JP2024055291A - 積層フィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】 本発明は、窓部材や車載部材等として用いた際の視認性がよく、居住環境を向上する積層フィルムに関する。【解決手段】 異なる3種類の熱可塑性樹脂層からなる規則配列を連続して3つ以上有し、下記条件1~3を同時に満たすことを特徴とする、積層フィルム。条件1:前記規則配列における異なる3種類の熱可塑性樹脂層を最表面から順にA層、B層、C層としたときに、前記B層の合計厚みに対する前記A層の合計厚みの比A/Bが0.5以上1.1以下であり、前記B層の合計厚みに対する前記C層合計厚みの比C/Bが0.9以上1.5以下である。条件2:前記規則配列内の熱可塑性樹脂層の合計厚みが250nm以上600nm以下である。条件3:垂直入射時の透過彩度C*(0°)と、60°入射時の透過彩度(60°)が、|C*(60°)-C*(0°)|≦10を満たす。【選択図】 図1

Description

本発明は、窓部材や車載部材等として用いた際の視認性が良好で、居住環境を向上する積層フィルムに関する。
特定波長帯域の光線を遮蔽・抽出可能な光制御フィルムは、光や熱線などの環境因子から製品の内部環境の悪化や構成成分の劣化を防止する目的や、特定波長帯域の光線のみを抽出して所望の色調に発色させる目的で、多岐の分野にわたり実用化されている。代表例として、例えば建材や自動車用途では室内/車内の温度上昇を抑制するための近赤外線カットフィルム、工業材料用途では紫外線レーザー表面加工時の過剰な紫外線を吸収するための紫外線カットフィルム、電子情報分野ではディスプレイ光源から発せられる眼に有害な青色光線を遮蔽するブルーライトカットフィルムや、拡散・喪失するバックライトの光を再帰反射させることができる輝度向上フィルム、自動車内装材やモバイル筐体用途では金属調を付与するための可視光全域を反射する金属調フィルム、などが利用されている。
その他、食品、医療、農業、インクなどの分野においても、内容物の光劣化を抑制する目的で光制御フィルムが用いられる。中でも、近赤外線カットフィルムは、建物の窓や車窓に貼り合わせることで、太陽光に含まれる高エネルギーの熱線(近赤外線)をカットして室内/車内温度上昇を抑制できるほか、それにより空調技術の省エネルギーにも貢献できる材料として、実用化が進んでいる。このような近赤外線カットフィルムは、特に車載用途においては、近赤外線領域の光線カットに加え、周囲の視認性を高めるための高い透明度が要求される。
特定波長帯域の光線を制御(遮蔽)する手法として、フィルムを構成する樹脂に染料・顔料・熱線吸収剤等の光吸収剤を添加した吸収タイプの光制御フィルムが広く利用されている(特許文献1)。しかしながら、吸収タイプの光制御フィルムの吸収特性は、吸収剤の添加濃度とフィルム厚みの積に性能が依存するため、近年のフィルムにおける薄膜化のトレンドに従うと、吸収剤の添加濃度を高くすることが必要となる。これにより、光吸収剤の種類によっては表面析出が顕著となり、製膜工程汚染によるフィルム欠点、光吸収剤含有濃度減少によるカット性能低下等、品位や品質の低下が問題となる。また、光吸収剤は緩やかなカットオフ特性を示す場合が多く、可視光線領域と近赤外線量領域の境界をカットできる熱線吸収剤を用いた場合、可視光線領域の赤色領域までカットし、フィルムに色づきが生じる問題もあった。
このような吸収タイプの光制御フィルムの欠点を補うことができる、特定の波長帯域のみの光線を急峻に遮蔽でき、かつ、簡便に波長帯域を調整できる光制御フィルムとして、屈折率の異なる層をフィルム厚さ方向に積層し、光干渉理論に基づく干渉反射を利用する反射タイプの光制御フィルムが挙げられる。中でも、屈折率の異なる2種類の層(A層、B層)を交互に積層する(AB)m構成(mは繰り返し単位の数を表す自然数)の光制御フィルムは多くの公知技術が報告されており、例えば、層厚みに連続的に傾斜分布を付与することで広い波長帯域の光線を反射できること、また、所望の波長帯域以外に短波長帯域に発生する望まれない反射(高次反射と称する)を抑制するために、光学厚みを波長の1/4に設計する技術(特許文献2,3)や、1:7:1の比率を有する特殊な層厚みパターニングを施す技術(特許文献4,5)、などが報告されている。
特開2013-210598号公報 特表2004-503402号公報 特表平8-503312号公報 米国特許5360659号 特開2018-205615号公報
特許文献2~5が開示する(AB)m構成(mは繰り返し単位の数を表す自然数)の反射タイプの光制御フィルムにおいて、高い遮熱性能を得るためには、近赤外線領域における分光反射スペクトルの反射帯域が広く、かつ、当該反射帯域での反射率が高いことが求められる。本光学特性を実現出来る積層フィルム設計として、積層数を増やす、あるいは、2種類の樹脂層の屈折率差を高めることが挙げられる。しかしながら前者の場合は、フィルムが厚くなり近年の薄膜化トレンドに反する態様になる点、後者の場合は、屈折率の大きく異なる異種樹脂層界面で層間剥離が起こる点が問題となる。そのため、特許文献2~5が開示する(AB)m構成(mは繰り返し単位の数を表す自然数)の反射タイプの光制御フィルムには、実用面での大きな問題があった。
また、高い透明性を得るためには、干渉反射技術において副次的に発生する短波長領域の高次反射を抑制する必要がある。遮熱フィルムの場合、主反射帯域を近赤外線領域とすることで、可視光線領域での高次反射が生じる場合がある。高次反射抑制については、特許文献2~5が開示するように、λ/4設計あるいは、1:7:1比率の、特殊な光学厚みパターニングを施すことで改善出来る。このとき、屈折率の異なる2種類の樹脂の厚み比率を高精度に制御することが求められるが、押出機の吐出変動や、樹脂積層工程での幅方向流動むらにより、広い範囲にわたって均一な積層比を示すことは難しく、積層フィルムが大面積にわたり高い透明性を示すことが難しいという課題があった。
積層フィルムの遮熱性能を高めるためには、反射率を100%まで高め、さらに近赤外線領域の光線を広く遮蔽することも重要である。従来の交互積層構造を有する積層フィルムでは、反射率向上は異なる2種類の樹脂の屈折率差を制御することで実現出来る。一方で、反射帯域の拡張は、干渉反射理論に基づいて積層フィルム内の層厚み分布設計により達成出来るものの、理論上、帯域拡張により可視光線領域への高次反射が生じるため、積層フィルムの色づきが生じる問題があった。そのため、高い透明性と、高反射+広帯域化による高遮熱性能を両立することは、2種類の屈折率の異なる層(A層、B層)の交互積層構造を基本とする従来技術では達成できなかった。
加えて、高次反射発生による他の課題として、積層フィルムを斜め方向から見た場合、積層フィルム内での光路長が変化することによる反射帯域波長の短波長シフトが生じる。このシフト特性により、可視光線領域に高次反射が生じる積層フィルムの場合は、正面方向と斜め方向で色味が変化する場合がある。積層フィルム正面からは着色が見られない場合でも、斜め方向からは樹脂屈折率変化も相まって着色を呈することがあり、そのような積層フィルムを車窓フロントガラスに用いると、視認性が悪化する問題がある。すなわち、前記のように、高次反射が発生しやすい従来の交互積層構造を有する積層フィルムの場合は、実用面において視認性が悪化する課題があった。
上記問題点に鑑み本発明は、面内における色むらが少なく、透明性に優れ、広帯域にわたって高い反射率を示し、窓部材や車載部材等として用いた際に視認性や居住環境を向上させることができる積層フィルムを提供することをその課題とする。
本発明は次の構成からなる。すなわち、異なる3種類の熱可塑性樹脂層からなる規則配列を連続して3つ以上有し、下記条件1~3を同時に満たすことを特徴とする、積層フィルムである。
条件1:前記規則配列における異なる3種類の熱可塑性樹脂層を最表面から順にA層、B層、C層としたときに、前記B層の合計厚みに対する前記A層の合計厚みの比A/Bが0.5以上1.1以下であり、前記B層の合計厚みに対する前記C層合計厚みの比C/Bが0.9以上1.5以下である。
条件2:前記規則配列内の熱可塑性樹脂層の合計厚みが250nm以上600nm以下である。
条件3:垂直入射時の透過彩度C*(0°)と、60°入射時の透過彩度C*(60°)が、|C*(60°)-C*(0°)|≦10を満たす。
また、本発明の積層フィルムは、上記課題を解決するために以下の構成とすることができ、さらに窓部材や車載部材として用いることができる。
(1) 異なる3種類の熱可塑性樹脂層からなる規則配列を連続して3つ以上有し、下記条件1~3を同時に満たすことを特徴とする、積層フィルム。
条件1:前記規則配列における異なる3種類の熱可塑性樹脂層を最表面から順にA層、B層、C層としたときに、前記B層の合計厚みに対する前記A層の合計厚みの比A/Bが0.5以上1.1以下であり、前記B層の合計厚みに対する前記C層合計厚みの比C/Bが0.9以上1.5以下である。
条件2:前記規則配列内の熱可塑性樹脂層の合計厚みが250nm以上600nm以下である。
条件3:垂直入射時の透過彩度C*(0°)と、60°入射時の透過彩度C*(60°)が、|C*(60°)-C*(0°)|≦10を満たす。
(2) 前記規則配列が、A層、B層、C層、B層をこの順に含む4層からなる、(1)に記載の積層フィルム。
(3) フィルム配向軸方向をX方向、前記X方向にフィルム面内で直交する方向をY方向、フィルムの中心をC点としたときに、前記C点をとおり前記X方向に平行な直線とフィルム端部との交点をXE1点及びXE2点、前記C点をとおり前記Y方向に平行な直線とフィルム端部との交点をYE1点及びYE2点としたときに、前記C点、前記C点と前記XE1点の中間点、前記C点と前記XE2点の中間点、前記C点と前記YE1点の中間点、前記C点と前記YE2点の中間点の計5点における、透過彩度C*がいずれも10以下である、(1)または(2)に記載の積層フィルム。
(4) フィルム配向軸方向をX方向、前記X方向にフィルム面内で直交する方向をY方向、フィルムの中心をC点としたときに、前記C点をとおり前記X方向に平行な直線とフィルム端部との交点をXE1点及びXE2点、前記C点をとおり前記Y方向に平行な直線とフィルム端部との交点をYE1点及びYE2点としたときに、前記C点、前記C点と前記XE1点の中間点、前記C点と前記XE2点の中間点、前記C点と前記YE1点の中間点、前記C点と前記YE2点の中間点の計5点における、透過彩度C*の変動係数が20.0以下である、(1)~(3)のいずれかに記載の積層フィルム。
(5) 横軸を波長(nm)、縦軸を反射率(%)とする300nm以上2500nm以下の波長帯域における分光スペクトルにおいて、最も長波長帯域に位置する100nm以上にわたり連続して20%以上の反射率を示す波長帯域を波長帯域Π、前記波長帯域Πにおける中心波長をλ、前記波長帯域Πの分光スペクトルと反射率のベースラインとで囲まれる領域面積をS、前記熱可塑性樹脂層の合計積層数をNとしたときに、0.060≦S/(λ・N)≦0.300を満足する、(1)~(4)のいずれかに記載の積層フィルム。
(6) 前記異なる3種類の熱可塑性樹脂層が結晶性/半結晶性/非晶性の熱可塑性樹脂層、あるいは結晶性/非晶性/非晶性の熱可塑性樹脂層の組み合わせで構成される、(1)~(5)のいずれかに記載の積層フィルム。
(7) (1)~(6)のいずれかに記載の積層フィルムを用いてなる、窓部材。
(8) (1)~(6)のいずれかに記載の積層フィルムを用いてなる、車載部材。
本発明により、面内における色むらが少なく、透明性に優れ、広帯域にわたって高い反射率を示し、窓部材や車載部材等として用いた際に視認性や居住環境を向上させることができる積層フィルムを提供することができる。
(ABCB)m(mは繰り返し単位数を表す自然数)の繰り返し単位を有する積層フィルムの断面図の一例である。 積層フィルムの規則配列単位に含まれる界面で反射する光を示す概略図である。 枚葉サンプルの透過彩度C*の測定対象位置を示す概略図である。 等価膜構成の(AB)m(mは繰り返し単位数を表す自然数)の繰り返し単位を有する積層フィルムの断面図の一例である 本発明の一実施態様に係る積層フィルムの分光スペクトルのうち、波長帯域Πの領域面積S、中心波長λ、反射率ベースラインを示す模式図である。 本発明の一実施態様に係る積層フィルムの分光スペクトルのうち、波長帯域Πの領域面積S、中心波長λ、反射率ベースラインを示す模式図である。 本発明の一実施態様に係る積層フィルムの分光スペクトルのうち、波長帯域Πの領域面積S、中心波長λ、反射率ベースラインを示す模式図である。 本発明の一実施態様に係る積層フィルムの分光スペクトルのうち、脈流状の反射率変化を示す分光スペクトルにおけるベースラインを示す模式図である。
以下、本発明の積層フィルムについて詳細に説明する。本発明の積層フィルムは、異なる3種類の熱可塑性樹脂層からなる規則配列を連続して3つ以上有し、下記条件1~3を同時に満たすことを特徴とする、積層フィルムである。
条件1:前記規則配列における異なる3種類の熱可塑性樹脂層を最表面から順にA層、B層、C層としたときに、前記B層の合計厚みに対する前記A層の合計厚みの比A/Bが0.5以上1.1以下であり、前記B層の合計厚みに対する前記C層合計厚みの比C/Bが0.9以上1.5以下である。
条件2:前記規則配列内の熱可塑性樹脂層の合計厚みが250nm以上600nm以下である。
条件3:垂直入射時の透過彩度C*(0°)と、60°入射時の透過彩度C*(60°)が、|C*(60°)-C*(0°)|≦10を満たす。
本発明の積層フィルムは、従来の交互積層構造からなる積層フィルムでは達成出来なかった、大面積の積層フィルムでの色むらレス、および、高透明・高反射率・広帯域による高遮熱性能を実現するために、異なる3種類の熱可塑性樹脂層を有することが必要である。本発明の積層フィルムにおいて、熱可塑性樹脂層が「異なる」とは、(1)組成が異なる、(2)示差走査熱量測定(DSC)において、ガラス転移温度や融点が異なる、(3)透過型電子顕微鏡観察(TEM)で断面観察したときの染色後の画像のコントラストが異なる、のいずれかに該当する場合を指す。
「組成が異なる」とは、以下に示す「組成が同じである」と見なす条件に該当しないことをいう。「組成が同じ」であるとは、各熱可塑性樹脂層を構成する熱可塑性樹脂の化学構造の繰り返し単位が95mol%以上共通している場合、若しくは各熱可塑性樹脂層の構成成分を比較したときに95質量%の成分が共通する場合をいう。
