JP2016168833A - 成型用積層フィルム及びそれを用いた成型品 - Google Patents

成型用積層フィルム及びそれを用いた成型品 Download PDF

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修平 中司
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崇正 岩見
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Abstract

【課題】金属調の光沢有し、かつ印刷との組み合わせを可能とすることにより高意匠性に優れ、高温加熱時にもフィルムがカール及び捻れが小さく、フィルム両面にウォッシュアウトに耐性を持つ成型用積層フィルムの提供。
【解決手段】下記(1)〜(4)の条件を満たす、成型用積層フィルム。(1)高屈折率樹脂Aからなる層(以下、A層という)と低屈折率樹脂Bからなる層(以下、B層という)を有し、厚み方向に交互に合計250層以上積層されたフィルムの片面に接着層を介してポリエステルフィルムを貼り合せており、フィルム総厚みが150μm以上、(2)波長帯域400〜700nmにおける平均反射率が30〜75%、(3)190℃及び150℃、30分処理後のカール値が0〜25mm、(4)層厚み150nm以上のB層の比率が非接着面側から総層数の40%の範囲で30%以下
【選択図】なし

Description

本発明は、成型用積層フィルム及びその用途に関する。
スマートフォンやノートパソコンといった情報通信機器、家電製品、自動車装飾に意匠性を高めるため印刷や塗装、蒸着などで加飾したフィルムを用いることで意匠性を高める手法が知られており、中でも金属調や高光沢調は高級感を演出することができるためニーズが高い。金属調加飾を有する加飾シートとしてアルミ等で蒸着したポリエチレンテレフタレートやメタクリル酸メチルをラミネートした積層シートが知られているが、成型時の延伸により蒸着面に割れ、ムラを生じる等の課題があった。
そのような中で、金属薄膜細片を含有する金属調の光沢インキを塗工した装飾層を樹脂とラミネートし、さらに成型性を向上させるために支持基材樹脂層をラミネートさせた熱成型用積層シートを用いることで成型後も高い金属光沢調を達成する手法が提案されている。(特許文献1参照)また、光を反射させる手法として、屈折率が異なる2種以上の材料を光の波長レベルの層厚みで交互に積層させることにより発現する光の干渉現象を利用して、特定の波長の光を選択的に反射する光干渉多層膜が知られている。このような多層膜は、用いる材料の屈折率、層数、各層厚みを所望の光学的な設計とすることが可能であるため、様々な光学用途向けに市販されている。このような中で、光干渉多層膜の厚みを100μm以下とすることで実現するダイクロイックブルーの色調とフィルム厚み100μm以上にて得られる成型時のハンドリング性、耐ウォッシュアウト性を両立するために、光干渉多層膜と透明度の高いポリエステルフィルムをドライラミネートした加飾シートも提案されている。(特許文献2参照)
特開2007−190702号公報 特開2012−116045号公報
特許文献1記載の熱成型用積層シートは、熱可塑性樹脂フィルム層と硬化性樹脂層、装飾層、支持基材樹脂層の構成とすることで、熱成型後も光沢度の高い鏡面金属光沢を持ち、積層された層間での剥離を抑制した成型用積層シートである。しかしながら、金属光沢調以外の加飾表現としては、着色材を添加して硬化性樹脂層の色目を変化させることを可能とするのみであり、印刷と組み合わせた加飾を表現することが難しいことが課題であった。
特許文献2記載の成型用加飾シートは、接着剤層を介して2枚のポリエステルフィルムを貼り合わせており、1枚のポリエステルフィルムは異なる屈折率の2種類の樹脂層を交互に800層以上積層し、もう1枚のポリエステルフィルムは75μm以上のポリエステルフィルムとすることで、フィルム厚みを薄くすることで達成できるダイクロイックブルーの色調を100μm以上のシート厚みで実現することが可能となり、成型時のハンドリング性向上させ、インサート成型時には樹脂射出面を75μm以上のポリエステル側とすることで耐ウォッシュアウト性を向上させることができる。しかしながら、異なる樹脂組成のフィルムを貼り合せることで生じる加熱時のカール及びフィルムの捻れ、2種類の樹脂を800層以上積層させたポリエステルフィルム側のウォッシュアウト抑制については十分に考慮されていない。
そこで、本発明の課題は上記した従来技術の問題点を解決し、金属調の光沢有し、かつ印刷との組み合わせを可能とすることにより高意匠性に優れ、高温加熱時にもフィルムのカール及び捻れが小さく、フィルム両面にウォッシュアウトに耐性を持つ成型用積層フィルムを提供することにある。
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、[I]下記(1)〜(4)の全てを満たすことを特徴とする、成型用積層フィルム。
(1)高屈折率樹脂Aからなる層(以下、A層という)と低屈折率樹脂Bからなる層(以下、B層という)を有し、厚み方向に交互に合計250層以上積層されたフィルム(以下、フィルムXという)の片面に接着層を介してポリエステルフィルム(以下、フィルムYという)を貼り合せており、フィルム総厚みが150μm以上であること。
(2)波長帯域400〜700nmにおける平均反射率が30%以上75%以下であること。
(3)下記測定法により測定した190℃及び150℃、30分処理後のカール値が0mm以上25mm以下であること。
(測定法)
成型用積層フィルムを縦方向に20cm、幅方向に1cm、及び縦方向に1cm、幅方向に20cmの大きさに2つのフィルム試料を切り出し、190℃または150℃の熱風循環式オーブンで30分間放置し、熱処理を行った。室温にて放置冷却後、試料をガラス板上に置き、ガラス板面から垂直方向で4隅の浮き上がり量を測定した。切り出した2つのフィルム試料において、最大の浮き上がり量をカール値とした。
(4)前記記載のフィルムXにおいて非接着層面側の層番号を1、接着層面側の層番号をNとし、0.4Nの小数点以下を切り下げた層番号を0.4nとした場合、層厚み150nm以上のB層の比率が層番号1〜0.4nの範囲において30%以下であること。
[II]150℃〜170℃の範囲におけるフィルムXの線膨張係数をα1、フィルムYの線膨張係数をα2、170℃〜190℃の範囲におけるフィルムXの線膨張係数をα3、フィルムYの線膨張係数をα4とした際に下記関係式を満たすことを特徴とする[I]に記載の成型用積層フィルム。
0.5≦α1/α2≦4.0 ・・・式1
0.5≦α3/α4≦4.0 ・・・式2
[III]フィルムXの配向角度とフィルムYの配向角度の和の絶対値が20以下である、[I]又は[II]に記載の成型用積層フィルム。
[IV]成型用積層フィルムの少なくとも片面に、アクリル・ウレタン共重合樹脂と2種類以上の架橋剤からなる易接着層が設けられたことを特徴とする[I]〜[III]のいずれかに記載の成型用積層フィルム。
[V] [I]〜[IV]の何れかに記載の成型用積層フィルムを用いた成型体。
本発明は、金属調の光沢有し、かつ印刷との組み合わせを可能とすることにより高意匠性に優れ、高温加熱時にもフィルムのカール及び捻れが小さく、フィルム両面にウォッシュアウトに耐性を持つ成型用積層フィルムを得ることができる。
実施例1〜4、7、8、比較例1、4、5、6、8設計層厚みを示す図 実施例5の設計層厚みを示す図 実施例6の設計層厚みを示す図 実施例9の設計層厚みを示す図 比較例2の設計層厚みを示す図 比較例3の設計層厚みを示す図 比較例7の設計層厚みを示す図
本発明の成型用積層フィルムにおけるフィルムXは、樹脂Aからなる層(以下、A層という)と樹脂B層からなる層(以下、B層という)を有し、厚み方向に交互に合計250層以上積層された積層フィルムである。
本発明におけるフィルムXは、厚み方向に交互に合計250層以上積層された構造である必要がある。より好ましくは、厚み方向に交互に合計400層以上積層された構造であり、さらに好ましくは、800層以上積層された構造である。250層未満の場合、可視光を均一に反射できず、彩度の大きなフィルムとなってしまうことがある。
本発明におけるフィルムXは、少なくとも1μm以上20μm以下である厚みの厚膜層が3層以上含まれ、かつ該厚膜層が両側の最表層となることが望ましい。より好ましくは、5μm以上10μm以下である。1μm未満の場合、成型時にフィルムX側から樹脂を射出する際に、樹脂剪断に起因するウォッシュアウトが発生するため積層構造が歪むことで樹脂射出部金属調の光沢が消失、またはリング状の欠陥が生じることがある。また、樹脂の強度が高い高屈折率樹脂Aを厚膜層とすることで射出成型時の樹脂の剪断を軽減することができるため好ましい。
本発明におけるフィルムXの好ましい層構成の一例として、設計層厚みを示す図を説明する。図1は、2種類の樹脂(以下、樹脂A、樹脂Bという)からなる層を厚み方向に交互に積層したフィルムにおいて、樹脂Aからなる層と樹脂B層からなる層を、各層順(以下、層番号という)に対してプロットした図である。図の整数の層番号のみに層厚みが対応しており、A層は奇数番号に対応し、B層は偶数番号に対応する。なお、フィルムYとの貼り合せ面側は層番号の大きい方とする。図2、図3、図4についても同様である。図1〜4に示す層構成の通り、一方の表面から反対の表面に向かうにつれて、層厚みが減少したのち増加する、または層厚みは増加したのち減少する層構成の場合は、極一部に積層不良が生じ、設計値から外れた場合でも他の部分に同程度の層厚みが存在しているため、彩度を低減化することができる。
前記記載のフィルムXにおいて非接着層面側の層番号を1、接着層面側の層番号をNとし、0.4Nの小数点以下を切り下げた層番号を0.4nとした場合、層厚み150nm以上のB層の比率が層番号1〜0.4nの範囲において30%以下であることが必要となる。好ましくは25%以下であり、更に好ましくは20%以下である。結晶性が低い低屈折率樹脂からなるB層にて層厚みが厚い部位はインサート成型時の樹脂の射出のような剪断応力がかかると変形しやすい箇所となる。そのため、層番号1〜0.4nの範囲において層厚み150nm以上のB層が30%を超える場合、層番号1の面よりインサート成型により樹脂を射出した際、層厚み150nm以上の層が集中した箇所から樹脂射出面の層にかけて積層構造の破壊や積層ズレが発生し、金属光沢調が失われるウォッシュアウトとなることがある。
