JP2017149142A - 成型用積層フィルム及びそれを用いた成型品 - Google Patents

成型用積層フィルム及びそれを用いた成型品 Download PDF

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修平 中司
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Abstract

【課題】大面積においても低彩度を実現し、斜めから視認した場合と成型した後も外観及び色調変化が小さく、層間密着性が高く加工性の優れた成型用積層フィルムの提供。【解決手段】下記(1)〜(3)の全てを満たす、成型用積層フィルム。(1)結晶性の熱可塑性樹脂Aからなる層(以下、A層という)と非晶性の樹脂を含む熱可塑性樹脂Bからなる層(以下、B層という)を有し、前記A層とB層が厚み方向に交互に合計250層以上積層され、両側の最表層の厚みと内層の厚みが特定の範囲にある。(2)特定の波長帯域の平均反射率およびが平均反射率の差が特定の範囲にある。(3)層厚み1μm未満である薄膜層において、A層とB層のそれぞれの層において隣り合う層の厚みの差が50nm以下の範囲で連続的に単調増加もしくは単調減少している群である傾斜構造を2段以上有する。【選択図】図4

Description

本発明は、成型用積層フィルム及びその用途に関する。
情報通信機器、家電製品、自動車装飾に意匠性を高めるため、印刷や塗装、蒸着などで加飾したフィルムを用いる手法が知られており、中でも金属調や高光沢調は高級感を付与することができる。金属調を付与する代表的な手法としてメッキする手法が知られているが、メッキは重金属による環境負荷が大きく、代替の手法が求められている。
成型が可能で金属調を付与する手法として、金属蒸着した成型フィルムを用いる手法が知られており、金属蒸着の課題である基材フィルムの平滑性を実現することで光の反射を抑制し、外観の優れた金属光沢調を達成する成型用積層フィルムが提案されている(特許文献1参照)。また、光を反射させる手法として屈折率が異なる2種以上の材料を光の波長レベルの層厚みで交互に積層させることで発現する光の干渉現象を利用して、特定の波長を選択的に反射する光干渉多層膜が知られている。このような中で玉虫色の金属光沢を有しながら、成型性に優れた多層積層フィルムが提案されている(特許文献2参照)。
特開2012−91367号公報 特開2007−268709号公報
特許文献1記載の成型用積層フィルムは、特定の粒子構成を有する塗布層が積層されており、面感に優れた鏡面状の加飾層を形成することに適している。しかしながら、蒸着フィルムは成型においてクラックが生じることがあることに加え、大面積では欠点により加工収率が大きく低下し、コスト高が問題となることがある。加えて蒸着は大面積では色調むらが発生しやすく、高意匠性が達成できないという課題があった。
特許文献2の多層積層フィルムは金属を含まず玉虫色の金属光沢を有し、成型性に優れ、経時安定性、耐溶剤性、寸法安定性に優れている。しかしながら、可視光の一部のみの波長を反射しており、斜めから視認した場合や成型した際に反射する波長が変化するため色調が変化し、高意匠性を実現する色調の安定性、及び成型加工時の衝撃による多層積層部でのデラミ性に関して課題があった。
そこで本発明は上記した従来技術の問題点を解決し、大面積においても低彩度を実現し、斜めから視認した場合と成型した後も外観及び色調変化が小さく、成型加工時においてもデラミが発生しにくい成型用積層フィルムを提供することにある。
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、
[I]下記(1)〜(3)の全てを満たすことを特徴とする、成型用積層フィルム。
(1)結晶性の熱可塑性樹脂Aからなる層(以下、A層という)と非晶性の樹脂を含む熱可塑性樹脂Bからなる層(以下、B層という)を有し、前記A層とB層が厚み方向に交互に合計250層以上積層され、両側の最表層の厚みが1μm以上20μm以下であり、厚みが3μm以上6μm以下である層を内層に1層以上有する積層フィルムであること。
(2)波長帯域400〜700nmにおける平均反射率が30%以上75%以下であり、波長400nm〜900nmにおいて400nmから50nmずつの間隔で区分された帯域(400〜450nm、450〜500nm、・・・850〜900nm)の平均反射率が、いずれの帯域においても隣接する帯域との平均反射率の差が10%以下であること。
(3)層厚み1μm未満である薄膜層において、A層とB層のそれぞれの層において隣り合う層の厚みの差が50nm以下の範囲で連続的に単調増加もしくは単調減少している傾斜構造を2段以上有すること。
[II]下記式でB層の各層積層むらMを求めたとき、全ての層において求めたMn−2、M、Mn+2の平均値の絶対値が10nm以下、R値が0.90以上1.00以下である請求項1に記載の成型用積層フィルム。
=X−Y
0.90≦R≦1.00
:B層の層番号nの実測厚み(nm)
:傾斜構造毎に算出した層厚みと層番号にて算出される2次の多項式近似曲線から算出されるB層の層番号nの層厚み(nm)
:傾斜構造毎に算出した層厚みと層番号にて算出される2次の多項式近似曲線相関係数の2乗値
[III]以下の方法によりB層の各層の厚みばらつき比率Nnを求めたとき、全B層のNnの平均値(ΣNn/n)が10%以下である請求項1又は2に記載の成型用積層フィルム。
[B層の各層の厚みばらつき比率Nnの求め方]
成型用積層フィルムを1m×1mの正方形状にカットする。カットした正方形状の成型用積層フィルムの4角にてB層の各層厚みを測定する。正方形の対角線上に位置する角をp、q、およびr、sとしたとき、下記式により、対角線上の位置の層厚み差を、各層の厚みばらつき比率Nnとして求める。
Nn=|[(Pn―Qn)/{(Pn+Qn)/2}|+|(Rn―Sn)/{(Rn+Sn)/2}]|/2×100
Pn=p位置のB層の層番号nの層厚み(nm)
Qn=q位置のB層の層番号nの層厚み(nm)
Rn=r位置のB層の層番号nの層厚み(nm)
Sn=s位置のB層の層番号nの層厚み(nm)
[IV]原子間力顕微鏡(AFM)により測定されるA層とB層の層界面の平均厚みが8nm以上である請求項1〜3のいずれかに記載の成型用積層フィルム。
[V]成型用積層フィルムを150℃雰囲気下で1.3倍に延伸した前後の反射光の彩度変化ΔCが7以下である請求項1〜4に記載の成型用積層フィルム。
[VI]請求項1〜5の何れかに記載の型用積層フィルムの少なくとも片面に、アクリル・ウレタン共重合樹脂と2種類以上の架橋剤からなる易接着層を有する積層フィルム。
[VII]請求項1〜5の何れかに記載の成型用積層フィルムを用いた成型体。
[VIII]請求項6に記載の積層フィルムを用いた成型体。
本発明により、大面積においても低彩度を実現し、斜めから視認した場合と成型した後も外観及び色調変化が小さく、成型加工時においてもデラミが発生しにくい成型用積層フィルムを得ることができる。
実施例1〜4、8、9比較例1、及び比較例1〜9の設計層厚みを示す図 実施例5の設計層厚みを示す図 実施例6の設計層厚みを示す図 実施例7の設計層厚みを示す図 比較例10の設計層厚みを示す図 本発明に用いられるフィードブロックの構成図の一例 スリット板およびスリットの構成図 スリットの断面構成図 本発明の積層フィルムの断面をAFMにより求められる断面高さプロファイルの一例
本発明の成型用積層フィルムは、熱可塑樹脂Aからなる層(以下、A層という)と非晶性の樹脂を含む熱可塑性樹脂B層からなる層(以下、B層という)を有し、厚み方向に交互に合計250層以上積層され、両側の最表層の厚みが1μm以上20μm以下であり、厚みが3μm以上6μm以下である層を内層に1層以上有する積層フィルムである。
本発明における積層フィルムは、厚み方向に交互に合計250層以上積層された構造である必要がある。より好ましくは、厚み方向に交互に合計400層以上積層された構造であり、さらに好ましくは、800層以上積層された構造である。250層未満の場合、可視光を均一に反射できず、彩度の大きなフィルムとなってしまうことがある。
本発明における積層フィルムは、少なくとも1μm以上20μm以下である厚みの厚膜層が両側の最表層にあることが必要である。より好ましくは、5μm以上10μm以下である。1μm未満の場合、積層不良に起因する部分的な色付きが発生し、低彩度を実現できなくなる場合や積層不良に起因するフローマークが発生することで表面凹凸が発生し、フィルム表面にスジ状の欠点が視認できる場合がある。20μmを超える場合、表層の厚膜層付近でデラミが発生しやすくなる場合や積層フィルムの全体厚みが厚くなり、成型用フィルムとしてはコシが強すぎて取り扱いが難しくなる場合がある。
本発明における積層フィルムは厚みが3μm以上6μm以下である層を内層に1層以上有することが必要である。3μm未満の場合、積層不良に起因する部分的な色付きが発生し、低彩度を達成することができなくなることがある。6μmを超える場合、内層の厚膜層付近でデラミが発生しやすくなることがある。
本発明における積層フィルムは層厚み1μm未満である薄膜層において、A層とB層のそれぞれの層において隣り合う層の厚みの差が50nm以下の範囲で連続的に単調増加もしくは単調減少している傾斜構造を2段以上有することが必要である。2段以上の傾斜構造を有していない場合、極一部の層にわずかな積層不良を生じ、設計値から外れた場合、他の部分に同程度の厚みの層が存在しないため、反射する波長に抜けが生じ、低彩度や反射率を均一にすることができなくなることがある。本発明における積層フィルムの好ましい層構成の一例として、設計層厚みを示す図を説明する。図1は、2種類の熱可塑性樹脂(以下、樹脂A、樹脂Bともいう)からなる層を厚み方向に交互に積層したフィルムにおいて、樹脂Aからなる層(以下、A層という)と樹脂B層からなる層(以下、B層という)を、各層順(以下、層番号という)に対してプロットした図である。図の整数の層番号のみに層厚みが対応しており、結晶性の熱可塑性樹脂AからなるA層は奇数番号に対応し、非晶性の樹脂を含む熱可塑性樹脂BからなるB層は偶数番号に対応する。また、厚膜層は結晶性樹脂である樹脂AからなるA層で形成されることが好ましい。図2、図3についても同様である。また、層構成が減少から増加に変化、及び増加から減少に変化する箇所は積層不良が生じ易く、彩度の上昇及び成型した際の色変化の原因となるため、3μm以上6μm以下である厚みの内層の厚膜層を上記箇所に設けることで積層不良の原因となる積層フィルムの製造工程での剪断応力を厚膜層にて吸収させることができる。内層の厚膜層が3μm未満の場合、層構成が減少から増加に変化、及び増加から減少に変化する箇所での積層不良に起因する剪断応力の吸収が十分ではないため、積層不良を抑制できず、特定波長における光の反射が設計値と異なるため、色付きが発生し易くなる。内層の厚膜層が6μmを超える場合、結晶性樹脂Aからなる厚膜層と厚膜層以外の箇所では弾性率が異なるため、加工における断裁時に厚み方向に剪断応力がかかると、厚膜層付近に応力が集中し、厚膜層付近においてデラミが発生しやすくなることがある。図4は図3の積層数が261層である構造であり、図5は図3の積層数が201層である構造であり、積層数が小さいことで可視光を均一に反射できず彩度が大きくなることに加え、反射層が少ないことで波長帯域400〜700nmにおける平均反射率を30%以上にすることができなくなることがある。
