サンプルの作製
ブルックナー製フィルムストレッチャー KARO-Vにて作製した。得られた積層フィルムを100mm四方切り出し、温度100℃にて、延伸倍率が1.3倍(主配向軸方向)×1.3倍(主配向軸直交方向)または1.5倍(主配向軸方向)×1.5倍(主配向軸直交方向)となるように同時二軸延伸を行った。このときの延伸速度は200%/minとした。なお、実施例及び比較例の積層フィルムの製造においては、いずれも長手方向と幅方向に延伸しているため、フィルムの主配向軸方向と主配向軸直交方向はこれらのいずれかになることが明らかである。すなわち、延伸サンプルの作製においては積層フィルムを長手方向と幅方向に延伸した。
<熱可塑性樹脂>
各実施例においては、表1~3に示すとおり以下の樹脂1~11を使用した。以下の樹脂1~11のうち、樹脂1、2、4、7、9、11は結晶性、樹脂3は半結晶性、樹脂5、6、8、10は非晶性である。
樹脂1: ガラス転移温度78℃、融点254℃、融解エンタルピー40J/gを示す、結晶性のホモポリエチレンテレフタレート樹脂
樹脂2: ガラス転移温度79℃、融点230℃、融解エンタルピー12J/gを示す、イソフタル酸を10mol%共重合した結晶性のポリエチレンテレフタレート樹脂
樹脂3: ガラス転移温度77℃、融点217℃、融解エンタルピー2J/gを示す、イソフタル酸を15mol%共重合した半結晶性のポリエチレンテレフタレート樹脂
樹脂4: ガラス転移温度97℃、融点254℃、融解エンタルピー33J/gを示す、分子量400のポリエチレングリコールを5mol%共重合した結晶性のポリエチレンナフタレート樹脂
樹脂5: ガラス転移温度80℃を示す、シクロヘキサンジメタノールを33mol%共重合した非晶性のポリエチレンテレフタレート樹脂
樹脂6: ガラス転移温度77℃を示す、スピログリコールを20mol%共重合した非晶性のポリエチレンテレフタレート樹脂
樹脂7: 融点133℃、融解エンタルピー2J/gを示す、結晶性の酸変性エチレン-プロピレン共重合樹脂
樹脂8: ガラス転移温度101℃を示す、非晶性のホモ・ポリメチルメタクリレート樹脂
樹脂9: ガラス転移温度86℃、融点237℃、融解エンタルピー10J/gを示す、結晶性のポリメタキシレンジアミンアジパミド樹脂
樹脂10: ガラス転移温度99℃を示す、樹脂4と樹脂8を50:50の体積濃度比でナノアロイ混練した非晶性の熱可塑性樹脂
樹脂11: ガラス転移温度78℃、融点253℃、融解エンタルピー22J/gを示す、5-ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチルを8mol%共重合した結晶性のポリエチレンテレフタレート樹脂。
<添加剤>
エポキシ価1.4meq/gを示す平均分子量2900g/molのアクリル系ポリマー。
<水系塗剤X>
下記のポリエステル樹脂1(100質量部)、反応性化合物1(30質量部)、反応性化合物2(30質量部)を混合した材料に、粒径100nmのシリカコロイダル粒子を前記樹脂と化合物の混合体にあたるバインダー樹脂100質量部に対して0.5質量部加え、溶媒として水で固形分濃度が5質量部となるように調整した後、水の合計100質量部に対して0.03質量部の界面活性剤を加え混合することで、塗料組成物とした。
ポリエステル樹脂1:
以下の手順により、下記の共重合組成からなるポリエステル樹脂の水分散体を得た。反応器に下記の共重合成分、及び触媒としてシュウ酸チタンカリウム0.1部を加え、常圧、窒素雰囲気中で攪拌混合しながら200℃に昇温した。次に、4時間かけて反応温度を250℃にまで徐々に昇温しエステル交換反応を終了させた。このポリエステル樹脂15質量部及び水85質量部を溶解槽に加え攪拌下、温度80~95℃で2時間かけて分散させ、ポリエステル樹脂の15%水系分散体を得た。
(共重合組成)
・ジカルボン酸成分
2,6-ナフタレンジカルボン酸ジメチル:88モル%
5-スルホイソフタル酸ジメチルナトリウム:12モル%
・ジオール成分
ビスフェノールA1モルに対してエチレンオキサイド2モルを付加した化合物:86モル%
1,3-プロパンジオール:14モル%
反応性化合物1:
カルボジイミド水系架橋剤(日清紡ケミカル(株)“カルボジライト”(登録商標) V-04)
反応性化合物2:
オキサゾリン含有ポリマー水系分散体((株)日本触媒製“エポクロス”(登録商標) WS-500)。
(実施例1)