また、層構成が増加から減少に変化する箇所はB層が最も厚くなる箇所が続く部位となるため、射出成型時のように樹脂の剪断がかかると層内で最も積層構造が破壊されやすくなる箇所である。そこで、1μm以上20μm以下である厚みの中間厚膜層を上記箇所に設けることで剪断を軽減することができるため好ましい。また、樹脂の強度が高い高屈折率樹脂Aを厚膜層とすることで軽減できる剪断が大きくなるため好ましい。図5は層厚みが表層から増加していく層構成であり、フィルム表面に近い226層及び676層に層厚みが増加から減少に変化する箇所があるため、インサート成型時に適正ではない射出成型条件でフィルムX側に樹脂を射出するとウォッシュアウトが発生することがある。図6は図2のフィルムXの接着層面を逆にした構造であり、フィルム表面に近い301層に増加から減少に変化する箇所があるため、インサート成型時に適正ではない射出成型条件でフィルムX側に樹脂を射出するとウォッシュアウトが発生することがある。図7は図3の積層数が201層である構造であり、積層数が少ないことで可視光を均一に反射できず彩度が大きくなる、反射率が低下することで金属光沢性が低下することがある。
また、本発明では便宜上、図1、図5の層厚み構成を4段の傾斜構造、図2、6の層厚み構成を3段の傾斜構造、図3、図4、図7の層厚み構成を2段の傾斜構造と呼ぶこととする。ここで、本発明で言う「4段の傾斜構造」とは、4本の単調増加曲線及び/または単調減少曲線で近似できる構造のことを指す。
本発明におけるフィルムXは、色付きを抑制する観点から、層対厚み10nm以上220nm未満の層数が、層対厚み220nm以上350nm以下の層数より多いことが好ましい。ここで、本発明で言う「層対厚み」とは、隣接するA層及びB層のそれぞれの層厚みを足した厚みを指す。また、層対厚みは、A層のみについて一方のフィルム表面から数えたm番目のA層と、隣接するB層のみについて同表面から数えたm番目のB層の層厚みを足したものでなければならない。ここで、mは整数を表している。例えば、一方のフィルム表面から反対側の表面にA1層/B1層/A2層/B2層/A3層/B3層・・・の順番で並んでいる場合、A1層とB1層が1番目の層対であり、A2層とB2層が2番目の層対であり、A3層とB3層が3番目の層対となる。層対厚み10nm以上220nm未満の層数が、層対厚み220nm以上350nm以下の層数と同数または少ないと、波長帯域400nm〜1100nmの反射帯域において低波長側ほど反射率が低下するため、赤みを帯びた外観になることがある。これは、低波長側の反射を起こす層対の密度が薄くなるために起こるものである。従って、フィルムXを構成する層の層対厚み序列としては、単調に等差数列的に層対厚みが増減するのではなく、上記条件を満たしながら等比数列的に層対厚みが増減することが好ましい。より好ましくは、層対厚み120nm以上220nm未満の層数が、層対厚み220nm以上350nm以下の層数に対して1.05倍以上2.5倍以下であることが好ましい。
フィルムXにおける樹脂A、樹脂Bの2種類の樹脂は、熱可塑性樹脂の中でも、強度、耐熱性、透明性及び汎用性の観点から、ポリエステル樹脂を用いることが必要である。
ポリエステル樹脂としては、芳香族ジカルボン酸または脂肪族ジカルボン酸とジオールを主成分とする単量体からの重合により得られるポリエステルが好ましい。ここで、芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸等を挙げることができる。脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ダイマー酸、ドデカンジオン酸、シクロヘキサンジカルボン酸とそれらのエステル誘導体等を挙げることができる。中でも屈折率の高いテレフタル酸と2,6−ナフタレンジカルボン酸が好ましい。これらの酸成分は1種類のみを用いても良く、2種類以上を併用しても良く、さらには、ヒドロキシ安息香酸等のオキシ酸等を一部共重合しても良い。また、ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−ヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、イソソルベート、スピログリコール等を挙げることができる。中でも、エチレングリコールが好ましく用いられる。これらのジオール成分は1種類のみを用いても良く、2種類以上を併用しても良い。
前記ポリエステルのうち、ポリエチレンテレフタレート及びその共重合体、ポリエチレンナフタレート及びその共重合体、ポリブチレンテレフタレート及びその共重合体、ポリブチレンナフタレート及びその共重合体、さらにはポリヘキサメチレンテレフタレート及びその共重合体、ポリヘキサメチレンナフタレート及びその共重合体等を用いることが好ましい。
熱可塑性樹脂から選ばれた樹脂A及び樹脂Bの好ましい組み合わせは、一方の樹脂と同一の基本骨格を含む樹脂を用いることが好ましい。ここで、本発明で言う「基本骨格」とは、樹脂を構成する繰り返し単位のことを指し、例えば、一方の樹脂がポリエチレンテレフタレートの場合、エチレンテレフタレートが基本骨格であり、この場合の他の樹脂としては、例えば、エチレンテレフタレート単位とシクロヘキサン1,4−ジメチレンテレフタレート単位からなる重合体(共重合体)が挙げられる。同一の基本骨格の樹脂を用いると、積層フィルムの製膜において、フローマーク等の積層不良や層間での剥離等の問題が生じ難くなる。
高屈折率樹脂Aとしては、耐押し跡性(耐打痕性)、フィルム自体の腰の強さの観点から、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートを用いることが好ましい。
低屈折率樹脂Bとしては、屈折率の上昇を抑制する観点から、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニル酸、シクロヘキサンジカルボン酸を含有、または、スピログリコール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノキシエタノールフルオレン、ビスフェノールA成分を含有した上記樹脂Aの共重合体を、上記樹脂Aと混合または単独で用いることが好ましい。
本発明のフィルムXは、積層フィルムのA層の面内平均屈折率と、B層の面内平均屈折率の差が0.040以上0.120以下であることが好ましい。面内平均屈折率の差が0.040未満の場合、金属光沢調の外観とならないことがある。面内平均屈折率の差が0.120を超える場合、透過率が低くなり過ぎて積層フィルムの背面に印刷を行った場合、印刷層が十分に視認できないことがある。
本発明のフィルムYは耐押し跡性(耐打痕性)、フィルム自体の腰の強さ、フィルムXとの収縮率の調整の観点から、ポリエステルフィルムであることが必要であり、中でもポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートを用いることが望ましい。
フィルムX及びフィルムYを貼り合せた上記成型用積層フィルムの総厚みは成型加工時のハンドリング性の観点から150μm以上であることが必要であり、好ましくは175μm以上225μm以下である。成型用積層フィルムの厚みが150μm未満の場合にはフィルムの剛性が足りず、1m以上の大型成型品をインサート成型により成型する場合、フィルムが垂れて位置がずれることにより成型不良が発生することがある。フィルム厚みが250μmを超える場合、成型体の厚みも厚くなるため、成型体の薄膜化を達成できないことがある。フィルムXが金属光沢調を達成するためにはフィルム厚みは100μm程度必要であることから、フィルムYの厚みは50μm以上125μm以下であることが好ましい。
フィルムYはフィルムXの金属光沢調の外観を阻害しないために全光線透過率が85%以上、ヘイズが1.0%以下であることが好ましい。
本発明の成型用積層フィルムは下記測定法により測定した190℃及び150℃、30分熱処理後のカール値が0mm以上25mm未満であることが必要である。カール値が25mmを超える場合、成型時の予熱後にフィルムにカールが発生することがある。予備成型が必要な場合、予備成型の加熱後にフィルムにカールが生じることで、インサート成型の金型にフィルムが固定できず、成型不良となることがある。
(測定法)
成型用積層フィルムを縦方向に20cm、幅方向に1cm、及び縦方向に1cm、幅方向に20cmの大きさに2つのフィルム試料を切り出し、190℃または150℃の熱風循環式オーブンで30分間放置し、熱処理を行った。室温にて放置冷却後、試料をガラス板上に置き、ガラス板面から垂直方向で4隅の浮き上がり量を測定した。切り出した2つのフィルム試料において、最大の浮き上がり量をカール値とした。
本発明の成型用積層フィルムの加熱時のカールを抑制するためには、フィルムX、Yにおいて、150℃〜170℃の範囲におけるフィルムXの線膨張係数をα1、フィルムYの線膨張係数をα2、170℃〜190℃の範囲におけるフィルムXの線膨張係数をα3、フィルムYの線膨張係数をα4とした際に下記関係式1、2を満たすことが好ましい。なお、線膨張係数測定時に試料長さの長い方向がフィルム長手方向である場合をαMD、試料長さの長い方向がフィルム幅方向である場合をαTDとし、α1、α2、α3、α4それぞれについてα1MD及びα1TD、α2MD及びα2TD、α3MD及びα3TD、α4MD及びα4TDを測定する。α1/α2及びα3/α4においては、試料長さの長い方向を合わせた組み合わせとし、α1MD/α2MD及びα1TD/α2TD、α3MD/α4MD及びα3TD/α4TDをそれぞれ算出する。α1MD/α2MD及びα1TD/α2TDが共に式1、α3MD/α4MD、α3TD/α4TDが共に式2を満たすことが好ましい。α1/α2及びα3/α4が0.5より小さくなる場合は、フィルムYの線膨張係数がフィルムXに対して大きくなりすぎ、縦方向に20cm、幅方向に1cm及び幅方向に20cm、縦方向に1cmの試料は加熱時に上側をフィルムXにした弧状に変形し、150℃または190℃で加熱した場合にカール値が0mm以上25mm以下とすることができないことがある。α1/α2及びα3/α4が4.0より大きくなる場合は、縦方向に20cm、幅方向に1cm及び幅方向に20cm、縦方向に1cmの試料は加熱時にフィルムXの線膨張係数がフィルムYに対して大きくなりすぎ、上側をフィルムYにした弧状に変形し、150℃または190℃で加熱した場合にカール値が0mm以上25mm以下とすることができないことがある。また、α1/α2及びα3/α4の値がマイナスとなる場合はフィルムX及びフィルムYの一方が膨張傾向、もう一方が収縮傾向となる場合となるため、縦方向に20cm、幅方向に1cm及び幅方向に20cm、縦方向に1cmの試料を150℃または190℃で加熱した際のカール値は25mm以上となることがある。
0.5≦α1/α2≦4.0 ・・・式1
0.5≦α3/α4≦4.0 ・・・式2