また、本発明では便宜上、図1の層厚み構成を4段の傾斜構造、図2の層厚み構成を3段の傾斜構造、図3、図4及び図5の層厚み構成を2段の傾斜構造と呼ぶこととする。ここで、本発明で言う「4段の傾斜構造」とは、4本の単調増加曲線および/または単調減少曲線で近似できる構造のことを指す。
本発明における積層フィルムは、色付きを抑制する観点から、層対厚み10nm以上220nm未満の層数が、層対厚み220nm以上350nm以下の層数より多いことが好ましい。ここで、本発明で言う「層対厚み」とは、隣接するA層およびB層のそれぞれの層厚みを足した厚みを指す。また、層対厚みは、A層のみについて一方のフィルム表面から数えたm番目のA層と、隣接するB層のみについて同表面から数えたm番目のB層の層厚みを足したものでなければならない。ここで、mは整数を表している。例えば、一方のフィルム表面から反対側の表面にA1層/B1層/A2層/B2層/A3層/B3層・・・の順番で並んでいる場合、A1層とB1層が1番目の層対であり、A2層とB2層が2番目の層対であり、A3層とB3層が3番目の層対となる。層対厚み10nm以上220nm未満の層数が、層対厚み220nm以上350nm以下の層数と同数または少ないと、波長帯域400nm〜900nmの反射帯域において低波長側ほど反射率が低下するため、赤みを帯びた外観になることがある。これは、低波長側の反射を起こす層対の密度が薄くなるために起こるものである。従って、積層フィルムを構成する層の層厚み序列としては、単調に等差数列的に層対厚みが増減するのではなく、上記条件を満たしながら等比数列的に層対厚みが増減することが好ましい。より好ましくは、層対厚み120nm以上220nm未満の層数が、層対厚み220nm以上350nm以下の層数に対して1.05倍以上2.5倍以下であることが好ましい。
本発明における結晶性の熱可塑性樹脂A、非晶性樹脂を含む熱可塑性樹脂Bの2種類の樹脂は、共重合体や2種類以上の樹脂が混合されたものであっても良い。中でも、ポリエステル樹脂を用いることが特に好ましい。ここでいう結晶性とは、示差走査熱量測定(DSC)において、融解熱量が5J/g以上であることをいう。一方、非晶性とは、同様に融解熱量が5J/g未満であることをいう。
本発明における積層フィルムは、薄膜層におけるデラミを抑制する観点から、熱可塑性樹脂Aと非晶性樹脂を含む熱可塑性樹脂BのHSP値(ハンセンの溶解度パラメーター)の差の絶対値は0.01MPa1/2以上、3.0MPa1/2以下であることが好ましく、0.01MPa1/2以上、2.0MPa1/2以下であることがより好ましい。HSP値の差の絶対値を0.01MPa1/2以上、3.0MPa1/2以下とすることにより、薄膜層において十分な厚みの層界面を形成することができ、成型時の断裁加工や樹脂射出工程において衝撃を受けたときにも薄膜層でのデラミが発生しにくい積層フィルムとすることができる。HSP値の差の絶対値が0.01MPa1/2未満であると、界面層が厚くなることで、光の反射波長に影響を及ぼし、設計通りの波長を反射することができなくなることがある。HSP値の差の絶対値が3.0MPa1/2以上であると、十分な厚みを持った界面層を形成することができず、成型時の断裁加工や樹脂射出時の衝撃時により薄膜層においてデラミを生じることがある。
ポリエステル樹脂としては、芳香族ジカルボン酸または脂肪族ジカルボン酸とジオールを主成分とする単量体からの重合により得られるポリエステルが好ましい。ここで、芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸等を挙げることができる。脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ダイマー酸、ドデカンジオン酸、シクロヘキサンジカルボン酸とそれらのエステル誘導体等を挙げることができる。中でも屈折率の高いテレフタル酸と2,6−ナフタレンジカルボン酸が好ましい。これらの酸成分は1種類のみを用いても良く、2種類以上を併用しても良く、さらには、ヒドロキシ安息香酸等のオキシ酸等を一部共重合しても良い。また、ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−ヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、イソソルベート、スピログリコール等を挙げることができる。中でも、エチレングリコールが好ましく用いられる。これらのジオール成分は1種類のみを用いても良く、2種類以上を併用しても良い。
前記ポリエステルのうち、ポリエチレンテレフタレートおよびその共重合体、ポリエチレンナフタレートおよびその共重合体、ポリブチレンテレフタレートおよびその共重合体、ポリブチレンナフタレートおよびその共重合体、さらにはポリヘキサメチレンテレフタレートおよびその共重合体、ポリヘキサメチレンナフタレートおよびその共重合体等を用いることが好ましい。
熱可塑性樹脂から選ばれた樹脂Aおよび樹脂Bの好ましい組み合わせは、一方の樹脂と同一の基本骨格を含む樹脂を用いることが好ましい。ここで、本発明で言う「基本骨格」とは、樹脂を構成する繰り返し単位のことを指し、例えば、一方の樹脂がポリエチレンテレフタレートの場合、エチレンテレフタレートが基本骨格であり、この場合の他の樹脂としては、例えば、エチレンテレフタレート単位とシクロヘキサン1,4−ジメチレンテレフタレート単位からなる重合体(共重合体)が挙げられる。また、別の例として、一方の樹脂がポリエチレンの場合、エチレンが基本骨格である。同一の基本骨格の樹脂を用いると、積層フィルムの製膜において、フローマーク等の積層不良や薄膜層におけるデラミ等の問題が生じ難くなる。
結晶性の熱可塑性樹脂Aとしては、耐押し跡性(耐打痕性)、フィルム自体の腰の強さの観点から、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートを用いることが好ましい。
非晶性の樹脂を含む熱可塑性樹脂Bの非晶性樹脂としては、屈折率の上昇を抑制する観点から、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニル酸、シクロヘキサンジカルボン酸を含有、または、スピログリコール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノキシエタノールフルオレン、ビスフェノールA成分を含有した上記樹脂Aの共重合体を、上記樹脂Aと混合または単独で用いることが好ましい。
本発明の積層フィルムは下記式1でB層の各層積層むらMを求めたとき、全ての層において求めたMn−2、M、Mn+2の平均値の絶対値が10nm以下であることが好ましい。より好ましくは7nm以下である。XはB層の層番号nにおける実測厚みであり、最表層である厚膜層はA層であることが好ましいため、B層の層番号は偶数であることが好ましい。Yは傾斜構造毎に算出した層厚みと層番号にて算出される2次の多項式近似曲線から算出されるB層の層番号nの層厚みであり、2次の多項式近似曲線は4段傾斜では4式、3段傾斜では3式、2段傾斜では2式算出される。積層フィルムを構成する層の層厚み序列として傾斜構造毎に算出した層厚みと層番号にて算出される2次の多項式近似曲線から算出される層厚みに近い厚みであることが好ましい。多項式近似曲線の求め方としては、特に限定するものではないが、本発明ではMicrosoft社 EXCEL2010のグラフ機能を用いた。この場合、2次の多項式近似曲線は多項式近似の次数を2とした際に出力される式を使用した。各層積層厚みむらMが1層外れている場合には特定波長の反射への影響は小さく、Mn−2、M、Mn+2と連続した3層以上で積層厚みむらが大きいことで特定波長の反射が光学設計と乖離することになる。そのため、Mn−2、M、Mn+2の平均値の絶対値が1箇所でも10nmを超えると特定波長で前後の波長帯域より反射のピークが強くなり、低彩度や反射の均一性を達成できなくなることがある。
=X−Yn ・・・式1
:B層の層番号nの実測厚み(nm)
:傾斜構造毎に算出した層厚みと層番号にて算出される2次の多項式近似曲線から算出されるB層の層番号nの層厚み(nm)
本発明の積層フィルムはB層の傾斜構造毎に算出した層厚みと層番号にて算出される2次の多項式近似曲線の相関係数の2乗値であるR値が0.90以上1.00以下であることが好ましい。より好ましくは0.95以上1.00以下である。2次の多項式近似曲線の相関係数の2乗値の求め方としては、特に限定するものではないが、本発明ではMicrosoft社 EXCEL2010のグラフ機能を用いた。この場合、2次の多項式近似曲線の相関係数の2乗値は多項式近似の次数を2とした際にR値として出力される値を使用した。R値が0.90未満となると、積層フィルムを構成する層の層厚み序列としては規則的に変化せず、ばらつきが大きくなり、特定波長の反射が光学設計と乖離を生じ、反射の均一性を達成できなくなることがある。
B層の各層積層むらMにおいて、全ての層において求めたMn−2、M、Mn+2の平均値の絶対値が10nm以下、R値が0.90以上1.00以下とするためには結晶性の熱可塑性樹脂Aと非晶性の樹脂を含む熱可塑性樹脂Bを積層する際に積層箇所の流量、固有粘度(IV)を制御する必要がある。結晶性の熱可塑性樹脂Aと非晶性の樹脂を含む熱可塑性樹脂Bを積層させる多層積層装置としては、マルチマニホールドダイやフィードブロックやスタティックミキサー等を用いることができるが、本発明の効果を効率よく得るためには、各層ごとの層厚みを個別に制御できるマルチマニホールドダイもしくはフィードブロックが好ましい。また、この際、積層フィルムの層対厚みを形成する結晶性の熱可塑性樹脂Aと非晶性の樹脂を含む熱可塑性樹脂Bの厚み比率である積層比の全層の平均値は0.7〜1.3であることが好ましく、0.8〜1.2であることがより好ましい。なお、厚み1μm以上の厚膜層を含む層対厚みは積層比の平均値を算出する値から除外する。樹脂Aと樹脂Bの積層比の平均値が0.7〜1.3の範囲から外れると、フィードブロックでの樹脂合流部にて樹脂Aと樹脂Bの流量差により、樹脂Aと樹脂Bが均一に積層されず、積層むらが生じることがある。さらに、積層むらを抑制するために非晶性の樹脂を含む熱可塑性樹脂Bの固有粘度(IV)を制御する必要がある。高反射率を達成するための低屈折率樹脂としてスピログリコール(SPG)とシクロヘキサンジカルボン酸(CHDC)を共重合した樹脂を使用することがあるが、固有粘度は(IV)0.55と低いため積層フィルムの製造工程にて樹脂を押し出す際に、樹脂の流れが安定せず、積層むらとなることがある。原料チップを重合する工程において、チップ状にガットを切断する際に固有粘度(IV)の低い樹脂はチップ形状が大きくなるため、積層フィルムの製造工程における樹脂Bの固有粘度を低下させないために、使用するチップのサイズは楕円状部の断面積5.0〜9.0mm、チップ高さ3.5〜4.5mmのチップを使用することが好ましい。また、積層フィルムの製造工程において樹脂Bを溶融させた際に加水分解による固有粘度(IV)の低下を抑制するため、樹脂Bの含有水分率が1000ppm以下のものを使用することが好ましい。