例えば、前者について、ポリエチレンテレフタレートであれば、エチレングリコール単位とテレフタル酸単位がエステル結合により結合した構成単位(エチレンテレフタレート単位)を主たる構成単位として有するが、ホモポリエチレンテレフタレートからなる層とイソフタル酸を10mol%共重合させたポリエチレンテレフタレートからなる層のように、層を構成する熱可塑性樹脂がポリエチレンテレフタレートという共通の化学構造を有しながら、構成単位の5mol%以上が異なる場合は両者の組成が異なるものとみなす。また、後者について、ホモポリエチレンテレフタレートのみからなる層とホモポリエチレンテレフタレートを90質量%含み残りの10質量%が他の成分である層のように、同じ構成成分を主成分としつつも5質量%以上の成分が互いに異なる場合も、両者の組成が異なるものとみなす。
各熱可塑性樹脂層の具体的な組成/化学構造の繰り返し単位構造は、後述の測定方法の層構成に記載の方法に従い各熱可塑性樹脂層の層厚みを把握した後、当該熱可塑性樹脂層を切削して取り出す、あるいは、当該層を研磨やレーザー加工などで削り最表層に出すことで、赤外分光法(FT-IR法やナノIR法)、ガスクロマトグラフ/飛行時間型質量分析計(GC-MS)、核磁気共鳴装置(NMR)、を利用して、特定することが出来る。
一方で、各熱可塑性樹脂層を抽出できるものの上記方法による組成の同定が困難であれば、示差走査熱量測定(DSC)において、積層フィルムを構成する熱可塑性樹脂層が、異なる融点および/またはガラス転移点温度を示すことで互いに「異なる」ことを判断する。なお、本発明において、異なる融点、異なるガラス転移温度を示すとは、融点やガラス転移温度が0.1℃以上、好ましくは2℃以上異なっていることを表す。なお、後述の測定方法における示差走査熱量測定(DSC)の項に記載の25℃以上300℃以下の測定温度範囲において、熱可塑性樹脂がガラス転移温度および融点を示さない場合があるが、一方の熱可塑性樹脂層がガラス転移温度あるいは融点を示し、もう一方の熱可塑性樹脂層が示さない場合は、温度差として算出はできないが、熱可塑性樹脂層が異なるものとして解釈してもよい。
さらに、上記2通りの方法で特定が困難であれば、透過型電子顕微鏡観察において観察される断面画像でコントラスト差による層界面が確認できる場合、若しくは後述の層界面(コントラスト差)に記載の方法により、隣接する2層の輝度の平均値の差が、隣接する熱可塑性樹脂層の輝度の標準偏差のいずれよりも大きいことを確認できた場合は、隣接する熱可塑性樹脂層の「組成が異なる」と判断してもよい。
透過型電子顕微鏡観察で確認できるコントラストとは、各熱可塑性樹脂の種類や共重合量に応じて、結晶性や電子密度状態が異なることにより、電子線の散乱、結晶回折などに起因して、各層の存在する箇所に輝度差(明暗、濃淡)が生じている状態を指す。本発明では、特定の染色剤を用い、組成が異なることよる熱可塑性樹脂層への染色剤の浸透状態の差を利用することで熱可塑性樹脂層の輝度差を出すことができる。この特徴により、厚み方向への一定の規則配列に従った異なる熱可塑性樹脂層の積層状態を、厚み方向に一定の規則配列で異なるコントラストを有する縞模様の層状画像として捉えることが出来る。この層状のコントラスト画像において、コントラスト差が生まれる境界部分を隣接する熱可塑性樹脂層の界面、界面と界面で囲まれる一定の輝度を示す部分を特定の熱可塑性樹脂層と、それぞれ定義する。
本発明の積層フィルムの熱可塑性樹脂層を形成するために用いられる代表的な熱可塑性樹脂を以下に示すが、本発明で用いることができる熱可塑性樹脂は下記に記載したものに限定されない。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(1-ブテン)、ポリ(4-メチルペンテン)、ポリイソブチレン,ポリイソプレン、ポリブタジエン,ポリビニルシクロヘキサン、ポリスチレン,ポリ(α-メチルスチレン)、ポリ(p-メチルスチレン)、ポリノルボルネン、ポリシクロペンテンなどに代表されるポリオレフィン樹脂、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66などに代表されるポリアミド樹脂、エチレン/プロピレンコポリマー、エチレン/ビニルシクロヘキサンコポリマー、エチレン/ビニルシクロヘキセンコポリマー、エチレン/アルキルアクリレートコポリマー、エチレン/アクリルメタクリレートコポリマー、エチレン/ノルボルネンコポリマー、エチレン/酢酸ビニルコポリマー,プロピレン/ブタジエンコポリマー、イソブチレン/イソプレンコポリマー、塩化ビニル/酢酸ビニルコポリマーなどに代表されるビニルモノマーのコポリマー樹脂、ポリアクリレート、ポリイソブチルメタクリレート、ポリメタクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリアクリルアミド,ポリアクリロニトリルなどに代表されるアクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート,ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレート、ポリエチレンフラノエートなどに代表されるポリエステル樹脂、ポリエチレンオキシド,ポリプロピレンオキシド、ポリアクリレングリコールに代表されるポリエーテル樹脂、エチルセルロース、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ニトロセルロースに代表されるセルロースエステル樹脂、ポリ乳酸,ポリブチルサクシネート,などに代表される生分解性ポリマー、その他、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリアセタール、ポリグルコール酸、ポリカーボネート、ポリケトン、ポリエーテルスルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリシロキサン、4フッ化エチレン樹脂,3フッ化エチレン樹脂,3フッ化塩化エチレン樹脂,4フッ化エチレン-6フッ化プロピレン共重合体,ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素系樹脂を用いることができる。なお、いずれの熱可塑性樹脂も本発明の効果を損なわない範囲で共重合単位を含んでもよい。
これらの熱可塑性樹脂は1種類単独で利用しても、2種類以上のポリマーブレンドあるいはポリマーアロイとして利用してもよい。ブレンドやアロイを実施することで、1種類の熱可塑性樹脂からは得られない物理的・化学的性質を得ることができるほか、相溶性の大きく異なる熱可塑性樹脂層の間にこのようなポリマーブレンド・ポリマーアロイの層を配置することで、層間密着性を向上させることができる。
上記熱可塑性樹脂の中でも、強度・耐熱性・透明性・積層性にかかるレオロジー特性の観点から、熱可塑性樹脂層を形成する熱可塑性樹脂としては、特にポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂から選択されることが好ましい。
本発明の積層フィルムは、異なる3種類の熱可塑性樹脂層からなる規則配列を連続して3つ以上有することが必要である。具体的に、「3種類の熱可塑性樹脂層からなる規則配列」とは、前記定義に倣い「異なる」3種類の熱可塑性樹脂層を一定の規則配列に従って積層した積層構成を指す。この場合、異なる3種類の熱可塑性樹脂層は、互いに異なる骨格構造を有する熱可塑性樹脂から各熱可塑性樹脂層が形成されていてもよく、2種類の骨格構造を有する熱可塑性樹脂を用い、3つの熱可塑性樹脂層でそれらの混合比あるいは共重合量が異なるように設計することも出来る。本発明では、規則配列における異なる3種類の熱可塑性樹脂層を最表面から順にA層、B層、C層とし、各熱可塑性樹脂層の主成分である熱可塑性樹脂を熱可塑性樹脂A、熱可塑性樹脂B、熱可塑性樹脂Cと定義する。ここで述べるところの主成分とは、層中に50質量%を超えて100質量%以下含まれる成分をいう。主成分ではない副成分としては、例えば、無機成分や熱可塑性樹脂以外の低分子有機成分などが該当し、具体例としては、光吸収剤(紫外線吸収剤、染料、顔料、熱線吸収剤)、酸化防止剤、光安定剤、消光剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、有機系易滑剤、充填剤、帯電防止剤、核剤、難燃剤などが挙げられる。これらの副成分は、積層フィルム本来の物性・機能が損なわれない程度に、各層に自由に添加することができる。
これらの副成分のうち、各熱可塑性樹脂層を構成する熱可塑性樹脂の種類に応じてはエネルギーの強い紫外線を吸収して劣化が促進される場合があることから、反応競合させて光劣化を抑制する目的で紫外線吸収剤を含むことが好ましい。さらに、光吸収剤自身は樹脂押出工程において熱や酸素による劣化や、紫外線や酸素との反応による光劣化の影響を受ける場合がある。そのため、前者に対しては酸化防止剤を、後者に対しては光安定剤や消光剤を共に添加剤として、フィルム本来の物性や機能が損なわれない程度に、劣化の可能性がある熱可塑性樹脂を含む層内に加えることができる。
異なる3種類の熱可塑性樹脂層からなる一定の規則配列としては、例えば、(ABC)m、(ABCB)m、(ACBC)m、(BACA)m、(ABABC)m、(ACACB)m、(BCBCA)m、(ABCBCB)m、(ACBCBC)m、(BACACA)m、(BCACAC)m、(CABABA)m、(CBABAB)m(mは繰り返し単位の数を表す自然数)などを挙げることができる。
中でも、骨格構造や粘弾性・粘度特性などの物理的/化学的性質の異なる熱可塑性樹脂同士を用いた積層フィルムが、長期にわたり界面剥離することなく積層構造を維持し必要な機能を維持するためには、積層フィルムに含まれる異なる熱可塑性樹脂層界面を形成する隣接する熱可塑性樹脂層に対し、相性(例えば、相溶性、表面自由エネルギーなど)のよい熱可塑性樹脂層の組合せを検討する必要がある。
そのため、積層フィルム全体の樹脂層設計が煩雑なものとならないためには、隣接する熱可塑性樹脂層が形成する界面の組み合わせの種類が少ないことが好ましい。具体的には、3種類の異なる熱可塑性樹脂層から形成される界面は、A-B界面、B-C界面、C-A界面の3種類が挙げられるが、前記規則配列の中で、(ABCB)m、(ABCBCB)m(mは繰り返し単位の数を表す自然数)は、A-B界面およびB-C界面の2種類しか存在しない点で好ましい。このような態様では、A層とB層、B層とC層の層間剥離が生じにくいように樹脂層設計をすればよく、A層とC層の組み合わせをさほど考慮しなくてよい。
すなわち、このような態様においては、A層とB層、B層とC層の層間剥離が生じにくい樹脂層設計とすれば、B層がA層とC層の緩衝層としての役割を果たすこととなる。その結果、積層フィルム全体で層間剥離を生じにくくなり、長期にわたって使用した場合でも積層フィルム本来の光学特性や物性を保つことができる。なお、本発明の積層フィルムは、最表面上に、機能層としてハードコート層や易接着層、ガスバリア層、粘着層などを別途設けることもでき、それに伴い、積層フィルムを構成する最表面の熱可塑性樹脂層との間に界面が形成されることとなるが、ここでいう界面とは、積層フィルムの規則配列を構成する界面のみを指す。すなわち、規則配列のA層は、積層フィルムにおいて繰り返し出てくる熱可塑性樹脂層を指すものであり、最表層に別途設けられたハードコート層や粘着層のような機能層と規則配列を形成する層による界面は含まないこととする。
さらに、積層フィルムの反射特性を高めるためには、積層フィルム内に含まれる前記規則配列の数が重要であり、規則配列の数が多いほど高反射率、広帯域のなどの光学特性を高めることができる。そのため、前記規則配列の中でも、(ABCB)m(mは繰り返し単位の数を表す自然数)の規則配列を有する、すなわち本発明の積層フィルムにおいては図1に示す様に、規則配列が、A層、B層、C層、B層をこの順に含む4層からなることが、少ない積層数で積層フィルムの厚みを薄くしつつ、目的の光学特性を得ることができる点で好ましい。このような規則配列は、積層フィルムを製造する際に用いる積層装置の樹脂分配流路設計により達成出来る。なお、図1において符号1~4は、順にA層、B層、C層、規則配列を表す。以後他の図面においても同様である。
このような規則配列を有することにより、熱可塑性樹脂層の屈折率と層厚みにより定められる光学厚み関係を制御することで反射帯域を制御できる他、対称的な界面種の少ない規則配列により、規則配列内部の界面で反射した光同士の干渉の強弱をコントロールするために必要な干渉光の光学距離や屈折率関係をコントロールしやすくなる。そのため、積層フィルムの反射率の向上や反射波長帯域の拡張、高次反射のコントロールが可能となる。また、例えば一部の熱可塑性樹脂層に、粘度や粘弾性特性が異なる熱可塑性樹脂として非晶性の熱可塑性樹脂を用いる場合、積層フィルム内に繰り返し存在する結晶性の熱可塑性樹脂の延伸性に追従して共延伸されやすくなるため、製造した積層フィルムの積層均一性を高めることができる。
上記干渉反射を実現するためには、異なる3種類の熱可塑性樹脂層からなる規則配列を連続して3つ以上有することが重要であり、好ましくは連続して20個以上、より好ましくは連続して50個以上、さらに好ましくは連続して100個以上である。このような規則配列の数は多ければ多いほど積層フィルムの均一延伸や光学性能の観点では好ましいが、製造装置の大型化に伴う製造コストの増加、積層工程の複雑化に伴う積層乱れ、フィルム厚みが厚くなることでのハンドリング性の悪化などを考慮すると、連続して300個以下であることが現実的である。また、規則配列の数が多いことは、重要な特徴である広反射帯域・高反射を実現するためにも効果的である。これは、近似する層厚みの規則配列がより多く存在する設計とすることにより高反射率化が達成しやすく、その規則配列の厚みに傾斜を付与することで広反射帯域も実現できるようになるためである。
このような規則配列を有する積層フィルムは、規則配列の各層を構成する熱可塑性樹脂を、熱可塑性樹脂の種類と同数以上の押出機を用いて異なる流路からそれぞれ送り出し、公知の積層装置であるマルチマニホールドタイプのフィードブロックやスタティックミキサー等を用いて積層体を形成することで実現できる。特に、光学用途に用いる場合には、層厚みの制御が非常に重要となるため、上記の構成を効率的かつ高精度に得るためには、微細スリットを有するフィードブロックを用いる方法が好ましい。このようなスリットタイプのフィードブロックを用いて積層体を形成する場合、各層の厚みおよびその分布は、スリットの長さや幅を変化させて圧力損失を変化させ、流量を変えることで達成可能となる。ここでスリットの長さとは、スリット板内で各熱可塑性樹脂層を一定の規則配列となるように流すための流路を形成する櫛歯部の長さのことである。