フィルム成型時において、成型方式や成型形状によって、150〜170℃の温度帯域で予熱する場合、及び170℃〜190℃の温度帯域で予熱する場合があるため、両温度範囲において上記式1、式2を満たす必要がある。なお、150℃以下での予熱ではフィルムの成型性が十分でない場合があり、200℃以上では予熱時にフィルムが結晶化して白化したり、脆くなったりする場合がある。
フィルムX、Yにおいて線膨張係数を調整する場合、フィルムXは屈折率と反射率が相関するため、フィルムYの結晶化度を調整して線膨張係数を調整することが望ましい。フィルムXの樹脂Bは低屈折樹脂組成としているため、結晶性樹脂を使用することが望ましいフィルムYと比較して150〜170℃、170〜190℃の温度範囲において線膨張係数が低下することが多い。そのため、フィルムYの製造条件は結晶性を調整するために縦方向及び横方向の延伸倍率を低くするか、テンターでの横方向の延伸後に行う熱処理温度を低温化させることが好ましい。
本発明の成型用積層フィルムは長辺2隅のカール値の差が0mm以上20mm未満であることが好ましい。より好ましくは0mm以上10mm未満であり、更に好ましくは0mm以上5mm未満である。長辺2隅のカール値の差が20mmを超える場合、成型時の予熱時にフィルムが捻れてカールすることがある。予備成型が必要な場合、予備成型の加熱後にフィルムが捻れてカールすることで、予備成型品が歪み、成型位置ズレや成型用積層フィルムの収縮応力による樹脂との剥離等の成型不良となることがある。
フィルムは成型時において、150〜170℃及び170℃〜190℃の温度帯域で予熱する場合がある。フィルムの加熱収縮方向は配向角度と相関がある。そのため、本発明の成型用積層フィルムの加工時のフィルム位置がずれを抑制するためには、フィルムXの配向角度とフィルムYの配向角度の和の絶対値が20°以下であることが好ましい。より好ましくは10°以下であり、更に好ましくは5°以下である。テンターにて横方法に延伸したフィルムは幅方向で異なる配向角度となり、幅方向のセンター付近の配向角度は約0°であり、センターから幅方向に遠ざかるにつれて配向角度は次第に大きくなる。また、配向角度はセンターを起点に幅方向で逆の符号となる。このフィルム測定方向を揃えて測定したフィルムXの配向角度とフィルムYの配向角度の和の絶対値が20°を超えると、成型用積層フィルムを加熱した場合に捻れてカールすることがあり、加工時に成型用積層フィルムを設置した際にフィルム位置がずれて加工不良率が上昇することがある。
フィルム測定方向を揃えて測定したフィルムXの配向角度とフィルムYの配向角度の和の絶対値を20°以下にするためには、フィルムXとフィルムY共に配向角度の小さくなる幅方向センター付近に位置する箇所同士を貼り合せるか、フィルムXとフィルムYの配向角度の絶対値が近く、配向角度の符号が異なる組み合せで貼り合せることが好ましい。フィルムXとフィルムY共に配向角度が小さいと加熱収縮は配向軸方向または配向軸と90°垂直な方向での収縮力が強くなるため、捻れてカールしにくい。フィルム測定方向を揃えた際にフィルムXとフィルムYの配向角度の絶対値が近く、配向角度の符号が異なる組み合せではフィルムXとフィルムYの加熱収縮の方向が逆となり、収縮方向が相殺されるため、捻れてカールしにくくなる。
また、本発明においてフィルムX、フィルムYは接着剤を介して貼り合わせられていることが必要である。接着剤としては、ウレタン系樹脂からなる接着剤が好ましく、末端に水酸基を持つポリオールとポリイソシアネート、または末端にイソシアネート基を持つウレタンプレポリマーとポリオールを組み合わせ反応させることで硬化し、接着剤として機能するものが好ましい。
ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、その他のポリオールが使用できる。例えば、ポリエーテルポリオールとしては、ポリオキシエチレンポリオール、ポリオキシプロピレンポリオール、ポリオキシエチレン−プロピレン共重合ポリオール、ポリテトラメチレンポリオールなどの単独あるいはそれらの混合物が挙げられる。ポリエステルポリオールとしては、ジカルボン酸(アジピン酸、コハク酸、マレイン酸、フタル酸など)とグリコール(エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキサングリコール、ネオペンチルグリコールなど)とを重縮合させ得られたポリオール、例えば、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリプロピレンアジペート、ポリエチレン−プロピレンアジペート等のポリオールがあり、また、ポリラクトンポリオール、例えば、ポリカプロラクトンポリオールの単独あるいはそれらの混合物、ポリカーボネートポリオールなどが挙げられる。
ポリイソシアネートとしては、2,4−トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、カルボジイミド変性MDI、ナフタレンジイソシアネートなどの芳香族系ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート及び脂環式系ポリイソシアネートが挙げられる。上記ポリイソシアネートは単独あるいはそれらの混合物として使用できる。
また、本発明において用いられる接着剤層には各種の添加剤、例えば粘度調整剤、レベリング剤、ゲル化防止剤、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐光安定剤、紫外線吸収剤、易滑剤、顔料、染料、有機または無機の微粒子、充填剤、耐電防止剤、核剤などが配合されてもよい。
本発明の成型用積層フィルムは、波長帯域400〜700nmにおける平均反射率が30%以上75%以下であることが必要である。平均反射率が30%未満の場合、反射率が低く、金属光沢調の外観とならないことがある。平均反射率が75%を超える場合、透過率が低くなるため、背面に印刷した印刷層の視認性が低下する場合がある。
可視光の波長の均一な反射は、成型用積層フィルムに印刷した場合等で、印刷の色調に変化がなく、色のばらつきが小さくなるため好ましい。好ましい反射光の彩度C*は、7以下であり、より好ましくは3以下である。また、積層数が少ないと、400〜700nmの光を均一に反射することが難しくなり、彩度C*が大きくなる。従って、200層以上が好ましく、より好ましくは、500層以上、さらに好ましくは、800層以上である。
本発明の成型用積層フィルムは、ヘイズが3.0以下であることが好ましい。さらに好ましくは、2.0以下であり、1.5以下であることが特に好ましい。ヘイズが3.0を超える場合、積層フィルムの背面に印刷を施した場合では印刷層の視認性が低下することがある。
本発明における成型用積層フィルムは、150℃及び190℃における引張試験において、フィルム長手方向及び幅方向の100%伸度時の引張応力が3MPa以上90MPa以下であることが好ましい。このような場合、成型性に優れたものとなり、真空成型、真空圧空成型、インモールド成型、インサート成型、プレス成型、絞り成型などの各種成型において、任意の形状に成型することが容易となる。より好ましくは、150℃及び190℃における引張試験において、フィルム長手方向及び幅方向の100%伸度時の引張応力が3MPa以上50MPaである。このような場合、より高い絞り比でも成型可能となる。150℃及び190℃における引張試験において、フィルム長手方向及び幅方向の100%伸度時の引張応力が3MPa以上90MPa以下とするためには、フィルムXの樹脂Aが結晶性樹脂であり、樹脂Bがイソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニル酸、シクロヘキサンジカルボン酸を含有、または、スピログリコール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノキシエタノールフルオレン、ビスフェノールA成分を含有した上記樹脂Aの共重合体を、上記樹脂Aと混合または単独で用いることが好ましい。このような場合、二軸延伸後においても樹脂Bは配向及び結晶化度が小さいため、引張応力が小さくなる。
本発明の成型用積層フィルムは、接着部の90°剥離強度が0.3kg/cm以上となることが好ましい。1.0kg/cmであればより好ましく、1.5kg/cm以上であれば更に好ましい。剥離強度が0.3kg/cm未満の場合には、十分な密着性が得られず、成型途中でフィルムが剥離することがある。剥離強度が1.5kg/cm以上であると、使用時に剥離せず、意匠性を維持できる。
本発明の成型用積層フィルムは、前記積層フィルムの少なくとも片面に、アクリル・ウレタン共重合樹脂と2種類以上の架橋剤からなる易接着層が設けられていることが好ましい。積層フィルムに印刷層またはハードコート層を施す際、処理面に易接着層が設けられていない場合、界面における密着性が低下することがある。また、印刷層とハードコート層を積層フィルムの両面に施す際は、両面に易接着層が設けられていることが好ましい。
本発明に好ましく用いられる易接着層を構成するアクリル・ウレタン共重合樹脂としては、アクリル系モノマーは、例えばアルキルアクリレート(アルキル基としてはメチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、2−エチルヘキシル、シクロヘキシル等)、2−ヒドロキシルエチルアクリレート、2−ヒドロキシルエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートなどのヒドロキシ基含有モノマー、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレートなどのアミノ基含有モノマー、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどのグリシジル基含有モノマー、アクリル酸、メタクリル酸及びそれらの塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等)のカルボキシル基またはその塩を含有するモノマー等を用いることができる。また、本発明におけるウレタン成分としては、ポリヒドロキシ化合物とポリイソシアネート化合物を、乳化重合、懸濁重合等の公知のウレタン樹脂の重合方法によって反応させることで得られる樹脂を用いることができる。ウレタン成分を構成するポリヒドロキシ化合物としては、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレン・ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、テトラメチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリカプロラクトン、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリヘキサメチレンセバケート、ポリテトラメチレンアジペート、ポリテトラメチレンセバケート、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ポリカーボネートジオール、グリセリン等を用いることができる。