本発明における傾斜構造を有する積層フィルムを得るのに好適な実施形態であるフィードブロックの例を図6に示す。該フィードブロックは、2種の樹脂Aと樹脂Bを多層に積層する積層装置のことであり、詳細を以下に説明する。図6において、部材板6〜16がこの順に重ねられ、フィードブロック17を形成する。
図6のフィードブロック17は、樹脂導入板7,9 ,11 ,13,15に由来して5つの樹脂導入口を有するが、例えば樹脂Aを樹脂導入板7,11,15の導入口18から供給し、樹脂Bを樹脂導入板9,13の導入口18から供給する。すると、スリット板8は、樹脂導入板7から樹脂A、樹脂導入板9から樹脂Bの供給を受け、スリット板10は、樹脂導入板11から樹脂A、樹脂導入板9から樹脂Bの供給を受け、スリット板12は、樹脂導入板11から樹脂A、樹脂導入板13から樹脂Bの供給を受け、スリット板14は、樹脂導入板15から樹脂A、樹脂導入板13から樹脂Bの供給を受けることになる。
ここで、各スリット板に導入される樹脂の種類は、樹脂導入板7,9 ,11 ,13,15における液溜部19の底面とスリット板における各スリットの端部との位置関係により決定される。すなわち、図8に示すように、スリット板における各スリットの頂部の稜線20は、スリット板の厚み方向に対して傾斜を有する( 図7(b),(c))。但し、図7(a)に示すように、スリット板の両端部に位置した厚膜層を形成するスリット巾は、薄膜層の破壊を防ぐ観点から、他の薄膜層を形成するスリット巾の2倍以上であることが必要である。ここでの他の薄膜層を形成するスリット巾とは、少なくとも1つのスリット板内にある薄膜層を形成するスリット部の巾の平均値のことである。より好ましくは、3倍以上である。特に、スリット板8及びスリット板14のフィルムの各最表層部分に該当するスリットは、樹脂Aが流入され、かつ他の薄膜層を形成するスリット巾の10倍以上であることが必要である。この際、樹脂Aが流入するスリットを連続して配置することで、巾の長さを合計して他の薄膜層を形成するスリット巾の10倍以上とすることもできる。このように、フィードブロックから送り込まれた樹脂が合流する箇所、及びフィードブロックから口金までの経路で配管の壁面との境界にあたる箇所において厚膜層を設けることで、合流直後の層厚み分布の変化を防止させ、さらには配管付近の多層流動における樹脂速度の変動を防止することができるため、積層比を崩すことなく、幅方向で均一な色調を発現し、かつ斜めから視認した場合と成型した後も外観及び色調変化が小さい積層フィルムを得ることができる。
そして、図8に示すように、樹脂導入板7,9 ,11 ,13,15(13,15は繰り返し構造のため、図8中から省略)における液溜部19の底面の高さは、前記稜線20の上端部21と下端部22との間の高さに位置する。このことにより、前記稜線20が上がった側からは樹脂導入板7,9 ,11 ,13,15の液溜部19から樹脂が導入されるが(図8中23)、前記稜線20が下がった側からはスリットが封鎖された状態となり樹脂は導入されない。かくして各スリットごとに樹脂AまたはBが選択的に導入されるので、積層構造を有する樹脂の流れがスリット板8,10,12,14(12,14は繰り返し構造のため、図8中から省略)中に形成され、当該スリット板8,10,12,14の下方の流出口24より流出する。
スリットの形状としては、樹脂が導入される側のスリット面積と樹脂が導入されない側のスリット面積が同一ではないことが好ましい。このような構造とすると、樹脂が導入される側と樹脂が導入されない側での流量分布を低減できるため、幅方向の積層精度が向上する。さらには、( 樹脂が導入されない側のスリット面積)/( 樹脂が導入される側のスリット面積)が0.2以上0.9 以下であることが好ましい。より好ましくは0.5以下である。また、フィードブロック内の圧力損失が1MPa以上となることが好ましい。また、スリット長( 図6中Z方向スリット長さの内、長い方)を20mm以上とすることが好ましい。一方、スリットの間隙巾は、加工精度の観点から0.3mm以上が好ましく、より好ましくは0 .5mm以上3mm以下である。
このようにスリットの巾や長さを調整することにより、各層の厚みを制御し、傾斜構造を有する積層フィルムを得る事が可能である。また、それぞれのスリットにおいて、スリット間隙巾は、目標値の−3%乃至+3%の範囲であることが好ましい。より好ましくは−2%乃至+2%の範囲である。スリット間隙巾が、目標値の−3%乃至+3%の範囲であることで、局所的な層厚みの密度の増減を防止することができる。なお、スリットは、その巾や長さを微妙に調整した高い加工精度を必要とする観点から、ワイヤー放電加工にて製作されたものが好ましい。
また、各スリット板に対応したマニホールド部を有していることも好ましい。マニホールド部により、スリット板の内部での幅方向( 図6中Y方向)の流速分布が均一化するため、積層されたフィルムの幅方向の積層比を均一化することができ、大面積のフィルムでも精度良く積層することが可能となり、フィルム巾方向の反射率を精度良く制御することができる。また、前記マニホールドから各スリットへ連通する部分に、スリット間隙よりも大きな積層方向寸法を有する第2マニホールドがスリット幅方向のすべてに設けられていることが好ましい。また、前記第2マニホールドはスリット間隙の2倍以上であることが好ましい。加えて、前記第2マニホールドが、スリットに連通する樹脂導入板のマニホールドから離れるに従い下流方向に傾斜していることが好ましい。このような構造とすることで、樹脂導入板のマニホールドから遠い部分のスリットへ溶融材料が流れ易くなりスリットの第1マニホールドの近い側と遠い側の流量差が小さくなることにより、スリット幅方向の溶融材料の流量が均一となる。また、一つの液溜部から二つ以上のスリット板へ樹脂を供給することがより好ましい。このようにすると、例えば、わずかにスリット板の内部で幅方向に流量分布が生じていたとしても、次に説明する合流装置にてさらに積層されるため、積層比としてはトータルでは均一化され、高次の反射帯域のムラを低減することが可能となる。
スリット内を通過するポリマーは一般に下記式2にて表される。すなわち、液溜め部内の圧力が均一化されて圧力降下ΔPが一定であると考えると、1層の層厚みに対応する流量Qは、一つのスリットサイズを調整することにより容易に調整することができる。この装置では、各層の厚みをスリット形状(長さ、巾)で調整できるため、任意の層厚みを達成することが可能となったものである。例えば図1に示されるような構造とする場合の達成方法を説明する。この場合、スリット板は4枚構成であり、個々のスリット板のスリット長は単調増加及び単調減少しているスリット長さの分布を有しており、かつ、隣り合うスリット板間(ここでは単調増加から減少または単調減少から増加に変化する箇所)において、層の繋ぎ目となる厚膜層を形成するスリットを中心として、それぞれ、前後に配列する少なくとも10層以上のスリットの長さと巾の分布が、前後で同じようになるように設計することで達成される。
Figure 2017149142
Q:樹脂流量
t:スリットの巾
W:スリットの奥行き
μ:樹脂粘度
L:スリットの長さ
ΔP:圧力降下 各スリット板から流出した樹脂は、図4のフィードブロックの真下に配置された合流装置にて1つの積層流れとして合流される。その後、溶融状態の当該樹脂流れは、Tダイ内部のマニホールド部に充填、さらに拡幅され、次いでダイスリットからシート状に押し出される。この際、前記フィードブロックと前記口金とを接続する流路における流路方向に垂直な任意の断面のシート幅方向寸法をW、シート厚み方向寸法をT、前記口金の吐出口のシート幅方向寸法をWd、前記積層体の最表層の最小シート厚み方向寸法をLとすると、下記式3と式4の関係を共に満足することが好ましい。
Figure 2017149142
本発明における積層フィルムは下記手法及び式5によりB層の各層の厚みばらつき比率Nnを求めたとき、全B層のNnの平均値(ΣNn/n)が10%以下であることが好ましい。より好ましくは7%以下である。全B層のNnの平均値(ΣNn/n)が10%を超えると、1m×1mのフィルムの対角線上の2点の積層厚みの分布が異なるため、反射する波長が異なり、1m×1mの範囲で色調差が大きくなることがある。
[B層の各層の厚みばらつき比率Nnの求め方]
成型用積層フィルムを1m×1mの正方形状にカットする。カットした正方形状の成型用積層フィルムの4角にてB層の各層厚みを測定する。正方形の対角線上に位置する角をp、q、およびr、sとしたとき、下記式5により、対角線上の位置の層厚み差を、各層の厚みばらつき比率Nnとして求める。
Nn=|[(Pn―Qn)/{(Pn+Qn)/2}|+|(Rn―Sn)/{(Rn+Sn)/2}]|/2×100 ・・・式5
Pn=p位置のB層の層番号nの層厚み(nm)
Qn=q位置のB層の層番号nの層厚み(nm)
Rn=r位置のB層の層番号nの層厚み(nm)
Sn=s位置のB層の層番号nの層厚み(nm)
全B層のNnの平均値(ΣNn/n)を10%以下とするためには、3μm以上6μm以下である厚みの内層の厚膜層を層構成が減少から増加に変化、及び増加から減少に変化する箇所に設けることで積層不良の起因となる積層フィルムの製造工程での剪断応力を厚膜層にて吸収させることができるため、厚みばらつきを低減できる。
本発明の成型用積層フィルムは、波長帯域400〜700nmにおける平均反射率が30%以上75%以下である。より好ましくは40%以上70%以下である。平均反射率が30%未満の場合、反射率が低く金属光沢、高光沢調の外観とならないことがある。平均反射率が75%を超える場合、透過率が低くなるため、背面に印刷した印刷層の視認性が低下する場合がある。
本発明の積層フィルムは波長400nm〜900nmにおいて400nmから50nmずつの間隔で区分された帯域(400〜450nm、450〜500nm、・・・850〜900nm)の平均反射率が、いずれの帯域においても隣接する帯域との平均反射率の差が10%以下となることが必要である。より好ましくは7%以下である。隣接する帯域との平均反射率の差が10%を超えると、視認角度により積層フィルムの反射する波長帯域は変化するため、正面から視認した場合と斜めから視認した場合では反射する波長が急激に変化するため、色差を視認しやすくなり、高意匠性を実現することができなくなることがある。 波長400nm〜900nmにおいて400nmから50nmずつの間隔で区分された帯域(400〜450nm、450〜500nm、・・・850〜900nm)の平均反射率が、いずれの帯域においても隣接する帯域との平均反射率の差が10%以下となるよう反射率を均一とするには、B層の各層積層むらMにおいて、全ての層において求めたMn−2、M、Mn+2の平均値の絶対値が10nm以下、R値が0.90以上1.00以下とすることで達成できる。
本発明の積層フィルムは、フィルム表面の1m×1mの範囲における彩度が0以上7以下であることが好ましい。より好ましくは0以上5以下である。フィルム表面の1m×1mの範囲における彩度が7を超える場合、色付きが大きくなり、背面に印刷層や液晶表示層を設けた場合に積層フィルムの色付きにより印刷層や液晶表示層の色調が変化して視認され、高意匠性を実現できなくなることがある。