熱可塑性樹脂層A層、B層、C層を構成する各熱可塑性樹脂として、それぞれ順に樹脂1、樹脂2、樹脂5を用いた。準備した各熱可塑性樹脂をそれぞれ、ペレット状で3台の二軸押出機に別々に投入し、樹脂1、樹脂2、樹脂5をそれぞれ270℃、270℃、280℃で溶融させて混練した。混錬条件は、いずれも吐出量に対するスクリュー回転数が0.7となるように設定した。次いで、それぞれFSSタイプのリーフディスクフィルタを7枚介した後、ギヤポンプにて計量しながら、270℃に調温したスリット数601個のフィードブロックにて合流させて、積層比がA層/B層が0.98、C層/B層が1.02を示し、厚さ方向にA層/B層/C層/B層の規則配列で積層され、かつ両表層がA層となるような、601層の積層体を形成した。ここで、フィードブロック内のスリット長さと幅は、両最表層を除いて片側の最表面から反対側の最表面に向かって層厚みが単調増加となり、A~C層の傾斜度(層厚み分布のうち単調増加を示す部分の最大層厚みと最小層厚みの比(最大層厚み/最小層厚み))がいずれも2.0になるよう設計した。その後、フィードブロックを通過した積層体をTダイへ供給し、シート状に成型した後、ワイヤーで8kVの静電印可電圧をかけながら、表面温度が25℃に保たれたキャスティングドラム上で急冷固化して未延伸の積層キャストシートを得た。得られた積層キャストシートを、70~80℃に設定したロール群で加熱した後、延伸区間長100mmの間でキャストシートの両面からラジエーションヒーターにより急速加熱しながら、85℃の温度で長手方向に3.3倍延伸して一旦冷却した。続いて、得られた一軸延伸フィルムの両面に空気中でコロナ放電処理を施して基材フィルムの濡れ張力を55mN/mとした後、両面に#4のメタバーで易滑層形成用の水系塗剤Xをコーティングし(以後、コーティングを行うとは、前記内容を意味する。)、易滑層を形成した。さらに、この一軸延伸フィルムをテンターに導き、85℃の熱風で予熱後、90℃の温度でフィルム幅方向に3.6倍延伸した。二軸延伸したフィルムは、横延伸直後に200℃の熱風で熱固定を行い、テンター出口直前にて幅方向に5%の弛緩処理を施した後巻き取った。得られた積層フィルムの評価結果を表1に示す。
(実施例2~10、13、14、16、17、19~21、比較例2、4)
各層の樹脂、フィルム構成、製膜条件を表1、2、3に記載の通り変更した以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの評価結果を表1、2、3に示す。なお、フィルム厚みはキャストドラムの引き取り速度により、積層比は押出機の吐出量の調整により調整した(以下、他の実施例や比較例において同じ。)。
(実施例11、12)
密着性を向上するためのエポキシ末端改質剤を表2に記載の熱可塑性樹脂内に所定の添加濃度分を予めコンパウンドし、熱可塑性樹脂層を構成する熱可塑性樹脂として利用した以外は、実施例10と同様にして積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの評価結果を表2に示す。
(実施例15)
実施例14において、熱可塑性樹脂層A層、B層、C層を構成する各熱可塑性樹脂として、それぞれ順に樹脂2、樹脂5、樹脂6を用いた。さらに、積層装置として、301個のスリットを有するスリットプレート2枚を有しており、フィードブロック内のスリット長さと幅が、両最表層と中間層(301層目)を除いて片側の最表面から中間層(301層)に向かって層厚みが単調増加となり、中間層から反対側の最表層に向かって層厚みが単調減少となるように設計された、スリット数601個のフィードブロックを用いて、製膜条件を表2に記載の通りに変更した以外は、実施例14に記載の製造方法と同様にして積層フィルムを得た。両表層および中間層は5μmの厚膜層を示していることを、透過型電子顕微鏡観察により確認した。得られた積層フィルムの評価結果を表2に示す。
(実施例18)
実施例1において、熱可塑性樹脂層A層、B層、C層を構成する各熱可塑性樹脂として、それぞれ順に樹脂1、樹脂5、樹脂6を用いた。さらに、積層装置として、厚さ方向にA層/B層/C層の規則配列で積層され、片側最表層から反対側の最表層に向かって層厚みが単調増加する層厚み分布を示すように設計された、合計799層のスリットを有する3枚のスリットプレートを有するフィードブロックを用いて規則配列がA層/B層/C層であり、両側の最表層がA層である溶融積層体を得た。その他、各層の樹脂、フィルム構成、製膜条件を表2に記載の通り変更した以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの評価結果を表2に示す。
(比較例1)
実施例2において、熱可塑性樹脂層A層、B層、C層を構成する各熱可塑性樹脂として、それぞれ順に樹脂1、樹脂2、樹脂5を用いた。さらに、積層装置として、厚さ方向にA層/B層/C層の規則配列で積層され、片側最表層から反対側の最表層に向かって層厚みが単調増加する層厚み分布を示すように設計された、合計151層のスリットを有する3枚のスリットプレートを有するフィードブロックを用いて規則配列がA層/B層/C層であり、両側の最表層がA層である溶融積層体を得た。その他は実施例2と同様にして積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの評価結果を表3に示す。
(比較例3)