本発明における易接着層を構成する架橋剤としては、架橋性官能基を共重合することが好ましく、例えば、メラミン系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、メチロール化或いはアルキロール化した尿素系架橋剤、アクリルアミド系架橋剤、ポリアミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、各種シランカップリング剤、各種チタネート系カップリング剤等を用いることができる。また、ハードコート層やシリコーン系接着層との耐湿熱接着性の観点から、2種類以上の架橋剤を用いることが好ましく、具体的には、架橋剤の少なくとも1種類がオキサゾリン系架橋剤またはカルボジイミド系架橋剤を用いることが好ましい。
さらに、前記易接着層の成分だけであると帯電し易いため、その結果、フィルムXとフィルムYの貼り合せ時に異物を噛み込み、外観欠点を生じることがある。そのため易接着層の成分には、帯電防止の観点から、導電性高分子を含んでいることが好ましい。導電性高分子としては、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリチオフェン・ビニレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリ−p−フェニレン、ポリヘテロサイクル・ビニレン、特に好ましくは、(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)である。
本発明の成型用積層フィルムは、表面にハードコート層を設けることで、積層フィルムが傷つくことを抑制でき、成型品の外観を向上させることができる。ただし、コスト面からハードコート層を必要としない用途に対しては、必ずしもハードコート層を設けなくてもよい。
ハードコート層としては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、有機シリケート樹脂、シリコーン系樹脂等を用いることができる。その中で、硬度、耐久性及び生産性の観点から、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂が好ましく、さらに好ましくは、アクリル系樹脂であり、活性線硬化型のアクリル系樹脂であることが最も好ましい。
ハードコート層の組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、各種添加剤を必要に応じて配合することができる。例えば、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤などの安定剤、界面活性剤、レベリング剤及び帯電防止剤等を用いることができる。本発明におけるハードコート層の厚みは、用途に応じて決められるが、通常は0.1μm以上30μm以下が好ましく、さらに好ましくは、1μm以上15μm以下である。ハードコート層の厚みが0.1μm未満の場合、ハードコート層の組成物が十分硬化していても、膜厚が薄すぎるために表面硬度が低くなり、傷が付き易くなることがある。ハードコート層の厚みが30μmを超える場合、折り曲げなどの応力により硬化膜にクラックが入り易くなることがある。
成型用積層フィルムの片面には印刷層が設けられていることが好ましい。ただし、デザイン性やコスト面、透過性から印刷層を必要としない用途に対しては、必ずしも印刷層を設けなくてもよい。
本発明に好ましく用いられる印刷層としては、バインダー樹脂、顔料または染料等で構成することができる。バインダー樹脂としては、ポリウレタン系樹脂、ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、セルロースエステル系樹脂、アルキド系樹脂、熱可塑性エラストマー系樹脂等が好ましく、特に柔軟な被膜を作成することができる樹脂が好ましい。また、バインダー樹脂中には、適切な色の顔料または染料を着色剤として含有する着色インキを配合することが好ましい。塗布方法としては、グラビア印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷などが好ましく、より好ましくはスクリーン印刷である。特に多色刷りや階調色彩、薄膜印刷を必要とする場合には、オフセット印刷法やグラビア印刷法が好ましい。また、単色の場合は、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法などのコート法を採用することもできる。また、本発明における印刷層の厚みは、透過率確保のため5μm以下で塗布することが好ましく、印刷層を形成するインキとしては2液硬化型インキであることが好ましい。
本発明の成型用積層フィルムは真空成形、真空圧空成形、プラグアシスト真空圧空成形、インモールド成形、インサート成形、冷間成形、プレス成形、絞り成形などの各種成型法が適用できるため、低コストで成形体を得ることが可能である。このような成形体は、携帯電話、電話、パソコン、オーディオ機器、家電機器、無線通信機器、車載部品、建築材料、ゲーム機、アミューズメント機器、包装容器などに好ましく用いることができる。特に、本発明の成形体は、携帯電話、電話、パソコン、オーディオ機器、家電機器、無線通信機器、車載部品、ゲーム機などの無線で情報通信を行う機能を有する機器(無線情報通信機器)の装飾部品として用いることが好ましい。本発明の成形体は、金属調の外観を有しながら、電磁波透過性に優れるので、従来の金属調装飾材料のように電磁波障害を引き起こさないものである。このため、本発明の成形体を情報通信機器の装飾部品として用いると、機器の小型化や薄型化が可能となったり、情報通信機器内部の回路設計の自由度が増すものである。
本発明の成型用積層フィルムはフィルムX面及びフィルムY面共にインサート成型における耐ウォッシュアウト性をもつため、2種の樹脂をフィルムの両面に射出し、一体成型するダブルインジェクション工法に好適に用いることができる。
次に、本発明のフィルムXの好ましい製造方法の一例を以下に説明するが、これによって制限されるものではない。
まず、2種類の樹脂A及び樹脂Bをペレットの形態で用意する。該ペレットは、必要に応じて熱風中あるいは真空下で乾燥された後、各々2台の押出機にそれぞれ供給される。各押出機内において、融点以上に加熱溶融された樹脂は、ギヤポンプ等で樹脂の押出量を均一化してフィルター等を介して異物や変性した樹脂を取り除く。2台の押出機を用いて異なる流路から送り出された樹脂Aと樹脂Bは、それぞれ多層積層装置に送り込まれる。多層積層装置としては、マルチマニホールドダイやフィードブロックやスタティックミキサー等を用いることができるが、特に、本発明の構成を効率よく得るためには、多数の微細スリットを有する部材を、少なくとも別個に2個以上含むフィードブロックを用いることが望ましい。このようなフィードブロックを用いると、装置が極端に大型化することがないため、熱劣化による異物が少なく、積層数が極端に多い場合でも、高精度に積層が可能となる。また、幅方向の積層精度も従来技術に比較して格段に向上する。また、任意の層厚み構成を形成することも可能となる。この装置では、各層の厚みをスリット形状(長さ、幅、間隙)で調整できるため、任意の層厚みを達成することが可能となったものである。このため、本発明の特徴である層構成を容易に達成することができる。一方、従来の装置では、300層以上の積層を達成するためには、スクエアーミキサーを併用することが一般的であるが、このような方法では積層流が相似系で変形して積層されるために、任意の層厚みを達成することが困難である。
2段以上の傾斜構造をとる場合、薄い層から厚い層への変化もしくは厚い層から薄い層への層厚みの変化が、非常に急になる。本発明では多数の微細スリットを有する部材を少なくとも別個に2個以上含むフィードブロックを用いる。ただし、この別個のフィードブロックから送り込まれた樹脂が合流する箇所では合流直後に層厚み分布が変化し、幅方向の色調をばらつかせる大きな一因となっていた。さらにはフィードブロックから口金までの経路で配管の壁面の影響により配管付近の樹脂速度が低下するため、配管壁面付近と配管中心部の流速差により更にフィルム幅方向の色調均一性が悪化していた。そのため、フィルム最表層部及び別個のフィードブロックの樹脂合流部の一定の距離を同一のポリマーで置換することで積層比を崩すことなく、幅方向で均一な色調を発現する積層フィルムを得ることができる。このとき、積層フィルムの両側の最表層の厚膜層を樹脂Aとする場合、樹脂Aからなる層が表層厚膜層(両側の最表層)に該当する。表層厚膜層となる樹脂は射出成型時の剪断を緩和するために高結晶性樹脂であることが好ましい。また、中層厚膜層とする樹脂においても、射出成型時の剪断を緩和するために高結晶性樹脂であることが好ましい。厚膜層の厚み調整は該当する層の厚みに相当する各流量をスリットの間隙で調整することが好ましく、この際、各スリット間隙の間隙精度は±10μm以下であることが好ましい。このような特殊なフィードブロックを用いることにより、高精度でかつ2段以上の傾斜構造を形成する積層フィルムを得ることができる。
次に、本発明のフィルムXの特徴である波長帯域400nm〜700nmにおける平均反射率を30%以上75%以下とするためには、各層の層厚みを、下記、式3に基づいて設計する必要がある。本発明における積層フィルムは、光を反射/透過することを可能とするが、その反射率については樹脂Aからなる層と樹脂Bからなる層の屈折率差と層数によって制御することができる。
2×(na・da+nb・db)=λ 式3
na:樹脂Aからなる層の面内平均屈折率
nb:樹脂Bからなる層の面内平均屈折率
da:樹脂Aからなる層の層厚み(nm)
db:樹脂Bからなる層の層厚み(nm)
λ:主反射波長(1次反射波長)
このようにして所望の層構成に形成した溶融積層体は、次にダイにて目的の形状に成形された後、吐出される。そして、ダイから吐出された多層に積層されたシートは、キャスティングドラム等の回転冷却体上に押し出され、冷却固化され、キャスティングフィルム(無延伸フィルム)が得られる。この際、ワイヤー状、テープ状、針金状あるいはナイフ状等の電極を用いて、静電気力によりキャスティングドラム等の回転冷却体に密着させ急冷固化させることが好ましい。また、スリット状、スポット状、面状の装置からエアーを吹き出してキャスティングドラム等の回転冷却体に密着させ急冷固化させたり、ニップロールにて回転冷却体に密着させて急冷固化させる方法も好ましい。