1m×1mの範囲における彩度を0以上7以下とするためには、積層フィルム製造工程での積層状態を均一とすることが必要である。層構成が減少から増加に変化、及び増加から減少に変化する箇所は積層不良が生じ易く、部分的な彩度の上昇が発生する原因となるため、3μm以上6μm以下である厚みの厚膜層を上記箇所に設けることが好ましい。
本発明の成型用積層フィルムは、積層フィルムのA層の面内平均屈折率と、B層の面内平均屈折率の差が0.055以上0.120以下であることが好ましい。より好ましくは、0.060以上0.115以下である。面内平均屈折率の差が0.055未満の場合、十分な反射率および金属調、高光沢調が得られなくなることがある。面内平均屈折率の差が0.120を超える場合、透過率が低くなり過ぎて背面に印刷した印刷層の視認性が低下することに加え、A層とB層の樹脂の組成が異なるため薄膜層の層界面厚みを十分な厚みにできないため、薄膜層においてデラミしやすくなることがある。
本発明の積層フィルムは結晶性の熱可塑性樹脂AからなるA層と非晶性の樹脂を含む熱可塑性樹脂BからなるB層が交互に積層されており、A層とB層は硬さが異なるため、原子間力顕微鏡(AFM)により断面を切り出したサンプルの断面を観察すると、A層とB層の硬さに差がある場合は、サンプルの断面は平坦では無く、硬さに起因した凹凸(AFM高低差)を観察することができる(なお、本発明においてAMF高さとは、フィルムの断面を、フィルム断面が水平方向と平行かつ上向きになるように配置したとき、AFM測定により求められる断面の高さを表すものである)。積層フィルムを構成する層の硬さが硬いほどAMF高さは低くなり、層の硬さが柔らかいほどAFM高さは高くなる傾向にある。そのため、A層が、B層に比べて相対的に硬い結晶性の熱可塑性樹脂Aからなる場合、AMF高さは低くなる。上記の測定は、断面のサンプリングを凍結切断した断面サンプルにて評価することでA層とB層のAFM観察による高低差を評価が可能となる。そして、A層とB層の層界面の平均厚みはAFMにより観察される高さが変化する箇所から下記手法により算出することができる。
[A層とB層の層界面の平均厚みの求め方]
本発明の積層フィルムからサンプルを切り出し、サンプル片の厚み方向断面を観察面とするようにフィルムの断面方向と垂直に凍結切片作製用ウルトラミクロトーム(ライカマイクロシステムズ社製Ultracut FCS)を用いて−100℃で切削し、断面サンプルを採取した。原子間力顕微鏡(AFM)を用いて、観察モードはタッピングモード、探針はシリコンカンチレバー、走査範囲は2.0×2.0μmにて断面観察を行い、AFM観察像を取得した。層厚みの観察が比較的容易である、薄膜層において最も厚い層からA層及びB層各5層分が入り、A層とB層の層界面を10層計測できる範囲にて観察を行い、断面プロファイルモードで図9に示すようなAFM高さプロファイルを取得した。図9において横方向が積層フィルムの厚み方向位置を示し、縦方向がAFM高さを示す。相対的に固いA層の高さをX(nm)25、相対的に軟らかいB層の高さをY(nm)26とする。A層及びB層の高さX、Yは厚み方向位置5nm刻みの位置にて測定して求めたAFM高さについて、各測定点を対象に10点移動平均処理を行い、最小値をA層のAFM高さX25、最大値をB層のAFM高さY26とした。A層とB層の層界面は下記式6及び7で求めるA層側層界面境界AFM高さ27及びB層側層界面境界AFM高さ28に挟まれた厚み方向位置においてAFM高さが単調に増加または減少している位置区間をA層とB層の層界面厚み29とし、A層とB層の層界面厚み29の10箇所における平均値をA層とB層の層界面の平均厚みとした。
A層側層界面境界AFM高さ=X+|Y−X|×0.2・・・式6
B層側層界面境界AFM高さ=Y−|Y−X|×0.2・・・式7
本発明の積層フィルムは原子間力顕微鏡(AFM)により測定されるA層とB層の層界面の平均厚みが8nm以上であることが好ましく、12nm以上であることがより好ましい。波長帯域400〜700nmにおける平均反射率が30%以上となる樹脂A及び樹脂Bの組合せにおいてA層とB層の層界面の平均厚みが8nm未満となる場合、薄膜層の層界面厚みが十分ではなく、成型時の断裁加工や樹脂射出時の衝撃時により薄膜層においてデラミを生じることがある。
原子間力顕微鏡(AFM)により測定されるA層とB層の層界面の平均厚みを8nm以上とするためには、樹脂Aと樹脂BのHSP値(ハンセンの溶解度パラメーター)の差の絶対値を0.01MPa1/2以上、3.0MPa1/2以下となる組合せとし、積層フィルムの製造工程で溶融押出時に樹脂A及び樹脂Bの樹脂温度を高くし、樹脂Aと樹脂Bの合流後の界面の混ざり合いを促進する必要がある。なお、A層とB層の面内平均屈折率が0.055未満の場合、A層とB層の原子間力顕微鏡による高さの差は小さいため、界面層厚みは薄くなるが、樹脂Aと樹脂Bの組成が近くなるため、層界面における密着性が高くなり、薄膜層におけるデラミは発生しにくくなることがある。
本発明の積層フィルムは150℃雰囲気下で1.3倍に延伸した前後の反射光の彩度変化ΔCが7以下であることが好ましい。より好ましくは5以下である。150℃雰囲気下で1.3倍に延伸した前後の反射光の彩度変化ΔCが7を超える場合、成型により延伸された箇所と未延伸の箇所とで色調が変化し、同一部材で色調が異なって視認されるため、高意匠性を実現できないことがある。
150℃雰囲気下で1.3倍に延伸した前後の反射光の彩度変化ΔCを7以下とするには、積層むらを小さくするため、積層フィルムの製造工程におけるチップの固有粘度(IV)を低下させないよう使用するチップの固有粘度(IV)及び含有水分率を制御することが好ましい。
本発明の成型用積層フィルムは、ヘイズが3.0以下であることが好ましい。さらに好ましくは、2.0以下であり、1.5以下であることが特に好ましい。ヘイズが3.0を超える場合、背面に印刷層や液晶表示層を設けた場合に、印刷層や液晶表示層の視認性が低下することがある。
本発明の成型用積層フィルムは、前記積層フィルムの少なくとも片面に、アクリル・ウレタン共重合樹脂と2種類以上の架橋剤からなる易接着層が設けられていることが好ましい。積層フィルムに印刷層またはハードコート層を施す際、処理面に易接着層が設けられていない場合、界面における密着性が低下することがある。また、印刷層とハードコート層を積層フィルムの両面に施す際は、両面に易接着層が設けられていることが好ましい。
本発明に好ましく用いられる易接着層を構成するアクリル・ウレタン共重合樹脂としては、アクリル系モノマーは、例えばアルキルアクリレート(アルキル基としてはメチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、2−エチルヘキシル、シクロヘキシル等)、2−ヒドロキシルエチルアクリレート、2−ヒドロキシルエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートなどのヒドロキシ基含有モノマー、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレートなどのアミノ基含有モノマー、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどのグリシジル基含有モノマー、アクリル酸、メタクリル酸およびそれらの塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等)のカルボキシル基またはその塩を含有するモノマー等を用いることができる。また、本発明におけるウレタン成分としては、ポリヒドロキシ化合物とポリイソシアネート化合物を、乳化重合、懸濁重合等の公知のウレタン樹脂の重合方法によって反応させることで得られる樹脂を用いることができる。ウレタン成分を構成するポリヒドロキシ化合物としては、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレン・ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、テトラメチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリカプロラクトン、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリヘキサメチレンセバケート、ポリテトラメチレンアジペート、ポリテトラメチレンセバケート、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ポリカーボネートジオール、グリセリン等を用いることができる。
本発明における易接着層を構成する架橋剤としては、架橋性官能基を共重合することが好ましく、例えば、メラミン系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、メチロール化或いはアルキロール化した尿素系架橋剤、アクリルアミド系架橋剤、ポリアミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、各種シランカップリング剤、各種チタネート系カップリング剤等を用いることができる。また、ハードコート層やシリコーン系接着層との耐湿熱接着性の観点から、2種類以上の架橋剤を用いることが好ましく、具体的には、架橋剤の少なくとも1種類がオキサゾリン系架橋剤またはカルボジイミド系架橋剤を用いることが好ましい。
さらに、前記易接着層の成分だけであると帯電し易いため、その結果、静電気により成型用積層フィルムを印刷やインサート成型にて加工する際に異物が混入し、外観欠点となる問題を引き起こすことがある。そのため易接着層の成分には、帯電防止の観点から、導電性高分子を含んでいることが好ましい。導電性高分子としては、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリチオフェン・ビニレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリ−p−フェニレン、ポリヘテロサイクル・ビニレン、特に好ましくは、(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)である。
本発明の成型用積層フィルムは、表面にハードコート層を設けることで、積層フィルムが傷つくことを抑制でき、成型品の外観を向上させることができる。ただし、コスト面からハードコート層を必要としない用途に対しては、必ずしもハードコート層を設けなくてもよい。
ハードコート層としては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、有機シリケート樹脂、シリコーン系樹脂等を用いることができる。その中で、硬度、耐久性および生産性の観点から、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂が好ましく、さらに好ましくは、アクリル系樹脂であり、活性線硬化型のアクリル系樹脂であることが最も好ましい。