本発明の積層フィルムは、積層フィルムを構成する各熱可塑性樹脂層の層厚みが、いずれも単調に増加または減少する層厚み分布、フィルムの片面側からフィルム中心へ向かって層厚みが増加した後に減少する層厚み分布、フィルムの片面側からフィルム中心へ向かって層厚みが減少した後に増加する層厚み分布などに設計することができる。また、層厚み分布の傾斜形態は、線形、等比、階差数列といった連続に変化するものや、10層から50層程度の層がほぼ同じ層厚みを持ち、その層厚みがステップ状に変化するものに設計することができる。
同じ層厚みを有する層が多く存在するほど、特定の波長帯域における反射率が高まるため、高反射率化に向けては層厚みの増加・減少の傾斜分布が複数存在する層厚み分布とすることが好ましいが、同じ積層数で同じ波長帯域をターゲットとする場合、傾斜分布が複数存在する分布の方が、単調増加/減少を示す分布と比べて、少ない積層数で狙いの反射波長帯域に相当する層厚み分布を設計することとなるため、層厚み分布の傾斜が大きくなる。これにより、反射帯域の端部がブロード化することや、複数の傾斜分布間で干渉反射距離が生じることで反射率のベースラインのうねりの大きさが強くなることにより、視認方向に応じた積層フィルムの色むらが強くなる問題が生じる場合がある。前記問題を生じないために、積層フィルムを構成する各熱可塑性樹脂層の層厚みは、単調に増加、あるいは、単調に減少する層厚み分を示すこと、あるいは、傾斜分布を2つ有し、フィルムの片面側からフィルム中心へ向かって層厚みが増加した後に減少する層厚み分布、フィルムの片面側からフィルム中心へ向かって層厚みが減少した後に増加する層厚み分布を有することが好ましい。
本発明の積層フィルムの最表層は、両表層とも同じ熱可塑性樹脂層が配されることが好ましい。両表層が同じ熱可塑性樹脂層であることにより、後述する製造方法において、ロール延伸時にロールとフィルムの粘着防止のために、ロールと接触する熱可塑性樹脂層の熱特性に合わせてロール温度を調整する必要性が低くなる。そのため、両最表層に配される熱可塑性樹脂層を構成する熱可塑性樹脂の熱特性を考慮して、当該熱可塑性樹脂を主成分とする単膜フィルムを製膜する場合と同様の製膜工程で、積層フィルムを得ることが可能となる。一方で、最表層以外の樹脂のガラス転移温度が高い場合は、最もガラス転移温度の高い熱可塑性樹脂に合わせて延伸温度を設定する必要がある。
さらに、最表層に位置する熱可塑性樹脂層は、結晶性の熱可塑性樹脂を主成分とする層であることが好ましい。最表層に位置する熱可塑性樹脂層が非晶性樹脂を主成分とする場合、後述の製造方法で二軸延伸積層フィルムを得た場合に、ロールやクリップなどの製造設備への粘着による製膜不良や表面状態の悪化が生じることや、延伸時に応力が立たず均一延伸ができず均一な物性・光学特性を有する積層フィルムが得られないことがある。結晶性の判断は、当該熱可塑性樹脂層を研磨処理やレーザー処理で抽出し、示差走査熱量分析(DSC)装置を用いて、一度製造プロセスでの結晶化の影響を除くために融解して急冷した後、再度昇温した際の融点(吸熱ピーク)の有無を確認することで判断する。特に、本発明の積層フィルムにおいては、上記の手法で融点の吸熱ピークにおけるベースラインとの積分にあたる融解エンタルピーが15J/g以上を示す熱可塑性樹脂層を、結晶性の熱可塑性樹脂層と定義する。
また、結晶性を示す熱可塑性樹脂を主成分とする層は、最表層に位置する熱可塑性樹脂層(A層)に用いることが好ましい。最表層に位置する熱可塑性樹脂層が非晶性の熱可塑性樹脂を主成分とする場合、ロールやクリップなどに積層フィルムが粘着しやすく、製造設備への粘着による延伸不良や表面状態悪化が生じる場合がある。
さらに、本発明の積層フィルムは、異なる3種類の熱可塑性樹脂層が結晶性/半結晶性/非晶性の熱可塑性樹脂層、あるいは結晶性/非晶性/非晶性の熱可塑性樹脂層の組み合わせで構成されることが好ましい。ここで述べるところの結晶性、半結晶性、非晶性は、いずれも積層フィルムから抽出した各層のサンプルについて、後述の方法で示差走査熱量分析(DSC)を行うことにより測定した融解エンタルピーより判断することができる。結晶性および半結晶性の熱可塑性樹脂層は、ガラス転移温度、吸熱ピークである融解エンタルピーの2点を示すことが特徴であるが、結晶性の熱可塑性樹脂層は、構成される熱可塑性樹脂の種類によってはガラス転移温度が後述する測定範囲に入らない場合もある。そのため、ここでは融解エンタルピーの大きさから結晶性の程度を判断する。本発明の積層フィルムにおいて、結晶性は融解エンタルピーが15J/g以上を示す場合とし、一方、半結晶性は融解エンタルピーが0.1J/g以上15J/g未満を示す場合と定義する。また、非晶性は上記の何れにも該当しない場合とする。
ここで述べる結晶性/半結晶性/非晶性あるいは結晶性/非晶性/非晶性の組み合わせとすることにより、例えば反射特性を高めるために屈折率差の大きい、骨格構造が全く異なる熱可塑性樹脂層を積層した場合においても、間に配される半結晶性、あるいは非晶性の熱可塑性樹脂層(B層)が分子鎖の絡み合いや界面での官能基同士の反応を導き、層間剥離が起こりにくい積層フィルムとなる。間に配される半結晶性あるいは非晶性の熱可塑性樹脂層は、例えば、狙いの半結晶性あるいは非晶性を示す熱可塑性樹脂を押出機より溶融押出して積層して形成することができる。また、別の方法として、より結晶性の高い熱可塑性樹脂を押出し、横延伸工程における熱処理により結晶相を融解させることで、目的とする半結晶性あるいは非晶性を示す熱可塑性樹脂層を形成する方法を用いることもできる。この場合、積層フィルムの製造工程における熱処理温度を、結晶融解する対象の熱可塑性樹脂層の吸熱ピークの開始温度よりも高い温度とすることで達成出来る。
特に、これらのうち、異なる3種類の熱可塑性樹脂層が結晶性/半結晶性/非晶性の熱可塑性樹脂層の組み合わせであることが好ましい。非晶性の熱可塑性樹脂を2種類用いた場合、後述する斜め方向からの視認において当該熱可塑性樹脂の屈折率が変化しない。そのため、正面方向で式(3)に示す高透明を実現するための屈折率条件を満たした場合でも、斜め方向から視認したときに、結晶性の熱可塑性樹脂の屈折率変化により高次反射の反射率が高まることで、視認性が悪化する場合がある。一方、結晶性/半結晶性/非晶性の組み合わせとすることにより、斜め方向に応じて屈折率が連続的に変化するため、上記の高次反射の反射率上昇が抑えられ、斜め方向からの視認性悪化が軽減される。
特に後者の場合、結晶性の熱可塑性樹脂層としては、半結晶性あるいは非晶性を示す熱可塑性樹脂層よりも高い融点を示す熱可塑性樹脂層を用いることが好ましい。このような結晶性の熱可塑性樹脂層に用いる熱可塑性樹脂としては、押出性、延伸性、汎用性に加え、積層フィルムの高反射率化にあたり重要な結晶化したときの熱可塑性樹脂層の屈折率の大きさ、積層精度に係る溶融粘度挙動の観点から、前記した好ましいポリエステル樹脂のうち、ポリオール成分としてメチレン鎖の少ないポリエチレンテレフタレートおよびその共重合体、ポリエチレンナフタレートおよびその共重合体から選択されることが特に好ましい。上記観点から、結晶性/半結晶性/非晶性あるいは結晶性/非晶性/非晶性の組み合わせとする方法として、上記の何れの方法を採用するとしても、結晶性を示す熱可塑性樹脂層の主成分である熱可塑性樹脂が、ポリエチレンテレフタレートもしくはポリエチレンナフタレートである態様が特に好ましい。
本発明の積層フィルムは、非晶性を示す熱可塑性樹脂層の少なくとも1種が、アクリルまたは脂環式構造を有するポリエステルのいずれかを主成分とすることが好ましい。本発明の積層フィルムにおいて好ましく使用できる非晶性の熱可塑性樹脂としては、反射率を高めるために前記ポリエステル樹脂との屈折率差が大きく、また、良好な積層性を示す積層フィルムとするために前記ポリエステル樹脂と同じような溶融粘度特性を示す熱可塑性樹脂であることが好ましく、前記した熱可塑性樹脂の中では、アクリル樹脂、脂環式構造を示すポリエステル樹脂の中から選択されることが好ましい。アクリル樹脂はそれ自身で屈折率1.49を示す非晶性樹脂であり、脂環式構造を示すポリエステル樹脂は共重合タイプとすることで屈折率1.52~1.55を示す非晶性樹脂となる。なお、ここでいう屈折率はJIS K 7104(2014)に記載のB法で解析して得られた数値である。このような屈折率を示す非晶性の熱可塑性樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂層を規則的に積層することにより、規則配列内で屈折率差を最大で0.25~0.30程度まで広げることが容易となり、従来の交互積層技術では界面剥離により実現が困難であった高反射率を示す積層フィルムが実現できる。
本発明の積層フィルムの非晶性を示す熱可塑性樹脂層の主成分として好ましく用いることができる非晶性の脂環式構造を示すポリエステル樹脂としては、脂環式構造を含む構成単位として、シクロヘキサンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、イソソルベート、スピログリコール、などの構成単位を共重合したポリエステル樹脂等が挙げられる。
本発明の積層フィルムは、規則配列における異なる3種類の熱可塑性樹脂層を最表面から順にA層、B層、C層としたときに、B層の合計厚みに対するA層の合計厚みの比A/Bが0.5以上1.1以下であり、B層の合計厚みに対するC層合計厚みの比C/Bが0.9以上1.5以下であることが重要である。ここで、A層、B層、C層は、便宜上、先に述べたとおり、積層フィルムの最表面から配される順で定義する。積層フィルムの反射率を高めるためには、規則配列内に含まれる熱可塑性樹脂のうち、最も屈折率の高い熱可塑性樹脂層と、最も屈折率の低い熱可塑性樹脂層の屈折率差により概ね決定される。以下、A層とC層がこれらの熱可塑性樹脂層に該当するものとして記述する。
積層フィルムにおいて、光反射が生じる箇所は各熱可塑性樹脂層の界面であるが、反射帯域を決定づけているのは、式(1)の干渉反射理論式に基づくと、図2に示すとおり積層フィルムの規則配列単位での界面で反射される光同士の干渉であり、規則配列内に存在する界面で反射される光同士が干渉して得られる光線は、主反射帯域よりも短波長側に生じる高次反射の発生に関与する。つまり、規則配列内のA層、B層、C層の屈折率および厚み(厚み比)関係を制御し、規則配列内での干渉光を抑制する設計することが、積層フィルムの高透明を達成するために重要となる。なお、式(1)中、kは定数(自然数)、λは波長、nはX層の面内屈折率、dはX層の層厚み、nはY層の面内屈折率、dはY層の層厚みをそれぞれ表す。
Figure 2024055291000002
その中、発明者らは鋭意検討の結果、前述した積層比の範囲に各層の厚み比を制御することで、太陽光エネルギーに含まれる近赤外線を十分に遮蔽しつつも、高透明な積層フィルムを得られることを見出した。すなわち、A/BやC/Bが上記積層比範囲に制御されていれば、製膜中に押出機の吐出変動の影響を受けることや、積層体の樹脂流が乱れて口金から吐出されるまでの間にフィルム幅方向で厚み比が変化するようなことが生じたとしても、最終的に得られる積層フィルムは長手方向/幅方向の広い範囲にわたり、高透明を示すものとなる。
厚み比A/Bが0.5未満や、厚み比C/Bが0.9未満である場合は、中間緩衝層にあたる熱可塑性樹脂層(B層)が狙いの反射波長に対して十分な厚さを有することとなる。そのため、屈折率差の低いA層/B層界面、およびB層/C層界面が光を反射する界面として機能することとなり、また、界面で反射される波の位相を前記kの値が高い高次反射に至るまで制御できない。その結果、400nmに近い短波長領域側の高次反射を生じるため、積層フィルムが青色を呈し、透明性が低下することがある。
一方で、厚み比A/Bが1.1より大きい場合や、厚み比C/Bが1.5より大きい場合は、中間緩衝層としての役割を果たすB層の層厚みが薄くなるため、反射帯域全体にわたる反射率上昇が見込まれる。これは、多少の積層比変化に伴う高次反射の反射率変化が敏感なものとなることを意味する。さらに、遮熱フィルム用途の場合は、厚み比A/Bが1.1より大きい、または/かつ厚み比C/Bが1.5より大きい場合、可視光線領域全体に高次反射が生じることがある。そのため、積層フィルムはハーフミラー調の外観を呈し、透明性が低下することがある。
厚み比の変動が生じた場合でも積層フィルムの高透明がより維持されるためには、厚み比A/Bが0.5以上1.0以下であり、かつ厚み比C/Bが1.0以上1.5以下であることが好ましく、厚み比A/Bが0.5以上1.0以下であり、かつ厚み比C/Bが1.0以上1.3以下であることがより好ましく、厚み比A/Bが0.6以上0.9以下であり、かつ厚み比C/Bが1.1以上1.3以下であることがさらに好ましい。
上記の厚み比A/B、C/Bは、積層装置内のスリット設計(スリット厚み、間隙)に加え、各押出機からの吐出量比率を、各熱可塑性異樹脂の比重を考慮しつつ調整することにより達成出来る。また、これらの厚み比は透過型電子顕微鏡による積層フィルムの断面観察画像解析により求めることができ、その詳細は後述する(他の層構成に関する項目(積層数、規則配列、各層の層厚み、層厚みの分布)についても同様である。)。なお、ここで述べる厚み比とは、積層フィルム内の最表厚膜層や中間厚膜層が存在する場合は、その周辺においての規則配列の厚み比のみ規定の厚み比を満足しない場合があることから、規則配列のうち90%以上が上記の厚み比を満足することと定義する。
積層フィルムは後述に代表される製造方法で製造する場合、異なる3種類の熱可塑性樹脂が積層装置内で積層され、口金でシート状に成形して吐出されるまでの工程における、押出機の吐出・背圧バランス、積層装置内の樹脂流路設計、積層体状でポリマー管内を流れる間の壁面からのせん断の影響等によって、フィルム幅方向で積層フィルムの厚み比などが不均一となる場合がある。また、延伸工程では、フィルム中央と端部での延伸性が異なることによる複屈折性の違いが生じ、これらの影響で、積層フィルムの干渉反射条件が変化し、視認性・色調が変化する場合がある。しかし、そのような工程上のフィルム設計のむらが発生しても、得られる積層フィルムが本発明で規定する厚み比関係を満足することで、幅方向の広い範囲にわたって視認性を大きく損なうことなく、実用に足る積層フィルムとなる。
本発明の積層フィルムは、規則配列内の熱可塑性樹脂層の合計厚みが250nm以上600nm以下であることが必要である。ここで「規則配列内の熱可塑性樹脂層の合計厚みが250nm以上600nm以下である」とは、積層フィルムに含まれる規則配列のうち、95%において規則配列内の熱可塑性樹脂層の合計厚みが250nm以上600nm以下であることを意味し、好ましくは100%、すなわち全ての規則配列が上記要件を満たすことである。前述したとおり、積層フィルムの反射帯域を決定づけているのは、図2に示すような各界面で反射される光の、規則配列単位ごとの、特定界面で反射される光同士の干渉である。すなわち、規則配列内に含まれる全ての樹脂層の厚みの合計が反射帯域を制御する。本発明の積層フィルムは、近赤外線領域において広反射帯域かつ高反射率を示し、高い遮熱性を実現するため、積層フィルムを構成する樹脂層の屈折率条件の設計範囲を考慮すると、規則配列内の熱可塑性樹脂層の合計厚みが250nm以上600nm以下であることが必要となる。太陽光に含まれる近赤外線領域のエネルギー分布を考慮し、遮熱性能を効率良く高められる反射帯域と反射率を設計するためには、規則配列内の熱可塑性樹脂層の合計厚みが250nm以上550nm以下であることが好ましく、より好ましくは250nm以上500nm以下である。