このようにして得られたキャスティングフィルム(無延伸フィルム)は、必要に応じて二軸延伸することが好ましい。二軸延伸とは、長手方向及び幅方向に延伸することをいう。延伸は、逐次に二軸方向に延伸しても良いし、同時に二方向に延伸してもよい。また、さらに長手方向及び/または幅方向に再延伸しても良い。特に本発明においては面内の配向差を抑制できる点や、表面傷を抑制する観点から、同時二軸延伸を用いることが好ましい。
まず、逐次二軸延伸の場合について説明する。ここで長手方向の延伸とは、フィルムに長手方向に分子配向を与えるための延伸を言い、通常は、ロールの周速差により施され、この延伸は1段階で行っても良く、また、複数本のロール対を用いて多段階で行っても良い。延伸の倍率としては樹脂の種類により異なるが、通常、2〜15倍が好ましく、成型用積層フィルムを構成する樹脂のいずれかにポリエチレンテレフタレートを用いた場合には、2〜7倍が特に好ましく用いられる。また、延伸温度としては積層フィルムを構成する樹脂のガラス転移温度〜ガラス転移温度+100℃が好ましい。
本発明の成型用積層フィルムに易接着層を設ける場合には、塗剤をコーティングして積層する方法が好ましい。塗剤をコーティングする方法としては、本発明における積層フィルムの製造工程とは別工程でコーティングを行う方法、いわゆるオフラインコーティング方法と、本発明における積層フィルムの製造工程中にコーティングを行うことで易接着層を一度に積層させる、いわゆるインラインコーティング方法がある。コストの面や塗布厚みの均一化の面からインラインコーティング方法を採用することが好ましく、その場合に用いられる塗液の溶媒は、環境汚染や防爆性の観点から水系であることが好ましく、水を用いることが最も好ましい態様である。
インラインコーティングで易接着層を積層する場合には、一軸延伸された積層フィルムに連続的に易接着層を構成する塗剤を塗布する。溶媒として水を用いた塗剤(水系塗剤)の塗布方法としては、例えば、リバースコート法、スプレーコート法、バーコート法、グラビアコート法、ロッドコート法及びダイコート法などを用いることができる。
水系塗剤を塗布する前に、積層フィルムの表面にコロナ放電処理等を施すことが好ましい。これは、積層フィルムと塗剤との接着性が向上し、塗布性も良好となるためである。
易接着層には、発明の効果を損なわない範囲であれば、架橋剤、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐侯安定剤、紫外線吸収剤、有機の易滑材、顔料、染料、有機または無機の粒子、充填材、界面活性剤等を配合しても良い。
続いて行う幅方向の延伸とは、フィルムの幅方向に分子配向を与えるための延伸を言い、通常はテンターを用いて、フィルムの両端をクリップで把持しながら搬送して、フィルムに熱を加えて予熱した後、幅方向に延伸する。テンター直前に塗布された水系塗剤はこの予熱時に乾燥される。延伸の倍率としては樹脂の種類により異なるが、通常、2〜15倍が好ましく、本発明における積層フィルムを構成する樹脂のいずれかにポリエチレンテレフタレートを用いた場合には、2〜7倍が特に好ましい。また、延伸温度としては本発明における積層フィルムを構成する樹脂のガラス転移温度〜ガラス転移温度+120℃が好ましい。二軸延伸された積層フィルムは、平面性、寸法安定性を付与するために、テンター内で延伸温度以上融点以下の熱処理を行うことが好ましい。このようにして熱処理された後、均一に徐冷後、室温まで冷却してワインダーにて巻き取られる。また、必要に応じて、熱処理から徐冷の際に弛緩処理などを併用してもよい。
次いで、同時二軸延伸の場合について説明する。同時二軸延伸の場合には、得られたキャストフィルムに、連続的に易接着層を構成する塗剤を塗布する。溶媒として水を用いた塗剤(水系塗剤)の塗布方法としては、例えば、リバースコート法、スプレーコート法、バーコート法、グラビアコート法、ロッドコート法及びダイコート法などを用いることができる。
水系塗材を塗布する前に、本発明における積層フィルムの表面にコロナ放電処理などを施すことが好ましい。これは、積層フィルムと塗剤との接着性が向上し、塗布性も良好となるためである。次に、塗剤を塗布したキャストフィルム(無延伸フィルム)を同時二軸テンターへ導き、フィルムの両端をクリップで把持しながら搬送して、長手方向と幅方向に同時及び/または段階的に延伸する。同時二軸延伸機としては、パンタグラフ方式、スクリュー方式、駆動モーター方式、リニアモーター方式があるが、任意に延伸倍率を変更可能で、かつ任意の場所で弛緩処理を行うことができる駆動モーター方式もしくはリニアモーター方式が好ましい。延伸の倍率としては樹脂の種類により異なるが、通常、面積倍率として6〜50倍が好ましく、面積倍率として8〜30倍が特に好ましい。特に同時二軸延伸の場合には、面内の配向差を抑制するために、長手方向と幅方向の延伸倍率を同一とするとともに、延伸速度もほぼ等しくなるようにすることが好ましい。また、延伸温度としては積層フィルムを構成する樹脂のガラス転移温度〜ガラス転移温度+120℃が好ましい。二軸延伸されたフィルムは、平面性、寸法安定性を付与するために、引き続きテンター内で延伸温度以上融点以下の熱処理を行うことが好ましい。この熱処理の際に、幅方向での主配向軸の分布を抑制するため、熱処理ゾーンに入る直前及び/または直後に瞬時に長手方向に弛緩処理することが好ましい。このようにして熱処理された後、均一に徐冷後、室温まで冷却してワインダーにて巻き取られる。また、必要に応じて、熱処理から徐冷の際に長手方向及び/または幅方向に弛緩処理を行っても良い。熱処理ゾーンに入る直前及び/または直後に瞬時に長手方向に弛緩処理することが好ましい。また、ワインダーにて巻き取ったフィルムは通常適切な幅、長さにスリットするが、ワインダーで巻き取ったフィルムの幅方向のセンター位置から適切な幅にスリットすることが好ましい。幅方向のセンター位置からスリットすることでスリット後のフィルムロールの配向角度の符号は全幅同一となるため、フィルムXとフィルムYを貼り合せる際に配向角度の組み合わせの調整が容易となる。
次にフィルムX及びフィルムYから成型用積層フィルムを製造する好ましい方法を以下に説明する。
本発明の成型積層フィルムを製造する製造方法において、フィルムXの配向角度の符号がプラスであれば、貼り合せるフィルムYの配向角度の符号がマイナスであるように、フィルムXとフィルムYの配向角度の符号は逆であることが好ましい。更に貼り合せる向きとしてフィルムXの配向角度が大きい箇所にフィルムYの配向角度大きい箇所を、フィルムXの配向角度が0に近い箇所にフィルムYの配向角度が0に近い箇所の組み合わせで貼り合せることが好ましい。フィルム測定方向を揃えた際にフィルムXとフィルムYの配向角度の絶対値が近く、配向角度の符号が異なる組み合せではフィルムXとフィルムYの加熱収縮の方向が逆となり、収縮方向が相殺されるため、捻れてカールしにくくなる。
また、フィルムX片面に形成する硬化型接着剤層の単位面積当たりの質量は約1〜30g/mであることが好ましい。かかる単位面積当たりの質量とすることで、1〜30μmの厚みの接着層が得られる。1g/m未満であると接着力が弱く、剥離しやすくなり、30g/mより多い場合、乾燥性が低下し、外観不良となりやすい。また、異物の押し痕が残りやすく、意匠性の低下につながるため好ましくない。なお、硬化型接着剤を塗布するフィルムはフィルムX及びフィルムYのどちらでも問題ないが、フィルムXにおいて接着層側は層番号N側であることが必要である。
本発明の成型用積層フィルムを製造する製造方法において硬化型接着剤層を形成する際の塗工方式は、グラビアコーター、グラビアリバースコーター、リップコーター、フレキソコーター、ブランケットコーター、ロールコーター、ナイフコーター、エアナイフコーター、キスタッチコーター、キスタッチリバースコーター、コンマコーター、コンマリバースコーター、マイクロリバースコーターなどの塗工方式を用いることが出来る。
本発明の成型用積層フィルムの製造方法において、前記フィルムXの片面に1〜30g/mの硬化型接着剤層を形成する際の塗工方式は前述の方式を適宜選択して用いることができるが、塗工方式に合わせた粘度とするために適宜希釈剤を添加しても良い。本発明において用いられる接着剤の塗液調整に用いる希釈剤には、沸点が120℃以下の1種以上の低沸点溶剤と、その低沸点溶剤よりも高沸点の高沸点溶剤との混合溶剤を用いることができる。ここで、120℃以下としたのは、基材シートの耐熱性を考慮した乾燥温度130℃以下で、できるだけ速やかに蒸発する必要があるからである。さらに、高沸点溶剤は、好ましくは、低沸点溶剤の中で最も高沸点の溶剤よりも少なくとも40℃以上、より好ましくは40℃以上80℃以下高い沸点を有するものを用いることが好ましい。高沸点溶剤は、塗膜表面の固化を防止して他の低沸点の蒸発を促進する働きをするものである。また、塗工時の塗液の粘度上昇を抑制して塗工性を向上させる働きも有する。低沸点溶剤の具体例を挙げれば、炭化水素系溶剤としては、トルエン、ノルマルヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ノルマルヘプタン等を挙げることができ、ケトン系溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)等を挙げることができ、エステル系溶剤としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル等を挙げることができ、エーテル系溶剤としては、1,4−ジオキサン等を挙げることができる。好ましくは、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチルから選択された1種以上の溶剤である。これに対し、高沸点溶剤には、メチルブチルケトン、ダイアセトンアルコール、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、酢酸ブチル、酢酸ペンチル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等を挙げることができる。好ましくは、メチルブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、酢酸ブチル、酢酸ペンチル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルから選択された1種の溶剤である。また、高沸点溶剤の希釈溶剤中の含有量は、好ましくは5〜20重量%、より好ましくは7〜15重量%である。5重量%より少ないと、低沸点溶剤の蒸発促進に十分な効果がなく、また20重量%を超えると、高沸点溶剤自体が塗膜内から完全に除去されず、塗膜内に残留する可能性があるからである。