ハードコート層の組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、各種添加剤を必要に応じて配合することができる。例えば、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤などの安定剤、界面活性剤、レベリング剤および帯電防止剤等を用いることができる。本発明におけるハードコート層の厚みは、用途に応じて決められるが、通常は0.1μm以上30μm以下が好ましく、さらに好ましくは、1μm以上15μm以下である。ハードコート層の厚みが0.1μm未満の場合、ハードコート層の組成物が十分硬化していても、膜厚が薄すぎるために表面硬度が低くなり、傷が付き易くなることがある。ハードコート層の厚みが30μmを超える場合、折り曲げなどの応力により硬化膜にクラックが入り易くなることがある。
本発明に好ましく用いられる印刷層としては、バインダー樹脂、顔料または染料等で構成することができる。バインダー樹脂としては、ポリウレタン系樹脂、ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、セルロースエステル系樹脂、アルキド系樹脂、熱可塑性エラストマー系樹脂等が好ましく、特に柔軟な被膜を作成することができる樹脂が好ましい。また、バインダー樹脂中には、適切な色の顔料または染料を着色剤として含有する着色インキを配合することが好ましい。塗布方法としては、グラビア印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷などが好ましく、より好ましくはスクリーン印刷である。特に多色刷りや階調色彩、薄膜印刷を必要とする場合には、オフセット印刷法やグラビア印刷法が好ましい。また、単色の場合は、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法などのコート法を採用することもできる。また、本発明における印刷層の厚みは、透過率確保のため5μm以下で塗布することが好ましく、印刷層を形成するインキとしては2液硬化型インキであることが好ましい。
本発明の成型用積層フィルムはデラミが発生しにくいことから、真空成型、真空圧空成型、プラグアシスト真空圧空成型、インモールド成型、インサート成型、冷間成型、プレス成型、絞り成型などの各種成型法が適用できるため、低コストで成型体を得ることが可能である。このような成型体は、携帯電話、電話、パソコン、オーディオ機器、家電機器、無線通信機器、車載部品、建築材料、ゲーム機、アミューズメント機器、包装容器などに好ましく用いることができる。特に、本発明の成型体は、携帯電話、電話、パソコン、オーディオ機器、家電機器、無線通信機器、車載部品、ゲーム機などの無線で情報通信を行う機能を有する機器(無線情報通信機器)の装飾部品として用いることが好ましい。本発明の成型体は、金属調の外観を有しながら、電磁波透過性に優れるので、従来の金属調装飾材料のように電磁波障害を引き起こさないものである。このため、本発明の成型体を情報通信機器の装飾部品として用いると、機器の小型化や薄型化が可能となったり、情報通信機器内部の回路設計の自由度が増すものである。
次に、本発明の成型用積層フィルムの好ましい製造方法の一例を以下に説明するが、これによって制限されるものではない。
まず、2種類の樹脂A及び樹脂Bをペレットの形態で用意する。該ペレットは、必要に応じて熱風中あるいは真空下で乾燥された後、各々2台の押出機にそれぞれ供給される。各押出機内において、融点以上に加熱溶融された樹脂は、ギヤポンプ等で樹脂の押出量を均一化してフィルター等を介して異物や変性した樹脂を取り除く。2台の押出機を用いて異なる流路から送り出された樹脂Aと樹脂Bは、それぞれ多層積層装置に送り込まれる。多層積層装置としては、多数の微細スリットを有する部材を、少なくとも別個に2個以上含むフィードブロックを用いることが望ましい。このようなフィードブロックを用いると、装置が極端に大型化することがないため、熱劣化による異物が少なく、積層数が極端に多い場合でも、高精度に積層が可能となる。また、幅方向の積層精度も従来技術に比較して格段に向上する。また、任意の層厚み構成を形成することも可能となる。この時、樹脂A及び樹脂Bの樹脂温度を高くすることで、樹脂Aと樹脂Bの混ざりあいが強まり、層界面が厚くなり、デラミしにくい積層フィルムとなる。
2段以上の傾斜構造をとる場合、薄い層から厚い層への変化もしくは厚い層から薄い層への層厚みの変化が、非常に急になる。本発明では多数の微細スリットを有する部材を少なくとも別個に2個以上含むフィードブロックを用いる。ただし、この別個のフィードブロックから送り込まれた樹脂が合流する箇所では合流直後に層厚み分布が変化し、幅方向の色調をばらつかせる大きな一因となっていた。そのため、積層フィルムにて厚み1μm以下の層に該当する箇所において、樹脂Aと樹脂Bの流量が大きく変化しないよう積層比が0.7〜1.3となるように流量を調整することが必要である。さらにはフィードブロックから口金までの経路で配管の壁面の影響により配管付近の樹脂速度が低下するため、配管壁面付近と配管中心部の流速差により更にフィルム幅方向の色調均一性が悪化していた。そのため、フィルム最表層部および別個のフィードブロックの樹脂合流部の一定の距離を同一のポリマーで置換することで積層比を崩すことなく、幅方向で均一な色調を発現する積層フィルムを得ることができる。このとき、積層フィルムの両側の最表層の厚膜層を樹脂Aとする場合、樹脂Aからなる層が表層厚膜層(両側の最表層)に該当する。また、内層の厚膜層とする樹脂は、耐押跡性向上のために高結晶性樹脂とすることが好ましい。内層の厚膜層は3μm未満であると合流部の層厚み分布変化の抑制は十分ではなく、3μm以上であることが必要である。厚膜層の厚み調整は該当する層の厚みに相当する各流量をスリットの間隙で調整することが好ましく、この際、各スリット間隙の間隙精度は±10μm以下であることが好ましい。このような特殊なフィードブロックを用いることにより、高精度でかつ2段以上の傾斜構造を形成する積層フィルムを得ることができる。
次に、本発明の成型用積層フィルムの特徴である波長帯域400nm〜700nmにおける平均反射率を30%以上75%以下とするためには、各層の層厚みを、下記、式8に基づいて設計する必要がある。本発明における積層フィルムは、光を反射/透過することを可能とするが、その反射率については樹脂Aからなる層と樹脂Bからなる層の屈折率差と層数によって制御することができる。
2×(na・da+nb・db)=λ ・・・式8
na:結晶性の熱可塑性樹脂Aからなる層の面内平均屈折率
nb:非晶性の熱可塑性樹脂Bからなる層の面内平均屈折率
da:樹脂Aからなる層の層厚み(nm)
db:樹脂Bからなる層の層厚み(nm)
λ:主反射波長(1次反射波長)
このようにして所望の層構成に形成した溶融積層体は、次にダイにて目的の形状に成型された後、吐出される。そして、ダイから吐出された多層に積層されたシートは、キャスティングドラム等の回転冷却体上に押し出され、冷却固化され、キャスティングフィルム(無延伸フィルム)が得られる。この際、ワイヤー状、テープ状、針金状あるいはナイフ状等の電極を用いて、静電気力によりキャスティングドラム等の回転冷却体に密着させ急冷固化させることが好ましい。また、スリット状、スポット状、面状の装置からエアーを吹き出してキャスティングドラム等の回転冷却体に密着させ急冷固化させたり、ニップロールにて回転冷却体に密着させて急冷固化させる方法も好ましい。
このようにして得られたキャスティングフィルム(無延伸フィルム)は、必要に応じて二軸延伸することが好ましい。二軸延伸とは、長手方向及び幅方向に延伸することをいう。延伸は、逐次に二軸方向に延伸しても良いし、同時に二方向に延伸してもよい。また、さらに長手方向及び/または幅方向に再延伸しても良い。特に本発明においては面内の配向差を抑制できる点や、表面傷を抑制する観点から、同時二軸延伸を用いることが好ましい。
まず、逐次二軸延伸の場合について説明する。ここで長手方向の延伸とは、フィルムに長手方向に分子配向を与えるための延伸を言い、通常は、ロールの周速差により施され、この延伸は1段階で行っても良く、また、複数本のロール対を用いて多段階で行っても良い。延伸の倍率としては樹脂の種類により異なるが、通常、2〜15倍が好ましく、成型用積層フィルムを構成する樹脂のいずれかにポリエチレンテレフタレートを用いた場合には、2〜7倍が特に好ましく用いられる。また、延伸温度としては積層フィルムを構成する樹脂のガラス転移温度〜ガラス転移温度+100℃が好ましい。
本発明の成型用積層フィルムに易接着層を設ける場合には、塗剤をコーティングして積層する方法が好ましい。塗剤をコーティングする方法としては、本発明における積層フィルムの製造工程とは別工程でコーティングを行う方法、いわゆるオフラインコーティング方法と、本発明における積層フィルムの製造工程中にコーティングを行うことで易接着層を一度に積層させる、いわゆるインラインコーティング方法がある。コストの面や塗布厚みの均一化の面からインラインコーティング方法を採用することが好ましく、その場合に用いられる塗液の溶媒は、環境汚染や防爆性の観点から水系であることが好ましく、水を用いることが最も好ましい態様である。
インラインコーティングで易接着層を積層する場合には、一軸延伸された積層フィルムに連続的に易接着層を構成する塗剤を塗布する。溶媒として水を用いた塗剤(水系塗剤)の塗布方法としては、例えば、リバースコート法、スプレーコート法、バーコート法、グラビアコート法、ロッドコート法およびダイコート法などを用いることができる。
水系塗剤を塗布する前に、積層フィルムの表面にコロナ放電処理等を施すことが好ましい。これは、積層フィルムと塗剤との接着性が向上し、塗布性も良好となるためである。
易接着層には、発明の効果を損なわない範囲であれば、架橋剤、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐侯安定剤、紫外線吸収剤、有機の易滑材、顔料、染料、有機または無機の粒子、充填材、界面活性剤等を配合しても良い。
続いて行う幅方向の延伸とは、フィルムの幅方向に分子配向を与えるための延伸を言い、通常はテンターを用いて、フィルムの両端をクリップで把持しながら搬送して、フィルムに熱を加えて予熱した後、幅方向に延伸する。テンター直前に塗布された水系塗剤はこの予熱時に乾燥される。延伸の倍率としては樹脂の種類により異なるが、通常、2〜15倍が好ましく、本発明における積層フィルムを構成する樹脂のいずれかにポリエチレンテレフタレートを用いた場合には、2〜7倍が特に好ましい。また、延伸温度としては本発明における積層フィルムを構成する樹脂のガラス転移温度〜ガラス転移温度+120℃が好ましい。二軸延伸された積層フィルムは、平面性、寸法安定性を付与するために、テンター内で延伸温度以上融点以下の熱処理を行うことが好ましい。このようにして熱処理された後、均一に徐冷後、室温まで冷却してワインダーにて巻き取られる。また、必要に応じて、熱処理から徐冷の際に弛緩処理などを併用してもよい。