規則配列内の熱可塑性樹脂層の合計厚みを250nm以上600nm以下とするには、例えば、積層装置内のスリット設計(スリット厚み、間隙、傾斜度)に加え、積層フィルムの厚みをキャスト引取速度や延伸倍率を制御することが効果的である。また、規則配列の合計厚みは透過型電子顕微鏡による積層フィルムの断面観察画像解析により求めることができる。
本発明の積層フィルムは、垂直入射時の透過彩度C*(0°)と、60°入射時の透過彩度C*(60°)が、|C*(60°)-C*(0°)|≦10を満たすことが必要である。透過彩度C*とは、国際照明委員会で規格化されているJIS Z 8781-4(1976)で採用されているL*a*b*色空間において、色度a*と色度b*の二乗和の平方根で示される数値であり、色の鮮やかさを示す指標である。本数値が小さいほど色彩がなく、例えば、透過率が高く透過彩度C*が小さく、0に近いフィルムは無色に近づく。
本発明の積層フィルムは、界面で反射した光線同士の干渉を利用して光線カット性を実現するため、正面方向では反射帯域を自由に制御できる点で従来の吸収タイプの光学フィルムよりも優位性を示す。一方、式(2)に示す光学反射理論式に従い、積層フィルム面に対する法線方向にあたる入射角0°から、斜め方向に傾けていく(入射角θが大きくなる)につれて、積層フィルム内で反射・干渉する光線の光学距離が変化し、反射帯域が短波長側にシフトしていくデメリットも有する。このとき、反射帯域のシフトに加え、積層フィルムの樹脂層のうち、複屈折性を示す熱可塑性樹脂を用いている樹脂層では、入射方向に対する屈折率条件も変化し、反射率変化が生じることとなる。このような反射帯域の短波長シフトと反射率変化が、本発明のような近赤外線反射フィルムにおいて生じると、可視光線領域の赤~橙の光が強く反射されることとなり、積層フィルムの着色を招く。さらに、正面方向では高次反射が抑制されていた場合でも、斜め方向から観察すると、後述する式(3)に示す高次反射抑制のための好ましい要件である3種類の熱可塑性樹脂層の屈折率関係が崩れて高次反射が発生し、反射帯域シフトだけでは想定されないような着色を招く恐れもある。このような視認方向に応じて色調が変化する積層フィルムを建築物の窓や車窓に適用すると、窓本来の視認性の機能が損なわれる大きな問題に繋がる。特に、車窓では、自動車のタイプによるが、運転者からフロントガラスの視認角は30~60°の入射角の範囲となるが、太陽光からの遮熱性は十分得られたとしても、運転者から見た車窓の視認性が悪化することで、想定外の事故に繋がる恐れがある。そのため、実用面を考慮し、遮熱性に加え、垂直入射時の透過彩度C*(0°)と、60°入射時の透過彩度C*(60°)が、|C*(60°)-C*(0°)|≦10を満たすようにすることで、斜め方向からの視認性も十分に備える積層フィルムであることが必要となる。なお、式(2)の各記号は、kは定数(自然数)、λは波長、nはX層の面内屈折率、dはX層の層厚み、nはY層の面内屈折率、dはY層の層厚み、θはフィルム面に対する法線方向を0°としたときの光の入射角を表す。また、式(3)の各記号は、nはA層の面内屈折率、nはB層の面内屈折率、nはC層の面内屈折率を表す。
Figure 2024055291000003
Figure 2024055291000004
このような積層フィルムは、公知の太陽光に含まれる光エネルギー曲線から鑑みると、反射帯域が近赤外線領域の中でも可視光線領域に近い短波長側に位置するほど遮熱性能を高めることができる。一方で、可視光線領域の境界付近まで反射帯域の短波長側を近づけた場合、上記の斜め方向からの視認における着色の程度が強くなる。つまり、これらのバランスを両立する事が重要である。
本発明の積層フィルムは、特に車窓に積層フィルムを適用した場合を考慮し、積層フィルム本来の斜め方向からの視認における短波長シフト特性ならびに反射率変化の特徴を考慮しても十分な視認性が得られる、積層フィルムを入射角0°から見たときの透過色調C*(0°)と透過色調C*(60°)が|C*(60°)-C*(0°)|≦10を満たすことが重要となる。無論、この数値が小さいほど、斜め方向から視認した際の着色が抑制されることを意味するため好ましいが、上記観点から|C*(60°)-C*(0°)|は好ましくは6.0以下、より好ましくは3.0以下、さらに好ましくは2.0以下である。なお、|C*(60°)-C*(0°)|は斜め方向から観察したときの着色軽減の観点から小さいほど好ましいため、0であることが理想であり、下限値も0となる。
|C*(60°)-C*(0°)|≦10を達成する方法として、例えば、斜め入射時の高次反射の反射率を高めないという観点では、3種類の熱可塑性樹脂層の屈折率関係が、正面入射だけでなく斜め入射においても式(3)の屈折率関係を満足できる樹脂層の組み合わせを用いることが挙げられる。これは、高次反射発生条件の一つである層厚みは、斜め入射時でも入射角に合わせて一律に変化する一方で、屈折率条件は3種類の熱可塑性樹脂の複屈折性に依存して大きく変化するためである。より具体的には、特に、3種類の熱可塑性樹脂層が結晶性/半結晶性/非晶性の組み合わせで構成されていることがよい。
本発明の積層フィルムは、車窓への適用などの実用面を考慮すると、正面あるいは斜め方向から共に良好な視認性を有することが必要である。そのため、C*(0°)およびC*(60°)は共に5.0以下を示すことが好ましく、より好ましくは共に3.0以下である。C*(0°)およびC*(60°)を共に5.0以下とし、正面方向と斜め方向で良好な視認性を得るためには、前述した好ましい厚み比の範囲の積層フィルムとすることが効果的である。また、垂直入射時に高次反射が微弱でも発生する場合は、斜め入射で光学距離が変化することで、高次反射の反射率が、複屈折性の影響を受けて特段強くなる場合があるため、積層フィルムの層厚み分布は、極端な飛び値を有することのない単調変化の分布を示すことも好ましい。さらに、斜め方向から視認した際に極端な反射が生じないように、斜め方向からも式(3)の屈折率関係を満足できる樹脂層の組み合わせを用いることも好ましい。また、3種類の熱可塑性樹脂層が結晶性/半結晶性/非晶性の組み合わせで構成されていることも好ましい。
本発明の積層フィルムは、フィルム配向軸方向をX方向、X方向にフィルム面内で直交する方向をY方向、フィルムの中心をC点としたときに、C点を通りX方向に平行な直線とフィルム端部との交点をXE1点及びXE2点、C点を通りY方向に平行な直線とフィルム端部との交点をYE1点及びYE2点としたときに、C点、C点とXE1点の中間点、C点とXE2点の中間点、C点とYE1点の中間点、C点とYE2点の中間点の計5点における、透過彩度C*がいずれも10以下であることが好ましい。
透過彩度C*の測定対象となる位置について、図3で説明する。まず、積層フィルムの形状に関わらず、積層フィルムの配向方向を特定する。配向方向は光学的な手法により測定することができ、測定装置としては例えば、王子計測機器株式会社の位相差測定装置KOBRAシリーズを用いることができる。同装置による測定では、得られた配向角の数値をもって配向方向を決定することができ、配向角の数値が示す方向をX方向、フィルム面に平行かつ当該配向方向に対して垂直な方向をY方向と定めることができる。なお、上記装置を用いたときの配向方向の特定方法の詳細は後述する。また、測定装置は同様の測定が可能なものであれば、別の装置を用いてもよい。
以下、積層フィルムが図3に示すような四辺状の枚葉の形である場合を例に挙げて、透過彩度C*の測定対象となる位置について詳細に説明する。まず、積層フィルム(符号F)の中心に当たる部分をC点(符号9)として定める。具体的には、対辺の交点を中心C点として定めることができる。製品への実装を考慮した多面体や円状のような複雑な形状を有する積層フィルムの場合は、これらの形状に4点で接する四辺形を構築し、それらの対角線が積層フィルム面内に存在する場合はその点を中心C点と定める。もし含まれない場合は、積層フィルムの形状の重心に当たる点を中心C点として定めてよい。
このC点から、上述したX方向、Y方向に平行に直線を延ばし、各方向の積層フィルムの外周との交点のうち、最も外側に位置する2点をそれぞれフィルム端部との交点として定める。X方向に平行に延ばした直線との交点をXE1点およびXE2点(符号10、11)とし、Y方向に平行に延ばした直線との交点をYE1点およびYE2点(符号14、15)とする。
積層フィルムを一定幅にスリットしたロール状で入手した場合は、ロールの幅方向の長さと同じ長さに巻き取り方向からカットして得られる、正方形状の枚葉フィルムを用いて、C,XE1,XE2,YE1,YE2の5点を決定することとする。
本発明では、このようにして得られたC、XE1、XE2、YE1、YE2の5点を基準として、C点(符号9)、C点とXE1点の中間点(符号12)、C点とXE2点の中間点(符号13)、C点とYE1点の中間点(符号16)、C点とYE2点の中間点(符号17)、の計5点において透過彩度C*を測定し、これらの5点における透過彩度がいずれも10以下を示すことが好ましい。この要件を満足することは、本発明の積層フィルムを大面積で使用する場合であっても、視認する箇所によって視認状態が大きく変わらず、実用に適した積層フィルムが得られることを意味する。
上記5点における透過彩度C*は、より好ましくはいずれも5.0以下であり、さらに好ましくはいずれも3.0以下であり、特に好ましくはいずれも2.5以下である。なお、上記5点における透過彩度C*は小さければ小さいほど好ましく、その下限は0である。
フィルム面内の広い範囲で上記の透過彩度C*の範囲を示すためには、幅方向で厚み比が異なっていた場合でも透過彩度C*への影響が小さくなる、前記厚み比の好ましい範囲を満足していることで達成出来る。
さらに、本発明の積層フィルムは、フィルム配向軸方向をX方向、X方向にフィルム面内で直交する方向をY方向、フィルムの中心をC点としたときに、C点をとおりX方向に平行な直線とフィルム端部との交点をXE1点及びXE2点、C点をとおりY方向に平行な直線とフィルム端部との交点をYE1点及びYE2点としたときに、C点、C点とXE1点の中間点、C点とXE2点の中間点、C点とYE1点の中間点、C点とYE2点の中間点の計5点における、透過彩度C*の変動係数が20.0以下であることが好ましい。
ここで述べるところの変動係数とは、上記5点における透過彩度C*の標準偏差を上記5点における透過彩度C*の平均値で除して百分率化した数値である。透過彩度C*の変動係数が小さいことは、積層フィルム面内での色調が均一である(色むらが小さい)ことを意味する。すなわち、例えば近赤外線に反射を有する積層フィルムの場合は、高次反射の発生が幅方向で均一であることを意味し、高次反射発生条件である、層厚み分布や熱可塑性樹脂層の厚み比、屈折率条件などがより均一であることを意味する。これら5点における透過彩度C*の変動係数は10.0以下であることがより好ましい。
このように透過彩度C*の変動係数を低くするためには、幅方向の厚み比を均一なものとするため、層厚み分布や屈折率条件が均一となる製造条件を用いることが好ましい。具体的には、厚み比を均一とするためには、押出温度と積層装置の温度を均一に制御することや、積層装置から口金で吐出されるまでの流路を幅方向に流路が長い高アスペクト比の流路にすること等が効果的である。また、幅方向の屈折率条件を均一なものとする条件として、後述する逐次二軸延伸条件において、縦延伸倍率を2.7倍以上3.0倍以下とし、かつ、横延伸倍率を縦延伸倍率に対して1.30倍以上2.00倍以下に制御することが効果的である。あるいは、フィルム幅方向に一軸延伸された積層フィルムとすることも効果的である。また、幅方向への延伸プロセスとして、予熱温度、延伸温度、熱処理温度をならだかに温度上昇させること、予熱から熱処理までの工程間に温度が予熱温度以下となる中間冷却ゾーンを設けること等も効果的である。また、熱固定後の積層フィルムの冷却も、急冷するのではなく、徐々に温度が低下する温度分布とすることが好ましい。このような延伸条件とすることで、フィルムが幅方向に均一に延伸されることとなり、積層フィルムを構成する熱可塑性樹脂のうち、特に結晶性を示す熱可塑性樹脂の複屈折性を幅方向でより均一にすることができる。これらの好ましい製造条件のうち、少なくとも2個以上の条件を併用して積層フィルムを製造することが、透過彩度C*の変動係数を低くするのに効果的である。
本発明の積層フィルムは、横軸を波長(nm)、縦軸を反射率(%)とする300nm以上2500nm以下の波長帯域における分光スペクトルにおいて、最も長波長帯域に位置する100nm以上にわたり連続して20%以上の反射率を示す波長帯域を波長帯域Π、波長帯域Πにおける中心波長をλ、波長帯域Πの分光スペクトルと反射率のベースラインとで囲まれる領域面積をS、熱可塑性樹脂層の合計積層数をNとしたときに、0.060≦S/(λ・N)≦0.300を満足することが好ましい。ここで述べるところの分光スペクトルは、実施例で後述する反射率・反射分光スペクトル測定にて、分光光度計を用いて入射角0°条件で1nmピッチにて測定して得られる反射分光スペクトルに、10点平均処理を施して得られる分光スペクトルを指す。詳説は後述するが、分光光度計による測定において295nm~2505nmの反射率データを取得し、連続する10点のデータを平均処理することで、300nm~2500nmの反射スペクトルデータを得ることができる。
最も長波長帯域に位置する連続して20%以上の反射率を示す波長帯域Πについて、図5~8を用いて説明する。なお、図5~8において、符号18~27は順に、分光スペクトル、波長帯域Πの領域面積S、高次反射帯域、波長帯域Πの中心波長λ、波長帯域Πの短波長端λmin、波長帯域Πの長波長端λmax、波長帯域Πの最大反射率、波長帯域Πの最大反射率とベースライン反射率の中間値、ベースライン反射率、分光スペクトルの脈流をそれぞれ示し、符号18の分光スペクトルは10点平均処理を施して得られる分光スペクトルである。波長帯域Πとは、図5に示す通り、前記の平均処理を施した分光スペクトルにおいて、300nm以上2500nm以下の波長帯域において、100nm以上にわたり連続して反射率が20%以上を示す波長帯域のうち、最も長波長側に位置する波長帯域のことを指す。図6に示す通り、反射波長帯域において、反射率が20%未満を示す領域が一部でも含まれる場合には、その領域を境界として、反射率が20%以上を示す長波長側の波長帯域を波長帯域Πと定義する。また、図7に示す通り、2500nmを超えて反射率が20%以上を示す波長帯域が長波長側に存在する場合には、300nm以上2500nm以下の波長帯域内に含まれる部分において、100nm以上にわたり20%以上の反射率を示す場合に、当該波長帯域を波長帯域Πと定める。