熱可塑性樹脂層A層、B層を構成する各熱可塑性樹脂として、それぞれ順に樹脂4、樹脂8を用いた。また、270℃に調温したスリット数301個のフィードブロックにて合流させて、積層比がA層/B層が0.86を示し、厚さ方向に交互規則配列で積層され、かつ両表層がA層となるような、301層の積層体を形成した。ここで、フィードブロック内のスリット長さと幅は、両最表層を除いて片側の最表面から反対側の最表面に向かって層厚みが単調増加となるように設計した。それ以外の製膜条件は表3に記載の通り変更した以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの評価結果を表3に示す。
Figure 2024055292000004
Figure 2024055292000005
Figure 2024055292000006
本発明の積層フィルムは、異なる3種類の熱可塑性樹脂層からなる規則配列を有することで、緩衝層の役割を果たす第3の熱可塑性樹脂層の効果により、屈折率差が大きくなるような骨格構造が全く異なる熱可塑性樹脂層を積層することが出来る。また、3種類以上の光学特性の異なる熱可塑性樹脂層を用いるため、従来の積層フィルムでは達成できなかった光学設計が実現でき、従来の積層フィルムよりも広反射帯域・高反射率を有する積層フィルムを、低積層数かつ薄膜で実現することができる。このような積層フィルムは、成型による破れや色抜けが発生しにくく、高温負荷がかかる条件での成型にも好適に用いることができるため、自動車や家電などの加飾成型フィルムなどの高温負荷がかかるような用途においても、本来の光学特性(金属調)を損なうことなく使用することが出来る。
1:反射分光スペクトル
2:反射帯域Π
3:反射帯域Πの波長帯域幅λ
4:反射帯域Πの平均反射率

Claims (13)

  1. 異なる3種類以上の熱可塑性樹脂層を有し、
    前記3種類以上の熱可塑性樹脂層で形成される規則配列を連続して3つ以上有し、
    波長400nm~800nmにおける平均反射率が35%以上100%以下であり、
    かつ、主配向軸方向および主配向軸直交方向に100℃で30%延伸したときの、波長400nm~800nmにおける平均反射率変化ΔR1が0.1%以上20%以下であることを特徴とする、積層フィルム。
  2. 異なる3種類以上の熱可塑性樹脂層を有し、
    前記3種類以上の熱可塑性樹脂層で形成される規則配列を連続して3つ以上有し、
    彩度C*が0.1以上20以下であり、
    かつ、主配向軸方向および主配向軸直交方向に100℃で30%延伸したときの、彩度変化ΔC*が0.1%以上15%以下であることを特徴とする、積層フィルム。
  3. JIS K 5600-5-6:1999に規定されたクロスカット法に基づく付着性試験での升目の剥離率が10%以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載の積層フィルム。
  4. 前記異なる3種類以上の熱可塑性樹脂層のうち、少なくとも1種類が結晶性を示す熱可塑性樹脂層であることを特徴とする、請求項1または2に記載の積層フィルム。
  5. 前記結晶性を示す熱可塑性樹脂層の少なくとも1種類が、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートを主成分とすることを特徴とする、請求項4に記載の積層フィルム。
  6. 前記規則配列を構成する熱可塑性樹脂層が3種類であることを特徴とする、請求項1または2に記載の積層フィルム。
  7. 前記規則配列を構成する3種類の熱可塑性樹脂層が、結晶性/非晶性/非晶性の熱可塑性樹脂層の組み合わせであることを特徴とする、請求項6に記載の積層フィルム。
  8. 前記非晶性の熱可塑性樹脂層の少なくとも1種が、アクリル、脂環式構造を有するポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミドのいずれかを主成分とすることを特徴とする、請求項7に記載の積層フィルム。
  9. 波長400nm~800nmにおける平均反射率が35%以上100%以下であり、
    かつ、主配向軸方向および主配向軸直交方向に100℃で50%延伸したときの、波長400nm~800nmにおける平均反射率変化ΔR2が0.1%以上20%以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載の積層フィルム。
  10. 波長300~2600nmの範囲において、反射率が100nm以上にわたって連続して20%以上を示す最も広い反射帯域Πの反射帯域幅をλ[nm]、当該反射帯域での平均反射率R[%]、フィルム厚みをt[μm]としたとき、(λ・R)/tが820以上1400以下を示すことを特徴とする、請求項1または2に記載の積層フィルム。
  11. 彩度C*が0.1以上20以下であり、主配向軸方向および主配向軸直交方向に100℃で30%延伸したときの、彩度変化ΔC*が0.1%以上15%以下であることを特徴とする、請求項1に記載の積層フィルム。
  12. 請求項1または2に記載の積層フィルムを用いてなる、加飾フィルム。
  13. 請求項12に記載の加飾フィルムを用いてなる、成型体。
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