次いで、同時二軸延伸の場合について説明する。同時二軸延伸の場合には、得られたキャストフィルムに、連続的に易接着層を構成する塗剤を塗布する。溶媒として水を用いた塗剤(水系塗剤)の塗布方法としては、例えば、リバースコート法、スプレーコート法、バーコート法、グラビアコート法、ロッドコート法およびダイコート法などを用いることができる。
水系塗材を塗布する前に、本発明における積層フィルムの表面にコロナ放電処理などを施すことが好ましい。これは、積層フィルムと塗剤との接着性が向上し、塗布性も良好となるためである。次に、塗剤を塗布したキャストフィルム(無延伸フィルム)を同時二軸テンターへ導き、フィルムの両端をクリップで把持しながら搬送して、長手方向と幅方向に同時及び/または段階的に延伸する。同時二軸延伸機としては、パンタグラフ方式、スクリュー方式、駆動モーター方式、リニアモーター方式があるが、任意に延伸倍率を変更可能で、かつ任意の場所で弛緩処理を行うことができる駆動モーター方式もしくはリニアモーター方式が好ましい。延伸の倍率としては樹脂の種類により異なるが、通常、面積倍率として6〜50倍が好ましく、面積倍率として8〜30倍が特に好ましい。特に同時二軸延伸の場合には、面内の配向差を抑制するために、長手方向と幅方向の延伸倍率を同一とするとともに、延伸速度もほぼ等しくなるようにすることが好ましい。また、延伸温度としては積層フィルムを構成する樹脂のガラス転移温度〜ガラス転移温度+120℃が好ましい。二軸延伸されたフィルムは、平面性、寸法安定性を付与するために、引き続きテンター内で延伸温度以上融点以下の熱処理を行うことが好ましい。この熱処理の際に、幅方向での主配向軸の分布を抑制するため、熱処理ゾーンに入る直前及び/または直後に瞬時に長手方向に弛緩処理することが好ましい。このようにして熱処理された後、均一に徐冷後、室温まで冷却してワインダーにて巻き取られる。また、必要に応じて、熱処理から徐冷の際に長手方向及び/または幅方向に弛緩処理を行っても良い。熱処理ゾーンに入る直前及び/または直後に瞬時に長手方向に弛緩処理することが好ましい。
以下、実施例に沿って本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。なお、諸特性は以下の方法により測定した。
(1)フィルムの層構成及び層厚み
ミクロトームを用いて断面を切り出したサンプルについて、透過型電子顕微鏡((株)日立製作所製、H−7100FA型)を用い、加速電圧75kVでフィルムの断面を40,000倍に拡大して観察し、断面部分を撮影して層構成及び層厚みを測定した。また、各層の合計厚みを積層フィルム全体厚みとした。なお、コントラストを高く得るために、RuOを使用してサンプルを染色した。
フィルムの層構成及び層厚みの具体的な求め方を説明する。約40,000倍のTEM写真を、CanonScanD123U(キャノン(株)製)を用いて画像サイズ729dpiで取り込んだ。画像をJPEG形式で保存し、次いで、画像処理ソフト(販売元プラネトロン(株)、Imagc−Pro Plus ver.4)を用いて、該JPEGファイルを開き、画像解析を行った。画像解析処理は、垂直シックプロファイルモードで、厚み方向と幅方向の2本のライン間で挟まれた領域における平均の明るさとの関係を、数値データとして読み取った。表計算ソフト(Excel2010)を用いて、位置(nm)と明るさのデータに対してサンプリングステップ1(間引き1)でデータ採取後、5点移動平均の数値処理を施した。さらに、得られた周期的に明るさが変化するデータを微分し、VBA(ビジュアル・ベーシック・フォア アプリケーションズ)プログラムにより、微分曲線の極大値と極小値を読み込み、隣り合うこれらの間隔を1層の層厚みとして算出した。この操作を写真毎に行い、全ての層の層厚みを算出した。得られた層厚みのうち、薄膜層は1μm未満の厚みの層とした。A層とB層のそれぞれの層において隣り合う層の厚みの差が50nm以下の範囲で連続的に単調増加もしくは単調減少配列している群を傾斜構造と定義した。傾斜構造は層番号とA層及びB層それぞれの層厚みの関係を最小二乗近似した際、そのRの二乗が0.90以上となる正もしくは負の傾きを持つものとし、図1の構成を4段の傾斜構造、図2の構成を3段の傾斜構造、図3、図4及び図5の構成を2段の傾斜構造と呼ぶこととした。
(2)厚膜層部を除いた積層比の平均値
(1)フィルムの層構成及び層厚みにて算出される層厚みにおいて、隣接するA層とB層において、A層の厚みをB層の厚みで割ったものと積層比とした。ここで、隣接するA層とB層とは、A層のみについて一方のフィルム表面から数えたm番目のA層と、B層のみについて同表面から数えたm番目のB層を指す。層厚みが1μm未満の層に関して積層比を算出し、全積層比の平均値を厚膜部を除いた積層比の平均値とした。
(3)平均反射率
1m×1mのサイズの成型用積層フィルムの中央部から5cm四方のサンプルを切り出した。次いで、分光光度計((株)日立製作所製、U−4100 Spectrophotometer)を用いて、入射角度Φ=10度における相対反射率を測定した。付属の積分球の内壁は、硫酸バリウムであり、標準板は、酸化アルミニウムである。測定波長は、250nm〜1200nm、スリットは2nm(可視)/自動制御(赤外)とし、ゲイン2と設定し、走査速度600nm/分で測定した。サンプルの裏面を油性インキで黒塗りした。次いで、波長帯域400〜700nmにおける平均反射率を算出した。平均反射率の算出方法は、波長1nm毎の絶対反射率のデータを用いてシンプソン法公式に基づき、反射曲線と波長帯域で囲まれた面積を計算し、波長帯域の幅である300nmで除することにより、平均反射率を求めた。なお、シンプソン法についての詳細な説明は、山内二郎他著書の「電子計算機のための数値計算法I」(培風館)(昭和40年)に記載されている。
(4)50nm毎に区分した帯域と隣接する帯域の平均反射率の差の最大値
1m×1mのサイズの成型用積層フィルムの中央部から5cm四方のサンプルを切り出した。(3)平均反射率にて算出された波長帯域400〜900nmにおける相対反射率を400nmから50nmずつの間隔で区分(400〜450nm、450〜500nm、・・・850〜900nm)し、各区分された帯域において平均反射率を算出した。波長帯域450〜500nmにおいては、波長帯域400〜450nmの平均反射率の差の絶対値及び波長帯域500〜550nmの平均反射率の差の絶対値を算出、波長帯域500〜550nm、550〜600nm、・・・波長帯域800〜850nmにおいても同様に隣接する前後の区分された波長帯域との平均反射率の差の絶対値を算出した。波長帯域400〜450nmにおいては波長帯域450〜500nmとの平均反射率の差の絶対値、波長帯域850〜900nmにおいては波長帯域800〜850nmとの平均反射率の差の絶対値のみを算出した。算出した各平均反射率の差の絶対値の最も数値の大きい値を50nm毎に区分した帯域と隣接する帯域の平均反射率の差の最大値とした。
(5)積層むら|(Mn−2+M+Mn+2)/3|の最大値
1m×1mのサイズの成型用積層フィルムの中央部から5cm四方のサンプルを切り出した。(1)フィルムの層構成及び層厚みにて算出されたB層の実測厚みとB層の層番号から、表計算ソフト(Excel2010)を用いて傾斜毎の近似曲線の数式を多項式近似曲線の次数2で算出した。B層の層番号nにおけるB層の実測厚みをX、傾斜積層毎に算出した2次の多項式近似曲線から算出される層厚みをYとした場合に、B層の層番号nにおける積層むらMを下記式1にて算出した。なお、A層とB層は交互に積層されており、最表層は結晶性の熱可塑性樹脂であるA層が好ましいため、B層の層番号は偶数となり、B層の層番号nにおける前後の層はn−2、n+2層となる。B層全ての層厚みにおいて積層むらMを算出し、全ての層において前後1層ずつの層と平均化した値を算出した。算出した値の最大値を積層むら|(Mn−2+M+Mn+2)/3|の最大値とした。
=X−Y・・・式1
:B層の層番号nの実測厚み(nm)
:傾斜構造毎に算出した層厚みと層番号にて算出される2次の多項式近似曲線から算出されるB層の層番号nの層厚み(nm)
(6)相関係数の2乗値Rの最小値
(5)積層むら|(Mn−2+M+Mn+2)/3|の最大値にて算出した傾斜毎の2次の多項式近似式算出した際に表計算ソフト(Excel2010)を用いて相関係数の2乗値Rを算出し、最もRの小さい傾斜の値を相関係数の2乗値Rの最小値とした。
(7)各層の厚みばらつき比率Nnの平均値ΣNn/n
1m×1mのサイズの正方形状の成型用積層フィルムの4角を(1)フィルムの層構成及び層厚みにてB層の各厚みを算出した。正方形の対角線上に位置する角をp、q、及びr、sとしたとき、下記式5により、対角線上の位置の層厚み差を、各層の厚みばらつき比率Nnとして算出した。各層の厚みばらつき比率Nnの全B層の平均値を算出、各層の厚みばらつき比率Nnの平均値ΣNn/nとした。
Nn=|[(Pn―Qn)/{(Pn+Qn)/2}|+|(Rn―Sn)/{(Rn+Sn)/2}]|/2|×100・・・式5
Pn=p位置のB層の層番号nの層厚み(nm)
Qn=q位置のB層の層番号nの層厚み(nm)
Rn=r位置のB層の層番号nの層厚み(nm)
Sn=s位置のB層の層番号nの層厚み(nm)
(8)フィルム表面の1m×1mの範囲における彩度
1m×1mのサイズの成型用積層フィルムの縦横共に10cm間隔で計121箇所から5cm四方のサンプルを切り出した。分光測色計(コニカミノルタセンシング(株)製、CM−3600d)を用いて、各サンプルにおけるa、bを測定し、n数5の平均値を算出した。
なお、測定の手段としては、分光測色計付属のゼロ構成ボックスで反射率のゼロ構成を行い、次いで、付属の白色校正板を用いて100%校正を行った後、以下の条件でフィルムのaを測定した。
モード:反射、SCI/SCE同時校正
測定径:8mm
サンプル:非測定面側に黒インキを塗布
光源:D65
次に、a、bより彩度Cを求めた。彩度Cの定義は以下の通りである。1m×1mの範囲における最大彩度Cは1m×1mの範囲から縦横共に10cm間隔で計121箇所から採取した各サンプルにおいて彩度Cが最大となる値とした。
・彩度C=((a+(b1/2
彩度Cの計算に用いたa、bはSCIの値とした。
(9)A層とB層の層界面の平均厚み
本発明の積層フィルムからサンプルを切り出し、サンプル片の厚み方向断面を観察面とするようにフィルムの断面方向から垂直に凍結切片作製用ウルトラミクロトーム(ライカマイクロシステムズ社製Ultracut FCS)を用いて−100℃で切削し、断面サンプルを採取した。原子間力顕微鏡(AFM)を用いて、観察モードはタッピングモード、探針はシリコンカンチレバー、走査範囲は2.0×2.0μmにて断面観察を行い、AFM観察像を取得した。層厚みの観察が比較的容易である、薄膜層において最も厚い層からA層及びB層各5層分が入り、A層とB層の層界面を10層計測できる範囲にて観察を行い、断面プロファイルモードで図9に示すようなAFM高さプロファイルを取得した。図9において横方向が積層フィルムの厚み方向位置を示し、縦方向がAFM高さを示す。相対的に固いA層の高さをX(nm)25、相対的に軟らかいB層の高さをY(nm)26とする。A層及びB層の高さX、Yは厚み方向位置5nm刻みの位置にて測定して求めたAFM高さについて、各測定点を対象に10点移動平均処理を行い、最小値をA層のAFM高さX25、最大値をB層のAFM高さY26とした。A層とB層の層界面は下記式6及び7で求めるA層側層界面境界AFM高さ27及びB層側層界面境界AFM高さ28に挟まれた厚み方向位置においてAFM高さが単調に増加または減少している位置区間をA層とB層の層界面厚み29とし、A層とB層の層界面厚み29の10箇所における平均値をA層とB層の層界面の平均厚みとした。