波長帯域Πの分光スペクトルと反射率のベースラインとで囲まれる領域の面積Sとは、図5~8に記載の斜線領域の面積を示す。この領域の面積Sの数値が積層フィルムの広帯域・高反射率の性能を実質上表すが、本発明の積層フィルムの場合、同じ積層工程を経て作製した積層フィルムであっても、積層フィルムの厚みに応じて波長帯域がシフトするため、領域Sの面積のみでは積層フィルムの構成に基づく、高反射率化・広反射帯域の効果を表すことができない。そこで本発明では、前記面積Sを当該波長帯域の中心波長λで割り返すことにより、積層フィルムの厚みによる波長帯域幅変化の影響を打ち消し、積層フィルムの構成に基づいた高反射率・広反射帯域の効果を表す。ここで述べるところの中心波長λは、反射帯域Πの最大反射率(図5~8の符号24)とベースライン反射率との中央値(図5~8の符号25)を示す反射帯域Πの波長範囲において、中間の波長とする(図5~8の符号21)。
波長帯域Πの領域面積Sは、例えば、波長帯域が800nm以上1200nm以下の帯域を90%反射する積層フィルム(ベースラインの反射率は10%とする)は単純計算で面積Sは(1200-800)nm×(90-10)%の32000を示すが、積層フィルムを半分の厚みにすると、波長帯域は400nm以上600nm以下となるため、(600-400)nm×(90-10)%の16000となり、同じ積層構造の積層フィルムであっても面積が変化するため、積層フィルム構成による広反射帯域・高反射率化の効果を表すことができない。そこで、波長帯域の中心波長λ、前者は1000nm、後者は500nm、で割り返すと、いずれもS/λ=32となり、異なる波長帯域を反射する積層フィルム同士であっても、積層フィルムの厚みに依存せず、積層フィルムの構成に基づく広反射帯域・高反射率化の効果を比較することが可能となる。
S/(λ・N)は、波長帯域Πの分光スペクトルと反射率のベースラインとで囲まれる反射帯域Πの領域面積S/反射帯域Πの中心波長λを、さらに合計積層数で割り返した数値であることから、S/(λ・N)が本数値範囲を示すことは、従来技術、特に2種類の熱可塑性樹脂層を交互に積層する(AB)m(mは繰り返し単位数を表す自然数)の積層フィルムでは達成できない、低積層数でありながら、高反射率かつ広帯域反射を兼備した積層フィルムが得られることを表す。S/(λ・N)が0.060よりも低い数値を示すことは、積層数を過度に多く設けていること、又は層厚み分布の傾斜が小さく反射帯域が狭いことを意味する。前者の場合においては、積層フィルムの厚みが過度に大きくなり、例えば、ディスプレイ用光学フィルムとしては近年の薄膜化傾向に則しないこととなる。さらに、積層フィルムの厚みが過度に大きくなると、後加工時のハンドリング性やスパッタ蒸着などの加工性を満足できないこともある。また、後者の場合は、積層フィルムの反射帯域が不足することから、後述する用途での使用に適さないことがある。
一方で、S/(λ・N)が0.300よりも高い数値を示す場合、少ない積層数で高反射率・広反射帯域を実現することを意味する。そのためには、熱可塑性樹脂層の屈折率差を高める必要があり、そのために骨格構造が全く異なる熱可塑性樹脂からなる熱可塑性樹脂層を積層することが不可欠となるため、積層フィルムとしたときの層間密着性が劣る。このようなメカニズムで生じる層間密着性の低下を軽減する方法として、密着性を向上させたい相手側の熱可塑性樹脂層内に含まれる未反応官能基成分と反応する未反応官能基を有する化合物(改質剤)を加える方法があるが、これは化合物(改質剤)を添加する熱可塑性樹脂との相性から、明度の低下を招くことがある。上記観点から、S/(λ・N)のより好ましい範囲は0.080以上0.150以下であり、さらに好ましくは0.090以上0.130以下である。なお、積層フィルムを明度の低下等を避ける必要がある用途で使用することを考慮すると、上記の改質剤を用いずにS/(λ・N)を好適な範囲に制御することが好ましい。
S/(λ・N)を0.060≦S/(λ・N)≦0.300を満たす範囲、若しくは上記の好ましい範囲とする方法としては、例えば、積層フィルムを3種類の熱可塑性樹脂層を一定の規則配列で積層とする構成要件に加え、層厚み分布の傾斜度を前記範囲に制御すること、さらに、3種類以上の熱可塑性樹脂層の中で、最も屈折率が高い熱可塑性樹脂層および最も屈折率が低い熱可塑性樹脂層として、前記の好ましい骨格構造・屈折率条件を満足する熱可塑性樹脂層を組み合わせる方法が挙げられる。
上記の好ましい層厚み分布の傾斜度としては、積層フィルムを構成する各熱可塑性樹脂層の層厚みが単調に増加する分布を示す箇所は、傾斜度と層数の積(以下、傾斜度×層数ということがある。)が10以上35以下で設計されていることが好ましい。一方、単調に減少する層厚み分布を示す箇所は、傾斜度×層数が-35以上-10以下で設計されていることが好ましい。各熱可塑性樹脂層の傾斜度は、最表層(いずれの面でも可)を1層目としたときの層番号を横軸、層厚み(nm)を縦軸とした全熱可塑性樹脂層の層厚み分布において、層厚みが単調増加あるいは単調減少の傾向を示す部分の近似直線を熱可塑性樹脂層ごとに描き、その傾きに相当する数値を読み取ることにより決定することができる。層数は、積層フィルムに含まれる当該熱可塑性樹脂層の全層数を指す。各熱可塑性樹脂層の傾斜度×層数を算出し、3種類の熱可塑性樹脂層の層厚み分布から算出された値の平均値を傾斜度×層数の値とする。各熱可塑性樹脂層の傾斜度は、積層装置のスリット長さやスリット間隙を適宜設計することで自由に変えることができる。傾斜度×層数は、各熱可塑性樹脂層の層厚みが単調に増加する分布を示す箇所においては15以上25以下で設計されていることがより好ましく、各熱可塑性樹脂層の層厚みが単調に減少する分布を示す箇所においては-15以上-25以下で設計されていることがより好ましい。
本発明の積層フィルムの波長帯域Π(横軸を波長(nm)、縦軸を反射率(%)とする300nm以上2500nm以下の波長帯域における分光スペクトルにおいて、最も長波長帯域に位置する100nm以上にわたり連続して20%以上の反射率を示す波長帯域を波長帯域)の反射率は、規則配列内を構成する熱可塑性樹脂層のうち、主に最も屈折率の高い層の屈折率と、最も屈折率の低い層の屈折率の差によって決定づけられる。例えば、本発明の積層フィルムのように規則配列が屈折率の異なる3種類の熱可塑性樹脂層(A層、B層、C層)を有し、A層、B層、C層の順に屈折率が高くなっている場合は、A層とC層の屈折率差が、積層フィルムの1次反射の反射率を決定づけることとなる。よって、A層とC層の屈折率差を大きくする熱可塑性樹脂の組み合わせ、とりわけ、延伸工程後に屈折率差が大きくなる組み合わせとすることが重要となる。屈折率が最も高い層、ならびに、最も低い層として好ましく用いることができる熱可塑性樹脂については後述する。
本発明の積層フィルムにおいて、反射帯域の広さは、式(1)の干渉反射理論式に従い、積層フィルムの層厚みに連続的に傾斜をつけた態様とすることで達成できる。その上で、積層数を増やすことで、層厚みの傾斜を大きく取ると反射波長帯域の拡大、傾斜を小さく取ると反射率向上が達成出来るが、本発明の積層フィルムのような干渉反射を利用すると、前述の通り、主反射にあたる1次反射よりも短波長側の波長帯域に、式(1)に従った高次反射が発生する場合がある。例えば、面内平均屈折率が互いに異なる熱可塑性樹脂を主成分とする2種類の層を交互積層した(AB)m(mは繰り返し単位を表す自然数)タイプの積層フィルムでは、式(1)の係数kを2、3としたときの反射帯域にあたる2次反射、3次反射を、屈折率と層厚みの積にあたる光学厚みを制御することで高くすることも抑制することもできる。
たとえば、A層の光学厚みn×dとB層の光学厚みn×dを狙いの波長帯域の1/4波長となるように設計すると2次反射を抑制することができる。これは一般的にλ/4設計と呼ばれる。さらに、特許文献4に記載されているA:B:A:B:A:B=1:7:1:1:7:1の、図4に示すような特殊な等価膜設計と呼ばれる光学厚み設計を施すことで、2次反射に加えて3次反射をも同時に抑制することができる。但し、(AB)m(mは繰り返し単位を表す自然数)タイプの積層フィルムにおいては、どのような光学厚み設計を行っても、式(1)の係数kを4としたときの4次反射までの高次反射を同時に抑制することは、理論上不可能であった。4次反射までの高次反射の同時抑制は、3種類以上の複数の屈折率が異なる熱可塑性樹脂層を用いることで初めて達成可能となる。また、異なる3種類の熱可塑性樹脂からなる積層フィルムであれば、特定の層厚み比範囲に制御することで、2次反射、3次反射の高次反射を抑制できる。
以下、本発明の3種類の(屈折率が)異なる熱可塑性樹脂層を有する積層フィルムにおける、高次反射を抑制するための好ましい積層フィルムの光学設計について説明する。それぞれ異なる熱可塑性樹脂を主成分とする3種類の層で構成される積層フィルムにおいて、高次反射を抑制するためには、屈折率の大きい順にA層、B層、C層、それぞれの層の面内平均屈折率をn、n、nとすると、最も高い屈折率を示す層と最も低い屈折率を示す層界面以外の各界面における比率、n/n、n/nが、式(3)の関係を満たすことが好ましい。干渉反射の光学理論では、干渉反射の有無は隣り合う界面で反射される光線同士の位相の重なりに加え、各界面で反射する光の強度にも影響することから、完全に干渉反射を打ち消しあうためには、干渉し合う波の位相が反転することに加え、各界面で反射する光の強度を一定にすることが必須となる。界面で反射される光の大きさは、界面を構成する2種類の層の屈折率の比に影響することから、前記関係を満たすことが、干渉光を打ち消し合い高次反射を抑制するためには好ましい。
以下、屈折率が最も高い熱可塑性樹脂層、および屈折率が最も低い熱可塑性樹脂層に好ましく用いることが出来る熱可塑性樹脂について記載する。ここでは、最も屈折率が高い熱可塑性樹脂層がA層であるとして記述する。
本発明の積層フィルムにおける屈折率が最も高い熱可塑性樹脂層であるA層は、未延伸の状態でも高屈折率を示す熱可塑性樹脂、とりわけ、1.58以上の屈折率を示す熱可塑性樹脂を主成分とする層であることが好ましい。例えば、1.58以上の高屈折率を示す熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(1.58)、ポリカーボネート(1.59)、ポリエチレンナフタレートグリコール(1.60)、ポリスチレン(1.60)、ポリブチレンナフタレート、ポリイミド(1.61)、ポリジクロロスチレン(1.62)、ポリスルフォン(1.63)、ポリエチレンナフタレート(1.64)、ポリエーテルイミド(1.66)、ポリエーテルエーテルケトン(1.73)、ポリフェニレンスルフィド、などが挙げられる(括弧内は屈折率を示す)。無論、これらのブレンド品、アロイ品などを用いてもよく、前記の熱可塑性樹脂をベースとして、屈折率向上、層間密着性向上に寄与するような共重合成分を加えてもよい。ここでいう屈折率は、JIS K 7104(2014)に記載のB法で解析して得られた数値である。
屈折率向上のために熱可塑性樹脂に含まれるべき成分としては、骨格構造として芳香族環を一つ以上含み、芳香族環が直線的に並んだ成分であることが好ましく、テレフタル酸、フランジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、フルオレンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、ピレンテトラカルボン酸、パラキシレングリコール、ナフタレンジオール、ビフェニルジオール、フルオレンジオール、アントラセンジオールなどの成分を含む熱可塑性樹脂であることがより好ましい。結晶性を示す熱可塑性樹脂であるかは、示差走査熱量計(DSC)測定において融解エンタルピーを有するか否かで判断することができる(融解エンタルピーを有するものを、結晶性を示すものとする。)。前述の熱可塑性樹脂の中では、延伸することでより高い面内屈折率を示すことができ、かつ、光学用途に適した高透明性、汎用性などを兼備した結晶性の熱可塑性樹脂として、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、から選ばれることが特に好ましい。すなわち、屈折率の最も高い熱可塑性樹脂層の主成分である熱可塑性樹脂が、ポリエチレンテレフタレートもしくはポリエチレンナフタレートであることが最も好ましい態様である。なお、ここで主成分とは層中に50質量%を超えて100質量%以下含まれる成分をいう。
本発明の積層フィルムにおける屈折率が最も低い熱可塑性樹脂層(C層)は、未延伸の状態で低屈折率を示す熱可塑性樹脂、特に1.54以下の屈折率を示す熱可塑性樹脂を主成分とする層であることが好ましい。たとえば、単独の熱可塑性樹脂で低屈折率を示す樹脂としては、フッ化エチレン-プロピレンコポリマー(1.34)、ポリフッ化ビニリデン(1.42)、ポリブチルアクリレート(1.46)、ポリ乳酸(1.46)、ポリメチルペンテン(1.46)、ポリイソブチルメタクリレート(1.48)、ポリメチルアクリレート(1.48)、ポリエチルメタクリレート(1.48)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、セルロースアセテート(1.49)、ポリプロピレン(1.50)、ポリブチレン(1.50)、ポリアクリロニトリル(1.51)、ナイロン(1.53)、ポリエチレン(1.51~1.54)、などが挙げられる。なお、ここで述べるところの屈折率は、JIS K 7104:2014に記載のB法で解析して得られた数値である。
無論、これらのブレンド品、アロイ品などを用いてもよく、前記の熱可塑性樹脂をベースとして、屈折率向上、層間密着性向上に寄与するような共重合成分を加えてもよい。また、最終的な熱可塑性樹脂の屈折率が1.54以下を満足するのであれば、1.54を超える熱可塑性樹脂をベースとし、共重合成分として異なる成分を含む熱可塑性樹脂とすることもできる。屈折率が最も低い熱可塑性樹脂層の主成分である熱可塑性樹脂の屈折率は、好ましくは1.51以下、さらに好ましくは1.49以下である。