貼り合わせ工程は、前記フィルムXに接着剤を塗布する場合、フィルムXの総番号N側に接着剤を塗布した後、フィルムYをラミネートニップロールで貼り合わせる。このとき、前記積層フィルムの片面に接着剤を塗布した後、40〜120℃で熱処理することが好ましく、40〜120℃に加熱したラミネートニップロール上で0.2〜1.0MPaのニップ圧力でフィルムYをラミネートすることが好ましい。
貼り合わせた後、巻取りまでの搬送ゾーンでは、欠点を検出する機構及び/または、張力の調整や巻取りロールの切り替えの際のシートのたるみを吸収するための機構等のために、通常複数の搬送ロールが用いられ、シートの幅方向のずれを抑制するために各搬送ロールにおいては、適当な接触角度をもってシートが搬送される。そしてこのような搬送ロールにおいては、剥離帯電を抑制するため、自己放電除電器を設置することが好ましく、更に全ての搬送ロールの出側に設置することが望ましい。ここで、自己放電除電器は、両端を接地点に連結することにより帯電した電荷を接地点に逃がす機能を有する導電性を有する線状体である。かかる線状体としては銅、アルミニウム、鉄などが上げられる。また、酸化された場合には導電性の低下や破断の懸念があることから、酸化しにくい素材が好ましい。例えば、0.1から0.5mmφタングステンの素線ワイヤーを用いることができる。
また、設置に当たっては、ワイヤーの両端をバネ等で張力をかけて保持し、シートの搬送方向を横切るように、好ましくはシートの搬送方向に垂直に設置する。更に好ましくは、搬送ロールと中心を同じくする同心円で、搬送ロールの半径+25mm、及び、搬送ロールの半径+80mmの半径の円周を示しており、シートと平行な最短距離が1mm及び20mmとなる位置に設置する。更に好ましくは、搬送ロールとの最短距離Mが25〜80mmの範囲かつ積層フィルムとの最短距離が1〜20mmの範囲に設置する。
複数の搬送ロールを通過させた後にシート巻取りコア上に巻き取り、接着剤の硬化を目的に、得られた積層フィルムをロールに巻き取った状態で、20〜60℃、24〜168時間熱処理を行う。かかる熱処理の温度が、20℃に満たない場合及び/または熱処理の時間が24時間に満たない場合には接着剤の硬化が十分には進まず、十分な接着強度が得られず、後の工程で貼り合わせたフィルムにズレが生じる場合がある。また、60℃を越える場合及び/または熱処理の時間が168時間を越える場合には、ロールとなったシートの巻き締まり痕が顕著となり、スジ状の外観欠点を生じることがある。
また、シート巻取りコア上に巻き取る前に前記シート巻取りコアの積層フィルムの表層近傍の位置に除電器を設置して除電を行うことが好ましい。かかる場合に適用する除電器としては、前に記載したワイヤー型自己放電除電器(前記シート巻取りコアの積層フィルムの表層から1〜20mmの位置に設置)や、接地された細かいブラシ状導電物を除電対象である帯電体に接近させ、ブラシ先端でコロナ放電によりイオンを発生させて除電するブラシ型自己放電除電器や、針状電極に周波数50〜60Hzの交流の高電圧や直流の高電圧を印加してコロナ放電によりイオンを発生させて除電するコロナ放電式(前記シート巻取りコアの積層フィルムの表層から20〜70mmの位置に設置)を用いることが好ましい。中でも、交流式のコロナ放電式除電器を被除電物である積層フィルムロールに対して前記フィルム巻取りコアの積層フィルムの表層から20〜70mmの位置に、除電電極の針先を巻取りコアの中心に向けて設置することで累積帯電を除電することが好ましい。20mm未満の位置に配置した場合は積層フィルムに直接放電が発生し欠点を生じる場合があり、70mmを越えると除電効果が不十分となる場合がある。好ましくは、30〜70mmの位置である。更に好ましくは、交流式電圧印加方式除電器を2列設置する。
また、積層フィルム巻取りコアは、接地されていることが好ましい。さらに好ましくは、コアの素材として電位抵抗が0.1MΩ以下のコアを接地することであり、更に好ましくは、電位抵抗が0.1MΩ以下、硬度75の導電性ゴムコアを用いることである。導電性ゴムコアであると、フィルムとコアの密着性があがり、除電の効果が向上するため好ましい。
以下、実施例に沿って本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。なお、諸特性は以下の方法により測定した。
(1)フィルムXの層構成及び層厚み
ミクロトームを用いて断面を切り出したサンプルについて、透過型電子顕微鏡((株)日立製作所製、H−7100FA型)を用い、加速電圧75kVでフィルムの断面を40,000倍に拡大して観察し、断面部分を撮影して層構成及び層厚みを測定した。また、各層の合計厚みを積層フィルム全体厚みとした。なお、コントラストを高く得るために、RuOを使用してサンプルを染色した。
フィルムの層構成及び層厚みの具体的な求め方を説明する。約40,000倍のTEM写真を、CanonScanD123U(キャノン(株)製)を用いて画像サイズ729dpiで取り込んだ。画像をJPEG形式で保存し、次いで、画像処理ソフト(販売元プラネトロン(株)、Imagc−Pro Plus ver.4)を用いて、該JPEGファイルを開き、画像解析を行った。画像解析処理は、垂直シックプロファイルモードで、厚み方向と幅方向の2本のライン間で挟まれた領域における平均の明るさとの関係を、数値データとして読み取った。表計算ソフト(Excel2000)を用いて、位置(nm)と明るさのデータに対してサンプリングステップ6(間引き6)でデータ採取後、3点移動平均の数値処理を施した。さらに、得られた周期的に明るさが変化するデータを微分し、VBA(ビジュアル・ベーシック・フォア アプリケーションズ)プログラムにより、微分曲線の極大値と極小値を読み込み、隣り合うこれらの間隔を1層の層厚みとして算出した。この操作を写真毎に行い、全ての層の層厚みを算出した。得られた層厚みのうち、薄膜層は1μm未満の厚みの層とした。薄膜層については、隣り合うA層及びB層の層厚みの和の平均値を全ての組について順次求めた。隣り合うA層とB層からなる組の平均層厚みと隣り合う組の平均層厚みとの差が50nm以下の範囲で連続的に単調増加もしくは単調減少配列している群を傾斜構造と定義した。傾斜構造は組番号と平均層厚みの関係を最小二乗近似した際、そのRの二乗が0.5以上となる正もしくは負の傾きを持つものとし、図1及び図5の構成を4段の傾斜構造、図2及び図6の構成を3段の傾斜構造、図3及び図4、図7の構成を2段の傾斜構造と呼ぶこととした。
(2)フィルムXの層厚み150nm以上のB層の1〜0.4nの範囲における比率
(1)フィルムXの層構成及び層厚みより算出されたB層の層厚みを層番号1〜N(Nは積層数)の順にプロットし、B層の層厚み150nm以上の層数を抽出した。0.4Nの小数点以下を切り下げた層番号を0.4nとした場合、下記式により層番号1〜0.4nの範囲における層厚み150nm以上のB層の比率を求めた。
層厚み150nm以上のB層の1〜0.4nの範囲における比率(%)=
(層番号1〜0.4nの範囲における層厚み150nm以上のB層の層数)/(150nm以上のB層のフィルムXにおける層数)×100
(3)光線透過率
サンプルを5cm×5cmで切り出し、直読式ヘイズメーターHGM−2DP(スガ試験機製作所製)を用い、n数3の平均値を算出した。
(4)ヘイズ
23℃、相対湿度65%の条件で、成型用積層フィルムを2時間放置した後、全自動直読ヘイズコンピューター(スガ試験機(株)製、HGM−2DP)を用いて測定し、n数3の平均値を算出した。
(5)平均反射率
成型用積層フィルムの中央部から5cm四方のサンプルを切り出した。次いで、分光光度計((株)日立製作所製、U−4100 Spectrophotometer)を用いて、入射角度Φ=10度における相対反射率を測定した。付属の積分球の内壁は、硫酸バリウムであり、標準板は、酸化アルミニウムである。測定波長は、250nm〜1200nm、スリットは2nm(可視)/自動制御(赤外)とし、ゲイン2と設定し、走査速度600nm/分で測定した。サンプルの裏面を油性インキで黒塗りした。次いで、波長帯域400〜700nmにおける平均反射率を算出した。平均反射率の算出方法は、波長1nm毎の絶対反射率のデータを用いてシンプソン法公式に基づき、反射曲線と波長帯域で囲まれた面積を計算し、波長帯域の幅である300nmで除することにより、平均反射率を求めた。なお、シンプソン法についての詳細な説明は、山内二郎他著書の「電子計算機のための数値計算法I」(培風館)(昭和40年)に記載されている。
(6)線膨張係数(α)
前記フィルムX及びフィルムYを熱機械測定装置TMA/SS6100(セイコーインスツルメンツ社製)を用い、試料幅2mm、試料長さ(チャック間距離)20mmのサンプルに対し、荷重2.0gを負荷した。室温から200℃まで昇温速度10℃/分で昇温させ、10分間保持した。その後、20℃まで10℃/分で降温させた。そのときの降温部分の150℃から170℃までの寸法変化量及び170℃から190℃までの寸法から下記式により線膨張係数を求めた。なお、フィルム長手方向を試料長さ20mmとして測定した場合はαMD、フィルム幅方向を試料長さ20mmとして測定した場合はαTDとした。フィルムXの150〜170℃における線膨張係数をα1、フィルムYの150〜170℃における線膨張係数をα2、フィルムXの170〜190℃における線膨張係数をα3、フィルムYの170〜190℃における線膨張係数をα4とし、試料長さを20mmとする方向をフィルム長手方向とした場合、幅方向とした場合であるα1MD及びα1TD、α2MD及びα2TD、α3MD及びα3TD、α4MD及びα4TDを測定、n数は3で評価を行った。
α1MD及びα1TD、α2MD及びα2TD(ppm/℃)
={(L170−L150)/L0}/ΔT×100000
L0:23℃におけるフィルムの長さ(mm)
L170:降温時170℃におけるフィルムの長さ(mm)
L150:降温時150℃におけるフィルムの長さ(mm)
ΔT:温度変化量(170−150=20)
α3MD及びα3TD、α4MD及びα4TD(ppm/℃)
={(L190−L170)/L0}/ΔT×100000
L0:23℃におけるフィルムの長さ(mm)
L190:降温時190℃におけるフィルムの長さ(mm)
L170:降温時170℃におけるフィルムの長さ(mm)
ΔT:温度変化量(190−170=20)
上記α1MD及びα1TD、α2MD及びα2TD、α3MD及びα3TD、α4MD及びα4TDを用いて、α1MD/α2MD、α3MD/α4MD、α1TD/α2TD、α3TD/α4TDを算出した。
(7)配向角度
前記フィルムX及びフィルムYにおいてサンプルサイズを5cm×5cmとし、同一方向上下から5cm間隔で5サンプル切り出した。KSシステムズ(株)製(現王子計測機器(株))の分子配向計MOA−2001を用いて、配向角度を測定した。n数は3とし、その平均値を採用した。なお、フィルムをホルダーに積置する際には各試料は予めマーキングしておくなどしてサンプリング時のフィルム方向を一致させるようにずれが無いようにし、配向角度に符号が逆とならないよう載置、符号を含めて配向角度とした。