A層側層界面境界AFM高さ=X+|Y−X|×0.2・・・式6
B層側層界面境界AFM高さ=Y−|Y−X|×0.2・・・式7
(10)1.3倍延伸前後の彩度変化ΔC
フィルムを長手方向および幅方向に長さ150mm×幅15mmの矩形に切り出しサンプルとした。長さ75mm位置に該当する中心部の箇所を(8)フィルム表面の1m×1mの範囲における彩度の手法にてa、bを算出、測定位置をマーキングした。引張試験機(オリエンテック製テンシロンUCT−100)を用いて、初期引張チャック間距離50mmとし、引張速度を300mm/分としてフィルムの長手方向と幅方向にそれぞれ引張試験を行った。測定は予め150℃に設定した恒温層中にフィルムサンプルをセットし、90秒間の予熱の後で引張試験を行い、サンプルが30%伸長したとき延伸を停止させた。延伸させたサンプルのマーキング部に該当する位置のa、bを算出、下記式9により1.3倍延伸前後の彩度変化ΔCを算出した。
ΔC=((a1―a2+(b1―b21/2・・・式9
a1=30%延伸前のa
a2=30%延伸後の延伸前の測定箇所と同一箇所のa
b1=30%延伸前のb
b2=30%延伸後の延伸前の測定箇所と同一箇所のb
(11)ヘイズ
23℃、相対湿度65%の条件で、成型用積層フィルムを2時間放置した後、全自動直読ヘイズコンピューター(スガ試験機(株)製、HGM−2DP)を用いて測定し、n数3の平均値を算出した。
(12)面内平均屈折率
積層フィルムのA層、B層のそれぞれについて、厚さ0.5mmのフィルムに切り取り、幅5mm、長さ20mmの大きさの試験片を切り出し、アッベ屈折率計(アタゴ製、DR−M2)によって、23℃、589nm波長における屈折率を測定し、n数5の平均値を算出した。
(13)延伸前後の色調変化
(10)1.3倍延伸前後の彩度変化ΔCの測定結果より、以下の基準で評価した。
○:ΔC=7以下
×:ΔC=7を超える
(14)12°〜60°視認時の色調変化
1m×1mのサイズの成型用積層フィルムの中央部から5cm四方のサンプルを切り出した。次いで、分光光度計((株)日立製作所製、U−4100 Spectrophotometer)を用いて、付属の12°正反射付属装置P/N134−0104を取り付け、入射角度φ=12度における波長250〜1200nmのa、bを算出した。測定モードは色彩測定、スリットは2nm(可視)/自動制御(赤外)、ゲインは2と設定し、走査速度を600nm/分で測定、光源をD65、視野角度Φ=12度に設定した。付属の積分球の内壁は、硫酸バリウムであり、標準板は、酸化アルミニウムである。サンプルの裏面を油性インキで黒塗りした。入射角60°におけるa、bは、日立製作所製 分光光度計(U−4100 Spectrophotomater)に付属の角度可変絶対反射装置を取り付け、測定を行なった。下記式10により12°〜60°視認時の色調変化を算出した。
ΔC’=((a3―a4+(b3―b41/2・・・式10
ΔC’=12°〜60°視認時の色調変化
a3=入射角12°測定時のa
a4=入射角60°測定時のa
b3=入射角12°測定時のb
b4=入射角60°測定時のb
ΔC’の算出結果より、以下の基準で評価した。
○:ΔC’=7以下
×:ΔC’=7を超える
(15)色目視認性
(8)フィルム表面の1m×1mの範囲における彩度の測定結果より、以下の基準で評価した。
○:C=7未満
×:C=7以上
(16)薄膜層デラミ性
(10)A層とB層の層界面の平均厚みの算出結果より、以下の基準で評価した。
○:A層の面内平均屈折率とB層の面内平均屈折率の差が0.55未満、又は、A層とB層の層界面の平均厚みが12nm以上
△:A層の面内平均屈折率とB層の面内平均屈折率の差が0.55以上、かつ、A層とB層の層界面の平均厚みが8nm以上12nm未満
×:A層の面内平均屈折率とB層の面内平均屈折率の差が0.55以上、かつA層とB層の層界面の平均厚みが8nm未満。
(17)デラミ性
スコット耐揉摩耗試験機(東洋精機製)を用いて、JIS−K−6328にしたがって測定する。サンプルサイズは幅10mm、長さ200mm、荷重2.5kg、チャック間距離30mm、ストローク距離50mm、速度120回/分で測定し、20回往復した後にデラミしているか、以下の基準で判定した。
○:目視でデラミ視認できない
×:目視でデラミ視認
(18)金属光沢性
(2)平均反射率の測定結果より、以下の基準で評価した。
○:30%以上
×:30%未満
(19)光線透過性
サンプルを5cm×5cmに切り出し、直読式ヘイズメーターHGM−2DP(スガ試験機製作所製)を用い、n数3の平均値で光線透過率を算出し、以下の基準で評価した。
○:25%以上
×:25%未満
(原料)
(樹脂A−1)
テレフタル酸ジメチル100重量部、エチレングリコール60重量部の混合物に、テレフタル酸ジメチル量に対して酢酸マグネシウム0.09重量部、三酸化アンチモン0.03重量部を添加して、常法により加熱昇温してエステル交換反応を行う。次いで、該エステル交換反応生成物に、テレフタル酸ジメチル量に対して、リン酸85%水溶液0.020重量部を添加した後、重縮合反応槽に移行する。さらに、加熱昇温しながら反応系を除々に減圧して1mmHgの減圧下、290℃で常法により重縮合反応を行い、固有粘度(IV)0.63のポリエチレンテレフタレート(以下、PETということがある)を得た。
(樹脂A−2)
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル100重量部、エチレングリコール60重量部の混合物を用いた以外は、樹脂A−1と同様に重合を行い、固有粘度(IV)0.67のポリエチレンナフタレート(以下、PENということがある)を得た。
(樹脂A−3)
樹脂A−1と樹脂A−2を1:1で混合したポリエステル。
(樹脂B−1)
固有粘度(IV)0.55のスピログリコール(SPG)21mol%、及びシクロヘキサンジカルボン酸(CHDC)24mol%を共重合したポリエチレンテレフタレート。使用したチップの任意に抜き出した100粒の平均サイズは楕円部断面積が7.3mm、チップ高さ4.1mmであり、押出機供給直前のチップの含有水分率は620ppmであった。
(樹脂B−2)
固有粘度(IV)0.72のシクロヘキサンジメタノール(CHDM)30mol%を共重合したポリエチレンテレフタレート。
(樹脂B−3)
樹脂A−1と樹脂B−2を1:3で混合した共重合ポリエチレンテレフタレート。
(樹脂B−4)
固有粘度(IV)0.55のスピログリコール(SPG)21mol%、及びシクロヘキサンジカルボン酸(CHDC)24mol%を共重合したポリエチレンテレフタレート。使用したチップの任意に抜き出した100粒の平均サイズはだ楕円部の断面積は9.3mm、チップ高さ4.9mmであり、押出機供給直前のチップの含有水分率は3000ppmであった。
(樹脂B−5)
樹脂A−1と樹脂B−2を1:1で混合した共重合ポリエチレンテレフタレート。
(樹脂B−6)
樹脂A−1と樹脂B−2を65:35で混合した共重合ポリエチレンテレフタレート。
(易接着層の組成物−I)
・アクリル・ウレタン共重合樹脂(a)の水分散体:山南合成化学(株)製、サンナロンWG658(固形分濃度30重量%)
・イソシアネート化合物(b)の水分散体:第一工業製薬(株)製、エラストロンE−37(固形分濃度28重量%)
・エポキシ化合物(c)の水分散体:DIC(株)製、CR−5L(固形分濃度100重量%)
・ポリチオフェン構造を有する化合物及び陰イオン構造を有する化合物からなる組成物(d)の水分散体(固形分濃度1.3重量%)
・オキサゾリン化合物(e)の水分散体:日本触媒(株)製、エポクロスWS−500(固形分濃度40重量%)
・カルボジイミド化合物(f)の水分散体:日清紡(株)製、カルボジライトV−04(固形分濃度40%)
・シリカ粒子(g):日揮触媒化成(株)製、スフェリカスラリー140(固形分濃度40%)
・アセチレンジオール系界面活性剤(h):日信化学(株)製、オルフィンEXP4051(固形分濃度50%)
・水系溶媒(i):純水
上記した(a)〜(h)を固形分重量比で、(a)/(b)/(c)/(d)/(e)/(f)/(g)/(h)=100/100/75/25/60/60/10/15となるように混合し、かつ前記水系塗剤の固形分濃度が3重量%となるように(i)を混合し、濃度調整した。
[実施例1]
樹脂A−1及び樹脂B−1を、各々別のベント付き二軸押出機で樹脂A−1を300℃、樹脂B−1を285℃の溶融状態とした後、ギヤポンプ及びフィルターを介して、225個のスリットを有する部材を別個に4個有する901層のフィードブロックにて合流させた。この際、フィードブロックのスリット板における、各スリット幅は、目標値の−3%乃至+3%の範囲であった。なお、厚膜層となる両側の最表層は樹脂A−1となり、樹脂A−1と樹脂B−1が交互に積層され、かつ隣接する樹脂A−1からなる層を樹脂B−1からなる層の層厚みで割った積層比は1.00となるようにした。次いで、ダイスリットからシート状に押し出した。この際、フィードブロックと口金とを接続する流路における流路方向に垂直な任意の断面のシート幅方向寸法Wは190mm、シート厚み方向寸法Tは32mm、前記口金の吐出口のシート幅方向寸法Wdは950mm、前記積層体の最表層の最小シート厚み方向寸法Lは12.4mmであった。次いで、静電印加で表面温度25℃に保たれたキャスティングドラムに密着させて急冷固化し、キャストフィルムを得た。
得られたキャストフィルムを75℃に設定したロール群で加熱した後、延伸区間長100mmの間で、フィルム両面からラジエーションヒーターにより急速加熱しながら、縦方向に3.3倍延伸し、その後一旦冷却して一軸延伸フィルムを得た。次いで、該一軸延伸フィルムの両面に空気中でコロナ放電処理を施し、フィルムの塗れ張力を55mN/mとし、#4のメタバーで易接着層の組成物−Iをフィルムの両面に塗布した。
得られた一軸延伸フィルムをテンターに導き、100℃の熱風予熱後、110℃の温度で横方向に3.5倍延伸した。延伸したフィルムは、そのままテンター内で240℃の熱風にて熱処理を行い、次いで、同温度にて幅方向に7%の弛緩処理を施し、その後、室温まで冷却してワインダーにて巻き取り、二軸延伸フィルムを得た。得られた二軸延伸された積層フィルムのフィルム全体厚みは、122μmであった。この積層フィルムの層設計は図1の通りであり、スリット間隙を調整することにより、各層の層厚みを制御した。該積層フィルムの厚み方向の断面をTEM観察し、画像処理により層厚み分布を求めた。最表層となる層番号1及び層番号901の層厚みは何れも6μmであり、樹脂A−1で構成される層番号226、層番号451、及び層番号676の層厚みは4μmであり、厚膜層部をのぞいた積層比の平均値は1.01であった。この成型用積層フィルムの特性及び評価結果を表1に示す。
(実施例2)