特に、屈折率が最も低い熱可塑性樹脂層(C層)は、延伸工程後に屈折率が大きく変化しない非晶性の熱可塑性樹脂で構成されていることが好ましい。非晶性樹脂とは、示差走査熱量計(DSC)測定において融解エンタルピーを示さない熱可塑性樹脂を指し、透明性・層間密着性・製膜性などを考慮すると、前記の中ではポリブチルアクリレート、ポリイソブチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル樹脂、などを用いることが好ましい。あるいは、屈折率が最も高い層であるA層との密着性を得るために、高屈折率を示すポリエステル樹脂に共重合成分を付与して屈折率を1.54以下とした非晶性の熱可塑性樹脂とすることも好ましい。例えば、この場合、熱可塑性樹脂を構成する成分の総モル量を100モル%とした場合、共重合成分にあたる副成分を20モル%以上45モル%以下含むことが好ましい。例えば、主成分がポリエチレンテレフタレートである共重合ポリエステル樹脂の場合、テレフタル酸成分以外のジカルボン酸成分、および、エチレングリコール成分以外のジオール成分が合計して25モル%以上45モル%以下含まれることが好ましい。共重合量をこの範囲に制御することで、積層フィルムの層間密着性や、熱流動特性の差が小さくなるため、各層の厚みの精度や厚み均一性に優れた非晶性の熱可塑性樹脂とすることができる。
屈折率を低下するための共重合成分として好ましい成分としては、例えば、アジピン酸、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAエチレンオキサイド、スピログリコール、イソフタル酸、イソソルビド、シクロヘキサンジカルボン酸、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール2000、m-ポリエチレングリコール1000、m-ポリエチレングリコール2000、m-ポリエチレングリコール4000、ポリテトラメチレングリコール、m-ポリプロピレングリコール2000、ビスフェニルエチレングリコールフルオレン(BPEF)、フマル酸、アセトキシ安息香酸などが挙げられる。中でも、3次元的な骨格構造を示すスピログリコールやネオペンチルグリコール、もしくは、ポリエチレングリコール成分、などが挙げられる。スピログリコールは、共重合した際にポリエチレンテレフタレートとのガラス転移温度差が小さいため、成形時に過延伸となりにくく、かつ、層間剥離も発生しにくい。ポリエチレングリコール成分は、親水性を高めて層間密着性が高まるほか、ガラス転移温度を効果的に下げることができ、共延伸性が高まる効果を奏する。
本発明の積層フィルムは、従来の2種類の熱可塑性樹脂を用いた(AB)m(mは繰り返し単位を表す自然数)積層構造を有する積層フィルムよりも広反射帯域・高反射率・高透明特性を示し、さらに広い範囲にわたり色調が安定している特性を示すことから、熱線を広い範囲わたり強く遮蔽したい用途に好適に用いることができる。たとえば、自動車・建材建具用途では窓部材に用いるウインドウフィルム、電子デバイス用途ではスマートフォン、ヘッドアップディスプレイ、電子ペーパーやデジタルサイネージなどの特に画像表示装置向けの光学フィルム、その他食品、医療、インクなどの分野においても、内容物の光劣化や熱劣化抑制を目的とした光線カットフィルムとして、利用することができる。使用方法としては、後貼り、もしくは、成形体としてインモールド成形あるいはインサート成形を施して利用することができる。
本発明の窓部材は、本発明の積層フィルムを用いてなる。例えば、本発明の積層フィルムのうち近赤外線領域に反射帯域を有するものを窓部材に用いることで、室内の温度上昇軽減、冷房効率改善、省エネルギー、及び車両の燃費向上などを実現できる。より好ましくは、一部の高次反射が紫外線領域において生じている、あるいは、積層フィルム内に紫外線吸収剤などを含むことで、近赤外線と紫外線を双方とも遮蔽できる積層フィルムである。このような積層フィルムを備える窓部材は、前記した室内温度上昇軽減に加え、日射による肌のじりじり感や紫外線による日焼けなども効果的に軽減でき、運転時の不快感を軽減することが出来、車内環境改善に大きく貢献できる。また、本発明の積層フィルムは、カラーや透明ガラス等の色調などに制限は無く、特定の光を遮蔽したい用途において、特定の波長帯域を反射・遮蔽できる性能を有するものを適宜用いることができる。
特に、車両用窓部材では、規格において高い透明性が強く要求される。そのため、熱線吸収剤の吸収特性により可視光線を幾分か遮蔽する現行の熱線吸収タイプのウインドウ材料に比べて、干渉反射特性を利用して急峻な近赤外線カットを発揮でき、さらに高透明も実現出来る点で、本発明の積層フィルムを好ましく利用できる。車両用途においては、フロントウインドウ、ドアウインドウ、サイドウインドウ、デルタウインドウ、リアウインドウ、及びサンルーフなどの窓材において、合わせガラス中間膜材料として本発明の積層フィルムを用いてもよく、上記の各ウインドウの表面にアフターパーツとして貼ることもできる。また、本発明の成形体を備える例としては、近年の軽量化や多種多様な意匠性に沿うように、ガラス代替としてポリカーボネートなどの高強度樹脂を用いた窓部材が挙げられる。このような窓部材は、本発明の積層フィルムとともに一体成形して得ることもできる。
本発明の積層フィルムを用いることができる窓部材としては、自動車等の車両用窓部材以外に、建材建具用途の窓部材が挙げられる。建材建具用途の窓部材の場合も、本発明の積層フィルムを組み合わせることが出来る材料としては、車両用窓部材と同様に、ガラスや樹脂等の素材が挙げられる。
本発明の車載部材は、本発明の積層フィルムを備える。車載部材とは、車両や航空機、船舶、無人航空機などの移動・運搬手段をもつ動力機関である交通機関に用いられる部材のことを指す。たとえば、車両の外部に取り付けられる部材(自動車外装材)としては、エンブレムやフロントグリル、バンパーなどが挙げられる。車両や筐体内の温度上昇を防止するため、本発明の積層フィルム遮熱ウインドウ材料や、エンブレムやフロントグリル、バンパー等の材料として用いる例が挙げられる。
次に、本発明の積層フィルムの好ましい製造方法を以下に説明する。もちろん本発明は係る例に限定して解釈されるものではない。
積層フィルムの各熱可塑性樹脂層を構成する熱可塑性樹脂をペレットなどの形態で用意する。ペレットは、必要に応じて、熱風中あるいは真空や窒素雰囲気下で乾燥された後、別々の押出機に供給される。添加剤を熱可塑性樹脂中に含有する場合は、本押出の過程で粉末・顆粒・液状の添加剤を混練分散してもよく、予め熱可塑性樹脂中に添加剤を分散させたマスターペレットを供給することもできる。押出機内において、融点以上に加熱溶融された各熱可塑性樹脂は、ギヤポンプ等で樹脂の押出量を均一化され、フィルター等を介して異物や変性した樹脂などが取り除かれる。これらの熱可塑性樹脂は、積層装置を介して所望の積層体を形成された後、ダイよりシート状に吐出される。そして、ダイから吐出されたシートは、キャスティングドラム等の冷却体上に押し出され、冷却固化され、キャストシートが得られる。この際、ワイヤー状、テープ状、針状あるいはナイフ状等の電極を用いて、静電気力によりキャスティングドラム等の冷却体に密着させ急冷固化させることが好ましい。また、スリット状、スポット状、面状の装置からエアーを吹き出してキャスティングドラム等の冷却体に密着させ急冷固化させたり、ニップロールにて冷却体に密着させ急冷固化させたりする方法も樹脂の熱特性に応じて選択できる。補助的に、キャスティングドラム面に液状の界面活性水や流動パラフィンなどの濡れ性のよい液体を塗布し、密着性を付与することもできる。
積層フィルムを構成する3種類の熱可塑性樹脂は、熱可塑性樹脂層の種類以上の台数の押出機を用いて異なる流路から送り出し、シート状で吐出される前に多層積層装置へ送り込まれる。多層積層装置としては、マルチマニホールドダイやフィードブロックやスタティックミキサー等を用いることができるが、特に、多層積層構造を効率よく得るためには、微細スリットを有するフィードブロックを用いることが好ましい。このようなフィードブロックを用いると、装置が極端に大型化することがないため、熱劣化による異物発生量が少なく、積層数が極端に多い場合でも、高精度な積層が可能となる。また、幅方向の積層精度も従来技術に比較して格段に向上する。また、この装置では、各層の厚みをスリットの形状(長さ、幅)で調整できるため、任意の層厚みを達成することが可能となる。このようにして所望の層構成に形成した溶融多層積層シートをダイへと導き、上述の通りキャストシートが得られる。
積層体をダイまで導くための単管の流路断面形状は、流路の厚みに対する流路の幅方向長さの比が5以上の、高いアスペクト比を有することが好ましい。単管内を積層体が流れる際、単管壁面近傍と単管中心部分では、単管壁面で受けるせん断の影響により、一般に流速差が生まれる。特に、単管の幅方向端部では、単管幅方向壁面による流速差の影響も加わるため、複雑な渦状の樹脂流が発生し、積層乱れが生じる。流路断面のアスペクト比が小さい単管を用いると、単管の幅方向位置での樹脂流の乱れの影響が幅方向中央付近にも影響するため、フィルム幅方向での積層乱れがより大きい積層フィルムが得られることとなる。さらに、本発明のように熱可塑性樹脂層の種類が3種類の積層体の場合、層を構成する熱可塑性樹脂ごとに粘弾性挙動が異なる場合が多く、樹脂流速差が生まれやすい低アスペクト比の流路断面を有する単管を用いると、粘弾性挙動の変化も相まって、積層乱れがより顕著となる場合がある。このことから、フィルム幅方向位置での厚み比むらや色むらにつながる、積層乱れの少ない積層フィルムを得るためには、単管の流路断面形状はなるべく高いアスペクト比を示すことが好ましく、より好ましくは10以上、さらに好ましくは20以上である。単管流路断面のアスペクト比が極端に高い場合、流路の幅方向長さが非常に長くなることでフィルム幅方向への装置の大型化を招く、あるいは、単管流路の厚みが非常に薄くなるため、単管の幅方向位置に限らず単管壁面における流速差の影響を強く受け、フィルム全体で厚み方向への積層厚み乱れが大きくなる等の問題が生じる場合がある。そのため、アスペクト比の上限は100以下とすることが現実的である。
得られたキャストシートは、つづいて長手方向および幅方向に二軸延伸されることが好ましい。延伸は、逐次に二軸延伸してもよいし、同時に二軸延伸してもよい。また、さらに長手方向および/または幅方向に再延伸を行ってもよい。ここで長手方向とは、フィルムの走行方向をいい、幅方向とは長手方向とフィルム面内で直交する方向をいう。
逐次二軸延伸の場合についてまず説明する。ここで、長手方向への延伸とは、シートに長手方向の分子配向を与えるための一軸延伸を指し、通常は、ロールの周速差により施され、1段階で行っても、複数本のロール対を使用して多段階に行ってもよい。延伸の倍率としては樹脂の種類により異なるが、通常、2~15倍が好ましく、例えば、本発明の積層フィルムに好ましく用いられる結晶性の熱可塑性樹脂であるポリエチレンテレフタレートあるいはポリエチレンナフタレートを用いた場合には、2~7倍が特に好ましく用いられる。また、延伸温度としては積層フィルムを構成する樹脂のうち最もガラス転移温度が高い樹脂の、ガラス転移温度~ガラス転移温度+100℃の範囲内に設定することが好ましい。長手方向の延伸工程で強く配向させた場合には、フィルム幅方向のネックダウンが生じるため、十分なフィルム幅を得られない他、幅方向延伸後の長手方向および/または幅方向の厚みむらや透過スペクトルむらが大きくなる場合がある。
このようにして得られた一軸延伸された積層シートに、必要に応じてコロナ処理やフレーム処理、プラズマ処理などの表面処理を施した後、易滑性、易接着性、帯電防止性などの機能を付した易接着層をインラインコーティングにより付与する。インラインコーティングの工程において、易接着層は積層フィルムの片面に塗布してもよく、積層フィルムの両面に同時あるいは片面ずつ順に塗布してもよい。
続いて一軸延伸された積層シートに幅方向の延伸を施す。幅方向の延伸とは、シートに幅方向の配向を与えるための延伸をいい、通常は、テンターを用いて、シートの幅方向両端部をクリップで把持しながら搬送して行う。延伸の倍率としては樹脂の種類により異なるが、通常、2~15倍が好ましく、例えば、本発明の積層フィルムに好ましく用いられる結晶性の熱可塑性樹脂であるポリエチレンテレフタレートあるいはポリエチレンナフタレートを用いた場合には、2~7倍が特に好ましく用いられる。また、延伸温度としては積層フィルムを構成する樹脂のうち最もガラス転移温度が高い樹脂の、ガラス転移温度~ガラス転移温度+120℃が好ましい。
こうして二軸延伸された積層フィルムは、テンター内で延伸温度以上融点以下の熱処理を行い、均一に徐冷後、室温まで冷やして巻き取られる。また、必要に応じて、熱寸法安定性を付与するために熱処理から徐冷する際に、長手方向および/あるいは幅方向に弛緩処理などを併用してもよい。
本発明の積層フィルムの重要な開発要素である、高透明ならびに幅方向の色むらレスを実現するためには、屈折率条件や厚み比を幅方向で均一にするための、幅方向延伸の延伸プロセス条件が重要となり、特に、積層フィルムの幅方向の屈折率条件が均一で、延伸時のボーイング挙動が起こりにくいプロセス条件を採用することが好ましい。具体的には、延伸条件として、長手方向の延伸よりも幅方向の延伸倍率の方が高く、縦延伸倍率を2.7倍以上3.0倍以下とし、かつ、横延伸倍率を縦延伸倍率に対して1.3倍以上2.0倍以下に制御してなることが好ましい。さらに、テンター内の温度条件として、予熱温度、延伸温度、熱処理温度が極端な温度変化を示さず、ほぼ線形的な温度変化を示していることが好ましい。特に、延伸温度から熱処理温度に至るまでの区間において、一旦温度が低下する区間を設けていることも有効である。
続いて、同時二軸延伸の場合について説明する。同時二軸延伸の場合には、得られたキャストシートに、必要に応じてコロナ処理やフレーム処理、プラズマ処理などの表面処理を施した後、易滑性、易接着性、帯電防止性などの機能をインラインコーティングにより付与してもよい。インラインコーティングの工程において、易接着層は積層フィルムの片面に塗布してもよく、積層ユニットの両面に同時あるいは片面ずつ順に塗布してもよい。
次に、キャストシートを、同時二軸テンターへ導き、シートの幅方向両端部をクリップで把持しながら搬送して、長手方向と幅方向に同時および/または段階的に延伸する。同時二軸延伸機としては、パンタグラフ方式、スクリュー方式、駆動モーター方式、リニアモーター方式があるが、任意に延伸倍率を変更可能であり、任意の場所で弛緩処理を行うことができる駆動モーター方式もしくはリニアモーター方式が好ましい。延伸の倍率は樹脂の種類により異なるが、通常、面積倍率として6~50倍が好ましく、本発明の積層フィルムに好ましく用いられる結晶性の熱可塑性樹脂であるポリエチレンテレフタレートあるいはポリエチレンナフタレートを用いた場合には、面積倍率として8~30倍が特に好ましく用いられる。延伸速度は同じ速度でもよく、異なる速度で長手方向と幅方向に延伸してもよい。また、延伸温度としては積層フィルムを構成する樹脂のうち最もガラス転移温度が高い樹脂の、ガラス転移温度~ガラス転移温度+120℃が好ましい。