(8)90°剥離強度
成型用積層フィルムを長さ25cm、幅1.5cmの寸法に切り出し、プラスチック基板に貼りつける。このとき、フィルム厚みが厚い方をプラスチック基板側とする。その後、成型用積層フィルムの片方約10〜15cmを接着剤層を境として剥離させる。剥離が困難な場合は、溶剤を用い接着剤を取り除き剥離させる。剥離させたフィルムをインストロンタイプの引っ張り試験器を用いさらに剥離させ、剥離の際の強度をn数3で測定した。なお、剥離させる際はプラスチック基板が地面と水平になるよう設置し、かつ、プラスチック基板と剥離フィルムの角度が90°となるように設置する。測定は下記の条件とした。
測定装置:オリエンテック(株)製フィルム強伸度自動測定装置“テンシロンAMF/RTAー100”
試料サイズ:幅15mm×試長間50mm
引張り速度:200mm/min
測定環境:温度23℃、湿度65%RH。
剥離距離50mm分の平均の剥離強度を用いた。
(9)彩度C
成型用積層フィルムの幅方向中央から5cm×5cmで切り出し、次いでサンプル裏面をマジックインキ(登録商標)で黒く塗り、分光測色計(コニカミノルタセンシング(株)製、CM−3600d)を用いて、各サンプルにおけるa、bを測定し、n数5の平均値を算出した。
なお、測定の手段としては、分光測色計付属のゼロ構成ボックスで反射率のゼロ構成を行い、次いで、付属の白色校正板を用いて100%校正を行った後、以下の条件でフィルムのaを測定した。
モード:反射、SCI/SCE同時校正
測定径:8mm
サンプル:非測定面側に黒インキを塗布
光源:D65
次に、a、bより彩度Cを求めた。彩度Cの定義は以下の通りである。
・彩度C=((a+(b1/2
彩度Cの計算に用いたa、bはSCIの値とした。
(10)面内平均屈折率
積層フィルムのA層、B層のそれぞれについて、厚さ0.5mmのフィルムに切り取り、幅5mm、長さ20mmの大きさの試験片を切り出し、アッベ屈折率計(アタゴ製、DR−M2)によって、23℃、589nm波長における屈折率を測定し、n数5の平均値を算出した。
(11)カール値、長辺2隅のカール値の差
成型用積層フィルムを縦方向に20cm、幅方向に1cm、及び縦方向に1cm、幅方向に20cmの大きさに2つのフィルム試料を切り出し、190℃または150℃の熱風循環式オーブンで30分間放置し、熱処理を行った。室温にて放置冷却後、試料をガラス板上に置き、ガラス板面から垂直方向で4隅の浮き上がり量を測定した。切り出した2つのフィルム試料において、最大の浮き上がり量をカール値とした。190℃で熱処理しフィルム長手方向が20cmの試料の場合を190℃長手方向カール値、190℃で熱処理しフィルム幅方向が20cmの試料の場合を190℃幅方向カール値、150℃で熱処理しフィルム長手方向が20cmの試料の場合を150℃長手方向カール値、150℃で熱処理しフィルム幅方向が20cmの試料の場合を150℃幅方向カール値とした。
成型用積層フィルムの熱収縮時の捻れ性を評価するため、フィルム試料の20cm長辺に位置する2隅の組み合わせにおいて、浮き上がり量の差を測定、2隅の組み合わせは2組あるため、浮き上がり量の差の大きい値を測定試料の評価値とした。190℃で熱処理しフィルム長手方向が20cmの試料、190℃で熱処理しフィルム幅方向が20cmの試料、150℃で熱処理しフィルム長手方向が20cmの試料、150℃で熱処理しフィルム幅方向が20cmの試料の中で最も2隅の浮き上がり量の差の大きい組合せの試料の数値を長辺2隅のカール値の差とした。
(12)耐ウォッシュアウト性
成型用積層フィルムの片面に、スクリーン印刷にて黒色の架橋性インキ層を形成した後、バインダー層を形成させた。印刷条件は以下の通り。架橋性インキ層の厚みは5μmであった。
<黒色の架橋性インキ>
着色顔料:三菱化学(株)製 カーボンブラック MA100 8重量部
ポリエステルポリオール樹脂:東洋紡(株)製 バイロン200 25重量部
溶剤:シクロヘキサン 35重量部
架橋剤:イソシアネート系架橋剤 日本ポリウレタン工業(株)製 コロネート2096 10重量部
スクリーンメッシュ:T−225
乾燥:80℃×10分(ボックス乾燥)
塗布回数:1回
<バインダー>
バインダー:帝国インキ製造株式会社製 IMB−003
スクリーンメッシュ:T−225
乾燥:90℃×60分(ボックス乾燥)
前記印刷を行った加飾シートを所定の寸法にカットし、金型にセットして、以下の条件でインサート成形して加飾成形体を作製した。
型締圧力:80ton
金型温度:80℃
成形樹脂:帝人化成株式会社製 PC パンテライト1225L
成形樹脂温度:295℃
射出速度:200mm/s
成形品寸法(L×W×H):150×50×2mm
ゲート:φ2mmピンゲート。
得られた成型加飾体の外観を観察し、以下の基準で判定した。
○:外観に変化がない。
×:ゲート部に金属光沢調の変化がある。
(13)カール性
(11)カール値の評価結果より、以下の基準で評価した。
○:長手方向及び幅方向のカール値が何れも0mm以上25mm未満
×:長手方向及び幅方向のカール値の何れかが25mm以上
(14)カール捻れ性
(11)長辺2隅のカール値の差の評価結果より、以下の基準で評価した。
○:長辺2隅のカール値の差が0mm以上20mm未満
×:長辺2隅のカール値の差が20mm以上
(15)剛性
サンプルを成型用積層フィルムの幅方向の中央部から、長手方向に15cm、幅方向に1.5cmで切り出し長手方向のヤング率測定用サンプルとした。同様に、幅方向に15cm、長手方向に1.5cmで切り出し幅方向のヤング率測定用サンプルとした。引張試験機(東洋測機社製テンシロンUTM−III)で、試験長10cmで把持し、速度20cm/minで引っ張り、記録された応力−歪み曲線をもとにJIS K 7113の方法によりn数5で求め、長手方向及び幅方向の平均値を本発明のヤング率とした。剛性はヤング率×成型用積層フィルム厚みにて算出し、下記基準で評価した。
○:500kN/m以上
×:500kN/m未満
(16)金属光沢性
(5)平均反射率の測定結果より、下記基準で評価した。
○:30%以上
×:30%未満
(17)背面インキ視認性
(3)光線透過率の測定にて90%となるフィルムに(8)の分光測色計にてa値が35となる赤印刷を成型用積層フィルムに行った。赤印刷層の逆面より(8)の分光測色計にてa値を算出し、n数3の評価結果を下記基準で評価した。
○:1.5以上
×:1.5未満
(原料)
(樹脂A−1)
テレフタル酸ジメチル100重量部、エチレングリコール60重量部の混合物に、テレフタル酸ジメチル量に対して酢酸マグネシウム0.09重量部、三酸化アンチモン0.03重量部を添加して、常法により加熱昇温してエステル交換反応を行う。次いで、該エステル交換反応生成物に、テレフタル酸ジメチル量に対して、リン酸85%水溶液0.020重量部を添加した後、重縮合反応槽に移行する。さらに、加熱昇温しながら反応系を除々に減圧して1mmHgの減圧下、290℃で常法により重縮合反応を行い、固有粘度(IV)0.63のポリエチレンテレフタレート(以下、PETということがある)を得た。
(樹脂A−2)
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル100重量部、エチレングリコール60重量部の混合物を用いた以外は、樹脂A−1と同様に重合を行い、固有粘度(IV)0.67のポリエチレンナフタレート(以下、PENということがある)を得た。
(樹脂A−3)
樹脂A−1と樹脂A−2を1:1で混合したポリエステル。
(樹脂B−1)
固有粘度(IV)0.55のスピログリコール(SPG)21mol%、及びシクロヘキサンジカルボン酸(CHDC)24mol%を共重合したポリエチレンテレフタレート。
(樹脂B−2)
固有粘度(IV)0.72のシクロヘキサンジメタノール(CHDM)30mol%を共重合したポリエチレンテレフタレート。
(樹脂B−3)
樹脂A−1と樹脂B−2を1:3で混合した共重合ポリエチレンテレフタレート。
(樹脂B−4)
樹脂A−1と樹脂B−2を1:1で混合した共重合ポリエチレンテレフタレート。
(樹脂B−5)
樹脂A−1と樹脂B−2を65:35で混合した共重合ポリエチレンテレフタレート。
(易接着層の組成物−I)
・アクリル・ウレタン共重合樹脂(a)の水分散体:山南合成化学(株)製、サンナロンWG658(固形分濃度30重量%)
・イソシアネート化合物(b)の水分散体:第一工業製薬(株)製、エラストロンE−37(固形分濃度28重量%)
・エポキシ化合物(c)の水分散体:DIC(株)製、CR−5L(固形分濃度100重量%)
・ポリチオフェン構造を有する化合物及び陰イオン構造を有する化合物からなる組成物(d)の水分散体(固形分濃度1.3重量%)
・オキサゾリン化合物(e)の水分散体:日本触媒(株)製、エポクロスWS−500(固形分濃度40重量%)
・カルボジイミド化合物(f)の水分散体:日清紡(株)製、カルボジライトV−04(固形分濃度40%)
・シリカ粒子(g):日揮触媒化成(株)製、スフェリカスラリー140(固形分濃度40%)
・アセチレンジオール系界面活性剤(h):日信化学(株)製、オルフィンEXP4051(固形分濃度50%)
・水系溶媒(i):純水
上記した(a)〜(h)を固形分重量比で、(a)/(b)/(c)/(d)/(e)/(f)/(g)/(h)=100/100/75/25/60/60/10/15となるように混合し、かつ前記水系塗剤の固形分濃度が3重量%となるように(i)を混合し、濃度調整した。
[実施例1]
(フィルムXの製造)
樹脂A−1及び樹脂B−1を、各々別のベント付き二軸押出機で280℃の溶融状態とした後、ギヤポンプ及びフィルターを介して、225個のスリットを有する部材を別個に4個有する901層のフィードブロックにて合流させた。なお、厚膜層となる両側の最表層は樹脂A−1となり、樹脂A−1と樹脂B−1が交互に積層され、かつ隣接する樹脂A−1からなる層と樹脂B−1からなる層の層厚みは、ほぼ同じになるようにした。次いで、T−ダイに導いてシート状に成形した後、静電印加で表面温度25℃に保たれたキャスティングドラムに密着させて急冷固化し、キャストフィルムを得た。
得られたキャストフィルムを75℃に設定したロール群で加熱した後、延伸区間長100mmの間で、フィルム両面からラジエーションヒーターにより急速加熱しながら、縦方向に3.3倍延伸し、その後一旦冷却して一軸延伸フィルムを得た。次いで、該一軸延伸フィルムの両面に空気中でコロナ放電処理を施し、フィルムの塗れ張力を55mN/mとし、#4のメタバーで易接着層の組成物−Iをフィルムの両面に塗布した。