樹脂B−1を樹脂B−2に変更した以外は実施例1と同様にして、成型用積層フィルムを得た。厚膜層部をのぞいた積層比の平均値は1.02であった。結果を表1に示す。
(実施例3)
樹脂B−1を樹脂B−3に変更した以外は実施例1と同様にして、成型用積層フィルムを得た。厚膜層部をのぞいた積層比の平均値は1.00であった。結果を表1に示す。
(実施例4)
樹脂A−1を樹脂A−3、樹脂B−1を樹脂B−2に変更した以外は実施例1と同様にして、成型用積層フィルムを得た。厚膜層部をのぞいた積層比の平均値は0.99であった。結果を表1に示す。
(実施例5)
フィルムの層設計を図2となるようにフィードブロックのスリット形状を変更して厚み調整し、積層フィルム全体厚みを128μmとした以外は実施例1と同様にして、成型用積層フィルムを得た。最表層となる層番号1及び層番号901の層厚みは何れも8μmであり、樹脂A−1で構成される層番号301、層番号601の層厚みは4.5μmであり、厚膜層部をのぞいた積層比の平均値は1.01であった。この成型用積層フィルムの特性及び評価結果を表1に示す。
(実施例6)
フィルムの層設計を図3となるようにフィードブロックのスリット形状を変更して厚み調整し、積層フィルム全体厚みを133μmとした以外は実施例1と同様にして、成型用積層フィルムを得た。最表層となる層番号1及び層番号901の層厚みは何れも10μmであり、樹脂A−1で構成される層番号451の層厚みは5.0μmであり、厚膜層部をのぞいた積層比の平均値は0.99であった。この成型用積層フィルムの特性及び評価結果を表1に示す。
(実施例7)
フィルムの層設計を図4となるようにフィードブロックのスリット形状を変更して厚み調整し、積層フィルム全体厚みを76μmとした以外は実施例1と同様にして、成型用積層フィルムを得た。最表層となる層番号1及び層番号261の層厚みは何れも15μmであり、樹脂A−1で構成される層番号451の層厚みは6.0μmであり、厚膜層部をのぞいた積層比の平均値は0.99であった。この成型用積層フィルムの特性及び評価結果を表1に示す。
(実施例8)
実施例1の手順で作成した成型用積層フィルムの片面に、スクリーン印刷にて黒色の架橋性インキ層を形成した後、バインダー層を形成させた。印刷条件は以下の通り。架橋性インキ層の厚みは5μmであった。
<黒色の架橋性インキ>
着色顔料:三菱化学(株)製 カーボンブラック MA100 8重量部
ポリエステルポリオール樹脂:東洋紡(株)製 バイロン200 25重量部
溶剤:シクロヘキサン 35重量部
架橋剤:イソシアネート系架橋剤 日本ポリウレタン工業(株)製 コロネート2096 10重量部
スクリーンメッシュ:T−225
乾燥:80℃×10分(ボックス乾燥)
塗布回数:1回
<バインダー>
バインダー:帝国インキ製造株式会社製 IMB−003
スクリーンメッシュ:T−225
乾燥:90℃×60分(ボックス乾燥)
前記印刷を行った加飾シートを所定の寸法にカットし、金型にセットして、以下の条件でインサート成型して加飾成型体を作製した。
型締圧力:80ton
金型温度:80℃
成型樹脂:帝人化成株式会社製 PC パンテライト1225L
成型樹脂温度:295℃
射出速度:200mm/s
成型品寸法(L×W×H):150×50×2mm
ゲート:φ2mmピンゲート。
結果を表1に示す。
(実施例9)
樹脂A−1及び樹脂B−1を、各々別のベント付き二軸押出機で樹脂A−1を270℃、樹脂B−1を270℃の溶融状態とした以外は実施例1と同様にして、成型用積層フィルムを得た。厚膜層部をのぞいた積層比の平均値は1.01であった。結果を表2に示す
(比較例1)
厚膜部を除いた積層比の平均値が1.50となるようにフィードブロックのスリット形状を変更して厚みを調整した以外は実施例1と同様にして、成型用積層フィルムを得た。厚膜層部をのぞいた積層比の平均値は1.51であった。結果を表2に示す。
(比較例2)
厚膜部を除いた積層比の平均値が0.65となるようにフィードブロックのスリット形状を変更して厚みを調整した以外は実施例1と同様にして、成型用積層フィルムを得た。厚膜層部をのぞいた積層比の平均値は0.66であった。結果を表2に示す。
(比較例3)
樹脂B−1を樹脂B−4に変更した以外は実施例1と同様にして、成型用積層フィルムを得た。厚膜層部をのぞいた積層比の平均値は1.01であった。結果を表2に示す。
(比較例4)
樹脂A−1で構成される層番号1、層番号901の層厚みが0.5μmとなるようにフィードブロックのスリット形状を変更して厚みを調整し、積層フィルム全体厚みを111μmにした以外は実施例1と同様にして、成型用積層フィルムを得た。厚膜層部をのぞいた積層比の平均値は0.98であった。結果を表2に示す。
(比較例5)
樹脂A−1で構成される層番号1、層番号901の層厚みが22.0μmとなるようにフィードブロックのスリット形状を変更して厚みを調整し、積層フィルム全体厚みを156μmにした以外は実施例1と同様にして、成型用積層フィルムを得た。厚膜層部をのぞいた積層比の平均値は0.98であった。結果を表2に示す。
(比較例6)
樹脂A−1で構成される層番号226、層番号451、及び層番号676の層厚みが1.5μmとなるようにフィードブロックのスリット形状を変更して厚みを調整し、積層フィルム全体厚みを115μmにした以外は実施例1と同様にして、成型用積層フィルムを得た。厚膜層部をのぞいた積層比の平均値は1.03であった。結果を表2に示す。
(比較例7)
樹脂A−1で構成される層番号226、層番号451、及び層番号676の層厚みが8.0μmとなるようにフィードブロックのスリット形状を変更して厚みを調整し、積層フィルム全体厚みを134μmにした以外は実施例1と同様にして、成型用積層フィルムを得た。厚膜層部をのぞいた積層比の平均値は1.00であった。結果を表2に示す。
(比較例8)
樹脂B−1を樹脂B−5に変更した以外は実施例1と同様にして、成型用積層フィルムを得た。厚膜層部をのぞいた積層比の平均値は1.01であった。結果を表2に示す。
(比較例9)
樹脂A−1を樹脂A−2、樹脂B−1を樹脂B−6に変更した以外は実施例1と同様にして、成型用積層フィルムを得た。厚膜層部をのぞいた積層比の平均値は1.01であった。結果を表2に示す。
(比較例10)
フィルムの層設計を図5となるようにフィードブロックのスリット形状を変更して厚み調整し、積層フィルム全体厚みを64μmとした以外は実施例1と同様にして、成型用積層フィルムを得た。最表層となる層番号1及び層番号201の層厚みは何れも15μmであり、樹脂A−1で構成される層番号451の層厚みは6.0μmであった。厚膜層部をのぞいた積層比の平均値は1.00であった。この成型用積層フィルムの特性及び評価結果を表2に示す。
Figure 2017149142
Figure 2017149142
本発明の用途は特に限定されないが、自動車関係の装飾部品をはじめとして各種家電機器、情報通信機器、建築部材などの製品(部品)などに特に好適に用いることができるものである。
1:層番号
2:層厚み
3:厚膜層
4:A層の層厚み分布
5:B層の層厚み分布
6 : 部材板
7 : 樹脂導入板
8 : スリット板
9 : 樹脂導入板
10 : スリット板
11 : 樹脂導入板
12 : スリット板
13 : 樹脂導入板
14 : スリット板
15 : 樹脂導入板
16 : 部材板
17 : フィードブロック
18 : 導入口
19 : 液溜部
20 : 各スリットの頂部の稜線
21 : 各スリットの頂部の稜線の上端部
22 : 各スリットの頂部の稜線の下端部
23 : スリットへ導入される樹脂
24 : 流出口
25 : A層のAFM高さ
26 : B層のAFM高さ
27 : A層側層界面境界AFM高さ
28 : B層側層界面境界AFM高さ
29 : A層とB層の層界面の厚み

Claims (8)

  1. 下記(1)〜(3)の全てを満たすことを特徴とする、成型用積層フィルム。
    (1)結晶性の熱可塑性樹脂Aからなる層(以下、A層という)と非晶性の樹脂を含む熱可塑性樹脂Bからなる層(以下、B層という)を有し、前記A層とB層が厚み方向に交互に合計250層以上積層され、両側の最表層の厚みが1μm以上20μm以下であり、厚みが3μm以上6μm以下である層を内層に1層以上有する積層フィルムであること。
    (2)波長帯域400〜700nmにおける平均反射率が30%以上75%以下であり、波長400nm〜900nmにおいて400nmから50nmずつの間隔で区分された帯域(400〜450nm、450〜500nm、・・・850〜900nm)の平均反射率が、いずれの帯域においても隣接する帯域との平均反射率の差が10%以下であること。
    (3)層厚み1μm未満である薄膜層において、A層とB層のそれぞれの層において隣り合う層の厚みの差が50nm以下の範囲で連続的に単調増加もしくは単調減少している群である傾斜構造を2段以上有すること。
  2. 下記式でB層の各層積層むらMを求めたとき、全ての層において求めたMn−2、M、Mn+2の平均値の絶対値が10nm以下、R値が0.90以上1.00以下である請求項1に記載の成型用積層フィルム。
    Mn=Xn−Yn
    0.90≦R≦1.00
    Xn:B層の層番号nの実測厚み(nm)
    Yn:傾斜構造毎に算出した層厚みと層番号にて算出される2次の多項式近似曲線から算出されるB層の層番号nの層厚み(nm)
    :傾斜構造毎に算出した層厚みと層番号にて算出される2次の多項式近似曲線相関係数の2乗値
  3. 以下の方法によりB層の各層の厚みばらつき比率Nnを求めたとき、全B層のNnの平均値(ΣNn/n)が10%以下である請求項1又は2に記載の成型用積層フィルム。
    [B層の各層の厚みばらつき比率Nnの求め方]
    成型用積層フィルムを1m×1mの正方形状にカットする。カットした正方形状の成型用積層フィルムの4角にてB層の各層厚みを測定する。正方形の対角線上に位置する角をp、q、およびr、sとしたとき、下記式により、対角線上の位置の層厚み差を、各層の厚みばらつき比率Nnとして求める。
    Nn=|[(Pn―Qn)/{(Pn+Qn)/2}|+|(Rn―Sn)/{(Rn+Sn)/2}]|/2×100
    Pn=p位置のB層の層番号nの層厚み(nm)
    Qn=q位置のB層の層番号nの層厚み(nm)
    Rn=r位置のB層の層番号nの層厚み(nm)
    Sn=s位置のB層の層番号nの層厚み(nm)
  4. 原子間力顕微鏡(AFM)により測定されるA層とB層の層界面の平均厚みが8nm以上である請求項1〜3のいずれかに記載の成型用積層フィルム。
  5. 成型用積層フィルムを150℃雰囲気下で1.3倍に延伸した前後の反射光の彩度変化ΔCが7以下である請求項1〜4のいずれかに記載の成型用積層フィルム。
  6. 請求項1〜5の何れかに記載の型用積層フィルムの少なくとも片面に、アクリル・ウレタン共重合樹脂と2種類以上の架橋剤からなる易接着層を有する積層フィルム。
  7. 請求項1〜5の何れかに記載の成型用積層フィルムを用いた成型体。
  8. 請求項6に記載の積層フィルムを用いた成型体。
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