こうして同時二軸延伸されたシートは、平面性、寸法安定性を付与するために、引き続きテンター内で延伸温度以上融点以下の熱処理を行うのが好ましい。この熱処理の際に、幅方向での主配向軸の分布を抑制するため、熱処理ゾーンに入る直前および/または直後に瞬時に長手方向に弛緩処理することが好ましい。このようにして熱処理された後、均一に徐冷後、室温まで冷やして巻き取られる。また、必要に応じて、熱処理から徐冷する際に長手方向および/あるいは幅方向に弛緩処理を行ってもよい。また、熱処理ゾーンに入る直前および/あるいは直後に瞬時に長手方向に弛緩処理をしてもよい。
以上のように、各種延伸方法で得られた積層フィルムは、巻き取り装置を介して必要な幅にトリミングされ、巻き取り皺が付かないようにロールの状態で巻き取られる。なお、巻き取り時に巻姿改善のためにシート両端部にエンボス処理を施してもよい。
本発明の積層フィルムの厚みは、特に限定されるものではないが、5μm以上150μm以下であることが好ましい。各種機能性フィルムの薄膜化傾向や、合わせガラス化などの後加工性を加味すると、25μm以上100μm以下であることが好ましく、より好ましくは25μm以上75μm以下である。
また、本発明の積層フィルムの最表面には、後加工工程での耐擦傷や寸法安定性、実装時の相手材料との接着性・密着性などの機能を付加するために、硬化型樹脂を主成分として構成されるハードコート層や粘着層が積層されていてもよい。
ハードコート層については、積層フィルムを製品へ実装するためにロールツーロールで搬送した際に、ロールとフィルム間の擦れにより積層フィルム表面に傷発生を防止することができる。さらに、積層フィルム内の樹脂オリゴマー成分や、積層フィルムに添加することができる各種添加剤が、高温熱処理においてブリードアウトする可能性がある場合でも、ハードコート層を最表面に設けることで、架橋密度の高いハードコート層が析出抑制効果を示しうる。また、硬化性樹脂層を積層することで熱処理によるフィルムの寸法変化を抑えることもでき、熱収縮によるフィルム厚みの増加、それに伴う積層フィルムの透過スペクトルなどの光学特性の変化を抑制することができる。
ハードコート層は、本積層フィルムにおいて優位な特性を有することから、積層フィルムの少なくとも片面に塗布することが、フィルムの性状、特にフィルム寸法を維持するために好ましい。ハードコート層は積層フィルムの両面に塗布することも可能であるが、ハードコート層同士が接着することでフィルムの滑り性、ひいてはロールの巻き性を悪化させる可能性があるため、ハードコート層は片面のみに塗布する、もしくは、両面に塗布する際には、少なくとも片側のハードコート層は滑り性を付与するために、粒子添加や大気プラズマ・真空下プラズマなどの表面凹凸処理を行うことが好ましい。
該ハードコート層は、積層フィルムの最表面に直接積層することもできるが、インラインコーティング層を介して積層することがより好ましい。ハードコート層と積層フィルム最表面の熱可塑性樹脂との屈折率差が大きい場合、インラインコーティング層の屈折率を調整することで、双方の密着性を向上することができるため好ましい。インラインコーティング層の屈折率としては、積層フィルムを構成する熱可塑性樹脂A層の屈折率と、ハードコート層を構成する硬化性樹脂の屈折率との間の数値を示すことが好ましく、より好ましくは両樹脂の屈折率の中間(熱可塑性樹脂Aの屈折率をα、ハードコート層を構成する硬化性樹脂の屈折率をβとしたとき、0.98×(α+β)/2以上1.02×(α+β)/2以下)の値を示すことである。たとえば、積層フィルム最表面に位置する熱可塑性樹脂としてポリエチレンテレフタレートを、硬化性樹脂としてアクリル樹脂を用いる場合、前者は延伸後の屈折率が1.65程度、後者は屈折率が1.50程度と屈折率差が大きくなることから、密着不良を引き起こす可能性がある。そのため、該インラインコーティング層の屈折率は1.50以上1.60以下の値を有することが好ましく、より好ましくは1.55以上1.58以下の屈折率である。同様に、延伸後の屈折率が1.75前後を示すポリエチレンナフタレートを用いる場合は、インラインコーティング層の屈折率は、1.59以上1.64以下の数値を有することが好ましく、より好ましくは1.60以上1.62以下の屈折率である。
ハードコート層に用いることができる硬化性樹脂としては、高透明で耐久性があるものが好ましく、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂を単独で、または混合して使用できる。硬化性や可撓性、生産性の点において、硬化性樹脂はポリアクリレート樹脂に代表されるアクリル樹脂などの活性エネルギー線硬化型樹脂からなることが好ましい。また、耐擦傷性を付加する場合、硬化性樹脂は熱硬化性のウレタン樹脂からなることが好ましい。
本発明における活性エネルギー線とは、紫外線、電子線、放射線(α線、β線、γ線など)などアクリル系のビニル基を重合させる各種電磁波を意味する。実用的には、紫外線が最も簡便であり好ましい。紫外線源としては、紫外線蛍光灯、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノン灯、炭素アーク灯などを用いることができる。紫外線源により硬化する場合は、酸素阻害を防ぐ点で酸素濃度が出来るだけ低い方が好ましく、窒素雰囲気下や不活性ガス雰囲気下で硬化する方がより好ましい。また、電子線方式の場合は、装置が高価でかつ不活性気体下での操作が必要であるが、光重合開始剤や光増感剤などを含有させなくてもよい点から有利である。
以下、実施例に沿って本発明について説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。各特性は、以下の手法により測定した。
(特性の測定方法および効果の評価方法)
本発明における特性の測定方法、および効果の評価方法は次のとおりである。
(1)層構成
積層フィルムの積層構成は、ウルトラミクロトームを用いて薄片化したサンプルについて、透過型電子顕微鏡(TEM)観察により求めた。すなわち、透過型電子顕微鏡JEM-1400 Plus((株)日本電子製)を用い、加速電圧100kVの条件で積層フィルムの断面を観察し、断面像を取得することで、層構成(積層数、規則配列、層厚み分布、傾斜度)および厚み比を測定した。なお、各層間のコントラスト差を大きく得るために、電子染色剤(RuOなど)を使用した染色技術を用いた。また、各層の厚みにあわせて、層厚みが100nm未満の場合は直接倍率4万倍、層厚みが100nm以上500nm未満である場合は直接倍率2万倍、層厚みが500nm以上である場合は厚みに応じて1千倍~1万倍にて観察を実施し、積層フィルムの厚み方向の片側最表層から反対側の最表層にかけての層厚み分布を解析した。得られた画像のコントラスト差を基に、積層数、規則配列、各層の層厚み、層厚み分布、厚み比を判断した。なお、厚み比については、積層フィルムの最表層や厚み方向中間に存在する厚膜層(厚み500nm以上の層)を除く部分の層厚みに対し、積層フィルムを構成するそれぞれの熱可塑性樹脂層の層厚みの合計を算出し、特定の熱可塑性樹脂層に対する比率で算出した。例えば、B層に対する前記A層の厚み比(A/B)、前記B層に対する前記C層の厚み比(C/B)は、積層フィルムに含まれる熱可塑性樹脂層B層の合計層厚みに対する、熱可塑性樹脂A層、C層の合計層厚みの比率から算出した。
(2)各層の厚み
(1)の透過型電子顕微鏡観察において得られた断面画像を圧縮画像ファイル(JPEG)に変換し、積層フィルムの厚み方向に沿って、ImagePro-10(販売元 伯東株式会社)を用いて、ラインプロファイルにより位置-輝度データを取得した。その後、表計算ソフト(マイクロソフト社“Excel”(登録商標) 2016)を用いて、位置と輝度の関係をプロットして得られたプロファイルに対し、5点移動平均処理を施した。平均処理は、連続する5点の測定位置に対して輝度の平均処理を施し、同じ計算を、位置を1点ずつ変更して連続処理することで行い、平均処理した位置-輝度プロファイルを取得した。得られた平均処理済の位置-輝度プロファイルにおいて、傾きが正から負、あるいは負から正へ変化する変曲点で囲まれる位置を1つの層と判断した。当該手法で得られた各層に対し、続いて積層フィルムの平面方向(厚み方向に対して垂直な方向)に対して位置-輝度データを取得した。各層毎に得られた輝度の平均値と標準偏差を算出した後、隣接する2層の輝度の平均値の差が、隣接する熱可塑性樹脂層の輝度の標準偏差のいずれよりも大きい場合、これら隣接する2層は異なると判断した。また、当該変曲点間の位置の差(距離)を、各層の層厚みとして算出した。
(3)反射率・反射分光スペクトル測定
測定サンプルを、入手したサンプルの中心C点から5cm四方で切り出し、積層フィルムの片面に黒色ラッカースプレーを用いて背面黒処理を施した。背面黒処理では3回重ね塗りを行い、光を完全に透過しない状態とした。日立ハイテクサイエンス製の分光光度計U-4100を使用し、背面黒処理したサンプルの未処理側を光源側に向けて積分球背面の開口部に固定し、入射角度0°における反射分光スペクトルを測定した。測定にあたっては、装置付属の積分球に酸化アルミニウム標準白色板(本体付属)を取り付けた状態でバックグラウンド補正を行い、波長295nm以上2505nm以下の波長領域における反射分光スペクトルを、スリットを2nm(可視)/自動制御(赤外)設定、赤外-可視光源切替波長を850nm、ゲインを2と設定し、スキャン速度を600nm/min,サンプリングピッチを1nmに設定し、連続的に測定した。
(4)反射分光スぺクトルの平均処理、Sおよびλの算出
前記(3)の反射率測定で得られた1nmピッチの反射分光スペクトルデータに対し、前後10点の透過率データ平均値を算出した。(例えば、295nm~304nmのデータに対しては、299.5nmの透過率平均値データが算出される。以降2505nmまで行い、299.5nmから2500.5nmまでの1nmピッチのデータを算出。)その後、隣り合う2点の平均値を順に算出し(例えば、299.5nmと300.5nmの平均から300nmの平均透過率データを算出)、同様の計算を繰り返すことにより、波長300nm~2500nmの10点平均した反射分光スペクトルデータを求めた。当該データを横軸が波長nm、縦軸が反射率%となるようにグラフ化し、面積Sおよび中心波長λを求めた。
(5)示差走査熱量測定(DSC)
(株)日立ハイテクノロジーズ社製のロボットDSC-RDC6220を用いた。測定ならびに温度の読み取りは、JIS-K-7122(1987年)に従って実施した。より具体的には、積層フィルムから削り取った試料約5mgをアルミニウム製受皿上、25℃から300℃まで10℃/分の速度で昇温させた際のベースラインと段差転移部分の変曲点での接線との交点におけるガラス転移温度Tg(℃)、および、昇温後に液体窒素で急冷してさらに同じ条件で昇温した際に最も高温側で確認される吸熱ピーク(融点)のピークトップにあたる融点Tm(℃)を読み取った。さらに、2回目の昇温において観測された最も高温側の吸熱ピークとベースラインで囲まれた部分の面積にあたる融解エンタルピーΔHTm(J/g)を求め、吸熱ピークのベースラインとピーク変曲点のうち低温側の変曲点における接線との交点にあたる吸熱ピークの開始温度(℃)を読み取った。
(6)配向方向(X方向)の測定
測定サンプルを入手した積層フィルムの中心C点から5cm四方で切り出し、王子計測機器(株)製 位相差測定装置(KOBRA-WPR)を用いて、フィルム幅方向が本測定装置にて定義されている角度0°となるように装置に設置し、高位相差の面内位相差測定モードにて入射角0°における配向角を測定し、読み取ることで、X方向を判断した。
(7)透過彩度C*(0°)、面内5点の最大値、変動係数
測定用サンプルを、入手した積層フィルムの各測定位置から5cm四方で切り出し、コニカミノルタセンシング製の分光測色計CM3600dを用いて、積層フィルムの透過色調の彩度C*(0°)を測定した。測定径が25.4mmのLVDアタッチメントを取り付け、付属の透過用ゼロ校正板CM-A100による0%校正、ならびに、付属の白色校正板による100%校正を実施した後、光源をD65光源としたときの彩度C*値を読み取った。入手したサンプルに対し、平面内のC点、C点とXE1点の中間点、C点とXE2点の中間点、C点とYE1点の中間点、C点とYE2点の中間点の計5点における透過彩度C*を測定し、それらのうちの最大値、平均値、および、5点の標準偏差を算出した。さらに、標準偏差を平均値で割りかえした数値として変動係数を算出した。
(8)入射角60°での透過彩度C*(60°)
測定用サンプルを、入手した積層フィルムの中心C点から7cm四方で切り出し、日立ハイテクサイエンス製の分光光度計U-4100を使用し、ユニットとして角度可変透過付属装置(P/N134-0200)を取り付け、入射角度60°における透過分光スペクトルを測定した。具体的には、装置付属の積分球、ならびに、酸化アルミニウム標準白色板(本体付属)を取り付け、サンプル未挿入状態でバックグラウンド補正を行い、スリットを2nm(可視)/自動制御(赤外)設定、赤外-可視光源切替波長を850nm、ゲインを2と設定し、スキャン速度を600nm/min,サンプリングピッチを1nmに設定し、透過分光スペクトルを連続的に測定した。得られた測定結果に対して、JIS Z8720に記載されているD65光源の相対分光分布からXYZ表色系における三刺激値X,Y,Zおよび完全拡散反射面における三刺激値Xn,Yn,Znをそれぞれ算出し、CIE1976で定められたクロマティクネス指数式(4)、式(5)、および、式(6)により透過彩度C*(60°)を導出した。式(4)~(6)において、X、Y、ZはD65光源の相対分光分布を基に算出した三刺激値、Xn,Yn,ZnはD65光源の相対分光分布を基に算出した完全拡散反射面における三刺激値、a*は赤味を示すクロマティクネス指数、b*は黄色味を示すクロマティクネス指数、C*は透過彩度を表す。
Figure 2024055291000005
Figure 2024055291000006
Figure 2024055291000007
(9)視認性