得られた一軸延伸フィルムをテンターに導き、100℃の熱風予熱後、110℃の温度で横方向に3.5倍延伸した。延伸したフィルムは、そのままテンター内で240℃の熱風にて熱処理を行い、次いで、同温度にて幅方向に7%の弛緩処理を施し、その後、室温まで冷却してワインダーにて巻き取り、二軸延伸フィルムを得た。得られた二軸延伸された積層フィルムXのフィルム全体厚みは、117μmであった。この積層フィルムの層設計は図1の通りであり、スリット間隙を調整することにより、各層の層厚みを制御した。該積層フィルムの厚み方向の断面をTEM観察し、画像処理により層厚み分布を求めた。最表層となる層番号1及び層番号901の層厚みは何れも5μmであり、樹脂A−1で構成される層番号226、層番号451、及び層番号676の層厚みは3μmであった。テンター方向からワインダーを見た際のワインダーにて巻き取られたフィルムの左端をI位置、右端をIX位置とし、I位置、IX位置間の幅方向を均等に7分割して幅方向にI〜IX位置の数字を割り振った。
(フィルムYの製造)
樹脂A−1をベント付き二軸押出機で280℃の溶融状態とした後、ギヤポンプ及びフィルターを介して押し出し、T−ダイに導いてシート状に成形した後、静電印加で表面温度25℃に保たれたキャスティングドラムに密着させて急冷固化し、キャストフィルムを得た。
得られたキャストフィルムを75℃に設定したロール群で加熱した後、延伸区間長100mmの間で、フィルム両面からラジエーションヒーターにより急速加熱しながら、縦方向に2.8倍延伸し、その後一旦冷却して一軸延伸フィルムを得た。次いで、該一軸延伸フィルムの両面に空気中でコロナ放電処理を施し、フィルムの塗れ張力を55mN/mとし、#4のメタバーで易接着層の組成物−Iをフィルムの両面に塗布した。
得られた一軸延伸フィルムをテンターに導き、110℃の熱風予熱後、120℃の温度で横方向に3.5倍延伸した。延伸したフィルムは、そのままテンター内で230℃の熱風にて熱処理を行い、次いで、同温度にて幅方向に7%の弛緩処理を施し、その後、室温まで冷却してワインダーにて巻き取り、二軸延伸フィルムを得た。得られた二軸延伸されたフィルムYの全体厚みは、90μmであった。テンター方向からワインダーを見た際のワインダーにて巻き取られたフィルムの左端をi位置、右端をix位置とし、i位置、ix位置間の幅方向を均等に7分割して幅方向にi〜ix位置の数字を割り振った。
(フィルムXとフィルムYの貼り合せ)
得られたフィルムXの層番号901層側に下記ウレタン系熱硬化型接着剤をウェット厚みで5g/m塗布し、乾燥温度70℃から90℃で速度20m/minで乾燥後、フィルムYを用いて、ニップ圧力0.4MPa温度40℃でニップロールを使用して貼り合わせを行い、目的とする成型用積層フィルムを得た。得られた成型用積層フィルムの前端厚みは210μmであった。得られた成型用積層フィルムのフィルムXはV位置、フィルムYはv位置に該当する箇所の特性を表1に示す。
(実施例2)
フィルムXの製造時に樹脂B−1を樹脂B−2に変更した以外は実施例1と同様にして、成型用積層フィルムを得た。フィルムXはII位置、フィルムYはviii位置に該当する箇所の結果を表1に示す。
(実施例3)
フィルムXの製造時に樹脂B−1を樹脂B−3に変更した以外は実施例1と同様にして、成型用積層フィルムを得た。フィルムXはVI位置、フィルムYはiv位置に該当する箇所の結果を表1に示す。
(実施例4)
フィルムXの製造時に樹脂A−1をA−3、樹脂B−1を樹脂B−2に変更した以外は実施例1と同様にして成型用積層フィルムを得た。フィルムXはIV位置、フィルムYはvi位置に該当する箇所の結果を表1に示す。
(実施例5)
フィルムXの製造時にフィルムの層設計を図2となるようにフィードブロックのスリット形状を変更して厚み調整し、積層フィルム全体厚みを114μmとした以外は実施例1と同様にして、成型用積層フィルムを得た。最表層となる層番号1及び層番号901の層厚みは何れも5μmであり、樹脂A−1で構成される層番号301及び層番号601の層厚みは3μmであった。フィルムXはVIII位置、フィルムYはii位置に該当する箇所の結果を表1に示す。
(実施例6)
フィルムXの製造時にフィルムの層設計を図3となるようにフィードブロックのスリット形状を変更して厚み調整し、積層フィルム全体厚みを111μmとした以外は実施例1と同様にして、成型用積層フィルムを得た。最表層となる層番号1及び層番号901の層厚みは何れも5μmであり、樹脂A−1で構成される層番号451の層厚みは3μmであった。フィルムXはVIII位置、フィルムYはii位置に該当する箇所の結果を表1に示す。
(実施例7)
フィルムYの製造時にフィルムの全体厚みを50μmに変更した以外は実施例1と同様にして成型用積層フィルムを得た。フィルムXはIII位置、フィルムYはvii位置に該当する箇所の結果を表1に示す。
(実施例8)
実施例1で得られた成型用積層フィルムを(10)ウォッシュアウトの評価にて実施した手法にて印刷を行った後にインサート成型を行い成型加飾体を作成した。フィルムXはVI位置、フィルムYはiv位置に該当する箇所の結果を表1に示す。
(実施例9)
フィルムXの製造時にフィルムの層設計を図4となるようにフィードブロックのスリット形状を変更して厚み調整し、積層フィルム全体厚みを64μmとした以外は実施例1と同様にして、成型用積層フィルムを得た。最表層となる層番号1及び層番号261の層厚みは何れも15μmであり、樹脂A−1で構成される層番号131の層厚みは7μmであった。フィルムXはII位置、フィルムYはviii位置に該当する箇所の結果を表1に示す。
(比較例1)
フィルムYの製造時に縦方向の延伸を3.3倍、テンター内での熱処理を240℃の熱風にて熱処理に変更した以外は実施例1と同様にして成型用積層フィルムを得た。フィルムXはV位置、フィルムYはv位置に該当する箇所の結果を表2に示す。
(比較例2)
フィルムXの製造時にフィルムの層設計を図5となるようにフィードブロックのスリット形状を変更して厚み調整し、積層フィルム全体厚みを117μmとした以外は実施例1と同様にして、成型用積層フィルムを得た。最表層となる層番号1及び層番号901の層厚みは何れも5μmであり、樹脂A−1で構成される層番号226、層番号451、及び層番号676の層厚みは3μmであった。フィルムXはVIII位置、フィルムYはii位置に該当する箇所の結果を表2に示す。
(比較例3)
フィルムXの製造時にフィルムの層設計を図6となるようにフィードブロックのスリット形状を変更して厚み調整し、積層フィルム全体厚みを114μmとした以外は実施例1と同様にして、成型用積層フィルムを得た。最表層となる層番号1及び層番号901の層厚みは何れも5μmであり、樹脂A−1で構成される層番号301及び層番号601の層厚みは3μmであった。フィルムXはVI位置、フィルムYはiv位置に該当する箇所の結果を表2に示す。
(比較例4)
比較例1のフィルムXはVIII位置、フィルムYはviii位置に該当する箇所の結果を表2に示す。
(比較例5)
フィルムXの製造時に樹脂B−1を樹脂B−4に変更した以外は実施例1と同様にして、成型用積層フィルムを得た。フィルムXはII位置、フィルムYはviii位置に該当する箇所の結果を表2に示す。
(比較例6)
フィルムXの製造時に樹脂A−1をA−2、樹脂B−1を樹脂B−5に変更した以外は実施例1と同様にして成型用積層フィルムを得た。フィルムXはII位置、フィルムYはv位置に該当する箇所の結果を表2に示す。
(比較例7)
フィルムの層設計を図7、フィルム積層数が201となるようにフィードブロックのスリット形状等を変更し、厚み調整した以外は実施例1と同様にして、成型用積層フィルムを得た。最表層となる層番号1及び層番号201の層厚みは何れも15μmであり、樹脂A−1で構成される層番号101の層厚みは7μmであった。フィルムXはV位置、フィルムYはv位置に該当する箇所の結果を表2に示す。
(比較例8)
実施例1の方法で得たフィルムXのV位置に該当する箇所の評価結果を表2に示す。
Figure 2016168833
Figure 2016168833
本発明の用途は特に限定されないが、自動車関係の装飾部品をはじめとして各種家電機器、情報通信機器、建築部材などの製品(部品)などに特に好適に用いることができるものである。
1:層番号
2:層厚み
3:厚膜層
4:A層の層厚み分布
5:B層の層厚み分布

Claims (5)

  1. 下記(1)〜(4)の全てを満たすことを特徴とする、成型用積層フィルム。
    (1)高屈折率樹脂Aからなる層(以下、A層という)と低屈折率樹脂Bからなる層(以下、B層という)を有し、厚み方向に交互に合計250層以上積層されたフィルム(以下、フィルムXという)の片面に接着層を介してポリエステルフィルム(以下、フィルムYという)を貼り合せており、フィルム総厚みが150μm以上であること。
    (2)波長帯域400〜700nmにおける平均反射率が30%以上75%以下であること。
    (3)下記測定法により測定した190℃及び150℃、30分処理後のカール値が0mm以上25mm以下であること。
    (測定法)
    成型用積層フィルムを縦方向に20cm、幅方向に1cm、及び縦方向に1cm、幅方向に20cmの大きさに2つのフィルム試料を切り出し、190℃または150℃の熱風循環式オーブンで30分間放置し、熱処理を行った。室温にて放置冷却後、試料をガラス板上に置き、ガラス板面から垂直方向で4隅の浮き上がり量を測定した。切り出した2つのフィルム試料において、最大の浮き上がり量をカール値とした。
    (4)前記記載のフィルムXにおいて非接着層面側の層番号を1、接着層面側の層番号をNとし、0.4Nの小数点以下を切り下げた層番号を0.4nとした場合、層厚み150nm以上のB層の比率が層番号1〜0.4nの範囲において30%以下であること。
  2. 150℃〜170℃の範囲におけるフィルムXの線膨張係数をα1、フィルムYの線膨張係数をα2、170℃〜190℃の範囲におけるフィルムXの線膨張係数をα3、フィルムYの線膨張係数をα4とした際に下記関係式を満たすことを特徴とする請求項1に記載の成型用積層フィルム。
    0.5≦α1/α2≦4.0 ・・・式1
    0.5≦α3/α4≦4.0 ・・・式2
  3. フィルムXの配向角度とフィルムYの配向角度の和の絶対値が20以下である、請求項1又は2に記載の成型用積層フィルム。
  4. 成型用積層フィルムの少なくとも片面に、アクリル・ウレタン共重合樹脂と2種類以上の架橋剤からなる易接着層が設けられたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の成型用積層フィルム。
  5. 請求項1〜4の何れかに記載の成型用積層フィルムを用いた成型体。
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