A4サイズのガラスに、25μm光学粘着剤OCAを介して積層フィルムを貼り合わせ、評価用サンプルを作製した。作製した評価用サンプルを、3波長蛍光灯(ナショナルパルック3波長形昼白色 F.L 15EX-N 15W)の直下500mmに、蛍光灯入射側が積層フィルム側となるように配置し、蛍光灯の入射方向に対して30°~60°の範囲で傾けながら、3波長蛍光灯の入射方向と垂直な方向(横方向)から、評価サンプルのガラス面から視認したときの外観を評価し、下記基準で優劣を判断した。
S:評価サンプルは無色透明で、背景が良好に視認できる視認性を有していた。
A:評価サンプル自体は注視すると色づきが確認されるが、背景を正常に視認できる十分な視認性を有していた。
B:評価サンプル自体は特に意識しなくても色づきが確認されるが、窓部材として利用するに足る視認性であった。
C:色づきが強く、背景を正常に視認できない窓部材に適さない視認性であった。
(10)遮熱特性
透過彩度C*を測定した積層フィルム面内5点のそれぞれから5cm四方で切り出したサンプルに対して、日立ハイテクサイエンス製の分光光度計U-4100を使用して、付属の積分球を用いた基本構成での(相対)反射分光スペクトルおよび(相対)透過分光スペクトルを測定した。測定にあたっては、装置付属の積分球に加え、酸化アルミニウム標準白色板(本体付属)を取り付けた状態でバックグラウンド補正を行い、波長295nm以上2505nm以下の波長領域における反射分光スペクトルを、スリットを2nm(可視)/自動制御(赤外)設定、赤外-可視光源切替波長を850nm、ゲインを2と設定し、スキャン速度を600nm/min,サンプリングピッチを1nmに設定し、連続的に測定した。その後、透過率測定および反射率測定結果に対して、ISO9050に記載されている計算方法を用いて、日射熱取得率を算出し、以下の方法で遮熱性能を判断した。
S:フィルム単体の日射熱取得率はいずれの位置も63%以下であり、太陽光に含まれる近赤外線の遮蔽性に非常に優れていた。
A:フィルム単体の日射熱取得率はいずれの位置も70%以下であり、太陽光に含まれる近赤外線の遮蔽性に優れていた。
B:フィルム単体の日射熱取得率はいずれの位置も75%以下であり、遮熱フィルムとして何とか使用できる性能であった。
C:フィルム単体の日射熱取得率は最大で75%を超え、遮熱フィルムとしては不十分な性能であった。
<熱可塑性樹脂>
本発明の実施例で用いた熱可塑性樹脂について下記する。なお、ここでいう屈折率はJIS K 7104(2014)に記載のB法で解析して得られた数値である。
樹脂1: 屈折率1.64、吸熱ピーク開始温度210℃、融点257℃を示す結晶性のイソフタル酸4モル%共重合ポリエチレンナフタレート樹脂
樹脂2: 屈折率1.58、吸熱ピーク開始温度220℃、融点255℃を示す結晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂
樹脂3: 屈折率1.58、吸熱ピーク開始温度200℃、融点220℃を示す半結晶性のイソフタル酸15モル%共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂
樹脂4: 屈折率1.58、吸熱ピーク開始温度210℃、融点230℃を示す結晶性のイソフタル酸10モル%共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂
樹脂5: 屈折率1.57、ガラス転移温度79℃を示す非晶性のシクロヘキサンジメタノール30モル%共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂
樹脂6: 屈折率1.60、吸熱ピーク開始温度160℃、融点185℃を示す半結晶性のナフタレンジカルボン酸30モル%共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂
樹脂7: 屈折率1.49、ガラス転移温度98℃を示す非晶性ポリメチレンメタクリレート樹脂
樹脂8: 屈折率1.53、ガラス転移温度75℃を示す非晶性のスピログリコール25モル%およびシクロヘキサンジカルボン酸20モル%共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂。
(実施例1)
熱可塑性樹脂層A層、B層、C層を構成する各熱可塑性樹脂として、それぞれ順に樹脂1、樹脂3、樹脂7を用いた。準備した各熱可塑性樹脂をそれぞれ、ペレット状で3台の二軸押出機に別々に投入し、いずれも270℃で溶融させて混練した。混錬条件は、いずれも吐出量に対するスクリュー回転数が0.7となるように設定した。次いで、それぞれFSSタイプのリーフディスクフィルタを7枚介した後、ギヤポンプにて計量しながら、スリット数201個のフィードブロックにて合流させて、厚さ方向の規則配列がA層/B層/C層/B層を示し、規則配列内の厚み比がA層/B層0.9、C層/B層が1.1を示し、かつ両表層がA層となるように、201層を積層して積層体とした。ここで、フィードブロック内は、スリット長さは階段状に単調増加となるように設計した。その後、フィードブロックを通過した積層体を、幅方向/厚み方向=2のアスペクト比を示すポリマー管を通じてTダイへ供給し、シート状に成形した後、ワイヤーで8kVの静電印可電圧をかけながら、表面温度が25℃に保たれたキャスティングドラム上で急冷固化し、未延伸の積層キャストシートを得た。得られた積層キャストシートを、105℃に設定したロール群で加熱した後、フィルム両面からラジエーションヒーターにより急速加熱しながら、ロール周速差を利用して長手方向に3.6倍延伸し、その後一旦冷却した。続いて、この積層一軸延伸フィルムの両面に空気中でコロナ放電処理を施し、基材フィルムの濡れ張力を55mN/mとし、そのフィルム両面の処理面に#4のメタバーで易滑層となる粒径100nmのコロイダルシリカを3質量%含有した酢酸ビニル・アクリル樹脂を含有した水系塗剤をコーティングし(以後、コーティングを行うとは、前記内容を意味する。)、透明・易滑・易接着層を形成した。さらに、この一軸積層フィルムをテンターに導き、105℃の熱風で予熱後、110℃の温度でフィルム幅方向に4.1倍延伸した。延伸したフィルムは、延伸終了直後にテンター内で210℃の熱風にて熱処理を行い、続いて同温度条件で幅方向に2%の弛緩処理を施し、その後巻き取ることで積層フィルムを得た。積層フィルムの厚みは23μmであり、TEM観察により易接着厚みは両面とも約90nmを示した。得られた積層フィルムの評価結果を表1に示す。
(実施例2~8、17)
積層フィルムの構成、樹脂、プロセス条件を表1に記載の通りとした以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの評価結果を表1に示す。なお、厚みの調整はキャストの引き取り速度の調整により行った(他の実施例、比較例でも同様)。
(実施例9)
波長帯域Πの長波長端部λmaxが1900nmとなるように、製膜中に分光スペクトルを確認しながら、キャスティングドラム速度を調整し、積層フィルム厚みを最適化した以外は実施例8と同様にして積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの評価結果を表1に示す。
(実施例10~16)
A層/B層、およびC層/B層の規則配列内の厚み比を表1、2に記載の通りとし、波長帯域Πの短波長端部λminが850nmとなるように製膜中に分光スペクトルを確認しながら、キャスティングドラム速度を調整して積層フィルム厚みを最適化した以外は、実施例8と同様にして積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの評価結果を表1、2に示す。
(実施例18)
スリット式フィードブロックを、積層フィルムの片側最表面から厚み方向の中心に向かって単調増加した後、反対側最表面に向かって単調に減少する層厚み分布を有し、最表層および中間層に厚膜層を有する601個のスリットを有するフィードブロックとした以外は、実施例8と同様にして積層フィルムを得た。なお、本実施例の積層フィルムの最表層および中間層の厚膜層の厚みはいずれも3μmを示した。得られた積層フィルムの評価結果を表2に示す。
(比較例1)
熱可塑性樹脂層A層、B層を構成する各熱可塑性樹脂として、それぞれ樹脂1、樹脂7を用いた。準備した各熱可塑性樹脂をそれぞれ、ペレット状で2台の二軸押出機に別々に投入し、両者とも270℃で溶融させて混練した。スリット数231個のフィードブロックにて合流させて、積層比A層/B層が0.86を示し、厚さ方向の規則配列がA層/B層であり、両表層が熱可塑性樹脂A層である、231層の溶融積層体とした。ここで、フィードブロック内は、スリット長さは階段状に単調増加となるように設計した。また、波長帯域Πの短波長端部λminが850nmとなるように、キャスティングドラム速度を変更してフィルム厚みを調整した。その他は、実施例8と同様の製膜条件で製膜し、積層フィルムを得た。評価結果を表3に示す。
(比較例2、3、4)
A層/B層、およびC層/B層の規則配列内の厚み比を表3に記載の通りとした以外は、実施例8と同様にして積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの評価結果を表3に示す。
(比較例5、6)
製膜中に分光スペクトルを確認しながら、キャスティングドラム速度を調整し、積層フィルム厚みを表3に記載の通り最適化した以外は実施例8と同様にして積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの評価結果を表3に示す。
Figure 2024055291000008
Figure 2024055291000009
Figure 2024055291000010
表1~3に示す各実施例及び比較例におけるA層~C層は、「(2)層界面(コントラスト差)」に記載の評価基準で判定すると、いずれも他の層と組成が異なると判断できるものである。すなわち、A層とB層を有する例は2種類の組成の異なる熱可塑性樹脂層を有し、A層~C層を有する例は3種類の組成の異なる熱可塑性樹脂層を有する。
本発明の積層フィルムは、3種類以上の異なる熱可塑性樹脂層を一定の規則配列で積層した積層構造を有することで、従来の2種類の熱可塑性樹脂を交互に積層した積層フィルムと比較して、大面積の積層フィルムでの色むらレス、および、高透明・高反射率・広帯域による高遮熱性能を両立することができる。このような積層フィルムは、上記特徴を踏まえ、建材や自動車用途の窓部材として好適に用いることが出来、視認性良好でありながら、居住環境を向上する効果を奏する。
1:A層
2:B層
3:C層
4:規則配列
5:C層とA層との界面での反射光(表面反射光)
6:A層とB層の界面での反射光
7:B層とC層の界面での反射光
8:C層とB層の界面での反射光
F:フィルム
9:中心C点
10:C点を通り、配向方向(X方向)に平行な直線とフィルム端部との交点XE1点
11:C点を通り、配向方向(X方向)に平行な直線とフィルム端部との交点XE2点
12:C点とXE1点の中間点
13:C点とXE2点の中間点
14:C点を通り、配向方向に垂直な方向(Y方向)に平行な直線とフィルム端部との交点YE1点
15:C点を通り、配向方向に垂直な方向(Y方向)に平行な直線とフィルム端部との交点YE2点
16:C点とYE1点の中間点
17:C点とYE2点の中間点
18:分光スペクトル
19:波長帯域Πの領域面積S
20:高次反射帯域
21:反射帯域Πの中心波長λ
22:反射帯域Πの短波長端λmin
23:反射帯域Πの長波長端λmax
24:波長帯域Πの最大反射率
25:波長帯域Πの最大反射率とベースライン反射率の中間値
26:ベースライン反射率
27:分光スペクトルの脈流

Claims (8)

  1. 異なる3種類の熱可塑性樹脂層からなる規則配列を連続して3つ以上有し、下記条件1~3を同時に満たすことを特徴とする、積層フィルム。
    条件1:前記規則配列における異なる3種類の熱可塑性樹脂層を最表面から順にA層、B層、C層としたときに、前記B層の合計厚みに対する前記A層の合計厚みの比A/Bが0.5以上1.1以下であり、前記B層の合計厚みに対する前記C層合計厚みの比C/Bが0.9以上1.5以下である。
    条件2:前記規則配列内の熱可塑性樹脂層の合計厚みが250nm以上600nm以下である。
    条件3:垂直入射時の透過彩度C*(0°)と、60°入射時の透過彩度C*(60°)が、|C*(60°)-C*(0°)|≦10を満たす。
  2. 前記規則配列が、A層、B層、C層、B層をこの順に含む4層からなる、請求項1に記載の積層フィルム。
  3. フィルム配向軸方向をX方向、前記X方向にフィルム面内で直交する方向をY方向、フィルムの中心をC点としたときに、前記C点をとおり前記X方向に平行な直線とフィルム端部との交点をXE1点及びXE2点、前記C点をとおり前記Y方向に平行な直線とフィルム端部との交点をYE1点及びYE2点としたときに、前記C点、前記C点と前記XE1点の中間点、前記C点と前記XE2点の中間点、前記C点と前記YE1点の中間点、前記C点と前記YE2点の中間点の計5点における、透過彩度C*がいずれも10以下である、請求項1または2に記載の積層フィルム。
  4. フィルム配向軸方向をX方向、前記X方向にフィルム面内で直交する方向をY方向、フィルムの中心をC点としたときに、前記C点をとおり前記X方向に平行な直線とフィルム端部との交点をXE1点及びXE2点、前記C点をとおり前記Y方向に平行な直線とフィルム端部との交点をYE1点及びYE2点としたときに、前記C点、前記C点と前記XE1点の中間点、前記C点と前記XE2点の中間点、前記C点と前記YE1点の中間点、前記C点と前記YE2点の中間点の計5点における、透過彩度C*の変動係数が20.0以下である、請求項1または2に記載の積層フィルム。
  5. 横軸を波長(nm)、縦軸を反射率(%)とする300nm以上2500nm以下の波長帯域における分光スペクトルにおいて、最も長波長帯域に位置する100nm以上にわたり連続して20%以上の反射率を示す波長帯域を波長帯域Π、前記波長帯域Πにおける中心波長をλ、前記波長帯域Πの分光スペクトルと反射率のベースラインとで囲まれる領域面積をS、前記熱可塑性樹脂層の合計積層数をNとしたときに、0.060≦S/(λ・N)≦0.300を満足する、請求項1または2に記載の積層フィルム。
  6. 前記異なる3種類の熱可塑性樹脂層が結晶性/半結晶性/非晶性の熱可塑性樹脂層、あるいは結晶性/非晶性/非晶性の熱可塑性樹脂層の組み合わせで構成される、請求項1または2に記載の積層フィルム。
  7. 請求項1または2に記載の積層フィルムを用いてなる、窓部材
  8. 請求項1または2に記載の積層フィルムを用いてなる、車載部材。
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